JPH045795B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、プレストレスコンクリートの応力導
入に使用するPC鋼撚り線の端部外周に、応力導
入後の緊張力をナツトによつて定着させるための
ねじを形成するPC鋼撚り線の端部ねじ加工方法
に関する。

（従来の技術及びその問題点） プレストレストコンクリートの応力導入に使用
するPC鋼材には、単線からなるPC鋼棒と、複数
の単素線を撚り合わせたPC鋼撚り線が使用され
ている。

単線からなるPC鋼棒は、主として端部外周に
雄ねじを刻設しておき、応力導入後の端部の定着
を雄ねじ外周に螺嵌したナツトをもつて行わせる
ようにしている。

一方PC鋼撚り線は、主として端部外周をテー
パー円筒を複数分割した楔とテーパー穴を貫通開
口させたコーンとを用い、応力導入後、PC鋼撚
り線の戻り力を利用して楔により外周を圧着さ
せ、これによつて端部を定着させるようにしたも
のが一般的である。

ナツトによる定着は、楔による定着に比べ緊張
後の戻りを考慮する必要がなく、また、定着後に
楔とPC鋼材の表面間に滑りが発生しないことか
ら信頼性が高く、また、テーパー穴付きのコーン
や、楔及び楔の抜止め等の複雑な器具を必要とし
ないため、低コストとなり経済的である等の利点
がある。

一方PC鋼撚り線は、PC鋼棒に比べ柔軟性があ
り、湾曲させた配設に便利であり、また、コンク
リートに対し、付着させてプレストレスを導入す
るいわゆるボンドタイプのプレストレスコンクリ
ート構造に使用する場合には表面に螺旋状の溝が
あるため、コンクリート内に埋め込まれた際の付
着が良く好適である。しかし、従来はPC鋼撚り
線に対するねじ加工が不可能とされ、ナツト定着
によらずに楔定着によらざるを得ないとされてき
た。

その理由は、PC鋼材にねじ加工を施す場合は、
引張強度を低下させないようにするため、その縦
方向の金属組織を切断せずに加工する必要があ
り、そのためには転造ねじによらざるを得ないこ
と、転造ねじ加工に際し、外周からの圧力により
特に端部は撚りがほぐれ易く、単素線間にずれが
生じ、加工中に撚り線全体の最外径における真円
度が損なわれ、正確なねじ山が成形され難いこ
と、更にはねじ加工後にあつても撚りのほぐれが
生じるため、ナツトの螺進退がスムーズになされ
ないこと等があげられていた。

（発明が解決しようとする課題） 本発明は、上述の如き従来の問題にかんがみ、
外周に螺旋状の溝を有するPC鋼撚り線の端部に
正確な転造ねじが形成され、しかもねじ加工後に
おいてもスムーズなナツトの螺進退が損なわれる
ことのないPC鋼撚り線の端部ねじ加工方法の提
供を目的としてものである。

（課題を達成するための手段） 上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を
達成するための本発明のPC鋼撚り線の端部ねじ
加工方法の特徴は、複数の素線を撚り合わせた
PC鋼撚り線の端部外周を段状に削り取つて小径
部を形成し、該小径部に前記PC鋼撚り線の最外
径と同形もしくはこれより小さい外径の金属リン
グを嵌め付けて圧着し、然る後、前記PC鋼撚り
線自体及び金属スリーブの外周を含めて端部外周
に転造ねじ加工を施すことに存する。

なお、金属リングはPC鋼撚り線と略同じ外径
のものを使用し、その外周とPC鋼撚り線の外周
に連続させて転造ねじ加工を施してもよく、ま
た、金属リングはPC鋼撚り線に形成されるねじ
山の谷部の径より小さい外径のものを使用し、
PC鋼撚り線の外周のみに転造ねじ加工を施して
もよい。

更にPC鋼撚り線は、複数の素線を撚り合わせ
加工後に円形ダイスを使用した冷間引抜き加工に
よつて縮径させたものであつてもよい。

（作用） この方法では、PC鋼撚り線の端部を段状に削
つて小径部を形成し、これに金属リングを圧着さ
せることにより、端部の撚り合せのほぐれが防止
されるとともに、転造ねじ加工時における外周か
らの圧力によつても素線間のずれが防止され、外
径の変形が阻止され、精度の高いねじが刻設され
る。また、ねじ加工後も金属リングが圧着された
状態のままナツトの嵌合、螺進退が可能となり、
経時的な撚りのほぐれも完全に防止され、スムー
ズなナツトの螺進退が維持される。

（実施例） 次に本発明の実施例を図面について説明する。

第１図、第２図は本発明においてねじ加工する
PC鋼撚り線の別々の例を示している。第１図に
示すPC鋼撚り線１は、円形断面の複数の素線を
撚り合せたものを示しており、１本の芯素線２の
回りに７本の側素線３，３……を螺旋状に撚り合
わせて構成されており、PC鋼線からなる素線２，
３を撚り合せ加工の後、ブルーイング処理して加
工による残留応力を除いたものである。第２図に
示すPC鋼撚り線１Ａは、第１図に示すPC鋼撚り
線１を、第３図に示すように円形断面のダイス４
内に通して冷間引抜加工を施し、各素線２Ａ，３
Ａ間の螺旋状間〓５を押し潰すとともに、外周の
側素線３Ａ，３Ａ間の螺旋溝６をも押し潰して全
体を中実真円形断面に近づけたものである。

このPC鋼撚り線１又は１Ａを所定の長さに切
断し、その端部外周を、PC鋼撚り線１は第４図
イ，ロに、PC鋼撚り線１Ａは第５図イ，ロに示
すように段状に削り、断面が円形の小径部７又は
７Ａを成形する。この小径部７又は７Ａの成形
は、第６図に示すようにPC鋼撚り線１又は１Ａ
をチヤツク８にて固定し、その先端外周にフライ
スカツタもしくはグラインダー等の回転工具９を
円運動させて削り出す。この他、旋盤を使用して
もよい。

次いで小径部７又は７Ａの外周に鋼製リング１
０を嵌め合せ外周より加締めて圧着させる。この
ように圧着される鋼製リング１０は、圧着後に第
７図に示すようにPC鋼撚り線１又は１Ａの最大
外径と略同径となしてもよく、第８図に示すよう
に後述するねじ溝部の最小径より小さいものを使
用してもよい。

このようにして鋼製リング１０を圧着させた
後、その鋼製リング１０部分の外周を含むPC鋼
撚り線１又は１Ａの端部に、第９図に示すように
転造ロール１１により転造ねじ加工を施す。

これによつて第７図に示すように鋼製リング１
０の外径がPC鋼撚り線１又は１Ａの外径に近い
ものは、第１０図に示すように両者の外面に連続
した転造ねじ１２が成形され、また第８図に示す
ように鋼製リング１０の外径が小さいものは、第
１１図に示すようにPC鋼撚り線１又は１Ａの外
周のみにねじ１２が成形される。

（発明の効果） 上述したように本発明のPC鋼撚り線端部のね
じ加工方法は、PC鋼撚り線の端部に小径部を成
形し、その小径部に金属リングを圧着した状態で
その外周をも含めて転造ねじ加工を施すようにし
たことにより転造中における加圧によつても素線
相互間の撚りにずれが生じたり、全体の真円度が
損なわれたりすることがなく、正確なねじが形成
され、また圧着されたリングはねじの転造後もそ
のまま圧着を維持した状態でナツトの嵌合が可能
であるため、経時的に撚りがほぐれてねじが変形
することがなくなり、ナツトのスムーズな螺進退
が維持されることとなり、これにつてPC鋼撚り
線のナツト定着が可能になり、PC鋼棒と同様な
簡単な装置で信頼度の高い定着が得られるここと
なつたものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すものである。第１
図、第２図は本発明によりねじ加工を施すそれぞ
れ別々のPC鋼撚り線の断面図、第３図は冷間引
抜加工状態を示示す断面図、第４図イ，ロは第１
図に第５図イ，ロは第２図にそれぞれ示すPC鋼
撚り線に小径部を成形した側面図及び正面図、第
６図は小径部成形工程を示す側面図、第７図、第
８図は鋼製リングを圧着した別々の例を示す断面
図、第９図は転造工程の正面図、第１０、第１１
図は別々のねじ成形後のPC鋼撚り線の側面図で
ある。 １，１Ａ……PC鋼撚り線、２，２Ａ……芯素
線、３，３Ａ……側素線、４……ダイス、５……
間〓、６……螺旋溝、７，７Ａ……小径部、８…
…チヤツク、９……回転工具、１０……鋼製リン
グ、１１……転造ロール。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 複数の素線を撚り合わせたPC鋼撚り線の端
   部外周を段状に削り取つて小径部を形成し、該小
   径部に前記PC鋼撚り線の最外径より小さい外径
   の金属リングを嵌め付けて圧着し、然る後、前記
   PC鋼撚り線自体の外周を含めて端部外周に転造
   ねじ加工を施すことを特徴としてなるPC鋼撚り
   線端部のねじ加工方法。 ２ 金属リングはPC鋼撚り線と略同じ外径のも
   のを使用し、その外周とPC鋼撚り線自体の外周
   に連続させて転造ねじ加工を施す請求項１に記載
   のPC鋼撚り線端部のねじ加工方法。 ３ 金属リングはPC鋼撚り線自体の外周に形成
   されるねじ山の谷部の径より小さい外径のものを
   使用し、PC鋼撚り線自体の外周のみに転造ねじ
   加工を施すPC鋼撚り線端部のねじ加工方法。 ４ PC鋼撚り線は、複数の素線を撚り合わせ加
   工後に円形ダイスを使用した冷間引抜き加工によ
   つて縮径させたものである請求項１、２もしくは
   ３に記載のPC鋼撚り線端部のねじ加工方法。