JPH0440983B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は高圧下で生育している微生物を、そ
の圧力を保持したままの状態で単離し、さらに前
培養を行う装置に関するものである。

従来の技術 微生物は古くから酒、味噌、醤油等のような発
酵製品に用いられ、また、物質の腐敗にも密接に
関係しており、人類が生きていくうえで欠かせな
い存在である。これらの微生物は大気圧下で生育
しているのみならず、海中や地中、鉱床中または
原油層や温泉のような高温、高圧条件下や酸性、
アルカリ性の溶液中や極端な貧栄養状態において
も生育できるものがある。これらの微生物はその
生育環境に応じてそれぞれ特徴的な性質を有して
いる。例えば海中、特に深海に生息する微生物は
陸上あるいは海洋層に生育する微生物とは発生学
的にも遺伝学的にも異なつているといわれ、また
深海微生物の世代時間が長いことから、進化の遅
いこと、したがつて生命起源時の様相をとどめて
いる微生物が生息しているとも言われている。こ
のため、海中、特に深海に生息する生物のうちで
細菌やウイルスのような微生物、いわゆる深海微
生物を採取し、単離し、培養し、それらの持つ特
性を明らかにすることは、学問的に大きな興味の
ある課題であり、かつ特殊な生理活性物質を産生
することが予想されるために、医学薬学的にさら
に工業的に大いに役立つものと注目され、期待さ
れている。

ところで、深海の環境は水深が10ｍ増すごとに
約１気圧分の水圧が付加されるために、水深1000
ｍでは100気圧、日本海溝のような12000ｍ級の海
溝部では1200気圧という大きな水圧が常時微生物
に付加されている。また、このような深海部には
北氷洋や南氷洋からの冷たい海流が潜り込んでき
て０℃近辺の温度になつている所もあれば、海底
の火山活動に伴つて生ずる熱水鉱床のように最高
250℃の水温に達しているところもあり、海洋環
境は温度、圧力ともに非常にバラエテイーに富ん
でいる。

このような水圧、水温等の現場の条件を保持し
たまま、深海に生育している微生物を採取し、保
存し、単離し、培養する装置はこれまで余り開発
されておらず、例えば、単に深海で採取した深海
水を大気圧に戻し、これに適当な栄養塩を添加し
て調製した培地にガス圧や水圧を付加して培養
し、再び大気圧にまで降圧しそこで観察する方法
および装置が一般的に知られている。

発明が解決しようとする問題点 しかし、上記の方法は、小型のオートクレーブ
のような圧力容器と増圧装置があれば容易に実験
が行うことが可能であるが、高圧から大気圧に、
またはその逆に大気圧から高圧に圧力を変化させ
る操作を含んでいるため、深海に生育している微
生物が圧力の増減によつて変異したり、死滅する
おそれがあり、そのために本当の意味での深海微
生物の探索とはいえず、このため高圧の条件を保
持したまま、複数種の微生物の培養実験を行える
装置として、近年、数個の固体培地を有するプレ
ートコンベヤ状のものが提案されているが、この
ものは戻り側において、培地の天地が逆になるこ
とから、培地の一部が脱落して容器内部や他の培
地を汚染する欠点やプレートコンベア状状のベル
トの回転がスムースにいかない等の問題点があつ
た。

問題点を解決するための手段 このためには、高圧条件下で生育している微生
物を一定圧力に保持したまま圧力容器に注入し
て、圧力容器内の培地に配分し、しかもこれらの
配分が外部から容易に行うことができる装置があ
ればよいわけである。

この発明は上記の点に着目して開発したもので
ある。

すなわち、この発明は、上下に分割可能とした
厚肉密閉型の容器全体内に、回転自在のシヤーレ
載置台及び試験管受け孔をそれぞれ周縁に沿つて
数個配設した円板状の回転テーブルを外部から回
動及び上下動可能に設けるとともに、回転テーブ
ルの下方には磁力を介して上記シヤーレ載置台の
１つと接続する外部から回動可能の回転子、また
上方には上端が別に外部に設けた高圧で試料を保
持する試料分注器に連なる微生物含有液注入用パ
イプ、通電加熱しうる白金耳ならびに外部から操
作可能とした微生物転写用のレプリカ板を各設
け、さらに容器主体には適所に内部観察窓、高圧
ガス導入管、温度調節用ジヤケツト又はヒーター
並びに各種の検知機構などを付設してなる、密閉
容器外部に接続されかつ微生物を高圧状態で保持
する試料分注器から該容器内部への微生物の移
送、該容器内部での微生物の培養、移植、該容器
内部から外部への微生物の回収を、微生物を高圧
状態に保持したまま行う装置を提供するものであ
る。

実施例 次にこの発明の実施例を図面について説明する
と、第１図において、１は容器主体であつて、厚
肉かつ上下に分割可能の圧力円筒状容器として作
られ、さらに外周面すそ部を加熱流体を封入した
温度調節用ジヤケツト又はヒーター２で囲んで形
成されている。

上記容器主体１内には円板状の回転テーブル３
が中心を垂直軸に支持して水平に設けられ、一端
を容器主体１上面に現わす回動ハンドル４とした
軸を介して外部から回転し、かつ上下動すること
ができるようになつている。その上面には第２図
に明らかなように周縁に近く、数個（図において
は６個）の円板状のシヤーレ載置台５…が中心を
軸支して各回転可能に配設され、またこれらシヤ
ーレ載置台５…の間には円形孔である試験管受け
孔６…が各シヤーレに対して数個ないし十数個
（図では合計６個）設けられている。なおシヤー
レ載置台５…は、永久磁石を内蔵した耐熱性材料
で作られ、容器主体１底面に設けられた永久磁石
製の回転子７の直上に位置させた場合、回転子７
の回転に応じて随伴回転できるようになつてい
る。

さらに、上記回転子７の上方かつ回転テーブル
３の周縁に近い上方に当る位置にパイプ８が垂下
されており、このパイプ８は、回転テーブル３上
のシヤーレ５′…および試験管６′…への試料の注
入とシヤーレ５′…および試験管６′…から内容物
を排出するためのものであつて、上端を別に設け
た試料分注器９に接続して使用される。この試料
分注器９は、海中から採取した試料である微生物
含有液をその圧力下で吸入し、そのまま封入し、
任意の場所に持ち運びできる容器であつて、液圧
調整器１０により一定圧力に保たれたシリンダー
内に昇降ピストンを嵌挿したポンプ１１により内
容物を分注し、吸入が行われるようになつてい
る。このため、容器本体中の試料を吸入し、また
は容器本体へ注入することもできる。また上記パ
イプ８の下端近くには、通電加熱により、滅菌消
毒され、シヤーレ５′…に微生物を含む試料を塗
沫するための白金耳１２が容器主体１外部に設け
た操作つまみ１３を介して進退、かつ左右に旋回
可能に設けられている。同じく、回転テーブル３
の上方にはシヤーレ５′…上に増殖した微生物を
転写して他のシヤーレ上にその一部を移動させる
べき円板状のレプリカ板１４が、容器主体１外部
に設けた操作つまみ１５を介して上下かつ左右に
旋回可能に設けられている。

容器主体１内には、これら部材のほかに、外部
から回転可能の撹拌翼１６、微生物の増殖モニタ
ー用の電極１７、圧力センサー１８、温度センサ
ー１９が設けられ、それぞれ外部に設けた記録計
および温度制御器２０に接続され、またガス調圧
器２１を介して高圧ガスボンベに連なる高圧ガス
導入管２２ならびに減圧弁２３を介して減圧器２
４に連なる高圧ガス排出管２５が開口している。
そして容器主体１の上面および側面には厚いガラ
スを嵌装した内部観察窓２６が付設され、さらに
容器主体１下面には前記回転子７の軸下端に接続
してこれを外部から回動させるための操作ハンド
ル係合端子２７が設ける、また前記温度調節用ジ
ヤケツトまたはヒーター２には温度調節器２８が
接続されている。

作用・効果 上記装置は、次のようにして使用される。すな
わち容器主体１を上下に分解して、回転テーブル
３上に寒天培地や固体培地が入つているシヤーレ
５′…および液体培地が入つている試験管６′…を
載置したのち、容器主体１を一体に組み立てる。
次いで高圧ガス導入管２２により酸化エチレン等
を含むガスを導入して容器主体１の内部を滅菌
し、当該ガスを置換後、高圧ガスを供給して内部
を所定の圧力ならびに温度調節用ジヤケツトまた
はヒーター２を介して所定の温度に設定するとと
もに、予めパイプ８の上端に接続した前記の予め
海中で採取し、かつその状態に保持された試料が
封入されている試料分注器９と内部を連通する。
そして、回動ハンドル４を介して回転テーブル３
を回動し、所要のシヤーレ５′…、あるいは試験
管６′…をパイプ８の直下に位置させたのち、ポ
ンプ１１を駆動させて試料である微生物含有液を
その内部に注入するとともに、外部から回転子７
を回動して、その直上のシヤーレ載置台５…を回
動させ、微生物含有液がシヤーレ上面所要位置に
散布されるようにする。

シヤーレから試験管にその内容物を移動させる
ためには、まず回転ハンドル４を用いて回転テー
ブル３を上昇させ、予め加熱滅菌した白金耳１２
の先端をシヤーレ５′…の微生物を含む試料に当
接させてこれを採取し、次いで回転ハンドル４を
用いて回転テーブル３を降下させ、さらに試料の
移動先の試験管６′…の位置する場所まで回転さ
せ、操作つまみ１３を進退および左右旋回させ
て、白金耳１２の先端に採取した試料を試験管の
内部に挿入する。

試験管６′…からシヤーレ５′…にその内容物を
移動させるためには、まず回転ハンドル４を用い
て回転テーブル３を上昇させ、予め加熱滅菌した
白金耳１２の先端を試験管中の微生物を含む試料
に接触させてこれを採取し、次いで回転ハンドル
４を用いて回転テーブル３を下降させ、さらに試
料の移動先のシヤーレ５′…の位置する場所まで
回転させ、操作つまみ１３を進退および左右旋回
させて、白金耳１２の先端に採取した試料をシヤ
ーレの上面に付着させる。

試験管から他の試験管にその内容物を移動また
は分配させる際には白金耳１２の代りに試料分注
器９とパイプ８を用いる他は上述方法と同じ操作
を行うことにより、その内容物を移動または分配
することができる。また容器外に取り出すことが
できる。

シヤーレ５′…上に増殖した微生物は、操作つ
まみ１５を介しレプリカ板１４を下降当接させて
レプリカ板１４に転写して、これを他のシヤーレ
５′に移動させることができる。

この発明は以上説明したように、採取された試
料を採取時の環境のまま、培養することができ、
さらに培養は、試験管６′…ならびに各自転可能
に配設されたシヤーレ５′…を配設した回転テー
ブル３を介して増殖観察用の内部観察窓２６から
目視しながら容易に行うことができるから極めて
効率的である。なお、この増殖観察には上記内部
観察窓２６のほかに光フアイバー取付孔等を設け
ておくと便利である。

【図面の簡単な説明】

図面は、この発明の実施例を示し、第１図は縦
断面図、第２図は回転テーブル部分の説明斜面図
である。 １…容器主体、２…温度調節用ジヤケツトまた
はヒーター、３…回転テーブル、５…シヤーレ載
置台、６…試験管受け孔、７…回転子、８…パイ
プ、９…試料分注器、１１…ポンプ、１２…白金
耳、１４…レプリカ板、１７…増殖モニター用の
電極、１８…圧力センサー、１９…温度センサ
ー、２２…高圧ガス導入管、２５…高圧ガス排出
管、２６…内部観察窓。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 上下に分割可能とした厚肉密閉型の容器全体
   内に、回転自在のシヤーレ載置台及び試験管受け
   孔をそれぞれ周縁に沿つて数個配設した円板状の
   回転テーブルを外部から回動及び上下動可能に設
   けるとともに、回転テーブルの下方には磁力を介
   して上記シヤーレ載置台の１つと接続する外部か
   ら回動可能の回転子、また上方には上端が別に外
   部に設けた高圧で試料を保持する試料分注器に連
   なる微生物含有液注入用パイプ、通電加熱しうる
   白金耳ならびに外部から操作可能とした微生物転
   写用のレプリカ板を各設け、さらに容器主体には
   適所に内部観察窓、高圧ガス導入管、温度調節用
   ジヤケツト又はヒーター並びに各種の検知機構な
   どを付設してなる、密閉容器外部に接続されかつ
   微生物を高圧状態で保持する試料分注器から該容
   器内部への微生物の移送、該容器内部での微生物
   の培養、移植、該容器内部から外部への微生物の
   回収を、微生物を高圧状態に保持したまま行う装
   置。