JPH0433083B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本発明は、耐シロアリ性電線被覆材料の改良、
詳しくは、長い年月に亙つて非常に強い殺蟻力を
発揮し、シロアリによる被覆電線の食害を恒久的
に防止できる画期的な新材料に関するものであ
る。 〔従前の出願発明、および改善すべき問題点〕 フエニトロチオン、ホキシム、クロルピリホ
ス、アセフエート、プロチオホス、サイアノホス
の如き有機燐系化合物、有機酸金属塩と共に塩化
ビニル樹脂中に分散混入して電線被覆材料とする
と、驚くほど長期に亙つて強い防蟻作用を発揮す
ることは、本発明の試験研究によつて解明され、
同材料については「耐白蟻性電線被覆材料の製造
方法」として本発明者自身が既に特許出願をして
いる（特願昭56−122748号）。 ところが、上記した先の提案にあつては、樹脂
成形時の熱履歴による殺虫成分の揮散量が大きく
薬剤ロスによるランニングコストの増大に加え、
労働安全と環境衛生の保持のため設備費負担も過
大となる難点があつた。また、先に提案した発明
では、塩化ビニル樹脂を素材としている関係上、
これを用いた被覆電線は海岸線沿いなどのごとき
塩分や化学変化を受け易い環境の地域では品質劣
化が激しく耐久性改善に対する要望も強かつた。 そこで、本発明者は、化学的に安定なポリエチ
レン樹脂の使用を試みたのであるが、有機リン系
化合物を長期的に効力が持続するような形態で均
一に混入できる方法もなく、これまた実用化する
には至らなかつた次第である。 〔本発明の着眼点、および課題解決の手段〕 本発明は、塩化ビニル樹脂を対象として有機燐
系化合物を用いる先の提案に上記の如き問題があ
つたことに鑑みて為されたものであつて、その解
決のキーポイントとして、シロアリに効力を有す
る殺虫剤を成形熱の履歴によつて破壊されること
のない素材にてマイクロカプセル化して封入し、
このような耐熱性マイクロカプセル殻体で殺虫剤
を被覆ガードした状態で成形素材中に分散混入す
るという方式を採用することによつて、製造時の
成分揮散という不経済要因を除去し、併せて殺虫
剤をそのまゝ混入した場合よりも効力持続性の高
い電線被覆材料を実現したのである。 即ち、本発明によれば、シロアリに対して有効
な殺虫剤を封入せるマイクロカプセルが、合成樹
脂素材中に分散混入されて成り、かつ、当該マイ
クロカプセルの殻体が前記合成樹脂素材よりも融
点が高く成形温度の履歴によつて破壊されない耐
熱性素材で形成されて成る耐シロアリ性電線被覆
材料が提供される。 本発明について更に注釈するならば、上記にお
いてシロアリに有効な殺虫剤としては、フエニト
ロチオン、ホキシム、クロルピリホス、アセフエ
ート、プロチオホス、サイアノホスの如き有機燐
系化合物、および１−Naphthyl Ｎ−
MethylcabamateやMTMC剤、MIPC剤、
BPMC剤、およびBPC剤のごときカーバメイト
系化合物など周知のシロアリ防除剤を採択でき
る。 しかして、本発明において最も特徴的なこと
は、マイクロカプセルの殻体を組成すべき素材と
して高融点材料を選択し、このような耐熱性マイ
クロカプセル殻体で殺虫剤を被覆ガードすること
で成形熱によるシロアリ防除の薬効成分のベーパ
ーを制御しつゝ合成樹脂素材中に分散混入して電
線被覆材料とした点に存する。 換言すると、本発明は、シロアリ防除剤を封入
した耐熱性マイクロカプセルを採択したことによ
つて、従来この種の技術において不可避的であつ
た有効成分の揮散（vapor）制御を可能にし得た
のであり、 また従来利用が困難であつたポリエチレン樹脂も
耐シロアリ性電線被覆材料としての用途も拓き得
たのである。ちなみに、耐熱性マイクロカプセル
の形成材料としては、電線被覆材料を組成する合
成樹脂材料（例えば、ポリエチレンなどのポリオ
レフイン系合成樹脂など周知の合成樹脂材料）よ
りも高融点の合成樹脂やセラミツクのごとき無機
質素材を採択することができ、コアセルベーシヨ
ン法等の周知方法によつてシロアリ防除剤が封入
される。なお、この場合、作製されるマイクロカ
プセルのサイズは平均粒径にして約40〜50μ程度
が好ましく、そうすると被覆電線の表面が荒れる
惧れがない。 次に、本発明において採択される合成樹脂素材
としては、ポリエチレン樹脂、EVA（エチレン−
酢酸ビニル共重合体樹脂）、塩化ビニル樹脂、ナ
イロン樹脂などの従来電線被覆材料に用いられる
合成樹脂材料は云うに及ばず、柔軟性に富んだ合
成ゴムを採択可能である。しかして、これら素材
の中にシロアリ防除剤を封入した上記耐熱性マイ
クロカプセルを分散混入する場合には、例えばマ
スターバツチ法（master batch method）の如
き従来周知のニーデイング法を適用できる。 こうして得た合成樹脂被覆材料で金属線外周を
被覆せしめれば理想的な耐シロアリ性被覆電線が
得られることになる。 〔実施例および作用効果〕 次に、本発明電線被覆材料の作用効果を実施例
によつて更に詳細に説明する。 実施例 Ｏ，Ｏ−Dimethyl−Ｏ−（３−methyl−４−
nitrophenyl）thiophosphateを、界面重合法によ
りポリウレタンのカプセル殻（多価イソシアナー
トと多価アミンを組み合わせ、これを水とオイル
の界面で重合させて形成する）で被覆して平均粒
径50μの耐熱性マイクロカプセル殺虫剤を得、こ
のカプセル化殺虫剤をマスターバツチ法でポリエ
チレン樹脂の中に4w％になるよう均一に分散混
入させた後、この樹脂を成形温度（金型温度）
140〜180℃に加熱してワイヤカバーリング押出機
のクロスヘツドダイへ裸電線と共に圧送させ、芯
線部の径が２mm、層厚２mmの被覆電線を製造し
た。 かくして得られた被覆電線を、５cm長に定寸に
切り揃えて、直径10cm、深さ７cmの円筒形容器の
中に石膏を敷いたものゝ上へ５×５cmの筏状に並
べて、其処へ“イエシロアリ”の職蟻150匹、兵
蟻15匹を入れ、室温28±１℃、湿度95％に保持し
てシロアリの死滅数を観測したところ、次のよう
な試験結果が得られた。

【表】 なお、本実施例の電線被覆材料自体がシロアリ
に齧られた形跡も全くなかつた。 実施例 １−Naphthyl Ｎ−Methylcarbamateを、界
面重合法によりポリウレタンのカプセル殻（多価
イソシアナートと多価アミンを組み合わせ、これ
を水とオイルの界面で重合されて形成する）で被
覆して平均粒径40μの耐熱性マイクロカプセル殺
虫剤を得、このカプセル化殺虫剤をマスターバツ
チ法によりポリエチレン樹脂の中に4w％になる
よう均一に分散混入させた後、この樹脂を成形温
度（金型温度）140〜180℃に加熱してワイヤカバ
ーリング押出機のクロスヘツドダイへ裸電線と共
に圧送させ、芯線部の径が２mm、層厚２mmの被覆
電線を製造した。こうして得た被覆電線を、５cm
長の寸法に切り揃えて、直径10cm、深さ７cmの円
筒形容器の中に石膏を敷き、その上へ５×５cmの
筏状に並べ、其処へ“イエシロアリ”の職蟻150
匹、兵蟻15匹を入れ、室温28±１℃、湿度95％に
保持してシロアリの死滅数を観測したところ、次
のような試験結果が得られた。

【表】 なお、本実施例の電線被覆材料自体がシロア
リに齧られた形跡も全くなかつた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ シロアリに対して有効な殺虫剤を封入せるマ
   イクロカプセルが、合成樹脂素材中に分散混入さ
   れて成り、かつ、当該マイクロカプセルの殻体が
   前記合成樹脂素材よりも融点が高く成形温度の履
   歴によつて破壊されない耐熱性素材で形成されて
   あることを特徴とした耐シロアリ性電線被覆材
   料。 ２ 殺虫剤がカーバメイト系化合物である請求項
   １記載の、耐シロアリ性電線被覆材料。 ３ 殺虫剤が、有機燐系化合物である請求項１記
   載の、耐シロアリ性電線被覆材料。 ４ 殺虫剤をマイクロカプセル化せる素材が、高
   融点合成樹脂にて組成されている請求項１〜３の
   何れか一つに記載の、耐シロアリ性電線被覆材
   料。 ５ 殺虫剤をマイクロカプセル化せる素材が無機
   物質にて組成されている請求項１〜３の何れか一
   つに記載の、耐シロアリ性電線被覆材料。 ６ 合成樹脂がポリエチレン樹脂である請求項１
   〜５の何れか一つに記載の、耐シロアリ性電線被
   覆材料。 ７ 合成樹脂が塩化ビニル樹脂である請求項１〜
   ５の何れか一つに記載の、耐シロアリ性電線被覆
   材料。