JPH037384Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、構造的強度にすぐれた真空脱ガス処
理装置用環流管に関するものである。

溶鋼の真空脱ガス処理装置は、最近の鋼製品の
高級化指向から、その設置基数は増加の一途をた
どつている。代表的な機種としてRH式とDH式
がある。第１図は、従来のRH式真空脱ガス装置
の下部断面であり、真空槽Ａに、溶鋼を真空槽Ａ
に対して吸引−排出するため、環流管Ｂを介して
浸漬管Ｃが取付けられている。

環流管Ｂは、鉄皮１内に不定形耐火物２を介し
て定形耐火物３が内張りされている。浸漬管Ｃは
損傷が進すとフランジ４により取外し、新しいも
のと取換えられるようになつているが、環流管Ｂ
は真空槽Ａと一体的に接続しているため、内張り
耐火物の寿命は浸漬管Ｃに比べてより大きいこと
が要求される。

環流管Ｂに内張りされる定形耐火物３は、この
耐火物３を支持するために、鉄皮１内周に突設し
た受金５に対応して下端外周に切込みが形成され
ているが、操業時には熱応力の集中等でこの切込
みを起点として必ずといつてよいほどキレツが発
生する。６の波線は、一般的なキレツ発生状況を
示す。環流管Ｂと浸漬管Ｃとの接合部にはモルタ
ルが介在されており、モルタルが溶鋼熱や溶鋼・
スラグの浸透によつて融着し、浸漬管Ｃを交換の
ために取外した際、定形耐火物３のキレツから
下、すなわち受金５から下方がハクリする。そこ
で随時、ハクリした個所を不定形耐火物で補修し
ているが、煩雑であり、しかも補修に要する時間
で真空脱ガス装置の稼動率低下をきたす。また、
不定形耐火物は材質的に耐食性・熱間強度に劣る
ことはいなめず、根本的な解決策とはいえない。

本考案は上記の如き欠点のない環流管を提供す
るものである。その要旨とするところは、鉄皮内
に不定形耐火物を介して定形耐火物を内張りした
環流管において、前記定形耐火物を上下複数層に
分割し、最下層の定形耐火物の背面をほぼ垂直に
すると共に、上層の定形耐火物の背面を前記最下
層の定形耐火物の背面より外方に突出させたこと
を特徴とする真空脱ガス装置用環流管である。

上層の定形耐火物の背面を最下層の定形耐火物
の背面より外方に突出させることにより、上層の
定形耐火物は不定形耐火物により係止される。

第２図は、本考案実施例の環流管の拡大断面を
示し、鉄皮１内に不定形耐火物２を介して定形耐
火物３が内張りされている。定形耐火物３は上下
２層に分割し、最下層の定形耐火物３ｂの背面を
垂直にし、上層の定形耐火物３ａの背面を最下層
の定形耐火物３ｂの背面より外方に突出させた例
である。

不定形耐火物２は鋳込み、スタンプなど任意の
方法で施工されるが、定形耐火物３を鉄皮１内に
位置させた後、定形耐火物３と鉄皮１との間に鋳
込み充填するのが容易で、しかも充填性にすぐれ
る。その材質は、例えばアルミナ質、粘土質、マ
グネシア質、マグネシア−クロム質、アルミナ−
マグネシア質などのキヤスタブル耐火物またはモ
ルタルなどとする。

定形耐火物３の製造法は、加圧または鋳込み成
形後、乾燥し、必要にすりさらに焼成する。その
材質は、マグネシア−クロム質、アルミナ−クロ
ム質、アルミナ質、マグネシア質、マグネシア−
カーボン質、マグネシア−カーボン−炭化珪素
質、アルミナ−カーボン質、アルミナ−炭化珪素
−カーボン質、マグネシア−アルミナ質、マグネ
シア−ドロマイト質、ジルコニア質、ジルコニア
−カーボン質、スピネル質、スピネル−カーボン
質、スピネル−カーボン−炭化珪素質などであ
る。

以上からなる環流管の施工法の一例を第２図に
基いて示すと、鉄皮１内に定形耐火物３を嵌入
し、同時に、定形耐火物３の下端を仮支持する。
図示していないが、この仮支持は円盤またはドー
ナツ状の受板をフランズ４に押当てることで容易
に行える。

鉄皮１と定形耐火物３との間隙に上方から不定
形耐火物２を投入し、充填して定形耐火物３を鉄
皮１内に同心円的に固定する。不定形耐火物２が
キヤスタブル耐火物の場合は、棒状バイブレータ
ーまたはつきがため棒等で密充填化を図るのが好
ましい。図示していないが、定形耐火物３上に、
羽口耐火物としてさらに定形耐火物を積付けても
よい。

不定形耐火物２は、ある程度の強度を示す材質
であれば上方の横方向に充填された個所と一体的
であることで、吊下げによつて支持される。鉄皮
１内周の全体に突起を設けてもよい。

本実施例ではこのように構成したことにより、
定形耐火物３のうち上層の定形耐火物３ａが不定
形耐火物２に埋入し、係止して支持される。下層
の定形耐火物３ｂは、上層の定形耐火物３ａの重
量がかからないので、不定形耐火物２との迫りに
よる摩擦と目地モルタルの接着力で十分支持され
る。

第３図ないし第４図は他の実施例を示す図であ
り、要点である定形耐火物の形状を示し、他は省
略した。

第３図に示す実施例は、上層の定形耐火物３ａ
の背面を突出させると共に、その下方をテーパー
状にしたものである。上層の定形耐火物３ａは背
面の突出に加え、テーパー状の切込み部が不定形
耐火物２に支持される。

第４図の実施例は、定形耐火物３を上下３層に
分割した場合を示し、上層の定形耐火物３ａの２
層とも背面を突出させてもよいが、ここでは上層
の定形耐火物３ａのうち下方のみを突出させたも
のである。

この他、定形耐火物３を４層以上に分割した場
合でも、以上のように上層の定形耐火物３ａの背
面を突出させれば同様に支持効果が得られる。ま
た、高さ600mm、厚さ200mmで、上下２層に分割
し、第２図のように上層背面を突出させた焼成マ
グネシア−クロム質定形耐火物を鉄皮内に嵌入
し、同時に鉄皮下端のフランジに受板を押当て、
定形耐火物を仮支持した。次いで鉄皮と定形耐火
物との間にアルミナ質キヤスタブル耐火物が硬化
すると前記の受板を取外し、RH真空脱ガス装置
用環流管を実際に施工した。

施工中に定形耐火物のズリ落ちは全く認められ
なかつた。また、真空脱ガス装置操業後は、定形
耐火物下端面のハクリがなく、浸漬管を４回取換
えるまでの命が得られた。

第３図ないし第４図に示す実施例タイプの環流
管もこれと同様に良好な結果が得られた。これに
対し、下端に切込みを入れた定形耐火物を鉄皮内
周に突設した受金で支持した従来の環流管は、浸
漬管を最初に取換える際、既に定形耐火物の下端
がハクリし、補修をくり返して使用したが、浸漬
管を３回取換えるまでの寿命しか得られなかつ
た。

以上はRH式の真空脱ガス装置用環流管を主体
に説明したが、同様にしてDH式にも適応でき
る。

本考案によると、環流管の寿命延長により、真
空脱ガス装置の稼稼動率を大巾に向上できる。ま
た、内張りの最下段の定形耐火物が受金で支持さ
れていないから、内張り補修の際に環流管の下方
開口部から最下段の定形耐火物を容易に交換でき
るという効果もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のRH真空脱ガス装置の下部断
面、第２図は本考案実施例の環流管、第３図ない
し第４図は他の本考案実施例の定形耐火物を示
す。 Ａ……真空槽、Ｂ……環流管、Ｃ……浸漬管、
１……鉄皮、２……不定形耐火物、３……定形耐
火物、３ａ……上層の定形耐火物、３ｂ……最下
層の定形耐火物、４……フランジ、５……受金。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 鉄皮内に不定形耐火物を介して定形耐火物を内
   張りした環流管において、前記定形耐火物を上下
   複数層に分割し、最下層の定形耐火物の背面をほ
   ぼ垂直にすると共に、上層の定形耐火物の背面を
   前記最下層の定形耐火物の背面より外方に突出さ
   せたことを特徴とする真空脱ガス装置用環流管。