JPH0343894Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は車両用座席に配設されるシートベルト
アンカー装置に関する。

背景技術とその問題点 通常自動車等の車両用座席においては、衝突事
故時等に乗員が前方に投げ出されて身体、特に頭
部に損傷を受けることのないように、乗員を座席
に拘束するためのシートベルトが配設されてい
る。

従来この種のシートベルトにおいては、シート
ベルトの両端が車体側に固定されるため、シート
ベルトを装着した状態で座席を前後にスライド調
整する場合には、これに対応することができず、
その都度シートベルトの長さを調整し直すことに
よる使用上の不便さを有しており、これを解決す
るために例えば「実開昭54−13125号公報」に開
示されるような座席の移動に伴つて移動可能とな
されたシートベルト装置が提案されていた。

即ちこのシートベルト装置は、座席の移動方向
に沿つてワイヤを配してその一端部を車体に固定
すると共に、他端部を座席の側部にスプリングを
介して止着し、また座席の側部にはシートベルト
のバツクルが取付けられるバツクル支持部材が取
付けられ、この支持部材とワイヤとの間に、シー
トベルトに所定の負荷が作用するとワイヤに対し
て係止される歯付部材を有するロツク装置を配
し、通常の乗員拘束負荷作用時には座席の移動と
共にシートベルトが移動し、衝突等によつてシー
トベルトに過大負荷が作用した場合にはシートベ
ルト支持部材を介してロツク装置が作動されてシ
ートベルトはワイヤに対し移動不能にロツク状態
となり、これによつてシートベルトに加わる負荷
をワイヤを介して車体側に伝達する如くなされて
いる。

しかしこのシートベルト装置によると、ロツク
装置はワイヤに対し歯付部材が圧着してロツクさ
れるように構成されているので、シートベルトに
一定の負荷が加わらないと歯付部材はワイヤに対
し噛合しロツク状態とならず、このため緊急ロツ
ク時における応答が遅く、また歯付部材がワイヤ
に噛合してロツク状態となつてもワイヤはその他
端がスプリングを介して座席側に取付られている
ためシートベルトより加わる負荷によつて伸びて
しまい、これによつてバツクル支持部材が負荷方
向に移動してしまうので、正常な緊急ロツクが行
なわれずに乗員は座席から離れる状態となつてし
まい、しかもシートベルトより加わる負荷は座席
側に直接伝達されてしまうので座席に車体側から
剥離する方向の力が作用し、座席が変形したり、
あるいはスライド装置が変形するおそれがある
等、数々の不都合があつた。

考案の目的 本考案は斯る点に鑑みてなされたもので、シー
トベルトのロツク作動が軽負荷時と過大負荷時の
二段階的に行なわれるシートベルトアンカー装置
を提供し、応答性と信頼性の向上を図つたもので
ある。

考案の概要 本考案は上述の目的を達成するため、所要間隔
で多数の係合部が形成され、座席の移動方向に沿
つて車体側に取付けられる案内棒状部材と、この
案内棒状部材の挿通部を有し、座席に前後方向に
回動可能に軸着され、かつシートベルトを連結す
るバツクルが支持されるとブラケツトと、このブ
ラケツトに案内棒状部材の係合部と対応して設け
られた係合部材と、バツクルに係合され、このバ
ツクルの動きに連動して回動されて案内棒状部材
をその係合部が係合部材と係合する方向に押圧す
るアーム部材とにより構成し、シートベルトの無
負荷状態では座席の移動に伴つてバツクルが移動
されると共に、シートベルトに軽負荷が作用した
場合にはアーム部材によつて案内棒状部材が押圧
されてその係合部がブラケツトの係合部材に係合
して初期ロツクが行なわれ、さらにシートベルト
に過大負荷が作用した場合にはこの負荷によつて
ブラケツト全体が回動されて、この回動力で案内
棒状部材が塑性変形されることによつてより強力
な二次ロツクが行なわれるようにしたものであ
る。

実施例 以下、図面を参照しながら本考案の実施例を説
明する。

図において１は車両用の座席を示し、この座席
１のシートクツシヨン２はその下面側において車
体の床面３側に対しスライドレール４を介して取
り付けられており、このスライドレール４によつ
て座席１は前後方向に移動調整可能となされてい
る。

そしてこの座席１のシートクツシヨン２の一側
面部に沿つて棒状部材５が配され、その一端部５
ａにおいて床面３側に支持されている。この棒状
部材５は、塑性変形可能な材質にて長板状に形成
され、その下縁部には所要間隔で複数の係合溝６
が形成されており、通常時には床面３に対し略平
行に維持され、所定の負荷が加わると上下方向に
回動可能となるように軸ピン７によつて床面３の
補強部３ａに枢着してある。

また、座席１のシートクツシヨン２の一側面部
には棒状部材５が挿通されるブラケツト８が軸ピ
ン９によつて前後方向に回動可能に枢着されてい
る。このブラケツト８は内外のブラケツト８ａ，
８ｂをリベツト１０によつて接合して形成されて
おり、その下半部には棒状部材５が挿通される挿
通部１１が前後方向に形成され、また後部上端に
おいてはシートベルト１２の一端が連結されるバ
ツクル１３が、前後方向に回動可能で、かつその
長手方向に所定量摺動可能に支持されている。即
ちこのバツクル１３の連結アーム１３ａはその端
部に長手方向に長孔１４が穿設されており、この
長孔１４において係合ピン１５によつてブラケツ
ト８に係合連結されている。

そしてさらにブラケツト８には、その下端部
に、挿通部１１に挿通される棒状部材５の係合溝
６に対応して係合部材１６がリベツト１７によつ
て取付けられており、また挿通部１１の上方にお
いてはアーム部材１８が、その中央部において一
端部１８ａが棒状部材５の上縁部に対応するよう
に軸ピン１９によつて上下方向に回動可能に軸支
されている。そしてこのアーム部材１８の他端部
側端末部には鉤形係合片１８′が形成され、また
これと対応して上述したバツクル１３の連結アー
ム１３ａの端末部にも鉤形係合片１３′が形成さ
れており、これら両係合片１３′，１８′が互いに
係合されてこれによつてアーム部材１８はバツク
ル１３の動きに連動して回動する如くなされてい
る。

このように構成される本例のシートベルトアン
カー装置は、乗員を通常の着座姿勢で拘束してい
る状態、即ちシートベルト１２に何ら負荷が加わ
つていない状態においては、第３図の如くバツク
ル１３は連結アーム１３ａの長孔１４の上端部に
おいて係合ピン１５と係合している状態であり、
このためアーム部材１８の一端部１８ａは棒状部
材５に対し離隔され、また棒状部材５の係合溝６
とブラケツト８の係合部材１６とは離隔した状態
にあり、これによつてブラケツト８は棒状部材５
に対して摺動可能な状態にある。そして座席１を
スライドレール４によつて前後方向に移動させる
とこれに伴つてブラケツト８が棒状部材５に沿つ
て摺動され、このため座席１を所望の調整位置に
何らの支障なく移動させることができる（第１図
二点鎖線参照）。

そして急停車あるいは軽度の衝突事故等によつ
て乗員が前方へ傾動され、シートベルト１２に斜
め前方の負荷が作用すると、第４図に示す如くバ
ツクル１３が負荷方向（矢印ａ方向）へ、長孔１
４の下端部が係合ピン１５に衝合するまで引張ら
れ、このためバツクル１３の連結アーム１３ａと
係合状態にあるアーム部材１８が軸ピン１９を中
心として矢印ｂ方向に回動され、その一端部１８
ａが棒状部材５の上縁部に当接してこれを押圧
し、これによつて棒状部材５は押し下げられてそ
の係合溝６がブラケツト８の係合部材１６と係合
され、ブラケツト８は棒状部材５に対し摺動不能
にロツクされて、このロツクによりシートベルト
１２より加わる負荷はバツクル１３からアーム部
材１８を介して棒状部材５に伝達されることにな
る。

また、第３図の通常の状態から乗員が前方へ投
げ出されるように傾動されてバツクル１３に前方
向に回動する負荷が作用した場合には、第５図に
示す如くバツクル１３は長孔１４の上端部におい
て係合ピン１５と係合している状態を保ちながら
係合ピン１５を中心として前方向（矢印ｃ方向）
に回動され、この回動によつて連結アーム１３ａ
の鉤形係合片１３′はその先端部がアーム部材１
８の鉤形係合片１８′の先端部と対応してこれを
離隔する方向へ押し出す状態となり、これによつ
てアーム部材１８が軸ピン１９を中心として矢印
ｂ方向に回動され、上述した第４図と同様にして
ブラケツト８が棒状部材５に対し摺動不能にロツ
クされる。

そしてさらに強度の衝突事故等によつてシート
ベルト１２に過大な負荷が作用し、バツクル１３
が矢印ａ方向に強く引張られた場合には、第６図
に示すように上述の第４図のロツク状態からさら
にブラケツト８が軸ピン９を中心として負荷方向
へ回動される状態となり、その強大な負荷による
ブラケツト８の回動力によつて棒状部材５が折曲
されるように塑性変形し、これによつてブラケツ
ト８は棒状部材５に対してより強力にロツクさ
れ、このロツクによつてシートベルト１２より加
わる負荷はバツクル１３からブラケツト８全体を
介して棒状部材５に伝達されることになる。

このように本例のシートベルトアンカー装置
は、シートベルト１２に作用する負荷によるバツ
クル１３の引張り及び回動の両方を感知して作動
する第１の初期ロツク状態（第４図及び第５図）
と、過大負荷の作用時に作動する第２のロツク状
態（第６図）が段階的に設定される二段ロツク構
造に構成されていることになるので、シートベル
ト１２に負荷が作用した際には迅速に応答して緊
急ロツクが行なわれ、しかもこの緊急ロツク状態
においては、棒状部材５は床面３側に剛結した状
態で支持されているので伸びたりすることはな
く、このためブラケツト８が確実にロツクされて
乗員は安全に座席１に拘束保持されることにな
り、またシートベルトより加わる負荷は座席１に
直接加わらずに棒状部材５を介して床面３側に伝
達されるため座席１が変形したりスライドレール
４が変形剥離したりするようなことはない。

考案の効果 以上の如く本考案のシートベルトアンカー装置
によれば、シートベルトのロツク作動が軽負荷の
作用時と過大負荷の作用時の二段階的に行なわれ
るので、シートベルトに作用する負荷に対して迅
速に応答して緊急ロツクが行なわれ、しかもこの
緊急ロツク状態においては、ブラケツトは床面側
に支持された棒状部材に確実にロツクされるので
乗員は安全に座席に拘束保持され、またシートベ
ルトより加わる負荷は座席側には殆ど加わること
なく確実に棒状部材を介して車体側に伝達される
ため座席及びスライドレールは変形等のおそれが
なく乗員は座席に対しさらに安全に拘束保持され
る等、実用的な効果は大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案装置を適用した車両用座席の側
面図、第２図は本考案装置の分解斜視図、第３図
〜第６図は本考案装置の動作の説明に供する一部
省略した側面図である。 図中、１は座席、５は棒状部材、６は係合部と
しての係合溝、８はブラケツト、１１は挿通部、
１２はシートベルト、１３はバツクル、１６は係
合部材、１８はアーム部材である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 所要間隔で多数の係合歯が形成され座席の移動
   方向に沿つて車体側へ取付けられる案内棒状部材
   と、 該案内棒状部材が移動可能な挿通部を有し、上
   記座席に回動可能に軸着され、かつ上記案内棒状
   部材の係合歯と対応する係合部が固設されたブラ
   ケツトと、 該ブラケツトに略上下方向に移動可能に枢着さ
   れ、シートベルトを連結するバツクルと、 一端が上記バツクルに係合され、他端が上記案
   内棒状部材に、その係合歯の形成縁面部と相反す
   る縁面部側において当接するアーム部材と を有して成り、 上記シートベルトに軽負荷が作用した場合には
   上記アーム部材が上記バツクルを介して移動され
   て上記案内棒状部材を、その係合歯が上記ブラケ
   ツトの上記係合部に係合されるように偏倚させて
   初期ロツクが行われるようになされ、上記シート
   ベルトに過大負荷が作用した場合には上記バツク
   ルを介して上記ブラケツト全体が、上記係合部が
   上記案内棒状部材の係合歯に係合されたまま回動
   されて、この回動力により上記案内棒状部材が塑
   性変形されることによつて二次ロツクが行われる
   ようにしたことを特徴とするシートベルトアンカ
   ー装置。