JPH0331066B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はゴルフクラブヘツドに関する。

一般に、クラブヘツドの持つべき重量は、クラ
ブの振り易さ、打撃フイーリング、ボールの飛び
等との関係から、比較的狭い範囲の最適値近傍の
値に設定されている。

ところで従来のアイアン型のクラブヘツドは軟
鉄又はステンレス鋼等で製作されている。クラブ
ヘツドの重心（スイートスポツト）より離れた位
置でボールを打撃してもボールの打ち出し方向の
ずれを少なく、且つボール初速の低下が少ない等
のクラブヘツドが具備すべき要件を充足するため
には、上述の軟鉄やステンレス鋼等のクラブヘツ
ドではそのフエース部分を薄くし、ヒール、トウ
及びソール部分にその薄くした分の重量をまわし
て、ヘツドの慣性モーメントを増加させる工夫が
なされてきた。また、ヘツドを水平方向に長く垂
直方向に短くして慣性モーメントの増加と重心の
低下を図つて、ボールが正確に打撃されかつ上が
りやすいように工夫される場合もあつた。

しかし、前者の（フエース部分を薄くする）場
合には、ヘツドの強度、デザイン、打撃時のフイ
ーリングの制約があつて、慣性モーメントの増加
は10〜20％どまりである。また、後者の（水平方
向に細長状とする）場合には、ボールを打ち難く
なるという問題があつた。

本発明は従来のこのような問題点を解決して、
ヘツドの重量を最適値近傍に保つたままで、打撃
用フエース面の面積を従来よりも増大してボール
を打ち易くし、ヘツドの慣性モーメントを増加し
てスイートスポツトを外したミスシヨツト時のボ
ールの打ち出し方向のずれを小さくすると共にボ
ール打ち出し初速の低下を少なくし、さらにヘツ
ドの強度を十分に大きく保ち、打撃時のフイーリ
ングも向上することを目的とする。

以下、図示の実施例に基づき本発明を詳説す
る。

第１図と第２図は夫々別のアイアン型のゴルフ
クラブヘツド１を例示したもので、このヘツド１
のほぼ全体はアルミニウム乃至アルミニウム系合
金に、炭化ケイ素ウイスカーを２〜80体積％、好
ましくは５〜30％だけ、含有させた比重の小さな
強化複合材にて構成する。この部分を強化複合材
部２と呼ぶこととする。該強化複合材部２の比重
は従来の鉄鋼材のものの約１／2.6〜１／2.9であ
る。

３はソール、４はヒール、５はトウ、及び６は
ボール打撃用フエース面であるが、第１図ではヘ
ツド１の重心Ａを間に、ヒール４側とトウ５側に
夫々１個づつの重量集中体７を埋込む。重心Ａか
ら十分に離れた距離に重量集中体７，７が夫々強
化複合材部２内に埋込まれるから、重心Ａ廻りの
慣性モーメントは著しく増加出来る。この重量集
中体７の材質としては、鉛、タングステン、ある
いはそれらの合金等を用い（詳細図示省略した
が）上記フエース面６と反対の裏面側から強化複
合材部２に盲孔を形成してこれに挿嵌して埋込
む。勿論、強化複合材部を後述のように成型する
ときに同時に重量集中体７を埋込むも好ましいこ
とである。

また、第２図の実施例では、さらにソール３側
に別体の重量集中体７が埋設されている。あるい
は仮想線で示すようにシヤフト連結部８の位置に
重量集中体７を埋設するも、重心Ａからの距離が
大きくとることができて好ましい。

しかして、第３図と第４図に於て、実線は本発
明に係るヘツド１であり、破線は従来のヘツド３
１を示し、上述のように強化複合材部２の比重は
従来の鉄鋼素材に比較して十分に小さいため、ボ
ールを打ち易いように従来のフエース面３６より
も十分に大きな面積のフエース面６を自由に設計
可能となつている。

即ち、第３図と第４図に示すように、本発明に
係るヘツド１の水平方向長さＬは、従来のヘツド
３１の水平方向長さよりも、10〜30mm長く設定
する。即ち、 Ｌ＝ｌ＋（10〜30） （単位：mm） とする。従来は、ｌ＝90〜100mmであるから、Ｌ
＝100〜130mmとなる。特に、Ｌ＝110〜130mmとす
れば、従来の全てのアイアン型でゴルフクラブヘ
ツドと比較して極めて大きな感じとなつて、初心
者にも使い易い。

また、本発明に係るヘツド１の垂直方向長さＨ
は、従来のヘツド３１の垂直方向長さｈよりも、
０〜10mm長く設定する。即ち、 Ｈ＝ｈ＋（０〜10） （単位：mm） また、本発明に係るヘツド１の重心高さＧは、
従来のヘツド３１の重心高さｇと略等しく設定す
るのが望ましいが、第２図のようにソール３側に
重量集中体７を入れたり、若しくは第１図の重量
集中体７の位置をソール３側に移動して設けるこ
とによつて、従来の重心高さｇよりも小にするこ
とも容易である。

このように、比重の小さな強化複合材部２は、
ヘツドの重量及び慣性モーメントを考慮せずに、
ヘツドの形状と大きさを自由自在に決定できる部
位であり、ヘツドのデザインの自由度は著しく増
大する。他方、この強化複合材部２内の重量集中
体７は第１図・第２図のようにその大きさと個数
と埋込位置は極めて自由に選択出来るから、ヘツ
ド全体の重心Ａ廻りの慣性モーメントを十分に増
加出来、かつヘツド全体の重量を最適値に決定出
来るのである。また、重量集中体７をソール３側
に寄せて配置すると、前記重心高さＧが減少出来
て、ボールを高くあげることが出来る利点があ
る。

なお、炭化ケイ素（SiC）ウイスカーは、転位
などの欠陥のない針状の完全結晶で、高強度、高
弾性率、軽量といつたクラブヘツドとして優れた
材料特性を有している。一般に、アスペクト比は
50〜300の細長い針状であり、この炭化ケイ素ウ
イスカーをまず所定の形状に固め、その中に溶融
させたマトリツクス（アルミニウムやアルミニウ
ム系合金、マグネシウムやその合金等の軽金属、
又は、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロ
ン樹脂等の種々の合成樹脂）を真空注入して、複
合材を製造する。この軽金属の複合材はそのまま
（鋳造品）でクラブヘツド素材とすることができ
るが、その後、鍜造時の塑性加工を施すも好まし
い。また、合成樹脂をマトリツクスとして用いた
ときには、射出成型や圧縮成型等により容易に製
造出来る。

次に、具体的な特性の測定結果について第５図
と第６図と第７図と共に説明する。なお、炭化ケ
イ素ウイスカーとしては直径が0.2〜0.5ミクロ
ン、長さ50〜200ミクロンのものを使用して、ア
ルミニウム母材（AC4C）に20％（体積）含有さ
せた強化複合材部２を有するヘツドにて測定し
た。

第５図は、横軸にアイアン型クラブの番手をと
り、縦軸に慣性モーメントをとつた図である。前
述の第１図に於て、重心Ａから各重量集中体７ま
での距離ａ＝35mm、各重量集中体７の重量を51ｇ
として、２個の102ｇを付加した場合に相当し、
従来のクラブヘツドよりも本発明のクラブヘツド
の慣性モーメントが大幅に増加している。このよ
うに本発明によれば、30〜60％の慣性モーメント
増加も容易であることが確認された。また、第３
図で既に述べたように水平方長さＬが大きく設定
されるに伴つて、重量集中体７，７の位置も一層
重心Ａから離れた位置とすることが可能となつ
て、第５図以上の慣性モーメントの増加も実現可
能である。

第６図は横軸にボールを打撃するインパクト位
置をとり、フエース面のスイートスポツト位置を
零（０）とし、トウ側をプラス、ヒール側をマイ
ナスとして表示する。また縦軸はボールの初速を
示す。この図で明らかな如く、従来のクラブヘツ
ドではスイートスポツトを外してボールを打つと
急激にボール初速が低下するのに対し、本発明に
係る実施品、即ち、第１図の構造として従来品の
重量を同一に保つたまま慣性モーメントを増大さ
せたクラブヘツドでは、ミスシヨツトしてもボー
ル初速の低下が緩やかである。

第７図は横軸にインパクト位置をとり（第６図
と同様）、縦軸にはスイートスポツトを外したミ
スシヨツトの場合のボール打ち出し方向のずれを
左右振れ角として示している。本発明の実施品と
しては、従来の重量を同一としたままで第１図の
構造にて慣性モーメントを増加させたクラブヘツ
ドを用いて測定した。この第７図より慣性モーメ
ントの大きい本発明に係るクラブヘツドではミス
シヨツト時のボールの左右方向の振れ角が小さく
て済み、方向コントロール性が著しく向上出来る
ことが明らかとなつた。

〔発明の効果〕

本発明は、上述のように、軽金属又は合成樹脂
に炭化ケイ素ウイスカーを含有させた比重の小さ
な強化複合材部２と、該強化複合材部２内に埋込
まれると共に重心Ａから離れた位置に配設される
比重の大きな重量集中体７とから構成されたアイ
アン型のゴルフクラブヘツドであつて、上記強化
複合材部２中の上記炭化ケイ素ウイスカーの含有
率を、５〜30体積％に設定し、上記重心Ａを通る
水平方向長さＬを、110〜130mmに設定したから、
次のような著大な効果を発揮する。

従来のアイアン型ゴルフクラブヘツドの水平
方向長さ寸法はほぼ90〜100mmの範囲にあつた
のに比較し、本発明のものは、この水平方向長
さＬが110〜130mmと著しく大きく、初心者にも
ボールを打ち易い。

炭化ケイ素ウイスカーの含有率が５〜30体積
％の強化複合材部２は、比重が小さくかつ強度
も十分にあり、クラブヘツドとしては最適の材
料特性を示す。しかも、重量集中体７を強固に
一体化出来る。

炭化ケイ素ウイスカーの含有率５〜30体積％
の強化複合材部２に重力集中体７を配設すると
同時に、水平方向長さＬを110〜130mmに設定し
た構成の相乗効果として、（第５図に例示した
如く）著しいヘツド慣性モーメントの増加を図
り得た。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す正面図、第２
図は他の実施例の正面図、第３図は本発明と従来
品との寸法の比較をした説明図、第４図は同比較
のための断面図、第５図は従来品と本発明実施品
とを同一重量として製作した場合の各クラブヘツ
ドの慣性モーメントの比較図、第６図はスイート
スポツトを外してボールを打撃した場合の従来品
と本発明実施品に於けるボール初速の比較図、第
７図はスイートスポツトを外してボールを打撃し
た場合の従来品と本発明実施品に於けるボールの
左右振れ角の比較図である。 Ａ…重心、２…強化複合材部、７…重量集中
体。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 軽金属又は合成樹脂に炭化ケイ素ウイスカー
   を含有させた比重の小さな強化複合材部２と、該
   強化複合材部２内に埋込まれると共に重心Ａから
   離れた位置に配設される比重の大きな重量集中体
   ７とから構成されたアイアン型のゴルフクラブヘ
   ツドであつて、 上記強化複合材部２中の上記炭化ケイ素ウイス
   カーの含有率を、５〜30体積％に設定し、 上記重心Ａを通る水平方向長さＬを、110〜130
   mmに設定したことを特徴とするゴルフクラブヘツ
   ド。