JPH032996B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、紙の製造方法に関し、さらに詳細に
は、高品質の多層紙を、経済的かつ効率的に製造
する新規かつ改良された方法に関する。

共通のシエル内にある複数の積み重ねたヘツド
ボツクスから実質的に成る多層ヘツドボツクスの
スライス開口から、製紙原料の多重ジエツトを成
形ワイヤ上の排出することにより、多層紙を製造
することが従来提案されている。複数の層を同時
に形成する多層ヘツドボツクスは、ワルトホツフ
氏（Waldhof）のドイツ特許第899896号に初めて
提案された。この特許では、原料多重ジエツトの
別々のジエツトの速度は相互に等しくして、原料
がスライス開口から排出される際に速度差を生
じ、それによつて原料が相互に混合するのを防止
する必要がある、と考えられていた。それ以来、
この条件は層純度をよくするために必要なものと
考えられてきた。

ベツク氏（Beck）のカナダ特許第886308号に
は多層ヘツドボツクスが記載されている。この多
層ヘツドボツクスは、上方壁および下方壁ならび
に分かれた溝を形成する中間の間仕切りを備えて
おり、装置の方向に隔置されたスライス開口か
ら、固体のまたは吸引張出ロールに異なる原料ま
たは異なる速度をもつ原料を供給する。複数の層
が連続的に重ねられるこのような装置は、装置の
スピードが低く押さえられ、また薄葉紙のような
軽質紙の製造には適当でない。

近年、原料ジエツトがスライス開口を出て行く
際に、原料ジエツト相互の間に保持された、いわ
ゆる“エアウエツジ”を用いることにより、原料
ジエツトがスライス開口を出た後、そのスライス
開口から成形ゾーンの方向に短い区間で原料ジエ
ツトがいつしよにならないようにすることによつ
て極めて優れた層純度が達成されている。このよ
うな“エアウエツジ”技術を利用する極めて効率
のよい方法ならびに装置は、イー・グンナ・ステ
ンベルグ氏（E.Gunnar Stenberg）のカナダ特許
第1107111号（日本特願昭54−48911号、特開昭54
−142307号）および第1134658号に記載されてい
る。

驚くべきことに、多層ヘツドボツクス、特に上
記特許の記載された“エアウエツジ”技術を用い
た多層ヘツドボツクスによつて供給される、ロー
ル成形機のプレーン成形ロールに最も近いジエツ
トの速度を、隣接する排出ジエツトの速度よりわ
ずかに高く保持すると、優れた層純度と地合いを
もつ多層紙が得られることがわかつた。

上流側端部で自由に動くように枢支された硬い
セパレータばねを有するヘツドボツクスにおい
て、複数の溝と溝との間に必要な速度差は、溝の
幾何学的形状または原料の流れを適切にコントロ
ールするか、あるいはヘツドボツクスの外壁の下
流側端部を調整してスライス開口をコントロール
するか、または複数の溝の原料の流れを適切に調
整することによつて得られる。セパレータ羽が、
堅く固定されているが、上流側の支点の周りに位
置が調整できるように設けられていると、ジエツ
トの望ましい速度関係はさらに羽の位置を適正に
調節することによつても達成することができる。

好ましい実施態様では、ヘツドボツクスはその
上流端部に堅いセパレータ羽が固定して取付けら
れており、かつジエツトの望ましい速度関係はヘ
ツドボツクスの上方壁または下方壁を調整して、
スライス開口の全体を調節するか、各溝の流量を
コントロールするか、溝の幾何学的形状を適切に
調節するかあるいはこれらを組合せることによつ
て達成される。

従つて本発明は、２つの有孔成形布の間で収束
するスロートに紙の原料を供給し、脱水し、布支
持部材の凸面を有するプレーン面に沿つて前記成
形布を、その間にある前記原料と共に走行させて
紙を製造する方法において、前記スロート中に、
横方向に同一の広がりをもつ少なくとも２種類の
紙原料のシート状ジエツトを、隔置して重ね合せ
た状態で、平行にまたはわずかに収束する方向に
排出し、紙原料のジエツトが前記スロートの狭い
端部に向かつて走行する際に、ジエツトの隣接す
る面が相互に次第に近づき会合して層ジエツトを
形成するようにし、凸面を有するプレーン面に最
も近いジエツトの速度を、隣接する排出ジエツト
の速度より高く設定することを特徴とする紙の製
造法を目的とするものである。

本発明は、添付図面を参照し、以下に詳細に説
明する２、３の代表的な実施態様からよりよく理
解することができる。

第１図には、前記ステンベルグ氏（Stenberg）
のカナダ特許第1134658号に記載されている種類
の“エアウエツジ”多層ヘツドボツクス１０が示
されている。このヘツドボツクス１０は、成形面
１２に製紙原料の複数のジエツト１１を排出す
る。ジエツト１１は、排出ロール１６とプレーン
成形ロール１７の上をそれぞれ走行する外側エン
ドレスワイヤ１４および内側エンドレスワイヤ１
５またはその他の有孔成形布によつて規定される
スロート１３の中に通常の方法で排出される。望
ましい場合にはプレーン成形ロール１７の代わり
に、曲がつた成形シユーまたは凸形プレーン面を
有する同様のワイヤ支持部材を用いることができ
る。

ヘツドボツクス１０は、複数の固定した間仕切
りすなわちセパレータ羽２１および２２によつ
て、複数の原料流動溝１８，１９および２０に分
割されている。セパレータ羽２１および２２は、
ヘツドボツクスに固定された上流側端部２３およ
び２４と、ヘツドボツクスのスライス開口２７を
通過して短い距離伸びる上流側端部２５および２
６を備えている。空気またはその他の適当なガス
をダクト２８および２９ならびに通路３０および
３１から、羽２１および２２の中にそれぞれ形成
されている通路３２および３３の上流側端部に供
給し、空気またはガスがスライス開口を出て行く
際に、複数のジエツトとジエツトの間に“エアウ
エツジ”１１ａを確立し、これを保持する（第２
図）。このことは前記ステンベルグ氏のカナダ特
許第1134658号に記載されている。

管の組３４，３５，３６からなる管の列から、
別々の製紙原料を溝１８，１９および２０に供給
する。このように供給された複数の原料は、所望
により別々のフアンポンプ（示されていない）に
よつて加圧状態に保持される。また上方スライス
リツプ３７を上下したスライス開口を調節するた
めの一般的な手段（示されていない）が、上記ス
ライスリツプ３７に設けられている。

望ましくは、間仕切り部材２１と２２の下流側
端部に、プラスチツクのような適当な材料でつく
つたフレキシブルフオイル３８および３９を設け
る。このフオイル３８と３９は間仕切り２１およ
び２２と同じ幅とすることができる。フオイル３
８と３９は、装置の方向に十分な距離伸びて、エ
アウエツジの下流側端部でジエツトがいつしよに
なつた後、ジエツトを短い距離だけ分離させてお
くことができる。これらのフオイルはエアウエツ
ジの下流側ジエツトの平面に対して垂直な速度成
分を零にする。

本発明を実施する場合、プレーン成形ロール１
７に隣接する溝１８の原料の速度を、少なくとも
１つの隣接するジエツトの原料速度よりわずかに
高く（例えば１〜10％の範囲。しかし少なくとも
15ｍ／分以上）保持し、かつプレーン成形ロール
１７から遠い方のジエツトの速度が、該任意のジ
エツトに隣接し且つプレーン成形ロール１７に近
い方のジエツトの速度以下であれば、優れた層純
度と地合いをもつ多層紙が作られることがわかつ
た。

典型的な比較運転において、始動前に三重の４
mmスライス開口を与えるように固定したセパレー
タ羽２１および２２を用いて、第１図に示すよう
なヘツドボツクスの溝１８に、黄色に染色した広
葉樹繊維原料を、溝１９と２０に、青く染色した
針葉樹繊維原料を流すことにより、二層紙を製造
した。始動後３つの溝のためのフアンポンプのス
ピードを、４mmスライス開口の３倍比となるよう
に調節した。次にスライス開口におけるジエツト
の速度を測定したところ、溝１８，１９および２
０からの排出速度はそれぞれ952ｍ／分、962ｍ／
分および954ｍ／分であつた。

この装置を800ｍ／分の速度で運転した。この
ようにして得られた紙を複数の層に裂いて繊維を
染色し、各層を顕微鏡で観察し、その中に含まれ
ている広葉樹繊維と針葉樹繊維の数を数えること
により層の純度を調べた。広葉樹層と針葉樹層の
表面層純度はそれぞれ90％および96％であつた。

次に、溝１８に広葉樹原料を供給するフアンポ
ンプのスピードを高くし、溝１８から排出される
ジエツトの速度を約980ｍ／分にした。そのとき
溝１９および２０から排出されるジエツトの速度
はそれぞれ959ｍ／分および949ｍ／分であつた。
装置を同様に800ｍ／分の速度で運転して紙を製
造した。このようにして得られた紙の表面層純度
を同様に測定したところ広葉樹層および針葉樹層
についてそれぞれ94％および98％であつた。これ
は比較運転の場合よりかなり高い。染色した原料
から製造した試料を検査すると、層純度および地
合いが改良されていることがすぐにわかつた。

ジエツトの速度差は、溝１８，１９および２０
に複数の製紙原料を供給するポンプのスピードを
変えることにより、効率よくつくり出すことがで
きる。しかし速度差は公知の方法で、上方スライ
スリツプ３７を上下してスライス開口を調節する
ことによつてつくり出すこともできる。またヘツ
ドボツクス流動溝の幾何学的形状を調節すること
により速度差をつくり出すこともできる。これは
第３図に示すように床または天井を内向きまたは
外向きに動かし、１つ以上の溝の収束性を変える
ことができるようにヘツドボツクスを構成するこ
とにより達成される。

第３図ではヘツドボツクス１０に仮り天井部分
４０を設けてある。この仮り天井部分４０は、下
流側端部４１で固定されているが、その他方の端
部４２は自由に動くようになつている。仮り天井
部分４０は浅い室４３の覆いと形成しており、浅
い室４３は制御された供給源（示されていない）
から導管４４を通して適当な加圧流体を受入れる
ようになつている。一般的な封止手段（示されて
いない）が仮り天井部分４０の上流側端部４２に
設けられ、仮り天井部分４０を動かすことができ
ると共に、溝１８から室４３に原料が漏れたり、
あるいは室４３から溝１８に流体が漏れたりする
ことがないようになつている。

溝１８の原料流動圧に対して室４３の流体圧力
をコントロールすることにより、仮り天井部分４
０の上流側端部の向きを反らせ、溝の収束性、従
つてその内部の原料の速度を変えることができ
る。これによつて隣接する羽２１の両側に圧力差
が生じ、これが羽２１の下流側端部を動かし、こ
のようにして異なつたジエツト速度がつくり出さ
れると共に、その流量は一定に保される。

このように本発明は、優れた層純度と地合いを
有する多層紙を製造する、新規かつ極めて効率の
よい方法を提供するものである。このような極め
て望ましい特性によつて、紙の品質を実質的に低
下させることなく、低価格の繊維を一層大量に使
用することができ、従つて紙を低価格で製造する
ことができる。

本発明は上記特定の実施態様に限定されるもの
ではなく、特許請求の範囲に含まれるすべての変
形を包含するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の方法を実施するのに適した多
層ヘツドボツクスの概略図である。第２図は、第
１図に示すヘツドボツクスの排出端部の拡大図で
あり、原料ジエツトとその間にあるエアウエツジ
を示している。第３図は、溝の収束性を変えるこ
とにより複数の溝の速度差をつくり出すことがで
きるような多層ヘツドボツクスを概略的に示して
いる。 図面番号の説明、１０……ヘツドボツクス、１
１……原料ジエツト、１２……成形面、１３……
スロート、１４，１５……エンドレスワイヤ、１
６……張出ロール、１７……プレーン成形ロー
ル、１８，１９，２０……原料流動溝、２１，２
２……セパレータ羽、２７……スライス開口、２
８，２９……ダクト、３７……スライスリツプ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ２つの有孔形成フアブリツクの間の収束スロ
   ートに紙原料を供給し、該紙原料を間にして前記
   形成フアブリツクをフアブリツク支持部材の凸状
   に湾曲したプレーン面に沿つて走行させることに
   より前記原料を脱水し且つ形成する紙の製造方法
   において、 前記スロートの中に、横方向に同一の広がりを
   有する、紙原料の少なくとも２つのシート状のジ
   エツトを、重なつた、間隔を隔てた関係で且つ平
   行な方向又はわずかに互いに近づき合う方向に排
   出して、ジエツトが前記スロートの狭い端部に向
   かつて走行するときに、ジエツトの隣接する面が
   次第に互いに近づき合流して層ジエツトを形成
   し、前記凸状に湾曲したプレーン面に最も近いジ
   エツトの速度を、隣接する排出ジエツトの速度よ
   りも高く設定したことを特徴とする紙の製造方
   法。 ２ 凸状に湾曲したプレーン面に最も近いジエツ
   トの速度が、他の排出ジエツトの少なくとも１つ
   の速度よりも、該速度の10％以下で少なくとも15
   ｍ／分だけ高く、かつ前記プレーン面から遠い方
   のジエツトの速度が、該任意のジエツトに隣接し
   且つ前記プレーン面に近い方のジエツトの速度以
   下である特許請求の範囲第１項に記載の紙製造方
   法。 ３ ジエツトをヘツドボツクスのスライス開口部
   を通して排出し、排出ジエツト間の相対速度を、
   前記スライス開口部の少なくとも１つを調節する
   ことによつて設定する特許請求の範囲第２項に記
   載の紙製造方法。 ４ 排出ジエツトを形成する紙原料を、ヘツドボ
   ツクスまたは積み重ねたヘツドボツクスの組立体
   の積み重ねた流れ溝を通してヘツドボツクスのス
   ライスに供給し、排出ジエツト間の相対速度を、
   前記溝の少なくとも１つの幾何学形状を調節する
   ことによつて設定する特許請求の範囲第２項に記
   載の紙製造方法。 ５ 排出ジエツトを形成する紙原料を、ヘツドボ
   ツクスまたは積み重ねたヘツドボツクスの組立体
   の積み重ねた流れ溝を通してヘツドボツクスのス
   ライスに供給し、排出ジエツト間の相対速度を、
   前記溝を通る原料の流れを調節することによつて
   設定する特許請求の範囲第２項に記載の紙製造方
   法。 ６ 多層紙を作るように、排出ジエツトが異なる
   原料で形成されている特許請求の範囲第２項に記
   載の紙製造方法。