【発明の詳細な説明】[Detailed description of the invention]
(産業上の利用分野)
本発明は、コンクリートのアルカリ骨材反応抑
制方法に関するものである。
(従来の技術)
近年、アルカリ骨材反応に起因するコンクリー
ト構造物の初期劣化の事例が数多く報告され、社
会的に注目を集めている。
これまでアルカリ骨材反応を生じる三大要因と
しては、
A 反応性骨材
B コンクリート中のアルカリ
C 水分
が考えられており、従つてアルカリ骨材反応を抑
制する方法に関しても、これら三つの要因のうち
の一つ若しくはそれ以上を除去することが目標と
されてきた。
具体的手段としては、以下のようなものが提案
されている。
a アルカリ反応性骨材の除去
() 各種判定試験若しくはこれまでの実績か
ら、アルアリ骨材反応を生じる危険性のある
骨材を選別して、以後はその骨材をコンクリ
ート用材料として用いない。
b コンクリート中のアルカリ除去
() セメント中のアルカリ濃度(Na2O当量、
対セメント重量比)が0.6%以下の低アルカ
リセメントを用いる。
() フライアツシユ、シリカヒユームなどの
ポゾランをセメントの一部代替として用い
て、コンクリート中のアルカリを3Kg/m3以
下とする。
C 水分の除去
() 外部からの水の浸透を防ぐため、AE剤
を用いるなど密実で高品質のコンクリートを
打設する。
() 同様の目的で、コンクリートの表面に塗
料などにより不透水層を形成する。
(発明が解決しようとする問題点)
しかしながら、上記の各方法には以下のような
問題点がある。
まず、アルカリ反応性骨材の除去に関しては、
骨材を有害性判定試験には専門的な技術と長期間
を要すること、ひとつの岩種の中でも、また1個
所の骨材採取場でも採取する部位によつて、それ
ぞれそのアルカリ反応性が異なることなど問題点
がある。さらに、骨材も有限な資源であり、アル
カリ反応性の疑いのある骨材でもこれを有効に利
用することが望まれる。
低アルカリセメントについては、現在JIS化さ
れつつあるが、コストが割高になることは避けら
れない問題点がある。また、構造物の種類、環境
条件などによつてポゾラン、高炉スラグが利用で
きないケースも考えられる。
最後に、塗料による防水に関しては、コストが
発生すること、大型構造物や擁壁などでは防水処
理することによりかえつて部材内部の水分が閉じ
こめ骨材反応を成長させてしまう恐れがあること
などの問題点がある。
本発明の目的は、骨材の種類やセメントの種類
に影響されずにアルカリ骨材反応を抑制できるコ
ンクリートのアルカリ骨材反応抑制方法を提供す
るとにある。
(問題点を解決するための手段)
上記の目的を達成するための本発明の手段を説
明すると、型枠にコンクリートを打設した後一週
間以内に、該コンクリート中の配合水量のうち30
%〜49%を乾燥養生して蒸発させる初期乾燥を行
つた後、本養生を行うことを特徴とする。
(作用)
このように、型枠にコンクリートを打設した後
一週間以内に、該コンクリート中の配合水量のう
ち30%〜49%を乾燥養生して蒸発させる初期乾燥
を行うと、アルカリ骨材反応を抑制できることを
実験により確認することができた。
(実施例)
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明す
る。第1図は本発明に係るコンクリートのアルカ
リ骨材反応抑制方法のフローチヤート図を示した
ものである。図示のようにステツプ1でコンクリ
ートの打設を行い、ステツプ2でコンクリートの
締め固めを行い、ステツプ3でコンクリートの脱
型を行い、ステツプ4でコンクリートの初期乾燥
を行う。
初期乾燥は、例えばコンクリート製品を乾燥養
生室に入れて製品中の水分をX%蒸発させること
により行う。Xの値については、用いる骨材のア
ルカリ反応性に応じて予備実験により設定する。
初期乾燥は、材令が1週間程度のうちに行う。初
期乾燥後、ステツプ5でコンクリートの本養生を
行う。次に、ステツプ6で併用する。
本発明によるアルカリ骨材反応抑制方法の特徴
は“初期乾燥”の工程にある。コンクリート中の
配合水量のうち、30%程度を脱型後に乾燥養生
(一例;25℃、40%R.H)することにより蒸発さ
せ、後の供用時の骨材反応による膨張を抑制しよ
うとするものである。初期乾燥を行う必要上、適
用対象としては、特にコンクリートもしくはモル
タルの小型プレキヤスト部材が適しているものと
考える。しかし、場所打ちコンクリートについて
もヒーター等で表面を乾燥させるなどの方法で対
応できる可能性がある。
次に、本発明の方法によるアルカリ骨材反応抑
制効果について、実験結果をもとに以下述べる。
骨材反応を生じる骨材としては、ASTMにも
規定されているパイレツクスガラス#7740を用い
た。供試体寸法、骨材粒度などはASTMC227(モ
ルタルバー法)に準じて膨張量測定試験を実施し
た。モルタル供試体1本あたり(V=184.4cm3)
の配合を表−1に示す。
(Industrial Application Field) The present invention relates to a method for suppressing alkaline aggregate reaction in concrete. (Prior Art) In recent years, many cases of early deterioration of concrete structures due to alkaline aggregate reactions have been reported and are attracting social attention. Up until now, the three major factors that cause an alkali aggregate reaction have been considered to be: A, reactive aggregate, B, alkali in concrete, C, and water.Therefore, methods for suppressing an alkali aggregate reaction have been considered to be based on these three factors. The goal has been to eliminate one or more of them. The following specific measures have been proposed. a. Removal of alkali-reactive aggregates () Based on various evaluation tests or past results, select aggregates that are likely to cause alkaline-reactive aggregate reactions, and no longer use those aggregates as concrete materials. b Removal of alkali in concrete () Alkali concentration in cement (Na 2 O equivalent,
Use low-alkali cement with a weight ratio of 0.6% or less. () Use pozzolans such as fly ash and silica hume as a partial substitute for cement to reduce the alkali content in concrete to 3 kg/m 3 or less. C. Removal of water () To prevent water from penetrating from the outside, pour dense, high-quality concrete by using an AE agent, etc. () For the same purpose, an impermeable layer is formed on the surface of concrete using paint, etc. (Problems to be Solved by the Invention) However, each of the above methods has the following problems. First, regarding the removal of alkali-reactive aggregate,
Testing to determine the toxicity of aggregate requires specialized techniques and a long period of time, and the alkali reactivity of the aggregate varies depending on the part of the rock or location where the aggregate is collected. There are other problems. Furthermore, aggregate is also a limited resource, and it is desirable to utilize it effectively even if the aggregate is suspected of being alkali-reactive. Low-alkali cement is currently being standardized by JIS, but there is an unavoidable problem in that it is relatively expensive. Furthermore, there may be cases where pozzolan or blast furnace slag cannot be used depending on the type of structure, environmental conditions, etc. Finally, waterproofing with paint is costly, and waterproofing for large structures and retaining walls may trap moisture inside the components and increase aggregate reaction. There is a problem. An object of the present invention is to provide a method for suppressing an alkali aggregate reaction in concrete, which can suppress an alkali aggregate reaction without being influenced by the type of aggregate or the type of cement. (Means for Solving the Problems) To explain the means of the present invention for achieving the above object, within one week after pouring concrete into the formwork, 30% of the mixed water in the concrete is
The main curing is performed after initial drying in which % to 49% is dry-cured and evaporated. (Function) As described above, if initial drying is performed to dry and evaporate 30% to 49% of the mixed water in the concrete within a week after concrete is poured into the formwork, alkaline aggregate It was confirmed through experiments that the reaction could be suppressed. (Example) Hereinafter, an example of the present invention will be described with reference to the drawings. FIG. 1 shows a flowchart of the method for suppressing alkaline aggregate reaction in concrete according to the present invention. As shown in the figure, concrete is placed in step 1, compacted in step 2, demolded in step 3, and initially dried in step 4. Initial drying is performed, for example, by placing the concrete product in a drying curing chamber and evaporating X% of the moisture in the product. The value of X is determined through preliminary experiments depending on the alkali reactivity of the aggregate used.
Initial drying is done when the wood is about one week old. After initial drying, main curing of the concrete is performed in step 5. Next, in step 6, they are used together. The feature of the method for suppressing alkali aggregate reaction according to the present invention lies in the "initial drying" step. Approximately 30% of the amount of water mixed in concrete is evaporated by dry curing (for example, 25℃, 40% RH) after demolding, in order to suppress expansion due to aggregate reaction during later use. be. Due to the need for initial drying, we believe that small-sized precast members made of concrete or mortar are particularly suitable for application. However, it may be possible to deal with cast-in-place concrete by drying the surface with a heater or the like. Next, the effect of suppressing alkali aggregate reaction by the method of the present invention will be described below based on experimental results. Pyrex glass #7740, which is also specified by ASTM, was used as the aggregate that caused the aggregate reaction. An expansion measurement test was conducted in accordance with ASTMC227 (mortar bar method) for the specimen dimensions, aggregate particle size, etc. Per mortar specimen (V=184.4cm 3 )
The formulation is shown in Table-1.
【表】
セメントノ保有アルカリ量;0.636%(Na2O当
量)
水分減少率(W.L.=脱型後に乾燥により減少
させた水量/供試体の水量)を定義し、表−1の
配合中の水分のうち、W.L.=0〜49%に相当す
る水分を減少させた後、37.8℃、100%R.H.のア
ルカリ骨材反応を生じやすい条件のもとで養生し
た。
実験ケースの一覧を表−2にまとめる。[Table] Amount of alkali retained in the cement; 0.636% (Na 2 O equivalent) The water reduction rate (WL = amount of water reduced by drying after demolding/amount of water in the specimen) is defined, and the amount of water in the mixture in Table 1 is defined. After reducing the moisture equivalent to WL = 0 to 49%, it was cured under conditions of 37.8°C and 100% RH, which tend to cause an alkaline aggregate reaction. Table 2 summarizes the list of experimental cases.
【表】
水中の場合についても実験を実施した。
W.L.=0〜49%のケースの膨張量と材令の関
係を第2図に示す。表−2のように初期乾燥養生
条件が異なつているにもかかわらず、第2図から
明らかなように、水分減少率W.L.が大きくなる
とともに膨張量は小さくなる。特に、W.L.が36
%と49%のケースにおいては、供試体は逆に収縮
しているうえにその値も安定しており、膨張側に
転ずる傾向もない。W.L.が0%のケースでは材
令8週で0.265%と極めて大きい膨張量を示して
いるのに対して、初期乾燥による骨材反応抑制効
果は明らかである。
なお、ASTMC227(モルタルバー法)でアルカ
リ骨材反応を生じる危険性ありと判定されるの
は、材令6ケ月(26週)で0.1%、3ケ月(13週)
で0.05%の膨張量を示したときである。
第2図中、W.L.=49%のケースにおいては、
乾燥後の養生とし80℃、100%R.H.および20℃、
水中の場合という非常に厳しい条件のもとでも実
験を行つたが、やはり膨張は生じなかつた。
最終的な判断には継続的な測定結果が必要であ
るが、今回の実験によるとW.L.を30%程度に設
定することにより、アルカリ骨材反応を抑制でき
ることが判明した。
逆に、使用する骨材のアルカリ反応性の大きさ
にあわせてW.L.を設定することにより、他のケ
ースにも対応できる。
本発明の方法はコンクリート一般に適用できる
が、特に現在でもアルカリ骨材反応による被害事
例の多い縁石ブロツク、コンクリートまくら木、
インターロツキングブロツクなどの小型プレキヤ
スト部材への利用が適しているものと思われる。
(試験結果)
従来の標準的な養生を施した供試体と、これと
同じ配合であつて、本発明の上記実施例による初
期乾燥を施した供試体とを作製し、骨材とセメン
トペースト固形物との境界部分の状況を走査電子
顕微鏡で観察したところ、従来法による供試体で
は上記境界部分に15〜20μの反応生成物が見られ
たが本発明による供試体では反応生成物は見られ
なかつた。
本発明における初期乾燥による骨材反応抑製作
用は次のように考えられる。
(イ) アルカリ骨材反応による反応生成物(膨張劣
化の原因となるもの)の生成はコンクリート打
設から数日間の内部の水分量に大きく影響され
る。初期に乾燥を受けたものは反応生成物の生
成量が少なく、その後、水分を供給しても反応
生成物の発生、進行をみない。
(ロ) 初期乾燥により生じた内部の微小空隙が反応
生成物の膨張を吸収する。
上記(イ)、(ロ)の相乗効果により骨材反応が抑制さ
れると判断されるが、主に(イ)による効果が大きい
と考えられる。
(発明の効果)
以上説明したように本発明に係る初期乾燥を行
うという本発明のコンクリートのアルカリ骨材反
応防止方法によれば、下記のような効果を得るこ
とができる。
(イ) アルカリ骨材反応を生じる危険性のある岩種
でもこれをコンクリート用骨材として用いるこ
とができる。
(ロ) これまでのプレキヤスト部材製作の流れの中
にわずか一工程(乾燥工)を追加するのみでよ
い。
(ハ) 水分減少率W.L.を適切に設定することによ
り、骨材が替わつてそのアルカリ反応性が異る
場合にも対応できる。
(ニ) 1度予備実験を実施して目標水分減少率を満
足する乾燥養生条件を決定しておけば、以後は
機械的に乾燥養生を繰り返すだけでよい。
(ホ) コンクリート中の配合水量のうち30%〜49%
を乾燥養生して蒸発させる初期乾燥を行うだけ
で、以後どのようなアルカリ骨材反応を生じや
すい条件にさらされても(例;37.8℃、100%
R.H.・80℃、100%R.H.・20℃、水中)、骨材
反応抑制効果が持続する。
(ヘ) 初期乾燥養生については水分減少率W.L.の
値が問題となるだけで、水分を減少させるため
の養生条件(温度、湿度)は自由に設定でき
る。[Table] Experiments were also conducted under water.
Figure 2 shows the relationship between the amount of expansion and the age of the material in the case of WL = 0 to 49%. Although the initial drying curing conditions are different as shown in Table 2, as is clear from FIG. 2, the amount of expansion decreases as the moisture reduction rate WL increases. In particular, WL is 36
In the cases of % and 49%, the specimen is not only contracting, but also stable, with no tendency to shift to the expansion side. In the case where WL was 0%, the expansion amount was extremely large at 0.265% at 8 weeks of age, whereas the effect of suppressing aggregate reaction due to initial drying is clear. In addition, according to ASTMC227 (mortar bar method), the risk of causing an alkaline aggregate reaction is determined to be 0.1% at 6 months (26 weeks) and 0.1% at 3 months (13 weeks).
This is when the amount of expansion is 0.05%. In Figure 2, in the case of WL = 49%,
Curing after drying: 80℃, 100%RH and 20℃,
Although experiments were conducted under extremely harsh conditions such as underwater, no expansion occurred. Continuous measurement results are required for final judgment, but this experiment revealed that the alkaline aggregate reaction can be suppressed by setting the WL to around 30%. Conversely, other cases can be handled by setting WL according to the level of alkali reactivity of the aggregate used. Although the method of the present invention can be applied to concrete in general, it is especially applicable to curb blocks, concrete sleepers, and concrete sleepers, which still have many cases of damage caused by alkaline aggregate reactions.
It seems suitable for use in small precast parts such as interlocking blocks. (Test results) A specimen subjected to conventional standard curing and a specimen with the same composition but subjected to initial drying according to the above embodiment of the present invention were prepared. When observing the situation at the boundary with the object using a scanning electron microscope, it was found that a reaction product of 15 to 20 microns was observed at the boundary in the specimen prepared using the conventional method, but no reaction product was observed in the specimen prepared according to the present invention. Nakatsuta. The effect of suppressing aggregate reaction by initial drying in the present invention can be considered as follows. (b) The formation of reaction products (which cause expansion and deterioration) due to alkaline aggregate reactions is greatly influenced by the amount of moisture inside concrete for several days after it is placed. When dried initially, the amount of reaction products produced is small, and even if moisture is supplied thereafter, no reaction products are generated or progress. (b) The internal micropores created by the initial drying absorb the expansion of the reaction product. Although it is judged that the aggregate reaction is suppressed by the synergistic effect of (a) and (b) above, it is thought that the effect of (b) is mainly significant. (Effects of the Invention) As explained above, according to the method for preventing alkaline aggregate reaction in concrete of the present invention, which involves performing initial drying according to the present invention, the following effects can be obtained. (b) Even rock types that have the risk of causing an alkaline aggregate reaction can be used as aggregate for concrete. (b) Only one process (drying process) needs to be added to the existing process of producing precast parts. (c) By appropriately setting the water reduction rate WL, it is possible to cope with cases where the alkali reactivity of the aggregate changes. (d) Once a preliminary experiment is conducted to determine drying conditions that satisfy the target moisture reduction rate, from then on, it is sufficient to simply repeat drying and curing mechanically. (E) 30% to 49% of the amount of water mixed in concrete
By simply drying and curing and evaporating the initial drying process, no matter what conditions are likely to cause alkaline aggregate reactions (e.g. 37.8℃, 100%
RH・80℃, 100%RH・20℃, underwater), the aggregate reaction suppression effect lasts. (f) Regarding initial dry curing, the only problem is the value of the moisture reduction rate WL, and the curing conditions (temperature, humidity) for reducing moisture can be set freely.
【図面の簡単な説明】[Brief explanation of the drawing]
第1図は本発明に係る方法の実施ステツプの一
例を示すフローチヤート図、第2図は初期乾燥に
よる水分減少率に係る材令と膨脹量の関係からな
るアルカリ骨材反応抑制効果の比較図である。
Figure 1 is a flowchart showing an example of the implementation steps of the method according to the present invention, and Figure 2 is a comparison diagram of the effect of suppressing alkali aggregate reaction, which is based on the relationship between the age of the material and the amount of expansion related to the moisture loss rate due to initial drying. It is.