JPH0318716Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、過給機やコンプレツサ等の回転ポン
プに回転羽根として用いられるベーンに関する。

〔従来の技術〕

従来から、第４図に概略構成を示すような回転
ポンプが広く知られている。

同図において、３１はハウジング、３２は該ハ
ウジング３１の内周空間に偏心した状態で内挿さ
れ、回転軸３３によつて回転自在に支持されたロ
ータ、３５ａ，３５ｂ，３５ｃはロータ３２の外
周側を周方向に３分割するごとく等配凹設された
ベーン溝３４ａ，３４ｂ，３４ｃに径方向突没自
在に配設された板状のベーンである。回転軸３３
によつてロータ３２が図中矢印Ｘ方向へ回転する
と、ベーン３５ａ，３５ｂ，３５ｃは遠心力によ
つて外径方向に飛び出し、その先端縁がハウジン
グ３１の内周面に摺接しながら回転する。既述し
たように、ロータ３２がハウジング３１に対して
偏心しているため、この回転に伴ない、ハウジン
グ３１、ロータ３２およびベーン３５ａ，３５
ｂ，３５ｃで区画された作動空間３６ａ，３６
ｂ，３６ｃの容積が繰り返し圧縮変化して、吸入
口３７から吸い込んだ流体を吐出口３８から吐出
させる。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、上記ベーンは、回転時にハウジ
ングの内周面を高速で摺動するため、ことに、気
体を圧送するポンプでは、ベーンが無潤滑状態で
摺動するため、該ベーンの著しい摩耗や高い摺動
熱が発生する等の不具合を生じ、さらには、ハウ
ジング内周面との摺動抵抗によるポンプ効率の低
下も避けられないといつた問題があつた。

本考案は、このような問題に鑑み、ベーンの早
期摩耗や高い摺動熱の発生を防止し、ひいてはベ
ーンを用いた回転ポンプの効率低下を防止する目
的をもつてなされたものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記問題点を解決するため、本考案に係るポン
プ用ベーンは、両端部に、回転ポンプのハウジン
グ側に該ハウジングの内周面と同軸的に形設され
た環状軌道と周方向摺動自在に係合させるピンを
突設し、このピンの基部を、ベーンに埋設された
板状補強部材の内径縁両端部に一体形成した筒状
体に嵌め込んでなるものである。

〔作用〕

前記ピンは、ハウジング側の環状軌道と係合す
ることによつて、回転時における当該ベーンの遠
心力による飛び出しを規制し、当該ベーンをハウ
ジング内周面に対して非接触状態で回転させる作
用を有する。

また、ベーンの回転に伴う遠心力は、前記環状
軌道と係合したピンに曲げ荷重として作用する
が、このピンの基部は、ベーンに埋設された板状
補強部材の内径縁両端部に一体形成された筒状体
に嵌め込まれて強固に固定されており、しかも前
記曲げ荷重は、この筒状体から補強部材の面方向
に作用するので上記遠心力に対してきわめて大き
な強度を有する。

〔実施例〕

以下、本考案ポンプ用ベーンの実施例を第１図
ないし第３図にしたがつて説明する。

まず第１図に示すベーンは、カーボン等の材料
で製せられ、後記する回転ポンプへの組込状態に
おいて外径側となる先端縁１ａがアール状に形成
された板状のベーン１の両端部１ｂ，１ｂの、前
記組込状態において内径側となる部分に偏つた位
置に、それぞれ鉄または非鉄金属等で製せられた
円柱状のピン２を突設したもので、このピン２の
基部２ａは、ベーン１に埋設された鉄またはアル
ミニウム等の非鉄金属からなる板状の補強部材３
の内径縁両端部に一体形成された筒状体３ａに嵌
め込まれている。

このベーン１は第２図および第３図に示すよう
な回転ポンプに組込まれ、流体を圧送する回転羽
根として用いるものである。すなわち５はポンプ
のボデイを構成するフロントハウジング、６は同
じくリアハウジングで、ともに軽量で熱膨張率の
小さいアルミニウム等の非鉄金属で製せられ、互
いに一体的に固着されている。７はハウジング内
周空間８に偏心した状態で内挿された鉄製のロー
タで、ボールベアリング９ａ，９ｂを介して両ハ
ウジング５，６に貫挿されプーリ１０から駆動力
が伝達される回転軸１１に軸着されている。ロー
タ７には該ロータ７の外周側を周方向３分割する
ごとくなるベーン溝１２……が等配凹設されてお
り、既述した本実施例のベーン１は該各ベーン溝
１２にそれぞれ径方向突没（摺動）自在に配設さ
れる。両ハウジング５，６の互いに対向する内側
面５′，６′にそれぞれハウジング内周空間８と同
軸的（フロントハウジング５の内周面５″と同軸
的）に形成された環状凹部１３ａ，１３ｂにはア
ルミニウム等の非鉄金属よりなり環状軌道１５を
有するリテーナリング１４ａ，１４ｂがそれぞれ
ボールベアリング１６ａ，１６ｂを介して回転自
在に嵌挿されている。各ベーン１に突設されたピ
ン２，２は、該各ピン２に外挿され、摺動性およ
び耐摩耗性に優れた樹脂材製のスリーブベアリン
グ１７を介して、それぞれ前記環状軌道１５，１
５に周方向摺動自在に係合するもので、該係合に
より、回転時におけるベーン１の径方向への動き
が規制され、先端縁１ａとフロントハウジング５
の内周面５″との間にわずかなクリアランスを介
在させた状態が維持される。

この回転ポンプにおいて、プーリ１０からの駆
動力により回転軸１１およびロータ７が回転する
と、ベーン１……も回転し、該各ベーン１に突設
されたピン２，２および該ピン２，２に外挿され
たスリーブベアリング１７，１７が環状軌道１
５，１５に沿つて回転する。ハウジング内周面
５″と環状軌道１５は同軸的関係、環状軌道１５
とロータ７は偏心的関係にあるため、前記回転に
伴なつて、ベーン１……はロータ７にベーン溝１
２…をロータ７の径方向に摺動して繰り返し突没
し、また、ハウジング内周空間８であつてベーン
１…で区画された作動空間S₁，S₂，S₃の容積は繰
り返し増減する。すなわち、第３図において作動
空間S₁は回転とともにその容積が拡大して該部分
に向けて開口された吸入口（図示せず）から流体
を吸込み、作動空間S₃は回転とともにその容積が
縮小して該部分に開口された吐出口（図示せず）
へ流体を吐出し、作動空間S₂は吸込んだ流体を前
記吐出口側へ向けて移送している過程にある。

上記作動において、各ベーン１の先端縁１ａ
は、既述したように、フロントハウジング内周面
５″と摺接しないため、摩耗や高熱の発生は起こ
り得ない。また、各ピン２に外挿されたスリーブ
ベアリング１４ａ，１４ｂの環状軌道１５内を遠
心力によつて外径側へ圧接した状態で摺回動を行
なうが、リテーナリング１４ａ，１４ｂはそれぞ
れボールベアリング１６ａ，１６ｂによつて回転
自在な状態にあるため、スリーブベアリング１７
に追随して回転し、スリーブベアリング１７と環
状軌道１５との相対的な摺動速度は小さく、よつ
てこれら環状軌道１５（リテーナリング）１４
ａ，１４ｂ、スリーブベアリング１７等の摩耗は
極小に抑えられる。

ここで、ベーン１の回転に伴う遠心力F₁は、
ピン２に反作用F₂による曲げ荷重として作用す
るが、このピン２の基部２ａは、ベーン１に埋設
された補強部材３に一体形成された筒状体３ａに
嵌め込まれているので、前記曲げ荷重に対して大
きな強度を有する。

〔考案の効果〕

以上説明したとおり、本考案に係るポンプ用ベ
ーンは、ベーンの両端部に、ハウジング側に設け
られた環状軌道と周方向摺動自在に係合させて違
心力によるベーンの飛び出しを規制し、ハウジン
グ内周面に対して非接触状態で回転させるための
ピンを、ベーンに埋設された補強部材の内径両端
部と一体の筒状体に嵌め込んだため、遠心力によ
る径方向の曲げ荷重に対する強度がきわめて大き
く、したがつてベーンをハウジングとの非接触状
態に確実に保持して、摩耗および高い摺動発熱を
防止することができ、ひいては摺動抵抗による回
転ポンプのポンプ効率の低下をも防止し得るとい
つた優れた実用的効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るポンプ用ベーンの一実施
例を示す斜視図、第２図は同実施例ベーンをポン
プに組込んだ状態を示す断面図、第３図は作動説
明図、第４図は従来のベーンを用いた回転ポンプ
の作動説明図である。 １……ベーン、１ａ……先端縁、１ｂ……端
部、２……ピン、３……補強部材、５……フロン
トハウジング、６……リアハウジング、７……ロ
ータ、８……内周空間、１１……回転軸、１２…
…ベーン溝、１５……環状軌道。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 回転ポンプのハウジングの内周空間に偏心した
   状態で回転自在に軸支されたロータの複数のベー
   ン溝の各各に、突没自在に配される板状のベーン
   であつて、両端部に、ハウジング側に該ハウジン
   グの内周面と同軸的に形設された環状軌道と周方
   向摺動自在に係合させるピンを突設し、このピン
   の基部を、ベーンに埋設された板状補強部材の内
   径縁両端部に一体形成した筒状体に嵌め込んでな
   ることを特徴とするポンプ用ベーン。