JPH0254449B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は駆動側軸から被駆動側軸へトルクを
伝達するためのトルク伝達装置において、被駆動
側軸に掛かる負荷トルクが予め設定したトルクを
超えると、自動的に回転の伝達を解除して被駆動
側軸の回転を停止するトルクリミツターの改良に
関するものである。

工作機械に取着したシヤンクの回転を、タツプ
側のソケツト軸に伝達するようにした構造のタツ
プ保持具もトルク伝達装置の一つであるが、この
種装置の場合、タツピング作業においてタツプに
掛かる負荷トルクが設定トルクを超えてもなおト
ルクの伝達が行われると、被加工材の損傷は勿論
のこと、時にはタツプ保持具までも損傷すること
があるので、伝達トルクの調整は特に重要なこと
である。

従来より一般に知られているトルクリミツタ
ー、特にタツプ保持具のトルクリミツターには (1) 各軸端に設けた摩擦面同志を接合させ、負荷
トルクが設定トルクを超えた時には摩擦面間に
すべりが生じて設定トルク以上の伝達を防止す
るようにしたもの。

(2) キー状またはローラー状クラツチをゴムの弾
性力により内方のテーパー状クラツチ溝に押圧
嵌入させて回転の伝達を図り、負荷トルクが設
定トルクを超えると、クラツチがゴムの弾性力
に抗してクラツチ溝から抜け出すようにして回
転を停止させ、設定トルク以上の伝達を防止す
るようにしたもの。

(3) 一方の軸の孔に収容したボールの一部をスプ
リングの附勢力により他方の軸に設けた凹所に
押圧嵌入させて回転の伝達を図り、負荷トルク
が設定トルクを超えると、ボールがスプリング
の附勢力に抗して凹所から抜け出すようにして
回転を停止させ、設定トルク以上の伝達を防止
するようにしたもの等がある。

しかしながら、上記する各従来構造のものは
種々の欠点を有する。

即ち、(1)の摩擦面による場合は、摩擦面間に一
度でもすべりを生じると、両面間における摩擦係
数が変化するため伝達可能なトルクの数値が一定
せず、また、摩耗が比較的早くて耐久性を欠くと
いう欠点がある。(2)のキー状またはローラー状ク
ラツチによる場合は、ゴムの弾性力によつて押圧
するので、伝動トルクの正確な設定が困難な上
に、安定性を欠き、また、耐久性にも問題があ
る。(3)のボールによる場合は、通常ボールが点接
触状態で介在しているため、力が一点に集中し、
全般的に摩耗が早く、また、伝達可能なトルクが
低くて汎用性を欠くという欠点があつた。

ところで、従来より二つの軸の回転伝達個所
に、一方の軸に孔に収容したローラーの一部を、
他方の軸に形成したクラツチ溝に押圧嵌入させ
て、ローラーを介してトルクの伝達を図るように
すれば、ローラーは線接触状態で介在するので、
ボールを介してのトルク伝達に比べてはるかに優
れ、正確且つ、確実にトルクの伝達ができること
が知られているが、ローラーを他方の軸のクラツ
チ溝に押圧する手段としては、上記(2)のようにゴ
ム等の弾性力を用いることが提案されている位
で、これにも欠点があるのは上記した通りで、そ
れ以外には適当な手段がほとんど提案されていな
かつた。

この発明は上記の点に鑑がみなされたもので、
二つの軸間の回転伝達個所にクラツチローラーを
介装し、これにスプリング力を間接的に作用させ
てローラーをクラツチ溝へ押圧嵌入させて、回転
伝達を図るように構成したことによつて、設定ト
ルクの調整が容易で耐久性にも富んだトルク伝達
装置におけるトルクリミツターを提供するもので
ある。

以下、この発明のトルクリミツターを備えたタ
ツプ保持具に適用した実施例を図面に基づいて説
明する。

図において、１は下端を開口した筒状本体で、
その上端にシヤンク２を備え、その側壁中間部に
クラツチローラー４を挿入する縦長孔３を円周方
向へ等間隔に貫通して形成し、縦長孔３下の本体
１外周に鍔５を突設する。

尚、各縦長孔３はローラー４が内腔側に脱落し
ないように外拡のテーパ状孔に形成する。

６は本体１内に回転自在に嵌着され、下端にタ
ツプ（図示せず）を装着する軸部を有するソケツ
ト体、即ちソケツト軸で、その上端に本体１の内
腔盲端に当接する頭部７を備え、本体１の各縦長
孔３と対応する位置に、上端を開放した両側テー
パ状の縦溝８を形成する。

９は本体１の鍔５上の縦長孔３部位に、回転と
上下動自在に配装した筒状中間体で、本体１の各
縦長孔３と対応する内側壁に逃げ溝１０を形成
し、下端周面には上下に屈曲連続するテーパ面１
１を形成する。

１２は本体１の鍔５上に固設され、中間体９の
テーパ面１１に対応して係合するテーパ部材材で
ある。

尚、このテーパ部材１２は鍔５と一体的に形成
してもよく、別個に形成してもよい。

また、テーパ面１１の形態は、図示したものに
限定するものではなく、例えば、筒体をその中心
軸線に対し傾斜した面で切断して中間体９下端と
テーパ部材１２の係合端面全体それぞれ一つのテ
ーパ面を呈するように形成してもよい。

１３は中間体９を囲繞して本体１の鍔５に取着
した外筒、１４はこの外筒１３の上方で外筒１３
に対向して本体１に螺着した下端を開口した筒状
調整体で、本体１外周に設けたねじ部１６に螺着
してあつて、ねじ部１６に止めリング１５を取着
して位置を設定している。

１７は調整体１４と中間体９間に介装したスプ
リングで、中間体９をテーパ部材１２に係合させ
る方向へ下向きに附勢している。

然して、前記各縦長孔３に挿入されるクラツチ
ローラー４は、本体１壁厚より直径を大きくして
おり、その一部がソケツト軸６の縦溝８と中間体
９の逃げ溝１０とで嵌脱自在となるようにしてい
る。

また、常態においてスプリング１７の附勢下に
中間体９とテーパ部材１２が係合して中間体９は
本体１に固縛状態になるが、この状態で、中間体
９の逃げ溝１０は本体１の縦長孔３に対し円周方
向へ若干ずれて位置し、即ち、中間体９の逃げ溝
１０は、各縦長孔３内のクラツチローラー４に対
し、そのローラー４直径の半分未満で円周方向に
ずれるような位置に設定されており、各縦長孔３
内のローラー４は、逃げ溝１０の側縁部によりソ
ケツト軸６側へ押圧される。

１８は本体１に対するソケツト軸６の脱着機構
で、ソケツト軸６の交換を容易にするためのもの
で、本体１の側壁下部に係止用ボール１９の収容
孔２０を貫通して穿設すると共に、その収容孔２
０と対応してソケツト軸６に環状溝２１を周設
し、内側壁中間部に環状突起部２２を有するカバ
ー体２３を、本体１下部の外周に上下動自在に配
装し、本体１下端の外周に嵌着した止めリング２
４と前記突起部２２との間にスプリング２５を介
装してカバー体２３を上方に附勢すると共に、前
記収容孔２０内に挿入したボール１９を、カバー
体２３の突起部２２によりソケツト軸６側に押圧
して、収容孔２０から突出するボール１９の一部
をソケツト軸６の環状溝２１に嵌入させ、本体１
に対し回転自在にソケツト軸６を取着する。

従つて、カバー体２３をスプリング２５に抗し
て押し下げれば、カバー体２３の突起部２２が収
容孔２０の下方に位置し、ボール１９がソケツト
軸６の環状溝２１から脱出可能となるため、本体
１からソケツト軸６が外される。

尚、収容孔２０は外拡のテーパ状孔にソケツト
軸６を本体１から外した時に、ボール１９が収容
孔２０から内腔側へ脱落するのを防止する。

次に上記の如く構成した実施例の作用を説明す
る。

常態において、中間体９はスプリング１７に押
圧され、テーパ面１１を介してテーパ部材１２に
係合して本体１と固縛状態にある時、中間体９の
逃げ溝１０は本体１の縦長孔３に対し円周方向に
若干ずれて位置するため、縦長孔３内のクラツチ
ローラー４は、逃げ溝１０の側縁部によつてソケ
ツト軸６側へ押圧されてローラー４の一部がソケ
ツト軸６の縦溝８に嵌合している。

この状態の下で本体１を回転させると、その回
転はクラツチローラー４を介してソケツト軸６に
伝達される。

そして、ソケツト軸６に掛かる負荷トルクが予
め設定した設定トルクを超えると、各縦長孔３内
のクラツチローラー４はスプリング１７の間接的
な附勢力に抗してソケツト軸６の縦溝８か中間体
９側へ押し出され、中間体９の逃げ溝１０の奥深
くに嵌入しようとして、中間体９をスプリング１
７力に抗して逃げ溝１０と縦長溝３とが略一致す
るまでテーパ部材１２上に持ち上げ、クラツチロ
ーラー４の一部が縦溝８から脱出して逃げ溝１０
に嵌入し、ここでソケツト軸６は停止して本体１
が空転する。

この時に、中間体９と本体１との固縛関係を一
時的に解除されるが、クラツチローラー４が縦溝
８から脱出すると、ローラー４はソケツト軸６か
らの負荷力をほとんど受けなくなるので、中間体
９はスプリグ１７に押圧されてテーパ部材１２と
の係合が元通りになつて再び中間体９は本体１と
固縛状態に戻る。

このようにして予め設定したトルクの範囲内
で、本体１の回転がソケツト軸６に伝達される。

尚、設定トルクを調整するには、止めリング１
５を外して調整体１４を回転させてスプリング１
７力を変化させる。

また、縦溝８の深さが異なるソケツト軸６の複
数本を予め用意して置き、適当な縦溝８深さのソ
ケツト軸６を選択するようにしてもよい。

例えば、鉄やアルミニユーム等の被加工材の種
類に合つた標準的なトルクを、調整体１４により
スプリング１７力に基づいて設定した後、５mm、
６mm、８mm等のタツピング穿孔径の種類に合つた
縦溝８深さのソケツト軸６を選択して最終的に最
適なトルクを設定する。

上記実施例ではタツプ保持具について説明した
が、この発明はタツプ保持具等の回転工具以外で
も所定トルク内で回転を伝達する装置、例えば、
一定の挟持力を継続する把持装置やカムクラツチ
等に実施できる。

また、前記クラツチローラーに代えて複数個の
ボールを一連に縦列して使用することも可能であ
る。

第３図は駆動歯車装置と被駆動歯車装置との間
におけるトルクリミツターの実施例を示し、同軸
上に所定間隔を設けて駆動歯車軸１′と、被駆動
歯車軸６′がフレーム２６，２７にそれぞれベア
リグ２８を介して回動自在に支承され、各歯車軸
１′，６′のそれぞれの歯車２９，３０に別の歯車
が噛合していて回転を伝達する構成のものであ
る。

尚、図において使用したダツシユ（′）を付し
た番号は、前記実施例と同番号の構成部材に相当
している。

また、歯車軸１′，６′はどちらを駆動側或いは
被駆動側に採つても良い。

以上、説明したように、この発明のトルク伝達
装置におけるトルクリミツターは、常態で本体と
固縛関係にある中間体の逃げ溝誕縁部で本体の縦
長孔内のクラツチローラーをソケツト体側へ押圧
してローラーの一部をソケツト体の縦溝に嵌合さ
せ、本体の回転をクラツチローラーを介してソケ
ツト体に伝達するようにしたから、縦長孔内のク
ラツチローラーはソケツチ体の縦溝と線接触し、
また、ローラーをソケツト体側へ押圧している中
間体の逃げ溝側縁部とも線接触して、二つの軸の
回転伝達部に線接触状態で介在しながら回転を伝
達するので、トルクの伝達が確実に行われ、従来
のボールによるトルクの伝達に比べると、より一
層大きなトルクの伝達が可能となり、高トルクを
要する回転伝達装置に利用でき、また、ソケツト
体に掛かる負荷トルクが設定トルクを超えると、
本体と中間体との固縛関係がスプリング力に抗し
て一時的に解除され、この間にクラツチローラー
はソケツト体の縦溝から脱出して中間体の逃げ溝
に嵌入し、ソケツト体の回転を停止させるように
したから、予め設定したトルクを超えると、特別
な操作を要せず自動的にトルクの伝達が解除さ
れ、トルクオーバーによる各部の損傷を未然に防
止して、常に設定トルク範囲内におけるトルクの
伝達が図られ、しかも伝達トルクの調整が容易で
便利であり、更に構造上からも簡単で、長期に亘
り安定した機能を発揮する他、タツプ保持具等の
回転工具をはじめ、各種トルク伝達装置に利用で
きてその用途が広範囲である等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の常態における全体中央縦断
面図、第２図は中間体の一部を欠除した斜視図、
第３図は駆動歯車装置と従動歯車装置間に適用し
た実施例を示す中央縦断面図である。 １……筒状本体、２……シヤンク、３……縦長
孔、４……クラツチローラー、５……鍔、６……
ソケツト軸、７……頭部、８……縦溝、９……筒
状中間体、１０……逃げ溝、１１……テーパ面、
２……テーパ部材、１３……外筒、１４……筒状
調整体、１５……止めリング、１６……ねじ部、
１７……スプリング、１８……脱着機構。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 側周壁に縦長孔を等間隔に形成し、少なくと
   も一端を開口した筒状本体と、該本体内に回転自
   在に嵌着され、本体の各縦長孔との対応位置に縦
   溝を形成したソケツト体と、本体の縦長孔部位に
   回転と上下動自在に配装され、下端にテーパ面を
   有し、本体の各縦長孔と対応する内側壁に逃げ溝
   を形成した筒状中間体と、該中間体のテーパ面に
   係合し、本体に対し一体に設けたテーパ部材とを
   具備し、前記中間体をスプリングにより前記テー
   パ部材側に附勢し、本体と中間体とを固縛可能に
   すると共に、本体の各縦長孔内に挿入したクラツ
   チローラーの一部を、ソケツト体の縦溝及び中間
   体の逃げ溝に嵌脱自在にし、中間体が本体と固縛
   関係にあるとき、クラツチローラーは中間体の逃
   げ溝より若干ずれてソケツト体の縦溝に嵌合して
   本体の回転をソケツト体に伝達し、ソケツト体に
   掛かる負荷トルクが設定トルクを超えるとき、本
   体と中間体との固縛関係が一時的に解除され、ク
   ラツチローラーはソケツト体の縦溝から脱出して
   中間体の逃げ溝に嵌入し、ソケツト体の回転を停
   止させるように構成したトルク伝達装置における
   トルクリミツター。