JPH025089B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は改善された抗微生物表面をもつ医療用
装置に関するものである。

（従来技術） 感染はしばしば導管、特に尿導管のような内在
させた医療デバイスからの併発症である。長期に
わたつて尿導管を必要とする患者の高率の人々が
慣性尿路感染症をおこし、しばしば、発熱、悪感
および脇腹の痛みが伴なう。このような患者は高
い罹病率の死亡率の菌血症または慢性腎孟炎をひ
きおこす危険性がある。

尿路感染症（UTI）問題の大きさは、病院患
者の10−15％が尿導管を必要とし、かれらの約25
％が感染をひきおこすという統計によつて明瞭に
示されている。一方、UTIは院内感染全体の40
％を数え、年間800000人の患者が推定される。

多くの研究の結果、カテーテル適用時の尿排泄
袋の細菌汚染が膀胱細菌尿症の頻繁な原因である
こと、および、各種抗菌剤および抗真菌物質、例
えば過酸化水素の添加が細菌尿症の発生を減らし
あるいは遅れさせることが示されている。カテー
テル上に抗菌剤を塗布することは同じく細菌尿症
の発現をおくらせることが知られている。トンプ
ソンら（J.Am.Med.Assoc.251 747−51（1984））
はしかし、排泄袋汚染から内腔的におこる感染は
カテーテル使用患者の間では珍らしく、閉鎖され
た滅菌排泄系の中へ消毒剤を周期的に挿入するこ
とがカテーテル関連の細菌尿症の発生を減らすの
に有効でないことを示した。彼らのデーターは尿
道周囲粘膜鞘中の腔外的移動がカテーテル使用尿
路中へ細菌侵入の主要ルートであることを暗示し
ている。

医療のもう一つの重要な部分は薬物および液体
の静脈内カテーテルによる注入である。この注入
系の汚染は普通におこり敗血症をおこすことがあ
る。微生物は挿入の時点において、そしてまたそ
の後にカテーテルと組織の間の界面に沿つて侵入
することによつて、その両方でカニユーレの先端
へ近接し得ることが暗示された。

キムの米国特許No.4253463号は、静脈内デバイ
ス使用中の感染を減らす方法を教示している。そ
の方法はそのデバイスへアルミニウムまたは錫の
ような普通の金属の被覆を施こすことを含み、そ
の金属はデバイス挿入点において患者の組織と接
触する。

銀化合物はそれらの防腐的性質のために臨床医
薬に古くから使用されてきた。銀化合物のその種
の使用の二つの例は眼の伝染病の予防および、や
けど敗血作用の防止と治療である。19世紀後期に
おいてはじまつて、縫合糸または箔の形の金属銀
が、金属相から組織中への銀の受動的解離による
静菌効果をつくり出すのに使用された。銀単味あ
るいは他金属との組合せに関するこの研究の概観
はローマンによる“Oligodynamic Metals”（24
章）および“Silver Compounds”（28章）、C.A.
ローレンスおよびS.S.ブレツク（リーおよびフイ
ビガー編、1968年）のDisinfection、
Sterilization and Preservation、に与えられて
いる。

電極において発生するステンレス鋼、銀、金お
よび白金のイオンによる細菌およびかびの増殖抑
制は、スパダロらによつて報告されている
（Antimicrobial Agents and Chemotherapy
６、637（1974））。

マリノら（J.Electro chem.Soc.132、68
（1985））は、金属銀で被覆することによつて防腐
性とした布から成る包帯と、電極の役を果すタブ
を通して外部から発生した電流を適用することを
開示している。

クロスレーの米国特許No.4054139号は、カテー
テルの内外両面上の銀、あるいは金のような別の
重金属と混合した銀、の微量殺菌作用（オリゴダ
イナミツク）量によつて、カテーテル関連感染を
減らすことを教示している。

アキヤマら（J.Urology 121、40（1979））は改
良された尿導管・排泄系を開示しており、それは
銀で以て被覆したフオーレー・カテーテルとカテ
ーテルのひろがつた端を合成排泄管との間の銀め
つきコネクターを含んでいる。この系は銀イオン
の静菌的性質を利用して長期の膀胱カテーテル適
用に伴う尿路感染を減らす。米国特許No.4483688
号と英国特許No.1582016号において、アキヤマは
銅、銀あるいは金またはそれらの合金のようなオ
リゴダイナミツクに活性の重金属を使用してカテ
ーテルまたは尿排泄系の外側表面上だけで静菌効
果が達成されることを開示している。

トラベノール・ラボラトリーズ、Inc.、メデイ
カル・プロダクツ・デイビジヨン（イリノイ州デ
イアフイールド）は現在、カテーテルと管材の接
合部において細菌を殺すよう工夫した銀被覆カテ
ーテル・アダプターを市販している。

デービスらはJ.Clin.Microbiology 15、891
（1982）において、各種金属によるいくつかの細
菌属のイオントフオレシス的殺菌を記述してい
る。金のイオントフオレシスのみが全細菌属を殺
した。銀および銅のようなその他の金属は有効で
ないことが述べられている。米国特許No.4411648
号において、デービスらは重金属含有電極をもつ
尿導管を教示している。カテーテル法に関連する
細菌感染は外部的に発生させた起電力を使うこと
によつてイオントフオレシス的に防がれる。金電
極は最も有効な殺菌効果を提供する。銀、白金、
銅、またはステンレス鋼は取巻く組織に著しい影
響をもつことがない電流において効果がより低
い。

（発明の構成） 本発明の装置は外部環境を体内環境と連結する
ための医療装置であつて、前記装置は少なくとも
１種類の貴金属を含む少なくとも２種類の金属の
区域を有する表面を有しており、前記金属は互い
に接触しているか、又は伝導性物質からなる接続
手段で接続されており、生体電解質と前記装置の
少なくとも１種類の金属が接触することにより、
抗微生物活性が互いに接触している又は接続され
ている前記金属の少なくとも１種類の表面及びそ
の近傍に付与される。

本明細書において、装置本体とは本発明に従つ
て、抗微生物活性を装置の金属表面に付与するた
めに２種類以上の金属が接触あるいは接続可能な
状態で装置に存在するように処理される前の装置
を意味している。

本発明に従つて特に有用である金属はアルミニ
ウム、銀、金および白金である。好ましい金属組
合せは銀−白金、アルミニウム−銀、アルミニウ
ム−金およびアルミニウム−白金である。これら
の好ましい組合せの使用はそれらの金属を独立で
使用する際に観察される抗微生物効果の和よりも
著しく大きい抗微生物効果を本発明の装置の金属
表面へ付与する。

これらの装置の一つの具体化においては、それ
らの金属が相互にスイツチを通して相互に接触し
ていて、必要ならば抗微生物活性が現われたり消
えたりするようにされる。

本発明の装置は、複数個の金属をある組合せで
使用することによつて与えられる従来法の表面と
比較して、相乗的に改善された抗微生物的表面活
性をもつ。その抗微生物的活性の大きさと持続性
は金属使用量を変えることによつて調節できる。
相互にかつ生体電解質と接触する２種または２種
以上の金属の使用は電池作用をおこし、それによ
る電流が従来技術の方法よりもすぐれたオリゴダ
イナミツクの抗微生物効果を大いに増進するもの
と信じられる。さらに、その電池作用は電極によ
つて誘起されるイオントフオレシスによつて達成
される高い金属イオン濃度を提供し、一方、面倒
な外部電力供給源の不便さと多すぎる電流を適用
することからくる組織損傷の潜在的危険性を回避
するものであると信じられる。

装置本体の金属を施用する好ましい方法による
と、その装置の金属表面は光輝があり、光沢があ
つて例外的に平滑であり、それによつて生体組織
と接する粗表面に関係する問題は実質的に減らさ
れる。粗面によつて特に悪化する問題は静脈カテ
ーテル使用中の血栓の形成と内在尿導管を使用中
の重病患者に不快感を与える物質の外皮形成であ
る。その上、好ましい方法によつて施用される金
属をもつ装置は製造が安価である。各金属の少量
のみしか抗微生物活性の提供に必要とされないか
らである。

（発明の構成） 本発明は多くの異なる形態の具体化によつて満
足させることができるが、本発明の好ましい具体
化が詳細に図面において示され本明細書において
記述されており、これらの開示が本発明の原理の
例示であつて本発明をそれらの例証具体化へ限定
するものでないことは当然である。本発明の範囲
は前記特許請求の範囲とそれらの均等物によつて
きめられるものである。

本発明はある環境中で使用中に抗微生物活性を
誘起する装置に向けられている。例えば、本発明
の装置を食品の加工または包装あるいは好ましく
は、医術の実際において、微生物増殖の抑制に使
用できることが期待される。本発明の装置のその
他の用法は、例えば電池作用による骨癒着の促
進、イオントフオレシスによる薬剤の配送、血栓
形成の減少、組織および神経の再生誘発、あるい
は最も好ましくは、外部環境を体内環境とつなぐ
ことによる生体治療、である。

本発明による好ましい装置は改良された医療用
装置であり、例えば、改良カテーテル、気管用チ
ユーブ、インシユリンポンプ、負傷部の覆い具ま
たは排膿管、ストツプコツク、コネクター、補綴
デバイス、ペースメーカーのリード線、針などで
ある。最も好ましくは、本発明の装置は、本発明
による装置本体表面の改良を行なわない場合にそ
の装置の使用に関連する微生物増殖がおこるよう
な期間の間、生体と接触させたままに置かれる装
置である。本発明の最も好ましい装置は改良され
たカテーテルであり、特に体内に存在させる尿導
管である。

本発明の装置本体は例えば金属、ガラス、プラ
スチツク、ゴム、セラミツクス、などのような適
当な物質のどれでつくつてもよい。好ましい物質
はポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ラテツクス、
であり、あるいは最も好ましくはシリコーンまた
はポリオレフイン例えばポリエチレン、ポリプロ
ピレン、およびポリ四弗化エチレンである。装置
本体はいかなる所望の形状であつてもよく、それ
は一般的には装置の使用目的によつてきまる。例
えば、装置本体の形状はシートまたはウエハーの
ように本質的に平らであつてもよく、デイスクま
たは棒のように実質的な厚さをもつていてよい。
本発明によつて想定される多くの装置は中空であ
り、従つて侵入微生物に対して内部および外部に
表面を提供するものである。その種の好ましい中
空装置の例で本発明の範囲内に入るものはコネク
ター、アダプター、ホース、チユーブなどであ
る。

本発明によると、抗微生物活性はその装置本体
へ１又は複数個の金属を固着させることによつて
その装置へ付与される。金属という用語はここで
は金属とそれの酸化型を含むものである。例え
ば、金属は銀および塩化銀のような金属および金
属塩であつてよい。表面上で相互に作用してその
表面へ抗微生物活性を付与する金属の組合せはど
れでも本発明の範囲内に入り、特に、相乗的結果
を与える組合せである。

装置自体が金属でつくられている本発明の具体
化においては、本発明に従つて表面に抗微生物活
性を提供するのに単一の金属のみがその装置本体
へ固着されるだけでよい。本発明のこの具体化の
例は銀を上にもつアルミニウムまたは鋼製の針で
ある。

適当な組合せあるいは金属を装置本体表面へ固
着させるときに、装置の表面に沿う微生物の移動
が抑制されることが発見された。その上、装置表
面近傍の体内環境の中の微生物増殖もまた抑制さ
れる。

金属の少くとも一つは装置本体表面と接触して
おり、各金属は少くとも一つの他金属と接してい
る。接触という用語はここでは物理的接触と適切
な電気的伝導路を通じての接触との両方を含むこ
とは理解されるであろう。好ましい金属組合せは
アルミニウム及び銀、金または白金のような貴金
属の間の組合せである。最も好ましい組合せは銀
と白金である。

粒状形態の金属の混合物を装置本体の表面の全
部あるいは一部の上に被覆してもよく、あるいは
混合物を重合前のモノマーあるいは製作前のポリ
マーへ添加して混合物を装置本体の中へ混入する
ようにしてよい。あるいはまた、金属は一方を他
方の上へ、装置本体の表面の全部または一部の上
に被覆してよく、あるいはそれらをバンドあるい
はワイヤーの形で適用してよい。純金属を使用し
てもよく、あるいは金属を一種または一種以上の
他の物質を含む合金の形で使用してよい。好まし
い適用方法は金属の皮膜を物品の表面上へスパツ
ターすることである。金属は任意の適当な方法に
よつて予備混合しその混合物を装置本体上へスパ
ツターしてもよく、あるいは最も好ましくは、金
属の皮膜を装置本体上へ順次にスパツターして一
方の金属の皮膜が他方の皮膜上へ置かれるように
してよい。この好ましい方法は、金属量がより少
くてすみかつそれによつて得られる表面が光輝が
あり、光沢があり、かつ例外的に滑らかであるの
で最も経済的である。スパツタリングによつて適
用される皮膜は５から500nｍ、好ましくは20か
ら200nｍの厚さであつてよい。必要なときには、
装置全体またはそれらの何らかの部分を、イオン
に対して透過性であるヒドロゲルあるいは潤滑剤
のような物質で覆つてもよい。

ここで図面へ言及すると、第１図は壁の部分１
４と穴１６をもつカテーテル断片１２から成る装
置１０の斜視図である。壁部１４は金属皮膜１８
がそれへ固着され、別の金属の皮膜２０が金属皮
膜１８の上へスパツターされている。

第２図は第１図のカテーテル断片の断面図であ
つて、第１図について述べたとおり、カテーテル
の壁部１４へ固着させた金属皮膜１８と２０が示
されている。

第３図は本発明の具体化の断面図であり、カテ
ーテル部分１２ａは間〓２２によつて分離されて
金属皮膜１８ａと２０ａをその上にもち、それに
よつて、この二つの皮膜はスイツチ２４が開かれ
るときには接触せず、スイツチ２４が閉ぢられる
ときに接触状態となる。従つて、スイツチ２４を
閉ぢるときには、電池が確立され、抗微生物活性
が開始される。好ましくは、スイツチ２４はリー
ド線２６によつて外部環境へ接続され、それによ
つて抗微生物活性が入れられたり切られたりす
る。

本発明は接触している二つの金属の使用によつ
て得られる相乗的効果を明らかに示す生体外の系
によつて最もよく記述される。第４−９図はトリ
プテイケース大豆寒天（trypticase soy agar）
（TSA）のような慣用的な細菌増殖培地を含む通
常のペトリ皿を描いており、この培地には増殖物
がプレート全体上に実質上均一にひろがるよう
に、各種微生物の接種が施されている。この培地
の表面に埋められているのは各種の金属あるいは
金属組合せのワイヤーであり、あるいは各種金属
または各種金属組合せによつて被覆されている慣
用的カテーテルの断片である。

第４図はスタフイロコツカス・アウレウス
（SA）の増殖物によつて均一に蔽われたTSA含
有ペトリ皿１１を示している。銀ワイヤー１５と
白金ワイヤー１７がそのTSAの表面に埋められ
撚つた領域１９において接触している。増殖物１
３は銀ワイヤー１５と撚り１９の近傍のゾーン２
１を除くTSA全表面を蔽つていて、そのゾーン
においては増殖は抑制される。白金ワイヤー１７
の近傍では抑制はおこらない。同じ結果は、実験
を銀、白金または金と接触するアルミニウムを用
いて繰返すときに得られ、それらの実験において
は増殖抑制ゾーンは貴金属ワイヤーの周りであ
る。ゾーン２１に相当する抑制ゾーンはまた金属
組合せの夫夫を使つて細菌、スタフイロコツカ
ス・サプロフイチカス（SS）、スタフイロコツカ
ス・エピデルミデイス（SE）、ストレプトコツカ
ス・フエカリス（SF）、エシエリシア・コリ
（EC）、プソイドモナス・アエルギノーザ（PA）、
クレブシエラ・ニユーモニエ（KP）、および酵母
キヤンデイダ・アルビカンス（CA）で観察され
る。

一本の金属ワイヤを使うときには、上記微生物
のいずれについても顕著な増殖抑制はおこらな
い。第５図はTSA表面に埋めた銀、金、白金ま
たはアルミニウムのワイヤー２３を示している。
増殖物１３ａは金属へのあらゆる方向にひろが
り、ワイヤー２３が白金、金、またはアルミニウ
ムであるときに抑制ゾーンは発現しない。ワイヤ
ーが銀であるときには、EC増殖の部分的抑制の
狭いゾーンがときには観察される（しかし、第５
図には描いていない）。銀ワイヤー２３は上記列
記の他のテスト微生物に対して効果がない。

第６−８図はSAまたはECを接種し37℃で18時
間保温した後のTSAの中に埋めた中空シリコー
ンの尿導管または静脈カテーテルの断片を含むペ
トリ皿１１ｂ，１１ｃ、および１１ｄを示してい
る。第６図のカテーテル断片２５ｂはその表面上
に金属をもたない負の対照標準である。微生物増
殖はカテーテル部分にまで均一におこり抑制は見
られない。第７図においては、銀の20nｍの皮膜
２７ｃがカテーテル断片２５ｃ上へスパツターさ
れている。不完全な増殖抑制２９ｃの狭いバンド
がカテーテル部分をとりかこんでいることが見ら
れる。第８図においては、白金の20nｍの皮膜２
７ｄがカテーテル断片２５ｄ上へスパツターさ
れ、スパツターされた銀の20nｍの皮膜３１ｄに
よつて蔽われている。細菌増殖がない広いゾーン
２９ｄがカテーテル部分２５ｄをとりかこんでい
ることが見られる。白金と銀の各皮膜を逆にして
銀がカテーテル上にあるようにする場合にも類似
の結果を得ることができる。

フオーレー型（Foley type）のシリコーン尿
導管の断片上の銀−白金の組合せによるSAまた
はECの増殖抑制が第９図に描かれている。カテ
ーテル断片２５ｅ上の銀皮膜２７ｅは白金皮膜３
１ｅにより蔽われている。ゾーン２９ｅにおいて
完全な増殖抑制が見られる。類似の結果は金属の
皮膜が逆になつても観察される。対照的に、金属
組合せと接触していないシリコーンのフオーレー
型カテーテルの断片の周りには抑制ゾーンがおこ
らない。

未だ実証されてはいないけれども、本発明の方
法に従つて使用される金属はいくつかの機構のう
ちの一つまたは一つより多くによつて高い抗微生
物活性を提供するものと信じられる。それらは相
互に作用して、装置をとりかこむ環境の諸成分か
ら過酸化水素を形成することができる。過酸化水
素発生はアルミニウムを含む実験において支配的
な機構であると信じられる。第二の機構において
は、金属は相互に作用して、金属イオンを、とり
かこむ環境の中へ放出することができる。金属イ
オン放出は貴金属のみを使用する実験において支
配的な機構であると信じられる。さらに、金属が
独立的に作用する場合におこるよりも著しく高い
金属イオン濃度が、とりかこむ環境の中へ放出さ
れ、その高いイオン濃度は、金属が相互にかつ電
解質と接するときの金属による電池の形成から生
ずると信じられる。

接触している金属が電解質中に浸漬されるとき
に電池を形成し得ることはよく知られている。第
１０図は本発明の装置の電池作用による金属イオ
ンの形成を描いている。金属４０と４２はカテー
テル表面４６上の点４４において接している。こ
の装置を電解質４８の中に浸ける。金属４０と４
２との間の電池作用は金属４０のイオン５０への
酸化をひきおこし、それがイオン束５２として、
とりかこむ媒体中へ拡散する。電子５４は接触点
４４を通つて金属４０から金属４２へ通り、そこ
で電解質の成分を還元する。

本発明を述べるために使つた生体外系の場合に
おいては、電解質は増殖培地中にある。本発明の
装置を生体中で使用するときには、電解質は血
液、尿、などのような体組織または体液中に存在
し得る。医療装置本体と接している２種または２
種以上の金属の使用によつて誘起される電池作用
による過酸化水素または実質的により大きい濃度
の金属イオンの発生は、本発明によらない装置使
用の結果としておこる微生物の増殖と感染を抑制
する既知の方法に勝さる著しくかつ全く予想外の
改良を示す。

実施例 1.5インチの長さの銀、白金、金およびアルミ
ニウムのワイヤー（８ミル・ゲージ）を45度の角
度に曲げ、二つの部分が１インチと0.5インチで
あるようにした。異なる金属の短かい方の端を一
緒に撚り合わせて金属のＹ型組合せを提供する
（第４図で描くワイヤーと類似）。これらのワイヤ
ーの組合せを、注入による平板作成前にSA、
SS、SE、EC、PAおよびCAの純粋培養株で以て
予め接種し、18時間37℃で保温してから平板に注
入した、固化段階のTSAの表面の中に埋めた。
約５から６mmの幅の増殖抑制ゾーンが白金と撚合
わせた銀ワイヤーの周り、および、アルミニウム
と撚合わせた金、銀、または白金ワイヤーの周り
において発現した。銀−金および金−白金の組合
せの場合には明確な抑制ゾーンが現われなかつ
た。

実施例 実施例の実験をアルミニウム、銀、金および
白金の単独直線ワイヤーを使つて繰返した。増殖
抑制ゾーンはきわめて小さく、あるいは全く発現
しなかつた。同様に、接触しているときには抑制
作用を示すワイヤー組合せを、相互に隣り合つて
いるがただし接触させずに埋めるときには、著し
い増殖抑制はおこらなかつた。

実施例 実施例の実験をシリコーンの尿導管および静
脈カテーテルの１インチ断片を使つて繰返した。
20nｍの白金皮膜をカテーテル断片上へスパツタ
ーし、20nｍの銀皮膜をその上へスパツターし
た。10.5mmにおよぶ幅の抑制ゾーンがカテーテル
断片の周りで実施例について記述したのと類似
の様式で形成した。金属を含まず、あるいは単独
金属を含むカテーテル部分についての対照標準実
験は顕著な増殖抑制を示さなかつた。

このように、本発明によると、装置は複数種の
金属を医療装置本体上に含み、その場合、少くと
も一つの金属はその装置本体の表面と接触し、各
金属は少くとも一つの他の金属と接触している。
この装置を、例えばこれを生体治療に用いるとき
に接触させられる生体電解質のような、電解質と
接触させるときには、この装置の表面は抗微生物
活性を示し、それは装置使用の結果、生体中で微
生物が増殖することを抑制する。驚いたことに
は、金属が接触しておらずその際それらの金属が
独立に作用し単純加成性の抗微生物活性を与える
ときに得られる活性をはるかにこえる抗微生物活
性を、金属の複数性が付与する、ということが発
見されたのである。この全く予想外の相乗的効果
は過酸化水素の形成あるいは電池作用による金属
イオンの形成に基づくものであると信じられる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明により二つの金属が貼りつけら
れたカテーテル断片の斜視図である。第２図は線
２−２に沿つて取つた第１図のカテーテル断片の
断面図である。第３図は貼りつけられかつ一つの
スイツチを通して接続された２個の金属バンドを
もつカテーテル断片の断面図である。第４図は増
殖培地と微生物増殖物をもつペトリ皿の平面図で
あり、二つの異なる金属のワイヤーの組合せによ
る増殖抑制ゾーンを描いている。第５図は増殖培
地と微生物増殖物をもつペトリ皿の平面図であ
り、単独金属ワイヤーによる増殖抑制ゾーンが無
いことが描かれている。第６図は増殖培地と微生
物増殖物をもつペトリ皿の平面図であり、ワイヤ
ーが存在していないカテーテル断片の周りで増殖
抑制ゾーンが存在しないことが描かれている。第
７図は増殖培地と微生物増殖物をもつペトリ皿の
平面図であり、銀被膜をもつカテーテルの周りで
狭くかつ顕著でない増殖抑制ゾーンが描かれてい
る。第８図と第９図は増殖培地と微生物増殖物を
もつペトリ皿の平面図であり、銀と白金の被膜を
もつカテーテル断片の周りの広範囲の増殖抑制ゾ
ーンが描かれている。第１０図は二つの金属を貼
りつけたカテーテル断片の断面図であり、電解質
による電池作用とイオン束を模式的に描いてい
る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 外部環境を体内環境と連結するための医療装
   置であつて、 前記装置は少なくとも１種類の貴金属を含む少
   なくとも２種類の金属の区域を有する表面を有し
   ており、 前記金属は互いに接触しているか、又は伝導性
   物質からなる接続手段で接続されており、 生体電解質と前記装置の少なくとも１種類の金
   属が接触することにより、抗微生物活性が互いに
   接触している又は接続されている前記金属の少な
   くとも１種類の表面及びその近傍に付与される、 前記医療装置。 ２ 上記貴金属が銀、金および白金から成る金属
   群から選ばれる、特許請求の範囲第１項記載の装
   置。 ３ 上記の２種類以上の金属が銀とアルミニウム
   から成る金属群から選ばれる金属ならびに貴金属
   を含んでいる、特許請求の範囲第１項記載の装
   置。 ４ カテーテルである、特許請求の範囲第１項記
   載の装置。 ５ チユーブ材である、特許請求の範囲第１項記
   載の装置。 ６ 気管用チユーブである、特許請求の範囲第１
   項記載の装置。 ７ 薬剤供給装置である、特許請求の範囲第１項
   記載の装置。 ８ 負傷部保護装置である、特許請求の範囲第１
   項記載の装置。 ９ 負傷部排膿管である、特許請求の範囲第１項
   記載の装置。 １０ ストツプコツクである、特許請求の範囲第
   １項記載の装置。 １１ 補綴装置である、特許請求の範囲第１項記
   載の装置。 １２ 針である、特許請求の範囲第１項記載の装
   置。 １３ ペースメーカーのリード線である、特許請
   求の範囲第１項記載の装置。 １４ 上記金属の少なくとも一つが装置本体上へ
   被覆されるている、特許請求の範囲第１項記載の
   装置。 １５ 上記金属の一つがスパツタリングによつて
   上記装置本体上へ被覆され、他方がその上へスパ
   ツタリングによつて被覆されている、特許請求の
   範囲第１４項記載の装置。 １６ 上記金属の少なくとも一つが装置本体中に
   組入れられている、特許請求の範囲第１項記載の
   装置。 １７ 上記金属の少なくとも一つが装置本体上の
   帯である、特許請求の範囲第１項記載の装置。 １８ 上記金属の少なくとも一つが装置本体上の
   針金である、特許請求の範囲第１項記載の装置。 １９ 装置本体が金属で製作されており、装置本
   体の金属と異なつた金属が装置に接触している、
   特許請求の範囲第１項記載の装置。 ２０ 装置本体が鋼製針であり、異なつた金属が
   銀である、特許請求の範囲第１９項記載の装置。 ２１ ２種類の金属は白金および銀であつて、白
   金または銀の少なくとも一つがカテーテルの表面
   と接触している、特許請求の範囲第４項記載の装
   置。 ２２ ２種類の金属は貴金属およびアルミニウム
   であつて、貴金属またはアルミニウムの少なくと
   も一つがカテーテルの表面と接触している、特許
   請求の範囲第４項記載の装置。 ２３ 貴金属が白金、銀および金からなる金属群
   から選ばれる、特許請求の範囲第２２項記載の装
   置。 ２４ 前記接続手段が２種類の金属を伝導性物質
   によつて接続状態または非接続状態に切り替える
   ことが可能なスイツチを含む、特許請求の範囲第
   １項記載の装置。