JPH0215503Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （考案の目的） 本考案はカフ付チユーブのカフ圧調整器に関す
るものである。より詳しくは、全身麻酔に用いら
れる気管内チユーブや気管切開時に用いられる気
管切開チユーブに装着されているカフ内部の圧力
を自動的に一定に調整する器具に関するものであ
る。

（従来の技術） 一般にカフ付気管内チユーブやカフ付気管切開
チユーブなどのカフ付気管挿入チユーブは、全身
麻酔や気管切開時の人工呼吸において、麻酔ガス
や酸素あるいは空気の外部への漏れや、食道から
の嘔吐物の気管への誤飲を防止するために用いら
れるもので、気管内チユーブや気管切開チユーブ
の外壁にカフを設けたものである。かかるチユー
ブを気管内に挿入した一例を第１図に示す。図面
で理解できるように気管挿入チユーブ１を患者の
気管Ａに挿入後、カフ２に空気を供給してカフを
膨張させ、カフ外面を気管内壁に接触させること
により肺と外部とを遮断する。

しかるに気管内壁は微細な毛細血管が存在する
粘膜質であるため、このカフの気管内壁への接触
圧力が高すぎると毛細血管を圧迫して、血液の流
れを止め、圧迫部を壊死せしめることになる。ま
た、この圧力が低すぎると麻酔ガスや酸素あるい
は空気が漏れるのみならず、食道からの嘔吐物が
肺まで流入することがある。それ故、カフの気管
内壁への接触圧力は気管の毛細血管の血流を止め
るほどには高くなく、かつ麻酔器や人工呼吸器か
ら肺に送り込まれた気体が漏れない程度に接触し
て、その圧状態を維持することが望まれる。しか
しながら従来より使用されているカフの小さいロ
ー・ボリユーム・ハイ・プレツシヤー・カフ（低
容量高圧カフ）でこれを行うのは難かしく、また
特にこのために作られたハイ・ボリユーム・ロ
ー・プレツシヤー・カフ（大容量低圧カフ）で
は、気管に挿入し膨らませた後は確かに望ましい
接触圧力に調整できるが、圧力が調整されるのは
その時点だけであり、以後単に密封状態を保つに
すぎない。例えば、全身麻酔時に気管挿入チユー
ブを使用する時間が長いと、初期には麻酔ガスで
ある笑気ガスがカフ内へ拡散することにより、カ
フ内圧が増大したり、また数時間後にはカフを通
しての空気の漏れによりカフ内圧が低下したりし
てカフの気管内壁への接触圧力が変化し、毛細血
管の圧迫による壊死や反対に麻酔ガスなどの漏れ
れが生じることがある。又気管切開チユーブが留
置されている場合、患者の体位の変化により気管
内のカフの位置が変化し、それによりカフ内圧が
変化することがある。更に時にはカフ内の空気が
コネクターなどから漏れてカフ内圧が低下し、患
者が危険な状態に落ちいる場合もある。このよう
な問題を解決するためにカフに接続されたパイロ
ツトバルーンに大容量のバルーンを用いてカフ内
圧を調整しようとする気管挿入チユーブが提案さ
れているが、これでは十分にカフ内圧を調整する
ことはできない。そのため上記カフ内圧を自動的
に一定に調整できる気管挿入チユーブのカフ圧力
調整器の開発が望まれている。

（考案が解決しようとする問題点） 本考案者は、上記事実に鑑みカフの気管内壁へ
の接触圧力を確実に自動的に一定に調整でき、か
つ手軽に使用できるカフ圧力調整装置を提供する
ため鋭意検討した結果本考案に到達したものであ
る。

（問題点を解決するための手段） すなわち、本考案は上部位に液体の注入口およ
び／又は大気連通口を有し、その下部位に液体連
通口を有する上位液体槽と、液体連通口を有しそ
の内側に液密で容量可変性の気体ホルダーを収容
する下位液体槽を有し、該上位液体槽と下位液体
槽がそれぞれの液体連通口を長さ可変の管状体で
連通接続され、かつ上位液体槽は下位液体槽に対
してその高さを移動可変しうるよう配置され、該
気体ホルダーはカフ付チユーブのカフに連結され
るよう構成されてなるカフ付チユーブのカフ圧調
整器である。

（実施例） 次に本考案調整器の一実施例を図面にて説明す
る。第２図は本考案調整器の使用法を説明する図
である。カフ付気管挿入チユーブは気管挿入チユ
ーブ１と該チユーブの外壁に設けられたカフ２
と、前記カフに気体を導入する中間にパイロツト
バルーン１１を有する細管チユーブ３とで構成さ
れている。該細管チユーブの他端はＴ字管４に連
結されている。該Ｔ字管の他端は、カフ圧調整器
６の下位液体槽７に収納されている気体ホルダー
８の外部口９と連結する細管チユーブ１０と、先
端にルアー先注射器の先に合う円錐端１２を有す
る細管チユーブ１３に連結されている。５は気体
ホルダー内の圧力を示す圧力計である。カフ圧調
整器の１例の構造図を第３図に示す。該調整器は
上部位に液体の注入口と大気連通口の共用口１４
と下部位に液体連通口１５を有する上位液体槽１
６と、液体連通口１７とその内側に液密で容量可
変性の気体ホルダー８を有する下位液体槽７と、
該二つの液体槽を連通接続する長さ可変の管状体
１８とからなる。該気体ホルダー８は細管チユー
ブと連結するための外部口９を有する。該二つの
液体槽は支持棒１９で支持され、上位液体槽１６
をこれに沿つて移動させうるものであるが、後に
示すように構造によつては長さ可変の管状体にこ
の役割を持たすことができるので必ずしも必要で
はない。上位液体槽の注入口と大気連通口は独立
に２箇設けてもよく実施例の如く共用で１箇とし
てもよい。

ここでいう容量可変性の気体ホルダーとは、第
４図に示すように、外気圧Ｐの雰囲気中で該気体
ホルダーの中に気体を送り込んだ時、その流入量
に関係なく内圧P₁がたえずＰに等しいような気
体ホルダーである。一例を挙れば、ゴム製又はプ
ラスチツクス製の風船に気体を送り込んだ時、ゴ
ム又はプラスチツクスにまだ張力のかからない状
態がこれである。更に例を挙れば第５図に示すよ
うに、軸に沿つてほとんど抵抗なく動くうるジヤ
バラ状の構造物でもよく、又第６図に示すように
気密状態を保ちかつほとんど抵抗なく摺動しうる
金属製、ガラス製もしくはプラスチツク製等の二
つの開いた箱で構成される構造物であつてもよ
い。

長さ可変の管状体１８の長さとは上位液体槽と
下位液体槽の各液体連通口間の長さを指し、長さ
可変の管状体の例としてはゴム製もしくはプラス
チツク製等のたるませたチユーブ又は第８図に示
すように蛇腹状の管状構造物又は第９図に示すよ
うに液密で上下に長さを変え得る金属製、ガラス
製もしくはプラスチツク製等の管状構造物等であ
る。特に後者の場合、長さ可変の管状体に各液体
槽を支える支持棒の役割も兼させれるので構造を
シンプルにすることができる。上位液体槽および
下位液体槽の材質は金属、ガラス、プラスチツク
ス等何であつてもよいが内部の状態を観察でき、
しかも壊れにくいという点で透明のプラスチツク
がよい。又第１０図に示すように下位液体槽には
気体ホルダーが液体連通口１７を塞がないように
液体が自由に連通しうる例えば多孔体の邪魔板１
８を置いてもよい。

次に第１１図により本考案のカフ圧調整器がカ
フ内圧を調整するメカニズムについて説明する。
液体注入口１４より水を注入し上位液体槽の中間
まで水を満たし第１１図Ａの状態にすれば、気体
ホルダー１７にはh₀cmH₂Oの圧力が加わり、気体
ホルダーの内圧もh₀cmH₂Oに等しくなる。もちろ
ん液体は必ずしも水である必要はなく何であつて
もよいが、安全性および比重の大きさの点から水
が最適である。この状態で第３図に示すカフ付気
管内チユーブに接続し、さらに第１図に示すよう
に患者の気管に装着し、上記h₀cmH₂Oの圧力によ
りカフ２が患者の気管Ａを封止して外気と遮断す
る。次いで患者の肺には導入チユーブ１より麻酔
のため笑気ガス等が導入される。時間が経つとカ
フ２内に笑気ガス等が拡散流入しカフ内圧を増加
させる。しかるに本考案のカフ圧調整器と接続し
ていれば、流入したガス分だけ下位液体槽内の気
体ホルダーは容易に膨張し、その体積だけ上位液
体槽１６の水面を上昇させる結果となる。これを
第１１図Ｂに示す。上位液体槽の水平断面を大き
くとつておけば水面上昇h₁は小さく気体ホルダー
８の受ける圧はほとんど変らない。該カフ圧調整
器を適用するカフ付チユーブの場合、臨床的にカ
フ内圧が１〜２cmH₂O変化しても全く問題にな
らなく、又気体ホルダー８への気体の流入量もわ
ずかであるから上位液体槽の水平断面は20cm²もあ
れば十分である。第１１図ｃは逆にカフ内の空気
が拡散流出した場合を示す図面であり、この場
合、流出した空気の量に応じて上位液体槽１６の
水面が低下し、気体ホルダー８内の気体をカフに
送出し、減じた気体を補うので、カフ内圧は一定
に保たれる。この場合も流出する気体量はわずか
であり、したがつて水面降下h₂も小さいので気体
ホルダー内の圧はほとんど一定に保たれる。

前記カフ圧力はカフの気管内壁への接触圧力が
毛細血管に壊死を起させず、かつ気体が漏れない
よう適度の圧力に調整する必要がある。一般に気
管壁の毛細血管の血圧は25cmH₂Oといわれ、カ
フの気管壁への接触圧力がこの値を大きく超す場
合には血流が止められて圧迫部が壊死を起すとい
われている。したがつて、カフ圧力はカフの気管
内壁への接触圧力が25cmH₂O以下になるように
調整するのが好ましいが、時には脹らみにくい肺
の患者の場合は30cmH₂Oもしくはそれ以上の圧
をかける必要がある。したがつて該カフ圧調整器
は水柱h₀を10〜40cm程度とれるように上位液体槽
を移動できる構造であれば十分である。

（考案の効果） 本考案の調整器は従来使用されているロー・ボ
リユーム・ハイ・プレツシヤータイプのカフにも
そのまま利用することができるが、有効に利用す
るためにはハイ・ボリユーム・ロー・プレツシヤ
ー・カフがよい。ロー・プレツシヤー・ハイ・ボ
リユウム・カフはカフが気管壁より大きく、挿管
時はこのカフをすぼませて挿入した後、カフが気
管壁に接触するまで脹らませ、のちシールに必要
な圧力をかける。したがつてロー・ボリウム・ハ
イ・プレツシヤー・カフのようにカフを脹らませ
る圧力は必要がなく、カフ内圧がそのまま気管内
壁への接触圧力となる。それ故本調整器の示す圧
力が即気管接触圧となるため本調整器の機能を最
大に発揮させる事ができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案調整器の一実施例を示すもので、
第１図は気管挿入チユーブの使用説明図であり、
第２図は本考案調整器の使用説明図であり、第３
図は本考案調整器の１例の構造説明断面図であ
り、第４図は本考案調整器における容量可変性の
気体ホルダーの説明図であり、第５図および第６
図は気体ホルダーの他の実施例の断面図であり、
第７図、第８図および第９図のＡ，Ｂは本考案調
整器における長さ可変の管状体の実施例を示す図
であり、第１０図のＡ，Ｂは容量可変性の気体ホ
ルダー内の邪魔板の説明図であり、第１１図の
Ａ，ＢおよびＣは本考案調整器の作動説明図であ
る。 ７……下位液体槽、８……気体ホルダー、９…
…外部口、１４……液体注入口大気連通口、１５
……液体連通口、１６……上位液体槽、１７……
液体連通口、１８……管状体、１９……支持棒。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 上部位に液体の注入口および／又は大気連通口
   を有し、その下部位に液体連通口を有する上位液
   体槽と、液体連通口を有しその内側に液密で容量
   可変性の気体ホルダーを収容する下位液体槽を有
   し、該上位液体槽と下位液体槽がそれぞれの液体
   連通口を長さ可変の管状体で連通接続され、かつ
   上位液体槽は下位液体槽に対してその高さを移動
   可変しうるよう配置され、該気体ホルダーはカフ
   付チユーブのカフに連結されるよう構成されてな
   るカフ付チユーブのカフ圧調整器。