JPH0214662Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、断面形状が半径方向外方側に開く概
ねコの字状の保持部を、クラツチカバーの内周端
部に円周方向に間隔を隔てて複数個形成し、保持
部により１対のワイヤリングを支持すると共に、
ワイヤリング間にダイヤフラムスプリングを挾持
するクラツチカバー組立体に関する。

（従来技術及びその問題点） 上記型式のクラツチカバー組立体は一般に
DST（Diaphragm Spring Turnover）タイプと
呼ばれており、第３図に示すようにスタツドピン
の代りに複数個のタグ（保持部）５を備えてい
る。即ち断面形状が半径方向外方向に向く概ねコ
の字型のタグ５を、クラツチカバー１の内周端部
に円周方向に間隔を隔てて複数個形成し、タグ５
の円周面により１対のワイヤリング６及びダイヤ
フラムスプリング７を保持している。

ところが現状のクラツチカバー組立体では、使
用中にワイヤリング６及びダイヤフラムスプリン
グ７が円周方向にずれることがあり、そのために
タグ５とダイヤフラムスプリング７の小判形孔８
の端縁が部分Ａで干渉する。このような干渉が生
じると、セツト荷重ヒステリシスの異常な増大を
招き、それにより例えば実質的な押付け荷重の低
下が生じ、クラツチが滑る恐れがある。

なおワイヤリング等のずれ防止のために、例え
ば特公昭54−42052では、ワイヤリングにスタツ
ドピンのつば部と嵌合しうる幅の溝を形成し、こ
れをスタツドピンのつば部に嵌合している。

しかし各スタツドピン毎に１個の溝を嵌合する
ので、各スタツドピンに対してそれぞれきつちり
と嵌合するように溝幅を加工しなければならず、
また各溝間の円周方向間隔もスタツドピン間の間
隔に合わせて正確に設定しなければならい。従つ
て溝の加工に手間がかかると共に、ワイヤリング
組付け時においても、ワイヤリングの円周方向位
置を正確に合わせて作業しなければならず、取付
け作業にも手間がかかる。

（問題を解決するための手段） （問題を解決するための手段） 上記問題を解決するために本考案は、保持部に
接触する側のワイヤリング表面に、ワイヤリング
の線芯に対して概ね直交する方向の概ね筋状の滑
り止め用溝をワイヤリング全周にわたつて多数形
成し、各保持部の円周方向幅内にそれぞれ常時複
数個の滑り止め用溝が位置するように、滑り止め
用溝の円周方向幅及び滑り止め用溝間の間隔を設
定している。

（実施例） 第２図において、クラツチカバー１はその外周
フランジ部１ａが例えばエンジンのフライホイー
ル２に締着されており、フライホイール２と一体
的に回転する。クラツチカバー１内にはフライホ
イール２側から順にクラツチデイスク３及びプレ
ツシヤープレート４が配置されている。

クラツチカバー１の内周端部には、円周方向に
間隔を隔てて複数個のタグ（保持部）５がカバー
１と一体に形成されている。タグ５はフライホイ
ール２側へ突出すると共に、その断面形状が半径
方向外方側へ開く概ねコの字形に形成されてい
る。タグ５の半径方向外周側の円周面には１対の
ワイヤリング６が掛け渡されており、両ワイヤリ
ング６間にダイヤフラムスプリング７が挾持され
ている。ダイヤフラムスプリング７はその小判形
孔８部分がタグ５に係合している。

ダイヤフラムスプリング７の外周端部はプレツ
シヤープレート４の横向きの突出部１２に当接し
ている。ダイヤフラムスプリング７の内周側部分
には放射状に分割されたレバー部７ａが形成され
ており、レバー部７ａの内周端部にはレリーズベ
アリング１４が当接している。

第３図において、プレツシヤープレート４はそ
の外周端部がストラツププレート１５によりクラ
ツチカバー１に連結されており、クラツチカバー
１と一体的に回転する。またストラツププレート
１５のばね力によりプレツシヤープレート４は第
２図の矢印Ｒ方向に付勢されている。

第１図において、各ワイヤリング６はタグ５の
相対向する内側面５ａにそれぞれ接触しており、
上記内側面５ａに接触するワイヤリング表面に
は、複数個の滑り止め用溝１７が形成されてい
る。溝１７は第３、第４図に示すようにワイヤリ
ング６の線心に対して概ね直交する方向に形成さ
れており、また溝１７はワイヤリング６の全周に
形成されている。

また第３図から明確なように、各タグ５の円周
方向幅内にそれぞれ常時複数個の滑り止め用溝１
７が位置するように、滑り止め用溝１７の円周方
向幅及び滑り止め用溝間の間隔を狭く設定してあ
る。

（作用） クラツチ入時には、ダイヤフラムスプリング７
の外周端部がストラツププレート１５のばね力に
抗してプレツシヤープレート４を矢印Ｆ側へ押
し、クラツチデイスク３のフエーシング３ａを圧
接する。

クラツチペダル等によるレリーズ操作時には、
レリーズベアリング１４がダイヤフラムスプリン
グレバー部７ａの内周端部を矢印Ｆ側に押す。そ
れによりダイヤフラムスプリング７の外周端部は
ワイヤリング６との当接部分を支点として矢印Ｒ
側へ移動する。ダイヤフラムスプリング７の外周
端部の移動に伴い、プレツシヤープレート４はス
トラツププレート１５のばね力により矢印Ｒ側へ
移動し、クラツチデイスク３のフエーシング３ａ
から離れ、クラツチが切れる。

ワイヤリング６の表面に溝１７を形成してある
ことにより、タグ５に対するワイヤリング６及び
ダイヤフラムスプリング７の円周方向のずれが防
止され、それにより第３図のＡ部分における干渉
が防止される。

（その他の実施例） (1) 第１図ではタグ５の内側面５ａに接触する側
のワイヤリング表面だけに溝１７を形成してい
るが、ダイヤフラムスプリング７に接触する側
のワイヤリング表面にも溝１７を形成してもよ
い。即ち各ワイヤリング６の両側面に溝１７を
形成してもよい。

(2) 第５、第６図の実施例では、タグ５及びダイ
ヤフラムスプリング７に接触するワイヤリング
の両側面に、細かい凹状溝１７ができるように
エンボス加工を施し、一方ワイヤリング６に接
触するタグ５の内側面５ａ及びダイヤフラムス
プリング７の表面にも、細かい凹状溝１７′が
できるようなエンボス加工を施している。

(3) 溝１７の断面形状としては、Ｕ形状やＶ形状
等各種考えられる。

（考案の効果） 以上説明したように本考案は、タグ（保持部）
５やダイヤフラムスプリング７に接触するワイヤ
リング６の表面に滑り止め用溝１７を形成してい
るので、クラツチ回転中におけるワイヤリング６
及びダイヤフラムスプリング７のクラツチカバー
１に対するずれを防止することができる。それに
より第３図のＡ部分におけるダイヤフラムスプリ
ング７の孔８の周縁とタグ５の干渉を避け、レリ
ーズ荷重のヒステリシス及びセツト荷重のヒステ
リシスの異常な増大を防ぐ。従つてセツト荷重特
性及びレリーズ荷重特性が安定し、クラツチの嵌
脱の操作性能の劣化を防ぐことができる。

また第３図から明確なように、各タグ５の円周
方向幅内にそれぞれ常時複数個の滑り止め用溝１
７が位置するように、滑り止め用溝１７の円周方
向幅及び滑り止め用溝間の間隔を設定しているの
で、ワイヤリング６をどのような円周方向位置に
セツトしても、各タグ５に対してそれぞれ必ず複
数の滑り止め用溝１７を接触させることができ
る。

従つて滑り止め用溝１７を加工する際に、従来
の特公昭54−42052のように保持部にそれぞれ嵌
合するように溝幅及び保持部間の間隔を正確に加
工する必要はなく、しかもワイヤリング組付け時
において、ワイヤリング６の円周方向の位置決め
をする必要がなく、溝１７の加工及び取付け作業
が容易になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案を適用したクラツチカバー組立
体の縦断面拡大図、第２図は同じく縦断面斜視
図、第３図は一部切断して示す第２図の矢視
図、第４図は第１図ワイヤリングの斜視図、第５
図は別の実施例の縦断面拡大図、第６図は第５図
の−断面図である。 １……クラツチカバー、５……タグ（保持部）、
６……ワイヤリング、７……ダイヤフラムスプリ
ング、１７……溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 断面形状が半径方向外方側に開く概ねコの字状
   の保持部を、クラツチカバー内周端部に円周方向
   に間隔を隔てて複数個形成し、保持部より１対の
   ワイヤリングを支持すると共に、ワイヤリング間
   にダイヤフラムスプリングを挾持するクラツチカ
   バー組立体において、保持部に接触する側のワイ
   ヤリング表面に、ワイヤリングの線芯に対して概
   ね直交する方向の概ね筋状の滑り止め用溝をワイ
   ヤリング全周にわたつて多数形成し、各保持部の
   円周方向幅内にそれぞれ常時複数個の滑り止め用
   溝が位置するように、滑り止め用溝の円周方向幅
   及び滑り止め用溝間の間隔を設定したことを特徴
   とするクラツチカバー組立体。