JPH0143819Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、単電池とガス分離板を交互に積層
する積層形燃料電池、特にその構造に関するもの
である。

積層形燃料電池は、燃料電極、電解質マトリツ
クスおよび酸化剤電極を有する単電池とガス分離
板とを交互に複数個積層して積層体を構成し、こ
の積層体に燃料および酸化剤ガスを供給して発電
を行なう一種の発電装置である。

積層形燃料電池には、使用する電解質によつ
て、アルカリ形、リン酸形、溶融炭酸塩形などの
種類があり、それぞれ、各方向において現在実用
化に向け精力的に研究が行なわれている。特にリ
ン酸形においては、すでにメガワツト級のものが
試作され試験されている。メガワツト級になる
と、数百セル程度の積層体を単位として、この積
層体を多数並べて運転することになる。しかしな
がら、従来この種の積層体は、単電池とガス分離
板または冷却機能を兼ねるガス分離板（冷却板）
とを単に交互に順次積層することによつて形成さ
れているために、第１番の層から最後の層まで積
層するのに著しく時間がかかつていた。また、一
度積層した後は単電池を取り換えることが困難で
あつた。さらに、トラツク、荷物列車などによる
積層体の運搬の際、高さの制限があるため積層体
の積層数に制約があるなどの欠点があつた。これ
らの欠点は、現在大型化の進んでいるリン酸形燃
料電池に限らず、アルカリ形、溶融炭酸塩形など
積層形燃料電池と呼ばれる発電装置に共通する欠
点である。

この考案は上記のような従来のものの欠点を除
去するためになされたもので、積層体を複数のブ
ロツクに分け、各ブロツク間に、四隅から中心へ
向かう吊り上げ金具装着用の穴を形成したリフト
板を挿入することにより、吊り上げ金具が簡単に
装着でき、上記積層体の積上げ、分解、取換えが
容易に行なえる積層形燃料電池を提供することを
目的としている。

以下、この考案の一実施例を図をもとに説明す
る。第１図〜第３図はそれぞれこの考案の一実施
例に係わるリフト板を示す平面図であり、第１図
は上板を、第２図は下板を、第３図は第１図、第
２図の上板と下板とを組み合せて吊り上げ金具を
装着した状態をそれぞれ示している。ただし、こ
こでは便宜上、上板と下板とを区別して用いる
が、構成は逆であつてもよい。他の実施例につい
ても同様である。図において、１は凹部、２は凸
部、３は吊り上げ金具装着用の穴、Ｔは上板と下
板にそれぞれ形成したテーパ部で、下板のテーパ
部へ上板のテーパ部を合わせ、上板と下板を位置
合せしている。４ａ，４ｂ，４ｃはステンレスよ
り成る吊り上げ金具、５は同じくステンレスより
成る心材であり、吊り上げ金具４ａ，４ｂ，４ｃ
に補強用の心材５を貫通させて、各金具４ａ，４
ｂ，４ｃを一体的に結合している。

リフト板は以上のように構成されているため、
上板と下板とを重ね合せた後でも、吊り上げ金具
の装着、取りはずしが容易に行なえる。なお、上
板および下板における組み合せて吊り上げ金具が
装着される面の裏側の面は、燃料および酸化剤な
どの反応ガスを単電池に供給するための流路や、
冷却のための溝を設けることができる。すなわ
ち、リフト板をガス分離板あるいは冷却板として
の用途に併用することが可能である。

第４図、第５図はそれぞれこの考案の他の実施
例に係わるリフト板を示す平面図であり、第５図
は第４図の板を２枚組み合せ、吊り上げ金具を装
置した状態を示している。図において、６は上下
２枚の板を重ね合せることによつて上下板の凹部
１，１でできる穴を埋めるためにリフト板に挿入
する金属板で、これにより上下板の位置合わせが
できる。７は吊り上げ金具４に設けられた雄ね
じ、８は吊り上げ金具４を固定するために金属板
６に設けられた雄ねじである。

この例の場合も、第１図〜第３図に示したリフ
ト板と同様に、２枚の板を重ね合せた後でも、吊
り上げ金具７の装着、取りはずしが容易に行な
え、また、リフト板をガス分離板あるいは冷却板
としての用途に併用することが可能である。

第６図、第７図はそれぞれこの考案の他の実施
例に係わるリフト板を示す平面図であり、第７図
は第６図の板と平板とを重ね合わせ、吊り上げ金
具を装着した状態を示している。図において、５
は吊り上げ金具４を板に固定するための雄ねじ７
を有する心材、８は板に設けられた雌ねじであ
る。

この例の場合も、２枚の板を重ね合せた後で
も、吊り上げ金具１０の装着、取りはずしが容易
に行なえ、また、リフト板をガス分離板あるいは
冷却板としての用途に併用することが可能であ
る。また、この例の場合は、平板と重ね合せなく
てもリフト板として使用可能である。

以上のようにリフト板には種々の形状が考えら
れるが、全てのリフト板に共通することは、四隅
から中心へ向かう吊り上げ金具装着用の穴３が形
成されているということであり、上記例のように
分離自在な上板と下板とで形成されていなくても
よく、適要する燃料電池の種類や要求されるリフ
ト板の強度、積層体の大きさなどに応じて最適な
形状が決定される。したがつて、この考案は上に
挙げた３つの例によつて限定されるものではな
い。また、リフト板の材料の一例として、カーボ
ンやステンレスなど電子伝導性に優れたものを用
いると、各ブロツク間を電気的に接続する働きも
するので有用である。

次に、積層体を複数のブロツクに分け、各ブロ
ツク間に、上記のようなリフト板を挿入した場合
に得られる有用性について説明する。

まず第１の有用性は、積層体を複数のブロツク
に分け、ブロツクごとに積層を行なうことによ
り、積層体の形成を短時間で行なえることであ
る。これはブロツクを吊り上げる金具４の装着が
可能になつたためで、積層の際にはこの金具４に
よつて機械を用いてブロツクの上げ下ろしを行な
える。したがつて、あらかじめブロツクごとの積
層を終えておけば、積層体の形成を短時間のうち
に行なうことができる。また、第３図や第５図に
示すようなリフト板を用いれば、上板と下板とで
ブロツクごとの位置合せが可能である。

第２の有用性は、積層体の高さ、つまりは積層
数に制限がなくなることである。すなわち、リフ
ト板で分割されたブロツクごとに運搬すれば、必
要に応じてブロツクの数を変え、積層体の高さお
よび積層数を自由に選ぶことができる。

第３の有用性は、ブロツクごとにマニホールド
（反応ガス供給機構）を取り付け、あらかじめブ
ロツクごとに電池特性の確認を行なえることであ
る。これは、一般にマニホールドが四辺に取り付
けられるのに対し、リフト板に形成した吊り上げ
金具４装着用の穴３は四隅から中心へ向かつてい
るため、マニホールドの取り付けに際し何ら支障
をきたさないからである。なお、ブロツクごとの
電池特性の確認の際には、ブロツク上下部にはそ
れぞれ上板、下板に類似した集電板を設置し、外
部負荷をとつて調べるのであるが、リフト板をそ
のまま集電板として用い、吊り上げ金具４を外部
負荷につないで調べることも可能である。

第４の有用性は、積層形燃料電池運転中に不良
の単電池が生じた場合、従来は積層体を全部取り
換えなければいけなかつたが、この考案に係わる
リフト板を用いれば、不良の単電池を有するブロ
ツクのみを取り換えればよく、それが容易に行な
えることである。現在電池の寿命としては数万時
間程度必要とされているが、数百セルもの単電池
がすべてその寿命を全うするとは限らない。した
がつて、ブロツクごとの取り換えは積層体の寿命
を伸ばし、電池のコストを下げる効果をもたら
す。なお、リフト板が上板と下板とで形成されて
いる場合、上板と下板とに分離すれば上下でブロ
ツクをささえることができるので、ブロツクの取
り換えに際し荷くずれしにくい。

第５の有用性は、不良の単電池が生じて燃料電
池の運転が不能になつた場合に、ブロツクの取り
換えを行なう前に応急処理としてリフト板を利用
して燃料電池の運転を継続できることである。こ
の場合、不良の単電池を有するブロツクの上下の
リフト板に形成した吊り上げ金具装着用の穴３に
集電用の金具を取り付け、ブロツク間をこの金具
によつて短絡すると共に、そのブロツクに反応ガ
スを流さないように反応ガス流路をふさぐかまた
はそのブロツクのマニホールドを取りはずし、上
下のブロツクに新たなマニホールドを取りつける
などの処置が必要である。

以上のように、この考案によれば積層体を複数
のブロツクに分け、各ブロツク間に、四隅から中
心へ向かう吊り上げ金具装着用の穴を形成したリ
フト板を挿入したので、吊り上げ金具が簡単に装
着でき、上記積層体の積上げ、分解、取り換えが
容易に行なえる積層形燃料電池が得られる効果が
ある。

また、リフト板を分離自在な上板と下板とで形
成すれば、上板をブロツクの下に、下板をブロツ
クの上に分離でき、上記積上げ、分解、取り換え
の際の荷くずれが防げる。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図はそれぞれこの考案の一実施例
に係わるリフト板である上板および下板を示す平
面図、第３図は第１図、第２図の上板および下板
を組み合せて吊り上げ金具を装着したリフト板を
示す平面図、第４図はこの考案の他の実施例に係
わるリフト板である上下兼用板を示す平面図、第
５図は第４図の板を２枚組み合せて吊り上げ金具
を装着したリフト板を示す平面図、第６図はこの
考案の他の実施例に係わるリフト板である上板を
示す平面図、第７図は第６図の上板と図示してい
ない平板とを組み合せて吊り上げ金具を装着した
リフト板を示す平面図である。 図において、１は板の凹部、２は凸部、３は四
隅から中心へ向かう吊り上げ金具装着用の穴、
４，４ａ，４ｂ，４ｃは吊り上げ金具、５は補強
用の心材、６は金属板である。なお、図中同一符
号は同一または相当部分を示すものとする。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 燃料電極、電解質マトリツクス及び酸化剤電
   極を有する単電池とガス分離板とを交互に複数
   個積層して積層体を構成する積層形燃料電池に
   おいて、上記積層体を複数のブロツクに分け、
   各ブロツク間に、四隅から中心へ向かう吊り上
   げ金具装着用の穴を形成したリフト板を挿入し
   たことを特徴とする積層形燃料電池。 (2) リフト板は分離自在な上板と下板で形成され
   ていることを特徴とする実用新案登録請求の範
   囲第１項記載の積層形燃料電池。