JP7871237B2 - 保持装置およびその製造方法 - Google Patents

保持装置およびその製造方法

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本発明は、対象物を保持する保持装置およびその製造方法に関する。
例えば、エッチングなどのプラズマ処理を行う装置において、対象物を保持する保持装置として静電チャックが従来から知られており、冷媒流路が形成される金属製ベース部と、その上に設けられた、対象物が載置されるセラミックス部とを有する構造となっている。
このような静電チャックとしては、金属製ベース部としてアルミニウムを用い、セラミックス部としてアルミナ(Al2O3)の溶射皮膜を用いるものが知られている(例えば特許文献1)。
また、静電チャックを、例えば、対象物にプラズマ処理を施す場合の技術として、特許文献2には、冷媒流路が形成される金属製ベース部と、対象物が載置されるセラミックス部と、セラミックス部とベース部との間に設けられた、熱応力緩和を目的とする、接着剤と無機フィラーとを含む複合物からなる接合部と、を有する静電チャックが提案されている。また、特許文献2には、熱伝導率が比較的高く、加工が容易なアルミニウムを用いてベース部を構成することにより、セラミックス部およびその上の対象物の冷却効率を高められることが記載されている。
特開2001-203258号公報 特開2023-42825号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、対象物が載置されるセラミックス部がプラズマからの入熱のため昇温し、表面のセラミックスと金属製ベース金属の熱膨張差により剥がれや変形等が発生し、対象物の加工精度が低下するおそれがある。
一方、特許文献2に記載された技術では、接合部の存在により熱膨張差が緩和され、また、冷却性能を維持することができるものの、接合部の損傷を十分に抑制できない場合もあり得、さらに、接合部の熱抵抗や最大せん断応力時のひずみ量の制御等が必要であり、所期の効果を確実に得ることが難しい。
したがって、本発明は、金属製ベース部とセラミックス部との熱膨張差による不都合を生じさせずに、高い冷却性能を発揮することができる保持装置およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の(1)~(4)の手段を提供する。
(1)対象物を保持する保持装置であって、
冷媒流路が形成された金属製ベース部と、前記金属製ベース部の表面に形成され、対象物が保持されるアルミナセラミックスからなるセラミックス部と、を有し、
前記セラミックス部は前記金属製ベース部に直接形成され、
前記金属製ベース部は、質量%で、C:0.1%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.8%以下、Ni:41.0~43.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるFe-Ni系合金の積層造形材であり、前記セラミックス部の使用温度範囲である-100~50℃において、前記セラミックス部との熱膨張差が1.0ppm/℃以下であることを特徴とする保持装置。
(2)前記セラミックス部は、プラズマ溶射皮膜であることを特徴とする(1)に記載の保持装置。
(3)対象物を保持する保持装置の製造方法であって、
積層造形により、冷媒流路が形成された金属製ベース部を形成する工程と、
前記金属製ベース部の表面に、対象物が保持されるアルミナセラミックスからなるセラミックス部を直接形成する工程と、
を有し、
前記金属製ベース部は、質量%で、C:0.1%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.8%以下、Ni:41.0~43.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるFe-Ni系合金の積層造形材であり、前記セラミックス部の使用温度範囲である-100~50℃において、前記セラミックス部との熱膨張差が1.0ppm/℃以下であることを特徴とする保持装置の製造方法。
(4)前記セラミックス部は、プラズマ溶射により形成された溶射皮膜であることを特徴とする(3)に記載の保持装置の製造方法。
本発明によれば、金属製ベース部とセラミックス部との熱膨張差による不都合を生じさせずに、高い冷却性能を発揮することができる保持装置および保持装置の製造方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る保持装置を示す断面図である。 Fe-Ni系積層造形合金(本発明材)とアルミナの20℃から各温度までの範囲の熱膨張係数を示す図である。 実施例における冷却性能試験を説明するための図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る保持装置を示す断面図である。保持装置10は静電チャックとして構成され、例えばプラズマエッチング装置等のプラズマ処理装置において、対象物Sを保持する。対象物Sは、半導体ウェーハのような基板であってよい。
保持装置10は、冷媒流路が形成された金属製ベース部1と、金属製ベース部1の表面に形成され、対象物が保持されるセラミックス部2とを有する。保持装置が静電チャックである場合には、プラズマ処理装置においてプラズマ処理を行う際に、セラミックス部2内に設けられた電極に直流電圧を印加して、対象物をクーロン力等により静電吸着して保持する。
金属製ベース部1は、冷媒流路3が形成されており、冷媒流路3に所定の温度の冷媒が通流される。金属製ベース部1内には、冷媒流路3が形成される。金属製ベース部1は、図示するように、冷媒流路3が形成された流路形成部1aと、その下の例えば中空構造をなす伝熱調整部1bとを有する構造であってもよい。セラミックス部2は、金属製ベース部1に直接形成されており、例えば溶射皮膜として形成される。溶射皮膜はプラズマ溶射皮膜であってよい。
保持装置10が例えばプラズマエッチングのようなプラズマ加工を行う装置に用いられる場合、プラズマからの入熱による対象物Sの温度上昇を抑制して加工精度を維持するために、冷媒流路3に通流される冷媒として、-100℃以下、例えば-110℃程度の温度の冷媒が通流され、プラズマにより加熱されるセラミックス部の使用温度範囲が-100~50℃とされる。冷媒としては例えばフッ素系の冷媒を用いることができる。
金属製ベース部1とセラミックス部2とは、セラミックス部の使用温度範囲における両者の熱膨張差が2.0ppm/℃以下となるように材料設計される。これにより、金属製ベース部材1としてアルミニウムを用いる従来の場合よりも、両者の熱膨張差が小さくでき、金属製ベース部1の上にセラミックス部2を直接形成しても熱応力を小さくすることができる。金属製ベース部1の上にセラミックス部2を直接形成する手法は問わないが、セラミックス部2を例えばプラズマ溶射皮膜のような溶射皮膜として形成することが好ましい。このように金属製ベース部1の上にセラミックス部2を直接形成することにより、これらの接合部が不要となり、接合部がプラズマにより損傷することがない。
金属製ベース部1を構成する材料は、セラミックス部の使用温度範囲において、セラミックス部2との熱膨張差が2.0ppm/℃以下となる材料であれば特に限定されないが、例えば、Fe-Ni系合金を好適に用いることができる。Fe-Ni系合金は、Ni含有量が36%Niにおいて0に近い低膨張を示し、それよりもNi量が多くなっても少なくなっても熱膨張が大きくなる。このため、Ni量を調整することにより、セラミックス部の使用温度範囲における金属製ベース部1とセラミックス部2との熱膨張差が2.0ppm/℃以下となるように調整することができる。
また、金属製ベース部1は積層造形材である。積層造形は、合金粉末を供給しつつ、レーザービームまたは電子ビームまたはプラズマを熱源として合金粉末を溶融し、三次元に積層して造形する技術であり、レーザービームまたは電子ビームまたはプラズマのパラメータを適正に選択することにより、凝固時の冷却速度を、一般的な鋳造では得られない5000℃/sec以上と極めて高速にすることができる。このように積層造形技術が適用されたFe-Ni系積層造形合金は、組織が微細化され、一般的な鋳造品や鍛造品にみられるNiのミクロ偏析が軽減される。このため、一般的な鋳造品や鍛造品よりも熱膨張係数が低くなる傾向にあるとともに、靭性や強度等の特性が高いものとなる。
セラミックス部2は、使用状態から要求される耐性、例えば耐熱性や耐プラズマ性を有していれば特に限定されないが、典型例としては、アルミナ(Al2O3)および窒化アルミニウム(AlN)を挙げることができる。
保持装置10が例えばプラズマエッチングのようなプラズマ加工を行う装置に用いられる場合、上述したように、冷媒流路3に冷媒が通流され、セラミックス部の使用温度範囲が-100~50℃とされるが、この場合、アルミナの平均熱膨張係数は-100~20℃で4.1ppm/℃、20~50℃で5.4ppm/℃である。
この-100~50℃の範囲においては、Fe-Ni系積層造形合金の組成を調整することでアルミナとの熱膨張差を1.0ppm/℃以下とすることができる。このようなFe-Ni系積層造形合金としては、Ni含有量が41.0~43.0質量%の範囲のものを用いることができる。具体的には、質量%で、C:0.1%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.8%以下、Ni:41.0~43.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるものを用いることができる。Cは熱膨張を増加させる元素であるから0.1%以下が好ましい。また、SiおよびMnは脱酸に有効な元素であるが、多すぎると熱膨張を増加させるため、Si:0.3%以下、Mn:0.8%以下とすることが好ましい。この組成のFe-Ni系積層造形合金は、-100~50℃の範囲における熱膨張係数が4.5~4.9ppm/℃の範囲であり、4.2~5.4ppm/℃のアルミナとの間の熱膨張差が十分に1.0ppm/℃以下の範囲である。
一例として、図2に、C:0.001%、Si:0.01%、Mn:0.03%、Ni:41.88%、残部:Fe+不可避的不純物のFe-Ni系積層造形合金とアルミナの20℃から各温度までの範囲の熱膨張係数を示す。なお、図2には、比較のため、従来から熱膨張係数がアルミナセラミックスに近似した合金として知られている42Ni合金(鍛造合金)の熱膨張係数も併せて示している。図2に示すように、上記組成のFe-Ni系積層造形合金は、-100~50℃において、熱膨張係数がアルミナと極めて近接しており、アルミナとの熱膨張差が、この温度範囲内で1.0ppm/℃以下となっているが、42Ni合金(鍛造合金)は、10℃以下でアルミナとの熱膨張差が上記組成のFe-Ni系積層造形合金よりも大きくなっており、-50℃以下ではその差が1.0ppm/℃を超えることがわかる。
また、金属製ベース部1が積層造形材であることによる大きな利点としては、切削加工と比較して冷媒流路3の設計の自由度が飛躍的に高まるため、冷却性能を調整することができることにある。
従来用いられているアルミニウム製の金属製ベース材は、切削加工が可能であるため、切削加工により冷媒流路を形成している。切削加工では比較的単純な冷媒流路しか形成することはできないが、アルミニウムは熱伝導率が高い材料であるため、比較的単純な冷媒流路でも良好な冷却性能が得られる。一方、アルミニウムよりも熱伝導率の小さい材料を用いた場合、切削加工によって冷媒流路を形成できたとしても、アルミニウムと同等の冷却性能を確保することは困難である。特に、Fe-Ni系合金はアルミニウムよりも熱伝導率が小さいことに加え、難加工材であり、切削加工で冷媒流路を形成すること自体が困難である。これに対して、金属製ベース部1を積層造形材とする場合は、設計通りの構造を製造できるため、冷媒流路3の設計の自由度が高い。このため、より冷却性の高い冷媒流路3を形成することができ、金属製ベース部を熱伝導率が小さい材料で構成しても、従来のアルミニウム製の金属製ベース部に近い冷却性能を得ることができる。特に、金属製ベース材1としてFe-Ni系積層造形合金を用いた場合は、セラミックス部との間の熱膨張係数差を所望の小さい値とすることができるとともに、積層造形により冷媒流路を最適化して所望の冷却性能を発揮させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
例えば、上記実施形態では、金属製ベース部としてFe-Ni系積層造形合金を例示したが、セラミックス部の使用温度範囲における金属製ベース部とセラミックス部の熱膨張差が2.0ppm/℃以下であればこれに限らない。また、セラミックス部としてアルミナを例示したが、セラミックス部についてもアルミナに限定されない。さらに、セラミックス部の使用温度範囲として-100~50℃を例示したが、これに限るものではなく、選択された使用温度範囲において、金属製ベース部とセラミックス部の熱膨張差が2.0ppm/℃以下になるようにこれらの材料を選択すればよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、ベース材(φ40mm×10mm)として比較材であるアルミニウムと、本発明材(C:0.001%、Si:0.01%、Mn:0.03%、Ni:41.88%、残部:Fe+不可避的不純物のFe-Ni系積層造形合金)を用い、それら上にプラズマ溶射により300μm厚のアルミナ溶射皮膜を形成し、サンプルA(ベース材がアルミニウム)とサンプルB(ベース材が本発明材)を作製した。なお、-100~20℃の平均熱膨張係数は、本発明材が約4.5ppm/℃、アルミニウムが約21ppm/℃、アルミナ溶射皮膜が約4.1ppmである。
サンプルA、Bについて、-196℃と500℃との間で5サイクルの熱処理サイクル試験を行ったところ、比較材であるアルミニウムを用いたサンプルAは、4サイクル目にアルミナ溶射皮膜に剥離が認められたが、本発明材を用いたサンプルBは5サイクル後もアルミナ溶射皮膜の剥離は生じなかった。
次に、冷却性能試験を行った。ここでは、図3(a)~(c)に示す3つの冷却性能試験サンプル(サンプルC、D、E)を作成した。いずれのサンプルも冷媒流路を有するφ400mmのベース材の上に、厚さ3mmのアルミナ板を設けた構造を有するものである。サンプルCは、図3(a)に示すように、ベース材として、比較材であるアルミニウムで構成され、冷媒流路が表面から10mmの部分に形成されたものを用いた。サンプルDは、図3(b)に示すように、ベース材として、本発明材(C:0.001%、Si:0.01%、Mn:0.03%、Ni:41.88%、残部:Fe+不可避的不純物のFe-Ni系積層造形合金)で構成され、冷媒流路がサンプルCと同様に、表面から10mmの部分に形成されたものを用いた。サンプルEは、図3(c)に示すように、ベース材として、サンプルDと同様の本発明材で構成され、冷却流路が表面から1mmの部分に形成されたものを用いた。
これらサンプルのセラミックス部の表面にシリコンウェーハ(φ300mm)を載置し、冷媒流路に-110℃の冷媒を流量:0.5L/sで通流させてウェーハ温度を測定することにより冷却性能試験を行った。なお、ウェーハへの熱移動は5kWである。
その結果、サンプルCのウェーハ温度は-94.8℃であるのに対し、サンプルDではウェーハ温度が-74.0℃であった。これは、サンプルDではベース材として熱伝導率がアルミニウムよりも低いFe-Ni系合金を用いたのにもかかわらず、サンプルCと同じ冷媒流路であったため、冷却(放熱性)が不十分になったものと考えられる。一方、サンプルEでは、ウェーハの温度が-94.1℃とサンプルCと近い値となった。これは、冷却流路をよりウェーハに近い位置としたことにより、ウェーハの冷却性能(放熱性)が上昇したためと考えられる。
次に、サンプルC、D、Eについて、同じ冷媒を用いて冷媒の流量を0.8L/sに上昇させて、同様にウェーハ温度を測定した。その結果、ウェーハ温度が、サンプルCでは-97.1℃、サンプルDでは-76.3℃、サンプルEでは-96.4℃となった。すなわち、ベース材としてFe-Ni系合金を用いた場合に、流量を多くする(例えば冷媒流路の断面積を大きくすることに相当)ことによっても、ウェーハの冷却性能(放熱性)が上昇することが確認された。
これらの結果より、ベース材をFe-Ni系合金のようなセラミックス部に近い低熱膨張係数の材料により積層造形で形成し、冷媒流路の位置や断面積等を調整することにより、ベース材としてアルミニウムを用いた場合に近いウェーハの冷却性能(放熱性)が得られることが確認された。
1;金属製ベース部
1a;流路形成部
1b;伝熱調整部
2;セラミックス部
3;冷媒流路
10;保持装置

Claims (4)

  1. 対象物を保持する保持装置であって、
    冷媒流路が形成された金属製ベース部と、前記金属製ベース部の表面に形成され、対象物が保持されるアルミナセラミックスからなるセラミックス部と、を有し、
    前記セラミックス部は前記金属製ベース部に直接形成され、
    前記金属製ベース部は、質量%で、C:0.1%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.8%以下、Ni:41.0~43.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるFe-Ni系合金の積層造形材であり、前記セラミックス部の使用温度範囲である-100~50℃において、前記セラミックス部との熱膨張差が1.0ppm/℃以下であることを特徴とする保持装置。
  2. 前記セラミックス部は、プラズマ溶射皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
  3. 対象物を保持する保持装置の製造方法であって、
    積層造形により、冷媒流路が形成された金属製ベース部を形成する工程と、
    前記金属製ベース部の表面に、対象物が保持されるアルミナセラミックスからなるセラミックス部を直接形成する工程と、
    を有し、
    前記金属製ベース部は、質量%で、C:0.1%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.8%以下、Ni:41.0~43.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるFe-Ni系合金の積層造形材であり、前記セラミックス部の使用温度範囲である-100~50℃において、前記セラミックス部との熱膨張差が1.0ppm/℃以下であることを特徴とする保持装置の製造方法。
  4. 前記セラミックス部は、プラズマ溶射により形成された溶射皮膜であることを特徴とする請求項3に記載の保持装置の製造方法。
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