JP7862529B2 - カカオ豆の製造方法 - Google Patents

カカオ豆の製造方法

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Description

本発明は、カカオ豆の製造方法に関する。
カカオ(Theobroma cacao)の種子は、カカオ豆と呼ばれる。従来、カカオ豆加工物としてカカオマスが知られており、食品用原料として使用されている。
カカオマスの一般的な調製方法は、次の通りである。まず、カカオポッドからカカオ豆を取り出し、取り出したカカオ豆を発酵させ、発酵させたカカオ豆を乾燥させ、乾燥させたカカオ豆に対してロースト処理及び外皮除去処理を施し、カカオニブを調製する。次いで、カカオニブに対して磨砕処理を施し、カカオマスを調製する。
従来、カカオ品種として、クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種等が知られている。一般的なカカオ品種のカカオ豆の胚乳の色は、収穫直後は紫色、発酵後は茶色がかった紫色、乾燥後は茶色である。
一方、カカオ豆の胚乳が白色であるカカオ品種が知られている。このようなカカオ品種のカカオ豆の胚乳は、収穫後は白色であるが、発酵させると褐変が生じる。カカオ豆を発酵させずに乾燥しても、やはり褐変が生じる。このような状況に鑑み、特許文献1には、白色カカオニブの製造方法が記載されている。特許文献1では、胚乳が白色であるカカオ豆を収穫し、収穫したカカオ豆を、発酵させずに又は僅かに発酵させた後に予備加熱し、予備加熱したカカオ豆を乾燥することにより、白色カカオニブを製造する。カカオ豆の予備加熱は、熱湯中に浸漬することにより、又は、水蒸気で蒸すことにより、又は、水蒸気雰囲気下で加圧加熱をすることにより、約60~120℃の温度で30秒~1時間程度行われる。予備加熱により、カカオ豆中の酵素の失活又はカカオ豆に付着している微生物の死滅がもたらされる。予備加熱後の乾燥は、天日により、又は、熱風により、又は、直熱加熱により行われる。
特開平7-16059号公報
従来の未発酵カカオ豆から調製されたカカオマスは、粘度が高い。高粘度のカカオマスを原料として食品を製造すると、食品の製造効率の低下(例えば、送液性の低下、食品用原料のロスの発生等)が生じる。
そこで、本発明は、低粘度のカカオマスの製造を可能とするカカオ豆の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下のカカオ豆の製造方法を提供する。
[1]以下の工程:
(a)カカオ豆を含むカカオポッド内容物を未発酵状態で準備する工程;及び
(b)工程(a)で準備された前記カカオポッド内容物に対してマイクロ波加熱処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る工程
を含む、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の製造方法。
[2]前記カカオポッド内容物が、クリオロ種カカオに由来するカカオポッド内容物である、[1]に記載の製造方法。
[3]工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、乾燥処理を行い、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]工程(a)で準備された前記カカオポッド内容物がパルプを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理を、前記カカオ豆と前記パルプとが接触した状態で行う、[4]に記載の製造方法。
[6]工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、前記カカオポッド内容物から前記パルプを取り除き、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7]工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、前記カカオポッド内容物から前記パルプを取り除き、次いで、乾燥処理を行い、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、[4]又は[5]に記載の製造方法。
[8]工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、前記カカオポッド内容物から前記パルプを取り除くことなく、乾燥処理を行い、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、[4]又は[5]に記載の製造方法
[9]工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、乾燥処理を行うことなく、粉砕処理又は磨砕処理を行い、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるL表色系のL値、a値及びb値が、それぞれ、L値:43以上55以下、a値:2.0以上9.5以下及びb値:7.0以上23.5以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量が42mg/g以上である、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量が15mg/g以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量が11.5mg/g以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量が5.0mg/g以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量が15mg/g以上である、[1]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量が2400μg/g以下である、[1]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、低粘度のカカオマスの製造を可能とするカカオ豆の製造方法が提供される。
以下、本発明について説明する。
本発明は、以下の工程:
(a)カカオ豆を含むカカオポッド内容物を未発酵状態で準備する工程;及び
(b)工程(a)で準備されたカカオポッド内容物に対してマイクロ波加熱処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る工程
を含む、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の製造方法に関する。
<工程(a)>
工程(a)は、カカオ豆を含むカカオポッド内容物を未発酵状態で準備する工程である。
カカオポッド内容物が由来するカカオ品種としては、例えば、クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種等が挙げられる。カカオポッド内容物が由来するカカオ品種は、クリオロ種であることが好ましい。クリオロ種の一種として、カルメロ(Carmelo)種がある。一実施形態において、カカオポッド内容物が由来するカカオ品種は、カルメロ種である。カルメロ種カカオのカカオ豆の胚乳は白色である。カルメロ種カカオの産地は、メキシコ合衆国であることが好ましい。
カカオポッド(カカオの実)は固い殻を有し、その中の白い果肉(パルプ)の中にカカオ豆(種子)が入っている。カカオ豆は、外皮(シェル又はハスク)を有し、外皮の中には、胚乳(ニブ)及び胚芽(ジャーム)が含まれる。
カカオ豆を含むカカオポッド内容物は、カカオポッドを機械的に又は手作業で割って開け、パルプとともにカカオ豆を取り出すことにより得ることができる。カカオ豆を含むカカオポッド内容物は、カカオ豆に加えてパルプを含んでいてもよく、カカオ豆はシェルを含んでいてもよい。
カカオ豆を含むカカオポッド内容物は、カカオ豆に加えてパルプを含むことが好ましい。工程(a)において、カカオ豆及びパルプを含むカカオポッド内容物を未発酵状態で準備し、工程(b)において、工程(a)で準備されたカカオポッド内容物に対してマイクロ波加熱処理を行うことにより、後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を有するマイクロ波加熱処理済みカカオ豆を効率よく得ることができると考えられる。後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を有するマイクロ波加熱処理済みカカオ豆は、少なくとも特徴1を有することが好ましい。カカオ豆及びパルプを含むカカオポッド内容物は、シェルを含んでいてもよい。カカオポッド内容物に含まれるパルプが由来するカカオ品種は、カカオポッド内容物に含まれるカカオ豆が由来するカカオ品種と異なっていてもよいが、通常、同一である。
従来の典型的な処理では、カカオポッドの収穫後、カカオポッドからカカオ豆を取り出し、取り出したカカオ豆を発酵させ、乾燥させる。発酵は、微生物による有機物質の酵素的又は代謝的な分解を含むプロセスであり、嫌気的プロセス又は好気的プロセスのいずれか一方であってもよいし、嫌気的プロセス及び好気的プロセスの両方であってもよい。発酵により、カカオ豆中の糖分が分解されてアルコールが生じ、生じたアルコールは酢酸に変換される。発酵は、例えば、カカオ豆を箱に収容して放置し、そのまま又は必要に応じて攪拌し、30~60℃の温度で3~7日間保持することにより行うことができる。
従来の典型的な処理とは異なり、工程(a)では、カカオ豆を含むカカオポッド内容物を未発酵状態で準備する。
「未発酵」は、カカオ豆の発酵の程度に関する表現である。発酵の程度は、発酵指数で表すことができる(Shamsuddin SB and Dimick PS, Qualitative and quantitative measurements of cacao bean fermentation, in Proceedings of Cocoa Biotechnology, ed. by Dimick PS, Department of Food Science, Penn State University, University Park, PA, pp. 55-78 (1986))。本発明における「未発酵状態」の発酵指数は、通常0.5未満である。
発酵は、カカオポッドからカカオ豆を取り出した直後から生じ得るが、僅かに生じた発酵は、本発明における「未発酵状態」に包含される。例えば、カカオポッドから取り出してから2日以内(特に1日以内)発酵可能な状況下に保持されたカカオ豆は、本発明における「未発酵状態」に包含される。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で準備されたカカオポッド内容物に対してマイクロ波加熱処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る工程である。
マイクロ波加熱処理は、カカオ豆の表面温度が、好ましくは75℃以上120℃以下、より好ましくは80℃以上115℃以下、より好ましくは83℃以上110℃以下となるよう、かつ/あるいは、カカオ豆の中心温度が、好ましくは75℃以上95℃以下、より好ましくは80℃以上90℃以下、より好ましくは83℃以上85℃以下となるように行う。カカオ豆の胚乳の褐変を効果的に抑制する観点から、カカオ豆の表面温度及び中心温度の少なくとも一方が上記範囲であることが好ましく、両方が上記範囲であることがより好ましい。マイクロ波加熱処理は、加圧下又は減圧下で行ってもよいが、通常、常圧で行う。「常圧」は、加圧も減圧も行っていない状態の圧力であり、通常101.3kPaを意味する。カカオ豆の表面温度は、非接触式にて常法に従って測定することができ、カカオ豆の中心温度は、接触式にて常法に従って測定することができる。
マイクロ波加熱処理は、電子レンジを使用して行うことができる。電子レンジの出力は、好ましくは300W以上6000W以下、より好ましくは400W以上3000W以下、より一層好ましくは500W以上1500W以下である。電子レンジによる加熱時間は、加熱するカカオポッド内容物の質量に応じて適宜調整することができる。例えば、加熱するカカオポッド内容物の質量が200gである場合、電子レンジによる加熱時間は、好ましくは0.5分以上50分以下、より好ましくは1分以上30分以下、より一層好ましくは2分以上15分以下である。一実施形態において、加熱するカカオポッド内容物の質量は200g、電子レンジの出力は1500W、電子レンジによる加熱時間は2分である。別の実施形態において、加熱するカカオポッド内容物の質量は200g、電子レンジの出力は1350W、電子レンジによる加熱時間は3分である。
マイクロ波加熱処理は、個別のカカオポッド内容物に対して行ってもよい。例えば、カカオポッド内容物を容器に収容し、容器に収容されたカカオポッド内容物に対してマイクロ波加熱処理を行ってもよい。マイクロ波加熱処理は、容器を密閉して行ってもよいし、一部開放して行ってもよいし、開放して行ってもよい。
マイクロ波加熱処理は、複数のカカオポッド内容物に対して連続して行ってもよい。例えば、コンベアにより連続して搬送される複数のカカオポッド内容物に対して、マイクロ波加熱処理を行ってもよい。
工程(a)で準備されたカカオポッド内容物がカカオ豆に加えてパルプを含む場合、工程(b)において、マイクロ波加熱処理を、カカオ豆とパルプとが接触しない状態で行ってもよいが、カカオ豆とパルプとが接触した状態で行うことが好ましい。マイクロ波加熱処理を、カカオ豆とパルプとが接触した状態で行うことにより、後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を有するマイクロ波加熱処理済みカカオ豆を効率よく得ることができると考えられる。後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を有するマイクロ波加熱処理済みカカオ豆は、少なくとも特徴1を有することが好ましい。
工程(b)において、マイクロ波加熱処理の後、乾燥処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得てもよい。乾燥処理は常法に従って行うことができる。乾燥処理は、例えば、天日下で行うことができる。乾燥処理は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の水分量が、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、例えば0~12質量%、好ましくは4~8質量%、より好ましくは6~7質量%になるまで行うことが好ましい。水分量の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用する点を除き、後述の実施例1の「(4)カカオマスの評価」中の[水分量の測定]と同様にして行うことができる。
工程(a)で準備されたカカオポッド内容物がカカオ豆に加えてパルプを含む場合、工程(b)において、マイクロ波加熱処理の後、カカオポッド内容物からパルプを取り除き、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得ることが好ましい。これにより、所定重量あたりに含まれるカカオ由来の可食部の割合(歩留まり)が向上する。
工程(a)で準備されたカカオポッド内容物がカカオ豆に加えてパルプを含む場合、工程(b)において、マイクロ波加熱処理の後、カカオポッド内容物からパルプを取り除き、次いで、乾燥処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得てもよい。乾燥処理に関する説明は、上記の通りである。
工程(a)で準備されたカカオポッド内容物がカカオ豆に加えてパルプを含む場合、工程(b)において、マイクロ波加熱処理の後、カカオポッド内容物からパルプを取り除くことなく、乾燥処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得てもよい。乾燥処理に関する説明は、上記の通りである。
工程(a)で準備されたカカオポッド内容物がカカオ豆に加えてパルプを含む場合、工程(b)において、マイクロ波加熱処理の後、乾燥処理を行うことなく、粉砕処理又は磨砕処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得てもよい。粉砕処理及び磨砕処理はそれぞれ常法に従って行うことができる。なお、マイクロ波加熱処理の後、カカオポッド内容物からパルプを取り除き、次いで、乾燥工程を行うことなく、粉砕処理又は磨砕処理を行ってもよいし、マイクロ波加熱処理の後、カカオポッド内容物からパルプを取り除くことなく、かつ、乾燥工程を行うことなく、粉砕処理又は磨砕処理を行ってもよい。
工程(b)で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆は、後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を有することが好ましい。後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を有するマイクロ波加熱処理済みカカオ豆は、少なくとも特徴1を有することが好ましい。後述する特徴1~7のうちの1又は2以上を実現する観点から、工程(a)で準備されるカカオポッド内容物は、クリオロ種カカオに由来するカカオポッド内容物であることが好ましく、クリオロ種カカオはカルメロ種カカオであることがより好ましく、カルメロ種カカオの産地は、メキシコ合衆国であることが好ましい。
<特徴1>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるL表色系のL値、a値及びb値は、それぞれ、
値:好ましくは43以上55以下、より好ましくは44以上53以下、より一層好ましくは45以上52以下、
値:好ましくは2.0以上9.5以下、より好ましくは3.0以上9.2以下、より一層好ましくは4.0以上9.0以下、及び、
値:好ましくは7.0以上23.5以下、より好ましくは8.0以上23.0以下、より一層好ましくは9.0以上22.0以下
である。この特徴を「特徴1」という。
「L表色系」は、CIE(国際照明委員会)で規格化され、JIS Z 8781-4:2013で採用されている表色系である。L表色系において、明度はLで表され、色度はa及びbで表される。
値、a値及びb値の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
特徴1は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の胚乳における褐変が抑制されていることを示す。工程(a)で準備されるカカオポッド内容物が、クリオロ種(特にカルメロ種)カカオに由来するカカオポッド内容物である場合、特徴1は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の胚乳の白色が維持されていること(すなわち、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の胚乳の褐変が抑制されていること)を示す。
また、特徴1は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるアントシアニン量が少ないことを示す。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるアントシアニン量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは0.40mg/g以下、より好ましくは0.38mg/g以下、より一層好ましくは0.36mg/g以下である。なお、「mg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりのアントシアニン量(mg)を意味する。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるアントシアニン量の下限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるアントシアニン量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、0mg/g以上であってもよいし、0.01mg/g以上であってもよいし、0.1mg/g以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
アントシアンは、式(I)に示される骨格を有するアントシアニジンに糖が結合した配糖体の総称である。
アグリコンであるアントシアニジンとしては、例えば、シアニジン(Cyanidin)、デルフィニジン(Delphinidin)、ペラルゴニジン(Pelargonidin)、ペオニジン(Peonidin)、ペチュニジン(Petunidin)、マルビジン(Malvidin)等が挙げられる。
シアニジンにおいて、RはOH、RはHである。デルフィニジンにおいて、RはOH、RはOHである。ペラルゴニジンにおいて、RはH、RはHである。ペオニジンにおいて、RはOCH、RはHである。ペチュニジンにおいて、RはOCH、RはOHである。マルビジンにおいて、RはOCH、RはOCHである。
アントシアニジンに結合する糖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、アラビノース等の単糖類、ルチノース、ソフォロース等の二糖類等が挙げられる。
アントシアニン量の測定方法は、以下の通りである。
[アントシアニン量の測定方法]
試料 1gにヘキサン 9mLを加えて常温で30分間振とうさせた後、遠心分離(3000rpm,10分,4℃)し、上澄みを廃棄する。この操作を合計2回行った後、ドラフト内で保管してヘキサンを除去する(脱脂)。脱脂後の試料に50%メタノール 50mLを加え、加熱還流(60分,83℃)した後、遠心分離(3000rpm,10分,23℃)して抽出液を得る。この操作を2回行い、各操作で得られた抽出液を合わせて、抽出液 100mLを得る。得られた抽出液を使用して、アントシアニン量の測定をHPLCにより行う。アントシアニン量は、標品としてCyanidin 3-O-β-D-Galactopyranoside Chloride(富士フイルム和光製)とCyanidin-3-O-Arabinoside Chloride(フナコシ製)を用いて、前記2成分の合計量として算出する。HPLCの際、得られた抽出液を0.45μLのフィルターで濾過し、HPLC用サンプルとする。HPLCの測定条件は、以下の通りである。なお、「ACN」はアセトニトリルを、「TFA」はトリフルオロ酢酸を意味する。
<HPLCの測定条件>
カラム:Develosil ODS-HG-5
カラム温度:40℃
移動相A:超純水-TFA(超純水:TFA=100:0.1)
移動相B:ACN-TFA(ACN:TFA=100:0.1)
流速:0.8mL/分
検出器:UV 520nm
グラジエントプログラム:
<特徴2>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは42mg/g以上、より好ましくは45mg/g以上、より一層好ましくは47mg/g以上である。この特徴を「特徴2」という。なお、「mg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりの総ポリフェノール量(mg)を意味する。
特徴2は、従来の発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量が多いことを示す。マイクロ波加熱処理により、カカオ豆に内在する酵素が失活し、これにより、特徴2を実現することができる。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量の上限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、75mg/g以下であってもよいし、70mg/g以下であってもよいし、65mg/g以下であってもよい。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量は、(-)-エピカテキンに換算した量で表されている。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量の測定は、フォーリンチオカルト法により行うことができる。フォーリンチオカルト法は、フォーリン試薬がフェノール性水酸基により還元されて青色に呈色することを利用する方法である。フォーリンチオカルト法によるポリフェノール含量の測定方法に関しては、全国チョコレート業構成取引協議会「チョコレート類のカカオポリフェノールに係る表示基準」 別紙「カカオポリフェノール測定法」を参照することができる。
ポリフェノールとしては、例えば、アントシアニン、カテキン、エピカテキン、クロロゲン酸、没食子酸、プロカテク酸、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2、これらの1種以上の重合体(ダイマー、トリマー、テトラマー又はポリマー)等が挙げられる。
<特徴3>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは15mg/g以上、より好ましくは20mg/g以上、より一層好ましくは25mg/g以上である。この特徴を「特徴3」という。なお、「mg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりのプロシアニジン量(mg)を意味する。
特徴3は、従来の発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量が多いことを示す。マイクロ波加熱処理により、カカオ豆に内在する酵素が失活し、これにより、特徴3を実現することができる。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量の上限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、50mg/g以下であってもよいし、45mg/g以下であってもよいし、40mg/g以下であってもよい。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量は、(+)-カテキン、(-)-エピカテキン、プロシアニジンB2(二量体)、プロシアニジンB5(二量体)、プロシアニジンC1(三量体)及びシンナムタンニンA2(四量体)からなる6種類のプロシアニジン類の合計量を意味し、(-)-エピカテキンに換算した量で表されている。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
<特徴4>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは11.5mg/g以下、より好ましくは11.2mg/g以下、より一層好ましくは11.0mg/g以下である。この特徴を「特徴4」という。なお、「mg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりのテオブロミン量(mg)を意味する。
特徴4は、従来の未発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量が少ないことを示す。
テオブロミンは、苦味の原因となる。したがって、特徴4は、従来の未発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆のテオブロミンに起因する苦味が弱いことを示す。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量の下限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、4.0mg/g以上であってもよいし、5.0mg/g以上であってもよいし、6.0mg/g以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
<特徴5>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは5.0mg/g以下、より好ましくは4.5mg/g以下、より一層好ましくは4.2mg/g以下である。この特徴を「特徴5」という。なお、「mg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりのカフェイン量(mg)を意味する。
特徴5は、従来の未発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量が少ないことを示す。
カフェインは、苦味の原因となる。したがって、特徴5は、従来の未発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆のカフェインに起因する苦味が弱いことを示す。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量の下限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、3.0mg/g以上であってもよいし、3.5mg/g以上であってもよいし、4.0mg/g以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
<特徴6>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは15mg/g以上、より好ましくは17mg/g以上、より一層好ましくは18mg/g以上である。この特徴を「特徴6」という。なお、「mg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりのスクロース量(mg)を意味する。
特徴6は、従来の未発酵カカオ豆及び発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量が多いことを示す。
スクロースは、甘味の原因となる。したがって、特徴6は、従来の未発酵カカオ豆及び発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆のスクロースに起因する甘味が強いことを示す。マイクロ波加熱処理により、カカオ豆に内在する酵素が失活し、二糖であるスクロースの分解が抑制される。また、マイクロ波加熱処理により、ショ糖を資化する酵母等の微生物が死滅する。これにより、特徴6を実現することができる。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量の上限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、35mg/g以下であってもよいし、30mg/g以下であってもよいし、25mg/g以下であってもよい。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
<特徴7>
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、好ましくは2400μg/g以下、より好ましくは2300μg/g以下、より一層好ましくは2250μg/g以下である。この特徴を「特徴7」という。なお、「μg/g」は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆 1gあたりの総アミノ酸量(μg)を意味する。
特徴7は、従来の未発酵カカオ豆及び発酵カカオ豆と比較して、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量が少ないことを示す。
マイクロ波加熱処理により、カカオ豆に内在する酵素が失活し、タンパク質の分解が抑制される。これにより、特徴7を実現することができる。
特徴7を有するマイクロ波加熱処理済みカカオ豆は、従来の未発酵カカオ豆及び発酵カカオ豆と比較して、総アミノ酸量が少ないことから、還元糖とアミノ酸とのメイラード反応が生じにくく、したがって、カカオ豆の胚乳の褐変が生じにくい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量の下限は特に限定されない。マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量は、例えば、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の質量を基準として、1950μg/g以上であってもよいし、2000μg/g以上であってもよいし、2100μg/g以上であってもよい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量は、タンパク質を構成する20種のアミノ酸(Asp、Thr、Ser、Asn、Glu、Gln、Gly、Ala、Val、Cys、Met、Ile、Leu、Tyr、Phe、Trp、Lys、His、Arg及びPro)の合計量を意味する。
マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量の測定は、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
本発明の製造方法で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆には、工程(b)で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆に加えて、工程(b)で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆に対して、粉砕処理、磨砕処理、乾燥処理、殺菌処理及びロースト処理から選択された1又は2以上の処理が施されたものも包含される。粉砕処理、磨砕処理、乾燥処理、殺菌処理及びロースト処理はそれぞれ常法に従って行うことができる。但し、本発明の製造方法で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆には、カカオニブ以降の段階のカカオ豆加工物(例えば、カカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ、ココアパウダー等)は包含されない。
本発明の製造方法で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆(工程(b)で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆に対して、粉砕処理、磨砕処理、乾燥処理、殺菌処理及びロースト処理から選択された1又は2以上の処理が施されたものを包含する)を使用してカカオマスを製造することにより、低粘度のカカオマスを得ることができる。
カカオマスは、例えば、次のようにして得ることができる。まず、工程(b)で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆に対して外皮除去処理及びロースト処理を施し、カカオニブを得る。工程(b)で得られたマイクロ波加熱処理済みカカオ豆に対して、殺菌処理を施した後に、外皮除去処理及びロースト処理を施してもよい。殺菌処理は、一般的なカカオ豆の殺菌方法として知られている方法に従って行うことができる。外皮除去処理は、ロースト処理の前に行ってもよいし、ロースト処理の後に行ってもよい。外皮除去処理は、セパレーターを使用して常法に従って行うことができる。外皮除去処理では、カカオ豆が粉砕され、外皮が除去される。ロースト処理は、ロースターを使用して常法に従って行うことができる。ロースト処理は、例えば、品温が100℃以上160℃以下となるように行うことができる。次いで、カカオニブに対して磨砕処理を施すことによりカカオマスを得る。磨砕処理はグラインダー又はレファイナーを使用して常法に従って行うことができる。複数の種類のカカオニブをブレンダーにより混合した後、磨砕処理を行ってもよい。
メディアン径が7μm以上8μm以下、かつ、水分量が3質量%以上4質量%以下である状態におけるカカオマスの粘度は、好ましくは10000cP以下、より好ましくは4500cP以上9000cP以下、より一層好ましくは4700cP以上8500cP以下、より一層好ましくは5000cP以上8000cP以下である。これにより、カカオマスを原料として食品を製造する際、食品の製造効率の低下(例えば、送液性の低下、食品用原料のロスの発生等)を抑制することができる。カカオマスの水分量、メディアン径及び粘度の測定は、カカオマスを試料として使用し、実施例に記載の方法により行うことができる。
〔実施例1〕
(1)電子レンジ処理を施した未発酵カカオ豆の調製
メキシコ合衆国産カルメロ種カカオのポッドからババ(パルプがついた生のカカオ豆)を取り出した。取り出したババ 200gをジップ付きのプラスチック製袋に分けて収容し、電子レンジ(Whirpool社製 WM1211D(1350W,50Hz))を使用して3分間加熱した。電子レンジ処理は、ジップを一部開放した状態で行った。電子レンジ処理されたババを袋から取り出し、パルプを除去せずに、天日下に置き、水分量が6~7質量%になるまで乾燥させた。こうして、電子レンジ処理を施した未発酵カカオ豆を得た。
(2)カカオ豆の評価
[L表色系のL値、a値及びb値の測定]
上記(1)で得られたカカオ豆を試料として使用した。試料をロールで粉砕した。得られた粉砕物を容器に収容し、55℃の湯せんで10分間溶解させた後、模様の無いチョコレート型で成形した。得られた成形物をチョコレート型から剥離した後、チョコレート型に接していた成形物の面のL表色系のL値、a値及びb値を3回測定し、平均値を求めた。測定結果を表1に示す。表1中の各値は、3回の測定の平均値である。
値、a値及びb値の測定は、コニカミノルタ株式会社製 色彩色差計CR-400を使用して、JIS Z8722:2009に記載の分光測色方法及び幾何条件cに準拠してSCI方式で行った。SCI方式は、全ての反射光(正反射光を含む)に基づいて測定を行う方式である。
[総ポリフェノール量、プロシアニジン量、テオブロミン量及びカフェイン量の測定]
上記(1)で得られたカカオ豆を試料として使用した。試料 1gにヘキサン 9mLを加えて常温で30分間振とうさせた後、遠心分離(3000rpm,10分,4℃)し、上澄みを廃棄した。この操作を合計2回行った後、ドラフト内で保管してヘキサンを除去した(脱脂)。
脱脂後の試料に50%メタノール 50mLを加え、加熱還流(60分,83℃)した後、遠心分離(3000rpm,10分,23℃)して抽出液を得た。この操作を2回行い、各操作で得られた抽出液を合わせて、抽出液 100mLを得た。得られた抽出液を使用して、総ポリフェノール量、プロシアニジン量、テオブロミン量及びカフェイン量の測定を行った。
総ポリフェノール量の測定は、フォーリンチオカルト法を使用して行った。測定結果を表2に示す。総ポリフェノール量は、(-)-エピカテキンに換算した量で表されている。
プロシアニジン量、テオブロミン量及びカフェイン量の測定は、HPLCを使用して行った。測定結果を表2に示す。プロシアニジン量は、(+)-カテキン、プロシアニジンB2(二量体)、(-)-エピカテキン、プロシアニジンC1(三量体)、シンナムタンニンA2(四量体)及びプロシアニジンB5(二量体)の合計量であり、(-)-エピカテキンに換算した量(エピカテキン当量)で表されている。
HPLCの際、得られた抽出液を0.45μLのフィルターで濾過し、HPLC用サンプルとした。HPLCの測定条件は、以下の通りとした。なお、「ACN」はアセトニトリルを、「TFA」はトリフルオロ酢酸を意味する。
<HPLCの測定条件>
カラム:Develosil ODS-HG-5
カラム温度:40℃
移動相A:超純水-TFA(超純水:TFA=100:0.1)
移動相B:ACN-TFA(ACN:TFA=100:0.1)
流速:0.8mL/分
検出器:UV 280nm
グラジエントプログラム:
[総アミノ酸量の測定]
上記(1)で得られたカカオ豆を試料として使用した。試料 5gにヘキサン 30mLを加えて常温で20分間振とうさせた後、遠心分離(3000rpm,15分,4℃)し、上澄みを廃棄した。この操作を合計2回行った後、ドラフト内で保管してヘキサンを除去した(脱脂)。
脱脂後の試料に80%エタノール 25mLを加えて常温で60分間振とうさせた後、遠心分離(1,000g,15分,23℃)し、上澄みを50mLメスフラスコに移した。この操作を2回行った後に、80%エタノールでメスアップして、抽出液 50mLを得た。
得られた抽出液をさらに0.02N塩酸で2倍に希釈し、希釈液を使用して、総アミノ酸量の測定を行った。測定結果を表3に示す。総アミノ酸量は、タンパク質を構成する20種のアミノ酸(Asp、Thr、Ser、Asn、Glu、Gln、Gly、Ala、Val、Cys、Met、Ile、Leu、Tyr、Phe、Trp、Lys、His、Arg及びPro)の合計量を意味する。
総アミノ酸量の測定は、全自動アミノ酸分析装置(日立ハイテクノロジー社製 L-8800)を使用して、ポストカラム誘導体化法で行った。
[スクロース量の測定]
上記(1)で得られたカカオ豆を試料として使用した。試料 5gにヘキサン 30mLを加えて常温で20分間振とうさせた後、遠心分離(3000rpm,15分,4℃)し、上澄みを廃棄した。この操作を合計2回行った後、ドラフト内で保管してヘキサンを除去した(脱脂)。
脱脂後の試料に80%エタノール 20mLを加えて常温で20分間振とうさせた後、50mLとなるようにメスアップして、抽出液 50mLを得た。得られた抽出液を使用して、HPLCによりスクロース量の測定を行った。結果を表4に示す。
HPLCの際、得られた抽出液を0.45μLのフィルターで濾過し、HPLC用のサンプルとした。HPLCの測定条件は、以下の通りとした。
<HPLCの測定条件>
カラム:apHera NH2 Polymer(25cm×4.6mm)
カラム温度:40℃
移動相A:ACN-水(ACN:水=75:25)
流速:1.0mL/分
検出器:RID
(3)カカオマスの調製
上記(1)で得られたカカオ豆 400gを、品温が120℃となるようにローストした。ローストされたカルメロ種カカオに対してカットテストを行い、紫豆を除去した。その後、外皮を除去し、カカオニブを得た。得られたカカオニブをロールで粉砕してカカオマスを得た。
(4)カカオマスの評価
[水分量の測定]
上記(3)で得られたカカオマスを試料として使用した。日本国消費者庁による食品表示関連通知「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200327_11.pdf)における「5.炭水化物、イ 水分、(3)減圧加熱乾燥法」に準拠して、試料の水分量を測定した。測定結果を表5に示す。
水分量の測定方法は、具体的には、以下の通りである。
底部の直径が50mmである秤量皿(蓋付き)の恒量(W0(g))を求める。次いで、秤量皿に2gの試料を採取し、秤量(W1(g))する。次いで、秤量皿の蓋をずらした状態で、100℃に調節した真空乾燥器に入れ、真空ポンプで吸引しながら、減圧度を25mmHgに設定する。2時間、減圧乾燥した後に、真空ポンプを止め、除湿空気を真空乾燥器内に静かに導入して常圧に戻し、秤量皿を取り出し、蓋をして恒量(W2(g))を求める。試料中の水分量は、下記式によって求められる。
試料中の水分量(質量%)={(W1-W2)/(W1-W0)}×100
[メディアン径(D50)の測定]
上記(3)で得られたカカオマスを試料として使用した。試料 0.3gを容器に収容し、50℃の湯せんにて10分間溶解させた後、イソプロパノール 50mLに分散させ、超音波バスで2分間処理し、スターラーで撹拌している状態で試料を採取した。採取された試料を、イソプロパノールを満たしたセルに分散させ、島津製作所製 レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2200を使用して、体積基準の粒度分布を測定し、メディアン径(D50)を測定した。測定結果を表5に示す。メディアン径(D50)は、体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径である。
[粘度の測定]
上記(3)で得られたカカオマスを試料として使用した。試料 10gを容器に収容し、50℃の湯せんにて10分間溶解させた後、容器を湯せんから常温に取り出し、カカオマスが32℃になるまで調温した。調温後のカカオマスの粘度を、リオン株式会社製 ビスコテスターVT-06及び2号ロータを使用して測定した。測定結果を表5に示す。
〔比較例1〕
メキシコ合衆国産カルメロ種カカオのポッドからババ(パルプがついた生のカカオ豆)を取り出した。取り出したババをそのまま天日下に置き、水分量が6~7質量%になるまで乾燥させた。こうして、電子レンジ処理を施していない未発酵カカオ豆を得た。得られたカカオ豆を使用して、実施例1と同様にして、カカオ豆の評価、カカオマスの調製及びカカオマスの評価を行った。測定結果を表1~5に示す。
〔比較例2〕
メキシコ合衆国産カルメロ種カカオのポッドからババ(パルプがついた生のカカオ豆)を取り出した。取り出したババを発酵箱に収容し、発酵を開始し、合計3日間発酵を行った。発酵後、発酵箱から取り出したカカオ豆 200gを、ジップ付きのプラスチック製袋に分けて収容し、電子レンジ(Whirpool社製 WM1211D(1350W、50Hz))を使用して3分間加熱した。なお、電子レンジによる加熱は、ジップを一部開放した状態で行った。
電子レンジ処理されたババを袋から取り出し、パルプを除去せずに、天日下に置き、水分量が6~7質量%になるまで乾燥させた。こうして、発酵後に電子レンジ処理を施したカカオ豆を得た。得られたカカオ豆を用いて、実施例1と同様にして、カカオ豆の評価を行った。測定結果を表1~4に示す。
〔比較例3〕
メキシコ合衆国産カルメロ種カカオのポッドからババ(パルプがついた生のカカオ豆)を取り出した。取り出したババを発酵箱に収容し、発酵を開始し、合計3日間の発酵を行った。発酵後のカカオ豆を天日下に置き、水分量が6~7質量%になるまで乾燥させた。こうして、電子レンジ処理を施していない発酵カカオ豆を得た。得られたカカオ豆を用いて、実施例1と同様にして、カカオ豆の評価を行った。測定結果を表1~4に示す。
表5に示すように、実施例1で得られたカカオマスの水分量及びメディアン径と、比較例1で得られたカカオマスの水分量及びメディアン径との間に大きな差はないが、実施例1で得られたカカオマスの粘度は、比較例1で得られたカカオマスの粘度よりも顕著に低かった。

Claims (12)

  1. 以下の工程:
    (a)カカオ豆を含むカカオポッド内容物を未発酵状態で準備する工程;及び
    (b)工程(a)で準備された前記カカオポッド内容物に対してマイクロ波加熱処理を行い、前記マイクロ波加熱処理の後、乾燥処理を行い、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る工程
    を含む、マイクロ波加熱処理済みカカオ豆の製造方法であって、
    前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を乾燥させた後に粉砕し、得られた粉砕物を55℃の湯せんで10分間溶解させた後にチョコレート型で成形し、得られた成形物のL 表色系のL 値、a 値及びb 値を測定したとき、表色系のL値、a値及びb値が、それぞれ、L値:43以上55以下、a値:2.0以上9.5以下及びb値:7.0以上23.5以下である、前記製造方法。
  2. 前記カカオポッド内容物が、クリオロ種カカオに由来するカカオポッド内容物である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程(a)で準備された前記カカオポッド内容物がパルプを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理を、前記カカオ豆と前記パルプとが接触した状態で行う、請求項3に記載の製造方法。
  5. 工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、前記カカオポッド内容物から前記パルプを取り除き、次いで、前記乾燥処理を行い、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、請求項3に記載の製造方法。
  6. 工程(b)において、前記マイクロ波加熱処理の後、前記カカオポッド内容物から前記パルプを取り除くことなく、前記乾燥処理を行い、前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆を得る、請求項3に記載の製造方法
  7. 前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総ポリフェノール量が42mg/g以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  8. 前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるプロシアニジン量が15mg/g以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  9. 前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるテオブロミン量が11.5mg/g以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  10. 前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるカフェイン量が5.0mg/g以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  11. 前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆におけるスクロース量が15mg/g以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  12. 前記マイクロ波加熱処理済みカカオ豆における総アミノ酸量が2400μg/g以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
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