JP7846441B2 - 方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板 - Google Patents

方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板

Info

Publication number
JP7846441B2
JP7846441B2 JP2025537646A JP2025537646A JP7846441B2 JP 7846441 B2 JP7846441 B2 JP 7846441B2 JP 2025537646 A JP2025537646 A JP 2025537646A JP 2025537646 A JP2025537646 A JP 2025537646A JP 7846441 B2 JP7846441 B2 JP 7846441B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
precipitates
steel sheet
grain
decarburized annealed
annealed steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2025537646A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2025187772A1 (ja
Inventor
修一 中村
翔太 森本
大輔 板橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JPWO2025187772A1 publication Critical patent/JPWO2025187772A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7846441B2 publication Critical patent/JP7846441B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D8/00Modifying the physical properties of ferrous metals or ferrous alloys by deformation combined with, or followed by, heat treatment
    • C21D8/12Modifying the physical properties of ferrous metals or ferrous alloys by deformation combined with, or followed by, heat treatment during manufacturing of articles with special electromagnetic properties
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D9/00Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor
    • C21D9/46Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for sheet metals
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C38/00Ferrous alloys, e.g. steel alloys
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C38/00Ferrous alloys, e.g. steel alloys
    • C22C38/60Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing lead, selenium, tellurium, or antimony, or more than 0.04% by weight of sulfur
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F1/00Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties
    • H01F1/01Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials
    • H01F1/03Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity
    • H01F1/12Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials
    • H01F1/14Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials metals or alloys
    • H01F1/147Alloys characterised by their composition

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Electromagnetism (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

本発明は、方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板に関する。
本願は、2024年3月6日に、日本に出願された特願2024-034154号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
方向性電磁鋼板は、Siを7質量%以下含有し、{110}<001>方位(Goss方位)に集積した二次再結晶集合組織を有する。なお、{110}<001>方位とは、結晶の{110}面が圧延面と平行に配し、且つ結晶の<001>軸が圧延方向と平行に配することを意味する。
方向性電磁鋼板の磁気特性は、{110}<001>方位への集積度に大きく影響される。特に、鋼板の使用時に主たる磁化方向となる鋼板の圧延方向と、磁化容易方向である結晶の<001>方向との関係が重要と考えられている。そのため、近年の実用の方向性電磁鋼板では、結晶の<001>方向と圧延方向とがなす角が5゜程度の範囲内に入るように、制御されている。
このような精緻な結晶方位制御は、仕上げ焼鈍前までに、インヒビターと呼ばれる微細な析出物を鋼中に適度に分散させて、且つ仕上げ焼鈍時に、鋼板を高温で保持することによって行われる。例えば、インヒビターによってGoss方位粒の選択成長性が高まり、その結果、仕上げ焼鈍時にGoss方位粒が優先的に成長するように二次再結晶が進行する。これまで、結晶方位を緻密に制御することを目的として、インヒビターを高度に制御することが試みられてきた。
例えば、特許文献1には、インヒビターとしてMnSを用い、2回の冷間圧延を行うことが開示されている。
特許文献2および3には、それぞれ、インヒビターとしてMnS+AlNおよびMnS(及び/又はMnSe)+Sbを制御することが開示されている。
特許文献4には、製造コストの低減を目的としてスラブ加熱温度を下げるために、好ましくインヒビターを制御する技術が開示されている。
特許文献5には、インヒビターに関連する一次再結晶粒径及びその分散を制御することが開示されている。
特許文献6~8には、方向性電磁鋼板にNbやVなどを添加することが開示されている。
また、特許文献9~11には、仕上げ焼鈍時の雰囲気や滞在時間を精緻に制御することで二次再結晶粒内に亜粒界を形成して、磁歪を改善する技術が示されている。これらの技術では、亜粒界を形成させるために二次再結晶が進行する温度域を拡大するという技術思想が示され、同時に磁束密度の向上も期待できることが示されている。
日本国特公昭30-3651号公報 日本国特公昭40-15644号公報 日本国特公昭51-13469号公報 日本国特開昭62-40315号公報 日本国特開2008-261022 日本国特開昭52-024116号公報 日本国特開平02-200732号公報 日本国特許第4962516号公報 国際公開第2020/027215号公報 国際公開第2020/027218号公報 国際公開第2020/027219号公報
近年、世界的な電力・エネルギー節減などの地球環境保全の動きの中で、変圧器の高効率化に関する要求がますます高まっている。このような社会環境下で、変圧器の鉄心材料などに用いられる方向性電磁鋼板に対しても、その性能向上が求められている。特に、方向性電磁鋼板の磁束密度を高めることが求められている。
本発明者らが検討した結果、上記の特許文献1~8で開示される従来のインヒビター制御技術では、方向性電磁鋼板に求められている要求を十分に満たしているとは言えず、更なる高磁束密度化が必要だと判明した。
本発明の一態様は、上記の課題に鑑みてなされた。本発明の一態様は、方向性電磁鋼板の磁束密度を高めることが求められている現状を踏まえ、磁束密度を高めることが可能な方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板は、
質量%で、
C:0~0.10%、
Si:2.0~7.0%、
Mn:0.050~1.0%、
S:0~0.0350%、
Se:0~0.0350%、
S+Se合計含有量:0.0030~0.0350%、
Al:0.010~0.0650%、
N:0.0040~0.0120%、
Nb:0~0.030%、
V:0~0.030%、
Mo:0~0.030%、
Ta:0~0.030%、
W:0~0.030%、
Nb+V+Mo+Ta+W合計含有量:0.0030~0.030%、
Cu:0~0.40%、
Bi:0~0.010%、
B:0~0.080%、
P:0~0.50%、
Ti:0~0.0150%、
Sn:0~0.10%、
Sb:0~0.10%、
Cr:0~0.30%、
Ni:0~1.0%、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
前記脱炭焼鈍鋼板を電解抽出した残渣である析出物について、粒子径が29nm、48nm、100nm、200nm、300nm、500nmの6種類の標準粒子から作成した検量線に基づいて粒子径-検出強度分布を測定し
Al系析出物の最頻径を単位nmでDpAlとし、
Nb系析出物の最頻径を単位nmでDpNbとしたとき、
DpNbが45~250nm、
DpAl-DpNbが10~50nm、
を満たし、
前記脱炭焼鈍鋼板の平均粒径が13~19μmである。
本発明の上記態様によれば、磁束密度を高めることが可能な方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板が提供される。
円相当径Dが50~1000nmである析出物の粒子径-検出強度分布の模式図である。 本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板の製造方法の流れ図である。
本発明の好ましい一実施形態を詳細に説明する。ただ、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。また、化学組成に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
また、以下の説明では、本実施形態の特徴となる鋼中の析出物について、二次再結晶メカニズムに関連した説明では主として「インヒビター」という用語を用い、組織観察される化合物相に関連した説明では主として「析出物」という用語を用いる。ただ、本実施形態では、「インヒビター」と「析出物」とを厳密に区分する意図で用語を用い分けているわけではない。
上記したように、現在、方向性電磁鋼板の磁束密度を高めることが求められている。
そこで、本発明者らは、上記の特許文献9~11に開示されている「二次再結晶進行温度域の拡大」という技術思想に注目した。これらの特許文献9~11では、「二次再結晶進行温度域の拡大」という技術を、主として二次再結晶粒内での亜粒界の形成、およびそれに伴う騒音低減に活用している。本発明者らは、この「二次再結晶進行温度域の拡大」という技術を、結晶方位の選択性を高めるために最適化すれば、磁束密度のさらなる向上が可能と考えた。
具体的には、鋼中のインヒビター形態を適切に制御して二次再結晶進行温度域をより効果的に拡大することと、温度域が拡大した二次再結晶の進行過程で好ましい結晶方位を持つ結晶粒を優先的に成長させることについて検討した。その結果、方向性電磁鋼板を製造する過程で、脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物の形態を最適に制御すれば、仕上げ焼鈍時に二次再結晶進行温度域が拡大し、Goss方位粒が優先的に成長し、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁束密度を従来技術以上に高めることができることを見出した。
一般的に、インヒビターとは、鋼中に含まれる直径が1000nm以下程度の微細な析出物である。このインヒビターは、結晶粒界のピン止め効果を有し、結晶粒の成長を抑制する。そして、仕上げ焼鈍時に1000℃程度以上の温度になると、このインヒビターが母相であるαFe相に溶解し、結晶粒界のピン止め効果が弱化する。その結果、結晶粒が異常に成長する、いわゆる二次再結晶が生じる。
例えば、Mn系析出物として硫化物やセレン化物や、Al系析出物として窒化物が、主要なインヒビターとして活用されている。Mn系インヒビターやAl系インヒビター(冷間圧延前までに制御されるAl系インヒビター)は、特に熱間圧延前のスラブ加熱温度を1300℃以上とする製造方法(以降、これを「高温スラブ加熱プロセス」と記述することがある)で主に用いられる。Al系のインヒビター(冷間圧延後に制御されるAl系インヒビター)は、特に熱間圧延前のスラブ加熱温度を1280℃以下とし、且つ冷間圧延以降で仕上げ焼鈍前までの間に窒化処理を施す製造方法(以降、これを「低温スラブ加熱プロセス」と記述することがある)で主に用いられる。上記のインヒビターに加えて、補助的なインヒビターとして、Nb、V、Mo、Ta、Wなどの炭化物や窒化物が活用されることがある。
従来、鋼中に適切な機能を持つインヒビターを形成するために、方向性電磁鋼板を製造する際、鋼成分や製造条件などが制御されてきた。特に、鋼成分、熱延条件、および脱炭焼鈍条件が、インヒビターの形態に大きな影響を与える製造条件として認識されており、これらの条件が精緻に制御されてきた。
本実施形態では、Nb群元素を活用し、脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物(インヒビター)のサイズおよび分布を適切な範囲に制御することにより、後工程である仕上げ焼鈍時に、二次再結晶進行温度域を拡大するとともに、二次再結晶の進行に伴う結晶方位の選択性を高める。具体的には、比較的微細なインヒビターとしてNb群元素の析出物を活用し、かつ比較的粗大なインヒビターとして主にAlNを活用しながら、脱炭焼鈍鋼板中でインヒビターを適度なサイズおよび分布で共存させることで、上記の効果を得る。
本発明者らは、上記効果が得られる作用を次のように推定している。
まず、二次再結晶進行温度域が拡大する理由について推察する。上記したように、二次再結晶は、インヒビターの溶解に伴って結晶粒界のピン止め効果が弱まることに起因して生じる。仕上げ焼鈍時、微細なインヒビターは、粗大なインヒビターよりも早期に溶解して消滅すると考えられる。そのため、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとが共存する場合、仕上げ焼鈍の昇温過程の早期に、微細なインヒビターが優先的に消失すると考えられる。特に、Nb、V、Mo、Ta、およびWから選択される少なくとも1種(Nb群元素)を添加した場合には、AlNなどの従来のインヒビターよりも低温で分解する微細なインヒビターを好ましく制御することが可能となる。
微細なインヒビターが溶解することに伴って、オストワルド成長のように粗大なインヒビターが成長するかもしれない。ただ、粗大なインヒビターの成長に伴うピン止め力の高まりは、微細なインヒビターの消失に伴うピン止め力の低下よりも影響が小さいと考えられる。そのため、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとが共存し、微細なインヒビターが粗大なインヒビターよりも早期に溶解すると、二次再結晶が仕上げ焼鈍の昇温過程の比較的低温から開始すると考えられる。
加えて、粗大なインヒビターは、仕上げ焼鈍の昇温過程の比較的高温まで非平衡的に溶け残り、そのピニング効果が高温まで維持すると考えられる。そのため、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとが共存し、粗大なインヒビターが高温まで残存すると、ピニング効果が高温まで維持されて二次再結晶が比較的高温まで継続すると考えられる。
すなわち、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとが共存する場合、二次再結晶が仕上げ焼鈍の昇温過程の比較的低温から開始して且つ比較的高温まで継続するので、二次再結晶進行温度域が拡大すると考えられる。
次に、結晶方位の選択性が向上する理由について推察する。上記したように、二次再結晶は、Goss方位粒が優先的に成長して進行する。このGoss方位粒の優先成長は、Goss方位粒が持つ粒界の特殊性(粒界性格)や結晶粒径の特殊性(サイズアドバンテージ)に起因して生じると考えられる。
しかし、Goss方位粒の優先成長の駆動力はそれほど大きくない。そのため、二次再結晶時にGoss方位粒以外でも粒界移動が比較的容易に生じるような、例えば、インヒビターの分解が速く、粒成長のピン止め効果が弱くなることに起因し、粒成長速度が比較的大きい場合(粒成長の駆動力が比較的高い場合)、Goss方位粒以外の結晶粒も容易に成長する。この場合、Goss方位粒の優先成長は阻害される。
そのため、Goss方位粒を優先成長させるには、インヒビターの分解速度はなるべく低速にし、インヒビターの分解速度に対して二次再結晶時の粒成長速度を比較的高速にし、二次再結晶を長時間に亘って持続させればよい。例えば、インヒビター強度が弱まる温度域(インヒビターが溶解する温度域)の昇温速度を遅くし、インヒビターの溶解速度を緩慢にし、およびそれに伴う二次再結晶粒の成長速度をインヒビターの分解速度に対して、相対的に速くすればよい。しかし、この方法では、トータルでの仕上げ焼鈍時間が長くなるので、生産性の低下が避けられない。
工業的に仕上げ焼鈍時間を長くすることが困難な場合(最高到達温度が同じならば昇温速度を変更することが困難な場合)、たとえ昇温速度が一定であってもインヒビターの分解速度を遅らせることにより二次再結晶が進行する温度域を拡大できれば、生産性を低下させずに、二次再結晶が進行する時間を長くすること、二次再結晶粒の成長速度を比較的高速にすることができ、二次再結晶粒の優先成長性を高めることができる。例えば、最終的に方向性電磁鋼板の鋼板全面が二次再結晶粒で占められることを考慮すれば、二次再結晶が進行する時間を長時間にすることが、インヒビターの分解速度に対して二次再結晶粒の成長速度を速めることにつながると理解できる。
すなわち、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとが共存する場合、インヒビターの分解速度が緩慢な温度域が拡大し、インヒビターの分解速度に対して二次再結晶粒の成長速度が比較的高速になる二次再結晶進行温度域が拡大するので、Goss方位粒が優先成長しやすくなると考えられる。その結果、最終的に磁束密度を高めることが可能になると考えられる。
本実施形態では、鋼組成、鋳造条件、熱間圧延条件、熱延板焼鈍条件、冷間圧延条件、および脱炭焼鈍条件を複合的に且つ不可分に制御することにより、脱炭焼鈍工程後の脱炭焼鈍鋼板中に、比較的微細な析出物と比較的粗大な析出物とを、適度なサイズおよび分布で共存させる。特に、本実施形態では、補助的なインヒビター形成元素(Nb群元素)の添加により、析出物の形態を好ましく制御する。
本実施形態では、上記の析出物の形態を脱炭焼鈍鋼板に基づいて規定する。
以下、本実施形態に係る方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板を詳しく説明する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、質量%で、
C:0~0.10%、
Si:2.0~7.0%、
Mn:0.050~1.0%、
S:0~0.0350%、
Se:0~0.0350%、
S+Se合計含有量:0.0030~0.0350%、
Al:0.010~0.0650%、
N:0.0040~0.0120%、
Nb:0~0.030%、
V:0~0.030%、
Mo:0~0.030%、
Ta:0~0.030%、
W:0~0.030%、
Nb+V+Mo+Ta+W合計含有量:0.0030~0.030%、
Cu:0~0.40%、
Bi:0~0.010%、
B:0~0.080%、
P:0~0.50%、
Ti:0~0.0150%、
Sn:0~0.10%、
Sb:0~0.10%、
Cr:0~0.30%、
Ni:0~1.0%、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
脱炭焼鈍鋼板を電解抽出した残渣である析出物のうちで、円相当径Dが50~1000nmである析出物の粒子径-検出強度分布について、
Al系析出物の最頻径を単位nmでDpAlとし、
Nb系析出物の最頻径を単位nmでDpNbとしたとき、
DpNbが45~250nm、
DpAl-DpNbが10~50nm、
を満たし、
脱炭焼鈍鋼板の平均粒径が13~19μmである。
1.化学組成
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の化学組成は、方向性電磁鋼板に用いられる一般的な化学組成とすればよい。
なお、方向性電磁鋼板に関する公知文献で、中間製品である脱炭焼鈍鋼板の化学組成が記載されていることは稀ではある。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、化学組成として、基本元素を含み、必要に応じて選択元素を含み、残部がFe及び不純物からなる。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、基本元素(主要な合金元素)として、質量分率で、Si:2.0~7.0%、Mn:0.050~1.0%、S+Se合計含有量:0.0030~0.0350%、Al:0.010~0.0650%、N:0.0040~0.0120%、およびNb+V+Mo+Ta+W合計含有量:0.0030~0.030%を含有する。
Si:2.0~7.0%
シリコン(Si)は、方向性電磁鋼板の電気抵抗を高めて鉄損を低下させる。Si含有量が2.0%未満であれば、仕上げ焼鈍時にオーステナイト変態が生じて、方向性電磁鋼板の結晶方位が損なわれてしまう。一方、Si含有量が7.0%を超えれば、冷間加工性が低下して、冷間圧延時に割れが発生しやすくなる。したがって、脱炭焼鈍鋼板のSi含有量は2.0~7.0%であればよい。Si含有量の好ましい下限は2.50%であり、さらに好ましくは3.0%である。Si含有量の好ましい上限は4.50%であり、さらに好ましくは4.0%である。
Mn:0.050~1.0%
マンガン(Mn)は、SやSeと結合して、MnSやMnSeとして析出し、インヒビターとして機能する。これらインヒビター(析出物)の形態を好ましく制御するには、脱炭焼鈍鋼板のMn含有量が0.050~1.0%であればよい。Mn含有量が0.050%を下回ると、インヒビターとして機能するMnSやMnSeの析出量が不足するため、適切な二次再結晶の進行が阻害される。またMn含有量が1.0%を上回ると、インヒビターとして機能するMnSやMnSeの析出量が過剰となり、適切な二次再結晶の進行が阻害される。また、本実施形態では、インヒビターの機能の一部をNb群元素の炭化物や窒化物や炭窒化物などによって担ってもよい。この場合、インヒビターであるMnSやMnSeの析出量を少なめに制御してもよい。そのため、Mn含有量の上限は、好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.20%である。
S:0~0.0350%
Se:0~0.0350%
S+Se合計含有量:0.0030~0.0350%
硫黄(S)及びセレン(Se)は、Mnと結合して、MnSやMnSeとして析出し、インヒビターとして機能する。これらインヒビター(析出物)の形態を好ましく制御するには、脱炭焼鈍鋼板のS含有量が0~0.0350%、Se含有量が0~0.0350%、且つS+Se合計含有量が0.0030~0.0350%であればよい。S及びSeの合計含有量が0.0030~0.0350%であれば、二次再結晶が安定するので好ましい。また、本実施形態では、インヒビターの機能の一部をNb群元素の炭化物や窒化物や炭窒化物などによって担ってもよい。この場合、インヒビターであるMnSやMnSeの析出量を少なめに制御してもよい。そのため、S及びSeの合計含有量の上限は、好ましくは0.0250%であり、さらに好ましくは0.010%である。なお、S及びSeが仕上げ焼鈍後に鋼中に残留すると化合物を形成し、鉄損を劣化させることがある。そのため、仕上げ焼鈍中の純化により、S及びSeを鋼から排出させて、その含有量を少なくすることが好ましい。
ここで、「S及びSeの合計含有量が0.0030~0.0350%」であるとは、脱炭焼鈍鋼板が化学組成としてS又はSeのいずれか一方のみを含有し、その含有量が0.0030~0.0350%であってもよいことを意味する。または、脱炭焼鈍鋼板がS及びSeの両方を含有し、その合計含有量が0.0030~0.0350%であってもよいことを意味する。
Al:0.010~0.0650%
アルミニウム(Al)は、Nと結合して、AlNや(Al、Si)Nとして析出し、インヒビターとして機能する。これらインヒビター(析出物)の形態を好ましく制御するには、脱炭焼鈍鋼板のAl含有量が0.010~0.0650%であればよい。Al含有量が0.010%以上であれば、低温スラブ加熱プロセスでの窒化処理によりAlNや(Al、Si)Nが好ましい形態で析出し、特に高温域での二次再結晶が安定する。Al含有量が0.010%を下回ると、インヒビターとして機能するAlNや(Al、Si)Nの析出量が不足するため、適切な二次再結晶の進行が阻害される。またAl含有量が0.0650%を上回ると、インヒビターとして機能するAlNや(Al、Si)Nの析出量が過剰となり、適切な二次再結晶の進行が阻害される。Al含有量の下限は、好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.0250%である。二次再結晶の安定性の観点から、Al含有量の上限は、好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
N:0.0040~0.0120%
窒素(N)は、Alと結合して、AlNや(Al、Si)Nとして析出し、インヒビターとして機能する。脱炭焼鈍鋼板のN含有量は0.0040~0.0120%であればよい。なお、低温スラブ加熱プロセスでは、製造過程の途中で窒化処理により鋼にNを含有させることがある。N含有量が0.0120%を超えれば、鋼板中に欠陥の一種であるブリスタが発生しやすくなる。N含有量の上限は、好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.0090%である。Nは仕上げ焼鈍工程で純化され、仕上げ焼鈍工程後には0.0050%以下となる。
Nb+V+Mo+Ta+W合計含有量:0.0030~0.030%
Nb:0~0.030%
V:0~0.030%
Mo:0~0.030%
Ta:0~0.030%
W:0~0.030%
ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)は、補助的なインヒビターである炭化物や窒化物や炭窒化物として析出し、インヒビターとして好ましく機能する。具体的には、二次再結晶進行温度域を好ましく拡大させる。そのため、Nb含有量を0~0.030%、V含有量を0~0.030%、Mo含有量を0~0.030%、Ta含有量を0~0.030%、W含有量を0~0.030%、且つNb+V+Mo+Ta+W合計含有量を0.0030~0.030%とする。Nb、V、Mo、Ta、および/またはWの含有量の下限は、0.0040%であることが好ましく、0.0050%であることがより好ましい。また、Nb、V、Mo、Ta、および/またはWの含有量の上限は、0.020%であることが好ましく、0.010%であることがより好ましい。
本実施形態では、Nb、V、Mo、Ta、Wをまとめて、「Nb群元素」と記述することがある。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、Nb群元素として、Nb、V、Mo、Ta、およびWからなるNb群元素から選択される1種以上を合計で0.0030~0.030質量%含有する。
Nb群元素の析出物をインヒビターとして活用する場合、脱炭焼鈍鋼板でのNb群元素の合計含有量が0.030%以下(好ましくは0.0030%以上0.030%以下)であるとき、Nb群元素の析出物の形態が好ましく制御され、二次再結晶進行温度域が好ましく拡大される。その結果、Goss方位粒が好ましく成長し、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁束密度が好ましく高まる。
Nb群元素の析出物がインヒビターとして好ましく機能する理由は明確ではないが、以下のように考えられる。Nb群元素の炭化物、窒化物、または炭窒化物は、高温からの冷却過程で非平衡的に析出し、その後に析出するMnSやAlNの析出核として作用すると考えられる。そのため、Nb群元素を含有しない場合と比較して、Nb群元素を含有する場合には、MnSやAlNの析出サイトが数多くなり、その結果、MnSやAlNが微細な析出物として形成されやすいと考えられる。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとを共存させて二次再結晶進行温度域を拡大させるが、Nb群元素の析出物は、特に二次再結晶進行温度域の低温側への拡大に有効に作用すると考えられる。
本実施形態では、Nb系析出物の最頻径とAl系析出物の最頻径との差を拡大するように製造条件を制御することが重要である。
Nb群元素の合計含有量は、0.0040%以上であることが好ましく、0.0050%以上であることがより好ましい。また、Nb群元素の合計含有量は、0.020%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。Nb群元素の合計含有量が0.0030%を下回ると、上記した析出核として作用するNb群元素の析出物が不足して、MnSやAlNが微細になりにくい。一方、Nb群元素の合計含有量が0.030%を上回ると、Nb群元素の析出物の析出温度域が高温となり、Nb群元素の析出物が粗大になりかつ低密度になりやすい。また、Nb群元素の析出物の析出温度域と、MnSやAlNの析出温度域とのずれが大きくなるため、Nb群元素の析出物が、MnSやAlNを微細化するための析出核として有効に作用しにくくなる。
ここで、「Nb群元素の合計含有量が0.0030~0.030%」であるとは、脱炭焼鈍鋼板が化学組成としてNb、V、Mo、Ta、およびWからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、その含有量が0.0030~0.030%であってもよいことを意味する。または、脱炭焼鈍鋼板がNb、V、Mo、Ta、およびWからなる群から選択される少なくとも2種以上を含有し、その合計含有量が0.0030~0.030%であってもよいことを意味する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、化学組成として、不純物を含有してもよい。なお、「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップから、または製造環境等から混入する元素を指す。不純物の合計含有量の上限は、例えば、5%であればよい。
また、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、上記した基本元素および不純物に加えて、選択元素を含有してもよい。例えば、上記した残部であるFeの一部に代えて、選択元素として、C、Cu、Bi、B、P、Ti、Sn、Sb、Cr、Niなどを含有してもよい。これらの選択元素は、その目的に応じて含有させればよい。よって、これらの選択元素の下限値を限定する必要がなく、下限値が0%でもよい。また、これらの選択元素が不純物として含有されても、上記効果は損なわれない。
C:0~0.10%
炭素(C)は、製造過程では一次再結晶組織の制御に有効な元素である。特に、CはNb等の元素と炭化物や炭窒化物を形成するため、一次再結晶組織の制御に有効である。そのため、スラブのC含有量は0.0010~0.10%であることが好ましい。ただ、最終製品のC含有量が過剰であると磁気特性に悪影響を及ぼす。したがって、脱炭焼鈍鋼板のC含有量は、0~0.10%であればよい。C含有量の好ましい上限は、0.0850%であり、0.0750%である。なお、Cは後述の仕上げ焼鈍工程で純化され、仕上げ焼鈍工程後には0.0050%以下となる。Cを含む場合、工業生産における生産性を考慮すると、C含有量は0%超であってもよく、0.0010%以上であってもよい。
Cu:0~0.40%
Bi:0~0.010%
B:0~0.080%
P:0~0.50%
Ti:0~0.0150%
Sn:0~0.10%
Sb:0~0.10%
Cr:0~0.30%
Ni:0~1.0%
銅(Cu)、ビスマス(Bi)、ボロン(B)、燐(P)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)は、公知の目的に応じて含有させればよい。これらの選択元素の含有量の下限値を設ける必要はなく、下限値が0%でもよい。
なお、方向性電磁鋼板では、脱炭焼鈍および二次再結晶時の純化焼鈍を経ることで、比較的大きな化学組成の変化(含有量の低下)が起きる。元素によっては純化焼鈍によって、一般的な分析手法では検出できない程度(1ppm以下)にまで含有量が低減することもある。ただ、上記の化学組成は、脱炭焼鈍鋼板における化学組成である。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の化学組成は、鋼の一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、脱炭焼鈍鋼板の化学組成は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。具体的には、脱炭焼鈍鋼板から採取した35mm角の試験片を、ICP-AESを用いて、予め作成した検量線に基づいた条件で測定することにより、化学組成が特定される。なお、CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用いて測定し、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。
2.析出物
次に、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物について説明する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物(インヒビター)は、脱炭焼鈍鋼板に含有される元素から形成される析出物であればよい。例えば、Mn系析出物(Mn含有析出物)として硫化物やセレン化物や、Al系析出物(Al含有析出物)として窒化物、およびNb系析出物(Nb群元素含有析出物)として炭化物や窒化物や炭窒化物であればよい。これらのインヒビターに加えて、補助的なインヒビターとして、Nbを除くNb群元素の化合物や、BiやBなど任意元素の化合物や、上記元素との複合化合物が含まれてもよい。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板で制御すべき析出物は、円相当径Dが50~1000nmの析出物である。なお、「円相当径」とは、析出物の面積を、同じ面積を有する円に換算した場合の円の直径を意味する。この円相当径は球相当径と同等である。
脱炭焼鈍鋼板に含まれる円相当径Dが50nmより小さい析出物は、現時点で、二次再結晶進行温度域を拡大する効果が小さい。この理由は明確ではないが、脱炭焼鈍鋼板時点で円相当径Dが50nmより小さい析出物は、その後の工程で変化あるいは消失し、仕上げ焼鈍時にインヒビターとしての機能を発揮しにくいと考えられる。
具体的には、円相当径Dが50nmより小さい析出物は、後工程で析出するAlNなどの析出物サイズを小さくしやすく、そのため、仕上げ焼鈍時に比較的低温で分解する析出物と比較的高温で分解する析出物との分解温度差の拡大に寄与しにくい。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、Nb系析出物の最頻径とAl系析出物の最頻径との差を確保することが重要となる。従って、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、円相当径Dが50nm以上の析出物のサイズおよび分布を制御する。なお、脱炭焼鈍工程以降の工程も含めて検討することで、円相当径Dが50nm未満の析出物をインヒビターとして機能させることが今後期待される。
また、円相当径Dが過度に大きな析出物は、二次再結晶の最終段階で二次再結晶粒の成長に悪影響を与えることがある。また、円相当径Dが過度に大きな析出物が生成すると、脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物の個数(個数密度)が少なくなることがある。また、円相当径Dが過度に大きな析出物は、インヒビターとしての機能を発揮しにくい。そのため、析出物の円相当径Dは平均で1000nm以下であることが好ましい。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、二次再結晶進行温度域を拡大する効果を有する析出物として、円相当径Dが50~1000nmの析出物のサイズおよび分布を制御する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、脱炭焼鈍鋼板を電解抽出した残渣である析出物のうちで、円相当径Dが50~1000nmである析出物の粒子径-検出強度分布について、
Al系析出物の最頻径を単位nmでDpAlとし、
Nb系析出物の最頻径を単位nmでDpNbとしたとき、
DpNbが45~250nm、
DpAl-DpNbが10~50nm、
を満足する。
図1に、円相当径Dが50~1000nmである析出物の粒子径-検出強度分布の模式図を示す。図1中に、DpAlおよびDpNbを例示する。
DpNbが250nm超では、二次再結晶温度域を拡大するための微細な析出物の数が少なくなるため不適当である。DpNbの上限は、好ましくは200nmであり、さらに好ましくは100nmである。一方、DpNbが45nm未満では、上述したように、二次再結晶進行温度域を拡大する効果が小さい。DpNbの下限は、好ましくは50nmであり、さらに好ましくは65nmである。
DpAl-DpNbの値が10nm未満では、比較的微細なインヒビターと比較的粗大なインヒビターとのバランスが好ましくないため、二次再結晶温度域が十分に拡大されず、不適切である。DpAl-DpNbの下限は、15nmであることが好ましく、20nmであることがさらに好ましい。一方、DpAl-DpNbの値が50nm超では、粗大なインヒビターが大きすぎるため、一次再結晶粒が正常粒成長する際に不均一成長して、二次再結晶前の粒組織が混粒組織となってしまうため、不適当である。DpAl-DpNbの上限は、45nmであることが好ましく、40nmであることがさらに好ましい。
円相当径Dが50~1000nmである析出物の粒子径-検出強度分布は、次のように求めればよい。
例えば、日本国特許第6572598号に記載されている方法で行えばよい。まず、脱炭焼鈍鋼板から、析出物を電解抽出する。電解抽出の条件は、例えば、アセチルアセトン系電解液にあらかじめ界面活性剤等の分散剤(例えば分子量が288.38g/molのドデシル硫酸ナトリウム)を適宜添加した溶液で、定電流電解抽出(500mA-2hours)で行えばよい。電解抽出は、脱炭焼鈍鋼板の電解量が1g以上となる電解を行えばよい。
電解抽出液から抽出残渣(析出物)を回収すればよい。この回収した析出物のサイズおよび分布を、FFF-ICP-MS(Field Flow Fractionation - Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry)法によって測定すればよい。FFF法による粒子分離条件は、上記した日本国特許第6572598号を参照すればよい。
なお、各パラメーターについては、測定する粒子径や種類によって変更すればよい。ここでは、一例を以下に示す。FFF装置はWyatt Eclips AF4装置(Wyatt Technology Europe、Germany)を用いればよい。測定試料の分散溶液については、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を300mg/mLの濃度で用いればよい。セルには、長さ275mmのチャネル、厚さ350μmの非対称ダイヤモンド型チャネルスペーサーを用いればよい。分離膜としては、分子量30kDaの再生セルロース限外ろ過膜を用いればよい。
電解抽出液から回収した抽出残渣(析出物)を投入する前に、粒子径の判明している標準試料をもちいて、粒子径と粒子が検出されるまでの時間とを対応させ、検量線を作成する必要がある。測定したい抽出残渣の粒径分布に合わせて標準試料の種類、数を選択すればよいが、例えばポリスチレンラテックス粒子の29~500nm粒径の標準粒子を選択すればよい。
標準粒子の大きさについては、あらかじめTEM(Transmission Electron Microscope)等を用いて直接確認する必要がある。測定数については、500個以上行えばよい。各標準粒子の長辺を測定し、その平均値を導出しておく。また、標準粒子の粒子径の種類については、例えば、29nm、48nm、100nm、200nm、300nm、500nmの6種類の粒子径を用いればよい。
実際の分離条件は以下の通りに行なえばよい。まず、フォーカシング前の安定化は、FFF装置の溶離流出液(以下、チャネルフロー)を1.0mL/分、クロスフローを0.5mL/分とし、時間は1分とすればよい。その後、試料注入前のフォーカシングでは、フォーカスフローを3.0mL/分とし、時間は1分とすればよい。次に、フォーカシングにおいて、試料を0.2mL/分で2分間注入すればよい。試料注入完了後のフォーカシング時間は1分とればよい。その後、流路を切り替え、フォーカスフローを停止し、チャネルフローを1.0mL/分、クロスフローを0.5mL/分から0.05mL/分まで35分間かけて正比例で流量を下げながら送液する。送液を開始した時刻を基準として、そこから粒子が検出されるまでの時間とあらかじめ測定していた標準粒子の粒径の平均値とを対応させ、検量線を作成すればよい。なお、粒子が検出される最大時間は35分とすればよく、試料を分散させた液の注入体積は0.1~0.4mLとすればよい。
上記のように検量線を作成した後、改めて装置に電解抽出液から回収した抽出残渣(析出物)を投入する。装置設定パラメーターは上記と同じすればよい。
このようにして、測定対象とするナノ粒子分散試料に含まれるナノ粒子の粒径を測定することができる。
また、FFF装置からの流出液(サイズことに分離された析出物を含む溶液)を、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-Mass)を用いて成分分析を行えばよい。
FFF-ICP-MS法の測定結果から算出した粒度分布データを用いて、粒子径およびICP-MS検出強度(Al検出強度およびNb群元素検出強度)の分布を作成すればよい。この粒子径-検出強度分布から、DpAlおよびDpNbを求めればよい。
なお、本実施形態では、Nb系析出物は、Nb群元素であるNb、V、Mo、Ta、およびWから選択される少なくとも1種を含有する析出物を意味し、DpNbは、このNb系析出物の最頻径を意味する。また、本実施形態にて「最頻径」は、上記した粒子径-検出強度分布で、検出強度の値が最も大きくなるときの粒子径に対応する。
なお、上記のDpAl、DpNbなどの算出は、FFF-ICP-MS法の測定データをスムージングした後に実施することが好ましい。FFF-ICP-MS法の測定データをスムージングする方法は、例えば、単純移動平均法を用いればよい。
3.平均粒径
次に、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の平均粒径について説明する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の平均粒径は、13~19μmとなる。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板では、比較的微細な析出物と比較的粗大な析出物とが、適度なサイズおよび分布で共存しているので、脱炭焼鈍鋼板(一次再結晶後の鋼板)の平均粒径が好ましく小径化する。
脱炭焼鈍鋼板の平均粒径は、18μm以下であることが好ましく、17μmであることがより好ましい。なお、平均粒径の下限は、特に限定されない。例えば、脱炭焼鈍鋼板の平均粒径は、13μm以上であればよい。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の平均粒径は、JIS G0551(2013)の切断法に基づいて求めればよい。例えば、光学顕微鏡写真を用いて倍率200倍で脱炭焼鈍鋼板のL断面(圧延直角方向を法線とする断面)を撮影し、この断面組織の結晶粒径を上記の切断法に基づいて板厚方向に沿って測定し、この測定を測定場所を変えて少なくとも5回実施して平均粒径を求めればよい。
4.板厚
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の板厚は特に限定されない。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、後工程である焼鈍分離剤塗布工程および仕上げ焼鈍工程に供されて、最終的に方向性電磁鋼板に仕上げられる。そのため、一般的な方向性電磁鋼板の製造条件を考慮すれば、脱炭焼鈍鋼板の板厚は0.10~0.50mmであればよい。なお、この板厚に限定されることなく、公知な板厚や、実用で適用されている板厚を採用すればよい。
5.製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板の製造方法を説明する。なお、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を製造する方法は、下記の方法に限定されない。下記の製造方法は、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を製造するための一つの例である。
図2は、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造工程を例示する流れ図である。図2には、この脱炭焼鈍鋼板を使用する方向性電磁鋼板の製造工程も合わせて示す。図2に示すように、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造方法は、鋳造工程と、熱間圧延工程と、熱延板焼鈍工程と、冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程とを備える。これらの工程で制御する条件は、詳しく後述する。
また、図2に示す焼鈍分離剤塗布工程以降の工程、すなわち、焼鈍分離剤塗布工程および仕上げ焼鈍工程は、方向性電磁鋼板(仕上げ焼鈍鋼板)の製造工程である。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の効果は、最終製品である方向性電磁鋼板で確認できるので、これらの工程で制御する条件も後述する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造方法は、鋳造工程と熱間圧延工程と熱延板焼鈍工程と冷間圧延工程と脱炭焼鈍工程とを備え、
鋳造工程では、
質量%で、
C:0.0010~0.10%、
Si:2.0~7.0%、
Mn:0.050~1.0%、
S:0~0.0350%、
Se:0~0.0350%、
S+Se合計含有量:0.0030~0.0350%、
Al:0.010~0.0650%、
N:0.0040~0.0120%、
Nb:0~0.030%、
V:0~0.030%、
Mo:0~0.030%、
Ta:0~0.030%、
W:0~0.030%、
Nb+V+Mo+Ta+W合計含有量:0.0030~0.030%、
Cu:0~0.40%、
Bi:0~0.010%、
B:0~0.080%、
P:0~0.50%、
Ti:0~0.0150%、
Sn:0~0.10%、
Sb:0~0.10%、
Cr:0~0.30%、
Ni:0~1.0%、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する溶鋼を鋳造してスラブに成形し、
熱間圧延工程では、鋳造工程後のスラブを加熱し、粗圧延し、仕上げ圧延して熱延鋼板に成形し、
熱延板焼鈍工程では、熱間圧延工程後の熱延鋼板を焼鈍して熱延焼鈍鋼板を得て、
冷間圧延工程では、熱延板焼鈍工程後の熱延焼鈍鋼板を圧延して冷延鋼板に成形し、
脱炭焼鈍工程では、冷間圧延工程後の冷延鋼板を脱炭焼鈍して脱炭焼鈍鋼板を得る。
なお、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造方法では、
熱間圧延工程で、
粗圧延する前のスラブ加熱の際に、スラブの均熱温度を1030℃超1180℃未満、スラブの均熱時間を70分超とし、
粗圧延する際に、圧延温度を940~1070℃、および圧下率を82~95%にし、
熱延板焼鈍工程で、最高到達温度を1000~1140℃にし、冷却過程で1050~900℃の平均冷却速度を1~5℃/秒にし、900~500℃の平均冷却速度を10~50℃/秒にし、
冷間圧延工程で、圧下率を80~95%にし、
脱炭焼鈍工程で、昇温過程で200~750℃の平均昇温速度を15~2000℃/秒にし、最高到達温度を800~900℃にしてもよい。
脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物のサイズおよび分布を制御するには、鋼組成、鋳造条件、熱間圧延条件、熱延板焼鈍条件、冷間圧延条件、および脱炭焼鈍条件をそれぞれ制御する必要があり、特に、鋼組成、スラブ加熱条件、粗圧延温度、および粗圧延圧下率をそれぞれ制御した上で、熱延板焼鈍後の冷却過程、冷延圧下率、および脱炭焼鈍時の昇温過程を制御することが重要となる。
なお、上記のスラブ加熱は、スラブ加熱の途中過程で加熱温度を一時的に高くすることなく、所定温度で所定時間の均熱を行えばよい。この場合、上記のスラブの均熱温度は、スラブの表面温度を表し、また、スラブの均熱時間は、スラブの表面温度が上記の均熱温度に到達してからの保持時間を表す。例えば、鋼組成や昇温速度にも影響を受けるが、スラブの表面温度が上記の均熱温度へ到達後に上記の均熱時間で保持すれば、スラブの表面から中心まで析出物の析出状態などが均質に制御される。
以下に、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造方法で重要となる製造条件を説明する。その他の製造条件は、従来の公知の方向性電磁鋼板の製造条件を適用すればよい。
(鋳造工程)
鋳造工程では、スラブを準備する。スラブから脱炭焼鈍までの工程でC(炭素)以外の化学組成はほとんど変化しないので、スラブの化学組成は、C(炭素)を除いて、狙いとする脱炭焼鈍鋼板の化学組成(上記した脱炭焼鈍鋼板の化学組成)とすればよい。スラブのC含有量は、0.0010~0.10%とすればよい。
スラブの製造方法の一例は次のとおりである。溶鋼を製造(溶製)する。この溶鋼を用いてスラブを製造する。例えば、連続鋳造法によりスラブを製造してもよい。または、溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。スラブの厚さは、例えば、150~350mmである。スラブの厚さは、好ましくは、220~280mmである。スラブとして、厚さが10~70mmの、いわゆる薄スラブを用いてもよい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程は、スラブを所定の温度に加熱し、熱間圧延(粗圧延および仕上げ圧延)を行い、熱延鋼板を得る工程である。
例えば、熱間圧延工程では、鋳造工程後のスラブを加熱し、粗圧延を行った後、仕上げ圧延を行って、所定厚さ1.8~3.5mmの熱延鋼板とすればよい。仕上げ圧延終了後、熱延鋼板を所定の温度で巻き取ればよい。
熱間圧延工程にて、鋳造工程後のスラブを加熱する際、次の条件を満たせばよい。
粗圧延前のスラブ加熱の際に、スラブの均熱温度を1030℃超1180℃未満、スラブの均熱時間を70分超とするようにスラブを加熱すればよい。このとき、スラブに含まれる析出物の一部を好ましく溶体化されることが好ましい(例えば、鋳造工程後の室温のスラブに含まれる析出物を基準として、12~85体積%の析出物が溶体化されることが好ましい)。
粗圧延前の状態として、スラブに含まれる析出物の一部を好ましく溶体化させることは、スラブ加熱段階で析出したままの比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)と、スラブ加熱段階では析出しておらず熱間圧延以降で比較的微細に析出する析出物(再析出する析出物)との析出量を、最終的に好ましくバランスさせやすい。
なお、Nb群元素が含有されていない場合には、スラブ加熱時に溶体化されたAlNやMnSなどの析出物が後工程で析出する際に、析出状態が不均一となりやすい。そのため、本実施形態では、スラブにNb群元素を含有させる。Nb群元素は、AlNやMnSなどの均一な再析出を補助すると同時に、比較的微細なインヒビターおよび比較的粗大なインヒビターの好ましい形態での分布に寄与し、二次再結晶の優先成長性を好ましく高める。
また、上記のように、本実施形態では、スラブの均熱時間を70分超とする。従来の製造方法では、スラブ加熱時の均熱時間は、コスト的な観点から、長くても60分程度であった。例えば、スラブにNb群元素が0.0030%以上含まれていない従来の製造方法の場合、スラブ均熱時間を長時間化しても、溶体化したAlNやMnSなどの後工程での再析出状態に大きな変化はなく、スラブ均熱時間が最終製品の磁気特性に大きな影響は与えなかった。
しかしながら、スラブがNb群元素を0.0030%以上含む場合、スラブの均熱時間が70分超であると、スラブに含まれる析出物のうちのNb系析出物がスラブ加熱時に完全溶体化もしくはそれに近い状態となる。この場合、AlNやMnSなどの析出物が後工程で好ましい状態で再析出し、その結果、二次再結晶が好ましく発現する。
そのため、本実施形態では、スラブにNb群元素を含有させ、且つ、熱間圧延工程で、粗圧延する前のスラブ加熱の際に、スラブ加熱時の均熱温度を1030℃超1180℃未満とし且つ均熱時間を70分超とすればよい。この場合、スラブに含まれる析出物の一部を好ましく溶体化させやすい(例えば、鋳造工程後の室温のスラブに含まれる析出物を基準として、12~85体積%の析出物を溶体化させやすい)。
Nb群元素の含有量が上記範囲であるとき、スラブ加熱温度が1100℃以上であっても、最終的に、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとを共存させることが可能となる。例えば、スラブ加熱温度が高くてスラブ加熱段階でAlNやMnSなどの溶体化が促進した場合、後工程でこれらのAlNやMnSは粗大に再析出しやすいが、Nb群元素の含有量が上記範囲であるときには、Nb群元素の析出物がMnSやAlNの析出核として作用して、再析出するAlNやMnSのサイズを小さくする。また、Nb群元素の析出物(炭窒化物)は、その析出ノーズがAlNやMnSの析出ノーズよりも低温側にあるため、Nb群元素の析出物自体がAlNなどよりもさらに微細な析出物として析出しやすい。
そのため、Nb群元素の含有量が上記範囲であるとき、スラブ均熱時の上限温度は1180℃未満であればよい。なお、均熱温度が高くなることに伴って、析出物の溶体化も促進されるが、Nb群元素の含有量が上記範囲を満たすとき、上記したNb群元素の析出物の効果によって、最終的に、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとを共存させやすくなる。
同様に、Nb群元素の含有量が上記範囲であるとき、スラブ均熱時の下限温度は1030℃超であればよい。なお、均熱温度が低くなることに伴って、析出物の溶体化も抑制されるが、Nb群元素の含有量が上記範囲を満たすとき、最終的に、微細なインヒビターと粗大なインヒビターとを共存させることが可能となる。
上記の効果が得られるメカニズムについては、Nb群元素の析出物(炭窒化物)がMnSやAlNよりも析出しやすいことや(特に、MnSは圧延による転位の増殖などのサポートがないと析出しにくく、析出する際にはサイズが大きくなってしまう)、Nb群元素の析出物がMnSやAlNの析出における析出核として機能して再析出するAlNやMnSの粗大化を抑制していること、などが関係していると考えられる。
また、Nb群元素の含有量が上記範囲であるとき、均熱時間が70分以下では、時間が短く、析出物の溶体化状態を平衡状態に制御しにくい。なお、上記の均熱時間の上限は、特に限定されないが、工業生産における生産性を考慮すると、2時間としてもよい。
「粗圧延前の析出物の溶体化状態」を上記条件に制御することは、スラブ加熱段階で析出したままの比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)と、熱間圧延以降で比較的微細に析出する析出物(再析出する析出物)との析出量を、最終的に好ましくバランスさせやすい。
なお、上記のスラブの均熱温度は、スラブの表面温度を表し、また、スラブの均熱時間は、スラブの表面温度が上記の均熱温度に到達してからの保持時間を表す。例えば、鋼組成や昇温速度にも影響を受けるが、スラブの表面温度が上記の均熱温度へ到達後に上記の均熱時間で保持すれば、スラブの表面から中心まで析出物の析出状態などが均質に制御される。
熱間圧延工程では、上記したスラブ加熱に引き続き、熱間圧延を実施する。一般的に熱間圧延は、粗圧延および仕上げ圧延に分けられる。本実施形態では、脱炭焼鈍工程後の鋼板に含まれる析出物のサイズおよび分布を制御するために、上記した「粗圧延前の析出物の溶体化状態」を制御した上で、熱間圧延以降の各条件を制御することが重要となる。
熱間圧延工程では、スラブ加熱後に粗圧延する際に、次の条件を満たせばよい。
加熱後のスラブを粗圧延する際、圧延温度を940~1070℃に、且つ圧下率を82~95%に制御すればよい。なお、粗圧延温度は、粗圧延の開始温度と終了温度との平均値として定義される。
圧下率を上記範囲とすることで、加工誘起析出が起こって、析出物を微細かつ多量に析出させることが可能となる。粗圧延の圧下率が上記の下限よりも小さいと、圧延加工による転位導入が少なくなり、加工誘起析出できる析出サイトが少なくなるため、析出物の粒子径が大きくなる。一方、粗圧延の圧下率の上限は、特に限定されないが、圧延機の性能などを考慮して95%とすればよい。
なお、上記した粗圧延の圧下率は、粗圧延での累積圧下率を意味する。具体的には、粗圧延の圧下率を、次のように定義する。
粗圧延の圧下率(累積圧下率)(%)=(1-「粗圧延後の鋼板板厚」/「粗圧延前の鋼板板厚」)×100
また、粗圧延の圧延温度が上記の上限より高い場合には、MnS、AlN、Nb群元素の析出物などの析出ノーズより高温側あるいはノーズ付近で加工誘起析出することになるため、熱間圧延時に再析出する析出物の析出臨界半径が大きくなる。そのため、スラブ加熱段階から析出している比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)とのサイズ差が小さくなる。一方、粗圧延の圧延温度の下限は特に限定されないが、低温になればスラブが硬くなり圧延性が低下するため、例えば940℃以上で圧延すればよい。
なお、化学組成としてNb群元素を好適に含有する場合、粗圧延で、MnSやAlNに加えて、Nb群元素の析出物(特に炭化物や窒化物)が析出する。このNb群元素の析出物は、その後に析出するMnSやAlNの析出核として作用し、その結果、MnSやAlNがより微細に再析出する。そのため、化学組成としてNb群元素を好適に含有する場合、粗圧延温度、粗圧延圧下率などの各制御条件を上記のように制御すればよい。
Nb群元素を好適に含有する場合、熱間圧延工程の各条件を上記のように制御すればよい理由は、次のように考えられる。Nb群元素を含有する場合、Nb群元素の析出物に起因してMnSやAlNがより微細に再析出するので、Nb群元素を含有しない場合と比較して、再析出する析出物の粒子径が小さくなる。そのため、スラブ加熱段階で析出したままの比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)と、スラブ加熱段階では析出しておらず熱間圧延以降で比較的微細に析出する析出物(再析出する析出物)との析出量を、好ましくバランスさせ易くなる。そのため、熱間圧延工程の各条件を上記のように制御すればよいと考えられる。
例えば、Nb群元素を含有する場合に析出物の溶体化状態が好ましく制御されないと(例えば、「粗圧延前の析出物の溶体化率」が12体積%より低いと)、Nb群元素を含有しない場合と同様に、スラブ加熱時点で析出物が十分に溶体化しにくく、熱間圧延時に再析出する微細な析出物が少なくなりやすい。そのため、仕上げ焼鈍時に二次再結晶進行温度域を十分に拡大しにくい。また、Nb群元素を含有する場合に析出物の溶体化状態が好ましく制御されないと(例えば、「粗圧延前の析出物の溶体化率」が85体積%よりも高いと)、Nb群元素を含有しない場合と同様に、スラブ加熱時点でほとんどの析出物が溶体化しやすく、スラブ中の比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)が少なくなりやすい。そのため、仕上げ焼鈍時に二次再結晶進行温度域を十分に拡大しにくい。
また、Nb群元素を好適に含有する場合、Nb群元素を好適に含有しない場合と比較して、粗圧延圧下率を上記のように制御すればよい理由は、次のように考えられる。Nb群元素を含有する場合、Nb群元素の析出物が鋼中に微細析出しやすいので、Nb群元素を含有しない場合と比較して、粗圧延前でも鋼中に含まれる微細な析出物の個数が多くなる。そのため、Nb群元素を含有する場合、析出物の析出サイトが多くなり、圧下率を下げても加工誘起析出しやすい。そのため、粗圧延圧下率を上記のように制御すればよいと考えられる。
Nb群元素を含有する場合に粗圧延の圧下率が82%よりも小さいと、Nb群元素を含有しない場合と同様に、圧延加工による転位導入が少なくなり、加工誘起析出できる析出サイトが少なくなるため、析出物の粒子径が大きくなる。Nb群元素を含有する場合、粗圧延の圧下率の上限は、好ましくは93%である。
また、Nb群元素を好適に含有する場合、Nb群元素を好適に含有しない場合と比較して、粗圧延温度を上記のように制御すればよい理由は、次のように考えられる。Nb群元素を含有する場合、上述のように、Nb群元素を含有しない場合と比較して、粗圧延前でも鋼中に含まれる微細な析出物の個数が多くなる。そのため、Nb群元素を含有する場合、析出物の析出サイトが多くなり、熱間圧延時に再析出する析出物が微細になりやすい。そのため、粗圧延温度を上記のように制御すればよいと考えられる。
Nb群元素を含有する場合に粗圧延の圧延温度が1070℃より高いと、MnS、AlN、Nb群元素の析出物などのすべて析出物の析出ノーズより高温側で加工誘起析出することになるため、熱間圧延時に再析出する析出物の析出臨界半径が大きくなる。そのため、スラブ加熱段階から析出している比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)とのサイズ差が小さくなる。Nb群元素を含有する場合、粗圧延の圧延温度の上限は、好ましくは1065℃であり、さらに好ましくは1040℃である。
また、Nb群元素が析出物の微細析出を促進する理由は明確ではないが、以下のように考えられる。
粗圧延時には時間とともに鋼板温度が急激に下がる。そのため、粗圧延過程は、非平衡状態であると考えられる。平衡状態ならばMnSやAlNがすべて析出する温度域でも、非平衡状態では固溶したMnSやAlNが存在することがある。例えば、粗圧延過程は非平衡状態であるため、Nb群元素の析出物が析出する温度域でも、固溶したMnSやAlNが存在すると考えられる。そのため、粗圧延中にNb群元素の析出物が析出すると、このNb群元素の析出物が、その後に析出するMnSやAlNの析出核として作用し、MnSやAlNを微細析出させると考えられる。具体的には、Nb群元素の析出物が存在しない場合と比較して、Nb群元素の析出物が存在する場合には、MnSやAlNの析出サイトが数多くなり、その結果、MnSやAlNが微細に析出すると考えられる。
また、MnSやAlNの析出核として作用したNb群元素の析出物がMnSやAlNで覆われると、そのNb群元素の析出物はそれ以上の成長が抑制される。この場合、析出物の成長に消費されるはずだったNb群元素は、新たな析出物として微細に析出すると考えられる。この新たなNb群元素の微細析出物が、MnSやAlNの新たな析出核として作用し、MnSやAlNのさらなる微細析出に寄与すると考えられる。このように、Nb群元素の析出物は、相乗的にMnSやAlNの微細析出に寄与すると考えられる。
熱間圧延工程での上記した各条件を満足し、且つ熱間圧延工程以降の各条件を満足するとき、析出物のサイズおよび分布が好ましく制御される。その結果、脱炭焼鈍工程後に、析出物の粒子径-検出強度分布が上記範囲に制御される。
なお、上記した粗圧延前のスラブ加熱の際のスラブの均熱温度、および上記した粗圧延する際の圧延温度は、目的を持って制御する温度である。これらの温度は、スラブ加熱炉からスラブを取り出して粗圧延に供する際に生じる自然な温度降下に起因する温度ではない。例えば、一般的な操業では、スラブ均熱温度と粗圧延温度とを目的を持って制御していない。通常、スラブ均熱温度が高ければ、それに伴って粗圧延温度も高くなり、スラブ均熱温度が低ければ、それに伴って粗圧延温度も低くなる。一方、本実施形態では、上記したスラブ均熱温度と上記した粗圧延温度とを、目的を持って制御する。例えば、スラブ均熱温度が上記の範囲内で高くとも、粗圧延温度が上記の範囲内となるように制御し、同様に、スラブ均熱温度が上記の範囲内で低くとも、粗圧延温度が上記の範囲内となるように制御する。
なお、熱間圧延工程での仕上げ圧延の条件は、特に限定されず、通常の熱間圧延条件を採用すればよい。
(熱延板焼鈍工程)
熱延板焼鈍工程は、熱間圧延工程後の熱延鋼板を焼鈍して熱延焼鈍鋼板を得る工程である。熱延板焼鈍は、一般的に、熱間圧延工程後の熱延鋼板を焼鈍することにより、再結晶率や残存歪や結晶粒径などの鋼板組織を制御し、また鋼中の析出物形態を好ましく調整するために実施される。
熱延板焼鈍工程では、熱間圧延後の熱延鋼板を焼鈍する際に、次の条件を満たせばよい。
熱延板焼鈍時に、最高到達温度を1000~1140℃にし、冷却過程で1050~900℃の平均冷却速度を1~5℃/秒にし、900~500℃の平均冷却速度を10~50℃/秒に制御すればよい。
熱延板焼鈍時の最高到達温度が上記範囲であるとき、Al系析出物(AlNなど)が好ましく溶体化する。また、溶体化したAl系析出物は、冷却過程の1050~900℃の温度範囲で再析出する傾向がある。そのため、冷却過程で1050~900℃の平均冷却速度を制御すると、Al系析出物の再析出を好ましく制御できる。例えば、冷却過程で1050~900℃の平均冷却速度が上記範囲であると、Al系析出物が、Nb系析出物と比較して好ましく粗大に再析出する。粗大なAl系析出物は、仕上げ焼鈍の昇温過程の比較的高温まで非平衡的に溶け残るので、二次再結晶進行温度域を高温側に好ましく拡大させる。
同様に、熱延板焼鈍時の最高到達温度が上記範囲であるとき、Nb系析出物が好ましく溶体化する。溶体化したNb系析出物は、冷却過程の900~500℃の温度範囲で再析出する傾向がある。そのため、冷却過程で900~500℃の平均冷却速度を制御すると、Nb系析出物の再析出を好ましく制御できる。例えば、冷却過程で900~500℃の平均冷却速度が上記範囲であると、微細なNb系析出物を好ましく形成することができる。微細なNb系析出物は、仕上げ焼鈍の昇温過程の比較的低温から溶解し始めるので、二次再結晶進行温度域を低温側に好ましく拡大させる。
なお、冷却過程での1050~900℃の平均冷却速度とは、最高到達温度が1000~1050℃であるときは、最高到達温度から900℃までの温度差を、最高到達温度から冷却を始めて900℃に到達するまでの冷却時間で割った値であり、最高到達温度が1050~1140℃であるときは、1050℃から900℃までの温度差(150℃)を、1050℃から900℃に到達するまでの冷却時間で割った値である。同様に、冷却過程での900~500℃の平均冷却速度とは、900℃から500℃までの温度差(400℃)を、900℃から500℃に到達するまでの冷却時間で割った値である。
(冷間圧延工程)
冷間圧延工程は、熱延板焼鈍工程で得た熱延焼鈍鋼板を、1回の冷間圧延、又は焼鈍(中間焼鈍)を介して複数回(2回以上)の冷間圧延により、例えば、0.10~0.50mmの厚さを有する冷延鋼板を得る工程である。
冷間圧延工程では、熱延板焼鈍工程後の熱延焼鈍鋼板を圧延する際に、冷間圧延の圧下率を80~95%に制御すればよい。
なお、上記した冷間圧延の圧下率は、中間焼鈍を行わない累積冷間圧延率、または中間焼鈍を行った後の累積冷間圧延率を意味する。具体的には、冷間圧延の圧下率を、次のように定義する。
冷間圧延の圧下率(累積圧下率)(%)=(1-「冷間圧延後の鋼板板厚」/「冷間圧延前(または中間焼鈍後)の鋼板板厚」)×100
冷間圧延の圧下率が上記範囲であるとき、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織が好ましく制御される。具体的には、一次再結晶集合組織が、二次再結晶時に理想Goss方位粒(理想的な{110}<001>方位を有する方位粒)が優先成長しやすい集合組織となる(具体的には、一次再結晶集合組織にて、{111}<112>や{411}<148>で表される結晶方位が主方位となる)。その結果、最終製品として、理想Goss方位粒が優先成長した二次再結晶集合組織を得られやすくなるので好ましい。
(脱炭焼鈍工程)
脱炭焼鈍工程は、冷間圧延工程で得た冷延鋼板に脱炭焼鈍を行い、一次再結晶が生じた脱炭焼鈍鋼板を得る工程である。冷延鋼板に脱炭焼鈍を行うことで、冷延鋼板中に含まれるCが除去される。脱炭焼鈍は、冷延鋼板中に含まれる「C」を除去するために、湿潤雰囲気中で行うことが好ましい。
脱炭焼鈍工程では、冷間圧延工程後の冷延鋼板を焼鈍する際に、次の条件を満たせばよい。
脱炭焼鈍時に、昇温過程で200~750℃の平均昇温速度を15~2000℃/秒にし、最高到達温度を800~900℃に制御すればよい。
脱炭焼鈍の昇温過程で平均昇温速度が上記範囲であるとき、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織が好ましく制御される。具体的には、一次再結晶集合組織が、二次再結晶時に理想Goss方位粒が優先成長しやすい集合組織となる。その結果、最終製品として、磁束密度Bが好ましく高くなる。また、脱炭焼鈍の最高到達温度が上記範囲であるとき、一次再結晶粒径が好適な範囲に制御可能となる。その結果、仕上げ焼鈍の昇温過程の低温側でNb系析出物が分解した後、Goss方位をもつ二次再結晶粒が十分に粒成長できるので好ましい。
なお、昇温過程での200~750℃の平均昇温速度とは、200℃から750℃までの温度差(550℃)を、200℃から750℃に到達するまでの昇温時間で割った値である。
上記したように、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造方法は、鋳造工程と、熱間圧延工程と、熱延板焼鈍工程と、冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程とを備える。各工程で上記条件を複合的に制御して製造した脱炭焼鈍鋼板は、析出物のサイズおよび分布が好ましく制御され、析出物の粒子径-検出強度分布が上記範囲に制御される。その結果、仕上げ焼鈍時に二次再結晶進行温度域が拡大し、Goss方位粒の選択成長性が高まり、方向性電磁鋼板の磁束密度が向上する。
例えば、上記したように、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の製造方法では、主に粗圧延する前のスラブ加熱の際のスラブ均熱温度およびスラブ均熱時間によって、スラブ加熱段階で析出したままの比較的粗大な析出物(溶け残りの析出物)の析出量を制御し、その後の各製造条件によって、比較的微細に析出する析出物(再析出する析出物)の析出量を制御することで、脱炭焼鈍鋼板の各特徴が上記範囲に制御される。その結果、仕上げ焼鈍時に二次再結晶進行温度域が拡大し、Goss方位粒の選択成長性が高まり、方向性電磁鋼板の磁束密度が向上する。
6.脱炭焼鈍鋼板の使用方法
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の効果は、最終製品である方向性電磁鋼板で確認できる。そのため、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板の使用方法という観点で、脱炭焼鈍工程に引き続く、方向性電磁鋼板の製造工程について説明する。
方向性電磁鋼板の製造方法は、焼鈍分離剤塗布工程および仕上げ焼鈍工程を有する。また、必要に応じて、窒化処理や、絶縁被膜形成工程や、磁区制御工程を有してもよい。これら工程では、公知の一般的な工程条件を採用すればよい。以下では、低温スラブ加熱プロセスとして窒化処理を適用する製造方法を一例として説明する。
(窒化処理)
窒化処理は、二次再結晶におけるインヒビターの強度を調整するために実施する。窒化処理では、上述の脱炭焼鈍の開始から、後述する仕上げ焼鈍における二次再結晶の開始までの間の任意のタイミングで、鋼板の窒素量を40~300ppm程度に増加させればよい。窒化処理としては、例えば、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気中で鋼板を焼鈍する処理や、MnN等の窒化能を有する粉末を含む焼鈍分離剤を塗布した脱炭焼鈍鋼板を仕上げ焼鈍する処理等が例示される。
(焼鈍分離剤塗布工程)
焼鈍分離剤塗布工程は、脱炭焼鈍鋼板に焼鈍分離剤を塗布する工程である。焼鈍分離剤としては、例えば、MgOを主成分とする焼鈍分離剤や、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を用いることができる。
焼鈍分離剤を塗布後の脱炭焼鈍鋼板は、コイル状に巻取った状態で、次の仕上げ焼鈍工程で仕上げ焼鈍される。
(仕上げ焼鈍工程)
仕上げ焼鈍工程は、焼鈍分離剤が塗布された脱炭焼鈍鋼板に仕上げ焼鈍を施し、二次再結晶を生じさせる工程である。この工程は、一次再結晶粒の成長をインヒビターにより抑制した状態で二次再結晶を進行させることによって、{110}<001>方位粒を優先成長させ、磁束密度を向上させる。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を使用した場合、仕上げ焼鈍時に二次再結晶進行温度域が拡大し、従来見られなかったほどの{100}<011>方位粒の優先成長が起き、その結果、磁束密度が飛躍的に向上する。また、仕上げ焼鈍中に二次再結晶粒の異常粒成長が起き、仕上げ焼鈍後には二次再結晶粒が板面全面を占有する。数少ない二次再結晶粒が鋼板全面を覆い、各二次再結晶粒の結晶粒径が大きくなる。
また、仕上げ焼鈍工程では、上記の特許文献9~11に開示されている「二次再結晶進行温度域の拡大」のための仕上げ焼鈍条件を必要に応じて適用してもよい。本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を使用した上で、特許文献9~11に開示されている仕上げ焼鈍条件を適用すれば、さらに好ましく二次再結晶進行温度域を拡大することができる。
以下の絶縁被膜形成工程および磁区制御工程は、結晶方位を{110}<001>に集積させるという観点では必要な工程ではない。ただ、実用的な磁気特性を向上させるために、一般的な方向性電磁鋼板で採用される工程である。
(絶縁被膜形成工程)
絶縁被膜形成工程は、仕上げ焼鈍工程後の方向性電磁鋼板(仕上げ焼鈍鋼板)に絶縁被膜を形成する工程である。仕上げ焼鈍後の鋼板に、りん酸塩とコロイド状シリカとを主体とする絶縁被膜や、アルミナゾルと硼酸とを主体とする絶縁被膜を形成すればよい。
(磁区制御工程)
磁区制御工程は、方向性電磁鋼板の磁区を細分化する処理を行う工程である。この工程は、冷間圧延後の適切なタイミングで適宜実施される。例えば、レーザー、プラズマ、機械的方法、エッチングなどの公知の手法により、方向性電磁鋼板に局所的な微小歪または局所的な溝を形成すればよい。
7.本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を使用して得られる方向性電磁鋼板
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を用いて製造される方向性電磁鋼板について簡単に説明する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板は、比較的微細な析出物および比較的粗大な析出物が好ましいサイズおよび分布で共存しているため、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を使用して得られる方向性電磁鋼板は、Goss方位粒が優先的に成長し、磁束密度が好ましく高まる。また、本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を用いて製造される方向性電磁鋼板は、磁束密度が高まることに起因して他の特性が劣化するわけではないので、従来と同様の用途に使用できる。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を用いて製造される方向性電磁鋼板は、基本元素(主要な合金元素)として、質量分率で、Si(シリコン):2.0~7.0%を含有する。
また、不純物を含有してもよい。なお、「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップから、または製造環境等から混入する元素を指す。不純物の合計含有量の上限は、例えば、5%であればよい。
さらに、上記した基本元素および不純物に加えて、選択元素を含有してもよい。例えば、上記した残部であるFeの一部に代えて、選択元素として、Nb、V、Mo、Ta、W、C、Mn、S、Se、Al、N、Cu、Bi、B、P、Ti、Sn、Sb、Cr、Niなどを含有してもよい。これらの選択元素は、その目的に応じて含有させればよい。よって、これらの選択元素の下限値を限定する必要がなく、下限値が0%でもよい。また、これらの選択元素が不純物として含有されることもある。
なお、方向性電磁鋼板では、脱炭焼鈍および二次再結晶時の純化焼鈍を経ることで、比較的大きな化学組成の変化(含有量の低下)が起きる。元素によっては純化焼鈍によって、一般的な分析手法では検出できない程度(1ppm以下)にまで含有量が低減することもある。一般に、最終製品の化学組成と、出発素材であるスラブの化学組成とは異なるが、上記の任意元素はスラブとして含有させた元素が最終製品に残存したものであり、各元素の含有量はスラブについて前述した含有量の範囲を上回ることはなく、スラブでの含有量とその後の製造工程に応じた含有量範囲となる。
なお、上記の化学組成は、方向性電磁鋼板の成分である。測定試料となる方向性電磁鋼板が、表面に絶縁被膜等を有している場合は、被膜等を公知の方法で除去してから化学組成を測定する。
本実施形態に係る脱炭焼鈍鋼板を用いて製造される方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板(珪素鋼板)上に接して配された中間層と、中間層上に接して配された絶縁被膜とを有してもよい。
例えば、上記の中間層は、酸化物を主体とする層、炭化物を主体とする層、窒化物を主体とする層、硼化物を主体とする層、珪化物を主体とする層、りん化物を主体とする層、硫化物を主体とする層、金属間化合物を主体とする層などであればよい。これらの中間層は、主として珪素鋼板と絶縁被膜の密着性を確保するために形成されたものであり、酸化還元性を制御した雰囲気中での熱処理、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)などによって形成される公知のものであれば良い。
また、上記の絶縁被膜は、例えば、りん酸塩とコロイド状シリカとを主体とし平均厚さが0.1~10μmの絶縁被膜や、アルミナゾルと硼酸とを主体とし平均厚さが0.5~8μmの絶縁被膜が代表的なものとして挙げられる。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に詳細に説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1及び表2に示す化学組成のスラブを用いて、脱炭焼鈍鋼板を製造した。製造した脱炭焼鈍鋼板の化学組成は、C(炭素)を除いて、表1及び表2に示すスラブの化学組成と同等であった。製造した脱炭焼鈍鋼板のC含有量を表17~23に示す。なお、これらの化学組成は、上記の方法に基づいて測定した。表1及び表2で、「-」は含有量を意識した制御および製造をしておらず、含有量の測定を実施していないことを示す。
また、上記の脱炭焼鈍鋼板は、表3~16に示す製造条件に基づいて製造した。スラブ加熱は、スラブ加熱の途中過程で加熱温度を一時的に高くすることなく、所定温度で所定時間の均熱を行った。なお、表中に示す均熱温度は、昇温後のスラブの表面温度を表し、表中に示す均熱時間は、スラブ表面温度が均熱温度に達した時からのスラブ加熱時間を表す。
表中には示さないが、Nb群元素の合計含有量が0.0030~0.030質量%であるとき、スラブの均熱温度を1030℃超1180℃未満とし、スラブの均熱時間を70分超とすることで、鋳造工程後のスラブに含まれる析出物を基準として、12~85体積%の析出物が溶体化される。
製造した脱炭焼鈍鋼板を用いて、上記した方法に基づいて、平均粒径および析出物の粒子径-検出強度分布を調べた。測定結果を表17~23に示す。なお、表中で、DpAlはAl系析出物の最頻径を表し、DpNbはNb系析出物の最頻径を表す。
また、製造した脱炭焼鈍鋼板に、水素-窒素-アンモニアの混合雰囲気で窒化処理(窒化焼鈍)を施した。
さらに、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板に塗布し、仕上げ焼鈍を施した。仕上げ焼鈍の最終過程では、鋼板を水素雰囲気にて1200℃で20時間保持(純化焼鈍)して、自然冷却した。
製造した方向性電磁鋼板(仕上げ焼鈍鋼板)の表面に形成された一次被膜(中間層)の上に、りん酸塩とコロイド状シリカを主体としクロムを含有する絶縁被膜形成用のコーティング溶液を塗布し、水素:窒素が75体積%:25体積%の雰囲気で加熱して保持し、冷却して、絶縁被膜を形成した。
製造した方向性電磁鋼板は、切断方向が板厚方向と平行な切断面で見たとき、方向性電磁鋼板(珪素鋼板)上に接して配された中間層と、この中間層上に接して配された絶縁被膜とを有していた。なお、中間層は平均厚さ2μmのフォルステライト被膜であり、絶縁被膜は平均厚さ1μmのりん酸塩とコロイド状シリカとを主体とする絶縁被膜であった。
得られた方向性電磁鋼板について、各種特性を評価した。評価結果を表17~23に示す。
(1)方向性電磁鋼板の磁気特性
方向性電磁鋼板の磁気特性は、JIS C 2556:2015に規定された単板磁気特性試験法(SST:Single Sheet Tester)に基づいて測定した。
磁気特性として、800A/mで励磁したときの鋼板の圧延方向の磁束密度B(T)を測定した。磁束密度Bが1.930T以上である場合を合格と判断した。また、参考として、交流周波数:50Hz、励磁磁束密度:1.7Tの条件で、鋼板の単位重量(1kg)あたりの電力損失として定義される鉄損W17/50(W/kg)を測定した。
No.1~111のうち、本発明例は、脱炭焼鈍鋼板の平均粒径、および脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物の粒子径-検出強度分布が好ましく制御されており、いずれも方向性電磁鋼板として優れた磁束密度を示した。一方、No.1~111のうち、比較例は、脱炭焼鈍鋼板の平均粒径、または脱炭焼鈍鋼板に含まれる析出物の粒子径-検出強度分布が好ましく制御されておらず、方向性電磁鋼板として好ましい磁束密度が得られなかった。
本発明の上記態様によれば、磁束密度を高めることが可能な方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板の提供が可能となるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (1)

  1. 方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板において、
    前記脱炭焼鈍鋼板が、質量%で、
    C:0~0.10%、
    Si:2.0~7.0%、
    Mn:0.050~1.0%、
    S:0~0.0350%、
    Se:0~0.0350%、
    S+Se合計含有量:0.0030~0.0350%、
    Al:0.010~0.0650%、
    N:0.0040~0.0120%、
    Nb:0~0.030%、
    V:0~0.030%、
    Mo:0~0.030%、
    Ta:0~0.030%、
    W:0~0.030%、
    Nb+V+Mo+Ta+W合計含有量:0.0030~0.030%、
    Cu:0~0.40%、
    Bi:0~0.010%、
    B:0~0.080%、
    P:0~0.50%、
    Ti:0~0.0150%、
    Sn:0~0.10%、
    Sb:0~0.10%、
    Cr:0~0.30%、
    Ni:0~1.0%、
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    前記脱炭焼鈍鋼板を電解抽出した残渣である析出物について、粒子径が29nm、48nm、100nm、200nm、300nm、500nmの6種類の標準粒子から作成した検量線に基づいて粒子径-検出強度分布を測定し
    Al系析出物の最頻径を単位nmでDpAlとし、
    Nb系析出物の最頻径を単位nmでDpNbとしたとき、
    DpNbが45~250nm、
    DpAl-DpNbが10~50nm、
    を満たし、
    前記脱炭焼鈍鋼板の平均粒径が13~19μmである、
    ことを特徴とする方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板。
JP2025537646A 2024-03-06 2025-03-06 方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板 Active JP7846441B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2024034154 2024-03-06
JP2024034154 2024-03-06
PCT/JP2025/008220 WO2025187772A1 (ja) 2024-03-06 2025-03-06 方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2025187772A1 JPWO2025187772A1 (ja) 2025-09-12
JP7846441B2 true JP7846441B2 (ja) 2026-04-15

Family

ID=96991148

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2025537646A Active JP7846441B2 (ja) 2024-03-06 2025-03-06 方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7846441B2 (ja)
WO (1) WO2025187772A1 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021156980A1 (ja) 2020-02-05 2021-08-12 日本製鉄株式会社 方向性電磁鋼板
JP2021123755A (ja) 2020-02-05 2021-08-30 日本製鉄株式会社 方向性電磁鋼板
JP2023508320A (ja) 2019-12-20 2023-03-02 ポスコホールディングス インコーポレーティッド 方向性電磁鋼板およびその製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101504704B1 (ko) * 2012-11-12 2015-03-20 주식회사 포스코 무방향성 전기강판 및 그 제조방법

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023508320A (ja) 2019-12-20 2023-03-02 ポスコホールディングス インコーポレーティッド 方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2021156980A1 (ja) 2020-02-05 2021-08-12 日本製鉄株式会社 方向性電磁鋼板
JP2021123755A (ja) 2020-02-05 2021-08-30 日本製鉄株式会社 方向性電磁鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2025187772A1 (ja) 2025-09-12
WO2025187772A8 (ja) 2025-10-02
WO2025187772A1 (ja) 2025-09-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5605518B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6294319B2 (ja) 方向性ケイ素鋼板を製造する方法、方向性電磁鋼板およびこれらの使用
JP5991484B2 (ja) 低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法
JP4258349B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5756862B2 (ja) 磁性に優れた方向性電磁鋼板及びその製造方法
CN110651058A (zh) 取向性电磁钢板及其制造方法
JP5782527B2 (ja) 低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板及びその製造方法
CN104870666A (zh) 方向性电磁钢板的制造方法和方向性电磁钢板制造用的一次再结晶钢板
CN113242911A (zh) 取向电工钢板及其制备方法
JP4331969B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP7846441B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍鋼板
JP7849645B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の熱延焼鈍鋼板
JP7853630B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の熱延焼鈍鋼板
JP7853631B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の熱延焼鈍鋼板
JP7849647B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP7853628B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の熱延焼鈍鋼板
JP7853629B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の熱延焼鈍鋼板
JP7667491B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP7849646B2 (ja) 方向性電磁鋼板用の脱炭窒化鋼板
JP4259269B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP3928275B2 (ja) 電磁鋼板
JP6228956B2 (ja) 低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板及びその製造方法
WO2025187777A1 (ja) 脱炭焼鈍鋼板
JP2025136013A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
TW202532661A (zh) 無方向性電磁鋼板用熱軋鋼板的製造方法及無方向性電磁鋼板的製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20250625

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20250625

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20251007

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20251204

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20260303

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20260316

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7846441

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150