JP7846440B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び部材 - Google Patents
合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び部材Info
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Description
本願は、2024年4月9日に、日本に出願された特願2024-062779号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
自動車用部品としては防錆性も要求されるため、防錆性向上のため合金化溶融亜鉛めっき鋼板が用いられることがある。
また、強度を高めるために成分や製造工程を調整することも考えられるが、条件によっては、めっき表層においてスポット状の金属光沢部が発現する外観不良が生じる場合があった。
(1)本発明の第一の態様は、化学組成が、質量%で、C:0.10~0.35%、Si:0.01~2.00%、Mn:2.8~4.0%、P:0~0.100%、S:0~0.100%、N:0~0.020%、Al:0.001~1.500%、O:0~0.010%、Cr:0~0.80%、Mo:0~1.00%、B:0~0.0100%、Ti:0~0.1000%、Nb:0~0.4000%、V:0~0.50%、Ni:0~1.0000%、Cu:0~1.00%、REM:0~0.0100%、As:0~0.200%、Sb:0~0.200%、Sn:0~0.20%、W:0~0.100%、Co:0~2.0%、Zn:0~0.100%、Zr:0~0.0500%、Mg:0~0.050%、Ca:0~0.050%、Ta:0~0.100%、Bi:0~0.050%、及びTe:0~0.050%、を含み、残部がFe及び不純物からなる鋼素材の表面に、Znを含有するめっき層を有し、前記めっき層の表面における結晶粒のアスペクト比が4.0以下であり、前記めっき層におけるΓ相の厚さが1.0μm以下であり、引張強さが1180MPa以上である合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
(2)上記(1)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前記鋼素材の化学組成が、質量%で、Cr:0.001~0.80%、Mo:0.001~1.00%、B:0.0003~0.0100%、Ti:0.001~0.1000%、Nb:0.001~0.4000%、V:0.001~0.50%、Ni:0.001~1.0000%、Cu:0.001~1.00%、REM:0.0003~0.0100%、As:0.001~0.200%、Sb:0.001~0.200%、Sn:0.001~0.20%、W:0.001~0.100%、Co:0.01~2.0%、Zn:0.0005~0.100%、Zr:0.0010~0.0500%、Mg:0.001~0.050%、Ca:0.001~0.050%、Ta:0.001~0.100%、Bi:0.001~0.050%、及びTe:0.001~0.050%からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
(3)本発明の第二の態様は、上記(1)又は(2)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む部材である。
まず、1180MPa以上の高強度を得るためには、鋼素材を構成する金属組織は、硬質なマルテンサイト相主体の組織とすることが重要である。このため、適切な成分組成とした上で、めっき過程及び合金化過程ではオーステナイト相が主相となるよう制御し、合金化加熱後に急冷(焼入れ)することで、マルテンサイト相を得る。
優れた摺動性は、めっき層の表面において、ζ相と呼ばれる軟質な金型に凝着しやすい相の生成を抑制することで得ることができる。ζ相の生成を抑制するためには、合金化加熱を高温且つ急速昇温となるような条件で実施すればよい。
優れためっき密着性は、めっき層中において、Γ相と呼ばれる硬質で脆いFe合金化相の生成を抑制し、Γ相の厚さを小さくすることで得ることができる。Γ相が一定以上の厚さであるとプレス成形時にめっきが剥離してしまうためである。Γ相の過度な生成を抑制しつつ、ζ相の生成を抑制するためには、合金化温度への加熱を急速昇温となるような条件で実施すればよい。
したがって、化学組成と製造条件を制御しζ相の生成とΓ相の成長を抑制することにより、優れた加工性を得ることができる。
図2に示すように、金属光沢部aの外側は合金化反応が十分に進行し、Fe-Zn合金層b(健全部)が形成されているのに対し、金属光沢部aにおいては局所的に合金化反応が進行せず、Fe、Alからなる初期合金層a1が残存し、Fe-Zn合金層a2(欠陥部)が極端に薄いことがわかった。
めっき母材となる鋼素材1011には微視的には組織や成分などにばらつきが含まれている。特に、鋼板表層にC欠乏層(脱炭層)やSi、Mn等の合金元素欠乏層が生じている場合、焼鈍工程等で高温に加熱されることにより、これらの欠乏層における結晶粒が著しく成長する。また、急速昇温で瞬時に加熱を行う場合、昇温過程での合金化反応が生じにくく、より高温で合金化反応が急激に進行する。
このため、組織や成分などにばらつきのある鋼素材を用いた場合、急激に合金化反応が進行すると、比較的反応性の良い箇所では合金化反応が十分に進行するが、反応性の悪い箇所では合金化反応の進行が遅れることとなる。その際、周囲の合金化反応にめっき成分のZnが消費されるため、当該反応性の悪い箇所ではめっきが極端に薄くなり、金属光沢部として外観不良が生じる。
図3は、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の断面図である。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板1は、所定の化学組成を有する鋼素材11の表面に、Znを含有するめっき層13を有する。
以下、鋼素材の化学組成について説明する。
Cは、所望の引張強さを得るために必須の元素である。C含有量が0.10%未満では、所望の引張強さが得られないので、C含有量は0.10%以上、好ましくは0.13%以上、0.15%以上、0.20%以上である。
一方、C含有量が0.35%を超えると、鋼素材の耐水素脆性や溶接性が低下するので、C含有量は0.35%以下、好ましくは0.33%以下、0.30%以下である。
Si含有量が少ないと、冷間圧延工程でSi含有内部酸化物を形成できず、表層の結晶粒が粗大化しやすいため、Si含有量は0.01%以上、好ましくは0.02%以上、0.03%以上である。
一方、Si含有量が2.00%を超えると、Siを含む膜状の酸化物が鋼素材表面を覆うことにより、合金化反応の進行を遅延させる。そのため、優れた外観を得ることが困難となる。従って、Si含有量は、2.00%以下、好ましくは1.90%以下、1.50%以下、更に好ましくは1.00%以下である。
Mnはオーステナイト安定化元素であり、鋼素材の焼入性向上に有効な元素である。Mn含有量が2.8%未満では、焼入れが不十分となり所望の引張強さが得られない傾向にあるため、Mn含有量は2.8%以上、好ましくは2.9%以上、3.0%以上、より好ましくは3.2%以上である。
Mn含有量が4.0%を超えると、合金化反応を妨げるMnを含有する酸化物が鋼板表面に形成され、Mn酸化物の分布に起因した合金化速度のばらつきが生じやすくなり外観品位が低下するので、Mn含有量は4.0%以下、好ましくは3.9%以下、3.8%以下、3.5%以下である。
Pは、固溶強化元素であり、鋼素材の高強度化に有効な元素である。しかし、P含有量が0.100%を超えると、鋼素材の溶接性及び靱性が低下するので、0.100%以下、好ましくは0.050%以下、0.040%以下、0.030%以下である。P含有量は、0%であってもよく、0.0001%以上、0.001%以上であってもよい。
Sは、不純物元素で、少ないほど好ましい元素である。しかし、S含有量が0.100%を超えると、鋼素材中でMnSを形成して靱性及び穴広げ性を劣化させるので、S含有量は0.100%以下、好ましくは0.090%以下、0.080%以下、0.055%以下、0.030%以下、0.020%以下である。S含有量は、0%であってもよく、0.0001%以上、0.001%以上であってもよい。
Nは、不純物元素で、少ないほど好ましい元素である。N含有量が0.020%を超えると、鋼素材中に粗大な窒化物が生成して穴広げ性が低下するので、N含有量は0.020%以下、好ましくは0.015%以下、0.012%以下、0.010%以下である。N含有量は0%であってもよく、0.0001%以上、0.001%以上であってもよい。
Alは、脱酸のために添加する元素である。添加効果を得るために、Al含有量は0.001%以上とする。Al含有量は好ましくは0.003%以上、0.005%以上、0.008%以上、0.010%以上である。
一方、Al含有量は1.500%以下でも十分な効果を得ることができるため、Al含有量を1.500%以下とすることでコストの上昇を回避することができる。更には、Al含有量を1.500%以下とすることによれば、鋼素材の変態温度の上昇による熱間圧延時の負荷の増大を回避することができる。従って、Al含有量は1.500%以下、好ましくは1.000%以下、0.500%以下、0.300%以下、より好ましくは0.200%以下とする。
O含有量が0.010%超である場合、種々の酸化物を形成し、鋼板の機械特性に悪影響を及ぼし得るため、O含有量の上限は0.010%、好ましくは0.008%以下、0.006%以下、0.005%以下である。O含有量は、0%であってもよく、0.0001%以上、0.001%以上であってもよい。
Cr含有量が0.001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。Cr含有量は、0.01%以上、0.05%以上、0.10%以上であってもよい。
Cr含有量を0.80%以下とすることにより、めっき合金化反応の阻害が抑制されるため、Cr含有量の上限は0.80%であることが好ましく、0.70%以下、0.60%以下、0.50%以下であってもよい。
Mo含有量が0.001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。Mo含有量は、0.01%以上、0.05%以上、0.10%以上であってもよい。
Mo含有量を1.00%以下とすることにより、めっき合金化反応の阻害が抑制されるため、Mo含有量の上限は1.00%であることが好ましく、0.80%以下、0.50%以下、0.20%以下、0.10%以下であってもよい。
B含有量が0.0001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。B含有量は、0.0003%以上、0.0005%以上、0.0010%以上であってもよい。
B含有量は0.0100%以下でも十分な効果を得ることができるため、B含有量の上限は0.0100%であることが好ましく、0.0080%以下、0.0050%以下、0.0030%以下であってもよい。
Ti含有量が0.001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。Ti含有量は、0.0003%以上、0.0005%以上、0.0010%以上、0.0020%以上であってもよい。
Ti含有量を0.1000%以下とすることにより、再結晶温度が上昇し、冷延鋼板の金属組織が不均一化し、曲げ性が損なわれることを抑制することができるため、上限は0.1000%であることが好ましく、0.0800%以下、0.0600%以下、0.0500%以下であってもよい。
Nb含有量が0.0001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。Nb含有量は、0.001%以上、0.005%以上であってもよい。
Nb含有量を0.4000%以下とすることにより、再結晶温度が上昇し、冷延鋼板の金属組織が不均一化し、曲げ性が損なわれることを抑制することができるため、上限は0.4000%であることが好ましく、0.2000%以下、0.1000%以下、0.0500%以下であってもよい。
V含有量が0.0001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。V含有量は、0.001%以上、0.005%以上、0.010%以上であってもよい。
V含有量を0.50%以下とすることにより、再結晶温度が上昇し、冷延鋼板の金属組織が不均一化し、曲げ性が損なわれることを抑制することができるため、上限は0.50%であることが好ましく、0.30%以下、0.20%以下、0.10%以下であってもよい。
Ni含有量が0.0001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。Ni含有量は、0.001%以上、0.005%以上、0.010%以上、0.050%以上、0.100%以上であってもよい。
Ni含有量は1.0000%以下でも十分な効果を得ることができるため、Ni含有量の上限は1.0000%であることが好ましく、0.8000%以下、0.5000%以下、0.3000%以下であってもよい。
Cu含有量が0.001%以上である場合、鋼素材の強度、穴広げ性又は伸び性等の諸特性を向上させることができる。Cu含有量は、0.005%以上、0.010%以上、0.050%以上、0.10%以上であってもよい。
Cu含有量を1.00%以下とすることにより、再結晶温度が上昇し、冷延鋼板の金属組織が不均一化し、曲げ性が損なわれることを抑制することができるため、上限は1.00%であることが好ましく、0.80%以下、0.50%以下、0.30%以下であってもよい。
REM含有量が0.0003%以上である場合、介在物の形状を調整することにより、強度や曲げ性を改善できる。REM含有量は、0.0005%以上、0.0010%以上であってもよい。
REM含有量は0.0100%以下でも十分な効果を得ることができるため、REM含有量の上限は0.0100%であることが好ましく、0.0090%以下、0.0080%以下、0.0050%以下、0.0030%以下であってもよい。
なお、本実施形態においてREMとは、Sc、Y及びランタノイドからなる合計17元素を指し、REM含有量とはこれらの元素の合計含有量を指す。
Asは原料にスクラップを用いた場合に混入する元素である。粒界に強く偏析して粒界の脆化及び延性の低下や、冷間成形性の低下を招く可能性があるため、上限は0.200%であることが好ましい。ただし、過剰な除去は工程や工数の増加を招くため、含有量を0.001%以上としてもよい。
Sbは原料にスクラップを用いた場合に混入する元素である。粒界に強く偏析して粒界の脆化及び延性の低下や、冷間成形性の低下を招く可能性があるため、上限は0.200%であることが好ましい。ただし、過剰な除去は工程や工数の増加を招くため、含有量を0.001%以上としてもよい。
Snは原料にスクラップを用いた場合に混入する元素である。粒界に強く偏析して粒界の脆化及び延性の低下や、冷間成形性の低下を招く可能性があるため、上限は0.20%であることが好ましい。ただし、過剰な除去は工程や工数の増加を招くため、含有量を0.001%以上としてもよい。
W含有量が0.001%以上である場合、鋼素材の強度を向上できる。
W含有量が0.100%超である場合、延性の低下を招き、鋼板の冷間加工性を低下させるため、上限は0.100%であることが好ましい。
Co含有量が0.01%以上である場合、鋼素材の強度を向上できる。
Co含有量が2.0%超である場合、延性の低下を招き、鋼板の冷間加工性を低下させるため、上限は2.0%であることが好ましい。
Zn含有量が0.100%超である場合、粗大なZn酸化物が生成され、冷間成形性が低下するため、上限は0.100%であることが好ましい。
Zn含有量の下限は実質的に0%であってよく、0.0005%であってよい。
Zr含有量が0.0010%以上である場合、鋼板の曲げ成形性の向上に寄与できる。
Zr含有量が0.0500%超である場合、粗大なZr酸化物が生成され、冷間成形性が低下するため、上限は0.0500%であることが好ましい。
Mg含有量が0.001%以上である場合、介在物の形状を調整することにより、強度や曲げ性を改善できる。
Mg含有量は0.050%以下でも十分な効果を得ることができるため、Mg含有量の上限は0.050%であることが好ましい。
Ca含有量が0.001%以上である場合、介在物の形状を調整することにより、強度や曲げ性を改善できる。
Ca含有量は0.050%以下でも十分な効果を得ることができるため、Ca含有量の上限は0.050%であることが好ましい。
Ta含有量が0.001%以上である場合、介在物の形状を調整することにより、強度や曲げ性を改善できる。
Ta含有量は0.100%以下でも十分な効果を得ることができるため、Ta含有量の上限は0.100%であることが好ましい。
Bi含有量が0.001%以上である場合、介在物の形状を調整することにより、強度や曲げ性を改善できる。
Bi含有量は0.050%以下でも十分な効果を得ることができるため、Bi含有量の上限は0.050%であることが好ましい。
Te含有量が0.001%以上である場合、介在物の形状を調整することにより、強度や曲げ性を改善できる。
Te含有量は0.050%以下でも十分な効果を得ることができるため、Te含有量の上限は0.050%であることが好ましい。
残部はFe及び不純物からなる。不純物は、鋼原料から及び/又は製鋼過程で混入し、本発明の実施形態に係る鋼板の特性を阻害しない範囲で存在が許容される元素である。
具体的には、例えば、鋼素材の板厚1/4位置付近から35mm角の試験片を取得し、島津製作所製ICPS-8100等(測定装置)により、予め作成した検量線に基づいた条件で測定することにより特定することができる。
ICP-AESで測定できないC及びSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用い、Oは不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法を用いて測定すればよい。
鋼素材の表面のめっき層は、機械研削等により除去してから化学組成の分析を行えばよい。
尚、不純物は、原料に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分を指す。例えば、めっき層には、素地鋼材とめっき浴との相互の原子拡散によって、不純物として、Fe以外の成分も微量混入することがある。また、めっき層中の上記含有量は、めっき層全体としての含有量であり、めっき層中の特定の相に相当する部分等の局所的な部分の含有量ではない。
めっき層のFe含有量が15.0%以下である場合、Γ相の成長を抑制でき、めっきの密着性を確保できる。めっき層中、Fe含有量は、13.0%以下であることが好ましく、12.0%以下であることが更に好ましい。
めっき層のAl含有量が1.0%以下である場合、合金化加熱に必要な温度を低減し、めっき後の外観品位を向上できる。めっき層中、Al含有量は、0.6%以下あることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。
Γ相は、めっき層中、鋼素材との界面近傍に生成するFe合金化相である。Γ相は硬質で脆いため一定以上の厚さがあるとプレス成形時にめっきが剥離してしまうことがある。
Γ相の厚みが1.00μm以下であれば、プレス成形時のめっき剥離が抑制され、優れためっき密着性が発揮される。Γ相の厚みは、好ましくは0.90μm以下であり、より好ましくは0.80μm以下である。
まず、150g/LのNH4Cl水溶液中に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の表面における直径φ20mmの測定部以外をテープでマスキングしたサンプルを浸漬し、当該サンプルに-0.940Vの電位を印加する。
電流が流れなくなったらサンプルをNH4Cl水溶液から取り出し、サンプルの測定部の表面を脱脂綿で強くこすり、残渣を取り除く。
その後、サンプルを再度NH4Cl水溶液中に浸漬し、4mA/cm2の電流密度となるようにサンプルに電圧を印加する。電位が-0.55Vで一定となったら測定を終了する。
溶解開始から電位が-0.55Vで一定となるまでの時間t1(s)を測定し、下記式(1)によりΓ相の厚さd(μm)を求める。
d=t1×4×4.448 …(1)
ζ相は、めっき層中に生成する軟質のFe―Zn合金化相である。めっき層表面のζ相は軟質であるためプレス成形の際に金型に凝着し、めっきが剥離してしまうことがある。場合によっては、プレス成形の際に金型とめっき層表面との間の摺動性が不足するため、鋼素材もろとも割れることもある。めっき層の表面におけるζ相の生成を抑制することにより、プレス成形の際の摺動性を向上させることができる。
めっき層の表面における結晶粒のアスペクト比は、好ましくは3.5以下、2.0以下、1.5以下であり、より好ましくは1.0以下である。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の表面を、アセトン超音波洗浄した後、SEM(JEOL JSM-7001F、加速電圧20kV)で倍率1000倍で撮影しSEM画像を得る。
SEM画像において、目視にてアスペクト比がより大きいと判断される結晶粒を20個以上選択し、選択した各結晶粒について、アスペクト比を計測する。アスペクト比の計測には、画像解析ソフト「Image J 1.54f」のアスペクト比計測機能を用いる。
撮影した1000倍のSEM画像において20個以上の結晶粒が観察できない場合は、撮影範囲を変更して、同条件で別のSEM画像を追加で撮影し、観察する。必要であれば、観察できる結晶粒が20個以上となるまで、SEM画像を追加で撮影する。計測したアスペクト比について、アスペクト比が大きい順に上位20点のアスペクト比の平均値を求め、その値を「めっき層の表面における結晶粒のアスペクト比」とする。
本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、1180MPa(HV:370)以上の引張強さを有する。好ましくは、引張強さは1300MPa(HV:410)以上であり、より好ましくは、引張強さは1450MPa(HV:460)以上である。本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の引張強さの上限は特に制限されるものではないが、実質的な上限は2000MPa(HV:650)である。なお、ビッカース硬さ(HV)は、試験片の板厚断面の、鋼板表面から板厚の1/4厚さの位置において、荷重0.490Nで測定したものである。
金属光沢部は、鋼素材の表層部分における結晶粒の粗大化に起因する。本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、鋼素材の表層部分における平均結晶粒径が円相当径で15μm以下であることが好ましく、12μm以下、10μm以下、9μm以下であることがより好ましい。
鋼素材の表層部分における平均結晶粒径の下限は特に制限されるものではないが、平均結晶粒径は円相当直径で、例えば1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよい。
EBSD検出器(TSL社製OIM)を取り付けたFE-SEM(JEOL JSM-7001F、加速電圧20kV)を用いて、80倍の倍率で1000μm×250μmの領域について、測定ピッチ1μmで、結晶方位を解析する。EBSD付属のソフトウェアOIM ANALYSISを用いて、5°以上の結晶方位差がある領域の境界を粒界とみなし、粒界で囲われた領域を結晶粒とみなしたときの各結晶粒の面積に基づき、円相当径を計測する。
計測した円相当径の粒径分布を面積分率で評価する。円相当径の計測、粒径分布の解析を含め、計測及び解析は、EBSD検出器(TSL社製OIM)に付属のソフトウェア「OIM ANALYSIS」を用いて行うことができる。
製造方法の一例は、(A)熱間圧延工程、(B)酸洗・冷間圧延工程、(C)焼鈍工程、(D)めっき工程、(E)合金化工程、(F)焼入れ・焼戻し工程、を含む。以下、各工程について説明する。
まず、鋼素材について上述した化学組成を有するスラブを加熱する。スラブは、上述した化学組成を有する限りにおいて特に制限されない。スラブは連続鋳造法において鋳造されたものであってよい。スラブの加熱温度は1100℃以上であることが好ましい。加熱温度の上限は、特に限定されないが、加熱設備の能力や生産性の観点から1300℃以下であることが好ましい。
加熱されたスラブに対し、適宜、粗圧延、仕上げ圧延を施した後、冷却し、所定の板厚の熱延鋼板を得る。仕上げ圧延完了温度は、860~960℃の範囲内であることが好ましい。仕上げ圧延完了後、450~700℃の温度範囲内まで冷却し、熱延鋼板を巻き取る。仕上げ圧延後の板厚は2.0~4.0mmの範囲内であることが好ましい。
熱延鋼板を巻取り後に、鋼板表層では易酸化性元素の酸化物が形成され、易酸化性元素の固溶濃度が低下する。易酸化性元素であるSiの固溶濃度が鋼板表層で低下すると、鋼板表層にSi欠乏層が形成される。こうして生じたSi欠乏層が厚いとその後の焼鈍工程において、鋼板表層にSiを含有する内部酸化物が形成されにくく、鋼板表層の結晶粒が粗大化しやすい。
鋼板表層のSi欠乏層は熱延鋼板を巻取り後、比較的高温(500℃以上)で長時間保持することで生じる。また、鋼板中のSi濃度が低いと、後述する(C)焼鈍工程において、Siを含有する内部酸化物が形成されにくい。
f(t,[Si])=Log10(t+10)/[Si]0.095 …(2)
パラメータf(t,[Si])は4.70以下であることが好ましく、4.60以下、
4.50以下、4.40以下、4.30以下、4.10以下であることがより好ましく、3.50以下であることが更に好ましい。
熱間圧延工程により得られた熱延鋼板を酸洗し、酸化物等を除去した熱延鋼板に対して、所望の板厚まで冷間圧延を行い、冷延鋼板を得る。なお、冷間圧延に先立って、酸洗の前または後に熱処理を施してもよい。
次いで、冷延鋼板に対して、以下の焼鈍条件による焼鈍を行う。焼鈍温度の下限は800℃以上、好ましくは820℃以上である。焼鈍温度が800℃未満では、焼鈍温度においてフェライト相が残存し、90%以上のオーステナイト分率が得られない。そのため、鋼素材においてマルテンサイト主体の組織を得ることが困難となり、所望の引張強さを達成することができない。
焼鈍温度が880℃以上では、過剰にエネルギーを消費し、炉体を損傷する場合もある。
焼鈍後の冷却条件は特に制限されない。
焼鈍工程を経た冷延鋼板に対し、亜鉛めっきを付与し、溶融亜鉛めっき鋼板を得る。めっき付与の方法は特に制限されないが、冷延鋼板をめっき浴へ浸漬させることによりめっきを付与することができる。めっき浴は、0.12%以上0.15%以下のAlを含むZn浴とする。めっき浴中のAl濃度は、好ましくは0.135%以上であることが好ましく、0.145%以下であることが好ましい。
めっき浴中のAl濃度が低いと、めっき浴中に形成するボトムドロスが増加し、外観不良の原因となることがある。
一方、めっき浴中のAl濃度が高いと、後述する合金化工程において、高温での合金化加熱が必要となり、外観不良が生じやすい。
めっき浴中には、Fe、Mg、Si、Ti、Sb、Sn、Pb、Caなどの添加元素や、その他不純物を含んでいてもよい。
冷延鋼板をめっき浴へ侵入させる際の板温は400℃以上490℃以下とする。当該板温は、好ましくは440℃以上であり、470℃以下である。冷延鋼板をめっき浴へ侵入させる際の板温が400℃以下では冷延鋼板からのFeの溶出量が減少し、不めっきと呼ばれる一部めっきが形成しないめっき欠陥が発生することがある。当該板温が490℃以上では、めっき浴中で非常に緻密なFe―Zn合金が形成され、それがFeと溶融Znと間の反応を阻害することがあり、後述の合金化工程において合金化処理性が低下する。
めっき工程により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対し、合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る。
合金化処理において、合金化温度へ加熱する際の昇温速度は、50℃/s以上400℃/s以下とする。
当該昇温速度が50℃/s未満では、Γ相の生成、及びζ相の生成をともに抑制することが困難である。400℃/s超の昇温速度とするには通板速度の高速化や、加熱装置の小型化・高出力化が必要であり、工業的に難しい。
合金化温度が500℃以下では、ζ相が晶出してめっき層の表面における結晶粒のアスペクト比が4.0以下に制御することが難しい。合金化温度が630℃以上では、めっき層の一部で急激に合金化反応が先行して進み、外観不良が生じやすく、また、プレス成形時のめっき密着性が低下する。
合金化温度における溶融亜鉛めっき鋼板の加熱には、通電加熱、誘導加熱などの任意の方法を採用することができる。
合金化工程の後、焼入れのために合金化溶融亜鉛めっき鋼板を急冷し、その後、必要に応じて焼戻しのための加熱を施してもよい。それにより所望の強度-延性バランスを有したマルテンサイト主体の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。焼入れの冷却終点温度は任意に設定できるが、例えば80℃以下に設定してもよい。焼戻し温度も任意に設定できるが、例えば200℃以上350℃以下としてもよい。また、上述の焼入れ若しくは焼戻しの前又は後に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗さや強度の調整のために、調質圧延を行ってもよい。調質圧延の伸び率は、例えば0.1~5.0%の範囲で設定することができる。
表1及び表2に示す化学組成を有する鋼種A~Yを対象として、表3に示す製造条件により合金化加熱した場合のめっきの構成及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板としての特性を評価した。表1~3において、本発明の範囲外の数値には下線を付した。
巻取り後の熱延鋼板が500℃以上の温度域に滞留する時間が表3に示す滞留時間tとなるように、冷却又は保温した。その後、熱延鋼板に対して、冷却、酸洗、冷間圧延を施した。
冷延鋼板に対し、水素濃度5%の窒素雰囲気、露点―5℃、焼鈍温度850℃で焼鈍を行った後、Al濃度が0.135%であり、浴温が460℃の溶融亜鉛めっき浴に、板温460℃で冷延鋼板を浸漬させて溶融亜鉛めっきを付与して、溶融亜鉛めっき鋼板を得た。めっきの目付量は55g/m2であった。
各合金化溶融亜鉛めっき鋼板の外観は、各合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面(めっき層の表面)を観察し、以下に示す1~7の評価基準により、7段階で評価した。評価3以上を合格とした。
7:外観むらが認められないもの
6:金属光沢を有さない点状の外観むらが認められ、各点の直径が1mm未満であるもの
5:金属光沢を有さない点状の外観むらが認められ、各点の直径が1mm以上であるもの
4:金属光沢を有する点状の外観むらがめっき層の表面の一部のみに点列状の偏在が認められ、各点の直径が1mm未満であるもの
3:金属光沢を有する点状の外観むらがめっき層の表面の一部のみに点列状の偏在が認められ、各点の直径が1mm以上3mm未満であるもの、又は、
金属光沢を有する点状の外観むらがめっき層の表面の全体に亘って認められ、各点の直径が1mm未満であるもの
2:金属光沢を有する点状の外観むらがめっき層の表面の一部のみに点列状の偏在が認められ、各点の直径が3mm以上5mm未満であるもの、
又は、
金属光沢を有する点状の外観むらがめっき層の表面の全体に亘って認められ、各点の直径が1mm以上3mm未満であるもの
1:金属光沢を有する点状の外観むらが認められ、各点の直径が5mm以上であるもの、又は、
金属光沢を有する点状の外観むらがめっき層の表面の全体に亘って認められ、各点の直径が3mm以上5mm未満であるもの
なお、上記評価基準において「外観むら」とは、めっき層の表面において、他の部分よりも金属光沢の度合いが強い部分のことを言う。「金属光沢を有する点状の外観むら」は、前述の金属光沢部に相当する。
各合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっきの密着性(曲げ・曲げ戻し後)の評価方法について図4A~図4Cを参照して説明する。
(1)図4Aに示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板から打ち抜き加工により得た直径70mmの円盤状のサンプル100aに対し、90°曲げ加工を行い、当該サンプル100aに対し曲げ戻し加工を施し、サンプル100bを得る。
(2)図4Bに示すように、サンプル100bにおける曲げの内側(曲げ内側、谷折り側)部分に透明なセロハンテープ(ニチバン社製「CT405AP―24」)を貼り付けた後に剥がすことで、サンプル100bから、曲げの内側部分に沿って線状に剥離しためっき201を付着させた測定用セロハンテープ200を得る。
(3)図4Cに示すように、測定用セロハンテープ200をホワイトボード300に貼り付け、線状に付着させためっき201のうち、最もめっきが付着した部分の幅W(線方向に垂直な方向における幅)の大きい箇所を2か所選定し、反射率計400(東京電色社製「TC-6MC-D」)を使用して、剥離テープ反射率(%)を測定する。
このようにして得られた測定値のうち、大きい方の値を当該サンプルの剥離テープ反射率(%)とした。
剥離テープ反射率(%)は、剥離しためっきが多いほど、値が小さくなる。すなわち、剥離しためっきが少ないほど、剥離テープ反射率(%)の値が大きくなり、好ましい。密着性(曲げ・曲げ戻し後)の指標として、剥離テープ反射率が40%以上である場合を合格とした。
各合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっきの密着性(しごき加工後)の評価方法について図5Aと図5Bを参照して説明する。
(1)図5Aに示すように、上型500Uの凸部510Uと下型500Lの凹部510Lを噛み合わせて形成したビード部で両側を抑えた合金化溶融亜鉛めっき鋼板をポンチ500Cで押し込むしごき加工を行い、しごき加工サンプル600を得た。押さえ荷重を1200kgとし、ポンチ500Cのストローク量は65mm、凸部510Uの底面の両角の曲率半径は1mmとした。
(2)しごき加工サンプル600の側壁部610の下端に、幅24mm、長さ100mmの透明なセロハンテープ(ニチバン社製「CT405AP―24」)を貼り付けた後に剥がすことで、しごき加工サンプル600から、線状に剥離しためっき601を付着させた目視評価用セロハンテープ700を得た。
(3)この目視評価用セロハンテープ700をホワイトボードに貼り付け、目視にて、目視評価用セロハンテープ700に付着しためっきの量により、A~Cの3段階で、密着性(しごき加工後)を評価した。評価A又はBを合格とした。
A:目視評価用セロハンテープに付着しためっきが認められない
B:目視評価用セロハンテープに微量のめっきが付着した(めっき付着面積80%未満)
C:目視評価用セロハンテープに多量のめっきが付着した(めっき付着面積80%以上)
発明例である実施例からは、本願で規定する範囲を満たすことによれば、高強度であるとともに加工性に優れ、且つ、外観不良の発生が抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られることが確認できた。
一方、本願で規定する範囲を満たさない比較例からは、高強度であるとともに加工性に優れ、且つ、外観不良の発生が抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られないことが確認できた。
11 鋼素材
13 めっき層
1001 鋼板
1011 鋼素材
a 金属光沢部
a1 初期合金層
a2 Fe-Zn合金層
Claims (3)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.10~0.35%、
Si:0.01~2.00%、
Mn:2.8~4.0%、
P:0~0.100%、
S:0~0.100%、
N:0~0.020%、
Al:0.001~1.500%、
O:0~0.010%、
Cr:0~0.80%、
Mo:0~1.00%、
B:0~0.0100%、
Ti:0~0.1000%、
Nb:0~0.4000%、
V:0~0.50%、
Ni:0~1.0000%、
Cu:0~1.00%、
REM:0~0.0100%、
As:0~0.200%、
Sb:0~0.200%、
Sn:0~0.20%、
W:0~0.100%、
Co:0~2.0%、
Zn:0~0.100%、
Zr:0~0.0500%、
Mg:0~0.050%、
Ca:0~0.050%、
Ta:0~0.100%、
Bi:0~0.050%、及び
Te:0~0.050%、を含み、
残部がFe及び不純物からなる鋼素材の表面に、Znを含有するめっき層を有し、
前記鋼素材の表層部分における平均結晶粒径が円相当径で15μm以下であり、
前記めっき層の表面における結晶粒のアスペクト比が4.0以下であり、
前記めっき層におけるΓ相の厚さが1.0μm以下であり、
引張強さが1180MPa以上である
ことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 - 前記鋼素材の化学組成が、質量%で、
Cr:0.001~0.80%、
Mo:0.001~1.00%、
B:0.0003~0.0100%、
Ti:0.001~0.1000%、
Nb:0.001~0.4000%、
V:0.001~0.50%、
Ni:0.001~1.0000%、
Cu:0.001~1.00%、
REM:0.0003~0.0100%、
As:0.001~0.200%、
Sb:0.001~0.200%、
Sn:0.001~0.20%、
W:0.001~0.100%、
Co:0.01~2.0%、
Zn:0.0005~0.100%、
Zr:0.0010~0.0500%、
Mg:0.001~0.050%、
Ca:0.001~0.050%、
Ta:0.001~0.100%、
Bi:0.001~0.050%、及び
Te:0.001~0.050%
からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 - 請求項1又は2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む部材。
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