本発明の半導体装置は、半導体層に少なくとも一部が埋設されているゲート電極と、前記ゲート電極の埋設下端部と同じ深さかまたは前記埋設下端部よりも深い位置にまで少なくとも一部が前記半導体層に埋設されているディープp層と、チャネル層とを含む半導体装置であって、前記チャネル層が第1のp型酸化物半導体を主成分として含み、前記ディープp層が前記第1のp型酸化物半導体とは異なる第2のp型酸化物半導体を主成分として含むことを特長とする。
「ゲート電極の埋設下端部」とは、前記ゲート電極の底の全部または一部をいう。
前記ゲート電極は、主電流の流れを制御することができる電極であれば特に限定されず、半導体領域、拡散領域、電極等が含まれる。
前記ゲート電極の材料は、ゲート電極として用いることができるものであれば、特に限定されず、導電性無機材料であってもよいし、導電性有機材料であってもよい。本発明においては、前記ゲート電極の材料が、金属、金属化合物、金属酸化物、金属窒化物であるのが好ましい。前記金属としては、好適には例えば、周期律表第4族~第11族から選ばれる少なくとも1種の金属などが挙げられる。周期律表第4族の金属としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられる。周期律表第5族の金属としては、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などが挙げられる。周期律表第6族の金属としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)等から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられる。周期律表第7族の金属としては、例えば、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)などが挙げられる。周期律表第8族の金属としては、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などが挙げられる。周期律表第9族の金属としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などが挙げられる。周期律表第10族の金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などが挙げられる。周期律表第11族の金属としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などが挙げられる。
前記ゲート電極の形成手段としては、例えば公知の手段などが挙げられ、より具体的には例えば、ドライ法やウェット法などが挙げられる。ドライ法としては、例えば、スパッタ、真空蒸着、CVD等の公知の手段が挙げられる。ウェット法としては、例えば、スクリーン印刷やダイコート等が挙げられる。
前記チャネル層は、前記ゲート電極に直接または他の層を介して接しており、ソース電極(エミッタ電極)とドレイン電極(コレクタ電極)との間に位置しているものであれば、特に限定されない。本発明において、前記チャネル層は、第1のp型酸化物半導体を主成分として含む。前記第1のp型酸化物半導体は、周期律表のdブロック金属および/または周期律表第13族金属を含むのが好ましく、周期律表第9族金属および/または第13族金属を含むのがより好ましく、周期律表第13族金属を少なくとも含むのが最も好ましい。「主成分」とは、前記第1のp型酸化物半導体が、原子比で、前記チャネル層の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。例えば、前記第1のp型酸化物半導体が、p型ドーパントを含有するα-Ga2O3である場合、前記チャネル層の全ての金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でα-Ga2O3が含まれていればそれでよい。また、本発明においては、前記第1のp型酸化物半導体のバンドギャップが、5.0eV以上であるのが好ましい。また、本発明においては、前記第1のp型酸化物半導体が、結晶性を有しているのが好ましい。この場合、前記第1のp型酸化物半導体が、単結晶であってもよいし、多結晶等であってもよい。また、前記第1のp型酸化物半導体は、コランダム構造またはβガリア構造を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。
また、本発明においては、前記第1のp型酸化物半導体が、ガリウムを含有する金属酸化物の結晶又は混晶であるのも好ましく、酸化ガリウムまたはその混晶(例えば、α-Ga2O3またはその混晶)であるのがより好ましい。この場合、前記第1のp型酸化物半導体は、通常、p型ドーパントを含有する。前記p型ドーパントとしては、特に限定されないが、例えば、Mg、Zn、Ca、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Cd、Hg、Tl、Pb、N、P等およびこれらの2種以上などの元素等が挙げられる。また、前記ドーパントの濃度は、特に限定されない。本発明においては、前記ディープp層よりもキャリア濃度が低いのが好ましい。前記ドーパントの濃度は、例えば、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよい。なお、本発明においては、前記ドーパントの濃度を例えば約1×1018/cm3以下の低濃度にするのが好ましい。
なお、「周期律表」は、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC)にて定められた周期律表を意味する。「dブロック」は、3d、4d、5d、および6d軌道を満たす電子を有する元素をいう。 前記dブロック金属としては、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、ローレンシウム(Lr)、ラザホージウム(Rf)、ドブニウム(Db)、シーボーギウム(Sg)、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)、マイトネリウム(Mt)、ダームスタチウム(Ds)、レントゲニウム(Rg)、コペルニシウム(Cn)及びこれらの2種以上の金属などが挙げられる。
前記ディープp層は、前記第1のp型酸化物半導体とは異なる第2のp型酸化物半導体を主成分として含むものであれば、特に限定されない。本発明においては、前記第2のp型酸化物半導体は、周期律表のdブロック金属および/または周期律表第13族金属を含むのが好ましく、周期律表第9族金属および/または第13族金属を含むのがより好ましく、周期律表第9族金属および周期律表第13族金属を含むのが最も好ましい。本発明においては、前記第2のp型酸化物半導体が、イリジウムを含有する金属酸化物の結晶又は混晶であるのも好ましく、酸化イリジウムまたはその混晶(例えば、α-Ir2O3またはその混晶)であるのがより好ましい。前記第2のp型酸化物半導体がα-Ir2O3の混晶である場合の例としては、α-(IrGa)2O3等が挙げられる。この場合、前記第2のp型酸化物半導体中のα-(IrGa)2O3中のIrとGaとの原子比は、特に限定されない。本発明の実施態様においては、α-(IrGa)2O3中のIrおよびGaの合計に対するIrの原子比は、例えば、1%~95%の範囲内である。「主成分」とは、前記第2のp型酸化物半導体が、原子比で、前記ディープp層の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。具体的には、例えば、前記第2のp型酸化物半導体が、α-Ir2O3である場合、前記ディープp層の全ての金属元素中のイリジウムの原子比が0.5以上の割合でα-Ir2O3が含まれていればそれでよい。また、例えば、前記第2のp型酸化物半導体が、α-(IrGa)2O3である場合、前記ディープp層の全ての金属元素に対するイリジウムおよびガリウムの原子比の合計が0.5以上の割合でα-(IrGa)2O3が含まれていればそれよい。また、本発明においては、前記第2のp型酸化物半導体が、結晶性を有するのが好ましい。この場合、前記第2のp型酸化物半導体がコランダム構造またはβガリア構造を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。なお、前記ディープp層は、p型ドーパントを含有していてもよい。前記p型ドーパントとしては、特に限定されないが、例えば、Mg、Zn、Ca、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Cd、Hg、Tl、Pb、N、P等およびこれらの2種以上などの元素等が挙げられる。また、前記ドーパントの濃度は、通常、前記チャネル層よりもキャリア濃度が高い。前記ディープp層のキャリア濃度は、例えば、約1×1016/cm3~1×1022/cm3である。本発明においては、前記ディープp層のキャリア濃度が、1×1017/cm3以上であるのが好ましく、1×1018/cm3以上であるのがより好ましい。
前記半導体層は、半導体からなる半導体層であれば特に限定されないが、n型半導体層(n+型半導体層やn-型半導体層を含む)であるのが好ましい。本発明においては、前記半導体層が結晶性酸化物半導体層であるのが好ましい。また、本発明においては、前記半導体層の降伏電界強度が5MV/cm以上であるのが、半導体特性より良好に発揮することができるので好ましい。また、本発明においては、前記半導体層がコランダム構造またはβガリア構造を有するのが好ましく、酸化ガリウムまたはその混晶を含むのも好ましい。前記半導体層の厚さは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。本発明においては、前記半導体層の厚さが50μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのがより好ましく、10μm以下であるのが最も好ましい。また、ディープp層の厚さを半導体層(例えばn-型半導体層)の厚さの半分以上に設定するのも好ましい。このような好ましい厚さとすることにより、前記第2のp型酸化物半導体による電界緩和効果をより向上させ、且つ半導体特性(小型化も含む)をより良好に奏することができる。
前記結晶性酸化物半導体層は、通常、酸化物半導体を主成分として含む。前記酸化物半導体は、ガリウムを含むのが好ましく、酸化ガリウムおよびその混晶であるのがより好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体層の結晶構造等は特に限定されない。前記結晶性酸化物半導体層の結晶構造としては、例えば、コランダム構造、βガリア構造、六方晶構造(例えばε型構造)等が挙げられる。本発明においては、前記結晶性酸化物半導体層がコランダム構造またはβガリア構造を有するのが好ましく、コランダム構造を有するのがより好ましい。前記酸化物半導体は、特に限定されないが、少なくとも周期律表第3周期~第6周期の1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、ガリウム、インジウム、ロジウム、イリジウムおよびアルミニウムから選択される少なくとも一つを含むのがより好ましい。n型の酸化物半導体については少なくともガリウムを含むのが好ましい。ガリウムを含む前記酸化物半導体としては、例えば、α-Ga2O3またはその混晶などが挙げられる。このような好ましい酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体層は、結晶性や放熱性がより優れたものとなり、半導体特性もさらに優れたものになり得る。なお、前記「主成分」とは、結晶性酸化物半導体層中の組成比で、前記酸化物半導体を50%以上含むものをいい、好ましくは70%以上含むものであり、より好ましくは90%以上含むものである。例えば、前記酸化物半導体がα-Ga2O3である場合、前記結晶性酸化物半導体層の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でα-Ga2O3が含まれていればそれでよい。本発明においては、前記結晶性酸化物半導体層の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。なお、前記酸化物半導体は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、前記酸化物半導体は、通常、膜状であるが、本発明の目的を阻害しない限りは特に限定されず、板状であってもよいし、シート状であってもよく、層状であってもよく、複数の層を含む積層体であってもよい。
前記酸化物半導体は、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。n型ドーパントであってもよいし、p型ドーパントであってもよい。前記n型ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブなどが挙げられる。前記p型トーパントとしては、例えば、上記したp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、適宜設定されるものであってよく、具体的には例えば、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm3以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm3以上の高濃度で含有させてもよい。
本発明においては、前記チャネル層と前記半導体層(ドリフト層)との伝導帯のバンドオフセットは、1.5eV以下であるのが好ましく、1.0eV以下であるのがより好ましい。このような好ましい構成とすることにより、前記半導体装置のオン抵抗をより低減しつつ電界緩和効果を得ることができる。前記チャネル層と前記ディープp層との好ましい組合せとしては、例えば、前記チャネル層がp型ドーパントを含むα-Ga2O3を主成分として含み、前記ディープp層がα-Ir2O3またはその混晶(例えば、酸化イリジウムと酸化ガリウムとの混晶)を主成分として含む場合などが挙げられる。この場合、前記半導体層(ドリフト層)としては、n型ドーパントを含むα-Ga2O3等を用いることにより、オン抵抗をより低減することができる。また、この場合、前記ディープp層と前記半導体層(ドリフト層)との間にi型半導体層が設けられているのも好ましい。i型半導体層は、半導体層(ドリフト層)よりもキャリア密度の低いものであれば、特に限定されない。i型半導体層としては、例えば、前記半導体層(ドリフト層)および/または前記ディープp層の主成分と同じ材料を主成分とする半導体層が挙げられる。i型半導体層のキャリア密度は、例えば、2.0×1016/cm3以下である。このようにしてi型半導体層を用いることにより、例えばディープp層に半導体層(ドリフト層)よりもバンドギャップの低い材料を用いた場合であっても、ディープp層にかかる電界を抑えることができる。
前記第1および第2のp型酸化物半導体、前記結晶性酸化物半導体および前記酸化物半導体(以下、まとめて「前記結晶性酸化物半導体」ともいう。)は例えばミストCVD法またはミスト・エピタキシー法によりエピタキシャル結晶成長させることにより得ることができる。
<結晶基板>
前記結晶基板は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基板であってよい。絶縁体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいし、半導体基板であってもよい。単結晶基板であってもよいし、多結晶基板であってもよい。前記結晶基板としては、例えば、コランダム構造を有する結晶物を主成分として含む基板が挙げられる。なお、前記「主成分」とは、基板中の組成比で、前記結晶物を50%以上含むものをいい、好ましくは70%以上含むものであり、より好ましくは90%以上含むものである。前記コランダム構造を有する結晶基板としては、例えば、サファイア基板、α型酸化ガリウム基板などが挙げられる。
本発明においては、前記結晶基板が、サファイア基板であるのが好ましい。前記サファイア基板としては、例えば、c面サファイア基板、m面サファイア基板、a面サファイア基板、r面サファイア基板などが挙げられる。また、前記サファイア基板はオフ角を有していてもよい。前記オフ角は、特に限定されず、例えば、0.01°以上であるが、好ましくは0.2°以上であり、より好ましくは0.2°~12°である。前記サファイア基板は、結晶成長面がa面、m面またはr面であるのが好ましく、0.2°以上のオフ角を有するc面サファイア基板であるのも好ましい。
なお、前記結晶基板の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm~20mmであり、より好ましくは10~1000μmである。
また、前記結晶基板は、第1の結晶軸と第2の結晶軸とを少なくとも含む形状であるか、または第1の結晶軸および第2の結晶軸に対応する溝が形成されていてもよい。
前記結晶基板の好適な形状としては、例えば、円形、三角形、四角形(例えば長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形状、扇型等が挙げられる。
なお、本発明においては、前記結晶基板上にバッファ層や応力緩和層等の他の層を設けもよい。バッファ層としては、前記結晶基板または前記結晶性酸化物半導体の結晶構造と同一の結晶構造を有する金属酸化物からなる層などが挙げられる。また、応力緩和層としては、ELOマスク層などが挙げられる。
前記エピタキシャル結晶成長の方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の方法であってよい。前記エピタキシャル結晶成長方法としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法、パルス成長法またはALD法などが挙げられる。本発明においては、前記エピタキシャル結晶成長が、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法を用いて行われるのが好ましい。
前記のミストCVD法またはミスト・エピタキシー法では、金属を含む原料溶液を霧化し(霧化工程)、液滴を浮遊させ、得られた霧化液滴をキャリアガスでもって前記結晶基板近傍まで搬送し(搬送工程)、ついで、前記霧化液滴を熱反応させること(成膜工程)により行う。
(原料溶液)
原料溶液は、成膜原料として金属を含んでおり、霧化可能であれば特に限定されず、無機材料を含んでいてもよいし、有機材料を含んでいてもよい。前記金属は、金属単体であっても、金属化合物であってもよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、ガリウム(Ga)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、ロジウム(Rh)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、レニウム(Re)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられるが、本発明においては、前記金属が、少なくとも周期律表第3周期~第6周期の1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、ガリウム、インジウム、ロジウム、イリジウムおよびアルミニウムから選択される少なくとも一つを含むのがより好ましく、少なくともガリウムを含むのが最も好ましい。また、本発明においては、前記金属が、ガリウムと、インジウムおよび/またはアルミニウムとを含むのも好ましい。このような好ましい金属を用いることにより、半導体装置等により好適に用いることができる前記結晶性酸化物半導体を成膜することができる。
本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
前記原料溶液の溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましい。
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化バリウム(BaO2)、過酸化ベンゾイル(C6H5CO)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはニオブ等のn型ドーパント、またはマグネシウムもしくはカルシウム等のp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm3~1×1022/cm3であってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm3以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm3以上の高濃度で含有させてもよい。
(霧化工程)
前記霧化工程は、金属を含む原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化し、液滴を浮遊させ、霧化液滴を発生させる。前記金属の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液全体に対して、0.0001mol/L~20mol/Lが好ましい。霧化方法は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化方法であってよいが、本発明においては、超音波振動を用いる霧化方法であるのが好ましい。本発明で用いられるミストは、空中に浮遊するものであり、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、初速度がゼロで、空間に浮かびガスとして搬送することが可能なミストであるのがより好ましい。ミストの液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。
(搬送工程)
前記搬送工程では、前記キャリアガスによって前記霧化液滴を前記基体へ搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、不活性ガス(例えば窒素やアルゴン等)、または還元ガス(水素ガスやフォーミングガス等)などが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、1LPM以下が好ましく、0.1~1LPMがより好ましい。
(成膜工程)
成膜工程では、前記霧化液滴を反応させて、前記結晶基板上に成膜する。前記反応は、前記霧化液滴から膜が形成される反応であれば特に限定されないが、本発明においては、熱反応が好ましい。前記熱反応は、熱でもって前記霧化液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、原料溶液の溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度以下が好ましく、650℃以下がより好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが蒸発温度の計算がより簡単になり、設備等も簡素化できる等の点で好ましい。また、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができる。
また、本発明の半導体装置は、通常、ソース電極(エミッタ電極)およびドレイン電極(コレクタ電極)を備える。前記ソース電極(エミッタ電極)およびドレイン電極(コレクタ電極)は、公知の電極材料が用いられてもよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、周期律表第4族または第11族の金属を含むものなどが好適な例として挙げられる。ソース電極(エミッタ電極)およびドレイン電極(コレクタ電極)に用いられる好適な周期律表第4族または第11族の金属は、前記ゲート電極に含まれる金属と同様であってよい。また、ソース電極(エミッタ電極)およびドレイン電極(コレクタ電極)は単層の金属層であってもよいし、2以上の金属層を含んでいてもよい。ソース電極(エミッタ電極)およびドレイン電極(コレクタ電極)の形成手段としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の手段などが挙げられる。また、ソース電極およびドレイン電極を構成する金属は、合金であってもよい。
本発明において好適な半導体装置を図1に示す。図1の半導体装置は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、n+型半導体層1、n-型半導体層(ドリフト層)2、p+型半導体層(ディープp層)6、p-型半導体層(チャネル層)7、n+型半導体層11、ゲート絶縁膜13、ゲート電極3、p+型半導体層16、ソース電極24、層間絶縁膜25、ドレイン電極26を備えている。なお、p+型半導体層(ディープp層)6は、少なくともその一部が、ゲート電極3の埋設下端部3aよりも深い位置にまで前記n-型半導体層2に埋設されている。図1の半導体装置のオン状態では、前記ソース電極24と前記ドレイン電極26との間に電圧を印加し、前記ゲート電極3に前記ソース電極24に対して正の電圧を与えると、前記p-型半導体層7とゲート絶縁膜13との界面にチャネルが形成され、ターンオンする。オフ状態は、前記ゲート電極3の電圧を0Vにすることにより、チャネルができなくなり、ターンオフする。また、図1の半導体装置は、p+型半導体層6が、ゲート電極3よりも深くn-型半導体層2に埋め込まれている。このような構成とすることにより、ゲート電極下部近傍の電界を緩和することができ、ゲート絶縁膜やn-型半導体層内の電界分布をより良好なものとすることができる。また、本発明においては、前記n-型半導体層2のキャリア密度は、600V耐圧の場合、1.4×1017/cm3以下であるのが好ましく、1200V耐圧の場合、6.9×1016/cm3以下であるのが好ましい。また、ディープp層6の深さ(図1中におけるD)は、1.0μm以上であるのが好ましく、1.5μm以上であるのが、より電界を緩和できるので、好ましい。また、ディープp層6の深さDとドリフト層濃度との関係は、600V耐圧の場合、y≧2.67×10-17x-0.83(yはディープp層6の深さ、xはドリフト層(n-型半導体層2)濃度をそれぞれ示す)であるのが好ましく、1200V耐圧の場合、y≧1.89×10-17x+0.39(yはディープp層6の深さ、xはドリフト層(n-型半導体層2)濃度をそれぞれ示す)であるのが好ましい。なお、ディープp層6とゲートトレンチとの間隔(図1のW)は、0.5μm以下であるのが好ましい。本発明においては、前記p-型半導体層(チャネル層)7が、前記第1のp型酸化物半導体を主成分として含み、前記p+型半導体層(ディープp層)6が、前記第2のp型酸化物半導体を主成分として含む。このような構成とすることにより、オン抵抗を低減しつつ優れた電界緩和効果を奏することができる。
前記ゲート絶縁膜(層間絶縁膜)の構成材料は、特に限定されず、公知の材料であってよい。前記ゲート絶縁膜の材料としては、例えば、SiO2膜、リン添加SiO2膜(PSG膜)、ボロン添加SiO2膜、リンーボロン添加SiO2膜(BPSG膜)等が挙げられる。前記ゲート絶縁膜の形成方法としては、例えば、CVD法、大気圧CVD法、プラズマCVD法、ミストCVD法等が挙げられる。本発明の実施態様においては、前記ゲート絶縁膜の形成方法が、ミストCVD法または大気圧CVD法であるのが好ましい。また、前記ゲート電極の構成材料は、特に限定されず、公知の電極材料であってよい。前記ゲート電極の構成材料としては、例えば、上記した前記ソース電極の構成材料等が挙げられる。前記ゲート電極の形成方法は、特に限定されない。前記ゲート電極の形成方法としては、具体的には例えば、ドライ法やウェット法などが挙げられる。ドライ法としては、例えば、スパッタ、真空蒸着、CVD等が挙げられる。ウェット法としては、例えば、スクリーン印刷やダイコート等が挙げられる。前記n+型半導体層1および前記n-型半導体層2の材料は、上記した半導体層の材料と同様であってよい。また、前記p+型半導体層16の主成分は、前記p-型半導体層(チャネル層)7の主成分と異なるものであるのが好ましい。本発明においては、前記p+型半導体層16の主成分が、前記第2のp型酸化物半導体と同様であってもよい。
図1の半導体装置の各層の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段であってよい。例えば、真空蒸着法やCVD法、スパッタ法、各種コーティング技術等により成膜した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングする手段、または印刷技術などを用いて直接パターニングを行う手段などが挙げられるが、本発明においては、ミストCVD法が好ましい。
以下、前記ミストCVD法の成膜装置について説明する。
図6の成膜装置601は、キャリアガスを供給するキャリアガス装置622aと、キャリアガス装置622aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁623aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)装置622bと、キャリアガス(希釈)装置622bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁623bと、原料溶液624aが収容されるミスト発生源624と、水625aが入れられる容器625と、容器625の底面に取り付けられた超音波振動子626と、成膜室630と、ミスト発生源624から成膜室630までをつなぐ石英製の供給管627と、成膜室630内に設置されたホットプレート(ヒーター)628とを備えている。ホットプレート628上には、基板603が設置されている。
そして、図6に記載のとおり、原料溶液624aをミスト発生源624内に収容する。次に、基板603を用いて、ホットプレート628上に設置し、ホットプレート628を作動させて成膜室630内の温度を昇温させる。次に、流量調節弁623(623a、623b)を開いてキャリアガス源である(キャリアガス装置622aおよびキャリアガス(希釈)装置622b)からキャリアガスを成膜室630内に供給し、成膜室630の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量と、キャリアガス(希釈)の流量とをそれぞれ調節する。次に、超音波振動子626を振動させ、その振動を、水625aを通じて原料溶液624aに伝播させることによって、原料溶液624aを微粒子化させて霧化液滴624bを生成する。この霧化液滴624bが、キャリアガスによって成膜室630内に導入され、基板603まで搬送され、そして、大気圧下、成膜室630内で霧化液滴624bが熱反応して、基板603上に膜が形成する。
また、図7に示すミストCVD装置(成膜装置)602を用いるのも好ましい。図7のミストCVD装置602は、基板603を載置するサセプタ621と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給装置622aと、キャリアガス供給装置622aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁623aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給装置622bと、キャリアガス(希釈)供給装置622bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁623bと、原料溶液624aが収容されるミスト発生源624と、水625aが入れられる容器625と、容器625の底面に取り付けられた超音波振動子626と、内径40mmの石英管からなる供給管627と、供給管627の周辺部に設置されたヒーター628と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排出する排気口629とを備えている。サセプタ621は、石英からなり、基板603を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室となる供給管627とサセプタ621をどちらも石英で作製することにより、基板603上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。このミストCVD装置602は、前記の成膜装置601と同様に扱うことができる。
前記の好適な成膜装置を用いれば、前記結晶基板の結晶成長面上に、より容易に前記結晶性酸化物半導体を形成することができる。なお、前記結晶性酸化物半導体は、通常、エピタキシャル結晶成長により形成される。また、前記半導体装置は、前記結晶性酸化物半導体から公知の手段を用いて作製することができる。
なお、本発明の半導体装置として、好適な別の態様を図2に示す。図2の半導体装置は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、n+型半導体層1、n-型半導体層(ドリフト層)2、p+型半導体層(ディープp層)6、ゲート絶縁膜13、ゲート電極3、ソース電極24、層間絶縁膜25、ドレイン電極26を備えている。また、図2の半導体装置はp-型半導体層(チャネル層)7、n+型半導体層11、p+型半導体層16も備えている。なお、p+型半導体層(ディープp層)6は、少なくともその一部が、ゲート電極3の埋設下端部3aよりも深い位置にまで前記半導体層に埋設されており、図2の半導体装置は、図1の半導体装置とは、p+型半導体層6が、ゲート電極3と直交するように設けられている点で異なる。このような半導体装置も好適であり、優れた電界緩和効果を発揮し得る。
また、本発明の半導体装置は、結晶性酸化物半導体に対してより効果的に電界緩和させ、かつ半導体特性(小型化も含む)をより良好に奏するように、前記半導体層の厚さが50μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのがより好ましく、10μm以下であるのが最も好ましい。ディープp層の厚さを半導体層(例えばn-型半導体層)の厚さの半分以上に設定するのが好ましい。
図9は、本発明の好適な半導体装置の一例を示す。図9の半導体装置は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、n+型半導体層(ドレイン層)1、n-型半導体層(ドリフト層)2、p+型半導体層(ディープp層)6、p-型半導体層(チャネル層)7、n+型半導体層(n+ソース層)11、ゲート絶縁膜13、ゲート電極3、p+型半導体層16、ソース電極24およびドレイン電極26を備えている。なお、p+型半導体層(ディープp層)6は、少なくともその一部が、ゲート電極3の埋設下端部よりも深い位置にまで前記n-型半導体層2内に埋設されている。図9の半導体装置のオン状態では、前記ソース電極24と前記ドレイン電極26との間に電圧を印加し、前記ゲート電極3に前記ソース電極24に対して正の電荷を与えると、前記p-型半導体層7とゲート絶縁膜13との界面にチャネルが形成され、ターンオンする。オフ状態は、前記ゲート電極3の電圧を0Vにすることにより、チャネルができなくなり、ターンオフする。また、図9の半導体装置は、p+型半導体層6が、ゲート電極3よりも深くn-型半導体層2に埋め込まれている。このような構成とすることにより、ゲート電極下部近傍の電界を緩和することができ、ゲート絶縁膜やn-型半導体層内の電界分布をより良好なものとすることができる。なお、本発明においては、p+型半導体層(ディープp層)6が、イリジウムを含む酸化物半導体を主成分として含むのが好ましい。イリジウムを含む酸化物半導体としては、例えば、α-Ir2O3またはその混晶(例えば、酸化イリジウムと酸化ガリウムとの混晶)が挙げられる。p+型半導体層(ディープp層)6にこのような好ましい酸化物半導体を用いることにより、空乏層内の空間電荷量が十分に確保できるため、より優れた電界緩和効果を得ることができる。
図9に示す半導体装置において、p-型半導体層(チャネル層)7とn-型半導体層(ドリフト層)2との界面におけるバンドオフセットΔEc(伝導帯オフセット)が半導体装置のId-Vd特性に与える影響についてシミュレーションを行った。シミュレーションモデルを図12(a)に示す。シミュレーションは、n+型半導体層のキャリア密度を1.0×1019/cm3、深さを0.1μmとし、p-型半導体層(チャネル層)のキャリア密度を1.0×1017/cm3、厚みを0.7μmとし、n-型半導体層(ドリフト層)のキャリア密度を1.0×1017/cm3、厚みを3μmとし、n+型半導体層(ドレイン層)のキャリア密度を1.0×1019/cm3、厚みを0.6μmとし、トレンチゲートの深さを1μm、幅を0.4μmとし、ゲート酸化膜の側面の厚みを80nm、底面の厚みを120nmとして行った。結果を図12(b)に示す。図12(b)から明らかなように、p-型半導体層(チャネル層)とn-型半導体層(ドリフト層)との界面のバンドオフセットΔEcは、1.0eV以下であるのが好ましく、0eV以下であるのがより好ましい。このような好ましいp-型半導体層(チャネル層)とn-型半導体層(ドリフト層)との組合せとすることにより、よりオン抵抗が低減された半導体装置を得ることができる。p-型半導体層(チャネル層)とn-型半導体層(ドリフト層)との好ましい組合せとしては、例えば、p-型半導体層(チャネル層)としてp型ドーパントを含むα-Ga2O3を用いて、n-型半導体層(ドリフト層)としてn型ドーパントを含むα-Ga2O3を用いる組合せが挙げられる。
図10は、本発明の好適な半導体装置の他の一例を示す。図10の半導体装置は、金属酸化膜半導体電界効果トラジスタ(MOSFET)であり、p+型半導体層(ディープp層)6とn-型半導体層(ドリフト層)2との間にi型半導体層28が設けられている点で、図9の半導体装置と異なる。i型半導体層は、n-型半導体層よりもキャリア密度が小さいものであれば、特に限定されない。本発明においては、前記i型半導体層の主成分がn-型半導体層の主成分と同一であるのが好ましい。
図10に示す半導体装置におけるi型半導体層28の効果を確かめるためにシミュレーションを行った。シミュレーションモデルを図13(a)に示す。シミュレーションは、p+型半導体層(ディープp層)のキャリア濃度を1.0×1018/cm3、厚みを1.0μmとし、n-型半導体層(ドリフト層)のキャリア密度を1.0×1017/cm3、厚みを2μmとし、n+型半導体層(ドレイン層)のキャリア密度を1.0×1019/cm3、厚みを1μmとして行った。また、本シミュレーションでは、p+型半導体層(ディープp層)としてIrGaO(バンドギャップ3eV)を用い、i型半導体層およびn型半導体層としてGa2O3を用い、IrGaO/Ga2O3接合のバンドオフセットΔEc(伝導帯オフセット)は1.04eVとし、バンドオフセットΔEv(価電子帯オフセット)は3.34eVとした。i型半導体層が無い場合(図13(b)の(1))、i型半導体層のキャリア密度1.0×1014/cm3、厚み0.6μmの場合(図13(b)の(2))、i型半導体層のキャリア密度1.0×1014/cm3、厚み1μmの場合(図13(b)の(3))それぞれにおいて、逆電圧1000V印加時の電界強度分布の結果を図13(b)に示す。図13(b)から明らかなように、i型半導体層を設けることにより、p+型半導体層として例えばIrGaO(酸化イリジウムと酸化ガリウムとの混晶)を用いた場合であっても、IrGaOにおける電界を絶縁破壊電界以下に低減できることがわかる。
図11は、本発明の好適な半導体装置の他の一例を示す。図11の半導体装置は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、ゲート底部付近にp型半導体層27を備える点で図10の半導体装置と異なる。前記p型半導体層27は、前記p-型半導体層(チャネル層)7の主成分であるp型酸化物半導体と異なるp型酸化物半導体を主成分として含むのが好ましい。本発明においては、前記p型半導体層27の主成分が、前記第2のp型酸化物半導体と同様であってもよい。
図9、図10および図11に示す半導体装置のそれぞれのId-Vd特性(Vg=20V)を比較するためにシミュレーションを行った。1000V印加した時のIrGaO(p+型半導体層:ディープp層)とゲート酸化膜にかかる電界およびオン抵抗(Vg=20V、Vd=2V)の結果を表1に示す。表1から明らかなように、図9の構造と比較して、図10の構造の方がよりIrGaOにかかる電界および酸化膜にかかる電界を低減できることがわかる。また、図11の構造は、図10の構造と比較してゲート酸化膜にかかる電界をより低減することができることがわかる。
前記半導体装置は、特にパワーデバイスに有用であり、とりわけノーマリーオフ型の半導体装置として好適に用いられる。本発明においては、前記結晶性酸化物半導体を、所望により公知の手段を用いて前記結晶基板と剥離等して、半導体装置に用いることができ、好適には縦型デバイスとして用いることができる。なお、前記半導体装置は、電極が半導体層の片面側に形成された横型の素子(横型デバイス)と、半導体層の表裏両面側にそれぞれ電極を有する縦型の素子(縦型デバイス)のいずれにも好適に用いられるが、本発明においては、中でも、縦型デバイスに用いることが好ましい。前記半導体装置の好適な例としては、例えば、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、接合電界効果トランジスタ(JFET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)などが挙げられる。本発明においては、中でも絶縁ゲート型半導体装置(例えば、MOSFETまたはIGBTなど)またはショットキーゲートを有する半導体装置(例えば、MESFETなど)が好ましく、MOSFETまたはIGBTがより好ましい。
本発明の半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の方法を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、公知の方法を用いて、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。図3は、複数の前記電源装置171、172と制御回路173を用いて電源システム170を構成している。前記電源システムは、図4に示すように、電子回路181と電源システム182とを組み合わせてシステム装置180に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を図5に示す。図5は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ192(MOSFETA~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランス193で絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET194(A~B’)で整流後、DCL195(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器197で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路196でインバータ192及び整流MOSFET194を制御する。
本発明においては、前記半導体装置が、パワーカードであるのが好ましく、冷却器および絶縁部材を含んでおり、前記半導体層の両側に前記冷却器がそれぞれ少なくとも前記絶縁部材を介して設けられているのがより好ましく、前記半導体層の両側にそれぞれ放熱層が設けられており、放熱層の外側に少なくとも前記絶縁部材を介して前記冷却器がそれぞれ設けられているのが最も好ましい。図8は、本発明の好適な実施態様の一つであるパワーカードを示す。図8のパワーカードは、両面冷却型パワーカード201となっており、冷媒チューブ202、スペーサ203、絶縁板(絶縁スペーサ)208、封止樹脂部209、半導体チップ301a、金属伝熱板(突出端子部)302b、ヒートシンク及び電極303、金属伝熱板(突出端子部)303b、はんだ層304、制御電極端子305、ボンディングワイヤ308を備える。冷媒チューブ202の厚さ方向断面は、互いに所定間隔を隔てて流路方向に延在する多数の隔壁221で区画された流路222を多数有している。このような好適なパワーカードによればより高い放熱性を実現することができ、より高い信頼性を満たすことができる。
半導体チップ301aは、金属伝熱板(突出端子部)302bの内側の主面上にはんだ層304で接合され、半導体チップ301aの残余の主面には、金属伝熱板(突出端子部)303bがはんだ層304で接合され、これによりIGBTのコレクタ電極面及びエミッタ電極面にフライホイルダイオードのアノード電極面及びカソード電極面がいわゆる逆並列に接続されている。金属伝熱板(突出端子部)302bおよび303bの材料としては、例えば、MoまたはW等が挙げられる。金属伝熱板(突出端子部)302bおよび303bは、半導体チップ301aの厚さの差を吸収する厚さの差をもち、これにより金属伝熱板302bおよび303bの外表面は平面となっている。
樹脂封止部209は例えばエポキシ樹脂からなり、これら金属伝熱板302bおよび303bの側面を覆ってモールドされており、半導体チップ301aは樹脂封止部209でモールドされている。但し、金属伝熱板302bおよび303bの外主面すなわち接触受熱面は完全に露出している。金属伝熱板(突出端子部)302bおよび303bは樹脂封止部209から図8中、右方に突出し、いわゆるリードフレーム端子である制御電極端子305は、例えばIGBTが形成された半導体チップ301aのゲート(制御)電極面と制御電極端子305とを接続している。
絶縁スペーサである絶縁板208は、例えば、窒化アルミニウムフィルムで構成されているが、他の絶縁フィルムであってもよい。絶縁板208は金属伝熱板302bおよび303bを完全に覆って密着しているが、絶縁板208と金属伝熱板302bおよび303bとは、単に接触するだけでもよいし、シリコングリスなどの良熱伝熱材を塗布してもよいし、それらを種々の方法で接合させてもよい。また、セラミック溶射などで絶縁層を形成してもよく、絶縁板208を金属伝熱板上に接合してもよく、冷媒チューブ上に接合または形成してもよい。
冷媒チューブ202は、アルミニウム合金を引き抜き成形法あるいは押し出し成形法で成形された板材を必要な長さに切断して作製されている。冷媒チューブ202の厚さ方向断面は、互いに所定間隔を隔てて流路方向に延在する多数の隔壁221で区画された流路222を多数有している。スペーサ203は、例えば、はんだ合金などの軟質の金属板であってよいが、金属伝熱板302bおよび303bの接触面に塗布等によって形成したフィルム(膜)としてもよい。この軟質のスペーサ203の表面は、容易に変形して、絶縁板208の微小凹凸や反り、冷媒チューブ202の微小凹凸や反りになじんで熱抵抗を低減する。なお、スペーサ203の表面等に公知の良熱伝導性グリスなどを塗布してもよく、スペーサ203を省略してもよい。