以下に、本発明の各実施形態に係る撹拌装置について、図面に基づき説明する。図1は第1実施形態に係る撹拌装置11を示している。この撹拌装置11は、ウェルプレート12が組み合わされ、一体化されて使用されるようになっている。
図2は、撹拌装置11から、後述するウェルプレートカバー組立体16や、ウェルプレート12を分離した状態を示している。撹拌装置11は、直方体状のケース体13を有しており、このケース体13における1つの面を構成する撹拌棒突出面14からは、多数(ここでは96本)の撹拌棒(撹拌体)15が互いに平行に突出している。これらの撹拌棒15は、ウェルプレート12のウェル24内に入り込むようになっているが、撹拌棒15やウェルプレート12の構造については後述する。
ケース体13は、例えば、130mm程度の幅と、90mm程度の奥行、及び、100mm程度の高さを有するようなサイズのものとすることができる。ケース体13は、下部に矩形状の支持板17を有しており、この支持板17には前述の撹拌棒突出面14が形成されている。また、支持板17の上には、蓋体23を図2中の最上段とし、その下の第1枠体18、第1仕切板19、第2枠体20、第2仕切板21、及び、第3枠体22が、上から順に重ねられて組付けられている。
支持板17、第1仕切板19、第2仕切板21、及び、蓋体23の向きは、互いにほぼ平行である。そして、支持板17と第2仕切板21の間隔は、第3枠体22により確保され、第2仕切板21と第1仕切板19の間隔は、第2枠体20により確保されている。また、第1枠体18の上部は、蓋体23により閉じられている。
このように、ケース体13は、支持板17、各仕切板19、21、各枠体18、20、22、及び、蓋体23の積層構造を有しており、これらの部品を、適宜配置された相対的に長尺や短尺のビスを介して結合することにより構成されている。
図3は、ケース体13から第1枠体18、第2枠体20、及び、第3枠体22を除去して示している。ケース体13の内部は、上部から順に、モータ室(駆動源室)26、第1ギア室(駆動力伝達機構室)27、及び、第2ギア室(駆動力伝達機構室)28の3室に区画されている。
モータ室26には、複数(ここでは2個)のモータである第1モータ(駆動源)31A及び第2モータ(駆動源)31Bが設置されている。また、第1ギア室27や第2ギア室28には、複数段(ここでは3段)のギア群(駆動力伝達機構)である第1ギア群32~第3ギア群34が設置されている。これらの第1ギア群32~第3ギア群34は、各モータ31A、31Bの回転力を順次分配して各撹拌棒15に伝達し、各撹拌棒15を軸心周りに回転させる。
図4は、ケース体13から蓋体23を取り外し、モータ室26の内部を露出させた状態を示している。第1モータ31A及び第2モータ31Bは、第1仕切板19の上面に、ケース体13の対角方向に並ぶよう斜めに配置されている。各モータ31A、31Bとしては、ステッピングモータが利用されている。そして、このステッピングモータには、一般的な種々のものを採用することが可能である。なお、ステッピングモータのほか、例えばブラシレスモータ、ブラシモータなどのような他の種類のモータを採用することも可能である。また、モータの数は複数に限らず、1個(単数)であってもよい。
各モータ31A、31Bには、放熱を行うヒートシンク36が取り付けられている。そして、各モータ31A、31Bの出力軸(不図示)は、下方に位置する第1ギア室27の側に向けられており、第1仕切板19を貫通して、第1ギア室27に突出している。つまり、モータ室26からは、2軸の回転軸(各モータ31A、31Bの出力軸)が、第1ギア室27に導出されている。ここで、第1モータ31A及び第2モータ31Bが配置されたモータ室26には気密構造(密閉構造)が採用されているが、モータ室26の気密構造については後述する。
図5は、第1ギア室27に配置された第1ギア群32を示している。第1ギア群32は、第2仕切板21の上面に設置されている。この第1ギア群32は、第1モータ31Aにより駆動される5個のギア32A1~32A5と、第2モータ31Bにより駆動される同じく5個のギア32B1~32B5とにより構成されている。図5に符号32A1で示すギア(図中の右から2番目のギア)が、第1モータ31Aの出力軸に連結された駆動ギアであり、符号32B1で示すギア(図中の右から4番目のギア)が、第2モータ31Bの出力軸に連結された駆動ギアである。
また、図5に符号32A2~32A4、32B2~32B4で示すのは、次段の第2ギア群33(後述する)に対して回転力を出力する出力ギアである。これらの6個の出力ギア32A2~32A4、32B2~32B4には、それぞれ駆動軸37が差し込まれて結合されており、これらの駆動軸37は、第2仕切板21を貫通して、下方に位置する第2ギア室28に突出している。つまり、第1ギア室27からは、6軸の回転軸(駆動軸37)が、第2ギア室28に導出されている。
また、図5に符号32A5、32B5で示すのは、両隣の出力ギア(32A2と32A3及び32B3と32B4)の間で回転力の伝達を行う伝達ギアである。そして、第1ギア群32においては、2軸の回転がそれぞれ3軸に分配され、合計で6(=2×3)軸の回転が、第1ギア群32から、第2ギア室28に配置された第2ギア群33(図3)へ伝達される。
図3に示すように、第2ギア室28の内部には、第2仕切板21(及び第1仕切板19等)よりも外形寸法が小さい第2ギア群保持板38が、支持板17や第2仕切板21等とほぼ平行に設置されている。そして、第2ギア室28は、第2ギア群保持板38により上下に区分けされている。
第2ギア群保持板38の上面には、第2ギア群33が配置されている。詳細な説明は省略するが、第2ギア群33は、伝達ギアや出力ギアの組み合わせにより、前述の第1ギア群32における6軸の回転を、それぞれ4軸に分配し、合計で24(=6×4)軸の回転を、第3ギア群34に対して伝達するようになっている。
また、図3に示すように、第2ギア群保持板38の下面側には、第3ギア群34が配置されており、これらの第3ギア群34は、支持板17の上面に設置されている。詳細な説明は省略するが、第3ギア群34は、伝達ギアや出力ギアの組み合わせにより、上述の第2ギア群33における24軸の回転を、更にそれぞれ4軸に振り分け、合計で96(=24×4)軸の回転に変換する。この96軸は、前述した96本の撹拌棒15に直結されており、第2ギア群33の回転に伴い、96本の撹拌棒15が同時に回転する。
図6は、96本の撹拌棒15の配列を示している。ここで、図6においては、各撹拌棒15がパドル部45(後述する)の背後に隠れていることから、パドル部45について符号を付している。
撹拌棒15は、ケース体13の長手方向に沿って12本ずつ配置され、ケース体13の短手方向に沿って8本ずつ配置されている。さらに、図6に一点鎖線Dの矩形な枠で囲んでいるのは、第1モータ31Aにより駆動される48本(4行×12列)の撹拌棒15のグループであり、一点鎖線Eの矩形な枠で囲んでいるのは、第2モータ31Bにより駆動される同じく48本(4行×12列)の撹拌棒15のグループである。
撹拌棒15は、図7に示すように、撹拌棒取付部41に取り付けられており、撹拌棒取付部41とともに撹拌棒組立体(撹拌棒アセンブリ)42を構成している。撹拌棒取付部41には、第2ギア群33を構成する撹拌棒駆動ギア43が含まれている。さらに、撹拌棒取付部41には、この撹拌棒駆動ギア43が同軸的に取り付けられており、撹拌棒取付部41は、撹拌棒15を保持した状態で軸心周りに回転する。そして、本実施形態では、このように撹拌棒15を有する撹拌棒組立体42が、96組備えられている。
撹拌棒15は、撹拌を行う矩形板状のパドル部45と、パドル部45に一体に形成された丸棒状の撹拌軸46とを有している。パドル部45は、撹拌軸46の軸方向における一端部に位置している。さらに、パドル部45は、撹拌軸46の径方向に張り出しており、パドル部45の厚みは、撹拌軸46の直径と同程度もしくは直径以下である。また、撹拌棒15は、軸心を中心として対称な形状を有している。そして、パドル部45と撹拌軸46の材質としては、細胞培養に影響を与えない金属材料やプラスチック材料などが採用されている。
図7に符号47で示すのは、段付な円筒状の撹拌棒挿入部材であり、符号48で示すのは、撹拌棒挿入部材47よりも大径な筒状の撹拌棒保持部材である。これらのうち撹拌棒挿入部材47は、図示は省略するが、撹拌棒保持部材48に同軸的にねじ込まれる雄ねじ部を有しており、撹拌棒保持部材48が撹拌棒挿入部材47に一体に結合されている。撹拌軸46は、撹拌棒保持部材48に同軸的に差し込まれて固定されている。そして、撹拌軸46は、撹拌棒保持部材48を貫通し、その上端部を撹拌棒挿入部材47に到達させている。
図8に、ウェルプレート12を示している。ウェルプレート12は、矩形の板状に形成されており、その材質は、例えば合成樹脂である。ウェルプレート12の一方の板面には、96個の凹部であるウェル24が、12行×8列のマトリクス状に形成されている。これらのウェル24の配置は、撹拌装置11における撹拌棒15の配置に対応しており、各ウェル24は、撹拌棒15のパドル部45が進入できるようになっている。さらに、各ウェル24は、真円状に開口しており、各ウェル24には、例えば数ミリリットル程度の溶液(試料)を注入することが可能となっている。
ウェルプレート12は、ウェルプレートカバー組立体(ウェルプレートカバーアセンブリ)16により支持される。ウェルプレートカバー組立体16は、板状のウェルプレートカバー10や、円筒状のボス部52、及び、脚53などにより構成されている。図3に示すように、撹拌装置11における撹拌棒突出面14に装着された円筒状のボス部52に円筒状のボス部52を介して、ウェルプレートカバー10がねじ止めされる。そして、ウェルプレート12は、撹拌装置11のウェルプレートカバー10に重ねられ、撹拌装置11に固定される。ウェルプレート12が撹拌装置11に固定されると、撹拌棒15のパドル部45は、ウェル24と接触せず且つウェル24に収容された状態となる。また、脚53は、ウェルプレートカバー10に固定される。そして、ウェルプレート12のない状態で撹拌装置11を机上に置く際には、撹拌棒15のパドル部45を保護するため、脚53が、撹拌装置11におけるその他の部分を、かさ上げした状態で支持する。
次に、前述したモータ室26の気密構造(密閉構造)や、ケース体13の冷気循環機能等について説明する。先ず、ケース体13に設けられたモータ室26は、第1仕切板19、第1枠体18、及び、蓋体23により閉じられている。第1枠体18は、第1仕切板19に載せられた状態で、第1仕切板19に固定されている。
図9は、第1枠体18を示している。第1枠体18は、所定の厚み(例えば10数mm程度)を有するよう形成されており、第1仕切板19に向けられる矩形な枠状の端面56には、例えば1mm以下~数ミリ程度の深さの凹部57が、全周に亘り形成されている。この凹部57には、図10に示す矩形な枠状のシール体58が収容される。
シール体58は、第1枠体18の凹部57よりもわずかに小さい程度の外形を有するシート状に成形されている。シール体58の厚みは、凹部57の深さよりも幾分大きく設定されている。そして、シール体58の材質としては、一般的なゴムパッキンなどと同様のものを採用できる。
図11は、第1仕切板19を示している。第1仕切板19の板面59には、第1枠体18の端面56と整合する形状の凹部60が形成されている。第1仕切板19に対し第1枠体18を、互いの輪郭を揃えるようにして重ねた場合、シール体58が第1仕切板19の凹部60に入り込んだ状態で、第1枠体18が第1仕切板19の凹部60に整合する。
そして、ねじ止めにより第1枠体18を第1仕切板19に結合する際に、ねじ(不図示)を締め付けることにより、シール体58が、厚み方向に押しつぶされて弾性変形する。そして、シール体58が、第1仕切板19と第1枠体18の両方に圧力を作用させながら面接触し、第1枠体18と第1仕切板19とが、第1枠体18の突き当て面である端面56の全周に亘って、気密的に封止される。
また、図4に示すように、第1枠体18と蓋体23との間にも、同様にシール体58を用いたシール構造が採用されている。そして、蓋体23を第1枠体18にねじ止めする際に、ねじの締め付けによってシール体58が弾性変形し、第1枠体18と蓋体23との間が全周に亘って気密的に封止される。
ここで、本実施形態では、第1仕切板19を、各モータ31A、31Bの出力軸が貫通する構造が採用されていることから、各モータ31A、31Bと第1仕切板19との間にも、弾性的な性質を有するシール体(不図示)を介在させた気密構造が採用されている。そして、各モータ31A、31Bの第1仕切板19へのビス止めに伴い、シール体(不図示)が厚み方向に押しつぶされて弾性変形し、各モータ31A、31Bと第1仕切板19との間が、気密的に封止されている。
なお、本実施形態では、第1ギア室27や第2ギア室28には、モータ室26のような気密構造は採用されていないが、第2枠体20の端面を、第1仕切板19や第2仕切板21に突き当てることや、第3枠体22の端面を、第2仕切板21や支持板17に突き当てることが行われている。
続いて、前述のように、第1仕切板19と蓋体23により上下の開口部が閉じられた第1枠体18においては、その一側面に2つのねじ穴が空けられ、このねじ穴には、図1、図2、及び、図4等に示すように、配管用継手63がねじ込まれている。これらの配管用継手63は、筒部における外周に管用の雄ねじ(不図示)が形成されたものであり、全体としてはL字型の形状を有している。そして、配管用継手63と第1枠体18との間は、上述の管用ネジ(不図示)を介して、気密的に封止されている。
ここで、配管用継手63としては一般的なものを採用できる。また、配管用継手63における雄ねじ(不図示)の周囲にシール材を介在させて、シール性を向上させることも可能である。配管用継手63と第1枠体18との間に用いられるシール材としては、例えば、雄ねじ部分に巻き付けて使用されるテープ状のものや、室温で硬化するペースト状のものなどのように、一般的な種々のものを採用できる。
また、図1、図2、及び、図4に符号64で示すのは、各モータ31A、31Bに電気的に接続された丸型のコネクタである。このコネクタ64の周りと第1枠体18との間にもシール材が用いられている。コネクタ64に用いられるシール材としては、上述したもののほか、ゴム管やゴムパッキンなども採用が可能である。
また、図3には、前述したように第1枠体18等を除去した状態が示されているが、図3では、配管用継手63が空中に浮いた状態で示されている。これは、配管用継手63と、各モータ31A、31B等との位置関係を示すためである。
L字型の各配管用継手63は、両端を開口している。そして、各配管用継手63の内部空間は、第1枠体18の内部空間であるモータ室26と繋がっている。さらに、図1、図2、及び、図4等では図示を省略しているが、各配管用継手63には、冷却用の空気(冷気)を流通させるための配管が接続される。配管としては、合成樹脂製等の材質で形成されて可撓性を有するもののように一般的な種々のものを採用できる。
また、各配管用継手63として、チューブフィッティング機構(不図示)を備えた所謂ワンタッチ継手が採用されている。そして、各配管用継手63に対する配管の接続は、配管の端部を配管用継手63に差し込むだけで行うことができ、配管の配管用継手63からの分離は、配管を引っ張るだけで行えるようになっている。
続いて、図12は、撹拌装置11の使用状況を模式化して示している。また、図12では、配管に符号65、67が付されている。そして、一方の配管は冷気導入管65となっており、他方の配管は冷気導出管66となっている。さらに、撹拌装置11は、インキュベータ(恒温装置)67内に設置され、冷気導入管65及び冷気導出管66は、インキュベータ67の壁部を通って外側に導出されている。ここで、図12においては、図示を簡略化するため、配管用継手63が上向きに描かれている。
インキュベータ67としては、一般的な種々のものを採用可能であるが、インキュベータ67の中には、冷気導入管65及び冷気導出管66以外の経路によっては、インキュベータ67の外側の空気(外気)の流入がないようになっている。そして、インキュベータ67に、穴(ガス用ポートなど、不図示)が備えられている場合には、この穴を利用して冷気導入管65や冷気導出管66、及び、コネクタ64(図1)に接続された電気配線の配設を行うことが可能である。また、冷気導入管65や冷気導出管66、及び、電気配線を通した穴の隙間には、例えばシリコンスポンジ等を詰めて気密性を確保することが可能である。
インキュベータ67においては、内部の温度や湿度(温湿度)の管理が行われる。そして、インキュベータ67の内部空間は、例えば、細胞培養などが行われる場合には、温度が37±1℃に保たれ、湿度が100%程度に保たれる。湿度が100%程度に保たれることにより、撹拌される溶液の蒸発が防止される。さらに、インキュベータ67には、撹拌装置11を、ウェルプレート12と組み合わせた状態で、配置することが可能である。そして、ウェル24内に収容された溶液(試薬化合物や薬剤化合物などの溶液)68が、撹拌棒15のパドル部45により撹拌される。
なお、図12は、第1実施形態の撹拌装置11における冷気の循環を説明するため、撹拌装置11及びインキュベータ67の構成を大幅に省略して示している。そして、図12においては、各モータ31A、31Bが、前述した各種のギア群32~34を介さずに、それぞれ1つの撹拌棒15を回転させるよう、図示が行われている。さらに、ウェルプレート12についても、2箇所のウェル24のみが図示されている。
前述した冷気導入管65の途中の部位には、エアーポンプ(強制供給装置)69が設けられている。エアーポンプ69は、インキュベータ67の外に設置されている。さらに、冷気導入管65における、エアーポンプ69よりも先の端部は、インキュベータ67の外の空間中で開口している。エアーポンプ69が作動すると、インキュベータ67の外側における冷気が、冷気導入管65から吸い込まれて(吸引されて)、撹拌装置11のモータ室26に送り込まれる。
ここで、冷気として利用されているのは、インキュベータ67が設置された環境(設置環境)における室温の空気である。室温としては、例えば20℃程度を例示できるが、この室温は、空気調和機(エアコン)により調整された室内の温度であっても、或いは、空気調和機を作動させていない室内の温度であってもよい。つまり、冷気の温度は、インキュベータ67の設置環境における空気の温度であり、例えば、設置環境における空気を更に冷却機に通して温度低下させる、といったような特段の温度調整は行われていないものである。
モータ室26は、前述のように気密構造を有しており、モータ室26に導入された空気は、モータ室26から漏れ出すことなく、モータ室26内を流れる。さらに、モータ室26内の空気は、モータ室26に流入する後続の空気により押し出され、冷気導出管66に流入する。冷気導出管66の先端側の端部は、インキュベータ67の外の空間中で開口している。このため、モータ室26から押し出された空気は、インキュベータ67の外の空間に排出(排気)される。そして、モータ室26と、インキュベータ67の外の空間との間で、空気が循環する。
モータ室26においては、上述のような冷気と、各モータ31A、31Bとの間で熱交換が行われ、各モータ31A、31Bが冷気により冷却される。そして、モータ室26で熱気を帯びた空気が、冷気導出管66を介して、インキュベータ67の外へ排気される。
図13は、モータを冷気により冷却した場合におけるモータの温度変化に係る実験結果を示している。図13のグラフにおける横軸は経過時間を示しており、縦軸はモータ温度を示している。さらに、実線の曲線は、モータを冷却した場合(冷却ありの場合)の温度変化を示しており、一点鎖線の曲線は、モータを冷却しない場合(冷却なしの場合)の温度変化を示している。
一点鎖線で示すように、冷却なしの場合のモータ温度は、20℃台後半から、10分ほどで70℃に達し、その後も、徐々に75℃近辺まで上昇している。これに対し、冷却ありの場合のモータ温度は、実線で示すように、20℃台後半から数分ほど経過すると30℃台後半に到達しているが、その後は、経過時間が20分に達しても、ほぼ一定の値を保っている。ここで、モータ温度の測定は、モータに熱電対を取り付け、モータの温度変化を監視することにより行った。また、モータの回転数は、100rpmとした。
このように、外気の供給によるモータの冷却を行った場合には、冷却しなかった場合に比較し、モータ温度が30℃以上低くなり、顕著な冷却の効果が認められた。また、冷却しなかった場合には、モータの温度は、例えば、細胞培養時のインキュベータ内の温度である37℃程度よりも大幅に高くなったが、冷却した場合には、インキュベータ内の温度と同様の37℃程度で安定した。したがって、本実施形態の撹拌装置11においても、各モータ31A、31Bの冷却が同様に行われ、冷気による冷却効果が得られることとなる。
以上説明したような撹拌装置11によれば、モータ室26が気密構造を有していることから、モータ室26の中の空気は、モータ室26から漏れ出ることなく、インキュベータ67の外部との間で循環する。このため、各モータ31A、31Bの熱が、インキュベータ67における庫内の温度を上昇させて、インキュベータ67の温度条件に影響を与えるのを防止することが可能となる。そして、各モータ31A、31Bの熱により、インキュベータ67における試験温度条件を整えることが困難になってしまうのを防止できる。
また、モータ室26が気密構造を有していることから、高湿度条件のインキュベータ67の中で撹拌装置11を使用する場合は、インキュベータ67の中の湿潤空気が、モータ室26に侵入するのを防止できる。このため、各モータ31A、31Bが、インキュベータ67の湿潤空気に曝されて、各モータ31A、31Bに故障等が生じるのを防止することが可能である。さらに、モータ室26に、モータ用の制御基板などを収容した場合には、この制御基板が湿潤空気に曝されることも防止できる。
また、各モータ31A、31Bを冷却するとともに、冷却に使用された空気はインキュベータ67内に流出することなく、インキュベータ67外に排出されるため、モータ室26の周囲の部品への伝熱や、周囲の空間への放熱等を原因として、撹拌対象試料である溶液の温度上昇も防止できる。この結果、撹拌装置11を使用した実験に対して、各モータ31A、31Bにおける発熱の影響が及ぶのを防止できる。なお、撹拌棒15の材質に、合成樹脂等のように熱伝導率が低いものを採用することにより、実験に発熱の影響が及ぶことを、より一層確実に防止することができる。
ここで、モータ室26を気密構造としなかった場合には、各モータ31A、31Bの熱を帯びた空気が、インキュベータ67の庫内に流出し、モータ室26の空気と、インキュベータ67における庫内の空気と混合することとなる。例えば、前掲の特許文献1に開示された撹拌装置のように、モータに面するようファンを設置してモータを冷却することも考えられる。しかし、特許文献1に開示された撹拌装置をインキュベータ内の湿潤条件下で使用した場合、気密構造が採用されていないことから、インキュベータ内の空気が撹拌装置内に流入し、モータや回路基板等に故障が生じ易くなると考えられる。
また、特許文献1の撹拌装置では、ファンの作動によってモータに当てられた空気が、熱気を帯びた状態で、撹拌装置の外部に放出される。このため、特許文献1の撹拌装置をインキュベータ内で使用した場合には、モータに当たって熱気を帯びた空気が、インキュベータ内で循環し、インキュベータにおける庫内の温度に影響を与えると考えられる。さらに、特許文献1の撹拌装置においては、ファンによる空気の流れを確保する必要があることから、ファンやモータの周囲を密閉構造とすることは困難である。
これに対して、本実施形態の撹拌装置11は、各配管用継手63や、冷気導入管65、及び、冷気導出管66を介して、撹拌装置11の外気をモータ室26に循環させることにより、ファンを用いずに各モータ31A、31Bを冷却できるようにし、モータ室26への密閉構造の採用を可能としている。この結果、撹拌装置11をインキュベータ67の中で使用した場合であっても、冷気導入管65、及び、冷気導出管66を、インキュベータ67の外と空間的に接続することで、各モータ31A、31Bを容易に冷却できるようにしている。
また、本実施形態の撹拌装置11によれば、インキュベータ67の中の湿潤空気をモータ室26に導入せずに各モータ31A、31Bを冷却できることから、前述したように、モータ室26に制御基板等の電子機器を設置しても、これらの電子機器が湿潤空気に曝されるのを防止できる。
また、本実施形態の撹拌装置11によれば、ファンを内蔵することなく各モータ31A、31Bを冷却できることから、小型化が可能である。さらに、小型化が可能であることから、第1ギア群32~第3ギア群34のような駆動力伝達機を設けても、全体のサイズはさほど大型化しない。
また、各モータ31A、31Bにヒートシンク36が設けられていることから、限られた経路でモータ室26に導入された外気に対し、効率よく放熱することが可能である。
なお、本実施形態に係る撹拌装置11は、これまでに説明したものに限定されず、種々に変形することが可能である。例えば、本実施形態においては、エアーポンプ69を、冷気導入管65の側に設置しているが、これに限定されず、エアーポンプ69を冷気導出管66の側に設置して、モータ室26に対する外気の吸引を行うようにしてもよい。
また、本実施形態においては、エアーポンプ69により、インキュベータ67の外気をモータ室26へ強制的に供給しているが、強制的な外気の供給を行う手段(冷気供給手段)のその他の例として、例えば、圧縮空気や収容された空気ボンベ(不図示)や、窒素ガスが収容された窒素ガスボンベ(不図示)などを採用することも可能である。
さらに、エアーポンプ69や各種ボンベのような冷気供給手段を用いず、例えば、インキュベータ67の外の気圧とモータ室26の中の気圧との差(気圧差)を利用して、冷気を循環させることも可能である。
また、本実施形態においては、冷気として利用されているのは、特段の温度調整などが行われていない外気である。このため、冷気となる空気を容易且つ安価に確保できる。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、各モータ31A、31Bの冷却のために事前に温度調整や温度管理が行われた空気を冷気として利用することも可能である。
また、本実施形態においては、第1モータ31A及び第2モータ31Bとして、ステッピングモータが用いられていることから、撹拌時における回転数の調整が可能である。さらに、ステッピングモータが用いられていることから、回転数の変化による発熱の変化は殆どなく、回転数を上下させてもモータからの発熱量はさほど変わらない。このため、回転数の異なる種々の実験に対し、安定して冷却効果を発揮することができる。そして、ステッピングモータは、一般に発熱が大きいため、本実施形態のような気密構造や冷却機構を採用してモータの冷却を行うことにより、撹拌装置11の周囲への排熱の影響を、より効果的に抑制できる。
また、モータ室26、ケース体13内、或いは、インキュベータ67内の温度検出を行い、温度を監視しながらエアーポンプ69の流量を自動制御し、温度環境を実験により適したものとすることも可能である。
さらに、駆動力伝達機構として第1ギア群32~第3ギア群34を用いているが、これに限らず、例えば、ベルト(無端ベルト)やプーリ等を介して、各モータ31A、31Bの駆動力を撹拌棒15に伝達してもよい。
また、モータ室26のみでなく、第1ギア室27及び第2ギア室28のそれぞれにも、モータ室26のような気密構造を採用し、それぞれを独立した空間としてもよい。さらに、例えば、第1ギア室27及び第2ギア室のうちのいずれか一方について気密構造を採用し、他方については気密構造を採用しない、といったことも可能である。
また、これらの場合における冷気の供給は、気密構造を採用したギア室に対して行うことが可能である。例えば、第1ギア室27及び第2ギア室28の両方に気密構造を採用した場合には、図示は省略するが、モータ室26と同様に、第1ギア室27及び第2ギア室28に対しても、冷気導入管や冷気導出管の接続を行うことが可能である。この場合は、モータ室26、第1ギア室27、及び、第2ギア室28に、それぞれ独立して冷気が供給されることとなる。
さらに、第1ギア室27及び第2ギア室28のうちの1つのみに気密構造を採用した場合には、モータ室26と同様に、気密構造を採用したギア室に対しても、冷気導入管や冷気導出管の接続を行うようにする。
これらのようにすることで、モータ室26、第1ギア室27、及び、第2ギア室28の間での空気の行き来を防ぎながら、各室で温度上昇を防ぐことができる。また、各モータ31A、31Bの熱が、第1ギア室27や第2ギア室28の各部品へ伝達されたとしても、各室で直接的に冷却を行うことが可能である。
また、モータ室26と蓋体23との間、及び、第2ギア室28と支持板17との間に気密構造を採用し、モータ室26、第1ギア室27、及び、第2ギア室28を合わせて1つの冷気供給対象の空間とすることも可能である。このようにすることで、冷却対象の範囲を広げても、配管用継手、冷気導入管、及び、冷気導出管のセット数を削減できる。
さらに、例えば、モータ室26と第1ギア室27との間で空気の行き来を可能とする流路(不図示)を第1仕切板19に形成し、第1ギア室27と第2ギア室28との間で空気の行き来を可能とする流路(不図示)を第2仕切板21に形成してもよい。この場合には、モータ室26の冷気を、第1ギア室27及び第2ギア室28へ供給して、第1ギア室27及び第2ギア室28を冷却することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る撹拌装置71について説明する。図14は、第2実施形態に係る撹拌装置71を模式的に示している。図14において、第1実施形態の撹拌装置11と同様の部分については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。また、図14では、説明を簡略化するため、第1モータ31Aと第2モータ31Bに、1本ずつの撹拌棒15が対応付けられているが、前述した第1実施形態と同様に、第1ギア群32~第3ギア群34等により、第1モータ31Aや第2モータ31Bの駆動力の分配を行うことにより、モータの数よりも多い本数の撹拌棒15を駆動することが可能である。
図14に示す第2実施形態の撹拌装置71においては、第1モータ31A、第2モータ31Bの側に、モータ側マグネット(駆動力伝達機構)72、73が設けられている。これらのモータ側マグネット72、73は、第1モータ31A、第2モータ31Bにより回転させられる。撹拌棒15には、撹拌棒側マグネット(駆動力伝達機構)74、75が設けられており、撹拌棒側マグネット74、75とモータ側マグネット72、73との間は、ケース体13の第2仕切板21a、21bにより遮られている。
モータ側マグネット72、73、及び、撹拌棒側マグネット74、75は、第2仕切板21aに対し離間しており、モータ側マグネット72、73と、撹拌棒側マグネット74、75との間には空隙76が形成されている。そして、モータ側マグネット72、73と、撹拌棒側マグネット74、75との間に機械的な接続はなく、空隙76に、第2仕切板21a、21bが入り込んでいる。
さらに、モータ側マグネット72、73は、ケース体13に形成されたモータ側マグネット室(駆動力伝達機構室)77の中に配置されており、撹拌棒側マグネット74、75は、同じくケース体13に形成された撹拌棒側マグネット室(駆動力伝達機構室)78の中に配置されている。そして、モータ側マグネット室77と、撹拌棒側マグネット室78は、第2仕切板21a、21b引き離すことにより、互いに分離可能に結合されている。モータ側マグネット室77の側の第2仕切板21aと、撹拌棒側マグネット室78の側の第2仕切板21bは、再結合の際にも分離前と同じ位置関係を保つよう、位置決め機構(不図示)を介して結合されている。また、これに限らず、ねじや係合爪等のような機械的な結合手段を適用することも可能である。なお、モータ側マグネット室77の側の第2仕切板21aと、撹拌棒側マグネット室78の側の第2仕切板21bは、互いに容易には分離できないよう一体化されていてもよい。
各モータ31A、31Bが作動すると、回転力が、モータ側マグネット72、73に伝わり、モータ側マグネット72、73が回転する。さらに、モータ側マグネット72、73と、撹拌棒側マグネット74、75との間の磁力を介して、モータ側マグネット72、73の回転力が、撹拌棒側マグネット74、75に伝達され、撹拌棒側マグネット74、75が回転する。そして、撹拌棒15が回転し、溶液の撹拌が行われる。
第1モータ31A及び第2モータ31Bが設置されたモータ室26には、第1実施形態と同様に、気密構造が採用されている。さらに、モータ室26には、2つの配管用継手63がねじ込まれており、一方の配管用継手63には冷気導入管65が接続され、他方の配管用継手63には冷気導出管66が接続されている。
また、冷気導入管65の途中の部位にはエアーポンプ69が設けられており、エアーポンプ69により、インキュベータ67の外気(冷気)が、モータ室26に供給される。そして、モータ室26では、各モータ31A、31Bの冷却が行われ、熱気を帯びた空気が、冷気導出管66を介して、インキュベータ67の外へ排気される。
このように、モータ側マグネット72、73と、撹拌棒側マグネット74、75との間の磁力を介して駆動力の伝達を行うタイプの撹拌装置71においても、第1実施形態の撹拌装置11と同様に、各モータ31A、31Bの冷却を行うことがきる。このため、第2実施形態の撹拌装置71をインキュベータ67の中で使用する場合も、各モータ31A、31Bの熱が、インキュベータ67の中の環境に影響を及ぼすことを防止できる。さらに、インキュベータ67の中の湿潤空気により、各モータ31A、31B等の電子機器が故障すること等を防止できる。
また、各モータ31A、31Bの回転力の伝達を、磁力を介して非接触で行っていることから、ケース体13の密閉化が容易である。
なお、本発明は、第1実施形態に係る撹拌装置11や、第2実施形態に係る撹拌装置71に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、ウェル内に収容された試料を撹拌する撹拌体と、
前記撹拌体を回転させるための回転力を発生する駆動源と、
前記駆動源が収容された駆動源室を有するケース体と、を備え、
前記ケース体には、
前記駆動源室に冷却用の気体である冷気を導入するための冷気導入管と、前記駆動源室内の空気を外部に導出するための冷気導出管が接続され、
前記駆動源室は密閉構造を有し、
前記駆動源室に前記冷気導入管を介して前記冷気を導入し、前記駆動源室から前記冷気導出管介して前記冷気を導出して、前記駆動源に対して熱交換が可能となるよう前記駆動源室に前記冷気を循環させる撹拌装置である。
これにより、駆動源室の中の空気が駆動源室の周辺に漏れ出ることがなく、周辺の温度が上昇するのを防止できるという効果を奏する。
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、更に前記冷気は恒温装置の外気であり、
前記恒温装置に配置され、前記恒温装置の中の環境下で前記試料の撹拌を行い、前記恒温装置の外気を前記駆動源室に循環させることである。
これにより、駆動源室の空気が恒温室の中に漏れ出ることがなく、恒温室の中の温度が上昇するのを防止できるという効果を奏する。
本発明の第3の実施の態様は、第1の実施の態様又は第2の実施の態様において、更に前記冷気は、前記冷気を強制的に前記駆動源室に供給する強制供給装置により循環させられることである。
これにより、冷気の流れが強制的に生み出され、駆動源室に冷気をより確実に循環させることができるという効果を奏する。
本発明の第4の実施の態様は、第1の実施の態様から第3の実施の態様のいずれか一つの態様において、更に前記駆動源と、前記撹拌体の間に、前記駆動源の駆動力を前記撹拌体に伝達する駆動力伝達機構が設けられ、
前記ケース体は、
前記駆動源室と前記撹拌体の間の位置に、前記駆動力伝達機構を収容する駆動力伝達機構室を有することである。
これにより、駆動源室と撹拌体の間に駆動力伝達機構室が介在することとなり、駆動源から撹拌体までの間隔を確保し易くなるという効果を奏する。
本発明の第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、更に前記撹拌体を複数備え、
前記駆動源の数は、前記撹拌体の数に対して同じもしくは少なく、
前記駆動力伝達機構は、前記駆動源の駆動力を複数の前記撹拌体に分配することである。
これにより、駆動源が複数の撹拌体を駆動することとなり、駆動源の数よりも多い数の撹拌体を回転させることができるという効果を奏する。