本発明者らの検討の結果、活物質と電解質との界面を大きくするためには、活物質の表面積を大きくすることが重要であることがわかった。そのために、複数方向に析出した突起部を有する活物質を用いることとした。これにより、活物質の表面積が大きくなり、電解質との界面が大きくなることが考えられ、活物質から電解質へイオンが移動しやすくなる。本発明においては、電解質との界面が大きくなり、活物質から電解質へイオンが移動しやすいことを、便宜的に「電極抵抗」という指標を用いて評価する。
<活物質>
活物質の粒子部から析出する突起部は、針状、樹木のように突出するデンドライト状、カーテンの様に突出するひだ状などを含み粒子部から突出す突出部と換言される場合がある。活物質としては、正極活物質、及び負極活物質が挙げられる。なかでも、活物質は、正極活物質であることが好ましい。正極活物質としては、Liを有する酸化物を含むことが好ましく、Liを有する酸化物は、さらにCoを含むことが好ましい。正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を含むことが好ましい。
また、複数方向に析出した突起部は、Liを有する酸化物を含むことが好ましく、Liを有する酸化物は、さらにCoを含むことが好ましい。このように、活物質における、突起部と、突起部以外の部分は、同じ材料を含むことが好ましい。
<活物質の製造方法>
以下、図面を参照して、活物質の製造方法の一例を詳細に説明する。以下、活物質として、正極活物質を用いる場合を例に挙げて説明するが、負極活物質を用いる場合にも、以下に記載の活物質の製造方法を用いることができる。
本発明の正極活物質の製造方法は、下記の3つの工程(第1工程、第2工程、及び第3工程)を有する。
(1)基材に正極活物質が配置された材料層を形成する第1工程(図1中、S101)
(2)材料層を複数積層して積層体を形成する第2工程(図1中、S102)
(3)積層体を焼結処理して正極活物質を製造する第3工程(図1中、S103)
(第1工程)
第1工程は、基材に正極活物質が配置された材料層を形成する工程である。第1工程では、材料層形成装置を用いて、基材に材料層を形成する。以下、材料層形成装置について、使用することが可能な材料層形成装置1及び材料層形成装置2を順に説明する。
[材料層形成装置1]
図2は、材料層形成装置1の構成を模式的に示す図である。以下、第1の粒子P1及び第2の粒子P2は、いずれも上述した正極活物質のことを指す。第1の粒子P1と第2の粒子P2は、同じ種類の元素で構成されていることが好ましい。
材料層形成装置1は、第1の基材11aを格納供給する第1の格納容器21aと、第1の基材11aを搬送する第1のベルト装置22aと、第1の基材11a上に凹凸パターンを形成するパターン形成装置23と、を有する。材料層形成装置1は、第1の基材11a上に形成された凹凸パターンの凹部に第1の粒子P1を配置する第1の充填装置24aを有する。材料層形成装置1は、第2の基材11bを格納供給する第2の格納容器21bと、第2の基材11bを搬送する第2のベルト装置22bと、を有する。材料層形成装置1は、第1のベルト装置22aと第2のベルト装置22bがそれぞれ有するローラ223が対向した転写部25aを有しており、転写部25aにおいて第1の基材11aから第2の基材11bへと第1の粒子P1が転写される。さらに、材料層形成装置1は、第2の基材11b上の非転写部に第2の粒子P2を配置する第2の充填装置24bを有する。なお、本件の効果を説明する上で関連性の低い装置、例えば転写後の第1の基材11aを第1のベルト装置22aから剥離回収するための剥離回収装置や各クリーニング装置などは、図示及び詳細説明を省略する。
材料層形成装置1においては、パターン形成装置23、第1の充填装置24a、及び転写部25aが、第2の基材11b上に第1の粒子P1をパターン状に配置する第1の配置手段に相当する。また、第2の充填装置24bが、第2の基材11b上の第1の粒子P1が配置されていない領域に第2の粒子P2を配置する第2の配置手段に相当する。
以下、材料層形成装置1による基材11上への材料層12の形成方法を、プロセスごとに流れに沿って説明する。
まず、供給手段(不図示)によって第1の格納容器21aから第1のベルト装置22aに第1の基材11aが供給される。
パターン形成装置23(後述)によって紫外線硬化性の液体が塗布される場合には、第1の基材11aの少なくとも表面の材質は、紫外線硬化性の液体の濡れ性が高い材料で構成されていることが好ましい。また、第1の基材11aの表面は、平滑であることが好ましい。第1の基材11aとしては、使用する紫外線硬化性の液体(水系又は油系)に合わせて親水処理又は親油処理が施されたポリエステルなどの樹脂製のシートを用いることができる。なお、第1の基材11aは、カット紙のように個別に切り離された基材を用いてもよいし、ロール紙のようにロール状に巻かれた連続した基材や、連続用紙のように交互に折りたたまれた連続した基材を用いてもよい。
第1のベルト装置22aは、供給された第1の基材11aをパターン形成装置23のパターン形成位置へと搬送する。第1のベルト装置22aは、駆動ローラ221a,222a、加圧ローラ223aと、それらに懸架されたベルト状の搬送部材224aと、を有する。その際、加圧ローラ223aは、従動で回転している。
搬送部材224aは、樹脂製や金属製などから選択されることが好ましく、例えば、ポリイミド製の樹脂ベルトを用いることができる。駆動ローラ221a,222aは、金属製の金属ローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の金属ローラを用いることができる。加圧ローラ223aは、表層に弾性層を有するソフトローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の芯金の表面にシリコーンゴムの弾性層を設けたソフトローラを用いることができる。
なお、第1の基材11aを搬送する搬送装置として第1のベルト装置22aを用いているが、ベルト装置の代わりにローラ装置を用いることもできる。後述する第2のベルト装置22bについても同様である。
パターン形成装置23は、パターン形成位置へと搬送された第1の基材11aに微細な凹凸パターンを形成する。凹凸パターンを形成する方法としては、UVインプリント方式、熱インプリント方式、UVインクジェット方式、印刷方式、レーザーエッチング方式などを用いることができる。パターン形成装置23がUVインプリント方式によって凹凸パターンを形成する場合には、パターン形成装置23は、第1の基材11a上に紫外線硬化性の液体を塗布する塗布手段を有する。また、パターン形成装置23は、表面に凹凸パターンが形成されたモールドを第1の基材11a上の紫外線硬化性の液体に押印する押印手段と、紫外線硬化性の液体に紫外線を照射する光源と、を有する。典型的には、紫外線硬化性の液体としては、紫外線硬化型液状シリコーンゴム(PDMS)や樹脂を用い、モールドとしてはフィルムモールドを用い、光源としてはUVランプを用いることができる。
第1の充填装置24aが第1の粒子P1を担持した担持材S1を用いて第1の粒子P1を凹部に充填する場合、第1の基材11a上の凹凸パターンの凹部の開口径は、第1の粒子P1の体積基準の累積50%粒径(メジアン径)よりも大きいことが好ましい。また、凹部の開口径は、担持材S1の平均サイズよりも小さいことが好ましい。ここで、凹凸パターンの凹部の開口径は、凹部の短手方向の開口径であることが好ましく、凹部の短手方向の最大開口径であることがより好ましい。これにより、第1の粒子P1は凹凸パターンの凹部の底部(典型的には底面)に接触することができ、担持材S1は凹部の底部には接触することができない。これにより、凹部の底部に接触した第1の粒子P1を凹凸パターンで捕捉することができ、一方で、担持材S1は凹凸パターンで捕捉しないようにすることができる。なお、換言すれば、第1の粒子P1は凹凸パターンの凹部の底部に接触でき、第1の担持材S1は凹凸パターンの凹部の底部に接触できないことが好ましい。
なお、パターン形成装置23によって第1の基材11a上に凹凸パターンを形成するが、表面に凹凸パターンが予め形成された基材を第1の基材11aとして用いてもよい。また、第1のベルト装置22aの搬送部材224aの表面に直接、パターン形成装置23によって凹凸パターンを形成してよいし、搬送部材224aとしてその表面に凹凸パターンを有する搬送部材を用いてもよい。この場合は、耐久性を鑑みて、ステンレスやアルミニウムなどの金属ベルトを用い、レーザーエッチングやウェットエッチング、ドライエッチングなどの微細加工技術により表面に凹凸パターンを形成することが好ましい。
表面に凹凸パターンが形成された第1の基材11aは、第1のベルト装置22aによって第1の充填装置24aの充填位置へと搬送される。
図3は、充填装置の構成を模式的に示す図である。以下、第1の充填装置24aの構成について説明するが、第2の充填装置24bについても同様である。
第1の充填装置24aは、充填剤241aを収容する充填容器242a、充填剤241aを撹拌搬送する撹拌スクリュー部材243a、充填剤を回収する回収部材244aと、磁性部材247aと、を有する。
充填剤241aは、第1の粒子P1と、第1の粒子P1を担持する担持材S1と、を有する。充填剤241aは、複数の第1の粒子P1によって構成される粉体と、複数の担持材S1によって構成される粉体と、を含む複数の粉体の混合物である。充填容器242aに収容された充填剤241aは、撹拌スクリュー部材243aによって撹拌、搬送される際に十分に混ざり合い、摩擦帯電する。これにより、担持材S1の表面に第1の粒子P1が担持される。
担持材S1は、磁性粒子である。担持材S1は、フェライトコア粒子や磁性体が分散された樹脂粒子の表面を、樹脂組成物で被覆した粒子であることが好ましい。担持材S1の粒径や材質は、第1の粒子P1の粒径や材質に合わせて適宜選択される。これにより、第1の粒子P1を安定して担持することができる。
回収部材244aは、図中の矢印d2方向に回転可能なローラ245aと、ローラ245aの内部に配置され、充填容器242aに対して固定された磁石246aと、を有している。また、磁性部材247aは、搬送部材224aを介して充填容器242aと対向して配置されており、その内部に磁石248aを有している。磁石246aは、回収部材244aの回転方向に沿って交互に配置された複数のN極とS極を有している。磁石248aは、搬送部材224aの搬送方向に沿って交互に配置された複数のN極とS極を有している。また、磁石246aは、磁石248aの最下流の磁極(本実施形態ではS1極)と最も近接して対向する位置に異極の磁極(本実施形態ではN1極)を有しており、最下流の位置でN1極と同極のN2極が配置されている。なお、磁石246a及び磁石248aは複数の磁石から構成されていてもよく、磁石246a及び磁石248aを構成する磁石の種類は特に限定はされない。例えば、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などの希土類磁石、プラスチック磁石等の永久磁石や、電磁石などの磁界を発生する手段を用いることができる。なお、磁石248aは、第1の基材11aの搬送方向又はその逆方向に移動可能に構成してもよい。
なお、回収部材244aの、搬送部材224aの搬送方向の上流又は下流に、第1の基材11a上の充填剤241aを規制する規制部材や、回収部材244aによって回収しきれない充填剤241aを再度回収する回収部材を設けても構わない。再度回収する回収部材としては、回収部材244aと同様の部材のほか、固定磁石や規制部材のような簡易な部材からエアブローによる回収を行う回収部材などを用いることができる。
次に、第1の充填装置24aによって第1の基材11a上の凹部に第1の粒子P1を充填するプロセスについて、図3~5を用いて説明する。
第1の搬送部材224aが図3中の実線矢印d1方向に移動することにより、第1の搬送部材224aによって担持搬送されている第1の基材11aが搬送され、第1の充填装置24aの充填位置へと搬送される。
撹拌スクリュー部材243aにより、充填剤241aが搬送され、第1の基材11a上に供給される(図3中点線a)。このとき、磁性部材248aと回収部材244aによって磁界が形成されており、磁性粒子である担持材S1を含む充填剤241aはその磁界によって第1の基材11a上で複数の磁気穂を形成する。第1の基材11a上に供給された充填剤241aは、第1の基材11aの移動に伴い、磁気穂を形成した状態で第1の基材11a上で搬送される(図3中点線b)。
図4は、第1の基材11a上で搬送される充填剤241aの模式図である。説明上、一本の磁気穂を形成している充填剤以外の充填剤241aは、図示を省略している。第1の基材11a上の充填剤241aは、上述のとおり、形成されている磁界の磁力線に沿って磁気穂を形成しており、第1の基材11aの移動に伴って図4(a)、図4(b)、図4(c)のように磁気穂の形状を変えながら搬送される。このとき、磁石248aの近傍では特に強い磁気力が作用するため、充填剤241aの搬送速度v2は、充填剤241aが磁極から遠ざかる場合には第1の基材11aの移動速度v1よりも小さく、その逆の場合は大きくなる。すなわち、第1の基材11a上の充填剤241aは第1の基材11aに対して0ではない相対速度を有する。
図5は、図4の第1の基材11aの表面近傍の拡大図である。図4では図示を省略したが、図5に示すように第1の基材11a上には凹凸パターン111aが形成されている。充填剤241aは、この凹凸パターン111aに接触し、第1の基材11aの表面に対して垂直な方向への磁力(図中実線Fm)を受けながら、第1の基材11aに対して0ではない相対速度を有しつつ、第1の基材11aと共に搬送される。これにより、担持材S1に担持された第1の粒子P1は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aに摺擦されながら搬送される。このとき、第1の粒子P1の粒径は凹凸パターン111aの凹部の開口径よりも小さく、第1の担持材S1の粒径は凹部の開口径よりも大きいため、凹凸パターン111aの凹部の底面(底部)には、第1の粒子P1は接触できるが、担持材S1は接触できない。すなわち、充填剤241aの中で第1の粒子P1のみが選択的に凹部の底面に接触する。凹部の底面に接触した第1の粒子P1は、凹凸パターン111aの構造による物理的な拘束力や、第1の基材11a及び凹凸パターン111aを構成する構造材料との静電的付着力や粘着力により強く拘束され、担持材S1から脱離する。
磁性部材247aの下流には、図3に示すように、回収部材244aが第1の搬送部材224aと間隙を有して配置されている。第1の基材11aの移動に伴い、磁石248aの最下流の磁極(S1極)の近傍に搬送された充填剤241aは、磁石246aによって形成される磁界の影響を受けて、第1の基材241aから回収部材244aへと移動し、回収される(図3中点線c)。
以上のように搬送過程(図3中点線a,b,c)において、第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部は、複数の充填剤241aと十分に接触する。そのため、回収部材244aによって充填剤241aが回収された後の凹凸パターン111aの凹部には第1の粒子P1が選択的に緻密に配置される。
なお、図4及び図5では第1の粒子P1をすべて同一の粒径で図示しているが、実際には粒度分布があり、さらに、材料によっては凝集した二次粒子を形成している場合もある。このような場合でも、凹凸パターン111aの凹部の底面に接触できる粒子のみが選択的に緻密に充填されるため、材料層形成に悪影響を及ぼし得る粗粉や二次粒子などは除外される。
このように、凹凸パターン111aの凹部への第1の粒子P1の充填量は、凹部のサイズ(面積、幅、深さ)と第1の粒子P1の粒径により制御可能となる。具体的には、凹部の面積が略充填面積になり、充填された第1の粒子P1の層厚は凹部の深さで決定される。例えば、基材面積に対し50%の薄層(単層)を得るためには、凹部の面積比(凹凸パターンの全体に対する凹部の面積率)を50%、凹部の深さを第1の粒子P1の粒径以下に制御すればよい。このとき、凹部の開口幅は、第1の粒子P1のメジアン径よりも大きく、担持材S1の平均サイズ(ここでは平均粒径)よりも小さくする。なお、第1の粒子P1は広い粒度分布(ブロードな粒度分布)を有していてもよいが、担持材S1は狭い粒度分布を有していることが好ましく、単分散であることがより好ましい。これにより、担持材S1を、凹部の底部(又は底面)に接触させないようにしやすい。凹部の底部に担持材S1が接触できる場合、凹部に担持材S1も拘束され充填されてしまう恐れがある。
さらに、凹凸パターン111aの凹部の開口幅は、第1の粒子P1の粒径の4倍より小さいことが好ましい。開口幅を第1の粒子P1の粒径の4倍より小さくすることで、第1の粒子P1が凹凸パターン111aの凹部の底面及び側壁面の2か所に接触する確率を高めることができる。このように、凹凸パターン111aと多点接触した第1の粒子P1は凹凸パターン111aに強く拘束されるため、凹凸パターン111aへの第1の粒子P1の充填の効率を高めることができる。なお、後述する第2の粒子P2の粒径と、第1の粒子P1によって形成される凹凸パターンの凹部のサイズについても同様である。また、担持材としてブラシ繊維を用いる場合には、上述の説明における「担持材の平均粒径」は「担持材の平均繊維径」となる。
回収部材244aによって回収された充填剤241aは、回転するローラ244aにより搬送される(図3中点線d)。ローラ244aによって搬送された充填剤241aは、隣接し、反発しあう2つの同極の磁極(N1、N2)による磁界、及び重力の影響によって充填容器242a中に落下する(図3中点線e)。その後、再び撹拌スクリュー部材243aにより撹拌搬送されて、以後これを繰り返す。
充填容器242a内における充填剤241a中の第1の粒子P1と担持材S1の重量比は、電子写真装置で一般的な、透磁率を用いて測定するインダクタンスセンサや、基材上等の反射濃度を測定して予測するパッチ濃度センサ等により決定される。そして、必要に応じて補給手段(不図示)によって第1の粒子P1及び担持材S1の少なくとも一方が補給される。これにより、長期にわたり安定した充填が可能となる。
なお、ここでは磁性粒子を担持材として用いていわゆる磁気ブラシを形成することで粒子材料を凹部に充填する方式の充填装置について説明したが、充填装置の方式はこれに限定はされない。担持材として、ブラシ繊維を用いることもできる。あるいは、担持材として、少なくとも表面が弾性体で構成された弾性材を用いることもできる。
図6(a)は、担持材としてブラシ繊維を用いた場合の充填装置24cの構成を模式的に示す図である。
充填装置24cは、表面にブラシ繊維を有するローラ2410を有する。ローラ2410は、その表面にブラシ繊維が植毛された、いわゆるブラシローラである。ローラ2410の有するブラシ繊維を構成する繊維の材質は、例えば、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリエステル、塩化ビニルなどを用いることができる。帯電性や剛性を調整する目的で、繊維の表面に表面処理を施してもよい。
充填装置24cは、ローラ2410に充填剤241aを供給する供給部材を有する。なお、充填剤241aは、複数の第1の粒子P1によって構成される粉体を含んでおり、充填容器242aに収容されている。またこの例において、充填剤241aは磁性粒子である担持材S1は含まない。充填剤241aは、撹拌スクリュー部材243aによって撹拌、搬送され、供給部材249に供給される。
供給部材249は、充填剤241aをローラ2410に供給する部材であり、その構成は特に限定はされない。供給部材249は、例えば、少なくとも表面が、弾性を有する多孔性の発泡材で構成されたローラを用いることができる。典型的には、発泡骨格構造を有し、比較的低硬度なポリウレタンフォームを芯金上に形成した弾性スポンジローラを用いることができる。なお、発泡材の材質としては、ウレタン以外にも、ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴムなどの各種ゴム材料を用いることができる。
供給された充填剤241aは、供給部材249の表面の発泡材に充填され、ローラ2410と接触する供給部まで搬送される。供給部において、発泡材に充填された充填剤241aはローラ2410の有するブラシ繊維との接触により帯電し、ローラ2410の有するブラシ繊維に担持される。さらに、供給部材249は、ローラ2410に残留する充填剤241aを剥ぎ取り、リフレッシュする機能を兼ね備えてもよい。ローラ2410に供給された充填剤241aはブラシ繊維の移動により、第1の基材11aと接触する。
このとき、第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部の底面には、充填剤241a中の第1の粒子P1は接触できるが、ブラシ繊維は接触できないようにしておく。すなわち、ブラシ繊維の繊維径を凹凸パターン111aの凹部の開口幅よりも大きくしておく。なお、ブラシ繊維の繊維径は、ローラ2410の表面にガラスを当て、光学顕微鏡によってガラス越しに取得されたブラシ繊維の画像から測定することができる。このとき、100本程度のブラシ繊維の繊維径を測定し、繊維径の分布を計測して、平均径を算出する。
搬送部材224aの移動及び/又はローラ2410の回転によってローラ2410のブラシ繊維は第1の基材11aの表面に摺擦される。これにより、ブラシ繊維に担持されていた第1の粒子は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部に緻密に配置される。
図6(b)は、担持材として弾性材を用いた場合の充填装置24dの構成を模式的に示す図である。
充填装置24dは、充填装置24cと同様の構成を有するが、ブラシ繊維を有するローラ2410の代わりに弾性材を有するローラ2411を用いる点で異なる。ローラ2411は、表面に弾性層が形成されたローラである。弾性層は、シリコーンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料などの弾性を有する材料で形成されている。弾性層は、球形状樹脂などの微粒子を添加して、表面形状が制御されていてもよい。弾性層が表面に凸部を有する場合、弾性層の凸部のサイズは凹凸パターン111aの凹部のサイズよりも大きくしておく。弾性層の凸部のサイズは、上述のブラシ繊維の繊維径と同様の方法で測定することができる。
搬送部材224aの移動及び/又はローラ2411の回転によってローラ2411の表面の弾性材は第1の基材11aの表面に摺擦される。これにより、弾性材に担持されていた第1の粒子は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部に緻密に配置される。
図6(a)や図6(b)のように担持材としてブラシ繊維や弾性材を用いることで、充填剤中に磁性粒子を含ませる必要がなくなり、また、充填装置の構成を簡便化することができる。一方で、図3のように担持材として磁性粒子を用いる場合には、ブラシ繊維や弾性材の場合よりも担持材のサイズや形状の自由度が高い。また、磁性粒子の場合には基材上における担持材の移動の自由度が高い。これらの理由により、磁性粒子を担持材として用いた場合には、第1の粒子P1等の粒子を基材上により効率的に供給して、基材上の凹部により効率的に充填することができる。また、担持材として磁性材料を用いた場合には、プロセスの途中で担持材が劣化した場合にも、プロセスを止めずに担持材を補充したり入れ替えたりすることもできる。
粒子を担持させた担持材を摺擦することによって凹部に粒子を充填する方法によれば、ブレードなどの規制部材による充填方法に比べて、分散させた粒子を凹部により多く供給することができ、安定的かつ緻密に充填を行うことができる。このメリットは、充填する粒子の粒径が小さいほど、粒子が凝集しやすくなるために顕著になる。
第1の充填装置24aによって凹凸パターン111aの凹部に第1の粒子1が充填された第1の基材11aは、第1のベルト装置22aによって、転写部25aへと搬送される。
ここで、第2のベルト装置22bは図2に示すように、第1のベルト装置22aと同様に、駆動ローラ221b,222bと、加圧ローラ223bと、それらに懸架されたベルト状の搬送部材224bと、を有する。このとき、加圧ローラ223bは従動で回転している。転写部25aでは、第1のベルト装置22aの加圧ローラ223aと第2のベルト装置22bの加圧ローラ223bとが対向している。
第2のベルト装置22bには、第2の格納容器21bより第2の基材11bが供給され、図2中の矢印方向に搬送される。供給された第2の基材11bは、第1の基材11aが転写部25aに搬送されるタイミングに合わせて搬送される。転写部25aでは、第1の基材11aに充填された第1の粒子P1が第2の基材11bへと転写される。すなわち、第1の基材11aは、第2の基材11bへと第1の粒子P1を転写するための転写用基材と言うこともできる。また、第1の基材11aの表面に形成されている凹凸パターンは、転写用凹凸パターンと言うこともできる。以下、この転写プロセスについて、図7を参照して説明する。
図7は、転写部25aの構成を模式的に示す図である。転写部25aは、第1のベルト装置22aの加圧ローラ223a及び搬送部材224aと、第2のベルト装置22bの加圧ローラ223b及び搬送部材224bと、で構成されている。上述のように、加圧ローラ223a,223bは従動で回転し、2つのローラは搬送部材224a,224bを介して接触している。加圧ローラ223a,223bの少なくとも一方は、表層に弾性層を有するソフトローラであり、2つのローラが接触した部分にはニップ部が形成されている。
第1の充填装置24aにより第1の粒子P1が充填された第1の基材11aと第2の基材11bは、それぞれの搬送部材(224a,224b)によって略等速で搬送され、加圧ローラ223a,223bが接触して形成されるニップ部に侵入する。ニップ部において、第1の基材11a上の第1の粒子P1は第2の基材11bと接触し、第2の基材11b上に転写される。
第2の基材11bは、第1の粒子P1に対する付着力が、第1の基材11aの第1の粒子P1に対する付着力よりも大きな基材である。換言すれば、第1の粒子P1の第2の基材11bに対する付着力は、第1の粒子P1の第1の基材11aに対する付着力よりも大きい。これにより、ニップ部において、第1の基材11a上の第1の粒子P1は、第2の基材11b上へと転写される。
第2の基材11bの材質は特に限定はされず、第1の基材11aと同様の材質の基材を用いることができる。なお、第2の基材11bも第1の基材11aと同様に、カット紙のように個別に切り離された基材であってもよいし、ロール紙のようにロール状に巻かれた連続した基材や、連続用紙のように交互に折りたたまれた連続した基材であってもよい。
第2の基材11bは、接触した第1の粒子P1を転写するために、付着力を高めるための表面処理が施されていることが好ましい。例えば、第2の基材11bは、その表面に粘着剤が塗布された粘着層を有していることが好ましい。さらに、第2の基材11bの裏面(材料層が形成されていない面)も、表面と同じ粘着剤が塗布された粘着層を有していることが好ましい。これにより、積層する際の基材間のずれを防止できるとともに、基材上の正極活物質が上下面(積層方向)で同じ材料で挟まれることになるため、正極活物質から析出する突起部の析出具合(方向や長さ)のばらつきが減る。
粘着剤としては、アクリル系粘着剤や、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤であってもよいし、熱や光などの外乱により粘着力が変化する熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂などであってもよい。なお、第2の基材11bの両面に粘着剤を塗布しても構わない。
また、材料層形成装置1は、搬送中の第2の基材11bの表面に粘着剤を塗布するディスペンサーやインクジェットヘッドなどの塗布手段を有していてもよい。
粘着剤の種類や塗布量は使用する凹凸パターンの形状や材質、第1の粒子P1及び第2の粒子P2の粒径や材質などによって適宜調整されるが、凹凸パターン111aに比べて粘着剤の粘着力が大きいことが好ましい。粘着力の比較は、ナノインデンターを用いる一般的な手法により測定可能である。
ニップ部において、第1の粒子P1は第2の基材11bとの間に生じる付着力によって拘束される。ニップ部を過ぎて両搬送部材224a,224bが離間すると、第1の基材11a上にあった第1の粒子P1は、第2の基材11bへと転写される。
第1の粒子P1が転写された第2の基材11bは、搬送部材224bによって第2の充填装置24bの充填位置へと搬送される。
第2の充填装置24bは、充填容器242a中に、第1の粒子P1と担持材S1を有する充填剤241aの代わりに第2の粒子P2と担持材S2を有する充填剤241bが収容されている点以外は、第1の充填装置24aと同様の構成及び機能を有する。
第2の充填装置24bは、第2の基材11b上の、第1の粒子P1が配置されていない部分に、第2の粒子P2を充填する。上述のように、転写部25aを通過した第2の基材11b上には第1の粒子P1が配置されているが、第1の粒子P1が配置されていない部分には、いわば凹部が形成されている。第2の充填装置24bは、この凹部に、第1の充填装置24aと同様のプロセスで、第2の粒子P2を充填する。このように、基材11b上の第1の粒子P1が配置されていない空隙部に充填可能な第2の粒子P2が選択的に充填されることで、粒子による基材のカバー率が向上する。第2の粒子P2は、第1の粒子P1間の空隙部の開口幅以下のメジアン径であることが好ましい。なお、ここでは担持材として磁性粒子を用いる場合について説明するが、第1の充填装置24aと同様に、ブラシ繊維や弾性材を担持材として用いてもよい。
充填剤241bは、第2の粒子P2と、第2の粒子P2を担持する担持材S2と、を有する。充填剤241bは、複数の第2の粒子P2によって構成される粉体と、複数の担持材S2によって構成される粉体と、を含む複数の粉体の混合物である。担持材S2は、担持材S1と同様のものを用いることができる。
図8は、第2の充填装置24bによる充填プロセスにおける第2の基材11bの表面近傍の拡大図である。第2の基材11b上には、第1の粒子P1が配置されて形成された凸部と、第1の粒子P1が配置されていない凹部と、を有する凹凸パターンが形成されている。充填剤241bは、この凹凸パターンに接触し、第2の基材11bの表面に対して垂直な方向への磁力(図中実線Fm)を受けながら、第2の基材11bに対して0ではない相対速度を有しつつ、第2の基材11bと共に搬送される。これにより、担持材S2に担持された第2の粒子P2は第2の基材11bの表面の凹凸パターンに摺擦されながら搬送される。このとき、第2の基材11b上に形成されている凹凸パターンの凹部の開口幅を、凹部の底面(第2の基材11b)に、第2の粒子P2は接触できるが、担持材S2は接触できないサイズとしておく。これにより、充填剤241bの中で第2の粒子P2のみが選択的に凹部の底面(第2の基材11b)に接触する。凹部の底面に接触した第2の粒子P2は、凹凸パターンの構造による物理的な拘束力や、第2の基材11b及び凹凸パターンを構成する構造材料(ここでは第1の粒子P1)との静電的付着力や粘着力により強く拘束され、担持材S2から脱離する。
図9(a)は、転写部25aによって第1の粒子P1が転写された後の第2の基材11bを模式的に示す図であり、第2の基材11bを基材面に垂直な方向から見た図である。図9(a)に示すように、第2の基材11b上には、正六角形状に第1の粒子P1が配置された配置領域が整列したハニカムパターンが形成されている。この正六角形の領域内には第1の粒子P1が緻密に配置されており、それ以外の部分(図9(a)の白地部分)には第1の粒子P1は配置されておらず、第2の基材11bの表面が露出している。かかる第1の粒子P1が保持される正六角形の領域は第一のパターン部、第2の粒子P2が保持され、第一のパターン部の間隙に相当するハニカムパターンの領域は第二のパターン部であると換言される。
図9(b)は、第2の充填装置24bによって第2の粒子P2を充填した後の第2の基材11bを模式的に示す図であり、第2の基材11bを基材面に垂直な方向から見た図である。図9(b)に示すように、第1の粒子P1が配置されていなかった領域には第2の粒子P2が緻密に配置されている。また、第1の粒子P1が配置されている領域と第2の粒子P2が配置されている領域との間の境界部においても、第1の粒子P1と第2の粒子P2とが緻密に配置されている。なお、第1の粒子P1間の僅かな間隙にも同様の方法で粒子を充填することができる。この場合、第1の粒子P1間の間隙に相当する粒径の粒子を含む充填剤を用いて、上述の同様の方法で充填することが可能であり、さらに緻密な薄膜を形成することができる。
基材11には、正極活物質を付着できる材料を含む液体が付与されていることが好ましい。また、正極活物質が付着できる材料を含む基材11を用いることが好ましい。
[材料層形成装置2]
図10は、材料層形成装置2の構成を模式的に示す図である。材料層形成装置2は、基材11に材料層12を形成する装置であって、基材11を格納供給する格納容器21と、基材11を搬送するベルト装置22と、を有する。また、材料層形成装置2は、基材11に液体を配置する液体付与装置201を有する。その際、基材11に正極活物質を密に配置するためには、基材11にパターン状に液体を配置することが好ましい。
液体付与装置201としては、インクジェット方式で液体を吐出する装置や液体を塗布する装置を用いることができるが、フレキソ版などの有版方法を用いることもできる。なかでも、液体付与装置としては、インクジェット方式で液体を吐出する装置を用いることが好ましい。
インクジェット方式で液体を吐出する装置は、例えば、サーマルタイプ、ピエゾタイプ、静電タイプ、コンティニュアスタイプなど、さまざまな吐出方法の装置を用いることができる。
液体付与装置201が付与する液体としては、正極活物質を付着できる材料を含むものであれば、水性であっても油性であってもよい。また、液体付与装置201は、複数種の液体によってパターンL1を形成してもよい。例えば、液体付与装置201は、基材11で反応させて粘着性を高めるような2種の液体を付与してもよい。正極活物質を付着できる材料としては、アクリル樹脂などの樹脂が挙げられる。
粉末付与装置202は、液体がパターン状に配置された基材11に、正極活物質を含む粉末を付与する。これにより、基材11上の液体中の正極活物質を付着できる材料によって正極活物質が固定され、パターンL1に対応したパターン状に正極活物質が固定される。
粉末付与装置202による粉末の付与手段は、粉末を基材11に向けて吹き付ける手段や、振りかける手段を用いることができる。粉末付与装置202は、液体によって基材11に固定されなかった正極活物質を、振動や送風、吸引などの手段で除去する手段をさらに備えていてもよい。
材料層形成装置2は、液体付与装置201によって付与された液体の少なくとも一部を蒸発させて、基材11上の液体の量やパターンL1の厚さなどを制御する乾燥装置をさらに有していてもよい。この乾燥装置は、液体付与装置201の下流側であって、粉末付与装置202の上流側に設ければよい。
また、材料層形成装置2は、粉末付与装置202によって正極活物質が付与された基材11を加熱する加熱手段をさらに有していてもよい。加熱手段の加熱方式としては、接触式のヒートローラを用いてもよいし、非接触式の赤外線やマイクロ波を照射する方式であってもよい。他にも、レーザ光のようなエネルギー線を走査して加熱することもできる。なお、加熱手段はベルト装置22の有するベルト224の裏面側に設けられていてもよいし、表面側(基材11が担持される側)に設けられていてもよい。
基材上に緻密に粒子を配置させるためには、基材全面に液体を塗布して、第1の粒子P1が配置されなかった領域に、第2の充填装置24を用いて、第2の粒子P2を配置させることが好ましい。また、材料層形成装置1と同様に、材料層形成装置2は、転写部を有することが好ましい。基材11から粘着層を有する別の基材に第1の粒子P1を転写し、第1の粒子P1が転写された基材において、第1の粒子P1が配置されなかった領域に、第2の充填装置24を用いて、第2の粒子P2を配置させることができる。これにより、基材上に緻密に粒子を配置させることが可能となる。
材料層形成装置1及び2において、活物質による基材のカバー率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。活物質による基材のカバー率は、材料層が形成されている領域を基材鉛直方向から光学顕微鏡により撮影し、当該領域内における正極活物質の面積率を画像処理ソフトによって算出することで測定することができる。
このように、活物質による基材のカバー率を高くすることで、複数方向に析出した突起部を有する活物質が製造されやすい。その理由は、以下のように推測される。後述する第3工程での焼結処理の際に、基材がガス化する。活物質がそのガスに接しやすいほど、活物質が突起部を析出しやすいと考えられる。活物質による基材のカバー率が高いと、活物質が密に配置され、活物質と活物質の間の空隙が小さくなり、活物質がガスとより接しやすい。一方、活物質による基材のカバー率が低いと、活物質が疎に配置され、活物質と活物質の間の空隙が大きくなり、活物質がガスと接しにくい。
(第2工程)
第2工程は、材料層を複数積層して積層体を形成する工程である。積層体は、材料層を3枚以上積層させたものであることが好ましい。
図11は、積層体形成装置の構成を模式的に示す図である。積層体形成装置は、材料層12が形成された基材11を搬送する搬送装置31と、不図示のアクチュエータによって垂直方向に早退移動可能なステージ32と、を有する。
搬送装置31は、材料層形成装置を用いて形成された材料層12を有する基材11を受け取って、ステージ32へと搬送する。基材11を搬送可能な搬送装置31として、例えば、ベルトコンベア、ローラ、ロボットアームなどが挙げられる。
搬送装置31によって基材11がステージ32に搬送されると、ステージ32は基材11及び材料層12の厚さ分、垂直方向に移動する。搬送装置31による搬送とステージ32の移動とを繰り返すことで、材料層12がそれぞれ形成された複数の基材11が積層され、積層体13が形成される。
第1工程と第2工程との間には、基材を除電する除電工程を有することが好ましい。第1工程において基材や基材上の粒子は、帯電されやすく、積層する際に基材と基材との間に静電的な反発力が生じる。そのため、第2工程で積層する際に、基材が剥がれたり、基材と基材との間に空隙ができやすくなったりする。これにより、活物質がガスと接しにくくなり、活物質が突起部を析出しにくくなると考えられる。除電工程では、静電気除電ブロアー等により非接触で除電することが好ましい。
(第3工程)
第3工程は、積層体を焼結処理して正極活物質を製造する工程である。
図12は、焼結処理装置の構成を模式的に示す図である。焼結処理装置は、積層体13を搬送する搬送装置41と、積層体13を加熱する加熱炉42と、を有する。
搬送装置41は、積層体形成装置から積層体13を受け取って加熱炉42へと搬送する。搬送装置41は、搬送装置31と同様に、積層体13を搬送可能な装置であることが好ましい。積層体13を搬送可能な装置として、例えば、ベルトコンベア、ローラ、ロボットアームなどが挙げられる。
加熱炉42は、積層体13を加熱する炉である。加熱炉42は、加熱手段421と、加圧手段422と、雰囲気調整手段423と、を有する。加熱炉42としては、セラミックなどの焼成に用いられる焼成炉を用いることができる。加圧手段422は、加熱炉42において加熱されている積層体13を加圧したり、加熱前後の積層体13を加圧したりする。なお、加圧手段422は、積層体13を加圧する加圧部が気体を通過させやすい多孔質体で形成されていることが好ましい。雰囲気調整手段423は、雰囲気ガス供給手段423a及び減圧手段423bを有し、加熱炉42の処理空間内の雰囲気ガスの調整を行う。
積層体を焼結処理する際に、積層体13中の基材11の熱分解温度以上の温度で加熱することが好ましく、積層体13中の各材料層の熱分解温度未満の温度で加熱することが好ましい。積層体を加熱する温度としては、300℃以上1000℃以下であることが好ましく、400℃以上800℃以下であることがさらに好ましい。なお、積層体13中に異なる材質の複数種の基材11が含まれている場合には、加熱温度は、複数の基材のそれぞれの熱分解温度のうち、最も高い熱分解温度以上の温度とすればよい。
これにより、積層体中の基材を選択的に分解して基材を除去し、複数方向に析出した突起部を有する正極活物質を製造することが可能となる。ここで、加熱する前の積層体において、正極活物質は、複数方向に析出した突起部を有しない。加熱する過程で、正極活物質が複数方向に突出する突起部を有する。
熱分解温度とは、焼結処理装置における加熱の際の雰囲気下で温度を徐々に上げていった場合に、その材料の重量減少が始まる温度のことである。したがって、基材11の熱分解温度以上の温度で積層体を加熱することで、積層体中の基材11を分解してその重量を減らすことができ、積層体から基材11を除去することができる。加熱温度は、基材11の熱分解温度以上の温度であることが好ましいが、熱分解温度よりもさらに高い温度で加熱することが好ましい。具体的には、焼結処理装置における加熱の際の雰囲気(典型的には空気)下で室温(25℃)から5℃/分の割合で昇温させて熱重量分析を行った場合に、初期重量の70%となるときの温度以上の温度で加熱することが好ましい。また、同様に熱重量分析を行ったときに、初期重量の50%となるときの温度以上の温度で加熱することがより好ましく、初期重量の20%となるときの温度以上の温度で加熱することがさらに好ましい。これにより、基材11の除去に要する時間を短縮したり、基材11の除去率を高めたりすることができる。
すなわち、焼結処理装置が加熱により基材11を除去する場合には、正極活物質は、基材11よりも高い熱分解温度を有する材質であることが好ましい。一般に、無機材料は有機材料よりも熱分解温度が高い傾向にあるため、正極活物質は無機材料であり、基材11の材質は樹脂などの有機材料であることが好ましい。また、焼結処理装置が加熱により基材11を除去する場合には、正極活物質は、基材11の熱分解温度より高い軟化点温度を有する材料であることが好ましい。
焼結処理装置は、加熱により、積層体13中の基材の90重量%以上を消失させることが好ましく、95重量%以上を消失させることがより好ましく、97重量%以上を消失させることがさらに好ましい。その際、基材は燃焼又はガス化して気体として外部に放出されることが好ましい。
正極活物質から突起部を複数方向に析出させるためには、基材がガス化する際に、ガスが正極活物質に均一に接する必要がある。そのためには、基材上に正極活物質を密に配置させるとともに、基材の厚みを薄くして、基材の積層方向の粒子間の密度を高めることが好ましい。具体的には、基材の厚み(μm)は、正極活物質の粒径(μm)の10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。ここで、基材の表面に粘着層を有する場合の基材の厚みとは、粘着層の厚みと基材の厚みの合計の厚みのことである。また、正極活物質の粒径とは、体積基準の累積50%粒径(メジアン径)のことである。なお、基材の厚みは、デジタル厚みゲージ等を用いて測定することができる。粘着層の厚みは、基材上の粘着層を溶剤で除去し、基材を前記デジタル厚みゲージで測定し、差分を計測することにより測定することができる。正極活物質の粒径は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
基材の厚みは、1μm以上1mm以下であることが好ましい。正極活物質の粒径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
なお、基材として樹脂などの有機材料で形成された基材を用いることで、加熱による基材の除去を容易にすることができる。基材を構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ナイロンなどのポリアミドなどを用いることができる。なかでも、分解温度や熱分解時に発生する気体の低有害性の観点から、PETを用いることが好ましい。
焼結処理装置は、減圧手段423bによって、放出された気体を加熱炉42の外部に排気することが好ましい。雰囲気ガス供給手段423aなどによって加熱炉42の内部を酸化雰囲気、すなわち、空気などの酸素ガスを含む雰囲気としておくことで、基材を燃焼させて除去することができる。
積層体13から基材が熱分解によってガス化して気体として放出されると、積層体13中の各材料層が押し上げられて形状が変化してしまうことがある。そのため、加熱炉42において加熱を行う際には、加熱の前後又は加熱中、あるいは加熱後の冷却又は放熱中に、加圧手段422によって積層体13を加圧しても構わない。また、焼結処理装置により基材を除去した後、別途加圧装置(たとえば、等方圧加圧装置)で加圧して、再度焼結処理装置で加熱しても構わない。
第2工程と第3工程との間には、積層体を加圧する加圧工程を有することが好ましい。加圧は、5MPaから500MPaで行うことが好ましい。積層されるそれぞれの基材上の粒子の状態が一様になり、突起部の形成が安定する。具体的な加圧工程は、真空脱気、等方圧加圧や、一般的な油圧プレス機やローラ加圧機により行うことが好ましい。なかでも、真空脱気と等方圧加圧を組み合わせて加圧することが好ましい。積層体を形成する基材と基材との間の空気が抜けた状態で等方圧加圧されることにより、活物質と活物質の間の空隙が小さくなり、活物質がガスと接しやすく、活物質が突起部を析出しやすい。また、活物質が密に配置されることで、多くの活物質が突起部を析出するため、突起部が析出した活物質が高収率で得られる。
図13は、積層造形システムの全体構成を模式的に示す図である。積層造形システム100は、制御ユニットU1と、材料層形成ユニットU2と、積層ユニットU3と、除去ユニットU4と、後処理ユニットU5と、を有する。制御ユニットU1は、積層造形システム100の各部の制御などを担う。材料層形成ユニットU2では、上述の材料層形成装置(図2)を用いて基材11上に材料層12を形成する。積層ユニットU3は、上述の積層体形成装置(図11)を用いて、材料層形成ユニットU2でそれぞれ材料層12が形成された複数の基材11を積層し、複数の材料層12と複数の基材11とを含む積層体13を形成する。除去ユニットU4は、上述の焼結処理装置(図12)を用いて、積層ユニットU3で形成された積層体13から、基材11を除去して立体物14を形成する。立体物14には、複数方向に析出した突起部を有する正極活物質が含まれる。後処理ユニットU5は、除去ユニットU4で形成された立体物14の後処理を行う。なお、図13に示したユニット構成はあくまでも一例であり、他の構成を採用しても構わない。以下、各ユニットの構成と動作について説明する。
[制御ユニット]
制御ユニットU1は、積層造形システム100の各部、具体的には、材料層形成ユニットU2、積層ユニットU3、除去ユニットU4、及び、後処理ユニットU5の制御などを担う。
制御ユニットU1は、外部装置(例えばパソコンなど)から積層造形システム100によって形成する立体物(以下、「造形対象物」と称することがある)の3次元形状データの入力を受け付ける、3次元形状データ入力部を備えていてもよい。3次元形状データとしては、3次元CAD、3次元モデラー、3次元スキャナなどで作成・出力されたデータを用いることができる。そのファイル形式は問わないが、例えば、STL(StereoLithography)ファイル形式を好ましく用いることができる。
制御ユニットU1は、3次元形状データを所定のピッチでスライスして各層の断面形状を計算し、その断面形状を基に材料層形成ユニットU2で像形成に用いる画像データ(「スライスデータ」と称する)を生成する、スライスデータ計算部を備えていてもよい。さらに、スライスデータ計算部は、3次元形状データ又は上下層のスライスデータを解析して、オーバーハング部(宙に浮く部分)の有無を判断し、必要に応じてスライスデータにサポート材料用の像を追加してもよい。
詳しくは後述するが、本実施形態の材料層形成ユニットU2は複数種の材料を用い、それぞれの材料がパターニングされた材料層を形成可能である。そのため、スライスデータとしてはそれぞれの材料の像に対応するデータが生成されてもよい。スライスデータのファイル形式としては、例えば、多値の画像データ(各値が材料の種類を表す)やマルチプレーンの画像データ(各プレーンが材料の種類に対応する)を用いることができる。
また、図示しないが、制御ユニットU1は、操作部、表示部、記憶部も備える。操作部は、ユーザからの指示を受け付ける機能である。例えば、電源のオン/オフ、装置の各種設定、動作指示などの入力が可能である。表示部は、ユーザへの情報提示を行う機能である。例えば、各種設定画面、エラーメッセージ、動作状況などの提示が可能である。記憶部は、3次元形状データ、スライスデータ、各種設定値などを記憶する機能である。
制御ユニットU1は、ハードウエア的には、CPU(中央演算処理装置)、メモリ、補助記憶装置(ハードディスク、フラッシュメモリなど)、入力デバイス、表示デバイス、各種I/Fを具備したコンピュータにより構成することができる。上述した各機能は、補助記憶装置などに格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行し、必要なデバイスを制御することで実現されるものである。ただし、上述した機能のうちの一部又は全部をASICやFPGAなどの回路で構成したり、あるいは、クラウドコンピューティングやグリッドコンピューティングなどの技術を利用して他のコンピュータに実行させたりしてもよい。
[材料層形成ユニット]
材料層形成ユニットU2は、基材11上に材料層12を形成するユニットである。材料層形成ユニットU2としては、上述の材料層形成装置2を用いることができる。
積層造形システム100は、材料層形成ユニットU2を複数有していてもよい。これにより、基材11上への材料層12の形成を同時並行的に行うことができ、積層体、及び立体物の形成のスループットをさらに向上させることができる。また、立体物を構成する材料の種類が多数である場合などには、材料種ごと、あるいは材料種のグループごとに材料層形成ユニットU2を設けることで、材料層形成ユニットU2内での材料種やプロセスの切り替えを省略することもできる。これにより、立体物の製造を連続的に行うことができる。
[積層ユニット]
積層ユニットU3は、材料層形成ユニットU2でそれぞれ材料層12が形成された複数の基材11を積層し、複数の材料層12と複数の基材11とを含む積層体13を形成するユニットである。上述の積層体形成装置を用いることができる。
積層ユニットU3は、形成された積層体13を除去ユニットU4などへと搬送する搬送装置33や、積層体13を積層方向に加圧する加圧装置(不図示)をさらに有していてもよい。搬送装置33は、搬送装置31と同様の構成であってもよい。
[除去ユニット]
除去ユニットU4は、積層ユニットU3で形成された積層体13から、基材11を除去して立体物14を形成するユニットである。上述の焼結処理装置を用いることができる。
[後処理ユニット]
後処理ユニットU5は、除去ユニットU4で形成された立体物14の後処理を行うユニットである。
後処理ユニットU5が行う後処理の種類は特に限定されないが、例えば、立体物14をさらに加熱して焼成を行う処理が挙げられる。なお、後処理ユニットU5が後処理として加熱処理を行う場合には、除去ユニットU4がその機能を兼ねていてもよい。立体物14を焼成することにより、各材料層中の粒子材料などの材料同士を焼結することができる。
なお、後処理ユニットU5も、除去ユニットU4と同様に、立体物14を加熱する加圧手段を有していてもよい。後処理ユニットU5は、後処理としての加熱の前又は加熱中、あるいは加熱後の冷却又は放熱中に、加圧手段によって立体物14を加圧してもよい。
<電極>
電極は、活物質、及び電解質を含み、活物質は、複数方向に析出した突起部を有する。活物質は、上述の製造方法を用いて製造されることが好ましい。また、電極は、第1の粒子を活物質、第2の粒子を電解質とすること以外は上述の活物質の製造方法と同様の方法で製造することができる。得られる電極に含まれる活物質は、複数方向に析出した突起部を有する。
(電解質)
電解質としては、固体電解質、液体電解質などが挙げられる。
[固体電解質]
固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、錯体水素化物系固体電解質などが挙げられる。酸化物系固体電解質は、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3やLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3などのナシコン型化合物、Li6.25La3Zr2Al0.25O12などのガーネット型化合物が挙げられる。また、酸化物系固体電解質は、Li0.33Li0.55TiO3などのペロブスカイト型化合物、が挙げられる。また、酸化物系固体電解質は、Li14Zn(GeO4)4などのリシコン型化合物、Li3PO4やLi4SiO4、Li3BO3などの酸化合物が挙げられる。硫化物系固体電解質の具体例としては、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5等が挙げられる。また、固体電解質は、結晶質であっても非晶質であってもよく、ガラスセラミックスであっても構わない。なお、Li2S-P2S5などの記載は、Li2S及びP2S5を含む原料を用いて成る硫化物系固体電解質を意味する。
[液体電解質]
液体電解質としては、例えば、非水系電解液が挙げられる。非水系電解液は、非水溶媒にリチウム塩を1モル程度溶解させた液体である。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4などが挙げられる。また、水溶媒を用いた水系電解液でもよい。
<電池>
電池は、正極活物質、負極活物質、及び電解質を含み、正極活物質は、複数方向に析出した突起部を有する。正極活物質は、上述の製造方法を用いて製造されることが好ましい。電解質は、上述の固体電解質や液体電解質が挙げられる。
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物、各種合金材料などが挙げられる。なかでも、容量密度の観点から、酸化物、炭素材料、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物などが好ましい。酸化物としては、例えば、Li4Ti5O12(LTO:チタン酸リチウム)などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、各種天然黒鉛(グラファイト)、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素などが挙げられる。珪素化合物としては、例えば、珪素含有合金、珪素含有無機化合物、珪素含有有機化合物、固溶体などが挙げられる。錫化合物としては、例えば、SnOb(0<b<2)、SnO2、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Snなどが挙げられる。また、上記負極材料は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。導電助剤としては、他に、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末、酸化亜鉛などの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘電体などの有機導電性材料などが挙げられる。
本実施例においては、活物質として正極活物質であるコバルト酸リチウムとしたが、他の活物質においても、同様のプロセスで基材や加熱の条件を適正化することにより、析出した突起部を有する活物質を製造することができる。
以下、コバルト酸リチウムをLCO、ホウ酸リチウムをLBO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3をLAGPと略して記載する。
[正極活物質の製造]
(実施例1)
上述の積層造形システム100を用いて、正極活物質を製造した。具体的には、材料層形成ユニットU2では、図2に示す材料層形成装置1を用いた。基材上に材料層を形成し、材料層が形成された基材を積層することで得られる積層体を加熱することで、基材を除去し、正極活物質を製造した。
第1の基材11aとしては、ポリエチレンテレフタラート(PET)製のシートを用いた。第1の基材11a上には、パターン形成装置23によってレンズアレイ状の凹凸パターンを形成した。このレンズアレイ状とは、深さ5.5μmのレンズが7.5μm周期で配列した状態であった。
まず、第1の基材11a上に紫外線硬化性の樹脂(紫外線硬化型液状シリコーンゴム(PDMS)、信越化学工業製)を塗工した。その後、第1の基材11a上の紫外線硬化性の樹脂に、形成したい凹凸パターンに対応した、レンズアレイ状の凸パターンを表面に有するフィルムモールド(標準モールド、綜研化学製)を押し当てた。フィルムモールドを押し当てた状態で、UVランプによって紫外線を照射して紫外線硬化性の樹脂を硬化させて、フィルムモールドを離型した。
第2の基材11bとしては、表面(材料層を形成する面)及び裏面(材料層を形成しない面)にアクリル系粘着剤を塗布したポリエチレンテレフタラート(PET)製のシートを用いた。PET製のシートの厚みは、20μmであり、PET製のシートの表面に塗布したアクリル系粘着剤の厚みは、1μmであった。
第1の粒子及び第2の粒子としては、LCO(セルシード C-5H、日本化学工業製)を用いた。LCOの体積基準の累積50%粒径(メジアン径)は、7μmであり、メジアン径は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所製)を用いて測定した。また、担持材S1及び担持材S2としては、磁性粒子である標準キャリア(標準キャリアP02、日本画像学会製)を用いた。これにより、材料層1を形成した。材料層1の形成の際には、充填剤241a、241bにおける正極活物質の割合を17重量%とした。
材料層1は、基材上にLCOが略単層で形成されており、LCOによる基材のカバー率は、80%であった。LCOによる基材のカバー率は、材料層が形成されている領域を基材鉛直方向から光学顕微鏡により撮影し、当該領域内における正極活物質の面積率を画像処理ソフト(アドビシステムズ製フォトショップ(登録商標))によって算出することで測定した。基材上のLCOは、基材面内、基材積層方向において均一に配置されたため、正極活物質からの突起部の析出具合(方向や長さ)のばらつきが減った。基材上に材料層を形成した後、静電気除去ブロアー(アズワン製)により基材を除電した。
次に、積層ユニットU3で、材料層が形成された第2の基材11bをアルミニウム箔(厚み20μm)上で3枚積層させた。その後、第2の基材11bが積層されたアルミニウム箔をラミネートフィルム(旭化成パックス製)に入れ、真空包装機(TOSEI製)で真空ラミネート処理し、等方圧加圧装置(日機装製)により200MPaで加圧した。これにより、アルミニウム箔上に、材料層が形成された第2の基材11bが、3枚積層された積層体を得た。
次に、除去ユニットU4で、加熱により、積層体から基材を除去した。除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)を用いた。電気炉内のセラミックステージ上に積層体を置き、無加圧、大気下で加熱した。加熱プロファイルを用いて、室温(25℃)より250℃まで毎分2.5℃の割合で昇温し、250℃より510℃まで毎分0.5℃の割合で昇温し、510℃に到達後1時間維持し、その後室温(25℃)まで冷却した。
図14は、第2の基材11bであるアクリル系粘着剤を塗布したPETの熱重量分析結果を示す図である。熱重量分析は、示差熱天秤(TG-DTA、リガク製)を用い、大気中で室温(25℃)から毎分5℃の割合で昇温させて行った。図14から、初期重量の50%となるときの温度は約400℃であり、初期重量の20%となるときの温度は約500℃であった。すなわち、約500℃を超える温度で基材を加熱すれば、基材の大部分を除去できることを示している。また、LCOの熱分解温度は、510℃以上であった。
図15は、基材を除去した後の積層体を電子顕微鏡により撮影した画像である。図16は、上述の加熱プロファイルと同様の条件で加熱したLCOを電子顕微鏡により撮影した画像である。図16のように、LCOのみを加熱しても、LCOは突起部を有してなかった。一方、実施例1のように、基材上にLCOを配置し、基材を複数枚積層し、加熱除去したLCOは突起部を有していた。
図17は、基材を除去した後の積層体の断面を電子顕微鏡により断面を撮影した画像である。断面試料は、イオンミリング装置(ライカ製)を用いて作製した。LCOのコア部7の表面に複数の突起部8が析出した。この突起部8の組成を調べるため、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)のエネルギー分散型X線分析(EDX)を行った。その結果、突起部は、コア部と同じCoとOのピークを有していることが確認された。また、基材を除去した後の積層体を樹脂で固めFIBでスライスした試験片を断面TEMで観察したところ、コア部と突起部の双方において結晶構造に対応する格子状テクスチャが認められた。以上より、複数方向に析出した突起部を有する正極活物質を製造することができた。
また、積層体の基材を除去する加熱工程前(図21(a)(b))と除去する加熱工程後(図21(c)(d)(e))の断面をそれぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。この結果、基材を除去する加熱工程後の積層体の断面には、固有の断面プロファイルが認められた。かかる固有の断面プロファイルは、以下の様な特徴を含まれていた。<粒子内部の不連続性>、<コアシェルライクな間隙構造1>、<コア自体とシェル自体の間隙構造2>、<最外周シェルに認められる突起部>、<コアとシェルのそれぞれに認められる緻密領域と多孔質領域>が含まれる。
<粒子内部の不連続性>
図21(b)のSEM像に見える粒子状LCOの段面はプレーンなテクスチャを示しているのに対して、図21(d)、(e)のSEM像に見える粒子状LCOの段面は粒子内が不連続なテクスチャを示していることが読み取れる。
<コアシェルライクな間隙構造1>
図21(b)のSEM像にある粒子状LCOの段面は一塊の粒子形態を示しているのに対して、図21(d)、(e)のSEM像にある粒子状LCOの段面は、コア部C101と複数の層状のシェル部S111,S121を備えるようなコアシェル構造が認められる。すなわち、図21(d)、(e)のSEM像にある粒子状LCOの段面は、各シェル部に沿った層状の間隙LG111,LG121が複数認められる。正極活物質LCOの粒子部は、コア部C101とシェル部S111,S121、および、かかるコア部とシェル部との間に位置する層状の間隙LG111,LG121と、を有すると換言される。正極活物質LCOの粒子部において、シェル部S111,S121と層状の間隙LG111,LG121は、それぞれコア部C101の径方向に複数存在すると換言される。
<コア自体とシェル自体の間隙構造2>
図21(b)のSEM像にある粒子状LCOの段面は前述のように一塊のプレーンな粒子形態を示しているのに対して、図21(d)、(e)のSEM像にある粒子状LCOの段面は、コア部C101とシェル部S111,S121の方向に延びる放射状の間隙RG101、RG111が認められる。正極活物質LCOの粒子部は放射状の間隙RG101、RG111を有している。また、正極活物質LCOの粒子部はコア部とシェル部とを有し、放射状の間隙は少なくともかかるシェル部S111に存在すると換言される。
<最外周シェルに認められる突起部>
図21(e)からは、最外周のシェル部S121の外側において外側に突出する突起部P121が認められる。この突起部P121は粒子状の正極活物質LCO1000同士、または、粒子状の正極活物質LCO1000と不図示の電解質との接触確率を増大するもの考えられる。
上記の加熱工程後の積層体に含まれるLCO粒子の断面は、加熱工程前の積層体に含まれるLCO粒子に比べて、粒子の外周面だけでなく、内部構造を含めて、明らかに比表面積が増大していると読み取れる。正極活物質LCOの粒子部は、コア部C101とシェル部S111、S121とを有し、突起部P121は、少なくともシェル部S121から突出している。突起部がシェル部とコア部のそれぞれから突出している正極活物質LCOも認められる。
<コアとシェルのそれぞれに認められる緻密領域と多孔質領域>
このような比表面積の増大は、加熱前の稠密な粒子の一部が、シェル部やコア部の径成長、クラック生成、突起部(ウィスカー)の成長に消費されたものと推定される。コア部やシェル部は、2つのタイプの間隙構造の生成、や、コア部やシェル部の径増大、突起部の生成により多孔質領域を形成するものと考えられる。同様にして、コア部C101は、コア部やシェル部の径方向の内側向きと外側向きの双方に発生していることが確認されている。2つのタイプの間隙構造の生成、や、コア部やシェル部の径増大、突起部の生成により消費されなかった部分が周方向に延在する緻密領域として残っているものと考えられる。また、突起部(ウィスカー)の成長は、霜柱の様に、コア部とシェル部とを離間する間隙形成作用を加速する効果を発現すると考えられる。また、コアシェル構造の径拡大作用は、弾性率の低い金属酸化物結晶にクラックを生成することで実現されるものと考えられる。また、生成されたクラックは、粒子内部に焼成雰囲気に含まれる酸素、触媒作用を有するガスを粒子内部の層状の間隙に導入する効果を発現するものと考えらえる。
(実施例2)
第2の基材11bとして粘着性を有するアクリル樹脂(膜厚20μm)を用いた。LCOによる基材のカバー率は、80%であった。その他の条件は、実施例1と同様の条件で正極活物質を製造した。その結果、実施例1と同様に複数方向に析出した突起部を有する正極活物質を製造することができた。
(実施例3)
第1の基材11a上にレンズアレイ状の凹凸パターンを形成した。実施例1とは異なり、レンズアレイ状とは、深さ5.0μmのレンズが12.0μm周期で配列した状態であった。また、実施例1とは異なり、第2の粒子(LCO)を用いずに、基材11a上に第1の粒子のみを配置した。LCOによる基材のカバー率は、60%であった。その他の条件は、実施例1と同様の条件で正極活物質を製造した。その結果、実施例1と同様に複数方向に析出した突起部を有する正極活物質を製造することができた。
(比較例1)
積層ユニットU3で、材料層が形成された基材11bをアルミニウム箔(厚み20μm)上に1枚付着させた。LCOによる基材のカバー率は80%であった。積層する基材の数を1枚に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で正極活物質を製造した。その結果、複数方向に析出した突起部を有する正極活物質を製造できなかった。
[正極電極の製造]
(実施例4)
上述の積層造形システム100を用いて、複数方向に析出した突起部を有する正極活物質を含む正極電極を製造した。具体的には、材料層形成ユニットU2では、図2に示す材料層形成装置1を用いた。基材上に材料層を形成し、材料層が形成された基材を積層することで得られる積層体を加熱することで、基材を除去し、正極電極を製造した。
第1の基材11aとしては、ポリエチレンテレフタラート(PET)製のシートを用いた。第1の基材11a上には、パターン形成装置23によってレンズアレイ状の凹凸パターンを形成した。このレンズアレイ状とは、深さ5.5μmのレンズが7.5μm周期で配列した状態であった。
第2の基材11bとしては、表面(材料層を形成する面)及び裏面(材料層を形成しない面)にアクリル系粘着剤を塗布したPET製のシートを用いた。PET製のシートの厚みは、5μmであり、PET製のシートの表面に塗布したアクリル系粘着剤の厚みは、1μmであった。
第1の粒子としては、実施例1と同じLCO、第2の粒子としては、固体電解質であるLBO(豊島製作所製)、担持材S1及び担持材S2としては、実施例1と同じ磁性粒子を用いた。LBOの体積基準の累積50%粒径は、5μmであった。これにより、材料層1を形成した。材料層1の形成の際には、充填剤241aにおけるLCOの割合を17重量%、充填剤241bにおけるLBOの割合を15重量%とした。
材料層1は、基材上にLCO及びLBOが配置されており、LCO及びLBOによる基材のカバー率は、80%であった。基材上に材料層を形成した後、静電気除去ブロアー(アズワン製)により基材を除電した。
次に、積層ユニットU3で、材料層が形成された基材11bを別途作製した固体電解質シート(厚み270μm)上で3枚積層させた。固体電解質シートは、固体電解質であるLAGP(豊島製作所製)をプレス成形して、電気炉で焼結(850℃/12h/大気)して作製した。ここで、LAGPの体積基準の累積50%粒径は、5μmであった。
その後、基材11bが積層された固体電解質シートをラミネートフィルム(旭化成パックス製)に入れ、真空包装機(TOSEI製)で真空ラミネート処理し、等方圧加圧装置(日機装製)により200MPaで加圧した。固体電解質シート上に材料層が形成された基材11bを3枚積層した積層体が得られた。
次に、除去ユニットU4で積層体から基材を加熱により除去した。除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)を用いた。電気炉内のセラミックステージ上に前記積層体を置き、無加圧、大気下で加熱した。加熱プロファイルを用いて、室温(25℃)より250℃まで毎分2.5℃の割合で昇温し、250℃より510℃まで毎分0.5℃の割合で昇温し、510℃に到達後1時間維持し、その後室温(25℃)まで冷却した。すなわち、約500℃を超える温度で基材を加熱すれば、基材の大部分を除去できることを示している。また、LCO及びLBOの熱分解温度は、いずれも510℃以上であった。これにより、正極と固体電解質を含む正極電極を得た。
図18は、正極電極の正極面を電子顕微鏡により撮影した画像である。正極活物質の粒子部LCO9の間隙に電解質の粒子部LBO10が充填されており、正極活物質の粒子部LCO9から複数方向に析出した正極活物質の突起部LCO10を有することが確認された。正極活物質の粒子部LCO9の粒子部同士の間に電解質の粒子部LBO10が配置されていると換言される。
正極電極の電池としての性能を確認するために、電池の組立を行った。負極としてインジウム箔(厚み50μm)を固体電解質シートの裏面(正極面とは逆側)に固定し、正極集電体としてアルミニウム箔(厚み10μm)、負極集電体として銅箔(厚み10μm)をそれぞれの電極に固定した。集電体にシーラント付きタブを溶接し、Alラミネートフィルムに入れ、真空包装機(TOSEI製)で真空ラミネート処理し、等方圧加圧装置(日機装製)で加圧し、正極電極、電解質、及び負極電極を含む全固体電池を成形した。
図19は、実施例4の全固体電池のインピーダンス測定の結果(ナイキストプロット)である。ナイキストプロットの横軸Z’は、インピーダンスの実軸であり、縦軸Z’’は、インピーダンスの虚軸である。インピーダンス測定は、電気化学測定装置(ソーラトロン製)により行った。周波数1000kHz~10kHzの潰れた半円と周波数1kHz~0.1Hzの潰れた半円が確認された。前者の半円は、固体電解質の信号であり、後者の半円は、電極が寄与する抵抗(主に電極抵抗)である。図19において、電極抵抗Z(Ω)からLogZは、3であった。ここで、電極抵抗Zは、後者の半円の直径の値(Z’)から算出した値である。電極抵抗の値が小さければ小さいほど、電解質へイオンが移動しやすいことを示している。
図20は、実施例4の全固体電池の充放電測定(25℃)の結果である。充放電測定は、充放電測定システム(バイオロジック製)により行った。縦軸は電圧(V)、横軸はLCOの重量(g)当たりの容量(mAh)である。充放電電流(定電流)は90uA/cm2、充放電時間は2時間、カットオフ電圧は3V(下限)4.5V(上限)とした。その際、充放電効率(充電容量に対する放電容量の割合%)は、94%であった。ここで、充放電効率の算出方法は、放電カーブにおける終点の放電容量を充電カーブにおける終点の充電容量で割った値である。図20においては、充電カーブの終点における充電容量は107%であり、放電カーブの終点における放電容量は100%であった。
(比較例2)
積層ユニットU3において、材料層が形成された基材11bを固体電解質シート上に1枚付着させた。LCO及びLBOによる基材のカバー率は、80%であった。積層する基材の数を1枚に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例5)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を300℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例6)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を400℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例7)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を600℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例8)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を700℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例9)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を800℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例10)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を900℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
(実施例11)
除去ユニットU4として、電気炉(山田電機製卓上型マッフル炉)の加熱プロファイルの到達温度510℃を1000℃に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、正極活物質と固体電解質を含む正極電極、及び正極電極を用いた全固体電池を作製した。
〔評価方法〕
・突起部:下記インピーダンス測定、充放電測定後に全固体電池をばらして、正極を電子顕微鏡で観察し、突起部の有無を確認した。
・電極抵抗:全固体電池のインピーダンス測定を行い、ナイキストプロットより、電極(正極)が寄与する抵抗のオーダーを求めた。
・充放電効率:全固体電池の充放電測定を行い、得られた充電容量と放電容量から充放電効率を算出した。充放電測定は、定電流で行い、正極活物質重量当たりの電流量を合わせて測定を行った。
評価結果は、下記表1に記載する。表1において、電極抵抗Z(Ω)に対して常用対数をとった値LogZを記載する。
正極活物質が突起部を有さなかった比較例2は電極抵抗が高く、充放電を確認できなかった。一方、正極活物質が突起部を有し、かつ、基材が十分消失した実施例4~8は、高いレート(0.5C相当)にも関わらず、充放電が確認された。これは正極内部において、正極活物質が突起部を有し、かつ、パターン形成装置により正極活物質の周囲に固体電解質が充填されているため、正極活物質と固体電解質の界面面積が増加し、正極抵抗が減少したためと考えられる。すなわち、突起部は、電解質と粒子部とのイオン電導に係るように粒子部から複数方向に突出していることで、正極の電極抵抗が低減されると換言される。また、本実施形態のように、複数の粒子部が並べられた面を有する活物質を、電池用の電極とすることにより、かかる並べられた面と電解質の層との界面のイオン電導を促進し、二次電池の電極抵抗が低下するものと考えられる。
一方、正極活物質が突起部を有した実施例5は、基材の消失が足りず、正極抵抗が下がらなかったため、充放電が確認されなかった。また、正極活物質が突起部を有した実施例10及び11は、高温で加熱したため、正極活物質(LCO)と固体電解質(LAGP、LBO)の界面において反応層が形成され、高抵抗化したため、充放電が確認されなかった。
なお、本実施例においては、別途作製された固体電解質シート上で正極を成形したが、アルミニウム箔やステンレス箔等の集電体上で正極を成形しても構わない。この場合、固体電解質シートの両面に集電体付きの正極(本成形)と負極(インジウム)を固定し、負極集電体、シーラント付きタブを合わせてAlラミネートフィルムに入れて全固体電池を成形することができる。また、正極以外の電解質や負極についても同様のプロセスにより成形しても構わない。例えば、固体電解質シートの両面に正極用の基材、負極用の基材を積層した積層体を成形し、基材を加熱により除去することにより、正極、電解質、負極を含む成形体が得られる。あるいは、正極用、電解質用の基材を積層した積層体を成形し、基材を加熱により除去し、同様のプロセス或いは別プロセスで成形された負極(インジウムや金属リチウム等を含む)を積層することにより、正極、電解質、負極を含む成形体が得られる。あるいは、正極用、電解質用、負極用の基材を積層した積層体を成形し、基材を加熱により除去することにより、正極、電解質、負極を含む成形体が得られる。
また、前記プロセスに他のプロセスを追加して、最終的な全固体電池を成形しても構わない。例えば、基材を加熱により除去した後、正極に固体電解質や導電助剤やバインダー樹脂を充填しても構わない。前記材料の少なくとも1種類の粒子を溶媒と混ぜた溶液を作製し、前記溶液中に正極を漬け込むことで、前記溶液が充填される。このとき、正極は、実施例1~3のように正極活物質のみを含んでも、実施例4のように正極活物質と固体電解質を含んでも構わない。また、前記固体電解質シート以外にポリマー電解質シートのような半固体材料を含む電解質でも構わない。
(実施例12)
上述の積層造形システム100を用いて正極電極を製造し、液体電解質を用いたリチウムイオン電池に適用した。具体的には、実施例1と同様に集電体(アルミニウム箔20μm)上に、材料層(LCO)が形成された基材を3枚積層し、基材を除去することにより正極電極を製造した。LCOによる基材のカバー率は、80%であった。
(実施例13)
上述の積層造形システム100を用いて正極電極を製造し、液体電解質を用いたリチウムイオン電池に適用した。具体的には、実施例3と同様に集電体(アルミニウム箔20μm)上に、材料層(LCO)が形成された基材を3枚積層し、基材を除去することにより正極電極を製造した。LCOによる基材のカバー率は、60%であった。
(比較例3)
上述の積層造形システム100を用いて正極電極を製造し、液体電解質を用いたリチウムイオン電池に適用した。具体的には、比較例1と同様に集電体(アルミニウム箔20μm)上に、材料層(LCO)が形成された基材を1枚積層し、基材を除去することにより正極電極を製造した。LCOによる基材のカバー率は、80%であった。
(実施例14)
上述の積層造形システム100を用いて正極電極を製造し、液体電解質を用いたリチウムイオン電池に適用した。具体的には、実施例4と同様に集電体(アルミニウム箔20μm)上に、材料層(LCO+LBO)が形成された基材を3枚積層し、基材を除去することにより正極電極を製造した。LCO及びLBOによる基材のカバー率は、80%であった。
各電極の電池としての性能を確認するために、電池の組立を行った。前記正極電極とセパレーターと負極シート(グラファイト)をコインケース内で積層、加圧し、電解液を充填してコイン電池を組み立てた。なお、負極シートは塗工プロセスにより集電体上にグラファイト、バインダー樹脂等を含む溶剤を塗工し、乾燥、加圧したシートを使用したが、蒸着プロセスなどにより成形した金属リチウムでも構わない。また、正極と同様のプロセスにより、グラファイトやLTO等の負極活物質を集電体上で成形したものを使用しても構わない。
〔評価方法〕
・突起部:下記インピーダンス測定、充放電測定後にリチウムイオン電池をばらして、正極を電子顕微鏡で観察し、突起部の有無を確認した。
・レート:リチウムイオン電池の充放電測定を行い、充放電効率が80%以上を満たすレート(1C:正極活物質の実容量に対し1時間で充電、放電終了する電流量)。
評価結果は、下記表2に記載する。
正極活物質が突起部を有していなかった比較例3に対して、正極活物質が突起部を有する実施例12~14のレート特性は改善した。これは正極内部において、正極活物質が突起部を有し、充填された液体電解質の界面面積が増加し、正極抵抗が減少したためと考えられる。
(実施例15)
上述の積層造形システム100を用いて、製造した実施例1のLCOを原材料として、正極電極を成形し、液体電解質を用いたリチウムイオン電池に適用した。正極電極の成形方法について説明する。製造された正極活物質をバインダー樹脂、導電助剤、及び溶剤と十分に攪拌混合し、集電体(アルミニウム箔)上に塗工する。正極活物質は、撹拌・混合する前に、分級、粉砕処理や表面処理等の前処理をしても構わない。集電体を乾燥・加圧し、正極電極を成形した。電池の組立は、実施例4と同様である。
(比較例4)
突起部が析出しなかったLCOを原材料として、実施例4と同様に正極電極を成形し、液体電解質を用いたリチウムイオン電池に適用した。
〔評価方法〕
・突起部:下記インピーダンス測定、充放電測定後にリチウムイオン電池をばらして、正極を電子顕微鏡で観察し、突起部の有無を確認した。
・レート:リチウムイオン電池の充放電測定を行い、充放電効率が80%以上を満たすレート(1C:正極活物質の実容量に対し1時間で充電、放電終了する電流量)。
評価結果は、下記表3に記載する。
正極活物質が突起部を有さない比較例4に対して、正極活物質が突起部を有する実施例15のレート特性は改善した。これは正極内部において、正極活物質が突起部を有し、充填された液体電解質の界面面積が増加し、正極抵抗(電極抵抗)が減少したためと考えられる。