JP7674635B2 - 豚のウイルス抵抗性の判別方法、およびその利用 - Google Patents

豚のウイルス抵抗性の判別方法、およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、豚のウイルス抵抗性判別のための遺伝子マーカー、およびそのマーカーを用いた豚の判別方法に関する。
養豚業において、感染症の制御は最も重要な要素の一つであると言える。国内において広範囲に感染が見られ養豚経営に大きな影響を及ぼしている疾病が数多く存在する。しかしながら、ワクチン開発の困難さや、世界的な趨勢である抗菌剤の使用制限等の問題が存在し、豚自身の抗病性の向上を図ることも重要と考えられる。そこで、遺伝的要因を活用して、豚の感染症への抵抗性を改善し、疾病による被害を軽減する方策が求められているところである。
豚の疾患に関する形質とゲノム領域との関連性については、オーエスキー病応答に対するQTL解析や病原性大腸菌 (F18+ E. coli)に対する抵抗性などが存在する。また、豚サーコウイルス2型(PCV2)に対する応答と関連する遺伝的因子としては、交雑豚を用いた実験感染により第7(主要組織適合抗原複合体付近。非特許文献1、および非特許文献2)及び第12染色体(前掲非特許文献1)上に血中ウイルス量と関連するSNPが検出されている。さらに離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)による斃死に関してはデュロック種集団では第7染色体および第13染色体状のそれぞれq腕末端付近に送還を有するゲノム領域が検出されたとの報告がされている(非特許文献3)。
Engle et al., WCGALP 2014 Dunkelberger et al., BMC Genomics 18:865, 2017 生産システム革新のための研究開発 DNA マーカー育種の高度化のための技術開発, 農業・食品産業技術総合研究機構, 2017(平成29)年3月
PCV2実験感染での血中ウイルス量への特定のゲノム領域との関連性については報告があるが、実際にPCV2による斃死等の被害との関連性について明確に示した研究は存在しない。また、MHC領域(第7染色体)については集団としての抗病性を維持するために多様性を減少させることは望ましくなく、選抜マーカーとしての利用には限界がある。
本発明では、肉豚生産において止め雄として使われ、遺伝的に大きな影響を与えるデュロック種純粋種を用いて、PCV2(特に毒性の強いPCV2b)感染の蔓延時に多発した斃死と、特定の一塩基多型(SNP)との関連性について明らかにした。本多型は、これまでに報告されているPCV2ウイルス量との関連性が指摘されているSNPの近傍には存在しない。更に、PCV2による斃死多発後に本多型の感受性遺伝型の遺伝子頻度が著しく低くなっていること、また感受性遺伝型を有する母豚産子の出生時生存率が有意に低下し、また死産数が有意に増加することも明らかにした。解析を行った集団以外のデュロック種集団においては該当のSNPについて感受性遺伝型が高い頻度で残存しており、ウイルスに対する抵抗性を指標とした改良を可能とする遺伝子マーカーとしての活用が可能である。
本発明は、以下を提供する。
[1]豚のウイルス抵抗性の判別方法であって、対象となる豚のゲノムの、下表の1~107からなる群より選択される少なくとも1カ所について判定を行う、方法:
[2]豚のウイルス抵抗性の判別方法であって、対象となる豚のゲノムが、下記(A)および(B)の少なくとも一つを満たす場合に、ウイルス抵抗性であると判別する、方法:
(A) 第13染色体の1に定義した位置45がG(配列番号:1のヌクレオチド配列での位置1001がG)であり、
(B) 第13染色体の1に定義した位置102がC(配列番号:3のヌクレオチド配列での位置1001がG)である。
[3]2に記載の方法であって、
対象となる豚のゲノムが、(A)および(B)の双方を満たす場合に、ウイルス抵抗性豚であると判別する、方法。
[4]ウイルスが、豚サーコウイルス2型である、1~3のいずれか1項に記載の判別方法。
[5]1~3のいずれか1項に記載の判別方法に使用するための、配列番号:1に記載の塩基配列の一部に相補的であり、かつ15塩基以上の長さを有する、プローブまたはプライマー。
[6]1~3のいずれか1項に記載の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜することを含む、ウイルス抵抗性の豚の育種方法。
[7]1~3のいずれか1項に記載の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の育種方法。
[8]1~3のいずれか1項に記載の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の生産方法。
[9]第13染色体のALGA0102661(配列番号:3のヌクレオチド配列での位置1001がA)であるウイルス感受性の遺伝子型を有する個体(感受性ホモ、またはヘテロ)の割合が35%以下である、豚集団。
本発明は、以下を提供する。
[1]豚のウイルス抵抗性の判別方法であって、対象となる豚のゲノムが、下記(A)および(B)の少なくとも一つを満たす場合に、ウイルス抵抗性であると判別する、方法:
(A) 第13染色体のASGA0096716(配列番号:1のヌクレオチド配列での位置1001)がGであり、
(B)第13染色体のALGA0102661(配列番号:3 のヌクレオチド配列での位置1001)がGである。あるいは、第13染色体のALGA0102661(配列番号:2 のヌクレオチド配列の位置1001をCまたはTとした配列)がCである。あるいは、第13染色体のALGA0102661(配列番号:2のヌクレオチド配列での位置1001)がGである。
[2]1に記載の方法であって、
対象となる豚のゲノムが、(A)および(B)の双方を満たす場合に、ウイルス抵抗性豚であると判別する、方法。
[3]ウイルスが、豚サーコウイルス2型である、1または2に記載の判別方法。
[4]1または2に記載の判別方法に使用するための、配列番号:1に記載の塩基配列の一部に相補的であり、かつ15塩基以上の長さを有する、プローブまたはプライマー。
[5]1または2に記載の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜することを含む、ウイルス抵抗性の豚の育種方法。
[6]1または2に記載の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の育種方法。
[7]1または2に記載の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の生産方法。
[8]第13染色体のALGA0102661(配列番号:3 のヌクレオチド配列での位置1001)がAであるウイルス感受性の遺伝子型を有する個体(感受性ホモ、またはヘテロ)の割合が35%以下である、豚集団。あるいは、第13染色体のALGA0102661(配列番号:2 のヌクレオチド配列での位置1001をCまたはTとした配列)がTであるウイルス感受性の遺伝子型を有する個体(感受性ホモ、またはヘテロ)の割合が35%以下である、豚集団。あるいは、第13染色体のALGA0102661(配列番号:2のヌクレオチド配列での位置1001)がAであるウイルス感受性の遺伝子型を有する個体(感受性ホモ、またはヘテロ)の割合が35%以下である、豚集団。
本発明により、家畜育種分野において、PCV2を中心としたウイルスに対する抵抗性を向上させた豚集団が作出できる。
また、本発明のマーカーを、豚の品種造成における指標の中に組み込むことで、肉質や肉量、成長性等の他の有用形質に加えて、抗病性の観点からも改良を行うことができる。
さらに、豚のウイルス性疾患に対する抵抗性を向上させることで、細菌等の二次感染に由来する症状の重篤化、及びそれに伴う抗菌剤の多用を抑制することが期待できる。
ハプロタイプの推移 母豚のSSC13の違いによる分娩成績 第13染色体のASGA0096716、およびALGA0102661付近の配列。SNP(図中の[A/G])付近の、上流・下流それぞれ1000bpずつの配列を示した。配列は、豚の最新ゲノム配列であるSscrofa11.1に基づく。 第13染色体上の基礎出願マーカー2つを含むハプロタイプブロック。PCVAD抵抗性と最も相関の強いそれらのマーカーと比較的強く連鎖するさらに5つのマーカーを含んでいる。隣接するマーカーを含めておよそ413kbの領域を占めている。本領域について、基礎出願マーカーと強く連鎖する多型の分布を検証した。 次世代シーケンサーによるPCVAD抵抗性に関わる部分の抵抗型・感受型のハプロタイプブロックの多様性解析。PCVAD抵抗性領域を検出した集団(岐阜畜研デュロック種集団)では413kbのハプロタイプブロック中の54kbの領域でPCVADと最も強い相関を示す基礎出願中のマーカーと連鎖する多型が集中しており、その範囲外では抵抗型・感受型の染色体で基礎出願中のマーカーと共通な挙動を示す多型は検出されなかった。他農場のデュロック種でも、当該54kbの領域の多型の多くは基礎出願中のマーカーと同様の挙動を示した(図6参照)。 集団AでALGA0102661(基礎出願マーカー)と連鎖していた多型の集団Bでの連鎖状況。一部検出できなかった多型が存在するが、基礎出願マーカーで抵抗型・感受型、あるいはヘテロ型と判定された個体について、基礎出願マーカーと同様の挙動を示すマーカーが90個あった(黒で示したものを除く)。
数値範囲を「m~n」で表すときは、特に記載した場合を除き、その範囲は両端mおよびnを含む。
[判別方法]
本発明は、ウイルス抵抗性の高い豚(ウイルス抵抗性の豚ということもある。)を、豚のゲノム上に存在する多型を検出することにより、判別する方法を提供する。ウイルス抵抗性は、直接的または間接的な形質を含む。直接的な免疫形質は、ウイルスの感染のしにくさ、血中ウイルス量の少なさ、発症のしにくさ、発症した場合の重症化のしにくさを含む。間接的な形質は、サイトカイン産生能、サイトカイン受容体遺伝子の産生能等、豚のウイルス抵抗性を直接的には裏付けないが、その形質とウイルス抵抗性との関係が推認できる形質を指す。
本発明でウイルスというときは、特に記載した場合を除き、豚に感染可能な病原性のウイルスを指し、これには豚サーコウイルス、豚パルボウイルス、オーエスキー病ウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、豚痘ウイルス等のDNAウイルスと、脳心筋炎ウイルス、豚水泡疹ウイルス、E型肝炎ウイルス、CSF(豚コレラ)ウイルス、日本脳炎ウイルス、豚インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス、水疱性口炎ウイルス、ニパウイルス等のRNAウイルスが含まれる。
本発明の判定方法は、豚サーコウイルス抵抗性であるか否か、特にブタサーコウイルス2型(PCV2)抵抗性であるか否かを判定するために好適に用いることができる。豚サーコウイルスは、サーコウイルス科サーコウイルス属に属するDNAウイルスであり、2型(PCV2)は離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の原因とされている。PCV2は、エンベロープを保有しない。PMSVは発育不良、削痩、呼吸困難、下痢などの症状を示す。治療法は確立されていない。
本発明に関し、豚というときは、品種は特に限定されない。本発明の判別方法は、デュロック種、大ヨークシャー種、ランドレース種、バークシャー種、ハンプシャー種、これらの交配種の豚に対して、適用することができる。交配種には、普通豚(三元交配豚)が含まれる。本発明の判別方法は、デュロック種の豚の判別のために特に好適に用いることができる。
判別は、対象豚(本発明の判別方法に供する豚)がウイルス抵抗性の豚であると技術的に意義のある確からしさで判別すること、対象豚が非ウイルス抵抗性の豚(ウイルス抵抗性のを有さない豚)ではないと技術的に意義のある確からしさで判別することを含む。判別は、識別、鑑定、鑑別、判定、検査等と表現されることもある。判別の確からしさは、用いる多型の種類、数、組合せ等を検討することにより、高めることができると考えられる。
多型とは、同じ生物種の集団のうちに遺伝子型の異なる個体が存在すること、またはその異なる遺伝子・DNA配列のことをいう。多型には一塩基多型(SNP)、Insertion/Deletion(挿入/欠失)多型、制限断片長多型、タンデム反復数多型(variable number of tandem repeats:VNTR)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、および単純配列反復が含まれる。
一塩基多型(SNP)は1個のヌクレオチドからなる多型部位において、その1個のヌクレオチドが別のもの(ヌクレオチド、またはジ~テトラヌクレオチド、オリゴもしくはポリヌクレオチド)で置換されて起こる。一塩基多型は、参照対立遺伝子と比較して1個のヌクレオチドが欠失するか、または1個のヌクレオチドが挿入されるかによっても起こる。なお多型を表す場合に、関与するヌクレオチドの種類を便宜上そのヌクレオチドを構成する塩基の種類(A、G、TまたはC)を用いて示すことがある。
本発明の判別方法においては、豚ゲノム中に存在するSNPをマーカーとして利用する。より具体的には、下表の1~106からなる群より選択される少なくとも1カ所、例えば1~9カ所、又は2~19カ所、又は4~29カ所について、下表にしたがって抵抗性・感受性を判別する:
他の好ましい態様においては、下記(A)および(B)の少なくとも一つを満たす場合に、ウイルス抵抗性であると判別する:
(A) 第13染色体のASGA0096716、すなわち上表で定義した位置45がG(配列番号:1のヌクレオチド配列での位置1001がG)であり、
(B) 第13染色体のALGA0102661、すなわち上表で定義した位置102がC(配列番号:3のヌクレオチド配列での位置1001がG)である。
特に好ましい態様においては、以下の2つの方法を同時に行い、PCVAD抵抗性・感受性に関わることが想定されるゲノム領域の遺伝型を判別することができる。
[方法1:第13染色体の191800420番目(ALGA0102661)の判別]
判定対象となる豚個体のゲノムDNAをテンプレートとして、次に示すプライマーを用いてPCRを行う。
AMPL3962989-F: CATAAGTGAGCCCAGCCAAGATC(SEQ ID NO: 6)
AMPL3962989-R: GGATTCATGGATCAAGTCTGTGACTG(SEQ ID NO: 7)
本PCRにより、豚ゲノムリファレンス配列(Sscrofa11.1 第13染色体191800365~191800726)で次の配列Aに該当するアンプリコンが得られる。
[配列A]
CATAAGTGAGCCCAGCCAAGATCAGCTGAGCTTGGCCTAATTCAGCAGAACCACTTAGCCAGTCCTAAAATTATCTACAAAAATAAGTGTTAATTGTTACACATCACTGCAGTCTTGTGGTTGTTGATTATACATATTGGTATGTCATAAATAACTGATGCAAACTTATCTCTAACTACTAATTCTGGACTTGCATATGAACATGCTCCAAAACAGACAGCTAGGCTCAAGTGCATGTCTACATAAGACTATTCAATGGATAATTGTCAATTTTCACAGATTTATCTCACTTGCTGTATCTATTCTACTTCCTTGCCTGCTTTGTCAAGCTCCATTCAGTCACAGACTTGATCCATGAATCC(SEQ ID NO: 8)
前項PCRによるアンプリコンを、AMPL3962989-Rプライマーを用いてサンガー法DNAシーケンサーを用いてシーケンシングを行う。シーケンシング結果の中で、配列Aの56番目がC(相補鎖の場合G)のときに抵抗型、T(相補鎖の場合A)のときに感受型と判定される。
[方法2:第13染色体の191771583~191771761番目の8個のSNPの判別]
判定対象となる豚個体のゲノムDNAをテンプレートとして、次に示すプライマーを用いてPCRを行う。
SSC13-73404-4F: CTGCATCTATTAATCCCAAGCACC(SEQ ID NO: 9)
SSC13-73404-4R: AGTGATAGAGATAGGAGAATGAGTAGA(SEQ ID NO: 10)
本PCRにより、豚ゲノムリファレンス配列(Sscrofa11.1 第13染色体191771342~191772032)で次の配列Bに該当するアンプリコンが得られる。
[配列B]
CTGCATCTATTAATCCCAAGCACCCCATCCATCCCACTCCCTCCCCACCCCCGGCAACCATAAGTCTATTCTCCAAGTCCATGAACATAGGCAAGACATTCTCTGACATCAACCTTACAAATATTTTCTCAGGTTGGTCTCCCAAAGCAACAGAAATAAAAGCAAAAATAAACCAATGGAAACTAATCAAACTGACAATCTTTTGCACAGCAATGGAAATCATAAAGAAAACAAAAAGACAACCTACAGAATGGGAGAAGATAGTTTCAAATGATACAACAGACAAGGGCTTAATCTCTAAAATATACAAGCAACTTATACAACTCAACAGCAAAAAAGCCAACAATCCAATGGAAAAATGGGCAAAAGACGTAAACAGACATTTCTCCAAGGAAGATGTACAGATGGCCAACAAGCACGTGAAAAAATGCCCAACATCACTGATTATTAGAGAAATGCAAATCAAAACTACCACAAGATACTACCTCACACCAGTCAGAATGGCCATCATTAATAAGTCCACAAATAAAAATGCTGGAGGGGGTGTGGAGAAAAGGGAACTCCCCTGCACTGTTGGTGGGAATGTAAGCTGGTACAACCACTATGGAGAACAGTATGGAGGTACCTTAGAAAACTATACAGAGATTAATATTTAGAATGGAATTCTACTCATTCTCCTATCTCTATCACT(SEQ ID NO: 11)
前項PCRによるアンプリコンを、SSC13-73404-4Fプライマーを用いてサンガー法DNAシーケンサーを用いてシーケンシングを行う。シーケンシング結果の中で、配列Bの以下に示す塩基を観察することで、抵抗型・感受型の判定を行うことができる。
豚の第13染色体のASGA0096716付近の上流・下流それぞれ1000bpずつのヌクレオチド配列を、配列表に配列番号: 1として示した。また、豚の第13染色体のALGA0102661付近の上流・下流それぞれ1000bpずつのヌクレオチド配列を、配列表に配列番号: 3として示した。配列番号 :1および: 3の配列は、豚の最新ゲノム配列であるSscrofa11.1(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/assembly/GCF 000003025.6/)に基づいて作成した。配列番号:3の配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖の配列を、配列番号:4(1001番目はtまたはc)として示した。配列番号:2の配列は、配列番号:4の配列において、1001番目をaまたはgとしたものである。
[多型マーカー、およびそれを検出するためのプローブ]
また本発明は、上記(A)および(B)のいずれかに記載の多型マーカー、およびそのような多型マーカーを含む、ウイルス抵抗性の豚の判別に利用するためのポリヌクレオチド、並びにそのようなポリヌクレオチドの増幅物、そのようなポリヌクレオチドを含む組成物(例えば、そのようなポリヌクレオチドと緩衝剤とを含む。)、キット、試薬、または製品等を提供する。
本発明により、上記上記(A)および(B)のいずれかに記載の多型マーカーを含むポリヌクレオチドが提供される。このようなポリヌクレオチドは、豚のウイルス抵抗性を判別するために利用される。
ポリヌクレオチドの長さは特に制限されないが、例えば4000塩基長以下であり、3000塩基長以下、2000塩基長以下、1000塩基長以下、500塩基長以下、300塩基長以下、100塩基長以下、50塩基長以下、30または20塩基長以下であってもよい。
本発明はまた、ウイルス抵抗性の豚を判別する方法に用いるための識別もしくは判別用試薬を提供する。試薬の好ましい態様としては、以下の(a)または(b)のいずれかの物質を有効成分とする、ウイルス抵抗性の豚判別用検査薬が挙げられる。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列もしくはその相補鎖にストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであって、該塩基配列中に存在する前述の(A)および(B)のいずれかの多型部位を含む領域を増幅するためのPCRプライマー用オリゴヌクレオチド。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列またはその相補鎖にストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであって、該塩基配列中に存在する前述の(A)および(B)のいずれかの多型部位を含むDNA領域とハイブリダイズすることを特徴とするプローブ用オリゴヌクレオチド。
ここで「ハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら, Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版 1989に記載の条件)において、目的以外のDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、該ポリヌクレオチドは、検出する上記塩基配列に対し完全に相補的である必要はない。
ハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSCおよび0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
このようなポリヌクレオチドは、本発明の判別方法におけるプローブやプライマーとして利用することができる。ポリヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常15 塩基長~100 塩基長であり、好ましくは17 塩基長~30 塩基長である。プライマーは、本発明の多型マーカーを含むDNAを増幅しうるものであれば、特に制限されない。またポリヌクレオチドをプローブとして使用する場合、プローブは、本発明の多型マーカーを含むDNA領域に特異的にハイブリダイズするものであれば、特に制限されない。プローブは、合成ポリヌクレオチドであってもよく、通常少なくとも15 塩基長以上を有する。プライマーおよびプローブは、従来のプライマーの設計方法やプローブの設計方法を参考に、適宜設計できる。プライマーの設計方法のためには、ソフトウェアが市販されており、本発明のためにも使用できる。
プライマーまたはプローブとして用いるポリヌクレオチドは、例えば市販のポリヌクレオチド合成機により作製することができる。プローブは、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製することもできる。
本発明のポリヌクレオチドをプローブとして用いる場合は、適宜標識して用いることが好ましい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、ポリヌクレオチドの5'端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、およびクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーポリヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)を例示することができる。
上記の識別もしくは判別用試薬(本発明の検査薬)においては、有効成分であるポリヌクレオチド以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、タンパク質安定剤(BSAやゼラチンなど)、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
また、本発明の試薬を少なくとも含有するウイルス抵抗性の豚判別用キットもまた、本発明に含まれる。該キットには、上記(a)または(b)のいずれかに記載の物質の他に、例えば、本発明の方法に用いるための各種試薬類、反応液、対照標品、反応容器、操作器具等を含めることができる。
[育種方法]
以上のように、本発明により、ウイルス抵抗性の豚の判別方法が提供される。したがって、本発明により、目的の形質(ウイルス抵抗性)を有する豚を予測することが幼少期の段階で可能となるため、効率的に所望の形質を有する豚集団または系統を造成するのに役立つ。よって本発明は、本発明の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜することを含む、ウイルス抵抗性の豚の育種方法を提供する。
所定の形質の豚を選択し、育成、または繁殖する豚の育種方法として、例えば、ある系統に、本発明により選抜されたウイルス抵抗性の豚またはその後代を、ある好ましい形質(例えば産肉能力が高いこと、強健性であること、繁殖能力が高いこと、等)を有する豚との交配に用いることにより、ある形質を有し、かつウイルス抵抗性の豚の系統が造成可能である。よって本発明は、本発明の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の育種方法、並びに本発明の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の生産方法を提供する。なお、本発明の判別方法により、ウイルス抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚を交配に用いることを含む、ウイルス抵抗性の豚の生産方法により生産された豚を繁殖させ、後代を得ることもまた、後代について本発明の判別方法によりウイルス抵抗性の豚を選抜する/しないに関わらず、本発明により提供される多型マーカーと関連したウイルス抵抗性の後代が得られる限り、本発明の生産方法の範疇に含まれる。
[豚集団]
本発明により、第13染色体のALGA0102661(配列番号:1のヌクレオチド配列での位置1001)がAであるウイルス感受性の遺伝子型を有する個体の割合が少ない豚集団が提供される。ウイルス感受性の遺伝子型を有する個体の割合が少ないとは、感受性ホモ、またはヘテロの割合が35%以下であることをいう。この割合は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。本発明で豚に関し、集団というときは、特に記載した場合を除き、他の個体、集団とは区別可能なように飼育されている少なくとも10頭以上の群をいう。このような豚集団の好ましい例は、デュロック種の集団であり得る。
[多型効果の検証、その他]
本願によって開示される多型が目的の効果を有するものであることは、種々の方法により検証できる。例えば、遺伝型が異なる細胞を血液から単離し、ウイルスに対する応答を見ることにより、検証できる。また、ウイルス抵抗性の豚集団および基礎集団以外の集団を用いた、免疫能や疾病関連形質(例えば、肺炎罹患率等)と多型との関連を調査することにより、検証することができる。このような検証手段は当業者にはよく知られており、当業者であれば、適宜実験を計画し、実施することができる。
また本発明は、本発明により育種されたウイルス抵抗性の豚、または本発明の方法により生産されたウイルス抵抗性の豚から得られる、繁殖材料、並びに肉および肉の加工品(例えば、ハム、ソーセージ、ベーコン、焼豚等)を提供する。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[PCV2感染の蔓延時に多発した斃死と特定の一塩基多型との関連性]
肉豚生産において止め雄として使われ、遺伝的に大きな影響を与えるデュロック種純粋種を用いて、PCV2(特に毒性の強いPCV2b)感染の蔓延時に多発した斃死と、特定の一塩基多型(SNP)との関連性について明らかにした。具体的には、PCV2感染に起因する斃死が多発している集団において、性、産次、年月を母数効果として閾値形質モデルで斃死の有無に関しての育種価を推定した。各豚個体のSNPの遺伝型については、イルミナ社Porcine SNP60 BeadChipバージョン2を用いて決定した。SNP遺伝型と斃死に関する育種価との相関を用いて検証したところ、第13染色体上に、斃死に関する育種価と強い相関を示すSNP(表1)を検出した。
本多型は、これまでに報告されているPCV2ウイルス量との関連性が指摘されているSNPの近傍には存在しない(Engle et al., 10th World Congress of Genetics Applied to Livestock Production)。
[ハプロタイプの推移]
上記のPCV2感染による斃死多発集団において、抵抗型・感染型それぞれを示すSNP遺伝型(ALGA0102661で代表)の分布を年度毎に検証したところ、PCV2による斃死多発後に本多型の感受性遺伝型の遺伝子頻度が著しく低くなっていることが分かった(図1)。
[出生時生存割合、死産数]
抵抗性・感受性の遺伝型を表すSNP(ALGA0102661で代表)の母豚の繁殖能力に与える影響を検証したところ、感受性遺伝型を有する母豚からの産子の出生時生存率が有意に低下し、また死産数が有意に増加すること(図2)も明らかとなっている。
[ALGA0102661の遺伝型分布]
PCV2感染による斃死が多発し、抵抗性・感受性の遺伝型を表すSNPの斃死への影響を検出した集団とは異なるデュロック種集団においては、該当のSNP(ALGA0102661で代表)について感受性遺伝型が高い頻度で残存していた(下表)。
したがって、当該SNPは、ウイルスに対する抵抗性を指標とした改良を可能とする遺伝子マーカーとしての活用が可能である。
[第13染色体の191,623,054~192,036,342の範囲の多型解析]
上述の実験でPCV2に対する抵抗性を示すSNPマーカー2個(以下、基礎出願マーカーということがある。)を提示しているが、イルミナ社のPorcine SNP60 BeadChip v2(61,572個のSNPを搭載、https://jp.illumina.com/products/by-type/microarray-kits/porcine-snp60.html)(Ramos AM et al. PLoS ONE 4(8): e6524)で検索したところ、当該マーカーを含めて7個のマーカーで強く連鎖するハプロタイプブロックを形成しており、隣接するマーカーまで広げると約413kbのゲノム領域がPCV2の抵抗性と関連している可能性が示されていた(図4)。
1) 第13染色体でPCVADによる斃死との関連性を示すゲノム領域の検出を行った集団と血縁のあるデュロック種集団(アイリスナガラ、ボーノブラウン)(集団A)から6個体(抵抗型ホモ3頭、ヘテロ型3頭)と、それとは直接の血縁のないデュロック種集団で基礎出願マーカーが抵抗型(2頭)、ヘテロ型(3頭)、感受型(1頭)となっている個体(集団B)で、多型解析を行った。具体的には、第13染色体の191,623,054~192,036,342の範囲にPCRプライマー(ABI AmpliSeq)を設計し、増幅産物を次世代シーケンサー(NGS)(ionPGM)で解読、GATKソフトウェアにて多型解析を行った。集団A及び集団B合わせて12頭で、GATKソフトウェアでQV≧1000となる多型を抽出した。
2) 集団Aにおいて基礎出願マーカーと連鎖している多型を選択し、6頭すべてで選択されたマーカーを抽出したところ、57kbの範囲(191,745,857~191,802,573)で105個の多型が検出された(基礎出願マーカーの内ALGA0102661を含む)(図5)。特許出願マーカーASGA0096716はNGSでの解読ができなかった。
3) 集団Bにおいて、ジェノタイピングに成功している多型(GATKソフトウェアでGQ>20、ホモ型であれば7リード以上、ヘテロ型であれば少ない方のリードが2リード以上)について、PCR増幅するプライマーを設計しこれらのマーカーの多型を見たところ、90個の多型が基礎出願マーカーと連鎖していた(図6)。
4) さらに、57kbのゲノム領域で検出される唯一のORF(Ensembl Gene: ENSSSCG00000048685.1のORF/191,771,422~191,771,997)周辺について、サンガー法シーケンサーでPCR産物を解読することにより多型解析を行った。191,771,394~191,771,989で15個の多型を検出した(ORF内には13個)。191,771,888の多型以外(14個)は集団A・集団Bともに基礎出願マーカーと連鎖していた(ORF内に12個)(下表)。
5) 合計すると,基礎出願マーカーを除いて104個の新たなマーカーを検出した。基礎出願マーカー2個と合わせて106個のマーカーの内、少なくとも1つを使用することによりPCV2等のウイルスに対する抵抗性を示す豚を選抜することができ、抵抗型を検出する方法をより確実に実施することができる。
本発明は、家畜育種分野において、PCV2を中心としたウイルスに対する抵抗性を向上させた豚集団の作出に貢献するものと考えられる。豚の品種造成における指標の中に組み込むことで、肉質や肉量、成長性等の他の有用形質に加えて、ウイルス抵抗性の観点からも改良を行うことを容易にするものである。また、豚のウイルス性疾患に対する抵抗性を向上させることで、細菌等の二次感染に由来する症状の重篤化、及びそれに伴う抗菌剤の多用を抑制することにつながり、家畜衛生の観点でも貢献が期待されるところである。
SEQ ID NO: 1 第13染色体のASGA0096716付近の配列
SEQ ID NO: 2
SEQ ID NO: 3 第13染色体のALGA0102661付近の配列
SEQ ID NO: 4 SEQ ID NO: 3の相補鎖の配列
SEQ ID NO: 5 >13 dna:chromosome chromosome:Sscrofa11.1:13:191745001:191803000:1
SEQ ID NO: 6 PCR primer, AMPL3962989-F
SEQ ID NO: 7 PCR primer, AMPL3962989-R
SEQ ID NO: 8 配列A
SEQ ID NO: 9 PCR primer, SSC13-73404-4F
SEQ ID NO: 10 PCR primer, SSC13-73404-4R
SEQ ID NO: 11 配列B

Claims (7)

  1. 豚のウイルス抵抗性の判別方法であって、ウイルスが豚サーコウイルス2型であり、対象となる豚のゲノムの、下表の(1)~(106)からなる群より選択される少なくとも1カ所について判定を行い、抵抗型の欄に記載された塩基又は塩基配列である場合に、ウイルス抵抗性であると判別する、方法:
  2. 豚のウイルス抵抗性の判別方法であって、ウイルスが豚サーコウイルス2型であり、対象となる豚のゲノムが、下記(A)および(B)の少なくとも一つを満たす場合に、ウイルス抵抗性であると判別する、方法:
    (A) 請求項1に定義した位置(45)がGであり、
    (B) 請求項1に定義した位置(102)がCである。
  3. 請求項2に記載の方法であって、
    対象となる豚のゲノムが、(A)および(B)の双方を満たす場合に、ウイルス抵抗性であると判別する、方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法に使用するための、配列番号6、7、9、及び10から選択されるいずれかの塩基配列からなる、プライマー
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により、豚サーコウイルス2型抵抗性の豚を選抜することを含む、豚サーコウイルス2型抵抗性の豚の育種方法。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により、豚サーコウイルス2型抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、豚サーコウイルス2型抵抗性の豚の育種方法。
  7. 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により、豚サーコウイルス2型抵抗性の豚を選抜し、選抜した豚またはその後代を交配に用いることを含む、豚サーコウイルス2型抵抗性の豚の生産方法。
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