以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の説明は、ここで開示される技術をかかる説明に限定することを意図したものではない。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極シートと負極シートの間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。また、以下の説明では、第1セパレータ71に形成された接着層を第1接着層81、第2セパレータ72に形成された接着層を第2接着層82と呼称するものとする。
<電池の製造方法>
先ず、本実施形態に係る電池の製造方法について説明する。なお、ここで開示される電池の製造方法では、電池の製造に際してセパレータに接着層を形成してもよいし、予め接着層が形成されたセパレータを用いることもできるが、以下では、前者を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態に係る電池の製造方法を示すフロー図である。図1に示すように、本実施形態に係る電池の製造方法は、巻芯210に、第1セパレータ71と第2セパレータ72とを当接させ、巻芯210に第1セパレータ71と第2セパレータ72とを巻き付ける、第1巻き付け工程(ステップS1);第2セパレータ72の表面に第2接着層82を形成する、第2接着層形成工程(ステップS2);第1セパレータ71の表面に第1接着層81を形成する、第1接着層形成工程(ステップS3);および、巻芯210に、第1セパレータ71および第2セパレータ72と共に、正極シート22と負極シート24とを巻き付ける、第2巻き付け工程(ステップS4);を包含する。また、本実施形態では、さらに第2巻き付け工程(ステップS4)の後に、巻回された第1セパレータ71、正極シート22、第2セパレータ72、および負極シート24を押圧する押圧工程(ステップS5)を包含する。なお、ここで開示される電池の製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよいし、その工程が必須なものとして説明されていなければ適宜削除することも可能である。また、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、工程の順序を入れ替えることもできる。以下、本実施形態に係る電池の製造方法について、電池の製造方法を具現化する電極体製造装置200を交えて説明する。
図2は、本実施形態に係る電極体製造装置200の構成を示す模式図である。電極体製造装置200は、帯状の第1セパレータ71と、帯状の正極シート22と、帯状の第2セパレータ72と、帯状の負極シート24とが巻回された巻回電極体であって、正極シート22と第1セパレータ71とが第1接着層81によって接着され、正極シート22と第2セパレータ72とが第2接着層82によって接着された巻回電極体20を製造する装置である。図2に示すように、電極体製造装置200は、巻芯210と、複数のローラ220と、塗布装置230とを備えている。また、電極体製造装置200は、図示されないカッターと、押え治具と、制御装置とを備えている。ここで、カッターは、第1セパレータ71および第2セパレータ72を切断するカッターである。また、押え治具は、第1セパレータ71および第2セパレータ72を巻芯210に押し付ける治具である。電極体製造装置200の各構成要素は、それぞれ所要のアクチュエータを適宜に有している。制御装置は、予め設定されたプログラムに沿って所定のタイミングで所要の動作が実行されるように、電極体製造装置200の各構成要素を制御するように構成されている。制御装置は、例えば、マイクロコントローラのようなコンピュータによって具現化され得る。
正極シート22と負極シート24と第1セパレータ71と第2セパレータ72とは、それぞれリール(図示省略)などに巻かれた状態で用意されている。正極シート22と負極シート24と第1セパレータ71と第2セパレータ72とは、それぞれ、予め定められた搬送経路k1~k4に沿って搬送される。搬送経路k1は、図示されないリールから巻芯210に向けて正極シート22が送り出される経路である。搬送経路k2は、図示されないリールから巻芯210に向けて負極シート24が送り出される経路である。搬送経路k3は、図示されないリールから巻芯210に向けて第1セパレータ71が送り出される経路である。搬送経路k4は、図示されないリールから巻芯210に向けて第2セパレータ72が送り出される経路である。搬送経路k1~k4には、送り出される正極シート22、負極シート24、第1セパレータ71および第2セパレータ72の緩みを取り除くためのダンサロール機構や、テンションを調整するためのテンションナーなどがそれぞれ適宜に配置されるとよい。
複数のローラ220は、正極シート22、負極シート24、第1セパレータ71および第2セパレータ72の搬送経路k1~k4にそれぞれ配置されている。複数のローラ220は、搬送装置の一例である。複数のローラ220は、各搬送経路k1~k4を定めるために所定位置に配置されている。正極シート22、負極シート24、第1セパレータ71および第2セパレータ72は、それぞれ、複数のローラ220によって搬送される。
巻芯210は、側周面に巻き付けられる第1セパレータ71および第2セパレータ72を保持する機能を有する。巻芯210はここでは略円筒状の部材であるが、扁平な形状に巻回する場合には、扁平な巻芯が用いられてもよい。巻芯210としては、ここでは径方向に沿って分割された巻芯を用いているが、分割されていない巻芯を用いてもよいし、径が可変である巻芯を用いてもよい。巻芯210は、第1スリットSaおよび第2スリットSbを有している。第1スリットSaおよび第2スリットSbは、ここでは巻芯210の回転方向に沿って180°離れた位置に配置されている。第1スリットSaに第1セパレータ71の先端を挟み込み、第2スリットSbに第2セパレータ72の先端を挟み込むことによって、各セパレータを巻芯210に固定することができる。
また、巻芯210は、さらに吸引孔や溝等を有していてもよい。吸引孔は、側周面に巻き付けられる第1セパレータ71や第2セパレータ72を吸着させるための孔である。吸引孔の平面視における形状は、円形状であってもよいし、方形状であってもよい。あるいは、吸引孔は、スリット状であってもよい。吸引孔は、典型的には、巻芯210の内部に形成され吸引孔に通じた流路である吸引流路を備えている。吸引経路は、吸引孔に負圧を形成するための流路である。吸引経路は、例えば、外部に設置される真空ラインに適宜に接続されて負圧が形成されるように構成されているとよい。そして、溝は、第1セパレータ71および第2セパレータ72が切断される際に、カッターの刃が降ろされる受け部として機能し得る。これにより、巻芯210とカッターの刃が接触することにより、巻芯またはカッターが損傷することを抑制する。
塗布装置230は、第1セパレータ71および第2セパレータ72の表面に、搬送方向に沿ってバインダー液(接着剤)を付与する装置である。塗布装置230は、バインダー液を第1セパレータ71および第2セパレータ72の所望の領域に所望の量だけ塗布することができるように構成されている。バインダー液は、例えば後述するような接着層バインダーと、溶媒とを含む。バインダー液の溶媒としては、環境負荷を軽減するとの観点において、いわゆる水系の溶媒が好適に用いられる。この場合、水または水を主体とする混合溶媒を用いることができる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。また、バインダー液の溶媒は、いわゆる水系の溶媒に限定されず、いわゆる有機溶剤系であってもよい。有機溶剤系溶媒としては、例えばN-メチルピロリドンなどが挙げられる。例えばバインダー液の好適例としては、水を溶媒とし、バインダーとしてのアクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸エステル樹脂)を混ぜるとよい。なお、バインダー液は、ここに開示される技術の効果を妨げない限り、正極シート22やセパレータに対する濡れ性を改善する目的などで、公知の増粘剤や界面活性剤などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。
塗布装置230としては、例えばインクジェット印刷、グラビアロールコーター、スプレーコーター等の各種の凹版印刷機、スリットコーター、コンマコーター、キャップコーター(Capillary Coater:CAPコーター)等のダイコーター、リップコーター、カレンダー機等の各種の塗布装置を使用することができる。
図2に示すように、本実施形態では、巻芯210の巻回中心Oを通過し鉛直方向に延びる鉛直直線l1に対する一方側に、第1セパレータ71における正極シート22の対向面上に第1接着層81を形成する形成エリア(図2のArea1を参照)が設けられており、鉛直直線l1に対する他方側に、第2セパレータ72における正極シート22の対向面上に第2接着層82を形成する形成エリア(図2のArea2を参照)が設けられている。このように、接着層形成領域を別々に設けることによって、塗布装置のスペースを小さくすることができるため好ましい。また、Area1において正極シート22は第1セパレータ71の上方に配置されており、Area2において負極シート24は第2セパレータ72の下方に配置されている。
特に限定されるものではないが、巻芯210の巻回中心Oを通過し水平方向に延びる直線l2に対する第1セパレータ71における接着層形成領域(換言すると、搬送経路k3)のなす角度θk3は、第1セパレータ71の幅方向における塗りムラ等を改善し、より均一に接着層を形成するこという観点から、好ましくは-30°~+30°であり、より好ましくは-15°~+15°である。また、同様の観点から、巻芯210の巻回中心Oを通過し水平方向に延びる直線l2に対する、第2セパレータ72における接着層形成領域(換言すると、搬送経路k4)のなす角度θk4は、好ましくは-30°~+30°であり、より好ましくは-15°~+15°である。なお、例えば本実施形態では、θk3を-30°程度、θk4を+30°程度としている。
図3A~図3Dは、本実施形態に係る巻芯210による部材の巻き取り方法について説明するための説明図である。ここで、図3A~図3D中の矢印は巻芯210の回転方向を示しているが、巻芯210の回転方向をかかる方向に限定することを意図したものではない。また、図中の星印は、巻芯210の回転態様を分かり易くするために付与している。そして、図中では、見易くするために正極タブ22tおよび負極タブ24tの記載を省略している。
先ず、図3Aに示すように、第1セパレータ71の先端(換言すると、第1セパレータの巻き始め端部71a)を第1スリットSaに挟み込み、第2セパレータ72の先端(換言すると、第2セパレータの巻き始め端部72a)を第2スリットSbに挟み込む。なお、本実施形態では、第1スリットSaおよび第2スリットSbは静電チャックとしての機能を有しており、これによって第1セパレータ71の先端および第2セパレータ72の先端を巻芯210に固定している。かかる構成によると、第1セパレータ71の先端および第2セパレータ72の先端に挟持痕等が生じることを防止することができるため、好ましい。
続いて、図3Bに示すように、巻芯210を矢印方向に略半周回転させることによって、巻芯210に第1セパレータ71と第2セパレータ72とを当接させ、巻芯210に第1セパレータ71と第2セパレータ72とを巻き付ける(第1巻き付け工程)。図3Bに示すように、本実施形態では、第1セパレータ71を、第1スリットSaの側壁および巻芯210の略半周分の側面において巻芯210に当接させている(図3Bの第1当接領域A1を参照)。また、第2セパレータ72を、第2スリットSbの側壁および巻芯210の略半周分の側面において巻芯210に当接させている(図3Bの第2当接領域A2を参照)。
次に、図3Cに示すように、塗布装置230による第2セパレータ72の表面への第2接着層82の形成を開始する(第2接着層形成工程)。また、巻芯210に巻き取られた第1セパレータ71と供給される第2セパレータ72との間に負極シート24を挟み込む。続いて、図3Dに示すように、巻芯210を略半周回転させた後、塗布装置230による第1セパレータ71の表面への第1接着層81の形成を開始する(第1接着層形成工程)。また、巻芯210に巻き取られた第2セパレータ72と供給される第1セパレータ71との間に正極シート22を挟み込む。そして、巻芯210を矢印方向に回転させることによって、巻芯210に、第1セパレータ71および第2セパレータ72と共に、正極シート22と負極シート24とを巻き付ける(第2巻き付け工程)。そして、各部材を、予め定められた巻き取り数に至るまで巻芯210に巻き取る。以上のようにして、正極シート22と第1セパレータ71とが第1接着層81によって接着され、正極シート22と第2セパレータ72とが第2接着層82によって接着された巻回体20aを得ることができる。
図3Cに示すように、本実施形態では、第1セパレータ71および第2セパレータ72を巻芯210に略半周分だけ巻き付けたタイミングで負極シート24を挟み込んでいるが、これに限定されない。例えば、他の実施形態では、巻芯210に付着する接着層を最低限防止するという観点から、第1セパレータ71を第1スリットSaの側壁および巻芯210の略半周部分に巻き付け、第2セパレータ72を第2スリットSbの側壁に巻き付けたタイミングで負極シート24を挟み込んでもよい。あるいは、巻回体20aを巻芯210から抜き取り易くする等の観点から、第1セパレータ71を第1スリットSaの側壁および巻芯210の略1周部分に巻き付け、第2セパレータ72を第2スリットSbの側壁および巻芯210の略1周部分に巻き付けたタイミングで負極シート24を挟み込んでもよい。ただし、これらはあくまでも一例であって、負極シート24を挟み込むタイミングは、製造する巻回電極体の種類等に応じて適宜調整することができる。
特に限定されるものではないが、第1接着層形成工程において、第1セパレータ71における第1接着層81の形成開始位置は、正極シート22を挟みこむ位置と同じ位置であってもよいし、正極シート22を挟みこむ位置よりも第1セパレータの巻き始め端部71a側に近い位置(例えば、第1セパレータの巻き始め端部71a側に10mmの位置や20mmの位置)であってもよい。また、第2接着層形成工程において、第2セパレータ72における第2接着層82の形成開始位置は、負極シート24を挟みこむ位置と同じ位置であってもよいし、負極シート24を挟みこむ位置よりも第2セパレータの巻き始め端部72a側に近い位置(例えば、第2セパレータの巻き始め端部72a側に10mmの位置や20mmの位置)であってもよい。例えば後者の場合では、第1セパレータ71および第2セパレータ72における正極シート22と対向する領域により確実に接着層を形成することができるため、好ましい。なお、本実施形態では、第1接着層形成工程において、第1セパレータ71における第1接着層81の形成開始位置を、正極シート22を挟みこむ位置よりも第1セパレータの巻き始め端部71a側に近い位置としている。また、第2接着層形成工程において、第2セパレータ72における第2接着層82の形成開始位置を、負極シート24を挟みこむ位置よりも第2セパレータの巻き始め端部72a側に近い位置としている(図13および図14を参照)。
特に限定されるものではないが、第1セパレータ71における第1接着層81の形成終了位置は、第1セパレータ71における正極シートの巻き終わり端部22Tと対向する位置であってもよいし、第1セパレータ71における正極シートの巻き終わり端部22Tと対向する位置よりも第1セパレータの巻き終わり端部71b側に近い位置(例えば、第1セパレータの巻き終わり端部71b側に10mmの位置や20mmの位置)であってもよい。また、第2セパレータ72における第2接着層82の形成終了位置は、第2セパレータ72における正極シートの巻き終わり端部22Tと対向する位置であってもよいし、第2セパレータ72における正極シートの巻き終わり端部22Tと対向する位置よりも第2セパレータの巻き終わり端部72b側に近い位置(例えば、第2セパレータの巻き終わり端部72b側に10mmの位置や20mmの位置)であってもよい。例えば後者の場合では、第1セパレータ71および第2セパレータ72における正極シート22と対向する領域により確実に接着層を形成することができるため、好ましい。なお、本実施形態では、第1セパレータ71における第1接着層81(ここでは、第1接着層81a)の形成終了位置を、第1セパレータ71における正極シートの巻き終わり端部22Tと対向する位置よりも第1セパレータの巻き終わり端部71b側に近い位置としている。また、第2セパレータ72における第2接着層82の形成終了位置を、第2セパレータ72における正極シートの巻き終わり端部22Tと対向する位置よりも第2セパレータの巻き終わり端部72b側に近い位置としている(図13および図14を参照)。また、本実施形態では、さらに第1セパレータにおける巻き終わり端部71b近傍に第1接着層81bを形成している。そして、第2セパレータ72における最外面には、第2接着層82を形成していない(図13および図14を参照)。
ここで開示される電池の製造方法によると、帯状の第1セパレータ71、帯状の正極シート22、帯状の第2セパレータ72、および帯状の負極シート24が、巻回軸WLを中心に所定の巻回方向に巻回された巻回電極体20が得られる。このうち、正極シート22と第1セパレータ71とは、第1接着層81によって接着されている。正極シート22と第2セパレータ72とは、第2接着層82によって接着されている。第1セパレータ71は、第1セパレータの巻き始め端部71a近傍に第1領域を有している。第1領域には、第1接着層81が形成されていない領域、および/または、第1セパレータ71において正極シート22と対向する領域に形成された第1接着層81の目付よりも目付の小さい第1接着層81が形成された領域が存在している。第2セパレータ72は、第2セパレータの巻き始め端部72a近傍に第2領域を有している。第2領域には、第2接着層82が形成されていない領域、および/または、第2セパレータ72において正極シート22と対向する領域に形成された第2接着層82の目付よりも目付の小さい第2接着層82が形成された領域が存在している。
つまり、ここで開示される製造方法によれば、このような巻回電極体20を備えた電池100が得られる。ここで開示される巻回電極体20では、第1領域全体に第1接着層81が形成されていなくてもよいし、第1領域全体に第1接着層81が形成されていてもよい。あるいは、第1領域に、第1接着層81が形成されていない領域と、第1接着層81とが形成されている領域とが存在してもよい。また、ここで開示される巻回電極体20では、第2領域全体に第2接着層82が形成されていなくてもよいし、第2領域全体に第2接着層82が形成されていてもよい。あるいは、第2領域に、第2接着層82が形成されていない領域と、第2接着層82が形成されている領域とが存在してもよい。
なお、「第1セパレータの巻き始め端部近傍の第1領域」とは、巻芯210の最内周の長さを100%としたとき、第1セパレータの巻き始め端部71aから例えば50%までの領域であり、100%までの領域、120%までの領域、150%までの領域、200%までの領域であってもよい。あるいは、巻回電極体20の最内周の長さを100%としたとき、第1セパレータの巻き始め端部71aから例えば50%までの領域であり、100%までの領域、120%までの領域、150%までの領域、200%までの領域であってもよい。例えば、本実施形態では、第1セパレータの巻き始め端部71a近傍は、第1セパレータの巻き始め端部71aから2cm以内の領域としている。また、「第2セパレータの巻き始め端部近傍の第2領域」とは、巻芯210の最内周の長さを100%としたとき、第2セパレータの巻き始め端部72aから例えば50%までの領域であり、60%までの領域、80%までの領域、100%までの領域、120%までの領域、150%までの領域、200%までの領域であってもよい。あるいは、巻回電極体20の最内周の長さを100%としたとき、第2セパレータの巻き始め端部72aから例えば50%までの領域であり、60%までの領域、80%までの領域、100%までの領域、120%までの領域、150%までの領域、200%までの領域であってもよい。例えば、本実施形態では、第2セパレータの巻き始め端部72a近傍は、第2セパレータの巻き始め端部72aから2cm以内の領域としている。ただし、これらに限られるものではない。また、「目付」(目付量)とは、接着層の質量を形成領域の面積で割った値(接着層の質量/形成領域の面積)をいう。
なお、本実施形態に係る巻回電極体20では、第1セパレータの巻き始め端部71a近傍における第1領域(ここでは、第1当接領域A1および領域A3)に、第1接着層81が形成されていない領域が存在する。また、第2セパレータの巻き始め端部72a近傍における第2領域(ここでは、第2当接領域A2)に、第2接着層82が形成されていない領域が存在する(図14を参照)。
また、上述したような巻回電極体20を備えた電池100は、帯状の第1セパレータ71、帯状の正極シート22、帯状の第2セパレータ72、および帯状の負極シート24が、巻回軸WLを中心に所定の巻回方向に巻回された巻回電極体20を備えている。巻回電極体20は、正極シート22と第1セパレータ71とが第1接着層81によって接着されている。また、正極シート22と第2セパレータ72とが第2接着層82によって接着されている。かかる電池の製造方法は、第1接着層形成工程と、第2接着層形成工程と、第1巻き付け工程と、第2巻き付け工程とを包含している。ここで、第1接着層形成工程は、第1セパレータ71の表面に第1接着層81を形成する工程である。第2接着層形成工程は、第2セパレータ72の表面に第2接着層82を形成する工程である。第1巻き付け工程は、巻芯210に、第1セパレータ71と第2セパレータ72とを当接させ、巻芯210に第1セパレータ71と第2セパレータ72とを巻き付ける工程である。第2巻き付け工程は、巻芯210に、第1セパレータ71および第2セパレータ72と共に、正極シート22と負極シート24とを巻き付ける工程である。第1接着層形成工程では、正極シート22と対向する領域において、予め定められた目付の第1接着層81が形成され、第1セパレータの巻き始め端部71a近傍の予め定められた第1領域において、第1接着層81が形成されていない領域、および/または、第1セパレータ71において正極シート22と対向する領域よりも目付の小さい第1接着層81が形成される。第2接着層形成工程では、正極シート22と対向する領域において、予め定められた目付の第2接着層82が形成され、第2セパレータの巻き始め端部72a近傍の予め定められた第2領域において、第2接着層82が形成されていない領域、および/または、第2セパレータ72において正極シート22と対向する領域よりも目付の小さい第2接着層82が形成される。
つまり、ここで開示される製造方法では、第1領域全体に第1接着層81を形成してもよいし、第1領域全体に第1接着層81を形成しなくてもよい。あるいは、第1領域に、第1接着層81が形成されていない領域と、第1接着層81が形成されている領域とを形成してもよい。また、ここで開示される電池の製造方法では、第2領域全体に第2接着層82を形成してもよいし、第2領域全体に第2接着層82を形成してもよい。あるいは、第2領域において第2接着層82が形成されていない領域と第2接着層82が形成されている領域とを形成してもよい。
かかる構成の電池の製造方法によると、第1セパレータ71と第2セパレータ72の巻き始め端部近傍において、それぞれ接着層が形成されていないか、形成される接着層の目付が小さい。このため、巻芯210に付着する接着層の量が好適に抑制される。これにより、巻芯210に接着層が付着してもその量が少ない。そして、巻芯210に付着した接着層に起因して、巻回電極体20の連続した生産が阻害されず、巻回電極体20の歩留まりが低下するのを好適に抑制することができる。これによって、接着層が具備されたセパレータを含む巻回電極体20を備えた電池100を生産性高く得ることができる。
特に限定されるものではないが、第1接着層形成工程において第1領域に第1接着層81を形成する場合、正極シート22と対向する領域における第1接着層81の目付Aに対する、第1領域における第1接着層81の目付Bの比(B/A)は、例えば0.9以下であり、巻芯210に付着し得る第1接着層81の量を好適に制御するという観点から、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.3以下であり、例えば0.1以下であってもよい。
特に限定されるものではないが、第2接着層形成工程において2領域に第2接着層82を形成する場合、正極シート22と対向する領域における第2接着層82の目付Cに対する、第2領域における第2接着層82の目付Dの比(D/C)は、例えば0.9以下であり、巻芯210に付着し得る第2接着層82の量を好適に制御するという観点から、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.3以下であり、例えば0.1以下であってもよい。
なお、本実施形態では、第1接着層形成工程において、正極シート22と対向する領域において、予め定められた目付の第1接着層81を形成し、第1セパレータの巻き始め端部71a近傍の予め定められた第1領域(ここでは、第1当接領域A1および領域A3)において、第1接着層81が形成されていない領域を形成している。また、第2接着層形成工程において、正極シート22と対向する領域において、予め定められた目付の第2接着層82を形成し、第2セパレータの巻き始め端部72a近傍の予め定められた第2領域(ここでは、第2当接領域A2)において、第2接着層82が形成されていない領域を形成している。
また、本実施形態のように、接着層形成工程(ここでは、第1接着層形成工程および第2接着層形成工程)と、巻き取り工程(ここでは、第1巻き取り工程および第2巻き取り工程)は、連続して実施されることが好ましい。これらの工程を連続して実施することによって、接着層形成工程後のセパレータをリールに巻き取った状態で保存する必要がないため、セパレータをリールから展開する際のブロッキング(例えば、接着層-セパレータ間の意図しない接着)を好適に抑制することができる。これによって、所望の位置に所望の量だけ接着層が形成された巻回電極体をより確実に得ることができるため、好ましい。ここで、接着層を形成する位置(ここでは、塗布装置230が存在する位置)と巻芯210の位置との距離は、例えば50m未満であり、10m未満であってもよいし、3m未満であってもよい。また、接着層形成工程が終了してから巻き取り工程が開始されるまでの時間は、例えば60分未満であり、20分未満であってもよく、5分未満であってもよい。なお、上述した距離や時間は、実際の実施態様に合わせて適宜変更され得る。
ここで開示される電池の製造方法では、第1巻き付け工程において、第1セパレータ71における巻芯210と当接する第1当接領域(ここでは、第1当接領域A1)に、第1接着層81が形成されていない領域、および/または、第1セパレータ71において正極シート22と対向する領域に形成された第1接着層81の目付よりも目付の小さい第1接着層81が形成された領域を形成してもよい。また、ここで開示される電池の製造方法では、第1巻き付け工程において、第2セパレータ72における巻芯210に当接する第2当接領域(ここでは、第2当接領域A2)に、第2接着層82が形成されていない領域、および/または、第2セパレータ72において正極シート22と対向する領域に形成された第2接着層82の目付よりも目付の小さい第2接着層82が形成してもよい。
つまり、ここで開示される電池の製造方法では、第1当接領域全体に第1接着層81を形成しなくてもよいし、第1当接領域全体に第1接着層81を形成してもよい。あるいは、第1当接領域に、第1接着層81が形成された領域と、第1接着層81が形成されてない領域とを形成してもよい。また、ここで開示される電池の製造方法では、第2当接領域全体に第2接着層82を形成しなくてもよいし、第2当接領域全体に第2接着層82を形成してもよい。あるいは、第2当接領域に、第2接着層82が形成された領域と第2接着層82が形成されてない領域とを形成してもよい。
かかる構成の電池の製造方法によると、第1セパレータ71と第2セパレータ72における巻芯210と当接する領域において、それぞれ接着層が形成されていないか、形成される接着層の目付が小さい。このため、巻芯210に付着する接着層の量が好適に抑制される。これにより、巻芯210に接着層が付着してもその量が少ない。そして、巻芯210に付着した接着層に起因して、巻回電極体20の連続した生産が阻害されず、巻回電極体20の歩留まりが低下するのをより好適に抑制することができる。これによって、接着層が具備されたセパレータを含む巻回電極体20を備えた電池100をより生産性高く得ることができる。
特に限定されるものではないが、第1当接領域に第1接着層81を形成する場合、正極シート22と対向する領域における第1接着層81の目付Eに対する、第1当接領域における第1接着層81の目付Fの比(F/E)は、例えば0.9以下であり、巻芯210に付着し得る第1接着層81の量を好適に制御するという観点から、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.3以下であり、例えば0.1以下であってもよい。
特に限定されるものではないが、第2当接領域に第2接着層82を形成する場合、正極シート22と対向する領域における第2接着層82の目付Gに対する、第2当接領域における第2接着層82の目付Hの比(H/G)は、例えば0.9以下であり、巻芯210に付着し得る第2接着層82の量を好適に制御するという観点から、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.3以下であり、例えば0.1以下であってもよい。
なお、本実施形態では、第1当接領域A1全体に第1接着層81が形成されていない領域を形成しており、第2当接領域A2全体に第2接着層82が形成されていない領域を形成している。
また、図3Cおよび図3Dに示すように、本実施形態では、第1セパレータ71における接着剤塗布を開始するタイミングは、第2セパレータ72における接着剤塗布の開始するタイミングよりも略半周分だけ遅くなっている。即ち、本実施形態では、第1セパレータ71において、第1当接領域A1以外の領域まで延びて、第1接着層81が形成されていない領域(図3Dの領域A3を参照)を形成している。領域A3は、ここでは、第1セパレータ71と巻芯210との間に第2セパレータ72が配置されている領域を示している。
即ち、ここで開示される電池の製造方法では、第1セパレータ71において、第1当接領域(ここでは、第1当接領域A1)以外の領域まで延びて第1領域を形成してもよい。かかる構成の電池の製造方法によると、第1セパレータ71への第1接着層81の過度な形成を抑制することができ、これによって、電池100の抵抗増大の抑制や巻回電極体20の含浸性の低下抑制を実現することができるため好ましい。
なお、本実施形態では、第1セパレータ71において、第1当接領域A1以外の領域まで延びて、第1接着層81が形成されていない領域を形成している(図3Dの領域A3を参照)。
ここで開示される電池の製造方法では、第1領域の長手方向における第1セパレータの巻き始め端部71aからの長さL1が、第2領域の長手方向における第2セパレータの巻き始め端部72aからの長さL2よりも大きくなるように、第1領域および第2領域を形成してもよい。かかる構成の電池の製造方法によると、セパレータへの接着層の過度な形成を抑制することができ、これによって、電池100の抵抗増大の抑制や巻回電極体20の含浸性の低下抑制を実現することができるため好ましい。
なお、本実施形態では、第1領域(ここでは、第1当接領域A1および領域A3)の長手方向における第1セパレータの巻き始め端部71aからの長さL1が、第2領域(ここでは、第2当接領域A2)の長手方向における第2セパレータの巻き始め端部72aからの長さL2よりも大きくなるように、第1領域および第2領域を形成している(図13を参照)。
特に限定されるものではないが、第2領域の長手方向における第2セパレータの巻き始め端部72aからの長さL2に対する、第1領域の長手方向における第1セパレータの巻き始め端部71aからの長さL1の比(L1/L2)は、例えば1.2以上であり、上述したような効果を得やすくするという観点から、好ましくは1.5以上であり、2以上であってもよい。また、上記比(L1/L2)の上限は、例えば3以下であり、2.5以下であってもよい。
ここで開示される電池の製造方法では、第1セパレータ71および第2セパレータ72における、巻回電極体20の最外面となる領域には、対応する接着層(即ち、第1接着層81および/または第2接着層82)が形成されていない領域、および/または、対応するセパレータにおいて正極シート22と対向する領域に形成された対応する接着層の目付よりも目付の小さい対応する接着層が形成された領域を形成してもよい。つまり、ここで開示される電池の製造方法では、巻回電極体20の最外面となる領域全体に対応する接着層を形成しなくてもよいし、巻回電極体20の最外面となる領域全体に対応する接着層を形成してもよい。あるいは、巻回電極体20の最外面となる領域に、対応する接着層が形成された領域と、対応する接着層が形成されてない領域とを形成してもよい。かかる構成の電池の製造方法によると、電極体製造装置200への接着層の付着を好適に防止することができるため、接着層が具備された巻回電極体20を備えた電池100の生産性をより好適に向上させることができる。
特に限定されるものではないが、巻回電極体20の最外面となる領域に対応する接着層を形成する場合、正極シート22と対向する領域における対応する接着層の目付Iに対する、巻回電極体20の最外面となる領域における対応する接着層の目付Jの比(J/I)は、例えば0.9以下であり、0.8以下、0.5以下、0.3以下、0.1以下であってもよい。
なお、本実施形態では、第1セパレータ71における巻回電極体20の最外面となる領域に、第1接着層81が形成されていない領域を形成している(図14のPを参照)。
また、本実施形態では、第1接着層81が形成された側の面における第1セパレータの巻き終わり端部71b近傍に、正極シート22と対向する領域における第1接着層81aの目付よりも目付の小さい第1接着層81bを形成している(図14を参照)。かかる構成の電池の製造方法によると、第1セパレータの巻き終わり端部71bの周囲に巻き止めテープを付与しなくてよいため、電池の製造の簡便化という観点から好ましい。また、本実施形態では、第2セパレータ72における最外面には、第2接着層82を形成していない。なお、「第1セパレータの巻き終わり端部近傍」とは、巻き取り体20aの最外周の長さを100%としたとき、第1セパレータの巻き終わり端部71bから例えば5%までの領域であり、10%以内の領域、20%以内の領域であってもよい。あるいは、巻回電極体20の最外周の長さを100%としたとき、第1セパレータの巻き終わり端部71bから例えば5%までの領域であり、10%以内の領域、20%以内の領域であってもよい。例えば、本実施形態では、第1セパレータの巻き終わり端部71b近傍は、第1セパレータの巻き終わり端部71bから2cm以内の領域としている。
図2に示すように、本実施形態では、第1巻き付け工程において、第1セパレータ71を、鉛直直線l1に対して一方側から巻芯210に供給し、第2セパレータ72を、鉛直直線l1に対して他方側から巻芯210に供給している。かかる構成によると、第1セパレータの巻き終わり端部71aの位置や第2セパレータの巻き終わり端部72aの位置、各セパレータの長さ、切断位置等を好適に調整することができる。また、第2巻き付け工程において、正極シート22を、鉛直直線l1に対して第1セパレータ71と同じ側から巻芯210に供給し、負極シート24を、鉛直直線l1に対して第2セパレータと他方側から巻芯210に供給している。そして、第1セパレータ71を正極シート22の上方から供給し、第2セパレータ72を負極シート24の下方から供給している。
ここで開示される電池の製造方法では、巻芯210の巻回中心Oを通過し水平方向に延びる直線l2に対する搬送経路k3のなす角度θk3が、例えば-30°~+30°(好ましくは、-15°~+15°)となる領域を通過する際に、第1セパレータ71に第1接着層81を形成することが好ましい。また、巻芯210の巻回中心Oを通過し水平方向に延びる直線l2に対する搬送経路k4のなす角度θk4が、例えば-30°~+30°(好ましくは、-15°~+15°)となる領域を通過する際に、第2セパレータ72に第1接着層82を形成することが好ましい。これによって、セパレータの幅方向における塗りムラ等を改善し、より均一に接着層を形成することができる。
また、本実施形態では、さらに第2巻き付け工程の後に、巻回された第1セパレータ71、正極シート22、第2セパレータ72、および負極シート24を押圧する(押圧工程)。ここで、図4Aおよび図4Bは、押圧工程について説明するための説明図である。押圧工程では、上記のとおり製造した巻回体20aを巻芯210から抜き取り、プレス機300によってプレスする。これによって、扁平形状の巻回電極体20を好適に得ることができる。また、押圧工程後における正極シート22および第1セパレータ71の接着強度が、押圧工程前における正極シート22および第1セパレータ71の接着強度よりも大きくなるように押圧することが好ましい。なお、押圧工程後における正極シート22および第2セパレータ72の接着強度も、押圧工程前における正極シート22および第2セパレータ72の接着強度よりも大きくなるように押圧することが好ましい。かかる構成の電池の製造方法によると、座屈抑制のため、巻き取り後に巻回体20aの緩ましを行う機会を設けることができるため、好ましい。
特に限定されるものではないが、押圧工程後における正極シート22および第1セパレータ71の接着強度Nに対する、押圧工程前における正極シート22および第1セパレータ71の接着強度Mの比(N/M)は、例えば1.2以上であり、1.5以上、2以上であってもよい。なお、かかる接着強度は、例えば所定の面積(例:5cm×5cmのサンプル)の正極シート-セパレータの積層体を用いて、従来公知の測定方法によって測定される接着強度を意味し得る。なお、押圧工程後における正極シート22および第2セパレータ72の接着強度に対する、押圧工程前における正極シート22および第2セパレータ72の接着強度の比についても、上記記載を参照することができる。
上記巻回電極体20を3つ用意し、電池ケース10に挿入し、封口することにより、電池100を作製することができる。具体的には、図6に示すように、巻回電極体20の正極タブ群25に正極第2集電部材52を接合し、負極タブ群27に負極第2集電部材62を接合する。そして、図9に示すように、複数個(ここでは、3個)の巻回電極体20を、平坦部同士が対向するように配列する。複数個の巻回電極体20の上方に封口板14を配置し、正極第2集電部材52と巻回電極体20の一方の側面20eとが対向するように、各々の巻回電極体20の正極タブ群25を折り曲げる。これによって、正極第1集電部材51と正極第2集電部材52とが接続される。同様に、負極第2集電部材62と巻回電極体20の他方の側面20hとが対向するように、各々の巻回電極体20の負極タブ群27を折り曲げる。これによって、負極第1集電部材61と負極第2集電部材62とが接続される。この結果、正極集電部50と負極集電部60を介して封口板14に巻回電極体20が取り付けられる。次いで、封口板14に取り付けられた巻回電極体20を、電極体ホルダ29(図3参照)で覆った後に外装体12の内部に収容する。この結果、巻回電極体20の平坦部が外装体12の長側壁12b(すなわち、電池ケース10の扁平面)と対向する。また、上側の湾曲部20rが封口板14と対向し、下側の湾曲部20rが外装体12の底壁12aと対向する。そして、外装体12の上面の開口12hを封口板14で塞いだ後に、外装体12と封口板14とを接合(溶接)することによって電池ケース10を構築する。その後、封口板14の注入孔15から電池ケース10の内部に電解質を注入し、注入孔15を封止部材16で塞ぐ。以上によって、電池100を製造することができる。
<電池の構成>
続いて、ここで開示される電池の製造方法によって製造される電池100について、図5~図11を参照しながら説明する。図5は、電池100の斜視図である。図6は、図5のVI-VI線に沿う模式的な縦断面図である。図7は、図5のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図である。図8は、図5のVIII-VIII線に沿う模式的な横断面図である。図9は、封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。図10は、正極第2集電部と負極第2集電部とが取り付けられた電極体を示す斜視図である。図11は、巻回電極体の構成を示す図である。なお、図11では、見易くするために、第1接着層81および第2接着層82の記載を省略している。
図5および図6に示すように、電池100は、巻回電極体20と、当該巻回電極体20を収容する電池ケースと、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解質を備えている。電池100は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることが好ましい。
電池ケース10は、巻回電極体20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは、図5に示すように、有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましい。電池ケース10の材質の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
図5および図6に示すように、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、を備えている。外装体12は、上面に開口12hを有する扁平な有底角型の容器である。外装体12は、平面視において略矩形状の底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。また、封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐ部材であり、平面視において略矩形状の板状部材である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
図6に示すように、封口板14には、注入孔15と、ガス排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注入孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注入孔15は、電解液の注液後に封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
電池ケース10には、上記したように巻回電極体20とともに、電解質が収容され得る。電解質としては、従来公知の電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。非水電解液は、必要に応じて各種の添加剤を含有していてもよい。なお、電解質は固体状(固体電解質)で、電極体と一体化されていてもよい。
封口板14の長辺方向Yの一方(図5、図6の左側)の端部には、正極端子30が取り付けられている。封口板14の長辺方向Yの他方(図5、図6の右側)の端部には、負極端子40が取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19に挿通され、封口板14の外側の表面に露出している。正極端子30は、電池ケース10の外側において、板状の正極外部導電部材32と電気的に接続されている。負極端子40は、電池ケース10の外側において、板状の負極外部導電部材42と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で構成されている。ただし、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
図7~図9に示すように、電池100は、ここでは電池ケース10内に複数個(3個)の巻回電極体20が収容されている。巻回電極体20の詳しい構造については後述するが、それぞれの巻回電極体20には、正極タブ群25と負極タブ群27とが設けられている(図8参照)。図8に示すように、これらの電極タブ群(正極タブ群25と負極タブ群27)は、電極集電部(正極集電部50および負極集電部60)が接合された状態で折り曲げられている。
複数の巻回電極体20のそれぞれの正極タブ群25は、正極集電部50を介して正極端子30と接続されている。正極集電部50は、電池ケース10の内部に収容されている。正極集電部50は、図6および図9に示すように、正極第1集電部材51と、正極第2集電部材52と、を備えている。正極第1集電部材51は、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である。正極第2集電部材52は、電池100の上下方向Zに沿って延びる板状の導電部材である。そして、正極端子30の下端部30cは、封口板14の端子引出孔18を通って電池ケース10の内部に挿入され、正極第1集電部材51と接続されている(図6参照)。また、図8~図10に示すように、ここでは、電池100は、複数の巻回電極体20の個数に対応した数の正極第2集電部材52を備えている。それぞれの正極第2集電部材52は、巻回電極体20の正極タブ群25に接続される。そして、図8に示すように、巻回電極体20の正極タブ群25は、正極第2集電部材52と、巻回電極体20の一方の側面20eとが対向するように折り曲げられている。これによって、正極第2集電部材52の上端部と、正極第1集電部材51とが電気的に接続される。なお、正極端子30および正極集電部50は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましい。正極端子30および正極集電部50は、例えばアルミニウムまたは、アルミニウム合金製であり得る。
一方、複数の巻回電極体20のそれぞれの負極タブ群27は、負極集電部60を介して負極端子40と接続される。かかる負極側の接続構造は、上述した正極側の接続構造と略同一である。具体的には、負極集電部60は、図6および図9に示すように、負極第1集電部材61と、負極第2集電部材62と、を備えている。負極第1集電部材61は、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である。負極第2集電部材62は、電池100の上下方向Zに沿って延びる板状の導電部材である。そして、負極端子40の下端部40cは、端子引出孔19を通って電池ケース10の内部に挿入され、負極第1集電部材61と接続される(図6参照)。また、図8~図10に示すように、ここでは、電池100は、複数の巻回電極体20の個数に対応した数の負極第2集電部材62を備えている。それぞれの負極第2集電部材62は、巻回電極体20の負極タブ群27に接続される。そして、図8および図9に示すように、巻回電極体20の負極タブ群27は、負極第2集電部材62と、巻回電極体20の他方の側面20hとが対向するように折り曲げられている。これによって、負極第2集電部材62の上端部と、負極第1集電部材61とが電気的に接続される。なお、負極端子40および負極集電部60は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましい。負極端子40および負極集電部60は、例えば銅または、銅合金製であり得る。
電池100では、巻回電極体20と電池ケース10との導通を防止するために、種々の絶縁部材が取り付けられている。例えば、図5および図6に示すように、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。また、図6に示すように、封口板14の端子引出孔18、19のそれぞれにはガスケット90が装着されている。これによって、端子引出孔18、19に挿通された正極端子30(又は負極端子40)が封口板14と導通することを防止できる。また、正極集電部50および負極集電部60と、封口板14の内面側との間には、内部絶縁部材94が配置されている。これにより、正極集電部50および負極集電部60が封口板14と導通することを抑制することができる。内部絶縁部材94は、巻回電極体20に向かって突出する突出部を備えていてもよい。さらに、複数の巻回電極体20は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ29(図7参照)に覆われた状態で、外装体12の内部に配置されている。これによって、巻回電極体20と外装体12が直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材質は、所定の絶縁性を有している限りにおいて特に限定されない。そのような材質の一例として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂材料が挙げられる。
外装体12には、ここでは3つの巻回電極体20が収容されている。ただし、1つの外装体12の内部に配置される巻回電極体の数は特に限定されず、4つ以上であってもよいし、1つであってもよい。巻回電極体20は、扁平状であることが好ましい。図3に示すように、巻回電極体20は、例えば、扁平状であって、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の長側壁12bと対向する平坦部20fと、を有する。なお、本明細書において、扁平状の巻回電極体とは、断面視において略長円形であり、いわゆるレーストラック形状である巻回電極体(図3参照)のことをいう。
図11に示すように、巻回電極体20は、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とが帯状の第1セパレータ71および第2セパレータ72を介して絶縁された状態で積層され、巻回軸WLを中心として長手方向に巻回されて構成されている。巻回電極体20は、ここでは、巻回軸WL(図11参照)が外装体12の長辺方向Yと平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。言い換えれば、巻回電極体20は、巻回軸WLが底壁12aと平行になり、短側壁12cと直交する向きで、外装体12の内部に配置されている。巻回電極体20の端面(言い換えれば、正極シート22と負極シート24とが積層された積層面)は、短側壁12cと対向している。
正極シート22は、図11に示すように、帯状の部材である。正極シート22は、帯状の正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極シート22を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましい。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
正極シート22では、図11に示すように、巻回電極体20の長辺方向Yの一方の端部(図11の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長手方向に沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極シート22に接続されている。正極タブ22tは、ここでは正極集電体22cの一部であり、金属箔(具体的にはアルミ箔)から構成される。正極タブ22tは、正極活物質層22aが形成されておらず、正極集電体22cが露出した領域である。ただし、正極タブ22tは、一部に正極活物質層22aおよび/または正極保護層22pが設けられていてもよく、正極集電体22cと別の部材であってもよい。複数の正極タブ22tは、ここではそれぞれ台形状である。ただし、正極タブ22tの形状はこれに限定されない。また、複数の正極タブ22tのサイズも特に限定されない。正極タブ22tの形状やサイズは、例えば正極集電部50に接続される状態を考慮し、その形成位置等によって、適宜調整することができる。複数の正極タブ22tは、図8に示すように、正極シート22の長辺方向Yの一方の端部(図8の左端部)で積層され、正極タブ群25を構成している。
正極活物質層22aは、図11に示すように、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aは、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含み、当該リチウム遷移金属複合酸化物においてニッケル(Ni)の含有量が高い正極活物質を含むことが好ましい。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物において、リチウム以外の金属元素の合計を100モル%としたとき、ニッケルの含有量は、好ましくは55モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは75モル%以上であるとよい。これにより、非水電解質二次電池をさらに高容量化させることができる。
正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材の一例として、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が挙げられる。バインダーの一例として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂が挙げられる。
特に限定されないが、正極活物質層22aの単位面積当たりの重量をa(g)、正極活物質層22aを150℃から300℃まで加熱した時に発生する水分量をb(g)としたときに、重量aに対する水分量bの比(b/a)が0.2%未満であることが好ましい。
正極保護層22pは、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。正極保護層22pは、図11に示すように、長辺方向Yにおいて、正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは、正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(図11の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは長辺方向Yの両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pを備えることで、第1セパレータ71および第2セパレータ72が破損した際に正極集電体22cと負極活物質層24aとが直接接触して電池100が内部短絡することを防止できる。
正極保護層22pは、絶縁性の無機フィラー、例えば、アルミナ等のセラミック粒子を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダーは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
負極シート24は、図11に示すように、帯状の部材である。負極シート24は、帯状の負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極シート24を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属から構成されることが好ましい。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
負極シート24では、図11に示すように、巻回電極体20の長辺方向Yの一方の端部(図11の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、長手方向に沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、負極シート24に接続されている。負極タブ24tは、ここでは負極集電体24cの一部であり、金属箔(具体的には銅箔)から構成される。負極タブ24tは、ここでは負極活物質層24aが形成されておらず、負極集電体24cが露出した領域である。ただし、負極タブ24tは、一部に負極活物質層24aが形成されていてもよく、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。複数の負極タブ24tは、ここではそれぞれ台形状である。ただし、複数の負極タブ24tの形状やサイズは、正極タブ22tと同様に適宜調整することができる。複数の負極タブ24tは、図8に示すように、負極シート24の長辺方向Yの一方の端部(図8の右端部)で積層され、負極タブ群27を構成している。
負極活物質層24aは、図11に示すように、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの幅(長辺方向Yの長さ。以下同じ)は、正極活物質層22aの幅よりも大きいことが好ましい。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダーの一例として、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類が挙げられる。分散剤の一例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース類が挙げられる。
第1セパレータ71および第2セパレータ72は、帯状の部材である。第1セパレータ71および第2セパレータ72は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。第1セパレータ71および第2セパレータ72の幅は、負極活物質層24aの幅よりも大きい。正極シート22と負極シート24との間に第1セパレータ71および第2セパレータ72を介在させることによって、正極シート22と負極シート24との接触を防止すると共に、正極シート22と負極シート24との間に電荷担体(例えばリチウムイオン)を移動させることができる。
基材層85としては、従来公知の電池のセパレータに用いられる微多孔膜を特に制限なく使用できる。基材層85は、例えば、多孔質のシート状部材であることが好ましい。基材層85は、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。基材層85は、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。これによって、セパレータの柔軟性を充分に確保し、巻回電極体20の作製(巻回およびプレス成形)を容易に実施できる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることがさらに好ましい。また、特に限定されるものではないが、基材層85の厚みは、3μm以上25μm以下であることが好ましく、3μm以上18μm以下であることがより好ましく、5μm以上14μm以下であることがさらに好ましい。
耐熱層87は、ここでは、基材層85の上に設けられている。耐熱層87は、基材層85の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材層85の上に設けられていてもよい。ただし、耐熱層87は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層87の目付は、ここではセパレータの長手方向および幅方向に均質である。特に限定されるものではないが、耐熱層87の厚みは、0.3μm以上6μm以下であることが好ましく、0.5μm以上6μm以下であることがより好ましく、1μm以上4μm以下であることがさらに好ましい。
耐熱層87は、無機フィラーと耐熱層バインダーとを含むことが好ましい。無機フィラーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。無機フィラーは、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。なかでも、耐熱性、入手容易性等を考慮すると、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータの熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。耐熱層87の総質量に対する無機フィラーの割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。
耐熱層バインダーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。
図14は、図10のXIV-XIV線に沿う模式的な横断面図である。なお、図14では便宜上、巻回電極体20における中間部分の部材の記載を省略している。また、図中のD1は巻回方向を示しているが、巻回方向をかかる方向に限定することを意図したものではない。図14に示すように、巻回電極体20では、正極シート22と第1セパレータ71とが接着層81によって接着されており、正極シート22と第2セパレータ72とが第2接着層82によって接着されている。また、第1セパレータ71は、第1セパレータの巻き始め端部71aの近傍に第1領域(図14のA-B間を参照)を有している。かかる第1領域には、ここでは第1接着層81が形成されていない。また、第2セパレータ72は、第2セパレータの巻き始め端部72aの近傍に第2領域(図14のC-D間を参照)を有している。かかる第2領域には、ここでは第2接着層82が形成されていない。かかる構成の巻回電極体20では、接着層の過度な形成が好適に抑制されているため、電池100の抵抗増加の抑制や巻回電極体20の含浸性の低下を好適に抑制することができる。
また、他の実施形態では、第1領域には、第1接着層81が形成されていない領域、および/または、第1セパレータ71において正極シート22と対向する領域に形成された第1接着層81の目付よりも目付の小さい第1接着層81が形成された領域が存在していてもよい。つまり、第1領域全体に第1接着層81が形成されていてもよいし、第1領域に、第1接着層81が形成された領域と、第1接着層81が形成されていない領域とが存在していてもよい。また、第2領域には、第2接着層82が形成されていない領域、および/または、第2セパレータ72において正極シート22と対向する領域に形成された第2接着層82の目付よりも目付の小さい第2接着層82が形成された領域が存在していてもよい。つまり、第2領域全体に第2接着層82が形成されていてもよいし、第2領域に、第2接着層82が形成された領域と、第2接着層82が形成されていない領域とが存在していてもよい。なお、正極シート22と対向する領域における第1接着層81の目付Aに対する、第1領域における第1接着層81の目付Bの比(B/A)に関しては、<電池の製造方法>における記載を参照されたい。また、正極シート22と対向する領域における第2接着層82の目付Cに対する、第2領域における第2接着層82の目付Dの比(D/C)に関しては、<電池の製造方法>における記載を参照されたい。
図12は、本実施形態に係る巻回電極体20を展開した状態を示す模式図であり、図13は図12の分解図である。なお、図11では、見易くするために、各部材を幅方向にずらした状態で記載している。ここで、図中のra(ra1,ra2,ran-1,ran)は、巻回電極体20の一方のR部における頂点に対応することを示している。また、図中のrb(rb1,rb2,rb3,rbn)は、巻回電極体20の他方のR部における頂点に対応することを示している。図13に示すように、第1領域の巻回方向における第1セパレータの巻き始め端部71aからの長さL1は、第2領域の巻回方向における第2セパレータの巻き始め端部72aからの長さL2よりも大きい。かかる構成によると、セパレータへの接着層の過度な形成を抑制することができ、これによって、電池100の抵抗増大の抑制や巻回電極体20の含浸性の低下抑制を実現することができるため好ましい。なお、比(L1/L2)に関しては、<電池の製造方法>における記載を参照されたい。
本実施形態では、第1セパレータ71における、巻回電極体20の最外面となる領域には、第1接着層が形成されていない(図14のPを参照)。かかる構成の巻回電極体20では、第1接着層81の過度な形成が好適に抑制されているため、電池100の抵抗増加の抑制や巻回電極体20の含浸性の低下を好適に抑制することができる。
また、他の実施形態では、第1セパレータ71における、巻回電極体20の最外面となる領域には、第1接着層81が形成されていない領域、および/または、第1セパレータ71において正極シート22と対向する領域に形成された第1接着層81の目付よりも目付の小さい第1接着層81が形成された領域が存在していてもよい。つまり、第1セパレータ71における巻回電極体20の最外面となる領域全体に第1接着層81が形成されていてもよいし、第1セパレータ71における巻回電極体20の最外面となる領域に、第1接着層81が形成されている領域と、第1接着層81が形成されていない領域とが存在していてもよい。ここで、例えば第1セパレータ71における巻回電極体20の最外面となる領域に第1接着層81が形成されていない場合、第1セパレータの巻き終わり端部71bに巻き止めテープを付与することができる。かかる巻き止めテープとしては、この種の電池に用いられる従来公知のものを用いることができる。なお、正極シート22と対向する領域における第1接着層81の目付Iに対する、巻回電極体20の最外面となる領域における第1接着層81の目付Jの比(J/I)に関しては、<電池の製造方法>における記載を参照されたい。
また、図14に示すように、本実施形態では、第1接着層81が形成された側の面における第1セパレータの巻き終わり端部71b近傍に、正極シート22と対向する領域における第1接着層81aの目付よりも目付の小さい第1接着層81bが形成されている。
第1接着層81および第2接着層82は、例えば加熱や押圧(典型的にはプレス成形)等によって、正極シート22と接着されている。第1接着層81と第2接着層82とは同様の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。また、第1接着層81および第2接着層82の形成位置は、正極活物質層22aの表面と対向する位置であってもよいし、正極集電体22cの表面に対向する位置であってもよい。あるいは、正極活物質層22aの表面および正極集電体22cの表面に対向する位置であってもよい。
第1接着層81および第2接着層82は、接着層バインダーを含んでいる。接着層バインダーとしては、電極に対して一定の粘性を有する従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリアミック酸樹脂等が挙げられる。なかでも、高い柔軟性を有し、電極に対する接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリルやポリメチルメタクリレート等が挙げられる。接着層バインダーの種類は、耐熱層バインダーと同じであってもよく、異なっていてもよい。接着層の総質量に対する接着層バインダーの割合は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上であってもよく、さらには80質量%以上がより好ましい。これにより、電極に対して所定の接着性が的確に発揮される。
第1接着層81および第2接着層82は、接着層バインダーに加えて、他の材料(例えば、耐熱層73の成分として挙げた無機フィラー等)を含んでいてもよい。接着層が無機フィラーを含む場合、接着層の総質量に対する無機フィラーの割合は、75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。第1接着層81および第2接着層82の厚みは、概ね0.3μm以上6μm以下であることが好ましく、0.5μm以上6μm以下であることがより好ましく、1μm以上4μm以下であることがさらに好ましい。
特に限定されないが、第1接着層81および第2接着層82の目付は、0.005~1.0g/m2が好ましく、0.02~0.06g/m2がより好ましい。
接着層は、全面形成されていてもよく、あるいは所定のパターンを有していてもよい。例えば、接着層は、平面視で、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、破線状、またはこれらの組み合わせ等のパターンを有していてもよい。
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
以上、本開示のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
例えば、上述した電池の製造方法ではセパレータに接着層を形成しているが、これに限定されない。ここで開示される電池の製造方法では、予め所望の領域に所望の量だけ接着層が形成されたセパレータを用いることもできる。かかる場合、上述したような第1接着層形成工程や第2接着層形成工程を実施しなくてもよい。
例えば、上述した電池の製造方法では第1当接領域A1に第1セパレータ71における第1スリットSaの側壁および巻芯210の側面に当接する領域が包含されているが、これに限定されない。例えばスリットを有さない巻芯を用いた場合、第1当接領域は、巻芯の側面に当接する領域とすることができる。また、例えば、上述した電池の製造方法では第2当接領域A2に第2セパレータ72における第2スリットSbの側壁および巻芯210の側面に当接する領域が包含されているが、これに限定されない。例えばスリットを有さない巻芯を用いた場合、第2当接領域は、巻芯の側面に当接する領域とすることができる。
例えば、上述した電池の製造方法は押圧工程を包含しているが、これに限定されない。ここで開示される電池の製造方法は、例えば巻回電極体を円筒状とする場合に押圧工程を包含していなくてもよい。また、ここで開示される電池の製造方法では、塗布装置230によってセパレータに接着層を形成した後、乾燥工程があってもよい。そして、巻回電極体20において、接着層(第1接着層81,第2接着層82)に含有される有機溶媒および/または水の含有割合は、接着剤における有機溶媒および/または水の1%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.01%以下であることが特に好ましい。
例えば、上述した電池の製造方法では、第1セパレータ71の正極シート22と対向する領域に第1接着層81を形成し、第2セパレータ72の正極シート22と対向する領域に第2接着層82を形成しているが、これに限定されない。ここで開示される電池の製造方法では、第1セパレータ71における正極シート22と対向する領域以外の領域にも第1接着層81を形成してもよいし、第2セパレータ72における正極シート22と対向する領域以外の領域にも第2接着層82を形成してもよい。ここで開示される電池の製造方法では、例えば、第1セパレータ71の負極シート24と対向する領域に第1接着層81が形成してもよいし、第2セパレータ72の負極シート24と対向する領域に第2接着層82を形成してもよい。かかる場合、第1接着層81の目付は第1セパレータ71の正極シート22と対向する領域における第1接着層81の目付よりも小さいことが好ましく、第2接着層82の目付は第2セパレータ72の正極シート22と対向する領域における第2接着層82の目付よりも小さいことが好ましい。
例えば、上述した電池では巻回電極体20の巻回軸方向における一方の端部から正極タブ22tが突出し、他方の端部から負極タブ24tが突出する構成としているが、これに限定されない。ここで開示される電池の製造方法によって製造される巻回電極体は、当該巻回電極体の巻回軸方向における一方の端部から正極タブおよび負極タブが突出する構成であってもよいし、電極タブを有さない構成としてもよい。
例えば、上述した電池では巻回電極体20の最外面が第1セパレータ71によって構成されているが、これに限定されない。ここで開示される電池の製造方法によって製造される巻回電極体は、最外面が第2セパレータによって構成されていてもよいし、第1セパレータおよび第2セパレータによって構成されていてもよい。
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の第1セパレータ、帯状の正極シート、帯状の第2セパレータ、および帯状の負極シートが、巻回軸を中心に所定の巻回方向に巻回された巻回電極体であって、上記正極と前記第1セパレータとが第1接着層によって接着され、上記正極シートと上記第2セパレータとが第2接着層によって接着された巻回電極体を備えた電池の製造方法であって、以下の工程:巻芯に、上記第1セパレータと上記第2セパレータとを当接させ、上記巻芯に上記第1セパレータと上記第2セパレータとを巻き付ける、第1巻き付け工程;および、上記巻芯に、上記第1セパレータおよび上記第2セパレータと共に、上記正極シートと上記負極シートとを巻き付ける、第2巻き付け工程;を包含し、上記第1セパレータは、上記第1セパレータの巻き始め端部近傍に第1領域を有しており、上記第1領域には、上記第1接着層が形成されていない領域、および/または、上記第1セパレータにおいて上記正極シートと対向する領域に形成された上記第1接着層の目付よりも目付の小さい上記第1接着層が形成された領域が存在しており、上記第2セパレータは、上記第2セパレータの巻き始め端部近傍に第2領域を有しており、上記第2領域には、上記第2接着層が形成されていない領域、および/または、上記第2セパレータにおいて上記正極シートと対向する領域に形成された上記第2接着層の目付よりも目付の小さい上記第2接着層が形成された領域が存在している、電池の製造方法。
項2:上記第1領域の上記巻回方向における上記第1セパレータの巻き始め端部からの長さL1は、上記第2領域の上記巻回方向における上記第2セパレータの巻き始め端部からの長さL2よりも大きい、項1に記載の電池の製造方法。
項3:上記第1巻き付け工程において、上記第1セパレータは、上記巻芯に当接する第1当接領域を有しており、上記第1当接領域には、上記第1接着層が形成されていない領域、および/または、上記第1セパレータにおいて上記正極シートと対向する領域に形成された上記第1接着層の目付よりも目付の小さい上記第1接着層が形成された領域が存在しており、上記第2セパレータは、上記巻芯に当接する第2当接領域を有しており、上記第2当接領域には、上記第2接着層が形成されていない領域、および/または、上記第2セパレータにおいて上記正極シートと対向する領域に形成された上記第2接着層の目付よりも目付の小さい上記第2接着層が形成された領域が存在している、項1または項2に記載の電池の製造方法。
項4:上記第1セパレータにおいて、上記第1当接領域以外の領域まで延びて上記第1領域が形成されている、項3に記載の電池の製造方法。
項5:上記巻芯の巻回中心を通過し鉛直方向に延びる鉛直直線に対して、上記第1セパレータは一方側から上記巻芯に供給され、上記第2セパレータは他方側から上記巻芯に供給される、項1~項4のいずれか一つに記載の電池の製造方法。
項6:上記第1セパレータおよび上記第2セパレータにおける、上記巻回電極体の最外面となる領域には、対応する接着層が形成されていない領域、および/または、対応するセパレータにおいて上記正極シートと対向する領域に形成された対応する接着層の目付よりも目付の小さい上記対応する接着層が形成された領域が存在している、項1~項5のいずれか一つに記載の電池の製造方法。
項7:上記第2巻き付け工程の後に、巻回された上記第1セパレータ、上記正極シート、上記第2セパレータ、および上記負極シートを押圧する押圧工程を包含し、上記第2巻き付け工程において、上記正極シートと前記第1セパレータとが接着され、上記押圧工程後における上記正極シートおよび上記第1セパレータの接着強度は、上記押圧工程前における上記正極シートおよび上記第1セパレータの接着強度よりも大きい、項1~項6のいずれか一つに記載の電池の製造方法。