JP7552072B2 - 積層フィルムとその用途 - Google Patents

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Description

本発明は折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール用積層フィルム、折りたたみ型ディスプレイ、及び携帯端末機器に関し、繰り返し折りたたんでも、フィルムの変形による画像の乱れの起こり難いポリエステルフィルムを用いた、折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール用積層フィルム、折りたたみ型ディスプレイ、及び携帯端末機器に関する。
携帯端末機器の薄膜軽量化が進み、スマートフォンに代表される携帯端末機器が広く普及している。携帯端末機器には様々な機能が求められている反面、利便性も求められている。そのため普及している携帯端末機器は、簡単な操作は片手ででき、さらに衣服のポケットなどに収納することが前提であるため6インチ程度の小さな画面サイズとする必要がある。
一方、7インチ~10インチの画面サイズであるタブレット端末では、映像コンテンツや音楽のみならず、ビジネス用途、描画用途、読書などが想定され、機能性の高さを有している。しかし、片手での操作はできず、携帯性も劣り、利便性に課題を有する。
これらを達成するため、複数のディスプレイをつなぎ合わせることでコンパクトにする手法が提案されているが(特許文献1参照)、ベゼルの部分が残るため、映像が切れたものとなり、視認性の低下が問題となり普及していない。
そこで近年、フレキシブルディスプレイ、折りたたみ型ディスプレイを組み込んだ携帯端末が提案されている。この方式であれば、画像が途切れることなく、大画面のディスプレイを搭載した携帯端末機器として利便性よく携帯できる。
ここで、従来の折りたたみ構造を有しないディスプレイや携帯端末機器については、そのディスプレイの表面はガラスなど可撓性を有しない素材で保護することができたが、折りたたみ型ディスプレイにおいて、折りたたみ部分を介して一面のディスプレイとする場合には、可撓性があり、かつ、表面を保護できるハードコートフィルムなどを使用する必要がある。しかしながら、折りたたみ型ディスプレイでは、一定の折りたたみ部分に当たる箇所が繰り返し折り曲げられるため、当該箇所のフィルムが経時的に変形し、ディスプレイに表示される画像を歪める等の問題があった。また、表面保護フィルムだけでなく、折りたたみ型ディスプレイには、偏光板、位相差板、タッチパネル基材、有機EL(エレクトルルミネッセンス)などの表示セルの基材、背面の保護部材など、様々な部位にフィルムが用いられ、これらのフィルムに対しても繰り返し折りたたみに対する耐久性が求められていた。
そこで、部分的に膜厚を変える手法も提案されているが(特許文献2参照)、量産性に乏しい問題がある。
また、ポリエステルフィルムの屈曲方向の屈折率を調整する手法も提案されているが(特許文献3参照)、屈曲方向の屈折率を下げるに従ってハードコート塗布時の鉛筆硬度が低下し、ディスプレイの表面保護機能の低下する問題があった。また、一方向の屈折率を下げていくと折れたたみ時の変形は改善していくが、折りたたみ方向の一軸配向性が高まり、折りたたみ部にクラックが発生する、または破断する問題があった。
特開2010-228391号公報 特開2016-155124号公報 国際公開第2018/150940号
本発明は上記のような従来のディスプレイの部材が有する課題を解決しようとするものであって、量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがない折りたたみ型ディスプレイと、そのような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器を提供できるようにするため、折りたたみ部に折り跡やクラックが発生することのない、折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムを提供しようとするものである。
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に粘着層を有する積層フィルムであって、前記ポリエステルフィルムが下記条件を満足する折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
(1)屈曲方向の屈折率が1.590~1.620
(2)折りたたみ部の方向の屈折率が1.670~1.700
(3)厚み方向の屈折率が1.520以下
(4)密度が1.380g/cm以上
(ここで、屈曲方向とは、ポリエステルフィルムを折りたたむ際の折りたたみ部と直交する方向をいう。)
2. 前記粘着層の厚みが1~50μmである上記第1に記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
3. 前記ポリエステルフィルムの屈曲方向の弾性率が2.7GPa以下、折りたたみ部の方向の弾性率が4.5GPa以上である上記第1又は第2に記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
4. 前記ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上、ヘイズが3%以下、かつ、最大熱収縮率が6%以下である上記第1~第3のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
5. 前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する上記第1~第4のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
6. 上記第1~第5のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムの粘着層を有する側と反対側のポリエステルフィルム上に、厚みが1~50μmのハードコート層を有する折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
7. 上記第1~第6のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムが、有機ELモジュールの保護フィルムとして含まれた折りたたみ型ディスプレイであって、折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一の有機ELモジュールの保護フィルムが含まれている折りたたみ型ディスプレイ。
8. 上記第7に記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
本発明の折りたたみ型ディスプレイ用積層フィルムを用いた折りたたみ型ディスプレイは、量産性を維持しながら、その積層フィルムが、折りたたみ部にクラックが発生することがなく、繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさず、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じないものである。前記のような積層フィルムを有機ELモジュールの保護フィルムとして用いた折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
本発明における折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ際の屈曲半径を示すための模式図である。 本発明における折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムを構成するポリエステルフィルムの屈曲方向を示すための模式図である。 本発明における有機ELモジュールの一例の断面模式図である。
(ディスプレイ)
本発明で言うディスプレイとは、表示装置を全般に指すものであり、ディスプレイの種類としては、LCD、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED、FEDなどあるが、折曲げ可能な構造を有するLCDや、有機EL、無機ELが好ましい。特に層構成を少なくすることができる有機EL、無機ELが特に好ましく、色域の広い有機ELがさらに好ましい。
(折りたたみ型ディスプレイ)
折りたたみ型ディスプレイは、連続した1枚のディスプレイが、携帯時は2つ折りなどに折りたたむことができるものである。折りたたむことでサイズを半減させ、携帯性を向上させることができる。折りたたみ型ディスプレイの屈曲半径は5mm以下が好ましく、3mm以下がさらに好ましい。屈曲半径が5mm以下であれば、折りたたんだ状態での薄型化が可能となる。屈曲半径は小さいほど良いと言えるが、屈曲半径が小さいほど折り跡がつきやすくなる。屈曲半径は0.1mm以上が好ましいが、0.5mm以上であってもよく、1mm以上であってもよい。屈曲半径が1mmであっても、携帯時には実用的に十分な薄型化を達成することができる。折りたたんだ際の屈曲半径とは、図1の模式図の符号11の箇所を測定するもので、折りたたんだ際の折りたたみ部分の内側の半径を意味している。なお、後述する表面保護フィルムは、折りたたみ型ディスプレイの折りたたんだ外側に位置していてもよいし、内側に位置していてもよい。
また、折りたたみ型ディスプレイは3つ折り、4つ折りであってもよく、さらに、ローラブルといわれる巻き取り型であってもよく、これらいずれも本発明でいう折りたたみ型ディスプレイの範囲に入るものとする。
本発明の折りたたみディスプレイ用積層フィルムは、折りたたみ型ディスプレイの構成部材であればどのような部分に用いられてもよい。以下に、有機ELディスプレイを例として、折りたたみディスプレイの代表的構成と本発明の積層フィルムが用いられうる部分を説明する。なお、以下、本発明の折りたたみディスプレイ用積層フィルムを単に本発明の積層フィルムという場合がある。
(折りたたみ型有機ELディスプレイ)
折りたたみ型有機ELディスプレイの必須構成としては、有機ELモジュールであるが、さらに必要に応じて、円偏光板、タッチパネルモジュール、表面保護フィルム、裏面保護フィルムなどが設けられる。
(有機ELモジュール)
有機ELモジュールの一般的な構成は、電極/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/透明電極からなる。電極を設け、さらに電子輸送層、発光層、ホール輸送層を設ける基材として、本発明の積層フィルムを用いることができる。特に、透明電極の基材として好ましく用いることができる。この場合、基材フィルムは高い水蒸気や酸素のバリア性が求められるため、本発明の積層フィルムには、金属酸化物層などのバリア層が設けられることが好ましい。バリア性を上げるため、バリア層は複数設けられていてもよく、バリア層が設けられたポリエステルフィルムを複数枚用いても良い。
(有機ELモジュール保護フィルム)
有機ELモジュールの非視認側にも保護フィルムが設けられることも好ましい。有機ELモジュールは一般的にはガラス基板に形成される。折りたたみ型ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイの場合、ガラス基板は剥離され、その代わりの保護層としてフィルムが設けられる。本発明の積層フィルムはこの有機ELモジュールの保護フィルムとして用いることができる。保護フィルムには傷つき防止のため、ハードコートが塗布されても良い。
図3は、本発明の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムを備えた有機ELモジュール3の一例の模式断面図である。但し、本発明はこれに限定されない。有機ELモジュールは、背面基板(ポリイミド基板やポリエステル基板など)32に薄膜トランジスタ(TFT)33、有機EL素子34の順に有し、有機EL素子34は封止粘着剤層35で封止される。この有機ELパネルの背面基板32を保護するため、粘着層31を介してポリエステルフィルム30を貼着させる。本発明における積層フィルム36は、前記ポリエステルフィルム30と前記粘着剤31を含むものとして保護フィルムの役割を果たす。図示しないが、積層フィルム36を構成するポリエステルフィルムの粘着剤31(粘着層)と少なくとも反対側にハードコート層が積層されていてもよい。
(タッチパネルモジュール)
携帯端末機器にはタッチパネルを有することが好ましい。有機ELディスプレイを用いた場合、有機ELディスプレイの上部、もしくは有機ELモジュール/円偏光板間にタッチパネルモジュールが配置されていることが好ましい。タッチパネルモジュールはフィルムなどの透明基材とその上に配置された透明電極を有する。本発明のポリエステルフィルムや積層フィルムはこの透明基材として用いることができる。タッチパネルの透明基材として用いる場合、積層フィルムにはハードコート層や屈折率調整層を設けることが好ましい。
(円偏光板)
円偏光板は、ディスプレイ内部の部材によって外光が反射され、画質が低下することを抑制する。円偏光板は直線偏光板と位相差板を有する。直線偏光板は偏光子の少なくとも視認側の面に保護フィルムを有する。偏光子の視認側とは反対の面にも保護フィルムを有していてもよく、偏光子に位相差板が直接積層されていてもよい。位相差板はポリカーボネートや環状オレフィンなどの位相差を有する樹脂フィルムや樹脂フィルムに液晶化合物からなる位相差層が設けられたものが用いられる。本発明におけるポリエステルフィルムは、偏光子保護フィルムや位相差板の樹脂フィルムとして用いることができる。これらの場合、本発明の積層フィルムはポリエステルフィルムの遅相軸方向が偏光子の吸収軸方向と平行または直交となることが好ましい。なお、この平行または直交に対して10度、好ましくは5度までのずれは許容される。
(表面保護フィルム)
ディスプレイに上部から衝撃が加わると、有機ELモジュールやタッチパネルモジュールの回路が断線するおそれがあるため、多くの場合、表面保護フィルムが設けられている。本発明の積層フィルムはこの表面保護フィルムとして用いられる。表面保護フィルムはディスプレイの最表面に組み込まれたカバーウインドウと呼ばれるものや、使用者自身で貼り合わせ、剥離ができ、交換可能なアフターと呼ばれるものがあるが、いずれであっても本発明の積層フィルムが用いられる。本発明の積層フィルムを表面保護フィルムとして用いる場合、積層フィルムの粘着層とは反対側のポリエステルフィルム表面にはハードコート層が積層されたものであることが好ましい。ハードコート層を視認側にして折りたたみ型ディスプレイの表面に設けられる。なお、ハードコート層は両面に設けられていてもよい。
本発明の積層フィルムは、折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュールの保護フィルムに用いられることが好ましい。
また、折りたたみ型ディスプレイとしては上記のすべてに本発明の積層フィルムが使用される必要はない。折りたたみ型ディスプレイでは、本発明の積層フィルムの基材にはポリエステル以外にも、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、本発明のポリエステルフィルムではないポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリメチルペンテンフィルムなど、適宜適性に合わせて用いることができる。
本発明の積層フィルムの基材は、1種類以上のポリエステル樹脂からなる単層構成のフィルムでもよいし、2種類以上のポリエステルを使用する場合、多層構造フィルムでも良いし、繰り返し構造の超多層積層フィルムでもよい。
以下、本発明における折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムを構成するポリエステルフィルムを、単に本発明におけるポリエステルフィルム、あるいは、ポリエステルフィルムと記載することがある。
ポリエステルフィルムに使用されるポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
ポリエステルフィルムにポリエステルの共重合体を用いる場合、ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p-キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150~20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の質量比率は20質量%未満である。20質量%未満の場合には、フィルム強度、透明性、耐熱性が保持されて好ましい。
また、ポリエステルフィルムの製造において、少なくとも1種類以上の樹脂ペレットの極限粘度は、0.50~1.0dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.50dl/g以上であると、得られたフィルムの耐衝撃性が向上し、外部衝撃によるディスプレイ内部回路の断線が発生しづらく好ましい。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造を安定的に操業し易く好ましい。
ポリエステルフィルムの厚みは、10~300μ、であることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、25~75μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm以上であると鉛筆硬度向上効果と耐衝撃性向上効果が見られ、厚みが300μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性やハンドリング性などに優れる。
本発明のポリエステルフィルムの表面は、平滑であっても凹凸を有していても良いが、有機ELモジュールの保護フィルム用途に用いられることから、凹凸由来の光学特性低下は好ましくない。ヘイズとしては、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズの下限は小さいほどよいが、安定した生産の面からは0.1%以上が好ましく、0.3%以上であってもよい。
前記のようにヘイズを低下させる目的からはあまりフィルム表面の凹凸は大きくない方がよいが、ハンドリング製の観点から程度な滑り性を与えるために、凹凸を形成する方法としては、表層のポリエステル樹脂層に粒子を配合したり、粒子入りのコート層を製膜途中でコーティングすることで形成することができる。
ポリエステル樹脂層に粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
なかでも、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらにフィルム表面の突起数を少なくすることができる。
また、ポリエステルフィルムは、全光線透過率の好ましい範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができる。ポリエステルフィルムの全光線透過率は高いほどよいと言えるが、安定した生産の面からは99%以下が好ましく、97%以下であってもよい。
ポリエステルフィルムの150℃30分熱処理後の最大熱収縮率は、6%以下が好ましく、5%以下がさらに好ましい。6%以下の熱収縮率あれば、有機ELモジュール貼り付け後のカールやうねりといった平面不良を抑制することができる。熱収縮率は低いほどよいと言えるが、-1%以上であることが好ましく、0%以上であることが好ましい。ここでのマイナスは加熱後に膨張したことを意味し、-1%以上であると、平面不良を起こさず好ましい。
本発明の折りたたみ型ディスプレイ用積層フィルムは、ハードコート層を積層した後に、そのハードコートフィルムについて十分な鉛筆硬度を与えることができる。従来の積層フィルムが、ハードコート層を積層した後、ハードコートフィルムの鉛筆硬度の鉛筆硬度評価において、フィルムが厚み方向に変形してしまうことが原因で鉛筆硬度が低下してしまっていたと考えられる。本発明においては、後述のダイナミック超微小硬度計によるフィルム厚み方向の試験力除荷後の押し込み深さを特定の範囲にすることにより、ハードコートフィルムの鉛筆硬度評価において、高い硬度を達成することができる。フィルム厚み方向の試験力除荷後の押し込み深さは1.5μm以下であることが好ましく、1.4μm以下であることがより好ましく、1.3μm以下であることが更に好ましい。試験力除荷後の押し込み深さ(負荷をかけた最終的な変形量)が1.5μm以下であると、ハードコート層を積層後のハードコートフィルムの鉛筆硬度評価において、フィルムが厚み方向に変形しづらく鉛筆硬度を高くすることができる。ハードコートフィルムの鉛筆硬度を高くすることができると、ディスプレイ表面に傷、凹みが発生しづらくなり、ディスプレイの視認性が向上する。試験力除荷後の押し込み深さは低いほど良いと言えるが、安定した生産や効果が飽和してくるという点で、0.3μm以上が好ましく、さらには、0.5μm以上が好ましい。
試験力除荷後の押し込み深さを低減するためには、厚み方向の屈折率を1.520以下に調節することが効果的である。屈折率を1.520以下にする手段としては、後述するが他の物性、屈曲方向や折りたたみ方向の屈折率を好ましい範囲に制御できる範囲内で、屈曲方向や折りたたみ方向の延伸倍率を高く調節することや、屈曲方向や折りたたみ方向の延伸温度を低く設定すること、熱固定温度を高く設定することなどの条件設定を例示できる。
本発明における折りたたみ型ディスプレイ用ポリエステルフィルムは、折りたたみ時の折れ痕やクラックや破断が発生しない、かつ、ディスプレイの中立面を調整することができる。さらに、外部の衝撃から有機ELパネルを保護することができる。中立面とは、折りたたんだ際に内側が圧縮応力、外側が引張応力がかかるがその間の応力がかからない面のことをいう。折りたたみディスプレイにおいては、一般的に有機EL層に中立面を設計する。中立面は各層の弾性率と厚みによって調整することができる。よって、ポリエステルフィルムの屈曲方向の弾性率は2.7GPa以下が好ましく、2.6GPa以下であることがより好ましく、2.5GPa以下であることが更に好ましい。屈曲方向の弾性率を低減することで、屈曲性が良くなると言えるが、中立面の調整のため1.8GPa以上が好ましい。折りたたみ方向の弾性率は4.5GPa以上が好ましく、4.6GPa以上であることがより好ましく、4.7GPa以上であることが更に好ましい。折りたたみ方向の弾性率を高くすることで、ディスプレイ作成時にディスプレイ表面の平面性を保つことができる。また、外部の衝撃から有機ELを保護することができる。折りたたみ方向の弾性率は高い程好ましいが、製膜性の観点から8.0GPa以下が好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムの表面に、粘着層やハードコート層などを形成する樹脂との密着性を向上させるための処理を行うことができる。
表面処理による方法としては、例えば、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が挙げられ、特に限定なく使用できる。
また、易接着層などの接着性向上層により、密着性を向上させることもできる。易接着層としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など特に限定なく使用でき、一般的なコーティング手法、好ましくはいわゆるインラインコート処方により形成できる。
上述のポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルをフィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程を経て、製造することができる。
次に、ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す場合がある)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。また、単層構成、多層構成など層数を限定するものではない。
PETのペレットを所定の割合で混合、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。単層の場合は1台の押し出し機でよいが、多層構成のフィルムを製造する場合には、2台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成する複数のフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成することができる。
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約280℃程度に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため好ましい。
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下が好ましく、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で好ましい。
(屈曲方向の屈折率について)
本発明において、ポリエステルフィルムの長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の屈折率は1.590~1.620であることが好ましく、更に好ましくは、1.591~1.600である。そして、ポリエステルフィルムの屈曲方向の屈折率が1.590~1.620であることが好ましく、1.591~1.600であることがより好ましい。ここで、屈曲方向とは、図2のポリエステルフィルム(符号2)上の符号22に示すように、折りたたみ型ディスプレイの用途において想定される折りたたみ部(符号21)と直交する方向を指している。長手方向及び幅方向の少なくともいずれか一方向の屈折率が1.590~1.620であると、繰り返し折りたたんだ際の変形が少なく、折りたたみ型ディスプレイの画質を低下させるおそれがなく好ましい。屈折率は1.591~1.600であることがより好ましい。もちろん、その方向は前記の屈曲方向であることが好ましい。1.590以上であると後述の屈曲試験後に折りたたみ部方向にクラックが入るおそれがなく、もちろん破断も起こらないため、ディスプレイの視認性を良好に保つことができる。ポリエステルフィルムの屈折率は、延伸倍率、延伸温度を調節することで効果的に調節することができる。また、屈折率の調整のために延伸方向の緩和工程、多段延伸を用いても良い。多段延伸を行う場合には、1段目の延伸倍率よりも2段目以降の延伸倍率を高くすることが好ましい。
ポリエステルフィルムの長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の屈折率を上記範囲で制御すること、より好ましくは、屈曲方向の屈折率を上記範囲で制御することで、折りたたみ時に折りたたみの内側にかかる圧縮応力による疲労を低減することができる。圧縮応力による疲労は主に結晶部において起こると考えられており、屈曲方向に結晶が少ないほうが疲労しにくい。したがって、屈折率を下げることにより屈曲方向の配向結晶量が低減され、圧縮疲労を抑制されていると考えられる。
また、折りたたみ時に折りたたみの外側にかかる引張応力によって生じるクリープ現象を屈折率の低減で抑えることができる。引張応力による疲労は主に非晶部において起こると考えられており、繰り返しかかる応力による分子鎖の引き揃えが発生し変形が生じる。屈曲方向に並んでいる分子鎖が少ないほうが引き揃えによる変形が少ないと推測できる。また、非晶部が少ない方が引張による疲労は抑制できるため、結晶化度すなわち密度が高い方が好ましい。
本発明においては、未延伸ポリエステルシートを長手方向(機械流れ方向)及び幅方向の少なくともいずれか一方向の延伸倍率を1.2~2.0倍とすることが好ましく、1.7~2.0倍がさらに好ましい。そして、当該延伸方向は前記の屈曲方向であることが好ましい。延伸倍率が1.2倍以上であるとハードコート塗工時などの後加工での変形が無いため好ましく、延伸倍率が2.0倍以下であるとフィルムの厚みムラが生じないため好ましい。延伸温度としては、75~120℃が好ましく、75~105℃が更に好ましい。なお延伸時の加熱方法は、熱風加熱方式、ロール加熱方式、赤外加熱方式など従来公知の手段を採用することができる。延伸温度を75~120℃にすることで、上記延伸倍率での延伸による大きな厚みムラを防ぐことができる。また、前記のように大きな厚みムラを生じない範囲でなるべく低温で延伸することで、厚み方向の屈折率を低下させることができる。
(折りたたみ部の方向の屈折率について)
上記のポリエステルフィルムの屈折率が1.590~1.620である方向と直交する方向の屈折率は、1.670~1.700であることが好ましい。即ち、屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)の屈折率が1.670~1.700であることが好ましい。1.670~1.700にすることで屈曲方向に折りたたんだ際の変形を少なくすることができる。1.700以下にすることで折りたたみ部の方向にクラックが入ったり、破断することを抑制することができる。1.670以上にすることで屈曲方向の屈曲性を向上させること、表面硬度を向上させることができる。1.680~1.695がより好ましい。屈曲方向と直交する方向の屈折率を調整する方法として、延伸倍率、延伸予熱温度、延伸温度、多段延伸、フィルム弛緩が挙げられる。延伸倍率は4.0~6.0倍であることが好ましく、より好ましくは、4.4~6.0である。また、屈曲方向と直交する方向の延伸予熱温度は70~110℃であることが好ましい。屈曲方向と直交する方向に多段延伸する場合、1段目より2段目以降の延伸倍率を高くする方が好ましい。フィルム弛緩は機械流れ方向(長手方向)、垂直方向(幅方向)に何れにおいても1~10%行っても良い。
(厚みの方向の屈折率について)
厚み方向の屈折率は1.520以下であることが好ましい。1.520以下にすることで、屈曲方向の屈折率を低く設計しても、フィルム表面の硬度の低下を抑制することができ、屈曲性と表面硬度の両立を実現することができるためである。1.520以下にすることで厚み方向の試験力除荷後の押し込み深さが低減し、フィルム表面の硬度、特にハードコート層積層後のハードコートフィルムの鉛筆硬度を向上することができる。より好ましくは1.515以下、更に好ましくは1.510以下、特に好ましくは1.505以下、最も好ましくは1.500以下である。厚み方向の屈折率は低いことが好ましいが、安定した生産の面で1.3以上が好ましく、さらには1.4以上であってもよい。特に好ましくは1.410以上である。上記範囲は屈曲方向と折りたたみ方向に延伸倍率を両方に増加させていくことで達成できると言えるが、屈曲方向と幅方向の屈折率を好ましい範囲に制御した上で、厚み方向の屈折率を制御するためには、製膜工程の各工程条件のバランスを確認しながら条件設定することが好ましい。
厚み方向の屈折率を前記範囲に制御する方法は、屈曲方向の延伸予熱温度、延伸温度、延伸倍率、折りたたみ部の方向の延伸予熱温度、延伸温度、多段延伸、高倍率延伸、または熱固定の温度設定がある。屈曲方向の延伸予熱温度は70℃~110℃が好ましい。屈曲方向の延伸温度は75~120℃が好ましい。屈曲方向の延伸倍率は1.2~2.0倍が好ましく、更に好ましくは1.7~2.0倍である。延伸温度を低くし、低延伸倍率で延伸することで屈曲方向の屈曲性を維持したまま、厚み方向の屈折率を効果的に下げることができる。折りたたみ部方向の延伸予熱温度も75℃~110℃が好ましい。延伸温度は75~120℃が好ましい。折りたたみ部の延伸倍率は4.0~6.0倍が好ましく、4.4~6.0倍がより好ましい。屈曲方向の屈折率を維持または低減しながら、厚み方向の屈折率を効果的に低減することができる。高倍率延伸する方法として、多段延伸を用いても良い。その場合には、1段目の延伸倍率より、2段目の延伸倍率を高くすることが効果的に屈折率を制御でき好ましい。また、結晶化工程後に再度延伸する方式を用いても良い。延伸初期から後半にかけて延伸速度を早くする加速延伸を用いても良い。
熱固定温度は180~240℃が好ましい。熱固定を行うことで延伸方向への配向結晶化が進み、厚み方向の屈折率を下げることができる。
厚み方向の屈折率を下げることでフィルム表面の硬度が向上する理由は必ずしも明確ではないが、分子鎖内のベンゼン環等の芳香族が面方向に配向し、厚み方向にかかる応力による変形を抑制する効果があると考えられる。
(ポリエステルフィルムの密度について)
ポリエステルフィルムの密度は1.380g/cm以上であることが好ましい。1.383g/cm以上であることがより好ましい。1.380g/cm以上にすることで屈曲性を向上させること、フィルム表面硬度、特に、ハードコート層を積層した後のハードコートフィルムの鉛筆硬度を向上させることができる。密度は高いほど好ましく、フィルム中の粒子の有無等によっても多少左右されるが、1.40g/cm以下であることが好ましい。製膜時の熱固定温度を180~240℃に設定することで結晶化を進行させ密度を効果的に増大させることができる。
ポリエステルフィルムの屈曲方向は、長手方向(機械流れ方向)に対応させることが好ましい。こうすることで、2軸延伸目で屈曲方向の屈折率を下げやすく屈曲性を向上させやすい。即ち、未延伸ポリエステルシートを長手方向に1.2~2.0倍、より好ましくは1.7~2.0倍の延伸倍率で延伸することが好ましいポリエステルフィルムを得られる。そして、幅方向には、4.0~6.0倍、より好ましくは4.4~6.0倍の延伸倍率で延伸することが好ましい態様であると言える。
また、本発明においては、ポリエステルフィルムに
(1)屈曲方向の屈折率が1.590~1.620
(2)折りたたみ部の方向の屈折率が1.670~1.700
(3)厚み方向の屈折率が1.520以下
(4)密度が1.380g/cm以上
の4つの特性を同時に具備させることが特に好ましい態様と言えるが、上述の好ましい製造条件の範囲内での組合せであっても、例えば、屈曲方向の延伸倍率が1.4倍以下、折りたたみ部の方向の延伸倍率が4.4倍未満であり、かつ、熱固定温度が220℃以下の組合せであるような、各々の好ましい製造条件範囲の中において最善とは言えない条件の組合せの場合、必ずしも上記の4つの特性を同時に満足するものが得られない場合が起こり得る。この場合には、屈曲方向の延伸倍率延伸倍率を1.7倍以上に高めたり、折りたたみ部の方向の延伸倍率が4.4倍以上に高めたり、熱固定温度を230℃程度に高めたり、あるいは屈曲方向及び/又は折りたたみ部の方向の延伸温度を低くするなど、いずれかの条件の微調整またはそれらの組合せによって、上記の4つの特性を同時に満足させることができる。
製膜性やフィルム強度や熱寸法安定や外観不良などを調整するために、延伸、緩和、熱固定、表面処理など何れの製膜方式を取っても良いが、フィルムの屈折率と密度を上記の好ましい範囲に制御することが本発明において特に好ましい態様と言える。屈折率と密度を好ましい範囲に制御することで、従来フィルムより優れた耐屈曲性と表面硬度、特にハードコート層を積層した後のハードコートフィルムの高い鉛筆硬度が得られる、折りたたみ型ディスプレイに適した積層フィルムを提供することができる。
具体的には、例えば、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化させて、未延伸PETシートを形成する。得られた未延伸シートを75~120℃に加熱したロールで長手方向に1.2~2.0倍、より好ましくは1.7~2.0倍に延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、75~120℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に4.0~6.0倍、より好ましくは4.4~6.0倍に延伸する。引き続き、180~240℃の熱処理ゾーンに導き、1~60秒間の熱処理を行うことができる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向または長手方向に0~10%の弛緩処理を施してもよい。
ポリエステルフィルムの極限粘度は、0.50~1.0dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.50dl/g以上であると、耐衝撃性が向上し、外部衝撃によるディスプレイ内部回路の断線が発生しづらく好ましい。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造が安定し好ましい。
(易接着層)
本発明において、ポリエステルフィルムとハードコート層などとの接着性を向上させるため、ポリエステルフィルムに易接着層を積層することも好ましい。易接着層は、易接着層形成のための塗布液を未延伸又は縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、必要に応じて熱処理乾燥し、さらに延伸されていない少なくとも一方向に延伸して得ることができる。二軸延伸後にも熱処理することができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.005~0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.005g/m以上であると、接着性が得られて好ましい。一方、塗布量が0.20g/m以下であると、耐ブロッキング性が得られて好ましい。
易接着層の積層に用いられる塗布液に含有させる樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等、特に限定なく使用できる。易接着層形成用塗布液に含有させる架橋剤としては、メラミン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられる。それぞれ2種以上を混合して使用することもできる。これらはインラインコートの性質上、水系塗布液によって塗工されることが好ましく、前記の樹脂や架橋剤は水溶性又は水分散性の樹脂や化合物であることが好ましい。
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が易接着層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
また、塗布液を塗布する方法としては、上記の塗布層と同様に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
(ハードコート層)
本発明の積層フィルムを有機ELモジュールを保護する保護フィルムとして用いる場合は、粘着層とは反対側のポリエステルフィルム表面にハードコート層を有していることが好ましい。ハードコート層は、ポリエステルフィルム上のディスプレイ表面側に位置させてディスプレイにおいて用いられることが好ましい。ハードコート層を形成する樹脂としては、アクリル系、シロキサン系、無機ハイブリッド系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシ系など特に限定なく使用できる。また、2種類以上の材料を混合して用いることもできるし、無機フィラーや有機フィラーなどの粒子を添加することもできる。
(ハードコート層の膜厚)
ハードコート層の膜厚としては、1~50μmが好ましい。1μm以上であると十分に硬化し、鉛筆硬度が高くなり好ましい。また厚みを50μm以下にすることで、ハードコートの硬化収縮によるカールを抑制し、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。
(塗布方法)
ハードコート層の塗布方法としては、マイヤーバー、グラビアコーター、ダイコーター、ナイフコーターなど特に限定なく使用でき、粘度、膜厚に応じて適宜選択できる。
(硬化条件)
ハードコート層の硬化方法としては、紫外線、電子線などのエネルギー線や、熱による硬化方法など使用でき、フィルムへのダメージを軽減させるために、紫外線や電子線などによる硬化方法が好ましい。
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度としては、3H以上が好ましく、4H以上が更に好ましい。3H以上の鉛筆硬度があれば、容易に傷がつくことはなく、視認性を低下させない。一般にハードコート層の鉛筆硬度は高い方が好ましいが9H以下で構わず、8H以下でも構わず、6H以下でも実用上は問題なく使用できる。
(ハードコート層の特性)
本発明におけるハードコート層は、上述のような表面の鉛筆硬度を高めてディスプレイの保護をする目的に使用できるものであり、透過率が高いことが好ましい。ハードコートフィルムの透過率としては、87%以上が好ましく、88%以上がさらに好ましい。透過率が87%以上あれば、十分な視認性が得られる。ハードコートフィルムの全光線透過率は、一般的に高いほど好ましいが、安定した生産の面から99%以下が好ましく、97%以下であってもよい。また、ハードコートフィルムのヘイズは、一般的に低いことが好ましく、3%以下が好ましい。ハードコートフィルムのヘイズは2%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズは一般的には低いほどよいが、安定した生産の面から0.1%以上が好ましく、0.3%以上であってもよい。
ハードコート層には、さらに、他の機能が付加されたものであってもよい。例えば、上記のような一定の鉛筆硬度を有する防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層、低反射層および帯電防止層などの機能性が付加されたハードコート層も本発明おいては好ましく適用される。
(粘着層)
粘着層を構成する材料としては特に限定されず、例えば、ゴム系、アクリル系、ポリオレフィン系、など、従来の粘着剤を使用することができる。ゴム系では、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム等のほか、SBS、SIS、SEBS、SEPSなどのスチレン系ブロック共重合体エラストマーが挙げられる。アクリル系では(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの共重合体を架橋したものが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート剤、二重結合を複数含有する化合物などが挙げられる。ポリオレフィン系としてはEPMやEPDMなどのエチレン-プロピレンゴムやこれらをソフトセグメントにしてポリエチレンやポリプロピレンをハードセグメントとしたもの、エチレン-プロピレンゴムとポリエチレンやポリプロピレンとのブレンド物などが挙げられる。粘着層に公知の粘着付与剤、軟化剤などを添加することで粘着性を調整することが可能である。また、使用されるベースポリマーの分子量を調節することでも、粘着性を調節することが可能である。粘着層はさらに他の成分を含んでもよい。他の成分の例は、添加剤(すなわち、助剤)、例えば、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、可塑剤などである。
(粘着層の膜厚)
粘着層の膜厚としては、1μm~50μmであり、好ましくは2μm~40μmであり、より好ましくは4μm~30μmである。
(塗工方法)
粘着剤溶液を塗工・乾燥、アクリル系ではモノマーやオリゴマーを塗工後、放射線硬化等の方法、また、基材レスの光学用粘着剤シート(OCA)を転写してもよい。
粘着力(剥離強度)は貼り付け先の部材によって変更することが好ましい。折りたたみディスプレイにおいては、粘着力が弱いと屈曲部が浮く問題が発生するため、ガラスとの24時間後の粘着力は10~40N/25mmが好ましい。
粘着層の表面には(ポリエステルフィルムの反対面)離型フィルムが設けられても良い。
(離型フィルム)
粘着シートの離型フィルムとしては広く離型フィルムとして用いられているものを適宜用いることができる。基材フィルムの樹脂としては特に限定はなく、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、など、樹脂フィルムとなるものであれば制限なく使える。これらの中でも、機械的強度、耐熱性、供給安定性などの面からポリエステルが好ましく、さらにはポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、フィルムは未延伸フィルムであっても延伸フィルムであっても良い。延伸フィルムである場合は一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであっても良い。中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材フィルム自体が離型性を有する場合は、そのまま離型フィルムとして用いることができる。また、離型性を調節するためにコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理を行ってもよい。
(離型層)
さらに、基材フィルムに離型層を設けてもよい。離型層としては、シリコーン系、アミノ樹脂系、アルキッド樹脂系、長鎖アクリル樹脂系、等が挙げられ、必要な剥離力に合わせてその組成、種類を適宜選択できる。
離型層を設ける場合に基材フィルムに易接着層を設けてもよい。易接着層としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系など各基材フィルムで従来から用いられているものを使用することができ、使用する基材フィルムや離型層に合わせて選択できる。
(帯電防止層)
離型フィルム帯電防止層を設けてもよい。離型層帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩、ポリアニリンやポリチオフェンなどの導電性高分子、針状金属フィラー、スズドープ酸化インジウム微粒子、アンチモンドープ酸化スズ微粒子などの導電性高屈折率微粒子、これらの組合せが挙げられる。
バインダ樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリルなどが用いられる。帯電防止層は離型面に設けられ、離型層の下層として存在していてもよく、離型面に反対側に設けられていてもよい。
次に、本発明について実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で実施した特性値の評価方法を下記に示す。
(1)極限粘度
フィルムまたはポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。
(2)ポリエステルフィルムサンプルの耐屈曲性(屈曲半径1.5mm)
幅方向20mm×流れ方向110mmの大きさのポリエステルフィルムサンプルを用意する。無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、屈曲半径1.5mmに設定し、1回/秒の速度で、20万回屈曲させた。その際、サンプルは長辺側両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位は20mm×90mmとした。ここで、図1は、折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ際の屈曲半径を示すための模式図であり、その折りたたんだ態様の内側表面にポリエステルフィルムが配されている場合を考慮して、図1の符号11の個所を1.5mmに設定したものとしてモデル的に屈曲試験をしている。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視による観察を行った。 ○ :サンプルにクラック及び変形を確認できない。
× :サンプルにクラックまたは折跡があり、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
(3)ポリエステルフィルムサンプルの耐屈曲性(屈曲半径0.5mm)
上記屈曲試験と同様の方法で、屈曲半径0.5mmに設定し1回/秒の速度で20万回屈曲させた。ここで、図1は、折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ際の屈曲半径を示すための模式図であり、その折りたたんだ態様の内側表面にポリエステルフィルムが配されている場合を考慮して、図1の符号11の個所を0.5mmを設定したものとしてモデル的に屈曲試験をしている。屈曲部の外側のフィルム表面をデジタルマイクロスコープ(HIROX社製RH8800)の700倍で観察し、シワ(クラック)の有無を観察した。上記の屈曲半径1.5mmの耐屈曲性目視テストとは別に、屈曲半径を0.5mmに小さくした本テストを行うことで、ハードコート層や他の部材が積層又は貼着された、折りたたみ型ディスプレイの実際の使用状態に近い状態での評価することを企図している。前記屈曲半径1.5mmによる目視観察とは別に、目視では検出しにくい微細な欠点である、破断しやすいまたはクラックが入りやすい欠点を検出するためのテストである。
○ :屈曲外側のフィルム表面に欠陥がない。
× :破断した、または屈曲外側のフィルム表面にシワ(クラック)が確認できる。
(4)積層フィルムの耐屈曲性(屈曲半径2.0mm)
上記屈曲試験と同様の方法で、粘着層を曲げ内面にし、屈曲半径2.0mmに設定し1回/秒の速度で20万回屈曲させた。ここで、図1は、折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ際の屈曲半径を示すための模式図であり、その折りたたんだ態様の内側表面にポリエステルフィルムが配されている場合を考慮して、図1の符号11の個所を2.0mmを設定したものとしてモデル的に屈曲試験をしている。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視による観察を行った。
○ :サンプルにクラック及び変形を確認できない。
× :サンプルにクラックまたは折跡があり、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
(5)積層フィルムの耐屈曲性(屈曲半径1.0mm)
上記屈曲試験と同様の方法で、粘着層を曲げ内面にし、屈曲半径1.0mmに設定し1回/秒の速度で20万回屈曲させた。ここで、図1は、折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ際の屈曲半径および屈曲方向を示すための模式図であり、その折りたたんだ態様の内側表面にポリエステルフィルムが配されている場合を考慮して、図1の符号11の個所を1.0mmを設定したものとしてモデル的に屈曲試験をしている。屈曲部の外側のフィルム表面をデジタルマイクロスコープ(HIROX社製RH8800)の700倍で観察し、シワ(クラック)の有無を観察した。上記の屈曲半径1.5mmの耐屈曲性目視テストとは別に、屈曲半径を1.0mmに小さくした本テストを行うことで、ハードコート層や他の部材が積層又は貼着された、折りたたみ型ディスプレイの実際の使用状態に近い状態での評価することを企図している。前記屈曲半径1.5mmによる目視観察とは別に、目視では検出しにくい微細な欠点である、破断しやすいまたはクラックが入りやすい欠点を検出するためのテストである。
○ :屈曲外側のフィルム表面に欠陥がない。
× :破断した、または屈曲外側のフィルム表面にシワ(クラック)が確認できる。
(6)屈折率
JIS K 7142:2008「プラスチックの屈折率測定方法(A法)」に準拠して、アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)を用いて、長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を求めた。
(7)鉛筆硬度
ハードコートフィルムの鉛筆硬度をサンプルとして、JIS K 5600-5-4:1999に準拠し、荷重750g、速度1.0mm/sで測定した。本発明においては3H以上を合格とした。
(8)全光線透過率、ヘイズ
ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。
(9)密度
JIS K 7112:1999準拠の方法(密度勾配管法)に従って密度を測定した。(単位:g/cm)。
(10)試験力除荷後の押し込み深さ
試料を約2cm角に切り取り、マイクロカバーガラス18×18mm(マツナミガラス社製)上に、測定面の反対面を接着剤(セメダイン(登録商標)ハイスーパー30)にて固定した。貼着固定後、12時間以上室温で放置し、その後、ダイナミック超微小硬度計「DUH-211」(島津製作所製)を用いて、次の条件で、試験力除荷後の押し込み深さ(μm)を測定した。
≪測定条件≫
試験モード :負荷-除荷試験
使用圧子 :稜間角115度、三角錐圧子
圧子弾性率:1.140×10N/mm
圧子ポアソン比:0.07
試験力 :50mN
負荷速度 :4.44mN/sec
負荷保持時間 :2sec
除荷保持時間 :0sec
(11)最大熱収縮率
試料フィルムをタテ10mm×ヨコ250mmにカットし、長辺を測定したい方向に合わせて、200mm間隔で印をつけ、5gの一定張力下で印の間隔Aを測った。続いて、試料フィルムを無荷重で150℃の雰囲気のオーブン中で30分間放置した後、オーブンから取り出し室温まで冷却した。その後、5gの一定張力下で印の間隔Bを求め、下記式により熱収縮率(%)を求めた。なお、上記熱収縮率は試料フィルムの幅方向に3等分した位置で測定し、3点の平均値を熱収縮率(%)とする
熱収縮率(%)=[(A-B)×100]/A
屈曲方向と折りたたみ方向の双方向についてそれぞれ別個に試料フィルムのタテ、ヨコが異なるようにカットして測定し、測定値が大きい方向のデータを最大熱収縮率(%)とする。
(12)弾性率(ヤング率(単位:GPa))
JIS K7127に準拠してポリエステルフィルムの屈曲方向および折りたたみ方向の
弾性率を23℃にて測定した。
(ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(a)を得た。
(ポリエチレンテレフタレートペレット(b)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の製造工程について、第3エステル化反応の滞留時間を調節した他は同様の方法にて極限粘度を0.580dl/gに調整し、ポリエチレンテレフタレートペレット(b)を得た。
(ポリエチレンテレフタレートペレット(c)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(c)を作成した。
(ウレタン樹脂の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96質量部、ジメチロールプロピオン酸12.60質量部、ネオペンチルグリコール11.74質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール112.70質量部、及び溶剤としてアセトニトリル85.00質量部、N-メチルピロリドン5.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマーD溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水溶性ポリウレタン樹脂(A)を調製した。
(水溶性カルボジイミド化合物の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコにイソホロンジイソシアネート200質量部、カルボジイミド化触媒の3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド4質量部を投入し、窒素雰囲気下、180℃において10時間撹拌し、イソシアネート末端イソホロンカルボジイミド(重合度=5)を得た。次いで、得られたカルボジイミド111.2g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)80gを100℃で24時間反応させた。これに水を50℃で徐々に加え、固形分40質量%の黄色透明な水溶性カルボジイミド化合物(B)を得た。
(易接着層形成用塗布液の調製)
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。
水 16.97質量部
イソプロパノール 21.96質量部
ポリウレタン樹脂(A) 3.27質量部
水溶性カルボジイミド化合物(B) 1.22質量部
粒子 0.51質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量部
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
(ハードコート塗布液aの調製)
ハードコート材料(JSR社製、オプスター(登録商標)Z7503、濃度75%)100質量部に、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、濃度100%)0.1質量部を添加し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度40質量%のハードコート塗布液aを調製した。
(ハードコート塗布液bの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業社製、A-TMM-3、固形分濃度100%)95質量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)907、固形分濃度100%)5質量部、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、固形分濃度100%)0.1質量部を混合し、トルエン/MEK=1/1の溶媒で希釈して、濃度40%のハードコート塗布液bを調製した。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートのペレット(a)を押出機に供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを加熱ロールを用いて75℃に均一加熱し、非接触ヒーターで85℃に加熱して1.4倍のロール延伸(縦延伸)を行った。得られた一軸延伸フィルムに上記の易接着層形成用塗布液をロールコート法で両面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.06g/m2になるように調整した。その後、テンターに導き105℃で予熱後、95℃で4.0倍に横延伸し、幅固定して230℃で5秒間の熱固定を施し、さらに180℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み50μmポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。その後、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に両面粘着シート(リンテック社製,製品名「OPTERIA MO-3006C」,厚さ:25μm)を貼り付け積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(実施例2~3)
表1に記載の長手方向の延伸倍率に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例4)
幅方向の延伸倍率を4.4倍に、熱固定温度を220℃に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例5~6)
表1に記載のように長手方向の延伸倍率に変更した他は実施例4と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例7)
幅方向の延伸倍率を5.5倍に、熱固定温度を190℃に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例8~9)
表1に記載のように長手方向の延伸倍率に変更した他は実施例7と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例10)
実施例5の製造工程において、長手方向に延伸した後に100℃で10%の弛緩熱処理を施した他は実施例5と同様にして、積層フィルムを得た。
(実施例11)
実施例5の製造工程において、熱固定後に200℃でクリップを開放し、長手方向、幅方向に弛緩熱処理した他は実施例5と同様にして、積層フィルムを得た。長手方向は弛緩率が3%になるようテンター速度と巻き取りロール速度を調整した。幅方向の弛緩はフリー状態とした。
(実施例12)
長手方向延伸時の温度を75℃に変更し、熱固定温度を220℃に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例13)
長手方向延伸時の温度を75℃に変更し、延伸倍率1.2倍に変更して延伸した後、幅方向に延伸倍率5.0倍に変更して延伸した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例14)
実施例3の長手方向の延伸を2段延伸とし、その1段目の延伸倍率を1.2倍とし、2段目の延伸倍率を1.67倍とした他は実施例3と同様にして積層フィルムを得た。トータルでの長手方向の延伸倍率は約2.0倍である。
(実施例15)
幅方向延伸時の予熱温度を95℃に変更し、熱固定温度を190℃に変更した他は実施例5と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例16)
実施例2の幅方向の延伸を2段延伸とし、その1段目の延伸倍率を1.5倍とし、2段
目の延伸倍率を4.0倍とし、熱固定温度を190℃に変更した他は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。トータルの幅方向の延伸倍率は6.0倍である。
(実施例17~18)
表1に記載のように厚みを変更した他は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例19)
実施例1の製造工程において幅方向の弛緩熱処理を行わなかった他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(実施例20)
実施例1と同様に未延伸フィルムを作成後、未延伸フィルムをテンターで75℃で予熱し、85℃で1.4倍に横延伸した。得られた一軸延伸フィルムに上記の易接着層形成用塗布液をロールコート法で両面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.06g/m2になるように調整した。加熱ロールを用いて105℃に均一加熱し、非接触ヒーターで95℃に加熱し.4.0倍にロール延伸(縦延伸)を行った。幅固定して230℃で5秒間の熱固定を施し、厚み50μmポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。その後、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に両面粘着シート(リンテック社製,製品名「OPTERIA MO-3006C」,厚さ:25μm)を貼り付け積層フィルムを得た。
(比較例1)
長手方向の延伸を行わずに、幅方向のみ延伸し横1軸延伸とした他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(比較例2)
長手方向の延伸を行わずに、幅方向のみ延伸し横1軸延伸とした他は実施例7と同様にして積層フィルムを得た。
(比較例3~7)
熱固定温度を220℃に変更し、表1記載のPETペレット、厚みとした他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
比較例3~7は、前記の通り実施例1よりも熱固定温度が低く、長手方向、幅方向の延伸倍率が好ましい条件範囲の中では最善とは言えない各条件水準の組合せであり、表1に記載したように厚み方向の屈折率が増加し、試験力除荷後の押し込み深さが大きく、ハードコート層積層後の鉛筆硬度が各実施例に比較して小さくなった。
(比較例8)
長手方向の延伸倍率を2.7倍に変更し、熱固定温度を220℃に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(比較例9)
長手方向の延伸倍率を3.4倍に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
(比較例10)
熱固定温度を100℃に変更した他は実施例4と同様にして積層フィルムを得た。
(比較例11)
長手方向の延伸温度を130℃に変更した他は実施例13と同様にして積層フィルムを得た。
(比較例12)
幅方向予熱温度を120℃に変更した他は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
上記の作製した積層フィルムの粘着層とは反対側のポリエステルフィルム表面にマイヤーバーを用いて、ハードコート塗布液aを乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm)、ハードコートフィルムを得た。
(実施例21)
また、実施例1と同様に積層フィルムを得た後、ハードコート塗布液aに替えてハードコート塗布液bを前記と同様に塗布したハードコートフィルムを得た。
そのハードコートフィルムの粘着層側を有機ELモジュールに貼合し、図1における屈曲半径の相当する半径が3mmの全体の中央部で二つ折りにできるスマートフォンタイプの折りたたみ型ディスプレイを作成した。ハードコートフィルムは折りたたみ部分を介して連続した1枚のディスプレイの表面に配され、ハードコート層を有機ELモジュールの表面に位置するように配されている。各実施例のハードコートフィルム(積層フィルム)を用いたものは、中央部で二つ折りに折りたたんで携帯できるスマートフォンとして動作及び視認性を満足するものであった。また、外力によって表面が凹むことはなかった。一方、各比較例のハードコートフィルムを使用した折りたたみ型ディスプレイは、使用頻度が増えるに従って、ディスプレイの折りたたみ部で画像の歪を生じてきたように感じ、あまり好ましいものではなかった。また、表面に凹み、キズが確認されるものもあった。
本発明の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムを用いた折りたたみ型ディスプレイは、量産性を維持しながら、有機ELモジュールの表面に位置している積層フィルムが繰り返し折りたたまれた後の変形を起こさないため、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じることがない。特に本発明の積層フィルムを有機ELモジュールの保護フィルムとして使用した折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器または画像表示装置は、美しい画像を提供し、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
1 : 折りたたみ型ディスプレイ
11: 屈曲半径
2 : 折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムを構成するポリエステルフィルム
21: 折りたたみ部
22: 屈曲方向(折りたたみ部と直交する方向)
3 : 有機ELモジュール
30: ポリエステルフィルム
31: 粘着層
32: 背面基板
33: 薄膜トランジスタ
34: 有機EL素子
35: 封止粘着剤層
36: 積層フィルム

Claims (8)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に粘着層を有する積層フィルムであって、前記ポリエステルフィルムが下記条件を満足する折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
    (1)屈曲方向の屈折率が1.590~1.606
    (2)折りたたみ部の方向の屈折率が1.670~1.700
    (3)厚み方向の屈折率が1.520以下
    (4)密度が1.380g/cm以上
    (5)ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
    (ここで、屈曲方向とは、ポリエステルフィルムを折りたたむ際の折りたたみ部と直交する方向をいう。)
  2. 前記粘着層の厚みが1~50μmである請求項1に記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
  3. 前記ポリエステルフィルムの屈曲方向の弾性率が2.7GPa以下、折りたたみ部の方向の弾性率が4.5GPa以上である請求項1又は2に記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
  4. 前記ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上、ヘイズが3%以下、かつ、最大熱収縮率が6%以下である請求項1~3のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
  5. 前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する請求項1~4のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムの粘着層を有する側と反対側のポリエステルフィルム上に、厚みが1~50μmのハードコート層を有する折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルム。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイの有機ELモジュール保護用積層フィルムが、有機ELモジュールの保護フィルムとして含まれた折りたたみ型ディスプレイであって、折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一の有機ELモジュールの保護フィルムが含まれている折りたたみ型ディスプレイ。
  8. 請求項7に記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
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