JP7540971B2 - エレクトロスラグ溶接方法及びエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置 - Google Patents

エレクトロスラグ溶接方法及びエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置 Download PDF

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Description

本発明は、エレクトロスラグ溶接方法及びエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置に関する。
アーク溶接において溶融池に磁界を作用させて、該磁界と溶接電流とによる回転方向の磁力で溶融金属を攪拌しながら溶接を行う磁気攪拌溶接法は、知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2では、溶接トーチの回りを囲むように磁気コイルが配されている。
特開平4-190976号公報 特開平8-318370号公報
ところで、エレクトロスラグ溶接は、アーク溶接と異なり、数百アンペアの電流を通電している溶接ワイヤを、溶融した電解質である溶融スラグに供給し、溶融スラグ内のジュール発熱によって、母材と溶接ワイヤを溶かしながら溶接する方法である。溶接方向は垂直であり、下から上に溶接が進む。また、溶融スラグや溶融金属がこぼれないように、母材の開先部は水冷銅板で覆われる。エレクトロスラグ溶接では、溶融池の前後左右は母材や水冷銅板に覆われ、溶融池の上下は既に溶接した溶接部分と溶融スラグとに覆われている。従って、アーク溶接のように溶接ワイヤを供給するトーチ部分にコイルを配置しても、溶融スラグが存在するので、溶融池に有効な磁場を印加できないばかりでなく、そもそも開先部の空間は狭く、コイルを配置することもできない。
本発明の目的は、エレクトロスラグ溶接において溶融池に磁場を印加することにある。
かかる目的のもと、本発明は、母材の開先部の表側に配置された上下2個の磁場印加磁極である表上側磁極及び表下側磁極と、開先部の裏側に配置された上下2個の磁場印加磁極である裏上側磁極及び裏下側磁極とを用いて、溶接ワイヤの先端部における磁場が開先部内の溶融池における磁場よりも弱くなるように、開先部内に磁場を印加しながら母材のエレクトロスラグ溶接を行うエレクトロスラグ溶接方法を提供する。
エレクトロスラグ溶接方法は、表上側磁極と裏上側磁極とが同じ高さに位置し、表下側磁極と裏下側磁極とが同じ高さに位置し、溶接ワイヤの先端部が表上側磁極の高さと表下側磁極の高さとの間の高さに位置するように配置する、ものであってよい。
エレクトロスラグ溶接方法は、溶接トーチを、開先部の中の表側の位置と裏側の位置との間で往復動させつつ溶接し、溶接トーチの往復動の中で、溶接トーチが、表上側磁極及び表下側磁極に接近したときに、表上側磁極及び表下側磁極の発生磁場を減少させ、裏上側磁極及び裏下側磁極の発生磁場を増大させ、溶接トーチの往復動の中で、溶接トーチが、裏上側磁極及び裏下側磁極に接近したときに、裏上側磁極及び裏下側磁極の発生磁場を減少させ、表上側磁極及び表下側磁極の発生磁場を増大させる、ものであってよい。その場合、エレクトロスラグ溶接方法は、溶接トーチの往復動の中で、溶接トーチが、表上側磁極及び表下側磁極に最も接近したときに、裏上側磁極及び裏下側磁極の発生磁場を最大とし、溶接トーチの往復動の中で、溶接トーチが、裏上側磁極及び裏下側磁極に最も接近したときに、表上側磁極及び表下側磁極の発生磁場を最大とする、ものであってよい。また、エレクトロスラグ溶接方法は、溶接トーチの往復動の中で、溶接トーチが、開先部の厚み方向の中央よりも表側に位置するときに、裏上側磁極及び裏下側磁極の発生磁場を最大とし、溶接トーチの往復動の中で、溶接トーチが、開先部の厚み方向の中央よりも裏側に位置するときに、表上側磁極及び表下側磁極の発生磁場を最大とする、ものであってよい。
エレクトロスラグ溶接方法は、溶接ワイヤの先端部における磁場の強度が極小となるように、表上側磁極の発生磁場の強度と表下側磁極の発生磁場の強度とのバランス、及び裏上側磁極の発生磁場の強度と裏下側磁極の発生磁場の強度とのバランスの少なくとも何れか一方を調整する、ものであってよい。
エレクトロスラグ溶接方法は、表上側磁極と表下側磁極との間に軟磁性材料からなる表側部材を配置し、裏上側磁極と裏下側磁極との間に軟磁性材料からなる裏側部材を配置する、ものであってよい。その場合、軟磁性材料は、鉄、ニッケル、磁性ステンレス、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼の何れかであってよい。或いは、エレクトロスラグ溶接方法は、表側部材の下端が溶融池の上端よりも高い位置になるように表側部材を配置し、裏側部材の下端が溶融池の上端よりも高い位置になるように裏側部材を配置する、ものであってよい。
また、本発明は、母材の開先部の表側に配置された上下2個の磁場印加磁極である表上側磁極及び表下側磁極と、開先部の裏側に配置された上下2個の磁場印加磁極である裏上側磁極及び裏下側磁極とを備え、表上側磁極と裏上側磁極とが同じ高さに位置し、表下側磁極と裏下側磁極とが同じ高さに位置し、溶接ワイヤの先端部が表上側磁極の高さと表下側磁極の高さとの間の高さに位置するように配置されているエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置も提供する。
エレクトロスラグ溶接における磁場印加装置は、溶接ワイヤの先端部における磁場が開先部内の溶融池における磁場よりも弱くなるように構成されている、ものであってよい。
表上側磁極、表下側磁極、裏上側磁極、及び裏下側磁極の少なくとも1つは、発生磁場の強度を調節可能に構成されている、ものであってよい。
表上側磁極及び表下側磁極はコイルを共有し、裏上側磁極及び裏下側磁極はコイルを共有する、ものであってよい。
エレクトロスラグ溶接における磁場印加装置は、表上側磁極と表下側磁極との間に軟磁性材料からなる表側部材が配置され、裏上側磁極と裏下側磁極との間に軟磁性体材料からなる裏側部材が配置されている、ものであってよい。その場合、軟磁性材料は、鉄、ニッケル、磁性ステンレス、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼の何れかであってよい。或いは、エレクトロスラグ溶接における磁場印加装置は、表側部材の下端が溶融池の上端よりも高い位置になるように表側部材が配置され、裏側部材の下端が溶融池の上端よりも高い位置になるように裏側部材が配置されている、ものであってよい。
本発明によれば、エレクトロスラグ溶接において溶融池に磁場を印加することが可能となる。
(a),(b)は、従来の実施の形態における磁場印加装置を前側から見たときの斜視図である。 (a),(b)は、従来の実施の形態における磁場印加装置を後側から見たときの斜視図である。 従来の実施の形態の磁場印加装置における前側コイル及び後側コイルの位置を示した図である。 (a),(b)は、本発明の第1の実施の形態における磁場印加装置を前側から見たときの斜視図である。 (a),(b)は、本発明の第1の実施の形態における磁場印加装置を後側から見たときの斜視図である。 本発明の第1の実施の形態の磁場印加装置における前側上コイル、前側下コイル、後側上コイル、及び後側下コイルの位置を示した図である。 本発明の第1の実施の形態の磁場印加装置における溶融スラグ、溶融池、及び溶接部における磁場強度分布を示すコンター図である。 従来の実施の形態の磁場印加装置における溶融スラグ、溶融池、及び溶接部における磁場強度分布を示すコンター図である。 母材の厚み方向の中央部の鉛直方向における磁場強度分布を本実施の形態と従来の実施の形態とで比較して示したグラフである。 (a),(b)は、磁場印加による溶融スラグの流れの変化を示した図である。 (a),(b)は、本発明の第2の実施の形態の磁場印加装置における前側コイル及び後側コイルの電流の変化を説明するためのグラフである。 (a),(b)は、本発明の第3の実施の形態の磁場印加装置における前側コイル及び後側コイルの電流の変化を説明するためのグラフである。 本発明の第3の実施の形態において溶接トーチが位置Bにある場合の磁場強度分布を示すコンター図である。 本発明の第3の実施の形態において溶接トーチが位置Cにある場合の磁場強度分布を示すコンター図である。 本発明の第3の実施の形態において溶接トーチが位置Fにある場合の磁場強度分布を示すコンター図である。 本発明の第3の実施の形態において溶接トーチが位置Bにある場合の開先部の前後方向の磁場分布を示したグラフである。 本発明の第3の実施の形態において溶接トーチが位置Cにある場合の開先部の前後方向の磁場分布を示したグラフである。 本発明の第3の実施の形態において溶接トーチが位置Fにある場合の開先部の前後方向の磁場分布を示したグラフである。 本発明の第5の実施の形態における磁場印加装置のコイルの位置を示した図である。 本発明の第6の実施の形態における磁場印加装置の構成例を示した図である。 本発明の第6の実施の形態において前側磁性体片及び後側磁性体片を配置した場合の磁束密度分布を示したグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[発明の背景]
エレクトロスラグ溶接では、溶融池が厚さ10~30mmの溶融スラグの下に位置しているので、アーク溶接のように溶融池近傍に電磁攪拌用磁界を発生させるコイルを設置することが困難である。この課題を解決するために、本発明者らは、溶接箇所前後に設置する水冷銅板夫々に、貫通しない深さの穴又は溝を設け、その穴又は溝にコイルの鉄心を嵌める実施の形態(以下、「従来の実施の形態」という)を考えた。
図1(a),(b)は、従来の実施の形態における磁場印加装置100を前側(表側ともいう)から見たときの斜視図であり、図2(a),(b)は、従来の実施の形態における磁場印加装置100を後側(裏側ともいう)から見たときの斜視図である。
従来の実施の形態における磁場印加装置100は、図1(a),(b)及び図2(a),(b)に示すように、溶接ワイヤ5と、前側水冷銅板10と、後側水冷銅板20と、前側コイル30と、後側コイル40とを含む。
溶接ワイヤ5は、母材2,3の突き合わせ部に形成された開先部4に挿入される。そして、溶接電源(図示せず)により通電された状態で開先部4内の溶融スラグ6(図3参照)に供給され、溶融スラグ6内のジュール発熱によって溶融され、溶融金属を溶融池7(図3参照)に落とし込むことで下から上に向かって順次溶接して行くためのものである。
前側水冷銅板10は、母材2,3の開先部4の前側を覆う水冷のための銅板である。前側水冷銅板10には、水冷のための冷却水を流入させる流入口(図示せず)と、水冷のための冷却水を流出させる流出口(図示せず)とが設けられる。また、後側水冷銅板20は、母材2,3の開先部4の後側を覆う水冷のための銅板である。後側水冷銅板20にも、水冷のための冷却水を流入させる流入口(図示せず)と、水冷のための冷却水を流出させる流出口(図示せず)とが設けられる。
前側コイル30は、前側水冷銅板10に配置される磁気コイルである。前側コイル30は、コイル用電源(図示せず)により通電されることにより、磁場を発生させて、その磁場を溶融池7(図3参照)に印加する。また、後側コイル40は、後側水冷銅板20に配置される磁気コイルである。後側コイル40も、コイル用電源(図示せず)により通電されることにより、磁場を発生させて、その磁場を溶融池7(図3参照)に印加する。
ここで、図1(a)は、前側コイル30を嵌める前の磁場印加装置100の斜視図であり、図1(b)は、前側コイル30を嵌めた後の磁場印加装置100の斜視図である。前側水冷銅板10が溶接の進行に応じて上側に移動した場合、前側コイル30も同じく上側に移動する必要があるので、図示するように、前側水冷銅板10には穴11が設けられ、その穴11に前側コイル30の鉄芯31が嵌っている。
また、図2(a)は、後側コイル40を嵌める前の磁場印加装置100の斜視図であり、図2(b)は、後側コイル40を嵌めた後の磁場印加装置100の斜視図である。後側水冷銅板20は母材2,3に固定されているので、図示するように、後側水冷銅板20には鉛直方向に溝21が設けられ、後側コイル40の鉄芯41はその溝21に嵌ったまま、溶接の進行に応じて上側に移動するようになっている。
次に、従来の実施の形態の磁場印加装置100における前側コイル30及び後側コイル40の配置について説明する。図3は、磁場印加装置100における前側コイル30及び後側コイル40の位置を示した図である。本実施の形態では、前側コイル30及び後側コイル40の諸元を下記表1のように設定した。
Figure 0007540971000001
即ち、図3に示すように、前側コイル30の鉄芯31及び後側コイル40の鉄芯41を、その軸心の位置が、溶融スラグ6と溶融池7との界面から20mm下の位置になるように配置している。また、表1に示すように、前側コイル30の鉄芯31及び後側コイル40の鉄芯41のサイズは何れも、直径20mm、長さ60mmとしている。
その結果、溶融池7の近傍に前側コイル30の鉄芯31及び後側コイル40の鉄芯41を配置することができ、溶融池7に有効な強さの磁場を印加できるようになった。
ところで、この従来の実施の形態によれば、溶融池7を電磁攪拌することはできるが、溶融池7だけでなく溶融スラグ6も磁場の作用により大きく偏流して電磁攪拌される。これにより、溶融池7に溶融スラグ6が巻き込まれることで溶接部8の機械的強度が劣化するという問題が生じる。
また、エレクトラスラグ溶接では、溶接する厚板の厚さ方向にムラ無く溶接するために、溶接トーチ9を前後方向に摺動させる。そのため、溶接トーチ9が前側コイル30の鉄芯31又は後側コイル40の鉄芯41の近くに来たとき、溶融池7及び溶融スラグ6には大きなローレンツ力が働き、溶融スラグ6が強く偏流して電磁攪拌されることになる。その結果、溶融池7に溶融スラグ6が巻き込まれることで溶接部8の機械的強度が劣化するという問題に加え、溶融スラグ6が偏流することで母材2,3の溶け込みに偏りが生じるという問題も生じる。
以下、このような問題を解決する実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態における磁場印加装置200の構成について説明する。図4(a),(b)は、本実施の形態における磁場印加装置200を前側(表側ともいう)から見たときの斜視図であり、図5(a),(b)は、本実施の形態における磁場印加装置200を後側(裏側ともいう)から見たときの斜視図である。
本実施の形態における磁場印加装置200は、図4(a),(b)及び図5(a),(b)に示すように、溶接ワイヤ5と、前側水冷銅板10と、後側水冷銅板20と、前側上コイル30aと、前側下コイル30bと、後側上コイル40aと、後側下コイル40bとを含む。このように、本実施の形態では、従来の実施の形態と異なり、コイルが、前側水冷銅板10に上下に2つ配置され、後側水冷銅板20に上下に2つ配置される。
溶接ワイヤ5は、母材2,3の突き合わせ部に形成された開先部4に挿入される。そして、溶接電源(図示せず)により通電された状態で開先部4内の溶融スラグ6(図6参照)に供給され、溶融スラグ6内のジュール発熱によって溶融され、溶融金属を溶融池7(図6参照)に落とし込むことで下から上に向かって順次溶接して行くためのものである。
前側水冷銅板10は、母材2,3の開先部4の前側を覆う水冷のための銅板である。前側水冷銅板10には、水冷のための冷却水を流入させる流入口(図示せず)と、水冷のための冷却水を流出させる流出口(図示せず)とが設けられる。また、後側水冷銅板20は、母材2,3の開先部4の後側を覆う水冷のための銅板である。後側水冷銅板20にも、水冷のための冷却水を流入させる流入口(図示せず)と、水冷のための冷却水を流出させる流出口(図示せず)とが設けられる。
前側上コイル30aは、前側水冷銅板10に配置される2つの磁気コイルのうち上側の磁気コイルであり、前側下コイル30bは、前側水冷銅板10に配置される2つの磁気コイルのうち下側の磁気コイルである。また、後側上コイル40aは、後側水冷銅板20に配置される2つの磁気コイルのうち上側の磁気コイルであり、後側下コイル40bは、後側水冷銅板20に配置される2つの磁気コイルのうち下側の磁気コイルである。前側上コイル30a、前側下コイル30b、後側上コイル40a、及び後側下コイル40bは、それぞれ、コイル用電源(図示せず)により通電されることにより、磁場を発生させて、その磁場を溶融池7(図6参照)に印加する。尚、以下では、前側上コイル30a及び前側下コイル30bを「前側コイル」と総称したり、後側上コイル40a及び後側下コイル40bを「後側コイル」と総称したりすることもある。また、前側上コイル30a及び後側上コイル40aを「上コイル」と総称したり、前側下コイル30b及び後側下コイル40bを「下コイル」と総称したりすることもある。更に、前側上コイル30a、前側下コイル30b、後側上コイル40a、及び後側下コイル40bを単に「コイル」と総称することもある。
ここで、図4(a)は、前側上コイル30a及び前側下コイル30bを嵌める前の磁場印加装置200の斜視図であり、図4(b)は、前側上コイル30a及び前側下コイル30bを嵌めた後の磁場印加装置200の斜視図である。前側水冷銅板10が溶接の進行に応じて上側に移動した場合、前側上コイル30a及び前側下コイル30bも同じく上側に移動する必要があるので、図示するように、前側水冷銅板10には穴11a,11bが設けられ、その穴11a,11bにそれぞれ前側上コイル30aの鉄芯31a、前側下コイル30bの鉄芯31bが嵌っている。
また、図5(a)は、後側上コイル40a及び後側下コイル40bを嵌める前の磁場印加装置200の斜視図であり、図5(b)は、後側上コイル40a及び後側下コイル40bを嵌めた後の磁場印加装置200の斜視図である。後側水冷銅板20は母材2,3に固定されているので、図示するように、後側水冷銅板20には鉛直方向に溝21が設けられ、後側上コイル40aの鉄芯41a及び後側下コイル40bの鉄芯41bはその溝21に嵌ったまま、溶接の進行に応じて上側に移動するようになっている。
尚、本実施の形態では、図4(a),(b)及び図5(a),(b)に示すように、前側上コイル30a及び前側下コイル30bが開先部4の表側に配置されており、後側上コイル40a及び後側下コイル40bが開先部4の裏側に配置されている。また、前側水冷銅板10が、開先部4の表側の面、即ち、表面に配置されており、後側水冷銅板20が、開先部4の裏側の面、即ち、裏面に配置されている。この状態で、前側上コイル30a及び前側下コイル30bの配置位置は、前側水冷銅板10の母材2,3とは反対側であり、後側上コイル40a及び後側下コイル40bの配置位置は、後側水冷銅板20の母材2,3とは反対側であると言える。
また、本実施の形態では、図4(a),(b)及び図5(a),(b)に示すように、母材2,3の厚み方向の中心の平面上で後側下コイル40bの高さにあり開先部4の幅方向の中心にある点を原点とする。そして、母材2,3の厚み方向の中心の平面上で原点から溶接の進行方向に垂直な方向で母材2,3の前側から見て右側に向かう方向をX軸の正の方向とする。また、母材2,3の厚み方向の中心の平面に垂直な方向で原点から母材2,3の後側に向かう方向をY軸の正の方向とする。更に、母材2,3の厚み方向の中心の平面上で原点から溶接の進行方向に向かう方向をZ軸の正の方向とする。
次に、本実施の形態の磁場印加装置200における前側上コイル30a、前側下コイル30b、後側上コイル40a及び後側下コイル40bの配置について説明する。図6は、磁場印加装置200におけるコイル30a,30b,40a,40bの位置を示した図である。本実施の形態では、図示するように、前側上コイル30aの鉄芯31b及び後側上コイル40aの鉄芯41aの鉛直方向位置を同じに設定し、前側下コイル30bの鉄芯31b及び後側下コイル40bの鉄芯41bの鉛直方向位置を同じに設定している。つまり、前側上コイル30aの磁極と後側上コイル40aの磁極とを同じ高さに設定し、前側下コイル30bの磁極と後側下コイル40bの磁極とを同じ高さに設定している。ここで、前側上コイル30aの磁極は表上側磁極の一例であり、後側上コイル40aの磁極は裏上側磁極の一例であり、前側下コイル30bの磁極は表下側磁極の一例であり、後側下コイル40bの磁極は裏下側磁極の一例である。
その上で、前側下コイル30bの磁極から後側下コイル40bの磁極に向けて磁界が発生するように前側下コイル30b及び後側下コイル40bに電流を流す。そして、後側上コイル40aの磁極から前側上コイル30aの磁極に向けて磁界が発生するように後側上コイル40a及び前側上コイル30aに電流を流す。図中、白矢印は磁場の方向を示す。ここで、コイル30a,30b,40a,40bの磁極から発生する磁力の絶対値が同じになるようにコイル30a,30b,40a,40bの電流を設定したとする。すると、コイル30a,30b,40a,40bの磁極に囲まれた中央部の磁場は、コイル30a,30b,40a,40bの磁極が発生する磁場で打ち消され、ほぼゼロとなる。
図6に示すコイル配置において、コイル30a,30b,40a,40bに囲まれた領域に溶融スラグ6、溶融池7及び溶接部8があるとする。ここで、コイル30a,30b,40a,40bは下記表2に示す条件を満たすものとする。
Figure 0007540971000002
図7は、この場合の溶融スラグ6、溶融池7、及び溶接部8における磁場強度分布を示すコンター図である。図中、白矢印は磁場の方向を示す。この図において、磁場強度は、白丸印で示すように、上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中央部において小さくなっている。
一方で、従来の実施の形態では、開先部4の前側及び後側にそれぞれ前側コイル30及び後側コイル40を配置している。図8は、この場合の溶融スラグ6、溶融池7、及び溶接部8における磁場強度分布を示すコンター図である。図中、白矢印は磁場の方向を示す。この図において、磁場強度は、白丸印で示すように、前側コイル30及び後側コイル40の鉛直方向位置において小さくなっている。
図9は、母材2,3の厚み方向の中央部の鉛直方向における磁場強度分布を本実施の形態と従来の実施の形態とで比較して示したグラフである。ここで、母材2,3の厚み方向の中央部とは、本実施の形態では、前側上コイル30aと後側上コイル40aとの中央部(前側下コイル30bと後側下コイル40bとの中央部と同じ)と前後方向における位置が同じ部分である。一方、母材2,3の厚み方向の中央部とは、従来の実施の形態では、前側コイル30と後側コイル40との中央部と前後方向における位置が同じ部分である。また、図9において、鉛直方向位置0mmは、本実施の形態では、前側下コイル30bの鉄芯31bの中心の鉛直方向位置(後側下コイル40bの鉄芯41bの中心の鉛直方向位置と同じ)に設定されている。一方、図9において、鉛直方向位置0mmは、従来の実施の形態では、前側コイル30の鉄芯31の中心の鉛直方向位置(後側コイル40の鉄芯41の中心の鉛直方向位置と同じ)に設定されている。
図9のグラフから、本実施の形態において、磁場強度は、実線グラフ上に黒丸印で示すように、上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中央部(鉛直方向位置30mm)でほぼゼロとなることが分かる。また、鉛直方向位置0mm及び60mmで最大値となることも分かる。
一方で、図9のグラフから、従来の実施の形態において、磁場強度は、鉛直方向位置0mmで最大となり、鉛直方向位置が高くなるに従い減少するが、破線グラフ上に黒丸印で示すように、鉛直方向位置30mmで30mT程度あることが分かる。
即ち、本実施の形態では、鉛直方向位置16mm~34mmの範囲にて、従来の実施の形態の場合よりも磁場が弱くなることが分かる。
ここで図6に戻る。図6には、コイル30a,30b,40a,40bの磁極、溶接ワイヤ5、溶融スラグ6、溶融池7、溶接トーチ9の位置関係の例を示している。本実施の形態では、上コイル30a,40aの磁極と下コイル30b,40bの磁極との中間点が溶接ワイヤ5の先端部の高さと同じになるように、上コイル30a,40aの磁極と下コイル30b,40bの磁極とを配置する。このように配置することは、溶接ワイヤ5の先端部が上コイル30a,40aの磁極の高さと下コイル30b,40bの磁極の高さとの間の高さに位置するように配置することの一例である。尚、本実施の形態では、上コイル30a,40aの磁極及び下コイル30b,40bの磁極と溶接トーチ9とが一体的に上下動するように構成され、磁場強度が極小となる位置への溶接ワイヤ5の先端部の位置決めはある程度正確に行えることを想定している。上記のように上コイル30a,40aの磁極と下コイル30b,40bの磁極とを配置することにより、図7及び図9に示した磁場ゼロのポイントを溶接ワイヤ5の先端部に持ってくることができる。即ち、溶接ワイヤ5の先端部における磁場を溶融池7における磁場よりも弱くすることができる。
溶接ワイヤ5の先端部は溶融スラグ6中で最も高温の領域であり、電流密度も最も高いことが知られている。この領域に磁場がかかるとローレンツ力によって溶融スラグ6の流れが偏り易いが、本実施の形態では、溶接ワイヤ5の先端部の磁場がほぼゼロとなるので、溶融スラグ6の流れへのコイル磁場の影響は軽微となる。一方で、本来攪拌したい溶融池7、特に溶融池7の底部付近には、従来の実施の形態の場合と同等の磁場がかかるので、攪拌効果は阻害されない。
尚、図6において、前側上コイル30a及び後側上コイル40aの磁極の向きは同じであり、前側下コイル30b及び後側下コイル40bの磁極の向きは同じである。そして、前側上コイル30a及び前側下コイル30bの磁極の向きは反対であり、後側上コイル40a及び後側下コイル40bの磁極の向きは反対である。溶接ワイヤ5の先端部の位置の磁場強度を弱めるためには、このような磁極の向きとすることは必須である。
図10(a),(b)は、磁場印加による溶融スラグ6の流れの変化を示した図である。図10(a)に示すように、通常、溶融スラグ6には溶接電流によりピンチ力が働き、溶接ワイヤ5の周りに下向きの流れSが生じている。この流れSは、電磁攪拌のために印加した磁界が作用することにより、ローレンツ力の向きに応じて左右方向に曲げられることになる。図10(b)では、紙面奥行き方向の磁界Mがかけられているため、右方向にローレンツ力Lが働き、これにより、流れSが右方向にカーブしている。その結果、溶融スラグ6に左右方向の温度ムラが生じ、母材2,3の溶け込み量に差異が生じることになる。
本実施の形態におけるコイル配置によれば、溶融スラグ6中の溶接ワイヤ5の直下の磁場は、上コイル30a,40aの磁極及び下コイル30b,40bの磁極が発生する磁場によって打ち消され、最小化される。これにより、溶融スラグ6の偏流や攪拌は減少し、母材2,3の溶け込み形状の偏りや溶融スラグ6の巻き込みが減少する。
また、本実施の形態によれば、上コイル30a,40a又は下コイル30b,40bの磁極に近い溶融池7には強い磁場が作用して溶融金属が攪拌される。その結果、金属組織が微細化し、金属中の介在物が低減するため、溶接部8の機械特性が向上する。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態は、開先部4の前後方向における中央部の磁場強度がほぼゼロになるため、溶接ワイヤ5の先端部が開先部4の前後方向における中央部に位置する場合の溶融スラグ6の偏流防止には効果的である。しかしながら、溶接トーチ9が中央部から磁場を発生するコイルの側に近付くと、溶接ワイヤ5の先端部が磁場強度ゼロの領域から外れ、溶融スラグ6の流れが磁場の影響を受け易くなる。
そこで、本実施の形態は、溶接トーチ9が開先部4の中央部から前側に近付いたときには前側上コイル30a及び前側下コイル30bの電流を減少させる。つまり、溶接トーチ9が前側上コイル30aの磁極及び前側下コイル30bの磁極に接近したときに、前側上コイル30aの磁極及び前側下コイル30bの磁極の発生磁場を減少させる。このとき、後側上コイル40a及び後側下コイル40bの電流は維持し又は増加させる。つまり、後側上コイル40aの磁極及び後側下コイル40bの磁極の発生磁場は維持し又は増大させる。
また、本実施の形態では、逆に、溶接トーチ9が開先部4の中央部から後側に近付いたときには後側上コイル40a及び後側下コイル40bの電流を減少させる。つまり、溶接トーチ9が後側上コイル40aの磁極及び後側下コイル40bの磁極に接近したときに、後側上コイル40aの磁極及び後側下コイル40bの磁極の発生磁場を減少させる。このとき、前側上コイル30a及び前側下コイル30bの電流は維持し又は増加させる。つまり、前側上コイル30aの磁極及び前側下コイル30bの磁極の発生磁場は維持し又は増大させる。
このように、本実施の形態では、溶接トーチ9の位置に応じて、前側コイル30a,30b及び後側コイル40a,40bの電流値を変化させることとした。これにより、磁場強度がゼロとなる領域を開先部4の前側や後側に移動することができ、溶接トーチ9が摺動する場合でも溶融スラグ6の流れへの磁場の影響を抑えることができる。
図11(a),(b)は、この場合の前側コイル30a,30b及び後側コイル40a,40bの電流の変化を説明するためのグラフである。
溶接トーチ9は、図11(a)に示すように、位置B(後側)と位置F(前側)との間を周期的に移動し、位置F及び位置Bでは一時的に停止している。
後側コイル40a,40bに流れる電流は、図11(b)に細線で示すように、溶接トーチ9が位置Fにあるときに最大となり、溶接トーチ9が後側に移動するにつれて減少し、溶接トーチ9が位置Bにあるときに最小(最大値の4分の1)となっている。
前側コイル30a,30bに流れる電流は、図11(b)に太線で示すように、溶接トーチ9が位置Bにあるときに最大となり、溶接トーチ9が前側に移動するにつれて減少し、溶接トーチ9が位置Fにあるときに最小(最大値の8分の1)となっている。
ここで、後側コイル40a,40bに流れる電流の最小値が、前側コイル30a,30bに流れる電流の最小値よりも大きくなっているのは、開先部4の幅は後側の方が前側よりも狭く、母材2,3の影響を受けて減衰し易いためである。
図11(a),(b)のような通電パターンで前側コイル30a,30b及び後側コイル40a,40bに電流を流すことにより、溶接トーチ9の位置が最も後側のときに後側コイル40a,40bの電流をゼロにする場合等よりも、溶融池7の溶接電流に作用する磁束密度を大きくすることができる。逆に溶接トーチ9の位置が最も前側のときも同じ効果がある。
本実施の形態では、溶接トーチ9の摺動、即ち、溶接ワイヤ5の先端部が開先部4の前面と後面との間を往復運動する動きに応じて、各磁極の磁場を変化させるようにした。これにより、溶接トーチ9を摺動させるエレクトロスラグ溶接においても、常に溶接ワイヤ5の先端部の磁場を最小化することができるようになった。その結果、金属組織が微細化し、金属中の介在物が低減するため、溶接部8の機械特性が向上することとなった。
[第3の実施の形態]
本実施の形態は、溶接トーチ9が開先部4の中央部に位置するときに前側コイル30a,30b及び後側コイル40a,40bの電流を最大にするものである。
図12(a),(b)は、この場合の前側コイル30a,30b及び後側コイル40a,40bの電流の変化を説明するためのグラフである。
溶接トーチ9は、図12(a)に示すように、位置B(後側)と位置F(前側)との間を周期的に移動し、位置F及び位置Bでは一時的に停止している。
後側コイル40a,40bに流れる電流は、図12(b)に細線で示すように、溶接トーチ9が位置Fから位置Cまでの間にあるときに最大となり、溶接トーチ9が位置Cから後側に移動するにつれて減少し、溶接トーチ9が位置Bにあるときに最小(最大値の4分の1)となっている。
前側コイル30a,30bに流れる電流は、図12(b)に太線で示すように、溶接トーチ9が位置Bから位置Cまでの間にあるときに最大となり、溶接トーチ9が位置Cから前側に移動するにつれて減少し、溶接トーチ9が位置Fにあるときに最小(最大値の8分の1)となっている。
図13~図15は、それぞれ、本実施の形態において溶接トーチ9が位置B、位置C、位置Fにある場合の磁場強度分布を示すコンター図である。図13のように、溶接トーチ9が、破線の縦線で示す位置B、つまり後側に近い位置にあるときには、磁場の弱い領域が後側に寄る。また、図14のように、溶接トーチ9が、破線の縦線で示す位置C、つまり中央に近い位置にあるときには、磁場の弱い領域が中央に来る。更に、図15のように、溶接トーチ9が、破線の縦線で示す位置F、つまり前側に近い位置にあるときには、磁場の弱い領域が前側に寄る。
図16~図18は、それぞれ、本実施の形態において溶接トーチ9が位置B、位置C、位置Fにある場合の開先部4の前後方向の磁場分布を示したグラフである。これらのグラフでは、左側が開先部4の後側に対応し、右側が開先部4の前側に対応している。また、鉛直方向位置が下コイル30b,40bの中心の位置である場合の磁場強度を太線で示し、鉛直方向位置が上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間点の位置である場合の磁場強度を細線で示している。尚、ここでは、磁場計算に母材2,3の磁性を考慮しているが、開先部4から5mmは非磁性と仮定している。これらのグラフから、溶接トーチ9が、各グラフにおいて破線の縦線で示す位置B、位置C、位置Fの何れにあっても、鉛直方向位置が上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間点の位置である場合の磁場強度はほぼゼロとなる一方で、鉛直方向位置が上コイル30a,40aの中心の位置である場合の磁場強度は一定レベルとなることが分かる。
溶融金属の攪拌に寄与するローレンツ力は、磁力の大きさに比例する。一方で、磁力の大きさは磁極との距離が大きくなると小さくなる。本実施の形態では、溶接トーチ9の摺動の中間点で電流を最大化することにより、溶融金属にかかるローレンツ力を強くすることができるようになった。その結果、金属組織が微細化し、金属中の介在物が低減するため、溶接部8の機械特性が向上することとなった。
[第4の実施の形態]
第1乃至第3の実施の形態では、前側上コイル30aの電流及び起磁力と前側下コイル30bの電流及び起磁力とを同じとし、後側上コイル40aの電流及び起磁力と後側下コイル40bの電流及び起磁力とを同じとした。その場合、磁場が打ち消されてゼロになる領域は、上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間点の領域である。
溶接ワイヤ5の先端部の鉛直方向位置が図6のように上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間点の位置である場合は、このように上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとで電流及び起磁力は同じとすることが望まれる。一方で、溶接条件が変化して溶接ワイヤ5の先端部の鉛直方向位置が上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間点の位置と異なる場合は、溶接ワイヤ5の先端部の磁場強度がゼロとならず、溶融スラグ6の流れに偏りが生じる可能性がある。その場合は、前側上コイル30aの電流と前側下コイル30bの電流とに差をつけたり、後側上コイル40aの電流と後側下コイル40bの電流とに差をつけたりするとよい。こうすることで、磁場強度がゼロとなる領域が、上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間点の位置よりも上下方向に調整される。
本実施の形態では、前側上コイル30aと前側下コイル30bとの電流バランス、及び、後側上コイル40aと後側下コイル40bとの電流バランスの少なくとも何れか一方を調整するようにした。つまり、前側上コイル30aの磁極、前側下コイル30bの磁極、後側上コイル40aの磁極、及び後側下コイル40bの磁極の少なくとも1つは、発生磁場の強度を調整可能に構成されるものとした。そして、前側上コイル30aの磁極と前側下コイル30bの磁極との発生磁場の強度のバランス、及び後側上コイル40aの磁極と後側下コイル40bの磁極との発生磁場の強度のバランスの少なくとも何れか一方を調整するようにした。これにより、溶接ワイヤ5の先端部と前側水冷銅板10及び後側水冷銅板20との位置関係がずれても、磁場がゼロとなる領域の鉛直方向位置を調整することができるようになった。
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、第1乃至第3の実施の形態の磁場印加装置200におけるコイルの形状の変形例である。図19は、第5の実施の形態における磁場印加装置200のコイルの位置を示した図である。
第1乃至第3の実施の形態において、前側上コイル30a及び前側下コイル30bは起磁力が等しく磁場の方向が逆向きであり、後側上コイル40a及び後側下コイル40bも起磁力が等しく磁場の方向が逆向きである。そこで、第5の実施の形態では、前側上コイル30aの磁極と前側下コイル30bの磁極とを共通にし、後側上コイル40aの磁極と後側下コイル40bの磁極とを共通にする。即ち、前側上コイル30aの磁極であった前上側の磁極と、前側下コイル30bの磁極であった前下側の磁極とが、前側上コイル30a及び前側下コイル30bをまとめた前側コイル30cと、鉄芯31a及び鉄芯31bをまとめた鉄芯31cとを共有している。また、後側上コイル40aの磁極であった後上側の磁極と、後側下コイル40bの磁極であった後下側の磁極とが、後側上コイル40a及び後側下コイル40bをまとめた後側コイル40cと、鉄芯41a及び鉄芯41bをまとめた鉄芯41cとを共有している。
[第6の実施の形態]
図20は、第6の実施の形態における磁場印加装置200の構成例を示した図である。本実施の形態における磁場印加装置200は、図示するように、前側水冷銅板10と、後側水冷銅板20と、前側上コイル30a及びその鉄芯31aと、前側下コイル30b及びその鉄芯31bと、後側上コイル40a及びその鉄芯41aと、後側下コイル40b及びその鉄芯41bとを含む。また、コイル30a,30b,40a,40bに囲まれた領域には、溶接ワイヤ5、溶融スラグ6、溶融池7、溶接部8、及び溶接トーチ9がある。これらの構成要素は、第1の実施の形態で述べたものと同様なので、説明を省略する。また、コイル30a,30b,40a,40bの条件も、第1の実施の形態で表2に示したものと同じとする。
本実施の形態では、前側上コイル30aの鉄芯31aの溶融池7側(前側上コイル30aの溶融池7側磁極)と前側下コイル30bの鉄芯31bの溶融池7側(前側下コイル30bの溶融池7側磁極)との間に軟磁性材料からなる前側磁性体片32を配置している。また、後側上コイル40aの鉄芯41aの溶融池7側(後側上コイル40aの溶融池7側磁極)と後側下コイル40bの鉄芯41bの溶融池7側(後側下コイル40bの溶融池7側磁極)との間に軟磁性材料からなる後側磁性体片42を配置している。前側磁性体片32及び後側磁性体片42のサイズは、上下方向を30mmとし、左右方向を20mmとし、前後方向を5mmとする。ここで、軟磁性材料とは、例えば、軟鉄等の鉄、ニッケル、磁性ステンレス、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼である。前側磁性体片32は、軟磁性材料からなる表側部材の一例であり、後側磁性体片42は、軟磁性材料からなる裏側部材の一例である。
また、前側磁性体片32の溶融池7側の面の前後位置は、鉄芯31a,31bの溶融池7側の端部の前後位置と同じにしている。後側磁性体片42の溶融池7側の面の前後位置は、鉄芯41a,41bの溶融池7側の端部の前後位置と同じにしている。
更に、本実施の形態では、前側磁性体片32を鉄芯31a,31b間に固定するために、非磁性で熱耐性のあるアルミニウム製のスペーサ33を配置している。また、後側磁性体片42を鉄芯41a,41b間に固定するために、非磁性で熱耐性のあるアルミ製のスペーサ43を配置している。
前側磁性体片32及び後側磁性体片42が配置されていない場合の開先部4内の磁束密度分布は図17のようになる。図17は、一般化して、前側コイル30a,30bに流れる電流と、後側コイル40a,40bに流れる電流とが等しい場合の磁束密度分布を示したグラフと捉えることができる。図17では、磁束密度は、溶接ワイヤ5の先頭付近では略ゼロまで小さくなっているが、少し前後にずれるとゼロから外れ、前側水冷銅板10及び後側水冷銅板20の近傍では約60mTまで大きくなっている。溶融スラグ6への電磁攪拌効果を更に抑制するためには、図20の破線で囲んだ領域R内の磁束密度を極力抑制することが望ましい。
図21は、前側磁性体片32及び後側磁性体片42を配置した場合の磁束密度分布を示したグラフである。図中、実線は前側磁性体片32及び後側磁性体片42を配置しない状態での磁束密度分布を示し、破線は前側磁性体片32及び後側磁性体片42を配置した状態での磁束密度分布を示す。両者を比べると、開先部4内で下コイル30b,40bの中心の高さ(凝固界面付近)の磁束密度分布は大きく変化していない。一方で、開先部4内で上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間の高さ(溶接ワイヤ5の先端付近)の磁束密度分布は抑制されている。特に、前側水冷銅板10及び後側水冷銅板20の近傍では約5分の1に抑制されている。よって、前側磁性体片32及び後側磁性体片42を配置することにより、溶融池7だけを選択的に電磁攪拌することができる。
より具体的には、前側磁性体片32及び後側磁性体片42の近傍の磁束がそれぞれ前側磁性体片32及び後側磁性体片42に吸収され、溶融スラグ6内で比較的電流密度の高い溶接ワイヤ5の先端付近(図20の領域R)の磁場強度が更に抑制される。その結果、溶融スラグ6での電磁攪拌効果は更に抑制され、溶融池7への溶融スラグ6の巻き込みや母材2,3の溶け込みの左右での偏りが更に抑制できる。
このように、前側磁性体片32及び後側磁性体片42を配置する目的は、溶融スラグ6内の溶接ワイヤ5の先端付近だけ、磁束密度を抑制することである。従って、前側磁性体片32及び後側磁性体片42が溶融池7と同じ上下位置に配置されることは好ましくない。前側磁性体片32及び後側磁性体片42が溶融池7と同じ上下位置に配置されると、溶融池7の磁束密度も抑制されるからである。よって、前側磁性体片32及び後側磁性体片42は、上コイル30a,40aと下コイル30b,40bとの中間地点に配置し、前側磁性体片32及び後側磁性体片42の下端が溶融池7の上端よりも高い位置にあることが望ましい。
2、3…母材、4…開先部、5…溶接ワイヤ、6…溶融スラグ、7…溶融池、8…溶接部、9…溶接トーチ、10…前側水冷銅板、11a,11b…穴、20…後側水冷銅板、21…溝、30a…前側上コイル、30b…前側下コイル、30c…前側コイル、31a,31b,31c…鉄芯、32…前側磁性体片、33…スペーサ、40a…後側上コイル、40b…後側下コイル、40c…後側コイル、41a,41b,41c…鉄芯、42…後側磁性体片、43…スペーサ、100,200…磁場印加装置

Claims (15)

  1. 母材の開先部の表側に配置された上下2個の磁場印加磁極である表上側磁極及び表下側磁極と、当該開先部の裏側に配置された上下2個の磁場印加磁極である裏上側磁極及び裏下側磁極とを用いて、溶接ワイヤの先端部における磁場が当該開先部内の溶融池における磁場よりも弱くなるように、当該開先部内に磁場を印加しながら当該母材のエレクトロスラグ溶接を行うことを特徴とするエレクトロスラグ溶接方法。
  2. 前記表上側磁極と前記裏上側磁極とが同じ高さに位置し、前記表下側磁極と前記裏下側磁極とが同じ高さに位置し、前記溶接ワイヤの先端部が当該表上側磁極の高さと当該表下側磁極の高さとの間の高さに位置するように配置することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  3. 溶接トーチを、前記開先部の中の表側の位置と裏側の位置との間で往復動させつつ溶接し、
    前記溶接トーチの往復動の中で、当該溶接トーチが、前記表上側磁極及び前記表下側磁極に接近したときに、当該表上側磁極及び当該表下側磁極の発生磁場を減少させ、前記裏上側磁極及び前記裏下側磁極の発生磁場を増大させ、
    前記溶接トーチの往復動の中で、当該溶接トーチが、前記裏上側磁極及び前記裏下側磁極に接近したときに、当該裏上側磁極及び当該裏下側磁極の発生磁場を減少させ、前記表上側磁極及び前記表下側磁極の発生磁場を増大させることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  4. 前記溶接トーチの往復動の中で、当該溶接トーチが、前記表上側磁極及び前記表下側磁極に最も接近したときに、前記裏上側磁極及び前記裏下側磁極の発生磁場を最大とし、
    前記溶接トーチの往復動の中で、当該溶接トーチが、前記裏上側磁極及び前記裏下側磁極に最も接近したときに、前記表上側磁極及び前記表下側磁極の発生磁場を最大とすることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  5. 前記溶接トーチの往復動の中で、当該溶接トーチが、前記開先部の厚み方向の中央よりも表側に位置するときに、前記裏上側磁極及び前記裏下側磁極の発生磁場を最大とし、
    前記溶接トーチの往復動の中で、当該溶接トーチが、前記開先部の厚み方向の中央よりも裏側に位置するときに、前記表上側磁極及び前記表下側磁極の発生磁場を最大とすることを特徴とする請求項4に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  6. 前記溶接ワイヤの先端部における磁場の強度が極小となるように、前記表上側磁極の発生磁場の強度と前記表下側磁極の発生磁場の強度とのバランス、及び前記裏上側磁極の発生磁場の強度と前記裏下側磁極の発生磁場の強度とのバランスの少なくとも何れか一方を調整することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  7. 前記表上側磁極と前記表下側磁極との間に軟磁性材料からなる表側部材を配置し、前記裏上側磁極と前記裏下側磁極との間に軟磁性材料からなる裏側部材を配置することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  8. 前記軟磁性材料は、鉄、ニッケル、磁性ステンレス、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼の何れかであることを特徴とする請求項7に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  9. 前記表側部材の下端が前記溶融池の上端よりも高い位置になるように当該表側部材を配置し、前記裏側部材の下端が前記溶融池の上端よりも高い位置になるように当該裏側部材を配置することを特徴とする請求項7に記載のエレクトロスラグ溶接方法。
  10. 母材の開先部の表側に配置された上下2個の磁場印加磁極である表上側磁極及び表下側磁極と、
    前記開先部の裏側に配置された上下2個の磁場印加磁極である裏上側磁極及び裏下側磁極と
    を備え、
    前記表上側磁極と前記裏上側磁極とが同じ高さに位置し、前記表下側磁極と前記裏下側磁極とが同じ高さに位置し、溶接ワイヤの先端部が当該表上側磁極の高さと当該表下側磁極の高さとの間の高さに位置するように配置されていることを特徴とするエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置。
  11. 前記溶接ワイヤの先端部における磁場が前記開先部内の溶融池における磁場よりも弱くなるように構成されていることを特徴とする請求項10に記載のエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置。
  12. 前記表上側磁極、前記表下側磁極、前記裏上側磁極、及び前記裏下側磁極の少なくとも1つは、発生磁場の強度を調節可能に構成されていることを特徴とする請求項10に記載のエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置。
  13. 前記表上側磁極及び前記表下側磁極はコイルを共有し、前記裏上側磁極及び前記裏下側磁極はコイルを共有することを特徴とする請求項10に記載のエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置。
  14. 前記表上側磁極と前記表下側磁極との間に軟磁性材料からなる表側部材が配置され、
    前記裏上側磁極と前記裏下側磁極との間に軟磁性材料からなる裏側部材が配置されていることを特徴とする請求項10に記載のエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置。
  15. 前記軟磁性材料は、鉄、ニッケル、磁性ステンレス、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼の何れかであることを特徴とする請求項14に記載のエレクトロスラグ溶接における磁場印加装置。
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