JP7528911B2 - Dnaライブラリーの作製方法及びdnaライブラリーを用いたゲノムdna解析方法 - Google Patents

Dnaライブラリーの作製方法及びdnaライブラリーを用いたゲノムdna解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えばDNAマーカー解析に利用できるDNAライブラリーの作製方法及びDNAライブラリーを用いたゲノムDNA解析方法に関する。
一般的にゲノム解析においては、ゲノムに含まれる遺伝情報、例えば塩基配列情報を総合的に解析する。しかし、ゲノム全体の塩基配列を決定する解析には工数及びコストがかかるといった問題がある。また、ゲノムサイズの大きな生物においては、ゲノムの複雑性の問題から塩基配列解析に基づいたゲノム解析には限界がある。
特許文献1には、増幅断片長多型(AFLP)マーカー技術において、アダプタとライゲートした制限酵素処理断片に試料特異的識別子を組み込むこと、制限酵素処理断片の配列の一部のみを決定する方法を開示している。特許文献1に開示された方法では、ゲノムDNAに対する制限酵素処理によってゲノムDNAの複雑性を低減し、制限酵素処理断片の一部を対象として塩基配列を決定することで制限酵素処理断片を十分に同定している。ただし、特許文献1に開示された方法では、ゲノムDNAに対する制限酵素処理やアダプタを用いたライゲーション反応といった工数が必要であり、コストの低減が困難である。
一方、特許文献2には、いわゆるRAPD(Randomly Amplified Polymorphic DNA)法により、米試料から抽出したDNAを適正なプライマー存在下のPCRによって増幅して得られるDNAバンドのうち、食味評価結果と相関の高い識別用DNAマーカーを見いだしたことが開示されている。特許文献2に開示された方法では、特定の配列で限定された複数のSTS(Sequence Tagged Sites)化プライマーを用いることが開示されている。なお、特許文献2に開示された方法では、STS化プライマーを用いて増幅した識別用DNAマーカーを電気泳動により検出している。しかしながら、特許文献2に開示されるようなRAPD法は、PCR増幅の再現性が著しく低く、一般的にDNAマーカー技術として採用することはできない。
また、特許文献3には、ゲノムライブラリーを作製する方法であって、対象のゲノムに比較的よく出現する配列をもとに設計した1種類のプライマーを使用してPCRを行うことにより、ゲノム全領域がほぼ均等に増幅され、その結果、ゲノムライブラリーを作製できることが開示されている。なお、特許文献3には、ランダム配列を含むランダムプライマーを使用してPCRを行うことでゲノムライブラリーを作製できるとの記述があるものの、実際のプロトコル及び実験結果については何ら記載されていない。したがって、特許文献3に記載の方法は、ゲノム出現頻度を特定するためにゲノム塩基配列情報が必要であり、そのための工数及びコストが見込まれる。さらに、特許文献3に記載の方法では、ゲノム全体にわたって増幅を図るためゲノムDNAの複雑性を低減することができないといった問題がある。
特許第5389638号公報 特開2003-79375号公報 特許第3972106号公報
ところで、DNAマーカーを利用した遺伝子連鎖解析等のゲノム情報解析には、より簡便に、且つ再現性に優れた方法でDNAライブラリーを作製することが望まれる。上述のように、DNAライブラリーを作製する方法として様々な方法が知られているが、簡便性及び/又は再現性において十分な方法は知られていないのが現状である。そこで、本発明は、このような実情に鑑みて、より簡便且つ再現性に優れたDNAライブラリーの作製方法及びDNAライブラリーを用いたゲノムDNA解析方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成するため鋭意検討した結果、ランダムプライマーを用いたPCRにおいて、反応液中の当該ランダムプライマーの濃度を所定の範囲に規定することで、優れた再現性が達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)ゲノムDNA及び高濃度のランダムプライマーを含む反応液にて核酸増幅反応を行い、ゲノムDNAを鋳型として当該核酸増幅反応により得られたDNA断片を取得する、DNAライブラリーの作製方法。
(2)上記反応液は4~200μMの上記ランダムプライマーを含むことを特徴とする(1)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(3)上記反応液は4~100μMの上記ランダムプライマーを含むことを特徴とする(1)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(4)上記ランダムプライマーは、9~30塩基長のヌクレオチドであることを特徴とする(1)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(5)上記DNA断片は、100~500塩基長であることを特徴とする(1)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(6)(1)乃至(5)いずれか記載のDNAライブラリーの作製方法により作製されたDNAライブラリーをDNAマーカーとして利用する、ゲノムDNA解析方法。
(7)(1)乃至(5)いずれか記載のDNAライブラリーの作製方法により作製されたDNAライブラリーの塩基配列を決定し、それらの塩基配列に基づいて上記DNAマーカーの存否を確認する工程を含む(6)記載のゲノムDNA解析方法。
(8)上記DNAマーカーの存否を確認する工程では、DNAライブラリーの塩基配列のリード数から上記DNAマーカーの存否を確認することを特徴とする(7)記載のゲノムDNA解析方法。
(9)上記DNAライブラリーの塩基配列を既知の配列情報又は他の生物由来若しくは他の組織由来のゲノムDNAを用いて作製した上記DNAライブラリーの塩基配列と比較し、塩基配列の相違に基づいてDNAマーカーの存否を確認することを特徴とする(7)記載のゲノムDNA解析方法。
(10)上記DNAマーカーの塩基配列に基づいて、当該DNAマーカーを特異的に増幅する一対のプライマーを準備する工程と、対象の生物から抽出したゲノムDNAを鋳型として、上記一対のプライマーを用いて核酸増幅反応を行う工程と、上記核酸増幅反応の結果から、上記ゲノムDNAにおける上記DNAマーカーの存否を確認する工程とを含む(6)記載のゲノムDNA解析方法。
(11)ゲノムDNA及び高濃度のランダムプライマーを含む第1の反応液にて核酸増幅反応を行い、ゲノムDNAを鋳型として当該核酸増幅反応により得られた第1のDNA断片を取得する工程と、
得られた第1のDNA断片と、上記ランダムプライマーにおける少なくとも5’末端側の塩基配列と70%以上一致する塩基配列を3’末端に含むヌクレオチドをプライマーとして含む第2の反応液にて核酸増幅反応を行い、上記第1のDNA断片に上記ヌクレオチドを連結した第2のDNA断片を取得する工程とを含む、DNAライブラリーの作製方法。
(12)上記第1の反応液は4~200μMの上記ランダムプライマーを含むことを特徴とする(11)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(13)上記第1の反応液は4~100μMの上記ランダムプライマーを含むことを特徴とする(11)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(14)上記ランダムプライマーは、9~30塩基長のヌクレオチドであることを特徴とする(11)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(15)上記第1のDNA断片は、100~500塩基長であることを特徴とする(11)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(16)上記第2のDNA断片を増幅するプライマーが塩基配列決定反応に使用される領域を含む、又は、上記第2のDNA断片を鋳型とした核酸増幅反応若しくは繰り返される核酸増幅反応に使用するプライマーが塩基配列決定反応に使用される領域を含むことを特徴とする(11)記載のDNAライブラリーの作製方法。
(17)(11)乃至(15)いずれか記載のDNAライブラリーの作製方法で取得した第2のDNA断片、又は(16)記載のDNAライブラリーの作製方法で塩基配列決定反応に使用されるシーケンサー用プライマーに対する相補領域を含むプライマーを用いて取得したDNA断片について塩基配列を決定する工程を含む、DNAライブラリーの解析方法。
(18)(11)乃至(17)いずれか記載のDNAライブラリーの作製方法により作製されたDNAライブラリーをDNAマーカーとして利用する、ゲノムDNA解析方法。
(19)(11)乃至(17)いずれか記載のDNAライブラリーの作製方法により作製されたDNAライブラリーの塩基配列を決定し、それらの塩基配列に基づいて上記DNAマーカーの存否を確認する工程を含む(18)記載のゲノムDNA解析方法。
(20)上記DNAマーカーの存否を確認する工程では、DNAライブラリーの塩基配列のリード数から上記DNAマーカーの存否を確認することを特徴とする(19)記載のゲノムDNA解析方法。
(21)上記DNAライブラリーの塩基配列を既知の配列情報又は他の生物由来若しくは他の組織由来のゲノムDNAを用いて作製した上記DNAライブラリーの塩基配列と比較し、塩基配列の相違に基づいてDNAマーカーの存否を確認することを特徴とする(19)記載のゲノムDNA解析方法。
(22)上記DNAマーカーの塩基配列に基づいて、当該DNAマーカーを特異的に増幅する一対のプライマーを準備する工程と、対象の生物から抽出したゲノムDNAを鋳型として、上記一対のプライマーを用いて核酸増幅反応を行う工程と、上記核酸増幅反応の結果から、上記ゲノムDNAにおける上記DNAマーカーの存否を確認する工程とを含む(18)記載のゲノムDNA解析方法。
(23)上記(1)乃至(5)及び(11)乃至(16)いずれか記載のDNAライブラリーの作製方法により作製されたDNAライブラリー。
本発明に係るDNAライブラリーの作製方法は、ランダムプライマーを用いた核酸増幅法を基礎とするため、非常に簡便にDNAライブラリーを作製することができる。また、本発明に係るDNAライブラリーの作製方法は、ランダムプライマーを用いた核酸増幅法であっても増幅される核酸断片の再現性が優れる。したがって、本発明に係るDNAライブラリーの製造方法によれば、作製したDNAライブラリーをDNAマーカーとして利用することができ、遺伝子連鎖解析等のゲノムDNA解析に使用することが可能となる。
したがって、本発明に係るDNAライブラリーを用いたゲノムDNA解析方法は、簡便且つ優れた再現性で調整されたDNAライブラリーを使用するため、低コストに且つ高精度なゲノムDNA解析を行うことができる。
本発明に係るDNAライブラリーの作製方法及びDNAライブラリーを利用したゲノムDNA解析方法を示すフローチャートである。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし通常条件のPCRにより増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としアニーリング温度45℃で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としアニーリング温度40℃で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としアニーリング温度37℃で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし酵素量2.5 unitで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし酵素量12.5 unitで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としMgCl2濃度2倍で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としMgCl2濃度3倍で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としMgCl2濃度4倍で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし8塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし9塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし11塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし12塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし14塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし16塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし18塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし20塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度2μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度4μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度6μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度6μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度8μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度8μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度10μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度10μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度20μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度20μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度40μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度40μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度60μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度60μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度100μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度100μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度200μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度200μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度300μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度300μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度400μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度400μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度500μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度500μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度600μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度700μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度800μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度900μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー濃度1000μMで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマーで増幅したDNAライブラリーのMiSeq解析結果を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマーで増幅したDNAライブラリーのMiSeq解析結果を示す特性図である。 MiSeqから得られたリードパターンのイネ日本晴ゲノム情報の位置を示す特性図である。 ランダムプライマーとイネゲノムのミスマッチ塩基数の度数分布を示す特性図である。 マーカーN80521152におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代のリード数を示す特性図である。 PCRマーカーN80521152におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代の電気泳動像を示す写真である。 マーカーN80997192におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代のリード数を示す特性図である。 PCRマーカーN80997192におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代の電気泳動像を示す写真である。 マーカーN80533142におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代のリード数を示す特性図である。 PCRマーカーN80533142におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代の電気泳動像を示す写真である。 マーカーN91552391におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代のリード数を示す特性図である。 PCRマーカーN91552391におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代の電気泳動像を示す写真である。 マーカーN91653962におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代のリード数を示す特性図である。 PCRマーカーN91653962におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代の電気泳動像を示す写真である。 マーカーN91124801におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代のリード数を示す特性図である。 PCRマーカーN91124801におけるサトウキビNiF8とNi9、その交雑後代の電気泳動像を示す写真である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし9塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし9塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし10塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし10塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし11塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし11塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし12塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし12塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし14塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし14塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし16塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし16塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし18塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし18塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし20塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし20塩基長のランダムプライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型とし、8~35塩基長のランダムプライマーを0.6~300μMの濃度範囲で使用して増幅したDNAライブラリーについて再現性を検討した結果を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー1種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー1種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー2種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー2種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー3種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー3種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー12種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー12種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー24種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー24種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー48種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー48種で増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Bで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Bで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Cで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Cで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Dで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Dで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Eで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Eで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Fで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Fで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 ヒトゲノムDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Aで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 ヒトゲノムDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Aで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 次世代シーケンス装置に供するDNAライブラリーの作製方法を模式的に示す特性図である。 次世代シーケンス装置に供するDNAライブラリーの作製方法を模式的に示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Gで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Gで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8についてランダムプライマー10塩基Gを用いて作製したDNAライブラリーを鋳型とし次世代シーケンサー用プライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8についてランダムプライマー10塩基Gを用いて作製したDNAライブラリーを鋳型とし次世代シーケンサー用プライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 サトウキビNiF8のDNAを鋳型としランダムプライマー10塩基Gで増幅したDNAライブラリーのMiSeq解析結果を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマー12塩基Bで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマー12塩基Bで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 イネ日本晴についてランダムプライマー12塩基Bを用いて作製したDNAライブラリーを鋳型とし次世代シーケンサー用プライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(一回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 イネ日本晴についてランダムプライマー12塩基Bを用いて作製したDNAライブラリーを鋳型とし次世代シーケンサー用プライマーで増幅されたDNAライブラリーの電気泳動像(二回目)から得られる増幅断片長と蛍光ユニット(FU)との関係を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマー12塩基Bで増幅したDNAライブラリーをMiSeqで解析し得られたリードパターンと、ランダムプライマー配列及びイネ日本晴リファレンス配列の一致率との分布を示す特性図である。 イネ日本晴のDNAを鋳型としランダムプライマー12塩基Bで増幅したDNAライブラリーのMiSeq解析結果を示す特性図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るDNAライブラリーの作製方法では、任意の塩基配列を有するプライマー(以下、ランダムプライマー)を高濃度となるように調整した反応液で核酸増幅反応を行い、増幅した核酸断片をDNAライブラリーとするものである。ここで、高濃度とは、通常の核酸増幅反応におけるプライマー濃度と比較して高濃度であることを意味する。すなわち、本発明に係るDNAライブラリー作製方法は、通常の核酸増幅反応におけるプライマー濃度と比較して高濃度のランダムプライマーを使用することに特徴を有している。ここで、反応液に含まれる鋳型としては、DNAライブラリーを作製する対象の生物から調整したゲノムDNAを使用することができる。
なお、本発明に係るDNAライブラリーの作製方法において、対象の生物種には何ら限定されず、ヒトを含む動物、植物、微生物、ウイルス等いかなる生物種も対象とすることができる。すなわち、本発明に係るDNAライブラリーの作製方法によれば、如何なる生物種からもDNAライブラリーを作製することができる。
本DNAライブラリーの作製方法では、ランダムプライマーの濃度を上記のように規定することによって、高い再現性で核酸断片(核酸断片群)を増幅することができる。ここで、再現性とは、同一の鋳型及び同一のランダムプライマーを用いて複数回の核酸増幅反応を行った場合に、複数回の核酸増幅反応の間で増幅される核酸断片が一致する程度を意味する。つまり、高い再現性(再現性が高い)とは、同一の鋳型及び同一のランダムプライマーを用いて複数回の核酸増幅反応を行った場合に、複数回の核酸増幅反応の間で増幅される核酸断片の一致度が高いことを意味する。
再現性の高低については、例えば、同一の鋳型及び同一のランダムプライマーを用いて複数回の核酸増幅反応を行い、各回で得られた増幅断片を電気泳動し得られた蛍光ユニット(Fluorescence Unit: FU)についてスピアマンの順位相関係数を算出し、当該係数に基づいて評価することができる。スピアマンの順位相関係数とは、一般的にρで表され、一例としてはρ>0.9をもって再現性有りと評価することができる。
〔ランダムプライマー〕
本発明に係るDNAライブラリーの作製方法に使用できるランダムプライマーとしては、その配列には何ら限定されず、例えば9~30塩基長のヌクレオチドを使用することができる。特に、ランダムプライマーとは、任意の配列を有する、9~30塩基長のヌクレオチドであって、ヌクレオチドの種類(配列の種類)は特に限定されず、1種類以上のヌクレオチド、好ましくは1~10000種類のヌクレオチド、より好ましくは1~1000種類のヌクレオチド、より好ましくは1~100種類のヌクレオチド、最も好ましくは1~96種類のヌクレオチドを意味する。ランダムプライマーとして上述の範囲のヌクレオチド(ヌクレオチド群)を使用することによって、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。なお、ランダムプライマーとして、複数のヌクレオチドを含む場合、全てのヌクレオチドが同じ塩基長(9~30塩基長)である必要はなく、異なる塩基長の複数のヌクレオチドを含んでいても良い。
通常、核酸増幅反応を用いて特定のアンプリコンを得るためには、当該アンプリコンに応じてプライマーの塩基配列を設計する。例えば、ゲノムDNA等の鋳型DNAにおけるアンプリコンに対応する位置を挟み込むように一対のプライマーを設計する。この場合、プライマーは、鋳型に含まれる特定の領域にハイブリダイズするように設計されるため「特異的プライマー」と呼称することができる。
これに対して、ランダムプライマーは、特定のアンプリコンを得る目的で設計されるプライマーとは異なり、鋳型DNAにおける特定の領域にハイブリダイズするように設計されるのではなく、ランダムなアンプリコンを得るために設計される。ランダムプライマーは、その塩基配列が如何なる配列であってもよく、鋳型DNAに含まれる相補的な領域に偶発的にハイブリダイズすることでランダムなアンプリコン増幅に関与できる。
すなわち、ランダムプライマーとは、上述のように、ランダムなアンプリコン増幅に関与する任意配列を有するヌクレオチドということができる。ここで任意配列とは、何ら限定されないが、例えば、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの群から無作為に選択された塩基配列として設計しても良いし、特定の塩基配列として設計しても良い。特定の塩基配列としては、例えば、制限酵素認識配列を含む塩基配列や、次世代シーケンサーに使用するアダプタ配列を有する塩基配列を挙げることができる。
ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの群から無作為に選択して所定の長さの塩基配列を複数設計する方法が適用できる。また、ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、特定の塩基配列からなる共通部分と、任意の塩基配列からなる非共通部分とからなる塩基配列を複数設計する方法も適用できる。ここで、非共通部分は、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの群から無作為に選択された塩基配列としても良いし、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンからなる4種類の塩基の全ての組み合わせ、又はこれら全ての組み合わせから選ばれる一部の組み合わせとすることができる。共通部分は、特に限定されず如何なる塩基配列でもよいが、例えば、制限酵素認識配列を含む塩基配列や、次世代シーケンサーに使用するアダプタ配列を有する塩基配列、特定の遺伝子ファミリーに共通する塩基配列とすることができる。
複数のランダムプライマーとして、4種類の塩基から無作為に選択して所定の長さの塩基配列を複数設計する場合、全体の30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上が、70%以下の同一性、好ましくは60%以下の同一性、より好ましくは50%以下の同一性、最も好ましくは40%以下の同一性となるように設計することが好ましい。複数のランダムプライマーとして、4種類の塩基から無作為に選択して所定の長さの塩基配列を複数設計する場合であって、上述の範囲のヌクレオチドについて上記範囲の同一性となるように設計することで、対象生物種のゲノムDNA全体に亘って増幅断片を得ることができる。すなわち、増幅断片の均一性を高めることができる。
複数のランダムプライマーとして、特定の塩基配列からなる共通部分と、任意の塩基配列からなる非共通部分とからなる塩基配列を複数設計する場合、例えば、3’末端側の数塩基を非共通部分とし、残りの5’末端側を共通部分とするように設計することができる。3’末端側のn個の塩基を非共通部分とすれば、4種類のランダムプライマーを設計することができる。ここで、n個としては、1~5個とすることができ、好ましくは2~4個、より好ましくは2~3個である。
例えば、共通部分と非共通部分とからなるランダムプライマーとしては、5’末端側を次世代シーケンサーに使用するアダプタ配列(共通部分)とし、3’末端側を2塩基(非共通部分)とした、合計16種類のランダムプライマーを設計することができる。なお、3’末端側を3塩基(非共通部分)とすれば、合計64種類のランダムプライマーを設計することができる。ランダムプライマーの種類が多くなるほど、対象生物種のゲノムDNA全体に亘って増幅断片をより網羅的に得ることができる。したがって、共通部分と非共通部分とからなるランダムプライマーを設計する場合、3’末端側の塩基は3塩基とすることが好ましい。
ただし、例えば、共通部分と3塩基の非共通部分とからなる64種類の塩基配列を設計した後、これら64種類の塩基配列から選ばれる63種類以下のランダムプライマーを使用してもよい。言い換えると、64種類のランダムプライマーの全てを使用した場合と比較して、63種類以下のランダムプライマーを使用した場合のほうが核酸増幅反応や、次世代シーケンサーを用いた解析において優れた結果を示す場合がある。具体的には、64種類のランダムプライマーを使用した場合、特定の核酸増幅断片のリード数が著しく多くなるような場合がある。この場合には、64種類のランダムプライマーのなかから当該特定の核酸増幅断片の増幅に関与する1又は複数のランダムプライマーを除いた残りの63種類以下のランダムプライマーを使用したほうが良好な解析結果が得られることになる。
なお、共通部分と2塩基の非共通部分とからなる16種類のランダムプライマーを設計した場合も同様に、16種類のランダムプライマーから選ばれる15種類以下のランダムプライマーを使用した場合に、核酸増幅反応や次世代シーケンサーを用いた解析において優れた結果を示す場合がある。
一方、ランダムプライマーとして使用するヌクレオチドは、特に、GC含量が5~95%の範囲となるように設計することが好ましく、10~90%の範囲となるように設計することがより好ましく、15~80%の範囲となるように設計することが更に好ましく、20~70%の範囲となるように設計することが最も好ましい。ランダムプライマーとしてGC含量が上述の範囲のヌクレオチドの集合を使用することによって、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。なお、GC含量とは、ヌクレオチド鎖全体に含まれるグアニン及びシトシンの割合である。
さらに、ランダムプライマーとして使用するヌクレオチドは、特に、全体の長さに対して連続塩基が80%以下となるように設計することが好ましく、70%以下となるように設計することがより好ましく、60%以下となるように設計することが更に好ましく、50%以下となるように設計することが最も好ましい。或いは、ランダムプライマーとして使用するヌクレオチドは、特に、連続塩基の数が8個以下となるように設計することが好ましく、7個以下となるように設計することがより好ましく、6個以下となるように設計することが更に好ましく、5個以下となるように設計することが最も好ましい。ランダムプライマーとして連続塩基数が上述の範囲のヌクレオチドの集合を使用することによって、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。
さらにまた、ランダムプライマーとして使用するヌクレオチドは、特に、分子内に6塩基長以上、好ましくは5塩基以上、より好ましくは4塩基以上の相補領域を有しないように設計することが好ましい。ヌクレオチドに上記範囲の相補領域を有しないように設計することで分子内における二本鎖形成を防止でき、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。
さらにまた、ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、特に、複数のヌクレオチド間において6塩基長以上、好ましくは5塩基以上、より好ましくは4塩基以上の相補領域を有しないように設計することが好ましい。複数のヌクレオチド間に上記範囲の相補領域を有しないように設計することでヌクレオチド間の二本鎖形成を防止でき、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。
さらにまた、ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、特に、3’末端側の6塩基以上、好ましくは5塩基以上、より好ましくは4塩基以上が相補的な配列にならないように設計することが好ましい。複数のヌクレオチドの3’末端側の上記範囲において相補的な配列を有しないように設計することでヌクレオチド間の二本鎖形成を防止でき、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。
なお、相補領域及び相補的な配列とは、例えば80~100%の同一性を有する領域及び配列(例えば5塩基長の領域であれば、4塩基又は5塩基が相補的である領域及び配列)、或いは90~100%の同一性を有する領域及び配列(例えば5塩基長の領域であれば5塩基が相補的である領域及び配列)を意味する。
さらにまた、ランダムプライマーとして使用するヌクレオチドは、核酸増幅反応における温度サイクル条件(特に、アニーリング温度)に適したTm値となるように設計することが好ましい。特に限定されないが、Tm値は、最近接塩基対法、Wallace法及びGC%法等の公知の計算方法により算出することができる。具体的に、ランダムプライマーとして使用するヌクレオチドは、特にTm値が10~85℃、好ましくは12~75℃、より好ましくは14~70℃、最も好ましくは16~65℃となるように設計することが好ましい。ヌクレオチドのTm値を上記範囲となるように設計することで、核酸増幅反応における所定の温度サイクル条件(特に、所定のアニーリング温度)下において、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。
さらにまた、ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、特に、複数のヌクレオチド間において各ヌクレオチドのTm値のばらつきが50℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、最も好ましくは35℃以下となるように設計することが好ましい。複数のヌクレオチド間でTm値のばらつきが上記範囲となるように設計することで、核酸増幅反応における所定の温度サイクル条件(特に、所定のアニーリング温度)下において、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。
〔核酸増幅反応〕
本発明に係るDNAライブラリーの作製方法では、上述したランダムプライマー及び鋳型としてのゲノムDNAを用いた核酸増幅反応によって、多数の増幅断片を取得する。特に、核酸増幅反応において、反応液中のランダムプライマーの濃度を、通常の核酸増幅反応におけるプライマー濃度と比較して高濃度とする。これにより、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片をゲノムDNAを鋳型として得ることができる。これにより、得られた多数の増幅断片は、遺伝子型判定等に利用できるDNAライブラリーとして使用することが可能となる。
ここで、核酸増幅反応とは、鋳型となるゲノムDNA、上述したランダムプライマー、DNAポリメラーゼ、基質となるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP、すなわちdATP、dCTP、dTTP及びdGTPの混合物)及びバッファーからなる反応液で、所定の温度サイクル条件を加えることで増幅断片を合成する反応である。なお、核酸増幅反応には、反応液中に所定濃度のMg2+が必要であり、上述した組成においてバッファーにMgCl2が含まれている。バッファーにMgCl2が含まれていない場合、上記組成に加えてMgCl2が含まれることとなる。
特に核酸増幅反応において、ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーの塩基長に応じて適宜設定することが好ましい。ここで、ランダムプライマーの塩基長は、異なる塩基長の複数種類のヌクレオチドをランダムプライマーとして使用する場合には、その平均値(単純平均でもよいし、ヌクレオチド量を加味した加重平均でもよい)とすることができる。
具体的には、9~30塩基長のランダムプライマーを用い、当該ランダムプライマー濃度を4~200μMとする条件、好ましくは4~100μMとする条件で核酸増幅反応を行う。この条件であれば、核酸増幅反応により、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片、特に100~500塩基長の多数の増幅断片を得ることができる。
より具体的には、ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが9~10塩基長である場合、40~60μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが10~14塩基長である場合、ランダムプライマーの塩基長をxとし、ランダムプライマーの濃度をyとしたときに、y>3E+08x-6.974且つ100μM以下を満たすことが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが14~18塩基長の場合、4~100μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが18~28塩基長の場合、4μM以上であり、且つy<8E+08x-5.533を満たすことが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが28~29塩基長の場合、6~10μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度を、ランダムプライマーの塩基長に応じて上記のように設定することで、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片をより確実に得ることができる。
なお、上述したy>3E+08x-6.974及びy<8E+08x-5.533の不等式は、後述する実施例で説明するように、ランダムプライマーの長さと濃度との関係を詳細に調べた結果、100~500塩基長の多数のDNA断片を再現性良く増幅できる範囲として算出されたものである。
また、核酸増幅反応において鋳型となるゲノムDNAは、特に限定されないが、反応液の量を50μlとしたときに、0.1~1000ngとすることが好ましく、1~500ngとすることがより好ましく、5~200ngとすることが更に好ましく、10~100ngとすることが最も好ましい。鋳型となるゲノムDNAの量をこの範囲とすることで、ランダムプライマーからの増幅反応が阻害されることなく、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片を得ることができる。
ゲノムDNAの調整方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。また、市販されているキットを利用することで、対象の生物種から簡便にゲノムDNAを調整することができる。なお、ゲノムDNAとしては、従来公知の方法や市販のキットにより生物から抽出されたものをそのまま使用しても良いし、生物から抽出したものを精製したものでも良いし、制限酵素処理や超音波処理した後のものを使用しても良い。
また、核酸増幅反応においてDNAポリメラーゼとしては、特に限定されず、核酸増幅反応のための温度サイクル条件下でDNAポリメラーゼ活性を有する酵素を使用することができる。具体的には、通常の核酸増幅反応に使用される耐熱性DNAポリメラーゼを使用することができる。例えば、DNAポリメラーゼとしては、Taq DNAポリメラーゼ等の好熱細菌由来DNAポリメラーゼ、KOD DNA ポリメラーゼやPfu DNAポリメラーゼ等の超好熱Archaea由来DNAポリメラーゼを挙げることができる。特に、核酸増幅反応においては、上述したランダムプライマーとともに、DNAポリメラーゼとしてはPfu DNAポリメラーゼを使用することが好ましい。これらDNAポリメラーゼを使用することで、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片をより確実に得ることができる。
さらに、核酸増幅反応において、基質となるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP、すなわちdATP、dCTP、dTTP及びdGTPの混合物)の濃度は、特に限定されないが、5μM~0.6mMとすることができ、10μM~0.4mMとすることが好ましく、20μM~0.2mMとすることがより好ましい。基質となるdNTPの濃度をこの範囲とすることで、DNAポリメラーゼによる誤った取り込みによるエラーの発生を防止し、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片を得ることができる。
さらに、核酸増幅反応において、バッファーとしては、特に限定されないが、上述のようにMgCl2を含み、例えばTris-HCl(pH8.3)及びKClを含む溶液を挙げることができる。ここで、Mg2+の濃度としては、特に限定されないが、例えば0.1~4.0mMとすることができ、0.2~3.0mMとすることが好ましく、0.3~2.0mMとすることがより好ましく、0.5~1.5mMとすることが更に好ましい。反応液中のMg2+濃度をこの範囲に設定することで、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片を得ることができる。
さらにまた、核酸増幅反応における温度サイクル条件としては、特に限定されず、通常の温度サイクルを採用することができる。具体的に温度サイクルとは、先ず、鋳型のゲノムDNAを一本鎖に乖離するための最初の熱変性温度、その後、「熱変性温度→アニーリング温度→伸長反応温度」を複数回(例えば、20~40回)行い、最後に必要であれば、所定時間伸長反応温度とし、最後に保存のための温度とするサイクルを例示することができる。
熱変性温度としては、例えば93~99℃、好ましくは95~98℃、より好ましくは97~98℃とすることができる。アニーリング温度としては、上述したランダムプライマーのTm値にもよるが、例えば30~70℃、好ましくは35~68℃、より好ましくは37~65℃とすることができる。伸長反応温度としては、例えば70~76℃、好ましくは71~75℃、より好ましくは72~74℃とすることができる。また、保存のための温度としては例えば4℃とすることができる。
また、最初の熱変性は、上述した温度範囲において、例えば5秒~10分、好ましくは10秒~5分、より好ましくは30秒~2分とすることができる。「熱変性温度→アニーリング温度→伸長反応温度」のサイクルにおける熱変性は、上述した温度範囲において、例えば2秒~5分、好ましくは5秒~2分、より好ましくは10秒~1分とすることができる。「熱変性温度→アニーリング温度→伸長反応温度」のサイクルにおけるアニーリングは、上述した温度範囲において、例えば1秒~3分、好ましくは3秒~2分、より好ましくは5秒~1分とすることができる。「熱変性温度→アニーリング温度→伸長反応温度」のサイクルにおける伸長反応は、上述した温度範囲において、例えば1秒~3分、好ましくは3秒~2分、より好ましくは5秒~1分とすることができる。
また、本発明に係るDNAライブラリーの作製方法としては、ホットスタート法を採用した核酸増幅反応によって増幅断片を取得するものでも良い。ホットスタート法とは、「熱変性温度→アニーリング温度→伸長反応温度」のサイクル前のミスプライミングやプライマーダイマーに由来する非特異増幅を防ぐ方法である。ホットスタート法では、抗DNAポリメラーゼ抗体を結合させたり、化学修飾を行うことで、DNAポリメラーゼ活性を抑制させた状態の酵素を使用する。この状態では、DNAポリメラーゼ活性が抑制され、温度サイクル前の非特異的な反応を防止することができる。ホットスタート法では、最初の温度サイクル時に温度を高く設定することでDNAポリメラーゼ活性が回復し、その後の核酸増幅反応が進行することとなる。
以上のように、上述した9~30塩基長のランダムプライマーを使用し、反応液中の当該ランダムプライマー濃度を4~200μMとして核酸増幅反応を行うことで、ゲノムDNAを鋳型としてランダムプライマーが多数の増幅断片を得ることができる。上述した9~30塩基長のランダムプライマーを使用し、反応液中の当該ランダムプライマー濃度を4~200μMとした場合、非常に再現性の高い核酸増幅反応となる。すなわち、上述した核酸増幅反応によれば、非常に高い再現性を達成しながら多数の増幅断片を得ることができる。したがって、得られた多数の増幅断片は、ゲノムDNAを対象とした遺伝子解析においてDNAライブラリーとして使用することができる。
また、上述した9~30塩基長のランダムプライマーを使用し、反応液中の当該ランダムプライマー濃度を4~200μMとして核酸増幅反応を行うことで、特に、ゲノムDNAを鋳型として約100~500塩基長の多数の増幅断片を得ることができる。この約100~500塩基長の多数の増幅断片は、例えば次世代シーケンサーによる塩基配列の大量解析に適したサイズであり、高精度な配列情報を得ることができる。すなわち、本発明によれば、約100~500塩基長といったDNA断片を含むDNAライブラリーを作製することができる。
さらに、上述した9~30塩基長のランダムプライマーを使用し、反応液中の当該ランダムプライマー濃度を4~200μMとして核酸増幅反応を行うことで、特に、ゲノムDNAの全体に亘って均一に増幅断片を得ることができる。言い換えると、当該ランダムプライマーを用いた核酸増幅反応では、ゲノムDNAの所定の領域に偏ってDNA断片が増幅されるのではなく、ゲノム全体に分散してDNA断片が増幅される。すなわち、本発明によれば、ゲノム全体に対して均一なDNAライブラリーを作製することができる。
なお、上述したランダムプライマーを使用して核酸増幅反応を行った後、得られた増幅断片に対して制限酵素処理、サイズセレクション処理及びシーケンスキャプチャー処理等を行うことができる。増幅断片に対してこれら制限酵素処理、サイズセレクション処理及びシーケンスキャプチャー処理を行うことで、得られた増幅断片のなかから特定の増幅断片(特定の制限酵素部位を有する断片、特定のサイズ範囲の増幅断片、特定の配列を有する増幅断片)を得ることができる。そして、これら各種処理によって得られた特定の増幅断片をDNAライブラリーとして使用することができる。
〔ゲノムDNA解析方法〕
上述のように作製されたDNAライブラリーを使用することで、遺伝子型解析等のゲノムDNA解析を行うことができる。上述のように、DNAライブラリーは、非常に高い再現性を有しており、次世代シーケンサーに適したサイズを有しており、ゲノム全体に亘って均一性を有している。したがって、DNAライブラリーは、DNAマーカー(遺伝マーカー、遺伝子マーカーとも称される)として使用することができる。ここで、DNAマーカーとは、ゲノムDNA内に存在する特徴的な塩基配列を広く意味する。また、DNAマーカーとしては、特に、遺伝的形質に関連する目印となるゲノム上の塩基配列とすることもできる。DNAマーカー、例えば遺伝子型同定、連鎖地図、遺伝子マッピング、マーカーを利用した選抜工程を含む育種、マーカーを利用した戻し交配、量的形質遺伝子座のマッピング、バルクセグリガント分析、品種識別、又は連鎖不均衡マッピング等に利用することができる。
例えば、次世代シーケンサー等を使用して、上述のように作製されたDNAライブラリーの塩基配列を決定し、得られた塩基配列に基づいてDNAマーカーの存否を確認することができる。
一例としては、得られた塩基配列のリード数からDNAマーカーの存否を確認することができる。ここで、次世代シーケンサーとは、特に限定されないが、第2世代シーケンサーとも呼称され、数千万のDNA断片の塩基配列を同時並行的に決定できる塩基配列決定装置を意味する。次世代シーケンサーにおけるシーケンシング原理としては、特に限定されず、例えばブリッジPCR法とSequencing-by-synthesis法により、フローセル上で目的DNAを増幅させ、合成しながらシーケンシングを行うといった原理、或いは、エマルションPCR法とDNA合成時に放出されるピロリン酸の量を測定することで配列決定を行なうパイロシークエンス法とによりシーケンシングを行うといった原理を挙げることができる。より具体的に、次世代シーケンサーとしては、イルミナ社(Illumina)のMiniSeq、MiSeq、NextSeq、HiSeq及びHiSeq Xシリーズ、ロシュ社のRoche 454 GS FLXシーケンサー等を挙げることができる。
また、他の例としては、上述のように作製されたDNAライブラリーについて得られた塩基配列を参照用の塩基配列と比較することでDNAマーカーの存否を確認することができる。ここで、参照用の塩基配列とは、基準となる既知の配列を意味し、例えば、データベースに格納された既知配列とすることができる。すなわち、所定の生物について、上述のようにDNAライブラリーを作製し、その塩基配列を決定し、DNAライブラリーの塩基配列を参照用の塩基配列と比較する。そして、参照用の塩基配列と相違する塩基配列を、当該所定の生物に関するDNAマーカー(ゲノムDNA内に存在する特徴的な塩基配列)とすることができる。また、特定したDNAマーカーについては、定法に従って更に解析することによって、遺伝的形質(表現型)に関連性を決定することができる。すなわち、上述のように特定したDNAマーカーの中から、表現型に関連するDNAマーカー(選抜マーカーと称する場合もある)を特定することができる。
さらに、他の例としては、上述のように作製されたDNAライブラリーについて得られた塩基配列を、他の生物由来のゲノムDNA又は他の組織由来のゲノムDNAを用いて作製した上記DNAライブラリーの塩基配列と比較することでDNAマーカーの存否を確認することができる。すなわち、2以上の生物又は2つの異なる組織について、それぞれ上述のようにDNAライブラリーを作製し、それらの塩基配列を決定し、DNAライブラリーの塩基配列同士を比較する。そして、DNAライブラリー間で相違する塩基配列を、供試した生物又は組織に関するDNAマーカー(ゲノムDNA内に存在する特徴的な塩基配列)とすることができる。また、特定したDNAマーカーについては、定法に従って更に解析することによって、遺伝的形質(表現型)に関連性を決定することができる。すなわち、上述のように特定したDNAマーカーの中から、表現型に関連するDNAマーカー(選抜マーカーと称する場合もある)を特定することができる。
ところで、得られた塩基配列に基づいて当該DNAマーカーを特異的に増幅する一対のプライマーを設計することもできる。設計した一対のプライマーを使用し、対象の生物から抽出したゲノムDNAを鋳型として核酸増幅反応を行うことで、抽出したゲノムDNAにおけるDNAマーカーの存否を確認することもできる。
或いは、上述のように作製されたDNAライブラリーは、微生物等の多種多様性を調べるメタゲノム解析や腫瘍組織などの体細胞ゲノム変異解析、マイクロアレイを利用した遺伝子型解析、倍数性の判定解析、染色体数の算出解析、染色体の増減解析、染色体の部分的挿入・欠失・複製・転座解析、外来ゲノムの混入解析、親子判別解析、交配種子純度検定解析といった解析に利用することができる。
〔次世代シーケンス技術への応用〕
以上のように、反応液中の当該ランダムプライマーを高濃度として核酸増幅反応を行うことで、ゲノムDNAを鋳型として多数の増幅断片を再現性良く得ることができる。得られた増幅断片は、その両末端にランダムプライマーと同じ塩基配列を有するため、当該塩基配列を利用することによって簡便に次世代シーケンス技術に供することができる。
具体的には、先ず、上述のように、ゲノムDNA及び高濃度のランダムプライマーを含む反応液(第1の反応液)にて核酸増幅反応を行い、ゲノムDNAを鋳型として当該核酸増幅反応により多数の増幅断片(第1のDNA断片)を取得する。次に、取得した多数の増幅断片(第1のDNA断片)と、上記ランダムプライマーの塩基配列に基づいて設計したプライマー(次世代シーケンサー用プライマーと称す)とを含む反応液(第2の反応液)にて核酸増幅反応を行う。ここで、次世代シーケンサー用プライマーは、塩基配列決定反応に使用される領域を含むヌクレオチドである。より具体的には、例えば、次世代シーケンサー用プライマーは、その3’末端の塩基配列を、第1のDNA断片の5’末端側の塩基配列と70%以上一致する塩基配列、好ましくは80%以上一致する塩基配列、より好ましくは90%以上一致する塩基配列、更に好ましくは95%以上一致する塩基配列、更に好ましくは97%以上一致する塩基配列、最も好ましくは100%一致する塩基配列とするものであり、次世代シーケンス装置による塩基配列決定反応(シーケンス反応)に必要な領域を有するヌクレオチドとすることができる。
ここで、次世代シーケンサー用プライマーに含まれる「塩基配列決定反応に使用される領域」とは、次世代シーケンサーの種類によって異なるため、特に限定されないが、例えば、次世代シーケンサーがシーケンス用プライマーを使用して塩基配列決定反応を実行する場合、当該シーケンス用プライマーの塩基配列に対して相補的な塩基配列とすることができる。また、次世代シーケンサーが所定のDNAを結合したキャプチャービーズを使用して塩基配列決定反応を実行する場合、「塩基配列決定反応に使用される領域」とは、当該キャプチャービーズに結合したDNAの塩基配列に対して相補的な塩基配列とすることができる。さらに、次世代シーケンサーがナノサイズの孔を有するタンパク質を末端にペアピンループを有するDNA鎖が通過したときの電流変化から配列を読み取るものである場合、「塩基配列決定反応に使用される領域」とは、当該ヘアピンループを形成させる塩基配列に対して相補的な塩基配列とすることができる。
次世代シーケンサー用プライマーの3’末端の塩基配列を上述のように設計することで、次世代シーケンサー用プライマーは第1のDNA断片の3’末端にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができ、第1のDNA断片を鋳型として第2のDNA断片を増幅することができる。ここで、ストリンジェントな条件下とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム濃度が25~500mM、好ましくは25~300mMであり、温度が42~68℃、好ましくは42~65℃である。より具体的には、5×SSC(83mM NaCl、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃である。
特に、複数種類のランダムプライマーを使用して第1のDNA断片を取得した場合、全てのランダムプライマーに対応するように次世代シーケンサー用プライマーを準備しても良いし、一部のランダムプライマーに対応するように次世代シーケンサー用プライマーを準備しても良い。
例えば、複数種類のランダムプライマーとして、3’末端の数塩基(例えば1~3塩基程度)以外は共通する塩基配列からなるランダムプライマー(3’末端の数塩基は任意の配列)のセットを使用する場合、得られる多数の第1のDNA断片の5’末端は全て共通する配列を有することとなる。そこで、次世代シーケンサー用プライマーの3’末端の塩基配列を、第1のDNA断片の5’末端側において共通する塩基配列と70%以上一致する塩基配列とする。このように次世代シーケンサー用プライマーを設計することによって、全てのランダムプライマーに対応する次世代シーケンサー用プライマーとなる。この次世代シーケンサー用プライマーを使用することによって、第1のDNA断片の全てを鋳型として第2のDNA断片を増幅することができる。
また、同様に、複数種類のランダムプライマーとして、3’末端の数塩基(例えば1~3塩基程度)以外は共通する塩基配列からなるランダムプライマー(3’末端の数塩基は任意の配列)のセットを使用する場合であっても、得られた多数の第1のDNA断片のうち一部を鋳型として第2のDNA断片を得ることもできる。具体的には、次世代シーケンサー用プライマーの3’末端の塩基配列を、第1のDNA断片の5’末端側において共通する塩基配列及びそれに続く数塩基の配列(ランダムプライマーの3’末端の数塩基(任意配列)に相当する)に70%以上一致する塩基配列とすることで、一部の第1のDNA断片を鋳型として第2のDNA断片を増幅することができる。
一方、全て任意の塩基配列からなる複数種類のランダムプライマーを使用して第1のDNA断片を得た場合、第1のDNA断片の全てに対応するように複数種類の次世代シーケンサー用プライマーを使用して第2のDNA断片を得ても良いし、第1のDNA断片のうち一部に対応するように複数種類の次世代シーケンサー用プライマーを使用して第2のDNA断片を得ても良い。
以上のように、次世代シーケンサー用プライマーを用いて増幅された第2のDNA断片は、次世代シーケンサー用プライマーに含まれる次世代シーケンス装置による塩基配列決定反応(シーケンス反応)に必要な領域を有している。シーケンス反応に必要な領域とは、次世代シーケンス装置によって異なるため特に限定されない。例えば、ブリッジPCR法とSequencing-by-synthesis法により、フローセル上で目的DNAを増幅させ、合成しながらシーケンシングを行うといった原理の次世代シーケンス装置に使用する場合、次世代シーケンサー用プライマーは、ブリッジPCRに必要な領域及びSequencing-by-synthesis法に必要な領域を含むこととなる。ブリッジPCRに必要な領域とは、フローセル上に固定されたオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする領域であり、次世代シーケンサー用プライマーの5’末端を含む9塩基長の領域である。また、Sequencing-by-synthesis法に必要な領域とは、シーケンス反応に使用するシーケンスプライマーがハイブリダイズする領域であり、次世代シーケンサー用プライマーの中途部の領域である。
また、次世代シーケンス装置としては、Ion Torrentシーケンス装置を挙げることができる。Ion Torrentシーケンス装置を使用する場合、次世代シーケンサー用プライマーは、5’末端側にいわゆるイオンアダプタを有し、エマルジョンPCRを実施する粒子に結合する。また、Ion Torrentシーケンス装置では、エマルジョンPCRにより増幅したテンプレートでコーティングされた粒子をイオンチップに載置し、シーケンス反応に供する。
なお、次世代シーケンサー用プライマー及び第1のDNAを含む第2の反応液を用いた核酸増幅反応は、特に限定されず、通常の核酸増幅反応の条件を適用することができる。すなわち、上述した〔核酸増幅反応〕の欄に記載したような条件を採用することができる。例えば、第2の反応液は、鋳型となる第1のDNA断片、上述した次世代シーケンサー用プライマー、DNAポリメラーゼ、基質となるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP、すなわちdATP、dCTP、dTTP及びdGTPの混合物)及びバッファーを含む。
特に次世代シーケンサー用プライマーの濃度としては、0.01~5.0μMとすることができ、0.1~2.5μMとすることが好ましく、0.3~0.7μMとすることが最も好ましい。
また、核酸増幅反応において鋳型となる第1のDNA断片は、特に限定されないが、反応液の量を50μlとしたときに、0.1~1000ngとすることが好ましく、1~500ngとすることがより好ましく、5~200ngとすることが更に好ましく、10~100ngとすることが最も好ましい。
鋳型となる第1のDNA断片の調整方法は、特に限定されず、上述したランダムプライマーを用いた核酸増幅反応が終わった後の反応液をそのまま使用しても良いし、当該反応液から第1のDNA断片を精製したものを使用しても良い。
また、核酸増幅反応に使用するDNAポリメラーゼの種類、基質となるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP、すなわちdATP、dCTP、dTTP及びdGTPの混合物)の濃度、バッファー組成、温度サイクル条件については、上述した〔核酸増幅反応〕の欄に記載したような条件とすることができる。また、次世代シーケンサー用プライマーを用いた核酸増幅反応においても、ホットスタート法を採用しても良いし、核酸増幅反応によって増幅断片を取得するものでも良い。
以上のように、ランダムプライマーを用いて取得した第1のDNA断片を鋳型とし、次世代シーケンサー用プライマーを用いて増幅した第2のDNA断片を使用することで、次世代シーケンス装置に適用可能なDNAライブラリーを簡便に作製することができる。
なお、上述した例では、ランダムプライマーを用いて取得した第1のDNA断片を鋳型とし、次世代シーケンサー用プライマーを用いて増幅した第2のDNA断片をDNAライブラリーとしたが、本発明の技術範囲はこの例に限定されるものではない。例えば、本発明に係るDNAライブラリーは、ランダムプライマーを用いて取得した第1のDNA断片を鋳型として第2のDNA断片を増幅し、更に、当該第2のDNA断片を鋳型として次世代シーケンサー用プライマーを用いて第3のDNA断片を取得し、この第3のDNA断片を次世代シーケンス装置に適用可能なDNAライブラリーとしても良い。
次世代シーケンス装置に適用可能なDNAライブラリーを作製するには、同様に、第2のDNA断片を鋳型とした核酸増幅反応の後、得られたDNA断片を鋳型した核酸増幅反応を繰り返し、最後の核酸増幅反応に次世代シーケンサー用プライマーを用いることで作製することができる。このとき、繰り返される核酸増幅反応の回数は、特に限定されないが、2~10回、好ましくは2~5回、より好ましくは2~3回である。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.フローチャート
本実施例では、図1に示したフローチャートに従って、各種生物種から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、各種ランダムプライマーセットを用いたPCRによりDNAライブラリーを作製した。また、作製したDNAライブラリーを用いて、所謂、次世代シーケンサーを用いた配列解析を行い、得られたリードデータに基づいて遺伝子型を解析した。
2.材料
本実施例では、サトウキビ品種NiF8、Ni9及びその交雑後代22系統、並びにイネ品種日本晴からDNeasy Plant Mini kit(QIAGEN)を用いてゲノムDNAを抽出及び精製し、それぞれNiF8由来のゲノムDNA、Ni9由来のゲノムDNA、交雑後代22系統由来のゲノムDNA、日本晴由来のゲノムDNAとして使用した。また、本実施例では、ヒトDNAについてはタカラバイオよりHuman Genomic DNAを購入し、ヒト由来のゲノムDNAとして使用した。
3.方法
3.1 PCR条件とDNA断片のサイズの関係
3.1.1 ランダムプライマーの設計
ランダムプライマーを設計するにあたり、GC含量を20~70%の範囲とし、連続塩基数が5以下となる条件を設定した。また、塩基長については、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、14塩基長、16塩基長、18塩基長、20塩基長、22塩基長、24塩基長、26塩基長、28塩基長、29塩基長、30塩基長及び35塩基長の16種類を設定した。各塩基長について、それぞれ96種類の塩基配列を設計し、96種類のランダムプライマーからなるセットを作製した。なお、10塩基長については、6セット(各セットに96種類のランダムプライマーが含まれる)を設計した(これら6セットを、10塩基A~10塩基Fと称する)。すなわち、本実施例では、21種類のランダムプライマーセットを作製した。
これら21種類のランダムプライマーセットに含まれるランダムプライマーの塩基配列を表1~21に示した。
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Figure 0007528911000049
3.1.2 標準PCR
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度0.6μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。なお、本実施例においては、ここで説明した標準PCRを含め、ランダムプライマーを用いたPCRによって得られた多数の核酸断片をDNAライブラリーと称する。
3.1.3 DNAライブラリーの精製及び電気泳動
3.1.2で得られたDNAライブラリーをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN)で精製後、Agilent 2100バイオアナライザ(Agient Technologies)で電気泳動し、蛍光ユニット(Fluorescence Unit: FU)を得た。
3.1.4 アニーリング温度の検討
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度0.6μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、種々のアニーリング温度で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。なお、本実施例においては、アニーリング温度として37℃、40℃及び45℃を検討した。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.1.5 酵素量の検討
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度0.6μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び2.5unit又は12.5unitのDNA DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.1.6 MgCl2濃度の検討
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度0.6μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、所定濃度のMgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。なお、本実施例においては、MgCl2濃度として、通常の2倍(2.0mM)、3倍(3.0mM)及び4倍(4.0mM)を検討した。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.1.7 ランダムプライマーの塩基長の検討
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度0.6μMランダムプライマー、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。なお、本実施例においては、ランダムプライマーとして、上述した8塩基長(表7)、9塩基長(表8)、11塩基長(表9)、12塩基長(表10)、14塩基長(表11)、16塩基長(表12)、18塩基長(表13)及び20塩基長(表14)を検討した。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.1.8 ランダムプライマー濃度の検討
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に所定濃度のランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。なお、本実施例においては、ランダムプライマー濃度として、2、4、6、8、10、20、40、60、100、200、300、400、500、600、700、800、900及び1000μMを検討した。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。また、本実験では、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
3.2 MiSeqによる再現性の確認
3.2.1 DNAライブラリーの作製
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度60μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.2.2 シーケンスライブラリーの作製
3.2.1で得られたDNAライブラリーから、KAPA Library Preparation Kit(Roche)を用いてMiSeq解析用シーケンスライブラリーを作製した。
3.2.3 MiSeq解析
MiSeq Reagent Kit V2 500 Cycle(Illumina)を用いて、3.2.2で得られたMiSeq解析用シーケンスライブラリーをリード長100塩基のペアエンド条件のもと解析した。
3.2.4 リードデータ解析
3.2.3で得られたリードデータから、ランダムプライマーの配列情報を削除し、リードパターンを特定した。そしてリードパターンごとにリード数をカウントし、反復間のリード数を比較し、相関係数で再現性を評価した。
3.3 イネ品種日本晴の解析
3.3.1 DNAライブラリーの作製
2.に記載したゲノムDNA(日本晴由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度60μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.3.2 シーケンスライブラリー作製、MiSeq解析及びリードデータ解析
日本晴由来ゲノムDNAから作製したDNAライブラリーを用いたシーケンスライブラリーの作製、MiSeq解析及びリードデータ解析は、それぞれ3.2.2、3.2.3及び3.2.4に記載した方法に従った。
3.3.3 ゲノム均―性の評価
3.3.2で得られたリードパターンについて、日本晴のゲノム情報(NC_008394~NC_008405)に対してリードパターンをbowtie2にてマッピングし、各リードパターンのゲノム位置を特定した。
3.3.4 非特異的増幅
3.3.3で特定した各リードパターンの位置情報に基づいて、ランダムプライマーの配列と当該ランダムプライマーがアニールするゲノム上の配列を比較し、ミスマッチ数をカウントした。
3.4 多型検出及び遺伝子型判別
3.4.1 DNAライブラリーの作製
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA、Ni9由来ゲノムDNA、交雑後代由来ゲノムDNA又は日本晴由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度60μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.4.2 HiSeq解析
3.4.1で作製した各DNAライブラリーを、それぞれ1レーン16サンプル及びリード長100塩基のペアエンド条件でタカラバイオヘ解析を委託し、それぞれからリードデータを取得した。
3.4.3 リードデータ解析
3.4.2で得られたリードデータからランダムプライマーの配列情報を削除し、リードパターンを特定した。そしてリードパターンごとにリード数をカウントした。
3.4.4 多型検出及び遺伝子型判別
3.4.3の解析の結果として得られたリードパターンのリード数からNiF8及びNi9特有の多型を検出し、そのリードパターンをマーカーとした。また、リード数をもとに交雑後代22系統の遺伝子型を判別した。遺伝子型判別の精度は、交雑後代2系統の反復データでの再現性をもとに評価した。
3.5 PCRマーカーによる確認実験
3.5.1 プライマーの設計
3.4.4で特定したマーカーのうちNiF8型3マーカー、Ni9型3マーカーの合計6マーカーについて、ペアエンドのマーカー配列情報からプライマーをそれぞれ設計した(表22)。
Figure 0007528911000050
3.5.2 PCR及び電気泳動
TaKaRa Multiplex PCR Assay Kit Ver.2(TAKARA)を用いて、2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA、Ni9由来ゲノムDNA又は交雑後代由来ゲノムDNA:15ng)を鋳型に、1.25μl Multiplex PCR Enzyme Mix、2 X Multiplex PCR Buffer 12.5μl、3.5.1で設計した0.4μMプライマーを加え、最終反応量25μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、94℃で1分とし、その後、94℃で30秒間、60℃で30秒間及び72℃で30秒を1サイクルとして30サイクル行った後、72℃で10分間維持し、その後、4℃で保存する条件とした。増幅したDNA断片は、TapeStation(Agilent Technologies)で電気泳動した。
3.5.3 遺伝子型データ比較
3.5.2で得られた電気泳動の結果から、バンドの有無によりマーカーの遺伝子型を判別し、マーカーのリード数と比較した。
3.6 ランダムプライマー濃度と長さの関係
3.6.1 高濃度条件下でのランダムプライマー長の影響
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度10μMの所定の長さのランダムプライマー、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。本実験においては、ランダムプライマーの長さとして、9塩基長(表8)、10塩基長(表1、10塩基A)、11塩基長(表9)、12塩基長(表10)、14塩基長(表11)、16塩基長(表12)、18塩基長(表13)及び20塩基長(表14)を検討した。PCRの温度サイクル条件は、9塩基長のランダムプライマーを使用する反応系では、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、37℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。PCRの温度サイクル条件は、10塩基長以上の長さのランダムプライマーを使用する反応系では、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.6.2 ランダムプライマーの濃度と長さの関係
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に、所定の長さのランダムプライマーを所定の濃度となるように加え、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。本実験においては、ランダムプライマーの長さとして、表1~21に示した8塩基長から35塩基長のランダムプライマーを検証し、ランダムプライマーの濃度として0.6~300μMの範囲を検証した。
PCRの温度サイクル条件は、8塩基長及び9塩基長のランダムプライマーを使用する反応系では、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、37℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。PCRの温度サイクル条件は、10塩基長以上の長さのランダムプライマーを使用する反応系では、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。また、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
3.7 ランダムプライマー数
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に、表1に示した10塩基長からなる96種類のランダムプライマー(10塩基A)から選ばれる1種、2種、3種、12種、24種又は48種のランダムプライマーを最終濃度60μMとなるように加え、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。本実験においては、1種、2種、3種、12種、24種又は48種のランダムプライマーとして、表1のNo.1から順にランダムプライマーを選び検証した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。また、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
3.8 ランダムプライマー配列
2.に記載したゲノムDNA(NiF8由来ゲノムDNA:30ng)に、表2~6に示したランダムプライマーの5セットから選ばれる1セットを最終濃度60μMとなるように加え、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。また、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
3.9 ヒト由来ゲノムDNAを用いたDNAライブラリー
2.に記載したゲノムDNA(ヒト由来ゲノムDNA:30ng)に、最終濃度60μMのランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。また、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
4.結果および考察
4.1 PCR条件とDNAライブラリーのサイズの関係
通常のPCR条件に倣って、ランダムプライマーを利用したPCR(上記3.1.2)では、増幅されたDNAライブラリーのサイズは2kbp以上と高分子であり、目的のサイズとする100bp~500bpには増幅は見られなかった(図2)。100bp~500bpのDNAライブラリーが得られなかったのは、ランゲムプライマーが500bp以下の領域でプライマーとし機能する確率が低いためと考えられた。目的のサイズである100bp~500bpのDNAライブラリーを作製するには、再現性良く非特異的増幅を誘発する必要があると考えられた。
そこで、PCRの特異性に影響すると考えられるアニーリング温度(上記3.1.4)、酵素量(上記3.1.5)、MgCl2濃度(上記3.1.6)、プライマー長(上記3.1.7)及びプライマー濃度(上記3.1.8)とDNAライブラリーサイズの関係について検討した。
上記3.1.4に記載した実験において、アニーリング温度を45℃としたときの結果を図3、アニーリング温度を40℃としたときの結果を図4、アニーリング温度を37℃としたときの結果を図5に示した。図3~5に示すように、アニーリング温度を45℃、40℃及び37℃と下げていくと、高分子DNAライブラリーの増幅量は増加するものの、低分子DNAライブラリーの増幅は見られなかった。
上記3.1.5に記載した実験において、酵素量を2倍としたときの結果を図6、酵素量を10倍にしたときの結果を図7に示した。図6及び7に示すように、酵素量を通常の2倍、10倍に増やしても高分子DNAライブラリーは増加するものの、低分子にDNAライブラリーの増幅は見られなかった。
上記3.1.6に記載した実験において、MgCl2濃度を通常の2倍としたときの結果を図8、MgCl2濃度を通常の3倍としたときの結果を図9、MgCl2濃度を通常の4倍としたときの結果を図10に示した。図8~10に示すように、MgCl2濃度を通常の2倍、3倍、4倍に増やしても高分子DNAライブラリーの増幅量は変化するものの、低分子DNAライブラリーの増幅は見られなかった。
上記3.1.7に記載した実験において、ランダムプライマー長を8塩基長、9塩基長、11塩基長、12塩基長、14塩基長、16塩基長、18塩基長及び20塩基長としたときの結果を、それぞれ図11~18に示した。図11~18に示すように、いずれの長さのランダムプライマーを用いたとしても、図2に示した結果(10塩基長のランダムプライマー)と比較して大きな変化は見られなかった。
上記3.1.8に記載した実験の結果を表23に纏めた。
Figure 0007528911000051
図19~47に示すように、10塩基長のランダムプライマーを使用した場合、ランダムプライマー濃度が6μMにおいて1kbpのDNA断片について増幅が見られ、濃度が上昇するにつれDNA断片が低分子化していくことが明らかとなった。また、ランダムプライマー濃度が6~500μMの場合に再現性について検討した結果、通常の10倍の6μMではρが0.889とやや低いものの、通常の13.3倍に相当する8μM以上の場合、さらに833.3倍に相当する500μMの場合では、いずれもρが0.9以上と高い値を示した。この結果から、ランダムプライマーの濃度を通常のPCR条件よりも大幅に高めることで、高い再現性を達成しながら1kbp以下のDNA断片を増幅できることが明らかとなった。ただし、ランダムプライマーの濃度が500μを超えて高すぎる場合には、所望の大きさのDNA断片の増幅が見られなくなる。したがって、再現性に優れ、且つ低分子のDNA断片を増幅するには、ランダムプライマーの濃度を通常のPCRのときよりも高く、且つ所定の値以下という最適な範囲が存在することが明らかとなった。
4.2 MiSeqによる再現性の確認
上記3.2で説明したように、DNAライブラリー作製の再現性を確認するため、NiF8から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、ランダムプライマーで増幅したDNAライブラリーについて次世代シーケンサーMiSeqにより解析した結果を図48に示した。なお、上記3.2.4の結果として47,484個のリードパターンが得られた。反復間でリード数を比較した結果、電気泳動の結果と同様、反復間で相関係数r=0.991と高い相関を示した。以上の結果から、ランダムプライマーにより再現性良くDNAライブラリー作製可能と考えられた。
4.3 イネ品種日本晴の解析
上記3.3で説明したように、ゲノム情報が公開されているイネ日本晴から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、ランダムプライマーによりDNAライブラリーを作製し、電気泳動した結果を図49及び50に示した。図49及び50に示した結果から、ρが0.979と非常に高い値を示した。また、MiSeqによりリードデータを解析した結果を図51に示した。図51に示した結果から、相関係数rは0.992と非常に高い値を示した。これらの結果より、イネを対象としても、ランダムプライマーを使用することで非常に高い再現性を持ってDNAライブラリーを作製できることが明らかとなった。
また、上記3.3.3で説明したように、得られたリードパターンを日本晴ゲノム情報にマッピングした結果、6.2 kbpにlヶ所の割合で、ゲノムに偏りなく均―にDNA断片を増幅していることが明らかとなった(図52)。また、ランダムプライマーの配列とゲノム情報を比較した結果、平均3.6個のミスマッチが存在しており、99.0%のプライマーペアで1個以上のミスマッチが発生していた(図53)。以上の結果から、ランダムプライマーを利用したDNAライブラリーは、ゲノム全体に亘って均一的に、且つ再現性良く、非特異的増幅により作製されていることが明らかとなった。
4.4 サトウキビ多型検出及び遺伝子型判別
上記3.4で説明したように、サトウキビNiF8、Ni9、及びその交雑後代22系統を用いて、ランダムプライマーによりDNAライブラリーを作製、次世代シーケンサーHiSeqで解析し、リードデータをもとに両親の多型検出及び交雑後代の遺伝子型を判別した。その結果を表24に示した。
Figure 0007528911000052
表24に示すように、NiF8型は8,683個のマーカー、Ni9型は11,655個のマーカー、合計で20,338個のマーカーを作製することができた。また、交雑後代での遺伝子型判別の再現性が99.97%と高く、極めて遺伝子型判別精度が高いと考えられた。特に、サトウキビは多倍数性(8x+n)で染色体数も100~130本と極めて多く、ゲノムサイズが10Gbpとヒトの3倍以上と極めて大きい。したがって、ゲノムDNA全体に亘って遺伝子型判別が極めて困難であるといった現状がある。上述のように、ランダムプライマーを使用することで極めて多数のマーカーを作製することができ、サトウキビについて精度の高い遺伝子型判別が可能となる。
4.5 PCRマーカーによる確認実験
上記3.5で説明したように、表22に示したプライマーを用い、NiF8とNi9、その交雑後代22系統についてPCRを行い電気泳動で遺伝子型を判別し、リード数と比較した。NiF8型のマーカーN80521152のリード数及び電気泳動像をそれぞれ図54及び55に示した。NiF8型のマーカーN80997192のリード数及び電気泳動像をそれぞれ図56及び57に示した。NiF8型のマーカーN80533142のリード数及び電気泳動像をそれぞれ図58及び59に示した。Ni9型のマーカーN91552391のリード数及び電気泳動像をそれぞれ図60及び61に示した。Ni9型のマーカーN91653962のリード数及び電気泳動像をそれぞれ図62及び63に示した。Ni9型のマーカーN91124801のリード数及び電気泳動像をそれぞれ図64及び65に示した。
図54~65に示したように、上記3.5で設計した全てのPCRマーカーの結果も次世代シーケンサーの解析結果と一致したことから、次世代シーケンサーを用いた遺伝子型判別はマーカー技術として利用可能と考えられた。
4.6 ランダムプライマー濃度と長さの関係
上記3.6.1で説明したように、9塩基長(表8)、10塩基長(表1、10塩基A)、11塩基長(表9)、12塩基長(表10)、14塩基長(表11)、16塩基長(表12)、18塩基長(表13)及び20塩基長(表14)のランダムプライマーを用いてDNAライブラリーを作製した結果を図66~81に示した。また、表25にこれらの結果を纏めた。
Figure 0007528911000053
図66~81に示すように、通常の13.3倍に相当する10.OμMの高濃度ランダムプライマーを使用した場合、9塩基長~20塩基長の範囲においては、非常に高い再現性を達成しながら低分子のDNA断片を増幅できることが明らかとなった。特に、ランダムプライマーの塩基長が長くなるほど(特に12塩基長以上)、増幅断片が低分子化する傾向が見られた。なお、9塩基長のランダムプライマーを使用した際は、アニーリング温度を37℃に設定することでDNA断片の増幅量を増やすことができた。
また、上記3.6.2で説明したように、ランダムプライマーの濃度と長さの関係を明確にするため、ランダムプライマーを8~35塩基長、ランダムプライマー濃度を0.6~300μMの範囲でPCRを行い、DNAライブラリーの作製を試みた。結果を表26に示した。
Figure 0007528911000054
表26に示すように、ランダムプライマーの長さが9~30塩基長であり、且つランダムプライマーの濃度を4.0~200μMとすることで、低分子(100~500塩基)のDNA断片を再現性高く増幅できることが明らかとなった。特に、ランダムプライマーの長さが9~30塩基長であり、且つランダムプライマーの濃度を4.0~100μMとすることで、低分子(100~500塩基)のDNA断片を再現性高く確実に増幅できることが明らかとなった。
また、表26に示した結果を更に詳細に検討すると、ランダムプライマーの長さと濃度は、図82に示すように、特に枠で囲った領域内に調整することが好ましいことが判る。より具体的に、ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが9~10塩基長である場合、40~60μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが10~14塩基長である場合、ランダムプライマーの塩基長をxとし、ランダムプライマーの濃度をyとしたときに、y>3E+08x-6.974且つ100μM以下を満たすことが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが14~18塩基長の場合、4~100mMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが18~28塩基長の場合、4μM以上であり、且つy<8E+08x-5.533を満たすことが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが28~29塩基長の場合、4~10μMとすることが好ましい。なお、これらy>3E+08x-6.974及びy<8E+08x-5.533は、Microsoft Excelの累乗近似に基づいて算出した式である。
以上のように、ランダムプライマーの塩基長と濃度とを所定の範囲に規定することで、低分子(100~500塩基)のDNA断片を再現性高く増幅できることが明らかとなった。例えば、次世代シーケンサーにおいては、高分子DNA断片を解析するとデータ精度が著しく低下することが知られている。本実施例に示したように、ランダムプライマーの塩基長と濃度とを所定の範囲に規定することで、次世代シーケンサーの解析に適した分子サイズのDNAライブラリーを再現性良く作製することが可能であり、次世代シーケンサーマーカー解析に適していると言える。
4.7 ランダムプライマー数
上記3.7で説明したように、1種、2種、3種、12種、24種又は48種のランダムプライマー(濃度は60μM)を用いてDNAライブラリーを作製した結果を図83~94に示した。また、表27にこれらの結果を纏めた。
Figure 0007528911000055
図83~94に示すように、1種、2種、3種、12種、24種又は48種のランダムプライマーのいずれの場合でも、非常に高い再現性を達成しながら低分子のDNA断片を増幅できることが明らかとなった。特に、ランダムプライマーの種類が増えるにつれて、電気泳動像のピークが小さくなり、偏りがなくなる傾向にあることが判る。
4.8 ランダムプライマー配列
上記3.8で説明したように、表2~6に示したランダムプライマーのセット(10塩基B、10塩基C、10塩基D、10塩基E及び10塩基F)それぞれを用いてDNAライブラリーを作製した結果を図95~104に示した。また、表28にこれらの結果を纏めた。
Figure 0007528911000056
図95~104に示すように、10塩基B、10塩基C、10塩基D、10塩基E及び10塩基Fのいずれのセットを用いた場合でも、非常に高い再現性を達成しながら低分子のDNA断片を増幅できることが明らかとなった。
4.9 ヒトDNAライブラリー作製
上記3.9で説明したように、ヒト由来ゲノムDNA及び最終濃度60μMのランダムプライマー(10塩基A)を用いてDNAライブラリーを作製した結果を図105及び106に示した。図105は反復実験の一回目の結果を示し、図106は反復実験の二回目の結果を示している。図105及び106に示すように、ヒト由来のゲノムDNAを用いた場合であっても、非常に高い再現性を達成しながら低分子のDNA断片を増幅できることが明らかとなった。
〔実施例2〕
1.フローチャート
本実施例では、図107及び108に示した模式図に従って、ゲノムDNAを鋳型とし、ランダムプライマーを用いたPCRにより第1のDNA断片を作製し、続いて、作製した第1のDNA断片を鋳型とし、次世代シーケンサー用プライマーを用いたPCRにより第2のDNA断片を作製し、作製した第2のDNA断片をシーケンサー用ライブラリーとして、所謂、次世代シーケンサーを用いた配列解析を行い、得られたリードデータに基づいて遺伝子型を解析した。
2.材料
本実施例では、サトウキビ品種NiF8及びイネ品種日本晴からDNeasy Plant Mini kit(QIAGEN)を用いてゲノムDNAを抽出及び精製し、それぞれNiF8由来のゲノムDNA及び日本晴由来のゲノムDNAとして使用した。
3.方法
3.1 サトウキビNiF8での検討
3.1.1 ランダムプライマーと次世代シーケンサー用プライマーの設計
本例では、ランダムプライマーは、イルミナ社の次世代シーケンサー用のアダプタNextera adapterにおける3’末端の10塩基をもとに設計した。すなわち、本例ではランダムプライマーとしてGTTACACACG(配列番号2041、10塩基G)を使用した。また、次世代シーケンサー用プライマーは、同様にイルミナ社のNextera adaptorの配列情報をもとに設計した(表29)。
Figure 0007528911000057
3.1.2 DNAライブラリーの作製
上記2.で説明したNiF8由来のゲノムDNA(30 ng)に最終濃度0.2 mM dNTP mixture、1.0 mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)に、60μM ランダムプライマー(10塩基G)をそれぞれ加え、最終反応量50μlでPCR(98℃を2分後、98℃を10秒間、50℃を15秒間、72℃を20秒を30サイクル反応後、4℃で保存)によりDNAライブラリー(第1のDNA断片)を作製した。
3.1.3 精製及び電気泳動
3.1.2のDNAライブラリーをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN)で精製後、Agilent 2100 バイオアナライザ(Agilent Technologies)で電気泳動し、蛍光ユニット(Fluorescence Unit:FU)を得た。また、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
3.1.4 次世代シーケンサー用のDNAライブラリーの作製
3.1.3で精製した第1のDNA断片(100 ng)に最終濃度0.2 mM dNTP mixture、1.0 mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)に、0.5μMの次世代シーケンサー用プライマーをそれぞれ加え、最終反応量50μlでPCR(95℃を2分後、98℃を15秒間、55℃を15秒間、72℃を20秒を25サイクル反応後、72℃を1分後、4℃で保存)により次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)を作製した。次世代シーケンサー用のDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.1.5 MiSeq解析
3.1.4の次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)をMiSeq Reagent Kit V2 500 Cycle(Illumina)を用い、リード長100塩基のペアエンド条件のもとMiSeqで解析した。
3.1.6 リードデータ解析
3.1.5のリードデータからリードパターンを特定した。そしてリードパターンごとにリード数をカウントし、反復間のリード数を比較し相関係数で再現性を評価した。
3.2 イネ品種日本晴での検討
3.2.1 ランダムプライマーと次世代シーケンサー用プライマーの設計
本例では、ランダムプライマーは、イルミナ社の次世代シーケンサー用のアダプタNextera adapterにおける3’末端の10塩基をもとに設計した。すなわち、本例では、ランダムプライマーとして、Nextera adapterにおける3’末端に位置する10塩基と、当該10塩基の3’末端に2塩基の任意の配列を付加した全長12塩基からなる16種類の塩基配列を設計した(表30、12塩基B)。
Figure 0007528911000058
また、本例では、3.1.1と同様にイルミナ社のNextera adaptorの配列情報をもとに設計した次世代シーケンサー用プライマーを用いた。
3.2.2 DNAライブラリーの作製
上記2.で説明した日本晴由来のゲノムDNA(30 ng)に最終濃度0.2 mM dNTP mixture、1.0 mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)に、40μM ランダムプライマー(12塩基B)をそれぞれ加え、最終反応量50μlでPCR(98℃を2分後、98℃を10秒間、50℃を15秒間、72℃を20秒を30サイクル反応後、4℃で保存)によりDNAライブラリー(第1のDNA断片)を作製した。
3.2.3 精製及び電気泳動
3.2.2のDNAライブラリーをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN)で精製後、Agilent 2100 バイオアナライザ(Agilent Technologies)で電気泳動し蛍光ユニット(Fluorescence Unit:FU)を得た。また、スピアマンの順位相関により反復データの再現性を評価した(ρ>0.9)。
3.2.4 次世代シーケンサー用のDNAライブラリーの作製
3.2.3で精製した第1のDNA断片(100ng)に最終濃度0.2 mM dNTP mixture、1.0 mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)に、0.5μMの次世代シーケンサー用プライマーをそれぞれ加え、最終反応量50μlでPCR(95℃を2分後、98℃を15秒間、55℃を15秒間、72℃を20秒を25サイクル反応後、72℃を1分後、4℃で保存)により次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)を作製した。次世代シーケンサー用のDNAライブラリーの精製と電気泳動は3.1.3と同様の方法で行った。
3.2.5 MiSeq解析
3.2.4の次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)をMiSeq Reagent Kit V2 500 Cycle(Illumina)を用いリード長100 塩基のペアエンド条件のもとMiSeqで解析した。
3.2.6 リードデータ解析
3.2.5のリードパターンを日本晴のゲノム情報(NC_008394~NC_008405)に対してbowtie2にてマッピングし、ランダムプライマーの配列とゲノムDNAとの一致率を確認した。また、3.2.5のリードデータからリードパターンを特定、リードパターンごとにリード数をカウントし、反復間のリード数を比較し相関係数で再現性を評価した。
4.結果及び考察
4.1 サトウキビNiF8での検討結果
イルミナ社の次世代シーケンサー用のアダプタNextera adaptorにおける3’末端の10塩基からなるランダムプライマー(10塩基G)を利用し、60μlの高濃度条件でPCRしたときの電気泳動の結果を図109及び110に示した。図109及び110に示すように、100bp~500bpを含む幅広い領域で増幅が見られた(第1のDNA断片)。幅広い領域で増幅が確認できた理由としては、ランダムプライマーと一致するゲノムDNA領域以外においても増幅が見られたためと考えられた。また、反復データ間の順位相関係数が0.957と0.9以上だったことから、増幅パターンに高い再現性が認められた。
次に、3.1.4で説明したように、次世代シーケンサー用プライマーを用いてPCRを行ったときの電気泳動の結果を図111及び112に示した。すなわち、次世代シーケンサーのアダプタNextera adaptorを連結させたDNAライブラリー(第2のDNA断片)を作製するため、第1のDNA断片を鋳型としてイルミナ社のNextera adaptor配列からなる次世代シーケンサー用プライマーを利用しPCRを行った。イルミナ社の次世代シーケンサーは、DNAライブラリーに100bp以下の短断片や1kbp以上の長断片が多数含まれる場合、極端に解析精度が落ちる。本実施例で作製した次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)は、図111及び112に示したように、500bp付近をピークとし主に150bp~1kbpの範囲に分布していたことから、次世代シーケンサー用のDNAライブラリーとして適していると考えられた。また、反復データ間の順位相関係数が0.989と0.9以上だったことから、増幅パターンに高い再現性が認められた。
また、得られたDNAライブラリー(第2のDNA断片)を次世代シーケンサーMiSeqで解析した結果、3.5Gbp及び3.6Gbpのリードデータが得られた。また、MiSeqのデータ精度を示す>=Q30の値は93.3%及び93.1%であった。メーカー推奨値がリードデータ 3.0Gbp以上および>=Q30 85.0%以上だったことから、本実施例で作製した次世代シーケンサーのDNAライブラリー(第2のDNA断片)は、次世代シーケンサーの解析に利用可能と考えられた。再現性を確認するため、MiSeqで得られた34,613個のリードパターンについて反復間でのリード数を比較した。結果を図113に示した。図113に示すように、電気泳動の結果と同様、リード数は反復間でr=0.996と高い相関を示した。
以上で説明したように、イルミナ社の次世代シーケンサー用のアダプタNextera Adaptorの3’末端の10塩基からなるランダムプライマーを高濃度で利用したPCRでDNAライブラリー(第1のDNA断片)を得た後、Nextera Adaptorの配列からなる次世代シーケンサー用プライマーを利用したPCRにより、簡便かつ再現性良く、多数の断片からなる次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)を作製することができた。
4.2 イネ日本晴での検討結果
イルミナ社の次世代シーケンサー用のアダプタNextera adapterにおける3’末端に位置する10塩基と、当該10塩基の3’末端に2塩基の任意の配列を付加した全長12塩基からなる16種類のランダムプライマー(12塩基B)を利用し、40μlの高濃度条件でPCRしたときの電気泳動の結果を図114及び115に示した。図114及び115に示すように、100bp~500bpを含む幅広い領域で増幅が見られた(第1のDNA断片)。幅広い領域での増幅が確認できた理由としては、4.1と同様、ランダムプライマーと一致するゲノムDNA領域以外においても増幅したためと考えられた。また、本例でも順位相関係数が0.950と0.9以上だったことから、増幅パターンに高い再現性が認められた。
次に、3.2.4で説明したように、次世代シーケンサー用プライマーを用いてPCRを行ったときの電気泳動の結果を図116及び117に示した。すなわち、次世代シーケンサーのアダプタNextera adaptorを連結させたDNAライブラリー(第2のDNA断片)を作製するため、第1のDNA断片を鋳型としてイルミナ社のNextera adaptor配列からなる次世代シーケンサー用プライマーを利用しPCRを行った。その結果、本実施例で作製した次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)は、図116及び117に示したように、300bp付近をピークに主に150bp~1kbpの範囲に分布していたことから、次世代シーケンサー用のDNAライブラリーに適していると考えられた。また、反復データ間の順位相関係数が0.992と0.9以上だったことから、増幅パターンに高い再現性が認められた。
また、得られたDNAライブラリー(第2のDNA断片)を次世代シーケンサーMiSeqで解析した結果、4.0Gbp及び3.8Gbpのリードデータが得られた。また、MiSeqのデータ精度を示す>=Q30の値は94.0%及び95.3%であった。この結果から、4.1.1と同様に、本実施例で作製した次世代シーケンサーのDNAライブラリー(第2のDNA断片)は、次世代シーケンサーの解析に利用可能と考えられた。MiSeqで得られた19,849個のリードパターンについて、ランダムプライマー配列とゲノムとの一致率を評価するためランダムプライマー配列と日本晴リファレンス配列を比較した結果を図118に示した。図118に示すように、ランダムプライマー配列と日本晴リファレンス配列との平均一致率は34.5%であった。特に、ランダムプライマー配列と日本晴リファレンス配列と完全一致するリードパターンが無かったことから、いずれのリードパターンもランダムプライマーと一致しない配列にランダムプライマーが結合し増幅したと考えられた。これは、バイオアナライザの結果と一致する結果と考えられた。リードパターンの再現性を確認するため、反復間でリード数を比較した。結果を図119に示した。図119に示すように、電気泳動の結果と同様、反復間でr = 0.999と高い相関を示した。
以上で説明したように、イルミナ社の次世代シーケンサー用のアダプタNextera Adaptorにおける3’末端に位置する10塩基と、当該10塩基の3’末端に2塩基の任意の配列を付加した全長12塩基からなる16種類のランダムプライマーを高濃度で利用したPCRでDNAライブラリー(第1のDNA断片)を得た後、Nextera Adaptorの配列からなるプライマーを利用したPCRにより、簡便かつ再現性良く、多数の断片からなる次世代シーケンサー用のDNAライブラリー(第2のDNA断片)を作製することができた。
〔実施例3〕
1.材料および方法
1.1 材料
本実施例では、イネ品種日本晴からDNeasy Plant Mini kit(QIAGEN)を用いてゲノムDNAを抽出及び精製し、日本晴由来のゲノムDNAとして使用した。
1.2 DNAライブラリーの作製
1.1に記載したゲノムDNA(日本晴由来ゲノムDNA:30ng)に最終濃度60μMランダムプライマー(10塩基A)、0.2mM dNTP mixture、1.0mM MgCl2及び1.25 unit DNA Polymerase(TAKARA、PrimeSTAR)を加え、最終反応量50μlで反応液を調整した。PCRの温度サイクル条件は、先ず、98℃を2分とし、その後、98℃で10秒間、50℃で15秒間及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行った後、4℃で保存する条件とした。本実験で得られたDNAライブラリーは、MinElute PCR Purification Kit(QIAGEN)で精製した。
1.3 シーケンスライブラリーの作製
1.2で得られたDNAライブラリーから、KAPA Library Preparation Kit(Roche)を用いてMiSeq解析用シーケンスライブラリーを作製した。
1.4 MiSeq解析
MiSeq Reagent Kit V2 500 Cycle(Illumina)を用いて、1.3で得られたMiSeq解析用シーケンスライブラリーをリード長100塩基のペアエンド条件のもと解析した。
1.5 塩基配列情報の解析
1.4で得られたリードデータから、ランダムプライマーの配列情報を削除し、各リードの塩基配列情報を特定した。各リードの塩基配列情報を、イネカサラスのゲノム情報(kasalath_genome)にbowtie2でマッピングし、各染色体毎にマーカーとして1塩基多型(SNP)および挿入欠失変異(inDel)を同定した。
2.結果および考察
イネ日本晴由来のゲノムDNAからランダムプライマーにより作製したDNAライブラリーの塩基配列情報をイネカサラスのゲノム情報にマッピングした結果を表31に示した。
Figure 0007528911000059
表31に示すように、各染色体において2,694~5,579個(平均3,812.6個、合計45,751個)のSNPを同定することができた。また、表31に示すように、各染色体において227~569個(平均349.3個、合計4,191個)のInDel(insertion/deletion)を同定することができた。以上の結果から、本実施例で示したように、ランダムプライマーにより作製したDNAライブラリーの塩基配列情報と既知の塩基配列情報とを比較することで、供試した生物におけるゲノム内に存在する特徴的な塩基配列としてのDNAマーカーを特定できることが明らかとなった。

Claims (6)

  1. 100~500塩基長のDNA断片を含むDNAライブラリーを作製する方法であって、
    i)ランダムプライマーの塩基長に応じてランダムプライマーの濃度を決定することを含む、鋳型となるゲノムDNA及び1~100種類のランダムプライマーを含む増幅反応液を準備する工程において、ランダムプライマーは9~30塩基長であり、ランダムプライマーが9塩基長である場合にランダムプライマーの濃度を40~60μMとし;ランダムプライマーが10~14塩基長未満である場合、ランダムプライマーの塩基長をxとし、ランダムプライマーの濃度をyとしたときにy>3E+08x-6.974且つ100μM以下を満たす濃度とし;ランダムプライマーが14~18塩基長の場合にランダムプライマーの濃度を4~100μMとし;ランダムプライマーが19~28塩基長の場合、4μM以上であり、且つy<8E+08x-5.533を満たす濃度とし;ランダムプライマーが29塩基長の場合にランダムプライマーの濃度を6~10μMとし;ランダムプライマーが30塩基長の場合にランダムプライマーの濃度を6μMとする工程と、
    ii)100~500塩基長のDNA断片を含むDNA断片を核酸増幅反応により取得する工程とを含む、方法。
  2. 核酸増幅反応により得られた100~500塩基長のDNA断片について次世代シーケンサーにより塩基配列を決定する工程を含む、請求項1記載の方法。
  3. 核酸増幅反応により得られた100~500塩基長のDNA断片を第1のDNA断片とし、当該第1のDNA断片を鋳型とし次世代シーケンサー用プライマーを用いた核酸増幅反応により第2のDNA断片を作製し、作製した第2のDNA断片について次世代シーケンサーにより塩基配列を決定する工程を含む、請求項1記載の方法。
  4. 上記次世代シーケンサー用プライマーは、下記表の塩基配列からなる、請求項3記載の方法。
    Figure 0007528911000060
  5. 請求項2乃至4いずれか一項記載の方法により、所定の生物のゲノムDNAについて作製したDNAライブラリーに含まれる100~500塩基長のDNA断片の塩基配列を決定する工程と、
    100~500塩基長のDNA断片の塩基配列を参照用の既知の塩基配列と比較して、当該既知の塩基配列と相違する塩基配列からなるDNA断片を上記所定の生物に関するDNAマーカーとして同定する工程とを含む、ゲノムDNA解析方法。
  6. 請求項2乃至4いずれか一項記載の方法により、所定の生物又は所定の組織のゲノムDNAについて作製したDNAライブラリーに含まれる100~500塩基長のDNA断片の塩基配列を決定する工程と、
    請求項2乃至4いずれか一項記載の方法により、他の生物又は他の組織のゲノムDNAについて作製したDNAライブラリーに含まれる100~500塩基長のDNA断片の塩基配列を決定する工程と、
    上記各工程で決定した100~500塩基長のDNA断片の塩基配列を互いに比較して、相違する塩基配列からなるDNA断片を上記所定の生物又は上記所定の組織に関するDNAマーカーとして同定する工程とを含む、ゲノムDNA解析方法。
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