JP7522079B2 - 積層計画作成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層計画作成方法に関する。
近年、生産手段として3Dプリンタを用いた造形のニーズが高まっており、金属材料を用いた造形の実用化に向けて研究開発が進められている。金属材料を造形する3Dプリンタは、レーザ又は電子ビーム、更にはアーク等の熱源を用いて、金属粉体又は金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層することで造形物を作製する。
しかし、上記のようにして形成される溶着ビードの表面には、脱酸材と酸素が反応したスラグ等の不純物が発生し、その不純物の上に更に溶着ビードを積層すると、アークの不安定性が増加し、不純物の巻き込みによる溶接不良も生じる。不純物の巻き込みは、溶融金属中に酸化物が閉じ込められて凝固する現象であって、不純物と金属との接合強度が小さいため、積層造形物の強度や耐久性を低下させてしまう。
このような溶接時に発生する不純物を除去する技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、溶着ビードを積層して造形物を製造する際に、溶着ビードの積層工程と、不純物の除去工程とを繰り返して造形する方法が採用されている。
特開2019-84553号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、溶着ビードの積層工程と、不純物の除去工程とが一単位工程として扱われて、その単位工程を繰り返す形式となっている。このように、溶着ビードを積層する毎に不純物を除去すると、不純物の除去作業の時間が累積的に増加して生産性を低下させる。一方で、不純物の除去作業を全く実施しない場合は、金属層の中にスラグ等の不純物が取り込まれて造形物の品質を低下させるおそれがある。
スラグ等の不純物の累積的な付着程度については、その評価が困難であり、スラグ除去の頻度と欠陥発生との関係性を求めることは困難となっている。例えば、不純物の面積を検出することもできるが、不純物の面積値は、積層を重ねるとすぐに飽和して、これだけでは累積的な付着程度を評価することが難しい。また、不純物の厚さについても同様で、例えば溶着ビード表面の電気抵抗率を測定しても、測定値が大きくぶれてしまう。このように、溶接現場で不純物を直接的に測定することは困難であり、不純物の除去工程を実施するか省略するかの判断基準が定めにくい、という問題があった。
そこで本発明は、不必要な不純物の除去工程を省略でき、造形物の品質を低下させずに生産性を向上できる積層造形方法を提供することを目的とする。
本発明は下記の構成からなる。
溶加材が溶融及び凝固して形成される溶着ビードを積層して造形物を製造する積層造形方法であって、
前記溶着ビードを並べたビード層を形成するビード形成工程と、
前記ビード形成工程で形成された前記ビード層の表面に不純物が発生した領域を特定する不純物特定工程と、
前記不純物特定工程で特定された領域の前記不純物の厚さを推定する厚さ推定工程と、
を繰り返し実施し、
前記厚さ推定工程の実施後に、前記不純物を前記ビード層の表面から除去する除去工程を、推定された前記不純物の厚さに応じて選択的に実施する、
積層造形方法。
本発明によれば、不必要な不純物の除去工程を省略でき、造形物の品質を低下させずに生産性を向上できる。
図1は、造形物を製造する積層造形システムの全体構成図である。 図2は、コントローラの機能ブロック図である。 図3は、造形物を製造する積層造形方法の手順を示すフローチャートである。 図4は、繰り返し積層された溶着ビードの各ビード層の撮像画像と、二値化画像と、その面積率の測定例を示す説明図である。 図5は、画像処理より計算された不純物の面積率と、不純物厚さ比率の推移例を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の積層造形方法では、溶加材が溶融及び凝固して形成される溶着ビードを積層して造形物を製造する際に、溶着ビードに発生する不純物を適切なタイミングで除去することで、造形物の品質を低下させずに生産性を向上させている。
<積層造形装置及び不純物除去装置の構成>
図1は、造形物を製造する積層造形システムの全体構成図である。
積層造形システム100は、積層造形装置11と、不純物除去装置13と、表面測定部15と、上記各部を統括制御するコントローラ17と、を備える。
積層造形装置11は、先端軸にトーチ19を有する溶接ロボット21と、トーチ19に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部23と、電源部25とを有する。トーチ19は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。
溶接ロボット21は、多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ19には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ19の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
トーチ19は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。本構成で用いられるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、製造する積層造形物に応じて適宜選定される。
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ19は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部23からトーチ19に送給される。そして、トーチ19を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、基材27上に溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビードBが形成される。
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。
溶加材Mは、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
上記構成の積層造形装置11は、溶接ロボット21の駆動により予め定めた積層計画に応じてトーチ19を移動させるとともに、トーチ19先端で溶加材Mを溶融させ、溶着ビードBを形成する。
不純物除去装置13は、汎用ロボット31を備える。汎用ロボット31は、溶接ロボット21と同様に多関節ロボットであり、先端アーム33の先端部には、除去ツール35が装着される。汎用ロボット31は、コントローラ17からの指令により、除去ツール35の位置や姿勢が、先端アーム33の自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
汎用ロボット31は、積層造形装置11によって基材表面27aに積層された溶着ビードBに生じるスラグ等の不純物を、除去ツール35を用いて除去する。除去ツール35としては、例えば、先端が平坦状、湾曲した凸状等に形成された多芯のワイヤ部材の束を備えたタガネ部材(チッパー)が挙げられるが、これに限らない。また、剥離しやすい不純物であれば、エアブロー装置を使用又は併用してもよい。
基材27の上方には、積層された溶着ビードB(ビード層)の表面を測定対象とする表面測定部15が配置される。表面測定部15は、例えば溶着ビードBの表面を撮像する撮像カメラであってもよく、他の測定機器であってもよい。撮像カメラの場合、撮像した画像情報が、コントローラ17に入力される。また、表面測定部15には、不図示の照明光学系等の測定に用いる付帯設備が設けられていてもよい。
また、表面測定部15は、適宜なフレーム部材(不図示)に固定されるが、これに限らず、汎用ロボット31や溶接ロボット21に取り付けてもよい。
図2は、コントローラ17の機能ブロック図である。
コントローラ17は、溶接制御部41と、判定部43と、不純物除去制御部45とを備える。
溶接制御部41は、予め定めたトーチ19の移動軌跡、溶接電流等の積層計画に応じて積層造形装置11を駆動して、溶着ビードを形成する。
判定部43は、形成された溶着ビード表面を表面測定部15が測定して出力した出力信号を用いて、詳細を後述する所定のタイミングで、不純物除去装置13を駆動させるトリガ信号を不純物除去制御部45に出力する。
不純物除去制御部45は、判定部43からトリガ信号の入力を受けたときに、不純物除去装置13を駆動して溶着ビード表面の不純物を除去する。
ここで、不純物とは、溶接欠陥を生じさせる溶接ビードの表面及びその周辺に発生した異物を意味する。具体的な不純物としては、スラグ、スパッタ、ヒュームの付着物等が挙げられる。特に溶着ビード内のスラグの残存は溶接欠陥に大きく影響するため、スラグの残存を確実に抑制する必要がある。
<積層造形方法の手順>
図3は、造形物を製造する積層造形方法の手順を示すフローチャートである。
コントローラ17は、予め定めた積層計画に応じて溶接ロボット21を駆動する。つまり、溶接ロボット21は、コントローラ17からの指令により、積層計画に基づくトーチ19の移動軌跡に応じて、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ19を移動する。これにより、トーチ19の移動軌跡に沿って溶着ビードBが形成される(S1:ビード積層工程)。
次に、コントローラ17は、形成した溶着ビードBのビード表面の不純物を、表面測定部15により測定させる。具体的には、表面測定部15はビード表面を撮像して、ビード表面の撮像画像をコントローラ17に出力する(S2)。
コントローラ17は、入力された撮像画像を画像処理して、撮像されたビード表面に発生した不純物の領域を特定する(S3)。この場合の画像処理は、例えば、不純物とビード地金(金属面)との表面性状の違いから生じる画像の輝度差を、二値化処理することにより、不純物の領域とビード地金との領域に区別する。二値化処理以外にも、例えばディープラーニングを用いたセグメンテーション技術を利用することもでき、その手法は特に限定されない。
そして、コントローラ17は、二値化処理して得られた不純物の領域に対応する画素から、不純物の面積率を算出する(S4)。
図4は、繰り返し積層された溶着ビードの各ビード層の撮像画像と、二値化画像と、その面積率の測定例を示す説明図である。
ここでいう面積率とは、全画像領域に対する不純物の領域が占める割合であり、値が大きいほど不純物の面積が大きいことを意味する。図4に示すように、積層する層数が増加するほど不純物が層内に蓄積されるため、不純物は層数の増加とともに増加している。
次に、求めた不純物の面積率から不純物の厚さを後述する手法により推定して(S5)、推定された不純物の厚さが、予め設定した閾値と比較して閾値未満であった場合には(S6)、そのビード層に不純物が残存していても欠陥発生の確率は低いことが期待されるため、次層の溶着ビードを形成する(S7)。閾値以上であった場合には、不純物の残存により欠陥発生が予測されることから、そのビード層について不純物除去を実施する(S8)。S8の不純物の除去後、不純物の残存分を検出して、詳細は後述するが、どの程度に不純物が除去されたかを検証し(S9)、S7の次層の溶着ビードの形成を実施する。
以上の処理を、造形物の製造に必要なビード層の形成が全て完了するまで繰り返す。
上記した手順によれば、不純物が過剰に残存しないよう適切なタイミングでビード層表面の不純物を除去しながら、複数のビード層を積層することができる。その結果、内部に溶接欠陥が残存せず、強度の低下が抑制された高品位な造形物が得られるようになる。
<不純物の厚さの推定>
ここで、不純物の厚さを推定する手順を、以下に詳細に説明する。
1層目の積層において、蓄積する不純物の体積(不純物蓄積量)をV、発生する不純物の面積をA、不純物の厚さをtとすると、不純物の体積Vは(1)式で表せる。
V=A×t ・・・(1)
2層目の積層においては、蓄積する不純物の体積は、1層目の不純物の体積の2倍(2V)となり、不純物の面積をA、不純物の厚さをtとすると(2)式で表せる。
2V=A×t ・・・(2)
(1)、(2)式から、2層目の不純物の厚さtは(3)式で求められる。
=2V/A=2(A/A)×t ・・・(3)
つまり、2層目の不純物の厚さtは、1層目の不純物の厚さtの2A/A倍となる。このような2A/Aを2層目の不純物厚さ比率αとして定義する。同様に、以降の積層された層の不純物の厚さは、層毎(i番目の層)の不純物厚さ比率αを用いた計算により推定可能となる。このように、厳密な値は計算できないが、不純物の厚さの基準となる指標を求めることで、リアルタイムでの評価がしやすくなる。
例えば、積層途中におけるi層目(iは2以上の整数)の不純物の厚さtは、k層目(例えばk=1とする)の不純物の厚さtを用いて(4)式で表せる。
=α×t ・・・(4)
このi層目でビード層表面に生じた不純物を除去した場合、i層目の不純物の面積をAとし、不純物を除去した後に残存する不純物の面積をAとする。また、不純物を除去した後にi+1層目のビード層を積層した場合、i+1層目の不純物の面積をAi+1、不純物の厚さをti+1とする。
i+1層目の不純物の蓄積量Vi+1は、i層目の不純物の除去後に残存する不純物(α×t×A)に加えて、新たに1層分の不純物(A×t)が加わり、(5)式で表せる。
i+1=Ai+1×ti+1
=(α×t×A)+(A×t) ・・・(5)
(5)式からN+1層目の不純物の厚さti+1は、(6)式で表すことができる。
i+1=(α×t×A+A×t)/Ai+1 ・・・(6)
つまり、{(α×t×A+A×t)/Ai+1}/t}がi+1層目の不純物厚さ比率αi+1となる。
このようにして各層における不純物の厚さtを推定する一例を表1に示す。
表1には、溶着ビード層を1~3層まで順次に積層した後、3層目のビード層に生じた不純物を除去し、その後、4層目のビード層を積層した場合の各層における不純物の厚さの推定値を模式的に示している。
Figure 0007522079000001
1層目のビード層には、溶着ビードの体積等に応じて特定の割合の不純物が発生する。この1層目の不純物の体積を基準の体積V(=1)とする。
また、1層目のビード層の表面には、不純物が例えば面積率30%で存在したとする。面積率は、ビード層を撮像した撮像画像の全面積をA、撮像画像のうち不純物が占める面積をAとすると、A/A×100%で表せる。この場合の1層目の不純物の厚さtは、1層のビード層で発生する不純物の体積Vを面積率で除算した値(=1層目の不純物蓄積量×1/(0.30/A))と推定する。このとき、不純物厚さ比率α1は基準の1となる。
1層目の不純物は、ビード層の上面に形成されるため、2層目のビード層を形成する際に再び2層目の層内に取り込まれ、2層目の上面に蓄積される。つまり、2層目の不純物の体積Vは、1層目の不純物の体積Vの概ね2倍となる。ただし1層目と2層目との不純物発生面積は一致しない。そこで、ここでは面積率を用いて補正する。
1層目と2層目を連続して積層する場合、2層目の不純物面積は1層目の不純物面積より増加するため、2層目のビード層の不純物の面積率は1層目の基準面積率より大きくなる。ここでは、2層目の不純物の面積が、測定の結果、1層目の1.2倍に増加したとする(不純物の面積率の測定結果が36%)。その場合、2層目の不純物の厚さtを、1層目と2層目の不純物の概略合計を2層目の不純物の面積率で除算した値(=1層目の不純物蓄積量×2/(0.36×A)と推定する。このとき、tとtの比に相当する不純物厚さ比率αは2×0.30/0.36となる。
同様に、3層目の不純物の厚さtを1層目の不純物蓄積量×3/(0.40×A)と推定する(不純物の面積率の測定結果が40%)。このとき、tとtの比に相当する不純物厚さ比率αは3×0.30/0.40となる。
ここで、3層目の不純物の厚さtが、予め定めた閾値を超えたものとして、3層目のビード層を積層した後に不純物の除去処理を実施し、3層目に存在していた不純物の内、積層物面積の90%を除去したとする。つまり、不純物の残存面積率が10%であるとする。この場合、残存するスラグの厚さは変化せず前記tのままである。
次に、不純物の除去処理を実施した3層目のビード層の上に、4層目のビード層を形成する(不純物の面積率の測定結果が32%)。この4層目のビード層には、3層目までの不純物の残存分と、新たな1層分(=1)の不純物とが含まれる。また、不純物の面積率は、3層目までの不純物の残存物と、新たな1層分との合計体積に応じた面積率となる。
こうして、4層面の不純物の体積Vは、(7)式で推定される。
=1層目の不純物蓄積量×1+0.10×{1層目の不純物蓄積量×3(0.40))} ・・・(7)
(7)式の右辺第2項は、不純物を除去した後の不純物残存分であり、右辺第1項は、新たに積層した溶着ビードによる不純物の増加分を表す。また、4層目の不純物厚さ比率をαとした場合、不純物の厚さtは、
=[1層目の不純物蓄積量×1+0.10×{1層目の不純物蓄積量×3/(0.40)}]/(0.32×A)
として表せる。このとき、tとtの比に相当する不純物厚さ比率αは{1+0.1×(3/0.40)}×(0.30/0.32)となる。
つまり、不純物を除去した後に残存した前層の不純物が占める面積と、前層の不純物の厚さとを考慮すると、現在観察している不純物の厚さは、(8)式により推定できる。なお、(8)式における面積は、面積の絶対値を用いる必要なく面積率であってもよい。
不純物厚さ=(残存不純物の面積×前層の不純物の厚さ+初層の不純物の面積×単位厚さ)÷(表層の不純物の面積) ・・・(8)
<積層造形時における不純物の厚さ推移の例>
図5は、画像処理より計算された不純物の面積率と、不純物厚さ比率の推移例を示すグラフである。ここでの不純物厚さ比率は、1層目の不純物厚さを単位厚さとしている。
図5によれば、ビード層を積層するにしたがって、不純物の厚さ比率が一定の比率で増加していく傾向が読み取れる。
不純物の除去工程を実施するか否かの判断基準となる閾値は、実験的に求めておくことが好ましい。例えば、不純物の厚さ推定値を基に、不純物の巻き込み等によって欠陥が発生する限界の層数を予め実験的に求めておく。その実験によって求めた限界の層数は、不純物除去の未実施を許容できる限界値と捉えることができる。そこで、この限界の層数に対応する不純物の厚さ比率を閾値に設定する。また、閾値を安全側に設定するために、閾値に安全率等の数値を乗算することで閾値を下げることが好ましい。このように設定された閾値と実際に予測した不純物の厚さ比率との比較を行う。
図5では、6層目のビード層を形成したときと、16層目のビード層を形成したときに不純物の除去工程を実施している。
例えば、不純物厚さ比率の閾値を5とした場合には、7~16層の積層を連続して行い、16層目で不純物厚さ比率が5を超えるため、この16層目で不純物の除去工程を実施することになる。また、この閾値5に1.25倍の安全率を加味すると、スラグ厚さ比率4(=5/1.25)が新たな閾値となる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材が溶融及び凝固して形成される溶着ビードを積層して造形物を製造する積層造形方法であって、
前記溶着ビードを並べたビード層を形成するビード形成工程と、
前記ビード形成工程で形成された前記ビード層の表面に不純物が発生した領域を特定する不純物特定工程と、
前記不純物特定工程で特定された領域の前記不純物の厚さを推定する厚さ推定工程と、
を繰り返し実施し、
前記厚さ推定工程の実施後に、前記不純物を前記ビード層の表面から除去する除去工程を、推定された前記不純物の厚さに応じて選択的に実施する、
積層造形方法。
この積層造形方法によれば、不純物の厚さを基準にすることで、累積的なスラグなどの不純物堆積の程度と欠陥発生の関係を特定できる。その関係を基に不必要な除去工程を省略できるので、造形物の品質を低下させずに生産性を向上できる。
(2) 前記不純物特定工程は、前記ビード層の表面を撮像して、得られた撮像情報から前記ビード層の表面に発生した前記不純物の領域を特定する、(1)に記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、ビード層の撮像画像から迅速かつ高精度に不純物の領域を特定できる。
(3) 前記厚さ推定工程は、
前記不純物特定工程で特定された前記ビード層の表面における前記不純物の面積と、
前記ビード形成工程で形成された前記ビード層の層数と、
を含む履歴情報に応じて前記不純物の厚さを推定する、(1)又は(2)に記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、厳密な値は計算できないが、不純物の厚さの基準となる指標が簡単に求められ、これにより、リアルタイムで評価しやすくなる。
(4) 積層途中におけるi層目の不純物の厚さtを、iは2以上の整数、kは1以上の整数としたときに、基準とするk層目の不純物厚さtと比率αとを用いて、t=α×t により推定する、(3)に記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、1層当たりの不純物の厚さを、その層の不純物の厚さの比率を用いて求めることで、基準とする不純物の厚さに対してi層目における不純物の厚さの増加割合を簡易かつ定量的に評価できる。
(5) 前記除去工程の後で前記ビード層の表面に残る前記不純物の残存面積を求める工程を更に備え、
前記厚さ推定工程は、前記除去工程を実施した層の次層における前記不純物の厚さを、前記不純物の残存面積を含む前記履歴情報に基づいて推定する、(3)又は(4)に記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、除去工程による不純物の除去の程度が、次層の不純物の厚さの推定に盛り込まれるため、仮に不純物の除去が不十分であっても、それによる品質の劣化を抑制できる。
(6) 前記不純物の残存面積を求める工程は、前記除去工程の後で前記ビード層の表面を撮像し、得られた撮像情報から前記残存面積を求める、(5)に記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、ビード層の撮像画像から迅速かつ高精度に残存した不純物の領域を特定できる。
(7) 前記厚さ推定工程後に、前記不純物の厚さと予め定めた閾値とを比較して、前記不純物の厚さが前記閾値未満の場合に前記ビード形成工程を実施し、前記閾値以上の場合に前記除去工程を実施する、(1)~(6)のいずれか1つに記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、欠陥発生の予防に最低限必要な回数でのみ、不純物の除去工程を実施することで、品質を維持しつつ生産性を可能な限り向上させることができる。
(8) 前記不純物はスラグを含む、(1)~(7)のいずれか1つに記載の積層造形方法。
この積層造形方法によれば、溶接欠陥に影響するスラグの残存を確実に抑制できる。
11 積層造形装置
13 不純物除去装置
15 表面測定部
17 コントローラ
19 トーチ
21 溶接ロボット
23 溶加材供給部
25 電源部
27 基材
27a 基材表面
31 汎用ロボット
33 先端アーム
35 除去ツール
41 溶接制御部
43 判定部
45 不純物除去制御部
B 溶着ビード
M 溶加材
100 積層造形システム

Claims (8)

  1. 溶加材が溶融及び凝固して形成される溶着ビードを積層して造形物を製造する積層造形方法であって、
    前記溶着ビードを並べたビード層を形成するビード形成工程と、
    前記ビード形成工程で形成された前記ビード層の表面に不純物が発生した領域を特定する不純物特定工程と、
    前記不純物特定工程で特定された領域の前記不純物の厚さを推定する厚さ推定工程と、
    を繰り返し実施し、
    前記厚さ推定工程の実施後に、前記不純物を前記ビード層の表面から除去する除去工程を、推定された前記不純物の厚さに応じて選択的に実施する、
    積層造形方法。
  2. 前記不純物特定工程は、前記ビード層の表面を撮像して、得られた撮像情報から前記ビード層の表面に発生した前記不純物の領域を特定する、
    請求項1に記載の積層造形方法。
  3. 前記厚さ推定工程は、
    前記不純物特定工程で特定された前記ビード層の表面における前記不純物の面積と、
    前記ビード形成工程で形成された前記ビード層の層数と、
    を含む履歴情報に応じて前記不純物の厚さを推定する、
    請求項1又は2に記載の積層造形方法。
  4. 積層途中におけるi層目の不純物の厚さtを、iは2以上の整数、kは1以上の整数としたときに、基準とするk層目の不純物厚さtと比率αとを用いて、t=α×t により推定する、
    請求項3に記載の積層造形方法。
  5. 前記除去工程の後で前記ビード層の表面に残る前記不純物の残存面積を求める工程を更に備え、
    前記厚さ推定工程は、前記除去工程を実施した層の次層における前記不純物の厚さを、前記不純物の残存面積を含む前記履歴情報に基づいて推定する、
    請求項3又は4に記載の積層造形方法。
  6. 前記不純物の残存面積を求める工程は、前記除去工程の後で前記ビード層の表面を撮像し、得られた撮像情報から前記残存面積を求める、
    請求項5に記載の積層造形方法。
  7. 前記厚さ推定工程後に、前記不純物の厚さと予め定めた閾値とを比較して、前記不純物の厚さが前記閾値未満の場合に前記ビード形成工程を実施し、前記閾値以上の場合に前記除去工程を実施する、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の積層造形方法。
  8. 前記不純物はスラグを含む、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の積層造形方法。
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