JP7518463B1 - テーラードブランク、プレス成形品、テーラードブランクの製造方法、及びプレス成形品の製造方法 - Google Patents

テーラードブランク、プレス成形品、テーラードブランクの製造方法、及びプレス成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

このテーラードブランクは、第一の鋼板と、前記第一の鋼板と突合せ溶接された第二の鋼板と、前記第一の鋼板の端部及び前記第二の鋼板の端部を接続する溶接金属とを備えるテーラードブランクであって、前記第一の鋼板の板厚h1及び炭素濃度C1、並びに前記第二の鋼板の板厚h2及び炭素濃度C2は、所定の式を満たし、前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板のA面S2Aとの段差LDa、及び前記第一の鋼板のB面S1Bと前記第二の鋼板の前記B面S2Bとの段差LDbは、所定の式を満たし、前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記A面S1Aにアルミ系めっき層を有し、前記第一の鋼板の前記A面S1Aに配された前記アルミ系めっき層は、前記溶接金属と接触しており、前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bに素地露出部を有し、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部は、前記溶接金属と接触している。

Description

本発明は、テーラードブランク、プレス成形品、テーラードブランクの製造方法、及びプレス成形品の製造方法に関する。
本願は、2023年1月30日に、日本に出願された特願2023-011644号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、COガス排出量の削減により地球環境を保護するために、自動車分野では、自動車車体の軽量化が喫緊の課題である。この課題を解決するために、高強度鋼板を適用する検討が積極的に行われている。鋼板(めっき鋼板)の強度は、益々高くなっている。
自動車用部材を成形する技術の一つとして、熱間プレス(以下、「ホットスタンプ」と称する場合がある。)が注目されている。ホットスタンプでは、鋼板を高温に加熱し、Ar3変態温度以上の温度域でプレス成形している。さらに、ホットスタンプでは、プレス成形した鋼板を金型による抜熱で急速に冷却し、プレス圧が掛かった状態で成形と同時に変態を起こさせる。ホットスタンプは、以上の工程によって、高強度でかつ形状凍結性の優れた熱間プレス成形品(以下、「ホットスタンプ成形品」と称する場合がある。)を製造することができる技術である。
また、自動車用部材のプレス成形品の歩留まり、および機能性を向上させるために、少なくとも2枚の鋼板の端面を突合せて、レーザ溶接、プラズマ溶接等によって接合したテーラードブランクが、プレス用素材として適用されている。テーラードブランクは、板厚及び強度等が異なる2以上の鋼板から構成することができる。テーラードブランクによれば、自動車用部材の機能性の向上、および自動車用部材の部品点数の削減ができる。また、テーラードブランクに対してホットスタンプすることで、高強度であり、かつ機能性が高いプレス成形品を製造することができる。
テーラードブランクをプレス用素材として用い、ホットスタンプにより自動車用部材を成形する場合、テーラードブランクは、例えば、800℃~1000℃の温度域に加熱される。このため、ホットスタンプ用のテーラードブランクの材料となる鋼板には、沸点が高いAl-Si等のアルミ系めっきが適用されることが多い。
アルミ系めっき鋼板を材料としたテーラードブランクの製造にあたっては、アルミ系めっきが溶接金属に及ぼす影響を考慮して、様々な工夫がされている。例えば、溶接予定部のアルミ系めっきを除去することで、溶接金属のAl濃度を低減させ、溶接金属部を焼入れしやすくし、テーラードブランクの強度を向上させることが試みられている。また、溶接予定部において、アルミ系めっきの一部を除去しながら、一部を残すことで、溶接金属のAl濃度を適正範囲内とし、テーラードブランクの溶接金属部の強度と耐食性を両立させることも試みられている。
特許文献1には、基板およびプレコーティングによって板が構成されており、上記プレコーティングは、上記基板に接し、金属合金層が載せられた金属間合金層によって構成されており、上記板の少なくとも1つのプレコーティングされた表面上において、1つのゾーンは、上記金属合金層がなく、上記ゾーンは、上記板の周囲に位置していることを特徴とする、被覆積層板から非常に高い機械的特性を有する溶接部品を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、溶接鋼ブランクを生産するための方法であって、2つのプレコートシートを提供することであって、各々がその2つの主面の各々上にプレコーティングを有する鋼基材を備え、各シートが各主面上の、溶接縁部において、プレコーティングが除去される除去ゾーンを備える、提供することと;0.1重量%~1.2重量%の間に含まれるアルミニウム含有量AlWJを有する溶接継手を生成するように、フィラーワイヤを使用してシートを突合せ溶接することとを含む、方法が開示されている。
特許文献3には、第一溶接金属部と、前記第一溶接金属部を介して接続された少なくとも2つの鋼板部と、を備えるテーラードブランクにおいて、前記少なくとも2つの鋼板部のそれぞれは、母材鋼板の表面上に、前記母材鋼板側から順に金属間化合物層、アルミニウムめっき層が設けられた第一めっき部と、前記母材鋼板が露出する第一露出部と、を備え、前記各鋼板部において、前記各鋼板部の厚み方向に垂直であり、前記第一めっき部から前記第一溶接金属部に向かう第二方向において、前記母材鋼板の両表面上に、前記第一めっき部、前記第一露出部、前記第一溶接金属部が、この順で同一面上に配置されるテーラードブランクが開示されている。
特許文献4には、第一溶接金属部と、前記第一溶接金属部を介して他の鋼板部に接続された少なくとも1つの鋼板部と、を備えるテーラードブランクにおいて、前記少なくとも1つの鋼板部は、母材鋼板の表面上に、前記母材鋼板側から順に金属間化合物層、アルミニウムめっき層が設けられた第一めっき部と、前記母材鋼板が露出する第一露出部と、を備え、前記各鋼板部において、前記各鋼板部の厚み方向に垂直であり、前記第一めっき部から前記第一溶接金属部に向かう第二方向において、前記母材鋼板の両表面上に、前記第一めっき部、前記第一露出部、前記第一溶接金属部が、この順で同一面上に配置され、前記第一溶接金属部のアルミニウム濃度が、前記鋼板部のアルミニウム濃度よりも高いテーラードブランクが開示されている。
日本国特表2009-534529号公報 日本国特表2022-515425号公報 国際公開第2019/093440号 国際公開第2019/244524号
テーラードブランクは、板厚が異なる2枚の鋼板から製造することができる。しかし本発明者らは、薄板がアルミ系めっき鋼板である場合、又は薄板の端部の溶接予定部にアルミ系めっきを残存させた場合に、溶接金属の割れが生じやすいことを知見した。
このような問題は、アルミ系めっきを溶接予定部に残存させることなく製造するテーラードブランクにおいては生じない。従って、割れの原因は、アルミ系めっきであると推定された。しかしながら、アルミ系めっきを溶接予定部に残存させない場合、溶接金属の耐食性を向上させる効果が得られない。2枚の鋼板の板厚の差を小さくすることで、当該問題は解決する。しかし、この場合はテーラードブランクの設計の自由度が損なわれる。
特許文献1~4のいずれにおいても、このような問題点は考慮されておらず、また、この問題点を解決するための方法も提示されていない。
以上の事情に鑑みて、本発明は、板厚が異なる2枚以上の鋼板から製造され、溶接金属の強度及び耐食性の両方を確保可能なテーラードブランク及びプレス成形品、並びにこれらの製造方法の提供を目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の第一実施形態に係るテーラードブランクは、第一の鋼板と、前記第一の鋼板と突合せ溶接された第二の鋼板と、前記第一の鋼板の端部及び前記第二の鋼板の端部を接続する溶接金属とを備えるテーラードブランクであって、前記溶接金属の平均Al濃度は、0.05~1.00質量%であり、前記第一の鋼板の板厚h1及び炭素濃度C1、並びに前記第二の鋼板の板厚h2及び炭素濃度C2は、下記式1及び式2を満たし、
h2/h1≧1.1・・・(式1)
h1×C1≦h2×C2・・・(式2)
前記テーラードブランクのA面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のA面S1A及び前記第二の鋼板のA面S2Aとし、且つ、前記テーラードブランクのB面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のB面S1B及び前記第二の鋼板のB面S2Bとしたとき、前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板の前記A面S2Aとの段差LDa、及び前記第一の鋼板の前記B面S1Bと前記第二の鋼板の前記B面S2Bとの段差LDbは、下記式3を満たし、
LDb≧1.1×LDa・・・(式3)
前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記A面S1Aにアルミ系めっき層を有し、前記第一の鋼板の前記A面S1Aに配された前記アルミ系めっき層は、前記溶接金属と接触しており、前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bに素地露出部を有し、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部は、前記溶接金属と接触している。
(2)上記(1)に記載のテーラードブランクでは、好ましくは、前記第二の鋼板は、アルミ系めっき鋼板、亜鉛系めっき鋼板、又は非めっき鋼板である。
(3)上記(1)又は(2)に記載のテーラードブランクでは、好ましくは、前記第一の鋼板の板厚h1、及び前記第二の鋼板の板厚h2は、下記式4を満たす。
h2/h1≧1.5・・・(式4)
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載のテーラードブランクでは、好ましくは、前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bにアルミ系めっき層を有し、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記アルミ系めっき層と、前記溶接金属との間に配置されている。
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のテーラードブランクでは、好ましくは、前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板の前記A面S2Aとが略同一面上にある。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項のテーラードブランクでは、好ましくは、前記炭素濃度C1が前記炭素濃度C2と異なる。
(7)本発明の第二実施形態に係るプレス成形品は、第一の鋼材と、前記第一の鋼材と突合せ溶接された第二の鋼材と、前記第一の鋼材の端部及び前記第二の鋼材の端部を接続する溶接金属とを備えるプレス成形品であって、前記溶接金属の平均Al濃度は、0.05~1.00質量%であり、前記第一の鋼材の厚さH1及び引張強さT1、並びに前記第二の鋼材の厚さH2及び引張強さT2は、下記式5及び式6を満たし、
H2/H1≧1.1・・・(式5)
H1×T1≦H2×T2・・・(式6)
前記プレス成形品のA面の側の、前記第一の鋼材及び前記第二の鋼材の表面を、それぞれ前記第一の鋼材のA面S3A及び前記第二の鋼材のA面S4Aとし、且つ、前記プレス成形品のB面の側の、前記第一の鋼材及び前記第二の鋼材の表面を、それぞれ前記第一の鋼材のB面S3B及び前記第二の鋼板のB面S4Bとしたとき、前記第一の鋼材の前記A面S3Aと前記第二の鋼材の前記A面S4Aとの段差LD2a、及び前記第一の鋼材の前記B面S3Bと前記第二の鋼材の前記B面S4Bとの段差LD2bは、下記式7を満たし、
LD2b≧1.1×LD2a・・・(式7)
前記第一の鋼材は、前記第一の鋼材の前記A面S3Aにアルミ系めっき層を有し、前記第一の鋼材の前記A面S3Aに配された前記アルミ系めっき層は、前記溶接金属と接触しており、前記第一の鋼材は、前記第一の鋼材の前記B面S3Bに素地露出部を有し、前記第一の鋼材の前記B面S3Bの前記素地露出部は、前記溶接金属と接触している。
(8)上記(7)に記載のプレス成形品では、好ましくは、前記第二の鋼材は、アルミ系めっき鋼材、亜鉛系めっき鋼材、又は非めっき鋼材である。
(9)上記(7)又は(8)に記載のプレス成形品では、好ましくは、前記第一の鋼材の厚さH1、及び前記第二の鋼材の厚さH2は、下記式8を満たす。
H2/H1≧1.5・・・(式8)
(10)上記(7)~(9)のいずれか一項に記載のプレス成形品では、好ましくは、前記第一の鋼材は、前記第一の鋼材の前記B面S3Bにアルミ系めっき層を有し、前記第一の鋼材の前記B面S3Bの前記素地露出部は、前記第一の鋼材の前記B面S3Bの前記アルミ系めっき層と、前記溶接金属との間に配置されている。
(11)上記(7)~(10)のいずれか一項に記載のプレス成形品では、好ましくは、前記第一の鋼材の前記A面S3Aと前記第二の鋼材の前記A面S4Aとが略同一面上にある。
(12)本発明の第三実施形態に係るテーラードブランクの製造方法は、第一の鋼板と、第二の鋼板とを突合せ溶接して、前記第一の鋼板の端部及び前記第二の鋼板の端部を接続する溶接金属を形成する工程を備え、前記溶接金属の平均Al濃度を、0.05~1.00質量%とし、前記第一の鋼板の板厚h1及び炭素濃度C1、並びに前記第二の鋼板の板厚h2及び炭素濃度C2を、下記式1及び式2を満たすようにし、
h2/h1≧1.1・・・(式1)
h1×C1≦h2×C2・・・(式2)
前記テーラードブランクのA面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のA面S1A及び前記第二の鋼板のA面S2Aとし、且つ、前記テーラードブランクのB面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のB面S1B及び前記第二の鋼板のB面S2Bとしたとき、前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板の前記A面S2Aとの段差LDa、及び前記第一の鋼板の前記B面S1Bと前記第二の鋼板の前記B面S2Bとの段差LDbを、下記式3を満たすようにし、
LDb≧1.1×LDa・・・(式3)
前記第一の鋼板の前記A面S1Aにアルミ系めっき層を配し、前記第一の鋼板の前記A面S1Aに配された前記アルミ系めっき層を、前記溶接金属と接触させ、前記第一の鋼板の前記B面S1Bに素地露出部を設け、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部を、前記溶接金属と接触させる。
(13)上記(12)に記載のテーラードブランクの製造方法では、好ましくは、前記第一の鋼板の前記B面S1Bに前記アルミ系めっき層を配し、前記テーラードブランクの製造方法が、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの溶接予定部、及びその近傍の前記アルミ系めっき層を除去して、前記素地露出部を形成する工程をさらに備え、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部を、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記アルミ系めっき層と、前記溶接金属との間に配する。
(14)上記(13)に記載のテーラードブランクの製造方法では、好ましくは、前記溶接予定部の全域において前記アルミ系めっき層を除去する。
(15)上記(13)に記載のテーラードブランクの製造方法では、好ましくは、前記溶接予定部において、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの先端部に、前記アルミ系めっき層を残存させる。
(16)上記(13)~(15)のいずれか一項に記載のテーラードブランクの製造方法では、好ましくは、前記テーラードブランクの製造方法が、前記第一の鋼板の前記A面S1Aの前記溶接予定部、及びその近傍の前記アルミ系めっき層の表層を除去して、且つ前記アルミ系めっき層の金属間化合物層を残存させる工程をさらに備える。
(17)上記(13)~(16)のいずれか1項に記載のテーラードブランクの製造方法は、好ましくは、前記炭素濃度C1が前記炭素濃度C2と異なる。
(18)本発明の第四実施形態に係るプレス成形品の製造方法は、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載のテーラードブランクをホットスタンプする工程を備える。
本発明によれば、板厚が異なる2枚以上の鋼板から製造され、溶接金属の強度及び耐食性の両方を確保可能なテーラードブランク及びプレス成形品、並びにこれらの製造方法を提供することができる。
第一実施形態に係るテーラードブランクの一例の断面図である。 第三実施形態に係るテーラードブランクの製造方法における、アルミ系めっき層の除去の態様の一例である。 第三実施形態に係るテーラードブランクの製造方法における、アルミ系めっき層の除去の態様の一例である。 第三実施形態に係るテーラードブランクの製造方法における、アルミ系めっき層の除去の態様の一例である。 第三実施形態に係るテーラードブランクの製造方法における、アルミ系めっき層の除去の態様の一例である。 3枚の鋼板を有するテーラードブランクの斜視図である。 第三実施形態に係るテーラードブランクの製造方法における、アルミ系めっき層の除去の態様の一例である。 第二実施形態に係るプレス成形品の一例の断面図である。
(1.テーラードブランク1)
まず、本発明の第一実施形態に係るテーラードブランク1について、図1等を参照しながら説明する。なお、説明の便宜のために、図1等においてはめっき層を実物よりも非常に厚く記載している。
第一実施形態に係るテーラードブランク1は、第一の鋼板11と、第一の鋼板11と突合せ溶接された第二の鋼板12と、第一の鋼板11の端部及び第二の鋼板12の端部を接続する溶接金属13とを備える。第一実施形態に係るテーラードブランク1は、突合せ継手の一種である。第一実施形態に係るテーラードブランク1は、複数の鋼板を突き合せ溶接して得られるものであり、プレス成形品の材料として用いることができる。
以下、説明の便宜上、溶接金属13及びその周辺部を、「溶接部」と称する場合がある。また、溶接母材である鋼板の表面と、溶接金属13の表面とが交わる箇所を、「止端」と称する場合がある。さらに、溶接金属13における止端の近傍領域を、「止端部131」と称する場合がある。本実施形態に係るテーラードブランク1の溶接部を溶接金属13の延在方向と垂直に切断して得られる断面において、止端部131の数は4である。
(溶接金属13の平均Al濃度)
第一実施形態に係るテーラードブランク1では、溶接金属13の平均Al濃度が規定される。平均Al濃度の測定方法は後述される。
溶接金属13の平均Al濃度は、0.05~1.00質量%の範囲内である。Alは、溶接金属13の焼入れ性を低下させ、溶接金属13を破断しやすくさせる場合がある。一方で、Alは、溶接金属13の耐食性を向上させる効果を有する。溶接金属13の平均Al濃度が上述の範囲内である場合、溶接金属13は高い耐食性を有し、かつ、破断し難い。溶接金属13の平均Al濃度は0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.30質量%以上であってもよい。溶接金属13の平均Al濃度は0.90質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、又は0.60質量%以下であってもよい。
なお、後述するように、第一実施形態に係るテーラードブランク1の溶接金属13の内部では、Al濃度が不均一である場合がある。そのため、第一実施形態に係るテーラードブランク1では、溶接金属13の平均Al濃度が規定される。
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12の板厚)
第一の鋼板11の板厚h1及び第二の鋼板12の板厚h2は、下記式1を満たす。
h2/h1≧1.1・・・(式1)
式1は、第一の鋼板11及びの板厚の関係性を規定している。第一の鋼板11は第二の鋼板12よりも薄い。従って図1に示されるように、テーラードブランク1の表面(A面SA及びB面SB)のうち少なくとも一方では、第一の鋼板11の表面が第二の鋼板12の表面に対して凹んで、段差が生じる。式1を満たすことによって、設計の自由度が向上するが、応力集中が起こりやすくなる。このような場合でも、第一実施形態に係るテーラードブランク1では、溶接金属13のAl濃度を適切に制御し、かつ、素地露出部15を適切に設けているので、溶接金属13の破断を抑制することができる。
なお、鋼板がめっき鋼板である場合、鋼板の板厚にはめっき層の厚さが含まれる。一方、鋼板が塗装鋼板である場合、鋼板の板厚には塗膜の厚さが含まれない。通常、テーラードブランクが塗装されることはないが、テーラードブランクから製造されるプレス成形品は塗装される場合がある。鋼板の板厚は溶接金属13の近傍で特定される値であり、その具体的な測定方法は後述される。同一鋼板から第一の鋼板11および第二の鋼板12を作成した場合は、式1を満たさない。
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12の炭素濃度)
第一の鋼板11の板厚h1及び炭素濃度C1、並びに第二の鋼板12の板厚h2及び炭素濃度C2は、下記式2を満たす。
h1×C1≦h2×C2・・・(式2)
鋼板の炭素濃度は、焼入れ後の鋼板の強度の指標である。鋼板の炭素濃度が高いほど、焼入れ後の鋼板の引張強さは大きくなる。また、第一実施形態に係るテーラードブランク1において、鋼板の炭素濃度と板厚との積は、焼入れ後の鋼板の剛性の指標として用いられる。式2は、第一の鋼板11及び第二の鋼板12の、焼入れ後の剛性の関係性を規定している。式2を満たすテーラードブランク1が焼入れされた後で、第一の鋼板11の剛性は第二の鋼板12と略同一か、また、それよりも小さくなる。第一の鋼板11の炭素濃度C1が第二の鋼板12の炭素濃度C2と等しくてもよい。第一の鋼板11の炭素濃度C1が第二の鋼板12の炭素濃度C2と異なることが好ましい。好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.5倍以下である。さらに、好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.3倍以下である。特に好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.1倍以下である。好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.5倍以上である。さらに好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.7倍以上である。特に好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.9倍以上である。第一の鋼板11の炭素濃度C1が第二の鋼板12の炭素濃度C2より小さい場合は、第二の鋼板12の剛性が第一の鋼板11の剛性よりも低くなることがなく、溶接金属の強度及び耐食性の両方をより確保しやすくなる。
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12が形成する段差)
板厚が異なる2枚の鋼板から形成されるテーラードブランク1では、図1等に示されるように、少なくとも一方の面に段差が形成される。第一実施形態に係るテーラードブランク1では、一方の面に形成された段差が、他方の面に形成された段差の1.1倍以上である。
以下、説明の便宜上、テーラードブランク1の一方の面を、テーラードブランク1のA面SAと称し、他方の面を、テーラードブランク1のB面SBと称する。さらに図1等に示されるように、テーラードブランク1のA面SAの側にある第一の鋼板11の表面を、第一の鋼板11のA面S1Aと称し、テーラードブランク1のA面SAの側にある第二の鋼板12の表面を、第二の鋼板12のA面S2Aと称し、テーラードブランク1のB面SBの側にある第一の鋼板11の表面を、第一の鋼板11のB面S1Bと称し、テーラードブランク1のB面SBの側にある第二の鋼板12の表面を、第二の鋼板12のB面S2Bと称する。加えて、第一の鋼板11のA面S1A及び第二の鋼板12のA面S2Aが形成する段差をLDaと称し、第一の鋼板11のB面S1B及び第二の鋼板12のB面S2Bが形成する段差をLDbと称する。
第一の鋼板11のA面S1A及び第二の鋼板12のA面S2Aの段差LDa及び第一の鋼板11のB面S1B及び第二の鋼板12のB面S2Bの段差LDbは、下記式3を満たす。
LDb≧1.1×LDa・・・(式3)
図1等に示されるように、式3を満たすことで、テーラードブランク1のA面SA及びテーラードブランク1のB面SBの両方に段差が形成されうる。これらの段差のいずれにおいても、板厚の薄い第一の鋼板11の表面と、溶接金属13の表面との境界部である止端部131は、応力集中部となりうる。即ち、式3を満たすことで、応力集中が起きやすくなる。第一実施形態に係るテーラードブランク1では、テーラードブランク1のA面SAの側の段差LDaよりも、テーラードブランクのB面SBの側の段差LDbは大きい。従って、第一実施形態に係るテーラードブランク1の溶接部において、第一の鋼板のB面S1Bと溶接金属13の表面との境界部は、最も応力が集中しやすい領域である。
なお、上記式3が満たされる限り、第一の鋼板のA面S1Aと、第二の鋼板のA面S2Aとの位置関係は限定されない。第一の鋼板のA面S1Aと第二の鋼板のA面S2Aとが略同一面上にあってもよい。即ち、テーラードブランク1のA面SAには段差が無くてもよい。また、第二の鋼板のA面S2Aが、第一の鋼板のA面S1Aよりも、テーラードブランク1のA面SAに向かって凹んでいてもよい。即ち、テーラードブランクのB面SBを基準とし、第二の鋼板12の厚さ方向に沿って、第二の鋼板12のA面S2AからB面S2Bの方に向かう方向を+Z方向(上方向)とした場合、第二の鋼板のA面S2Aの方が第一の鋼板のA面S1Aより高くてもよい。いずれの場合であっても、上記式1から式3が満たされる限り、第一の鋼板のB面S1Bと溶接金属13の表面との境界部が、最も応力が集中しやすい領域となる。しかし、テーラードブランク1のA面SAの側の段差LDaは、第一の鋼板11の板厚h1の20%以内であることが好ましい。テーラードブランク1のA面SAの側の段差LDaが第一の鋼板11の板厚h1の20%以内であることにより、テーラードブランク1の強度がより優れる。さらに好ましくは、15%以内、10%以内である。また、テーラードブランク1のA面SAに段差がある場合は、第一の鋼板のA面S1Aが、第二の鋼板のA面S2Aよりも、テーラードブランク1のA面SAに向かって凹んでいることが好ましい。第二の鋼板のA面S2Aが、第一の鋼板のA面S1Aよりも、テーラードブランク1のA面SAに向かって凹んでいる場合と比較し、テーラードブランク1を製造する前の第一の鋼板11と第二の鋼板12との突き合わせ面積が大きくなり、テーラードブランク1の強度がより優れる。テーラードブランク1のA面SAの側の段差LDaは、0mm超であってもよい。
第二の鋼板の板厚h2、および第二の鋼板12のA面S2Aの段差LDaは、下記式9を満たしてもよい。下記式9を満たすことで、テーラードブランク1の破断をより抑制しやすくなる。
LDa≦0.125×h2・・・(式9)
(アルミ系めっき層14)
第一の鋼板11は、少なくとも第一の鋼板のA面S1Aに、アルミ系めっき層14を有する。本明細書において、アルミ系めっき層14とは、めっき層全質量に対する質量%で、アルミニウムの含有量が50%以上である領域が存在すれば、アルミ系めっき層14が存在すると判定する。アルミ系めっき層14の有無は、後述する電子線マイクロアナライザによる線分析で、アルミニウムの含有量を計測して判断する。アルミ系めっき層14は、Al及び不純物からなるめっき層であってもよい。一方、アルミ系めっき層14は、Si等の合金成分を含んでいてもよい。以下、説明の便宜のため、表層142と金属間化合物層141とを区別して説明する。なお金属間化合物層は、後述する電子線マイクロアナライザによる線分析で、FexAlyまたはFexAlySizを含むか否かで判断する。具体的には、FeAlまたはFeAlSi(x、y、zは1以上の数を表す)で表される化合物を含む層を金属間化合物層141とし、FeAlおよびFeAlSi(x、y、zは1以上の数を表す)で表される化合物を含まない層を表層142として説明するが、本明細書において、アルミ系めっき層14は、金属間化合物層141を含む概念であり、金属間化合物層141は、アルミ系めっき層14の1種である。
アルミ系めっき層14と、めっき母材となる鋼板(素地鋼板)との界面に、金属間化合物層141が形成されていてもよい。金属間化合物層141は、素地鋼板の成分とアルミ系めっき層14の成分とが相互拡散することによって形成される層である。アルミ系めっき層14が電気めっきである場合、金属間化合物層141は形成されないことが通常である。一方、アルミ系めっき層14が溶融アルミ系めっきによって形成された場合などに、金属間化合物層141が形成されうる。この場合、金属間化合物層141の厚みは、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴の温度と浸漬時間によって制御しうる。また、アルミ系めっき層14を有する鋼板を加熱することによっても、金属間化合物層141が形成されうる。この場合、金属間化合物層141の厚みは、鋼板の加熱温度と加熱時間によって制御しうる。第一実施形態に係るテーラードブランク1では、したがって、金属間化合物層141が形成される場合は、アルミ系めっき層14の一部又は全てが金属板化合物141となる。金属間化合物層141がアルミ系めっき層14の一部である場合は、アルミ系めっき層14における金属間化合物層141以外の部分は、表層142と称する。
第一の鋼板のA面S1Aに配されたアルミ系めっき層14は、溶接金属13と接触している。これにより、溶接金属13および第一の鋼板のA面S1Aの耐食性が高められる。このような構成を有する止端部131は、例えば、第一の鋼板のA面S1Aの端部にアルミ系めっき層14を配した状態で、第一の鋼板11及び第二の鋼板12を突き合せ溶接することによって得られる。第一の鋼板のA面S1Aの端部のアルミ系めっき層14からアルミ成分が供給されるので、溶接金属13の耐食性が安定する。一方、このような構成を有する止端部131においては、アルミ系めっき層14のAl成分が濃化する。
なお、図1の例に示されるように、第一の鋼板のA面S1Aに配されたアルミ系めっき層14の表層142が、溶接金属13の近傍で除去されていてもよい。例えば、金属間化合物層141がある場合、金属間化合物層141以外の部分が第一の鋼板のA面S1Aから除去され、金属間化合物層141が露出していてもよい。金属間化合物層141が残存していれば、金属間化合物層141からアルミ成分が溶接金属13に供給される。また、素地鋼板の露出が回避されていれば、第一の鋼板のA面S1Aの耐食性向上効果は確保される。従って、金属間化合物層141だけが溶接金属13と接する構成も、第一実施形態に係るテーラードブランク1では許容される。一方、第一の鋼板のA面S1Aにおいて、アルミ系めっき層14が全く除去されていなくてもよい。
(素地露出部15)
第一の鋼板11は、第一の鋼板11のB面S1Bに、素地露出部15を有する。素地露出部15とは、アルミ系めっき層14が配されておらず、素地鋼板がめっき層の外部に露出した部分を意味する。図1に示されるテーラードブランク1の一例では、第一の鋼板11のB面S1Bにアルミ系めっき層14が配されており、且つ、アルミ系めっき層14と溶接金属13との間に素地露出部15が配されている。素地露出部15は、アルミ系めっき層14の外部に露出している。
ただし、第一の鋼板11のB面S1Bにめっき層が配される必要はない。第一の鋼板11が、第一の鋼板11のA面S1Aにしかめっき層が配されていないめっき鋼板(いわゆる片面めっき鋼板)である場合、第一の鋼板11のB面S1B全てが素地露出部15であるとみなされる。
また、素地露出部15には、めっき層以外の被覆は配されていてもよい。例えば素地露出部15に塗膜があってもよい。通常、テーラードブランク1が塗装されることはないが、テーラードブランク1から製造されるプレス成形品は塗装される場合がある。
第一の鋼板11のB面S1Bの素地露出部15は、溶接金属13と接触している。このような素地露出部15は、例えば、第一の鋼板11のB面S1Bにアルミ系めっき層14を配しない状態で、第一の鋼板11及び第二の鋼板12を突き合せ溶接をすることによって得られる。あるいは、先ず、第一の鋼板11のB面S1Bの全体にわたってアルミ系めっき層14を配し、次に、研削、切削又はレーザーアブレーション等によって第一の鋼板11のB面S1Bの端部のめっき層を除去した状態で、第一の鋼板11及び第二の鋼板12を突き合せ溶接をすることによっても得られる。このような構成を有する第一の鋼板11のB面S1Bに面する止端部131においては、アルミ系めっき層14に起因するAlの濃化は生じない。
(作用効果)
本発明者らは、板厚が異なる2枚の鋼板から製造されるテーラードブランクにおいて、溶接金属の割れが生じやすいことを知見した。
本発明者らの推定によれば、溶接金属13の割れは、溶接金属13の薄板側の止端部131における応力集中である。板厚が異なる2枚の鋼板を突き合せ溶接して得られたテーラードブランク1は、少なくとも一方の面に段差を有する。そして、大きな段差が形成された面における、溶接金属13の薄板側の止端部131は、応力集中が生じやすい凹形状を有する。また、厚板の剛性が薄板よりも高い場合、薄板側の止端部131における応力集中が一層厳しくなる。
第一実施形態に係るテーラードブランク1の溶接金属13において、最も応力が集中しやすい箇所は、第一の鋼板のB面S1Bに面する止端部131である。第一の鋼板の板厚h1は第二の鋼板の板厚h2よりも小さく、第一の鋼板のB面S1Bは第二の鋼板のB面S2BよりもテーラードブランクのA面SAに向かって凹んでおり、さらに、B面における段差LDbはA面における段差LDaよりも大きいからである。
加えて、第一実施形態に係るテーラードブランク1では、第二の鋼板12の剛性を示す指標h2×C2が、第一の鋼板11の剛性を示す指標h1×C1よりも高い。h1×C1≦h2×C2の関係が満たされるテーラードブランク1に焼入れをして得られた品に曲げ応力が加わった場合には、第二の鋼板12の変形量は第一の鋼板11よりも小さくなる。その結果、焼入れ後のテーラードブランク1に曲げ応力によって生じる変形は、第一の鋼板11に集中する。
そこで第一実施形態に係るテーラードブランク1では、第一の鋼板11のB面S1Bに設けられた素地露出部15によって、溶接金属13の破断を抑制する。素地露出部15によれば、第一の鋼板11のB面S1Bに面する止端部131において、アルミ系めっきに起因するAlの濃化を回避することができる。
また、第一実施形態に係るテーラードブランク1においては、溶接金属13の平均Al濃度が0.05~1.00質量%の範囲内とされている。これにより、溶接金属13は全体的に高い耐食性を有し、かつ、破断し難い。
加えて、第一の鋼板のA面S1Aに面する止端部131、並びに第二の鋼板のA面S2A及びB面S2Bに面する止端部131では応力集中が生じにくい。これらの止端部131においては、Alの濃化が許容される。従って、少なくとも第一の鋼板のA面S1Aに面する止端部131には、溶接金属13に接するようにアルミ系めっき層14が配される。第一の鋼板のA面S1Aのアルミ系めっき層14は、第一の鋼板のA面S1Aの耐食性を高める。また、第一の鋼板のA面S1Aの溶接予定部に設けられていたアルミ系めっき層14は、テーラードブランクのA面SA側において溶接金属13のアルミニウム濃度を高めて、溶接金属13の耐食性を安定させる。
以上、第一実施形態に係るテーラードブランク1の最も基本的な態様について説明した。次に、第一実施形態に係るテーラードブランク1の好ましい態様について説明する。
(第二の鋼板12のめっき層)
第二の鋼板12は、非めっき鋼板であってもよい。一方、図1に例示されるように、第二の鋼板12は、亜鉛系めっき鋼板であってもよい。ここで、亜鉛系めっき鋼板とは、素地鋼板と素地鋼板上に設けられる亜鉛系めっき層とを備える鋼板をいう。亜鉛系めっき層とは、めっき層全質量に対する質量%で、亜鉛の含有量が50%以上であるめっき層をいう。また、第二の鋼板12は、第一の鋼板11と同じくアルミ系めっき鋼板であってもよい。即ち、第二の鋼板12のA面S2A及び第二の鋼板12のB面S2Bの一方又は両方に、アルミ系めっき層14、又は亜鉛系めっき層16が設けられていてもよい。図1の例は、第二の鋼板12に亜鉛系めっき層16が両面に設けられた例である。これらのめっき層によって、第二の鋼板12の耐食性が高められる。また、これらのめっき層によって、第二の鋼板12にホットスタンプすることによって生じるスケールの量を低減することができる。ここで例示されたもの以外のめっきが、第二の鋼板12の表面に設けられてもよい。
なお、亜鉛系めっき層16は溶接熱によって蒸発するので、溶接金属13の成分に影響しないが、第一の鋼板のA面S1Aの溶接予定部に設けられていたアルミ系めっき層14により、テーラードブランクのA面SA側において溶接金属13のアルミニウム濃度を高めて、溶接金属13の耐食性を安定させることができる。一方、アルミ系めっき層14は溶接熱によって溶融して溶融池に溶け込むので、溶接金属13の成分に影響しうる。しかし、第二の鋼板12のA面S2A及び第二の鋼板12のB面S2Bに設けられたアルミ系めっき層14は、溶接金属13の平均Al濃度が0.05~1.00質量%の範囲内であれば溶接金属13の接合強度を損なわない。第一実施形態に係るテーラードブランク1では、第二の鋼板12のA面S2A及び第二の鋼板12のB面S2Bに面する止端部131には応力が集中しないように、部材形状が規定されているからである。
第一の鋼板の板厚h1と第二の鋼板の板厚h2との比率は、上述の式1を満たす範囲内で、適宜選択することができる。例えば、第一の鋼板の板厚h1及び第二の鋼板の板厚h2が、下記式4を満たしてもよい。
h2/h1≧1.5・・・(式4)
h2/h1が大きいほど、テーラードブランク1の表面の段差が大きくなり、応力集中が著しくなる。即ち、式4を満足した場合、より応力集中が起こりやすくなくなる。しかしながら、第一実施形態に係るテーラードブランク1では、溶接金属13のAl濃度を適切に制御し、かつ、素地露出部15を適切に設けている。従って、式4を満たすような場合であっても、溶接金属13の破断を抑制することができる。
h2/h1が1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上又は1.6以上であってもよい。h2/h1の上限値は特に限定されないが、例えばh2/h1を3.0以下、2.5以下、又は2.0以下としてもよい。
(第一の鋼板11のB面S1Bのめっき層)
第一の鋼板11のB面S1Bには、めっき層が配されていなくてもよい。即ち、第一の鋼板11は、A面S1Aのみにアルミ系めっき層14が配された片面めっき鋼板であってもよい。一方、第一の鋼板11のB面S1Bにアルミ系めっき層14が配されていてもよい。この場合、第一の鋼板のB面S1Bの露出部は、第一の鋼板のB面S1Bのアルミ系めっき層14と、溶接金属13との間に配置されていてもよい。これにより、第一の鋼板のB面S1Bの耐食性が一層高められる。
(テーラードブランクのA面SAの段差)
図1に例示されるように、テーラードブランクのA面SAにおいて、第一の鋼板11のA面S1Aと前記第二の鋼板12のA面S2Aとが段差を形成していてもよい。一方、テーラードブランクのA面SAにおいて段差がないことが最も好ましい。即ち、第一の鋼板11のA面S1Aと第二の鋼板12のA面S2Aとが略同一面上にあることが最も好ましい。この場合、第一の鋼板11のA面S1Aに面する止端部131及び第二の鋼板12のA面S2Aに面する止端部131における応力集中をより一層抑制することができる。また、この場合、接合部の意匠性が高まる。従って、テーラードブランクのA面SAを、意匠性が求められる側(例えば部品の外側)とする場合に、第一の鋼板11のA面S1Aと第二の鋼板12のA面S2Aとが略同一面上であることが好ましい。
(2.プレス成形品)
次に、第二実施形態に係るプレス成形品について説明する。第二実施形態に係るプレス成形品は、第一実施形態に係るテーラードブランク1をホットスタンプすることによって得られる機械部品である。第二実施形態に係るプレス成形品の特徴点の多くは、後述する鋼板の剛性の指標を除き、第一実施形態に係るテーラードブランク1の特徴点と共通する。従って、第一実施形態に係るテーラードブランク1に関して述べられた事項は、原則的に、第二実施形態に係るプレス成形品にも当てはまる。テーラードブランク1の好適な態様は、プレス成形品にも適用することができる。
第二実施形態に係るプレス成形品は、第一の鋼材21と、第一の鋼材21と突合せ溶接された第二の鋼材22と、第一の鋼材21の端部及び第二の鋼材22の端部を接続する溶接金属23とを備える。第一実施形態に係るテーラードブランク1と同じく、第二実施形態に係るプレス成形品も、突合せ継手の一種である。なお、第二の鋼材22は、アルミ系めっき鋼材、亜鉛系めっき鋼材、又は非めっき鋼材であってもよい。
(溶接金属23の平均Al濃度)
第二実施形態に係るプレス成形品では、溶接金属23の平均Al濃度が0.05~1.00質量%の範囲内である。溶接金属23の平均Al濃度が上述の範囲内である場合、溶接金属23は高い耐食性を有し、かつ、破断し難い。溶接金属23の平均Al濃度は0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.30質量%以上であってもよい。溶接金属23の平均Al濃度は0.90質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、又は0.60質量%以下であってもよい。溶接金属23の平均Al濃度の測定は、後述する溶接金属13の平均Al濃度の測定方法と同様の方法で測定することができる。
(第一の鋼材21及び第二の鋼材22の厚さ)
第一の鋼材21の厚さH1及び第二の鋼材22の厚さH2は、下記式5を満たす。式5を満たすことによって、設計の自由度が向上するが、応力集中が起こりやすくなる。このような場合でも、第二実施形態に係るプレス成形品では、溶接金属23のAl濃度を適切に制御し、かつ、素地露出部15を適切に設けているので、溶接金属23の破断を抑制することができる。
H2/H1≧1.1・・・(式5)
第一の鋼材21は第二の鋼材22よりも薄い。従って、第一実施形態に係るテーラードブランク1と同様に、第二実施形態に係るプレス成形品の表面(A面SA及びB面SB)のうち少なくとも一方では、第一の鋼材21の表面が第二の鋼材22の表面に対して凹んで、段差が生じる。なお、第一の鋼材21の厚さH1及び第二の鋼材22の厚さH2は、後述する第一の鋼板11の板厚h1及び第二の鋼板の板厚h2の測定方法と同様の方法で測定することができる。
(第一の鋼材21及び第二の鋼材22の引張強さ)
第二実施形態に係るプレス成形品では、第一の鋼材21及び第二の鋼材22の炭素濃度は特に限定されない。第一の鋼材21の炭素濃度C1が、第二の鋼材22の炭素濃度C2と等しくてもよい。第一の鋼板11の炭素濃度C1が第二の鋼板12の炭素濃度C2と異なることが好ましい。好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.5倍以下である。さらに、好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.3倍以下である。特に好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.1倍以下である。好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.5倍以上である。さらに好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.7倍以上である。特に好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.9倍以上である。一方、第二実施形態に係るプレス成形品では、第一の鋼材21の厚さH1及び引張強さT1、並びに第二の鋼材22の厚さH2及び引張強さT2が、下記式6を満たす。第一の鋼材21の炭素濃度C1が、第二の鋼材22の炭素濃度C2は、後述する第一の鋼板11及び第二の鋼板12の化学成分の測定方法と同様の方法で測定することができる。
H1×T1≦H2×T2・・・(式6)
第二実施形態に係るプレス成形品において、鋼材の引張強さと厚さとの積は、鋼材の剛性の指標として用いられる。式6は、第一の鋼材21及び第二の鋼材22の剛性の関係性を規定している。式6を満たすプレス成形品において、第一の鋼材21の剛性は第二の鋼材22と略同一か、また、それよりも小さくなる。第1の鋼材21の引張強さT1と厚さH1との積は、第2の鋼材22の引張強さT2と厚さH2との積よりも小さいことが好ましい。
(第一の鋼材21及び第二の鋼材22の引張強さの測定方法)
第一の鋼材21及び第二の鋼材22の引張強さは、JIS Z 2241:2011「金属材料引張試験方法」に準拠して評価する。
(第一の鋼材21及び第二の鋼材22が形成する段差)
第二実施形態に係るプレス成形品では、第一実施形態に係るテーラードブランク1と同じく、一方の面に形成された段差が、他方の面に形成された段差の1.1倍以上とされる。即ち、第一の鋼材21のA面と第二の鋼材22のA面との段差LD2a、及び第一の鋼材21のB面と第二の鋼材22のB面との段差LD2bは、下記式7を満たす。式7を満たす場合、プレス成形品の溶接部において、応力集中が起こりやすくなる。段差LD2aおよび段差LD2bは、後述する第一の鋼材のA面と第二の鋼材のA面との段差LDa、及び第一の鋼材のB面と第二の鋼材のB面との段差LDbの測定方法と同様の方法で測定することができる。
LD2b≧1.1×LD2a・・・(式7)
従って、第二実施形態に係るプレス成形品では、第一実施形態に係るテーラードブランク1と同じく、上記式5から式7が満たされる限り、第一の鋼材のB面S3Bと溶接金属23の表面との境界部が、溶接部において最も応力が集中しやすい領域である。
(アルミ系めっき層24)
第二実施形態に係るプレス成形品では、第一実施形態に係るテーラードブランク1と同じく、第一の鋼材21が、少なくとも第一の鋼材のA面S3Aに、アルミ系めっき層24を有する。アルミ系めっき層24は、アルミ系めっき層24の全てが金属間化合物層141となっている。そして、第一の鋼材のA面S3Aに配されたアルミ系めっき層24は、溶接金属23と接触している。
(素地露出部15)
第二実施形態に係るプレス成形品では、第一実施形態に係るテーラードブランク1と同じく、第一の鋼材21が、第一の鋼材21のB面S3Bに、素地露出部15を有する。素地露出部15は、アルミ系めっき層24の外部に露出している。なお、素地露出部15には、めっき層以外の被覆は配されていてもよい。例えば素地露出部15が塗装されていてもよい。そして第一の鋼材21のB面S3Bの素地露出部15は、溶接金属23と接触している。
(作用効果)
第二実施形態に係るプレス成形品において、最も応力が集中しやすいのは第一の鋼材のB面S3Bに面する止端部231である。そこで第二実施形態に係るプレス成形品では、第一の鋼材21のB面S3Bに設けられた素地露出部15によって、溶接金属23の破断を抑制する。素地露出部15によれば、第一の鋼材21のB面S3Bに面する止端部231において、アルミ系めっきに起因するAlの濃化を回避することができる。
また、第二実施形態に係るプレス成形品においては、溶接金属23の平均Al濃度が0.05~1.00質量%の範囲内とされている。これにより、溶接金属23は高い耐食性を有し、かつ、破断し難い。
加えて、第二実施形態に係るプレス成形品においては、少なくとも第一の鋼材のA面S3Aに面する止端部231に、溶接金属23に接するようにアルミ系めっき層24が配される。第一の鋼材のA面S3Aのアルミ系めっき層24は、第一の鋼材のA面S3Aの耐食性を高める。また、第一の鋼材のA面S3Aの溶接予定部に設けられていたアルミ系めっき層24は、プレス成形品のA面SA側において溶接金属23のアルミニウム濃度を全体的に高めて、溶接金属23の耐食性を安定させる。
以上、第二実施形態に係るプレス成形品の最も基本的な態様について説明した。次に、第二実施形態に係るプレス成形品の好ましい態様について説明する。
(第二の鋼材22のめっき層)
第二の鋼材22は、非めっき鋼材であってもよい。一方、第二の鋼材22は、例えばアルミ系めっき鋼材、又は亜鉛系めっき鋼材であることが好ましい。即ち、第二の鋼材22のA面S4A及び第二の鋼材22のB面S2Bの一方又は両方に、アルミ系めっき層24、又は亜鉛系めっき層26が設けられていることが好ましい。これらのめっき層によって、第二の鋼材22の耐食性が高められる。また、これらのめっき層によって、第二の鋼材22にホットスタンプすることによって生じるスケールの量を低減することができる。ここで例示されたもの以外のめっきが、第二の鋼材22の表面に設けられてもよい。
第一の鋼材の厚さH1と第二の鋼材の厚さH2との比率は、上述の式1を満たす範囲内で、適宜選択することができる。例えば、第一の鋼材の厚さH1及び第二の鋼材の厚さH2が、下記式8を満たしてもよい。
H2/H1≧1.5・・・(式8)
H2/H1が大きいほど、すなわち、式8を満たすことで、プレス成形品の表面の段差が大きくなり、応力集中が著しくなる。しかしながら、第一実施形態に係るプレス成形品では、溶接金属23のAl濃度を適切に制御し、かつ、素地露出部15を適切に設けている。従って、H2/H1が大きい場合であっても、溶接金属23の破断を抑制することができる。
H2/H1が1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上又は1.6以上であってもよい。H2/H1の上限値は特に限定されないが、例えばH2/H1を3.0以下、2.5以下、又は2.0以下としてもよい。
(第一の鋼材21のB面S3Bのめっき層)
第一の鋼材21のB面S3Bには、めっき層が配されていなくてもよい。即ち、第一の鋼材21は、第一の鋼材21のA面S3Aのみにアルミ系めっき層24が配された片面めっき鋼材であってもよい。一方、第一の鋼材21のB面S3Bにアルミ系めっき層24が配されていてもよい。この場合、第一の鋼材のB面S3Bの露出部は、第一の鋼材のB面S3Bのアルミ系めっき層24と、溶接金属23との間に配置されていてもよい。これにより、第一の鋼材のB面S3Bの耐食性が一層高められる。
(プレス成形品のA面SAの段差)
プレス成形品のA面SAにおいて、第一の鋼材21のA面S3Aと第二の鋼材22のA面S4Aとが段差を形成していてもよい。一方、プレス成形品のA面SAにおいて段差がないことが最も好ましい。即ち、第一の鋼材21のA面S3Aと前記第二の鋼材22のA面S4Aとが略同一面上にあることが最も好ましい。この場合、第一の鋼材21のA面S3Aに面する止端部231及び第二の鋼材22のA面S4Aに面する止端部231における応力集中をより一層抑制することができる。また、テーラードブランクのA面SAを、意匠性が求められる側(例えば部品の外側)とする場合に、第一の鋼材21のA面S3Aと前記第二の鋼材22のA面S4Aとが略同一面上にあることが好ましい。プレス成形品のA面SAの側の段差LD2aは、0mm超であってもよい。
(3.テーラードブランク1の製造方法)
次に、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法について説明する。第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法の特徴点の多くは、第一実施形態に係るテーラードブランク1の特徴点と共通する。従って、第一実施形態に係るテーラードブランク1に関して述べられた事項は、原則的に、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法にも当てはまる。テーラードブランク1の好適な態様は、その製造方法にも適用することができる。
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法は、第一の鋼板11と、第二の鋼板12とを突合せ溶接して、第一の鋼板11の端部及び第二の鋼板12の端部を接続する溶接金属13を形成する工程を備える。突き合せ溶接は、例えばアーク溶接、及びレーザ溶接等である。溶接金属13の製造のために、溶加材を溶接部に添加してもよい。溶加材とは、例えばソリッドワイヤ、及びフラックス入りワイヤ等のフィラーワイヤである。
(溶接金属13の平均Al濃度)
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法においては、溶接金属13の平均Al濃度を、0.05~1.00質量%とする。溶接金属13の平均Al濃度が上述の範囲内である場合、溶接金属13は高い耐食性を有し、かつ、破断し難い。溶接金属13の平均Al濃度を0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.30質量%以上としてもよい。溶接金属13の平均Al濃度を0.90質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、又は0.60質量%以下としてもよい。
溶接金属13の平均Al濃度を上述の範囲内に制御するための方法は、特に限定されない。一般的に、めっき鋼板の溶接金属13の成分は、鋼板及びめっきの成分に由来する。突き合せ溶接のために溶加材が用いられる場合は、溶加材の成分も溶接金属13に影響する。鋼板及びめっきの成分に応じた成分のフィラーワイヤを用いることにより、溶接金属13の平均Al濃度を制御することができる。また、後述するように、第一の鋼板11のB面S1Bに設けられたアルミ系めっきの一部を溶接予定部に残存させたり(図2、図3及び図7参照)、第一の鋼板11のA面S1Aに設けられたアルミ系めっきを浅く除去したり(図3及び図5参照)することによって、溶接金属13の平均Al濃度を制御することも可能である。
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12の板厚)
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12の炭素濃度)
第一の鋼板11及び第二の鋼板12は、その板厚及び炭素濃度が下記式1及び式2を満たすように選定する。
h2/h1≧1.1・・・(式1)
h1×C1≦h2×C2・・・(式2)
式1におけるh1は第一の鋼板の板厚h1であり、h2は第二の鋼板の板厚h2であり、C1は第一の鋼板11の炭素濃度であり、C2は第二の鋼板12の炭素濃度である。第一の鋼板11の炭素濃度C1は、第二の鋼板12の炭素濃度C2と等しくてもよい。第一の鋼板11の炭素濃度C1が第二の鋼板12の炭素濃度C2と異なることが好ましい。好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.5倍以下である。さらに、好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.3倍以下である。特に好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の1.1倍以下である。好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.5倍以上である。さらに好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.7倍以上である。特に好ましくは炭素濃度C1が、炭素濃度C2の0.9倍以上である。式1及び式2の技術意義及び作用効果は、第一実施形態に係るテーラードブランク1に関して述べられた通りである。
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12が形成する段差)
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法では、第一の鋼板のA面と第二の鋼板のA面との段差LDa、及び第一の鋼板のB面と第二の鋼板のB面との段差LDbを、下記式3を満たすようにする。
LDb≧1.1×LDa・・・(式3)
第一の鋼板のB面S1Bと第二の鋼板のB面S2Bとの位置関係、及び式3の技術意義は、第一実施形態に係るテーラードブランク1に関して述べられた通りである。第一の鋼板11及び第二の鋼板12の突合せ溶接の際に、これら鋼板の位置合わせを行うことにより、式3を満たすことができる。
(アルミ系めっき層14)
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法では、アルミ系めっき鋼板を第一の鋼板11として用いる。これにより、第一の鋼板のA面S1Aにアルミ系めっき層14を配する。アルミ系めっき鋼板が片面めっき鋼板である場合は、アルミ系めっき鋼板がある面を、第一の鋼板のA面S1Aとして用いる。
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法では、第一の鋼板のA面S1Aに配されたアルミ系めっき層14を、溶接金属13と接触させる。そのためには、第一の鋼板のA面S1Aの端部に、アルミ系めっき層14を除去する工程を適用しないことが好ましい。第一の鋼板のA面S1Aの端部にアルミ系めっき層14を残存させたまま、第一の鋼板11を溶接に供することにより、溶接金属13にアルミ系めっき層14を溶け込ませて、溶接金属13のアルミニウム濃度を高めて、溶接金属13の耐食性を安定させることができる。
一方、第一の鋼板のA面S1Aの端部において、素地鋼板を露出させない程度にアルミ系めっき層14の表層142を除去してもよい。この場合、アルミ系めっき層14の厚さが溶接部において若干薄くなるが、アルミ系めっき層14を溶接金属13に接触させることができる。また、第一の鋼板のA面S1Aの端部における、溶接予定部に包含される領域に対してのみ、素地鋼板が露出するようにアルミ系めっき層14を除去してもよい。この場合も、アルミ系めっき層14を溶接金属13に接触させることができる。溶接金属13の平均Al濃度を低下させることが求められる場合、第一の鋼板のA面S1Aの端部においてアルミ系めっき層14を部分的に除去することは許容される。
(素地露出部15)
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法では、第一の鋼板のB面S1Bに素地露出部15を設ける。そして、第一の鋼板のB面S1Bの素地露出部15を、溶接金属13に接触させる。
第一の鋼板11が片面めっき鋼板である場合、素地露出部15を設けるための特段の加工は不要である。アルミ系めっき鋼板がない面を、第一の鋼板のB面S1Bとして用いればよい。この場合、第一の鋼板のB面S1Bに面する止端部131にはアルミ系めっき層14が溶け込まない。
第一の鋼板11の鋼板が両面めっき鋼板である場合、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法は、第一の鋼板のB面S1Bの溶接予定部、及びその近傍のアルミ系めっき層14を除去して、素地鋼板を露出させる。これにより、第一の鋼板のB面S1Bにアルミ系めっき層14を配し、第一の鋼板のB面S1Bの素地露出部15を、第一の鋼板のB面S1Bのアルミ系めっき層14と、溶接金属13との間に配することができる。この場合も、第一の鋼板のB面S1Bに面する止端部131にはアルミ系めっき層14がほとんど溶け込まないか、又は全く溶け込まない。
(作用効果)
第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法では、第一の鋼板のB面S1Bに面する止端部131を、最も応力が集中しやすい領域としている。そして、第一の鋼板のB面S1Bに面する止端部131には、アルミ系めっき層14が溶け込まないか、又は全く溶け込まない。これにより、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法によれば、破断し難い溶接金属13を得ることができる。
また、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法においては、溶接金属13の平均Al濃度を0.05~1.00質量%の範囲内とする。これにより、溶接金属13は高い耐食性を有し、かつ、破断し難い。
加えて、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法において、第一の鋼板のA面S1Aに面する止端部131、並びに第二の鋼板のA面S2A及び第二の鋼板のB面S2Bに面する止端部131における応力集中を抑制している。これらの止端部131においては、Alの濃化が許容される。従って、少なくとも第一の鋼板のA面S1Aに面する止端部131には、溶接金属13に接するようにアルミ系めっき層14が配される。第一の鋼板のA面S1Aのアルミ系めっき層14は、第一の鋼板のA面S1Aの耐食性を高める。また、第一の鋼板のA面S1Aの溶接予定部に設けられていたアルミ系めっき層14は、テーラードブランク1のA面SA側において溶接金属13のアルミニウム濃度を高めて、溶接金属13の耐食性を安定させる。
以上、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法の最も基本的な態様について説明した。次に、第三実施形態に係るテーラードブランク1の製造方法の好ましい態様について説明する。
(第一の鋼板11のB面S1Bのめっき層)
上述の通り、第一の鋼板11を両面めっき鋼板としてもよい。即ち、第一の鋼板のB面S1Bにアルミ系めっき層14を配してもよい。この場合、テーラードブランク1の製造方法が、第一の鋼板のB面S1Bの溶接予定部、及びその近傍のアルミ系めっき層14を除去して、素地鋼板を露出させる工程をさらに備えてもよい。アルミ系めっき層14を除去するための方法は特に限定されない。例えば切削、研削、及びレーザーアブレーション等を、アルミ系めっき層14を除去するための方法として採用することができる。第一の鋼板のB面S1Bの溶接予定部、及びその近傍に素地露出部15を形成することにより、第一の鋼板のB面S1Bの素地露出部15を、第一の鋼板のB面S1Bのアルミ系めっき層14と、溶接金属13との間に配することができる。この場合、第一の鋼板のB面S1Bの耐食性を一層高めることができる。
アルミ系めっき層14の除去の態様は特に限定されないが、好適な例が図2~図5、図7に例示される。以下、これらの好適例について説明する。なお、図2~図5、図7に記載された破線は、溶接金属13が形成される箇所を示す。破線の内部が、溶接予定部である。
(第一の鋼板11のB面S1Bのめっき層の除去)
図4及び図5に示されるように、第一の鋼板のB面S1Bの溶接予定部の全域にわたってアルミ系めっき層14を除去してもよい。一方、図2、図3及び図7に示されるように、溶接予定部において、第一の鋼板のB面S1Bの先端部に、アルミ系めっき層14を残存させてもよい。この場合、第一の鋼板のB面S1Bの先端部のみにアルミ系めっき層14が存在するため、第一の鋼板11のB面S1Bに面する止端部131において、アルミ系めっきに起因するAlの濃化を抑制することができ、その耐食性を改善しうる。
図2及び図3に示されるめっき層の除去態様と、図7に示されるめっき層の除去態様との間の最も大きな相違は、第一の鋼板のB面S1Bの先端部に配されためっき層の位置である。先端部は、溶接予定部の内部である。図2及び図3に示される断面図において、第一の鋼板のB面S1Bの先端部のめっき層は、溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14と略同一面上にある。一方、図7に示される断面図において、第一の鋼板のB面S1Bの先端部のめっき層は、溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14よりも紙面下方向にある。先端部のめっき層の位置の相違は、先端部にめっき層を配する方法の相違に起因する。
具体的に説明すると、図2及び図3に示されるように、溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14とめっき母材となる鋼板(素地鋼板)との界面を延長した仮想線よりも板厚方向で、溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14側に、第一の鋼板のB面S1Bの先端部にアルミ系めっき層を残存させてもよい。また、図7に示されるように、溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14と素地鋼板との界面を延長した仮想線よりも板厚方向で、素地鋼板側に、第一の鋼板のB面S1Bの先端部にアルミ系めっき層を残存させてもよい。
アルミ系めっき層14を残存させる方法の一つは、第一の鋼板のB面S1Bの先端部に、切削などの素地鋼板を露出させる工程を適用しないことである。また、めっき鋼板を打ち抜き加工して第一の鋼板11を製造する際に発生するダレを利用して、アルミ系めっき層14を残存させてもよい。打ち抜き加工としては、例えば、シャーリング加工やブランキング加工が挙げられる。ダレには、アルミ系めっき層14が残存している。このダレを除去することなく、第一の鋼板のB面S1Bの溶接予定部に切削などのアルミ系めっき層14除去工程を適用すると、第一の鋼板のB面S1Bの先端部にわずかにアルミ系めっきが残存する。ダレ量を制御することにより、第一の鋼板のB面S1Bの先端部に残存させるアルミ系めっきの量を制御することもできる。ダレを利用するアルミ系めっき層14を先端部に残存させる方法では、図7に示されるように、溶接予定部に含まれない、アルミ系めっき層14と素地鋼板との界面を延長した仮想線よりも素地鋼板側に、第一の鋼板のB面S1Bの先端部にアルミ系めっき層14が残存する。この際、先端部に残存したアルミ系めっき層14の突合せ側とは反対側の厚みは、突合せ側の厚みよりも薄くなる。この先端部に残存したアルミ系めっき層14の形状は、打ち抜き加工などにより発生したダレを除去することなく、アルミ系めっき層14の除去工程を適用した場合の特殊な形状である。
(第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14の除去)
図2、図4及び図7に示されるように、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14を除去する必要はない。一方、図3及び図5に示されるように、素地鋼板を露出させない範囲内で、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14を除去してもよい。即ち、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14の表層142のみを除去し、アルミ系めっき層14に含まれる金属間化合物層141を残存させてもよい。また、第一の鋼板11のA面S1Aでは、金属間化合物層141を露出させない範囲内で、アルミ系めっき層14の表層142を浅く除去してもよい。
図2に示されるアルミ系めっき層14の除去の態様例1では、第一の鋼板11のB面S1Bのアルミ系めっき層14を除去しているが、先端部にのみアルミ系めっきを残存させている。詳細には、溶接予定部に含まれない、アルミ系めっき層14又は金属間化合物層141とめっき母材となる鋼板(素地鋼板)との界面を延長した仮想線上又は仮想線よりも溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14側に、先端部にのみアルミ系めっきを残存させている。また、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14は全く除去されない。態様例1を溶接して得られる溶接金属13の平均Al濃度は、他の例よりも高くなる。また、態様例1によれば、アルミ系めっき層14の除去に要する時間、及び除去量が少ない。
図3に示されるアルミ系めっき層14の除去の態様例2では、第一の鋼板11のB面S1Bのアルミ系めっき層14を除去しているが、先端部にのみアルミ系めっきを残存させている。詳細には、溶接予定部に含まれない、アルミ系めっき層14又は金属間化合物層141とめっき母材となる鋼板(素地鋼板)との界面を延長した仮想線上又は仮想線よりも溶接予定部に含まれないアルミ系めっき層14側に、先端部にのみアルミ系めっきを残存させている。また、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14の表層142を除去しているが、金属間化合物層141を残存させている。
図4に示されるアルミ系めっき層14の除去の態様例3では、第一の鋼板11のB面S1Bのアルミ系めっき層14を、溶接予定部の全域にわたって除去している。また、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14は全く除去されない。態様例3は、端面にダレが残っていないアルミ系めっき鋼板から、容易に製造することができる。なお、端面にダレが残っていないアルミ系めっき鋼板は、例えば、レーザ加工でアルミ系めっき鋼板を切断することにより作製することができる。
図5に示されるアルミ系めっき層14の除去の態様例4では、第一の鋼板11のB面S1Bのアルミ系めっき層14を、溶接予定部の全域にわたって除去している。また、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14の表層142を除去しているが、金属間化合物層141を残存させている。態様例4を溶接して得られる溶接金属13の平均Al濃度は、他の例よりも低くなる。態様例4は、端面にダレが残っていないアルミ系めっき鋼板から、容易に製造することができる。なお、端面にダレが残っていないアルミ系めっき鋼板は、例えば、レーザ加工でアルミ系めっき鋼板を切断することにより作製することができる。
図7に示されるアルミ系めっき層14の除去の態様例5では、第一の鋼板11のB面S1Bのアルミ系めっき層14を除去しているが、先端部にのみアルミ系めっきを残存させている。詳細には、溶接予定部に含まれない、アルミ系めっき層14又は金属間化合物層141と素地鋼板との界面を延長した仮想線よりも素地鋼板側に、先端部にのみアルミ系めっきを残存させている。また、第一の鋼板11のA面S1Aのアルミ系めっき層14は全く除去されない。また、態様例5によれば、アルミ系めっき層14の除去に要する時間が少なく、第一の鋼板11の打ち抜き加工の際に、端面にダレを残すことにより、アルミ系めっき層14を第一の鋼板11の先端部に残すことが容易となる。
(4.プレス成形品の製造方法)
次に、第四実施形態に係るプレス成形品の製造方法について説明する。第四実施形態に係るプレス成形品は、第一実施形態に係るテーラードブランク1をホットスタンプする工程を備える。ホットスタンプでは、テーラードブランク1を高温に加熱し、Ar3点以上の温度域においてテーラードブランク1をプレス成形する。また、ホットスタンプでは、プレス成形した鋼板を金型による抜熱で急速に冷却し、プレス圧が掛かった状態で成形と同時に変態を起こさせる。ホットスタンプは、高強度でかつ形状凍結性の優れたプレス成形品を製造することができる。
以上、本発明の実施の形態ついて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下に、本実施形態に係るテーラードブランク、プレス成形品、テーラードブランクの製造方法、及びプレス成形品の製造方法の一層好適な例について説明する。以下に説明する一層好適な例は、テーラードブランク、プレス成形品、テーラードブランクの製造方法、及びプレス成形品の製造方法の全てに適用可能である。
(鋼板の枚数)
テーラードブランク1は、図6に示されるように、3枚以上の鋼板を有してもよい。図6に例示されるテーラードブランク1においては、1枚の第一の鋼板11の両側に、2枚の第二の鋼板12が突合せ溶接されている。片方の第二の鋼板12は亜鉛系めっき層16を有する亜鉛系めっき鋼板であり、他方の第二の鋼板12は非めっき鋼板である。また、2つの溶接部それぞれにおいて、溶接金属13の平均Al濃度、板厚、段差、アルミ系めっき層14の配置、及び素地露出部15の配置が所定範囲内とされている。
ただし、1つのテーラードブランク1におけるすべての溶接部が、上述の要件を満たす必要はない。少なくとも1つの溶接部において上述の要件を満たすテーラードブランク1は、第一実施形態に係るテーラードブランク1とみなされる。テーラードブランク1の製造方法、及びプレス成形品においても、上述の通り鋼板を3枚以上としてもよい。
(素地露出部15の幅)
素地露出部15の幅は0mm超であればよい。第一の鋼板11のB面S1Bの耐食性を一層向上させる観点からは、素地露出部15の幅は小さいほど好ましい。しかしながら、素地露出部15の幅が狭い場合は、突合せ溶接の位置決め精度を高める必要が生じる。突合せ溶接を容易にする観点からは、素地露出部15の幅は大きいほど好ましい。例えば、突合せ溶接がレーザ溶接である場合、素地露出部15の幅を0.1mm以上、0.2mm以上、0.5mm以上としてもよく、素地露出部15の幅を3.0mm以下、1.5mm以下、0.5mm以下としてもよい。また、突合せ溶接がプラズマ溶接である場合、素地露出部15の幅を0.5mm以上、1.0mm以上、2.0mm以上としてもよく、素地露出部15の幅を6.0mm以下、4.0mm以下、2.0mm以下としてもよい。なお、素地露出部15の幅とは、溶接金属13の延在方向に垂直な方向で測定される素地露出部15の大きさのことである。
(めっき除去境界)
素地露出部15におけるめっき除去境界は、曲率半径Rで表される凹状の曲線で形成されることが好ましい。曲率半径Rが大きければ大きいほど、応力の負荷が加えられたときの応力集中が緩和される。そのため、曲率半径Rは、260μm以上、400μm以上、1000μm以上としてもよい。なお、曲率半径Rの上限は特に限定されず、例えば、100000μm以下でもよい。
(溶加材)
テーラードブランク1の製造方法において、突合せ溶接のためにフィラーワイヤなどの溶加材を用いてもよい。溶加材は、溶接金属13の成分を制御するために用いることができる。また、溶加材は、溶接金属13の凹みを減らし、溶接金属13の外観を整える効果を有する。溶加材のアルミニウム濃度は、第一の鋼板11及び第二の鋼板12のアルミニウム濃度と同程度以下であることが好ましい。例えば、溶加材のアルミニウム濃度を、第一の鋼板11及び第二の鋼板12のアルミニウム濃度の平均値に対して、0.5~100%の範囲内としてもよい。
(プレス成形品におけるA面SA及びB面SBの配置)
プレス成形品は、板を曲げ加工して得られる。プレス成形品の外側は、プレス成形品の使用環境に晒される等の理由で、内側よりも厳しい腐食環境におかれる可能性が高い。ここで、第一の鋼板のA面S1Aには素地露出部15が無いので、B面S1Bよりも一層高い耐食性を有する。従って、プレス成形品の外側に、第一の鋼板のA面S1Aを配置することが好ましい。これにより、プレス成形品の耐食性を一層高めることができる。
(鋼板及びめっきの成分)
鋼板及びめっきの成分は特に限定されないが、以下に好適な一例を挙げる。
第一の鋼板11及び第二の鋼板12の成分は、例えば質量%で、C:0.02%~0.58%、Mn:0.20%~3.00%、Al:0.005%~0.0600%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、N:0.010%以下、Ti:0%~0.20%、Nb:0%~0.20%、V:0%~1.0%、W:0%~1.0%、Cr:0%~1.0%、Mo:0%~1.0%、Cu:0%~1.0%、Ni:0%~1.0%、B:0%~0.0100%、Mg:0%~0.05%、Ca:0%~0.05%、REM:0%~0.05%、Sn:0%~0.5%、Bi:0%~0.05%、Si:0%~2.00%、並びに残部:Feおよび不純物を含む化学組成を有するものであってもよい。
アルミ系めっき層14は、表層142を有し、さらに金属間化合物層141を有する場合がある。又は、アルミ系めっき層14は、金属間化合物層141から成る場合がある。めっき層の表層142または金属間化合物層141がアルミニウムを50質量%含む場合、そのめっき層はアルミ系めっき層14とみなされる。目的に応じて、アルミ系めっき層14の表層142はアルミニウム以外の元素(例えば、Siなど)を含んでいてもよく、製造の過程などで混入してしまう不純物を含んでいてもよい。アルミ系めっき層14の表層142は、具体的には、例えば、質量%で、Si(シリコン)を5%~12%含み、残部はアルミニウムおよび不純物からなる化学組成を有していてもよい。また、アルミ系めっき層14の表層142は質量%で、Si(シリコン)を5%~12%、Fe(鉄)を2%~4%を含み、残部はアルミニウムおよび不純物からなる化学組成を有していてもよい。
アルミ系めっき層14が溶融めっきによって形成される場合、金属間化合物層141は、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中での、第一の鋼板11の鉄(Fe)とアルミニウム(Al)を含む金属との反応によって形成される。金属間化合物層141は、FeAl(x、yは1以上の数を表す)で表される化合物を含む。アルミ系めっき層14がSi(シリコン)を含む場合は、金属間化合物層141はFeAlおよびFeAlSi(x、y、zは1以上の数を表す)で表される化合物を含む。
アルミ系めっき層14が加熱される場合、金属間化合物層141が形成される。金属間化合物層141は、主にFeAl(x、yは1以上の数を表す)で表される化合物を含む。アルミ系めっき層14がSi(シリコン)を含む場合は、金属間化合物層141はFeAlおよびFeAlSi(x、y、zは1以上の数を表す)で表される化合物を含み、高温加熱及び/又は長時間加熱により、Fe濃度の高い化合物へと変化する。また、加熱の度合いによって、アルミ系めっき層14に対する金属間化合物層141の割合が変化し、十分に加熱された場合は、アルミ系めっき層14の全てが金属間化合物層141となる。
(アルミ系めっき層の厚さ)
アルミ系めっき層の表層142の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、平均厚みで8μm以上であることがよく、15μm以上であることが好ましい。また、アルミ系めっき層の表層142の厚みは、例えば、平均厚みで50μm以下であることがよく、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。なお、アルミ系めっき層の表層142の厚みは、第一の鋼板11の片面全体における平均厚みを表す。
アルミ系めっき層の金属間化合物層141の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば平均厚みで1μm以上であることがよく、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。また、アルミ系めっき層の金属間化合物層141の厚みは、例えば平均厚みで10μm以下であることがよく、8μm以下であることが好ましい。なお、アルミ系めっき層の金属間化合物層141の厚みは、第一の鋼板11における平均厚みを表す。アルミ系めっき層の金属間化合物層141の厚みは、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴の温度と浸漬時間によって制御し得る。
(溶接金属13の平均Al濃度の測定方法)
溶接金属13の平均Al濃度の測定方法は以下の通りである。まず、溶接金属13の延在方向に垂直に、溶接部を切断し、樹脂に埋め込む。埋め込んだ試料の研磨を行い、電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)により、溶接金属13をマッピング分析し、アルミニウム濃度を測定する。測定条件は、加速電圧15kV、ビーム径100nm程度、照射時間1000msとする。溶接金属13の延在方向に垂直な断面において、鋼板11の板厚の半分の線を延長した線上において、溶接金属の幅の中央の点を含む300μm×300μmの範囲の全域を5μmピッチで格子状に測定する。溶接金属13のアルミニウム濃度の測定値を平均化することにより、平均アルミニウム濃度を求める。
(第一の鋼板11の板厚h1及び第二の鋼板の板厚h2の測定方法)
第一の鋼板11の板厚h1及び第二の鋼板の板厚h2の測定方法は以下の通りである。まず、溶接金属13の延在方向に垂直に、溶接部を切断し、樹脂に埋め込む。埋め込んだ試料の研磨を行い、光学顕微鏡で、溶接金属13の近傍における鋼板の板厚を測定する。
(第一の鋼板11及び第二の鋼板12の化学成分の測定方法)
第一の鋼板11及び第二の鋼板12の化学成分は、JIS G 0321:2017「鋼材の製品分析方法及びその許容変動値」に準拠して評価する。本明細書において、第一の鋼板11および第二の鋼板12の化学成分は、めっき層を除去した後に測定する。めっき層の除去の方法は特に限定されない。
(段差の測定方法)
第一の鋼板のA面と第二の鋼板のA面との段差LDa、及び第一の鋼板のB面と第二の鋼板のB面との段差LDbの測定方法は以下の通りである。まず、溶接金属13の延在方向に垂直に、溶接部を切断し、樹脂に埋め込む。埋め込んだ試料の研磨を行い、光学顕微鏡で、溶接金属13及びその近傍を観察する。図1に示されるように、第二の鋼板のA面S2Aに沿った直線と、第一の鋼板のA面S1Aとの第一の鋼板の板厚方向に沿った間隔を測定することにより、LDaを特定する。同様に、第二の鋼板のB面S2Bに沿った直線と、第一の鋼板11のB面S1Bとの第一の鋼板の板厚方向に沿った間隔を測定することにより、LDbを特定する。なお、第一の鋼板11及び第二の鋼板12が屈曲している場合は、溶接金属13と鋼板表面との交点において鋼板表面に接する直線を、鋼板の表面とみなして、上述の測定を行えばよい。
(アルミ系めっき層14の厚さの測定方法)
アルミ系めっき層14の厚さの測定方法は以下の通りである。まず、溶接金属13の延在方向に垂直に、溶接部を切断し、樹脂に埋め込む。埋め込んだ試料の研磨を行い、電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)により、第一の鋼板11の表面から内部に向けて線分析を行う。線分析における分析対象元素は、Fe及びAlとする。測定条件は、加速電圧15kV、ビーム径100nm程度、照射時間1000msとする。測定ピッチは、格子状に5μmピッチとする。
これにより得られた線分析結果に基づいて、表層142と金属間化合物層141との界面、及び金属間化合物層141と素地鋼板との界面を特定する。具体的には、アルミニウム濃度が0.06質量%以下である領域を素地鋼板とみなし、アルミニウム濃度が0.06質量%超である領域を金属間化合物層141または表層142と判断する。
実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例に過ぎない。本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
表1に記載の第一の鋼板と、表2に記載の第二の鋼板とをレーザ溶接して、テーラードブランクを作製した。レーザ溶接条件は、レーザ出力3.0~5.0kW、溶接速度4.0m/min~7.0m/minの範囲内で、貫通溶接するように調整した。溶接幅は、第一の鋼板の板厚に応じて、以下のように変化させた。
板厚1.4mmの場合:溶接幅1.6mm
板厚2.0mmの場合:溶接幅2.0mm
板厚0.8mmの場合:溶接幅1.2mm
表1及び表2に記載の「引張強さ」は、ホットスタンプ後の鋼板の引張強さである。測定方法は、上述の第一の鋼板11及び第二の鋼板12の引張強さの測定方法に従った。
表1及び表2に記載の「炭素濃度」は、鋼板の平均炭素濃度である。測定方法は、上述の第一の鋼板11及び第二の鋼板12の化学成分の測定方法に従った。
表1及び表2に記載の「板厚」は、鋼板の板厚である。板厚は、ホットスタンプの前後でほぼ同一の値であった。測定方法は、上述の第一の鋼板11の板厚h1及び第二の鋼板の板厚h2の測定方法に従った。
表1及び表2に記載の「めっき種」は、鋼板の表面に配されているめっきの種類である。表1及び表2に記載の記号それぞれの意味は、以下の通りである。
・「Al」:アルミ系めっき層
・「GA」:亜鉛系めっき層(合金化溶融亜鉛めっき層)
・「非めっき」:めっき層なし
表1及び表2に記載の「状態」は、鋼板の表面に配されているめっきの状態である。表1及び表2の記載事項それぞれの意味は、以下の通りである。
・「全残し」:除去なし(めっき厚み30μm)。「全残し」とされた面には、レーザ溶接後に、溶接金属に接するアルミ系めっき層が設けられることとなる。
・「一部残し」:溶接予定部の全体にわたり、めっきの表層を除去。除去されためっきの厚さは10μm(残されためっき厚み20μm)。「一部残し」とされた面には、レーザ溶接後に、溶接金属に接するアルミ系めっき層が設けられることとなる。
・「先端残し」:溶接予定部における鋼板の先端部において、めっきを一切除去せず(めっき厚み30μm、めっき残存領域の幅0.2mm)。その他の溶接予定部において、めっき層を完全に除去して、素地露出部とした。「先端残し」とされた面には、レーザ溶接後に、溶接金属に接する素地露出部が設けられることとなる。
・「全除去」:溶接予定部の全ての領域において、めっき層を完全に除去して、素地露出部とした。「全除去」とされた面には、レーザ溶接後に、溶接金属に接する素地露出部が設けられることとなる。
Figure 0007518463000001
Figure 0007518463000002
上述の手順によって得られたテーラードブランクが、(式1)~(式3)、(式9)を満たしているかを判定して、表3に記載した。また後述する引張試験および塗装後耐食性試験を行って、その結果を表4に記載した。
表3に記載の「Al濃度」は、溶接金属の平均Al濃度である。測定方法は、上述の溶接金属13の平均Al濃度の測定方法に従った。
表3に記載の「LDa」は、第一の鋼板のA面S1Aと第二の鋼板のA面S2Aとの段差である。測定方法は、上述の段差の測定方法に従った。
表3に記載の「LDb」は、第一の鋼板のB面S1Bと第二の鋼板のB面S2Bとの段差である。測定方法は、上述の段差の測定方法に従った。
得られたテーラードブランクが(式1)~(式3)を満たしているか否かの判定をして、表3に記載した。式が満たされる場合は「満たす」と記載し、式が満たされない場合は「満たさない」と記載した。
また、得られたテーラードブランクをホットスタンプし、プレス成形品を作製した。ホットスタンプは、得られたテーラードブランクを、920℃に加熱した炉で4分間保持し、その後、水冷した金型で、加熱したテーラードブランクを成形して、焼入れを行い、平板のプレス成形品を作製した。得られたプレス成形品が、(式5)~(式7)を満たしているか否かの判定をして、表3に記載した。また後述する引張試験および塗装後耐食性試験を行って、その結果を表4に記載した。
(引張試験)
得られたプレス成形品から、引張強度試験用の試験片として、溶接部を持つダンベル形状の試験片を採取した。試験片は、平行部距離20mm、平行部の幅15mmとし、平行部の中央部に、長手方向に対して直交方向になるように幅方向全長にわたって、溶接線を有するように採取した。
引張試験は、クロスヘッド変位速度10mm/minの条件で、試験片が破断するまで実施した。N=10で測定し、1つでも溶接金属で破断した水準をNGとした。
(塗装後耐食性試験)
得られたプレス成形品を化成処理した後、電着塗装を行い、塗装プレス成形品を作製した。化成処理は日本パーカライジング(株)製化成処理液PB-SX35Tで施した。その後、電着塗料として、日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を使用し、電着膜厚約15μmを目標としてプレス成形品に電着塗装を施した。電着塗装を施したプレス成形品を水洗した後で、170℃で20分間加熱して焼き付け、塗装プレス成形品を作製した。
得られた塗装プレス成形品から、塗装後耐食性試験用の試験片として、溶接部を持つ矩形状の試験片を採取した。試験板は、長さ65mm、幅100mmとし、幅中央部に、長さ方向全長にわたって、溶接線を有するように採取した。
塗装後耐食性試験は、自動車部品外観腐食試験JASO M610-92を用い、360サイクル(120日)経過後の腐食状況で塗装後耐食性を評価した。N=10で測定し、1つでも溶接金属で腐食が確認された水準をNGとした。
Figure 0007518463000003
Figure 0007518463000004
No.3では、S1A面およびS1B面の双方に露出部があり、溶接金属のAl濃度が全体的に低く、溶接金属の耐食性不良が多発した。
No.4~9では、S1B面に、溶接金属と接触するAlめっきが残存していた。即ち、これらの例のS1B面には、溶接金属と接触する素地露出部が設けられていなかった。これにより、応力集中する溶接金属止端部にAlが濃化したので、溶接金属での破断が発生した。
No.26、27は、(式3)および(式7)を満たしておらず、Al濃化している溶接金属のS1A側の止端部に応力が集中し、溶接金属での破断が発生した。
No.28は、(式2)および(式6)を満たしておらず、Al濃化している溶接金属のS2B側の止端部に応力が集中し、溶接金属での破断が発生した。
一方、本発明の要件を満たす例は、溶接金属で破断せず、第一の鋼板の母材で破断し、溶接金属の強度に優れた。また、これらの例では、溶接金属の耐食性も安定していた。
本実施形態に係るテーラードブランクは、溶接金属の強度及び耐食性の両方を確保することができるので、産業上の利用可能性が高い。
1 テーラードブランク
11 第一の鋼板
12 第二の鋼板
13 溶接金属
131 止端部
14 アルミ系めっき層
141 金属間化合物層
142 表層
15 素地露出部
16 亜鉛系めっき層
h1 第一の鋼板の板厚
h2 第二の鋼板の板厚
SA テーラードブランクのA面
SB テーラードブランクのB面
S1A 第一の鋼板のA面
S2A 第二の鋼板のA面
LDa 第一の鋼板のA面と第二の鋼板のA面との段差
S1B 第一の鋼板のB面
S2B 第二の鋼板のB面
LDb 第一の鋼板のB面と第二の鋼板のB面との段差

Claims (18)

  1. 第一の鋼板と、
    前記第一の鋼板と突合せ溶接された第二の鋼板と、
    前記第一の鋼板の端部及び前記第二の鋼板の端部を接続する溶接金属と
    を備えるテーラードブランクであって、
    前記溶接金属の平均Al濃度は、0.05~1.00質量%であり、
    前記第一の鋼板の板厚h1及び炭素濃度C1、並びに前記第二の鋼板の板厚h2及び炭素濃度C2は、下記式1及び式2を満たし、
    h2/h1≧1.1・・・(式1)
    h1×C1≦h2×C2・・・(式2)
    前記テーラードブランクのA面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のA面S1A及び前記第二の鋼板のA面S2Aとし、且つ、前記テーラードブランクのB面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のB面S1B及び前記第二の鋼板のB面S2Bとしたとき、
    前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板の前記A面S2Aとの段差LDa、及び前記第一の鋼板の前記B面S1Bと前記第二の鋼板の前記B面S2Bとの段差LDbは、下記式3を満たし、
    LDb≧1.1×LDa・・・(式3)
    前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記A面S1Aにアルミ系めっき層を有し、
    前記第一の鋼板の前記A面S1Aに配された前記アルミ系めっき層は、前記溶接金属と接触しており、
    前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bに素地露出部を有し、
    前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部は、前記溶接金属と接触しているテーラードブランク。
  2. 前記第二の鋼板は、アルミ系めっき鋼板、亜鉛系めっき鋼板、又は非めっき鋼板であることを特徴とする請求項1に記載のテーラードブランク。
  3. 前記第一の鋼板の板厚h1、及び前記第二の鋼板の板厚h2は、下記式4を満たす
    h2/h1≧1.5・・・(式4)
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテーラードブランク。
  4. 前記第一の鋼板は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bにアルミ系めっき層を有し、
    前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部は、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記アルミ系めっき層と、前記溶接金属との間に配置されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテーラードブランク。
  5. 前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板の前記A面S2Aとが略同一面上にある
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテーラードブランク。
  6. 前記炭素濃度C1が前記炭素濃度C2と異なる、請求項1又は2に記載のテーラードブランク。
  7. 第一の鋼材と、
    前記第一の鋼材と突合せ溶接された第二の鋼材と、
    前記第一の鋼材の端部及び前記第二の鋼材の端部を接続する溶接金属と
    を備えるプレス成形品であって、
    前記溶接金属の平均Al濃度は、0.05~1.00質量%であり、
    前記第一の鋼材の厚さH1及び引張強さT1、並びに前記第二の鋼材の厚さH2及び引張強さT2は、下記式5及び式6を満たし、
    H2/H1≧1.1・・・(式5)
    H1×T1≦H2×T2・・・(式6)
    前記プレス成形品のA面の側の、前記第一の鋼材及び前記第二の鋼材の表面を、それぞれ前記第一の鋼材のA面S3A及び前記第二の鋼材のA面S4Aとし、且つ、前記プレス成形品のB面の側の、前記第一の鋼材及び前記第二の鋼材の表面を、それぞれ前記第一の鋼材のB面S3B及び前記第二の鋼材のB面S4Bとしたとき、
    前記第一の鋼材の前記A面S3Aと前記第二の鋼材の前記A面S4Aとの段差LD2a、及び前記第一の鋼材の前記B面S3Bと前記第二の鋼材の前記B面S4Bとの段差LD2bは、下記式7を満たし、
    LD2b≧1.1×LD2a・・・(式7)
    前記第一の鋼材は、前記第一の鋼材の前記A面S3Aにアルミ系めっき層を有し、
    前記第一の鋼材の前記A面S3Aに配された前記アルミ系めっき層は、前記溶接金属と接触しており、
    前記第一の鋼材は、前記第一の鋼材の前記B面S3Bに素地露出部を有し、
    前記第一の鋼材の前記B面S3Bの前記素地露出部は、前記溶接金属と接触しているプレス成形品。
  8. 前記第二の鋼材は、アルミ系めっき鋼材、亜鉛系めっき鋼材、又は非めっき鋼材であることを特徴とする請求項7に記載のプレス成形品。
  9. 前記第一の鋼材の板厚H1、及び前記第二の鋼材の板厚H2は、下記式8を満たす
    H2/H1≧1.5・・・(式8)
    ことを特徴とする請求項7又は8に記載のプレス成形品。
  10. 前記第一の鋼材は、前記第一の鋼材の前記B面S3Bにアルミ系めっき層を有し、
    前記第一の鋼材の前記B面S3Bの前記素地露出部は、前記第一の鋼材の前記B面S3Bの前記アルミ系めっき層と、前記溶接金属との間に配置されている
    ことを特徴とする請求項7又は8に記載のプレス成形品。
  11. 前記第一の鋼材の前記A面S3Aと前記第二の鋼材の前記A面S4Aとが略同一面上にある
    ことを特徴とする請求項7又は8に記載のプレス成形品。
  12. 第一の鋼板と、第二の鋼板とを突合せ溶接して、前記第一の鋼板の端部及び前記第二の鋼板の端部を接続する溶接金属を形成する工程を備えるテーラードブランクの製造方法であって、
    前記溶接金属の平均Al濃度を、0.05~1.00質量%とし、
    前記第一の鋼板の板厚h1及び炭素濃度C1、並びに前記第二の鋼板の板厚h2及び炭素濃度C2を、下記式1及び式2を満たすようにし、
    h2/h1≧1.1・・・(式1)
    h1×C1≦h2×C2・・・(式2)
    前記テーラードブランクのA面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のA面S1A及び前記第二の鋼板のA面S2Aとし、且つ、前記テーラードブランクのB面の側の、前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板の表面を、それぞれ前記第一の鋼板のB面S1B及び前記第二の鋼板のB面S2Bとしたとき、
    前記第一の鋼板の前記A面S1Aと前記第二の鋼板の前記A面S2Aとの段差LDa、及び前記第一の鋼板の前記B面S1Bと前記第二の鋼板の前記B面S2Bとの段差LDbを、下記式3を満たすようにし、
    LDb≧1.1×LDa・・・(式3)
    前記第一の鋼板の前記A面S1Aにアルミ系めっき層を配し、
    前記第一の鋼板の前記A面S1Aに配された前記アルミ系めっき層を、前記溶接金属と接触させ、
    前記第一の鋼板の前記B面S1Bに素地露出部を設け、
    前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部を、前記溶接金属と接触させる
    テーラードブランクの製造方法。
  13. 前記第一の鋼板の前記B面S1Bに前記アルミ系めっき層を配し、
    前記テーラードブランクの製造方法が、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの溶接予定部、及びその近傍の前記アルミ系めっき層を除去して、前記素地露出部を形成する工程をさらに備え、
    前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記素地露出部を、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの前記アルミ系めっき層と、前記溶接金属との間に配する
    ことを特徴とする請求項12に記載のテーラードブランクの製造方法。
  14. 前記溶接予定部の全域において前記アルミ系めっき層を除去することを特徴とする請求項13に記載のテーラードブランクの製造方法。
  15. 前記溶接予定部において、前記第一の鋼板の前記B面S1Bの先端部に、前記アルミ系めっき層を残存させることを特徴とする請求項13に記載のテーラードブランクの製造方法。
  16. 前記テーラードブランクの製造方法が、前記第一の鋼板の前記A面S1Aの前記溶接予定部、及びその近傍の前記アルミ系めっき層の表層を除去して、且つ前記アルミ系めっき層の金属間化合物層を残存させる工程をさらに備える
    ことを特徴とする請求項14又は15に記載のテーラードブランクの製造方法。
  17. 前記炭素濃度C1が前記炭素濃度C2と異なる、請求項12又は13に記載のテーラードブランクの製造方法。
  18. 請求項1又は2に記載のテーラードブランクをホットスタンプする工程を備えるプレス成形品の製造方法。
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