JP7514527B2 - 環状運動器具及びこれを用いた運動方法 - Google Patents

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Description

本発明は、人間の運動に用いられる環状運動器具及びこれを用いた運動方法に関する。
近年、バランスボール、フォームローラ、トレーニングチューブ、エクササイズバンドなどの様々な運動器具が市場に流通している。いずれの運動器具にも、複数の使い方が用意されており、使い方を変えることによって、身体の様々な部分を鍛えることができる。例えば、特許文献1~4には、身体に巻き付けて体幹を鍛えるためのゴムバンド及びこれを用いた運動方法が開示されている。
特開2015-16195号公報 特開2012-101107号公報 特開2012-101106号公報 特開2003-135498号公報
本発明者は、運動習慣の普及に努めており、地域の健康体操サークルやスポーツクラブなどで、軽い筋肉トレーニング、ストレッチ、ピラティスをベースにした独自の運動プログラムを提供している。運動習慣は、柔軟な身体を保ち、ストレス解消や気分転換にもなり、日々の健康維持に大きく貢献する。特に、高齢者の場合は、毎日の運動習慣が認知症のリスクを低下させ、要介護状態となることの予防になる。
さらに、2019年11月末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、日本国内では、在宅勤務を主体とするテレワークが推奨されている。テレワークの合間に簡単な運動をすることは、自宅に籠って働く人の心身の健康維持に貢献する。
ここで、一般的には、運動器具を用いた運動と、身体だけで行う運動とがあるが、本発明者は、何らかの運動器具を用いた運動の方が習慣になりやすいと考える。その理由として、運動器具は、運動をする者に対して、身体や神経に心地よい刺激を与え、身体を動かしていることを実感させる。また、運動器具は、様々な使い方をすることによって、運動のバリエーションを豊富にする。
<負荷の問題>
従来のトレーニングチューブ及びエクササイズバンドは、本格的な筋肉トレーニングに用いられる運動器具であり、伸縮するときの負荷が大きい。これに対し、健康維持を望む一般公衆には、子供、女性、高齢者、リハビリ患者などの低体力者が多く含まれる。このような低体力者にとって、従来のトレーニングチューブ及びエクササイズバンドは、負荷が大きすぎ、日々の簡単な運動で健康を維持するという目的に不向きである。
<取り扱いの問題>
従来のバランスボールやフォームローラは、不安定で転がりやすく、取り扱いに注意が必要である。特に、高齢者が一人でバランスボールやフォームローラを用いて運動するのは危険であり、万が一の転倒を防止するために、補助者の付き添いが必須である。特に、バランスボールは、比較的大きな運動器具であり、自宅で保管するためのスペースを占有し、自宅から他の場所へ持ち運ぶときに嵩張る。
<費用の問題>
地域の健康体操サークルやスポーツクラブなどで運動のレッスンを受ける場合は、参加者が運動器具を自費で用意しなければならず、運動器具の費用負担は、レッスンへの参加を躊躇させる要因になる。つまり、高価な運動器具を用いる運動は、一般公衆に広く普及させ難い。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、適度な負荷を生じさせることが可能であり、誰でも一人で安全に使用することができるとともに、安価に提供することができ、毎日の運動習慣に好適な環状運動器具及びこれを用いた運動方法を提供することを目的とする。
(1)上記目的を達成するために、本発明の環状運動器具は、人間の運動に用いられる一又は複数の環状運動器具であって、一の前記環状運動器具は、長さ100cm~150cm、太さ2mm以上10mm未満の環状のゴム紐からなり、前記ゴム紐は、合成ゴム又は天然ゴムからなる紐状の芯材を、伸縮性を有する繊維編物によって被覆した構成であり、一又は複数の前記環状運動器具を身体の少なくとも2箇所に掛けて、前記環状運動器具にテンションを生じさせながら運動を行うために用いられる、ことを特徴とする。
(2)好ましくは、上記(1)の環状運動器具において、前記ゴム紐の断面形状が、長径約5mm、短径約3mmの略楕円形である。
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)の環状運動器具において、前記ゴム紐の長さが、前記環状運動器具を使用する人間の身長に応じて決定され、長さ110cmの前記ゴム紐を環状にしたSサイズ、長さ120cmの前記ゴム紐を環状にしたMサイズ、及び長さ130cmの前記ゴム紐を環状にしたLサイズのうちの少なくとも1つである。
(4)好ましくは、上記(1)~(3)のいずれかの環状運動器具において、前記繊維編物が、染料によって染色される。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの環状運動器具において、複数の前記環状運動器具を構成する環状の前記ゴム紐どうしが鎖状に繋がれる。
(6)上記目的を達成するために、本発明の運動方法は、上記(1)~(5)のいずれかの環状運動器具を用いた運動方法であって、一又は複数の前記環状運動器具を身体の少なくとも2箇所に掛けて、前記環状運動器具にテンションを生じさせながら運動を行うことを特徴とする。
(7)好ましくは、上記(6)の運動方法において、一又は複数の前記環状運動器具を掛ける身体の部位が、左手指、右手指、左手甲、右手甲、左掌、右掌、左手首、右手首、左前腕、右前腕、左肘、右肘、左前肘部、右前肘部、左上腕、右上腕、左肩、右肩、左足指、右足指、左足甲、右足甲、左足裏、右足裏、左足首、右足首、左下腿、右下腿、左膝、右膝、左後膝部、右後膝部、左太腿、右太腿のうちの少なくとも2箇所である。
(8)好ましくは、上記(6)又は(7)の運動方法において、身体の少なくとも2箇所に掛けた前記環状運動器具の途中の部分を、身体の前側、後側、左側部、右側部の少なくとも1つに接触させて運動を行う。
(9)好ましくは、上記(6)~(8)のいずれかの運動方法において、身体の少なくとも2箇所に掛けた前記環状運動器具の途中の部分を、左腕、右腕、左脚、右脚、胴体のうちの少なくとも1つに巻き付けて運動を行う。
本発明の環状運動器具は、適度な負荷を生じさせることが可能であり、誰でも一人で安全に使用することができるとともに、安価に提供することができる。このような環状運動器具を用いた運動方法は、毎日の運動習慣に好適である。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る環状運動器具を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線断面図である。図1(c)は、3つのサイズの環状運動器具を構成するゴム紐を示す平面図である。 図2は、本発明の第2実施形態に係る環状運動器具を示す平面図である。 図3(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「デッドバック」の手順を示す概略図である。 図4(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ブリッジ」の手順を示す概略図である。 図5は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「キャットバック」の手順を示す概略図である。 図6(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「キャットバック」の手順を示す概略図である。 図7は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「チェストリフト・ローテーションバランス」の手順を示す概略図である。 図8(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「チェストリフト・ローテーションバランス」の手順を示す概略図である。 図9(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「スパインツイストスーパイン」の手順を示す概略図である。 図10(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「スパインツイスト(スタンディング・シ―テッド)」の手順を示す概略図である。 図11(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「スパインツイスト(スタンディング・シ―テッド)」の手順を示す概略図である。 図12(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「スパインツイスト(スタンディング・シ―テッド)」の手順を示す概略図である。 図13は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダブルレッグサークル」の手順を示す概略図である。 図14(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダブルレッグサークル」の手順を示す概略図である。 図15は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグレイズ」の手順を示す概略図である。 図16(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグレイズ」の手順を示す概略図である。 図17(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグレイズ」の手順を示す概略図である。 図18(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「クアドロペッド」の手順を示す概略図である。 図19(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「クアドロペッド」の手順を示す概略図である。 図20(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「サイドキックシリーズ」の手順を示す概略図である。 図21(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「サイドベンド」の手順を示す概略図である。 図22(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「サイドベンド」の手順を示す概略図である。 図23は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグ・ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。 図24(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグ・ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。 図25は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。 図26(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。 図27(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。 図28(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダート」の手順を示す概略図である。 図29(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「マーメイド」の手順を示す概略図である。 図30(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「マーメイド」の手順を示す概略図である。 図31(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「マーメイド」の手順を示す概略図である。 図32は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図33(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図34(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図35は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図36(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図37は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図38(a)~(e)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。 図39は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位バランスワーク」の手順を示す概略図である。 図40(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位バランスワーク」の手順を示す概略図である。 図41は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「前屈ストレッチ」の手順を示す概略図である。 図42(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「前屈ストレッチ」の手順を示す概略図である。 図43は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「開脚ストレッチ」の手順を示す概略図である。 図44(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「開脚ストレッチ」の手順を示す概略図である。 図45(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダイナミックツイスト」の手順を示す概略図である。 図46(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダイナミックツイスト」の手順を示す概略図である。 図47(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダイナミックツイスト」の手順を示す概略図である。 図48(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「クロスストレッチ」の手順を示す概略図である。
以下、本発明の環状運動器具及びこれを用いた運動方法の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
1.環状運動器具
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る環状運動器具1Aを示す。環状運動器具1Aは、図1(c)に示すような1本のゴム紐10からなり、ゴム紐10の両端を接着させて環状にしている。ゴム紐10の長さは100cm~150cmの範囲が好ましく、ゴム紐10の太さは2mm以上10mm未満の範囲が好ましい。
図1(b)に示すように、環状運動器具1Aを構成するゴム紐10は、合成ゴム又は天然ゴムからなる紐状の2本の芯材11、11を、伸縮性を有する繊維編物12によって被覆した構成となっている。繊維編物12の繊維素材は、伸縮性を有するものであれば、特に限定されるものではない。繊維編物12の繊維素材として、例えば、ウーリーナイロン糸を用いるとよい。ウーリーナイロンは、羊毛(ウール)のような風合いをもち、伸縮性、軽量性に優れ、肌に触れたときの感触が良好である。図示しないが、繊維編物12は、染料によって美しい色に染色することが好ましい。美しい色に染色された環状運動器具1Aは、使用者を視覚的に楽しませることができ、これを用いた運動がより楽しいものになる。
ここで、ゴム紐10を構成する芯材は、断面円形の1本の芯材であってもよいが、本実施形態では、断面正方形の2本の芯材11、11を採用している。1本の芯材11の断面の寸法は、縦2mm×横2mmである。2本の芯材11、11を繊維編物12によって被覆したゴム紐10の断面形状は、長径が約5mm、短径が約3mmの楕円形状となる。
環状運動器具1Aを構成するゴム紐10を、断面正方形の2本の芯材11、11としたことにより、芯材11、11の端面における接着面積が広くなり、接着力を向上させることができる。また、2本の芯材11、11のそれぞれの端面を接着することにより、1本の芯材11の接着が外れた場合でも、他の1本の芯材11の接着が維持され、環状運動器具1Aの不意の切断を防止することが可能である。さらに、断面正方形の2本の芯材11、11は、長手方向に互いに面接触するので、繊維編物12の被覆の中で並んだ状態が維持される。
図1(c)に示すように、環状運動器具1Aは、使用者の身長に応じた複数のサイズを用意することが好ましい。例えば、長さ110cmのゴム紐10を環状にしたSサイズ、長さ120cmのゴム紐10を環状にしたMサイズ、及び長さ130cmのゴム紐10を環状にしたLサイズを用意する。Sサイズは、身長140~157cmの使用者に適している。Mサイズは、身長155~170cmの使用者に適している。Lサイズは、身長170~185cmの使用者に適している。
図2は、本発明の第2実施形態に係る環状運動器具1A、1Bを示す。2つの環状運動器具1A、1Bは、互いのゴム紐10どうしが鎖状に繋がれた構成になっている。環状運動器具1Bは、上述した環状運動器具1Aと同一の構成であるが、繊維編物12の色を環状運動器具1Aと異なる色にすると、意匠性が向上する。なお、説明の便宜上、環状運動器具1Aを実線で示し、環状運動器具1Bを点線で示し、両者を区別する。
ここで、鎖状に繋ぐ環状運動器具1A、1Bは、2つに限定されるものではない。例えば、3つ以上の環状運動器具1A、1B、1C・・・を連鎖して繋いでもよい。また、1つの環状運動器具1Aに、2つ以上の環状運動器具1B、1C・・・を繋いでもよい。
以下に説明する環状運動器具1A、1Bを用いた運動方法において、図1に示す環状運動器具1Aを「シングル」、図2に示す環状運動器具1A、1Bを「ダブル」と呼ぶことにより、両者を区別する。
2.環状運動器具を用いた運動方法
次に、図1及び図2に示す環状運動器具1A、1Bを用いた運動方法について、図3~図48を参照しつつ説明する。
2.1 総論
本実施形態の環状運動器具1A、1Bは、使用者の身体の少なくとも2箇所に掛けて、環状運動器具1A、1Bにテンションを生じさせながら運動を行うために用いられる。環状運動器具1A、1Bを掛ける身体の部位は、例えば、左手指、右手指、左手甲、右手甲、左掌、右掌、左手首、右手首、左前腕、右前腕、左肘、右肘、左前肘部、右前肘部、左上腕、右上腕、左肩、右肩、左足指、右足指、左足甲、右足甲、左足裏、右足裏、左足首、右足首、左下腿、右下腿、左膝、右膝、左後膝部、右後膝部、左太腿、右太腿のうちの少なくとも2箇所である。
また、身体の少なくとも2箇所に掛けた環状運動器具1A、1Bの途中の部分を、身体の前側、後側、左側部、右側部の少なくとも1つに接触させて運動を行う方法がある。さらに、身体の少なくとも2箇所に掛けた環状運動器具1A、1Bの途中の部分を、左腕、右腕、左脚、右脚、胴体のうちの少なくとも1つに巻き付けて運動を行う方法もある。
このように、本実施形態の環状運動器具1A、1Bは、使用者の身体に掛けてテンションを生じさせつつ、環状運動器具1A、1Bの途中部分を身体に接触させたり、巻き付けたりすることにより、身体や神経に心地よい刺激を与えながら運動を行うものである。以下、本発明者が発明した環状運動器具1A、1Bを用いた21種の運動方法について、詳細に説明する。
2.2 デッドバッグ
図3(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「デッドバック」の手順を示す概略図である。「デッドバッグ」は、股関節の屈曲によって、体幹が安定し、腹部から脚を動かすように歩行動作が向上する、という効果がある。「デッドバッグ」によって、大腰筋、骨盤底筋群、横隔膜、多裂筋、大腿四頭筋、腹部の脊柱安定筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋など)を鍛えることができる。
「デッドバッグ」に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。ダブル1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。以下の説明では、シングルの環状運動器具1Aを用いることとする。
図3(a)に示すように、まず、環状運動器具1Aの環の中に、親指以外の4本指を入れる。次に、図3(b)に示すように、マットの上に膝を立てて仰向けになり、股関節の付け根(鼠蹊部)に環状運動器具1Aが当たるようにする。掌をマットの上に置き、指先は、足先の方向に伸ばす。以上を「デッドバッグ」のニュートラルポジションとする。
次に、図3(c)に示すように、右脚をテーブルトップポジションに上げる。テーブルトップポジションとは、仰向けの状態で腰から太腿にかけて股関節で90度に曲げ、太腿から脹脛にかけて膝で90度に曲げることをいう。その後、右脚を元の位置に下ろす。以上を左脚についても同様に行う。
脚を上げるときに、股関節で環状運動器具1Aを挟むようにする。また、指先を足先の方向に伸ばし、掌で環状運動器具1Aを押すようにする。股関節のところで環状運動器具1Aが隙間を作るように脚を動かす。脚を腹部で動かすように意識する。脚を上げ下げする動きに呼吸を合わせる。吸い込む空気が、背中を流れるようにイメージする。脚を上げ下げするときに、骨盤をニュートラルポジションに保つ。右脚と左脚の上げ下げを1セットとし、4~5回反復する。
2.3 ブリッジ
図4(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ブリッジ」の手順を示す概略図である。「ブリッジ」は、ハムストリングスと腹横筋との協調、コアコントロール(コアと呼ばれる筋肉群を安定させること)、及び脊柱のアーティキュレーション(脊柱の分節的運動)に役立つ、という効果がある。「ブリッジ」によって、骨盤底筋群、腹横筋、多裂筋、内転筋群、ハムストリングスなどを鍛えることができる。
「ブリッジ」に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。ダブル1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。以下の説明では、シングルの環状運動器具1Aを用いることとする。
図4(a)に示すように、まず、環状運動器具1Aの環の中に、親指以外の4本指を入れる。次に、上述した図3(b)と同様に、マットの上に膝を立てて仰向けになり、股関節の付け根(鼠蹊部)に環状運動器具1Aが当たるようにする。掌をマットの上に置き、指先は、足先の方向に伸ばす。以上を「ブリッジ」のニュートラルポジションとする。
次に、図4(b)に示すように、尾骨から仙骨へと捲るように骨盤を持ち上げて、肩の広い部分で脇から下の部分を支える。その後、胸の後側から椎骨を1つずつマットの上に置いていくように、ニュートラルポジションまで骨盤を下ろす。このとき、指先を足先の方向に伸ばし、耳と肩との距離を一定に保つようにする。骨盤に加えられる環状運動器具1Aのテンションを最後まで残しながら骨盤を下ろすようにする。骨盤を上げ下げする最中に、左右の骨盤の高さが均等になるように、環状運動器具1Aのテンションを感じながらコントロールする。骨盤の上げ下げを1セットとし、4~5回反復する。
図4(c)は、「ブリッジ」の別の運動方法を示す。ニュートラルポジションから骨盤を上げたところで動きを止め、右の上前腸骨棘(ASIS)を高くするように骨盤を左回旋させる。このとき、両膝、顔及び目線は、天井に向ける。その後、身体の左側、脇から下の部分を上から順に下ろす。次に、左の上前腸骨棘を高くするように骨盤を右回旋させた後、身体の右側、脇から下の部分を上から順に下ろす。以上のような左右の運動を1セットとし、2回反復する。
2.4 キャットバック
図5及び図6(a)~(c)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「キャットバック」の手順を示す概略図である。「キャットバック」は、上肢の支持、コア及び体幹のコントロール、脊柱を滑らかに動かすコントロールに役立つ、という効果がある。「キャットバック」によって、腹部の脊柱安定筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)及び肩甲骨周辺を鍛えることができる。
「キャットバック」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図5に示すように、環状運動器具1A、1Bを背中側から肋骨に巻き付け、身体の前でクロスさせる。環状運動器具1A、1Bのそれぞれの環の中に、親指以外の4本指を入れ、左右の小指側でテンションを保つ。なお、環状運動器具1A、1Bは、左右の親指に掛けてもよい。
次に、図6(a)に示すように、マットの上で四つん這いになる。このとき、肩の下に手が位置し、股関節の下に膝が位置するようにする。環状運動器具1A、1Bは、背中の鳩尾の裏側に当たるようにする。次に、図6(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bが当たっている鳩尾の裏側が最も高くなるように、背骨を丸くする。背骨を丸くしたときに、肩甲骨を外側に開かせるように外転させる。その後、図6(c)に示すように、環状運動器具1A、1Bが当たっている鳩尾の裏側が最も低くなるように、背骨を反らせる。背骨を反らせたときに、肩甲骨を内側に寄せるように内転させる。背骨を丸くするとき、反らせるときに、肘はできるだけ伸ばしたままの状態を保つ。背骨を丸くしてから反らせるまでを1セットとし、5~6回反復する。
2.5 チェストリフト・ローテーションバランス
図7及び図8(a)~(d)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「チェストリフト・ローテーションバランス」の手順を示す概略図である。「チェストリフト・ローテーションバランス」は、環状運動器具1A(又は1A、1B)の負荷を利用して、体幹の軸の安定とコントロール、及び腹斜筋の強化に役立つ、という効果がある。「チェストリフト・ローテーションバランス」によって、脊柱の屈筋と回旋筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)、股関節の伸筋(大殿筋、ハムストリングス)、足関節、足の足底筋、腓腹筋、ヒラメ筋などを鍛えることができる。
「チェストリフト・ローテーションバランス」に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。ダブル1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。以下の説明では、シングルの環状運動器具1Aを用いることとする。
図7に示すように、マットの上に仰向けになり、環状運動器具1Aを右足の親指と左腕の前肘部とに掛ける。右脚をテーブルトップポジションにして、左脚の膝を立てる。両手を頭の後に添える。以上を「チェストリフト・ローテーションバランス」のスタートポジションとする。
次に、図8(a)に示すように、息を吐きながら、左肘を右膝に近づけるようにして身体を屈曲させる。身体の屈曲は、環状運動器具1Aが弛まない範囲で行う。その後、図8(b)に示すように、息を吸いながら、身体の屈曲を元に戻すとともに、右脚を伸長させる。このとき、身体の屈曲を元に戻す時間をなるべく長くする。身体の屈曲から右脚の伸長までを1セットとし、3~4回反復する。
図8(c)、(d)は、「チェストリフト・ローテーションバランス」の別の運動方法を示す。上述した図8(a)、(b)に示す運動方法は、左脚の膝を立てて行う。これに対し、図8(c)、(d)に示す運動方法は、左脚を伸ばして、床から浮かせた状態を維持しつつ、図8(a)、(b)と同様の身体の屈曲と右脚の伸長とを行う。このとき、身体が左右にぶれないように、左脚をしっかりと伸ばす。身体の屈曲から右脚の伸長までを1セットとし、3~4回反復する。
以上説明した「チェストリフト・ローテーションバランス」は、左足の親指と右腕の前肘部に環状運動器具1Aを掛け替えて、身体の反対側についても、図7、図8に示す運動方法を同様に行う。
2.6 スパインツイストスーパイン
図9(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「スパインツイストスーパイン」の手順を示す概略図である。「スパインツイストスーパイン」は、コアのアライメントを保ちながら、骨盤及び下背部の回旋ができるようになる、という効果がある。「スパインツイストスーパイン」によって、脊柱の屈筋と回旋筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)及び内転筋群などを鍛えることができる。
図9(a)に示すように、「スパインツイストスーパイン」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。1つの環状運動器具1Aは、二重の環にして、その中に両脚を入れて両膝の上で止める。もう1つの環状運動器具1Bは、1つの環に両手の親指を掛けて、両掌を外側に向ける。この状態で、環状運動器具1Bを十分に伸張させる。なお、もう1つの環状運動器具1Bは、1つの環の中に、両手の親指以外の4本指を入れて伸張させてもよい。
マットの上に仰向けになり、両脚をテーブルトップポジションにする。両腕は、両手に掛けた環状運動器具1Bが鼻先又は口元の位置となる高さに維持する。図9(b)に示すように、センターに位置する両脚を右に倒した後、再びセンターに戻す。次に、センターに位置する両脚を左に倒した後、再びセンターに戻す。これらの動作を繰り返し行う。これらの動作中、両手に掛けた環状運動器具1Bが弛まないようにするため、適度な力で左右に伸張させる。これにより、体幹を安定させることができる。
両脚を倒す動作を行った後、両脚をセンターに戻す。二重の環状運動器具1Aで束ねた両脚が1つになったイメージで両脚を動かす。両脚を倒した方向に身体が持っていかれないようにするため、両脚は、腹斜筋を使って動かすようにする。以上のような左右の運動を1セットとし、2~3回反復する。
2.7 スパインツイスト(スタンディング・シーテッド)
図10~図12は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「スパインツイスト(スタンディング・シーテッド)」の手順を示す概略図である。「スパインツイスト」は、バランスを維持するための下肢を強化し、呼吸と動作のコントロールができるようになる、という効果がある。「スパインツイスト」によって、大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリングス、外・内腹斜筋、腹横筋、脊柱起立筋、多裂筋、内転筋、上腕二頭筋、三角筋などを鍛えることができる。
「スパインツイスト」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図10(a)、(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bを背中側から肋骨に巻き付け、身体の前でクロスさせる。環状運動器具1A、1Bのそれぞれの環の中に、親指以外の4本指を入れ、左右の小指側でテンションを保つ。なお、環状運動器具1A、1Bは、左右の親指に掛けてもよい。
図11(a)に示すように、一方の脚は、膝を曲げて前に出す。他方の脚は、膝を曲げて後に出し、曲げた膝をマットの上につく。本実施形態では、左脚を前に出し、右脚を後に出すこととする。上半身を正面に向けて、目線は、前方を見る。
次に、図11(b)に示すように、息を吸いながら、上半身を右回旋させ、これと同時に、両腕を背中から伸ばすようにする。環状運動器具1A、1Bを通じて、脊柱から両腕を動かす感覚を感じ取ることができる。両腕を伸ばすときに、環状運動器具1A、1Bを押し広げるようにして息を吸う。環状運動器具1A、1Bは、一定量を伸ばすようにし、左旋回の最中に、環状運動器具1A、1Bを一定の長さに維持する。その後、図11(a)に示すように、息を吐きながら、上半身を正面に戻す。以上の動作を1セットとし、2~3回反復する。
図11(c)は、「スパインツイスト」の追加動作を示す。図11(b)に示すように、息を吸いながら、上半身を左回旋させた後、図11(c)に示すように、息を吐きながら、さらに上半身を後方に屈曲させる。上半身を屈曲させるときは、目線は、後方に伸ばした左手の指先を見るようにする。左腕だけを後方に引くのではなく、脊柱から両腕を動かす。次に、屈曲させた上半身を、息を吸いながら、図11(b)に示す状態に戻し、息を吐きながら、図11(b)に示す正面に戻す。
図12(a)~(c)は、「スパインツイスト」の別の運動方法を示す。上述した図11(a)~(c)に示す運動方法は、右脚の膝をマットの上について行う。これに対し、図12(a)~(c)に示す運動方法は、右脚の膝をマットから浮かせて行う。膝を浮かせることにより、筋肉の伸びる部分が変化する。また、右脚の膝をマットから浮かせてバランスを保つことにより、バランス機能を向上させることができる。
以上説明した「スパインツイスト」は、右脚を前、左脚を後にして、身体の反対側についても、図11、図12に示す運動方法を同様に行う。
2.8 ダブルレッグサークル
図13、図14は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダブルレッグサークル」の手順を示す概略図である。「ダブルレッグサークル」は、環状運動器具の伸縮性を利用しつつ、体幹を使って、脚を浮かせた状態に保ち、脚の動きをコントロールすることにより、腹部を強化することができる、という効果がある。「ダブルレッグサークル」によって、多裂筋、腹横筋、腹斜筋、大腿四頭筋、大腰筋、内転筋群などを鍛えることができる。
図13に示すように、「ダブルレッグサークル」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。環状運動器具1A、1Bのそれぞれの環の端を、左足の親指と右足の親指とに掛ける。環状運動器具1A、1Bの繋がった部分を両手で持ち、両腕をマットの上に置く。肩の周りは、力を抜いて楽にする。両脚は、天井に向けて上げ、両足のつま先を伸ばす。
図14(a)、(b)に示すように、大きな半円を描くように両脚を回す。両脚を回すとき、臍を肩甲骨の間に引き込むようにして腹部を安定させる。また、両脚を回すとき、環状運動器具1A、1Bを一定の長さに維持する。次に、図14(c)に示すように、両脚を閉じた後、内転筋を意識しながら、両脚を天井に向けて上げる。両脚を閉じる動作は、単に内腿を閉じるのではなく、股関節の中の大腿骨頭を寄せるようにする。以上の動作を1セットとし、4~5回反復する。体力に余裕がある場合は、自転車をこぐように両脚を回してもよい。
2.9 シングルレッグレイズ
図15~図17は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグレイズ」の手順を示す概略図である。「シングルレッグレイズ」は、環状運動器具の伸縮性を利用しつつ、体幹を使って脚の動きをコントロールすることで、腹部を強化することができ、また、運動の最中に、関節内における骨の三次元的な動きを意識することができる、という効果がある。「シングルレッグレイズ」によって、多裂筋、腹横筋、腹斜筋、大腿四頭筋、大腰筋、ハムストリングス、内転筋などを鍛えることができる。
図15に示すように、「シングルレッグレイズ」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を、左右いずれかの足の親指に掛けて、環状運動器具1A、1Bを足、足首、脹脛に外巻きに3回巻き付ける。環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を、巻き付けた脚と反対側の手で持つ。本実施形態では、右脚に環状運動器具1A、1Bを巻き付け、左手で環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を持つこととする。
図16(a)に示すように、マットの上に仰向けになり、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた右脚は、天井に向けて上げ、足のつま先を伸ばす。左脚は、マットの上で膝を立てた状態にする。次に、図16(b)に示すように、股関節の中を大腿骨頭でかき混ぜるように、右脚を内旋及び外旋させる。右脚を内旋及び外旋させている最中に、環状運動器具1A、1Bの巻き付きが強まったり、弱まったりすることを感じ取る。また、股関節と大腿骨頭との骨の動き方を意識する。以上の動作を1セットとし、4~5回反復する。
図17(a)、(b)は、「シングルレッグレイズ」の別の運動方法を示す。上述した図16(a)、(b)に示す運動方法は、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた右脚を内旋及び外旋させた。これに対し、図17(a)、(b)に示す運動方法は、天井に向けて上げた右脚を、息を吸いながら下ろす。右脚は、45度の角度を目安に下ろすが、体力に余裕がある場合は、30度くらいまで下ろしてもよい。次に、息を吐きながら、右脚を天井に向けて上げる。右脚を上げ下げする最中に、股関節と大腿骨頭との骨の動き方を意識する。以上の動作を1セットとし、4~5回反復する。
以上説明した「シングルレッグレイズ」は、左脚に環状運動器具1A、1Bを巻き付け、右手に環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を持ち替えて、図16、図17に示す運動方法を同様に行う。
2.10 クアドロペッド
図18、図19は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「クアドロペッド」の手順を示す概略図である。「クアドロペッド」は、上肢による支持と、コア及び体幹のコントロールとに役立つ、という効果がある。「クアドロペッド」によって、股関節の伸筋(大殿筋、ハムストリングス)、及び肩甲骨の外転筋(前鋸筋、小胸筋など)を鍛えることができる。
「クアドロペッド」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図18(a)に示すように、環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を、左右いずれかの足の親指に掛けて、環状運動器具1A、1Bを足、足首、脹脛に外巻きに3回巻き付ける。次に、図18(b)に示すように、脚に巻き付けた環状運動器具1A、1Bの残りの部分を、股の間を通して背中側に巻き回す。そして、環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を、巻き付けた脚と反対側の手の親指に掛ける。この状態で、マットの上で四つん這いになる。本実施形態では、右脚に環状運動器具1A、1Bを巻き付け、左手の親指に環状運動器具1A、1Bの端を掛けることとする。図18(b)に示す四つん這いの姿勢を、「クアドロペッド」のニュートラルポジションとする。
まず、図18(b)に示す四つん這いの姿勢から、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた右脚を後方へ水平に伸ばす(図示せず)。右脚を伸ばすときに、骨盤は、ニュートラルポジションを維持する。次に、伸ばした右脚を元の位置に戻し、図18(b)に示す四つん這いの姿勢になる。以上の動作を2~3回反復する。
次に、図19(a)に示すように、四つん這いの姿勢から、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた右脚を後方へ水平に伸ばすと同時に、環状運動器具1A、1Bを親指に掛けた左腕を前方へ水平に伸ばす。このとき、臍を肩甲骨の間に引き上げるようにする。次に、水平に伸ばした右脚及び左腕を元の位置に戻し、図18(b)に示す四つん這いの姿勢になる。以上の動作を3~4回反復する。
図19(b)は、「クアドロペッド」の別の運動方法を示す。上述した図19(a)に示すように、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた右脚を後方へ水平に伸ばすと同時に、環状運動器具1A、1Bを親指に掛けた左腕を前方へ水平に伸ばす。次に、図19(b)に示すように、水平に伸ばした右脚を横方向に外転させると同時に、水平に伸ばした左腕を横方向に外転させる。横方向への外転は、右脚及び左腕の水平を保ちながら行う。次に、図19(a)に示すように、水平を保ちながら、右脚を伸ばしたまま後方に戻すと同時に、左腕を伸ばしたまま前方に戻す。その後、水平に伸ばした右脚及び左腕を元の位置に戻し、図18(b)に示す四つん這いの姿勢になる。以上の動作を2~3回反復する。
以上説明した「クアドロペッド」は、環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、左脚及び右腕についても、図18、図19に示す運動方法を同様に行う。
2.11 サイドキックシリーズ
図20(a)、(b)は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「サイドキックシリーズ」の手順を示す概略図である。「サイドキックシリーズ」は、歩行動作のパターンを強化しつつ動きを向上させる、という効果がある。「サイドキックシリーズ」によって、前鋸筋、腰方形筋、多裂筋、脊柱起立筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、外腹斜筋、下腿三頭筋、臀筋などを鍛えることができる。
「サイドキックシリーズ」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図20(a)に示すように、環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を、左右いずれかの足の親指に掛けて、環状運動器具1A、1Bを足、足首、脹脛に外巻きに3回巻き付ける。次に、脚に巻き付けた環状運動器具1A、1Bの残りの部分を、身体の前側へ伸ばし、環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を、巻き付けた脚と反対側の手の親指に掛ける。本実施形態では、左脚に環状運動器具1A、1Bを巻き付け、右手の親指に環状運動器具1A、1Bの端を掛けることとする。この状態で、マットの上で身体を横向きに寝かせ、右脚の側面をマットに付ける。横向きに起こした上半身を右肘で支える。右足をマットの角に向けて、身体の斜め前に置き、右足の小指の側面でマットを押さえる。右肘でマットを押さえ、脇が落ちないようにする。右足を頭頂部から引き離すようにして、身体の伸張を保つようにする。図20(a)に示す姿勢を、「サイドキックシリーズ」のスタートポジションとする。
次に、図20(b)に示すように、スタートポジションから、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた左脚を、息を吸いながら前方に動かす。このとき、左足の踵を押すようにして前へ出し、足首を立てるようにする。その後、図20(a)に示すように、環状運動器具1A、1Bを巻き付けた左脚を、息を吐きながら後方に動かす。このとき、左足のつま先を伸ばす。左脚を前後に動かすときは、骨盤の幅を維持し、左脚の高さを一定に保つようにする。以上のような左脚の前後動作を4~5回反復する。
以上説明した「サイドキックシリーズ」は、環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、右脚についても、図20(a)、(b)に示す運動方法を同様に行う。
ここで、左脚及び右脚の「サイドキックシリーズ」毎に環状運動器具1A、1Bを掛け替えるよりも、例えば、左脚の「サイドキックシリーズ」に、左脚の「クアドロペッド」、左脚の「シングルレッグレイズ」を組み合わせて行うことで、流れを止めずにスムーズに運動することができる。
2.12 サイドベンド
図21、図22は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「サイドベンド」の手順を示す概略図である。「サイドベンド」は、環状運動器具1A、1Bの負荷を利用して、身体の片側で上半身を支持し、腹斜筋をメインに腹筋群を強化することができる、という効果がある。「サイドベンド」によって、前鋸筋、上腕三頭筋、多裂筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腰方形筋、ハムストリングスなどを鍛えることができる。
図21(a)に示すように、「サイドベンド」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を、左右いずれかの足の親指に掛けて、環状運動器具1A、1Bを足、足首、脹脛に外巻きに3回巻き付ける。次に、環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を、巻き付けた脚と同じ側の手の親指に掛ける。本実施形態では、右脚に環状運動器具1A、1Bを巻き付け、右手の親指に環状運動器具1A、1Bの端を掛けることとする。
図21(b)に示すように、マットの上で身体の左側が下になるように左腕と左足で身体を斜めに支える。左掌をマットに付き、左足の小指側をマットに付ける。身体を支える左腕は、過伸展にならないように肘にあそびを持たせる。右足は、左足の前方に置き、足裏をマットにしっかり付ける。図21(b)に示す姿勢を、「サイドベンド」のスタートポジションとする。
次に、図22(a)に示すように、スタートポジションから、環状運動器具1A、1Bを親指に掛けた右腕を、息を吸いながら耳の横でしっかり伸ばす。このとき、左腕の上に左肩が乗るようなイメージで、身体全体で大きな三角形を描くようにする。目線は、左手に向ける。その後、図22(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bを親指に掛けた右腕を真っ直ぐに伸ばしたままで、息を吸いながら右腿の側に下ろす。このとき、右腕は、大きな虹を描くイメージで動かす。目線は、右手に向け、右腕の動きに合わせる。以上のような右腕の動作を4~5回反復する。
以上説明した「サイドベンド」は、環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、左腕についても、図21、図22に示す運動方法を同様に行う。
2.13 シングルレッグ・ヒップエクステンション
図23、図24は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「シングルレッグ・ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。「シングルレッグ・ヒップエクステンション」は、ヒップラインを美しくし、ハムストリングスと腹部とを繋げる効果がある。「シングルレッグ・ヒップエクステンション」によって、ハムストリングス、大殿筋、内側広筋斜走筋繊維、深層の腹部、広背筋、多裂筋などを鍛えることができる。
「シングルレッグ・ヒップエクステンション」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを1つ又は2つ使用する。ダブルの環状運動器具1A、1Bを1つ使用する場合は、図23に示すように、環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を、左右いずれかの足の親指に掛け、この足と同じ側の肩に、環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を掛ける。ダブルの環状運動器具1A、1Bを2つ使用する場合は、左右の足の親指と左右の肩のそれぞれに環状運動器具1A、1Bの環の端を掛ける。本実施形態では、ダブルの環状運動器具1A、1Bを1つ使用し、右足の親指と右肩に環状運動器具1A、1Bの端を掛けることとする。
次に、図24(a)に示すように、マットの上で身体をうつ伏せに寝かせ、両手の甲を重ね合わせて、その上に額を乗せる。このとき、臍を肩甲骨に繋げるように引き込む。次に、図24(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bを親指に掛けた右脚を、長く伸ばしながらマットから引き上げる。このとき、左脚の腿でマットを押すようにする。
その後、図24(a)に示すように、右脚を、長く伸ばしたままマット上に下ろす。ダブルの環状運動器具1A、1Bを1つ使用する場合は、環状運動器具1A、1Bを掛けている右側の感覚の違いを感じながら、右脚を上げ下げする。以上のような右脚の動作を4~5回反復する。
ダブルの環状運動器具1A、1Bを1つ使用する場合は、環状運動器具1A、1Bを左足の親指と左肩に掛け直して、図24(a)、(b)と同様に左脚の動作を4~5回反復する。一方、ダブルの環状運動器具1A、1Bを2つ使用する場合は、右脚の動作を4~5回反復した後に連続して、図24(a)、(b)と同様に左脚の動作を4~5回反復する。
図24(c)は、「シングルレッグ・ヒップエクステンション」の別の運動方法を示す。上述した図24(a)、(b)に示す運動方法は、環状運動器具1A、1Bを親指に掛けた右脚を上げ下げした。これに対し、図24(c)に示す運動方法は、両脚を同時に上げ下げする。図24(a)、(b)と同様に、両脚を、長く伸ばしながらマットから引き上げた後、長く伸ばしたままマット上に下ろす。両脚をマットから引き上げるときに、内腿が天井を向くようにする。以上のような両脚の動作を2~3回反復する。
2.14 ヒップエクステンション
図25~図27は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ヒップエクステンション」の手順を示す概略図である。「ヒップエクステンション」は、ヒップラインを美しくし、ハムストリングスと腹部を繋げる効果がある。「ヒップエクステンション」によって、ハムストリングス、大殿筋、内側広筋斜走筋繊維、深層の腹部、広背筋、多裂筋などを鍛えることができる。
「ヒップエクステンション」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図25に示すように、環状運動器具1A、1Bのそれぞれの環を二重(つまり、環は四重になる)にして、この環の中に両脚を入れる。環状運動器具1A、1Bを両足首の上あたりに位置させる。
図26(a)に示すように、マットの上で身体をうつ伏せに寝かせ、両手の甲を重ね合わせて、その上に額を乗せる。このとき、耳と肩の間にスペースを開ける。環状運動器具1A、1Bのテンションが生じる幅で両脚を開く。次に、図26(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bのテンションを保ちながら、右脚と左脚を交互に上げ下げする。脚を上げるときに、腰骨がマットから浮かないようにする。以上のような両脚の動作を3~4回反復する。
図27(a)、(b)は、「ヒップエクステンション」の別の運動方法を示す。上述した図26(a)、(b)に示す運動方法は、環状運動器具1A、1Bのテンションが生じる幅で両脚を開き、右脚と左脚を交互に上げ下げする。これに対し、図27(a)、(b)に示す運動方法は、上げた脚を外側に開き、元の両脚の幅となるように脚を下ろす。上げた脚の高さを維持しながら、外側に開き、内側に戻す。その後、上げた脚を元の位置に下ろす。脚を上げ下げするときは膝を伸ばす。右脚と左脚を交互に行う。以上のような両脚の動作を3~4回反復する。
2.15 ダート
図28は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダート」の手順を示す概略図である。「ダート」は、脊柱の伸筋と上腕三頭筋を強化し、腹筋を使用しながら下背部をサポートする機能を向上させる、という効果がある。「ダート」によって、腹部の深層筋、多裂筋、脊柱起立筋郡、ハムストリングス、臀筋、内転筋郡、外転筋群を鍛えることができる。
「ダート」に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。ダブル1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。以下の説明では、ダブルの環状運動器具1A、1Bを用いることとする。
図28(a)に示すように、二重の環にしたダブルの環状運動器具1A、1Bを、マットの上に置く。次に、図28(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bが腹部の下となるように、マットの上に身体をうつ伏せに寝かせる。そして、脇を閉じて、環状運動器具1A、1Bの二重の環の両端に、左右の手をそれぞれ入れる。このとき、親指以外の4本指を、環状運動器具1A、1Bの二重の環の中に入れ、掌を上に向ける。
次に、図28(c)に示すように、息を吸いながら、上半身をマットから引き上げ、手の甲をマットから浮かせ、左右の手を足先の方向に伸ばす。このとき、左右の手に掛けた環状運動器具1A、1Bを足先の方向に伸張させるようにする。その後、図28(d)に示すように、上半身を起こしたまま、両手を上下に動かす。このとき、呼吸をコントロールする。例えば、息を5回に分けて吸って吐く。5回に分けて息を吸った後、5回に分けて息を吐く。5回毎に両手の動きを止めると、上腕三頭筋をしっかりと鍛えられる。両手を上下に動かすときは、二の腕(三頭筋)を意識して行う。以上のような上半身と両手の動作を3~5回反復する。
2.16 マーメイド
図29~図31は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「マーメイド」の手順を示す概略図である。「マーメイド」は、環状運動器具1A、1Bの負荷や巻き付きを利用した螺旋状の動きによって、肩甲帯と腕の動きの繋がりと、呼吸のコントロールとを修得することができる、という効果がある。「マーメイド」によって、横隔膜、多裂筋、腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋、骨盤底筋、上腕二頭筋、三頭筋、三角筋などを鍛えることができる。
図29(a)に示すように、「マーメイド」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を右手の親指に掛け、右腕に内巻きに2回巻き付ける。環状運動器具1A、1Bの他方の環を、脇の下から背中へ通し、他方の環の端を左手の親指に掛ける。左右の腕を横方向に開き、Zシットポジション又は胡坐でマットの上に座る。Zシットポジションの場合は、右脚を身体の前で曲げ、左脚を身体の横で曲げる。胡坐の場合は、右脚が外側、左脚が内側になるようにする。以上を「マーメイド」のスタートポジションとする。
次に、図29(b)に示すように、環状運動器具1A、1Bのテンションを感じながら、左右の腕を横方向に伸ばす。左右の腕は、指先が視界に入る程度に伸ばす。その後、右腕を外旋させると、環状運動器具1A、1Bの巻き付きが強くなる。環状運動器具1A、1Bの負荷を感じながら、右掌が上を向くように右腕を捻る。その後、図29(a)に示すスタートポジションの姿勢に戻る。
次に、図30(a)に示すように、息を吸いながら、脊柱を右に回旋させる。その後、図30(b)に示すように、息を吸いながら、さらに脊柱を右に回旋させ、右掌が上を向くように右腕を捻る。以上の動作を3~4回反復する。
次に、図31(a)に示すように、息を吸った後、息を吐きながら、右腕を上げて上半身を左に側屈させる。その後、図31(b)に示すように、左の側屈からさらに右腕と胸が斜め上になるようにする。以上の動作の間は、上になっている右側の肺に空気を出入りさせるイメージで呼吸を繰り返す。
次に、図31(c)に示すように、左腕の肘にあそびを持たせ、マットの上の左手の指先を前に変える。その後、斜め前から大きく空気をかき集めるように右腕を動かし、右腕を左脇の間に向かって伸ばす。このとき、右腕は、腹部の前でボールを抱えるイメージでスペースを保つ。吸った空気を背中に入れるイメージで、背中に接触している環状運動器具1A、1Bを広げるようにする。
以上説明した「マーメイド」は、環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、左側についても、図29~図30に示す運動方法を同様に行う。
2.17 立位アームワーク
図32~図38は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位アームワーク」の手順を示す概略図である。「立位アームワーク」は、環状運動器具1A、1Bの負荷を利用して骨盤をニュートラルポジションにし、ハムストリングを中心に下腿や腰背部をストレッチする、という効果がある。「立位アームワーク」には、以下に説明する第1~第4の運動方法が含まれる。
図32、図33は、「立位アームワーク」の第1の運動方法を示す。「立位アームワーク」の第1の運動方法に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。シングルの環状運動器具1Aを使用する場合は、環を二重にする。ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1A、1Bのそれぞれの環を二重(つまり、環は四重になる)にする。本実施形態では、シングルの環状運動器具1Aを二重にして使用することとする。
図32に示すように、身体の前側で、環状運動器具1A環の中に、親指以外の4本指を入れ、左右の小指側でテンションを保つ。次に、図33(a)に示すように、両腕を身体の前に出して、両掌を上に向ける。次に、図33(b)~(d)に示すように、両腕の肘から先の部分を内側から外側に回転させる。回転させる最中に、環状運動器具1Aが弛まないようにテンションを保つ。以上の動作を2~3回反復する。
図34は、「立位アームワーク」の第2の運動方法を示す。「立位アームワーク」の第2の運動方法に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。シングルの環状運動器具1Aを使用する場合は、環を二重にする。ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1A、1Bのそれぞれの環を二重(つまり、環は四重になる)にする。本実施形態では、シングルの環状運動器具1Aを二重にして使用することとする。
図34に示すように、身体の後側で、環状運動器具1Aの環の中に、親指以外の4本指を入れ、左右の小指側でテンションを保つ。次に、図34(a)に示すように、身体の後側で、両腕を斜め下に下げ、両掌を内側に向ける。次に、図34(b)に示すように、両掌が外側を向くように両腕を外側に捻じる。その後、図34(a)に示すように、両掌が内側を向くように両腕を内側に捻じる。図34(c)に示すように、両腕を外側及び内側に捻じるときは、肩甲骨を寄せて、大胸筋の繊維部分を開かせるようにする。また、腰を反らせないようにニュートラルポジションを維持する。以上の動作を3~4回反復する。
図35、図36は、「立位アームワーク」の第3の運動方法を示す。「立位アームワーク」の第3の運動方法に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。本実施形態では、ダブルの環状運動器具1A、1Bを二重の環にして使用することとする。
図35に示すように、環状運動器具1A、1Bの二重の環の中に、親指以外の4本指を入れ、両腕を天井の方向に上げる。このとき、環状運動器具1A、1Bが弛まない範囲で両腕を開き、左右の小指側でテンションを保つ。次に、図36(a)、(b)に示すように、天井の方向に上げた両腕を後方に下げる。その後、両腕の上げ下げを繰り返し、図36(c)に示すように、両腕の後方への可動域を徐々に広げる。両腕を上げ下げする動作に慣れたところで、図36(d)に示すように、両腕を腰の高さまで下げる。両腕を上げ下げする最中に、腰を反らせないようにニュートラルポジションを維持する。以上の動作を3~4回反復する。
図37、図38は、「立位アームワーク」の第4の運動方法を示す。「立位アームワーク」の第4の運動方法に使用する環状運動器具は、シングル1A又はダブル1A、1Bのいずれでもよい。ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する場合は、環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。本実施形態では、ダブルの環状運動器具1A、1Bを二重の環にして使用することとする。
図37に示すように、環状運動器具1A、1Bの二重の環の中に、親指以外の4本指を入れ、両腕を天井の方向に上げる。このとき、環状運動器具1A、1Bが弛まない範囲で両腕を開き、左右の小指側でテンションを保つ。次に、図38(a)~(e)に示すように、上から右、下、左、上へ、上半身を全額面で大きく右回りに回転させる。上半身を回転させているときに、全身の伸び、特に、腿裏や脹脛の伸びを感じるようにする。右回りを2回反復した後、左回りを2回反復する。このような「立位アームワーク」の第4の運動方法は、第3の運動方法を3~4回反復した後に続けて行う。
2.18 立位バランスワーク
図39、図40は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「立位バランスワーク」の手順を示す概略図である。「立位バランスワーク」は、環状運動器具1A、1Bの負荷を利用して全身の伸びとバランスの協調性を高める効果がある。「立位バランスワーク」には、以下に説明する第1~第3の運動方法が含まれる。
図39は、「立位バランスワーク」のスタートポジションを示す。「立位バランスワーク」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図39に示すように、環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を、左右いずれかの足裏又は足の親指に掛ける。掛けた足と反対側の手の親指に、環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を掛ける。掛けた足と同じ側の手の親指と人差し指の間(第1指間腔)を、環状運動器具1A、1Bの途中の部分に添える。
図40(a)は、「立位バランスワーク」の第1の運動方法を示す。環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を右足裏、又は右足の親指に掛ける。環状運動器具1A、1Bの他方の環の端を、左手の親指に掛ける。環状運動器具1A、1Bの途中の部分に、右手の親指と人差し指の間を添える。環状運動器具1A、1Bを掛けていない左脚を右脚の後にクロスさせ、左腕を上げて、身体を右に側屈させる。右腕は、環状運動器具1A、1Bを左側に押すようにする。環状運動器具1A、1Bを様々な方向に張り巡らすイメージで動作し、2~3回反復する。
図40(b)は、「立位バランスワーク」の第2の運動方法を示す。この第2の運動方法は、第1の運動方法を2~3回反復した後に続けて行う。図40(a)に示す姿勢から、環状運動器具1A、1Bを掛けていない左脚で立ってバランスをとる。上半身を左側に傾け、環状運動器具1A、1Bを掛けた右脚と左腕を水平に伸ばす。環状運動器具1A、1Bの途中に添えた右腕を天井の方向に伸ばす。軸となる左脚をしっかり保ち、右脚と両腕を大きく伸ばしてバランスを保つ。環状運動器具1A、1Bを左右方向に伸ばすイメージで動作し、3~4回反復する。
図40(c)は、「立位バランスワーク」の第3の運動方法を示す。この第3の運動方法は、第2の運動方法を3~4回反復した後に続けて行う。図40(b)に示す姿勢から、両掌をしっかりと開き、環状運動器具1A、1Bを掛けていない左脚を大きく前に踏み込む。これと同時に、両腕を大きく開き、身体全体を後方に大きく反らせる。身体の全面を様々な方向に伸ばすイメージで動作し、3~4回反復する。
以上説明した「立位バランスワーク」は、左足裏(又は左足の親指)と右手の親指に環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、身体の反対側についても、図40(a)~(c)に示す運動方法を同様に行う。
2.19 前屈ストレッチ
図41、図42は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「前屈ストレッチ」の手順を示す概略図である。「前屈ストレッチ」は、環状運動器具1A、1Bの負荷を利用して骨盤をニュートラルポジションにし、ハムストリングを中心に下腿や腰背部をストレッチする効果がある。
図41に示すように、「前屈ストレッチ」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。環状運動器具1Aと環状運動器具1Bとを重ね合わせて、二重の環にする。二重の環の両端に、両手の親指以外の4本指を入れて握る。マットの上に座り、右脚を前に伸ばす。左脚を開脚させ、膝を図示するように屈曲させる。伸ばした右脚の足裏に、二重の環にした環状運動器具1A、1Bを掛ける。
図42(a)に示すように、右脚の足裏に掛けた環状運動器具1A、1Bをしっかりと引き、上半身を起こす。このとき、脇を閉めて、環状運動器具1A、1Bを引く力で骨盤を立ち上げる。次に、図42(b)に示すように、股関節から畳むイメージで上半身を前屈させる。このとき、腿裏から尻部、腰、背中まで、筋肉が伸びていることを感じるようにする。以上の動作を2~3回反復する。
図42(c)、(d)は、「前屈ストレッチ」の別の運動方法を示す。図42(c)、(d)に示すように、上半身を前屈させた状態に維持して、左右の肘を交互に後方に引く。このとき、左右の腕を振るようにして背骨を回旋させる。背骨の回旋とともに、上半身の前屈が徐々に深くなるようにする。腿裏の筋肉がさらに伸びていることを感じるようにする。以上の動作を6~8回反復する。
以上説明した「前屈ストレッチ」は、左脚の足裏に環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、身体の反対側についても、図41、図42に示す運動方法を同様に行う。
2.20 開脚ストレッチ
図43、図44は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「開脚ストレッチ」の手順を示す概略図である。「開脚ストレッチ」は、環状運動器具1A、1Bの負荷を利用して骨盤をニュートラルポジションにし、ハムストリング、内転筋、股関節の周辺の柔軟性を向上させる、という効果がある。「開脚ストレッチ」には、以下に説明する第1~第3の運動方法が含まれる。
図43は、「開脚ストレッチ」のスタートポジションを示す。「開脚ストレッチ」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。環状運動器具1A、1Bの一方の環の端を左足の親指に掛け、他方の環の端を右足の親指に掛ける。マットの上に座り、可能な限り両脚を開脚させて両脚を伸ばす。両脚の開きが狭い場合でも、環状運動器具1A、1Bが弛まないようにする。環状運動器具1A、1Bが弛んでしまう場合は、環状運動器具1A、1Bの途中を結ぶなどして環を短くする。
図44(a)は、「開脚ストレッチ」の第1の運動方法を示す。スタートポジションから上半身を左に倒し、右手の親指と人差し指の間(第1指間腔)に、環状運動器具1A、1Bの途中の部分を掛け、環状運動器具1A、1Bを左上の方向に伸ばす。このとき、右手が、左手及び右足から遠ざかるようにする。以上の動作を2~3回反復する。身体の反対側についても、図40(a)に示す運動方法を同様に行う。
図44(b)は、「開脚ストレッチ」の第2の運動方法を示す。スタートポジションから上半身を左に倒し、一方の環状運動器具1Aの環を、両手で反対方向に伸ばす。このとき、右手の親指と人差し指の間(第1指間腔)に、環状運動器具1Aの環の上の部分を掛ける。環状運動器具1Aの環の下の部分は、左掌でマットの上に押さえ付ける。以上の動作を1~2回反復する。身体の反対側についても、図40(b)に示す運動方法を同様に行う。
図44(c)、(d)は、「開脚ストレッチ」の第3の運動方法を示す。まず、図44(c)に示すように、スタートポジションから、両手の親指と人差し指の間(第1指間腔)に、環状運動器具1A、1Bの途中の部分を掛ける。次に、両腕を下ろし、環状運動器具1A、1Bを掛けた両手をマットの上に付ける。その後、図44(d)に示すように、両手で環状運動器具1A、1Bを前に伸ばすようにして、上半身を前屈させる。この前屈は、上半身を畳むイメージで行う。両手を前に伸ばすと同時に、両足をそれぞれの方向に伸ばす。
2.21 ダイナミックツイスト
図45~図47は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「ダイナミックツイスト」の手順を示す概略図である。「ダイナミックツイスト」は、環状運動器具1A、1Bの負荷を利用して螺旋状の動きをコントロールし、全身の背面部の柔軟性を向上させる効果がある。
図45(a)、(b)は、「ダイナミックツイスト」のスタートポジションを示す。「ダイナミックツイスト」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。図45(a)に示すように、一方の環状運動器具1Aの環を、両手の親指と人差し指の間(第1指間腔)に掛ける。他方の環状運動器具1Bの環を、両足の親指に掛ける。次に、図45(b)に示すように、マットの上に仰向けになり、両腕及び両脚を、マットの幅に広げて伸ばす。これにより、環状運動器具1A、1Bが、逆三角形を2つ組み合わせた砂時計のような形になる。
図46(a)~(d)は、「ダイナミックツイスト」の第1の運動方法を示す。まず、図46(a)に示すように、スタートポジションから、対角線上にある右腕と左脚を天井に向かって上げる。このとき、ハムストリングを意識しながら、右足の踵でマットをしっかり押す。次に、図46(b)に示すように、右腕と左脚を下ろし、左腕と右脚を天井に向かって上げる。右腕と左脚を下ろすときは、体幹でコントロールする。腕と脚を上げ下げする最中に、環状運動器具1A、1Bが弛まないようにする。以上の動作を1セットとし、5~6回反復する。
体力に余裕がある場合は、図46(c)、(d)に示すように、上半身を起こした状態で、対角線上にある腕と脚を上げ下げしてもよい。
図47(a)~(c)は、「ダイナミックツイスト」の第2の運動方法を示す。上述した第1の運動方法では、対角線上にある腕と脚を上げ下げしたが、第2の運動方法では、左右の同じ側の腕と脚を上げ下げする。まず、図47(a)に示すように、スタートポジションから、同じ側の右腕と右脚を天井に向かって上げる。引き続き、図47(b)に示すように、寝返りを打つようにして身体を横向きにし、右腕と右脚をさらに上げる。体力に余裕がある場合は、引き続き、図47(c)に示すように、右腕を床の上まで下ろしてもよい。右腕を床の上に下ろすときは、胸を床に近づけるようにし、右脚を大きく後方へ引く。その後、スタートポジションの姿勢に戻って、身体の左側についても、図47(a)~(c)に示す運動方法を同様に行う。スタートポジションの姿勢に戻るときは、重力に任せて身体を仰向けにするのではなく、身体の動きをコントロールする。以上の動作を1~2回反復する。
2.22 クロスストレッチ
図48は、環状運動器具を用いた運動方法の実施形態である「クロスストレッチ」の手順を示す概略図である。「クロスストレッチ」は、環状運動器具1A、1Bの伸びを利用して身体全体を伸ばし、身体全体を伸ばしながら捻ることで、腕や肩周りの柔軟性を向上させ、腰回りを軽くする効果がある。
図48(a)に示すように、「クロスストレッチ」には、ダブルの環状運動器具1A、1Bを使用する。マットの上に仰向けになり、一方の環状運動器具1Aの一方の環を、左手の親指に掛ける。他方の環状運動器具1Bの環を、左足の親指に掛ける。そして、環状運動器具1A、1Bが水平になるように、左腕と左脚をマットから上げる。
次に、図48(b)に示すように、身体を大きく捻るようにして、環状運動器具1Bを掛けた左脚を、床に向かって右側に倒す。このとき、環状運動器具1Aを親指に掛けた左腕を、床に向かって左側に倒す。そして、左脚と左腕を互いに反対方向に伸ばす。可能であれば、左足と左手を床に付ける。胸の中心から左脇、左腕にかけて筋肉が伸びていることを感じるようにする。環状運動器具1Aが顔に接触する場合は、左腕を伸ばす方向を見直す。右手の親指と右足の親指に環状運動器具1A、1Bを掛け替えて、身体の反対側についても、図48(a)、(b)に示す運動方法を同様に行う。
3 作用効果
上述した本実施形態の環状運動器具1A(又は1A、1B、以下同じ)は、長さ100cm~150cm、太さ2mm以上10mm未満の環状のゴム紐からなり、子供、女性、高齢者、リハビリ患者などの低体力者にとって、適度な負荷を生じさせることが可能である。このような環状運動器具1Aは、誰でも一人で安全に使用することができるとともに、安価に提供することができる。したがって、図5~図48に示す環状運動器具1Aを用いた運動方法は、いずれも毎日の運動習慣に好適であり、心身の健康維持に大きく貢献する。
1つの環状運動器具1Aを使用した低負荷の運動によって、体幹のコントロールを養うことが可能である。また、環状運動器具1Aの負荷は、使用する環状運動器具1Aの数を増やしたり、環状運動器具1Aの環を二重、三重にすることで増大させることができ、運動をする者の体力増加に応じた段階的なトレーニングが可能である。
さらに、環状運動器具1Aは、これを用いた運動の最中において、身体や四肢の位置及び方向を使用者に伝達する機能を発揮する。例えば、環状運動器具1Aを用いて運動する者は、伸ばした腕がどの位置にあるのか、関節がどの方向に動いているのか、環状運動器具1Aの状態を通じて知覚することができる。
これに加えて、ゴム紐からなる環状運動器具1Aは、コンパクトに纏めることができ、場所を取らず、持ち運びに便利である。したがって、場所を選ばず、いつでも気軽に環状運動器具1Aを用いた運動方法を実施することが可能である。これに加えて、環状運動器具1Aは、簡単に水洗いすることができ、乾きも早いので、清潔に保つことができる。
1A、1B 環状運動器具
10 ゴム紐
11 芯材
12 繊維織物

Claims (8)

  1. 人間の運動に用いられる一又は複数の環状運動器具であって、
    一の前記環状運動器具は、長さ100cm~150cm、太さ2mm以上10mm未満の環状のゴム紐からなり、前記ゴム紐は、合成ゴム又は天然ゴムからなる紐状の芯材を、伸縮性を有する繊維編物によって被覆した構成であり、
    一又は複数の前記環状運動器具を身体の少なくとも2箇所に掛けて、前記環状運動器具にテンションを生じさせながら運動を行うために用いられ
    前記ゴム紐の断面形状が、長径約5mm、短径約3mmの略楕円形である、
    ことを特徴とする環状運動器具。
  2. 前記ゴム紐の長さが、前記環状運動器具を使用する人間の身長に応じて決定され、長さ110cmの前記ゴム紐を環状にしたSサイズ、長さ120cmの前記ゴム紐を環状にしたMサイズ、及び長さ130cmの前記ゴム紐を環状にしたLサイズのうちの少なくとも1つである請求項に記載の環状運動器具。
  3. 前記繊維編物が、染料によって染色された請求項1又は2に記載の環状運動器具。
  4. 複数の前記環状運動器具を構成する環状の前記ゴム紐どうしが鎖状に繋がれた請求項1~のいずれか1項に記載の環状運動器具。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の環状運動器具を用いた運動方法であって、一又は複数の前記環状運動器具を身体の少なくとも2箇所に掛けて、前記環状運動器具にテンションを生じさせながら運動を行うことを特徴とする運動方法。
  6. 一又は複数の前記環状運動器具を掛ける身体の部位が、左手指、右手指、左手甲、右手甲、左掌、右掌、左手首、右手首、左前腕、右前腕、左肘、右肘、左前肘部、右前肘部、左上腕、右上腕、左肩、右肩、左足指、右足指、左足甲、右足甲、左足裏、右足裏、左足首、右足首、左下腿、右下腿、左膝、右膝、左後膝部、右後膝部、左太腿、右太腿のうちの少なくとも2箇所である請求項に記載の運動方法。
  7. 身体の少なくとも2箇所に掛けた前記環状運動器具の途中の部分を、身体の前側、後側、左側部、右側部の少なくとも1つに接触させて運動を行う請求項又はに記載の運動方法。
  8. 身体の少なくとも2箇所に掛けた前記環状運動器具の途中の部分を、左腕、右腕、左脚、右脚、胴体のうちの少なくとも1つに巻き付けて運動を行う請求項のいずれか1項に記載の運動方法。
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