JP7514131B2 - 光制御デバイスおよびその駆動方法 - Google Patents

光制御デバイスおよびその駆動方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7514131B2
JP7514131B2 JP2020121600A JP2020121600A JP7514131B2 JP 7514131 B2 JP7514131 B2 JP 7514131B2 JP 2020121600 A JP2020121600 A JP 2020121600A JP 2020121600 A JP2020121600 A JP 2020121600A JP 7514131 B2 JP7514131 B2 JP 7514131B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
voltage
optical
phase control
phase
value
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020121600A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022018479A (ja
Inventor
芳邦 平野
雅人 三浦
靖 本山
裕司 宮本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Broadcasting Corp
Original Assignee
Japan Broadcasting Corp
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Broadcasting Corp filed Critical Japan Broadcasting Corp
Priority to JP2020121600A priority Critical patent/JP7514131B2/ja
Publication of JP2022018479A publication Critical patent/JP2022018479A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7514131B2 publication Critical patent/JP7514131B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、光制御デバイスおよびその駆動方法に関する。
空間光通信や奥行センサ、レーダー、LiDAR(Light Detection And Ranging)、立体ディスプレイなどへの応用に向け、光ビームパターンを制御する光制御デバイスの研究開発が進められている。このうち、光の位相制御と多光束干渉を基本原理とする光フェーズドアレイ(Optical Phased Array; 以下、OPA)は、機械的な走査なしに光ビームを掃引できるため、小型・軽量な光制御デバイスに応用できるものと期待されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。
OPAは、光を入力する部分(光入力部)と、光位相の制御部(位相制御部)と、位相が制御された光の出力部(光出力部)と、を備える光路を複数用い、出力光の回折・干渉効果によって光ビームパターンを得るデバイスである。例えば図1に示す光導波路型OPAでは、位相制御部と光出力部を備える光導波路を複数併置したマルチチャネル光導波路を適用している。位相制御部には、例えば外部電圧の印加等により屈折率が変化する材料が使用される。例えば液晶材料や電気光学材料、あるいは、熱光学材料が位相制御部の材料に利用されることが知られている(例えば特許文献2、特許文献3参照)。
このうち、電気光学(Electro Optics:EO)材料には、その屈折率nが、外部から印加される電界強度Eにより、次の式(101)にしたがって変化する性質があり、この現象はEO効果と呼ばれている。ここで、r33はEO効果の大きさを示す物性値であってEO係数と呼ばれている。また、n0は外部電圧印加のなき場合の屈折率を示す。
Figure 0007514131000001
例えばEO材料よりも屈折率が低い材料によって、線状のEO材料の周囲を取り囲めば、中心のEO材料を導波路として機能させることができる。さらにEO材料もしくはそれを取り囲む材料の上面と下面に、それぞれ電極として機能する導電性薄膜を配置した位相制御部を形成すれば、光導波路にかかる電界強度を制御することが可能となる。
また、長さがLである位相制御部に入射した波長λの光は、位相制御部において、外部電圧が印加されない場合、光の位相が、次の式(102)に示す位相φ0だけ変化する。これに対して、位相制御部に電圧を印加するための電極(位相制御電極)に外部電圧が印加される場合、光の位相が、次の式(103)に示す位相φEに変化する。ここで、Eは外部電圧によりEO材料に生じる電界を示す。r33はEO係数を示し、n0は外部電圧印加のなき場合の屈折率を示す。
Figure 0007514131000002
したがって、外部電圧の大きさによる位相変化量の違いを用いることで、位相制御部による光位相の制御が可能である。たとえば全ての位相制御部への入射光の位相が同一であるとき、隣接する位相制御部の電界がΔEだけ異なるように印加電圧を選ぶことにより、隣接する光出力部における光の位相差を、次の式(104)に示す位相差Δφとすることができる。
Figure 0007514131000003
図1の光導波路型OPAは、複数の光出力部の出力端が直線上に配置されており、複数の光出力部の出力端から、複数の光出力部が配列される方向と基板面内において直交する方向を基準として、角度θだけ傾斜した方向へ光ビームを出射する。この角度θは、所定条件のときに次の式(105)に示す角度θで表すことができる。ここで、所定条件は、光出力部が間隔Pで直線状に配置されており、隣接する光出力部間の位相差がΔφである、という条件である。
Figure 0007514131000004
米国特許第5093740号明細書 特許第2579426号公報 特許第5285120号公報
Paul F. McManamon, et al., "A Review of Phased Array Steering for Narrow-Band Electrooptical Systems", Proceedings of the IEEE, 2009, July, Vol.97,No.6,p.1078-1096pp.1078-1096(2009) 皆方誠、「LiNbO3スイッチ」、光学、社団法人日本光学会、1995年、第24巻、第6号 p.330-336 岩本光正、外3名、「有機半導体/絶縁体界面の電荷蓄積とキャリア輸送」、表面科学、社団法人日本表面科学会、2008年、Vol. 29, No. 2, p.105-113
実際に製造されたOPAでは、複数の位相制御部へ入射した光の位相が同一ではないため、位相補償と呼ばれる技術が必要となる。位相補償とは、複数の光導波路の光路長の違いが原因で同一とならなかった光位相を、それぞれの位相制御部の屈折率を変化させる制御を行うことによって同一にする技術である。位相制御部へ入射する光の位相が同一にならない原因としては、例えば設計上のマルチチャネル光導波路の光路長の違い、個々の光導波路の幅や高さの違い、あるいはパターニングの出来不出来によって生じた違いが挙げられる。このような原因によって生じる光導波路間の位相の違いは一定値である。そのため、一般的には、すべての光導波路間の位相差が0となるよう、位相制御電極にDC電圧を印加する。
一方、材料に誘電体を用いた光制御デバイスに対するDC電圧の印加には、DCドリフトと呼ばれる現象がある。この種の光制御デバイスを長期間にわたって連続的に使用する場合、印加電圧に対するデバイスの動作は不安定になる。この現象を回避するために様々な提案がなされている(例えば非特許文献2参照)。
例えば絶縁物もしくは導電性が極めて小さい有機多層膜を材料として用いた位相制御部に、位相補償のためのDC電圧を印加すると、DCドリフトが生じる。すなわち、有機多層膜にDC電圧を印加すると、多層膜界面に蓄積した電荷が不純物準位にトラップされて物性を変化させる、または、蓄積電荷の注入により不純物や構造欠陥を原因とするリーク電流が発生して電気的特性を変化させるなど、動作不良の原因となる。そのため、位相制御部に、DC電圧を印加することは、動作の安定化の観点からは好ましくない。
また、わずかながらもリーク電流の生じうる誘電体多層膜においては、単層膜にかかる電圧は、外部印加電圧の周波数によって変動するため、交流電圧、それも高周波電圧の印加が必須である。さらに、高周波電圧印加の条件下においても、誘電率および導電率が異なる材料からなる多層膜の界面には、Maxwell-Wagner効果に基づく電荷蓄積が生じる(例えば非特許文献3参照)。そのため、特に有機多層膜として作製された光フェーズドアレイにおいては、電荷蓄積の影響のない、デバイスの駆動方法が求められる。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、電荷蓄積を抑制した、光制御デバイスおよびその駆動方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る光制御デバイスは、電圧により屈折率が変化する材料を光導波路コアに含み誘電率および導電率が異なる誘電体材料からなる誘電体薄膜を含む多層膜からなる位相制御部をそれぞれ備える複数の光導波路を有する光フェーズドアレイと、前記位相制御部ごとに定められた波形の駆動電圧に、予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる所定波形の電圧を発生する波形発生器と、を備え、前記矩形波は、前記位相制御部間の位相差に基づいて予め定められた正の最大値および負の最小値を有する交流であり、前記矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、前記位相制御部の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍であり、前記矩形波のデューティー比は、前記矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている、こととした。
また、本発明に係る光制御デバイスの駆動方法は、電圧により屈折率が変化する材料を光導波路コアに含み誘電率および導電率が異なる誘電体材料からなる誘電体薄膜を含む多層膜からなる位相制御部をそれぞれ備える複数の光導波路を有する光フェーズドアレイと、所定波形の電圧を発生する波形発生器と、を備える光制御デバイスの駆動方法であって、前記波形発生器が、前記位相制御部ごとに定められた波形の駆動電圧に予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる所定波形の電圧を前記位相制御部に印加する工程を有し、前記矩形波は、前記位相制御部間の位相差に基づいて予め定められた正の最大値および負の最小値を有する交流であり、前記矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、前記位相制御部の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍であり、前記矩形波のデューティー比は、前記矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている、こととした。
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
光制御デバイスによれば、矩形波の電圧の最大値のときの光位相と、矩形波の電圧の最小値のときの光位相とが同じになるように設定されているので、矩形波の電圧を用いたとしても、DC電圧を位相補償電圧として用いたときと同様の光の位相を制御できる効果を奏する。
また、光制御デバイスによれば、誘導電流の時間積分で決まる蓄積電荷が0となるように矩形波のデューティー比が設定されているため、位相制御部に駆動時間の経過とともに蓄積する電荷量を0に保つことができる。したがって、光制御デバイスは、駆動電圧のドリフトを防止することができる。
また、光制御デバイスの駆動方法によれば、矩形波の電圧の最大値、最小値およびデューティー比を適切に設定した矩形波電圧を駆動電圧に重畳してなる所定波形の電圧を位相制御部に印加するので、光制御デバイスへの電荷蓄積を抑制し、位相補償時のドリフトを防止して光の位相を制御することができる。
本発明の実施形態に係る光制御デバイスを模式的に示す構成図である。 本発明の実施形態に係る光制御デバイスの1つの位相制御部の模式図であって、図1のA-A線断面に相当する図である。 本発明の実施形態に係る光制御デバイスにおいて位相補償に用いられる電圧の波形の一例である。 図3においてαが1である場合の電圧波形である。 本発明の実施形態に係る光制御デバイスの駆動電圧の一例を示す波形である。 図5の駆動電圧の一部を抜粋した波形である。 比較例に係る光制御デバイスにおいて、図6の駆動電圧に対してDC電圧を重畳してなる電圧波形である。 本発明の実施形態に係る光制御デバイスの位相補償に用いられる矩形波電圧の波形の一例である。 本発明の実施形態に係る光制御デバイスにおいて、図6の駆動電圧に対して図8の矩形波電圧を重畳してなる電圧の波形である。 本発明の実施形態に係る光制御デバイスにおける矩形波形の位相補償電圧の電圧基準点の他の例を示す模式図である。
[光制御デバイスの構成]
まず、光制御デバイスの構成について図面を参照して説明する。なお、各図面に示される部材のサイズや位置関係は、説明を明確にするため誇張していることがある。
図1に示すように、光制御デバイス10は、光フェーズドアレイ100と、波形発生器130と、を備えている。光フェーズドアレイ100は、マルチチャネル光導波路(複数の光導波路)110を有している。マルチチャネル光導波路110は、位相制御部111をそれぞれ備えている。位相制御部111は、外部印加電圧等で生じる電界により屈折率が変化する材料を含んでいる。波形発生器130は、所定波形の電圧を発生する。この所定波形の電圧は、位相制御部111ごとに定められた波形の駆動電圧に、予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる。この矩形波は、位相制御部111間の位相差に基づいて予め定められた正の最大値および負の最小値を有する交流である。また、図3に示すように、矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、位相制御部111の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍(α倍)である。さらに、矩形波のデューティー比は、矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている。なお、半波長電圧Vπは、電気光学位相がπ(180°)シフトするために必要な電圧である。
光フェーズドアレイ100の位相制御部111は、光導波路コアの屈折率が変わると光の位相が変わる現象を利用したものである。光導波路コアの屈折率は、前記した式(101)にしたがって、印加される電圧で概ね決まる。一方、光導波路コアの屈折率が大きくなったり小さくなったりすると、光導波路コアを通過する光の位相が遅れたり進んだりする現象がある。光の位相が遅れたり進んだりするときの光の位相差が一波長分変わったとき、変わる前の光の位相と、変わった後の光の位相とは、結局、同じ値になる。2波長分や3波長分変わったときも同様である。例えば角度30°と角度390°や角度750°は、結局、同じ値になるようなものである。したがって、光にとっては、一波長分に相当するだけの電圧差がある2つの電圧値に関して、屈折率の変化に対して位相の変化する量が、同じものになる。なお、一波長分に相当するだけの電圧差とは、半波長電圧Vπの2倍の電圧差のことである。
例えば、光導波路コアに第1の電圧を印加したときのコアの屈折率が第1屈折率であり、また、第1の電圧に対して一波長分の光の位相変化に相当するだけの電圧差を有する第2の電圧を光導波路コアに印加したときのコアの屈折率が第2の屈折率であると仮定する。この仮定の場合、コア屈折率が第1の屈折率のときに光を第1の位相状態に制御できたならば、コアの屈折率が第2の屈折率のときにも、光を第1の位相状態に制御することができる。
こうしたことから、本実施形態では、矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、位相制御部111の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍(α倍)であるものとした。
また、位相制御部111の材料が有機多層膜である場合、従来のように位相補償のためのDC電圧を印加すると、DCドリフトが生じる。このとき、多層膜の界面に蓄積される電荷の充放電に伴って流れる誘導電流の積分値は、0ではない有限の値となっている。
これに対して、本実施形態では、矩形波のデューティー比が、矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている。したがって、位相制御部111の多層膜の界面への電荷蓄積を抑制し、いわゆるDCドリフトを防止することができる。
[光フェーズドアレイの構成例]
光フェーズドアレイ100は、導波路型光フェーズドアレイであって、基板101と、光入力部102と、光スプリッタ103と、マルチチャネル光導波路110と、を備えている。
基板101は、様々な材料を用いて形成することができる。例えば、基板101の材料としては、シリコン、ソーダガラス、SiO2、石英、メチルアクリレート、LiNbO3、LiTaO3、アルミナ、GaAlAs、InP等を用いることが可能である。基板101の一方の面には、光入力部102と、光スプリッタ103と、複数の電極線150と、が形成されている。
光入力部102は、外部の光源210から光を光スプリッタ103へ入射する光導波路から形成される。光源210としては、レーザー光源や発光ダイオード(LED)等を適用することができる。光フェーズドアレイ100には、さらに必要に応じて、光源210と光入力部102との間に、ボールレンズやシリンドリカルレンズ等を備えるようにしてもよい。
光スプリッタ103は、光入力部102を導波した光を、アレイ状に配列した各光導波路に分配する光学素子である。光スプリッタ103は、入力光の強度が各光導波路に等分配されるようにする。光スプリッタ103の具体例としては、多モード干渉を利用したMMI(Multi Mode Interference)やY分岐、スターカプラなどが挙げられる。また、これらの素子を多段に組み合わせ配置したものを用いてもよい。
マルチチャネル光導波路110は、複数の光導波路を備えている。図1では、光導波路の数(チャネル数)を一例として8本とした。そして、8本の光導波路を区別するため、図1において手前側から順に、光導波路0、光導波路1、光導波路2、…、光導波路7とする。また、8個の位相制御部111における位相制御電極を識別するために、図1において手前側から順に、ch.0,ch.1,ch.2,…,ch.7とする。
光フェーズドアレイ100は、これら8本の光導波路を併置したマルチチャネル光導波路110を位相制御部111と光出力部113に適用している。ここでは、マルチチャネル光導波路110の各光導波路は、位相制御部111と、ピッチコンバータ112と、光出力部113と、を備えている。また、マルチチャネル光導波路110の光入力端部は、光スプリッタ103に接続されている。なお、光導波路は、シングルモードで光の伝搬を行うことを前提としている。
位相制御部111は、電極線150を介して送られる電圧によって光導波路を形成するコアの屈折率を変化させる。つまり、位相制御部111は、電極線150から印加される電圧によって、位相制御部111内を伝搬する光の位相が制御可能になっている。位相制御部111には、電極が設けられている点がピッチコンバータ112や光出力部113とは異なっている。この位相制御部111は、光導波路の幅方向に所定ピッチで並設されている。前記位相制御部111の電極配置においては、電圧印加により基板と垂直な方向の屈折率分布が電圧(電界)の大きさにより変化する。このため本構成例では、伝播する光として電界の振幅方向が基板101と垂直な方向であるTM(Transverse Magnetic)モードの偏光を用いる。ただし、電極をコアの側面に配置し、TE(Transverse Electric)モードの偏光を用いてもよい。
ピッチコンバータ112は、位相制御部111と光出力部113との間に設けられている。ピッチコンバータ112は、光出力部113間のピッチが、位相制御部111間のピッチよりも小さくなるように形成されたものである。ピッチコンバータ112は、曲げ光導波路を含んでいる。
光出力部113は、位相制御部111で位相が制御された光を外部空間へ放射するものである。光出力部113は、光導波路の幅方向に所定ピッチで並設されている。光出力部113のピッチは、前記した式(105)に記載されたピッチPのことである。それぞれの光出力部113から放射された光は、それぞれの光位相の関係によって決まる干渉パターンを形成する。
光導波路は、コアとクラッドから形成され、コアはクラッドに比較して屈折率が大きい。光導波路を形成するコアの材料は、外部信号の印加により屈折率が変化する材料である。印加電圧によって屈折率が変化する液晶材料や電気光学材料が利用できる。本実施形態では、位相制御部111の光導波路を形成するコアの材料は、例えば電気光学効果を発現する電気光学ポリマー(EOポリマー)であるものとする。クラッドの材料としては、例えばSiO2等の酸化物や、ポリマー材料を用いることができる。コア材料やクラッド材料は、光導波路の全体を通じて同じ材料でもよいし、各機能部に応じた異なる材料を用いるようにしてもよい。
光導波路のうち位相制御部111が配置された部分は、電界が印加される部分であり、図2に模式的に示すような光導波路の断面を有している。
位相制御部111は、誘電体薄膜を含む多層膜からなり、誘電体薄膜の一部または全部に、電圧により屈折率が変化する材料を含んでいる。図1では、クラッドの図示を省略しているが、位相制御部111は、光導波路コア51とクラッド52とを備えている。
位相制御部111の光導波路コア51は、例えばEOポリマーからなる。EOポリマーは、EO色素を含むポリマーである。
位相制御部111のクラッド52は、光導波路コア51を取り囲むように設けられており、例えば有機シリカ複合膜で形成されている。
なお、光導波路コア51としてEOポリマーを用い、かつ、クラッド52として有機シリカ複合膜を用いる場合、コアが導波路として機能するためには、有機シリカ複合膜は、その屈折率が、EOポリマーの屈折率よりも低いものを選択して用いる。
クラッド52のうち光導波路コア51の下(基板101側)に形成される複合膜部分(以下、下部クラッドという)の厚みは、例えば1~20μm程度である。光導波路コア51の厚みは、例えば0.5~4μm程度である。クラッド52のうち光導波路コア51の上に形成される複合膜部分(以下、上部クラッドという)の厚みは、例えば1~20μm程度である。
上部クラッドの表面は、導電性薄膜からなる上部電極53によって被覆されている。下部クラッドの裏面は、導電性薄膜からなる下部電極54によって被覆されている。上部電極53は位相制御電極であり、電極線150を介して波形発生器130に接続されている。下部電極54は例えば接地されている。上部電極53と下部電極54との間に電圧を印加することで、光導波路にかかる電界強度を制御することができる。
波形発生器130は、所定波形の電圧を発生するものである。波形発生器130は、例えば、任意波形発生器で構成される。波形発生器130が発生する電圧は、電極線150を介して位相制御部111に印加される。波形発生器130を複数台備えることもできる。例えば、光導波路ごとに1台ずつ合計8台の波形発生器130を用意してもよい。また、1台で複数チャネルに電圧を印加できる波形発生器130を1台以上準備することもできる。
波形発生器130は、光制御デバイス10の駆動時においては、位相制御部111ごとに定められた波形の駆動電圧に、予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる所定波形の電圧を位相制御部111に印加する。駆動電圧とは、光フェーズドアレイ100を駆動させる電圧である。本実施形態では、光フェーズドアレイ100が例えば光ビーム走査を行う目的で、位相制御部111がその機能を果たすために、位相制御部111に印加される電圧が駆動電圧である。ここで、光ビーム走査とは、光フェーズドアレイ100の8個の光出力部113からの光が干渉して成形される1本の光ビームをまっすぐに出したり、左方向や右方向に出したりするなど、ビーム出射方向を連続的に変えることをいう。このときの駆動電圧の周波数は、例えば200kHz等とすることができる。
駆動電圧に重畳される矩形波の電圧は、例えば図3に模式的に示す電圧である。矩形波の電圧は、位相補償を行う目的で、位相制御部111がその機能を果たすために、位相制御部111に印加される電圧である。矩形波の周波数は、例えば駆動電圧の周波数以上に設定されている。以下の説明では、矩形波の周波数は、駆動電圧の周波数と同じであるものとする。実際に用いる光フェーズドアレイ100は、光導波路の構造の違い等に起因して位相補償を行う必要がある光導波路や、位相補償を行う必要がない光導波路が存在する場合もある。図3には1つの矩形波を示したが、位相制御部111ごとに矩形波が用意される場合がある。駆動電圧と矩形波の電圧とは、目的がそれぞれ異なるが、同時に、両者が一体になって位相制御部111に印加される。なお、位相補償を行う必要がない光導波路に印加する電圧に対しては、矩形波の電圧は重畳されない。
複数の電極線150は、光フェーズドアレイ100の各チャネルの位相制御部111にそれぞれ電気的に接続されている。電極線150の材料としては、例えば、Al、Cu、Au、Ti、Crなどの金属を用いることができる。電極線150を透明電極としてもよく、その場合、材料としては、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウム亜鉛酸化物)やITO(Indium Tin Oxide:インジウム-スズ酸化物)などを挙げることができる。
[光フェーズドアレイの製造方法]
光フェーズドアレイ100は、一般的な半導体装置製造プロセスにより製造することができる。図2に示す多層膜は、次のように形成することができる。まず、例えばシリコンからなる基板101を準備する。そして、基板101を導電性材料で被覆して下部電極54を形成する。そして、下部電極54で被覆された基板101上へ、コアの下部側に配置されるクラッド材料(例えば有機シリカ複合材料)を塗布し、コア材料(例えばEOポリマー)を塗布する。また、エッチングにより導波路(光導波路コア51)を形成する。そして、コアの上部側に配置されるクラッド材料(例えば有機シリカ複合材料)を塗布することでクラッド52を形成する。さらに、クラッド52上を導電性材料で被覆して下部電極54に対向するように上部電極53を形成する。
[光制御デバイスの駆動方法]
次に、光制御デバイス10の駆動方法について説明する。光制御デバイスの駆動方法は、波形発生器130が、位相制御部111ごとに定められた波形の駆動電圧に予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる所定波形の電圧を位相制御部111に印加する工程を有する。この矩形波は、位相制御部111間の位相差に基づいて予め定められた正の最大値および負の最小値を有する交流である。また、矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、位相制御部111の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍である。さらに、矩形波のデューティー比は、矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている。
なお、位相制御部111の半波長電圧Vπは、光導波路ごとに予め測定される。例えば、光制御デバイス10の駆動前の準備段階においては、波形発生器130は、例えば光導波路ごとに半波長電圧Vπを測定するため、所定振幅・所定周波数の矩形波電圧を位相制御部111に印加する。半波長電圧の測定の際には、公知の手法、例えばInGaAsカメラで構成された検出器230によって、ファーフィールドパターン(Far-Field Pattern:FFP)を測定する。半波長電圧は例えば10V程度である。
また、光制御デバイスの駆動方法は、駆動前の準備工程として、最大値算出工程と、デューティー比算出工程と、重畳電圧算出工程と、を有することもできる。最大値算出工程は、光導波路間の光の位相差に対応するように光導波路ごとに矩形波の電圧の最大値および最小値を算出する工程である。なお、後記する実施例においては、光導波路間の光の位相差が既知であるものとする。ここで、光導波路間の光の位相差とは、所定の基準とする位相制御部111に対して、残りの位相制御部111の光の位相が遅れたり進んだりするときの位相差である。
最大値算出工程では、対象の位相制御部111の位相差が正値である場合、当該位相差を半波長電圧で換算した電圧値を最大値VMAX(図3参照)として算出し、当該最大値VMAXから、位相制御部111の半波長電圧Vπを2倍した電圧値に自然数αを乗じた値を差し引いた電圧値を最小値VMIN(図3参照)として算出することができる。
また、最大値算出工程では、対象の位相制御部111の位相差が負値である場合、当該位相差を半波長電圧で換算した電圧値を最小値VMIN(<0)として算出し、当該最小値に、位相制御部111の半波長電圧Vπを2倍した電圧値に自然数αを乗じた値を加えた電圧値を最大値VMAX(>0)として算出することができる。なお、具体例を後記する実施例において説明する。
デューティー比算出工程は、光導波路ごとに矩形波の電圧の最大値および最小値に基づいてデューティー比を算出する工程である。デューティー比は、矩形波の周期をT(図3参照)、矩形波の周期のうち最大値期間をD1(図3参照)、デューティー比をRとしたときに、次の式(106)の関係式で定義される。
R=D1/T … 式(106)
デューティー比算出工程は、光導波路ごとに、位相制御部111の半波長電圧をVπ、矩形波の最大値VMAXをVc(>0)、最小値VMINをVc-2αVπ(<0)、α=1,2,…、デューティー比をRとしたときに、デューティー比を次の式(1)によって算出することができる。
R=(2-Vc/(αVπ))/2 … 式(1)
ここで、Vcは、矩形波形の位相補償電圧の電圧基準点である。本実施形態では、一例として矩形波の最大値を電圧基準点としている。
重畳電圧算出工程は、光導波路ごとに駆動電圧に対して、最大値、最小値およびデューティー比で特定される矩形波の電圧を重畳して所定波形の電圧を算出する工程である。つまり、重畳電圧算出工程は、各位相制御部111への印加電圧を算出する工程である。
以下では、簡単のため、位相制御部111の半波長電圧Vπを2倍した電圧値に乗じる自然数αが1である場合(図4参照)について説明する。
したがって、デューティー比算出工程は、光導波路ごとに、位相制御部111の半波長電圧をVπ、矩形波の最大値VMAXをVc(>0)、最小値VMINをVc-2Vπ(<0)、デューティー比をRとしたときに、デューティー比を次の式(2)によって算出することができる。
R=(2-Vc/Vπ)/2 … 式(2)
[位相制御部に印加する所定波形の電圧の設計例]
光制御デバイス10において、光フェーズドアレイ100が例えば光ビーム走査を行う場合に、位相制御部111に印加する所定波形の電圧の設計例について説明する。
(位相補償がない場合)
まず、位相補償を考慮せずに、光ビーム走査の駆動をする駆動電圧について説明する。それぞれの光出力部113におけるマルチチャネル光導波路110の光位相が均一であるとき、それぞれの位相制御部111に、図5に示すSin型の波形の電圧を印加することにより、光ビーム走査が可能である。図5において、横軸は、印加電圧の1周期を基準とした時刻を表す。ここでは、ch.1,ch.2,…,ch.7は、図1において最も手前の光導波路0を除き、光導波路1~7に対応した1~7番目の位相制御電極を表す。
図5において、縦軸は、各位相制御電極の半波長電圧(Vπ)に対して乗じる倍数を表す。すなわち、たとえばch.1の位相制御電極には、図5における実線(太線)で示される曲線の値(倍数)に、光導波路1の位相制御電極の半波長電圧(Vπ1)を乗じたものと等しい電圧波形が印加される。グラフにおいて、ch.2は実線(細線)、ch.3は実線(標準)、ch.4は点線でそれぞれ示す。また、ch.5は破線、ch.6は二点鎖線、ch.7は一点鎖線でそれぞれ示す。ch.0には、常に0[V]が印加されるため、表示を省略した。各位相制御電極の半波長電圧(Vπ)は、厳密には互いに異なるが、簡単のため同じであるものとする。なお、添え字として光導波路番号を付す場合もある。
(比較例:位相補償がある場合)
次に、本実施形態の光制御デバイスの駆動方法の実施例と比較するために、位相補償電圧にDC電圧を用いて光ビーム走査を行う例(比較例)について説明する。ここでは、簡単のため、以下の前提条件があるものとして説明する。
(条件1)マルチチャネル光導波路110のうち、例えばch.0、ch.4~ch.7で特定される光導波路をそれぞれ通過する光の間の位相差は0である。言い換えると、光導波路0,4,5,6,7の光出力部113における光の位相が同一である。
(条件2)この同一の位相を基準位相としたときに、ch.1で特定される光導波路1を通過する光は、位相が基準位相から0.3πだけ遅れている。ch.2で特定される光導波路2を通過する光は、位相が基準位相から0.9πだけ遅れている。ch.3で特定される光導波路3を通過する光は、位相が基準位相から0.7πだけ進んでいる。言い換えると、ch.1~ch.3以外のチャネルを基準チャネルとする場合、ch.1と基準チャネルとの位相差は+0.3πであり、ch.2と基準チャネルとの位相差は+0.9πであり、ch.3と基準チャネルとの位相差は-0.7πである。
この前提条件の場合、基準チャネルとの間に位相差があるch.1~ch.3のみに、位相補償を行えばよい。そこで、図5に示した電圧波形の一部であるch.1~ch.3の電圧波形のみを用いて説明する。図6は、図5と同様の光ビーム走査用の駆動電圧波形の模式図であり、ch.1~ch.3の電圧波形を図5に比べて縦軸方向に拡大して示している。
(比較例:ch.1)
ビーム走査用の駆動電圧を考慮しないときに、ch.1に対して位相補償電圧として印加すべきDC電圧の値は、以下のようにして求めることができる。ch.1と基準チャネルとの位相差は“+0.3π”であるので、光の位相の半波長の係数である“+0.3”を、光導波路1の位相制御部111の半波長電圧(Vπ1)に乗じた値が、位相補償機能を果たすDC電圧値である。つまり、DC電圧値は、+0.3Vπ1である。したがって、光導波路1の位相制御電極(ch.1)に対して印加される電圧は、光ビーム走査用の駆動電圧に対してDC電圧(+0.3Vπ1)を重畳することで得られる電圧となる。
(比較例:ch.2)
同様に、ch.2と基準チャネルとの位相差は“+0.9π”であるので“+0.9”を光導波路2の位相制御部111の半波長電圧(Vπ2)に乗じた値が、位相補償機能を果たすDC電圧値である。つまり、DC電圧値は、+0.9Vπ2である。したがって、光導波路2の位相制御電極(ch.2)に対して印加される電圧は、光ビーム走査用の駆動電圧に対してDC電圧(+0.9Vπ2)を重畳することで得られる電圧となる。
(比較例:ch.3)
同様に、ch.3と基準チャネルとの位相差は“-0.7π”であるので“-0.7”を、光導波路3の位相制御部111の半波長電圧(Vπ3)に乗じた値が、位相補償機能を果たすDC電圧値である。つまり、DC電圧値は、-0.7Vπ3である。したがって、光導波路3の位相制御電極(ch.3)に対して印加される電圧は、光ビーム走査用の駆動電圧に対してDC電圧(-0.7Vπ3)を重畳することで得られる電圧となる。
この比較例に係る光導波路1,2,3の位相制御電極(ch.1,ch.2,ch.3)に対してそれぞれ印加する電圧波形を図7に示す。図7の縦軸は、半波長電圧(Vπ1,Vπ2,Vπ3)に乗じる倍数である。図7において例えば光導波路3の位相制御電極(ch.3)に着目すると、1/4周期(=0.25)の時点において、縦軸の値は2.3である。一方、図6において、光導波路3の位相制御電極(ch.3)に着目すると、1/4周期(=0.25)の時点において、縦軸の値は3.0であった。したがって、図6に示す値と図7に示す値との差“-0.7”は、重畳されたDC電圧値(-0.7Vπ3)に相当することが分かる。
このように位相補償すれば、マルチチャネル光導波路110の8個の光出力部113における光の位相はすべて同一となり、1本の光ビーム出力を得ることが可能となる。
しかしながら、位相補償のために、比較例のようにDC電圧を印加すると、DCドリフトが生じる。すなわち、DC電圧を、有機多層膜からなる位相制御部111(図2参照)に印加すると、位相制御部111を形成する多層膜の界面に電荷が蓄積する。そのため、蓄積電荷の充放電に伴って流れる誘導電流の積分値、すなわち蓄積電荷は有限の値となる。
図7において例えば光導波路3の位相制御電極(ch.3)に着目すると、ch.3の電圧波形を1周期(=0.00~1.00)にわたって積分した結果は0ではない。また、ch.1やch.2の電圧波形を1周期にわたって積分した積分値は0ではない。なお、図6に示す3つの波形を1周期にわたって積分した積分値は0である。
位相補償のために、比較例のようにDC電圧を印加し続けると、位相制御部111を形成する多層膜の界面に蓄積される電荷が徐々に大きくなってくる。すると、位相制御部111において、蓄積電荷によって生じる電界の影響が徐々に表れてくる。一方、光ビーム走査用の駆動電圧は、光導波路ごとに、位相制御部111の光導波路コア51の屈折率を所望の屈折率に変化させるように予め設定されている。つまり、光ビーム走査用の駆動電圧は、上部電極53と下部電極54との間に、光ビーム走査用の電界を発生させている。
他方、光ビーム走査用の駆動電圧に重畳されているDC電圧によって、つまり、位相制御部111の多層膜に蓄積される電荷によって、電界が発生する。そのため、蓄積電荷による電界も、位相制御部111の光導波路コア51の屈折率の変化に影響する。その結果、比較例には、光導波路コア51の実際の屈折率の変化量が、光ビーム走査用の電圧をもとに予め定められた変化量から変化してしまうという問題がある。
(実施例)
次に、本実施形態の光制御デバイスの駆動方法において、位相補償電圧に矩形波電圧を用いて光ビーム走査を行う例(実施例)について説明する。なお、光ビーム走査の駆動電圧は、図5に示したものと同じである。また、簡単のため、前記した比較例と同じ前提条件(条件1、条件2)があるものとする。そのため、図5に示した電圧波形の一部であるch.1~ch.3の電圧波形のみを用いて図6を参照して説明する。
(実施例:ch.1)
ビーム走査用の駆動電圧を考慮しないときに、ch.1に対して位相補償電圧として印加すべき矩形波電圧の最大値および最小値は、以下のようにして求めることができる。ch.1と基準チャネルとの位相差は“+0.3π”であるので、光の位相の半波長の係数である“+0.3”を、光導波路1の位相制御部111の半波長電圧(Vπ1)に乗じた値が、位相補償機能を果たす矩形波電圧における最大値である。つまり、矩形波電圧の最大値は、+0.3Vπ1である。また、矩形波電圧の最大値と最小値との差は、光導波路1の位相制御部111の半波長電圧(Vπ1)の2倍である。したがって、矩形波電圧の最小値は、-1.7Vπ1である。
そして、前記した式(2)において、Vc=+0.3Vπ1を代入すると、矩形波のデューティー比Rは、0.85と算出される。矩形波の周期をT(図4参照)とすると、最大値期間D1(図4参照)は0.85T、最小値期間D2(図4参照)は0.15Tとなる。これらの結果、ビーム走査用の駆動電圧を考慮しないときに、ch.1に対して位相補償電圧として印加すべき矩形波電圧を図8に示す。なお、図8では、矩形波について、最大値期間の次に最小値期間が現れる1周期の区間のみを示しているが、この1周期の区間は連続的に繰り返し現れるものである。
(実施例:ch.2)
同様に、ch.2と基準チャネルとの位相差は“+0.9π”であるので“+0.9”を光導波路2の位相制御部111の半波長電圧(Vπ2)に乗じた値が、位相補償機能を果たす矩形波電圧における最大値である。つまり、矩形波電圧の最大値は、+0.9Vπ2である。したがって、矩形波電圧の最小値は、-1.1Vπ2である。
そして、前記した式(2)において、Vc=+0.9Vπ2を代入すると、矩形波のデューティー比Rは、0.55と算出される。矩形波の周期をTとすると、最大値期間D1は0.55T、最小値期間D2は0.45Tとなる。ビーム走査用の駆動電圧を考慮しないときに、ch.2に対して位相補償電圧として印加すべき矩形波電圧を図8に示す。
(実施例:ch.3)
同様に、ch.3と基準チャネルとの位相差は“-0.7π”であるので“-0.7”を、光導波路3の位相制御部111の半波長電圧(Vπ3)に乗じた値が、位相補償機能を果たす矩形波電圧における最小値である。つまり、矩形波電圧の最小値は、-0.7Vπ3である。したがって、矩形波電圧の最大値は、+1.3Vπ3である。
そして、前記した式(2)において、Vc=+1.3Vπ3を代入すると、矩形波のデューティー比Rは、0.35と算出される。矩形波の周期をTとすると、最大値期間D1は0.35T、最小値期間D2は0.65Tとなる。ビーム走査用の駆動電圧を考慮しないときに、ch.3に対して位相補償電圧として印加すべき矩形波電圧を図8に示す。
実施例では、位相補償電圧としてVcが印加される期間(最大値期間)と、位相補償電圧としてVc-2Vπが印加される期間(最小値期間)とがある。Vc(最大電圧値)と、Vc-2Vπ(最小電圧値)とは、電圧値が互いに異なる。ただし、例えばVc-2Vπは、Vcに対応する光の位相が、光の1波長分、つまり、ちょうど2πだけずれた光の位相に対応した電圧値である。そのため、最大値期間に制御された光の位相と、最小値期間に制御された光の位相とは、同値を取る。つまり、Vcが印加される期間に制御された光の状態と、Vc-2Vπが印加される期間に制御された光の状態と、同じになる。
また、図8に示す3本の曲線、すなわち、ch.1用の矩形波電圧、ch.2用の矩形波電圧、ch.3用の矩形波電圧は、すべて、1周期にわたる積分値が0となるよう、デューティー比Rが決定されている。そのため、矩形波電圧を、光ビーム走査用の駆動電圧に重畳した電圧を位相制御部111に印加した場合、位相制御部111の多層膜への電荷蓄積を防ぐことができる。
この実施例に係る光導波路1,2,3の位相制御電極(ch.1,ch.2,ch.3)に対してそれぞれ印加する電圧波形を図9に示す。図9の縦軸は、半波長電圧(Vπ1,Vπ2,Vπ3)に乗じる倍数である。図9において例えば光導波路3の位相制御電極(ch.3)に着目すると、1/4周期(=0.25)の時点において、縦軸の値は4.3である。一方、図6において、光導波路3の位相制御電極(ch.3)に着目すると、1/4周期(=0.25)の時点において、縦軸の値は3.0であった。したがって、図6に示す値と図9に示す値との差“+1.3”は、重畳された矩形波の最大電圧値(+1.3Vπ3)に相当することが分かる。また、図9に示す3本の曲線についても、すべて1周期に渡る積分値は0である。したがって、本実施形態の光制御デバイスの駆動方法によれば、電荷蓄積を抑制して光ビーム走査が可能であることがわかる。
上記実施例によれば、光制御デバイス10の長時間の使用によっても位相補償(矩形波の電圧)には影響を与えず、放射される光ビームの明瞭さは劣化しない。
また、実施例によれば、光制御デバイス10には駆動電圧のドリフトが発生しないため、光ビーム走査を行う駆動電圧値も長時間の使用においても変動せず、調整の必要は生じない。
上記説明では、矩形波の周波数は、駆動電圧の周波数と同じであるものとしたが、これに限らず、矩形波の周波数を高周波に設定してもよい。ここで高周波は、位相制御部111として積層された多層膜が容量性負荷と見做せる周波数(以下、第1周波数という)以上であればよい。この第1周波数より高い周波数においては、位相制御部111の半波長電圧Vπの周波数依存性がなくなるため、高周波の矩形波にどのような電圧波形を重畳しても半波長電圧Vπの変動はなくなる。この場合、半波長電圧Vπの変化がないことから、半波長電圧Vπによる電荷蓄積が起きなくなるため、低速でのビーム走査が可能である。この低速でのビーム走査は、ビーム走査用の駆動電圧を印加しなくともよい場合も含むため、その場合、光ビーム制御の周波数領域の下限は0になると言える。また、この第1周波数より高い周波数の領域では、半波長電圧Vπの周波数依存性が発生する要素はないので、光ビーム制御の周波数領域の上限は∞になると言える。つまり、矩形波の周波数を、位相制御部111の半波長電圧Vπの周波数依存性が平坦になる高周波領域に設定すれば、全周波数領域にわたって長時間の安定した光ビーム制御が可能である。
[変形例]
前記実施形態に係る光制御デバイスにおいて、光導波路の本数が8本である形態を説明したが、これに限らず、光導波路の本数は例えば16本、あるいはそれ以上でも構わない。また、光出力部113から出力する光ビームを上方に出射するために、端部に回折格子をさらに設けるようにしてもよい。また、位相制御部111は、電圧により屈折率が変化する材料として電気光学材料を用いることとして説明したが、液晶を用いてもよい。
また、前記した式(1)において、矩形波形の位相補償電圧の電圧基準点Vcを、矩形波の最大値VMAX(図3参照)であるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば図10のように、矩形波の最大値VMAXと最小値VMINとの平均値を電圧基準点Vcとしてもよい。この場合、光制御デバイスの駆動方法において、デューティー比算出工程は、光導波路ごとに、位相制御部111の半波長電圧をVπ、矩形波の最大値VMAXをVc+αVπ(>0)、最小値VMINをVc-αVπ(<0)、Vc(>0)、α=1,2,…、デューティー比をRとしたときに、デューティー比を次の式(3)によって算出すればよい。
R=(1+Vc/(αVπ))/2 … 式(3)
以上、本発明の実施形態に係る光制御デバイスについて説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。また、本発明の効果を、光フェーズドアレイによって光ビーム走査を行う駆動波形のパラメータ設計を例にとって説明したが、種々の光制御デバイスの駆動方法に応用することができる。
本実施形態に係る光制御デバイスおよびその駆動方法は、光フェーズドアレイ、小惑星探査機の母船とその衛星との通信に使うアンテナ等の空間光通信、車載用レーダーに使うビームスキャン装置、奥行センサ、レーダー、LiDAR、可視光ビームスキャン装置、立体ディスプレイ等、種々の光制御デバイスに幅広く利用することができる。
10 光制御デバイス
51 光導波路コア
52 クラッド
53 上部電極
54 下部電極
100 光フェーズドアレイ
101 基板
102 光入力部
103 光スプリッタ
110 マルチチャネル光導波路
111 位相制御部
112 ピッチコンバータ
113 光出力部
130 波形発生器
150 電極線
210 光源
230 検出器

Claims (8)

  1. 電圧により屈折率が変化する材料を光導波路コアに含み誘電率および導電率が異なる誘電体材料からなる誘電体薄膜を含む多層膜からなる位相制御部をそれぞれ備える複数の光導波路を有する光フェーズドアレイと、
    前記位相制御部ごとに定められた波形の駆動電圧に、予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる所定波形の電圧を発生する波形発生器と、を備え、
    前記矩形波は、前記位相制御部間の位相差に基づいて予め定められた正の最大値および負の最小値を有する交流であり、前記矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、前記位相制御部の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍であり、前記矩形波のデューティー比は、前記矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている
    ことを特徴とする光制御デバイス。
  2. 記誘電体薄膜の一部または全部に、前記電圧により屈折率が変化する材料を含む、
    請求項1に記載の光制御デバイス。
  3. 前記位相制御部は、EOポリマーからなる光導波路コアを備える請求項2に記載の光制御デバイス。
  4. 前記矩形波の周波数は、前記位相制御部として積層された多層膜が容量性負荷と見做せる周波数以上に設定されている、
    請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光制御デバイス。
  5. 電圧により屈折率が変化する材料を光導波路コアに含み誘電率および導電率が異なる誘電体材料からなる誘電体薄膜を含む多層膜からなる位相制御部をそれぞれ備える複数の光導波路を有する光フェーズドアレイと、所定波形の電圧を発生する波形発生器と、を備える光制御デバイスの駆動方法であって、
    前記波形発生器が、前記位相制御部ごとに定められた波形の駆動電圧に予め定められた電圧の矩形波を重畳してなる所定波形の電圧を前記位相制御部に印加する工程を有し、
    前記矩形波は、前記位相制御部間の位相差に基づいて予め定められた正の最大値および負の最小値を有する交流であり、前記矩形波の電圧の最大値と最小値との差は、前記位相制御部の半波長電圧Vπを2倍した電圧値の自然数倍であり、前記矩形波のデューティー比は、前記矩形波を1周期にわたって積分したときの積分値が0となるように設定されている
    ことを特徴とする光制御デバイスの駆動方法。
  6. 駆動前の準備工程として、
    前記光導波路間の光の位相差に対応するように前記光導波路ごとに前記矩形波の電圧の最大値および最小値を算出する工程と、
    前記光導波路ごとに前記矩形波の電圧の最大値および最小値に基づいて前記デューティー比を算出する工程と、
    前記光導波路ごとに前記駆動電圧に対して前記最大値、前記最小値および前記デューティー比で特定される矩形波の電圧を重畳して前記所定波形の電圧を算出する工程と、
    を有する請求項5に記載の光制御デバイスの駆動方法。
  7. 前記最大値および最小値を算出する工程は、
    前記位相制御部の位相差が正値である場合、当該位相差を半波長電圧で換算した電圧値を最大値として算出し、当該最大値から、前記位相制御部の半波長電圧Vπを2倍した電圧値に自然数αを乗じた値を差し引いた電圧値を最小値として算出し、
    前記位相制御部の位相差が負値である場合、当該位相差を半波長電圧で換算した電圧値を最小値として算出し、当該最小値に、前記位相制御部の半波長電圧Vπを2倍した電圧値に自然数αを乗じた値を加えた電圧値を最大値として算出する、
    請求項6に記載の光制御デバイスの駆動方法。
  8. 前記デューティー比を算出する工程は、
    前記光導波路ごとに、前記位相制御部の半波長電圧をVπ、前記矩形波の最大値をVc(>0)、最小値をVc-2αVπ(<0)、α=1,2,…、デューティー比をRとしたときに、前記デューティー比を次の式(1)によって算出する、
    請求項7に記載の光制御デバイスの駆動方法。
    R=(2-Vc/(αVπ))/2 … 式(1)
JP2020121600A 2020-07-15 光制御デバイスおよびその駆動方法 Active JP7514131B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020121600A JP7514131B2 (ja) 2020-07-15 光制御デバイスおよびその駆動方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020121600A JP7514131B2 (ja) 2020-07-15 光制御デバイスおよびその駆動方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022018479A JP2022018479A (ja) 2022-01-27
JP7514131B2 true JP7514131B2 (ja) 2024-07-10

Family

ID=

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009048021A (ja) 2007-08-21 2009-03-05 Ricoh Co Ltd 光偏向素子および光偏向モジュール
JP2016031433A (ja) 2014-07-28 2016-03-07 日本放送協会 光制御デバイス
WO2016132747A1 (ja) 2015-02-19 2016-08-25 日本電信電話株式会社 波形整形機能付き多段干渉計回路
US20180052378A1 (en) 2016-08-17 2018-02-22 Samsung Electronics Co., Ltd. Optical phased array (opa)

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009048021A (ja) 2007-08-21 2009-03-05 Ricoh Co Ltd 光偏向素子および光偏向モジュール
JP2016031433A (ja) 2014-07-28 2016-03-07 日本放送協会 光制御デバイス
WO2016132747A1 (ja) 2015-02-19 2016-08-25 日本電信電話株式会社 波形整形機能付き多段干渉計回路
US20180052378A1 (en) 2016-08-17 2018-02-22 Samsung Electronics Co., Ltd. Optical phased array (opa)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9250455B2 (en) Optical modulator
JP2018511084A5 (ja)
Hirano et al. High-speed optical-beam scanning by an optical phased array using electro-optic polymer waveguides
EP3602188B1 (en) Device for thz generation and/or detection and methods for manufacturing the same
US10261390B2 (en) Laser beam steering device and system including the same
US8620117B2 (en) Optical device, optical deflection device, and optical modulation device
US7471852B2 (en) Optical modulator and optical modulation method
JP2016122062A (ja) 光偏向素子
WO2017057700A1 (ja) 光変調器及び光変調装置
JP7133307B2 (ja) 光偏向素子の性能評価装置
Wang et al. Reflection-type space-division optical switch based on the electrically tuned Goos–Hänchen effect
US7079714B2 (en) Electro-optic devices having flattened frequency response with reduced drive voltage
JP2018010118A (ja) 光偏向装置
Qiu et al. Electro‐optic polymer/titanium dioxide hybrid core ring resonator modulators
JP7514131B2 (ja) 光制御デバイスおよびその駆動方法
Li et al. High-speed 2D beam steering based on a thin-film lithium niobate optical phased array with a large field of view
US7580594B2 (en) Optical modulation element and optical modulation device having the same
JP2022018479A (ja) 光制御デバイスおよびその駆動方法
US20110255148A1 (en) Optical switch
JP2016031433A (ja) 光制御デバイス
JP5168076B2 (ja) 光スイッチ、光スイッチの製造方法、画像表示装置及び画像形成装置
JP2018194630A (ja) 光偏向素子の性能指数の測定装置、及び、光偏向素子の性能指数の測定プログラム
KR20140075404A (ko) 그래핀 광소자
JP2023114588A (ja) 光偏向素子およびその製造方法
JP7386072B2 (ja) 光偏向装置