JP7506292B2 - 水素製造用触媒の製造方法及び水素製造用触媒 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 令和3年10月26日発行の粉体粉末冶金協会2021年度秋季大会(第128回講演大会)予稿集 令和3年11月9日の粉体粉末冶金協会2021年度秋季大会(第128回講演大会)での講演
本発明は、アンモニアボラン(NHBH)等の水素含有化合物から水素を製造する際に用いる水素製造用触媒の製造方法及びその製造法により製造された水素製造用触媒に関する。
従来、環境破壊を抑制するエネルギー源として水素が注目され、水素を燃料とする燃料電池が注目され、実用化されている。
水素は、常温、常圧の環境下において気相であり、所定の反応量の体積が固相に比較して数百倍~千倍であるばかりか、爆発性を有するため、安全に且つ大量に貯蔵し、運搬することが困難である。このような水素ガスが有する問題点を解消し、安全で容易に取り扱いを可能とするため、燃料電池の燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリンなどを改質して得られる水素ガスが用いられている。
この種の燃料は、安全性に問題があるばかりか、燃料電池の燃料として用いたとき起電力が十分でなく、電力の供給源として十分な性能を実現できない。
そこで、自動車の駆動源として用いられる燃料電池や民生用の携帯端末装置の電源に用いられる燃料電池にあっては、高濃度に水素を貯蔵する水素含有化合物から、安価に、安定して高能率で水素を生成し、さらには、電池自体の小型化を実現することが望まれている。
このような従来用いられている水素含有媒体が有する問題点に鑑み、安全性に優れ、取り扱いが容易で、燃料電池の燃料として用いたとき十分な起電力を実現し得る燃料について鋭意研究され、高濃度に水素を含有する水素含有化合物が提案されている。この種の水素含有化合物として、大量な水素の貯蔵を可能としたホウ素をベースにした化合物が提案されている。その一つとして、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水素化ホウ素化合物ある。他の一つとして、ボラン(BH)とアンモニア(NH)の錯体をベースにした化合物であるアンモニアボラン(NHBH)が提案されている(特許文献1、2)。
この種の水素含有化合物に含有された水素は、例えば、水素含有化合物を溶解した水溶液に触媒として白金(Pt)等の貴金属を加え、この水溶液を加水分解することにより生成される。
触媒に用いるPt等の貴金属は、資源量が乏しく高価であるため、アンモニアボラン等の水素含有化合物から安価に安定して水素の生成を行うことが困難となる。
本件出願の発明者等は、水素含有化合物から水素を生成するために用いる触媒として、Pt等の貴金属に代わる触媒として、強磁性Coナノ結晶をドープした強磁性のタングステン炭化物を用いることを提案している(特許文献3、4、非特許文献1)。
本件出願の発明者等が提案した水素製造の触媒に用いられるCoは、リチウム電池正極の材料等に用いられ、その需要が急速に拡大し資源量が逼迫している。
そのため、水素製造用の触媒として用いることを提案したCoを含む触媒に用いられるCoの使用割合を削減し、Co資源量の節約が望まれている。
特開2006-286549号公報 特開2009-176556号公報 特開2019-98328号公報 特開2023-61564号公報
M. Morishita, A. Nozaki, H.Yamamoto, N. Fukumuro, M. Mori, K. Araki, F.Sakamoto, A. Nakamura, H. Yanagita, Catalyticactivity of Co-nanocrystal-doped tungsten carbide arising from an internalmagnetic field, RSC.Adv., 11, (2021)14063-14070.
ところで、本発明者等が提案する水素製造用触媒に用いられるCoは、WCの粒子間を焼結結合した超硬合金の構成素材として用いられている。WC-Co超硬合金は、自動車や航空機を構成する金属部品を製造するための切削工具や、金型装置の金型の構成素材として広く用いられている。
そこで、本発明の技術課題は、一旦超硬合金として製造され、各種の切削工具や金型等の製品とし用いられたるWC-Co超硬合金に着目し、アンモニアボラン(NHBH)等の水素含有化合物から水素を製造するために用いられる水素製造用触媒に用いられるCo、Wの再利用を実現し、希少資源であるCo、Wの逼迫を解消し、安定して水素製造用触媒を提供することを可能とする製造方法及び水素製造用触媒を提供することにある。
また、本発明の技術課題は、超硬合金として製造され、その後回収されたWC-Co超硬合金から高品質のW、Coを再生し、高能率で、アンモニアボラン(NHBH)等の水素含有化合物から水素の製造を可能とする水素製造触媒の製造方法、水素製造触媒を提供することにある。
上述したような技術課題を解決するために提案される技術は、水素含有化合物から水素を生成するために用いられる水素製造用触媒であり、WC-Co超硬合金由来のタングステン(W)とコバルト(Co)を用いて製造された前記水素製造用触媒の製造方法であって、WC-Co超硬合金を溶融塩浴に浸漬し、前記溶融塩浴中に前記WC-Co超硬合金を溶解し、次いで、前記WC-Co超硬合金が溶解された前記溶融塩浴を凝固して凝固塩を生成し、前記生成された凝固塩に加水して凝固塩水溶液を作製し、前記凝固塩水溶液を濾過し、上記凝固塩水溶液中から、前記WC-Co超硬合金が溶解されて析出された前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液と、前記WC-Co超硬合金由来の強磁性のコバルト成分を分離回収し、前記分離回収されたタングステン水溶液から抽出したタングステン成分と、前記コバルト成分を混合した混合水溶液を作製し、次いで、前記混合水溶液を蒸発乾固又は噴霧乾燥し、当該得られた固形物を熱分解して酸化物粉末を生成し、又は、更に水素熱還元したコバルト強制固溶タングステン合金粉末を生成し、さらに、前記コバルト強制固溶タングステン合金粉末を炭化処理し、Co-W-C固溶体相を内包し内部磁場が付与され強磁性とされたタングステン炭化物からなる水素製造用触媒の製造方法である。
前記水素製造用触媒の製造方法に用いられる溶融塩浴は、アルカリ塩化物MCl(M=Na,K)の群から選択されるアルカリ塩化物と、アルカリ硝酸塩NNO(N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩を溶融して形成したものを用いることが望ましい。
この溶融塩浴を用いた水素製造用触媒の製造方法において、前記凝固塩水溶液を濾過して作製した前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液に陽イオン交換樹脂を投入し、前記陽イオン交換樹脂にタングステン水溶液中のナトリウムイオン(Na )及びカリウムイオン(K)を吸着し、前記タングステン水溶液から前記ナトリウムイオン(Na )及びカリウムイオン(K)を除去したタングステン成分含有水溶液を生成し、次いで、前記タングステン成分含有水溶液を蒸発乾固又は噴霧乾燥し、前記タングステン成分からWOとして回収し、前記WOに水酸化ナトリウム水溶液を加え、NaWO水溶液を生成し、前記凝固塩水溶液を分離しCoとして回収されたコバルト成分にHCl水溶液を加え、前記HCl水溶液中に前記コバルト成分がCoClとして溶解した水溶液を生成し、その後、前記NaWO水溶液と前記CoCl水溶液を混合した混合水溶液を作製し、前記混合水溶液を蒸発乾固し、当該得られた固形物を熱分解して酸化物粉末を生成し、次いで、前記酸化物粉末を水素還元し、Co強制固溶W合金粉末を作製し、前記Co強制固溶W合金粉末を炭化処理し、Co-W-C固溶体相を内包し内部磁場が付与され強磁性とされたタングステン炭化物(R1 WC-Cocarbite)を作製する。
本発明の水素製造用触媒の製造方法に用いられる前記溶融塩浴として、硝酸ナトリウム(NaNO )と、硫酸ナトリウム(NaSO )とを混合溶融して形成したものを用いるようにしてもよい。
この溶融塩浴を用いた水素製造用触媒の製造方法において、前記凝固塩水溶液を濾過して作製した前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液に陽イオン交換樹脂を投入し、前記陽イオン交換樹脂にタングステン水溶液中のナトリウムイオン(Na )を吸着し、前記タングステン水溶液から前記ナトリウムイオン(Na )を除去したタングステン成分含有水溶液を生成し、次いで、前記タングステン成分含有水溶液を蒸発乾固又は噴霧乾燥し、前記タングステン成分からWOとして回収し、前記WOに水酸化ナトリウム水溶液を加え、NaWO水溶液を生成し、前記凝固塩水溶液を分離しCoとして回収されたコバルト成分にHSO水溶液を加え、前記HSO水溶液中に前記コバルト成分がCoSOとして溶解した水溶液を生成し、その後、前記NaWO水溶液と前記CoSO水溶液を混合した混合水溶液を作製し、前記混合水溶液を蒸発乾固し、当該得られた固形物を熱分解して酸化物粉末を生成し、次いで、前記酸化物粉末を水素還元し、Co強制固溶W合金粉末を作製し、前記Co強制固溶W合金粉末を炭化処理し、Co-W-C固溶体相を内包し内部磁場が付与され強磁性とされたタングステン炭化物(R2 WC-Cocarbite)を作製する。
上述した製造法によって製造された水素含有化合物から水素を生成するために用いられる水素製造用触媒は、強磁性の炭化タングステンからなり、前記炭化タングステンは、焼結結合して作製されたWC-Co超硬合金を溶融塩浴により溶解して生成された前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分と、前記WC-Co超硬合金由来のコバルト成分を用いて製造されたものであって、前記タングステン成分から精製されたタングステン格子中に強磁性のコバルトが固溶されたコバルト固溶タングステン合金粉末を炭化してなるCo-W-C固溶体相を内包する強磁性のタングステン炭化物からなることを特徴とする。
本発明方法により水素製造用触媒を作製することにより、一旦超硬合金として製造され、各種の切削工具や金型等の製品とし用いられたるWC-Co超硬合金の再利用を実現し、資源量の乏しいCo、Wの再利用を可能とすることができる。
本発明方法により、実用化レベルで、アンモニアボラン等の水素含有化合物から水素を生成するに足る水素製造用触媒を製造すすることができる。
本発明に係る水素製造用触媒は、WC-Co超硬合金を再利用することにより、資源量の乏しいCo、Wの再利用を実現できる。
本発明方法により製造される水素製造用触媒は、磁性を有するので、水素生成の触媒として利用した後、磁力を用いて回収ことが容易であり、さらなる再利用を可能とする。
そして、本発明方法により製造される水素製造用触媒を用いることにより、水素生成コストの低減を図ることができる。
WC-Co超硬合金を溶解するために用いられる反応装置を示す概略構成を示す図である。 実施の形態1におけるCo強制固溶W合金粉末のXRD図形を示す図である。 実施の形態1におけるCoドープWC微粒子XRD図形を示す図である。 実施の形態1におけるCoドープWC微粒子をEPMAによって観察したSEM像、WLα、CKα、及びCoKαのX線像を示す図である。 実施の形態1におけるCoドープWC微粒子をTEM観察した明視野像を示す。 実施の形態1におけるCoドープWC微粒子を別の視野からTEM観察した明視野像を示す。 R1WC-Cocarbite、R2WC-Cocarbite、Al上に白金ナノ粒子を担持したPt-NPS、純WCを出発原料としたCoドープWCcarbite、純WCをそれぞれ触媒に用いて、アンモニアボラン(NHBH)を加水分解して発生する水素(H)ガスの体積(HydrogenEvolution Volume:HEV)の経時変化を示す特性図である。 実施の形態2におけるCo強制固溶W合金粉末のXRD図形を示す図である。 実施の形態2におけるCo強制固溶W合金粉末を炭化処理した微粒子のXRD図形を示す。 実施の形態2におけるCoドープWC微粒子をEPMAによって観察したSEM像、WLα、CKα、及びCoKαのX線像を示す図である。
以下、本発明に係る水素製造用触媒の製造方法、この製造方法により製造された水素製造用触媒の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1は、アンモニアボラン(NHBH)などの水素含有化合物から水素を生成する際に用いられる水素製造用触媒触媒の製造方法であり、この製造方法により製造される水素製造用触媒である。
実施の形態1は、アンモニアボラン(NHBH)などの水素含有化合物から水素を生成する際に用いられる水素製造用触媒触媒の製造方法であり、この製造方法に製造される水素製造用触媒であって、一旦、超硬合金として製造され、その後回収されたWC-Co超硬合金を出発原料として製造される水素製造用触媒の製造方法、及び触媒である。
本実施の形態1は、資源回収されたWC-Co超硬合金を溶融塩浴に浸漬し、W成分とCo成分を回収し、この回収したW成分とCo成分を用いて水素製造用触媒を作製する方法及び触媒である。
(溶融塩浴によるWC-Coの溶解)
本実施の形態1において、W成分とCo成分を回収するため、資源回収されたW-Co超硬合金を溶融塩浴に浸漬し、溶解する。
本実施の形態1において用いる溶融塩浴は、アルカリ硝酸塩NNO(N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩と、アルカリ塩化物MCl(M=Na,K)の群から選択されるアルカリ塩化物とを混合溶融したものが用いられる。ここで、アルカリ硝酸として、KNOが用いられ、アルカリ塩化物として、NaClとKClが用いられる。
溶融塩としてKNOをのみを用いると、WC-Co超硬合金の表面に、難溶性のKWOの被膜が生成され溶解反応が停止する。そこで、溶融塩中にアルカリ塩化物であるNaClとKClが添加されることにより、KWOの被膜を還元して分解し、超硬合金の溶解を促進した。
本実施の形態1において、溶融塩浴は、KNOを10mol%、NaClを48mol%、KClを33mol%の割合で混合したものを用いた。
なお、溶融塩浴は、超硬合金表面にKWOの被膜が生成される状況により、KNO、NaCl及びKclの混合割合が適宜選択される。
本実施の形態1において、WC-Co超硬合金の溶解は、図1に示すような溶融塩溶解反応装置1を用いて行った。この反応装置1は、図1に示すように、反応容器2を備え、この反応容器2内に溶融塩浴3とWC-Co超硬合金4が投入される坩堝5が設置されている。坩堝5は、この装置1に接続された温度制御可能な加熱機構6により加熱制御される。また、反応容器2は、ガス供給口7を介して、例えばアルゴンガスなど不活性ガスGが充填される。なお、反応容器2に充填された不活性ガスGは、ガス排出口8を介して排出される。
そして、図1に示す反応装置1を用いてWC-Co超硬合金4を溶解するには、坩堝5中に、WC-Co超硬合金4とともに前記溶融塩浴3を投入する。次いで、反応容器2内にガス供給口7を介して不活性ガスGを供給しながら加熱機構6を作動させて坩堝5を加熱する。坩堝5に投入されたWC-Co超硬合金4は、不活性ガスGの雰囲気中で、溶融塩浴3とともに加熱されながら溶解される。
ここで、坩堝5に投入された溶融塩浴3とWC-Co超硬合金4は、873Kの温度に加熱された状態で3時間保持した。
本実施の形態1では、Coの含有量を20重量%としたWC-Co超硬合金を溶解した。また、その大きさを12.6mm×4.1mm×8.5mmとするものを溶解した。溶融塩浴は、総量で25g用いた。
上述のようにして、溶融塩浴3中にWC-Co超硬合金4が溶解されると、W成分とCo成分を含む溶融塩凝固塩が生成される。
なお、溶融塩浴3とWC-Co超硬合金4の加熱温度、加熱時間は、溶融するWC-Co超硬合金のCoの含有割合、その大きさに適宜選択される。
(凝固塩水溶液の濃度調整)
上述したように、溶融塩浴を用いてWC-Co超硬合金を溶解して得られたW成分とCo成分を含む溶融塩凝固塩から、W成分とCo成分を分離して回収するため、前記溶融塩凝固塩を温水に溶解し、溶融塩凝固塩水溶液を作製する。
この溶融塩凝固塩水溶液中で、Co成分は酸化微粒子であるCoとして沈殿し、W成分はこのW成分が溶解した水溶液として分離される。Co成分が分離された溶融塩凝固塩水溶液を濾過することにより、W成分は濾液として回収され、Coは沈殿物として沈殿した粉末として回収される。
そして、W成分を含有した濾液として回収された凝固塩水溶液は、本実施の形態1により製造される水素製造用触媒を構成するCo-W-C固溶体相を内包するタングステン炭化物を作製するため、W成分の含有割合が調整される。
本実施形態1では、一例として、100mlの凝固塩水溶液中に、W成分が1.0g含まれるように調整される。
(濾液からのW成分の回収)
本実施の形態1において、濃度調整された凝固塩水溶液中に溶解されたW成分は、イオン交換樹脂法によって回収される。
イオン交換樹脂法によりW成分を回収するため、凝固塩水溶液を、分液ロートに投入し、この分液ロート中に収納されたイオン交換樹脂に接触させる。そして、この溶液中に含まれるナトリウムイオン(Na)とカリウムイオン(K)をイオン交換樹脂に吸着させて除去する。そして、ナトリウムイオン(Na)とカリウムイオン(K)が除去されたW成分含有の水溶液を分液ロート中から回収する。ここで用いるイオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂が用いられる。
溶融塩凝固水溶液は、イオン交換樹脂が収納された分液ロート内に30分程度保持することにより、ナトリウムイオン(Na)とカリウムイオン(K)をイオン交換樹脂に吸着させて除去することができる。
なお、凝固塩水溶液をイオン交換樹脂に接触させたとき、ポリタングステン酸が析出し、分液ロート中に沈殿する。タングステン成分の一部がポリタングステン酸として析出することにより、WOとして回収されるタングステン成分の回収率が劣化する。そこで、イオン交換樹脂が収納された分液ロート中にNH水溶液を投入し、凝固塩水溶液の投入時に析出して沈殿するポリタングステン酸を溶解し、W成分含有の水溶液を回収する。この回収操作を、少なくとも2回程度繰り返すことにより、W成分の回収率を向上することができる。
本実施の形態1において、ポリタングステン酸の溶解は、0.5MのNH水溶液を60ml分液ロート中に投入して行った。
また、本実施の形態1で用いるイオン交換樹脂として、陽イオン交換樹脂が用いられ、アンバージェット1024H (オルガノ株式会社製)を使用した。
そして、ナトリウムイオン(Na)とカリウムイオン(K)が除去されて分液ロートから回収されたW成分を含む水溶液を蒸発乾固しWOを回収した。このWOには、溶融塩由来のNaCl(cr)及びKCl(cr)が不純物として含まれるため、温水洗浄し、再度蒸発乾固し、これら不純物を除去した。このように、不純物の除去を図ることにより、高品質のWOを回収することができる。
なお、凝固塩水溶液からW成分の回収のために用いたイオン交換樹脂は、強酸や強塩基などを加えることで再生し、W成分の回収に用いることができる。
(CoCl水溶液の調整)
本実施の形態1では、Co強制固溶W合金粉末を作製するため、CoCl水溶液を調整した。CoCl水溶液は、溶融塩浴を用いてWC-Co超硬合金を溶解して得られた溶融塩凝固塩水溶液の沈殿物として回収されたCo に1MのHCl水溶液を加え、ホットプレート上で加熱溶解する。Co成分は、赤色を呈したCoCl水溶液として溶解される。
(NaWO水溶液の調整)
また、本実施の形態1では、Co強制固溶W合金粉末を作製するため、前述したように、WC-Co超硬合金を溶解して回収したWOを用いてNaWO水溶液を調整した。このNaWO水溶液は、WOに0.1MのNaOH水溶液を加え、ホットプレート上で加熱溶解して作製される。ここで作製されたNaWO水溶液は、HClを加えpHを調整した。本実施の形態1では、NaWO水溶液は、pHを6,91に調整した。
(再生WとCo資源からのCoドープWCの作製)
再生WとCo資源からCoドープWCを作製するため、前述したCoCl水溶液とNaWO水溶液を混合した水溶液を作製する。この混合水溶液は、W成分とCo成分がmol%比で、80:20になるように調整した。
(Co強制固溶W合金粉末の作製)
次に、Co強制固溶W合金粉末を作製するため、前記CoCl水溶液とNaWO水溶液の混合水溶液を作製し、この混合水溶液を蒸発乾固した。この蒸発乾固して得られた蒸発乾固体を、酸素気流中で所定時間加熱処理して酸化物粉末を作製する。本実施の形態1では、蒸発乾固体の酸素気流中での加熱処理は、843Kの温度雰囲気中で7.2ks保持して行った。
ここで作製された酸化物粉末には、CoCl水溶液とNaWO水溶液の混合水溶液由来のNaCl(cr)が含まれる。そこで、酸化物粉末を温水で洗浄し、NaCl(cr)を除去した。このNaCl(cr)を除去した酸化物粉末を、再度、酸素気流中で所定時間加熱処理した。この加熱処理は、前記加熱処理と同様に、843Kの温度雰囲気中で7.2ks保持して行った。
ここで得られた酸化物粉末を、水素還元し、合金粉末を作製した。本実施の形態1において、酸化物粉末の水素還元は、1093Kの温度雰囲気中に5.4ks保持して行った。
この合金粉末は、図2に示すようなXRD図形を示す。すなわち、合金粉末は、図2に示すように、Bcc構造のWのピークのみが認められ、CoがW格子中に強制固溶されていることが分かった。
(CoドープWC微粒子の作製)
次に、前述したように酸化物粉末を水素還元して得られたCo強制固溶W合金粉末を反応炉中に設置し、この反応炉中にCO ガスを流入し、反応炉中を昇温して所定時間保持して炭化した。
本実施の形態1において、Co強制固溶W合金粉末は、具体的に反応炉中を1173Kまで昇温し、32.4ks保持して炭化した。
なお、前記酸化物粉末を炭化処理を行う際、CO ガスを用いて直接炭化することが不可能であるため、反応炉内に予めAl-Fe合金粉末の圧縮成形体を設置しておき、この成形体をCOガスからCOガスへの転換剤として炭化した。本実施の形態では、炭化処理中この転換剤を10.8kss毎に交換した.
図3に、炭化処理した微粒子のXRD図形を示す。図3に示すように、WCとCoのピークが認められた。
さらに、前記酸化物粉末を炭化処理して得られたCoドープWC微粒子をEPMAによって観察し、SEM像、WLα、CKα、及びCoKαのX線像を図4に示す。
図4に示すSEM像の中心は,W像とC像とから判別すると,WCである。Co像より、このWC中にCoが分布していることが分かる。Coドメインは、大きいものは約150nm~200nmと観察されたが、10nm程度のものも観察された。そこで、さらにTEM観察を実施した。TEM観察した明視野像を図5に示す。図5に示す明視野像から、WCマトリックスにナノサイズのCoドメインが形成されていることが観察された。このドメインにおいて、fcc-Coの〔110〕方向が確認された。また、このCoドメインの外側を覆う層状構造は長周期的であり、WCの〔101〕方向が確認された。なお、別の視野を示す図6において、fccの〔111〕方向と〔100〕方向が確認できる直径10nmのCoドメインの生成を確認することができた。このドメインの外側は、〔101〕方向と確認できるWCを観察することができた.
以上のXRD測定、EPMA及びTEM観察により、Coナノ結晶がドープされたWCが生成したと結論する。このCoドープWCの水素生成触媒活性を検討した。
(CoドープWCの水素生成触媒作用)
前述した実施の形態1のWC-Co超硬合金を溶融塩浴を溶解して得られた再生型のWとCo資源から得られたCoドープWC((以下、R1WC-Cocarbiteと表記する)を触媒として用い、アンモニアボラン(NHBH)から水素(H)ガスを生成した。
本実施の形態1において、Hガスを生成するに当たり、20mgのR1WC-Cocarbiteを試験管に投入し真空引きを行った後、この試験管を電気炉にセットし、Hガスの気流下で、所定温度まで加熱し、所定時間保持してフラッシングを行い、表面の不純物を除去した。フラッシングは、試験管をセットした電気炉内を473Kまで加熱し、2時間保持して行った。
そして、アンモニアボラン(NHBH)からの水素発生量の測定は、オイルバス中を一定温度に加温した状態で行った。具体的に、オイルバス中を308Kに加熱した条件で行った。まず、フラッシングした試料を投入した試験管にスターラ-を投入した後、純水1mlを注水した。次に、アンモニアボラン0.5mmolを溶解した水溶液1.5mlをこの試験管内に注水し、水素発生量を測定した。この測定を2回実施した。
下記式(1)に、アンモニアボランの加水分解反応を示す。
NHBH+2HO→NH +BO +3H ・・・(1)
上述の水素発生量の測定より、1molのアンモニアボランから3molのHガスが発生した。
図7に、R1WC-Cocarbiteを触媒に用い、アンモニアボランを加水分解して発生するHガスの体積(Hydrogen EvolutionVolume:HEV)の経時変化を示した。
比較として、図7に、触媒学会配布のAl上に白金ナノ粒子に担持した触媒(JRC-PTRAL-1)(Pt-NPS)、純WC(高純度化学研究所製)、及び高純度試薬(タングステン酸アンモニウムと酢酸コバルト)の試薬を出発原料として、前述の実施の形態1と同様の作成手順によりCoドープWCcarbiteをそれぞれ用いてアンモニアボランを加水分解して発生するHガスの体積(HEV)の経時変化を示した。
図7に示すように、R1WC-Cocarbideを触媒として用いたとき、反応開始1分経過後からHガスの発生が多くみられ、反応開始40分後に触媒反応がほぼ飽和する結果となった。Pt-NPsを触媒に用いたとき、反応開始直後は直線的に増加したが6分経過後にほぼ触媒反応が飽和する経過となった。高純度試薬を原料とするWC-Cocarbideを触媒に用いたとき、反応開始10分後に触媒反応がほぼ飽和する結果となった。純WCを触媒として用いたとき、Hガスの発生は認められなかった。
ガス発生開始直後から触媒反応が飽和に至るまでにおいて、図7中縦軸のHEVと横軸の時間(Time)との勾配が水素生成速度(HER)である。図7に示す水素生成速度(HER)において、WC-Co超硬合金を出発原料とするリサイクル原料に由来するWとCoを用いて作製したR1WC-Cocarbideは、高純度原料を用いて作製したWC-Cocarbideに比し劣る。しかしながら、R1WC-Cocarbideの水素生成速度(HER)は、Pt-NPsを触媒に用いたときの60%を達成している。したがって、Ptの逼迫、W資源価格の乱高下、及びCo資源の高騰よる状況から、R1WC-Cocarbideは、水素製造用触媒としての優位性がある。
(実施の形態2)
次に、本発明に係る実施の形態2を説明する。
この実施の形態2は、実施の形態1と同様に、アンモニアボラン(NHBH)などの水素含有化合物から水素を生成する際に用いられる水素製造用触媒触媒の製造方法であり、この製造方法に製造される水素製造用触媒であって、一旦、超硬合金として製造され、その後回収されたWC-Co超硬合金を出発原料として製造される水素製造用触媒の製造方法、及び触媒である。
本実施の形態2は、資源回収されたWC-Co超硬合金を溶融塩浴に浸漬し、W成分とCo成分を回収し、この回収したW成分とCo成分を用いて水素製造用触媒を作製する方法及び触媒である。
(溶融塩浴によるWC-Coの溶解)
本実施の形態2において、W成分とCo成分を回収するため、資源回収したW-Co超硬合金を溶融塩浴に浸漬し、溶解する。
本実施の形態2において用いる溶融塩浴は、アルカリ硝酸塩である硝酸ナトリウム(NaNO)と、硫酸ナトリウム(NaSO)とを混合溶融したものが用いられる。
NaNOは、W-Co超硬合金中のW成分を、溶融塩中のWO 2-イオンとして溶解し、Co成分をCoの沈殿物として分離する効果がある。
但し、NaNO のみを溶融塩浴として用いると、超硬合金表面に難溶性のNa WO 被膜が生成し、溶解反応が停止する。そこで、溶融塩にNa SO を添加することで、Na WO 被膜を還元して分解し、超硬合金の溶解を促進した。
本実施の形態2において、溶融塩浴は、NaNOを85mol%、NaSOを15mol%の割合で混合したものを用いた。なお、溶融塩浴は、超硬合金表面にNa WO 被膜が生成される状況により、NaNO に対するNaSOの混合割合が選択される。
本実施の形態2において、WC-Co超硬合金の溶解は、前述した実施の形態1と同様に、図1に示すような溶融塩溶解反応装置1を用いて行った。すなわち、図1に示す反応装置1の坩堝5中に、WC-Co超硬合金4とともに前記溶融塩浴3を投入する。次いで、反応容器2内にガス供給口7を介して不活性ガスGを供給しながら加熱機構6を作動させて坩堝5を加熱する。坩堝5に投入されたWC-Co超硬合金4は、不活性ガスGの雰囲気中で、溶融塩浴3とともに加熱されながら溶解される。
ここで、坩堝5に投入された溶融塩浴3とWC-Co超硬合金4は、873Kの温度に加熱された状態で3時間保持した。
本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、Coの含有量を20重量%としたWC-Co超硬合金を溶解した。また、その大きさを12.6mm×4.1mm×8.5mmとするものを溶解した。そして、溶融塩浴は、総量で25g用いた。
上述のようにして、溶融塩浴3中にWC-Co超硬合金4が溶解されると、W成分とCo成分を含む溶融塩凝固塩が生成される。
なお、溶融塩浴3とWC-Co超硬合金4の加熱温度、加熱時間は、溶融するWC-Co超硬合金のCoの含有割合、その大きさに適宜選択される。
(凝固塩水溶液の濃度調整)
上述したように、溶融塩浴を用いてWC-Co超硬合金を溶解して得られたW成分とCo成分を含む溶融塩凝固塩から、W成分とCo成分を分離して回収するため、前記溶融塩凝固塩を温水に溶解し、溶融塩凝固塩水溶液を作製する。
Co成分は、溶融塩凝固塩水溶液中に酸化微粒子であるCoとして沈殿し、W成分は、W成分溶解水溶液として分離される。Co成分が分離された溶融塩凝固塩水溶液を濾過することにより、W成分は濾液として回収され、Coは沈殿物として沈殿した粉末として回収される。
そして、W成分を含有した濾液として回収された凝固塩水溶液は、本実施の形態2により製造される水素製造用触媒を構成するCo-W-C固溶体相を内包するタングステン炭化物を作製するため、W成分の含有割合が調整される。
本実施形態2では、一例として、100mlの凝固塩水溶液中に、W成分が1.0g含まれるように調整される。
(濾液からのW成分の回収)
本実施の形態2において、濃度調整された凝固塩水溶液中に溶解されたW成分は、イオン交換樹脂法によって回収される。
イオン交換樹脂法によりW成分を回収するため、凝固塩水溶液を、分液ロートに投入し、この分液ロート中に収納されたイオン交換樹脂に接触させる。そして、この溶液中に含まれるナトリウムイオン(Na)をイオン交換樹脂に吸着して除去する。ナトリウムイオン(Na)が除去されたW成分含有の水溶液を分液ロート中から回収する。ここで用いるイオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂が用いられる。
溶融塩凝固水溶液は、イオン交換樹脂が収納された分液ロート内に30分程度保持することにより、ナトリウムイオン(Na)がイオン交換樹脂に吸着されて除去される。
なお、凝固塩水溶液をイオン交換樹脂に接触させたとき、ポリタングステン酸が析出し、分液ロート中に沈殿する。タングステン成分の一部がポリタングステン酸として析出することにより、WOとして回収されるタングステン成分の回収率が劣化する。そこで、イオン交換樹脂が収納された分液ロート中にNH水溶液を投入し、凝固塩水溶液の投入時に析出して沈殿するポリタングステン酸を溶解し、W成分含有の水溶液を回収する。この回収操作を、少なくとも2回程度繰り返すことにより、W成分の回収率を向上することができる。
本実施の形態2において、ポリタングステン酸の溶解は、0.5MのNH水溶液を60ml分液ロート中に投入して行った。
本実施の形態2において、陽イオン交換樹脂として、アンバージェット1024H (オルガノ株式会社製)を使用した。
そして、ナトリウムイオン(Na)が除去されて分液ロートから回収されたW成分を含む水溶液を蒸発乾固しWOを回収した。このWOには、溶融塩由来のNaNOと、NaSOが不純物として残存するため、温水洗浄し、再度蒸発乾固し、これら不純物を除去した。このように、不純物の除去を図ることにより、高品質のWOを回収することができる。
なお、凝固塩水溶液からW成分の回収のために用いたイオン交換樹脂は、強酸や強塩基などを加えることで再生し、W成分の回収に用いることができる。
(CoSO水溶液の調整)
本実施の形態2では、Co強制固溶W合金粉末を作製するため、CoSO水溶液を調整した。CoSO水溶液は、溶融塩浴を用いてWC-Co超硬合金を溶解して得られた溶融塩凝固塩水溶液の沈殿物として回収されたCo に0.5MのHSO水溶液を加え、ホットプレート上で加熱溶解する。Co成分は、赤色を呈したCoSO水溶液として溶解される。
(NaWO水溶液の調整)
また、本実施の形態2では、Co強制固溶W合金粉末を作製するため、前述したように、WC-Co超硬合金を溶解して回収したWOを用いてNaWO水溶液を調整した。このNaWO水溶液は、WOに0.1MのNaOH水溶液を加え、ホットプレート上で加熱溶解して作製される。
(再生WとCo資源からのCoドープWCの作製)
再生WとCo資源からCoドープWCを作製するため、前述したCoSO水溶液とNaWO水溶液を混合した混合水溶液を作製する。この混合水溶液は、W成分とCo成分がmol%比で、80:20になるように調整した。この混合液は、白濁した。この混合水溶液は、NaOHの水溶液が適宜加えられ、pHが6.83となるように調整される。このNaOH水溶液の滴定前後で、混合水溶液に変化は見られなった。
(Co強制固溶W合金粉末の作製)
次に、Co強制固溶W合金粉末の作製するため、CoSO水溶液とNaWO水溶液の混合水溶液を作製し、この混合水溶液を蒸発乾固した。この蒸発乾固して得られた蒸発乾固体は、酸素気流中で所定時間加熱処理され酸化物粉末とされる。本実施の形態2では、蒸発乾固体の酸素気流中での加熱処理は、843Kの温度雰囲気中で7.2ks保持して行った。
ここで作製された酸化物粉末には、CoSO水溶液とNaWO水溶液の混合水溶液由来のNaSO (cr)が含まれる。そこで、酸化物粉末を温水で洗浄し、NaSO(cr)を除去した。このNaSO(cr)を除去した酸化物粉末は、再度、酸素気流中で所定時間加熱処理される。この加熱処理は、前記加熱処理と同様に、843Kの温度雰囲気中で7.2ks保持して行った。
ここで得られた酸化物粉末を、水素還元し、合金粉末を作製した。本実施の形態2において、酸化物粉末の水素還元は、1093Kの温度雰囲気中に5.4ks保持して行った。
この合金粉末は、図8に示すようなXRD図形を示す。すなわち、合金粉末は、図8に示すように、Bcc構造のWのピークのみが認められ、CoがW格子中に強制固溶されていることが分かった。
(CoドープWC微粒子の作製)
次に、前述したように酸化物粉末を水素還元して得られたCo強制固溶W合金粉末を反応炉中に設置し、この反応炉中にCOガスを流入し、反応炉中を昇温して所定時間保持して炭化した。
本実施の形態2においては、Co強制固溶W合金粉末は、具体的に、反応炉中を1173Kまで昇温し、32.4ks保持して炭化した。
なお、前記酸化物粉末を炭化処理を行う際、Coガスを用いて直接炭化することが不可能であるため、反応炉内に予めAl-Fe合金粉末の圧縮成形体を設置しておき、この成形体をCOガスからCOガスへの転換剤として炭化した。本実施の形態2では、炭化処理中、この転換剤を10.8kss毎に交換した。
図9に、炭化処理した微粒子のXRD図形を示す。図9に示すように、WCとCoのピークが認められた。
さらに、前記酸化物粉末を炭化処理して得られたCoドープWC微粒子をEPMAによって観察した、SEM像、WLα、CKα、及びCoKαのX線像を図10に示す。図10に示すSEM像の中心は,W像とC像とから判別すると,WCである。Co像より、このWC中にCoが分布していることが分かる。
以上のXRD測定、EPMA及びTEM観察により、Coナノ結晶がドープされたWCが生成したと結論する。このCoドープWCの水素生成触媒活性を検討した。
(CoドープWCの水素生成触媒作用)
前述した実施の形態2のWC-Co超硬合金を溶融塩浴を溶解して得られた再生型のWとCo資源から得られたCoドープWC((以下、R2WC-Cocarbiteと表記する)を触媒として用い、アンモニアボラン(NHBH)から水素(H)ガスを生成した。
本実施の形態2において、前述の実施の形態1と同様に、水素(H)ガスを生成するに当たり、20mgのR2WC-Cocarbiteを試験管に投入し真空引きを行った後、この試験管を電気炉にセットし、Hガスの気流下で、所定温度まで加熱し、所定時間保持してフラッシングを行い、表面の不純物を除去した。フラッシングは、試験管をセットした電気炉内を473Kまで加熱し、2時間保持して行った。
水素発生量の測定はオイルバス中308K温度一定の条件で行った。まず、フラッシングした試料の試験管にスターラ-を投入した後,純水1mlを注水した。次に、アンモニアボラン0.5mmolを溶解した水溶液1.5mlをこの試験管内に注水し、水素発生量を測定した。この測定を2回実施した。
前述した図7中に、R2WC-Cocarbiteを触媒に用いて、アンモニアボランを加水分解して発生するHガスの体積(HEV)の経時変化を示した。
図7に示すように、R2WC-Cocarbideを触媒として用いたとき、反応開始1分経過後からHガスの発生が多くみられ、反応開始15分後に触媒反応がほぼ飽和する結果となった。
図7に示す水素生成速度(HER)において、WC-Co超硬合金を出発原料とするリサイクル原料に由来するWとCoを用いて作製したR2WC-Cocarbideは、高純度原料を用いて作製したWC-CocarbideやPt-NPsを触媒として用いたHガスを生成したときと同等の触媒活性が認められた。
したがって、実施の形態2に係るR2WC-Cocarbideは、Pt資源の逼迫、W資源価格の乱高下、及びCo資源の高騰の課題を解決した貴重な水素製造用触媒材料となる。
発明方法により製造される水素製造用触媒は、アンモニアボラン(NHBH)などの水素含有化合物から水素を生成するために用いて有用であり、WC-Co超硬合金のリサイクルを向上できる。

Claims (2)

  1. アンモニアボラン(NH BH から水素を生成するために用いられる水素製造用触媒であり、WC-Co超硬合金由来のタングステン(W)とコバルト(Co)を用いて製造された前記水素製造用触媒の製造方法であって、
    WC-Co超硬合金を、アルカリ塩化物MCl(M=Na,K)の群から選択される少なくとも1のアルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩NNO (N=Na,K)の群から選択される少なくとも1のアルカリ硝酸塩を混合溶融した溶融塩浴に浸漬し、前記溶融塩浴中に前記WC-Co超硬合金を溶解し、
    次いで、前記WC-Co超硬合金が溶解された前記溶融塩浴を凝固して凝固塩を生成し、
    前記生成された凝固塩に加水して凝固塩水溶液を作製し、前記凝固塩水溶液を濾過し、前記凝固塩水溶液中から析出された前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液と、前記WC-Co超硬合金由来のコバルト成分をCo として分離回収し、
    前記分離回収された前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液に陽イオン交換樹脂を投入し、前記陽イオン交換樹脂にタングステン水溶液中のナトリウムイオン(Na )及びカリウムイオン(K )を吸着し、前記タングステン水溶液から前記ナトリウムイオン(Na )及びカリウムイオン(K )を除去したタングステン成分含有水溶液を生成し、
    次いで、前記タングステン成分含有水溶液を蒸発乾固又は噴霧乾燥して、前記タングステン成分をWO として回収し、前記WO に水酸化ナトリウム水溶液を加え、Na WO 水溶液を生成し、
    さらに、前記凝固塩水溶液から前記Co して分離回収されたコバルト成分にHCl水溶液を加え、前記HCl水溶液中に前記コバルト成分がCoCl として溶解したCoCl 水溶液を生成し、
    次いで、前記Na WO 水溶液と前記CoCl 水溶液を混合した混合水溶液を作製し、前記混合水溶液を蒸発乾固又は噴霧乾燥し、当該得られた固形物を熱分解して酸化物粉末を生成し、
    次いで、前記酸化物粉末を水素還元し、Co強制固溶W合金粉末を作製し、
    さらに、前記Co強制固溶W合金粉末を炭化処理し、Co-W-C固溶体相を内包し内部磁場が付与され強磁性とされたタングステン炭化物からなる
    水素製造用触媒の製造方法。
  2. アンモニアボラン(NH BH から水素を生成するために用いられる水素製造用触媒であり、WC-Co超硬合金由来のタングステン(W)とコバルト(Co)を用いて製造された前記水素製造用触媒の製造方法であって、
    WC-Co超硬合金を、硝酸ナトリウム(NaNO )と硫酸ナトリウム(NaSO )とを混合溶融した溶融塩浴に浸漬し、前記溶融塩浴中に前記WC-Co超硬合金を溶解し、
    次いで、前記WC-Co超硬合金が溶解された前記溶融塩浴を凝固して凝固塩を生成し、
    前記生成された凝固塩に加水して凝固塩水溶液を作製し、前記凝固塩水溶液を濾過し、前記凝固塩水溶液中から析出された前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液と、前記WC-Co超硬合金由来のコバルト成分をCo として分離回収し、
    前記分離回収された前記WC-Co超硬合金由来のタングステン成分が溶解されたタングステン水溶液に陽イオン交換樹脂を投入し、前記陽イオン交換樹脂にタングステン水溶液中のナトリウムイオン(Na )を吸着し、前記タングステン水溶液から前記ナトリウムイオン(Na )を除去したタングステン成分含有水溶液を生成し、
    次いで、前記タングステン成分含有水溶液を蒸発乾固又は噴霧乾燥して、前記タングステン成分をWO として回収し、前記WO に水酸化ナトリウム水溶液を加え、Na WO 水溶液を生成し、
    さらに、前記凝固塩水溶液から前記Co として分離回収されたコバルト成分にH SO 水溶液を加え、前記H SO 水溶液中に前記コバルト成分がCoSO として溶解したCoSO 水溶液を生成し、
    次いで、前記Na WO 水溶液と前記CoSO 水溶液を混合した混合水溶液を作製し、前記混合水溶液を蒸発乾固し、当該得られた固形物を熱分解して酸化物粉末を生成し、
    次いで、前記酸化物粉末を水素還元し、Co強制固溶W合金粉末を作製し、
    さらに、前記Co強制固溶W合金粉末を炭化処理し、Co-W-C固溶体相を内包し内部磁場が付与され強磁性とされたタングステン炭化物からなる
    水素製造用触媒の製造方法。
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