JP7493507B2 - 水溶性フィルムおよび包装体 - Google Patents

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本発明は、各種薬剤の包装等に好適に使用されるポリビニルアルコール樹脂を含有する水溶性フィルム、およびそれを用いた包装体に関する。
従来から、水溶性フィルムは、その水に対する優れた溶解性を利用して、液体洗剤、農薬および殺菌剤といった各種薬剤の包装、種子を内包するシードテープ等、幅広い分野で使用されてきた。
かかる用途に使用する水溶性フィルムには、主にポリビニルアルコール樹脂(以下、「PVA」と称することがある。)が用いられている。そして、つや消しやフィルム同士の滑り性向上の目的で、フィルム表面に凹凸形状を設けることがある。凹凸形状を設ける方法は、PVA水溶液中にフィラーを含有させた成膜原液を製膜する方法や、製膜したフィルムにエンボス加工を行う方法などがある(例えば特許文献1)。
特許文献2には、薬剤包装体の作製において、水溶性フィルムを貼り合せる際に、エンボス面同士または非エンボス面同士を貼り合せることで、外観特性に優れた薬剤包装体が得られることが記載されている。
特開2017-119434 特開2017-110213
近年、意匠性の観点から光沢性のある高級感に優れた包装体の要求が高まっている。この場合、エンボス面のような凹凸の大きな面同士が貼り合され、凹凸の小さい面が表面側となるように包装体が作製される。一方、生産性向上のため、包装袋の製造速度を高めることが求められており、高速でシールされる場合がある。しかしながら、高速でシールすると、糊剤として塗工する水が不均一に塗工されたり、空気が包装体から外部に十分に排出されず、シール部分に空気が残存し、シール欠陥として残ったりすることで、シール強度が不均一になり易い。その結果、シール強度の弱い部分から包装袋が破れて内容物が漏れる場合があった。
本発明は、シール強度の均一性に優れる包装体の製造、さらには高速でのシール時のシール強度の均一性に優れる包装体の製造に好適に用いることができる水溶性フィルム、およびそれを用いた包装体を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検証を進めた結果、ポリビニルアルコール樹脂を含有する水溶性フィルム表面の長さ方向の線粗さと幅方向の線粗さに着目し、特に長さ方向と幅方向の粗さ曲線要素の平均長さの比を特定範囲とすることにより、上記課題が達成し得ることを見出した。そして、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は
[1]ポリビニルアルコール樹脂を含有する水溶性フィルムであって、
少なくとも一方のフィルム表面の長さ方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(LD)と幅方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(TD)との比RSm(LD/TD)が1.2以上2.5以下である、水溶性フィルム、に関する。
さらに本発明は、
[2]前記フィルム表面に長さ方向に長辺を有する凸部形状を複数有する、前記[1]に記載の水溶性フィルム、
[3]前記凸部形状の平均アスペクト比が2以上10以下である、前記[2]に記載の水溶性フィルム、
[4]前記凸部形状の平均高さが0.5μm以上5μm以下である、前記[2]または[3]に記載の水溶性フィルム、
[5]前記凸部形状の平均幅が10μm以上50μm以下であり、平均長さが30μm以上100μm以下である、前記[2]から[4]のいずれかに記載の水溶性フィルム、
[6]前記凸部形状が製膜時の転写により設けられたものである前記[2]から[5]のいずれかに記載の水溶性フィルム、
[7]前記凸部形状がエンボス加工により設けられたものである前記[2]から[6]のいずれかに記載の水溶性フィルム、
[8]フィルム表面の算術平均粗さRaの表裏比Ra(M/G)が2以上10以下である、前記[1]から[7]のいずれかに記載の水溶性フィルム、
[9]前記RSm(LD/TD)が1.2以上2.5以下のフィルム表面がマット面である前記[1]から[8]のいずれかに記載の水溶性フィルム、に関する。
また本発明は、
[10]前記[1]から[9]のいずれかに記載の水溶性フィルムが、薬剤を収容している包装体、
[11]グロス面が外表面である、前記[10]に記載の包装体、および
[12]前記の薬剤が農薬、洗剤または殺菌剤である、前記[10]または[11]に記載の包装体、に関する。
本発明によれば、シール強度の均一性に優れる包装体の製造、さらには高速でのシール時のシール強度の均一性に優れる包装体の製造に好適に用いることができる水溶性フィルム、およびそれを用いた包装体が提供される。
本発明の水溶性フィルム表面の凸部形状の一例の概略図である。 本発明の水溶性フィルム表面の凸部形状の他の例の概略図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)を含有する。さらに本発明の水溶性フィルムは、少なくとも一方のフィルム表面の長さ方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(LD)と幅方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(TD)との比、RSm(LD)/RSm(TD)(以下、RSm(LD/TD)と略する場合がある)、が1.2以上2.5以下の水溶性フィルムである。ここで、フィルム表面の長さ方向とは、フィルム中のPVA分子の主な配向方向である。またフィルム表面に平行で長さ方向に対して垂直方向を幅方向とする。
<フィルムの表面粗さ>
本発明では、フィルムの表面粗さを表す指標として、共焦点レーザー顕微鏡(例えば、オリンパス株式会社製「OLS3100」)を用いてフィルム表面の粗さを測定して得られる粗さ曲線要素の平均長さ、RSm、を用いた。共焦点レーザー顕微鏡は、一般的な光学顕微鏡とは異なり、特定の波長をもち直進性に優れているレーザー光を使用し、対物レンズによりサンプル表面上で焦点のあった光のみを検出する。この光学系では焦点以外からの反射光はほとんどカットされ、焦点位置のみの情報が得られる。共焦点レーザー顕微鏡は光軸方向(サンプル厚み方向)に分解能を持つため、表面凹凸形状といった3次元計測が可能となる。粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B 0601-2001に示される、固体表面の粗さ測定から求められる線粗さのパラメータの一つである。
上述の共焦点レーザー顕微鏡を用いて、水溶性フィルムの表面の長さ方向と幅方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmをそれぞれ測定したとき、本発明の水溶性フィルムの少なくとも一方のフィルム表面はRSm(LD/TD)が1.2以上2.5以下の範囲である。RSm(LD/TD)が上記範囲であることで、得られるフィルムはシール強度の均一性に優れる。これは、長さ方向の輪郭要素を構成する山または谷の平均長さが幅方向の輪郭要素を構成する山または谷の平均長さよりも大きい、すなわちフィルム表面の山又は谷が長さ方向に長くなっていることを意味している。これにより、フィルム表面上に糊剤を塗工した際に、塗工された糊剤が長さ方向に流れやすくなるため、糊剤が均一に塗工されるようになり、結果シール強度の均一性が高まるものと考えられる。RSm(LD/TD)は1.4以上が好ましい。RSm(LD/TD)は生産性の観点から2.0以下であることが好ましい。
長さ方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(LD)は、シール強度の均一性の観点から10μm以上30μm以下が好ましい。一方、幅方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(TD)は、シール強度の観点から、5μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上15μm以下がより好ましい。
上記と同様に共焦点レーザー顕微鏡でフィルムの両表面の算術平均粗さRaをそれぞれ測定したとき、両表面の算術平均粗さRaの比、すなわち算術平均粗さRaの表裏比(以下、Ra(M/G)と略する場合がある)は2以上10以下であることが好ましい。Ra(M/G)が上記範囲であることで、高速でのシール時のシール強度の均一性と、得られる包装袋の良好な外観が両立しやすい。Ra(M/G)は3以上、7以下が好ましい。なお、フィルム表面の算術平均粗さRaの表裏比Ra(M/G)は、フィルム両面のRaを測定し、Raが小さいほうの面をグロス面、大きいほうの面をマット面としたとき、マット面のRa(Ra(M))をグロス面のRa(Ra(G))で除することにより求められる。マット面及びグロス面のいずれについても、フィルム表面の算術平均粗さRaは、水溶性フィルムの表面の長さ方向と幅方向の算術平均粗さRaをそれぞれ測定し、その平均値とした。Ra(G)は0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましい。Ra(G)が上記範囲だと、得られる包装袋が光沢度に優れる。またマット面のRsm(LD/TD)が上記の範囲を満足するのが好ましい。
<フィルムの表面形状>
本発明の水溶性フィルムは少なくとも一方のフィルム表面に、長さ方向に長辺を有する凸部形状を複数有することが好ましい。フィルム表面が長さ方向に配向した凸部形状を有することにより、フィルム表面上に糊剤を塗工した際に、塗工された糊剤が長さ方向に流れやすくなるため、糊剤が均一に塗工されるようになり、シール強度の均一性が高まるという本発明の効果をより得やすくなる。凸部形状は略長方形であってもよいし、略楕円形であってもよい。
フィルムの表面形状は、表面粗さと同様に共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察することができる。本明細書では、例えば図1の概略図で示したように、凸部形状が略長方形の場合は長辺を長さ、短辺を幅とした。任意の100個の凸部形状の長さおよび幅の平均をそれぞれ平均長さおよび平均幅とした。図1に示したように、凸部形状周辺の平坦部から凸部形状の最大高さ位置までの距離を高さとし、任意の100個の凸部形状の高さの平均を平均高さとした。また、隣接する2つの凸部形状の幅方向の距離を間隔と呼び、任意の隣接する100組の凸部形状の間隔を平均間隔とした。
図1は凸部形状が略長方形の場合を示しているが、図2の概略図で示したように凸部形状が略楕円形であっても同様である。凸部形状が略楕円形の場合は長軸を長さ、短軸を幅とし、平均長さおよび平均幅は凸部形状が略長方形の場合と同様である。凸部形状が略楕円形の場合も、凸部形状周辺の平坦部から凸部形状の最大高さ位置までの距離を高さとし、任意の100個の凸部形状の高さの平均を平均高さとした。また、隣接する二つの凸部形状のそれぞれの長軸の幅方向の最短距離からそれぞれの短軸(図2においては短軸Aおよび短軸Bとした)の長さの和の半分を引いた値を間隔とし、任意の隣接する100組の凸部形状の間隔を平均間隔とした。
上記凸部形状が略長方形の場合は、図1に示したように、長さがフィルムの長さ方向と平行となっていることが好ましい。凸部形状が略楕円形の場合は、長軸がフィルムの長さ方向と平行であることが好ましい。また各凸部形状は互いに平行であることが好ましい。なお、各凸部形状がそれぞれ平行でない場合、上記の隣接する2つの凸部形状の幅は、最短距離の値とする。
凸部形状の平均幅は10μm以上50μm以下であることが好ましい。平均幅がこの範囲であると、凸部としての自立性に優れ、シール時に押し付けられ折れ曲がることなく凸部としての効果を十分発現する。また、凸部がフィルム表面に占める面積が適切となり、凸部としての効果が十分に発現する。平均幅は15μm以上30μm以下であることがより好ましい。
凸部形状の平均長さは30μm以上100μm以下であることが好ましい。平均長さが上記範囲であることにより、後述する凸部形状の平均アスペクト比が適切な範囲となり、シール強度の均一性が高くなる。平均長さは40μm以上80μm以下であることがより好ましい。
凸部形状の平均アスペクト比は2以上10以下であることが好ましい。ここで平均アスペクト比は前記凸部形状の平均長さを平均幅で割った値である。平均アスペクト比がこの範囲であれば、長さ方向に沿ってシールする際に糊剤が横方向に逃げることを抑制することで、シール強度の均一性を確保しやすい。また、シール時に空気の逃げ道を確保し空気欠陥を低減することで、シール強度の均一性を確保しやすい。
凸部形状の平均高さは0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。平均高さが小さすぎると、凸部としての効果を十分発現できない。一方、平均高さが大きすぎると、フィルム内での膜厚差により、水溶性のムラの原因となる可能性がある。平均高さは1μm以上4μm以下であることがより好ましい。
凸部形状同士の平均間隔(平均ピッチ)は10μm以上30μm以下であることが好ましい。平均間隔がこの範囲であれば、塗工された糊剤の逃げ道が確保されやすく、またシール方向への空気の滞留を抑制し易くなる。
本発明では、上記RSm(LD/TD)を上記範囲にコントロールすることが重要である。そのコントロールの方法としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂の種類(けん化度、変性量、未変性PVA/変性PVAのブレンド比等)を調整する方法、可塑剤の添加量を調整する方法、有機または無機の充填剤を添加する方法、フィルム製造条件(支持体の表面温度、熱処理条件、ドロー条件等)を調整する方法、支持体表面の凹凸形状を調整する方法、エンボス加工条件(フィルム水分率、加工温度、加工圧力、加工時間等)を調整する方法、またはこれらの組み合わせで調整する方法が挙げられる。これらの方法の中で、支持体表面の凹凸形状を調整する方法、エンボス加工条件を調整する方法が、フィルム表面の凹凸形状をコントロールしやすく、好ましい。
<ポリビニルアルコール樹脂>
本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)を含有する。
PVAとしては、ビニルエステルモノマーを重合して得られるビニルエステル重合体をけん化することにより製造された重合体を使用することができる。
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができる。これらの中でも、ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル重合体は、単量体として1種または2種以上のビニルエステルモノマーのみを用いて得られた重合体が好ましく、単量体として1種のビニルエステルモノマーのみを用いて得られた重合体がより好ましい。なお、ビニルエステル重合体は、1種または2種以上のビニルエステルモノマーと、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
この他のモノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、イソブテン等の炭素数3~30のオレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロールアクリルアミドまたはその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
なお、ビニルエステル重合体は、これらの他のモノマーのうちの1種または2種以上に由来する構造単位を有していてもよい。
ビニルエステル重合体に占める他のモノマーに由来する構造単位の割合(以下、「変性度」と呼ぶことがある。)は、水溶性フィルムのシール性および機械的強度の双方を高める観点から、ビニルエステル重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。他のモノマーに由来する構造単位の割合が多すぎると、フィルム表面の凹凸形状能調整が困難になる場合がある。
PVAの重合度は、特に制限されないが、下記範囲が好ましい。すなわち、重合度の下限は、水溶性フィルムの十分な機械的強度を確保する観点から、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。一方、重合度は、PVAの生産性や水溶性フィルムの生産性等を高める観点から、8,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下がさらに好ましい。
ここで、重合度とは、JIS K 6726-1994の記載に準じて測定される平均重合度を意味する。すなわち、本明細書において、重合度は、PVAの残存酢酸基をけん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から、次式により求められる。
重合度Po = ([η]×10/8.29)(1/0.62)
本発明において、PVAのけん化度から上記変性度を引いた値は、64~97モル%が好ましい。当該値をかかる範囲に調整することにより、フィルム表面の凹凸形状能調整が容易になり、かつ水溶性フィルムのシール性と機械的強度とを両立することができる。当該値は、70モル%以上がより好ましく、75モル%以上がさらに好ましい。一方、当該値は、93モル以下がより好ましく、91モル%以下がさらに好ましく、90モル%以下が特に好ましい。
ここで、PVAのけん化度は、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステルモノマー単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して、ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。
PVAのけん化度は、JIS K 6726-1994の記載に準じて測定することができる。
水溶性フィルムは、1種類のPVAを単独で含有してもよいし、重合度、けん化度および変性度等が互いに異なる2種以上のPVAを含有してもよい。
水溶性フィルムにおけるPVAの含有量は、100質量%以下が好ましい。一方、PVAの含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
<可塑剤>
水溶性フィルムは、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤を含むことにより、水溶性フィルムに、他のプラスチックフィルムと同等の柔軟性を付与することができる。このため、水溶性フィルムは、衝撃強度等の機械的強度や二次加工時の工程通過性等が良好になる。
可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。これらの可塑剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水溶性フィルムの表面へのブリードアウトが抑制されるという観点から、可塑剤としては、エチレングリコールまたはグリセリンが好ましく、グリセリンがより好ましい。
水溶性フィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。一方、可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲であると、フィルム表面の凹凸形状能調整が容易になり、かつ水溶性フィルムの衝撃強度等の機械的特性の改善効果を十分に得ることができる。また、水溶性フィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下したり、表面へのブリードアウト等の問題を生じたりするのを好適に防止または抑制することができる。
<澱粉/水溶性高分子>
水溶性フィルムは、澱粉および/またはPVA以外の水溶性高分子を含有してもよい。澱粉および/またはPVA以外の水溶性高分子を含むことにより、水溶性フィルムに機械的強度を付与したり、取り扱い時における水溶性フィルムの耐湿性を維持したり、あるいは溶解時における水の吸収による水溶性フィルムの柔軟化の速度を調節したりすることができる。
澱粉としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等の天然澱粉類;エーテル化加工、エステル化加工、酸化加工等が施された加工澱粉類等が挙げられるが、特に加工澱粉類が好ましい。
水溶性フィルムにおける澱粉の含有量は、PVA100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。澱粉の含有量が上記範囲であると、水溶性フィルムの工程通過性が悪化するのを防止または抑制することができる。
PVA以外の水溶性高分子としては、例えば、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、シェラック、アラビアゴム、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸の共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
水溶性フィルムにおけるPVA以外の水溶性高分子の含有量は、PVA100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。PVA以外の水溶性高分子の含有量が上記範囲であると、フィルム表面の凹凸形状能調整が容易になり、かつ水溶性フィルムの水溶性を十分に高めることができる。
<界面活性剤>
水溶性フィルムは、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を含むことにより、水溶性フィルムの取り扱い性や、製造時における水溶性フィルムの製膜装置からの剥離性を向上することができる。
界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型界面活性剤;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型界面活性剤;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型界面活性剤等が挙げられる。
このような界面活性剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水溶性フィルムの製膜時におけるスジ状欠点などの表面異常の低減効果に優れること等から、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましく、アルカノールアミド型界面活性剤がより好ましく、脂肪族カルボン酸(例えば、炭素数8~30の飽和または不飽和脂肪族カルボン酸等)のジアルカノールアミド(例えば、ジエタノールアミド等)がさらに好ましい。
水溶性フィルムにおける界面活性剤の含有量は、PVA100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。一方、界面活性剤の含有量は、PVA100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましく、0.3質量部以下が特に好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲であると、製造時における水溶性フィルムの製膜装置からの剥離性が良好になるとともに、水溶性フィルム同士の間でのブロッキングの発生等の問題が生じ難くなる。また、水溶性フィルムの表面への界面活性剤のブリードアウトや、界面活性剤の凝集による水溶性フィルムの外観の悪化等の問題も生じ難い。
<その他の成分>
水溶性フィルムは、可塑剤、澱粉、PVA以外の水溶性高分子、界面活性剤以外に、水分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、架橋剤、着色剤、充填剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、他の高分子化合物等の成分を、本発明の効果を妨げない範囲で含有してもよい。
PVA、可塑剤、澱粉、PVA以外の水溶性高分子および界面活性剤の質量の合計値が水溶性フィルムの全質量に占める割合は、60~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。
<水溶性フィルム>
本発明の水溶性フィルムの、10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間は特に制限されないが、下記範囲が好ましい。完溶時間は、300秒以内が好ましく、200秒以内がより好ましい。完溶時間の上限が上記範囲の水溶性フィルムは、比較的早期に溶解が完了するため、薬剤等の包装用(包材用)フィルムとして好適に使用することができる。一方、完溶時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、15秒以上がさらに好ましく、20秒以上が特に好ましい。このように完溶時間が短か過ぎない水溶性フィルムであれば、雰囲気中の水分の吸収による水溶性フィルム同士の間でのブロッキングの発生や、機械的強度の低下等の問題が生じ難くなる。
水溶性フィルムを10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間は、以下のようにして測定することができる。
<1> 水溶性フィルムを20℃-65%RHに調整した恒温恒湿器内に、16時間以上置いて調湿する。
<2> 調湿した水溶性フィルムから、長さ40mm×幅35mmの長方形のサンプルを切り出した後、長さ35mm×幅23mmの長方形の窓(穴)が開口した50mm×50mmのプラスチック板2枚の間に、サンプルの長さ方向が窓の長さ方向に平行でかつ窓がサンプルの幅方向のほぼ中央に位置するように挟み込んで固定する。
<3> 500mLのビーカーに300mLの脱イオン水を入れ、回転数280rpmで3cm長のバーを備えたマグネティックスターラーで攪拌しつつ、水温を10℃に調整する。
<4> 上記<2>においてプラスチック板に固定したサンプルを、マグネティックスターラーのバーに接触させないように注意しながら、ビーカー内の脱イオン水に完全に浸漬する。
<5> 脱イオン水に浸漬してから、脱イオン水中に分散したサンプル片が目視にて完全に消失するまでの時間を測定する。
上記の方法で測定される完溶時間はサンプルの厚みに依存するが、本明細書においては厚みに関係なく上記大きさのサンプルが完全に溶解するまでを完溶時間とした。
水溶性フィルムの厚みは、特に制限されないが、下記範囲が好ましい。すなわち、厚みは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。一方、厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、20μm以上が特に好ましい。上記範囲の厚みは大き過ぎないため、水溶性フィルムの二次加工性が悪化するのを好適に防止することができる一方、小さ過ぎもしないため、水溶性フィルムに十分な機械的強度を確保することができる。
なお、水溶性フィルムの厚みは、任意の10箇所(例えば、水溶性フィルムの長さ方向に引いた直線上にある任意の10箇所)の厚みを測定し、それらの平均値として求めることができる。
水溶性フィルムの光沢度は、特に限定されないが、意匠性の観点から光沢性が求められる場合には、グロス面の光沢度が下記範囲であることが好ましい。すなわち、グロス面の光沢度は30以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。グロス面の光沢度が上記範囲であると、グロス面が外表面となるように2枚の水溶性フィルムを貼り合せて包装体を製造した際に、得られる包装袋が光沢性に優れる。
<水溶性フィルムの製造方法>
本発明の水溶性フィルムの製造方法は、特に制限されず、例えば、次のような方法を使用することができる。
PVAに溶媒、添加剤等を加えて均一化させた製膜原液を、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、乾湿式製膜法、ゲル製膜法(製膜原液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去する方法)、あるいはこれらの組み合わせにより製膜する方法や、押出機等を使用して得られた製膜原液をTダイ等から押出すことにより製膜する溶融押出製膜法やインフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でも、水溶性フィルムの製造方法としては、流延製膜法および溶融押出製膜法が好ましい。これらの方法を用いれば、均質な水溶性フィルムを生産性よく得ることができる。
以下、水溶性フィルムを流延製膜法または溶融押出製膜法を用いて製造する方法について説明する。
まず、PVAと、溶媒と、必要に応じて可塑剤等の添加剤とを含有する製膜原液を用意する。なお、製膜原液が添加剤を含有する場合、製膜原液における添加剤のPVAに対する比率は、前述した得られる水溶性フィルムにおける添加剤のPVAに対する比率と実質的に等しい。
次に、製膜原液を、支持体上へ膜状に流涎(供給)する。これにより、支持体上に製膜原液の液状被膜を形成する。前記支持体はポリマー製(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アセチルセルロース、ポリカーボネート、紙、樹脂積層紙など)であってもよいし、金属製(例えば、鉄、銅、アルミニウムなど)であってもよい。
液状被膜は、支持体上で乾燥されて溶媒が除去されることにより、固化してフィルム化する。前記乾燥は加熱により加速することができる。固化したフィルムは、支持体より剥離されてもよく、必要に応じて乾燥ロール、乾燥炉等によりさらに乾燥されて、必要に応じて熱処理される。製膜はバッチ式、セミバッチ式、または連続式で行われる。フィルムの保管方法は特に限定されず、ロール状に巻き取ってもよく、(予め切断して)重ねてもよい。
上記製膜原液の揮発分率(製膜時等に揮発や蒸発によって除去される溶媒等の揮発性成分の濃度)は、50~90質量%が好ましく、55~80質量%がより好ましい。揮発分率が上記範囲であると、製膜原液の粘度を好適な範囲に調整することができるので、水溶性フィルム(液状被膜)の製膜性が向上するとともに、均一な厚みを有する水溶性フィルムを得易くなる。
ここで、本明細書における「製膜原液の揮発分率」とは、下記の式により求めた値をいう。
製膜原液の揮発分率(質量%)={(Wa-Wb)/Wa}×100
式中、Waは、製膜原液の質量(g)を表し、Wbは、Wa(g)の製膜原液を105℃の電熱乾燥機中で16時間乾燥した後の質量(g)を表す。
製膜原液の調整方法としては、特に制限されず、例えば、PVAと、可塑剤、界面活性剤等の添加剤とを溶解タンク等で溶解させる方法や、一軸または二軸押出機を使用して含水状態のPVAを、可塑剤、界面活性剤等の添加剤と共に溶融混錬する方法等が挙げられる。
一態様としては、製膜原液を流涎する支持体の表面温度は、50~110℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、65~95℃がさらに好ましい。表面温度が上記範囲であると、液状被膜の乾燥が効率よい速度で進むことにより、液状被膜の乾燥に要する時間が長くなり過ぎないので、水溶性フィルムの生産性が低下することもない。また、液状被膜の乾燥がそのような速度で進むことにより、水溶性フィルムの表面に発泡等の異常が生じ難い。
支持体上で液状被膜を加熱すると同時に、液状被膜の非接触面側の全領域に、風速1~10m/秒の熱風を均一に吹き付けてもよい。これにより、液状被膜の乾燥速度を調節することができる。非接触面側に吹き付ける熱風の温度は、50~150℃が好ましく、70~120℃がより好ましい。熱風の温度が上記範囲であると、液状被膜の乾燥効率や乾燥の均一性等をより高めることができる。
水溶性フィルムは、支持体上で好ましくは揮発分率5~50質量%にまで乾燥(溶媒除去)された後、支持体から剥離され、必要に応じてさらに乾燥される。他の態様では、フィルムは支持体上で完全にまたは実質的に乾燥された後、支持体に載ったまま保管され、後の工程に供されてもよい。
乾燥の方法としては、特に制限されず、乾燥炉に通過させる方法や、乾燥ロールに接触させる方法が挙げられる。
複数の乾燥ロールを用いて水溶性フィルムを乾燥させる場合は、水溶性フィルムの一方の面と他方の面とを交互に乾燥ロールに接触させることが好ましい。これにより、水溶性フィルムの両面におけるPVAの結晶化度を均一化させることができる。この場合、乾燥ロールの数は、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5~30個がさらに好ましい。
乾燥炉または乾燥ロールの温度は、40~110℃が好ましい。乾燥炉または乾燥ロールの温度の上限は、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましく、85℃以下が特に好ましい。一方、乾燥炉または乾燥ロールの温度の下限は、45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
乾燥後の水溶性フィルムには、必要に応じてさらに熱処理を行うことができる。熱処理を行うことにより、水溶性フィルムの機械的強度、水溶性、複屈折率等の特性を調整することができる。熱処理の温度は、60~135℃が好ましい。熱処理温度の上限は、130℃以下がより好ましい。
水溶性フィルム表面を所望の表面粗さとするために、支持体表面に凹凸を施して製膜時の転写により凹凸形状を有する水溶性フィルムを得る方法や、エンボス加工により水溶性フィルムに凹凸形状を施す方法を採用することができる。例えば、支持体表面にRSm(LD/TD)が1.2以上2.5以下の凹部を形成することで、目的の表面粗さを有する水溶性フィルムを得ることができる。また、支持体表面に長さ方向に長辺を有する凹部を形成することで、長さ方向に長辺を有する凸部形状を有する水溶性フィルムを得ることができる。支持体表面に凹凸を施して製膜時に凹凸形状を有する水溶性フィルムを得る方法は、所望のRSm(LD/TD)を有するマット面と好適なRaを有するグロス面からなる水溶性フィルムを得やすく、高速シール時のシール強度の均一性と良好な外観を両立できるため、好ましい。
支持体表面に凹凸形状を施して製膜時の転写により凹凸形状を有する水溶性フィルムを得る場合、フィルムの乾燥温度は50~170℃が好ましく、60~140℃がより好ましい。支持体上での乾燥時間は、0.5~20分が好ましく、1~15分がより好ましい。
エンボス加工により水溶性フィルムに凹凸形状を施す場合、加工温度は60~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。加工圧力は0.1~15MPaが好ましく、0.3~8MPaがより好ましい。エンボス加工のフィルム搬送速度は5m/分以上が好ましく、10~30m/分がより好ましい。
このようにして製造された水溶性フィルムは、必要に応じて、さらに、調湿処理、フィルム両端部(耳部)のカット等を施した後、円筒状のコアの上にロール状に巻き取られ、防湿包装されて製品となる。他の態様では、フィルムは均一なサイズに切断等されて、必要に応じて挿入された離型フィルムと共に重ねられ、防湿包装されて製品となる。
<用途>
本発明の水溶性フィルム(水溶性フィルム)は、一般の水溶性フィルムが適用される各種のフィルム用途に、より好適に使用することができる。
かかるフィルム用途としては、例えば、薬剤包装用フィルム、液圧転写用ベースフィルム、刺繍用基材フィルム、人工大理石成形用離型フィルム、種子包装用フィルム、汚物収容袋用フィルム等が挙げられる。これらの中でも、本発明の水溶性フィルムは、薬剤包装用フィルムに適用することが好ましい。
本発明の水溶性フィルムを薬剤包装用フィルムに適用する場合、薬剤の種類としては、例えば、農薬、洗剤(漂白剤を含む)、殺菌剤、可食物等が挙げられる。
薬剤の物性は、特に制限されず、酸性であっても、中性であっても、アルカリ性であってもよい。
また、薬剤は、ホウ素含有化合物またはハロゲン含有化合物を含有してもよい。
薬剤の形態としては、粉末状、塊状、ゲル状および液体状のいずれであってもよい。
包装形態も、特に制限されず、取り扱いの観点から薬剤を単位量ずつ包装(好ましくは密封包装)するユニット包装の形態が好ましい。
本発明の水溶性フィルムを薬剤包装用フィルムに適用して薬剤を包装することにより、本発明の包装体が得られる。換言すれば、本発明の包装体は、本発明の水溶性フィルムで構成された包材(カプセル)と、この包材に内包された薬剤とを含む。
本発明の水溶性フィルムを、所望の表面粗さを有する面同士、または所望の表面粗さを有する面と他方の面とを貼り合せて包装体を製造することによって、シール強度の均一性に優れる包装体を得ることができる。
フィルムを貼り合せる方法としては、特に限定されず公知の方法を採用することができ、例えば、重ねたフィルムを加熱・圧着させるシール方法や、糊剤をシール面に塗布して圧着させる方法、およびその組み合わせが例示される。これらの方法の内、加熱装置を必要としない糊剤をシール面に塗布して圧着させる方法が好ましい。PVAを含有する水溶性フィルムの場合、糊剤としては、PVA水溶液、ホウ酸水溶液、水などが例示され、中でも水によるシールが取り扱い性などの観点より好ましい。
以下に、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されない。なお、以下の実施例および比較例において採用された評価項目とその方法は、下記の通りである。
(1)フィルム表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmおよび算術平均粗さRa
水溶性フィルムをスライドガラス状に固定し、レーザー顕微鏡で表面粗さを分析した。20倍の測定画像からフィルムの長さ方向(LD)約560μmおよび幅方向(製膜幅方向、TD)約430μmの範囲内で任意の直線上に表面粗さを測定し、測定した直線上のRSm(LD)およびRSm(TD)ならびにRa(LD)およびRa(TD)を装置内で自動計算させた。測定箇所を変え、各々10箇所直線上を測定し、その平均値を分析値とした。Ra(LD)とRa(TD)との平均値をフィルム表面のRaとし、マット面のRaをRa(M)、グロス面のRaをRa(G)とした。詳細な測定条件および計算条件は以下の通りである。
測定装置 :OLS3100(オリンパス株式会社製)
測定条件 :Manual測定、ピッチ…0.30、ステップ…約80~150(サンプルによって適宜調節した)
最小高さの識別:断面曲線…Pzの10%、粗さ曲線…Rzの10%、うねり曲線…Wzの10%
最小長さの識別:基準長さ(画面視野)の1%
切断レベル差算出対象負荷長さ率:Rmr1…30%、Rmr2…60%
(2)フィルム表面形状の観察
上記(1)と同条件で5枚のフィルムサンプルについてそれぞれ20倍の測定画像を得た。得られた1画像あたりの測定視野約430μm×約560μmの全域を観測範囲とし、各視野から20個ずつ合計100個の凸部を選定し、その形状を測定装置(OLS3100)に付属の解析ソフト内の長さ計測および高さ計測ソフトを使用して測定した。
(3)光沢度
水溶性フィルムを長さ方向(LD)約5cm×幅方向(TD)約5cmのサイズの正方形サンプルに切り出し、23℃-35%RHの環境下に16時間以上保持して調湿した。調湿後のサンプルのグロス面を光沢計にて、LDおよびTD方向の角度60°での光沢度をJIS Z 8741-1997に準拠して測定し、平均値を光沢度とした。
(4)シール強度
水溶性フィルムのマット面同士を水シールで貼り合せてシール強度およびばらつきを測定した。
水溶性フィルムから長さ方向(LD)約30cm×幅方向(TD)約10cmのサイズの長方形サンプル6枚を切り出し、23℃-35%RHの環境下に16時間以上保持して調湿した。同環境下で調湿後のサンプル1枚を台上に置き、フィルムの四隅を粘着テープで固定した。さらにその上にもう1枚のサンプルを重ねて、10cmの辺の両端を粘着テープで固定し、固定されてない端部を140/10アニロックスローラーを使用して、ESIPROOFプルーフィングローラーに通した。0.5mLの脱イオン水を、ESIPROOFプルーフィングローラーのドクターブレード上に注ぎ、ローラーを約7.5cm/秒の速度で引いて、2枚のサンプルを貼り合せた。なおこのとき、ローラーはサンプルの端まで引かず、引張試験機のチャックにセットするために、サンプルの端に貼り合せていない部分を残した。貼り合せたサンプルから、LDを長辺とする25mm幅の短冊状の試験片を3枚切り出した。上記操作をさらに2回繰り返し、試験片を9枚作製した。
貼り合せてから10分間放置した後、試験片を引張試験機にセットして、JIS K6854-3:1999に基づいたT型はく離試験に準拠して引張速度254mm/分ではく離した。得られた9つのはく離力の平均値をシール強度とし、変動係数(標準偏差を平均値で割った値)をシール強度の均一性の指標とした。
<実施例1>
ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られたPVA(けん化度88モル%、粘度平均重合度1700)100質量部、可塑剤としてグリセリン25質量部、界面活性剤としてラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部および水を配合して、製膜原液を調製した。なお、製膜原液の揮発分率は、68質量%であった。
次に、表面に長さ方向(巻き取り方向、LD)に長辺を有する凹部が複数設けられている金属製支持体を用い、製膜原液をTダイから金属製支持体(表面温度85℃)上に膜状に吐出して、金属製支持体上に液状被膜を形成した。金属製支持体は概して楕円形状の凹凸を有する表面を有するものを用いた。金属製支持体上で、液状被膜の金属製支持体との非接触面の全体に、110℃の熱風を吹き付けて乾燥した。これにより、水溶性フィルムを得た。
次いで、水溶性フィルムを金属製支持体から剥離した。得られた水溶性フィルムは、厚み76μmであった。
得られた水溶性フィルムの表面粗さ、光沢度、静摩擦係数およびシール強度を測定した。また、得られた水溶性フィルムの10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間を上記の方法で測定したところ、195秒であった。
<実施例2>
製膜原液の調製に用いるPVAを、マレイン酸モノメチルエステル(MMM)変性PVA(けん化度90モル%、重合度1700、MMM変性量5モル%)に、グリセリン配合量を45質量部に変更した以外は実施例1と同様にして水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの表面粗さ、表面形状、光沢度およびシール強度を測定した。結果を表1に示す。なお、得られた水溶性フィルムの10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間を上記の方法で測定したところ、97秒であった。
<比較例1>
実施例1と同じ製膜原液を用いて、製膜原液をTダイから支持体である金属ロール(表面温度80℃)上に膜状に吐出して、金属ロール上に液状被膜を形成した。金属ロール上で、液状被膜の金属ロールとの非接触面の全体に、85℃の熱風を吹き付けて乾燥した。これにより、水溶性フィルムを得た。次いで、水溶性フィルムを金属ロールから剥離して、水溶性フィルムの一方の面と他方の面とを複数の乾燥ロール(表面温度75℃)に交互に接触させて乾燥を行った。続いて、金属ロールと接していないほうの面に、表面粗さ(算術平均粗さRa)が3μmの梨地模様を有するエンボスロールおよびゴムロールであるバックアップロールを用いて、エンボスロール温度120℃、バックアップロール温度50℃および線圧25kg/cmの条件下、フィルムを12m/分の速度で進行させながらエンボス加工を行った後、円筒状のコア上にロール状に巻き取った。得られた水溶性フィルムは、厚み76μmであった。
得られた水溶性フィルムの表面粗さ、光沢度および水シール高度を測定した。結果を表1に示す。
<比較例2>
用いる製膜原液を実施例2と同じものに変更した以外は比較例1と同様にして水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの表面粗さ、光沢度および水シール高度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007493507000001
表1から明らかなように、本発明の水溶性フィルムはシール強度の均一性に優れている。本発明の水溶性フィルムを薬剤等を収納する包装体に用いることで、得られる包装体はシール強度の均一性に優れ、保管中や輸送中に包装体が破れたりすることを抑制することができる。なお、比較例1,2の水溶性フィルムはフィルム表面に凸部形状が存在しなかったため、凸部形状の長さ等の測定を行わなかった。


Claims (12)

  1. ポリビニルアルコール樹脂を含有する水溶性フィルムであって、
    少なくとも一方のフィルム表面の長さ方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(LD)と幅方向の粗さ曲線要素の平均長さRSm(TD)との比RSm(LD/TD)が1.2以上2.5以下である、水溶性フィルム。
  2. 前記フィルム表面に長さ方向に長辺を有する凸部形状を複数有する、請求項1に記載の水溶性フィルム。
  3. 前記凸部形状の平均アスペクト比が2以上10以下である、請求項2に記載の水溶性フィルム。
  4. 前記凸部形状の平均高さが0.5μm以上5μm以下である、請求項2または3に記載の水溶性フィルム。
  5. 前記凸部形状の平均幅が10μm以上50μm以下であり、平均長さが30μm以上100μm以下である、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の水溶性フィルム。
  6. 前記凸部形状が製膜時の転写により設けられたものである請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の水溶性フィルム。
  7. 前記凸部形状がエンボス加工により設けられたものである請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の水溶性フィルム。
  8. フィルム表面の算術平均粗さRaの表裏比Ra(M/G)が2以上10以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水溶性フィルム。
  9. 前記RSm(LD/TD)が1.2以上2.5以下のフィルム表面がマット面である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の水溶性フィルム。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の水溶性フィルムが、薬剤を収容している包装体。
  11. グロス面が外表面である、請求項10に記載の包装体。
  12. 前記の薬剤が農薬、洗剤または殺菌剤である、請求項10または請求項11に記載の包装体。


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