JP7488100B2 - マイクロ波熟成装置およびマイクロ波熟成方法 - Google Patents

マイクロ波熟成装置およびマイクロ波熟成方法 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 平成30年11月15日~16日に北九州国際会議場において開催された第12回日本電磁波エネルギー応用学会シンポジウムにおいて公開
特許法第30条第2項適用 平成30年11月28日~30日にパシフィコ横浜において開催されたMWE2018マイクロウェーブ展において公開
特許法第30条第2項適用 平成31年2月19日~22日に東京ビッグサイトにおいて開催された第47回国際ホテル・レストラン・ショーにおいて公開
特許法第30条第2項適用 平成31年4月17日~19日に東京ビッグサイトにおいて開催された第44回食肉産業展2019において公開
本発明は、マイクロ波を照射して食品を熟成させる、マイクロ波熟成装置およびマイクロ波熟成方法に関する。
近年、牛肉を一定期間熟成させることで牛肉のうま味などを増大させた、いわゆる熟成肉が広く知られるようになり、その需要が増大している。牛肉を熟成させる場合には、本来40℃程度で熟成することがうま味などを引き出す点から好ましいが、菌の増殖による腐敗を抑制するために、通常は、1℃などの低温で熟成が行われている(特許文献1参照)。
特開2015-123057号公報
従来は、このように低温で熟成を行うため、熟成が完成するまでに長時間(長い場合には90~180日)を要してしまうという問題があった。また、熟成期間が長くなるほど、低温でも菌による腐敗が表面から進み、その分、表面をそぎ落とすトリミングの量が多くなり、歩留まりが悪くなるという問題があった。
本発明は、食品を安全かつ高速に熟成させることができるとともに、異なる態様で食品を熟成させることができる、マイクロ波熟成装置およびマイクロ波熟成方法を提供することを課題とする。
本発明に係るマイクロ波熟成装置は、食品を収納する熟成室と、前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振部と、前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、食品の内部温度を測定する内部温度センサと、前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、前記マイクロ波発振部は、半導体発振器であり、前記制御部は、一定の周波数および一定の出力に固定して前記マイクロ波発振部にマイクロ波を発振させる固定照射、所定周期で前記マイクロ波発振部に発振と停止とを繰り返させる間欠照射、周波数を経時的に変化させながら前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる掃引照射、および出力値を経時的に変化させながら前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる連続照射、のうち2以上の照射方法で、前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記制御部は、前記間欠照射、前記掃引照射、および前記連続照射のうち2以上の照射方法を組み合わせた照射方法で、前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させるように構成することができる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記マイクロ波発振部は最大出力値が100W以下であるように構成することができる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記内部温度センサは熱電対であるように構成することができる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記内部温度センサは、熱電対素線を収容したシース部を有し、前記シース部はマイクロ波が影響しない長さであるように構成することができる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記シース部は、シース長さが48mm未満であり、かつ、シース径は2.5mm未満であるように構成することができる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記内部温度センサは、補償導線を有し、前記補償導線は金属製のチューブ部材内に収容されているように構成することができる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記内部温度センサは、前記熟成室の内壁に設置された内部アダプタと接続する内部コネクタを有し、前記内部コネクタおよび前記内部アダプタを介して、前記熟成室の外側に設置された受信部と電気的に接続しており、前記内部コネクタは前記内部アダプタと着脱可能となっているように構成することができる。
本発明に係るマイクロ波熟成方法は、食品を収納する熟成室と、前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振する半導体発振器と、前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、前記半導体発振器の動作を制御する制御部と、を備えたマイクロ波熟成装置を用いて、食品を熟成させるマイクロ波熟成方法であって、所定周期で前記半導体発振器に発振と停止とを繰り返させる間欠照射、周波数を経時的に変化させながら前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる掃引照射、および出力値を経時的に変化させながら前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる連続照射、のうち1以上の照射方法により、または、2以上の照射方法を組み合わせて、前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる。
本発明によれば、食品を安全かつ高速に熟成させることができるとともに、半導体発振器を精密に制御することで、異なる態様で食品を熟成させることができる。
本実施形態に係るマイクロ波熟成装置の構成図である。 本実施形態に係る内部温度センサの構成図である。 連続照射を説明するための図である。 間欠照射を説明するための図である(その1)。 間欠照射を説明するための図である(その2)。 掃引照射およびによる熟成を説明するための図である。 掃引照射と連続照射とを組み合わせた照射方法による熟成を説明するための図である。
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係るマイクロ波熟成装置の構成図である。本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1は、ドライエイジングおよびウェットエイジングが可能な装置であり、肉類(ハムなどの加工肉食品を含む)、魚介類、チーズなどの乳製品、コーヒー豆などの豆類、野菜類、果物類、麺類、パン類、ワインなどの酒類、発酵食品(味噌や醤油などの発酵調味料を含む)などを熟成させることができる。マイクロ波熟成装置1は、図1に示すように、冷却器10、冷媒流路20、マイクロ波発振部30、熟成室40、断熱部50、内部温度センサ60、制御部70、およびUVランプ80を備える。
冷却器10は、図1に示すように、冷媒流路20と接続しており、冷媒流路20を循環する冷媒を冷却する。なお、冷却器10としては、たとえば、コンプレッサーやコンデンサーなどを有し、外部との熱交換により冷媒を冷却することができる公知の装置を用いることができる。
冷媒流路20は、冷却器10と接続しており、熟成室40の内部空間の空気を冷却するための冷媒が循環する。冷媒流路20は、熟成室40の壁部41と直に接しており、冷媒流路20を循環する冷媒が、熟成室40の壁部41と熱交換を行うことで、熟成室40の壁部41が冷却され、壁部41と接する熟成室40内の空気が冷却される。そして、熱交換を行い温まった冷媒は、再度、冷却器10へと戻り、冷却器10により冷却されることとなる。なお、冷媒は、特に限定されず、たとえばHFC(ハイドロフルオロカーボン)やHC(ハイドロカーボン)などを用いることができる。
マイクロ波発振部30は、食品Mに照射するためのマイクロ波を発振する。本実施形態では、マイクロ波発振部30として、半導体素子を用いたソリッドステート方式の半導体発振器が用いられる。半導体発振器は、マグネトロンと比べて、高い周波数および出力安定度が得られるとともに、出力値および周波数を数μ秒単位で精密に制御することができる。たとえば、半導体発振器では、数μ秒単位で発振と停止とを繰り返したり、数μ秒単位で出力値を数百ミリワット(0.数W)ごとに変更したり、あるいは、数μ秒単位で周波数を数Hzごとに変更したりすることができる。マイクロ波発振部30で発振されたマイクロ波は、ケーブル31を介して、熟成室40の照射口42から熟成室40内に照射される。
熟成室40には、熟成するための食品Mが載置される。マイクロ波発振部30により発振されたマイクロ波は、ケーブル31を介して、照射口42から熟成室40内に照射され、熟成室40内に載置された食品Mを均一加熱する。本実施形態においては、照射口42に、小型で利得が高いパッチアンテナ(平面アンテナ)が取り付けられており、これにより、マイクロ波発振部30により発振されたマイクロ波が熟成室40内に照射される。また、熟成室40の壁部41には、冷媒流路20が隙間なく直に接しており、冷媒流路20を流通する冷媒が熟成室40の壁部41を冷却し、壁部41が壁部41と接触する熟成室40内の空気を冷却することで、食品Mを表面から冷却することができる。これにより、食品Mの内部温度を食品Mの表面温度よりも高くすることが可能となる。
また、熟成室40は、図1に示すように、ファン43および扉(不図示)を備えている。ファン43は、たとえばドライエイジングに適した風量(たとえば0.5~10.0m/秒)で送風を行うことができるものを採用することができる。ファン43は、熟成室40内の空気を対流させることで、冷媒により冷却された冷気を食品Mに当てることができ、これにより、食品Mの表面を効率良く冷却することができる。また、扉には、マイクロ波が外部に漏洩することを防止するために、チョーク構造を有しており、外部から開閉可能となっている。なお、チョーク構造は公知の構造とすることができる。ユーザは、扉を開け閉めして、熟成を行う食品Mを熟成室40に出し入れすることができる。また、熟成室40の壁部41の内面(内壁)の全ての面には、マイクロ波を反射するための反射板が設置されている。熟成室40には、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波透過性材により構成された任意の形状の棚を設置してもよい。またステンレスなどの金属材料を使用する場合は、間隔が20mm以上の格子状の棚や、直径20mm以上の開口部を持つパンチングメタル形状の棚を設置しても良い。
断熱部50は、冷媒流路20を流通する冷媒が熟成室40に到達する前に外気と熱交換してしまうことを抑制するための部材である。断熱部50は、図1に示すように、冷媒流路20と隙間なく直に接しており、熟成室40の壁部41と伴に冷媒流路20を挟持する。断熱部50の素材としては、特に限定されず、たとえば発泡スチロールやウレタンなどを用いることができる。
内部温度センサ60は、食品Mの内部温度を測定する。ここで、図2は、本実施形態に係る内部温度センサ60の構成を示す図である。図2に示すように、内部温度センサ60は、シース部61と、スリーブ部62と、導線部63と、内部コネクタ64とを有する。また、内部温度センサ60は、図1に示すように、内部コネクタ64、内部アダプタ65、外部アダプタ66、および外部コネクタ67を介して、熟成室40の外側にある受信計68と接続しており、受信計68により温度が計測される。
シース部61は、一対の熱電対素線が金属保護管内に挿入されて構成されており、一対の熱電対素線の接点で生じる熱起電力に応じて対象物の温度を測定する。通常、2.40~2.50GHzのマイクロ波が照射される熟成室40内では、直径3mm以上のシース径を有するシース部でないと、自己加熱により正確な温度を測定することができない。しかしながら、本実施形態に係るシース部61では、シース部61の長さをマイクロ波の影響しない長さとすることで、直径3mm未満のシース径を有するシース部61(たとえば直径2.1mmのシース径を有するシース部61)でも正確な温度が測定できるようなっている。なお、シース部61の長さは、マイクロ波の影響しない長さであれば、特に限定されず、具体的には、周波数が2.40~2.50GHzの範囲のマイクロ波の場合、50mm±2mm,75mm±2mm,100mm±2mm,125mm±2mm,150mm±2mm,175mm±2mm、および200mm±2mm以外の長さとすればよい。また、内部温度センサ60に対するマイクロ波の影響を低減するために、シース部61は、シース長さを例えば48mm未満とし、かつ、シース径をφ2.5mm未満とすることもできる。
スリーブ部62は、シース部61と導線部63とを接続し、シース部61および導線部63を固定する。また、導線部63は、補償導線を有しており、当該補償導線が金属製のケーシングチューブ内に収容されて形成している。ここで、熟成室40内に補償導線を露出させてしまうと、マイクロ波の影響により温度測定が正確に行えない場合がある。そのため、本実施形態に係る導線部63では、補償導線を金属製のケーシングチューブ内に収容することで、マイクロ波が温度測定に与える影響を抑えることができる。なお、ケーシングチューブの内径は特に限定されないが、たとえば、約6mmの大きさとすることができる。
内部コネクタ64は、マイクロ波の影響しない金属により形成されており、これにより、熟成室40外へのマイクロ波の漏洩を防いでいる。また、内部コネクタ64は、熟成室40内の壁部41に設けられた内部アダプタ65と着脱可能となっている。内部アダプタ65は、外部アダプタ66と電気的に接続しており、外部アダプタ66は外部コネクタ67を介して受信計68と電気的に接続している。これにより、内部コネクタ64を内部アダプタ65と接続することで、シース部61から受信計68までが電気的に接続し、食品Mの温度を測定することが可能となる。また、内部コネクタ64は内部アダプタ65から容易に取り外すことができ、これにより、熟成室40内に置かれた内部温度センサ60を容易に清掃、交換することができる。
また、本実施形態において、マイクロ波熟成装置1は、食品Mの表面温度を測定する外部温度センサ(不図示)を有している。外部温度センサとして、たとえば非接触により赤外線や可視光線の強度を測定する放射型温度センサを用いることができる。
内部温度センサ60により測定された食品Mの内部温度、および外部温度センサにより測定された食品Mの表面温度は、制御部70へと出力される。そして、後述するように、制御部70により、内部温度センサ60により測定された食品Mの内部温度と、外部温度センサにより測定された食品Mの外部温度とに基づいて、温度制御が行われる。
制御部70には、熟成させる食品Mの表面温度および内部温度がそれぞれ所定の温度となるように温度制御を行うプログラムが組み込まれている。具体的には、制御部70は、冷却器10、マイクロ波発振部30およびファン43の動作を制御することで、冷却器10による冷気の温度、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の出力、ファン43の風量を制御して温度制御を行う。たとえば、制御部70は、マイクロ波発振部30のマイクロ波の出力を高くすることで食品Mの内部温度を高くすることができ、また、冷却器10による冷気の温度を低くし、あるいは、ファン43の風量を高くすることで食品Mの表面温度を低くすることができる。
また、制御部70は、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の発振を制御することができる。特に、本実施形態では、マイクロ波発振部30が半導体発振器であり、マイクロ波の発振を高い精度で制御することができる。そして、制御部70は、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の発振を制御することで、固定照射、間欠照射、掃引照射、および、連続照射という、マイクロ波の発振方式が異なる4つの照射方法で、マイクロ波を照射することができる。以下、各照射方法について説明する。
固定照射は、マイクロ波発振部30を一定の出力値および一定の周波数に固定して発振させる従来の照射方法である。
掃引照射は、周波数を経時的に変化させながらマイクロ波発振部30にマイクロ波を発振させる照射方法である。掃引照射を行う場合、制御部70は、たとえばマイクロ波の周波数を2.40~2.50GHzの間で連続的に変化させながら、マイクロ波を照射することができる。また、周波数の範囲は2.40~2.50GHzに限定されず、たとえば300MHz~300GHzの範囲で周波数を変更する構成とすることもできる。さらに、周波数を変更する幅も、特に限定されず、たとえば、数Hz~数GHzごとに周波数を変更する構成とすることができる。掃引照射によりマイクロ波の周波数を変化させながらマイクロ波を照射することで、熟成室40での電磁界の分布が均一化されるため、食品Mにも均一な分布でマイクロ波が照射され、食品Mの均一加熱(均一熟成)を促進することができる。
連続照射は、出力値を経時的に変化させながらマイクロ波発振部30にマイクロ波を発振させる照射方法である。ここで、図3は、マイクロ波発振部30の出力値を経時的に変化させる連続照射を説明するための図である。連続照射を行う場合、制御部70は、たとえば図3に示すように、マイクロ波発振部30の出力値を、2ミリ秒ごとに、0.2W単位で変化させながら、マイクロ波を発振させることで、連続照射を行うことができる。また、出力値の変更幅は特に限定されず、数ミリW~数Wごとに出力値を変更することができる。さらに、出力値を変更する時間間隔も特に限定されず、数ミリ秒~数時間ごとに出力値を変更することができる。なお、制御部70は、マイクロ波発振部30の出力値の昇降を、内部温度センサ60の測定結果に基づいて決定することができる。また、本実施形態において、連続照射におけるマイクロ波発振部30の最大出力値は50Wとしているが、これに限定されず、100W以下の任意の出力値とすることができる。
間欠照射は、短い周期(たとえば数ミリ秒周期)でマイクロ波発振部30に発振と停止とを繰り返させる照射方法である。ここで、図4および図5は、間欠照射を説明するための図である。なお、間欠照射において、最大出力値は100Wまで任意に設定することができ、また、周期も数ミリ秒から数時間まで任意に設定することができる。図4に示す例では、周期を2ミリ秒とし、1周期における発振時間を約7.8マイクロ秒(周期の1/256)単位で制御している。この場合、1周期における発振時間は、可変とすることができ、約7.8マイクロ秒×N(Nは整数)の長さとなる。また、図5に示す例では、周期を1秒とし、1周期における発振時間を約1ミリ秒単位で制御している。この場合、1周期における発振時間は、約1ミリ秒×N(Nは整数)の長さとなる。なお、制御部70は、デューティ比を設定することで、1周期における発振時間を設定することもできる。
このように、本実施形態において、制御部70は、様々な発振方法で、マイクロ波を照射することができる。これにより、食品Mの特性に応じた熟成や、今までにはない特徴を持った熟成を行うことが可能となる。また、制御部70は、間欠照射、掃引照射、および連続照射のうち1つのみを行う構成としてもよいし、また、間欠照射、掃引照射、および連続照射のうち2つ以上を組み合わせて行う構成とすることもできる。たとえば、制御部70は、掃引照射と連続照射とを組み合わせて、マイクロ波の周波数を2.40~2.50GHzの範囲で20秒間で掃引させるとともに、牛モモ肉の内部温度が10℃となるように2ミリ秒ごとに0.2Wごと出力値を変更させて、マイクロ波を照射する構成とすることもできる。また、制御部70は、掃引照射と間欠照射とを組み合わせて、マイクロ波の周波数を2.40~2.50GHzの範囲で20秒で掃引させるとともに、1周期を2ミリ秒とし、1周期における発振時間を約7.8マイクロ秒(周期の1/256)単位で変えて、マイクロ波を照射する構成とすることもできる。さらに、制御部70は、連続照射と間欠照射とを組み合わせて、2ミリ秒ごとに0.2Wごと出力値を変更するとともに、1周期を2ミリ秒とし、1周期における発振時間を約7.8マイクロ秒(周期の1/256)単位で変えて、マイクロ波を照射する構成とすることもできる。
また、制御部70は、マイクロ波の照射のON-OFFを一定時間(たとえば数時間)ごとに切り替えるように(間欠照射の場合は、間欠照射を行う期間と間欠照射を行わず発振を長期間停止する期間とを一定時間ごとに切り替えるように)、マイクロ波発振部30を制御する構成とすることもできる。たとえば、制御部70は、マイクロ波を3時間照射した後、マイクロ波の照射を3時間停止し、同様に、マイクロ波の照射と停止とを3時間ごとに、たとえば熟成期間である7日間ずっと繰り返すように、マイクロ波発振部30を制御することができる。
このようにマイクロ波を照射して食品Mを熟成する場合、マイクロ波は誘電加熱により食品内部まで加熱するため、食品Mの表面に加えて食品Mの内部まで加熱することができる。通常、食品Mの内部を温めることで食品Mの熟成を促進することができるが、食品Mの表面を温めることは食品Mの表面に付着した菌の増殖を促すこととなる。これに対して、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、冷却機構、すなわち、冷却器10およびファン43の動作により食品Mの表面を冷却することで、食品Mの表面に付着した菌の増殖を抑制することができる。
特に、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、制御部70の制御により、加熱機構(マイクロ波発振部30)による食品Mの加熱と、冷却機構(冷却器10およびファン43)による食品Mの表面の冷却とを同時に行うことで、食品Mの表面温度が内部温度よりも低くなるように、加熱機構および冷却機構の動作が制御されている。具体的には、制御部70は、食品Mの表面温度が内部温度よりも低くなるように、冷却器10による冷気の温度、マイクロ波発振部30の出力、ファン43による風量を制御する。なお、食品Mを熟成している間中、マイクロ波を連続して照射する必要はなく、少なくとも1時間以上(好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上)、マイクロ波の照射が行なわれる構成とすることができる。
UVランプ80は、紫外線を発生させる装置である。本実施形態では、UVランプを熟成室40内に直接設置することで、食品Mの熟成中に、UVランプ80で発生させた紫外線を、熟成室40内に置かれた食品Mの表面に照射することができる。このように、熟成中に、紫外線を食品Mの表面に直接照射することで、食品Mの表面に存在する菌の増殖をより抑制することができる。なお、制御部70は、UVランプ80の動作も制御することができる。たとえば、制御部70は、熟成を開始したタイミングまたは熟成室40の扉を(開けた後に)閉じたタイミングから、一定時間(たとえば数時間)、UVランプ80に紫外線を照射させるように制御を行うことができる。
次に、本発明に係るマイクロ波熟成装置1の実施例について説明する。本発明に係るマイクロ波熟成装置1による各種照射方法(掃引照射、連続照射および間欠照射)の効果を確認するために、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1と同様の構成の試作機を製作し、以下の実施例1~3の試験を行った。
(実施例1)
実施例1では、掃引照射による均一加熱効果を検証した。具体的には、大きさが150×150×30mm、重さ1kgのシリコンゴムの塊(対象物)を、100Wで1時間照射して、対象物の温度分布を測定した。また、実施例1では、(A)マイクロ波の周波数を2.40~2.50GHzの範囲で20秒をかけて掃引させて対象物を加熱した掃引照射と、(B)マイクロ波の周波数を2.45GHzに固定して対象物を加熱した固定照射とで、対象物の表面の温度分布を赤外放射温度計で測定した。図6は、実施例1で測定した対象物の温度分布の一例を示す図である。図6に示すように、(B)周波数を固定した固定照射では、対象物の表面の温度分布の差(最大温度-最低温度)は23.9℃であったのに対して、(A)周波数を掃引した掃引照射では対象物の表面の温度分布の差(最大温度-最低温度)は15.1℃となった。このように、掃引照射を行うことで、対象物を均一に(バラツキを抑えて)加熱できることがわかった。
(実施例2)
また、実施例2では、(C)掃引照射と連続照射とを組み合わせた照射方法により、牛モモ肉の表面温度を0℃、内部温度を10℃として、7日間熟成させた牛モモ肉と、(D)マイクロ波を照射せずに0℃で7日間熟成させた牛モモ肉とのグルタミン酸の増加量をそれぞれ測定した。なお、(C)の照射方法においては、最大出力値を50Wとし、周波数を2.40~2.50GHzの範囲で20秒で掃引させるとともに、牛モモ肉の内部温度が10℃となるように2ミリ秒ごとに0.2Wごと出力値を変更させて、マイクロ波を照射した。
図7にグルタミン酸増加量の測定結果を示す。図7に示すように、食品Mを7日熟成させた時点において、(C)掃引照射および連続照射を組み合わせた照射方法では、(D)マイクロ波を照射しないで熟成させた場合と比べて、グルタミン酸の増加量が約7倍となり、グルタミン酸が大幅に増加することが分かった。
(実施例3)
実施例3では、官能試験として、(E)掃引照射および間欠照射を組み合わせた照射方式により、4日間熟成させた牛モモ肉と、(F)マイクロ波を照射しないで0℃で4日間熟成させた牛モモ肉とを、5人のパネラーに食べ比べしてもらい、柔らかさ、味、総合の3項目について評価してもらうとともに、コメントを述べてもらった。なお、(E)の照射方法においては、最大出力値を50Wとし、マイクロ波の周波数を2.40~2.50GHzの範囲で20秒で掃引させるとともに、牛モモ肉の内部温度が10℃となるように、1周期を1秒とし1周期における発振時間を1ミリ秒単位で制御してマイクロ波の発振と停止とを繰り返させて、マイクロ波を照射した。下記表1に、官能試験の結果を示す。なお、当該官能試験では、(F)マイクロ波を照射せずに熟成させた牛内モモ肉を0点として、(E)の牛モモ肉を、4点評価(「優」が1点、「変化なし」が0点、「不良」が-1点、「不可」が-2点)で評価した。
その結果、5名中4名が、(E)掃引照射および間欠照射を行って4日間熟成させた牛モモ肉の方が、柔らかさ、味、総合の3項目について高く評価し、また、味がおいしい、ジューシー感がある、柔らかいなどと良好なコメントが得られた。
以上のように、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、マイクロ波発振部30から照射されたマイクロ波による食品内部の加熱と、冷媒流路20を流通する冷媒による食品表面の冷却とを同時に行うことで、食品Mの表面に存在する菌の増殖を抑制しながら、食品Mの熟成を促進することができる。すなわち、従来では、食品Mを低温下(たとえば1℃)において熟成させることで、食品Mの表面に存在する菌の増殖を抑制しながら熟成を行っていたが、マイクロ波を照射していないため、食品Mの内部温度も表面温度と同じ温度となり、熟成に時間がかかってしまう(たとえば30日~180日程度)という問題があった、また、低温でも菌による腐敗が表面から進むため、熟成に時間がかかるとその分、表面をそぎ落とすトリミングの量が多くなり、歩留まりが悪くなるという問題があった。しかしながら、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、食品Mにマイクロ波を照射しながら熟成することで、食品Mの内部を表面と同じく均一に加熱することができるため、マイクロ波発振部30による食品内部の加熱と、冷却器10およびファン43による食品表面の冷却とを同時に行うことで、食品Mの表面温度を低くしたまま、食品Mの内部温度だけを高くすることができる。これにより、従来と比べて、食品Mの表面に存在する菌の増殖を抑制することができるとともに、食品の熟成を促進することができる。
また、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、マイクロ波発振部30として、半導体発振器を用いることで、マグネトロンと比べて高い周波数および出力安定度のマイクロ波を発振することができる。特に、マグネトロン発振器は寿命が数千時間程度と短く24時間で連続照射した場合は数カ月毎に交換する必要が生じる。これに対して、半導体発振器では、10万時間程度の寿命を確保することが可能であるため、24時間連続照射した場合でも10年以上発振器の交換が不要であるため、マイクロ波発振部30についてほぼメンテナンスが不要となるという顕著な効果を得ることができる。さらに、高出力タイプの半導体発振部は高価でありコストが増大する傾向にあるが、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、マイクロ波発振部30の最大出力値を100W以下とすることで、十分な熟成効果を得ることができながらも、コストを低減することが可能となる。
さらに、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、マイクロ波発振部30として半導体発振器を用いることで、マイクロ波の精密な発振制御を行うことができ、マイクロ波発振部30を一定の出力および一定の周波数で固定して発振させる固定照射に加えて、短い周期(たとえば数ミリ秒周期)でマイクロ波発振部30に発振と停止とを繰り返させる間欠照射や、周波数を経時的に変化させながらマイクロ波発振部30にマイクロ波を発振させる掃引照射や、出力値を経時的に変化させながらマイクロ波発振部30にマイクロ波を発振させる連続照射を行わせることができる。このように、異なる発振方式の照射方法でマイクロ波を照射することで、食品Mの特性に応じた適切な熟成や、今までにない特徴を食品Mに付与する熟成を行うことができることが期待される。
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
たとえば、上述した実施形態では、内部温度センサ60として電熱対を有する温度センサを有する構成を例示したが、この構成に限定されず、内部温度センサ60として、蛍光式光ファイバー温度計や非接触式の放射型温度センサを用いることができる。
また、上述した実施形態では、固定照射、間欠照射、掃引照射および連続照射の4つの照射方法を行う構成を例示したが、この構成に限定されず、固定照射、間欠照射、掃引照射および連続照射のうち2以上の照射方法でマイクロ波を照射することができればよい。また、間欠照射、掃引照射および連続照射のうち1以上の照射方法でマイクロ波を照射することができる構成とすることもできる。
さらに、上述した実施形態では、活性炭フィルターを熟成室40内にさらに備える構成とすることができる。活性炭フィルターにより熟成室40の臭いを除去することができる。
加えて、上述した実施形態に加えて、熟成室40に載置された食品Mの重量を測定する測定器を、熟成室40の下部に備える構成としてもよい。この場合、食品の重量変化に基づいて、食品の熟成度合を判断し、ユーザに提示する構成としてもよい。また、非接触式の水分計をさらに備え、食品の重量変化および食品の水分量変化に応じて、食品の熟成度合を判断する構成とすることもできる。
1…マイクロ波熟成装置
10…冷却器
20…冷媒流路
30…マイクロ波発振部
31…ケーブル
40…熟成室
41…壁部
42…照射口
43…ファン
50…断熱部
60…内部温度センサ
70…制御部
80…UVランプ

Claims (9)

  1. 食品を収納する熟成室と、
    前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振部と、
    前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、
    食品の内部温度を測定する内部温度センサと、
    前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、
    前記マイクロ波発振部は半導体発振器であり、
    前記制御部は、熟成室を冷却しながら熟成室内の食品にマイクロ波を照射して食品を熟成させる場合に、下記(A)~(D)の2以上の照射方法を組み合わせて前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させることで、食品を熟成させる、マイクロ波熟成装置。
    (A)一定の周波数および一定の出力に固定して前記マイクロ波発振部にマイクロ波を発振させる固定照射
    (B)所定周期で前記マイクロ波発振部に発振と停止とを繰り返させる間欠照射
    (C)周波数を経時的に変化させながら前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる掃引照射
    (D)出力値を経時的に変化させながら前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる連続照射
  2. 食品を収納する熟成室と、
    前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振部と、
    前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、
    食品の内部温度を測定する内部温度センサと、
    食品の外部温度を測定する外部温度センサと、
    前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、
    前記マイクロ波発振部は半導体発振器であり、
    前記制御部は、熟成室を冷却しながら熟成室内の食品にマイクロ波を照射して食品を熟成させる場合に、前記内部温度センサで測定した前記食品の内部温度と、前記外部温度センサで測定した前記食品の外部温度とに基づき、前記食品の表面温度および内部温度がそれぞれ所定の温度となるように、下記(A)~(D)の1以上の照射方法で前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させることで、食品を熟成させる、マイクロ波熟成装置。
    (A)一定の周波数および一定の出力に固定して前記マイクロ波発振部にマイクロ波を発振させる固定照射
    (B)所定周期で前記マイクロ波発振部に発振と停止とを繰り返させる間欠照射
    (C)周波数を経時的に変化させながら前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる掃引照射
    (D)出力値を経時的に変化させながら前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる連続照射
  3. 前記内部温度センサは熱電対である、
    前記内部温度センサは、熱電対素線を収容したシース部を有し、
    前記シース部はマイクロ波が影響しない長さである、請求項1または2に記載のマイクロ波熟成装置。
  4. 前記シース部は、シース長さが48mm未満であり、かつ、シース径は2.5mm未満である、請求項3に記載のマイクロ波熟成装置。
  5. 前記内部温度センサは、補償導線を有し、前記補償導線は金属製のチューブ部材内に収容されている、請求項3または4に記載のマイクロ波熟成装置。
  6. 前記内部温度センサは、
    前記熟成室の内壁に設置された内部アダプタと接続する内部コネクタを有し、
    前記内部コネクタおよび前記内部アダプタを介して、前記熟成室の外側に設置された受信部と電気的に接続しており、
    前記内部コネクタは前記内部アダプタと着脱可能となっている、請求項3ないしのいずれかに記載のマイクロ波熟成装置。
  7. 食品を収納する熟成室と、
    前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振部と、
    前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、
    前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、
    前記マイクロ波発振部は半導体発振器であり、
    前記制御部は、熟成室を冷却しながら熟成室内の食品にマイクロ波を照射して食品を熟成させる場合に、周波数が一定の周波数範囲を横断するように周波数を掃引させながら、前記マイクロ波発振部にマイクロ波を照射させる掃引照射を行うことで、食品を熟成させる、マイクロ波熟成装置。
  8. 食品を収納する熟成室と、
    前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振する半導体発振器と、
    前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、
    前記半導体発振器の動作を制御する制御部と、を備えたマイクロ波熟成装置を用いて、食品を熟成させるマイクロ波熟成方法であって、
    熟成室を冷却しながら熟成室内の食品にマイクロ波を照射して食品を熟成させる場合に、以下の(A)~(D)の2以上の照射方法を組み合わせて前記半導体発振器にマイクロ波を照射させることで、食品を熟成させる、マイクロ波熟成方法。
    (A)一定の周波数および一定の出力に固定して前記半導体発振器にマイクロ波を発振させる固定照射
    (B)所定周期で前記半導体発振器に発振と停止とを繰り返させる間欠照射
    (C)周波数を経時的に変化させながら前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる掃引照射
    (D)出力値を経時的に変化させながら前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる連続照射
  9. 食品を収納する熟成室と、
    前記熟成室内に照射されるマイクロ波を発振する半導体発振器と、
    前記熟成室内の空気を冷却する冷却器と、
    食品の内部温度を測定する内部温度センサと、
    食品の外部温度を測定する外部温度センサと、
    前記半導体発振器の動作を制御する制御部と、を備えたマイクロ波熟成装置を用いて、食品を熟成させるマイクロ波熟成方法であって、
    熟成室を冷却しながら熟成室内の食品にマイクロ波を照射する熟成モードにおいて、前記内部温度センサで測定した前記食品の内部温度と、前記外部温度センサで測定した前記食品の外部温度とに基づいて、前記食品の表面温度および内部温度がそれぞれ所定の温度となるように、以下の(A)~(D)の1以上の照射方法で前記半導体発振器にマイクロ波を照射させることで、食品を熟成させる、マイクロ波熟成方法。
    (A)一定の周波数および一定の出力に固定して前記半導体発振器にマイクロ波を発振させる固定照射
    (B)所定周期で前記半導体発振器に発振と停止とを繰り返させる間欠照射
    (C)周波数を経時的に変化させながら前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる掃引照射
    (D)出力値を経時的に変化させながら前記半導体発振器にマイクロ波を照射させる連続照射
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