JP7485954B2 - 巻鉄心 - Google Patents

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Description

本発明は、巻鉄心に関する。
方向性電磁鋼板は、Siを7質量%以下含有し、二次再結晶粒が{110}<001>方位(Goss方位)に集積した二次再結晶集合組織を有する鋼板である。方向性電磁鋼板の磁気特性は、{110}<001>方位への集積度に大きく影響される。近年、実用されている方向性電磁鋼板では、結晶の<001>方向と圧延方向との角度が5°程度の範囲内に入るように制御されている。
方向性電磁鋼板は積層されて変圧器の鉄心などに用いられるが、主要な磁気特性として高磁束密度、低鉄損であることが求められている。結晶方位はこれら特性との強い相関が知られており、例えば、特許文献1~3のように、方向性電磁鋼板の実際の結晶方位と理想的な{110}<001>方位とのずれを、圧延面法線方向周りにおけるずれ角α、圧延直角方向周りにおけるずれ角β、および圧延方向周りにおけるずれ角γのように分けた精緻な方位制御技術が開示されている。
また、巻鉄心の製造は従来、例えば特許文献4に記載されているような、鋼板を筒状に巻き取った後、筒状積層体のままコーナー部を一定曲率になるようにプレスし、略矩形に形成した後、焼鈍することにより歪取りと形状保持を行う方法が広く知られている。
一方、巻鉄心の別の製造方法として、巻鉄心のコーナー部となる鋼板の部分を曲率半径が3mm以下の比較的小さな屈曲領域が形成されるように予め曲げ加工し、当該曲げ加工された鋼板を積層して巻鉄心とする、特許文献5~7のような技術が開示されている。当該製造方法によれば、従来のような大掛かりなプレス工程が不要で、鋼板は精緻に折り曲げられて鉄心形状が保持され、加工歪も曲げ部(角部)のみに集中するため上記焼鈍工程による歪除去の省略も可能となり、工業的なメリットは大きく適用が進んでいる。
さらに上記のように、加工歪を曲げ部(角部)のみに集中させ歪取焼鈍の省略を可能とした鉄心においては、加工歪の制御が重要となることが特許文献8に開示されている。
特開2001-192785号公報 特開2005-240079号公報 特開2012-052229号公報 特開2005-286169号公報 特許第6224468号公報 特開2018-148036号公報 AU2012337260A1 WO2018/131613
本願発明者らは、鋼板を曲率半径が5mm以下の比較的小さな屈曲領域が形成されるように予め曲げ加工し、当該曲げ加工された鋼板を積層して巻鉄心とする方法により製造した変圧器鉄心のさらなる効率の向上について検討した。該鉄心は、変形領域が鉄心全体に対して非常に狭い屈曲部に限定されており、一般的には鉄心形成後(曲げ加工後)の歪取焼鈍は必要とはされないが、鋼板を筒状に巻き取った筒状積層体のまま略矩形に形成し歪取焼鈍を行う形態の鉄心ほどではないものの、歪取焼鈍による効率の向上は認められる。この効率の向上について詳細に検討したところ、素材とする鋼板が同一である場合であっても、歪取焼鈍後の鉄心の効率に差が生じる場合があることを認識した。
この原因を探究したところ、注目する効率の差は、曲げ加工条件の違いが原因となっていることが推測された。
この観点で様々な鋼板製造条件、鉄心形状について検討して歪取焼鈍後の鉄心効率への影響を分類した結果、特定の製造条件により製造した鋼板を、特定の条件で曲げ加工することで、歪取焼鈍後の鉄心の効率改善が不十分となる事態を回避できるとの結果を得た。さらに曲げ加工条件を最適化すれば、歪取焼鈍を実施しない場合でも、加工条件が最適化されていない場合よりも効率の向上が可能であるとの結果を得た。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、鋼板を曲率半径が5mm以下の比較的小さな屈曲領域が形成されるように予め曲げ加工し、当該曲げ加工された鋼板を積層して巻鉄心とする方法により製造した巻鉄心において、歪取焼鈍を実施しない場合でもより好適な効率が発揮され、歪取焼鈍を実施する場合はより簡易な焼鈍が可能で、さらに焼鈍後の不用意な効率の悪化が抑制されるように改善した巻鉄心を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える巻鉄心であって、
前記巻鉄心本体は、長手方向に平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部を挟んで隣り合う2つの平面部のなす角が90°である方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略矩形状の積層構造を有し、
前記各コーナー部は、方向性電磁鋼板の側面視において、曲線状の形状を有する屈曲部を2つ以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する屈曲部それぞれの曲げ角度の合計が90°であり、
前記屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは1mm以上5mm以下であり、
前記方向性電磁鋼板が
質量%で、
Si:2.0~7.0%、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
Goss方位に配向する集合組織を有し、且つ
積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(1)式を満足することを特徴とする。
Sb/St>0.50 ・・・・・・(1)
ここで、屈曲部領域を複数の小領域に分割し、当該小領域を小区域とすると、小区域毎にKAM値の平均値を求め、これを各小区域のKAM値とする。
Stは屈曲部領域の総面積、SbはKAM値が0.01~3.00である小区域の合計面積である。
また、本発明の前記構成において、積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(2)式を満足してもよい。
Sa/St≦0.10 ・・・・・・(2)
ここで、SaはKAM値が0.01未満である小区域の合計面積である。
また、本発明の前記構成において、積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(3)式を満足してもよい。
Sc/St≦0.20 ・・・・・・(3)
ここでScはKAM値が3.00超である小区域の合計面積である。
本発明によれば、曲げ加工された鋼板を積層してなる巻鉄心において、歪取焼鈍を実施しない場合でもより好適な効率が発揮され、歪取焼鈍を実施する場合はより簡易な焼鈍が可能で、さらに焼鈍後の不用意な効率の悪化を効果的に抑制することが可能となる。
本発明に係る巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。 本発明に係る巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。 本発明に係る巻鉄心を構成する1層の方向性電磁鋼板の一例を模式的に示す側面図である。 本発明に係る巻鉄心を構成する1層の方向性電磁鋼板の別の一例を模式的に示す側面図である。 本発明に係る巻鉄心を構成する方向性電磁鋼板の屈曲部の一例を模式的に示す側面図である。 実施例および比較例で製造した巻鉄心の寸法を示す模式図である。
以下、本発明に係る巻鉄心について順に詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。また、化学組成に関する「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」、「直角」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において「方向性電磁鋼板」のことを単に「鋼板」または「電磁鋼板」と記載し、「巻鉄心」のことを単に「鉄心」と記載する場合もある。
本発明に係る巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える巻鉄心であって、前記巻鉄心本体は、長手方向に平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部を挟んで隣り合う2つの平面部のなす角が90°である方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略矩形状の積層構造を有し、前記各コーナー部は、方向性電磁鋼板の側面視において、曲線状の形状を有する屈曲部を2つ以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する屈曲部それぞれの曲げ角度の合計が90°であり、前記屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは1mm以上5mm以下であり、前記方向性電磁鋼板が質量%で、Si:2.0~7.0%、を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、Goss方位に配向する集合組織を有し、且つ積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(1)式を満足することを特徴とする。
Sb/St>0.50 ・・・・・・(1)
ここで、屈曲部領域を複数の小領域に分割し、当該小領域を小区域とすると、小区域毎にKAM値の平均値を求め、これを各小区域のKAM値とする。
Stは屈曲部領域の総面積、SbはKAM値が0.01~3.00である小区域の合計面積である。
1.巻鉄心及び方向性電磁鋼板の形状
まず、本発明の巻鉄心の形状について説明する。ここで説明する巻鉄心および方向性電磁鋼板の形状自体は、特に目新しいものではない。例えば背景技術において特許文献8~10として紹介した公知の巻鉄心および方向性電磁鋼板の形状に準じたものに過ぎない。
図1は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。また、図3は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。
なお、本発明において側面視とは、巻鉄心を構成する長尺状の方向性電磁鋼板の幅方向(図1におけるY軸方向)に視ることをいい、側面図とは側面視により視認される形状を表した図(図1のY軸方向の図)である。
本発明の巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える。当該巻鉄心本体は、方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられ、側面視において略矩形状の積層構造を有する。当該巻鉄心本体を、そのまま巻鉄心として使用してもよいし、必要に応じて積み重ねられた複数の方向性電磁鋼板を一体的に固定するために、結束バンド等、公知の締付具等を備えていてもよい。
本発明において、巻鉄心本体の鉄心長に特に制限はないが、鉄心において鉄心長が変化しても、屈曲部体積は一定であるため屈曲部で発生する鉄損は一定であり、鉄心長が長いほうが屈曲部の体積率は小さくなるため、鉄損劣化への影響も小さいことから1.5m以上であることが好ましく、1.7m以上であるとより好ましい。なお、本発明において、巻鉄心本体の鉄心長とは、側面視による巻鉄心本体の積層方向の中心点における周長をいう。
本発明の巻鉄心は、従来公知のいずれの用途にも好適に用いることができる。
図1及び図2に示すように、巻鉄心本体10は、長手方向に第1の平面部4とコーナー部3とが交互に連続し、当該各コーナー部3を挟んで隣り合う2つの第1の平面部4のなす角が90°である方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略矩形状の積層構造2を有する。なお、本明細書において、「第1の平面部」および「第2の平面部」をそれぞれ単に「平面部」と記載する場合もある。
方向性電磁鋼板1の各コーナー部3は、側面視において、曲線状の形状を有する屈曲部5を2つ以上有しており、且つ、一つのコーナー部3に存在する屈曲部それぞれの曲げ角度の合計が90°となっている。コーナー部3は、隣り合う屈曲部5,5の間に第2の平面部4aを有している。したがって、コーナー部3は2以上の屈曲部5と1以上の第2の平面部4aとを備えた構成となっている。
図2の実施形態は1つのコーナー部3中に2つの屈曲部5を有する場合である。図3の実施形態は1つのコーナー部3中に3つの屈曲部5を有する場合である。
これらの例に示されるように、本発明では、1つのコーナー部は2つ以上の屈曲部により構成できるが、加工時の変形による歪み発生を抑制して鉄損を抑える点からは、屈曲部5の曲げ角度φ(φ1、φ2、φ3)は60°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。
1つのコーナー部に2つの屈曲部を有する図2の実施形態では、鉄損低減の点から、例えば、φ1=60°且つφ2=30°とすることや、φ1=45°且つφ2=45°等とすることができる。また、1つのコーナー部に3つの屈曲部を有する図3の実施形態では、鉄損低減の点から、例えばφ1=30°、φ2=30°且つφ3=30°等とすることができる。更に、生産効率の点からは折り曲げ角度が等しいことが好ましいため、1つのコーナー部に2つの屈曲部を有する場合には、φ1=45°且つφ2=45°とすることが好ましく、また、1つのコーナー部に3つの屈曲部を有する図3の実施形態では、鉄損低減の点から、例えばφ1=30°、φ2=30°且つφ3=30°とすることが好ましい。
図6を参照しながら、屈曲部5について更に詳細に説明する。図6は、方向性電磁鋼板の屈曲部(曲線部分)の一例を模式的に示す図である。屈曲部の曲げ角度とは、方向性電磁鋼板屈曲部において、折り曲げ方向の後方側の直線部と前方側の直線部の間に生じた角度差を意味し、方向性電磁鋼板の外面において、屈曲部を挟む両側の平面部の表面である直線部分を延長して得られる2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2がなす角の補角の角度φとして表される。
この際、延長する直線が鋼板表面から離脱する点が、鋼板外面側の表面における平面部と屈曲部の境界であり、図6においては、点Fおよび点Gである。
さらに、点Fおよび点Gのそれぞれから鋼板外表面に垂直な直線を延長し、鋼板内面側の表面との交点をそれぞれ点Eおよび点Dとする。この点Eおよび点Dが鋼板内面側の表面における平面部と屈曲部の境界である。
そして本発明において屈曲部とは、方向性電磁鋼板の側面視において、上記点D、点E、点F、点Gにより囲まれる方向性電磁鋼板の部位である。図6においては、点Dと点Eの間の鋼板表面、すなわち屈曲部の内側表面をLa、点Fと点Gの間の鋼板表面、すなわち屈曲部の外側表面をLbとして示している。
また、図6には、屈曲部5の側面視における内面側曲率半径rが表わされている。上記Laを点E及び点Dを通過する円弧で近似することで、屈曲部5の曲率半径rを得る。曲率半径rが小さいほど屈曲部5の曲線部分の曲がりは急であり、曲率半径rが大きいほど屈曲部5の曲線部分の曲がりは緩やかになる。
本発明の巻鉄心では、板厚方向に積層された各方向性電磁鋼板1の各屈曲部5における曲率半径rは、ある程度の変動を有するものであってもよい。この変動は、成形精度に起因する変動であることもあり、積層時の取り扱いなどで意図せぬ変動が発生することも考えられる。このような意図せぬ誤差は、現在の通常の工業的な製造であれば0.2mm程度以下に抑制することが可能である。このような変動が大きい場合は、十分に多数の鋼板について曲率半径を測定し、平均することで代表的な値を得ることができる。また、何らかの理由で意図的に変化させることも考えられるが、本発明はそのような形態を除外するものではない。
なお、屈曲部5の内面側曲率半径rの測定方法にも特に制限はないが、例えば、市販の顕微鏡(Nikon ECLIPSE LV150)を用いて200倍で観察することにより測定することができる。具体的には、観察結果から、曲率中心A点を求めるが、この求め方として、例えば、線分EFと線分DGを点Bとは反対側の内側に延長させた交点をAと規定すれば、内面側曲率半径rの大きさは、線分ACの長さに該当する。
本発明では、屈曲部の曲率半径rを、1mm以上5mm以下の範囲として、下記に説明する摩擦係数が制御された特定の方向性電磁鋼板と合わせることによって、巻鉄心の騒音を抑制することが可能となった。屈曲部の内面側曲率半径rは、好ましくは3mm以下の場合に、本発明の効果がより顕著に発揮される。
また、鉄心内に存在するすべての屈曲部が本発明が規定する内面側曲率半径rを満足することが最も好ましい形態である。本発明の内面側曲率半径rを満足する屈曲部と満足しない屈曲部が存在する場合は、少なくとも半数以上の屈曲部が本発明が規定する内面側曲率半径rを満足することが望ましい形態である。
図4及び図5は巻鉄心本体における1層分の方向性電磁鋼板の一例を模式的に示す図である。図4及び図5の例に示されるように本発明に用いられる方向性電磁鋼板は、折り曲げ加工されたものであって、2つ以上の屈曲部5から構成されるコーナー部3と、平面部4を有し、1つ以上の方向性電磁鋼板の幅方向端面の接合部6を介して側面視において略矩形の環を形成する。
本発明においては、巻鉄心本体が、全体として側面視が略矩形状の積層構造を有していればよい。図4の例に示されるように、1つの接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心本体の1層分を構成するものであってもよく、図5の例に示されるように1枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心の約半周分を構成し、2つの接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心本体の1層分を構成するものするものであってもよい。
本発明において用いられる方向性電磁鋼板の板厚は、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択すればよいものであるが、通常0.15mm~0.35mmの範囲内であり、好ましくは0.18mm~0.23mmの範囲である。
2.方向性電磁鋼板の構成
次に、巻鉄心本体を構成する方向性電磁鋼板の構成について説明する。本発明においては、積層される電磁鋼板の屈曲部での方向性電磁鋼板の結晶組織の制御、および制御した電磁鋼板の鉄心内での配置部位を特徴とする。
(1)屈曲部の結晶組織
本発明の巻鉄心を構成する方向性電磁鋼板は、少なくとも屈曲部の一部において、積層される鋼板の屈曲部での結晶組織が制御される。本実施形態では、屈曲部に残留する転位密度を低減することで本実施形態での鉄心形状を有する鉄心における効率を改善する。注意を要するのは、鉄心を構成する鋼板中の転位密度の低減により鉄心効率が向上すること自体は原理的に当然であり、本発明はこの現象の特許性を主張するものではないことである。本願が対象とする鉄心は前述のように非常に狭い領域を局所的に加工して形成される。当然、この屈曲部の転位密度は非常に高くなる。一般的にはこれを熱処理すれば転位は回復、消滅し転位密度は大きく低下する。しかし、本願が対象とする鉄心では、その加工条件が影響し、屈曲部の転位密度は通常程度の熱処理では容易に低下しない状況となっている。このため、加工時において、熱処理で容易に転位密度が低下するような加工状態(転位構造)とすることが重要となる。本発明はこの点で新規な知見を得て、それをまとめることで従来では到達できなかった屈曲部での低転位密度の状態を実現したことを特徴とする。
このような現象が発生するメカニズムは明確ではないが、以下のように考えられる。
本発明が対象とする鉄心は、結晶方位がGoss方位に強く集積した方向性電磁鋼板に屈曲部を形成して構成される。この屈曲部には双晶が発生し、さらにこの屈曲部に通常程度の加熱処理を施した場合にも、再結晶などの顕著な組織変化は起きず、双晶組織が維持されることは、例えば技術文献8で開示されている通りである。熱処理において、このように組織変化が起きにくい理由は、屈曲部程度の大きさの領域、すなわち数mm程度の領域で考えると単結晶にもなっているGoss方位粒を屈曲部において結晶の方向が変わるように大きく変形させるには、幾何学的に双晶および多量の転位が必要であり、マトリックスでもある湾曲したGoss方位粒による幾何学的な制約が、転位の再配列や双晶の消失、新たな結晶方位である再結晶粒の発生を抑制していると考えられる。このように不用意な加工により変形をうけた状況では、双晶の発生とともに形成された多量の転位の再配列も抑制され、熱処理を行っても転位密度はそれほど低下できなくなっていると考えられる。逆の見方をすれば、適切な加工条件で変形すれば、幾何学的な要請を満足したままで再配列や不要な転位の消滅が可能となる転位構造とすることも可能となることを意味する。転位構造の詳細は不明であるが、このような状況が実現されることで、マクロには同じ変形、同じ熱処理を行った場合でも、変形領域内の転位密度の低減が可能になったと考えられる。このような本発明の作用機序は本発明が対象とする特定形状の鉄心での特別な現象と考えられ、これまでほとんど考慮されてはいないが、本発明者が得た知見と合致する解釈が可能である。
本発明において、屈曲部の結晶組織の特徴は以下のように測定される。
巻鉄心を構成する長尺状の方向性電磁鋼板の幅方向(図1におけるY軸方向)の中央部において屈曲部断面を観察する。ここで幅方向の中央部とするのは、曲げ変形の影響を正しく評価するためである。幅端面の近くの領域は、加工組織として、方向性電磁鋼板を長尺状に切り出す際の剪断加工の影響が存在する状況で曲げ加工がおこなわれていることに加え、曲げ加工での変形が平面歪の状態になく、特に鋼板の外面側領域ではわずかな幅縮みが発生することもあり、転位構造として特殊な状況になっており、本発明の評価部位としては適切ではない。本発明では、幅方向の中央部の板厚断面が表出するように研磨し、その研磨面をEBSD(Electron Back Scattering Diffraction)にて屈曲部領域について観察を行う。観察は、いくつかの視野に分けた数カ所で行っても良い。EBSDの観察データから一般的な方法により、結晶粒界を特定し、KAM(Kernel Average Misorientation)値を得る。
KAM値とは、方向性電磁鋼板の所定断面において、隣り合う結晶粒の方位の相対的な差の度合いを表す指標である。
KAM値の測定では、方向性電磁鋼板の上述した断面にイオンミリング等によって無ひずみの断面加工を施し、EBSDによって結晶方位差を解析する。この際、一例として、6角形のピクセルを使用する。そして所定のピクセルと、当該ピクセルと隣接する6つのピクセルの間の方位差の平均値を計算し、この平均値を所定のピクセルのKAM値とする。なお、ピクセルのステップサイズは0.3μmとした。
本発明においては、上記結晶粒界は一般的な判定値である15°以上の方位差が存在する境界を結晶粒界と判断する。そして、屈曲部領域を、結晶粒界、鋼板表面(図6のLaまたはLb)、屈曲部と平面部の境界(図6の線D-Gおよび線E-F)およびその他の境界(例えば双晶境界や変形帯等)のうちの少なくとも一つの境界で囲まれる小領域に分割する。本発明においてはこの小領域を「小区域」と呼ぶ。そして、小区域毎にKAM値の平均値を求め、これを各小区域のKAM値とする。
本実施形態に係る鉄心は、このようにして特定される小区域に関して、特定範囲のKAM値を有する小区域の合計面積により特徴づけられる。比較的低いKAM値を有する小区域の面積率を高めることで、屈曲部が効率的に磁化される。その結果、鉄心効率が改善される。
本実施形態に係る巻鉄心の一つの実施形態においては、積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(1)式を満足することを特徴とする。
Sb/St>0.50 ・・・・・・(1)
ここでStは、屈曲部の総面積、SbはKAM値が0.01~3.00である小区域の合計面積である。
KAM値の大きさは転位の量と正の相関になると考えられることから、この規定は、転位密度が極端に低い組織や極端に高い組織を排除し、中間的な転位密度を有する組織を主体とすべきことを示すものである。このような制御が必要となる理由は以下のように考えられる。
Sbに相当する組織は転位密度が適当量存在する組織である。この領域は、転位を幾何学的に必要とされる量に近い量を含有した組織と考えられる。この組織は加工により過度に多量に形成された転位が適度に回復、再配列した状態とも言える。ただし、このような適切な再配列は例えば加工条件を適切に制御した上で、適切な条件で熱処理を行うことで到達できる特別な状態でもある。そして、この範囲のKAM値となる組織は、素材でのGoss方位粒が変形した組織であり、磁化方向と<001>方向との整合は非常に良好である。その上で転位密度は必要最低限にまで低減されており、この組織が鉄心効率の向上にとっては最適と考えられる。(1)式は、好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.90以上である。もちろん1.00であっても構わない。
本実施形態に係る巻鉄心の別の実施形態においては、積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(2)式を満足することを特徴とする。
Sa/St≦0.10 ・・・・・・(2)
ここでSaはKAM値が0.01未満である小区域の合計面積である。
Saに相当する組織は転位密度が極端に低い組織である。転位の存在が磁化を阻害することは良く知られており、これを単純に考えるとSaは大きい方が好ましいように思われる。しかし、本発明が対象とする屈曲領域では素材鋼板の結晶方位であるGoss方位に応じて、局面となっている鋼板表面(素材の圧延方向)と<001>方位を平行に保つためには、曲がった形状を幾何学的に補償するため結晶組織中にはある程度の転位の存在が不可欠となる。つまり、転位がほとんど存在しない小区画は、素材鋼板でGoss方位であった結晶部分が失われた領域に相当する。具体的には加工時に形成した双晶に相当する領域、または熱処理中に再結晶した領域である。双晶は加工時の母相であったGoss方位とはまったく異なる結晶方位であり磁化方向(素材の圧延方向)と<001>方向が一致していない。また再結晶で生じた結晶粒は母相である元のGoss方位粒を蚕食するように成長するため、この領域も磁化方向と<001>方向との整合性は低い。このため、Saに相当する組織は抑制すべき組織となる。(2)式は、好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.02以下である。もちろんゼロであっても構わないが、加工時に発生した双晶はその後の熱処理においてもほとんど消失しないので、加工時に発生する少なからざる双晶に相当する面積率は不可避とも言える。
本実施形態に係る巻鉄心のさらに別の実施形態においては、積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(3)式を満足することを特徴とする。
Sc/St≦0.20 ・・・・・・(3)
ここでScはKAM値が3.00超である小区域の合計面積である。
Scに相当する組織は転位密度が極端に高い組織である。この組織はいわゆる「加工組織」に相当する組織である。(3)式は、一つには曲げ加工後の熱処理を行わない、または熱処理が不十分な場合を除外するための規定である。また、(3)式は、十分な熱処理を行ったとしても、転位密度が十分に低下しないような組織を排除するための規定であり、この点では本発明での特徴的な規定でもある。上述のように、磁化を阻害することが良く知られて転位の存在量が、局面となっている鋼板表面(素材の圧延方向)と<001>方位を平行に保つために幾何学的に必要とされる量を上回って過剰に残留してしまう組織を除外するものである。(3)式は、好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.05以下である。もちろんゼロであっても構わない。
(2)方向性電磁鋼板
上述のように、本発明において用いられる方向性電磁鋼板において母鋼板は、当該母鋼板中の結晶粒の方位が{110}<001>方位に高度に集積された鋼板であり、圧延方向に優れた磁気特性を有するものである。
本発明において母鋼板は、公知の方向性電磁鋼板を用いることができる。以下、好ましい母鋼板の一例について説明する。
母鋼板の化学組成は、質量%で、Si:2.0%~6.0%を含有し、残部がFeからなる。この化学組成は、結晶方位を{110}<001>方位に集積させたGoss集合組織に制御し、良好な磁気特性を確保するためである。その他の元素については、特に限定されるものではなく、Feに置き換えて、公知の元素を公知の範囲で含有することが許容される。代表的な元素の代表的な含有範囲は以下のようである。
C:0~0.0050%、
Mn:0~1.0%、
S:0~0.0150%、
Se:0~0.0150%、
Al:0~0.0650%、
N:0~0.0050%、
Cu:0~0.40%、
Bi:0~0.010%、
B:0~0.080%、
P:0~0.50%、
Ti:0~0.0150%、
Sn:0~0.10%、
Sb:0~0.10%、
Cr:0~0.30%、
Ni:0~1.0%、
Nb:0~0.030%、
V:0~0.030%、
Mo:0~0.030%、
Ta:0~0.030%、
W:0~0.030%、
これらの選択元素は、その目的に応じて含有させればよいので下限値を制限する必要がなく、実質的に含有していなくてもよい。また、これらの選択元素が不純物として含有されても、本発明の効果は損なわれない。なお、不純物は意図せず含有される元素を指し、母鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境等から混入する元素を意味する。
母鋼板の化学成分は、鋼の一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、母鋼板の化学成分は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。具体的には、例えば、被膜除去後の母鋼板の中央の位置から35mm角の試験片を取得し、島津製作所製ICPS-8100等(測定装置)により、予め作成した検量線に基づいた条件で測定することにより特定できる。なお、CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。
なお、上記の化学組成は、母鋼板の成分である。測定試料となる方向性電磁鋼板が、表面に酸化物等からなる一次被膜(グラス被膜、中間層)、絶縁被膜等を有している場合は、これらを公知の方法で除去してから化学組成を測定する。
(3)方向性電磁鋼板の製造方法
方向性電磁鋼板の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方向性電磁鋼板の製造方法を適宜選択することができる。製造方法の好ましい具体例としては、例えば、Cを0.04~0.1質量%とし、その他は上記方向性電磁鋼板の化学組成を有するスラブを1000℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、次いで、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷延により冷延鋼板とし、当該冷延鋼板を、例えば湿水素-不活性ガス雰囲気中で700~900℃に加熱して脱炭焼鈍し、必要に応じて更に窒化焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布した上で、1000℃程度で仕上焼鈍し、900℃程度で絶縁皮膜を形成する方法が挙げられる。さらにその後、摩擦係数を調整するための塗装などを実施しても良い。
また、一般的に「磁区制御」と呼ばれる処理を鋼板の製造工程において公知の方法で施した鋼板であっても本発明効果を享受できる。
3.巻鉄心の製造方法
本発明に係る巻鉄心の基本的な製造方法は、前記本発明に係る巻鉄心を製造することができれば特に制限はなく、例えば背景技術において特許文献8~10として紹介した公知の巻鉄心に準じた方法を適用すれば良い。特にAEM UNICORE社のUNICORE(https://www.aemcores.com.au/technology/unicore/)製造装置を使用する方法は最適と言える。
本発明に係る巻鉄心の製造方法の好ましい具体例としては、例えば、屈曲部を形成する曲げ加工時の、加工速度、工具との摩擦係数などを適切に制御する。
本発明に係る巻鉄心の好ましい製造条件として制御する加工速度は、方向性電磁鋼板を曲げ加工して屈曲部を形成する際の加工工具の移動速度を意味する。加工速度については、100mm/sec~700mm/secを好ましい範囲とする。この範囲を外れると本発明が特徴とする適切な熱処理により転位密度が低減しやすい転位構造を得ることが困難となる。この理由は明確ではないが、加工速度が高すぎると変形抵抗が大きくなり双晶が発生しやすくなるとともに加工中の転位密度が増加し転位の複雑に交絡するようになるためと考えられる。一方で加工速度が低すぎると加工中に転位が安定な構造に配置されてしまい、その後の熱処理で変化しにくくなるためと考えられる。さらに好ましくは、300~400mm/secである。
摩擦係数については、0.2~0.6を好ましい範囲とする。この範囲を外れると本発明が特徴とする適切な熱処理により転位密度が低減しやすい転位構造を得ることが困難となる。この理由は明確ではないが、摩擦係数が高すぎると特に鋼板の表層領域で変形時の巨視的な拘束が大きくなるため双晶が発生しやすくなるとともに加工中の転位密度が増加し転位の複雑に交絡するようになるためと考えられる。一方で摩擦係数が低すぎると特に鋼板の表層領域で加工中に転位が安定な構造に配置されてしまい、その後の熱処理で変化しにくくなるためと考えられる。さらに好ましくは、0.3~0.45である。
さらに公知の方法に準じて、必要に応じて熱処理を実施しても良い。また得られた巻鉄心本体は、そのまま巻鉄心として使用してもよいが、更に必要に応じて積み重ねられた複数の方向性電磁鋼板を結束バンド等、公知の締付具等を用いて一体的に固定して巻鉄心としてもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容について更に説明する。以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した条件例であり、本発明は、この条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(方向性電磁鋼板)
表1に示す化学組成(質量%、表示以外の残部はFe)を有するスラブを素材として、表2に示す化学組成(質量%、表示以外の残部はFe)を有する最終製品とした。
表1および表2において、「-」は含有量を意識した制御および製造をしておらず含有量の測定を実施していない元素である。また、「<0.002」および「<0.004」は含有量を意識した制御および製造を実施し、含有量の測定を実施したが、精度の信憑性として十分な測定値が得られなかった(検出限界以下)元素である。
Figure 0007485954000001
Figure 0007485954000002
製造工程は一般的な公知の方向性電磁鋼板の製造条件に準じたものである。
熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延を実施した。一部については、脱炭焼鈍後の冷延鋼板に、水素-窒素-アンモニアの混合雰囲気で窒化処理(窒化焼鈍)を施した。
さらに、主成分をマグネシアまたはアルミナとし、これらの混合割合を変化させた焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施した。仕上げ焼鈍鋼板の表面に形成された一次被膜の上に、燐酸塩とコロイド状シリカを主体としクロムを含有する絶縁被膜コーティング溶液を塗布し、これを熱処理して、絶縁被膜を形成した。このようにして製造された鋼板の詳細は表3に示す。
Figure 0007485954000003
(鉄心)
各鋼板を素材として、表4および図7に示す形状を有する鉄心a~fを製造した。この製造において、鋼板を折り曲げる際の加工条件を変化させることで、屈曲部のKAM値を制御する。
なお、L1は巻鉄心の一方の互いに平行な内面側平面部間距離、L2は巻鉄心の他方の互いに平行な内面側平面部間距離、L3は巻鉄心の積層厚さ、L4は巻鉄心の積層鋼板幅、L5は巻鉄心の最内部の互いに直角に配置された平面部間距離、rは巻鉄心の内面側の屈曲部の曲率半径、φは巻鉄心の屈曲部の曲げ角度である。略矩形状の鉄心a~fは、内面側平面部距離がL1である平面部が距離L1のほぼ中央で分割されており、「略コの字」の形状を有する2つの鉄心を結合した構造となっている。
Figure 0007485954000004
ここで、コアNo.fの鉄心は、従来から一般的な巻鉄心として利用されている、鋼板を筒状に巻き取った後、筒状積層体のままコーナー部を一定曲率になるようにプレスし、略矩形に形成する方法により製造された鉄心である。このため、屈曲部の曲率半径は鋼板の積層位置により大きく変動する。表4において、※の欄では、rが外側に従って増加し、最内周部で、r=6mm、最外周部でr=60mmである。
(評価方法)
(1)方向性電磁鋼板の磁気特性
方向性電磁鋼板の磁気特性は、JIS C 2556:2015に規定された単板磁気特性試験法(Single
Sheet Tester:SST)に基づいて測定した。
磁気特性として、800A/mで励磁したときの鋼板の圧延方向の磁束密度B8(T)、さらに交流周波数:50Hz、励磁磁束密度:1.7Tでの鉄損を測定した。
(2)KAM値
前述の通り鉄心から抜き出した鋼板の屈曲部領域を複数の小領域に分割し、当該小領域を小区域とすると、小区域毎にKAM値の平均値を求め、これを各小区域のKAM値とした。
(3)鉄心の効率
各鋼板を素材とする鉄心について焼鈍前の鉄心鉄損W1、800℃×2hr均熱による焼鈍実施後の鉄損W2を励磁電流法により測定し、鉄心鉄損W1、W2について以下の定義に基づいて、それぞれの効率η、ηを評価した。

焼鈍前: η=100-100×((鉄心鉄損W(W/kg)-素材鉄損(W/kg))/素材鉄損(W/kg))
焼鈍後: η=100-100×((鉄心鉄損W(W/kg)-素材鉄損(W/kg))/素材鉄損(W/kg))
磁区幅が異なる各種鋼板を用い、様々な加工条件で製造した各種鉄心における効率を評価した。加工条件および効率の結果を表5に示す。
表5において、Sb/St>0.50の鉄心を発明例とし、Sb/St≦0.50の鉄心を比較例としている。
なお、効率η、ηは数値が大きい程、良好であることを意味するが、コア鉄損(鉄心鉄損)が素材鉄損よりも小さくなることから、効率は100%を超えることがある。
表5に示すように、鋼種によらず、本発明範囲内の鉄心形状の鉄心において、屈曲部のKAM値を適切に制御することにより鉄心の効率を向上できることがわかる。
例えば、発明例の鉄心では、焼鈍前効率ηが87~96%、焼鈍後効率ηが93~107%であるのに対し、比較例の鉄心では、焼鈍前効率ηが24~86%、焼鈍後効率ηが81~98%となる。
また、Sb/St>0.50、Sa/St≦0.10およびSc/St≦0.20を全て満たす試験No「1-7」、「1-9」、「1-22」および「1-24」の本発明例に係る鉄心では、焼鈍前効率ηが94~96%、焼鈍後効率ηが103~107%であり、良好である。
これに対し、Sb/St>0.50、Sa/St≦0.10およびSc/St≦0.20を全て満たさない試験No「1-1」、「1-11」、「1-16」、「1-18」、「1-20」、「1-23」の比較例に係る鉄心では、焼鈍前効率ηが57~86%、焼鈍後効率ηが81~93%であり、本発明例に比して効率が低いことが分かる。
なお、試験No「1-25」~「1-32」は、屈曲部の曲率半径が大きく発明範囲外のコアにおいて、本発明が注目するKAM値の影響を確認した例である。これらの事例から、屈曲部の曲率半径が特定値より小さく設計された特殊な形状を有する鉄心でなければ、屈曲部近傍のKAM値を大きく変化させたとしても、本発明のような特徴的な効率改善効果は期待できないことがわかる。
Figure 0007485954000005
以上の結果より、本発明の巻鉄心は、少なくとも一つの屈曲部において、上述した(1)~(3)式を満足するから、歪取焼鈍を実施しない場合でもより好適な効率が発揮され、歪取焼鈍を実施する場合はより簡易な焼鈍が可能で、さらに焼鈍後の不用意な効率の悪化を効果的に抑制できることが明らかとなった。
1 方向性電磁鋼板
2 積層構造
3 コーナー部
4 第1の平面部(平面部)
5 屈曲部
6 接合部
10 巻鉄心本体

Claims (3)

  1. 側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える巻鉄心であって、
    前記巻鉄心本体は、長手方向に平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部を挟んで隣り合う2つの平面部のなす角が90°である方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略矩形状の積層構造を有し、
    前記各コーナー部は、方向性電磁鋼板の側面視において、曲線状の形状を有する屈曲部を2つ以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する屈曲部それぞれの曲げ角度の合計が90°であり、
    前記屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは1mm以上5mm以下であり、
    前記方向性電磁鋼板が
    質量%で、
    Si:2.0~7.0%、
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    Goss方位に配向する集合組織を有し、且つ
    積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(1)式を満足することを特徴とする、巻鉄心。
    Sb/St>0.50 ・・・・・・(1)
    ここで、屈曲部領域を複数の小領域に分割し、当該小領域を小区域とすると、小区域毎にKAM値の平均値を求め、これを各小区域のKAM値とする。
    Stは屈曲部領域の総面積、SbはKAM値が0.01~3.00である小区域の合計面積である。
  2. 積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(2)式を満足することを特徴とする、請求項1に記載の巻鉄心。
    Sa/St≦0.10 ・・・・・・(2)
    ここで、SaはKAM値が0.01未満である小区域の合計面積である。
  3. 積層された任意の方向性電磁鋼板の少なくとも一つの屈曲部において、以下の(3)式を満足することを特徴とする、請求項1または2に記載の巻鉄心。
    Sc/St≦0.20 ・・・・・・(3)
    ここでScはKAM値が3.00超である小区域の合計面積である。

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