(実施形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は真贋判定装置50の構成の一例を示す図である。真贋判定装置50は、装置全体を制御する制御部51、通信部52、メモリ53、画像撮像部54、発光制御部55、媒体種別判定部56、画像処理部57、判定部58、表示部59、操作部60、音声出力部61、及び記憶部62を備える。真贋判定装置50は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の携帯機器で構成され、ユーザによって携帯される。本実施形態では、真贋判定装置50として、スマートフォンを例に挙げて説明する。
記憶部62は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、コンピュータプログラム63、閾値パターン部64、及び所要の情報を記憶することができる。
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が所要数組み込まれて構成されている。制御部51は、コンピュータプログラム63で定められた処理を実行することができる。すなわち、制御部51による処理は、コンピュータプログラム63による処理でもある。制御部51は、コンピュータプログラム63を実行することにより、媒体種別判定部56、画像処理部57、及び判定部58の機能を実行することができる。媒体種別判定部56、画像処理部57、及び判定部58は、ハードウエアで構成してもよく、ソフトウエアで実現する構成としてもよく、あるいはハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現してもよい。コンピュータプログラム63は、通信部52を介してダウンロードして記憶部62に記憶してもよい。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラム63を読み取って記憶部62に記憶してもよい。
通信部52は、例えば、通信モジュールを備え、通信ネットワークを介して外部の装置との間の通信機能を備える。
メモリ53は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成することができる。コンピュータプログラム63をメモリ53に展開することにより、制御部51は、コンピュータプログラム63を実行することができる。
表示部59は、液晶表示パネル、有機EL表示パネル等を備え、真贋判定装置50による判定結果を表示することができる。
操作部60は、タッチパネル等で構成され、表示部59上で文字の入力操作を行うことができるとともに、表示部59に表示されたアイコン、画像又は文字等に対する操作を行うことができる。
音声出力部61は、スピーカを備え、音声を出力することができる。
画像撮像部54は、カメラを備え、対象媒体の画像を取得することができる。対象媒体は、真贋判定の対象物であり、例えば、クレジットカード、紙幣、株券、商品券や高級ブランド品など使用され、複製や偽造などを防止するための情報が記録された媒体である。本実施形態では、対象媒体はホログラフィー(ホログラム)を用いている。
図2はホログラフィーの概要を示す図である。図2のホログラフィーは、記録したい光波の振幅と位相(物体光)を、参照光と干渉させて干渉縞として媒体に記録し、回析現象を利用して記録した光波を再生する技術である。干渉縞が記録されたものをホログラムという。図2に示すように、物体光と参照光とを干渉させると、媒体に干渉縞が記録される。媒体が本物であれば、干渉縞が記録されているので、媒体に参照光を照射すると、記録した光波の振幅と位相とが物体光として再生される。一方、例えば、媒体をカラーコピーしたような複製媒体(贋物)には、干渉縞が記録されていないため、物体光は再生されない。
発光制御部55は、LEDを備え、LEDの発光のオン・オフ、光量の制御を行うことができる。
ユーザは、真贋判定装置50を用いて簡単な操作を行うだけで対象媒体の真贋判定結果を得ることができ、特殊な技能や専門知識を必要としない。簡単な操作は、(1)対象媒体を第1撮影条件で撮影すること、(2)対象媒体を第2撮影条件(第1撮影条件と異なる条件)で撮影することである。第1撮影条件は、LEDをオン状態、あるいは第2撮影条件よりもLEDの光量を多くする。第2撮影条件は、LEDをオフ状態、あるいは第1撮影条件よりもLEDの光量を少なくする。以下では、LEDをオン状態・オフ状態することで撮影条件を切り替えるものとする。
図3A対象媒体が本物である場合の第2撮影条件での撮影を示す図であり、図3Bは対象媒体が本物である場合の第1撮影条件の撮影を示す図である。対象媒体の判定領域内にホログラムが存在する。図3Aは、第2撮影条件の場合を示す。第2撮影条件では、LEDがオフ状態であるため、環境光だけが参照光として対象媒体に照射される。環境光の光量は比較的少ないので、回析光(再生される物体光)は少ない。環境光がスマートフォンで遮られる場合には、回析光はさらに少なくなる。
図3Bは、第1撮影条件の場合を示す。第1撮影条件では、LEDがオン状態であるため、環境光に加えてLEDの光が参照光として対象媒体に照射される。LEDの光量は多いので、第2撮影条件の場合と比較して、回析光(再生される物体光)は強くなる。具体的には、回析光特有の強い局所的輝度変化がある。このように、対象媒体が本物である場合には、第1撮影条件と第2撮影条件とで回析光の強さに比較的大きな差があるので、第1撮影条件で撮影して得られた第1画像の画素値と、第2撮影条件で撮影して得られた第2画像の画素値との差分は比較的大きくなる。
図4A対象媒体が贋物である場合の第2撮影条件での撮影を示す図であり、図4Bは対象媒体が贋物である場合の第1撮影条件の撮影を示す図である。対象媒体の判定領域内にはホログラムが存在しない。図4Aは、第2撮影条件の場合を示す。第2撮影条件では、LEDがオフ状態であるため、環境光だけが参照光として対象媒体に照射される。しかし、判定領域にはホログラムが存在しないので、回析光は再生されず、反射光がカメラに戻る。
図4Bは、第1撮影条件の場合を示す。第1撮影条件では、LEDがオン状態であるため、環境光に加えてLEDの光が参照光として対象媒体に照射される。しかし、判定領域にはホログラムが存在しないので、回析光は再生されず、反射光がカメラに戻る。この場合、反射光の輝度は撮影面全体で上がるものの、回析光特有の強い局所的輝度変化は見られない。このように、対象媒体が贋物である場合には、第1撮影条件と第2撮影条件とで回析光特有の強い局所的輝度変化は見られないので、第1撮影条件で撮影して得られた第1画像の画素値と、第2撮影条件で撮影して得られた第2画像の画素値との差分は比較的小さくなる。
図5は第1画像及び第2画像の一例を示す図である。図5では、対象媒体は本物である場合を示す。第1画像は、LEDがオンの状態で撮影された画像であり、強い参照光が対象媒体に照射されるので、ホログラムの存在によって、回析光特有の局所的輝度変化が大きい像(絵柄)が得られる。第2画像は、LEDがオフの状態で撮影された画像であり、弱い参照光が対象媒体に照射されるので、回析光の強さは弱く、輝度変化の少ない像(絵柄)が得られる。第1画像及び第2画像は、画像処理部57へ入力され、第1画像は媒体種別判定部56へ入力される。
媒体種別判定部56は、対象媒体の種別を判定する。対象媒体の種別は、例えば、ホログラムによって得られる絵柄の種別である。媒体種別判定部56は、種別判定結果を出力する。
画像処理部57は、取得部、生成部、及び抽出部としての機能を有し、第1画像及び第2画像に基づいて、所定の画像処理を行う。
図6は画像処理部57による処理の一例を示す図である。以下、画像処理部57による所定の画像処理について順に説明する。画像処理部57は、取得した第1画像及び第2画像に基づいて差分画像を生成する。差分画像は、第1画像の各画素の画素値(例えば、R、G、Bの各色成分)と第2画像の各画素の画素値(例えば、R、G、Bの各色成分)との差の絶対値を各画素の画素値とする画像である。第1画像と第2画像の縦横サイズが異なる場合には、第1画像又は第2画像のいずれかのサイズに合わせればよい。
画像処理部57は、生成した差分画像を複数の分割画像に分割する。図6の例では、5×5=25の分割画像に分割している。分割数は、適宜決定することができる。分割数を余り多くすると、後段の処理量が増大する。また、分割数が少なすぎると、分割画像のサイズが大きくなり、後段の処理で算出する、分割画像全体の輝度値の統計値(例えば、輝度の平均)が平滑化され、回析光特有の局所的輝度変化を捉えにくくする。分割数は、好ましくは、例えば、16、25、36などとすることができる。
画像処理部57は、複数に分割した分割画像のうち、画素値(差分)が大きい画素を含む分割画像を評価画像として抽出してもよい。図6の例では、25分割された分割画像のうち、太枠で囲まれた9個の分割画像を評価画像として抽出している。なお、評価画像の抽出は必須ではなく、分割画像をそのまま後段の処理へ入力してもよい。
画像処理部57は、分割画像(評価画像)に対して、グレースケール変換して、RGB値を輝度値に変換する。画像処理部57は、グレースケール変換された分割画像毎に、分割画像の各画素の輝度値の統計値を算出する。特徴量としての輝度値の統計値は、平均値でもよく、中央値でもよく、最頻値でもよい。本実施形態では、統計値として平均値を用いる。これにより、分割画像(評価画像)毎に輝度の平均値が算出される。図6に示すように、分割画像(i,j)の輝度平均(輝度の平均値)をY(i,j)で表す。ここで、i=1~3、j=1~3である。
図7は分割画像(評価画像)の輝度平均を模式的に示す図である。図7Aは、対象媒体が本物である場合を示す。図3で説明したように、対象媒体が本物である場合には、第1撮影条件と第2撮影条件とで回析光の強さに比較的大きな差があるので、第1撮影条件で撮影して得られた第1画像の画素値と、第2撮影条件で撮影して得られた第2画像の画素値との差分は比較的大きくなる。従って、分割画像(評価画像)それぞれの輝度平均は比較的大きくなる。
図7Bは、対象媒体が贋物である場合を示す。図4で説明したように、対象媒体が贋物である場合には、第1撮影条件と第2撮影条件とで回析光特有の強い局所的輝度変化は見られないので、第1撮影条件で撮影して得られた第1画像の画素値と、第2撮影条件で撮影して得られた第2画像の画素値との差分は比較的小さくなる。従って、分割画像(評価画像)それぞれの輝度平均は比較的小さくなる。
判定部58は、分割画像(評価画像)の輝度平均のパターンと閾値パターンとに基づいて対象媒体の真贋を判定する。
図8は閾値パターンの一例を示す図である。閾値パターンは、図7に例示する9個の分割画像(評価画像)それぞれの輝度平均に対応する輝度閾値を設定したマトリクスパターンであり、9個の閾値範囲R1(1,1)、R1(1,2)、R1(1,3)、R1(2,1)、R1(2,2)、R1(2,3)、R1(3,1)、R1(3,2)、R1(3,3)で構成される。R1(i,j)は{R1min(i,j)~R1max(i,j)}の閾値範囲を表す。R1min(i,j)は輝度閾値の下限値であり、R1max(i,j)は輝度閾値の上限値である。i、jは1~3の整数である。なお、閾値パターンの行列(縦横)の閾値の数は、差分画像における分割画像(評価画像)の縦横の数に応じて設定されている。
閾値パターンは、媒体種別に対応付けて、閾値パターン部64に格納されている。
図9は媒体種別と閾値パターンとの対応関係を示す図である。図9に示すように、閾値パターン部64には、媒体種別と閾値パターンとの対応関係を示す情報が格納されている。図9の例では、媒体種別(絵柄)を符号P1、P2、P3、…で表し、対応する閾値パターンを符号R1、R2、R3、…で表している。媒体種別判定部56の種別判定結果が、例えば、種別P1とすると、閾値パターンR1が選定される。
判定部58は、記憶部62に記憶した、複数種類の閾値パターンの中から、媒体種別判定部56が判定した媒体の種別に応じた閾値パターンを選定する。これにより、様々な絵柄がホログラムとして記録された対象媒体に対応して真贋判定を行うことができる。
判定部58は、分割画像の輝度平均及び閾値に基づいて分割画像毎に真贋を評価する第1評価値を算出する。第1評価値は分割画像(評価画像)毎に算出される。判定部58は、分割画像毎の第1評価値に基づいて、複数の分割画像で構成される差分画像の第2評価値を算出する。第2評価値は、差分画像毎に算出される。判定部58は、算出した第2評価値に基づいて対象媒体の真贋を判定する。
図10は真贋判定方法の第1例を示す図である。第1例は対象媒体が本物である場合を示す。まず、対象媒体Aについて説明する。対象媒体Aから撮影して得られた差分画像の分割画像(評価画像)を9個(3×3)とする。選定される閾値パターンも3×3のマトリクスパターンとなる。判定部58は、各分割画像の輝度平均と、閾値パターン内の当該分割画像に対応する位置の閾値とを比較し、輝度平均が閾値範囲内にある場合は第1評価値を「1」とし、輝度平均が閾値範囲内にない場合は第1評価値を「0」とする。図10の例では、3×3の第1評価値マトリクスの全ての第1評価値が「1」となっている。判定部58は、第1評価値マトリクスの第1評価値の平均を第2評価値として算出する。図10の例では、第2評価値は「1.0」となる。最終的に、判定部58は、第2評価値が評価閾値(例えば、0.85など)以上である場合、対象媒体は本物であると判定する。図10の例では、対象媒体Aは本物であると判定されている。評価閾値は適宜設定すればよい。
同様に、対象媒体Bから撮影して得られた差分画像の分割画像(評価画像)を9個(3×3)とする。選定される閾値パターンも3×3のマトリクスパターンとなる。判定部58は、各分割画像の輝度平均と、閾値パターン内の当該分割画像に対応する位置の閾値とを比較し、輝度平均が閾値範囲内にある場合は第1評価値を「1」とし、輝度平均が閾値範囲内にない場合は第1評価値を「0」とする。図10の例では、3×3の第1評価値マトリクスのうち8個の第1評価値が「1」となっている。判定部58は、第1評価値マトリクスの第1評価値の平均を第2評価値として算出する。図10の例では、第2評価値は「0.89」となる。最終的に、判定部58は、第2評価値が評価閾値(例えば、0.85など)以上であるので対象媒体Bは本物であると判定する。
図11は真贋判定方法の第2例を示す図である。第2例は対象媒体が贋物である場合を示す。対象媒体Cから撮影して得られた差分画像の分割画像(評価画像)を9個(3×3)とする。選定される閾値パターンも3×3のマトリクスパターンとなる。判定部58は、各分割画像の輝度平均と、閾値パターン内の当該分割画像に対応する位置の閾値とを比較し、輝度平均が閾値範囲内にある場合は第1評価値を「1」とし、輝度平均が閾値範囲内にない場合は第1評価値を「0」とする。図11の例では、3×3の第1評価値マトリクスの全ての第1評価値が「0」となっている。判定部58は、第1評価値マトリクスの第1評価値の平均を第2評価値として算出する。図10の例では、第2評価値は「0.0」となる。最終的に、判定部58は、第2評価値が評価閾値(例えば、0.85など)以上である場合、対象媒体は本物であると判定する。図11の例では、対象媒体Cは贋物であると判定されている。
同様に、対象媒体Dから撮影して得られた差分画像の分割画像(評価画像)を9個(3×3)とする。選定される閾値パターンも3×3のマトリクスパターンとなる。判定部58は、各分割画像の輝度平均と、閾値パターン内の当該分割画像に対応する位置の閾値とを比較し、輝度平均が閾値範囲内にある場合は第1評価値を「1」とし、輝度平均が閾値範囲内にない場合は第1評価値を「0」とする。図11の例では、3×3の第1評価値マトリクスのうち7個の第1評価値が「0」となっている。判定部58は、第1評価値マトリクスの第1評価値の平均を第2評価値として算出する。図11の例では、第2評価値は「0.22」となる。最終的に、判定部58は、第2評価値が評価閾値(例えば、0.85など)より小さいので、対象媒体Dは贋物であると判定する。
本実施形態によれば、簡単な操作を行うだけで対象媒体の真贋判定結果を得ることができ、特殊な技能や専門知識を必要としない。以下、真贋判定装置50としてスマートフォンを用いた場合の操作について説明する。
図12は対象媒体の真贋判定のための操作の一例を示す図である。以下では、ユーザに対する案内として音声ガイドを用いる例を説明するが、案内は文字等を表示する方法でもよく、文字と音声とを併用してもよい。図12に示すように、ユーサは、以下の3つのステップの操作を行うだけでよい。
ステップ1は、カメラの視野内の所定の枠内に対象媒体の判定領域が入るようにスマートフォンの位置を調整する。このとき、「枠線内に合わせてください。」の如く音声ガイドを出力してもよい。制御部51は、対象媒体の判定領域が撮影範囲内に入るように案内を出力してもよい。これにより、ユーザは対象媒体を適切に撮影することができる。また、撮影を開始する前に対象媒体(特に判定領域)に対して0次反射光の影響がないようにガイドしてもよい。例えば、判定領域と0次反射光領域が重ならないようにユーザに注意を促してもよい。
ステップ2では、ユーザは、LEDをオフ状態にして対象媒体を撮影する。このとき、「LEDをオフにして撮影してください。」の如く音声ガイドを出力してもよい。
ステップ3では、ユーザは、LEDをオン状態にして対象媒体を撮影する。このとき、「LEDをオンにして撮影してください。」の如く音声ガイドを出力してもよい。ステップ2とステップ3とでは、対象媒体とスマートフォンとの位置関係は維持した方が好ましい。カメラと対象媒体との位置関係を維持するためである。なお、対象媒体(特に判定領域)が撮影視野内入っていれば、スマートフォンの位置や角度は特に制限はない。
以上の3つのステップの操作を行うと、スマートフォンの表示画面には、対象媒体の真贋判定結果(例えば、「本物です」、「贋物」です)が表示される。真贋判定結果を音声で出力してもよい。制御部51は、対象媒体の真贋の判定結果を出力してもよい。
上述のように、制御部51は、第1撮影条件で対象媒体を撮影する第1操作を受け付け、第2撮影条件で当該対象媒体を撮影する第2操作を受け付け、第1操作及び第2操作によって得られた各画像に基づく対象媒体の真贋判定結果を表示することができる。これにより、簡単な操作を行うだけで対象媒体の真贋判定結果を得ることができ、特殊な技能や専門知識を必要としない。
また、真正の対象媒体は、参照光による干渉で生じた干渉縞を記録してあり、第1撮影条件は、第2撮影条件よりも参照光が多い。操作をより簡単にするために、第1撮影条件は、参照光あり(LEDをオン状態)、第2撮影条件は、参照光なし(LEDをオフ状態)としてもよい。なお、屋内の照明器具等による環境光の有無は考慮しなくてもよい。
上述のように、制御部51は、対象媒体を第1撮影条件で撮影した第1画像及び第2撮影条件で撮影した第2画像を取得し、取得した第1画像及び第2画像に基づいて差分画像を生成し、生成した差分画像の画素値に基づく特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて対象媒体の真贋を判定することができる。これにより、特殊な技能や専門知識が無くても媒体の真贋判定が可能となる。
図13は真贋判定装置50による真贋判定の処理手順の一例を示す図である。以下では、便宜上処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、第1撮影条件で対象媒体を撮影した第1画像を取得し(S11)、第2撮影条件で当該対象媒体を撮影した第2画像を取得する(S12)。制御部51は、取得した第1画像及び第2画像に基づいて差分画像を生成する(S13)。
制御部51は、取得した第1画像に基づいて対象媒体の種別を判定する(S14)。制御部51は、生成した差分画像を複数の分割画像に分割し(S15)、分割画像をグレースケール変換し、分割画像の輝度平均を算出する(S16)。制御部51は、判定した媒体種別に応じた閾値パターンを閾値パターン部64から読み出す(S17)。
制御部51は、分割画像毎に輝度平均と閾値を対比して分割画像毎に第1評価値を算出する(S18)。制御部51は、分割画像毎の第1評価値を平均することにより差分画像の第2評価値を算出する(S19)。制御部51は、第2評価値に基づいて対象媒他の真贋を判定し(S20)、判定結果を出力して(S21)、処理を終了する。
ホログラム媒体の特徴を利用して、視点の角度の差によって回析光が変化することによって媒体の真贋を判定する方法が考えられる。回析光の変化を捉えるためには、媒体と参照光と観察点の3点の位置関係を適切に設定する必要がある。例えば、適切な視点の角度制御が必要であり、あるいは確度の異なる複数のカメラが必要であり、あるいは光源と撮影面を同一面にする必要がある等の制約が生じる。しかし、本実施形態によれば、上述のような制約はない。
(実施形態2)
以下、図面に基づいて実施の形態を具体的に説明する。
図14は、真贋判定装置100の構成例を示すブロック図である。真贋判定装置100は、制御部110、記憶部111、操作部112、表示部113及び光源部114、及び撮像部115等を備え、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。本実施の形態では、真贋判定装置100は、スマートフォンであるが、これに限らず、例えば携帯電話、タブレット、スマートグラス等であってもよい。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等のプロセッサを含む。制御部110は、記憶部111に記憶してある制御プログラムを適宜実行することにより、真贋判定装置100が行う種々の情報処理、制御処理等を行う。
記憶部111は、制御部110が実行する制御プログラム、及び制御プログラムの実行に必要な各種のデータを予め記憶している。また記憶部111は、制御部110が制御プログラムを実行する際に発生するデータ等を一時的に記憶する。記憶部111に記憶される制御プログラムには、本開示のプログラムである判定プログラムPが含まれる。記憶部111に記憶されるデータには、後述する再生像データベース(以下、再生像DBという)が含まれる。再生像DBには、複数種類の光変調素子の再生像が登録されている。以下では、再生像DBに登録されている再生像、即ち真の光変調素子の再生像を正解再生像といい、贋の光変調素子の再生像を非正解再生像という。本実施の形態では、記憶部111は、スマートフォンのメモリであるが、スマートフォン用の外付けフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等であってもよい。
なお、記憶部111に記憶される判定プログラムPは、当該判定プログラムPを読み取り可能に記録した記録媒体Mにより提供されてもよい。記録媒体Mは、例えば、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型のメモリである。この場合、制御部110は、不図示の読取装置を用いて記録媒体Mから判定プログラムPを読み取り、読み取った判定プログラムPを記憶部111にインストールする。また、記憶部111に記憶される判定プログラムPは、不図示の通信部を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部110は、通信部を通じて判定プログラムPを取得し、取得した判定プログラムPを記憶部111にインストールする。
操作部112は、ユーザによる操作入力を受け付け、操作内容に対応した制御信号を制御部110へ出力する。表示部113は、制御部110からの指示に従って各種の情報を表示する。本実施の形態では、操作部112及び表示部113は、一体として構成されたタッチパネルであるが、別体構成されてもよい。また、操作部112は、例えばスマートフォン本体に設けられた操作ボタン、又はユーザの音声指令を収集するマイクであってもよい。
光源部114は、スマートフォンのLEDライトであり、光変調素子を照射して光像を浮かび上がらせるための点光源として機能する。
撮像部115は、スマートフォンのカメラであり、光変調素子及び該光変調素子の再生像を撮像して記憶部111に記憶する。
本実施の形態では、本開示のプログラムである判定プログラムPをスマートフォンにインストールし、制御部110が判定プログラムPを実行することにより、スマートフォンが本開示の真贋判定装置100として動作する。
図15は光変調素子102の一例を示す模式断面図である。図15の光変調素子102は、エンボスホログラムとも呼ばれており、判定対象物に貼り付けてある。判定対象物は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード、小切手カード等のカード類、金券類、身分証明書、重要書類、ブランド品等の商品、又は商品の包装を含む。図15に示すように、光変調素子102は、反射型のホログラム構造体1211を有するホログラム層121と、ホログラム層121の一方の面上に積層された基材124と、ホログラム層121の他方の面上に積層される反射層122とを備える。このホログラム構造体1211では、ホログラム層121の他方の面が凹凸面121aを形成し、この凹凸面121aを被覆する反射層122も凹凸形状を有する。ホログラム構造体1211が有する凹凸面121aは、原画像のフーリエ変換画像に対応した凹凸パターンを有し、フーリエ変換画像の画素毎に対応の凹凸深さを有する。このようなホログラム構造体1211に対して点光源から光が入射すると、凹凸面121aの凹凸パターンに応じた光像が再生される。
図16は真贋判定装置100を用いて光変調素子102に光像を再生させて撮像する概念図である。図16に示すように、光源部114をホログラム層121の反射層122とは反対側の面側である観察面側に配置した場合には、光変調素子102の丸状をなす外枠123に囲まれる領域に、再生像として「OK」の文字123aを観察することができる。
本開示の真贋判定装置100では、真贋判定装置100と光変調素子102との距離h(以下、撮像距離hという)を変更しながら、再生像が生じている光変調素子102を撮像部115によって撮像し、撮像によって得られた外枠123及び再生像の文字123aを含む複数の画像に基づいて真贋判定を行う。
撮像時に、図16に示すように、真贋判定装置100の撮像部115が設けられた裏面は、光変調素子102の観察面に臨むとともに、当該観察面とほぼ平行になる。また、撮像部115はホログラム構造体1211の形成領域の直上方に位置する。光変調素子102の観察面と直交する方向において真贋判定装置100を上記の姿勢のまま移動させながら撮像すると、撮像距離hの変化に応じた光変調素子102及びその再生像に係る動画又は複数の静止画が得られる。
なお、真贋判定装置100では、撮像時に、撮像部115を常に同一の撮像角度で撮像させるために、制御部110は撮像支援画像を表示部113に表示させる。図17は撮像支援画像を示している画面130の例を示す模式図である。図17Aに示すように、画面130には、撮像支援画像として、ターゲット画像131が表示されている。ターゲット画像131は3つの案内枠とされる3つの同心円の円弧を含む。なお、撮像支援画像は、ターゲット画像131に限らず、正解再生像の外枠像の形状に応じて適宜に設定すればよい。また、各案内枠の形状は1つの円における円弧に限らず、円全体であってもよい。案内枠の数は3に限らず、3以外の数であってもよい。さらに、図17に示すように、画面130には、ユーザの撮像指示を受け付けるためのシャッターボタン132が表示されている。
静止画撮像時に、ユーザは、画面130を見ながら真贋判定装置100の姿勢を調整し、画面130において外枠123がターゲット画像131における一方の案内枠と重なる際に、例えばシャッターボタン132をクリックして一枚目の写真を撮る。そして、真贋判定装置100を移動させて撮像距離hを変更させる。画面130において外枠123がターゲット画像131における他方の案内枠と重なる際に二枚目の写真を撮る。
動画撮像時に、ユーザは、画面130を見ながら真贋判定装置100の姿勢を調整し、画面130において外枠123がターゲット画像131における一方の案内枠と重なる際に、例えばシャッターボタン132をクリックして録画を開始させる。そして、真贋判定装置100を移動させて撮像距離hを変更させる。画面130において外枠123がターゲット画像131における他方の案内枠と重なる際に録画を終了させる。
このように、撮像時に、ユーザは、画面130における外枠123と、ターゲット画像131を構成する各案内枠との位置関係を確認しながら真贋判定装置100を移動させることで、撮像部115を常に同一の撮像角度で撮像させることができる。
撮像時に、制御部110は、真贋判定装置100を撮像対象から離す旨、又は真贋判定装置100を撮像対象へ近ける旨の操作手順提示情報を表示部113に表示させてもよい。また、制御部110は、ターゲット画像131における各案内枠を予め設定された順で表示させてもよい。例えば、静止画の撮像時に、1回目の撮像時にターゲット画像131における最も外側の円弧から構成される案内枠のみを表示させ、2回目の撮像時にターゲット画像131における真ん中の円弧から構成される案内枠のみを表示させ、3回目の撮像時にターゲット画像131における最も内側の円弧から構成される案内枠のみを表示させる。これにより、撮像距離hが徐々に大きくなる複数枚の写真が得られ、制御部110の情報処理が簡単になり、ユーザの撮像操作の容易性及び正確性も向上する。
なお、ターゲット画像131を表示させる前に、図17Bに示すように、撮像ガイド手段として四隅枠133を表示させ、操作手順提示情報として「枠内にホログラムを入れてください」という情報を画面130に表示させてもよい。なお、撮像ガイド手段は、四隅枠133に限らず、他の形状であってもよい。ユーザが該操作手順提示情報に従って画面130における光変調素子102を枠内に位置させた場合に、制御部110は光変調素子102の再生像を認識して再生像DBに記憶された正解再生像であるか否かを判定する。例えば、制御部110は、再生像が正解再生像でないと判定した場合には、表示部113に判定対処物が贋である旨の情報を表示させるが、再生像が正解再生像であると判定した場合には、ターゲット画像103又は1つの案内枠を表示部113に表示させる。
図18は撮像時の表示部113の画面表示の手順例を示すフローチャートである。
撮像部115が起動した場合に、表示部113は、図17Bに示すように、画面130において四隅枠133及び操作手順提示情報を表示する(ステップS31)。
制御部110が四隅枠133内の再生像を認識して正解再生像であると判定した場合に、表示部113は画面130において第1案内枠を表示する(ステップS32)。制御部110は、光変調素子102の外枠123が第1案内枠に合致する場合に、撮像部115に撮像指示を出力する。ここで、撮像指示は写真を撮る指示であってもよいし、録画を開始する指示であってもよい。なお、撮像部115は、制御部110からの指示の代わりに、シャッターボタン132を介して受け付けたユーザからの撮像指示に応じて撮像してもよい。
そして、表示部113は、画面130において真贋判定装置100を移動させる旨の操作手順情報を表示し(ステップS33)、第1案内枠のサイズと異なる第2案内枠を表示する(ステップS34)。制御部110は、光変調素子102の外枠123が第2案内枠に合致する場合に、撮像部115に撮像指示を出力する。ここで、撮像指示は写真を撮る指示であってもよいし、録画を停止する指示であってもよい。なお、撮像部115は、制御部110からの指示の代わりに、シャッターボタン132を介して受け付けたユーザからの撮像指示に応じて撮像してもよい。
制御部110による真贋判定が完了した場合、表示部113は画面130において真贋判定の結果を表示する(ステップS35)。
図19は撮像距離hの変化に応じた正解再生像の変化を示す概念図である。図19に示すように、真贋判定装置100が光変調素子102から離れることに伴って、文字123aが大きくなる。即ち、点光源との距離が大きければ大きいほど、正解再生像が大きい。また、図19には、撮像距離h1、h2、h3(h1<h2<h3)でそれぞれに撮像された正解再生像の写真1231、1232、1233が示されている。図19に示すように、撮像距離hが大きければ大きいほど、写真における外枠123(外枠像)が小さいが、写真1231、1232、1233における文字123a(パターン像)のサイズは同一である。即ち、正解再生像の写真における文字123aは、サイズが撮像距離hによって変化しないという特徴を有する。
これに対して、非正解再生像の場合では、「OK」の文字123aが観察できるが、写真における文字123aは正解再生像の上記特徴を有しない。図20は正解再生像及び非正解再生像の写真の対比図である。図20に示すように、撮像距離hが変化した場合、撮像された非正解再生像の写真において、文字123aも外枠123も変化する。具体的には、非正解再生像は、基準画像に対して、撮像距離hが小さくなると、写真における文字123a及び外枠123が大きくなり、撮像距離hが大きくなると、写真における文字123a及び外枠123が小さい。このような相違によって、正解再生像及び非正解再生像を区別することができる。
図21は制御部110によって実行される真贋判定処理の手順例を示すフローチャートである。本実施の形態では、光変調素子102の写真を所定枚撮って、これらの写真に基づいて真贋判定を行う。
制御部110は、光源部114及び撮像部115を起動させ(ステップS41)、表示部113に撮像支援画像を表示する(ステップS42)。
制御部110は、撮像指示を受け付けたか否かを判定し(ステップS43)、撮像指示を受け付けていないと判定した場合に(ステップS43:NO)、撮像指示を受け付けるまで待つ。
制御部110は、撮像指示を受け付けたと判定した場合に(ステップS43:YES)、撮像部115を制御して撮像させる(ステップS44)。
制御部110は、ステップS44において撮像された写真から幾何学形状情報を抽出して再生像DBに記憶された正解再生像との類似度を計算することで、パターンマッチ処理を行う(ステップS45)。
制御部110は、写真における再生像と正解再生像との類似度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS46)。ここで、所定値は、正解再生像の幾何学形状の特徴に応じて予め適宜に設定すればよい。
制御部110は、類似度が所定値以上でないと判定した場合(ステップS46:NO)、処理をステップS42に戻す。この場合、制御部110は、写真が測定に使用されない旨を表示部113に提示させることが好ましい。
制御部110は、類似度が所定値以上であると判定した場合(ステップS46:YES)、写真を記憶部111に記憶させる(ステップS47)。
制御部110は、撮像された撮像距離に応じた写真が所定枚数に達したか否かを判定し(ステップS48)、写真が所定枚数に達していないと判定した場合に(ステップS48:NO)、処理をステップS42に戻す。この場合、制御部110は、真贋判定装置100を移動させる旨を表示部に提示させることが好ましい。
制御部110は、写真が所定枚数に達したと判定した場合に(ステップS48:YES)、光源部114、撮像部115をオフし、記憶部111から各写真を読み出し(ステップS49)、写真における文字123a及び外枠123を認識する(ステップS50)。
制御部110は、各写真について、文字123aのサイズ及び外枠123のサイズを算出する(ステップS51)。文字123aのサイズは、各文字の長さ、幅、高さ及び線幅であってもよいし、各文字を構成する線の面積又はピクセル数であってもよい。外枠123のサイズは、円の径であってもよいし、面積又はピクセル数であってもよい。なお、複数の写真を比較することで文字123aのサイズ変化及び外枠123のサイズ変化を算出してもよい。
制御部110は、ステップS51において算出された外枠123のサイズに基づいて、外枠123のサイズが変化したか否かを判断する(ステップS52)。
制御部110は、外枠123のサイズが変化していないと判断した場合(ステップS52:NO)、処理をステップS42に戻す。
制御部110は、外枠123のサイズが変化したと判断した場合(ステップS52:YES)、文字123aのサイズが変化したか否かを判断する(ステップS53)。
制御部110は、文字123aのサイズが変化していないと判定した場合(ステップS53:NO)、判定対象物が真である旨を表示する指示を表示部113に出力し(ステップS54)、処理を終了する。
制御部110は、文字123aのサイズが変化したと判定した場合に(ステップS53:YES)、判定対象物が贋である旨を表示する指示を表示部113に出力し(ステップS55)、処理を終了する。
このように、真贋判定装置100は、撮像距離hを変更させながら光変調素子102の写真を複数枚撮像し、これらの写真における文字123aの変化の有無に基づいて、判定対象物の真贋を判定することができる。
以上では、撮像距離hを変更させながら撮像した光変調素子102に係る複数の静止画に基づいて真贋を判定する例について説明したが、撮像距離hを変更させながら撮像した光変調素子102に係る動画に基づいて真贋を判定してもよい。例えば、撮像距離hを変更させながら光変調素子102の動画を撮像し、動画から複数のフレームを抽出し、これらのフレームにおける文字123aの変化の有無に基づいて真贋を判定してもよい。
また、実施の形態では、撮像距離hの変化は、光変調素子102の外枠123のサイズ変化に基づいて判断するが、撮像部115のピントの変化に基づいて判断してもよいし、スマートフォンに搭載された光センサで光変調素子102からの距離を測定することで判断してもよい。
実施の形態では、光変調素子102の外枠123を参照物として判定するが、光変調素子102に他の参照物を予め設け、該参照物のサイズ変化に基づいて判定してもよい。
なお、制御部110によって実行される処理の一部は、クラウドサーバにより実行されてもよい。例えば、真贋判定装置100は、撮像部115で撮像し、撮像した画像をクラウドサーバへ送信し、クラウドサーバは、真贋判定装置100から送信された画像を受信した場合に、例えば図21に示すステップS50~ステップS53の処理を実行し、判定結果を真贋判定装置100に送信してもよい。
従来、真贋判定支援装置には、判定対象物の偽造防止媒体が出射する光のパターンを撮像し、撮像されたパターンと、真の偽造防止媒体が出射する光のパターンとを並べて表示させるものがある。しかし、このような装置にあっては、表示されている2つのパターンの相違を観察者が目視で判断するため、真の偽造防止媒体が出射する光のパターンの特徴を充分に理解した上で判定する必要があり、特別な技能がなければ区別がつけられない。特に、真贋のパターンの相違が微小な場合に、誤認識をしてしまう虞がある。
しかし、本実施形態によれば、特別な技能を必要とせずに真贋判定を容易に行うことができる。
(実施形態3)
図22は、真贋判定装置200構成例を示すブロック図である。真贋判定装置200は、制御部210、記憶部211、光源部212、及び撮像部213、表示部214及び操作部215を備える。真贋判定装置200は、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートグラス等の可搬型のコンピュータである。真贋判定装置200は、真贋判定の対象物203に設けられた光変調素子202にLED点光源からの光を照射し、当該光変調素子202に生じたホログラムの再生像220hを撮像して得た画像を解析することによって、対象物203の真贋を判定するものである(図5参照)。
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。制御部210の入出力インタフェースには、光源部212、及び撮像部213、表示部214及び操作部215が接続されている。ROMはコンピュータの初期動作に必要なプログラムを記憶している。RAMは、DRAM(Dynamic RAM)、SRAM(Static RAM)等のメモリであり、制御部210の演算処理を実行する際に記憶部211から読み出された後述のコンピュータプログラムP、又は制御部210の演算処理によって生ずる各種データを一時記憶する。CPUはコンピュータプログラムPを実行することにより、各構成部の動作を制御し、対象物203の真贋を判定する処理を実行する。つまり、制御部210を備えたコンピュータは、コンピュータプログラムPを実行することにより、本実施形態3に係る真贋判定装置200として動作し、本実施形態3に係る真贋判定方法を実施する。
記憶部211は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、本実施形態3に係る真贋判定方法の実施に必要なコンピュータプログラムPを記憶している。なお、実施形態3に係る記憶部211は、真贋判定装置200の内蔵メモリであるが、外付けのフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等であってもよい。
本実施形態3に係るコンピュータプログラムPは、記録媒体Mにコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部211は、図示しない読出装置によって記録媒体Mから読み出されたコンピュータプログラムPを記憶する。記録媒体MはSD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型の半導体メモリである。また、記録媒体MはCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体Mは、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、本実施形態3に係るコンピュータプログラムPは、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバが提供する態様であってもよい。真贋判定装置200は、通信網を介して提供された本実施形態3に係るコンピュータプログラムPをダウンロードし、記憶部211に記憶させる。
光源部212は被写体を照明するLEDライトである。LEDライトは、光変調素子202に対して光を照射し、再生像220hを生じさせるための点光源の一例である。
撮像部213は、レンズと、該レンズにて結像した像を電気信号に変換するCMOS、CCD等の撮像素子と、撮像素子にて変換された電気信号をデジタルの画像データにAD変換し、AD変換された画像データに各種画像処理を施す画像処理部とを備える。撮像部213は、撮像して得た画像データを制御部210に与える。なお、撮像部213は、動画及び静止画のいずれも撮像することができる。本実施形態3では、撮像部213は光変調素子202、及び当該光変調素子202に生じた再生像220hを撮像するために用いられる。撮像部213によって撮像して得た画像は記憶部211が記憶する。
表示部214は、液晶パネル、有機ELディスプレイ、電子ペーパ、プラズマディスプレイ等である。表示部214は、制御部210から与えられた画像データに応じた各種情報を表示する。
操作部215は、ユーザによる操作を受け付け、操作内容に対応した制御信号を制御部210へ出力するインタフェースである。操作部215は、例えば表示部214の表面又は内部に設けられたタッチセンサ、機械式操作ボタン等である。タッチセンサは、ユーザの指が表示部214に触れたこと、指が触れた位置等を検出することにより、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作情報を制御部210に与える。つまり、制御部210は操作部215にてユーザの操作を受け付けることができる。また、操作部215はユーザの音声指令を収集するマイクであってもよい。
図23は光変調素子202の一例を模式的に示す断面図である。本実施形態3に係る光変調素子202は、点光源からの光を回折することによって、当該光が照射される部位の中央部分Cに再生像220h(図26参照)を生じさせる光学素子である。再生像220hは例えば図柄、記号を表した画像、記号をコード化した画像等である。図23中、光変調素子202の上面側は撮像部213によって撮像される表面側であり、下面側は対象物203に接着される裏面側である。
光変調素子202は、例えば入射される光(入射光)の位相を変調して光像を再生する位相変調型のホログラム構造体2211を有するホログラム保持体として構成されている。ホログラム構造体2211は、特にフーリエ変換ホログラムによって構成される要素素子を含む。フーリエ変換ホログラムは、原画像のフーリエ変換像の波面情報を記録することで作製されるホログラムであり、いわゆるフーリエ変換レンズとして機能する。特に位相変調型のフーリエ変換ホログラムは、フーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして媒体に記録することで作製される凹凸面222aを有するホログラムであり、媒体の光路長差に基づく回折現象を利用して入射した光から原画像の光像を再生する。なお、このようなホログラムは、予定した入射光の波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計することが可能である。このようにして得られたホログラムは、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とも呼ばれる。ただし、本発明を適用可能な光変調素子202の要素素子は、フーリエ変換ホログラムには限定されず、他の方法で光像を再生するホログラムや他の構造を有する光変調素子202に対しても本発明を適用することが可能である。
具体的には、光変調素子202は、基材221と、シート状の基材221の裏面側(図23中、下側)に積層された反射型のホログラム構造体2211を有するホログラム層222と、ホログラム層222の裏面側(図23中、下側)に成膜された反射層223とを備える。
ホログラム構造体2211及び反射層223は、基材221の表面側から入射した光を回折して再生像220hを生成するための凹凸面222aを有する。つまり、ホログラム層222の裏面側(図23中、下側)の面が凹凸面222aを形成し、この凹凸面222aを被覆する反射層223も凹凸形状を有する。ホログラム構造体2211が有する凹凸面222aは、原画像のフーリエ変換画像に対応した凹凸パターンを有し、フーリエ変換画像の画素毎に対応の凹凸深さを有する。例えば、基材221(例えばPET:ポリエチレンテレフタレート)上にホログラム層222を構成する樹脂(例えばUV硬化樹脂や熱可塑性樹脂)を塗布などで形成し、当該ホログラム層222に対して、UV硬化処理や熱圧処理と共に原版凹凸面を押し当てる凹凸賦形処理が行われ、その後、当該ホログラム層222の凹凸面222a上に反射層223(例えば、Al、ZnS、或いはTiO2など)を形成することにより、図23に示すホログラム保持体を製造することができる。なお、反射層223上に、粘着材、接着剤、ヒートシール層等を更に形成してもよい。
このようなホログラム構造体2211に対して点光源から光が入射すると、凹凸面222aの凹凸パターンに応じた再生像220hが生ずる。以下の説明では、ホログラム構造体2211に対する光源部212からの光の入射角度は略0°(すなわちホログラム構造体2211の入射面の法線方向に沿った角度)である場合を想定する。以上のようなホログラム構造体2211に光を入射させた場合、点光源である光源部212からの光が照射される部位の中央部分Cに光像の再生像220hが再生される。
また、光変調素子202上に光源部212の点光源が映った点光源像PL(図26参照)は明るく目立ち、点光源像PLは、再生像220hの中心部分に映り込む。撮像部213は、再生像220hと共に点光源像PLを撮像する。
また、本実施形態3に係る光変調素子202の表面側には、非点光源からの光によって視認可能なマーク220を有する。マーク220は、例えば光変調素子202に印刷された図柄であり、光が透過する構成である構成が好ましい。つまり、マーク220は、当該マーク220を透過し、点光源である光源部212からの光がホログラム構造体2211に入射し、回折光がマーク220を透過して出射可能な構成が好ましい。更に、マーク220は必ずしも印刷物である必要は無く、ホログラム、例えばリップマンホログラムで構成するように構成してもよい。
なお、マーク220上に生ずる再生像220hを確認しない構成である場合、つまり、マーク220と異なる位置に生成される再生像220hを確認する構成の場合、マーク220は不透明な構成であってもよい。
図24は真贋判定装置200を用いて光変調素子202を撮像している状態を示す模式図である。図24に示すように、光変調素子202はシート状であり、真贋判定の対象物203に貼付される。対象物203は、例えば、契約書、キャッシュカード、クレジットカード、小切手カード等のカード類、金券類、身分証明書、重要書類、ブランド品等の商品、又は商品の包装を含む。
図24に示すように、光変調素子202の表面側を望む位置に光源部212を配置し、光源部212を点灯させた場合、光変調素子202は、光源部212からの光によって、当該光が照射される部位の中央部分Cを中心にして再生像220h(図26参照)を生成する。また、中央部分Cには点光源像PL(図26参照)が映り込む。以下、光源部212及び撮像部213は光変調素子202に対して正対した状態で照明及び撮像を行うものとする。つまり、光源部212及び撮像部213の光軸は、光変調素子202の法線方向と略一致するように、真贋判定装置200が操作されるものとする。なお、光軸及び法線方向の略一致とは、完全な一致を意味するものでは無く、本実施形態3に係る真贋判定を行うことが可能な範囲でのずれを含むものである。
図25は、点光源の光が照射されていないときの光変調素子202を示す模式図、図26A及び図26Bは、点光源の光が照射されているときの光変調素子202を示す模式図である。図25に示すように、光源部212が消灯している場合、光変調素子202に設けられたマーク220のみが視認される。光源部212を点灯させると図26Aに示すように、点光源である光源部212から照射された光によって、当該中央部分Cに再生像220hが生成される。図26中、星印は光源部212の点光源像PLを示している。光源部212の光が照射される部位の中央部分Cの位置と、点光源像PLの位置は一致している。以下、光源部212の光が照射される部位の中央部分Cの位置を、適宜、点光源像PLの位置と表記して説明する。
図26A及び図26Bに示すように、光源部212が光変調素子202の面内方向、つまり光変調素子202に対して略平行な方向へ移動した場合、マーク220の位置に対して、光源部212の光が照射される部位の中央部分C及び点光源像PLが移動するが、再生像220hも点光源像PLの移動に追従して移動し、常に当該中央部分C又は点光源像PLの位置に再生像220hが生成される。
本実施形態3の真贋判定装置200は、このように構成された光変調素子202を用いて対象物203の真贋判定を行う。具体的には、真贋判定装置200は、光変調素子202に対する光源部212の位置を変化させながら当該光変調素子202を撮像し、撮像して得た複数の画像におけるマーク220の位置、再生像220hの位置、及び点光源像PLの位置との関係を解析することによって、対象物203の真贋判定を行う。
図27は、実施形態3に係る真贋判定の処理手順を示すフローチャートである。図28は、実施形態3に係る真贋判定処理を実行している真贋判定装置200の表示画面例である。真贋判定装置200の制御部210は、撮像部213を起動し(ステップS111)、図28に示すように、撮像部213にて撮像された画像を表示部214に表示すると共に、照準線画像214a及びガイド表示部214bを表示する(ステップS112)。照準線画像214aは、例えば十字線の画像であり、光変調素子202のマーク220を撮像画像の中心に捉えるためのものである。ガイド表示部214bは、対象物203の真贋判定に必要な操作をユーザに指示するための情報を表示する。例えば、ガイド表示部214bは、撮像部213を水平方向へ移動させることを指示する情報を表示する。また、後述するように、ガイド表示部214bは、対象物203の真贋判定の結果を表示することができる。
ステップS112の処理を終えた制御部210は光源部212を点滅させる制御を行い(ステップS113)、撮像部213を用いて、点灯時及び消灯時において光変調素子202を撮像する(ステップS114)。ステップS114を実行する制御部210は、光変調素子202に対する光源部212(点光源)の位置を異にして撮像することにより得られた複数の画像を取得する取得部として機能する。そして、制御部210は、光源部212が消灯しているときに撮像された複数の画像に基づいて、光変調素子202に対する光源部212及び撮像装置の移動を検知する(ステップS115)。例えば、制御部210は、複数の画像に含まれるマーク220の画像の位置の変化量を算出することによって、発光部及び撮像部213の移動を検知することができる。なお、真贋判定装置200が加速度センサを備えている場合、制御部210は当該加速度センサを用いて、光源部212及び撮像部213の移動を検知するように構成してもよい。
次いで、制御部210は、撮像された画像に含まれる再生像220hの画像及び点光源像PLを判別する(ステップS116)。例えば、略同一のタイミングで光源部212が消灯していることに得られた画像と、光源部212を消灯していることに得られた画像とを比較することによって、点光源である光源部212によって生じた再生像220hを判別することができる。制御部210は、光源部212が点灯及び消灯しているときに撮像して得た画像の双方に含まれる像は、マーク220その他の画像であることと認識することができる。また、制御部210は、光源部212が消灯しているときに撮像して得た画像に含まれず、光源部212が点灯しているときに撮像して得た画像に含まれる像は、再生像220hであることを認識することができる。
一方、制御部210は、撮像して得た画像に含まれる点光源像PLを判別する。例えば制御部210は、2値化処理、モルフォロジ処理等により、輝度が所定値以上であって、撮像画像の略中央にあり、大きさが所定範囲内の画像を抽出することによって、点光源像PLを判別すればよい。
次いで、制御部210は、光変調素子202に対して光源部212等が移動しながら、所定回数以上、光変調素子202を撮像したか否かを判定する(ステップS117)。撮像回数が所定回数未満であると判定した場合(ステップS117:NO)、制御部210は処理をステップS113へ戻す。
所定回数以上撮像したと判定した場合(ステップS117:YES)、制御部210は、光源部212及び撮像部213を移動させながら撮像して得た複数の画像に基づいて、当該複数の画像における再生像220hの位置が、光源部212の移動に追従しているか否かを判定する(ステップS118)。具体的には複数の画像における点光源像PLの位置と、再生像220hの位置とが一致しているか否かを判定する。点光源像PL及び再生像220hの位置は、ステップS115の処理で特定され、制御部210は、点光源像PL及び再生像220hの中心が一致しているか否か、又は中心間の距離が所定値以内であるか否かを判定することによって、ステップS118の判定を行うとよい。
なお、点光源像PLの位置が既知である場合、制御部210は、ステップS118において再生像220hが点光源像PLの位置に相当する所定位置にあるか否かを判定すればよい。例えば、照準線画像214aの中心と点光源像PLの位置とが対応している場合、制御部210は、ステップS118において再生像220hが照準線画像214aの中心又は撮像された画像の中心にあるか否かを判定すればよい。この場合、ステップS115の処理で点光源像PLを認識する必要はない。
制御部210は、ステップS118の判定結果に基づいて、光変調素子202が貼付された対象物203が真正であるか否かを判定する(ステップS119)。例えば、制御部210は、複数の画像における点光源像PLの位置と、再生像220hの位置とが全て一致している場合、対象物203が真正であると判定する。なお、ステップS119を実行する制御部210は、取得した複数の画像における再生像220hの位置に基づいて対象物203の真贋を判定する判定部として機能する。
ステップS119において対象物203が真正であると判定した場合(ステップS119:YES)、制御部210は、対象物203が真正であることを示す情報を出力し(ステップS120)、処理を終える。例えば、制御部210は、ガイド表示部214bに、対象物203が真正なものであることを示す情報を表示する。ステップS120を実行する制御部210及び表示部214は、判定した結果を出力する出力部として機能する。
ステップS119において、真正で無いと判定した場合(ステップS119:NO)、例えば、点光源像PLの位置と、再生像220hの位置とが一致していない画像がある場合、制御部210は、所定回数以上、真正で無いと判定されたか否かを判定する(ステップS121)。真正で無いと判定された回数が所定回数未満である場合(ステップS121:NO)、ユーザの操作不備とも考えられるため、制御部210は、処理をステップS113へ戻し、真贋判定を継続する。
なお、制御部210は、真贋判定を適切に実施するための指示をガイド表示部214bに表示してもよい。例えば、撮像された画像に含まれるマーク220の画像が所定の第1閾値より小さい場合、制御部210は、撮像部213を光変調素子202に近づけることを指示する情報をガイド表示部214bに表示するとよい。逆に、マーク220の画像が所定の第2閾値より大きい場合、撮像部213を光り変調素子から遠ざけることを指示する情報をガイド表示部214bに表示するとよい。また、ステップS115で検出された移動速度が所定の上限速度以上である場合、ゆっくり撮像部213を移動させるべきことを指示する情報をガイド表示部214bに表示するとよい。
真正で無いと判定された回数が所定回数以上であると判定した場合(ステップS121:YES)、制御部210は、対象物203が贋物であることを示す情報を出力し(ステップS122)、処理を終える。例えば、制御部210は、ガイド表示部214bに、対象物203が贋物であることを示す情報を表示する。ステップS122を実行する制御部210及び表示部214は、判定した結果を出力する出力部として機能する。
従来、真贋判定の対象物に設けられた偽造防止媒体によって再生されるホログラムを撮像し、撮像されたホログラムと、真の偽造防止媒体によって再生されるべきホログラムとを並べて表示させるような真贋判定支援装置がある。しかし、このような装置にあっては、真の偽造防止媒体によって再生するホログラムの特徴を充分に理解した上で、表示される2つのホログラムの相違を目視で判定する必要があり、特別な技能がなければ区別がつけられない。特に、真贋のホログラムパターンの相違が微小な場合に、誤認識をしてしまう虞がある。
しかし、以上の通り、本実施形態3に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPによれば、ユーザは特別な技能を必要とせずに真贋判定を容易に行うことができる。具体的には、シート状の光変調素子202を撮像しながら、光変調素子202における点光源像PLを移動させるだけで、対象物203の真贋を判定することができる。
より詳細には、真贋判定装置200の制御部210は、撮像して得た画像に含まれる点光源像PLの位置にかかわらず、再生像220hの位置と、点光源像PLの位置とが一致しているか否かを判定する処理で、対象物203の真贋を判定することができる。
また、真贋判定装置200の制御部210は、撮像して得た画像に含まれるマーク220の位置と、点光源像PLの位置とから光源部212の移動を検知することができる。そして、制御部210は、上記の通り、点光源像PLの位置にかかわらず、再生像220hの位置と、点光源像PLの位置とが一致しているか否かを判定することにより、対象物203の真贋を判定することができる。
更に、真贋判定装置200の制御部210は、光源部212を点滅させながら光変調素子202を撮像することにより、撮像して得た画像に含まれる再生像220hを誤りなく判別することができ、より精度良く対象物203の真贋を判定することができる。
なお、本実施形態3では、真贋判定装置200の一例として、スマートフォン等の可搬型コンピュータを例示したが、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよい。また、真贋判定装置200は、サーバクライアントシステムや、クラウドサーバ、ソフトウエアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。本実施形態3に係るコンピュータプログラムPは、複数のコンピュータで分散して実行される構成であってもよい。
また、本実施形態3では平らな対象物203にシート状の光変調素子202を貼付する例を説明したが、対象物203及び光変調素子202は平面状である必要は無く、湾曲したものであってもよい。
更に、本実施形態3では真贋判定をコンピュータが実行する例を説明したが、真贋判定方法の一部又は全部を人が実行するように構成してもよい。
(実施形態4)
実施形態4に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPは、真贋判定処理の内容が異なり、使用する光変調素子202が第1マーク220a及び第2マーク220bを有し、光変調素子202を割印又は契印のように使用する点が実施形態3と異なる。真贋判定装置200のハードウエア、その他の構成は、実施形態3に係る真贋判定装置200等と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
図29は、対象物203に貼付された実施形態4に係る光変調素子202を示す模式図、図30は、実施形態4に係る光変調素子202の貼付方法を示す概念図である。実施形態4に係る真贋判定の対象物203は対をなす第1対象物半体231と、第2対象物半体232とを含む。実施形態4に係る光変調素子202は、第1対象物半体231及び第2対象物半体232の関連性が真であることを保証するために、当該第1対象物半体231と、第2対象物半体232との間に跨がるように貼付される。第1対象物半体231及び第2対象物半体232は、例えば、2枚以上の連続する契約書面、2部作成された契約書等である。
実施形態4に係る光変調素子202は、非点光源からの光によって視認可能な第1マーク220a及び第2マーク220bを有する。第1マーク220a及び第2マーク220bは離隔している。本実施形態4では、図29に示すように、第1マーク220aが第1対象物半体231側に位置し、第2マーク220bが第2対象物半体232側に位置するように光変調素子202が対象物203に貼付されている。
図31及び図32は、実施形態4に係る真贋判定の処理手順を示すフローチャート、図33~図38は、実施形態4に係る真贋判定処理を実行している真贋判定装置200の表示画面例である。
真贋判定装置200の制御部210は、撮像部213を起動し(ステップS211)、図33に示すように、撮像部213にて撮像された画像を表示部214に表示すると共に、照準線画像214a及びガイド表示部214bを表示する(ステップS212)。そして、制御部210は、第1マーク220aを照準線画像214aの中心に捉えることを指示する文字情報をガイド表示部214bに表示する(ステップS213)。
次いで、制御部210は、撮像部213にて光変調素子202を撮像し(ステップS214)、第1マーク220aが照準線画像214aの中心に捕捉されているか否か、言い換えると第1マーク220aの画像が撮像画像の中心に位置しているか否かを判定する(ステップS215)。第1マーク220aが照準線画像214aの中心に捕捉されていないと判定した場合(ステップS215:NO)、制御部210は処理をステップS214へ戻す。
第1マーク220aが照準線画像214aの中心に捕捉されたと判定した場合(ステップS215:YES)、制御部210は、図34に示すように光源部212を点灯させ(ステップS216)、撮像部213にて光変調素子202を撮像する(ステップS217)。そして、制御部210は、撮像して得た画像における再生像220h及び点光源像PLの画像を判別する(ステップS218)。再生像220h及び点光源像PLの判別方法は実施形態3と同様である。制御部210は、ステップS218の判別結果を一次記憶する。また、制御部210は、第1マーク220aが照準線画像214aの中心に捕捉され、光源部212が消灯している状態で撮像された画像と、光源部212を点灯した状態で撮像された画像とを一次記憶するとよい。
なお、ステップS217で撮像される画像は、中央部分Cが、第1マーク220aと一致した状態で撮像することにより得られた第1の画像に相当する。
そして、制御部210は、図35に示すように、第2マーク220bを照準線画像214aの中心に捉えるように移動すべきことを指示する文字情報をガイド表示部214bに表示する(ステップS219)。次いで、制御部210は、光源部212を消灯し(ステップS220)、光変調素子202を撮像する(ステップS221)。制御部210は、撮像された画像を一次記憶する。
制御部210は、撮像された時系列の画像に含まれる第1マーク220a又は第2マーク220bの位置の変化により、光変調素子202に対して光源部212が移動したか否かを判定する(ステップS222)。光源部212が移動していないと判定した場合(ステップS222:NO)、制御部210は処理をステップS221へ戻す。
光源部212が移動したと判定した場合(ステップS222:YES)、制御部210は光源部212を点灯させ(ステップS223)、光変調素子202を撮像し(ステップS224)、撮像して得た画像に含まれる再生像220h及び点光源を判別する(ステップS225)。
次いで、制御部210は、第2マーク220bが照準線画像214aの中心に捕捉されているか否か、言い換えると第2マーク220bの画像が撮像画像の中心に位置しているか否かを判定する(ステップS226)。第2マーク220bが照準線画像214aの中心に捕捉されていないと判定した場合(ステップS226:NO)、制御部210は処理をステップS220へ戻す。制御部210は、ステップS220~ステップS226の処理を繰り返し実行することによって、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させる過程で撮像して得た画像に含まれる再生像220h及び点光源像PLを判別ないし認識することができる。
第2マーク220bが照準線画像214aの中心に捕捉されたと判定した場合(ステップS226:YES)、制御部210は、対象物203の真贋判定に係る所定条件を充足するか否かを判定する(ステップS227)。
なお、第2マーク220bが照準線画像214aの中心に捕捉されたと判定される直前にステップS224で撮像される画像は、中央部分Cが、第2マーク220bと一致した状態で撮像することにより得られた第2の画像に相当する。
所定条件を充足すると判定した場合(ステップS227:YES)、制御部210は、図36に示すように、対象物203が真正であることを示す情報を出力し(ステップS228)、処理を終える。所定条件を充足しないと判定した場合(ステップS227:NO)、制御部210は、図37に示すように、対象物203が贋物であることを示す情報を出力し(ステップS229)、処理を終える。
なお、制御部210は、所定条件を充足しない場合、図38に示すように、もう一度操作をやり直すこと指示する文字情報をガイド表示部214bに表示するように構成してもよい。
また、上記の真贋判定処理では、第2マーク220bを中心に捉えた段階で、真贋判定を行う例を説明したが、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させる過程で都度、再生像220hと点光源像PLの位置が一致しているか否かを判定し、一致していない場合、又は所定回数以上一致していないと判定された場合、もう一度操作をやり直すこと指示する文字情報をガイド表示部214bに表示するように構成してもよい。
図39は、実施形態4に係る真贋判定に係る所定条件を充足するか否かを判定する処理手順を示すフローチャートである。ステップS227の処理において制御部210は、第1マーク220aを中心に捉えて撮像して得た画像に基づいて、再生像220h及び第1マーク220aの位置が一致しているか否かを判定する(ステップS251)。なお、制御部210は、更に、再生像220hと、点光源像PLの位置が一致しているか否かを判定するとよい。
再生像220h及び第1マーク220aの位置が一致していると判定した場合(ステップS251:YES)、制御部210は、第2マーク220bを中心に捉えて撮像して得た画像に基づいて、再生像220h及び第2マーク220bの位置が一致しているか否かを判定する(ステップS252)。なお、制御部210は、更に、再生像220hと、点光源像PLの位置が一致しているか否かを判定するとよい。
再生像220h及び第2マーク220bの位置が一致していると判定した場合(ステップS252:YES)、制御部210は、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させる過程で撮像された複数の画像に含まれる再生像220hと、各画像における点光源像PLの位置が一致しているか否かを判定する(ステップS253)。ステップS253においては、制御部210は、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させる過程で撮像された全ての画像について、再生像220hと、点光源像PLの位置が一致しているか否かを判定するように構成してもよいし、所定割合以上で、再生像220hと、点光源像PLの位置が一致しているか否かを判定するように構成してもよい。
複数の再生像220hと、点光源像PLの位置が一致していると判定した場合(ステップS253:YES)、制御部210は、所定条件を充足すると判定し(ステップS254)、処理を終える。
再生像220h及び第1マーク220aの位置が一致していないと判定した場合(ステップS251:NO)、再生像220h及び第2マーク220bの位置が一致していないと判定した場合(ステップS252:NO)、複数の再生像220hのうち、当該再生像220hと、点光源像PLの位置が一致していないと判定した場合(ステップS253:NO)、制御部210は、所定条件を充足しないと判定し(ステップS255)、処理を終える。
以上の通り、本実施形態4に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPによれば、ユーザは点光源像PLを第1マーク220aに合わせ、次いで、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させるだけ、対象物203の真正性を判定することができる。特に図29及び図30のように光変調素子202を対象物203に貼付した場合、真贋判定装置200は、第1対象物半体231と、第2対象物半体232との対が真正であるか否かを判定することができる。
(実施形態5)
実施形態5に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPは、使用する光変調素子202の構成及び真贋判定処理の内容が異なる。真贋判定装置200のハードウエア、その他の構成は、実施形態3に係る真贋判定装置200等と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
図40は、実施形態5に係る光変調素子202を示す概念図である。実施形態5に係る光変調素子202は、光源部212の点光源と、光変調素子202との距離に応じた異なる大きさの再生像220hを生成する点が実施形態4と異なる。以下、光源部212と、光変調素子202との距離を撮像距離と呼ぶ。実施形態5の例では、図40に示すように、撮像距離が大きい程、より大きな再生像220hが生成される。具体的には、図40中央図においては、撮像距離はh1であるところ、図40左図に示すように撮像距離がh2(<h1)と短くなると、再生像220hが小さくなる。また、図40右図に示すように撮像距離がh3(>h1)と長くなると、再生像220hが大きくなる。
再生像220hの大きさと、撮像距離との関係は特に限定されるものでは無いが、例えば、再生像220hの大きさと、撮像距離は比例関係にある。
図41は、実施形態5に係る真贋判定に係る所定条件を充足するか否かを判定する処理手順を示すフローチャートである。ステップS351~ステップS353の処理内容は実施形態4におけるステップS251~ステップS253と同様であるため、詳細な説明は省略する。
ステップS353において複数の再生像220hと、点光源像PLの位置が一致していると判定した場合(ステップS353:YES)、制御部210は、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させる過程で撮像された複数の画像に含まれる再生像220hの大きさと、撮像距離との関係が所定の関係であるか否かを判定する(ステップS354)。例えば、同一の光変調素子202において、再生像220hの大きさと、撮像距離との関係が一定となるように構成されている場合、制御部210は、再生像220hの大きさと、撮像距離との関係が一定であるか否かを判定する。再生像220hの大きさと、撮像距離との関係が比例関係にある場合、制御部210は、比例係数が一定であるか否かを判定する。なお、撮像距離は、第1マーク220aの大きさから推定するように構成すればよい。
再生像220hの大きさと、撮像距離との関係が所定の関係であると判定した場合(ステップS354:YES)、制御部210は、所定条件を充足すると判定し(ステップS355)、処理を終える。
再生像220h及び第1マーク220aの位置が一致していないと判定した場合(ステップS351:NO)、再生像220h及び第2マーク220bの位置が一致していないと判定した場合(ステップS352:NO)、複数の再生像220hのうち、当該再生像220hと、点光源像PLの位置が一致していないと判定した場合(ステップS253:NO)、撮像距離との関係が所定の関係にないと判定した場合(ステップS354:NO)、制御部210は、所定条件を充足しないと判定し(ステップS356)、処理を終える。
以上の通り、本実施形態5に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPによれば、点光源像PLを第1マーク220aに合わせ、次いで、点光源像PLを第1マーク220aから第2マーク220bへ移動させる過程で取得した複数の画像における再生像220hの位置及び大きさに基づいて対象物203の真贋を判定する。再生像220hの位置及び大きさを考慮することによって、より精度良く対象物203の真贋を判定することができる。
(実施形態6)
実施形態6に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPは、第1マーク220aと、第2マーク220bと、再生像220hとの関係を記憶する再生像データベース(再生像DB)216を用いて対象物203の真贋を判定する点が実施形態4及び5と異なる。真贋判定装置200のハードウエア、その他の構成は、実施形態3~5に係る真贋判定装置200等と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
図42は、実施形態6に係る真贋判定装置200の構成例を示すブロック図である。実施形態6に係る真贋判定装置200の記憶部211は、再生像データベース216を備える。
光変調素子202が生成する再生像220hは、当該光変調素子202に固有のものである。真贋判定の対象物203に貼付される光変調素子202は、対象物203毎に異なるため、当該対象物203に貼付された光変調素子202が再生する再生像220hも対象物203毎に異なる。そこで、真贋判定装置200の記憶部211は、光変調素子202の第1マーク220a及び第2マーク220bの特徴量と、再生像220hの特徴量との関係を再生像データベース216に予め記憶しておく。
図43A、43B及び43Cは、実施形態6に係る再生像データベース216の例を示す概念図である。再生像データベース216は、例えば図43Aに示すように、第1マーク220aの特徴量を格納する「第1マーク」列と、第2マーク220bの特徴量を格納する「第2マーク」列と、再生像220hの特徴量を格納する「再生像220h」列とを有する。特徴量の形態は特に限定されるものでは無い。
また、図43Bに示す他の例では、「第1マーク」列と、「第2マーク」列と、「再生像220h」列に加え、更に当該再生像220hが再生される位置を格納する「位置」列を有する。光変調素子202が生成する再生像220hは点光源の光を照射する位置によって変化させてもよく、再生像データベース216は、点光源の光が詳細される部位の中央部分Cの位置と、当該位置に生ずる再生像220hの特徴量との関係を格納する。
また、図43Cに示す他の例では、「第1マーク」列と、「第2マーク」列と、「位置」列、「再生像220h」列に加え、更に撮像距離と再生像220hの大きさの関係を格納している。
実施形態6に係る真贋判定装置200の制御部210は、実施形態4の図39に示す真贋判定処理、又は実施形態5の図41に示す真贋判定処理に加え、第1及び第2マーク220a,220bの特徴量と、再生される再生像220hの特徴量との関係が、図43Aに示す再生像データベース216に格納されている関係と整合しているか否かを判定する。整合している場合、制御部210は、対象物203が真正なものと判定する。
また、制御部210は、第1及び第2マーク220a,220bの特徴量と、再生される再生像220hの特徴量と、再生像220hの位置との関係が、図43Bに示す再生像データベース216に格納されている関係と整合しているか否かを判定するようにしてもよい。
更に、制御部210は、第1及び第2マーク220a,220bの特徴量と、再生される再生像220hの特徴量と、再生像220hの位置と、再生像220hの大きさとの関係が、図43Cに示す再生像データベース216に格納されている関係と整合しているか否かを判定するようにしてもよい。
以上の通り、本実施形態6に係る真贋判定装置200、真贋判定方法及びコンピュータプログラムPによれば、より精度良く、対象物3の真贋を判定することができる。
(実施形態7)
図44は、実施形態7に係る光変調素子202の貼付方法を示す概念図である。実施形態7に係る対象物250は、ID証であり、例えばIDカード基材5251と、IDカード基材251に貼付又は印刷された写真252とを含み、光変調素子202は、当該IDカード基材251と、写真252とに跨がって貼付されている。ID証は、例えばパスポート(旅券)、マイナンバーカード、免許証、会員証、社員証、学生証、クレジットカード等である。
実施形態7によれば、IDカード基材251に貼付又は印刷された写真252の真贋判定を行うことができる。
(実施形態8)
図45は、実施形態8に係る光変調素子202の貼付方法を示す概念図である。実施形態8に係る対象物260は、例えば施設への入場券、施設を利用するための年間利用パス、投票用紙等であり、本券261と、控え等の半券263とを含み、光変調素子202は、当該本券261及び半券262に跨がって貼付されている。
実施形態8によれば、本券261及び半券262の真贋判定を行うことができる。
(実施形態9)
図46は、実施の形態9に係る真贋判定システム300を使用して光変調素子302の真贋を判定する概念図である。
図46に示すように、真贋判定システム300は、真贋判定装置310と、光変調素子302の再生像を撮像する撮像装置330とを備える。撮像装置330は、光変調素子302の再生像が撮像された画像を真贋判定装置310へ送信する。真贋判定装置310は、受信した画像に基づいて、後述するように光変調素子302の真贋を判定し、判定結果を撮像装置330へ送信する。光変調素子302は被着体400に貼り付けてある。被着体400は、例えば、身分証明書、商品、又は商品の包装を含むが、これらに限定されない。
図47は光変調素子302の一例を示す模式断面図である。光変調素子302は、例えば、ホログラムシールであり、基材シート321の一側にホログラム形成層322、光反射層323及び粘着剤層324がこの順に積層された積層構造を持つものである。
ホログラム形成層322は、2又は3次元画像を再生可能な表面凹凸パターン、即ち回折光パターンが形成されたものである。この回折光パターンとしては、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞の光の強度分布が凹凸模様で記録されたレリーフ回折格子が記録可能である。ここに示すホログラム形成層322は、エンボスホログラムとも呼ばれている。ホログラム形成層322はその下層として、光反射層323を伴うことにより、ホログラムが明瞭に視認できるようになる。光変調素子302は、粘着剤層324を介して、被着体400に貼り付けられている。
ホログラム形成層322は、例えば、逐次重合で添加物により緩やかに重合が進行する材料、又は、空気中の酸素により緩やかに酸化、膨張/収縮する材料を使用して製造される。よって、ホログラム形成層322は経時変化する。
図48は、ホログラム形成層322の経時変化の例を説明する概念図である。図48に示すように、時間経過によって、ホログラム形成層322の回折格子の間隔が変化し、入射した光の出射角度が変化する。即ち、ホログラム形成層322の回折光パターンが経時変化するため、光変調素子302の再生像が経時変化する。
本実施の形態では、ホログラム形成層322にレリーフ型ホログラム記録層を用いた例を説明したが、ホログラム形成層322に体積型ホログラム記録層を用いてもよい。図49は、ホログラム形成層322の経時変化の例を説明する概念図である。図49には、体積型ホログラム記録層の経時変化が模式的に示されている。図49に示すように、時間経過によって、体積型ホログラム記録層は、密度が変化するため、その屈折率が変化し、入射した光の出射角度が変化する。これにより、体積型ホログラム記録層を用いた光変調素子302の場合、再生像が経時変化する。
図50及び図51は、光変調素子302の再生像の経時変化を説明する概念図である。図50及び図51は、異なる撮像日に光変調素子302の再生像を撮像した画像401及びそのフーリエ変換像402を示す。フーリエ変換は、画像401に含まれる周波数成分を抽出する際に使用される。図51には、説明の便宜上、図50における回折光が点線で示されている。図50及び図51に示すように、光変調素子302の経時変化によって、回折光の方向が変化し、再生像が経時変化する。図50及び図51に基づき、異なる撮像日に得られた画像401の相違は、肉眼で判断しにくいが、2つの画像の差分が周知の画像比較手法によって抽出される。特に、フーリエ変換を経たフーリエ変換像402において、2つの画像の相違が明らかである。即ち、光変調素子302は、時間経過によって、再生像が変化し、特に、再生像が撮像された画像からフーリエ変換により抽出される周波数成分が著しく変化する。
このように、再生像の経時変化に基づいて光変調素子302の製造からの経過時間を推定することができる。本実施の形態では、光変調素子302について、再生像が撮像された画像を経時別に取得し、画像からフーリエ変換により抽出された周波数成分に係る情報と、光変調素子302の製造からの経過時間に係る情報とを関連付けて記録して、後述する教師データDB3131を作成しておき、ニューラルネットワークなどの公知の機械学習アルゴリズムを利用して、教師データDB3131に基づく教師あり機械学習により、後述する学習モデル3132を生成し、学習モデル3132によって、光変調素子302の製造からの経過時間を推定する。さらに、推定された経過時間に基づいて、光変調素子302の真贋を後述するように判定することができる。
図52は、実施の形態9に係る真贋判定システム300の構成例を示すブロック図である。撮像装置330は、カメラ331と、表示部332と、通信部333とを備える。本実施の形態では、撮像装置330は、スマートフォンであるが、これに限らず、例えば携帯電話、タブレット、スマートグラスなどであってもよい。
カメラ331は、光変調素子302の再生像を撮像する。表示部332は、真贋判定装置310による判定結果を表示する。通信部333は、カメラ331によって再生像が撮像された画像を真贋判定装置310へ送信するとともに、真贋判定装置310からの判定結果を受信する。
真贋判定装置310は、制御部311と、通信部312と、記憶部313と、バスとを備える。制御部311は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部311は、一もしくは複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU又はGPU(Graphics Processing Unit)などにより構成される。制御部311は、バスを介して真贋判定装置310を構成するハードウエア各部と接続されている。
通信部312は、真贋判定装置310とネットワークとの間の通信を行なうインタフェースである。通信部312は、ネットワークを介して撮像装置330又は外部装置との通信を行う。
記憶部313は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ又はハードディスクなどである。記憶部313には、制御部311が実行する制御プログラム、及び制御プログラムの実行に必要な各種のデータを予め記憶している。また記憶部313は、制御部311が制御プログラムを実行する際に発生するデータなどを一時的に記憶する。記憶部313に記憶される制御プログラムには、本開示のプログラムである判定プログラムPが含まれる。
記憶部313には、さらに、教師データDB3131及び学習モデル3132が記憶されている。教師データDB3131は、光変調素子302の再生像が撮像された画像からフーリエ変換により抽出された周波数成分と、光変調素子302の製造からの経過時間とが関連付けられて記録されている。
学習モデル3132は、例えば、CNNなどのニューラルネットワークであり、教師データDB3131に基づいて教師あり機械学習を行うことにより生成される。教師あり機械学習は、たとえばロジスティック回帰、SVM(Support Vector Machine)、ランダムフォレスト、CNN、RNN又は、XGBoost(eXtreme Gradient Boosting)などの任意の手法により行なえる。学習モデル3132は、光変調素子302の再生像が撮像された画像のフーリエ変換による周波数成分を受け付けた場合に、光変調素子302の製造からの経過時間に関する推定を出力する学習済モデルである。具体的には、学習モデル3132の入力は、光変調素子302の再生像が撮像された画像からフーリエ変換により得られた周波数成分である。学習モデル3132の出力は、該光変調素子302の製造からの経過時間である。なお、学習モデル3132の出力は、具体的な経過時間に限らず、1年、2年、3年、…10年以上などの分類であってもよい。
本実施の形態では、撮像装置330から送信された画像は、制御部311によって、フーリエ変換による周波数成分が抽出されて学習モデル3132に入力される。学習モデル3132によって光変調素子302の製造からの経過時間が出力される。光変調素子302の製造からの経過時間と予め設定された閾値との比較により、光変調素子302の真贋が判定される。
本実施の形態の真贋判定装置310は、汎用のパソコン、タブレット、大型計算機、又は、大型計算機上で動作する仮想マシンである。真贋判定装置310は、複数のパソコン、タブレット又は大型計算機などのハードウエアにより構成されても良い。真贋判定装置310は、量子コンピュータにより構成されても良い。なお、真贋判定装置310は、撮像装置330が接続するインタフェースを有してもよい。なお、教師データDB3131及び学習モデル3132は、真贋判定装置310に接続された外部の大容量記憶装置などに保存されていても良い。
図53は、光変調素子302を切り取って再使用した場合における真贋判定を説明する概念図である。図53に示すように、本来に製品400Aに貼り付けられた光変調素子302が切り取られ、製品400Bに再使用されている。製品400A及び400Bには、それぞれの製造日が印刷されている。製品400Aの製造日は、光変調素子302の製造日と同じであるが、製品400Bの製造日より早い。
撮像装置330では、カメラ331で製品400Bに印刷された製造日を撮像し、撮像された画像から、周知の画像認識処理によって製造日を認識して、製品400Bの製造日に係る情報を得る。製品400Bの製造日に係る情報は、画像認識処理によって認識されたものに限らず、手動で入力された製造日の情報であってもよく、予め記憶された製造日の情報であってもよい。なお、製造日は、製品に印刷された日付に限らず、製品のバーコードやQRコード(登録商標)などに表現されてもよく、光変調素子302に予め記録されてもよい。そして、カメラ331によって光変調素子302の再生像が撮像され、通信部333によって製品400Bの製造日に係る情報と、再生像が撮像された画像とが真贋判定装置310へ送信される。
真贋判定装置310では、撮像装置330からの製造日に係る情報と再生像が撮像された画像とが通信部312によって受信された場合に、制御部311は、受信された再生像が撮像された画像について、フーリエ変換を行ってその周波数成分を抽出することで、再生像に係る情報を取得する。制御部311は、抽出した周波数成分を学習モデル3132に入力する。学習モデル3132は、入力された周波数成分に基づいて、光変調素子302の製造からの経過時間を推定して出力する。
制御部311は、受信された製品400Bの製造日に係る情報に基づいて、製品400Bの製造からの経過時間を算出し、製品400Bの製造からの経過時間と、学習モデル3132から出力された推定結果とを比較することで、真贋判定を行う。図53に示す例では、推定された光変調素子302の製造からの経過時間が、製品400Bの製造日からの経過時間よりも長いため、制御部31は、「贋」という判定結果を通信部312を介して撮像装置330へ送信する。撮像装置330では、真贋判定装置310から送信された判定結果が通信部312によって受信され、表示部332によって表示される。
このように本実施形態によれば、光変調素子が切り取られて再使用された場合でも、真贋判定を精度よく行うことができる。
図54は、光変調素子302を複製して使用した場合における真贋判定を説明する概念図である。図54に示すように、社員証400D及びその光変調素子302Bは、社員証400C及びその光変調素子302Aの複製品である。社員証400Cには、発行日が印刷されており、その発行日が光変調素子302Aの製造日と同じである。社員証400Dは、社員証400Cの複製品であるため、発行日が社員証400Cと同様に表記されている。
撮像装置330では、カメラ331で社員証400Dに印刷された発行日を撮像して、撮像された画像から、周知の画像認識処理によって発行日を認識して、社員証400Dの発行日に係る情報を得る。社員証400Dの発行日に係る情報は、画像認識処理によって認識されたものに限らず、手動で入力された発行日の情報であってもよく、予め記憶された発行日の情報であってもよい。なお、発行日は、社員証に印刷された日付に限らず、社員証のバーコードやQRコードなどに表現されてもよく、光変調素子302に予め記録されてもよい。そして、カメラ331によって光変調素子302の再生像が撮像され、通信部333によって社員証400Dの発行日に係る情報と、再生像が撮像された画像とが真贋判定装置310へ送信される。
真贋判定装置310では、撮像装置330からの発行日に係る情報と再生像が撮像された画像とが通信部312によって受信された場合に、制御部311は、受信された再生像が撮像された画像について、フーリエ変換を行ってその周波数成分を抽出することで、再生像に係る情報を取得する。制御部311は、抽出した周波数成分を学習モデル3132に入力する。学習モデル3132は、入力された周波数成分に基づいて、光変調素子302の製造からの経過時間を推定して、推定結果を出力する。
制御部311は、社員証400Dの発行日に係る情報に基づいて、社員証400Dの発行からの経過時間を算出し、社員証400Dの発行からの経過時間と、学習モデル3132から出力された推定結果とを比較することで、真贋判定を行う。図54に示す例において、推定された光変調素子302の製造からの経過時間が、社員証400Dの発行日からの経過時間よりも短いため、制御部311は、「贋」という判定結果を通信部312を介して撮像装置330へ送信する。撮像装置330では、真贋判定装置310から送信された判定結果が通信部312によって受信され、表示部332によって表示される。
このように本実施形態によれば、光変調素子が複製された場合でも、真贋判定を精度よく行うことができる。
真贋判定における比較の基準については、推定の誤差を考慮すると、推定された経過時間が一定の範囲内にあれば、真と判定することが好ましい。例えば、第1の閾値T1と、第1の閾値T1よりも小さい第2の閾値T2とを予め設定し、推定された経過時間がT1~T2の範囲内であれば、真と判定する。図53に示す例では、制御部311は、算出された製品400Bの製造からの経過時間に基づいて、第1の閾値T1及び第2の閾値T2を適当に設定すればよい。同様に、図54に示す例では、制御部311は、算出された社員証400Dの発行からの経過時間に基づいて、第1の閾値T1及び第2の閾値T2を適当に設定すればよい。
さらに、推定された経過時間が第1の閾値T1以上である場合、光変調素子302の製造からの経過時間が被着体400の製造からの経過時間よりも長いことが判断されるため、光変調素子302が再利用されたと判定できる。推定された経過時間がT2以下である場合、光変調素子302の製造からの経過時間が被着体400の製造からの経過時間よりも短いことが判断されるため、光変調素子302が複製されたと判定できる。
なお、光変調素子302の製造からの経過時間について、予め有効期限を設定し、推定された経過時間が有効期限を超えた場合に、贋と判定してもよい。
図55は真贋判定装置310の制御部311によって実行される真贋判定処理の手順例を示すフローチャートである。
制御部311は、撮像装置330からの再生像が撮像された画像を受信したか否かを判定し(ステップS411)、再生像が撮像された画像を受信していないと判定した場合に(ステップS411:NO)、再生像が撮像された画像を受信するまで待つ。
制御部311は、再生像が撮像された画像を受信したと判定した場合に(ステップS411:YES)、受信した画像について、フーリエ変換により再生像に含まれる周波数成分を抽出する画像処理を行う(ステップS412)。
制御部311は、抽出した周波数成分を学習モデル3132に入力し、学習モデル3132によって推定された製造からの経過時間Tを取得する(ステップS413)。
制御部311は、取得した経過時間Tが第1の閾値T1よりも小さいか否かを判定し(ステップS414)、経過時間Tが第1の閾値T1よりも小さいと判定した場合に(ステップS414:YES)、経過時間Tが第2の閾値T2よりも大きいか否かを判定する(ステップS415)。ここで、第2の閾値T2は第1の閾値T1よりも小さい。
制御部311は、経過時間Tが第2の閾値T2よりも大きいと判定した場合に(ステップS415:YES)、真と判定し(ステップS416)、通信部312を介して判定結果を撮像装置330へ送信し(ステップS417)、処理を終了する。
制御部311は、経過時間Tが第1の閾値T1よりも小さくないと判定した場合に(ステップS414:NO)、又は、経過時間Tが第2の閾値T2よりも大きくないと判定した場合に(ステップS415:NO)、贋と判定し(ステップS418)、処理をステップS417に移行する。
本実施の形態によると、学習モデル3132を利用して、光変調素子302の再生像が撮像された画像に基づいて光変調素子302の製造からの経過時間を推定し、推定された経過時間に基づいて光変調素子302の真贋を判定するため、光変調素子302の真贋判定を精度よく行うことができる。なお、本実施の形態に係る判定方法を、従来のテンプレートマッチングによる真贋判定方法と組み合わせてもよい。これにより、判定の精度を一層向上させることができる。
本実施の形態では、再生像に係る情報として、再生像が撮像された画像からフーリエ変換により抽出された周波数成分を説明したが、再生像に係る情報は、上記の周波数成分に限らず、波長などの画像特徴量でもよい。また、再生像に係る情報は、再生像が撮像された画像でもよい。この場合、教師データDB3131において、周波数成分に係る情報を記録するフィールドの代わりに、再生像が撮像された画像を記録するフィールドを設けることが望ましい。なお、光変調素子302の使用や保存の環境を考慮して、温度、湿度などを含む環境条件を記録するフィールドをさらに教師データDB3131に設けてもよい。この場合、再生像に係る情報は、さらに光変調素子302の周囲の環境条件に係る情報を含む。
本実施の形態では、フーリエ変換により周波数成分を抽出する画像処理は、真贋判定装置310側で行われるが、撮像装置330側で行われてもよい。即ち、撮像装置330では、光変調素子302の再生像を撮像した後、画像についてフーリエ変換を行って周波数成分を抽出して、周波数成分に係る情報を真贋判定装置310へ送信してもよい。
(実施形態10)
本実施の形態は、撮像装置と一体化された真贋判定装置500に関する。実施形態9と共通する部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
図56は、実施形態10に係る真贋判定装置500の構成例を示すブロック図である。真贋判定装置500は、制御部311と、通信部312と、記憶部313と、カメラ331と、表示部332と、バスとを備える。本実施の形態では、真贋判定装置500は、スマートフォンであるが、これに限らず、例えば携帯電話、タブレット、スマートグラスなどであってもよい。
本実施の形態では、本開示のプログラムである判定プログラムPをスマートフォンにインストールし、制御部311が判定プログラムPを実行することにより、スマートフォンが本開示の真贋判定装置500として動作する。
なお、記憶部313に記憶される判定プログラムPは、当該判定プログラムPを読み取り可能に記録した記録媒体Mにより提供されてもよい。記録媒体Mは、例えば、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型のメモリである。この場合、制御部311は、不図示の読取装置を用いて記録媒体Mから判定プログラムPを読み取り、読み取った判定プログラムPを記憶部313にインストールする。また、記憶部313に記憶される判定プログラムPは、通信部312を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部311は、通信部312を通じて判定プログラムPを取得し、取得した判定プログラムPを記憶部313にインストールする。
図57は真贋判定装置500の制御部311によって実行される真贋判定処理の手順例を示すフローチャートである。
制御部311は、カメラ331に再生像を撮像させ(ステップS421)、再生像が撮像された画像について、フーリエ変換によって再生像に含まれる周波数成分を抽出する画像処理を行う(ステップS422)。
制御部311は、抽出した周波数成分に係る情報を学習モデル3132に入力し、学習モデル3132によって推定された製造からの経過時間Tを取得する(ステップS423)。
制御部311は、取得した経過時間Tが第1の閾値T1よりも小さいか否かを判定し(ステップS424)、経過時間Tが第1の閾値T1よりも小さいと判定した場合に(ステップS424:YES)、経過時間Tが第2の閾値T2よりも大きいか否かを判定する(ステップS425)。ここで、第2の閾値T2は第1の閾値T1よりも小さい。
制御部311は、経過時間Tが第2の閾値T2よりも大きいと判定した場合に(ステップS425:YES)、真と判定し(ステップS426)、判定結果を表示部332に表示させる(ステップS427)、処理を終了する。
制御部311は、経過時間Tが第1の閾値T1よりも小さくないと判定した場合に(ステップS424:NO)、又は、経過時間Tが第2の閾値T2よりも大きくないと判定した場合に(ステップS425:NO)、贋と判定し(ステップS428)、処理をステップS427に移行する。
本実施の形態によると、撮像、画像処理、及び判定処理を真贋判定装置500に実行させることにより、小型化の真贋判定装置を提供することができる。
(実施形態11)
実施形態9、10では、光変調素子302の経時変化を推定して真贋判定を行うが、本実施の形態では、光変調素子302の剥離状態を推定して真贋判定を行う。実施形態9と共通する部分については、説明を省略する。
実施形態11では、教師データDB3131及び学習モデル3132は実施形態9、10と異なる。
本実施の形態では、教師データDB3131には、光変調素子302の再生像が撮像された画像からフーリエ変換により抽出された周波数成分と、光変調素子302の剥離の疑いの評価値とが関連付けられて記録されている。光変調素子302が一旦剥離された場合、その再生像が変化する。よって、光変調素子302の剥離・再貼付試験を予め行って、再生像を撮像して、上記の教師データDB3131を作成することができる。
学習モデル3132は、光変調素子302の再生像が撮像された画像の周波数成分を受け付けた場合に、光変調素子302の剥離の疑いの評価値を出力する学習済モデルである。具体的には、学習モデル3132の入力は、光変調素子302の再生像が撮像された画像からフーリエ変換により得られた周波数成分である。学習モデル3132の出力は、該光変調素子02の剥離の有無に関する評価値である。なお、学習モデル3132の出力は、該光変調素子302の剥離の有無という分類であってもよい。
制御部311は、学習モデル3132から出力された評価値に基づいて光変調素子302の剥離の有無を判定し、例えば、評価値が一定の範囲内であれば、光変調素子302が剥離されたものであると判定し、「贋」という判定結果を出力し、光変調素子302が剥離されていないと判定した場合に、「真」という判定結果を出力する。
本実施の形態によると、学習モデル3132を利用して、光変調素子302の再生像が撮像された画像に基づいて光変調素子の剥離の有無を推定するため、実施の形態9と同様な効果を奏することができる。また、実施の形態9、10における学習モデル(以下、第1の学習モデルと記す)と本実施の形態における学習モデル(以下、第2の学習モデルと記す)とを組み合わせてもよい。例えば、第2の学習モデルを利用して、光変調素子302が剥離されたものではないと推定した場合、第1の学習モデルを利用して、光変調素子302の製造からの経過時間を推定して真贋を再度判定することができる。このように、異なる学習モデルで真贋判定を2回行うことにより、真贋判定の精度がさらに向上する。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
光変調素子の再生像に係る情報を取得し、
光変調素子の再生像に係る情報を受け付けて光変調素子の剥離の有無に関する推定を出力する第2の学習モデルに、取得した再生像に係る情報を入力し、
前記第2の学習モデルから出力された推定に基づいて光変調素子の真贋を判定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
(付記2)
前記第2の学習モデルは、光変調素子の再生像に係る情報と該光変調素子の剥離の有無とを関連づけて記録した第2の教師データを用いて機械学習させた学習済モデルであることを特徴とする付記1に記載のプログラム。
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均などの意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(付記1)コンピュータプログラムは、コンピュータに、対象媒体を第1撮影条件で撮影した第1画像及び第2撮影条件で撮影した第2画像を取得し、取得した第1画像及び第2画像に基づいて差分画像を生成し、生成した差分画像の画素値に基づく特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて前記対象媒体の真贋を判定する、処理を実行させる。
(付記2)コンピュータプログラムは、付記1のコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記差分画像を複数の分割画像に分割し、分割した分割画像の画素値に基づく特徴量を抽出し、前記分割画像の特徴量のパターンと閾値のパターンとに基づいて前記対象媒体の真贋を判定する、処理を実行させる。
(付記3)コンピュータプログラムは、付記2のコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記分割画像の特徴量及び前記閾値に基づいて分割画像毎に真贋を評価する第1評価値を算出し、前記分割画像毎の第1評価値に基づいて前記差分画像の第2評価値を算出し、算出した第2評価値に基づいて前記対象媒体の真贋を判定する、処理を実行させる。
(付記4)コンピュータプログラムは、付記2又は付記3のコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記対象媒体の種別を判定し、予め記憶した、複数種類の閾値のパターンの中から、判定した種別に応じた閾値のパターンを選定する、処理を実行させる。
(付記5)コンピュータプログラムは、付記1から付記4のいずれか一つのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記対象媒体の判定領域が撮影範囲内に入るように案内を出力する、処理を実行させる。
(付記6)コンピュータプログラムは、付記1から付記5のいずれか一つのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記対象媒体の真贋の判定結果を出力する、処理を実行させる。
(付記7)コンピュータプログラムは、付記1から付記6のいずれか一つのコンピュータプログラムにおいて、前記特徴量は、輝度値の統計値を含む。
(付記8)コンピュータプログラムは、付記1から付記7のいずれか一つのコンピュータプログラムにおいて、真正の前記対象媒体は、参照光による干渉で生じた干渉縞を記録してあり、前記第1撮影条件は、前記第2撮影条件よりも参照光が多い。
(付記9)コンピュータプログラムは、コンピュータに、第1撮影条件で対象媒体を撮影する第1操作を受け付け、第2撮影条件で前記対象媒体を撮影する第2操作を受け付け、前記第1操作及び前記第2操作によって得られた各画像に基づく前記対象媒体の真贋判定結果を表示する、処理を実行させる。
(付記10)真贋判定装置は、対象媒体を第1撮影条件で撮影した第1画像及び第2撮影条件で撮影した第2画像を取得する取得部と、取得した第1画像及び第2画像に基づいて差分画像を生成する生成部と、生成した差分画像の画素値に基づく特徴量を抽出する抽出部と、抽出した特徴量に基づいて前記対象媒体の真贋を判定する判定部とを備える。
(付記11)真贋判定方法は、対象媒体を第1撮影条件で撮影した第1画像及び第2撮影条件で撮影した第2画像を取得し、取得した第1画像及び第2画像に基づいて差分画像を生成し、生成した差分画像の画素値に基づく特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて前記対象媒体の真贋を判定する。
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。