JP7480992B2 - ダンパ及びアイソレータ - Google Patents
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Description
宇宙空間における温度環境条件は、場合によっては極低温になりうる。極低温において、粘性ダンパは硬化してしまうため使用することができない。そこで近年、極低温でも使用可能な磁気減衰を振動アイソレータに使用するための研究開発が、行われている。また、磁気減衰では、非接触で減衰を発生させることができる。また、磁気減衰には、摩耗する部品がなく、さらにダンパを伝わる熱を抑えることができるという利点もある。
この例では、個別に1020-1~1020-8と呼ばれる8つの永久磁石1020がある。永久磁石1020は、一対のバックヨークプレート1030に取り付けられている。永久磁石1020-1~1020-4は、バックヨークプレート1030-1の四隅に取り付けられている。永久磁石1020-5~1020-8は、バックヨークプレート1030-2の四隅に取り付けられている。永久磁石1020-1,1020-3は、永久磁石の磁極の向きが同じになるようにバックヨークプレート1030-1上に配置される。また、永久磁石1020-2及び1020-4の磁極の向きは、永久磁石1020-1及び1020-3とは逆になっている。同様に、永久磁石1020-5,1020-7は永久磁石の磁極の向きが同じになるようにバックヨークプレート1030-2上に配置される。磁石1020-6及び1020-8は、永久磁石1020-5,1020-7とは磁極の向きが逆になっている。バックヨークプレート1030は、鉄又は鉄の磁性合金等の透磁性材料で構成されている。
図19において、磁力線1050が示されている。磁力線1050は、永久磁石1020によって生成され、バックヨークプレート1030を通過する。図19に示されるように、反時計回りの磁力線1050のループは、永久磁石1020-1から発生し、導体板1040、永久磁石1020-5、バックヨークプレート1030-2、永久磁石1020-6、導体板1040、永久磁石1020-2、バックヨークプレート1030-1を通って永久磁石1020-1へ戻る。永久磁石1020-4,1020-8,1020-7,1020-3も同様な磁力線ループを形成する。
2方向渦電流式ダンパ1010は、以下のような多くの望ましい特徴を有する。前述したように、2方向渦電流式ダンパ1010は温度に依存しない純粋な磁気減衰を提供する。2方向渦電流式ダンパ1010は、面内方向の両方で等しい減衰を提供するように設計可能である。さらに、2方向渦電流式ダンパ1010は完全に受動的なデバイスであり、電源を必要とせず、エネルギーを消費しない。さらに、2方向渦電流式ダンパ1010は、互いに摩擦する部分がない。そのため、2方向渦電流式ダンパ1010に摩耗する部品はなく、時間の経過とともにパフォーマンスが低下する可能性もない。また、部品間の摩擦によって粉塵が発生する恐れもない。
図20及び図21に示すように、振動アイソレータ1100は、ペイロード1130の周りに120°の位置間隔で配置された3つの2方向渦電流式ダンパ1010を有している。複数のL字形フレクシャ1110では、一方の脚の端部がベースプレート1102に取り付けられている。複数のフレクシャ1110において、他方の脚の反対側の端部がアイソレータプレート1120に取り付けられている。
フレクシャ1110は、ベースプレート1102に対するアイソレータプレート1120及びペイロード1130の静的位置決めを提供するばねとして機能する。振動アイソレータ1100では、図示されているようにペアで配置された6つのフレクシャ1110が使用されている。
2方向渦電流式ダンパ1010は、バックヨークプレート1030、及び最も内側に取り付けられたダンパマウント1112を含んでいる。ダンパマウント1112は、ペイロード1130を搭載するアイソレータプレート1120に取り付けられる。
上述のように、フレクシャ1110は、ベースプレート1102に対するアイソレータプレート1120のばね力サスペンションを提供する。同時に、アイソレータプレート1120は、ダンパマウント1112を介してバックヨークプレート1030に接続されている。このため、アイソレータプレート1120の動きにより、バックヨークプレート1030と永久磁石1020が、ベースプレート1102に固定されている導体プレート1040に対して相対的に変位する。したがって、2方向渦電流式ダンパ1010は、ベースプレート1102に対するアイソレータプレート1120の動きの減衰を提供する。また、図21では、アイソレータプレート1120の上部にペイロード1130が追加されている。ペイロード1130は、ベース構造から分離されるべきデバイスである。
3つの2方向渦電流式ダンパ1010をこのように配置することにより、振動アイソレータ1100では、アイソレータプレート1120及びペイロード1130のベースプレート1102に対する相対的な6自由度すべて(3つの直交並進及び3つの直交回転)の運動に対して、減衰力が発生する。
・平板形状の導体板が必要なので大型になってしまう。
・磁石がむき出しになっているため外部への漏洩磁束が大きい。
・一つのダンパで減衰力が2方向に働くため、運動方向ごとに減衰力を設定することができない。
また、従来の渦電流式ダンパは、磁石がむき出しになっているため外部への漏洩磁束が大きいという課題があった。宇宙機に搭載する観測機器の中には磁場に極めて敏感なものがあるが、従来の渦電流式ダンパはそのような観測機器に適用することができないという問題があった。
また、従来の渦電流式ダンパは、一つのダンパで減衰力が2方向に働くため、運動方向ごとに減衰力を設定することができないという問題があった。一般に、複数自由度の振動アイソレータを構成する場合、搭載物の質量特性により自由度ごとに最適な減衰力は異なる。従来の渦電流式ダンパでは、減衰力を自由度ごとに設定することは困難であった。
本発明のダンパは、導体で筒状に形成された可動子と、前記可動子の内側に配置され、前記可動子の軸線方向の第1側の端部が第1極の極性を有するとともに、前記軸線方向の第2側の端部が、前記第1極とは異なる第2極の極性を有する磁束発生部と、軟磁性体材料で有底筒状に形成され、一部が前記可動子の径方向外側に配置されたヨークと、軟磁性体材料により形成されるとともに、前記軸線方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記ヨークの開口を覆う蓋と、前記可動子と結合され、前記貫通孔を通して前記蓋に対して前記可動子とは反対側に突出する連結部材と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、磁束発生部及びヨークに対して可動子が軸線方向に移動する場合には、磁束発生部が軸線方向に発生する磁束の径方向成分により、可動子が移動する向きとは反対向きに減衰力が発生する。一方で、磁束発生部及びヨークに対して可動子が径方向に移動する場合には、可動子が移動する向きには減衰力が発生しない。本発明のダンパでは、減衰力は、軸線方向という1方向のみに作用する。
また、ヨークの径方向内側に磁束発生部が配置されているため、磁束発生部が発生した磁束が、ヨークにより吸収される。従って、本発明のダンパは、従来の渦電流式ダンパに比べて小型に構成しながら、外部への漏洩磁束を小さくし、減衰力を軸線方向の1方向のみに作用させることができる。
また、磁束発生部が発生した磁束が、ヨークだけでなく蓋によっても吸収される。また、可動子に発生した減衰力は、連結部材を介してダンパの外部に取り出される。従って、ダンパの外部への漏洩磁束をさらに小さくしつつ、可動子に発生した減衰力を連結部材を介してダンパの外部に取り出すことができる。
この発明によれば、保持部により、ヨークに対して可動子を一定の位置に保持することができる。そして、保持部が弾性変形することで、ヨークに対して可動子で発生した減衰力を、例えば可動子に取り付けられた部材等に伝達することができる。
この発明によれば、可動子とヨークとの相対的な位置が変化すると、両端部が可動子及びヨークに結合された保持部のほぼ全体が変形する。従って、保持部を効率よく弾性変形させることができる。
この発明によれば、両端部間の距離が短くなるように保持部が変形したときに、保持部における長手方向の中央部は、軸線に対してさらに離間する向きに移動する。両端部間の距離が長くなるように保持部が変形したときにも、前記中央部は軸線に近づく向きに移動するが、保持部が湾曲しているために、前記中央部はヨーク等に干渉し難い。従って、両端部間の距離が変化するように保持部が変形したときに、保持部の前記中央部がヨーク等に干渉し難くすることができる。
この発明によれば、第1部材及び第2部材を用いて、アイソレータに他の部材を取り付け易くすることができる。
この発明によれば、第1部材及び第2部材に形成された平坦な外面に、他の部材を容易に取り付けることができる。また、保持部の変形量によらず第1部材と第2部材との距離が分かりやすくなり、第1部材及び第2部材に結合するダンパにおける減衰力の設定を容易に行うことができる。
ここで、前記軸線を含み、前記対向する方向に平行な基準面を規定する。
この発明によれば、可動子で発生した減衰力を、基準面に沿い、互いに交差する2方向に分解してそれぞれ作用させることができる。
以下、本発明に係る渦電流式アイソレータ(アイソレータ)の第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、渦電流式アイソレータ1は、いわゆる振動アイソレータ(振動絶縁装置)である。渦電流式アイソレータ1は、本実施形態の渦電流式ダンパ(ダンパ)101と、下部板(第1部材)131と、上部板(第2部材)141と、保持部151と、を備えている。なお、図2では、後述するアタッチメント133,143は示していない。
以下では、まず渦電流式ダンパ101の構成及び動作について説明する。
永久磁石103では、軸線O1方向の両端部が着磁されている。より具体的には、永久磁石103において、軸線O1方向の第1側の端部は、N極(第1極)の極性を有している。永久磁石103において、軸線O1方向の第1側とは反対側の第2側の端部は、N極とは異なるS極(第2極)の極性を有している。なお、第1極がN極であり、第2極がS極であるとしたが、第1極がS極であり、第2極がN極であるとしてもよい。
また、永久磁石103の周囲にコイルを周回させると、コイルに流す電流によって磁束密度を変えることができるようになる。このため、後述する減衰力を変化させることができる。
永久磁石103の軸線O1方向の第1側には、軟磁性体材料で形成された磁極112が配置されている。磁極112における軸線O1方向の第2側の外面には、くぼみ112aが形成されている。くぼみ112aは、永久磁石103の軸線O1方向の第1側の端部と嵌め合っている。磁極112と永久磁石103とは磁力で引き合うため、そのままでも永久磁石103はくぼみ112aに固定される。しかし、より機械的強度を高めるために、接着剤を使用して永久磁石103をくぼみ112aに固定してもよい。
磁極112(永久磁石103)とヨーク104との間には、円環状のギャップ(隙間)S1が形成されている。
これら永久磁石103、ヨーク104、蓋105、及び磁極112は、磁気回路113を構成している。
ヨーク104及び蓋105を形成する軟磁性体材料は、飽和磁束密度が高い材料であることが望ましい。例えば、この材料として、純鉄やFe-49CO1-2V合金等が挙げられる。
周壁部116は、前記ギャップS1内に配置されている。周壁部116と磁極112(永久磁石103)との間、及び周壁部116とヨーク104との間には、それぞれギャップが形成されている。周壁部116は、ギャップS1内で、軸線O1方向及び径方向にそれぞれ移動することができる。
底壁部115は、磁極112と蓋105との間に配置されている。
前記ヨーク104の周壁部(一部)110は、可動子102の周壁部116の径方向外側に配置されている。磁極112全体、及び永久磁石103の軸線O1方向の第1側の端部は、可動子102の内側に配置されている。
ヨーク104及び蓋105により形成された空間内に、永久磁石103、磁極112、及び可動子102が配置されている。
シャフト106における軸線O1方向の第1側の端部は、取り付けフランジ118に結合されている。なお、可動子102、シャフト106、及び取り付けフランジ118で、可動部119を構成している。取り付けフランジ118は、円板状に形成され、軸線O1と同軸に配置されている。
渦電流式ダンパ101では、磁気回路113と可動部119とは機械的に結合されていない。
永久磁石103のN極から発生した磁力線B2は、磁極112を通りヨーク104と蓋105に入っていく。蓋105の貫通孔105aから渦電流式ダンパ101の外部に出ていく磁力線B2はごくわずかである。本実施形態の渦電流式ダンパ101では、磁束B1の漏洩が極めて少ないことがわかる。そして、ヨーク104の底壁部109から永久磁石103のS極へ戻り、磁力線B2のループを形成する。
ここで、軸線O1方向に、第1側が正になるようにz軸を規定する。径方向に、外側が正になるようにr軸を規定する。
このときの速度V1と電磁力Fとの比例係数を、減衰係数と称する。減衰係数は、単位速度当たりの発生力を示し、単位はN・s/m(ニュートン秒・パー・メートル)である。
可動部119の変位の方向が図6とは逆の場合も、全く同様である。
なお、下部板131と上部板141と間の熱伝導率を低くしたい場合には保持部151をGFRPやCFRPで形成し、下部板131と上部板141と間の熱伝導率を高くしたい場合には保持部151を金属で形成することが望ましい。
渦電流式アイソレータ1は、保持部151を2つ備えている。2つの保持部151は、凸となるように湾曲することで形成された凹部を、互いに対向させるように配置されている。
本実施形態では、渦電流式ダンパ101の磁気回路113(ヨーク104)に、ダンパアダプタ132が結合されている。ダンパアダプタ132は、側面視で直角三角形状を呈している。磁気回路113における軸線O1方向の第2側の端面は、ダンパアダプタ132における斜辺を構成する外面に結合されている。
さらに、渦電流式ダンパ101の可動部119(取り付けフランジ118)に、ダンパアダプタ142が結合されている。ダンパアダプタ142は、ダンパアダプタ132と同一の形状に形成されている。可動部119における軸線O1方向の第1側の端面は、ダンパアダプタ142における斜辺を構成する外面に結合されている。
下部板131は、保持部151、及びダンパアダプタ132を介して磁気回路113(ヨーク104)にそれぞれ結合されている。上部板141は、保持部151、及びダンパアダプタ142を介して可動部119(可動子102)にそれぞれ結合されている。
渦電流式ダンパ101の軸線O1方向は、前記対向方向に対して角度βで傾斜している。言い換えれば、下部板131及び上部板141の厚さ方向に対して、軸線O1方向が角度β傾斜している。
ここで、90°から角度βを引いた値を、角度αと規定する。角度αは、下部板131の上面と軸線O1とがなす角でもある。以下ではこの状態を、渦電流式ダンパ101は板131,141に対して角度αで取付けられているという。
本実施形態では、2つの保持部151の弾性力により、磁気回路113に対する可動部119の相対的な位置が保持されている。このため、2つの保持部151の弾性力は、比較的強い。
以下、渦電流式アイソレータ1全体の、x方向、y方向、及びz方向の3方向のばね定数を、kx,ky,kzとする。z軸は、上下方向に沿って延びている。ばね定数は、単位変位当たりの復元力を表し、単位はN/mである。
ここで、図2に示すように、軸線O1を含み、上下方向に平行な、基準面S6を規定する。x方向及びz方向は、基準面S6にそれぞれ沿う。y方向は、基準面S6に直交する。
F=c・Vx・cosα ・・(1)
また、発生力Fのx方向分力Fxとz方向分力Fzは、図8(b)に示すように、(2)式から(4)式のようにあらわされる。
Fx=F・cosα=c・Vx・cosα2=cx・Vx ・・(2)
Fz=F・sinα=c・Vx・sinα・cosα ・・(3)
cx=c・cosα2 ・・(4)
ここで、cxは、x方向の減衰係数である。
すなわち、本実施形態の渦電流式アイソレータ1において、上部板141が下部板131に対して、x方向に速度Vxで変位すると、変位方向と逆向きに速度に比例する減衰力cx・Vxが発生する。
このとき、渦電流式ダンパ101の発生力Fは、(5)式のようになる。
F=c・Vz・sinα ・・(5)
Fx=F・cosα=c・Vz・sinα・cosα ・・(6)
Fz=F・sinα=c・Vz・sinα2=cz・Vz ・・(7)
cz=c・sinα2 ・・(8)
ここで、czは、z方向の減衰係数である。
また、上部板141が下部板131に対してy方向に変位した際には、可動部119は軸方向に動くことはないので、減衰力は発生しない。
cx=c・cosα2 ・・(9)
cz=c・sinα2 ・・(10)
すなわち、減衰係数cと角度αを適切に設定することでx方向とz方向の減衰力を個別に設計できるので、各方向に対し最適な減衰力を設定することができる。
また、ヨーク104の径方向内側に配置され可動子102の内側に永久磁石103が配置されているため、永久磁石103が発生した磁束B1が、ヨーク104により吸収される。従って、本実施形態の渦電流式ダンパ101は、従来の渦電流式ダンパに比べて小型に構成しながら、外部への漏洩磁束を小さくし、減衰力を軸線O1方向の1方向のみに作用させることができる。
また、本実施形態の渦電流式アイソレータ1は、渦電流式ダンパ101及び保持部151を備えている。保持部151により、ヨーク104に対して可動子102を一定の位置に保持することができる。そして、保持部151が弾性変形することで、ヨーク104に対して可動子102で発生した減衰力を、例えば可動子102に取り付けられた部材等に伝達することができる。
保持部151は、軸線O1に対して離間する向きに向かって凸となるように湾曲している。両端部間の距離が短くなるように保持部151が変形したときに、保持部151における長手方向の中央部は、軸線O1に対してさらに離間する向きに移動する。両端部間の距離が長くなるように保持部151が変形したときにも、前記中央部は軸線O1に近づく向きに移動するが、保持部151が湾曲しているために、前記中央部はヨーク104等に干渉し難い。従って、両端部間の距離が変化するように保持部151が変形したときに、保持部151の前記中央部がヨーク104等に干渉し難くすることができる。
下部板131及び上部板141はそれぞれ平板状に形成され、下部板131及び上部板141は、それぞれの厚さ方向に対向するように配置されている。下部板131及び上部板141に形成された平坦な外面に、他の部材を容易に取り付けることができる。また、保持部151の変形量によらず下部板131と上部板141との距離が分かりやすくなり、下部板131及び上部板141に結合する渦電流式ダンパ101における減衰力の設定を容易に行うことができる。
渦電流式アイソレータ1では、下部板131と上部板141とが対向する対向方向に対して、渦電流式ダンパ101の軸線O1方向が傾斜している。従って、可動子102で発生した減衰力を、基準面S6に沿い、互いに交差する例えばx方向及びz方向等の2方向に分解してそれぞれ作用させることができる。
次に、本発明の第2実施形態について図11及び図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11及び図12に示すように、本実施形態の渦電流式アイソレータシステム2は、アイソレータプレート161と、複数の渦電流式アイソレータ1と、を備えている。
アイソレータプレート161は、平面視で正方形状を呈する板状に形成されている。アイソレータプレート161は、アルミニウムやハニカムサンドイッチパネル等で形成することができる。アイソレータプレート161は、4つの隅部161aを備えている。
複数(本実施形態では4つ)の渦電流式アイソレータ1-1~1-4は、アイソレータプレート161の各隅部161aにそれぞれ結合されている。具体的には、各渦電流式アイソレータ1の上部板141がアイソレータプレート161の隅部161aに、隅部161aの下方からそれぞれ結合されている。
なお、複数の渦電流式アイソレータ1-1~1-4は、中心軸線O2周りに4回転対称にならないように配置されていてもよい。例えば、渦電流式ダンパ101においてヨーク104が特に重いため、回転対称にならないように配置することで、渦電流式アイソレータシステム2における質量のバランスを調節することができる。
ここで、アイソレータプレート161の平行変位方向(x′方向、y′方向、及びz′方向)のばね定数をkx′,ky′,kz′と規定する。アイソレータプレート161の中心を通る各軸周りのねじりばね定数を、krx′,kry′,krz′と規定する。ねじりばね定数とは、単位ねじり角あたりの復元トルクのことであり、単位はN・m/radである。
kx′=2kx+2ky ・・(16)
ky′=2kx+2ky=kx′ ・・(17)
kz′=4kz ・・(18)
krx′=2kz・L2 ・・(19)
kry′=2kz・L2=krx′ ・・(20)
krz′=4kx・L2 ・・(21)
ここで、kx,ky,kzは、渦電流式アイソレータ1のxyz直交座標系におけるばね定数である。
cx′=2cx=2c・cosα2 ・・(22)
cy′=2cx=2c・cosα2=cx′ ・・(23)
cz′=4cz=4c・sinα2 ・・(24)
crx′=2cz・L2=2c・cosα2・L2 ・・(25)
cry′=2cz・L2=2c・cosα2・L2=crx′ ・・(26)
crz′=4cx・L2=4c・sinα2・L2 ・・(27)
ここで、cx,cy,czは、渦電流式アイソレータ1のxyz直交座標系における減衰定数である。
すなわち、本実施形態の渦電流式アイソレータシステム2は、剛体運動の6自由度すべての方向に対して、復元力と減衰力を発生できるアイソレータシステムとなっていることがわかる。
次に、本発明の第3実施形態について図13及び図14を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図13及び図14に示すように、本実施形態の渦電流式アイソレータシステム3は、アイソレータプレート171と、複数の渦電流式アイソレータ1と、を備えている。
アイソレータプレート171は、平面視で三角形状を呈する板状に形成されている。アイソレータプレート171は、3つの隅部171aを備えている。
複数(本実施形態では3つ)の渦電流式アイソレータ1-1~1-3は、アイソレータプレート171の各隅部171aに、隅部171aの下方からそれぞれ結合されている。
各渦電流式アイソレータ1は、アイソレータプレート171の中心から距離Lの位置に、前記中心を通りz軸に平行な中心軸線O2周りに120°毎に配置されている。複数の渦電流式アイソレータ1-1~1-3は、中心軸線O2周りに3回転対称(120°回転対称)になるように配置されている。
なお、複数の渦電流式アイソレータ1-1~1-3は、中心軸線O2周りに3回転対称にならないように配置されていてもよい。
3つの渦電流式アイソレータ1-1~1-3が3回転対称の位置に配置されていることから、これらを合成したばね定数は、(31)式から(36)式のようになる。
kx′=kx+2(kxcos60°+kysin60°)=2kx+√3ky
・・(31)
ky′=ky+2(kxsin60°+kycos60°)=√3kx+2ky
・・(32)
kz′=3kz ・・(33)
krx′=kz・L2+2・kz(L/2)2=(3/2)kz・L2 ・・(34)
kry′=2kz・(√3L/2)2=(3/2)kz・L2=krx′ ・・(35)
krz′=3kx・L2 ・・(36)
cy′=2(cxsin60°)=√3cx=√3c・cosα2 ・・(38)
cz′=3cz=3c・sinα2 ・・(39)
crx′=cz・L2+2・cz(L/2)2=(3/2)cz・L2
=(3/2)c・sinα2・L2 ・・(40)
cry′=2cz・(√3L/2)2=(3/2)cz・L2=crx′ ・・(41)
crz′=3cx・L2=3c・sinα2・L2 ・・(42)
すなわち、本実施形態の渦電流式アイソレータシステム3においても、剛体運動の6自由度すべての方向に対して、復元力と減衰力を発生できるアイソレータシステムとなっていることがわかる。
次に、本発明の第4実施形態について図15及び図16を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図15及び図16に示すように、本実施形態の渦電流式アイソレータシステム4は、アイソレータプレート181と、複数の保持システム182と、複数の渦電流式ダンパ101と、を備えている。
アイソレータプレート181は、平面視で六角形状を呈する板状に形成されている。アイソレータプレート181は、6つの隅部181aを備えている。
各保持システム182は、2つ保持部151により構成されている。各保持システム182は、アイソレータプレート181の中心から距離L1の位置に、前記中心を通りz軸に平行な中心軸線O2周りに120°毎に配置されている。
また、保持システム182とは中心軸線O2周りに60°位相をずらして、複数の渦電流式ダンパ101がアイソレータプレート181の隅部181aに結合されている。各渦電流式ダンパ101は、隅部181aに、隅部181aの下方から結合されている。
各渦電流式ダンパ101は、前記対向方向(上下方向)に対して軸線O1方向が、角度βで傾斜するように、ダンパアダプタ132,142を介してアイソレータプレート181及び宇宙機の構造体等に取り付けられている。各渦電流式ダンパ101は、アイソレータプレート181の中心から距離L2の位置に、中心軸線O2周りに120°毎に配置されている。
kx′=kx+2(kxcos60°+kysin60°)=2kx+√3ky
・・(46)
ky′=ky+2(kxsin60°+kycos60°)=√3kx+2ky
・・(47)
kz′=3kz ・・(48)
krx′=kz・L2+2・kz(L1/2)2=(3/2)kz・L12
・・(49)
kry′=2kz・(√3L1/2)2=(3/2)kz・L12=krx′
・・(50)
krz′=3kx・L2 ・・(51)
cx′=cx+2(cxcos60°)=2cx=2c・cosα2 ・・(52)
cy′=2(cxsin60°)=√3cx=√3c・cosα2 ・・(53)
cz′=3cz=3c・sinα2 ・・(54)
crx′=cz・L2+2・cz(L2/2)2=(3/2)cz・L22
=(3/2)c・sinα2・L2 ・・(55)
cry′=2cz・(√3L2/2)2=(3/2)cz・L22=crx′
・・(56)
crz′=3cx・L2=3c・sinα2・L22 ・・(57)
また、本実施形態においては、渦電流式ダンパ101と保持システム182の取り付け位置(アイソレータプレート181の中心から距離)が異なっているため、第2実施形態や第3実施形態と比較して、設計の自由度が増えるという利点がある。
例えば、前記第1実施形態では、図17に示す渦電流式アイソレータ1Aのように、渦電流式アイソレータ1のダンパアダプタ132,142に代えて、規制部191A,191Bを備えるとともに、渦電流式ダンパ101の軸線O1方向が、前記対向方向に沿っていてもよい。この変形例では、前記角度βが0°であり、前記角度αが90°である。
規制部191Aでは、一対の延長部材192A,193Aの端部にチャンネル部材194A,195Aがそれぞれ固定されている。より詳しく説明すると、延長部材192Aは、下部板131の外周縁から上方に向かって延びている。延長部材192Aの上端部に、チャンネル部材194Aが固定されている。延長部材193Aは、上部板141の外周縁から下方に向かって延びている。延長部材193Aの下端部に、チャンネル部材195Aが固定されている。チャンネル部材194Aとチャンネル部材195Aとは、互いに係合している。チャンネル部材194A,195Aが係合することで、下部板131に対して上部板141が移動できるx方向及びz方向の範囲が規制されている。
チャンネル部材194B,195Bは、チャンネル部材194A,195Aよりも上方に配置されている。
渦電流式ダンパ101では、磁気回路113が下部板131結合され、可動部119が上部板141に結合されている。
渦電流式アイソレータ1Aが規制部191A,191Bを備えることで、自身の弾性力だけでは、磁気回路113に対する可動部119の相対的な位置が保持できないような、比較的弾性力の弱い保持部151を用いることができる。
渦電流式アイソレータ1は、下部板131、上部板141、及び保持部151を備えなくてもよい。
磁束発生部は永久磁石103であるとしたが、磁束発生部はこれに限定されず、電磁石等でもよい。
保持部151は、リーフスプリングであるとした。しかし、保持部は弾性を有する材料で形成されているものであれば、形状等は特に限定されない。
下部板及び上部板の形状は、平板状に限定されない。例えば下部板及び上部板の形状は、対向する方向の外側が平坦である半球状等でもよい。
本発明のダンパ及びアイソレータは、特に人工衛星等の宇宙機に好適である。また、極低温下や真空中等、従来の粘弾性体を用いたアイソレータの使用が難しい場合にも好適である。
101,101A 渦電流式ダンパ(ダンパ)
102 可動子
103 永久磁石(磁束発生部)
104 ヨーク
105 蓋
105a 貫通孔
106 シャフト(連結部材)
131 下部板(第1部材)
141 上部板(第2部材)
151 保持部
O1 軸線
Claims (7)
- 導体で筒状に形成された可動子と、
前記可動子の内側に配置され、前記可動子の軸線方向の第1側の端部が第1極の極性を有するとともに、前記軸線方向の第2側の端部が、前記第1極とは異なる第2極の極性を有する磁束発生部と、
軟磁性体材料で有底筒状に形成され、一部が前記可動子の径方向外側に配置されたヨークと、
軟磁性体材料により形成されるとともに、前記軸線方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記ヨークの開口を覆う蓋と、
前記可動子と結合され、前記貫通孔を通して前記蓋に対して前記可動子とは反対側に突出する連結部材と、
を備えるダンパ。 - 請求項1に記載のダンパと、
弾性を有する材料で形成され、前記可動子及び前記ヨークにそれぞれ結合された保持部と、
を備えるアイソレータ。 - 前記保持部は、線状又は帯状に形成され、
自身の長手方向の第1端部が前記ヨークに結合されるとともに、前記長手方向の第2端部が前記可動子に結合されている請求項2に記載のアイソレータ。 - 前記保持部は、前記軸線に対して離間する向きに向かって凸となるように湾曲している請求項3に記載のアイソレータ。
- 前記ヨークに結合された第1部材と、
前記可動子に結合された第2部材と、
を備える請求項2に記載のアイソレータ。 - 前記第1部材及び前記第2部材は、それぞれ平板状に形成され、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1部材及び前記第2部材それぞれの厚さ方向に対向するように配置されている請求項5に記載のアイソレータ。 - 前記第1部材と前記第2部材とが対向する方向に対して、前記軸線方向が傾斜している請求項5又は6に記載のアイソレータ。
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