以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
(実施形態1)
[1]全体構成
本実施形態に係る作業管理システム1は、図1に示すように、管理サーバ2と、ユーザ端末3と、コンバイン4と、を備えている。コンバイン4は、作業管理システム1による作業の管理対象となる作業機械の一例である。
本開示でいう「作業機械」は、圃場F1を移動する各種の作業用の機械を意味し、一例として、コンバイン4、トラクタ、田植機及び播種機等の作業車両である。つまり、作業機械は作業車両を含む。作業機械は、コンバイン4、トラクタ、田植機及び播種機等の「車両」に限らず、例えば、農薬散布用又は施肥用のドローン又はマルチコプター等の作業飛翔体等であってもよい。さらに、作業機械は農業機械(農機)に限らず、例えば、建設機械(建機)等であってもよい。
また、本開示でいう「圃場」は、作業機械が移動しながら、例えば、収穫、植付け(田植え)又は施肥等の各種の作業を行う作業対象領域であって、農産物を育成する田、畑、果樹園及び牧草地等を含む。さらに、植木畑で植木を育成している場合には植木畑が圃場F1となり、林業のように森林にて木材となる樹木を育成する場合には森林が圃場F1となる。このような圃場F1は、実空間(実在する空間)中の特定の場所であるので、例えば、緯度及び経度等をもって、位置、形状及び大きさ等が表される。本実施形態では、このように実空間中において作業機械が移動しながら各種の作業を行う作業対象領域が圃場F1である場合について説明するが、作業対象領域は、圃場F1以外であってもよい。例えば、作業機械が建設機械であれば、建設機械が作業を行う現場が、作業対象領域となる。
また、作業管理システム1での管理対象となる作業は、広義には圃場F1での作物の栽培に関連する作業であって、コンバイン4等の圃場F1を移動する作業機械にて行われる作業に限らない。すなわち、例えば、人が圃場F1を移動しながら行う作業のように、圃場F1における複数の位置で人により行われる作業が、作業管理システム1での管理対象であってもよい。この種の作業の一例として、圃場F1の土壌特性の診断のための土壌の採取(採土)等がある。つまり、例えば、圃場F1において作目栽培に適した施肥を実施するためには、圃場F1の土壌特性を診断する必要があり、土壌特性の診断においては、圃場F1における複数の位置で採取された土壌を分析する必要がある。このような土壌の採取等の作業は、作業機械で行ってもよいが、人によって行われることが多い。この種の作業もまた、直接的又は間接的には圃場F1での作物の栽培に関連する作業であって、作業管理システム1での管理対象となり得る。ただし、本実施形態では、特に断りが無い限り、作業機械にて実行される作業を作業管理システム1での管理対象として説明する。
本実施形態では、作業管理システム1による作業の管理対象となる作業機械(コンバイン4)は、作業管理システム1の構成要素に含まれることとするが、作業機械が作業管理システム1の構成要素に含まれることは必須ではない。同様に、本実施形態では、ユーザ端末3は、作業管理システム1の構成要素に含まれることとするが、ユーザ端末3が作業管理システム1の構成要素に含まれることは必須ではない。つまり、作業管理システム1は、作業機械(コンバイン4)及びユーザ端末3の少なくとも一方を、構成要素に含まなくてもよい。作業管理システム1が作業機械及びユーザ端末3の両方を構成要素に含まない場合には、作業管理システム1は、管理サーバ2のみを構成要素に含むことになる。
管理サーバ2、ユーザ端末3及びコンバイン4(作業機械)は、互いに通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信(電波又は光を媒体とする通信)の適宜の通信方式により、直接的、又は通信網(ネットワーク)N1若しくは中継器等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。例えば、管理サーバ2及びコンバイン4は、携帯電話回線網、パケット回線網又は無線LAN(Local Area Network)等を介して通信可能である。また、管理サーバ2及びユーザ端末3は、インターネット、LAN、WAN(Wide Area Network)又は公衆電話回線等を介して通信可能である。管理サーバ2、ユーザ端末3及びコンバイン4間の通信手段は、上記の例に限らず、適宜の通信手段によって実現される。また、管理サーバ2、ユーザ端末3及び作業機械(コンバイン4)が互いに通信可能であることは、作業管理システム1において必須の構成ではない。例えば、管理サーバ2と作業機械(コンバイン4)との間の通信機能がない場合でも、作業機械にてコンピュータ読取可能な非一時的記録媒体に情報を記録し、管理サーバ2にて記録媒体から情報を読み取ることで、オフラインでの情報の授受が可能となる。
管理サーバ2と通信可能な作業機械(コンバイン4)、つまり、作業管理システム1での作業の管理対象となる作業機械は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。作業管理システム1による作業の管理対象となる作業機械が、複数台のコンバイン4を含む場合、これら複数台のコンバイン4は、例えば、同一の圃場F1において作物を収穫する収穫作業を協働して実行する。さらに、作業管理システム1による作業の管理対象となる複数台の作業機械は、例えば、コンバイン4、トラクタ、田植機及び播種機等の、互いに異なる種類の作業機械を含んでいてもよい。
本実施形態では、管理サーバ2は、作業管理システム1の中核となる機能を有している。つまり、管理サーバ2は、作業機械(ここではコンバイン4)の作業を管理する機能を有している。ユーザ端末3は、ユーザにて使用される通信端末である。例えば、ユーザは、ユーザ端末3にて、管理サーバ2が提供する作業支援サービスのウェブサイト(一例として「作業支援サイト」)にアクセスして、コンバイン4の稼働状況及び収穫量等の情報を含むウェブページを表示させることが可能である。
[2]作業機械
次に、作業機械の一例であるコンバイン4の構成について、図1、図2及び図3を参照して詳細に説明する。コンバイン4は、走行装置41、刈取装置42、脱穀装置43、選別装置44、貯留装置45、動力装置46、運転部47、車両制御装置48及び搭載端末49等を備える。
車両制御装置48は、1以上のプロセッサと、不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムである。そして、車両制御装置48は、コンバイン4に対する各種のユーザ操作に応じてコンバイン4の動作を制御する。
走行装置41は、コンバイン4を前後方向及び左右方向に移動させることができる。例えば、コンバイン4は、図4に示すように、圃場F1内を蛇行しながら収穫作業を実施する。図4では一例として、作業機械であるコンバイン4が作業を行う圃場F1として、第1圃場F11及び第2圃場F12の2つの圃場F1を示している。また、図4では、上段に圃場F1を含む概略地図を示し、下段(吹き出し内)に圃場F1(第1圃場F11)の概略拡大図を示す。コンバイン4の移動軌跡R1は図4に示す経路に限定されない。一例として、コンバイン4等の作業機械は、圃場F1内を外側から内側に向かって右(又は左)に旋回しながら移動してもよく、この場合、移動軌跡R1は渦巻き状の経路となる。
刈取装置42は、圃場F1の穀稈を刈り取る。刈取装置42は、リール421、カッター422、オーガ423、搬送コンベア424及びロータ425等を有する。リール421は、回転することによって圃場F1の穀稈をカッター422へ案内する。カッター422は、リール421によって案内された穀稈を切断する。オーガ423は、カッター422によって切断された穀稈を所定の位置に集合させる横送りスクリューである。
搬送コンベア424は、オーガ423によって集められた穀稈を、ロータ425まで搬送する。ロータ425は、搬送コンベア424により搬送されてくる穀稈を脱穀装置43へ送り込む。
脱穀装置43は、刈取装置42により刈り取られた穀稈に対する脱穀処理を実行する。脱穀処理は、穀稈から穀粒を含む脱穀物を分離する。脱穀物は脱穀装置43から下方の選別装置44へ落下する。
選別装置44は、脱穀装置43から落下する脱穀物から、穀粒を選別する選別処理を実行する。選別装置44は、例えば、脱穀物に対して斜め下方から風を当てつつ脱穀物をふるいにかけることにより、脱穀物から穀粒を選別する。
脱穀装置43は、例えば、穀稈を脱穀装置43の前部から後方へ搬送しつつ穀稈に対する脱穀処理を実行する。同様に、選別装置44は、例えば、脱穀物を選別装置44の前部から後方へ搬送しつつ脱穀物に対する選別処理を実行する。
貯留装置45は、縦搬送ダクト451、縦搬送コンベア452、グレンタンク453及び排出オーガ454等を有する。縦搬送ダクト451は、選別装置44とグレンタンク453の上部の入口とをつなぐダクトである。縦搬送コンベア452は、縦搬送ダクト451内で回転することにより穀粒を選別装置44からグレンタンク453内へ搬送するスクリューコンベアである。排出オーガ454は、グレンタンク453内の穀粒をコンバイン4の周囲の任意の場所へ排出する。
動力装置46は、走行装置41、刈取装置42、脱穀装置43、選別装置44、及び貯留装置45の駆動源である。動力装置46は、動力源として、例えばディーゼルエンジン等のエンジンを有する。また、動力装置46は、動力源としてモータ(電動機)を有していてもよいし、エンジンとモータとを含むハイブリッド式の動力源を有していてもよい。
運転部47には、操作者が着席する運転座席、並びに、操作者により操作されるハンドル、各種の操作レバー及び各種の操作スイッチ等の操作装置が設けられている。例えば、操作装置には、エンジンON/OFFキーが含まれる。エンジンON/OFFキーは、コンバイン4に搭載されるエンジンの始動及び停止を切り替えるためのキースイッチ又はボタンスイッチ等である。車両制御装置48は、エンジンON/OFFキーがオンに切り替えられた場合にエンジンを始動させ、エンジンON/OFFキーがオフに切り替えられた場合にエンジンを停止させる。
搭載端末49は、作業機械(コンバイン4)に搭載されている通信端末である。搭載端末49は、制御部491、記憶部492、通信部493、位置検出部494及び実績検出部495等の機能部を有する。搭載端末49に含まれる、これら複数の機能部は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体に設けられていてもよい。本実施形態では一例として、位置検出部494及び実績検出部495は、他の機能部(制御部491等)とは別の筐体に設けられる。
制御部491は、1以上のプロセッサと、不揮発性メモリ及びRAM等の1以上の記憶メモリとを有するコンピュータシステムである。記憶部492は、制御部491に所定の処理を実行させるための制御プログラム、及び後述の作業情報D1(図5参照)等のデータを記憶する不揮発性メモリ等である。
通信部493は、近距離無線通信又は有線通信により車両制御装置48との間で各種のデータの送受信が可能である。具体的に、制御部491は、通信部493により車両制御装置48からコンバイン4の各種の稼働状態を示す稼働情報を取得することが可能である。稼働情報は、作業機械(コンバイン4)の作業に関連する作業情報D1に含まれる。
稼働情報は、作業機械(コンバイン4)自体の稼働状況のうちの少なくとも1項目に関する情報を含んでいる。例えば、稼働情報には、ハンドルの操作角度(操舵角)を示すハンドル操作情報、及びシフトレバーの操作状態を示すシフト情報等が含まれる。また、稼働情報には、コンバイン4のエンジンON/OFFキーのON/OFF状態を示すエンジン情報も含まれる。さらに、稼働情報には、エンジンの回転数を示す回転数情報、車速情報、燃料消費率を示す燃費情報、エンジン負荷を示す負荷情報等が含まれる。また、稼働情報には、スリップ率を示すスリップ率情報、クラッチの操作状態を示すクラッチ情報、ブレーキの操作状態を示すブレーキ情報、作業機械に搭載されている各種センサーの状態等が含まれていてもよい。
ここでいう「作業情報」は、稼働情報の他に、作業機械の位置を示す位置情報D2、及び作業機械による作業の実績を示す実績情報等を含んでいる。制御部491は、作業情報D1のうちの位置情報D2については、位置検出部494から取得することが可能である。制御部491は、作業情報D1のうちの実績情報については、実績検出部495から取得することが可能である。ここでいう「実績情報」は、作業機械にて行われた作業の結果(実績)に係る情報であって、例えば、作業機械が作物の収穫を行う収穫機(コンバイン4を含む)である場合、収穫量(収量)に関する収穫量情報(収量データ)等を含む。つまり、この場合、作業情報D1は、作業機械の位置毎の作業機械での作物の収穫量情報を含む。その他、実績情報には、作業平均速度、作業速度のばらつき、作業時間、作業効率(面積/作業時間)、施肥量、植付け深さ、耕耘深さ及びリフト角等の情報が含まれてもよい。
また、通信部493は、通信網N1を介して管理サーバ2との間で各種のデータの送受信が可能である。そのため、コンバイン4(作業機械)に搭載された搭載端末49は、例えば、作業情報D1等を通信網N1経由で管理サーバ2に送信することが可能である。
位置検出部494は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを用いて、搭載端末49の位置、つまり搭載端末49が搭載されたコンバイン4の位置を示す位置情報D2を検出する。位置情報D2には、コンバイン4の位置を示す緯度及び経度の情報が含まれる。位置検出部494によるコンバイン4の位置情報D2の取得手法は特に限定されない。また、位置情報D2は、緯度及び経度を用いる形式に限らず、作業機械(ここではコンバイン4)の位置を特定可能な形式であればよく、緯度及び経度以外の形式であってもよい。
ここで、管理サーバ2での処理等を考慮すると、位置検出部494は、極力、高精度に位置情報D2を検出することが好ましい。一例として、位置検出部494は、RKT(Real Time Kinematic)測位のように、比較的高精度で位置情報D2を検出可能な手法を採用することが好ましい。これにより、例えば、後述するように管理サーバ2にて作業領域A1(図8参照)を自動的に設定する際に、作業領域A1を精度よく設定できるといった利点がある。
実績検出部495は、作業情報D1に含まれる実績情報を検出する。ここでは、作業機械が作物の収穫を行う収穫機(コンバイン4)であるので、実績情報は、収穫量に関する収穫量情報(収量データ)を含む。そのため、実績検出部495は、コンバイン4で収穫された作物の収穫量(穀粒量)を検出するセンサー(穀粒センサー)を有している。実績検出部495は、一例として、グレンタンク453の上面に取り付けられている(図3参照)。脱穀装置43及び選別装置44によって得られた穀粒は、縦搬送コンベア452によってグレンタンク453へ向けて搬送される。実績検出部495の穀粒センサーは、一例として、歪みゲージ又は圧電素子等の衝撃検出部を含み、搬送された穀粒が衝撃検出部に衝突した際の衝撃力を検出する。実績検出部495は、この衝撃力に基づいて、収穫量(検出値)を検出する。実績検出部495によるコンバイン4の収穫量の取得手法は特に限定されない。
制御部491は、以下の種々の処理を実行する。具体的には、制御部491は、現在の時刻を計時するための計時処理を実行する。ここでいう「時刻」には、年、月、日、時、分及び秒が含まれる。搭載端末49は、バッテリーに接続されており、制御部491は、コンバイン4のエンジンがOFF状態でも、バッテリーから供給される電力により計時処理等の処理を実行することが可能である。
また、制御部491は、作業機械(コンバイン4)の位置情報D2、実績情報(収穫量情報等)及び稼働情報を取得する情報取得処理を実行する。具体的には、制御部491は、計時処理で計時される時刻に基づいて、所定の時間間隔若しくは所定のタイミング(時刻)で定期的に、又は不定期に、位置情報D2、実績情報及び稼働情報を取得する。本実施形態では一例として、制御部491は、予め設定された(所定の)サンプリング間隔で、定期的に、位置情報D2、実績情報及び稼働情報を取得する。
制御部491は、取得する位置情報D2、実績情報及び稼働情報を記憶部492に記録する。ここで、制御部491は、位置情報D2、実績情報及び稼働情報を、これらを取得した時刻を表す時刻情報に対応付けて記憶部492に記憶する。そのため、同時に取得された位置情報D2、実績情報及び稼働情報は、記憶部492においても、取得された時刻情報をキーにして互いに対応付けられた状態を維持する。サンプリング間隔は、少なくともマップM1(図13参照)の作成に必要となる実績情報(収穫量情報)の取得間隔(例えば1秒以上5秒以下の時間間隔)に基づいて設定される。また、サンプリング間隔は、例えば、コンバイン4の移動軌跡R1の特定に必要となる位置情報D2の取得間隔(例えば1分間隔)よりも短い時間間隔に設定される。本実施形態では一例として、制御部491は、サンプリング間隔である「5秒間隔」で、位置情報D2、実績情報及び稼働情報を取得することとする。
図5は、記憶部492に記録される位置情報D2、実績情報(収穫量情報)、稼働情報及び時刻情報を含む作業情報D1の一例を示す図である。作業情報D1は、サンプリング間隔(ここでは5秒間隔)で取得されるので、図5に示す表の各行に表記される情報が作業情報D1である。つまり、図5に示す表全体では、複数の作業情報D1が含まれている。位置情報D2についても、図5に示す表の「位置情報」の欄の各行に表記される情報が位置情報D2である。つまり、図5に示す表全体では、複数の位置情報D2が含まれている。ただし、図5では、複数の位置情報D2に対して1つの参照符号「D2」を付している。
図5では、位置情報D2がX1~X17及びY1~Y17で示されているが、実際の位置情報D2には、X1~X17及びY1~Y17に代えてコンバイン4の位置を示す数値(緯度及び経度)等が含まれる。また、図5では、実績情報としての収穫量情報がE1~E17で示されているが、実際の収穫量情報には、E1~E17に代えて実績検出部495が検出した検出値を示す数値(重量)等が含まれる。また、図5では、車速情報(稼働情報の一例)がV1~V17で示されているが、実際の車速情報には、V1~V17に代えて車速センサーが検出した検出値を示す数値(速度)等が含まれる。
本実施形態では一例として、制御部491は、コンバイン4のエンジンON/OFFキーがONでエンジンがON状態である間、位置情報D2、実績情報(収穫量情報)及び稼働情報を定期的に取得して、記憶部492に記録する情報記録処理を繰り返し実行する。そのため、制御部491では、作業機械であるコンバイン4が使用されている「作業期間」においては、作業機械の位置毎の作業に関連する複数の作業情報D1を取得できる。
また、本実施形態では一例として、制御部491は、コンバイン4のエンジンON/OFFキーがオフに切り替えられ、エンジンがオフ状態になる(つまり停止する)と、情報記録処理を終了する。つまり、エンジンがオフ状態にあれば、記憶部492には、新たな作業情報D1(位置情報D2、実績情報、稼働情報及び時刻情報)は記憶されない。さらに、制御部491は、情報記録処理を終了する時点で、記憶部492に記録されている1以上の作業情報D1を、管理サーバ2に送信する。ここで、制御部491は、管理サーバ2から作業情報D1の受信確認信号を受信すると、作業情報D1を記憶部492から消去する。つまり、コンバイン4(作業機械)から管理サーバ2に作業情報D1が正常に送信されると、記憶部492内の作業情報D1は消去される。
このように、コンバイン4は、搭載端末49を備え、作業に応じた位置情報D2、実績情報(収穫量情報)及び稼働情報を含む作業情報D1を記憶部492に記録し、記憶部492に蓄積された1以上の作業情報D1を、管理サーバ2へと送信する。本実施形態では、作業機械としてのコンバイン4のエンジンがオン状態からオフ状態に切り替わること(つまり停止)をトリガにして、作業機械から管理サーバ2に作業情報D1が送信されるが、管理サーバ2への作業情報D1の送信タイミングはこの例に限らない。例えば、コンバイン4は、エンジンがオフ状態からオン状態に切り替わること(つまり始動)をトリガに、前回の作業期間に得られた作業情報D1を管理サーバ2に送信してもよいし、定期的又は不定期に作業情報D1を管理サーバ2に送信してもよい。
また、作業管理システム1による作業の管理対象となる作業機械は、コンバイン4に限らず、例えば、トラクタ、田植機又は播種機等であってもよい。そして、作業機械が変われば、当然ながら、作業機械における刈取装置42等の各部の機能は、作業機械に合わせて変更される。一方、作業機械に搭載される搭載端末49の基本的な機能については、作業機械によらずに共通である。
すなわち、作業機械によらず、搭載端末49は、制御部491、記憶部492、通信部493、位置検出部494及び実績検出部495等を有する。ただし、例えば、作業機械がトラクタである場合、作業機械の作業に関連する作業情報中の実績情報は、収穫量情報に加えて又は代えて、土壌特性に関する土壌情報、及び施肥量に関する施肥情報等のデータを含み得る。この場合、実績検出部495は、収穫量情報(収量データ)に加えて又は代えて、土壌データ及び施肥データ等を検出する。同様に、例えば、作業機械が田植機である場合、作業機械の作業に関連する作業情報中の実績情報は、施肥量に関する施肥情報等のデータを含み得る。この場合、実績検出部495は施肥データ等を検出する。同様に、例えば、作業機械が播種機である場合、作業機械の作業に関連する作業情報中の実績情報は、播種量に関する播種情報等のデータを含み得る。この場合、実績検出部495は播種データ等を検出する。
また、作業機械がトラクタである場合には、トラクタ本体に装着されるインプルメントの変更により、作業機械は、耕耘、草刈り、又は、肥料、農薬若しくは種の散布等の、複数種類の作業を実行可能である。トラクタ本体に装着されるインプルメントが変更される等、作業機械で実行可能な作業の種類(内容)が変更される場合には、変更の前後の作業機械は、互いに異なる作業機械であることとする。
[3]管理サーバ
次に、管理サーバ2の構成について、図1を参照して詳細に説明する。管理サーバ2は、情報処理部21、データ格納部22、操作受付部23及び(サーバ側)通信部24等を備えるサーバである。管理サーバ2は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、管理サーバ2で実行される各種の処理は、複数のプロセッサによって分散して実行されてもよい。
通信部24は、1以上の作業機械(コンバイン4)及びユーザ端末3等の外部機器との通信機能を有する通信インターフェースである。具体的には、通信部24は、管理サーバ2を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して1以上の作業機械(コンバイン4)及びユーザ端末3等との間で、所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行する。
操作受付部23は、ユーザの操作を受け付ける。具体的には、管理サーバ2はユーザ端末3と通信可能であるので、操作受付部23は、ユーザ端末3に対するユーザの操作に応じた操作信号がユーザ端末3から送信されることで、ユーザの操作を間接的に受け付ける。つまり、ユーザ端末3をユーザが操作すると、ユーザ端末3では、ユーザの操作に応じた操作信号が発生し、操作信号がユーザ端末3から管理サーバ2に送信される。したがって、操作受付部23は、管理サーバ2がユーザ端末3から受信する操作信号によって、ユーザの操作を受け付けることができる。また、操作受付部23は、ユーザ端末3に対するユーザの操作に限らず、ユーザ端末3以外の操作部に対するユーザ(管理サーバ2の管理者等)の操作を受け付けてもよい。この場合、操作部は、例えば、管理サーバ2に設けられる、又は管理サーバ2に付随する、タッチパネル、マウス若しくはキーボード等で実現される。
データ格納部22は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の不揮発性のストレージデバイスを含む。データ格納部22には、情報処理部21に後述の作業管理方法を実行させるための作業管理プログラム等の制御プログラムが格納(記憶)されている。作業管理プログラムは、例えば、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体に記録されて提供され、管理サーバ2の読取装置で非一時的記録媒体から読み取られて、データ格納部22に記憶される。作業管理プログラムは、管理サーバ2以外のサーバから電気通信回線(通信網N1)を介して管理サーバ2に提供(ダウンロード)されて、データ格納部22に記憶されてもよい。
また、データ格納部22は、作業情報格納部221と作業領域格納部222とを含む。作業情報格納部221は、コンバイン4(作業機械)から送信される作業情報D1を記憶する。作業領域格納部222は、後述する作業領域A1に関する情報を記憶する。
情報処理部21は、1以上のプロセッサと、不揮発性メモリ及びRAM等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムであって、種々の処理(情報処理)を実行する。情報処理部21は、位置取得部211、作業取得部212、領域設定部213、区画設定部214、データ算出処理部215、マップ生成部216及び表示処理部217等の機能部を有する。情報処理部21に含まれる、これら複数の機能部は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体に設けられていてもよい。
位置取得部211は、圃場F1における複数の位置で行われる作業に関して、複数の位置に係る複数の位置情報D2を取得する。本実施形態では、基本的には、作業管理システム1での管理対象は作業機械(コンバイン4)で行われる作業であるので、位置取得部211が取得する位置情報D2は、作業機械の位置情報D2である。つまり、位置取得部211は、圃場F1を移動する作業機械(コンバイン4)の作業期間における複数の位置情報D2を取得する。ここでいう「作業期間」は、作業機械にて作業が行われている期間であって、作業期間においては作業機械に搭載された搭載端末49(制御部491)にて作業情報D1が取得されている。本実施形態では一例として、コンバイン4のエンジンON/OFFキーがオンに切り替えられてからオフに切り替えられるまで、つまりエンジンがオン状態にある期間を「作業期間」とする。そして、作業期間においては、作業機械は圃場F1内を移動するので、作業機械の移動に伴って複数の位置情報D2が取得される。また、「作業期間」は、作業機械が圃場F1内を移動する期間だけでなく、例えば、作業機械が農道を走行中の期間等を含んでもよい。要するに、本実施形態のようにエンジンがオン状態にある期間を「作業期間」とする場合には、例えば農道等、作業機械が圃場F1以外の場所に存在する期間も作業期間に含まれ得る。ただし、作業期間における複数の位置情報D2のうち、作業機械が圃場F1以外の場所に存在するときの位置情報D2については、例えば、稼働情報中の車速情報及びクラッチ情報等を参照することで、不要情報として識別可能である。
一方で、例えば、土壌特性の診断のための土壌の採取のように人が行う作業を作業管理システム1の管理対象とする場合においては、位置取得部211は、圃場F1において人が作業を行った各位置に係る位置情報D2を取得することになる。この場合、例えば、作業者(人)が、作業を行う度に作業を行った位置を測位して、位置情報D2として記録する。このときの位置情報D2は、一例として、ユーザ端末3の記憶部32等に書き込まれることにより記録されてもよいし、ユーザ端末3等にて管理サーバ2のデータ格納部22に書き込まれることで管理サーバ2に直接的に記録されてもよい。位置取得部211は、人が行う作業に関しては、このようにして記録された位置情報D2を取得する。
作業取得部212は、複数の位置毎の作業に関連する複数の作業情報D1を取得する。本実施形態では、基本的には、作業管理システム1での管理対象は作業機械(コンバイン4)で行われる作業であるので、作業取得部212が取得する作業情報D1は、作業機械の作業に関連する作業情報D1である。つまり、作業取得部212は、作業期間における作業機械(コンバイン4)の位置毎の作業に関連する複数の作業情報D1を取得する。つまり、作業期間においては、作業機械は圃場F1内を移動するので、作業機械の移動に伴って、作業機械の位置毎の作業に関連する複数の作業情報D1を取得できる。本実施形態では、作業期間が終了する(作業機械としてのコンバイン4のエンジンがオン状態からオフ状態に切り替わる)毎に、作業期間における複数の作業情報D1が作業機械から管理サーバ2に作業情報D1が送信される。これにより、作業取得部212は、作業期間における複数の作業情報D1を取得する。
一方で、例えば、土壌特性の診断のための土壌の採取のように人が行う作業を作業管理システム1の管理対象とする場合においては、作業取得部212は、圃場F1において人が作業を行った位置毎の作業に関連する作業情報D1を取得することになる。この場合、例えば、作業者(人)が、各位置で採取した土壌の分析結果である土壌特性に関する土壌情報を、作業情報D1として記録する。このときの作業情報D1は、一例として、ユーザ端末3の記憶部32等に書き込まれることにより記録されてもよいし、ユーザ端末3等にて管理サーバ2のデータ格納部22に書き込まれることで管理サーバ2に直接的に記録されてもよい。作業取得部212は、人が行う作業に関しては、このようにして記録された作業情報D1を取得する。
また、本実施形態では、複数の作業情報D1に含まれる作業機械(コンバイン4)の位置の情報は、複数の位置情報D2と共通である。つまり、本実施形態では、作業情報D1は位置情報D2を含む情報であるので、作業情報D1中の位置情報D2(作業機械の位置の情報)を、位置取得部211が取得する位置情報D2と共通化する。よって、情報処理部21は、位置情報D2を取得する位置取得部211と、作業情報D1を取得する作業取得部212とを有しつつも、位置取得部211は、作業取得部212で取得される作業情報D1から位置情報D2を抽出することで、位置情報D2を取得する。これにより、作業機械における同一の位置検出部494で検出された位置情報D2が、位置取得部211で取得される位置情報D2と、作業取得部212で取得される作業情報D1中の位置情報D2とに兼用される。
上記のように位置取得部211及び作業取得部212を備えることにより、管理サーバ2は、コンバイン4(搭載端末49)から通信網N1を介して受信する作業情報D1等を、データ格納部22の作業情報格納部221に蓄積して記憶する。また、人が行う作業に関しても同様に、管理サーバ2は、取得した作業情報D1等を、データ格納部22の作業情報格納部221に蓄積して記憶する。
領域設定部213は、圃場F1に対応する作業領域A1を設定する。本開示でいう「作業領域」は、作業を行う圃場F1に対応して仮想空間に設定される二次元領域であって、マップM1の作成に用いられる。つまり、実空間上に存在する圃場F1に対応して、マップM1の作成用に仮想空間上に設定される領域が作業領域A1である。本実施形態では、領域設定部213は、複数の位置情報D2に基づいて、圃場F1に対応する作業領域A1を設定する。つまり、位置取得部211にて取得される、作業機械(コンバイン4)の作業期間における複数の位置情報D2に基づいて、作業領域A1が自動的に設定される。
本実施形態では、領域設定部213は、作業期間の終了後に、複数の位置情報D2に基づいて作業領域A1の設定を行う。つまり、領域設定部213は、作業期間中にリアルタイムで作業領域A1を設定するのではなく、作業期間の終了後に、当該作業期間での作業機械の位置に対応する複数の位置情報D2に基づいて、作業領域A1を設定する。領域設定部213で設定された作業領域A1に関する情報は、作業領域格納部222に記憶される。
より詳細には、本実施形態では、領域設定部213は、第1処理部201と、第2処理部202と、第3処理部203と、を有している。言い換えれば、本実施形態に係る作業管理システム1は、第1処理部201、第2処理部202及び第3処理部203を備えている。第1処理部201は、複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1(図6参照)に基づいて、圃場F1に対応する作業領域A1の候補となる候補領域A10(図7参照)を設定する。第2処理部202は、候補領域A10に、複数の仮区画B(図7参照)を設定する。第3処理部203は、複数の仮区画Bのうち包含する測位点P1の数が所定条件を満たす仮区画Bを除外区画Be(図7参照)とし、候補領域A10から除外区画Beを除外して残る領域により作業領域A1を設定する。
本開示でいう「候補領域」は、作業領域A1の候補として仮想空間に設定される二次元領域であって、作業領域A1の設定に用いられる。候補領域A10は、あくまで作業領域A1の候補である。そのため、候補領域A10がそのまま作業領域A1となることもあれば、候補領域A10の一部が作業領域A1となることもあり、候補領域A10が作業領域A1とならないこともある。
また、本開示でいう「所定条件」は、仮区画Bに包含される測位点P1の数について定められる条件であって、仮区画Bについて除外区画Beか否かを判断するために用いられる。すなわち、仮区画Bのうち、仮区画Bに包含される測位点P1の数が所定条件を満たす仮区画Bが、除外区画Beに分類されることになる。一例として、所定条件が、包含する測位点P1の数が「0」であること、と定められていれば、仮区画Bのうち、包含する測位点P1の数が「0」である、つまり測位点P1を包含しない仮区画Bが、除外区画Beとなる。
要するに、本実施形態では、領域設定部213は、作業領域A1を設定するための処理を、第1処理部201、第2処理部202及び第3処理部203の各々での処理、つまり3段階の処理に分けて実現する機能を有している。このような3段階の処理を経て、領域設定部213は、複数の位置情報D2に基づいて、圃場F1に対応する作業領域A1を設定することができる。すなわち、第1処理部201では、複数の位置情報D2に基づいて候補領域A10を設定し、第2処理部202では、候補領域A10に複数の仮区画Bを設定し、第3処理部203では、仮区画Bを利用して候補領域A10から作業領域A1を設定する。このように、領域設定部213は、候補領域A10及び仮区画Bを利用して、作業領域A1を設定する機能を有している。
区画設定部214は、作業領域A1に複数の区画K(図12参照)を設定する。本開示でいう「区画」は、仮想空間上の作業領域A1を複数に分割したときの、分割後の個々の領域を意味する。つまり、区画設定部214は、作業領域A1を複数の区画Kに分割(区分)することによって、複数の区画Kを設定する。領域設定部213にて作業領域A1の設定に際して利用される仮区画Bもまた、区画Kと同様に、仮想空間上の候補領域A10を複数に分割したときの、分割後の個々の領域を意味する。
区画設定部214は、領域設定部213にて設定される作業領域A1に対して、複数の区画Kを設定する。第1処理部201、第2処理部202及び第3処理部203での3段階の処理で作業領域A1が設定される場合には、区画設定部214は、第3処理部203にて設定される作業領域A1に、複数の区画Kを設定することになる。
本実施形態では、区画設定部214は、第1モード、第2モード及び第3モードを含む複数のモードを有しており、ユーザの操作に従って、これらのモードを切替可能である。そして、区画設定部214は、モードによって複数の区画Kの設定の仕方が異なる。一例として、第1モードでは、区画設定部214は、例えば正方形状等の予め定められた形状の区画Kを設定する。つまり、第1モードにおいては、作業領域A1内での測位点P1の配置によらずに、作業領域A1に対して複数の区画Kが固定的(静的)に設定される。一方、第2モード及び第3モードでは、区画設定部214は、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて区画Kを設定する。つまり、第2モード及び第3モードにおいては、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて区画Kを変化させるように、作業領域A1に対して複数の区画Kが動的に設定される。
すなわち、本実施形態では、第2モード又は第3モードが選択されることにより、区画設定部214は、圃場F1に対応する作業領域A1に、複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kを設定する。このようにして設定される複数の区画Kは、同一の作業領域A1に対しても、同一になるとは限らず、位置情報D2によって変化することになる。つまり、位置情報D2が変化すれば、これに対応する測位点P1の作業領域A1内での配置は変化するため、結果的に、作業領域A1に設定される複数の区画Kも変化する。
特に、第2モードにおいては、区画設定部214は、作業領域A1を、複数の測位点P1のうち隣接する2つの測位点P1間をつなぐ接続線L1(図16参照)にて分割することで、複数の区画Kを設定する。より詳細には、第2モードでは、区画設定部214は、作業領域A1に、複数の測位点P1を用いたドロネー図G1(図16参照)を作成し、ドロネー図G1のドロネー辺を接続線L1とすることで、複数の区画Kを設定する。このように、測位点P1を用いてドロネー図G1を作成することで得られる個々の領域を区画Kとすることで、複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kが設定される。
また、第3モードにおいては、区画設定部214は、作業領域A1を、複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1のうちのいずれか2つの測位点P1間を隔てる区分線L2(図19参照)にて分割することで、作業領域A1に複数の区画Kを設定する。より詳細には、第3モードでは、区画設定部214は、作業領域A1に、複数の測位点P1を用いたボロノイ図G2(図19参照)を作成し、ボロノイ図G2のボロノイ境界を区分線L2とすることで、複数の区画Kを設定する。このように、測位点P1を用いてボロノイ図G2を作成することで得られる個々の領域を区画Kとすることで、複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kが設定される。
データ算出処理部215は、作業取得部212により取得される作業情報D1に基づいて、作業領域A1内の複数の区画Kのそれぞれの作業データを算出する。データ算出処理部215は、複数の区画Kのうちの1つの区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に対して演算処理を実行することで、当該1つの区画Kに対応付けられる作業データを算出する。つまり、データ算出処理部215は、区画Kごとに、区画K内の複数のサンプリング位置(測位点P1)に対応する実績情報(収穫量情報)を取得して、例えば、単位面積当たりの収穫量(g/m2)を作業データとして算出する。データ算出処理部215は、サンプリング間隔(例えば5秒間隔)で取得された作業情報D1に基づいて区画Kごとの作業データ(単位面積当たりの収穫量)を算出する。
マップ生成部216は、複数の作業情報D1に基づく作業データを複数の区画Kに対応付けてなるマップM1を作業領域A1毎に生成する。本開示でいう「マップ」は、作業領域A1に設定された複数の区画Kに、それぞれ収量データ(収穫量情報)等の作業データを割り当てたデータである。本実施形態では、マップ生成部216は、例えばデータ算出処理部215にて算出された作業データ(単位面積当たりの収穫量)を、複数の区画Kに対応付けることで、マップM1を生成する。つまり、例えば、マップ生成部216は、圃場F1内の収穫量の分布を表すマップM1(収量マップ)を生成する。このようなマップM1によれば、ユーザは、マップM1を確認することにより圃場F1全体の収穫状態を把握することが可能になる。このようなマップM1は、例えば、圃場F1の収穫状態を評価したり、次年度の収穫作業の計画を立てたりする目的で利用される。
表示処理部217は、マップ生成部216で生成されたマップM1等を表示させる処理を実行する。本実施形態では、表示処理部217は、マップM1を含む表示画面Im1(図14参照)を生成し、例えば、ユーザ端末3の表示部(操作表示部33)に表示画面Im1を表示させる。本開示でいう表示画面Im1等の「画面」は、表示部に表示される映像(画像)を意味し、図像、図形、写真、テキスト及び動画等を含む。そのため、情報処理部21は、例えば、操作受付部23に対するユーザによる操作に応じて、データ格納部22に記憶されている作業情報D1等を表示又は送信することが可能である。
本実施形態では一例として、表示処理部217は、各種のウェブページを生成してそのウェブページの情報をユーザ端末3に送信することにより、ユーザ端末3に各種のウェブページを表示させることが可能である。また、他の態様として、表示処理部217は、ユーザ端末3に各種のウェブページを表示するために必要なデータを送信することにより、ユーザ端末3の制御部31に各種のウェブページの表示を実行させてもよい。
情報処理部21は、CPU(Central Processing Unit)で作業管理プログラムに従った各種の処理を実行することによって、上記各種の機能部(処理部)として機能する。また、情報処理部21における上記各種の機能部の少なくとも一部は、電子回路で構成されていてもよい。さらに、作業管理プログラムは、複数のプロセッサを機能部として機能させるためのプログラムであってもよい。各機能部の動作について詳しくは、「[5]作業管理方法」の欄で説明する。
[4]ユーザ端末
次に、ユーザ端末3の構成について、図1を参照して詳細に説明する。ユーザ端末3は、制御部31、記憶部32、操作表示部33及び通信部34等を備える。ユーザ端末3は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等の情報処理装置(通信端末)である。
通信部34は、管理サーバ2等の外部機器との通信機能を有する通信インターフェースである。具体的には、通信部34は、ユーザ端末3を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して管理サーバ2等との間で、所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行する。
操作表示部33は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、タッチパネル、マウス又はキーボードのような操作部と、を含むユーザインターフェースである。操作表示部33は、例えば、ユーザに対して各種の情報を表示し、かつユーザによる各種の操作を受け付ける。特に本実施形態では、ユーザ端末3は、ブラウザ機能を有しており、操作表示部33には、各種のウェブページ等の情報を表示可能である。
記憶部32は、各種の情報を記憶するHDD、SSD又はフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部である。例えば、記憶部32には、ブラウザプログラム等の制御プログラムが記憶される。具体的に、ブラウザプログラムは、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)等の通信プロトコルに従って、管理サーバ2等の外部装置との間で通信処理を制御部31に実行させるための制御プログラムである。また、制御プログラムは、管理サーバ2との間で予め定められた通信プロトコルに従って通信処理を実行するための専用アプリケーションであってもよい。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムである。CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。ROMは、CPUに各種の処理を実行させるためのBIOS(Basic Input Output System)及びOS(Operating System)等の制御プログラムが予め記憶された不揮発性のメモリである。RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性のメモリであり、CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部31は、ROM又は記憶部32に予め記憶された各種の制御プログラムをCPUで実行することによりユーザ端末3を制御する。
具体的には、制御部31は、記憶部32に記憶されているブラウザプログラムに従って各種の処理を実行することによりブラウザ処理部311として機能する。ブラウザ処理部311は、管理サーバ2から通信網N1を介して提供されるウェブページを操作表示部33に表示させ、操作表示部33に対する操作を管理サーバ2に入力するブラウザ処理を実行することが可能である。すなわち、ユーザ端末3は、制御部31によってブラウザプログラムが実行されることにより、管理サーバ2の操作用端末として機能することが可能である。
より詳細に説明すると、ユーザ端末3では、管理サーバ2で提供される作業支援サービスのウェブサイト(作業支援サイト)に対応する所定のURLへのアクセス要求を行うためのユーザによる操作が行われることで、以下の動作を開始する。すなわち、ユーザ端末3は、上記操作が行われた場合に、制御部31にて、管理サーバ2から作業支援サイトのウェブページのデータを取得する。このとき、例えば、ユーザが、ユーザ端末3に表示される作業支援サイトにおいて、各種画面(表示画面Im1及び登録画面Im2等)の表示指示を行うことで、ユーザ端末3は、指示された各種画面を操作表示部33に表示させる。各種画面は、ユーザ端末3において作業支援サイトにログインすることによりユーザ端末3にて表示可能となる。
ここで、上記所定のURLへのアクセス要求のための操作は、例えば、ユーザによる、予め登録されたウェブサイトの一覧からの選択操作、又はテキスト入力操作等によって実現される。また、ユーザ端末3に管理サーバ2に対応する専用アプリケーションがインストールされている場合には、ユーザが専用アプリケーションを起動する操作を行うことで、所定のURLへのアクセス要求がなされ、操作表示部33に作業支援サイトが表示される。
ユーザ端末3が管理サーバ2と通信可能である限り、ユーザは、どこからでもユーザ端末3にて作業支援サイトを確認することができ、作業機械による作業に関する情報を確認することが可能である。
ここにおいて、ユーザ端末3を使用するユーザは、作業機械(コンバイン4)を操作(運転)する操作者と同一人であってもよいし、同一人でなくてもよい。また、ユーザ端末3を使用するユーザに関して、例えば、圃場F1のオーナのように1つの圃場F1に対して単一のユーザが設定されてもよいし、1つの圃場F1に対して複数のユーザが設定されてもよい。後者の場合、例えば、1つの圃場F1であっても、作業毎に異なるユーザを設定することも可能である。さらに、ユーザは、個人と法人とのいずれであってもよいし、複数の個人又は法人の集合からなる団体(組織)であってもよい。また、ユーザ端末3は、1ユーザに対して1台設けられてもよいし、複数のユーザに対して1台設けられてもよいし、1ユーザに対して複数台設けられてもよい。複数のユーザに対して1台のユーザ端末3が設けられる場合、例えば、ユーザID等によって、複数のユーザの各々を識別可能である。
[5]作業管理方法
以下、図6~図21を参照しつつ、主として管理サーバ2の情報処理部21によって実行される作業管理方法の一例について説明する。以下、特に断りがない限り、作業機械であるコンバイン4による収穫作業を、作業管理方法による管理の対象とする場合を想定する。
また、本実施形態に係る作業管理方法は、コンピュータシステムを主構成とする情報処理部21にて実行されるので、言い換えれば、作業管理プログラムにて具現化される。つまり、本実施形態に係る作業管理プログラムは、作業管理方法に係る各処理を1以上のプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。このような作業管理プログラムは、例えば、管理サーバ2の情報処理部21及びコンバイン4の制御部491によって協働して実行されてもよい。
[5.1]作業領域の設定処理
まず、作業領域A1を設定するための「作業領域の設定処理」について説明する。本実施形態では、領域設定部213の動作モードとして、自動で作業領域A1を設定(特定)する第1動作モードと、手動で作業領域A1を設定する第2動作モードと、の2種類の動作モードがある。そして、領域設定部213は、操作受付部23が受け付けるユーザの操作に従って、第1動作モードと、第2動作モードと、を切替可能である。つまり、本実施形態では、作業領域A1の設定に関して、自動設定と手動設定との2種類の設定方法がある。そこで、以下では、第1動作モード(自動設定)と第2動作モード(手動設定)とに分けて、領域設定部213による作業領域A1の設定処理について説明する。
[5.1.1]作業領域の自動設定
まず、領域設定部213の動作モードが第1動作モードにある場合、つまり作業領域A1を自動設定する場合における、作業領域A1の設定処理について説明する。
第1動作モードにおいては、領域設定部213は、例えば、図6~図8に示すように、複数の位置情報D2に基づいて、圃場F1に対応する作業領域A1を設定する。図6~図8では、サンプリング間隔で取得される作業機械(コンバイン4)の位置情報D2に対応する仮想空間上の各位置を測位点P1とし、各測位点P1を黒点の印で示している。また、図6~図8では、図4に例示した第1圃場F11及び第2圃場F12の2つの圃場F1にそれぞれ対応する2つの作業領域A1を設定する様子を示している。すなわち、図8において、第1作業領域A11が第1圃場F11に対応し、第2作業領域A12が第2圃場F12に対応する。
ここでは一例として、コンバイン4が移動軌跡R1に沿って移動する際に、サンプリング間隔で取得される位置情報D2が作業期間中に得られる場合を想定する。より詳細には、図6の左側の図面に示すように、コンバイン4は、まず農道を通って第1圃場F11に移動し、第1圃場F11にて作業(収穫作業)を行った後、農道を通って第2圃場F12に移動し、第2圃場F12にて作業を行う。そのため、移動軌跡R1は、農道、第1圃場F11、農道、第2圃場F12の順に、コンバイン4の移動を示している。領域設定部213は、このような状況で得られる複数の位置情報D2に基づいて、作業領域A1を自動的に設定する。
作業領域A1を設定するに際し、情報処理部21は、作業領域A1の設定に用いられる複数の位置情報D2を位置取得部211にて取得する。本実施形態では、位置取得部211は、作業取得部212で取得される作業情報D1から位置情報D2を抽出することで、位置情報D2を取得する。
複数の位置情報D2が得られると、領域設定部213は、図6の中央の図面に示すように、これら複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1を設定する。つまり、領域設定部213は、作業期間における作業機械(コンバイン4)のサンプリング間隔毎の各位置に相当する測位点P1を仮想空間上に設定する。本実施形態では一例として、仮想空間上の座標は、実空間上の緯度及び経度と対応付けられている。そのため、領域設定部213は、位置情報D2に含まれる緯度及び経度の情報を用いて、仮想空間上の位置情報D2が示す位置に対応する各位置に測位点P1を設定する。測位点P1の設定は、例えば、第1処理部201にて行われる。これにより、作業期間中にコンバイン4が移動した軌跡(移動軌跡R1)上に点在する測位点P1の集合が得られることになる。
複数の測位点P1が設定されると、領域設定部213は、第1処理部201にて、これら複数の測位点P1に基づいて、圃場F1に対応する作業領域A1の候補となる候補領域A10を設定する。ただし、本実施形態では、第1処理部201は、候補領域A10を設定する前に、複数の測位点P1から不要点を除外する不要点除外処理を実行する。すなわち、第1処理部201は、複数の測位点P1のうち不要条件を満たす測位点P1(不要点)を除く測位点P1を用いて、候補領域A10を設定する。本実施形態では一例として、第1処理部201は、2段階の不要点除外処理を行う。
1段目の不要点除外処理では、第1処理部201は、稼働情報中の車速情報及びクラッチ情報等を参照して、作業に関連しない測位点P1を不要点として除外する。つまり、第1処理部201は、各測位点P1が表す位置情報D2に対応する作業情報D1を参照し、作業情報D1に含まれる稼働情報中の車速情報及びクラッチ情報等から、当該測位点P1が不要点か否かを判断する。不要条件は、一例として作業機械の車速が判定閾値以上であることを含んでおり、第1処理部201は、ある測位点P1に対応する車速情報が示す車速が判定閾値以上であれば、この測位点P1については不要条件を満たす「不要点」であると判断する。
2段目の不要点除外処理では、第1処理部201は、K近傍又は点密度等の仮想空間上での測位点P1の密度を指標として、作業に関連しない測位点P1を不要点として除外する。つまり、第1処理部201は、仮想空間上での測位点P1の密度から、各測位点P1が不要点か否かを判断する。不要条件は、一例として測位点P1の密度が判定閾値未満であることを含んでおり、第1処理部201は、ある測位点P1に着目した場合の密度が判定閾値未満であれば、この測位点P1については不要条件を満たす「不要点」であると判断する。
このような不要点除外処理により、図6の右端の図面に示すように、図6の中央の状態から、圃場F1での作業に関連しない測位点P1(不要点)を除いた測位点P1のみが残ることになる。例えば、第1圃場F11又は第2圃場F12に向けて農道を移動中のコンバイン4の位置を示す測位点P1等は、不要点として除外される。その結果、第1処理部201では、複数の測位点P1のうち、圃場F1での作業に関連する測位点P1のみに基づいて候補領域A10を設定することができ、圃場F1以外の領域が候補領域A10に含まれにくくなる。
第1処理部201は、図6の右端の状態の複数の測位点P1のうち、時間的及び/又は空間的な間隔が設定値(パラメータ)以下である複数の測位点P1をグループ化する。すなわち、各測位点P1が表す位置情報D2に対応する作業情報D1からは、当該測位点P1に作業機械が位置した時刻(時刻情報)を特定できるので、この時刻情報に基づいて、2つの測位点P1間の時間的な間隔(時間差)が導出される。このような時間的な間隔に加えて又は代えて、仮想空間上での2つの測位点P1の空間的な間隔(距離)に着目し、第1処理部201は、間隔が設定値以下となる複数の測位点P1をグループ化して点群を生成し、当該点群をセクションとする。ここで、第1処理部201は、複数の測位点P1の集合(点群)からなるセクションをM個(Mは0以上の整数)生成する。
このとき、時間的及び/又は空間的な間隔と比較される設定値(パラメータ)が、小さく設定されていれば、図6の右端に示すように、第1圃場F11及び第2圃場F12に対応して分散した複数の測位点P1は、2つのセクションに分類される。ただし、本実施形態では、設定値(パラメータ)は、比較的大きな値に設定されている。そのため、図6の右端に示すような複数の測位点P1であっても、全て1つのセクションに集約される。
そして、第1処理部201は、セクションごとに、複数の測位点P1の集合(点群)を用いて、図7の左端の図面に示すように、作業領域A1の候補となる候補領域A10を設定する。本実施形態では、第1処理部201は、複数の測位点P1についての凸包処理を用いて、候補領域A10を設定する。これにより、仮想空間上における各セクションに属する複数の測位点P1からなる点群を凹みのないように覆った図形である凸包(convex hull)、つまり仮想空間上の点群を包む最小の凸多角形が、候補領域A10として設定される。要するに、圃場F1内の作業機械の移動軌跡R1上の点群を包囲する最小の凸多角形が、候補領域A10として設定される。このとき、本実施形態では、第1圃場F11及び第2圃場F12に対応して分散した複数の測位点P1は、1つのセクションに集約されているので、候補領域A10は1つのみ生成される。このような、候補領域A10は、第1圃場F11に対応する領域と、第2圃場F12に対応する領域とを含むことになる。
候補領域A10が設定されると、次に、領域設定部213は、第2処理部202にて、図7の中央の図面に示すように、候補領域A10に複数の仮区画Bを設定する。第2処理部202は、一例として、図7に示すように、候補領域A10全体をメッシュ状に複数の仮区画Bに分割するように、複数の仮区画Bを設定する。図7には、候補領域A10を複数の仮区画Bに分割した状態を模式的に示している。例えば、各仮区画Bは、対応する圃場F1における実寸換算で10m×10mの正方形の領域である。ただし、各仮区画Bの形状及び大きさ等は特に限定されない。
本実施形態では、複数の仮区画Bの各々の大きさは可変である。具体的には、第2処理部202は、操作受付部23が受け付けるユーザの操作に従って、各仮区画Bの大きさを指定する。これにより、仮区画Bを任意の大きさに設定することができる。例えば、サンプリング間隔が長い又は作業機械の車速が速い場合、隣接する2つの測位点P1間の空間的な間隔(距離)が大きくなるので、仮区画B(のサイズ)を大きく設定することが好ましい。
ここで、本実施形態では一例として、第2処理部202は、候補領域A10を、候補領域A10の外周に沿った仮想線にて分割することで複数の仮区画Bを設定する。すなわち、候補領域A10を複数の仮区画Bに分割するメッシュの網目(仮想線)方向が、候補領域A10の外周に沿うように設定される。これにより、例えば、圃場F1の畔方向に沿って、複数の仮区画Bを設定することが可能となり、第3処理部203で設定される作業領域A1の外形を、畔方向に沿わせやすくなる。
また、複数の仮区画Bを設定する方向は、上記に限らず、他の例として、第2処理部202は、候補領域A10を、作業機械の移動軌跡R1に沿った仮想線にて分割することで複数の仮区画Bを設定してもよい。すなわち、候補領域A10を複数の仮区画Bに分割するメッシュの網目(仮想線)方向が、候補領域A10内での作業機械の移動軌跡R1、つまり時間的に連続する測位点P1同士を結ぶ線に沿うように設定される。これにより、例えば、圃場F1の畝方向に沿って、複数の仮区画Bを設定することが可能となり、第3処理部203で設定される作業領域A1の外形を、畝方向に沿わせやすくなる。
複数の仮区画Bが設定されると、次に、領域設定部213は、第3処理部203にて、図7の右端の図面に示すように、複数の仮区画Bを、除外区画Beと除外区画Be以外とに分類する。図7の右端の図面では、複数の仮区画Bのうち除外区画Beに分類された領域を、白色で表している。ここで、第3処理部203は、複数の仮区画Bのうち、包含する測位点P1の数が所定条件を満たす仮区画Bを除外区画Beに分類する。本実施形態では一例として、所定条件は、包含する測位点P1の数が「0」であること、と定められている。そのため、第3処理部203では、仮区画Bのうち、包含する測位点P1の数が「0」である、つまり測位点P1を包含しない仮区画Bが、除外区画Beに分類される。ここでは、第1圃場F11及び第2圃場F12のいずれにも対応しない領域に設定された仮区画Bは、除外区画Beに分類される。
そして、第3処理部203は、図8の左側の図面に示すように、候補領域A10から除外区画Beを除外して残る領域により作業領域A1を設定する。つまり、第3処理部203は、除外区画Beに分類された領域を候補領域A10から除去することで、除外区画Be以外に分類された領域のみを残存させる。このようにして残存する、候補領域A10のうちの除外区画Be以外の仮区画Bに属する領域が、作業領域A1として設定される。
ここにおいて、本実施形態では、候補領域A10は、第1圃場F11に対応する領域と第2圃場F12に対応する領域とを含むように1つのみ生成されている。そして、第1圃場F11及び第2圃場F12のいずれにも対応しない領域に設定された仮区画Bが除外区画Beとして除外されるので、候補領域A10のうちの、第1圃場F11と第2圃場F12との間の領域が除外されることになる。このように、除外区画Beが除外されることで、候補領域A10は2つの領域に分断されるので、第3処理部203は、これら2つの領域の各々を作業領域A1に設定する。すなわち、第3処理部203は、除外区画Beを除外することで候補領域A10を2以上の領域に分断し、当該2以上の領域の各々により作業領域A1を設定する。
さらに、本実施形態では、第3処理部203は、候補領域A10から除外区画Beを除外して残る領域のうち、面積と包含する測位点P1の数との少なくとも一方について除外条件を満たす領域を、作業領域A1から除外する。除外条件は、例えば、面積が除外閾値以下であること、及び/又は、包含する測位点P1の数が除外閾値以下であること、等である。すなわち、候補領域A10から除外区画Beを除外して残った領域が、極端に小さい及び/又は包含する測位点P1の数が極端に少ないような場合、このよう領域については、作業領域A1から除外される。
最終的に、領域設定部213は、図8の右側の図面に示すように、第1圃場F11に対応する作業領域A1と、第2圃場F12に対応する作業領域A1と、をそれぞれ設定する。すなわち、第1圃場F11の外形と略同一形状の第1作業領域A11が設定され、第2圃場F12の外形と略同一形状の第2作業領域A12が設定される。
作業領域A1の設定が完了すると、領域設定部213は、設定した作業領域A1に関する情報を、作業領域格納部222に記憶(出力)することをもって、作業領域A1の登録を行う。具体的には、仮想空間に作業領域A1を再現するために必要な情報を、作業領域格納部222に記憶することで、作業領域A1の登録が行われる。本実施形態では、仮想空間に設定される座標上での、作業領域A1の位置及び形状を特定する情報、つまり作業領域A1の外形線の座標情報が、作業領域A1に関する情報として、作業領域格納部222に記憶される。本実施形態では一例として、仮想空間上の座標は、実空間上の緯度及び経度と対応付けられている。そのため、作業領域格納部222には、対応する圃場F1の緯度及び経度を用いて、作業領域A1が登録されることになる。
さらに、本実施形態では、領域設定部213は、設定した作業領域A1に関する情報として、例えば、作業の種類(内容)を特定するための作業名、及び作業に関する時刻情報(一例として開始日時及び終了日時)等についても、作業領域格納部222に記憶する。これにより、作業領域A1の登録に際しては、作業領域格納部222には、作業領域A1が、この作業領域A1に対応する圃場F1で行われた作業の作業名及び時刻情報等と紐づけて、格納されることになる。そのため、例えば、同一の圃場F1についても、作業名又は年度等によって、個別の作業領域A1を設定することが可能となる。
図9は、上述した作業領域A1を自動設定に係る情報処理部21の動作の一例を示すフローチャートである。
すなわち、情報処理部21は、まず、ステップS1において、作業機械であるコンバイン4から、位置情報D2を含む作業情報D1を取得したか否かを判定する。作業期間における作業情報D1が取得されたと判定された場合(S1:Yes)、処理がステップS2に移行する。情報処理部21は、作業情報D1を取得するまで待機する(S1:No)。情報処理部21(作業取得部212)は、コンバイン4から作業情報D1を取得すると、作業情報D1を作業情報格納部221に記憶する(図5参照)。
ステップS2において、情報処理部21は、作業情報D1から位置情報D2を抽出する。これにより、情報処理部21(位置取得部211)は、作業期間における位置情報D2を取得する。
次にステップS3において、情報処理部21は、第1処理部201にて、取得した位置情報D2を用いて、複数の測位点P1を設定する。次にステップS4において、情報処理部21は、1段目の不要点除外処理として、第1処理部201にて、稼働情報中の車速情報及びクラッチ情報等を参照して、作業に関連しない測位点P1を不要点として除外する。次にステップS5において、情報処理部21は、2段目の不要点除外処理において、第1処理部201にて、K近傍又は点密度等の仮想空間上での測位点P1の密度を指標として、作業に関連しない測位点P1を不要点として除外する。
次にステップS6において、情報処理部21は、第1処理部201にて、圃場F1での作業に関連しない測位点P1(不要点)を除いた測位点P1を、M個(Mは0以上の整数)のセクションに分類する。このとき、第1処理部201は、時間的及び/又は空間的な間隔が設定値(パラメータ)以下である複数の測位点P1を、同一セクションに分類する。
そして、情報処理部21は、セクション毎にステップS7~S15の作業領域設定ループを実行し、全てのセクションについての作業領域A1の設定処理が完了するまで、作業領域設定ループを繰り返す。作業領域設定ループが開始すると(S7)、情報処理部21は、まずステップS8において、セクションに含まれる測位点P1の数がN(ただしNは任意の整数)より大きいか否かを判断する。セクションに含まれる測位点P1の数がNより大きければ(S8:Yes)、処理がステップS9に移行する。一方、セクションに含まれる測位点P1の数がN以下であれば(S8:No)、当該セクションについての作業領域A1の設定は行わずに、処理がステップS7に移行する。
ステップS9において、情報処理部21は、第1処理部201にて、K近傍又は点密度等の仮想空間上での測位点P1の密度を指標として、作業に関連しない測位点P1を不要点として除外する。
次にステップS10において、情報処理部21は、第1処理部201にて、複数の測位点P1についての凸包処理を行い、候補領域A10を設定する。次にステップS11において、情報処理部21は、第2処理部202にて、候補領域A10に複数の仮区画Bを設定する。次にステップS12において、情報処理部21は、第3処理部203にて、複数の仮区画Bを、除外区画Beと除外区画Be以外とに分類する。このとき、第3処理部203は、包含する測位点P1の数が「0」である仮区画Bを除外区画Beとし、候補領域A10から除外区画Beを除外する。これにより、除外区画Beを除外することで候補領域A10が2以上の領域に分断され、当該2以上の領域の各々により作業領域A1が設定される。
次にステップS13において、情報処理部21は、第3処理部203にて、除外条件を満たす領域を作業領域A1から除外する。一例として、第3処理部203は、面積が除外閾値以下である「極小面積」の領域を、作業領域A1から除外する。次にステップS14において、情報処理部21は、作業情報D1に基づいて、作業領域A1の重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の算出を行う。このとき算出されるKPIは、作業領域A1についての作業時間又は収穫量等である。
上述したステップS7~S15の作業領域設定ループを、全てのセクションについて実行すると、処理がステップS16に移行する。ステップS16では、情報処理部21は、領域設定部213にて、作業領域A1に関する情報(データ)を出力する。具体的には、領域設定部213は、設定した作業領域A1に関する情報を、作業領域格納部222に記憶(出力)することをもって、作業領域A1の登録を行う。
以上のようにして、情報処理部21は、作業領域A1を自動設定に係る一連の処理を実行する。ただし、図9に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。例えば、ステップS8は、ステップS11の後で実行されてもよい。
ところで、第1関連技術として、領域設定部213は、候補領域A10及び仮区画Bを利用せずに、作業領域A1を自動設定することも可能である。すなわち、第1関連技術においては、領域設定部213は、セクションに分類した複数の測位点P1に対して凸包処理を施すことで、作業領域A1を得ることが可能である。ただし、第1関連技術では、時間的及び/又は空間的な間隔と比較される設定値(パラメータ)を、作業機械の速度(車速)、ユーザ及び環境等の多くの要因に合わせて設定する必要があり、設定値(パラメータ)の適正な設定は難しい。
すなわち、第1関連技術にあっては、図10に示すように、パラメータ(設定値)が適正値よりも大きければ、複数の圃場F1が1つの作業領域A1として判定されることがある。反対に、パラメータ(設定値)が適正値よりも小さければ、1つの圃場F1が複数の作業領域A1として判定されることがある。このように、第1関連技術においては、パラメータ(設定値)が適正に設定されていなければ、作業領域A1の特定の精度が低下する場合がある。
これに対して、本実施形態に係る作業管理システム1では、候補領域A10及び仮区画Bを利用して作業領域A1を設定することで、パラメータ(設定値)自体は大きめに設定されていてもよい。つまり、パラメータ(設定値)自体が大きめに設定されることで、複数の圃場F1が1つの候補領域A10に包含されても、除外区画Beと判定される仮区画Bを候補領域A10から除外することで、圃場F1に対応する領域を作業領域A1として設定しやすい。結果的に、本実施形態に係る作業管理システム1によれば、作業領域A1の特定の精度が低下しにくい、という利点がある。
[5.1.2]作業領域の手動設定
次に、領域設定部213の動作モードが第2動作モードにある場合、つまり作業領域A1を手動設定する場合における、作業領域A1の設定処理について説明する。
第2動作モードにおいては、領域設定部213は、例えば、操作受付部23が受け付けるユーザの操作に従って、圃場F1に対応する作業領域A1を設定する。一例として、領域設定部213は、図11に示すような登録画面Im2上での作業領域A1を設定するユーザの操作に従って、圃場F1に対応する作業領域A1を設定する。登録画面Im2は、少なくとも1つの圃場F1を含んでいる。登録画面Im2は、例えば、表示処理部217にて、ユーザ端末3の表示部(操作表示部33)に表示される。この登録画面Im2上で、ユーザは、例えば、カーソル等により任意の範囲を指定する操作を行うことで、当該任意の範囲を作業領域A1に設定する。
すなわち、図11の例において、ユーザが登録画面Im2上で第1圃場F11に相当する範囲を指定する操作を行うことで、第1圃場F11と略同一形状の第1作業領域A11が設定される。同様に、ユーザが登録画面Im2上で第2圃場F12に相当する範囲を指定する操作を行うことで、第2圃場F12の外形と略同一形状の第2作業領域A12が設定される。また、登録画面Im2においては、ユーザの操作に従って、例えば、スクロール、拡大/縮小及びページ切替等の動作も可能である。さらに、登録画面Im2上での作業領域A1の指定は、例えば、緯度及び経度を入力することによって実現されてもよい。
第2動作モードにおいても、作業領域A1の設定が完了すると、領域設定部213は、設定した作業領域A1に関する情報を、作業領域格納部222に記憶することをもって、作業領域A1の登録を行う。
[5.2]マップの生成処理
次に、複数の作業情報D1に基づく作業データを複数の区画Kに対応付けてなるマップM1を生成(作成)するための「マップの生成処理」について説明する。本実施形態では、区画設定部214による区画Kの設定の手法として種々の手法があるが、ここでは単純に作業領域A1をメッシュ状に分割することで複数の区画Kが設定されている場合を例に、マップM1の生成処理について説明する。
マップ生成部216は、複数の作業情報D1に基づく作業データを、複数の区画Kに対応付けることによりマップM1を生成する。すなわち、マップ生成部216は、作業領域A1を複数の区画Kに分割した上で、区画K毎に、作業データ(例えば単位面積当たりの収穫量)に関するマップ情報のデータを生成する。本実施形態では、マップ生成部216は、複数の作業情報D1に基づいてデータ算出処理部215にて算出された作業データを、各区画Kに対応付けることにより、マップM1を具現化するためのマップ情報のデータを生成する。生成されたマップ情報は、例えば、データ格納部22に記憶される。
マップM1は、一例として、図12に示すように、作業領域A1全体をメッシュ状に複数の区画Kに分割し、各区画Kの収穫量(平均収穫量等)を算出して作成される。図12には、作業領域A1を複数の区画Kに分割した状態を模式的に示している。例えば、各区画Kは、対応する圃場F1における実寸換算で5m×5mの正方形の領域である。ただし、各区画Kの形状及び大きさ等は特に限定されない。図12には、各区画Kの識別情報として、X座標(X軸)及びY座標(Y軸)の座標情報(区画番号)を付している。
具体的には、マップ生成部216は、作業領域A1の区画K毎に、対応する「区画番号」及び「作業データ」等の情報を含むマップ情報を生成する。区画番号は、区画Kの識別情報である。これにより、データ算出処理部215にて算出される作業データ(例えば単位面積当たりの収穫量)は、区画K毎に登録されることになる。情報処理部21は、区画K毎に、区画K内の複数のサンプリング位置に対応する複数の作業情報D1を取得して、例えば、単位面積当たりの収穫量(g/m2)を算出してマップ情報の作業データとして記録する。マップ情報に登録される各作業データは、各区画Kにおける作業情報の代表値であればよく、単位面積当たりの収穫量のような平均値に限らず、各区画Kにおける合計値、中央値、最頻値、最大値又は最小値等の代表値であってもよい。一例として、作業情報D1が実績情報として収穫量情報を含む場合、作業データは、各区画Kにおける収穫量の合計値(累積値)等であってもよい。
ここで、区画設定部214が予め定められた形状の区画Kを設定する第1モードであれば、1つの区画Kに含まれるサンプリング位置の数は区画Kによって異なることがある。この場合、作業データは、区画Kに含まれるサンプリング位置の数によらずに、複数の区画K間で平等に算出されることが好ましい。例えば、作業データが各区画Kにおける収穫量の合計値(累積値)である場合、単純に区画K内の複数の作業情報D1を累積すると、サンプリング位置の数が多い区画Kほど作業データが大きくなり、複数の区画K間での不平等が生じる。そこで、データ算出処理部215は、区画Kに対応する複数の作業情報D1について、例えば、サンプリング位置の数に応じた係数を乗じて正規化したり、サンプリング位置の数が少ない区画Kについては作業情報D1を補間したりすることが好ましい。単位面積当たりの収穫量を作業データとする場合も同様に、データ算出処理部215は、区画K毎に正規化又は補間された累積収量を算出した上で、当該累積収量を区画Kの面積で除することにより作業データを算出することが好ましい。
このようにして、マップ生成部216は、図13に示すような、各区画Kの作業データに基づくマップM1を作成する。図13には、マップM1の一例を示している。マップ生成部216は、作業データの値に対して、例えば、多階調の灰色濃淡(グレースケール)を対応付けることで、マップM1を作成する。図13に示す例では、各区画Kについて、色が淡い程、収穫量が少なく、色が濃い程、収穫量が多いことを表している。これにより、圃場F1全体に対応する収穫量の分布を表すマップM1を作成することができる。また、圃場F1内の区画Kの数(分割数)を多くして、高精細なマップM1を作成することができる。マップ生成部216は、マップM1の各区画Kに、作業データの「数値」を表示してもよいし、表示しなくてもよい。
生成されたマップM1は、表示処理部217により、図14に例示するように、表示画面Im1に表示される。すなわち、表示処理部217は、マップM1を含む表示画面Im1を、例えば、ユーザ端末3の表示部(操作表示部33)等に表示させる。図14における表示画面Im1は、地図画像Im10と、第1入力欄C1と、第2入力欄C2と、第3入力欄C3と、解説情報C4と、を含んでいる。図14において、領域を表す一点鎖線、引出線及び参照符号は、説明のために付しているに過ぎず、実際に表示部に表示される訳ではない。
地図画像Im10は、圃場F1を含む地図を示す画像であって、航空写真又はコンピュータグラフィックス等で実現されてもよい。本実施形態では、表示処理部217は、地図画像Im10中の圃場F1に対応する作業領域A1に、マップM1を表示させる。つまり、マップ生成部216で生成されたマップM1は、表示画面Im1の地図画像Im10中であって、対応する圃場F1に重ねて表示される。図14に例示する表示画面Im1では、第1圃場F11に対応する第1作業領域A11のマップM1が表示されている。これにより、表示画面Im1においては、圃場F1での作業状況が、地図上での複数の区画K毎の作業データ(例えば単位面積当たりの収穫量)を表すマップM1として可視化される。地図画像Im10内の地図は、ユーザの操作に従って、例えば、スクロール、拡大/縮小及びページ切替等が可能である。
第1入力欄C1は、表示画面Im1に表示させるマップM1の第1項目を入力するための入力欄である。第1項目は、一例として年度(又は年)であって、第1入力欄C1に入力される年度(又は年)によって、マップM1として表示されるデータの年度(又は年)が特定される。第2入力欄C2は、表示画面Im1に表示させるマップM1の第2項目を入力するための入力欄である。第2項目は、一例として作業名であって、第2入力欄C2に入力される作業名によって、マップM1として表示されるデータの作業名が特定される。第3入力欄C3は、表示画面Im1に表示させるマップM1の第3項目を入力するための入力欄である。第3項目は、一例として作業データを特定する属性情報であって、第3入力欄C3に入力される作業によって、マップM1として表示される作業データが特定される。すなわち、第1項目及び第2項目は、マップ化される作業を特定するための項目であって、第3項目は、マップ化される作業データそのものを特定するための項目である。図14の例では、第1入力欄C1、第2入力欄C2及び第3入力欄C3の入力形式は、いずれも既定値の中から選択する選択入力形式であるが、これに限らず、自由入力形式であってもよい。また、表示画面Im1では、年度(又は年)及び作業名に加えて又は代えて、例えば、使用する作業機械、作業者及び作物等の属性情報の入力を受け付けてもよい。
解説情報C4は、マップM1における作業データの解説を含む情報である。具体的には、解説情報C4は、マップM1中の、多階調の灰色濃淡(グレースケール)が、作業データの値に対してどのように対応付けられているかを示す凡例である。図14の例では、解説情報C4は、単位面積当たりの収穫量からなる作業データに関して、最小値(最淡色)が50.00(kg/a)であって、最大値(最濃色)が110.00(kg/a)であることを示している。
このように、表示処理部217は、マップM1を、表示画面Im1に表示させる。表示処理部217は、マップM1における複数の区画Kの各々を、作業データに応じた態様で表示させる。図14の例では、表示処理部217は、作業データを複数(ここでは7)階調に分類し、複数の区画Kの各々を、作業データの値に応じた階調(濃淡)で表示させることで、作業データに応じた態様での表示を実現している。ただし、この例に限らず、表示処理部217は、例えば、作業データの値に応じた数字、記号、色又はグラフ等によって、マップM1における複数の区画Kの各々を作業データに応じた態様としてもよい。
ここで、表示画面Im1に表示されるマップM1を表示するためのマップ情報は、都度、マップ生成部216で生成されてもよいし、予め生成されていてもよい。マップ生成部216にて予め生成されたマップ情報は、例えば、データテーブルに含めて、データ格納部22に記憶される。データテーブルは、マップ情報を含むデータが作業毎に格納されたテーブルである。このようなデータテーブルによれば、例えば、作業領域A1が選択され、かつ第1項目(年度又は年)及び第2項目(作業名)が指定されることで、いずれかの作業に関するマップ情報を呼び出すことができる。つまり、例えば、作業領域A1、年度又は年、及び作業名をキーにして、データテーブル上で任意の作業に係るマップ情報を検索することが可能である。
また、図14に示す表示画面Im1では、作業領域A1を複数の区画Kに分割した上で、各区画Kについての作業データを示すマップM1を表示しているが、この例に限らない。すなわち、例えば、使用した作業機械、作業平均速度、作業速度のばらつき、及び作業時間等の情報については、1つの作業領域A1に対して1つの作業データが、表示画面Im1上で表示されてもよい。この場合、例えば、地図画像Im10中の作業領域A1を一様に塗り潰した「ベタ塗」にて、当該作業領域A1についての作業データが表示されてもよい。
[5.3]区画の設定処理
次に、作業領域A1に複数の区画Kを設定するための「区画の設定処理」について説明する。以下に説明するような処理で設定された複数の区画Kを用いて、上述のマップM1が生成される。本実施形態では、区画設定部214のモードとして、作業領域A1に対して複数の区画Kを固定的に設定する第1モードと、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて複数の区画Kを動的に設定する第2モード及び第3モードと、の3つのモードがある。特に、区画設定部214は、第2モードでは、ドロネー図G1を作成することで得られる個々の領域を区画Kに設定し、第3モードでは、ボロノイ図G2を作成することで得られる個々の領域を区画Kに設定する。そして、区画設定部214は、操作受付部23が受け付けるユーザの操作に従って、第1モードと、第2モードと、第3モードと、を切替可能である。つまり、本実施形態では、区画Kの設定に関して、3種類の設定方法がある。そこで、以下では、第1モードと第2モードと第3モードとに分けて、区画設定部214による区画Kの設定処理について説明する。
[5.3.1]第1モード
まず、区画設定部214のモードが第1モードにある場合、つまり作業領域A1内での測位点P1の配置によらずに、作業領域A1に対して複数の区画Kを固定的に設定する場合における、区画Kの設定処理について説明する。
第1モードにおいては、区画設定部214は、図15に示すように、領域設定部213で設定された作業領域A1に対して、例えば正方形状等の予め定められた形状の区画Kを設定する。ここでは一例として、区画設定部214は、「[5.2]マップの生成処理」の欄で例示したように、単純に作業領域A1をメッシュ状に分割することで複数の区画Kを設定する。つまり、区画設定部214は、例えば、作業領域A1全体を均一な複数の区画Kに分割することで、例えば、各区画Kが圃場F1における実寸換算で5m×5mの正方形の領域となるように、予め定められた形状の区画Kを設定する。この場合において、区画設定部214は、作業領域A1内での測位点P1の配置によらずに複数の区画Kを設定するので、作業領域A1内での測位点P1の配置が変わっても、設定される複数の区画Kは変化しない。
また、各区画Kの形状及び大きさ等は特に限定されない。さらに、図15では、作業領域A1の各辺に沿ったX軸及びY軸を規定し、X軸及びY軸に沿って、作業領域A1を複数の区画Kを設定するが、この例に限らない。つまり、区画設定部214は、作業領域A1の向きによらずに、例えば、東西方向に延びる直線をX軸とし、南北方向に延びる直線をY軸とした上で、X軸及びY軸に沿って、作業領域A1を複数の区画Kを設定してもよい。
また、本実施形態において、区画設定部214のモードが第1モードにある場合には、複数の区画Kは、複数の仮区画Bと共通であることが好ましい。すなわち、区画設定部214にて作業領域A1に設定される複数の区画Kは、作業領域A1の設定に際して領域設定部213にて候補領域A10に設定される複数の仮区画B(図7の右端の図面参照)と共通であることが好ましい。より詳細には、ある作業領域A1に設定される複数の区画Kには、当該作業領域A1の基になった候補領域A10に設定された複数の仮区画Bが援用される。候補領域A10に設定される複数の仮区画Bは、当該候補領域A10より生成される作業領域A1の外形を規定するので、複数の区画Kが複数の仮区画Bと共通であることで、作業領域A1の外形に沿った複数の区画Kが設定される。したがって、作業領域A1に複数の区画Kを設定した際に、各区画Kがいびつな形状となりにくく、マップM1が見やすくなる。
ただし、区画設定部214のモードが第1モードにある場合においても、複数の区画Kが複数の仮区画Bと共通であることは、作業管理システム1に必須の構成ではなく、第1モードであっても、複数の区画Kが複数の仮区画Bとは別に設定されてもよい。一例として、区画K及び仮区画Bがいずれも正方形の領域であっても、一辺の長さにおいては、区画Kは仮区画Bに比べて短くてもよいし、反対に、区画Kは仮区画Bに比べて長くてもよい。
ところで、上述のように予め定められた形状の区画Kを設定する手法、つまり作業領域A1内での測位点P1の配置によらずに、作業領域A1に対して複数の区画Kを固定的に設定する手法(以下「第2関連技術」ともいう)では、下記の課題が生じることがある。
複数の区画Kを用いてマップM1を生成するに際しては、上述した通り、区画K毎に、区画K内の複数のサンプリング位置に対応する複数の作業情報D1に基づく作業データが対応付けられる。ここで、図15に示すように、サンプリング位置は作業領域A1に設定した測位点P1に相当するので、マップM1における各区画Kの作業データは、区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に基づいて導出されることになる。ただし、作業領域A1に対して複数の区画Kが固定的に設定される第2関連技術においては、個々の区画Kにおける測位点P1の位置の偏り又は測位点P1の数のばらつきが生じ得る。
すなわち、図15に示すように、区画Kによって、測位点P1が区画Kの中央付近に位置したり、区画Kの外周付近に位置したりと、個々の区画Kにおける測位点P1の位置(サンプリング位置)の偏りが生じ得る。また、図15に示すように、区画Kによって、包含される測位点P1の数が1個であったり、複数(2個以上)であったりと、個々の区画Kに包含される測位点P1の数(サンプリング数)にもばらつきが生じる。そして、このように測位点P1の位置の偏り又は測位点P1の数のばらつきが生じることで、区画K毎に測位点P1に対応する作業情報D1から導出される作業データについては、複数の区画K間での公平性を担保することが困難である。さらに、区画Kによっては、包含される測位点P1の数が0個、つまり測位点P1を包含しない区画Kも存在し得るため、作業データが導出されない区画Kも生じ得る。
さらには、作業データは、各区画Kにおける作業情報の代表値として区画K毎に導出されるため、マップM1上では各区画Kのデータ(値)は1つの作業データにて一意に表される。言い換えれば、個々の区画Kは、当該区画Kに対応付けられた作業データの作業領域A1内での有効範囲を規定している。つまり、例えば、土壌特性(土壌硬度及び硬盤深さを含む)及び耕耘深さのように、あるサンプリング位置でサンプリングされたデータ(作業情報D1)が、その周辺のデータとしても有効である場合において、区画Kは、データの有効範囲を規定することになる。したがって、区画K内での測位点P1の位置の偏りが生じていると、作業データの有効範囲が区画Kによって正確に表現されなくなることもある。
このように、第2関連技術のように区画Kが予め定められている場合、作業領域A1内での測位点P1の配置、並びに区画Kの大きさ及び形状等によっては、生成されるマップM1中のデータの信頼性が低下することがある。本実施形態に係る作業管理システム1は、このような第2関連技術で生じ得る課題については、区画設定部214が第2モード又は第3モードである場合の区画Kの設定処理により、解消を図っている。
[5.3.2]第2モード(ドロネー図)
次に、区画設定部214のモードが第2モードにある場合、つまりドロネー図G1を利用して複数の区画Kを設定する場合における、区画Kの設定処理について説明する。
第2モードにおいては、区画設定部214は、図16に示すように、領域設定部213で設定された作業領域A1に対して、作業領域A1に包含される複数の測位点P1を用いたドロネー図G1を作成することで得られる個々の領域を区画Kとする。図16では、吹出し内に、ドロネー図G1の一部を拡大した図を示す。本開示でいう「ドロネー図」(Delaunay diagram)は、距離空間(作業領域A1)内に離散的に分布した点(測位点P1)の集合に対し得られる、それらをある方法に従って辺で結んだ図形である。具体的には、ドロネー図G1は、作業領域A1に包含される複数の測位点P1を頂点とする三角形を生成して、作業領域A1を複数の三角形の領域に分割する図形である。ドロネー図G1の作成時の条件としては、生成される三角形の3つの角度の最小値が最大になるような分割を行う。ここで、2つの測位点P1間をつなぐ接続線L1は、他の接続線L1と交差せず、かつ生成されるいずれの三角形の外接円も他の点を内包しない性質を持つ。さらに、どの隣接する三角形を統合してもその外周は凸包形状となる。
要するに、第2モードにおいては、区画設定部214は、作業領域A1を、複数の測位点P1のうち隣接する2つの測位点P1間をつなぐ接続線L1にて分割することで、複数の区画Kを設定する。つまり、2つの測位点P1間をつなぐ接続線L1が隣接する2つの区画K間の境界線となる。特に、本実施形態では、区画設定部214は、ドロネー図G1を用いるので、ドロネー図G1のドロネー辺を、隣接する2つの区画K間の境界線たる接続線L1として用いて、複数の区画Kを設定する。このように、第2モードでは、測位点P1を用いてドロネー図G1を作成することで得られる個々の領域を区画Kとすることで、複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kが設定される。
したがって、この場合、区画設定部214は、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて複数の区画Kを設定することになるので、作業領域A1内での測位点P1の配置が変われば、設定される複数の区画Kも変化する。つまり、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて区画Kを変化させるように、作業領域A1に対して複数の区画Kが動的に設定されることになる。
また、区画設定部214が第2モードで複数の区画Kを設定する場合、各区画Kに対応付けられる作業データは、データ算出処理部215にて、各区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に対し演算処理を実行することで算出される。すなわち、各区画Kの作業データは、区画Kに包含される1以上の測位点P1に対応する作業情報D1から、データ算出処理部215での演算処理によって算出される。第2モードでは、ドロネー図G1を作成することで得られる個々の領域(三角形)を区画Kとするので、いずれの区画Kも三角形の頂点となる3つの測位点P1を包含することになる。そのため、ある接続線L1にて分割された2つの区画Kにあっては、いずれも当該接続線L1の両端に位置する2つの測位点P1を包含することになる。よって、1つの測位点P1に対応する作業情報D1は、複数の区画Kの作業データを算出するために用いられることがある。
ここで、各区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に対してデータ算出処理部215が行う演算処理は、例えば、平均化処理である。つまり、データ算出処理部215での演算処理は、複数の作業情報D1についての平均値を算出する平均化処理を含む。本実施形態では、複数の区画Kはいずれも三角形の頂点となる3つの測位点P1を包含するので、各区画Kの作業データは、これら3つの測位点P1に対応する作業情報D1の平均値を算出することで導出される。
また、各区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に対してデータ算出処理部215が行う演算処理は、平均化処理に限らず、例えば、ばらつき算出処理であってもよい。つまり、データ算出処理部215での演算処理は、複数の作業情報D1についてのばらつき度を算出するばらつき算出処理を含む。本実施形態では、複数の区画Kはいずれも三角形の頂点となる3つの測位点P1を包含するので、各区画Kの作業データは、これら3つの測位点P1に対応する作業情報D1のばらつき度を算出することで導出される。ばらつき度は、例えば、標準偏差等で表されてもよい。
また、第2モードでの区画Kの設定は、例えば、作物の収穫量のように、圃場F1の全体での分布を比較的細かく見る必要があるマップM1の生成に用いられることが好ましい。つまり、区画設定部214のモードが第2モードにある場合には、作業情報D1は、複数の位置毎の作物の収穫量情報を含むことが好ましい。これにより、作業領域A1内に多数の測位点P1が存在するような作業情報D1からマップM1を生成する場合でも、測位点P1に基づいて複数の区画Kが自動的に設定され、比較的容易にマップM1を得ることができる。
さらに、第2モードで区画Kの設定が行われた場合でも、最終的には、マップM1が生成され、表示処理部217は、マップM1を表示画面Im1に表示させる。図17は、第2モードで設定された複数の区画Kを用いたマップM1の一例を表している。この場合でも、表示処理部217は、図17に示すように、マップM1における複数の区画Kの各々を、作業データに応じた態様(例えば階調)で表示させる。このようなマップM1は、解説情報C4と共に表示画面Im1に表示されることが好ましい。
図18は、第2モードでの区画Kの設定処理に係る情報処理部21の動作の一例を示すフローチャートである。
すなわち、情報処理部21は、まず、ステップS21において、ユーザからマップM1の表示指示を取得したか否かを判定する。情報処理部21がユーザからマップM1の表示指示を取得した場合(S21:Yes)、処理はステップS22に移行する。情報処理部21は、ユーザからマップM1の表示指示を取得するまで待機する(S21:No)。
ステップS22では、情報処理部21は、作業情報D1から位置情報D2を抽出する。これにより、情報処理部21(位置取得部211)は、位置情報D2を取得する。
次にステップS23において、情報処理部21は、取得した位置情報D2を用いて、作業領域A1内に複数の測位点P1を設定する。次にステップS24において、情報処理部21は、稼働情報中の車速情報及びクラッチ情報等を参照し、又はK近傍若しくは点密度等の仮想空間上での測位点P1の密度を指標として、作業に関連しない測位点P1を不要点として除外する。
次にステップS25において、情報処理部21は、区画設定部214にて、作業領域A1内に包含される複数の測位点P1のうち不要点を除いた測位点P1に基づいて、作業領域A1に複数の区画Kを設定する。このとき、区画設定部214は、ドロネー図G1を作成することで得られる個々の領域を区画Kに設定することで、複数の区画Kを設定する。
次にステップS26において、情報処理部21は、データ算出処理部215にて、作業情報D1に基づいて、区画K毎に、作業データを算出する。このとき、データ算出処理部215は、例えば、各区画Kの頂点となる3つの測位点P1に対応する作業情報D1の平均値を算出することで、作業データを算出する。情報処理部21は、算出した作業データをマップ情報として登録する。
次にステップS27において、情報処理部21(マップ生成部216)は、算出した作業データに基づいて圃場F1内の複数の区画Kに応じたマップM1を作成する。具体的には、情報処理部21は、マップ情報に登録された各区画Kの作業データに基づいて作業領域A1のマップM1を生成する。これにより、圃場F1全体の作業データを示すマップM1を作成することができる。次にステップS28において、情報処理部21は、表示処理部217にて、マップM1を含む表示画面Im1を、ユーザ端末3の表示部(操作表示部33)に表示させる。
次にステップS29において、情報処理部21は、ユーザから終了指示を受け付けたか否かを判定する。ユーザがユーザ端末3において作業支援サイトの利用を終了する操作を行うと、情報処理部21は終了指示を受け付けて(S29:Yes)、第2モードでの区画Kの設定処理に係る一連の処理を終了する。情報処理部21が終了指示を受け付けない場合(S29:No)、処理はステップS21に移行して上述の処理を繰り返す。
以上のようにして、情報処理部21は、複数の区画Kの設定に係る一連の処理を実行する。ただし、図18に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
上述したように、本実施形態では、区画設定部214は、第2モードにおいて、圃場F1に対応する作業領域A1に、複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kを設定する機能を持つ。そのため、本実施形態に係る作業管理システム1では、第2モードにおいて、上述の第2関連技術で生じ得る課題の解消を図ることができる。すなわち、複数の区画Kは、複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて動的に設定されるので、第2関連技術のように区画Kが予め定められている場合に比べて、個々の区画Kにおけるサンプリング位置の偏り及びサンプリング数のばらつきを抑えやすい。
特に、区画設定部214は、作業領域A1を、複数の測位点P1のうち隣接する2つの測位点P1間をつなぐ接続線L1にて分割することで、複数の区画Kを設定するので、個々の区画Kにおける測位点P1の位置の偏りは生じにくい。また、区画設定部214は、ドロネー図G1を用いて複数の区画Kを設定するので、個々の区画Kにおける測位点P1の数のばらつきも生じにくい。さらに、作業データの有効範囲を決める各区画Kが、複数の測位点P1を基準にして設定されることで、作業データの有効範囲も正確になる。このように、本実施形態に係る作業管理システム1によれば、個々の区画Kにおけるサンプリング位置の偏り及びサンプリング数のばらつきが生じにくく、作業データについて、複数の区画K間での公平性を担保しやすくなる。結果的に、信頼性の高いマップM1を実現できる。
また、第2モードでの区画Kの設定手法によれば、複数の区画Kはいずれも三角形の頂点が3つの測位点P1により規定されるので、これら3つの測位点P1の位置からは、各区画Kの面積を求めることが可能である。つまり、区画Kの面積は、当該区画Kの頂点となる3つの測位点P1の位置から導出可能である。そのため、例えば、単位面積当たりの収穫量については、データ算出処理部215は、3つの測位点P1に対応する作業情報D1(収穫量)の合計値又は平均値を、3つの測位点P1の位置から算出される区画Kの面積で除することにより求められる。
[5.3.3]第3モード(ボロノイ図)
次に、区画設定部214のモードが第3モードにある場合、つまりボロノイ図G2を利用して複数の区画Kを設定する場合における、区画Kの設定処理について説明する。ここで、第3モードは、土壌特性(土壌硬度及び硬盤深さを含む)の診断のように作業データの有効範囲が比較的広い、言い換えれば測位点P1の数が比較的少ない場合に、特に適した区画Kの設定手法である。そのため、以下では人が手作業で行った土壌の採取を作業の例として、図19に示すように、1つの作業領域A1に数個(ここでは5個)の測位点P1が設定される場合を前提に説明する。
第3モードにおいては、区画設定部214は、図19に示すように、領域設定部213で設定された作業領域A1に対して、作業領域A1に包含される複数の測位点P1を用いたボロノイ図G2を作成することで得られる個々の領域を区画Kとする。図19では、吹出し内に、ボロノイ図G2の一部を拡大した図を示す。本開示でいう「ボロノイ図」(Voronoi diagram)は、距離空間(作業領域A1)上の任意の位置に配置された複数個の母点(測位点P1)に対して、同一距離空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けされた図のことである。特に、二次元ユークリッド平面の場合、領域の境界線(区分線L2)は、各々の母点の二等分線の一部になる。具体的には、ボロノイ図G2は、作業領域A1に包含される複数の測位点P1を母点として作成され、隣接する2つの測位点P1間を結ぶ線分L3の垂直二等分線をボロノイ境界(区分線L2)とする。このような垂直二等分線をつなぎ合わせることで、凸包形状のボロノイ領域が作成される。
要するに、第3モードにおいては、区画設定部214は、作業領域A1を、複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1のうちのいずれか2つの測位点P1間を隔てる区分線L2にて分割することで、作業領域A1に複数の区画Kを設定する。つまり、隣接する2つの区画K間の境界線が区分線L2となる。特に、本実施形態では、区画設定部214は、ボロノイ図G2を用いるので、2つの測位点P1間をつなぐ線分L3の垂直二等分線を、隣接する2つの区画K間の境界線たる区分線L2として用いて、複数の区画Kを設定する。このように、第3モードでは、測位点P1を用いてボロノイ図G2を作成することで得られる個々の領域を区画Kとすることで、複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kが設定される。
したがって、この場合、区画設定部214は、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて複数の区画Kを設定することになるので、作業領域A1内での測位点P1の配置が変われば、設定される複数の区画Kも変化する。つまり、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて区画Kを変化させるように、作業領域A1に対して複数の区画Kが動的に設定されることになる。
ただし、厳密にボロノイ図G2であることは必須ではなく、例えば、2つの測位点P1間をつなぐ線分L3と区分線L2との間の角度は、厳密に90度でなくてもよい。一例として、線分L3と区分線L2との間の角度は、80度以上100度以下の範囲で適宜変更されてもよい。
また、図19の例では、母点数(測位点P1の数)は「5」であり、作業領域A1は5つの領域に分割されて、これら5つの領域がそれぞれ区画Kとなる。つまり、図19の例では、5つの測位点P1に対して5つの区画Kが設定される。このように、ボロノイ図G2においては母点数とボロノイ領域数とは一致するので、区画設定部214は、複数の測位点P1が複数の区画Kに一対一で割り当てられるように複数の区画Kを設定することになる。要するに、第3モードで設定される区画Kは、いずれも測位点P1を1つのみ包含する。
また、区画設定部214が第3モードで複数の区画Kを設定する場合、各区画Kに対応付けられる作業データは、区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報から導出される。つまり、複数の区画Kのうちの1つの区画Kに対応付けられる作業データは、当該1つの区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に基づいて決まる。特に本実施形態では、1つの区画Kに対して1つの測位点P1が包含されるので、作業データは、作業情報D1に対して平均化処理等の演算処理を施すことなく導出される。そのため、作業データは、データ算出処理部215を用いることなく、作業情報D1から直接的に抽出されてもよい。ただし、データ算出処理部215は、例えば、各区画Kに包含される測位点P1に対応する作業情報D1に対して係数を掛ける等の演算処理を行って作業データを算出してもよい。
また、第3モードでの区画Kの設定は、例えば、土壌特性(土壌硬度及び硬盤深さを含む)のように、作業データの有効範囲が比較的広いマップM1の生成に用いられることが好ましい。つまり、区画設定部214のモードが第3モードにある場合には、作業情報D1は、複数の位置毎の土壌特性を含むことが好ましい。これにより、限られた数のサンプリングデータ(作業情報D1)からマップM1を生成する場合でも、測位点P1に基づいて複数の区画Kが自動的に設定され、比較的容易にマップM1を得ることができる。より詳細には、土壌の質については、圃場F1を細かく区分したピンポイント毎に変化するような局所的な変化は生じにくく、あるサンプリング位置での土壌の質と、当該サンプリング位置の周辺での土壌の質とは同質になる傾向が強い。そのため、土壌特性であれば、圃場F1全体でのサンプリング位置の数が少なくても、あるサンプリング位置(測位点P1)でサンプリングされたデータ(作業情報D1)が、その周辺のデータとしても有効であることが期待できる。よって、第3モードのように個々の区画Kが測位点P1を(1つのみ)包含することとなる区画Kの設定手法は、土壌特性のマップ化に特に好適である。
さらに、第3モードで区画Kの設定が行われた場合でも、最終的には、マップM1が生成され、表示処理部217は、マップM1を表示画面Im1に表示させる。図20は、第3モードで設定された複数の区画Kを用いたマップM1の一例を表している。この場合でも、表示処理部217は、図20に示すように、マップM1における複数の区画Kの各々を、作業データに応じた態様(例えば階調)で表示させる。このようなマップM1は、解説情報C4と共に表示画面Im1に表示されることが好ましい。
図21は、第3モードでの区画Kの設定処理に係る情報処理部21の動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、基本的には、第2モードでの区画Kの設定処理に係るフローチャート(図18参照)と共通であって、ステップS31~S34,S37~S39が、それぞれ図18のステップS21~S24,S27~S29に相当する。つまり、第3モードでは、ステップS35及びステップS36に係る情報処理部21の動作が第2モードの場合と相違する。
ステップS35において、情報処理部21は、区画設定部214にて、作業領域A1内に包含される複数の測位点P1のうち不要点を除いた測位点P1に基づいて、作業領域A1に複数の区画Kを設定する。このとき、区画設定部214は、ボロノイ図G2を作成することで得られる個々の領域を区画Kに設定することで、複数の区画Kを設定する。
次にステップS36において、情報処理部21は、作業情報D1に基づいて、区画K毎に、作業データを算出する。このとき、情報処理部21は、例えば、各区画Kの母点となる1つの測位点P1に対応する作業情報D1を読み出すことで、作業データを導出する。情報処理部21は、導出した作業データをマップ情報として登録する。
以上のようにして、情報処理部21は、複数の区画Kの設定に係る一連の処理を実行する。ただし、図21に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
上述したように、本実施形態では、区画設定部214は、第3モードにおいて、圃場F1に対応する作業領域A1に、複数の位置情報D2に対応する複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて変化する複数の区画Kを設定する機能を持つ。そのため、本実施形態に係る作業管理システム1では、第3モードであっても、上述の第2関連技術で生じ得る課題の解消を図ることができる。すなわち、複数の区画Kは、複数の測位点P1の作業領域A1内での配置に応じて動的に設定されるので、第2関連技術のように区画Kが予め定められている場合に比べて、個々の区画Kにおけるサンプリング位置の偏り及びサンプリング数のばらつきを抑えやすい。
特に、区画設定部214は、作業領域A1を、複数の測位点P1のうちのいずれか2つの測位点P1間を隔てる区分線L2にて分割することで、作業領域A1に複数の区画Kを設定するので、個々の区画Kにおける測位点P1の位置の偏りは生じにくい。また、区画設定部214は、ボロノイ図G2を用いて複数の区画Kを設定するので、個々の区画Kにおける測位点P1の数のばらつきも生じにくい。さらに、作業データの有効範囲を決める各区画Kが、複数の測位点P1を基準(母点)にして設定されることで、作業データの有効範囲も正確になる。このように、本実施形態に係る作業管理システム1によれば、個々の区画Kにおけるサンプリング位置の偏り及びサンプリング数のばらつきが生じにくく、作業データについて、複数の区画K間での公平性を担保しやすくなる。結果的に、信頼性の高いマップM1を実現できる。
また、本実施形態では、上述したように第2モード及び第3モードにおいて、作業領域A1内の複数の測位点P1に基づいて区画Kを設定するに際して、不要点を除外後の測位点P1を用いたが、この構成は必須ではない。すなわち、第2モードではステップS24(図18参照)、第3モードではステップS34(図21参照)にて、不要点を除外する処理を行っているが、この処理は適宜省略可能である。
[6]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本開示における作業管理システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における作業管理システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
また、管理サーバ2、ユーザ端末3又は搭載端末49に含まれる一部又は全部の機能部は電子回路で構成されていてもよい。
また、作業管理システム1の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは作業管理システム1に必須の構成ではなく、作業管理システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、情報処理部21のうちの一部の機能が、管理サーバ2とは別の筐体に設けられていてもよい。さらに、作業管理システム1の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている作業管理システム1の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、管理サーバ2とコンバイン4(搭載端末49)とに分散して設けられている機能の少なくとも一部が、管理サーバ2に集約されていてもよいし、作業機械(コンバイン4)に集約されていてもよい。
また、実施形態1では、作業管理システム1の主たる管理対象として、作業機械を用いた作業を例示しているが、これに限らず、人が手作業で行う作業を作業管理システム1の主たる管理対象としてもよい。
また、仮区画Bについて除外区画Beか否かを判断するために用いられる所定条件は、仮区画Bに包含される測位点P1の数について定められていればよく、実施形態1のように、包含する測位点P1の数が「0」であることには限らない。所定条件の他の例として、包含する測位点P1の数が「α」以下(αは1以上の整数)であること、包含する測位点P1の数が仮区画Bの面積の「β」分の1以下(βは正の数)であること等がある。
また、領域設定部213が、第1動作モード及び第2動作モードを含む複数の動作モードを有することは作業管理システム1に必須の構成ではない。例えば、領域設定部213は、自動で作業領域A1を設定する第1動作モードと、手動で作業領域A1を設定する第2動作モードとのうちの一方のみを有していてもよい。さらに、領域設定部213は、自動で作業領域A1を設定する場合でも、上記第1関連技術として説明したように、候補領域A10及び仮区画Bを利用せずに作業領域A1を自動設定してもよい。
また、区画設定部214が、第1モード、第2モード及び第3モードを含む複数のモードを有することは作業管理システム1に必須の構成ではない。例えば、区画設定部214は、作業領域A1に対して複数の区画Kを固定的に設定する第1モードと、作業領域A1内での測位点P1の配置に応じて複数の区画Kを動的に設定するモード(第2モード及び第3モード)とのうちの一方のみを有していてもよい。さらに、区画設定部214は、測位点P1の配置に応じて複数の区画Kを動的に設定する場合でも、例えば、ドロネー図G1を用いて区画Kに設定する第2モードと、ボロノイ図G2を用いて区画Kに設定する第3モードとのうちの一方のみを有していてもよい。
また、位置検出部494は、GNSS等の衛星測位システムに限らず、衛星測位システムと共に、又は代えて、例えば、複数の発信器から電波で送信されるビーコン信号を受信する受信機を用いてもよい。この場合、複数の発信器は、作業機械が移動する圃場F1周辺の複数箇所に配置され、位置検出部494は、複数の発信器の位置と、受信機でのビーコン信号の受信電波強度とに基づいて、作業機械の位置情報を検出する。
また、位置検出部494は、例えば、速度センサー、加速度センサー又はジャイロセンサー等のセンサーを含み、これらのセンサーにて作業機械の挙動を検知してもよい。さらに、位置検出部494は、例えば、イメージセンサー(カメラ)、ソナーセンサー、レーダ、及びLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサーを含み、これらのセンサーにて作業機械の周辺状況を検知してもよい。そして、位置検出部494は、作業機械の挙動及び/又は周辺状況を用いて、作業機械の位置情報を検出してもよい。
また、ユーザ端末3の操作表示部33は、ユーザインターフェースとしての機能を有していればよく、情報の出力の態様及び情報の入力(操作)の態様は、上述した態様に限らない。一例として、操作表示部33は、情報の出力の態様として、プロジェクタによる投影、音声出力又は印刷等の態様を採用してもよい。この場合、表示画面Im1は、例えば、プロジェクタによる投影されてもよいし、印刷によってシートに表示されてもよい。また、操作表示部33は、情報の入力の態様として、音声入力、ジェスチャ入力又は他の端末からの操作信号の入力等の態様を採用してもよい。さらに、ユーザ端末3以外の操作部に関しても、音声入力、ジェスチャ入力又は他の端末からの操作信号の入力等の態様を採用してもよい。つまり、操作受付部23は、タッチパネル等の操作に限らず、例えば、音声入力による操作(音声操作)等であっても、ユーザの操作を受け付けることができる。
また、作業領域A1は、経緯度座標系(地理座標系)に限らず、例えば、仮想空間中の基準点(原点)を基準として、基準点に対する相対的な座標系で表されてもよい。すなわち、例えば、作業機械(コンバイン4)の作業開始位置又はエンジン始動位置等の特定の位置を基準点として、基準点に対する相対的な位置により作業領域A1が規定されてもよい。この場合、作業領域A1に設定される複数の区画Kについても同様に、基準点に対する相対的な座標系で表されることになる。
また、作業領域A1の自動設定に際して、領域設定部213は、凸包処理以外の処理にて作業領域A1(候補領域A10)を設定してもよい。
また、領域設定部213が、候補領域A10及び仮区画Bを利用して、作業領域A1を設定する機能は、作業管理システム1に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。さらに、作業領域A1を自動設定する機能自体も、作業管理システム1に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
(実施形態2)
本実施形態に係る作業管理システム1Aは、図22に示すように、管理サーバ2に加えて、管理サーバ2と連携する別サーバ5を備える点で、実施形態1に係る作業管理システム1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本開示でいう「別サーバ」は、管理サーバ2とは別のサーバであって、例えば、別サーバ5の運用主体(管理主体)が管理サーバ2とは別である。別サーバ5は、通信網N1に接続され、管理サーバ2とは通信網N1を介して通信可能である。本実施形態では、領域設定部213のうち、作業領域A1を自動設定する機能が、管理サーバ2に代えて別サーバ5に実装されている。
本実施形態では一例として、別サーバ5は、API(Application Programming Interface)を有している。別サーバ5は、管理サーバ2から通信網N1を介してAPIが呼び出されることにより、作業領域A1の自動設定の機能を、管理サーバ2に提供する。このように、管理サーバ2は、別サーバ5と連携して、作業管理システム1Aとしての機能を具現化する。
すなわち、本実施形態に係る別サーバ5は、作業機械(コンバイン4)の位置情報D2を取得する位置取得部51と、作業領域A1を自動設定する領域設定部52と、管理サーバ2からの情報の入力を受け付けるインターフェース部53と、を備えている。別サーバ5は、インターフェース部53に対して特定の情報が入力されると、位置取得部51で取得した位置情報D2に基づいて、領域設定部52にて作業領域A1を自動的に設定する。領域設定部52は、実施形態1で説明した領域設定部213と同様に、第1処理部501と、第2処理部502と、第3処理部503と、を有している。そのため、領域設定部52は、候補領域A10及び仮区画Bを利用して、作業領域A1を設定することができる。
別サーバ5は、設定した作業領域A1をインターフェース部53から管理サーバ2に出力する。ここで、インターフェース部53は、特定の入力情報を受けると、作業領域A1を自動的に設定してインターフェース部53から出力するように、予め定義されている。インターフェース部53は、例えば、APIにて実現される。
実施形態2の変形例として、別サーバ5における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは必須の構成ではなく、別サーバ5の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、別サーバ5の少なくとも一部の機能は、クラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。