JP7475740B1 - 部分放電検出システム - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1は、電力ケーブルの部分放電を検出するためのセンサとして、電力ケーブルの遮蔽導体の外側に高誘電体層を介して電極を取り付ける技術を開示している。かかる方法で検出された信号は、無線通信でサーバ等に通信する手段がとられることが多い。この場合の通信量を抑制するための技術として、特許文献2は、センサで検出したデータを、複数の帯域に分解し、それぞれをダウンサンプリングする技術を開示している。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされてものであり、部分放電の検出結果を無線通信する部分放電検出システムにおいて、無線通信のトラフィックおよび電力消費を抑制することを目的とする。
交流用の電気設備の絶縁部分に生じる部分放電を検出する部分放電検出センサであって、
前記部分放電を検出する電極と、
前記電極の検出信号を、前記電気設備の電源電圧の周期に応じて定められた所定長さの所定数の検出区間に分割し、各検出区間の開始時刻を基準として時間軸を合わせて、重畳または加算する検出信号処理部と、
該処理された結果を無線で送信する無線通信回路とを備える部分放電検出センサと構成することができる。
本発明において、検出区間の長さは、任意に設定可能である。部分放電は、電源電圧の周期に同期して発生することが多いから、検出区間の長さは、電源電圧に同期して設定することが好ましい。
重畳または加算する検出区間の数も任意に設定可能である。この数を多くすれば、トラフィックおよび消費電力の抑制に寄与する一方、送信の間隔が開くことになる。かかる影響を考えて、検出区間の数は設定すればよい。
検出信号の処理は、重畳または加算のいずれを採用してもよい。検出信号を重畳すれば、部分放電を示すパルスの密度が高くなる。また、検出信号を加算すれば、部分放電を示すパルスの検出値が大きくなる。いずれによっても、部分放電を精度良く検出することが可能となる。
前記電極で検出される検出信号の周波数を、5~35MHzに同調する変換回路を備えてもよい。
こうすることで、周波数を低くすることができる。また、上述のAM変調回路であれば、一つのICチップも存在しており、比較的安価に入手することができる利点がある。
前記電極で検出される検出信号の周波数を、50または60Hzに同調することで前記検出区間を規定する同期信号を生成する同期回路を備え、
前記検出信号処理部は、前記同期信号に基づいて前記検出区間を設定するものとしてもよい。
前記検出信号処理部は、前記検出区間をさらに所定数の小区間に分割し、前記検出信号に基づいて前記小区間ごとの検出値を求め、前記各検出区間の該検出値を加算するものとしてもよい。
上記態様において、小区間の幅は任意に設定可能である。小区間は、必ずしも均一の時間幅にする必要はなく、短いもの、長いものが混在してもよい。ただし、いずれの検出区間に対しても同様に設定された小区間を用いる必要がある。
前記電気設備は、導体を絶縁性の外装で被覆した電力ケーブルであり、
前記電極は、前記外装の外側に貼付する導電体で形成された箔であるものとしてもよい。
従来技術として、電力ケーブルの部分放電を検出する目的で、電力ケーブルの遮蔽導体の外側に高誘電体層を介して電極を取り付ける方法も提案されている。この方法では、遮蔽導体に電極を取り付けるものであるから、遮蔽導体と絶縁した状態を形成する必要があり、高誘電体層を介在させる必要が生じるのである。これに対し、本発明では、遮蔽導体ではなく、電力ケーブルの最外装に電極を取り付けるため、高誘電体層を介在させる必要がない点で、簡易な構造とすることが可能となる。
また、電極も、上述した箔に限られるものではなく、例えば、TEVセンサとしてもよい。TEVセンサとして構成する場合には、導電性の薄板と、それに貼付した誘電体を備えるものとしてもよい。
交流用の電気設備の絶縁部分に生じる部分放電を検出する部分放電検出システムであって、
前記電気設備に取り付けられた複数の部分放電検出センサと、
前記電気設備における部分放電の発生を管理する解析装置と、
複数の前記部分放電検出センサからの無線通信を、前記解析装置に中継する中継器とを備え、
複数の前記部分放電検出センサから前記中継器への無線通信のタイミングが、少なくとも一部はずらして設定されている部分放電検出システムとしてもよい。
部分放電検出センサは、先に説明した種々の態様を適用することができる。
図1は、部分放電検出システムの構成を示す説明図である。電力ケーブル10は、高電圧の電力を流すためのケーブルである。電力ケーブル10は、図示する通り、電力を流すための導体11、その周囲を覆う架橋ポリエチレンなどで構成された絶縁体12、さらにその周囲を覆う銅などで構成された遮蔽導体13、そして最も外側を覆うビニルその他の樹脂で構成された外装14を有している。
電力ケーブル10の外側には、部分放電を検出するための検出センサ100[1]~100[3]が取り付けられている。検出センサ100の数は任意であるが、部分放電を効果的に検出するためには、100~150m程度の間隔で設置することが好ましい。
検出センサ100と中継器20との通信は、任意のタイミングで行うことができる。本実施例では、通信トラフィックが集中することを避けるため、それぞれの検出センサ100[1]~100[3]が異なるタイミングで通信を行うように設定した。
図示する各機能について説明する。
送受信部201は、検出センサ100等とネットワークNEを介して信号を送受信する機能を奏する。
放電検出部202は、検出センサ100で検出した信号に基づき、部分放電に該当するか否かを解析する。
アラート部203は、部分放電が検出され、配電盤に異常があると判断されるときに、アラートを出力する。アラートは、例えば、所定の通知先にメールを送信する方法など種々の方法で出力することができる。
検出ログ記憶部205は、検出センサ100の過去の検出結果を記憶する。過去の検出結果を記憶しておくことにより、例えば、部分放電がどの程度の頻度で発生しているかを確認でき、電力ケーブル10の異常の有無を解析したり予測することが可能となる。
図2(a)には表側の斜視図を示し、図2(b)には裏側の斜視図を示した。検出センサ100は、樹脂などの基材101の表側に通信回路110を取付け、裏側に電極102を取り付けた構成となっている。検出センサ100は、裏面の電極102が、電力ケーブルの外装14に接触するように取り付けられる。
部分放電が生じると、導体11に高周波のパルス状の電圧変化が生じるから、コンデンサC1、C2にそれぞれ電位の変化が生じることになる。従って、電極102に生じた電位の変化を検出すれば、部分放電の発生の有無を検出することが可能となる。
部分放電の検出感度を向上させるためには、回路全体が部分放電に対して共振しやすくなっていることが好ましい。図2(c)に示した回路のうち、コンデンサC1の静電容量およびインピーダンスZは既知であり、コンデンサC2の静電容量は電極102のサイズに応じて定まる。部分放電は、後述する通り、5~35MHzの高周波となることが知られているから、回路全体がこれに共振するようコンデンサC2の静電容量を求めればよい。一例として、50~100pF程度とすることができる。こうしてコンデンサC2の静電容量が求まると、それを実現するように電極の縦(電力ケーブルの周方向)の寸法LC、横(電力ケーブルの長手方向)の寸法LLを定めればよい。こうすることで、部分放電の検出感度を向上させることができる。もっとも、電極102のサイズは、かかる方法に限らず、任意に設定可能である。
図3(a)は、沿面放電における周波数成分を示している。50MHz以上の範囲の他、5~15MHzの範囲にピークが表れていることが分かる。
図3(b)は、ボイド放電における周波数成分を示している。50MHz以上の範囲の他、20~35MHzの範囲にピークが表れていることが分かる。
図3(c)は、コロナ放電における周波数成分を示している。50MHz以上の範囲の他、20~35MHzの範囲にピークが表れていることが分かる。
これらの結果より、部分放電は、50MHz以上の範囲の他、5~35MHzで生じることが分かる。従って、5~35MHzの周波数を検出するための回路を設ければ、部分放電を検出することが可能となる。なお、沿面放電を検出するために5~15MHzの周波数を検出してもよい。また、ボイド放電またはコロナ放電を検出するために20~35MHzの周波数を検出してもよい。
変換回路111、112は、高周波の入力を低い周波数に変換するための回路である。実施例では、5~35MHzに同調する高周波用の変換回路111と、50または60Hzに同調する同期信号用の変換回路112とを備えている。
変換回路111は、同調回路111a、高周波増幅回路111b、検波回路111c、低周波増幅回路111dを備えている。同調回路111aは、Q値を大きくすることで、幅広い周波数に同調させることができ、実施例では、部分放電のパルスの周波数である5~35MHzに同調するよう回路を設計してある。本実施例では、変換回路111として図示した回路を構成するAM変調のICチップを利用するものとした。こうすることで、変換回路111を安価かつ簡易に構成することができる。なお、変換回路111は、かかる構成に限らず、高周波の入力を低い周波数に変換する種々の構成を適用することができる。
無線通信回路116は、同期加算回路114で処理されたディジタル信号を無線で中継器20に送信する。
そこで、本実施例では、検出信号を電源電圧に同期した検出区間T1~T6に分割する。図中では、電源電圧の1サイクル分を1つの検出区間に設定しているが、数サイクル分を1つの検出区間としても差し支えない。また、検出区間T1~T6としたのは、図示の都合によるものであって、検出区間を6区間に限定する趣旨ではない。
検出区間を設定すると、部分放電による検出信号も、検出区間ごとに分割する。
同様に、処理(3)は、検出区間T1~T3を重畳した状態を表し、処理(4)は検出区間T1~T4を重畳した状態を表し、処理(5)は検出区間T1~T5を重畳した状態を表し、処理(6)は検出区間T1~T6を重畳した状態を表している。
このように検出区間の検出信号を重畳することにより、部分放電によるパルスの密度が高くなり、部分放電が生じていることを容易に判断可能となる。また、かかる処理を施さない場合には、解析装置200に対して、検出区間T1~T6の検出信号を順次送信する必要が生じるのに対して、重畳処理を施した後は、処理(6)に示した1つの検出区間分の信号を送信すれば足りることになる。従って、通信量を抑制することができ、また通信に要する消費電力も抑制することが可能となる。
そして、各小区間ごとに検出信号の強さを検出値として設定する。図の例では、処理(1)において、検出区間T1の検出値を求めている。1番目、2番目の小区間はパルスが検出されていないから検出値は0となる。3番目の小区間にはパルスが検出されているから検出値はパルスの強さに応じた値aとなる。こうして1~8番目の小区間には、図示する通り検出値が設定される。
同様にして、処理(2)~処理(6)では、検出区間T2~T6に対して検出値を設定することができる。
こうして検出値が設定されると、最後に、検出区間T1~T6の検出値を加算する。図の最下部に示した通り、2番目の小区間についてはd+e+h、3番目の小区間についてはa+g、6番目の小区間についてはb+c+f、その他の小区間については0というように加算結果が求まる。上述の処理によれば、部分放電が生じているとき、小区間の加算結果がそれに応じて大きな値となるため、部分放電の発生を容易に判断することが可能となる。
処理を開始すると、解析装置200は、検出信号を受信し(ステップS10)、放電か否かを判定する(ステップS11)。放電の判定方法を図中に示した。図示するように、一例として、検出信号の強さが所定の閾値を超えるときに部分放電であると判定することができる。
重畳処理が施されている場合には、部分放電と考えられる閾値を超える検出信号の密度が所定以上存在する場合に、部分放電が発生していると判断してもよい。
また、加算処理が施されている場合には、閾値を大きい値に設定してもよい。こうすれば、ノイズが生じた程度では加算値が閾値を超えることはないから、部分放電の発生を誤検出するおそれを抑制できる。一方、部分放電が発生した場合には、パルスが複数回加算され、加算結果がこの閾値を超えることになるため、その発生を検出できる。
部分放電の判定は、上述した方法に限らず、その他種々の方法をとることができる。
部分放電が検出されたときは(ステップS12)、解析装置200は、過去の検出ログを読み込み(ステップS13)、アラートの要否判定に基づきアラートを出力する(ステップS14)。アラートの要否は、例えば、過去の部分放電の検出回数、検出頻度などに基づいて判定することができる。アラートの出力は、例えば、予め決められた通知先にメールを送信する方法などによって行うことができる。ステップS13の処理は省略しても差し支えない。
実施例では、電力ケーブルに適用する例を示した。本発明は、かかる場合に限らず、配電盤その他種々の電力設備に適用可能である。また、部分放電検出センサとしては、実施例で示した導体の箔を用いたセンサだけでなく、TEVセンサ、高周波CTセンサなど種々のセンサに適用可能である。
11 導体
12 絶縁体
13 遮蔽導体
14 外装
20 中継器
100 検出センサ
101 基材
102 電極
110 通信回路
111、112 変換回路
111a、112a 同調回路
111b、112b 高周波増幅回路
111c、112c 検波回路
111d、112d 低周波増幅回路
114 同期加算回路
116 無線通信回路
200 解析装置
201 送受信部
202 放電検出部
203 アラート部
204 センサデータベース
205 検出ログ記憶部
Claims (6)
- 交流用の電気設備の絶縁部分に生じる部分放電を検出する部分放電検出センサであって、
前記部分放電を検出する電極と、
前記電極の検出信号を、前記電気設備の電源電圧の周期に応じて定められた所定長さの所定数の検出区間に分割し、各検出区間の開始時刻を基準として時間軸を合わせて、重畳または加算する検出信号処理部と、
該処理された結果を無線で送信する無線通信回路とを備える部分放電検出センサ。 - 請求項1記載の部分放電検出センサであって、
前記電極で検出される検出信号の周波数を、5~35MHzに同調する変換回路を備える部分放電検出センサ。 - 請求項1記載の部分放電検出センサであって、
前記電極で検出される検出信号の周波数を、50または60Hzに同調することで前記検出区間を規定する同期信号を生成する同期回路を備え、
前記検出信号処理部は、前記同期信号に基づいて前記検出区間を設定する部分放電検出センサ。 - 請求項1記載の部分放電検出センサであって、
前記検出信号処理部は、前記検出区間をさらに所定数の小区間に分割し、前記検出信号に基づいて前記小区間ごとの検出値を求め、前記各検出区間の該検出値を加算する部分放電検出センサ。 - 請求項1記載の部分放電検出センサであって、
前記電気設備は、導体を絶縁性の外装で被覆した電力ケーブルであり、
前記電極は、前記外装の外側に貼付する導電体で形成された箔である部分放電検出センサ。 - 交流用の電気設備の絶縁部分に生じる部分放電を検出する部分放電検出システムであって、
前記電気設備に取り付けられた複数の請求項1~5いずれか記載の部分放電検出センサと、
前記電気設備における部分放電の発生を管理する解析装置と、
複数の前記部分放電検出センサからの無線通信を、前記解析装置に中継する中継器とを備え、
複数の前記部分放電検出センサから前記中継器への無線通信のタイミングが、少なくとも一部はずらして設定されている部分放電検出システム。
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