以下、本発明の実施形態について、図面を参照して例示説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車輪1の外観斜視図である。車輪1は、骨格部2と、トレッド部3とにより構成されている。具体的には、車輪1は、図1に示されているように、骨格部2が、骨格部2の径方向外側にトレッド部3が装着されていることにより、その車輪1の径方向外側をトレッド部3により覆われるように構成されている。なお、車輪1の径方向は、車輪1の回転軸と直交する方向をいう。
本実施形態に係る車輪1は、2つのタイヤ部4a及び4bを備えている。本実施形態において、タイヤ部4a及び4bは、骨格部2を車輪1の幅方向において2等分した骨格部2の一部分と、当該一部分に装着されたトレッド部材3とにより、それぞれ構成されている。タイヤ部4a及び4bは、車輪1の幅方向断面視において、外形が車輪1の径方向外側に向かって凸形状となっている部分である。なお、車輪1の幅方向とは、車輪1の回転軸と平行な方向をいう。
骨格部2は、ホイール部と、接地変形可能な接地変形部と、により構成されている。図2は、図1の車輪1の骨格部2のホイール部10の外観斜視図である。ホイール部10を構成する部材は、金属製又は樹脂製である。図2に示されているように、本実施形態では、ホイール部10は、2つのリム部材11a及び11bと、1つのフランジ部材12とを備えている。リム部材11a及び11bと、フランジ部材12とは、全て外径が同径の環状に形成されている。リム部材11a及び11bと、フランジ部材12とは、全て、回転軸が同一軸上となるように配置されている。具体的には、リム部材11a及び11bと、フランジ部材12との回転軸は、車輪1の回転軸と一致している。フランジ部材12は、2つのリム部材11a及び11bの間に配置されている。リム部材11a及び11bと、フランジ部材12との外径は、必要とされる車輪1のサイズに応じて適宜決定される。
リム部材11aとフランジ部材12とは、複数の固定部材13により固定されている。また、リム部材11bとフランジ部材12とは、複数の固定部材13により固定されている。図2に示されている例では、リム部材11aとフランジ部材12、及びリム部材11bとフランジ部材12は、それぞれ6本の固定部材13により固定されている。本実施形態では、固定部材13は、棒状の部材であり、車輪1の幅方向に延在するように配置されている。固定部材13により、リム部材11a及び11bと、フランジ部材12とのうち、隣接する部材同士(ここでは、リム部材11aとフランジ部材12、及び、フランジ部材12とリム部材11b)の相対的な位置関係が固定される。これにより、リム部材11a及び11b並びにフランジ部材12全体の相対的位置関係が固定される。
リム部材11a及び11bには、それぞれスポーク部材14a及び14bが取り付けられている。本実施形態のスポーク部材14a及び14bは、図2に示されているように、それぞれ6本のスポーク15を有し、これらの6本のスポーク15が、リム部材11a及び11bに固定されることにより、スポーク部材14a及び14bが、それぞれリム部材11a及び11bに取り付けられている。骨格部2がスポーク部材14a及び14bを備えていることにより、車輪1の強度を向上させることができる。
図2に示されているように、本実施形態では、スポーク部材14a及び14bは、それぞれさらに6本のサブスポーク16を有している。6本のサブスポーク16が、フランジ部材12に固定されることにより、スポーク部材14a及び14bは、フランジ部材12にも取り付けられている。なおスポーク部材14a及び14bは、サブスポーク16を備えていなくてもよい。本実施形態では、スポーク部材14a及び14bは、スポーク15及びサブスポーク16が連結されている環状部をさらに有する。
リム部材11a及び11bには、固定部材13と、スポーク15とを固定するためのボルト穴が設けられている。図3は、リム部材11aのボルト穴の位置を示す概略図であり、リム部材11aを車輪1の幅方向から見た場合の概略図である。ただし、図3では、リム部材11a及び11bにおいて、径方向外側の部分は記載が省略されている。
図3に示されているように、リム部材11aには、6個の固定部材13用の第1ボルト穴17aが設けられている。第1ボルト穴17aは、スポーク部材14aが有する固定部材13の位置に対応して設けられており、本実施形態では、リム部材11aの周方向に沿って、等間隔に設けられている。本実施形態では、リム部材11aは、6個の第1ボルト穴17aを有するため、中心軸(車輪1の回転軸)の周りに、60度ごとに第1ボルト穴17aが設けられている。固定部材13は、第1ボルト穴17aにおいてボルトを用いてリム部材11aに固定される。
また、リム部材11aには、6本のスポーク15用の第2ボルト穴17bが設けられている。第2ボルト穴17bは、スポーク部材14aが有するスポーク15の位置に対応して設けられており、本実施形態では、リム部材11aの周方向に沿って、等間隔に設けられている。また、本実施形態では、第2ボルト穴17bは、2つの第1ボルト穴17aの中央に設けられている。スポーク15が第2ボルト穴17bにおいてボルトを用いてリム部材11aに固定されることにより、スポーク部材14aがリム部材11aに固定される。
リム部材11bについても、図3を参照して説明したリム部材11aと同一の位置に第1ボルト穴17a及び第2ボルト穴17bを有していてよい。また、フランジ部材12についても、図3を参照して説明したリム部材11aと同様に、第1ボルト穴17a及び第2ボルト穴17bを有し、第1ボルト穴17a及び第2ボルト穴17bにおいて、固定部材13並びにスポーク部材14a及び14bがボルトで固定されてよい。フランジ部材12の第2ボルト穴17bは、スポーク部材14a及び14bのサブスポーク16をボルトで固定するために用いられる。なお、スポーク部材14a及び14bがサブスポーク16を有していない場合、フランジ部材12は、第2ボルト穴17bを有していなくてよい。
本実施形態において、フランジ部材12は、2つの部材を結合することにより形成されている。具体的には、フランジ部材12は、第1部材12aと、第2部材12bとを結合することにより形成されている。第1部材12aと第2部材12bとは、同一形状の部材であり、反対方向に向けて、つまり背中合わせに、固定することにより形成されている。フランジ部材12が2つの部材により構成されている場合、車輪1を組み立てる際に、タイヤ部4a及び4bを形成してから、2つの部材を結合させてフランジ部材12を構成させることができるため、作業がしやすくなる。
なおフランジ部材12は、一体の部材により形成されていてもよい。フランジ部材12が一体の部材により構成されている場合には、車輪1を組み立てる際に、フランジ部材12を組み立てる必要がないため、作業工程を減らすことができる。
本実施形態のようにフランジ部材12が2つの部材により形成されている場合、第1部材12a及び第2部材12bにおける、固定部材13用の第1ボルト穴17aには、座繰り18が設けられていてよい。具体的には、図4に第1部材12aについて概略的に示すように、第1部材12aは、第2部材12bとの結合時に第2部材12bと接触する面19に、座繰り18が形成されていてよい。座繰り18の寸法は、固定部材13を固定するために用いられるボルトのサイズに合わせて適宜決定されてよく、当該ボルトが面19から突出しない寸法とすることが好ましい。第2部材12bについても、第1部材12aと同様に構成されていてよい。これにより、第1部材12aと第2部材12bとを結合した際に、結合面(面19)において、固定部材13を固定するボルト同士が干渉しなくなる。
ホイール部10のリム部材11a及び11b並びにフランジ部材12には、本体スプリングが取り付けられる。本体スプリングは、骨格部2の接地変形部を構成する部材である。
ここで、図5を参照しながら、リム部材11a又は11bとフランジ部材12とに対する本体スプリング21の装着態様について説明する。図5は、リム部材11aとフランジ部材12とに対する本体スプリング21の装着態様を示す概略図であり、骨格部2の、本体スプリング21を含む、車輪1の幅方向の概略断面図である。図5では、本体スプリング21と、リム部材11a及び第1部材12aの一部と、が示されている。図5において、本体スプリング21の中央の一部が、簡略化して図示されている。
本実施形態において、本体スプリング21は、図5に概略的に示されているように、リム部材11aと第1部材12aとをつなぐように、取り付けられている。また、本体スプリング21は、図5と同様に、リム部材11bと第2部材12bとをつなぐように、取り付けられている。本実施形態では、リム部材11aと第1部材12aとの間と、リム部材11bと第2部材12bとの間との、本体スプリング21の装着態様は同じであるため、ここでは、リム部材11aと第1部材12aとの間の装着態様について説明する。
本実施形態では、本体スプリング21は、金属製である。本体スプリング21は、弾性変形部22と、係止部23とを有している。
本実施形態では、弾性変形部22は、コイルばねで構成されている。ここで、コイルばねとは、荷重に応じて弾性的に変形するばねであって、軸A(本体スプリング21の軸)のまわりにコイル状(螺旋状)に巻回されてなるばねをいう。弾性変形部22は、所期する車輪1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部の性質等に応じて、適宜の材質及び弾性を有する弾性変形部22を使用することができる。
係止部23は、弾性変形部22の両端に設けられている。係止部23は、本体スプリング21をホイール部10に係止する。係止部23は、弾性変形部22とは異なる形状を有している。すなわち、本実施形態では、係止部23は、コイル状とは異なる形状を有している。
本実施形態では、係止部23は、弾性変形部22と一体の部材により構成されている。すなわち、本実施形態では、例えば図5に示されているように、弾性変形部22の両端から、弾性変形部22を構成する材料が延びて、係止部23を構成している。
本実施形態では、例えば図5に示されているように、係止部23は、弾性変形部22の両端に結合された、直線状に形成されたストレート部23aを含む。また、本実施形態では、例えば図5に示されているように、係止部23は、ストレート部23aの先端側に、ストレート部23aに対して屈曲した屈曲部23bを含む。本実施形態では、本体スプリング21の側面視(本体スプリング21の軸Aを含む面内)で屈曲部23bは、ストレート部23aに対して、直交するように屈曲している。
本実施形態において、リム部材11a及び第1部材12aは、これらをつなぐ固定部材13が延在する側において、係止部23の屈曲部23bを挿入可能な係合受部を有する。本実施形態において、係合受部は、係止部23の屈曲部23bを挿入可能な有底の孔として構成されている。屈曲部23bを係合受部としての孔に挿入することにより、本体スプリング21が、両端部において、リム部材11a及び第1部材12aに係合される。図5に示す例では、係合受部の孔は、車輪1の幅方向に延在するように形成されている。係合受部の孔の延在方向の長さ(孔の深さ)は、屈曲部23bの長さと同一かそれよりも長いことが好ましい。これにより、屈曲部23bの全体が係合受部に挿入可能となり、係合状態が安定しやすくなる。なお、係合受部は、無底の孔(貫通孔)として構成されていてもよい。
係合受部の孔の断面形状は、屈曲部23bが入る限り限定されず、例えば、長円形、楕円形、矩形、多角形等であってもよい。弾性変形部22がより確実に係止(固定)されるためには、孔の断面の形状及び大きさは、屈曲部23bの断面の形状及び大きさとほぼ同じであることが好ましい。
本実施形態では、図5に示されているように、本体スプリング21の両端の係止部23は、車輪1の径方向において、同じ位置に配置されている。なお、本体スプリング21の両端の係止部23は、車輪1の径方向において、異なる位置に配置されていてもよい。
図5に示されているように、屈曲部23bが係合受部に係合された状態において、ストレート部23aは、係合受部の位置から、リム部材11a及び第1部材12aの表面に沿って、車輪1の径方向外側に延在するように配置される。このようにして、図5に示されているように、本体スプリング21は、車輪1の幅方向の一部(例えば中央部)がリム部材11a及び第1部材12aよりも車輪1の径方向外側に突出する。これにより、車輪1に対する荷重が本体スプリング21により支持される。
リム部材11a及び第1部材12aには、図5に示されているように、表面にストレート部23aを収容可能な溝20が形成されており、溝20にストレート部23aが収容されていてよい。このように溝20を設けることにより、リム部材11a及び第1部材12aにおけるストレート部23aの取付け状態が安定する。
本実施形態では、図5に示されているように、本体スプリング21は、リム部材11a及び第1部材12aの周縁部から、本体スプリング21の軸Aが車輪1の径方向外側に向かって延びるように、リム部材11a及び第1部材12aの周縁部に取り付けられている。リム部材11a及び第1部材12aの周縁部は、リム部材11a及び第1部材12aにおける、車輪1の径方向外側の端部をいう。このように、本体スプリング21の軸Aが車輪1の径方向外側に向かうように、リム部材11a及び第1部材12aの周縁部に取り付けられていることにより、車輪1に対する荷重を、本体スプリング21が軸A方向で支持することができる。そのため、本体スプリング21の弾性力を最大限に活用して荷重を支持することができる。
本実施形態では、本体スプリング21の軸Aは、周縁部において、径方向となす角が0°となっている。なお、本体スプリング21の軸Aは、周縁部において、径方向となす角が、必ずしも0°となっていなくてもよい。本体スプリング21の軸Aは、周縁部において、径方向となす角が30°以下であることが好ましい。この場合にも、本体スプリング21の弾性力を活用して、荷重を支持することができる。本体スプリング21の軸Aは、周縁部において、径方向となす角が20°以下であることがさらに好ましく、径方向となす角が10°以下であることがさらに好ましい。本体スプリング21の軸Aは、周縁部において、径方向となす角が0°に近い方が好ましい。0°に近いほど、本体スプリング21の弾性力が活用されるためである。また、本体スプリング21の軸Aは、周縁部において、径方向に対して傾斜する場合、各タイヤ4a及び4bの中央方向に向かって傾斜していることが好ましい。これによりタイヤ部4aを形成する本体スプリング21とタイヤ部4bを形成する本体スプリング21とが干渉しにくくなる。
複数の本体スプリング21は、車輪1の周方向全体にわたって相互間に間隔をおいて設けられている。つまり、本体スプリング21は、ホイール部10の全周にわたって、上述した態様で、係止部23がリム部材11a及び第1部材12aに係合されている。リム部材11a及び第1部材12aに対して係合される本体スプリング21の数量及び間隔は、車輪1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部の性質等に応じて、適宜決定されてよい。
なお、ホイール部10には、さらに、係合受部に係合した屈曲部23bの係合状態を、固定部材13が延在する側から補助する、係合補助部材(不図示)が取り付けられていてもよい。係合補助部材は、例えば、板状の部材により構成され、リム部材11a及び第1部材12aに固定されて、屈曲部23bが係合受部としての孔から抜け出さないように支持する。係合補助部材を有する場合には、リム部材11a及び第1部材12aに対する係止部23の係合状態が、より安定する。
なお、リム部材11a及び11b並びに第1部材12a及び第2部材12bにおいて、本体スプリング21の屈曲部23bが係号する係合受部の孔の形態は、図5に示すものに限られない。例えば、図5に示す例では、係合受部の孔は、車輪1の幅方向に沿って(つまり、車輪1の幅方向に対して0°の角度で)延在するように形成されていると説明した。しかしながら、係合受部の孔は、必ずしも車輪1の幅方向に沿って延在するように形成されていなくてもよい。図6は、リム部材11aの一変形例を示す概略図である。図6に一例として示されているように、係合受部の孔は、車輪1の幅方向に対して傾斜する方向に延在するように形成されていてもよい。第1部材12a及び第2部材12bについても、同様に、係合受部の孔が、車輪1の幅方向に対して傾斜する方向に延在するように形成されていてよい。この場合にも、係合受部の孔に屈曲部23bを挿入することによって、本体スプリング21をリム部材11a及び11b並びに第1部材12a及び第2部材12bに係合させることができる。
本実施形態に係る車輪1の骨格部2では、このようにしてホイール部10に係合された複数の本体スプリング21が、連結スプリングと連結されることにより、接地変形部が形成されている。すなわち、本実施形態において、接地変形部は、本体スプリング21と連結スプリングとの2種類のスプリングにより構成されている。連結スプリングは、本体スプリング21の相互間の相対変位を規制するように、本体スプリング21に連結される。すなわち、本実施形態では、連結スプリングが、隣接する本体スプリング21を連結する連結部材として機能する。連結スプリングは、具体的には、ホイール部10に係合された、周方向に隣接する2本の本体スプリング21の間に配置され、これら2本の本体スプリング21に組み合わされて本体スプリング21と連結される。
本実施形態では、連結スプリングは、弾性変形部を有している。弾性変形部は、コイルばねで構成されている。弾性変形部は、所期する車輪1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部の性質等に応じて、適宜の材質及び弾性を有する弾性変形部を使用することができる。連結スプリングの弾性変形部を構成するコイルばねの直径は、本体スプリング21の弾性変形部22を構成するコイルばねの直径に近い方が好ましい。ここで、コイルばねの直径は、コイルばねを軸方向から見たときの、外接円の直径であり、以下同様とする。連結スプリングの弾性変形部を構成するコイルばねの直径が、本体スプリング21の弾性変形部22を構成するコイルばねの直径に近いほど、連結スプリングの弾性変形部22を構成するコイルばねと、連結スプリングの弾性変形部を構成するコイルばねとを、後述するように連結させて接地変形部を形成したときに、均等に力がかかりやすくなる。例えば、連結スプリングの弾性変形部22を構成するコイルばね、及び、連結スプリングの弾性変形部を構成するコイルばねの直径は、いずれも15mm~25mm、例えば20mm等とすることができる。
図7A及び図7Bは、本体スプリング21に対する連結スプリング24の連結方法の一例を説明するための概略図である。連結スプリング24は、図7Aに示されているように、ホイール部10に係合された本体スプリング21の弾性変形部22に引っ掛けて、隣接する2本の本体スプリング21と組むようにして、これら2本の本体スプリング21と連結していく。具体的には、連結スプリング24は、周方向に隣接する2本の本体スプリング21の相互間の相対変位を規制するように本体スプリング21に連結される。このとき、連結スプリング24は、回転しながら前進するように本体スプリング21に差し込まれていくことにより、隣接する2本の本体スプリング21と徐々に組み合わされる。このようにして、図7Bに示されているように、連結スプリング24の全体が2本の本体スプリング21と連結される。
なお、本実施形態では、連結スプリング24の両端は、ホイール部10に固定されていない。つまり、本実施形態では、連結スプリング24は、両端が非固定となっている。ただし、連結スプリング24は、両端のうちの一方の端部のみがホイール部10に固定されていてもよい。
本実施形態では、ホイール部10に係合された全ての本体スプリング21は、隣接する2本の本体スプリング21の間に連結スプリング24が配置されるように、連結スプリング24と連結される。本実施形態では、このようにして、骨格部2が構成されている。すなわち、本実施形態では、骨格部2の接地変形部の全ての本体スプリング21は、2本の連結スプリング24と連結され、骨格部2の接地変形部の全ての連結スプリング24は、2本の本体スプリング21と連結されている。このように、隣接する2本の本体スプリング21の間に連結スプリング24が連結されていることにより、骨格部2に対して荷重がかかった場合であっても、本体スプリング21同士の距離が広がりすぎず、車輪1としての機能を維持しやすくなる。
連結スプリング24の長さは、所期する車輪1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部の性質等に応じて、適宜決定されてよい。連結スプリング24は、弾性変形部の長さ(延在長さ)が、本体スプリング21の弾性変形部22の長さ(延在長さ)よりも短く構成されていることが好ましい。連結スプリング24は、弾性変形部がタイヤの幅方向の全体にわたって延在するような長さを有することが好ましい。これにより、本体スプリング21の弾性変形部22のうち、少なくとも接地する領域が、連結スプリング24の弾性変形部と連結される。
本実施形態に係る車輪1は、上述した骨格部2の外周に、トレッド部3を形成するトレッド部材が装着されることにより構成されている。トレッド部材は、例えば、図1に示すように、骨格部2のタイヤの幅方向の全体にわたって延在するように、骨格部2に装着される。トレッド部材は、少なくとも、骨格部2の、本体スプリング21及び連結スプリング24により形成される接地領域に装着されている。トレッド部材は、例えば不織布を含んで構成されてよい。不織布は、例えば金属製であってよい。金属製の不織布を使用することにより、温度変化が大きい環境においても、所期する車輪1を使用可能となる。ここでは、トレッド部材が、金属製の不織布を含んで構成されているとして説明する。
トレッド部材は、例えば、本体スプリング21及び連結スプリング24を組み合わせた状態において、骨格部2において車輪1の径方向外側の面に形成される溝に嵌め込まれることにより、骨格部2に対して装着される。具体的には、本実施形態では、本体スプリング21が、ホイール部10において、車輪1の幅方向に沿って(つまり、車輪1の幅方向に対して0°の角度で)延在するように取り付けられている。そのため、本体スプリング21に織り合わされた連結スプリング24も、ホイール部10において、車輪1の幅方向に沿って延在している。このように、本体スプリング21及び連結スプリング24が車輪1の幅方向に沿って延在している場合、図7Bに破線で示すように、本体スプリング21及び連結スプリング24により、骨格部2において車輪1の径方向外側の面から窪んだ溝25が形成される。
本実施形態では、トレッド部材が、本体スプリング21及び連結スプリング24により形成された溝25に装着される。このとき、トレッド部材30は、例えば図8に示されているように、少なくとも一部が溝25に埋め込まれるようにして装着される。トレッド部材30の少なくとも一部が溝25に埋め込まれるようにして装着されることにより、トレッド部材30が、溝25から脱落しにくくなる。本実施形態では、トレッド部材30の一部のみ、すなわち、トレッド部材30における車輪1の径方向内側の部分のみが、溝25に埋め込まれるようにして装着されており、トレッド部材30における車輪1の径方向外側の部分は、溝25から車輪1の径方向外側に露出している。このように装着されていることにより、走行時の振動等が抑制され得る。ただし、トレッド部材30は、その全体が溝25に埋め込まれるようにして装着されていてもよい。この場合、トレッド部材30は、溝25から脱落しにくくなる。本実施形態では、図1に示すように、トレッド部材30は、骨格部2に形成された全ての溝25に埋め込まれている。ただし、トレッド部材30は、全ての溝25に埋め込まれていなくてもよい。例えば、トレッド部材30は、骨格部2に形成された溝25のうち、一部のみに埋め込まれていてもよい。この場合、車輪1の軽量化を図ることができる。
本実施形態において、トレッド部材30は、骨格部2に対して着脱可能に装着されていることが好ましい。トレッド部材30が骨格部2に対して着脱可能に装着されていることにより、トレッド部材30が摩耗した場合等に、トレッド部材30を骨格部2から外して交換することができる。
本実施形態において、トレッド部材30は、例えば図8に模式的に示すように、不織布32により構成されている。トレッド部材30は、延在方向の断面視において、中央部に貫通穴30aを有する棒状に構成することができる。トレッド部材30は、不織布32を、断面がほぼ円形状の、細長い棒状に構成することができる。ここで、ほぼ円形状とは、真円だけでなく、ゆがんだ円形状(例えば図8に模式的に示されているような楕円形状)や、断面の外周部に凹凸を有する形状を含むことをいう。トレッド部材30に設けられた貫通穴30aは、芯材31を通すための穴である。芯材31は、トレッド部材30の延在方向に沿って延在する。芯材31は、例えば、ピッチの密な線径の細いコイルばねにより構成することができる。
なお、トレッド部材30は、図8に示した例に限られない。例えば、トレッド部材30は、図9A及び図9Bに示すように、貫通穴30aに、貫通穴30aを補強するための補強部材33を備えていてよい。補強部材33は、例えばピッチの密なコイルばねにより構成されていてよい。円筒形状の補強部材33の内部には、芯材31が配置されている。補強部材33を設けることにより、補強部材33がない場合と比較して、芯材31の不織布32への食い込みを防ぐことができる。また、補強部材33が芯材31を保護することにより、トレッド部材30の耐久性が向上する。また、補強部材33が、ホイール部10等からの伝達熱とトレッド部材30が発する熱とを蓄熱保持し、極低温環境下におけるトレッド部材30の過冷却を防ぐことができる。
また、トレッド部材30は、例えば図10A及び図10Bに示されているように、断面視においてひょうたん型となる形状であってもよい。この場合、トレッド部材30は、溝25に埋め込まれる固定領域A1と、接地する接地領域A2とを有する。固定領域A1に対して、車輪1の径方向外側に接地領域A2が設けられている。トレッド部材30には、固定領域A1に貫通穴30aが設けられ、貫通穴30aに補強部材33を備える。補強部材33の内部には、芯材31が配置されている。断面において、接地領域A2の幅は、固定領域A1の幅よりも大きい。
本実施形態において、トレッド部材30は、トレッド部材30を骨格部2に固定するための固定部材をさらに備えることが好ましい。これにより、トレッド部材30が、骨格部2からより脱落しにくくなる。固定部材は、トレッド部材30を骨格部2に固定可能な任意の構成とすることができる。
例えば、トレッド部材30は、図8に示す例のように棒状に構成されている場合、当該棒状のトレッド部材30の両端から、当該トレッド部材30の延在方向に延びる固定部材を備えていてよい。例えば、トレッド部材30は、芯材31の延在方向に延びる固定部材を備えていてよい。この場合、芯材31と固定部材とは、一体の部材として構成されていてもよい。具体的には、芯材31と固定部材との機能を有するコイルばねが、貫通穴30aに挿通されるとともに、骨格部2に固定され、これにより、トレッド部材30が骨格部2に固定される。コイルばねは、1つのトレッド部材30に対して、少なくとも1本用いられていればよく、複数本用いられていてもよい。ただし、固定部材の態様は、これに限られない。固定部材は、例えばトレッド部材30とは独立した別体の部材として構成することもできる。
このように、本実施形態に係る車輪1は、少なくとも、骨格部2の外周に配置されたトレッド部材30を備える。そのため、本実施形態に係る車輪1により、例えば砂地等を走行する場合であっても、トレッド部材30により、車輪1の内部側(つまり回転中心側)に砂等の異物が入ることを防ぐことができる。これにより、車輪1の走行性能が低下しにくくなる。
複数のタイヤ部のそれぞれにおいて、トレッド部材30は、タイヤ部の回転軸に対して一方向に配列されている。具体的には、図7Bに示すように、トレッド部材30を埋め込む溝25が一方向に形成されているため、溝25にトレッド部材30を埋め込むことにより、トレッド部材30が一方向に配列され、トレッド部3に一方向のパターンが形成される。複数のタイヤ部に形成されるトレッド部3のパターンの方向及びピッチは、タイヤ部ごとに適宜定めることができる。
トレッド部材30の配列は、接地変形部を構成するコイルばね(本実施形態では、本体スプリング21及び連結スプリング24)の、リム部材及び/又はフランジ部材への取付け位置と、スプリングの巻き方向と、により定まる。例えば、上記実施形態のように、本体スプリング21が車輪1の幅方向において、同じ位置に配置されている場合、図7Bに示すように溝25が車輪1の幅方向に対して所定の角度で傾斜するように形成されるため、トレッド部材30の配列も同様の角度で傾斜して形成される。本体スプリング21の、リム部材及び/又はフランジ部材への取付け位置を変更することにより、車輪1の幅方向に対する、トレッド部材30の配列の傾斜角度を変更することができる。従って、本体スプリング21の、リム部材及び/又はフランジ部材への取付け位置によっては、トレッド部材30を、車輪1の幅方向と同じ方向に配列することもできる。また、スプリングの巻き方向を反対方向にした場合、本体スプリング21をリム部材及び/又はフランジ部材の同じ位置に取り付けたとしても、溝25は、車輪1の幅方向に対して異なる角度で形成される。そのため、スプリングの巻き方向によっても、タイヤ部に形成されるトレッド部材30の配列方向を変更することができる。
複数のタイヤ部に形成されるトレッド部材30の配列のピッチは、接地変形部を構成するコイルばねのスプリングのピッチにより定まる。例えば、本体スプリング21及び連結スプリング24のピッチが広いほど、溝25の幅が広くなるため、トレッド部材30の配列のピッチが広くなる。反対に、本体スプリング21及び連結スプリング24のピッチが狭いほど、溝25の幅が狭くなるため、トレッド部材30の配列のピッチが狭くなる。
従って、接地変形部を構成するコイルばねの、リム部材及び/又はフランジ部材への取付け位置、スプリングの巻き方向、及び、スプリングのピッチを適宜変えることによって、タイヤ部において多様なパターンのトレッド部材30の配列を実現することができる。
複数のタイヤ部において、トレッド部材30の配列は、タイヤ部ごとに異ならせることができる。ここで、図11Aから図11Eを参照して、上記実施形態のように、車輪1が2つのタイヤ部4a及び4bを有する場合における、トレッド部材30の配列のいくつかの例について、説明する。図11Aから図11Eは、それぞれ車輪1におけるトレッド部材30の配列の一例を示す図である。
例えば、車輪1において、トレッド部材30の配列の方向は、タイヤ部4a及び4bの回転軸に対して、タイヤ部4a及び4bごとに異なっていてよい。例えば、図11Aに示されているように、2つのタイヤ部4a及び4bのそれぞれにおいて、トレッド部材30の配列の方向が、タイヤ部4a及び4bの回転軸に対して対称であってよい。このような配列は、スプリングのピッチが同じであり巻き方向が異なる本体スプリング21を、リム部材及び/又はフランジ部材の車輪1の幅方向において同じ位置に取り付けることによって、2つのタイヤ部4a及び4bを構成することにより、実現することができる。このような車輪1のトレッド部材30の配列は、図11Aに示されているようにV字状となっている。このようなトレッド部材30の配列によれば、車輪1が回転して車両を走行させる際に、2つのタイヤ部4a及び4bにおいて、車輪1の左右にかかる力の均一化を図りやすくなる。
例えば、図11Bに示されているように、車輪1において、2つのタイヤ部4a及び4bのトレッド部材30は、同一の配列を有していてもよい。このような配列は、同一のピッチ及び巻き方向の本体スプリング21を、4つのタイヤ部4a及び4bを構成するリム部材及び/又はフランジ部材において同様に取り付けることによって、2つのタイヤ部4a及び4bを構成することにより、実現できる。このようなトレッドのパターンによれば、1つのタイヤ部を有する車輪1と比較して、トラクションを強化することができる。
例えば、車輪1において、トレッド部材30の配列のピッチは、複数のタイヤ部4a及び4bごとにそれぞれ異なっていてよい。例えば、図11Cに示されているように、タイヤ部4aのトレッド部材30の配列のピッチが、タイヤ部4bのトレッド部材30の配列のピッチよりも広くなっていてよい。このような配列は、スプリングのピッチが異なり巻き方向が同じである本体スプリング21を、用いることによって実現することができる。このようなトレッド部材30の配列によれば、車輪1を備える車両が走行する路面の環境が、一方の配列のピッチに適しておらず、トラクションがかかりにくい場合であっても、他方の配列のピッチによりトラクションがかかり、車輪1全体として、多様な路面の環境に対応して走行することが可能になる。
例えば、図11Dに示されているように、車輪1において、2つのタイヤ部4a及び4bのトレッド部材30は、互いに異なる方向の配列を有していてもよい。このような配列は、本体スプリング21の両端のリム部材及び/又はフランジ部材への取付け位置を異ならせることにより、実現することができる。このようなトレッド部材30の配列によれば、車輪1を備える車両が走行する路面の環境が、一方の配列のピッチに適しておらず、トラクションがかかりにくい場合であっても、他方の配列のピッチによりトラクションがかかり、車輪1全体として、多様な路面の環境に対応して走行することが可能になる。
例えば、図11Eに示されているように、車輪1において、2つのタイヤ部4a及び4bのトレッド部材30の配列は、異なる位相となるように形成されていてもよい。このような配列は、本体スプリング21の両端のリム部材及び/又はフランジ部材への取付け位置を、タイヤ部4aを形成するリム部材及び/又はフランジ部材と、タイヤ部4bを形成するリム部材及び/又はフランジ部材とで、ずらすことにより、実現することができる。このようなトレッド部材30の配列によれば、2つのタイヤ部4a及び4bが、それぞれ異なるタイミングでトラクションを利かせることができる。
なお、各タイヤ部4a及び4bにおけるトレッド部材30の配列の組合せは、ここで示した例に限られず、任意の組合せを取ることができる。このように、本実施形態に係る車輪1は、複数のタイヤ部4a及び4bのそれぞれにおいて一方向のパターンを構成することができるため、これら一方向のパターンを有するタイヤ部4a及び4bを組み合わせることにより、表面のパターンの自由度を高めることができる。
本実施形態に係る車輪1は、例えば次のようにして組み立てることができる。すなわち、まず、リム部材11aと第1部材12aとに、図5に示されているように複数の本体スプリング21を取り付ける。リム部材11bと第2部材12bとにも、同様に複数の本体スプリング21を取り付ける。次に、図7A及び図7Bに示されているように、本体スプリング21に対して、連結スプリング24を連結させる。そして、リム部材11aと第1部材12aとを固定部材13で固定することにより、タイヤ部4aのタイヤ幅を固定する。リム部材11bと第2部材12bとも、同様に固定部材13で固定することにより、タイヤ部4bのタイヤ幅を固定する。次に、第1部材12aと第2部材12bとをボルトで結合し、フランジ部材12を構成させる。そして、スポーク部材14a及び14bを取り付ける。最後に、トレッド部材30を装着させて、車輪1の組立てが完了する。
以上説明したように、本実施形態に係る車輪1は、2つのリム部材11a及び11bの間に1つのフランジ部材12を備え、フランジ部材12と各リム部材11a及び11bとには、複数の本体スプリング21が取り付けられており、本体スプリング21には連結スプリング24が結合されている。この構成により、1つの車輪1が2つのタイヤ部4a及び4bを有する。そのため、1つの車輪1が1つのタイヤ部のみを備える場合と比較して、より大きな荷重を支持することが可能となる。
上記実施形態では、車輪1が、2つのタイヤ部4a及び4bを備えている場合について説明した。しかしながら、車輪1が備えるタイヤ部の数は、2つに限られない。車輪1は、3つ以上のタイヤ部を備えていてもよい。
図11は、3つのタイヤ部4a、4b及び4cを備える車輪1の外観斜視図である。図11に示されているように、車輪1は、3つのタイヤ部4a、4b及び4cを備えていてもよい。この場合、車輪1の骨格部2は、2つのリム部材11a及び11bと、2つのフランジ部材12とを備えている。2つのフランジ部材12は、2つのリム部材11a及び11bと回転軸が同一となるように配置され、2つのリム部材11a及び11bの間に配置されている。本体スプリング21は、2つのリム部材11a及び11bと、2つのフランジ部材12のうち、隣接する部材をつなぐように構成されており、これによって、3つのタイヤ部4a、4b及び4cが形成されている。具体的には、1つのリム部材と、これに隣接するフランジ部材とに、本体スプリング21が取り付けられることにより、タイヤ部4aが形成されている。また、他のリム部材と、これに隣接する他のフランジ部材とに、本体スプリング21が取り付けられることにより、タイヤ部4cが形成されている。そして、2つの隣接するフランジ部材同士に、本体スプリング21が取り付けられることにより、タイヤ部4bが形成されている。このように、図11に示されている車輪1は、上記実施形態で説明した車輪1と異なり、2つのフランジ部材を含み、隣接するフランジ部材同士に本体スプリング21が取り付けられている。その他の点については、上記実施形態で説明した車輪1と同様である。3つのタイヤ部4a、4b及び4cを備える車輪1によれば、荷重支持力がさらに高まる。
図12は、4つのタイヤ部4a、4b、4c及び4dを備える車輪1の外観斜視図である。図12に示されているように、車輪1は、4つのタイヤ部4a、4b、4c及び4dを備えていてもよい。この場合、車輪1の骨格部2は、2つのリム部材11a及び11bと、3つのフランジ部材12とを備えている。3つのフランジ部材12は、2つのリム部材11a及び11bと回転軸が同一となるように配置され、2つのリム部材11a及び11bの間に配置されている。この場合も、図11に示す車輪1と同様に、フランジ部材同士に本体スプリング21が取り付けられる。4つのタイヤ部4a、4b、4c及び4dを備える車輪1の場合には、タイヤ部4b及び4cが、フランジ部材同士に本体スプリング21を取り付けることによって形成されたタイヤ部である。4つのタイヤ部4a、4b、4c及び4dを備える車輪1によれば、荷重支持力がさらに高まる。
図12及び図13に示すように、3つ以上のタイヤ部を有する車輪においても、上記実施形態で説明した車輪1と同様に、各タイヤ部ごとに、異なるパターンのトレッドを形成することができる。これにより、車輪1における表面のパターンの自由度を高めることができる。
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。