本出願は、米国仮特許出願第62/737,517号、発明の名称「高効率ベルトおよびその製造方法」、出願日2018年9月27日の利益と優先権を主張し、その全体が、参照することによりこの明細書に組み込まれる。
添付した図面を参照して実施形態が以下に詳細に記載され、これらの図面は、実例として、特定の例示的な実施形態の一部を構成し、示す。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるように十分に詳細に開示される。しかし、実施形態は、多くの形態で実施され、ここに記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。したがって下記の詳細な説明は、限定された意味にとられるべきではない。
図1を参照すると、高効率ベルトを製造する方法100は概略的に、原材料を混ぜるステップ110と、混合物を圧延し、または押出してシートを成形するステップ120と、シートをカレンダ処理するステップ130と、カレンダ処理シートの中のいくつかのシートを一緒にバナー処理するステップ140と、少なくともバナー処理シートを用いて金型にスラブを組み付けるステップ150と、金型においてベルト構成を加硫するステップ160と、金型から加硫された円筒部材を取外し、円筒部材を複数の個別ベルトに切断するステップ170と、ベルトを切削し、成形して最終寸法に仕上げるステップ180(必要に応じて)とを含む。図1に示された方法により成形されたベルトは、同様な寸法(例えば厚さ)を有する既知のベルトよりも、回動させるために要するエネルギが少ない高効率ベルトである。最も重要なこととして、以下により詳細に記載されるように、図1に示された方法から成形された高効率ベルトは、弾性係数に関して異方性材料構成と改良された(すなわち低減した)曲げ剛性とを有し、両者ともにベルトの改善された効率に寄与する。
ステップ110では、原材料が混ぜ合わされて混合物を形成する。ステップ110において混ぜ合わされた原材料は、1)ベースエラストマまたはラバーストック、2)強化材料、3)繊維材料、4)オイル、5)加硫剤を概略的に含む。可塑剤、劣化防止剤、着色剤、加工助剤、助剤等が選択的に追加されてもよい。
いくつかの実施形態では、混合ステップ110は通常、バンバリーミキサーのような工業ミキサーを用いて実行され、全ての原材料を一緒に混合する。しかし、他のミキシング技術および方法も使用可能である。いくつかの実施形態では、個々の原材料が、原材料の十分な統合と分散を確実にするため、特定の順序でミキサー内に追加される。いくつかの実施形態では、ある原材料が混合物の中に順に追加される前に混合される。使用可能な、非限定的である一例のミキシングシーケンスは、最初にポリマー、カーボンブラック、およびオイルを追加し、その後、繊維と充填剤を、そして加硫剤を追加する。
ラバーストックに関しては、適当なラバーストックが使用可能である。いくつかの実施形態では、ラバーストックはパウダー、ペレット、ベール、またはブロックの形態である。例示的な適当なラバーストックは、限定されないが、天然ゴム、合成ゴム(SBR)、クロロプレン・ゴム(CR)、エチレン・プロピレン、エラストマ(EPDMおよびEPM)、およびエチレン・ブチン(EBM)等の他のエチレン・エラストマ・コポリマー、エチレン・ペンテンおよびエチレン・オクテン(EOM)、水添加ニトリル・ブタジエン・ゴム(HNBR)、およびフッ素エラストマ(FKM)を含む。いくつかの実施形態では、ステップ110において用いられるラバーストックの量は、混合された合成物の全重量の30重量%から70重量%である。いくつかの実施形態では、ラバーストックは混合された合成物の全重量の40重量%から60重量%である。
強化材料に関し、ここに記載される方法のいくつかの実施形態は、強化材料が長尺セグメントであるならばチョップドファイバ・セグメントを強化材料として使用し、他の強化材料も使用可能である。チョップドファイバが使用されるとき、チョップドファイバは例えば、アラミド、ポリエステル(PET)、コットンまたはナイロンであってもよい。チョップドファイバは、有機材料または合成材料から、あるいは有機および合成材料の混合物から製造される。チョップドファイバはまた、カーボンファイバ・ナノチューブの形態であってもよい。ステップ110において用いられるチョップドファイバの大きさは一般的に限定されない。いくつかの実施形態では、強化材料は0.2mmから3mmの範囲の長さを有する高アスペクト比の材料である。いくつかの実施形態では、強化材料(例えばチョップドファイバ)は10から250のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、ステップ110において用いられる強化材料(例えばチョップドファイバ)の量は、混合された合成物の全重量の5重量%から30重量%である。いくつかの実施形態では、強化材料は混合された合成物の全重量の6重量%から14重量%である。
充填剤に関し、ここに記載される方法のいくつかの実施形態は、充填剤としてカーボンブラックを使用し、他の充填剤も使用可能であり、単独であってもよく、カーボンブラックと合わせてもよい。ステップ110において用いられる他の適当な充填剤は、粘土に限定されず、パルプおよびシリカを含む。いくつかの実施形態では、ステップ110において用いられる充填剤の量は、混合された合成物の全重量の5重量%から45重量%である。いくつかの実施形態では、充填剤は混合された合成物の全重量の10重量%から20重量%である。
オイルに関し、原料としてのオイルは通常、他の乾燥材料と、シートに成形され得る厚い混合物の組成物との混合を許容する、液体またはバインダ材料として提供される。芳香族、ナフテン系、パラフィン系を含み、これらに限定されない、適当なオイルが使用可能である。いくつかの実施形態では、ステップ110において用いられるオイルの量は、混合された合成物の全重量の2重量%から18重量%である。いくつかの実施形態では、オイルは混合された合成物の全重量の2重量%から8重量%である。
加硫剤に関しては、適当な加硫剤が、以下に詳細に記載される加硫ステップ150において加硫助剤とともに使用可能であり、ステップ110における使用に適当な例示的な加硫剤は、硫黄と過酸化物を含み、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ステップ110において用いられる加硫剤の量は、混合された合成物の全重量の約8重量%よりも少なく、例えば5重量%より少ない。
表1はステップ110の混合物の要素の例示的な重量%の範囲を示す。
米国特許第5,610,217および6,616,558号明細書は、材料の処理とベルトを成形するときに使用される混合物を形成するための混合方法とに関して、さらなる情報を提供し、それらの一部または全てはここに記載された混合ステップ110において使用可能である。したがって米国特許第5,610,217および6,616,558号明細書は、参照することによりこの明細書に組み入れられる。
上述のようにして混合ステップ110が実行された後、圧延あるいは押出しステップ120が実行されて、混合物からシートが成形される。標準的な圧延あるいは押出し技術はどんなものでも使用可能である。いくつかの実施形態において、混合物は、シートを成形するために圧延または押出成形する前に、室温まで冷却してもよい。成形されたシートは比較的大きい表面積を有する。
ステップ120でシートが成形されるので、カレンダ処理ステップ130はシートに対して実行される。カレンダ処理ステップ130は2つの主要な目的を果たす。すなわち、シートの厚さを低減させ、かつ正確に制御することと、強化材料を位置決めすることであり、全ての高アスペクト比の強化材料がシート内で同じ方向に整列して、これによりシートに異方性材料性能を与える(下記において詳細に説明する)。
シートがドラムを通過するときにシート材料の厚さが減少するように、シート材料の厚さよりも小さい距離だけ離して、シート材料を回転するドラムを通過させることを含み、シート材料をカレンダ処理する全ての公知技術が使用可能である。いくつかの実施形態では、カレンダ処理ステップ130は、ステップ110において製造されたシートの厚さを約0.25から1.5mmの厚さの範囲内まで減少させるために使用される。厚さを目標とする厚さまで減少させることは、ステップ150のスラブの組付け工程(下記において詳細に説明される)が実行されるときに、シートが円筒状金型の周りに複数回(例えば3回)巻き付けられるが、この累積厚さは、最終的なベルト製品のリブ材料部分の望ましい最終厚さにほぼ等しくなる。
カレンダ処理ステップ120から強化材料の配列を達成するために、カレンダ処理は、異なる角速度で2つのドラムを動作させることによる等のような、剪断を利用してもよい。例えば、第1(例えば上側)のドラムが第2(例えば下側)のドラムの角速度ω2よりも小さい角速度ω1を有するとき、この角速度の差はドラムを通過するシートに対する剪断力を付与し、これは強化材料がシート内において整列する結果となる。すなわち、全ての高アスペクト比の強化材料がシート内において相互にほぼ平行に整列される。
この方法における強化材料を整列させる結果は、カレンダ処理シートが弾性係数に対する異方性特性を有することである。一般的にシートは、「布目に沿った」方向(高剪断)には第1弾性係数を有し、「布目に交差した」方向には第2弾性係数を有する。まとめると、シートは、布目に交差した方向の係数に対する、布目に沿った方向の係数の比である、弾性係数比を有すると考えられる。いくつかの実施形態では、ステップ110において生成されるシートは1.1から5.0の係数比を有する。
ステップ140では、ステップ120、130において成形された個々のシートが結合される(一緒にバナー処理される、と呼ばれることもある)。ここで使用されるように、バナーという用語は、カレンダ処理シート材料における個々のシートを端部と端部を繋ぎ合わせて、新しい、より大きなシートを成形することを指す。図2は、複数のシート201が繋ぎ合わされて複合(つまりバナー処理された)シート200を成形する、バナー処理の結果を示す。いくつかの実施形態では、また図2において示されるように、個々のシートは全て、シートが並べられたときに、各シートの上縁201aと下縁201bが整列されるように、同じ長さを有する。シート201が並べて整列したとき、各シート201は、強化材料203が全て、ひとつのシート201から隣のシートに整列するように、配置される。より詳しくは、シート201は、シート201が並んで配列された方向に対して垂直な方向に強化材料203が整列するように、整列される。例えば、図2は強化材料203が相互に平行で、シート201が並んで配列された方向に垂直に整列された実施形態を示す。結局、このバナー処理シート200から成形される個々のベルトは、ベルトの非屈曲方向に整列された強化材料を有する。これにより強化材料は、ベルトの長手方向の撓み係数を減少させつつベルトのリブの圧縮における横方向の係数を増加させ、これは可撓性を維持しつつ、より高い耐負荷性能を与える。
バナー処理ステップ140において隣接するセグメント同士を接続する、どんな方法も使用可能である。いくつかの実施形態では、接着剤の使用によるなど、他の取付け方法も使用可能であるが、隣接するセグメントは一緒に縫合される。新しいバナー処理シートを生成するために一緒に結合される各セグメントの長さと幅の大きさは、一般的に制限されず、シート材料から成形されるベルト製品の望ましい最終寸法に基づいて選択される。一緒にバナー処理される個々のシートは寸法が同一でもよく、あるいは各シートの幅は変わってもよい(上述され、また図2に示されるようにシートがバナー処理されるときに、上および下縁が整列するように、長さは好ましくは各シート間で同じである)。
ステップ110の原材料を備え、かつ弾性係数に関する異方性を有する材料の望ましいバナー処理シートを製造すると、ベルトの複合構造を金型に組み付けるステップ150が実行され得る。スラブ製造工程は概略的に、ほぼ完成したベルト製品を成型するために加硫を行う圧力および/または温度に金型が晒されるように、複合ベルト構造物の各層を金型に連続的に設けることを伴う。
いくつかの実施形態では、スラブ成形工程が行われる金型は円筒状ドラムであり、ドラムは、成形されるベルトの直径にほぼ等しい直径を有する。特定の直径に限定されず、ベルト製品の望ましい直径であればよい。
いくつかの実施形態では、ドラム金型に配置されるべき最初の層は背面材料である。ベルト構成に用いられる適当な背面材料が使用可能である。同様に、背面材料の厚さは限定されず、結果として得られるベルトの背面層の望ましい厚さに基づいて調整される。いくつかの実施形態では、背面材料はゴム材料であり、典型的には、ステップ140から得られるバナー処理シートとは異なるゴム材料である。他の実施形態では、背面材料は1以上の織物、接着ゴム等を含んでもよい。好ましくは、背面材料の厚さは縮小される。薄い背面材料の均一さは、既に述べたように、改善されたコードの同心性を可能にする。
背面材料のドラム金型への取付けに続いて、スラブ成形工程は、典型的には、円筒状ドラム上の背面材料に巻付けられるべきベルトのコード材料を要求する。1層のコードが一般的に、背面材料の全長にわたって背面材料に巻付けられる。巻付け角度、巻付け張力、コードの隣接する巻間の距離などのパラメータは最終製品の要求に応じて調整されうる。ドラム金型の周りに巻付けられるコードの材料は一般的に限定されず、いくつかの実施形態では、金属、アラミド、カーボンファイバー、ナイロン、ポリエステル、ガラス、セラミック、および種々の合成材料を含み、いくつかの材料の混合物でもよい。コード自体の寸法(例えば直径)は限定されず、ベルトの望ましい最終的なアプリケーションに基づいて選択される。
背面材料の周りへのコード材料の巻付けに続いて、ステップ150のスラブ成形工程は、ステップ140から得られたバナー処理シート材料を、ドラム金型の周囲に、コードおよび背面材料を覆って巻付けることを含む。バナー処理シート材料の1以上の層、例えば3層(すなわち、バナー処理シート材料はドラムの周りに3重に巻付けられてもよい)が、バナー処理シート材料から製造されるベルトのリブ材料部分の全厚さを決めるために用いられてもよい。オプションの接着層がバナー処理シート材料を巻付ける前にコードに隣接して設けられてもよい。
そして最終的選択表面層はバナー処理シート材料に巻付けられ、ステップ150のスラブ成形工程を終える。表面層は編物チューブおよびポリエステルフィルム等のような、ベルトの分野で用いられる適当な表面層材料であってもよい。表面層の厚さは一般的に限定されず、成形されるベルトの具体的なアプリケーションに基づいて調節される。
スラブ成形工程の後、外側金型が採用されて、複合ベルト構造物を金型の内側(ドラムシリンダ)と外側部分の間に入れてもよい。金型の外側部分は一般に、複合ベルト構造物を包み込んで均一厚さを有するベルトを形成することができるようにドラムシリンダを反映するように、円筒状である。外側金型は、成形されるベルトが歯、リブ等を有しない実施形態では、平面的な内面を有してもよい。代替的に外側金型の内面は、リブまたは歯の一般に望まれる寸法、形状および間隔を付与することを含み、歯、リブ等がベルト製品に望まれるものであれば生成するであろう輪郭形状を含む。いくつかの実施形態では、ここに記載される高効率ベルトはリブを含む。ここに記載される高効率ベルトはクロスカット、切欠き、および他の表面修正形状を含む。
内側金型の外面は、熱交換フィンのようなベルトの背面に形状を付加するために用いられてもよい。例えば、ここに記載されるベルトのいくつかの実施形態では、製造方法は、フィンが成形された熱交換要素が背面材料の外側に形成されるステップを含む。これらのフィンが成形された熱交換要素は、熱がベルトから消失することを助け、ベルトの性能をさらに改善し、ベルトが用いられ得る温度範囲を広げる。いろいろな形状を含み、適当なフィン要素が熱消失のために使用可能である。いくつかの実施形態では、フィン要素は約0.2から約10mmの高さを有する。
ステップ160では、ポリマー組織を架橋し、製品を高密度化し、性能の特性を与えるために、加硫工程が実行される。加硫工程は一般に限定されず、熱および/または圧力を付与してベルトの材料に加硫を生じさせる公知の加硫技術に類似または同一である。いくつかの実施形態では、加硫ステップのために、蒸気が特に用いられるが、非蒸気方法もまた使用可能である。ステップ110の説明において記載したように、ベルトは、加硫工程およびポリマー材料の架橋において、望ましい最終的な材料特性および寸法を有するベルトを成形することを補助する、加硫を含んでもよい。
ステップ170では、ベルト材料は、外側金型部分を除去し、ドラムシリンダから加硫ベルト材料を外すことにより、金型から取り外される。結果物製品は複合ベルト構成の長い円筒である。この円筒から個々のベルトを成形するため、円筒は円筒の軸を横切る方向に切断され、ベルト材料の薄いリングを形成し、各リングはベルトの最終製品の望ましい幅を有する。
最後に、ステップ180では、必要であれば、個々のベルトのセグメントを有する最終寸法にするために要求される切削と形状加工が行われる。切削および/または形状加工のいかなる方法も使用可能である。いくつかの実施形態では、例えば、ベルトの厚さを調節、および/またはベルトに成形される歯またはリブの寸法を正確にするために、切削および/または形状加工が実行される。しかし、ここに記載される高効率ベルトを製造する方法に基づいて、機械加工および/または必要とされる切削の量が、既知の製造方法と比較して、著しく減少または除去されることは特に注意すべき事実である。
図3Aおよび3Bを参照すると、既知のベルト300(図3A)と方法100に従って製造されたベルト350(図3B)の断面図が示される。図3Aおよび3Bに示されるように、既知のベルトは約4.3mmのようなより大きい全体厚さを有するのに対し、ここに記載されるベルト350は例えば約3.2から3.5mmの範囲の厚さを有する。本発明技術のベルト350は、背面層360、コード370、リブ材料380(上述した多重層のシート材料から形成される)、および表面層390を概略的に有する。図3Bに示されるように、ベルト350はリブ355を含むが、ベルト350が歯、リブ、または同様な面の変形を含んでもよく、含まなくてもよいことに注意すべきである。厚さの減少は、部分的に、より薄い背面層から、また部分的に、より浅いリブから得られてもよい。厚さの減少のほとんどは、より浅いリブからである。
ここに記載されるベルトの厚さは、ベルトの具体的なアプリケーションに基づいて変わってもよい。いくつかの実施形態では、ベルトの厚さは約2.6mmと約4.2mmの間で変わる。いくつかの実施形態では、ベルトの厚さは、約3.2mmから約3.5mmのように、約3.0mmから約3.8mmの範囲内である。
既に記載された方法100と図3Bに示されたベルト構成は、背面層/コード/リブ材料層/表面層の構造を有するベルトを概略的に記載し、示しているが、ここに記載されるリブ材料を組み込んだ代替的なベルト構成も使用可能であることを理解すべきである。例えば、ベルト構成はコードと背面材料(背面材料が織物から製造されるときを含む)の間にゴム材料(例えば、リブ材量とは異なるゴム合成物)を含むことができ、ベルト構成は背面材料としてクロス・コード材料を含むことができ、および/またはベルト材料は、コードの周りに、リブ材料とは異なる、接着層のような付加的な層を含みうる。
図4Aおよび4Bを参照すると、ここに記載され、かつ、ここに記載される方法および材料によって製造されたベルトは、温度およびベルト厚さのようなパラメータに基づいて変化する曲げ剛性を有する。特に図4Aを参照すると、4.2mm厚さのベルトにおける曲げ剛性と温度の測定関係を示すグラフは、温度が上昇すると、ベルトの曲げ剛性がどのように減少するかを示している。図4Bを参照すると、曲げ剛性とベルト厚さの間の関係を示すグラフは、ベルト厚さが増加すると、曲げ剛性がどのように増加するかを示している。これは、対応する減少した曲げ剛性がベルトを回動しやすくするので、より薄いベルトが望ましいことを示唆している。しかし、より詳細に後述するように、減少した厚さはまた、トルクを伝達するためのベルト性能の評価基準である、ベルトの摩擦係数(COF)を低下させる。したがってCOFの低下は、ベルトがトルクを伝達する能力を低下させ、これによりベルトがプーリを回転させるために付加的な動力が必要となるので、一般に望ましくない。既に述べたように、ベルト厚さの減少はまた、ベルトの耐久性を低下させる。したがって、ベルト厚さを単に減少させることは、一般的に、高効率ベルトを提供する問題を解決しない。
図5Aおよび5Bは、ここに記載されたベルトが同様な厚さを有する既知のベルトと比較して同等な曲げ剛性を有すること、および既知のベルトと比較して減少した厚さを有する、ここに記載されたベルトが、改善された曲げ剛性を有することをさらに示している。図5Aは種々の既知のベルトに対する曲げ剛性の測定値を示し、各ベルトは約4.2mmから約5.0mmの範囲の厚さを有する。図示されるように、これらの既知のベルトの曲げ剛性は約50N/mmから約80N/mmの範囲である。この範囲の上端にある曲げ剛性を有する既知のベルトにおいて、ベルトを回動させるためには、より高い動力が必要であり、これは、これらのベルトのエネルギ効果を減少させる。既知のベルトはより薄い厚さを使用しなかった。これは、薄いベルトが減少した曲げ剛性を、したがって改善された動力伝達効率を有するが、これらのベルトの減少した厚さがベルトの使用寿命を許容できないレベルまで悪化させ、ベルトのトルク伝達性能に否定的な影響を与えたからである。
図5Bは、ここに記載された実施形態によって製造され構成された種々のベルトの曲げ剛性の測定値を示す。試験されたベルトは3つの異なる厚さ:4.2mm(既知のベルトと同様)、3.4mm、および2.6mmを有する。図示されるように、4.2mmベルトの曲げ剛性の範囲はほぼ、約55から65N/mmの範囲であり、したがって同様な厚さを有する既知のベルトの性能に対して同等である。3.4mm厚さでは、曲げ剛性の範囲は約35N/mmから約50N/mmの範囲であった。2.6mm厚さでは、曲げ剛性の範囲は約30N/mmから35N/mmの範囲であった。したがって、これらの薄いベルトは、改善された動力伝達効率の視点から、優れた曲げ剛性の測定値を有する。
図6は、各ベルトの有効摩擦係数(COF)に対してプロットされた既知のベルトの曲げ剛性を示している。図6に示される全ての既知のベルトは4.2mmの範囲の厚さを有し、したがって、例えば材料選択および量の調節により、減少した曲げ剛性を達成する。既知のベルトのデータ(菱形のプロット点により示される)は、COFが減少した曲げ剛性によってどのように低下するかを示し、減少した曲げ剛性に関連して否定的な因果関係が伝統的にどのくらいあるかを示している(すなわち減少した曲げ剛性はベルトを回動させやすくするが、低下したCOFはベルトがプーリに対するトルク伝達において低効率となることを意味する)。既知のベルトのデータ点はまた、摩擦係数が約0.02N/mm×曲げ剛性以下である摩擦係数と曲げ剛性の間の関係に、どのように従うかも示している。
一方、ここに記載されるベルトに対して図6のグラフに示されるデータは、比較的高いCOF値が減少した曲げ剛性でさえ、どのくらい達成されるかを示している。換言すれば、ここに記載されるベルトは概略的に、減少した曲げ厚さと望ましくない減少したCOFの結果である問題を解決する。いくつかの実施形態では、ここに記載されるベルトは、0.04N/mm×曲げ剛性以上であるCOFのような、0.03N/mm×ベルトの曲げ剛性以上であるCOFを有する。図6は、0.03N/mm×曲げ剛性以上であるCOF値の傾向線601と、0.03N/mm×曲げ剛性以下であるCOF値の傾向線602を含む。いくつかの実施形態では、COF値は0.03N/mm×曲げ剛性よりも大きく、0.06N/mm×曲げ剛性よりも小さいか、0.05N/mm×曲げ剛性よりも小さい。COFと曲げ剛性の関係は、ここに記載されるベルトは、高効率ベルトを提供するために高COF(同様な曲げ剛性において既知のベルトと比較して)を維持しつつ、減少した曲げ剛性をどのくらい発揮するかを示す。この関係を守る、ここに記載される高効率ベルトは、従来技術のベルトにおいて経験されるような、高い曲げ剛性または減少したCOFに対処するための付加的な動力の必要性を回避する。
図7は、ここに記載されるベルトの改善された性能を既知のベルトと比較してさらに示す図表である。図表は、種々の直径において経験される動力損失に関して、ここに記載される高効率ベルトに対して、同じ厚さの既知のベルトを比較する。図7に示されるように、両ベルトにおいてプーリ直径が減少するのに従って動力損失は増加するが、動力損失は、各プーリ直径において、高効率ベルトでは既知のベルトよりも著しく小さい。
種々の利点が、ここに記載される高効率ベルトと製造方法により達成される。例えば、ここに記載される高効率ベルトは、既知のベルトよりも小さい厚さで(約4.2mmの厚さを有する既知のベルトと比較して、例えば3.0mmから3.8mm)、性能における低下を被ることなく(例えばトルク伝達を低減させることなく)、提供される。ベルト厚さを減少させることにより、ベルトでは少ない材料が用いられ、これはベルトが小さい慣性を有することを意味する。いくつかの実施形態では、ここに記載されるベルトは、既知のベルトと同等あるいはより良い性能を有しつつ、既知のベルトよりも5から40%小さい質量を有する。材料および質量における減少は、回動するためのエネルギを減少させる観点において、より効率的であるベルトに寄与する。意義深いことに、減少した厚さのベルトは、同等あるいはより良いエネルギ効率を発揮しつつ、既知のより厚いベルトと同等な耐久性を有する。減少した厚さのベルトはまた、廃棄物が少なく、これはごみ廃棄場における材料を少なくすることを意味する。同様に、ベルトの減少した質量のため、ここに記載されるベルトに関連して廃棄物処理費用が減少する。
本出願のベルトはまた、ベルトの改善された効率にさらに寄与する、改善された曲げ剛性(例えばより薄いベルトにより)を示す。既に述べたように、この減少した曲げ剛性の特徴は高い摩擦係数を維持しつつ達成され、これはベルトが曲がり、かつ回動しやすく、良好なトルク伝達特性を与えることを意味する。この組み合わせは、使用時に少ない動力を必要とする高効率ベルトを提供する。
ここに記載されるベルトの他の特徴は、改善されたコードの同心性である。コードの同心性は一般に、各コードである中心からずれることを指す。いくつかの既知のベルトでは、コードの同心性は0.30mmか、これよりも大きく、これはベルト内の各コードが中心線から(したがって近接するコード)0.30mmくらいだけずれることを意味する。今記載されているベルトにおいて、コードの同心性は概略的に0.1mmから0.2mmに制限され、これによりベルト内においてよりよく整列されたコードを得る。
ここに記載されるベルトはまた、改良された作動温度の範囲を有する。いくつかの実施形態では、ベルトは40℃から130℃の温度範囲で使用可能であるかもしれない。材料は周辺環境より高い公知の温度で劣化し始めるが、ヒステリシスのある熱発生の減少は、外気温が上昇することを許容する、より小さい温度差でベルトを作動させることを許容する。さらに、ここに記載される薄いベルトは、より小さいヒステリシスのある熱発生を示し、より低温で走行する。薄いベルトはまた、冷却しやすく、これはさらに、ベルトのエネルギ効率を高めることに寄与する。薄い断面はまた、ベルトの端部において良好な歪を有するベルトを提供し、そして良好なエネルギ効率となるさらに他の特性を提供する。
高められたエネルギ効率に寄与するベルトの他の特性は、少ない曲げ疲労、低いヒステリシスの構築、同等の性能のための少ない補強を含む。
ここに記載されるベルトによって改良されたエネルギ効率は、システムの設計とアプリケーションの改良をもたらす。薄い設計と低い曲げ剛性は、より小さい直径のプーリを実現する、改善された自由度をもたらす。小さいプーリ直径は、収容の要求を改善し、システムの質量と慣性の負荷を低減させる。薄い構成はより高い回転数において動作可能である。対応する重量と収容の減少のため、コスト削減が実現される。
薄い断面を用いた、ここに記載されるベルトの設計は、耐久性の著しい影響なしにエネルギ効率において上述した改善を提供する。いくつかの実施形態では、既に説明されたベルトの改善された冷却は耐久性のあるベルトを維持することに役立つ。ベルトはまた、より短い歯高さを用いることができ、これはより低い歪エネルギ密度、したがってより小さいクラック発生につながる。ここに記載されるベルトはまた、始動・停止アプリケーションにおいて、より長い寿命を示す。
ここに記載されるベルトの構成はまた、限定されないが、アラミド、ガラス、カーボンファイバ・コード、ハイブリッド・コード、金属、セラミック、合成樹脂等の代替的な強化材料を用いる性能等の利益を提供する。
ここに記載されるベルトの構成に関連する他の利点は、ベルトの薄い輪郭形状に基づいて、薄い張力層の使用、低い歪率を有する材料の実現、コードの減少したミスアライメントを含む。
曲げ剛性と摩擦係数
本明細書および特許請求の範囲にあるようにベルトの曲げ剛性は、ベルトの一部に対する動的三点曲げ試験において測定されてもよい。ここでは、全ての報告された剛性の結果は、0.25mmの撓みの一定撓みモードで、室温、1Hz周波数、5Nの予負荷での動的機械式テスターによる6リブベルトの試験に基づいている。曲げ剛性の結果は動的剛性K*であり、ここではN/mmと表示される。試験片はベルトから切り取られてもよい。試験は3インチ(75mm)長さのベルト試験片を用い、曲げ剛性試験の2つの支持点は2インチ(50mm)離れていた。
本明細書および特許請求の範囲にあるように有効摩擦係数COFは、SAE J2432、MAR2015、「PK断面Vリブドベルトの性能試験」第10章に記載された、標準的な試験手順に従って測定されてもよい。図8はCOF試験のレイアウトを示す。図8を参照すると、被駆動試験プーリ122と駆動プーリ121は共に、マルチVリブ形状で121.6mmの直径を有する。プーリ123、124、126はアイドラである。プーリは被駆動プーリ122への巻付け角度が20°を維持するように配置される。被駆動プーリ121は400rpmで回動される。360Nの荷重Wがプーリ125にかけられ、プーリ125において180Nの緩み側のベルト張力となる。トルクが試験プーリ122にかけられ、0トルクからプーリが回動を停止するまで上昇する。COFは観察される最大トルクから計算される。なお、試験はベルトにおける有効摩擦係数を測定し、これは理論的摩擦係数に数値的に合致しない。
実施例
ここに記載される技術の種々の実施形態が次の非限定的な実施例において説明される。
実施例1.下記の構成要件を備えるリブ付き高効率ベルト。
背面層
背面層に配置されたリブ材料層
リブ材料層内に埋設された複数のコード
背面層とは反対側のベルト表面に成形された複数のリブ
高効率ベルトの摩擦係数は、0.03N/mm×高効率ベルトの曲げ剛性以上である。
高効率ベルトの厚さは約3.8mmよりも小さい。
実施例2.実施例1の高効率ベルトにおいて、高効率ベルトの摩擦係数が0.04N/mm×高効率ベルトの曲げ剛性以上である。
実施例3.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、高効率ベルトの厚さが約3.0mmから約3.8mmである。
実施例4.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、高効率ベルトの摩擦係数が0.03N/mm×高効率ベルトの曲げ剛性以上で、0.05N/mm×高効率ベルトの曲げ剛性以下である。
実施例5.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、高効率ベルトの厚さが約3.4mmであり、曲げ剛性が約35N/mmから約50N/mmの範囲である。
実施例6.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、リブ材料層の材料が下記の構成要件を備える。
約30重量%から約70重量%のラバーストック
約5重量%から約30重量%の強化材料
約5重量%から約45重量%の充填剤
実施例7.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、ラバーストックが、天然ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム(SBR)、クロロプレン・ゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー・ゴム(EPDM)または他のエチレン・エラストマ・コポリマー、水添加ニトリル・ブタジエン・ゴム(HNBR)、フッ素エラストマ、およびこれらの組み合わせから成るグループから選択される。
実施例8.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、強化材料が長尺セグメントを備え、長尺セグメントがリブ材料内において相互に平行に整列される。
実施例9.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、長尺セグメントがチョップドファイバ・セグメントである。
実施例10.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、平行に整列された強化材料が高効率ベルトの回転方向を横切って整列される。
実施例11.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、充填剤がカーボンブラック、粘土、パルプ、シリカおよびこれらの組み合わせから成るグループから選択される。
実施例12.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、高効率ベルトが異方性の弾性係数を有する。
実施例13.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、強化材料が整列される方向における弾性係数が、強化材料が整列される方向を横切る方向における弾性係数よりも大きい。
実施例14.前述の実施例の高効率ベルトにおいて、強化材料が整列される方向を横切る方向における弾性係数に対する、強化材料が整列される方向における弾性係数の比が、1.1から5.0の範囲内である。
実施例15.下記の構成要件を備える、高効率ベルトのリブ層材料を製造する方法。
ラバーストックと強化材料と充填剤と加硫剤とを混合して混合物を形成し、強化材料が長尺セグメントを備える。
混合物からシートを成形する。
シートを処理して強化材料の長尺セグメントに平行に整列させ、異方性シートを成形する。
2以上の異方性シートを一緒にバナー処理する。
実施例16.実施例15の方法において、混合物が下記の構成要件を備える。
約30重量%から約70重量%のラバーストック
約5重量%から約30重量%の強化材料
約5重量%から約45重量%の充填剤
実施例17.実施例15または16の方法において、強化材料の長尺セグメントがチョップドファイバを備え、強化材料の長尺セグメントを平行に整列させ、かつ異方性シートを形成するためにシートを処理することが、シートをカレンダ処理することを備える。
実施例18.実施例15~17の方法において、2以上の異方性シートを一緒にバナー処理することが、強化材料の長尺セグメントが相互に平行に、かつ異方性シートが並べて配列された方向に垂直な方向に整列されるように、2つの異方性シートを並べて配列することと、2つの異方性シートを一緒に固定することとを備える。
実施例19.実施例15~18の方法において、リブ層材料が高効率ベルト内に組込まれる。
上述のことから、本発明の特定の実施形態が説明の目的のために記載されており、種々の修正が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることが理解されるべきである。したがって本発明は添付された特許請求の範囲によることを除いて、限定されない。
本技術は、いくつかの構造および材料に特有である用語により記載されたが、添付された特許請求の範囲において定義された本発明は、記載された特定の構造および材料に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。むしろ、明確な特徴は、請求された発明を実施する形態として記載されている。本発明の多くの実施形態が本発明の精神および範囲から離れることなく実施可能であるので、本発明はこの後に添付された特許請求の範囲内に存在する。
示されない限り、本明細書(特許請求の範囲以外)において使用される、寸法、物理的性質を表示する等の全ての数または表現は、「約」という用語により全ての例において修正されると理解されるべきである。少なくとも、また特許請求の範囲に対して均等論の適用を制限することを意図するものではないとして、本明細書または特許請求の範囲において列挙された各数値パラメータは、用語「約」により修正され、記載された有効数字の数値の観点から、また丸めの技術を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。さらに、ここに開示された全ての範囲は、全ての部分的な範囲またはここに組み込まれた全ての個々の数値を述べた特許請求の範囲を包含し、支持を与えると理解されるべきである。例えば、1から10と記載された範囲は、最小値1と最大値10の間および/またはこれらを含む、すなわち最小値1またはより大きい値から始まり、最大値10またはより小さい値で終わる(例えば、5.5から10、2.34から3.56等)、または1から10まで(例えば3、5.8、9.9994等)の、全ての部分的な範囲または個々の値を述べた特許請求の範囲を含み、かつサポートを与えると考えられるべきである。