JP7460994B1 - 杭状地盤補強工法及び杭状地盤補強構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な細径鋼管を利用して短工期で施工し得る経済性を活かしながら、基礎底面下の地盤支持力が低下した場合でも杭による支持力だけで十分な支持性能を得ることができる杭状地盤補強工法・杭状地盤補強構造を提供する。【解決手段】心杭1となる鋼管を、地盤を掘削及び撹拌することなく所定深さまで圧入する。その心杭1の内部に小径の中空管からなる注入管を挿入し、注入管内に圧送した固化材を地中に吐出して、心杭の下端部の周囲に固化材を含浸させた根固め部5を形成する。固化材が固化するまでの間に、添え杭6となる鋼管を心杭に近接させて圧入し、その下端部を根固め部5内に定着させる。添え杭6を心杭1の周囲に複数本、埋設し、心杭1と複数本の添え杭6の下端部同士が根固め部5を回して一体的に結合された合成杭ユニット8を形成し、その上に建物の基礎9を設ける。【選択図】図5
Description
本願は、細径鋼管等の直管を埋設して地盤支持力を増大させる杭状地盤補強工法及び杭状地盤補強構造に関する。
建物等の建築工事に際して十分な地盤支持力が得られない場合、それを補強するための手段として、様々な種類の杭基礎工法や地盤改良工法が採用される。それらのうち、特に戸建住宅をはじめとする比較的小規模の建物や、太陽光発電設備その他の簡易な屋外工作物等に適用可能な地盤改良工法として、「単管」又は「単管パイプ」と称される汎用の細径鋼管を地中に圧入(貫入)して支持杭となす工法が公知である(例えば特許文献1)。このような地盤改良工法は、建物の荷重を杭のみで支持するのではなく、直接基礎(ベタ基礎)の底面下の地盤支持力と杭による支持力とを累加して建物を支持する「パイルド・ラフト工法」という概念に基づいて施工されている。
非特許文献1、2等に開示されている「RES-P(レスピー)工法)」や、非特許文献3に開示されている「スーパーナロー工法」も、前述の地盤改良工法に類似する工法と解される。
これらの地盤改良工法は、地盤を大規模に掘削したり撹拌したりしないので、低コスト、低騒音、短工期で施工でき、残土が生じない、といった利点を有する。また、小型の重機で施工できることから、特に狭小地での工事にも適している。
株式会社サムシング、"RES-P工法"、[online]インターネット、令和5年7月5日検索<URL:https://www.s-thing.co.jp/jiban_kairyo/kairyo_koho/res_p/>
設計室ソイル、"RES-P工法"、[online]インターネット、令和5年7月5日検索<URL:https://www.soil-design.co.jp/resp.html>
株式会社グランテック、"スーパーナロー工法"、[online]インターネット、令和5年7月5日検索<URL:https://www.grountec.net/business/screw_press/02_super_narrow/>
前述したパイルド・ラフト工法では、地盤の液状化等によって直接基礎の底面下の地盤支持力が低下すると、杭による支持力だけでは当初の設計通りの支持性能を確保できなくなるおそれがある。しかし、杭だけで十分な支持性能を確保しようとしても、その杭に単管のような細径鋼管を採用する工法では、一本一本の杭と地盤との間に大きな摩擦力を得るのが難しいので、一定の面積内に多数本の杭を打ち込む必要があり、不経済になってしまう。
本願が開示する発明は、このような従来技術に代わる工法として着想されたものであり、安価な細径鋼管等を利用して短工期で施工し得る経済性を活かしながら、杭による支持力だけで十分な支持性能を得ることができる杭状地盤補強工法と、該工法による杭状地盤補強構造を提案するものである。
前述の目的を達成するために本願が採用した杭状地盤補強工法の発明は、下記の[工程1]~[工程5]を含むものとして特徴付けられる。
[工程1]下端部を保護キャップで塞いだ直管を、地盤を掘削及び撹拌することなく所定深さまで圧入して一本の心杭となす。
[工程2]前記心杭の内部に前記心杭よりも小径の中空管からなる注入管を挿入し、前記注入管の下端部で前記保護キャップを破砕又は除去して前記注入管の下端部を前記心杭の下端部から突出させ、前記注入管内に圧送した固化材を前記注入管の下端部から地中に吐出することにより、該下端部の周囲に前記固化材を含浸させた根固め部を形成した後、前記注入管を前記心杭から抜き取る。
[工程3]前記固化材が固化するまでの間に、前記心杭とは別体の直管を前記心杭と平行に圧入し、その下端部を前記根固め部内に定着させて、前記心杭に従属する添え杭となす。
[工程4]前記心杭の周囲に前記添え杭を一本乃至複数本、埋設することにより、前記心杭と前記添え杭の下端部同士が前記根固め部を回して一体的に結合された合成杭ユニットを形成する。
[工程5]少なくとも一組の前記合成杭ユニットの上に建物の基礎を設けて建物荷重を支持する。
[工程1]下端部を保護キャップで塞いだ直管を、地盤を掘削及び撹拌することなく所定深さまで圧入して一本の心杭となす。
[工程2]前記心杭の内部に前記心杭よりも小径の中空管からなる注入管を挿入し、前記注入管の下端部で前記保護キャップを破砕又は除去して前記注入管の下端部を前記心杭の下端部から突出させ、前記注入管内に圧送した固化材を前記注入管の下端部から地中に吐出することにより、該下端部の周囲に前記固化材を含浸させた根固め部を形成した後、前記注入管を前記心杭から抜き取る。
[工程3]前記固化材が固化するまでの間に、前記心杭とは別体の直管を前記心杭と平行に圧入し、その下端部を前記根固め部内に定着させて、前記心杭に従属する添え杭となす。
[工程4]前記心杭の周囲に前記添え杭を一本乃至複数本、埋設することにより、前記心杭と前記添え杭の下端部同士が前記根固め部を回して一体的に結合された合成杭ユニットを形成する。
[工程5]少なくとも一組の前記合成杭ユニットの上に建物の基礎を設けて建物荷重を支持する。
さらに、前記[工程2]において、前記注入管を通じて前記固化材を地中に吐出する際、前記注入管を昇降させて前記注入管の下端部を上下動させながら前記固化材を吐出する、ものとして特徴付けられる。
また、前記[工程1]及び[工程3]~[工程4]において、前記心杭及び/又は前記添え杭の圧入時に押圧反力の変化を測定することにより、前記心杭及び/又は前記添え杭に作用する地盤の抵抗力を把握して、前記心杭及び/又は前記添え杭の埋設深さの適否を判定する、ものとして特徴付けられる。
また、本願が採用した杭状地盤補強構造の発明は、地盤内の所定深さまで埋設された直管からなる一本の心杭と、前記心杭の下端部の周囲に固化材を含浸させることによって形成された根固め部と、前記心杭に近接して前記根固め部内に下端部を定着させるように埋設された、前記心杭とは別体の直管からなる一本乃至複数本の添え杭と、の結合によって構成される少なくとも一組の合成杭ユニットを具備し、前記合成杭ユニットの上に建物の基礎が設けられて、前記建物の荷重が前記合成杭ユニットによって支持される、ものとして特徴付けられる。
そして、この杭状地盤補強構造においては、前記心杭を構成する直管、及び/又は前記添え杭を構成する直管を、それぞれ単管とすることができる。
また、この杭状地盤補強構造においては、前記複数本の添え杭が、平面視において前記心杭を図心とする正多角形状又は環状に配置されていると、より好ましい。
また、前記添え杭の下端部が、前記心杭の下端部よりも深い位置まで埋設されていると、前記根固め部を介して前記添え杭が前記心杭と一体化されるので、より好ましい。
前述のように構成される杭状地盤補強工法は、心杭及び添え杭となる複数本の直管を、地盤を掘削及び撹拌することなく地中に圧入する工程と、心杭の内部に挿入した注入管から地中に固化材を注入する工程とを組み合わせて構成されるものであり、大掛かりな重機は必要とせず、掘削残土の保管や埋戻しも生じないので、短期間で効率的に施工することができる。また、心杭及び添え杭には単管等の細径鋼管を好適に使用することができるので経済的であり、狭小敷地でも小型の重機で施工可能である。
そして、この杭状地盤補強工法によって構築される杭状地盤補強構造では、心杭と、それを囲む複数本の添え杭とが根固め部を介して一体化された合成杭ユニットが形成され、その合成杭ユニットが太径の杭に匹敵する支持力を発揮する。したがって、基礎底面下の地盤支持力に依存せずとも、合成杭ユニットだけで十分な支持性能を保持することができる。
図1~図5は本願が開示する発明の一実施形態としての杭状地盤補強工法の工程を示す説明図である。以下、この杭状地盤補強工法と、これによって得られる杭状地盤補強構造について、工程順に説明する。
この杭状地盤補強工法及び杭状地盤補強構造では、杭材として中空円形断面の細径鋼管を用いる。建築・土木工事の足場、支柱、基礎杭等に用いられる鋼管の仕様は日本工業規格(JIS)G3444:2015「一般構造用炭素鋼鋼管」に規定されているが、本願が開示する発明での「細径」とは外径100mm未満(実質的に89.1mm以下)を目安とし、より好ましい外径の範囲として42.7mm~76.3mmの範囲を設定する。なかでも「単管」と称される外径48.6mm、肉厚1.8mm~3.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼管が、材料強度、経済性、取り扱い易さ等の面で特に実用的である。以下に説明する実施形態も、この単管を用いることを想定したものである。ただし、本願が開示する発明では、前述のような鋼管に替えて、他の金属管、又は繊維強化プラスチック(FRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等からなる高剛性の樹脂管を使用することも可能である。本明細書及び特許請求の範囲では、それらを包括して「直管」と呼ぶ。
[工程1](心杭の埋設工程)
まず図1に示すように、建物の基礎を設置する施工面G上に重機Wを据え付けて、「心杭1」となる鋼管を地中に埋設する。単管程度の外径であれば、小型の杭打機やボーリング試験機等を用いて無理なく施工することができる。ただし、本願が開示する発明では重機Wのタイプを特に限定はしない。この心杭1は、地盤に対する周面摩擦力を保持するため、心杭1の外径以上に地盤を掘削したり撹拌したりはせず、基本的に無回転で(地盤が硬い場合には多少の回転を加えて)鉛直方向に圧入する。その際、心杭1の内部に土が入るのを防ぐため、心杭1の下端部に尖先状の保護キャップ2を挿し込んで仮止めしておく。
まず図1に示すように、建物の基礎を設置する施工面G上に重機Wを据え付けて、「心杭1」となる鋼管を地中に埋設する。単管程度の外径であれば、小型の杭打機やボーリング試験機等を用いて無理なく施工することができる。ただし、本願が開示する発明では重機Wのタイプを特に限定はしない。この心杭1は、地盤に対する周面摩擦力を保持するため、心杭1の外径以上に地盤を掘削したり撹拌したりはせず、基本的に無回転で(地盤が硬い場合には多少の回転を加えて)鉛直方向に圧入する。その際、心杭1の内部に土が入るのを防ぐため、心杭1の下端部に尖先状の保護キャップ2を挿し込んで仮止めしておく。
心杭1を埋設する深さは地盤の状態によって決定されるが、用意する鋼管の長さがその深さに届かなければ、ジョイント部材(図示せず)等を用いて適宜、鋼管を継ぎ足しながら所定の深さまで埋設する。心杭1を埋設する際には、埋設深さだけでなく、重機Wに備えられた計測装置(図示せず)等によって押圧反力、回転トルク、埋入速度等の数値変化を測定することで、心杭1に作用する地盤の抵抗力(深さに応じた地盤の強度分布)を把握し、心杭1がどの程度の支持力を発揮する状態にあるか、心杭1の埋設深さが十分か、等を判定するのが好ましい。
心杭1の下端部が所定の深さまで達したら、心杭1の上端部を施工面上に数cmないし数十cm突出させた状態で、重機Wを心杭1から離脱させる。なお、前述の非特許文献3に開示されたような、鋼管の上端開口を塞がずに鋼管の中間部を保持できる重機を使用する場合は、その重機を心杭1の上に据え付けたままで次の[工程2]を実施してもよい。
[工程2](根固め部の形成工程)
図2に示すように、埋設した心杭1の内部に地上から、心杭1の内径よりも小径で、心杭1の全長よりも長い中空管からなる注入管3を挿入し、注入管3の下端部で心杭1に仮止めされた保護キャップ2を下向きに突き破るか押し出すかして破砕又は除去し、注入管3の下端部を心杭1の下端部よりも突出させる。注入管3の上端部には、ミキサー、タンク、ポンプ、動力源等からなる固化材の供給装置4を接続し、その供給装置4から注入管3内にセメントミルク等の固化材を圧送する。注入管3の下端部には、固化材を側方及び下方に吐出し得る適宜形状の吐出口31が形成されている。その吐出口31から地盤中に固化材を高圧で吐出することにより、注入管3の下端部の周囲に固化材を含浸させた球根状の根固め部5を形成する。なお、固化材については、セメントミルク以外にも、土壌に適した様々な公知の液体状固化材を選択することができる。
図2に示すように、埋設した心杭1の内部に地上から、心杭1の内径よりも小径で、心杭1の全長よりも長い中空管からなる注入管3を挿入し、注入管3の下端部で心杭1に仮止めされた保護キャップ2を下向きに突き破るか押し出すかして破砕又は除去し、注入管3の下端部を心杭1の下端部よりも突出させる。注入管3の上端部には、ミキサー、タンク、ポンプ、動力源等からなる固化材の供給装置4を接続し、その供給装置4から注入管3内にセメントミルク等の固化材を圧送する。注入管3の下端部には、固化材を側方及び下方に吐出し得る適宜形状の吐出口31が形成されている。その吐出口31から地盤中に固化材を高圧で吐出することにより、注入管3の下端部の周囲に固化材を含浸させた球根状の根固め部5を形成する。なお、固化材については、セメントミルク以外にも、土壌に適した様々な公知の液体状固化材を選択することができる。
吐出口31の位置が不動で、地盤の土壌が均質であれば、根固め部5は下向きに膨らむ略半球状に形成されると考えられる。固化材を吐出する際に可能であれば、注入管3を昇降させて、吐出口31の高さを上下動させることにより、根固め部5を高さ方向にも拡大して略球状ないし略円筒状に形成することができる。固化材を吐出する圧力の反作用を利用して注入管3を上昇させてもよい。また、このとき、注入管3の昇降に合わせて、あるいは注入管3の昇降と反対に心杭1を昇降させて、根固め部5の高さを稼いでもよい。
そして、後述する好ましい大きさの根固め部5が形成されたならば、注入管3を心杭1から抜き取る。注入管3の抜き取り後、心杭1の下端部の内側に固化材が残留するのは問題ない。こうして心杭1の下端部の周囲に形成された根固め部5は、心杭1と一体になって心杭1の支持力を大きく増大させる。
[工程3](添え杭の埋設工程)
続いて図3に示すように、心杭1の近傍に再度、重機Wを据え付け、地盤内に含浸させた固化材が固化するまでの間に、心杭1とは別体の鋼管を、心杭1と平行に、心杭1に近接させて圧入する。この鋼管が、心杭1に従属する「添え杭6」となる。「心杭1に従属する」とは、先行して埋設された心杭1に対応付けられて、その心杭1と協働する、という意味である。この添え杭6にも心杭1と同じ単管を好適に使用することができるが、異なる径の鋼管や、他の材質の直管も使用可能である。心杭1及び添え杭6に単管を使用する場合、「心杭に1近接させて」の目安となる間隔は、概ね0cm(心杭1と添え杭6とが互いに接触)~50cm程度である。
続いて図3に示すように、心杭1の近傍に再度、重機Wを据え付け、地盤内に含浸させた固化材が固化するまでの間に、心杭1とは別体の鋼管を、心杭1と平行に、心杭1に近接させて圧入する。この鋼管が、心杭1に従属する「添え杭6」となる。「心杭1に従属する」とは、先行して埋設された心杭1に対応付けられて、その心杭1と協働する、という意味である。この添え杭6にも心杭1と同じ単管を好適に使用することができるが、異なる径の鋼管や、他の材質の直管も使用可能である。心杭1及び添え杭6に単管を使用する場合、「心杭に1近接させて」の目安となる間隔は、概ね0cm(心杭1と添え杭6とが互いに接触)~50cm程度である。
添え杭6は、その下端部が根固め部5内に定着する深さまで埋設する。添え杭6の下端部が心杭1の下端部よりも深くなる位置まで埋設することで、根固め部5内への定着を確実にすることができる。添え杭6の下端部が根固め部5を通過して根固め部5の下方に突出しても差し支えない。なお、添え杭6の下端部には保護キャップを取り付けてもよいし、取り付けなくてもよい。
添え杭6は、一本の心杭1を取り巻くように、心杭1の周囲に少なくとも一本、好ましくは複数本、埋設する。添え杭6の本数は、地盤の状態や支持する荷重の大きさ等に応じて設定される。添え杭6を複数本にすれば、心杭1を中心として支持力のバランスを取りやすくなる。添え杭6が二本の場合は心杭1を挟んだ対称位置に、三本以上の場合は平面視において心杭1を図心とする正多角形状又は環状になるように配置する。実用的には、心杭1の周囲に四本の添え杭6を正方形状に配置するか、六本の添え杭6を正六角形状に配置するのがバランス的に好ましい。複数本の心杭1について、それぞれに従属する添え杭6の本数が個々に異なっていてもよい。なお、複数本の添え杭6によって囲まれる範囲(外径)に対し、根固め部5の最大径が予め2倍程度以上になるように形成されていると、全ての添え杭6の根固め部5に対する定着性が向上するので、より好ましい。
なお、添え杭6を埋設する際にも、重機Wに備えられた計測装置等によって押圧反力、回転トルク、埋入速度等を測定し、さらにその測定値を心杭1の埋設時の測定値とも対比して、埋設途中の添え杭6に作用する押圧反力や回転トルクの変化を把握しながら、添え杭6の下端部が根固め部5に届いたかどうか、どの程度の支持力を発揮する状態にあるか、等を判定するのが好ましい。添え杭6の下端部が根固め部5に届いたあたりで添え杭6を少し引き抜き、その際の反力(抵抗力)と変位量とを確認してもよい。この杭状地盤補強工法による支持力は、心杭1と添え杭6とが根固め部5を介して確実に一体化されるかどうかに左右されるので、かかる測定・判定手順を踏むことで施工品質を好適に担保することができる。
[工程4](心杭と添え杭との一体化工程)
ここまでの工程により、一本の心杭1と一本乃至複数本の添え杭6とが根固め部5を回して一体化された一組の「合成杭ユニット8」が形成される。心杭1及び添え杭6は、それぞれ地盤との間に周面摩擦力を発揮するので、添え杭6の本数分だけ支持力が増大する。根固め部5が固化して、心杭1と各添え杭6の下端部同士が結合されると、心杭1とそれを取り巻く添え杭6とが地盤の変形に対して相持ち状に応動し、太径の鋼管杭やコンクリート杭に匹敵する支持力を発揮することとなる。
ここまでの工程により、一本の心杭1と一本乃至複数本の添え杭6とが根固め部5を回して一体化された一組の「合成杭ユニット8」が形成される。心杭1及び添え杭6は、それぞれ地盤との間に周面摩擦力を発揮するので、添え杭6の本数分だけ支持力が増大する。根固め部5が固化して、心杭1と各添え杭6の下端部同士が結合されると、心杭1とそれを取り巻く添え杭6とが地盤の変形に対して相持ち状に応動し、太径の鋼管杭やコンクリート杭に匹敵する支持力を発揮することとなる。
さらに図4に示すように、心杭1及び添え杭6の頭部の高さを切り揃え、それらの頭部に鋼材やプレキャストコンクリート等の剛体からなる蓋状体7を被せて、心杭1及び添え杭6の頭部同士も一体的に結合すれば、合成杭ユニット8の剛性及び支持力がさらに増大する。
[工程5](建物基礎の構築工程)
建物を建築する領域内に、その建物を支持するために必要な組数の合成杭ユニット8が形成されたならば、図5に示すように、その上に建物の基礎9を設ける。その基礎9は、合成杭ユニット8に合理的に荷重を伝達し得るものであれば、特に構造や工法は問わない。こうして、基礎9に加わる建物の荷重を合成杭ユニット8によって支持する杭状地盤補強構造を得ることができる。この杭状地盤補強構造は、心杭1とそれを取り巻く一本乃至複数本の添え杭6とが、それらの下端部及び上端部において一体的に結合されるので、根固め部5が適正に形成されていれば、基礎底面下の地盤支持力に依存せずとも、杭だけで十分な支持性能を発揮し得るものとなる。合成杭ユニット8を広範囲に多数組、設ければ、規模の大きい建築物にも適用可能である。
建物を建築する領域内に、その建物を支持するために必要な組数の合成杭ユニット8が形成されたならば、図5に示すように、その上に建物の基礎9を設ける。その基礎9は、合成杭ユニット8に合理的に荷重を伝達し得るものであれば、特に構造や工法は問わない。こうして、基礎9に加わる建物の荷重を合成杭ユニット8によって支持する杭状地盤補強構造を得ることができる。この杭状地盤補強構造は、心杭1とそれを取り巻く一本乃至複数本の添え杭6とが、それらの下端部及び上端部において一体的に結合されるので、根固め部5が適正に形成されていれば、基礎底面下の地盤支持力に依存せずとも、杭だけで十分な支持性能を発揮し得るものとなる。合成杭ユニット8を広範囲に多数組、設ければ、規模の大きい建築物にも適用可能である。
なお、複数組の合成杭ユニット8を形成する手順としては、まず、その組数分だけ[工程1]を繰り返して複数本の心杭1を所定の位置に埋設した後、個々の心杭1について[工程2]~[工程4]を実施する、という手順を採るのが合理的である。また、一本の心杭1ごとに[工程1]~[工程4]を実施し、それを心杭1の本数分だけ繰り返す、という手順も採用可能である。いずれにしても各工程間の区切りは厳密なものでなく、適宜並行して、あるいは施工部位によっては多少前後して実施されても差し支えない。
この杭状地盤補強構造は、安価で取り扱いの容易な単管等の細径鋼管と、狭小敷地にも搬入可能な小型の重機とを利用して、単管を用いた従来の地盤改良工法と同様の簡便さで効率的に施工することができる。低騒音、短工期、掘削残土の保管・埋戻し不要、といった利点も従来と同様である。心杭1の下端部の周囲に固化材を吐出して根固め部5を形成する[工程2]が従来の地盤改良工法に追加されるものであるが、そのために用意すべき固化材の供給装置4も、例えばユニック車にミキサー、タンク、ポンプ、動力源等を積載するなどの形態でコンパクトに構成することができる。
以上、本願が開示する杭状地盤補強工法及び杭状地盤補強構造の実施形態について説明したが、この発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で、適宜、改変することができる。
また、本明細書に開示した実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
(付記1)
下記の[工程1]~[工程5]を含む杭状地盤補強工法。
[工程1]下端部を保護キャップで塞いだ直管を、地盤を掘削及び撹拌することなく所定深さまで圧入して一本の心杭となす。
[工程2]前記心杭の内部に前記心杭よりも小径の中空管からなる注入管を挿入し、前記注入管の下端部で前記保護キャップを破砕又は除去して前記注入管の下端部を前記心杭の下端部から突出させ、前記注入管内に圧送した固化材を前記注入管の下端部から地中に吐出することにより、該下端部の周囲に前記固化材を含浸させた根固め部を形成した後、前記注入管を前記心杭から抜き取る。
[工程3]前記固化材が固化するまでの間に、前記心杭とは別体の直管を前記心杭と平行に圧入し、その下端部を前記根固め部内に定着させて、前記心杭に従属する添え杭となす。
[工程4]前記心杭の周囲に前記添え杭を一本乃至複数本、埋設することにより、前記心杭と前記添え杭の下端部同士が前記根固め部を回して一体的に結合された合成杭ユニットを形成する。
[工程5]少なくとも一組の前記合成杭ユニットの上に建物の基礎を設けて建物荷重を支持する。
(付記2)
付記1に記載された杭状地盤補強工法における[工程2]において、
前記注入管を通じて前記固化材を地中に吐出する際、前記心杭及び前記注入管を昇降させて前記注入管の下端部を上下動させながら前記固化材を吐出する
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。
(付記2-2)
付記1又は付記2に記載された杭状地盤補強工法における[工程4]に続いて、
前記心杭及び前記複数本の添え杭の頭部の高さを揃え、それらの頭部に剛体からなる蓋状体を被せて前記心杭及び前記添え杭の頭部同士を一体的に結合した後、
前記蓋状体の上に建物の基礎を設ける
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。
(付記3)
付記1、付記2又は付記3に記載された杭状地盤補強工法における[工程1]及び[工程3]~[工程4]において、
前記心杭及び/又は前記添え杭の圧入時に押圧反力の変化を測定することにより、前記心杭及び/又は前記添え杭に作用する地盤の抵抗力を把握して、前記心杭及び/又は前記添え杭の埋設深さの適否を判定する
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。
(付記4)
地盤内の所定深さまで埋設された直管からなる一本の心杭と、
前記心杭の下端部の周囲に固化材を含浸させることによって形成された根固め部と、
前記心杭に近接して前記根固め部内に下端部を定着させるように埋設された、前記心杭とは別体の直管からなる一本乃至複数本の添え杭と、
の結合によって構成される少なくとも一組の合成杭ユニットを具備し、
前記合成杭ユニットの上に建物の基礎が設けられて、前記建物の荷重が前記合成杭ユニットによって支持される
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記5)
付記4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記心杭を構成する直管が単管である
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記6)
付記4又は付記5に記載された杭状地盤補強構造において、
前記添え杭を構成する直管が単管である
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記7)
付記4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記複数本の添え杭が、平面視において前記心杭を図心とする正多角形状又は環状に配置されている
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記8)
付記5~付記8のいずれか一項に記載された杭状地盤補強構造において、
前記複数本の添え杭の全ての下端部が、前記心杭の下端部よりも深い位置まで埋設されている
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記9)
付記4~付記8のいずれか一項に記載された杭状地盤補強構造において、
前記心杭と、それを囲む前記複数本の添え杭の頭部の高さが揃えられて、
それらの頭部同士が剛体からなる蓋状体によって一体的に結合され、
前記蓋状体の上に建物の基礎が設けられた
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
下記の[工程1]~[工程5]を含む杭状地盤補強工法。
[工程1]下端部を保護キャップで塞いだ直管を、地盤を掘削及び撹拌することなく所定深さまで圧入して一本の心杭となす。
[工程2]前記心杭の内部に前記心杭よりも小径の中空管からなる注入管を挿入し、前記注入管の下端部で前記保護キャップを破砕又は除去して前記注入管の下端部を前記心杭の下端部から突出させ、前記注入管内に圧送した固化材を前記注入管の下端部から地中に吐出することにより、該下端部の周囲に前記固化材を含浸させた根固め部を形成した後、前記注入管を前記心杭から抜き取る。
[工程3]前記固化材が固化するまでの間に、前記心杭とは別体の直管を前記心杭と平行に圧入し、その下端部を前記根固め部内に定着させて、前記心杭に従属する添え杭となす。
[工程4]前記心杭の周囲に前記添え杭を一本乃至複数本、埋設することにより、前記心杭と前記添え杭の下端部同士が前記根固め部を回して一体的に結合された合成杭ユニットを形成する。
[工程5]少なくとも一組の前記合成杭ユニットの上に建物の基礎を設けて建物荷重を支持する。
(付記2)
付記1に記載された杭状地盤補強工法における[工程2]において、
前記注入管を通じて前記固化材を地中に吐出する際、前記心杭及び前記注入管を昇降させて前記注入管の下端部を上下動させながら前記固化材を吐出する
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。
(付記2-2)
付記1又は付記2に記載された杭状地盤補強工法における[工程4]に続いて、
前記心杭及び前記複数本の添え杭の頭部の高さを揃え、それらの頭部に剛体からなる蓋状体を被せて前記心杭及び前記添え杭の頭部同士を一体的に結合した後、
前記蓋状体の上に建物の基礎を設ける
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。
(付記3)
付記1、付記2又は付記3に記載された杭状地盤補強工法における[工程1]及び[工程3]~[工程4]において、
前記心杭及び/又は前記添え杭の圧入時に押圧反力の変化を測定することにより、前記心杭及び/又は前記添え杭に作用する地盤の抵抗力を把握して、前記心杭及び/又は前記添え杭の埋設深さの適否を判定する
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。
(付記4)
地盤内の所定深さまで埋設された直管からなる一本の心杭と、
前記心杭の下端部の周囲に固化材を含浸させることによって形成された根固め部と、
前記心杭に近接して前記根固め部内に下端部を定着させるように埋設された、前記心杭とは別体の直管からなる一本乃至複数本の添え杭と、
の結合によって構成される少なくとも一組の合成杭ユニットを具備し、
前記合成杭ユニットの上に建物の基礎が設けられて、前記建物の荷重が前記合成杭ユニットによって支持される
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記5)
付記4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記心杭を構成する直管が単管である
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記6)
付記4又は付記5に記載された杭状地盤補強構造において、
前記添え杭を構成する直管が単管である
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記7)
付記4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記複数本の添え杭が、平面視において前記心杭を図心とする正多角形状又は環状に配置されている
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記8)
付記5~付記8のいずれか一項に記載された杭状地盤補強構造において、
前記複数本の添え杭の全ての下端部が、前記心杭の下端部よりも深い位置まで埋設されている
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
(付記9)
付記4~付記8のいずれか一項に記載された杭状地盤補強構造において、
前記心杭と、それを囲む前記複数本の添え杭の頭部の高さが揃えられて、
それらの頭部同士が剛体からなる蓋状体によって一体的に結合され、
前記蓋状体の上に建物の基礎が設けられた
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
本願が開示する発明は、小規模ないし中規模の建物等の建築工事に際して地盤を補強するための技術として、広く利用する事ができる。
1 心杭
2 保護キャップ
3 注入管
31 吐出口
4 供給装置
5 根固め部
6 添え杭
7 蓋状体
8 合成杭ユニット
9 基礎
G 施工面
W 重機
2 保護キャップ
3 注入管
31 吐出口
4 供給装置
5 根固め部
6 添え杭
7 蓋状体
8 合成杭ユニット
9 基礎
G 施工面
W 重機
Claims (8)
- 下記の[工程1]~[工程5]を含む杭状地盤補強工法。
[工程1]下端部を保護キャップで塞いだ直管を、地盤を掘削及び撹拌することなく所定深さまで圧入して一本の心杭となす。
[工程2]前記心杭の内部に前記心杭よりも小径の中空管からなる注入管を挿入し、前記注入管の下端部で前記保護キャップを破砕又は除去して前記注入管の下端部を前記心杭の下端部から突出させ、前記注入管内に圧送した固化材を前記注入管の下端部から地中に吐出することにより、該下端部の周囲に前記固化材を含浸させた根固め部を形成した後、前記注入管を前記心杭から抜き取る。
[工程3]前記固化材が固化するまでの間に、前記心杭とは別体の直管を前記心杭と平行に圧入し、その下端部を前記根固め部内に定着させて、前記心杭に従属する添え杭となす。
[工程4]前記心杭の周囲に前記添え杭を一本乃至複数本、埋設することにより、前記心杭と前記添え杭の下端部同士が前記根固め部を回して一体的に結合された合成杭ユニットを形成する。
[工程5]少なくとも一組の前記合成杭ユニットの上に建物の基礎を設けて建物荷重を支持する。 - 請求項1に記載された杭状地盤補強工法における[工程2]において、
前記注入管を通じて前記固化材を地中に吐出する際、前記注入管を昇降させて前記注入管の下端部を上下動させながら前記固化材を吐出する
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。 - 請求項1に記載された杭状地盤補強工法における[工程1]及び[工程3]~[工程4]において、
前記心杭及び/又は前記添え杭の圧入時に押圧反力の変化を測定することにより、前記心杭及び/又は前記添え杭に作用する地盤の抵抗力を把握して、前記心杭及び/又は前記添え杭の埋設深さの適否を判定する
ことを特徴とする杭状地盤補強工法。 - 地盤内の所定深さまで埋設された直管からなる一本の心杭と、
前記心杭の下端部の周囲に固化材を含浸させることによって形成された根固め部と、
前記心杭に近接して前記根固め部内に下端部を定着させるように埋設された、前記心杭とは別体の直管からなる一本乃至複数本の添え杭と、
の結合によって構成される少なくとも一組の合成杭ユニットを具備し、
前記合成杭ユニットの上に建物の基礎が設けられて、前記建物の荷重が前記合成杭ユニットによって支持される
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。 - 請求項4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記心杭を構成する直管が単管である
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。 - 請求項4又は5に記載された杭状地盤補強構造において、
前記添え杭を構成する直管が単管である
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。 - 請求項4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記複数本の添え杭が、平面視において前記心杭を図心とする正多角形状又は環状に配置されている
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。 - 請求項4に記載された杭状地盤補強構造において、
前記添え杭の下端部が、前記心杭の下端部よりも深い位置まで埋設されている
ことを特徴とする杭状地盤補強構造。
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JP2023152345A JP7460994B1 (ja) | 2023-09-20 | 2023-09-20 | 杭状地盤補強工法及び杭状地盤補強構造 |
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JP2002294705A (ja) | 2001-03-29 | 2002-10-09 | Jdc Corp | 杭の人工支持基盤施工方法 |
-
2023
- 2023-09-20 JP JP2023152345A patent/JP7460994B1/ja active Active
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JP2002294705A (ja) | 2001-03-29 | 2002-10-09 | Jdc Corp | 杭の人工支持基盤施工方法 |
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