JP7457661B2 - 低減したエフェクター機能を有する抗vla-4抗体 - Google Patents

低減したエフェクター機能を有する抗vla-4抗体 Download PDF

Info

Publication number
JP7457661B2
JP7457661B2 JP2020566932A JP2020566932A JP7457661B2 JP 7457661 B2 JP7457661 B2 JP 7457661B2 JP 2020566932 A JP2020566932 A JP 2020566932A JP 2020566932 A JP2020566932 A JP 2020566932A JP 7457661 B2 JP7457661 B2 JP 7457661B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
region
polypeptide
seq
domain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020566932A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021526371A (ja
JPWO2019236417A5 (ja
Inventor
フェラント-オルゲッタス,ジェニン,リサ
ぺピンスキー,ロバート,ブレイク
ケア-マクファーランド,エレン,ダガン
ドリマ,ナディア,ジセル
アーント,ジョセフ,ウォルター
モートリー ハンフ,カール,ジョン
キャメロン,トーマス,オーウェン
スターク,エレン,ガーバー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Biogen MA Inc
Original Assignee
Biogen MA Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Biogen MA Inc filed Critical Biogen MA Inc
Publication of JP2021526371A publication Critical patent/JP2021526371A/ja
Publication of JPWO2019236417A5 publication Critical patent/JPWO2019236417A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7457661B2 publication Critical patent/JP7457661B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2839Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the integrin superfamily
    • C07K16/2842Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the integrin superfamily against integrin beta1-subunit-containing molecules, e.g. CD29, CD49
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P21/00Drugs for disorders of the muscular or neuromuscular system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/505Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising antibodies
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/545Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the dose, timing or administration schedule
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/20Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin
    • C07K2317/24Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin containing regions, domains or residues from different species, e.g. chimeric, humanized or veneered
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/52Constant or Fc region; Isotype
    • C07K2317/524CH2 domain
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/52Constant or Fc region; Isotype
    • C07K2317/526CH3 domain
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/56Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments variable (Fv) region, i.e. VH and/or VL
    • C07K2317/565Complementarity determining region [CDR]
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/90Immunoglobulins specific features characterized by (pharmaco)kinetic aspects or by stability of the immunoglobulin
    • C07K2317/92Affinity (KD), association rate (Ka), dissociation rate (Kd) or EC50 value
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/90Immunoglobulins specific features characterized by (pharmaco)kinetic aspects or by stability of the immunoglobulin
    • C07K2317/94Stability, e.g. half-life, pH, temperature or enzyme-resistance

Description

本発明は、アルファ4結合抗体及びその断片に関する。
配列表
本願には、EFS-Webを介して提出され、その全体が参照により本明細書に援用される配列表が含まれる。前記配列表は、2019年4月12日に作成され、Anti_VLASequence PatentIN_ST25という名称であり、208キロバイトのサイズである。
インテグリンは、細胞間及び細胞基質間の相互作用を媒介する大きな細胞表面受容体ファミリーのメンバーである。インテグリンは、様々なα鎖及びβ鎖が組み合わさった非共有結合性のαβヘテロ二量体として存在し、高い構造的相同性を共有する。インテグリンは、多種多様な生理的プロセスを媒介し、多種多様な病的状態に関連する。α4鎖は、主に白血球に限定され、β1及びβ7の2つのβ鎖と会合し得る。
VLA-4(α4β1とも呼ばれる)及びα4β7は、炎症性疾患の病態生理において中心的な役割を果たす。VLA-4は、細胞表面受容体のβ1インテグリンファミリーのメンバーである。VLA-4は、α4鎖及びβ1鎖を含み、細胞間相互作用に関与する。その発現は主に、Tリンパ球を含むリンパ球系細胞、ならびにミクログリア細胞及びマクロファージを含む骨髄系細胞に限定されている。VLA-4は、内皮細胞リガンドVCAM-1(血管細胞接着分子1)に結合し、ヒト血漿フィブロネクチンのヘパリンII結合性断片に対するTリンパ球及びBリンパ球の付着を媒介し得る。VLA-4は、正常白血球の輸送を調節し(Lobb and Hemler,J.Clin.Invest.94(5):1722-1728,1994)、細胞の活性化を助ける重要な共刺激シグナルをもたらす(Clark and Brugge,Science 268(5208):233-9,1995)。炎症応答において、VLA-4は、損傷組織への白血球の遊走を調節し、したがって魅力的な治療標的であると認識されてきた。ブロッキングモノクローナル抗体(Lobb and Hemler(上記)、Enders et al.,Brain 121(Pt 7):1257-66,1998、Ramos-Barbon et al.,Am J Respir Crit Care Med.163(1):101-8.2001)、阻害性ペプチド(Molossi et al.,J Clin Invest.95(6):2601-10,1995、Abraham,1997、van der Laan et al.,J Neurosci Res.2002 Jan 15;67(2):191-9,2002)、及び小分子アンタゴニスト(Kudlacz et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.301(2):747-52,2002)を使用したインビボ試験において、白血球による炎症におけるα4β1インテグリンの重要な役割が証明されている。
α4β1は、VCAM-1またはフィブロネクチン(例えば、選択的スプライシングされたコネクティングセグメント1(CS1)を含むフィブロネクチンバリアント)の2つのタンパク質リガンドのいずれかに結合することにより、細胞接着を媒介する(Osborn et al.,Cell 59(6):1203-11,1989、Wayner et al.,J.Cell Biol.109(3):1321-30,1989)。他の潜在的なリガンドも同定されているが(Bayless et al.,J.Cell Sci.111(Pt 9):1165-74,1998)、これらの相互作用の生物学的意義はあまり明確ではない。α4β1とそのリガンドとの間の相互作用は親和性が低く、結合はおそらく多価の相互作用によって調整されると考えられている。α4β1の発現は構成的であるが、そのリガンドとの相互作用は、抗原、抗T細胞受容体mAb、ホルボールエステル、二価カチオンMn2+、及び特定のβ1特異的抗体などの様々な刺激によって誘導され得る活性化状態において大きく増強される。こうした親和性及び/またはアビディティの変化は、相互作用が生産的であり、かつリガンド/インテグリン複合体を安定化させるかどうかを最終的に決定する(Humphries,Curr Opin Cell Biol.8(5):632-40,1996)。α4β7は、より限定的な白血球群によって発現され、粘膜アドレシンMadCAMに結合することにより、粘膜リンパ系組織へのリンパ球のホーミングに部分的に関与するが、VCAM-1及びフィブロネクチンにも結合する。α4に対する特定のモノクローナル抗体(mAb)は、VLA4とα4β7の両方の接着機能をブロックし得る。
ヒト化抗体をマウス抗体の代わりに治療剤として使用すると、HAMA(ヒト抗マウス抗体)応答と呼ばれる望ましくない免疫応答がヒトにおいて生じることを回避できる。ヒト化抗体は、一般的に、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)を別の種(典型的にはマウス抗体)のCDRで置換することによって構築される。
抗体は、その可変領域を介して抗原に結合する能力を有する。抗原に抗体が結合すると、抗原は破壊の標的とされ、これは多くの場合、抗体の定常領域またはFc領域によって少なくとも部分的に媒介される。抗体のFc領域によって媒介されるエフェクター機能またはエフェクター活性はいくつかある。1つのエフェクター機能は、補体タンパク質に結合する能力であり、これは、標的抗原、例えば細胞内病原体を、補体依存性細胞傷害(CDC)と呼ばれるプロセスで溶解するのに役立ち得る。Fc領域の別のエフェクター活性は、他の免疫作用を引き起こす能力を有する免疫細胞、またはいわゆるエフェクター細胞の表面上のFc受容体(例えばFcγR)に結合することである。これらの免疫作用(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞食作用(ADCP))は、例えば、免疫活性化因子を放出し、抗体産生、エンドサイトーシス、食作用、及び細胞殺傷を調節することにより、病原体/抗原の除去において機能する。いくつかの臨床用途において、これらの応答は、抗体の有効性に関して極めて重要であるが、他の場合では、望まれない副作用を惹起する。エフェクター介在性副作用の一例は、急性発熱反応を引き起こす炎症性サイトカインの放出である。別の例は、抗原産生細胞の長期欠失である。
抗体のエフェクター機能は、Fc領域を欠く抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、または一本鎖Fv(scFv)など)を使用することによって回避され得る。しかしながら、これらの断片は、腎臓によるクリアランスが速いため、半減期が短い。Fab断片及びscFv断片には抗原結合部位が2つではなく1つしかなく、結合アビディティに起因する利点が損なわれ、製造における課題が生じる可能性がある。代替的な手法は、全長抗体のエフェクター機能を低減させつつ、Fc領域の有益な他の特質(例えば、長い半減期及びヘテロ二量体化)を保持することを目指す。エフェクター機能を低減させる手法の1つは、Fc領域の特定の残基に結合した糖を除去することにより、いわゆるアグリコシル化抗体を生成することである。アグリコシル化抗体は、例えば、糖が結合した残基を欠失もしくは変化させること、糖を酵素的に除去すること、グリコシル化阻害因子の存在下で培養した細胞において抗体を産生させること、またはタンパク質をグリコシル化することができない細胞(例えば、細菌宿主細胞)において抗体を発現させることにより、生成することができる。別の手法は、IgG1ではなくIgG4抗体のFc領域を用いることである。IgG4抗体がIgG1と比べて低い補体活性化及び抗体依存性細胞傷害のレベルを有することを特徴とするのは、よく知られている。
ヒトα4に対するモノクローナル抗体は、3つの機能的に異なる組織分布のエピトープA、B、及びCに結合する(Pulido et al.,J.Biol.Chem.266:10241-10245,1991、Schiffer et al.,J.Biol.Chem.270:14270-14273,1995)。エピトープBはB1及びB2エピトープに細分され、これらは、組織分布的に区別不能だが、細胞凝集を誘導するmAbの能力によって定義される。エピトープA及びB2に対する抗α4 mAbは、同型細胞凝集を誘導することができるが、エピトープB1及びCに対するものにはこれができない。
本発明は、抗VLA-4抗体などのCDRグラフトアルファ4結合抗体を最適化することができる、生殖系列可変領域フレームワークを含む抗VLA-4抗体及びその結合性断片に関する。したがって、本発明は、かかるフレームワークを含む抗VLA-4可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ならびに抗体分子を含む。いくつかの実施形態では、VLA-4は、ヒトVLA-4である。いくつかの実施形態では、VLA-4は、α4鎖(例えば、ヒトα4鎖)を含む。
本抗体は、エフェクター機能を変化または低減させ、かつ安定性を向上させる、修飾されたFc領域を含んでもよい。修飾されたFc領域を有する抗体は、オリゴ糖を欠く抗体で観察される著しい有害作用、特に立体構造及び安定性に対する有害作用を改善し得る。修飾されたFc領域を有する抗体は、変化または低減したエフェクター機能及び向上した安定性も有し得る。本発明はさらに、本明細書に記載の分子を作製する方法に関する。
本抗体は、Fc領域の安定性を増強する改善された方法を提供することにより、先行技術における「エフェクターレス」抗体の問題を改善し得る。例えば、本発明は、ポリペプチドのFc領域に安定化アミノ酸を含む、安定性操作された(stability-engineered)Fcポリペプチド、例えば、安定化IgG抗体または他のFc含有結合分子を提供する。一実施形態において、本発明は、親FcポリペプチドのFc領域における特定のアミノ酸残基位置に、Fc領域の安定性を増強する変異を導入する方法を提供する。いくつかの実施形態では、安定化Fcポリペプチドは、変化または低減したエフェクター機能(安定化アミノ酸(複数可)を含まないポリペプチドと比較して)を有し、親Fcポリペプチドと比較して増強された安定性を呈する。いくつかの実施形態では、親Fcポリペプチドは、ヒトIgG1(例えば、配列番号83の配列を有するもの)である。いくつかの実施形態では、親Fcポリペプチドは、ヒトIgG4(例えば、配列番号84の配列を有するもの)である。
したがって、本明細書に開示する抗体は、下記を含むがこれらに限定されない、いくつかの利点を提供する。
- エフェクター機能が低減しているために治療薬として好適な、安定化アグリコシル化Fc領域を含む安定化アグリコシル化Fcポリペプチド、例えば、安定化融合タンパク質またはアグリコシル化IgG抗体の提供、
- エフェクター機能が低減しているために治療薬として好適な、IgG4抗体に由来するFc領域を含む安定化Fcポリペプチド、例えば、安定化グリコシル化もしくはアグリコシル化融合タンパク質またはIgG4抗体の提供、
- ポリペプチドの変化が最小限に抑えられた安定化Fcポリペプチドを生成する効率的な方法(例えば、安定化されていない親ポリペプチドに変化を導入すること、または安定化Fcポリペプチドをコードする核酸分子を発現することによる)、
- 免疫原性及び/またはエフェクター機能の増大を回避しながらFcポリペプチドの安定性を増強する方法、
- Fcポリペプチドのスケーラビリティ、製造性、及び/または長期安定性を高める方法、ならびに
- 治療を必要とする対象を、本発明の安定化Fcポリペプチドで処置する方法。
一実施形態において、本発明は、ドナー抗α4抗体、例えば、本明細書に記載の抗α4抗体のCDR、ならびに、VH鎖の配列の領域1、2、3、及び4を有するかまたはVH鎖の生殖系列可変領域配列との相違を5、10、もしくは15個以下有するVHフレームワークを有する、抗α4抗体VH鎖を特長とする。一実施形態において、可変フレームワーク領域4(FR4)は、ヒトコンセンサス配列である。一実施形態において、完全なVH鎖のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4が存在する。別の実施形態では、この鎖は、VH領域の抗原結合性断片である。
一実施形態において、生殖系列配列は、図1に示されるヒトIGHV1-f(配列番号2)である。特定の実施形態において、VHフレームワーク配列は、生殖系列配列、例えば、配列番号2と、少なくとも1個から、2、3、4、5、10または15個以下のアミノ酸残基だけ異なっていてもよい。一実施形態において、VHフレームワークは、対応するヒト残基以外の残基をさらに含む。例えば、VH鎖は、配列番号2のフレームワーク位置24、67、76、80、及び94(Kabat付番)のうちの1つ以上に非古典的な(non-canonical)残基を含む。
一実施形態において、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)のうちの少なくとも1つ以上は、ドナー非ヒトα4結合抗体(すなわち、α4に特異的に結合する非ヒト抗体)に由来する。一実施形態において、CDRグラフト重鎖可変ドメインの抗原結合領域は、26~34位(CDR1)、50~65位(CDR2)、及び95~102位(CDR3)(Kabat付番)に対応するCDRを含む。
したがって、一実施形態において、可変重鎖(VH)フレームワークは、ヒト抗体生殖系列配列IGHV1-fに由来するアクセプター配列を有する。
別の実施形態では、VHのFR1領域における少なくとも1個のアミノ酸、及び2、3、4、5、または10個未満のアミノ酸残基は、対応するヒト生殖系列残基以外のものである。かかる残基のうちの1つ以上は、例えば、CDR配列の起源となる非ヒト抗体フレームワーク領域と同一であってもよい。一実施形態において、Kabat24位のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク領域と同一になるように変異している。
別の実施形態では、VHのFR2領域における少なくとも1個のアミノ酸、及び2、3、4、5、または10個未満のアミノ酸残基は、対応するヒト生殖系列残基以外のものである。かかる残基のうちの1つ以上は、例えば、CDR配列の起源となる非ヒト抗体フレームワーク領域と同一であってもよい。
さらに別の実施形態では、VH鎖のFR3における少なくとも1個のアミノ酸、及び2、3、4、5、または10個未満のアミノ酸残基は、対応するヒト生殖系列残基以外のものである。かかる残基のうちの1つ以上は、例えば、CDR配列の起源となる非ヒト抗体フレームワーク領域と同一であってもよい。一実施形態において、Kabat94位のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク領域と同一である。さらに別の実施形態では、Kabat67位、76位、80位、及び94位のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク領域と同一である。
特定の実施形態において、抗体のVH鎖は、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の配列を有する。
一態様において、本発明は、ドナー抗VLA-4抗体、例えば、本明細書に記載の抗VLA-4抗体のCDR、ならびに、VL鎖の配列の領域1、2、3、及び4を有するかまたはVL鎖の生殖系列可変領域配列との相違を5、10、もしくは15個以下(領域毎または合計のいずれかで)有するVLフレームワークを有する、抗VLA-4 VL鎖を特長とする。一実施形態において、可変フレームワーク領域4(FR4)は、ヒトコンセンサス配列である。一実施形態において、完全なVL鎖のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4が存在する。別の実施形態では、この鎖は、VL領域の抗原結合性断片である。
別の実施形態では、生殖系列配列は、図2に示されるIGKV4-1(配列番号7)である。さらに他の実施形態では、VLフレームワーク配列は、生殖系列フレームワーク配列、例えば、配列番号7と、少なくとも1個から、2、3、4、5、10または15個以下のアミノ酸残基だけ異なっていてもよい。別の実施形態では、VLは、対応するヒトアミノ酸残基以外のものをさらに含む。例えば、VL鎖は、配列番号7のフレームワーク位置1、73、及び87(Kabat付番)のうちの1つ以上に非ヒト残基をさらに含む。
一実施形態において、この配列は、図2に示されるAAH7035.1(配列番号12)またはその生殖系列操作型(配列番号13)である。いくつかの実施形態では、VLフレームワーク配列は、生殖系列操作型フレームワーク配列、例えば、配列番号13と、少なくとも1個から、5、10、15、20、または25個以下のアミノ酸残基だけ異なっていてもよい。一実施形態において、VL鎖は、対応するヒト残基以外のものを含む。例えば、VL鎖は、配列番号12のフレームワーク位置1及び87(Kabat付番)のうちの1つ以上に非ヒト残基を含む。別の実施形態では、VLは、生殖系列配列IGKV4-1のもののような、異なるヒト生殖系列フレームワーク配列に類似するように、フレームワーク領域にアミノ酸置換を含む。特定の実施形態において、VLフレームワーク配列は、配列番号12の1~3位、5~23位、35~37位、39~42位、45~49位、57位、59~61位、63~64位、70~72位、74~84位、86~88位、99~106位(Kabat付番)において、IGKV4-1生殖系列配列と同一になるように変化している。
一実施形態において、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)のうちの少なくとも1つ以上は、ドナー非ヒトα4結合抗体に由来する。別の実施形態では、CDRグラフト重鎖可変ドメインの抗原結合領域は、24~31位(CDR1)、50~56位(CDR2)、及び89~97位(CDR3)(Kabat付番)に対応するCDRを含む。したがって、一実施形態において、VLフレームワークは、IGKV4-1生殖系列配列、抗体AAH70335.1、または生殖系列操作抗体AAH70335.1から構築されたアクセプター配列を有する。
さらに別の実施形態では、VL鎖のFR1における少なくとも1個のアミノ酸、及び2、3、4、5、10、または15個未満の残基は、対応するヒト残基以外のものである。かかる残基のうちの1つ以上は、例えば、CDR配列の起源となる非ヒト抗体フレームワーク領域と同一であってもよい。一実施形態において、FR1のN末端位置のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク領域と同一になるように変異している。
別の実施形態では、VL鎖のFR2における少なくとも1個のアミノ酸、及び2、3、4、5、10、または15個未満の残基は、対応するヒト残基以外のものである。かかる残基のうちの1つ以上は、例えば、CDR配列の起源となる非ヒト抗体フレームワーク領域と同一であってもよい。
さらに別の実施形態では、VLのFR3における少なくとも1個のアミノ酸、及び2、3、4、5、10、または15個未満の残基は、対応するヒト残基以外のものである。かかる残基のうちの1つ以上は、例えば、CDR配列の起源となる非ヒト抗体フレームワーク領域と同一であってもよい。別の実施形態では、Kabat87位のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク領域と同一になるように変異している。さらに別の実施形態では、Kabat67位及び87位のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク配列と同一になるように変異している。さらに別の実施形態では、配列番号7のKabat67位、73位、及び87位のアミノ酸残基は、非ヒト抗体フレームワーク配列と同一になるように変異している。
他の実施形態では、抗体のVL鎖は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11の配列を有する。
一実施形態において、抗体のVH鎖は、配列番号4の配列を有し、抗体のVL鎖は、配列番号11の配列を有する。
一実施形態において、VH及びVLアクセプターフレームワーク配列のCDRは、非ヒト(例えば、マウス)抗体配列のCDR配列に類似するように選択され、ここで、非ヒト抗体は、インテグリンアルファ4またはその断片に結合する。別の実施形態では、CDRの配列は、VLA-4 α4鎖のB1エピトープに結合する非ヒト抗体のCDRの配列に類似するように選択される。一実施形態において、CDRは、マウスモノクローナル抗体、例えば、HP1/2、HP2/1、HP2/4、L25、P4C2、または21.6(Pulido et al.,J.Biol.Chem.266:10241-10245,1991、米国特許第6,033,665号)に類似するように選択される。修飾とは、例えば、切除及び挿入または変化、例えば、定方向変異誘発によるものを意味し得る。
別の態様において、本発明は、抗体またはその抗原結合性断片であって、
- 本明細書に記載の抗VLA-4 VL鎖、例えば、ドナー抗VLA-4抗体、例えば、本明細書に記載の抗VLA-4抗体のCDR、ならびに、VL鎖の配列のLCフレームワーク領域1、2、及び3を有するかまたはVL鎖の生殖系列可変領域配列との相違を5、10、もしくは15個以下有するVLフレームワークを有する、抗VLA-4 VL鎖(一実施形態において、可変領域4は、ヒトコンセンサス配列である)と、
- 本明細書に記載の抗VLA-4 VH鎖、例えば、ドナー抗VLA-4抗体、例えば、本明細書に記載の抗VLA-4抗体のCDR、ならびに、VL鎖の配列のLCフレームワーク領域1、2、及び3を有するかまたはVL鎖の生殖系列可変領域配列との相違を5、10、もしくは15個以下有するVLフレームワークを有する、抗VLA-4 VL鎖(一実施形態において、可変領域4は、ヒトコンセンサス配列である)と
を含む、抗体またはその抗原結合性断片を特長とする。
一実施形態において、本抗体は、α4β1及びα4β7の一方または両方に結合する。
別の態様において、本明細書に記載のVL鎖もしくはVH鎖、または抗体、またはそれらの断片は、検出可能に標識されている。
別の態様において、本発明は、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片であって、(a)配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、(b)配列番号4の配列を含む可変重鎖と、(c)ヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖と、(d)ヒトIgG1の定常重鎖であり、前記定常領域が、Kabat付番スキームによるS127C、K129R、G135E、G136S、Q203K、I207T、N211D、K222R、P227S、S232Y、C233G、D234の欠失、K235の欠失、T236の欠失、H237P、T238P、L247F、H281Q、K287Q、Y313F、N314Q、A346G、A349S、P350S、またはK478の欠失から選択される変異を少なくとも1個含む、前記ヒトIgG1の定常重鎖とを含む、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片を提供する。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS127C、K129R、G135E、G136S、Q203K、I207T、N211D、K222R、P227S、S232Y、C233G、D234の欠失、K235の欠失、T236の欠失、H237P、T238P、L247F、H281Q、K287Q、Y313F、N314Q、A346G、A349S、P350S、またはK478の欠失から選択される変異を少なくとも2個含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS127C、K129R、G135E、G136S、Q203K、I207T、N211D、K222R、P227S、S232Y、C233G、D234の欠失、K235の欠失、T236の欠失、H237P、T238P、L247F、H281Q、K287Q、Y313F、N314Q、A346G、A349S、P350S、またはK478の欠失から選択される変異を少なくとも3個含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS127C、K129R、G135E、G136S、Q203K、I207T、N211D、K222R、P227S、S232Y、C233G、D234の欠失、K235の欠失、T236の欠失、H237P、T238P、L247F、H281Q、K287Q、Y313F、N314Q、A346G、A349S、P350S、またはK478の欠失から選択される変異を少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、または少なくとも12個、または少なくとも13個、または少なくとも14個、または少なくとも15個、または少なくとも16個、または少なくとも17個、または少なくとも18個、または少なくとも19個、または少なくとも20個、または少なくとも21個、または少なくとも22個、または少なくとも23個、または少なくとも24個含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS127C、K129R、G135E、G136S、Q203K、I207T、N211D、K222R、P227S、S232Y、C233G、D234の欠失、K235の欠失、T236の欠失、H237P、T238P、L247F、H281Q、K287Q、Y313F、N314Q、A346G、A349S、P350S、及びK478の欠失の変異を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
別の態様において、本発明は、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片であって、(a)配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、(b)配列番号4の配列を含む可変重鎖と、(c)ヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖と、(d)ヒトIgG4の定常重鎖であり、前記定常領域が、Kabat付番スキームによるS241P、N314Q、Q376R、E377D、M381L、R440K、E450Q、L476P、及びK478の欠失からなる群から選択される変異を少なくとも1個含む、前記ヒトIgG4の定常重鎖とを含む、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片を提供する。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG4の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS241P、N314Q、Q376R、E377D、M381L、R440K、E450Q、L476P、及びK478の欠失からなる群から選択される変異を少なくとも2個含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG4の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS241P、N314Q、Q376R、E377D、M381L、R440K、E450Q、L476P、及びK478の欠失からなる群から選択される変異を少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG4の定常重鎖は、Kabat付番スキームによるS241P、N314Q、Q376R、E377D、M381L、R440K、E450Q、L476P、及びK478の欠失の変異のうちの1つ以上を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
C’末端リジン残基(Kabat付番スキームによる478位)は、翻訳後に、または技術的工夫によって欠失させるのが典型的であることに留意されたい。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の重鎖(またはそのドメインのFc部分)は、C末端のリジンを欠いている。言い換えれば、いくつかの実施形態では、478位(Kabat付番)のリジンが、本明細書に記載の抗体の重鎖(またはそのドメインのFc部分)では欠失している。
いくつかの実施形態では、変異または置換のないヒトIgG1の定常重鎖は、配列番号83の配列を有する。
いくつかの実施形態では、変異または置換のないヒトIgG4の定常重鎖は、配列番号84の配列を有する。
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体重鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNAを含むベクターを特長とする。いくつかの実施形態では、ベクターのDNAは、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の配列を有するVHをコードする。
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体軽鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNAを含むベクターを特長とする。いくつかの実施形態では、ベクターのDNAは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11の配列を有するVL鎖をコードする。
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体重鎖またはそのα4結合性断片及び本明細書に記載の抗体軽鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNAを含むベクターを特長とする。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞、例えば、本明細書に記載の重鎖及び/または軽鎖抗体または抗体断片を発現することができるものを特長とする。特定の実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
一態様において、本発明は、組換え抗α4抗体またはそのα4結合性断片を作製する方法であって、宿主細胞を用意することであり、宿主細胞に、(a)本明細書に記載の抗体重鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNA配列と、(b)抗体軽鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNA配列とがトランスフェクトされている、用意すること、及び、トランスフェクトされた細胞を培養することにより、組換え抗α4抗体分子またはそのα4結合性断片を生成する方法を特長とする。抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNAは、同じベクターに存在しても異なるベクターに存在してもよい。
一態様において、本発明は、組換え抗α4抗体またはそのα4結合性断片を作製する方法であって、宿主細胞を用意することであり、宿主細胞に、(a)抗体重鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNA配列、例えば、配列番号4の配列を有するDNA配列と、(b)抗体軽鎖またはそのα4結合性断片をコードするDNA配列、例えば、配列番号11の配列を有するDNA配列とがトランスフェクトされている、用意すること、及び、トランスフェクトされた細胞株を培養することにより、組換え抗α4抗体分子またはそのα4結合性断片を生成する方法を特長とする。抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNAは、同じベクターに存在しても異なるベクターに存在してもよい。
別の態様において、本発明は、α4インテグリン、例えば、α4β1(VLA-4)またはα4β7インテグリンにより媒介される疾患または障害を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に、本明細書に記載のα4抗体もしくは抗体断片、または該抗体もしくは断片を含む医薬組成物を投与することによる方法を特長とする。対象は、例えば、炎症性障害、免疫障害、または自己免疫障害(例えば、中枢神経系の炎症、例えば多発性硬化症、髄膜炎、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシス、CNS血管炎、脳炎、及び横断性脊髄炎)、組織もしくは臓器の移植片拒絶または移植片対宿主病、急性CNS傷害、例えば脳卒中、外傷性脳傷害(TBI)、または脊髄傷害(SCI);慢性腎疾患;アレルギー、例えば、アレルギー性喘息;1型真性糖尿病;炎症性腸障害、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎;重症筋無力症;線維筋痛症;関節炎障害、例えば関節リウマチ、乾癬性関節炎;炎症性/免疫皮膚障害、例えば乾癬、白斑、皮膚炎、扁平苔癬;全身性エリテマトーデス;シェーグレン症候群;血液がん、例えば多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫;肉腫または癌腫などの固形癌、例えば、肺癌、乳癌、前立腺癌、脳癌;ならびに線維性障害、例えば肺線維症、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、及び間質性腎線維症を有するか、または発症するリスクを有し得る。好ましい実施形態では、本発明は、多発性硬化症を患う患者を処置する、または多発性硬化症を患う患者の症状、例えばCIS(clinically isolated syndrome)、再発寛解型多発性硬化症、もしくは活動性二次性進行型多発性硬化症を軽減する方法を特長とする。特定の実施形態において、多発性硬化症は、再発型の多発性硬化症である。好ましい実施形態では、本発明は、薬剤抵抗性てんかんを含め、てんかんを有する、または発症するリスクを有する患者を処置する方法を特長とする。特定の実施形態において、対象または患者は、ヒトである。
別の態様において、本発明は、α4結合抗体または抗体断片を患者に投与することにより、患者を処置する方法を特長とする。一実施形態において、患者は、固形腫瘍または血液系悪性腫瘍などのがんを有する。例えば、α4結合抗体または抗体断片で処置される患者は、急性骨髄性白血病(AML)または多発性骨髄腫(MM)を有し得る。
別の実施形態では、患者は、多発性硬化症、喘息(例えば、中等度から重度の喘息)、関節リウマチ、糖尿病、またはクローン病などの炎症性障害を有する。別の実施形態では、組成物はレジメンとして投与される。さらに別の実施形態では、本方法は、組成物による処置に好適な患者を選択することをさらに含む。処置に好適な患者は、例えば、疾患発症を示す徴候または症状、例えばMSを示す徴候または症状を示したものである。好ましい実施形態では、患者は、てんかんを有する。
特定の実施形態において、患者は、治療有効量のα4結合抗体または抗体断片を投与される。特定の実施形態において、患者は、α4結合抗体または抗体断片を、約0.0003mg/kg、0.0004mg/kg、0.0005mg/kg、0.0006mg/kg、0.0007mg/kg、0.0008mg/kg、0.0009mg/kg、0.0010mg/kg、0.0015mg/kg、または0.0020mg/kgから、約0.0025mg/kg、0.003mg/kg、0.005mg/kg、0.010mg/kg、0.0125mg/kg、0.025mg/kg、0.050mg/kg、0.0625mg/kg、0.080mg/kg、0.100mg/kg、0.200mg/kg、0.300mg/kg、0.3125mg/kg、0.40mg/kg、0.50mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgの範囲の量で投与される。いくつかの実施形態では、患者は、約0.025mg/kg~約10mg/kgの量のα4結合抗体または抗体断片を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、約0.0625mg/kg~約8.0mg/kgの量のα4結合抗体または抗体断片を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、約0.3mg/kg~約6.0mg/kgの量のα4結合抗体または抗体断片を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、約0.5mg/kg~約5.0mg/kgの量のα4結合抗体または抗体断片を投与される。
さらに別の実施形態では、本方法は、化学療法剤、血栓溶解剤、神経保護剤、抗炎症剤、ステロイド、サイトカイン、または増殖因子などの第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。
一実施形態において、患者は、本明細書に記載のヒト化抗VLA-4抗体またはその断片、例えばHuHP1/2、H1L1、H1L2、またはH1L3を投与される。
一実施形態において、α4結合抗体を含む組成物は、レジメンとして、例えば規則的な間隔で投与される。例えば、本組成物は、1日、1週間、もしくは1か月に1回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、もしくはそれ以上、または2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、もしくはそれ以上で投与され得る。
一実施形態において、投薬は、抗α4抗体を以前に投与した際の患者のクリアランス速度に従って調整され得る。例えば、一実施形態において、患者は、患者の体内の抗α4抗体のレベルが既定のレベル未満に低下するまで、第2または後続の用量を投与されない。一実施形態において、患者のサンプル(例えば、血漿、血清、血液、または尿のサンプル)を抗α4抗体の存在についてアッセイし、抗α4抗体のレベルが既定のレベルを超えていれば、患者は第2または後続の用量を投与されない。患者の体内の抗α4抗体のレベルが既定のレベル未満であれば、患者は第2または後続の用量を投与される。
一実施形態において、本組成物は、例えば、30分超から1、2、4、または12時間未満の期間にわたり、連続的に投与される。抗体及び第2の薬剤を含む組成物は、任意の適切な方法により、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内に投与され得る。
いくつかの実施形態では、抗体及び第2の薬剤はそれぞれ、単独療法のために処方される各用量と同じ用量で投与される。他の実施形態では、抗体は、単独で投与した場合の有効性に必要な量以下の投与量で投与される。同様に、第2の薬剤は、単独で投与した場合の有効性に必要な量以下の投与量で投与され得る。
本開示の特長として挙げられる別の態様は、患者が予め選択された基準を満たすかどうかを判定することにより患者を評価し、患者が予め選択された基準を満たす場合、本明細書に記載のVLA-4結合抗体製剤を患者に対して承認する、提供する、処方する、または投与する方法である。一実施形態において、予め選択された基準は、患者が、過去の、例えばMSの処置のための代替的な治療的処置またはレジメンに、十分に応答しなかったことである。別の実施形態では、予め選択された基準は、進行性多巣性白質脳症(PML)のいかなる徴候もしくは症状もないこと、またはPMLのいかなる診断もないことである。いくつかの場合において、この選択は、PMLのリスク因子がないこと、例えば、対象がJCウイルスDNA検査で陽性を示さない、またはJCウイルス抗体検査で陽性を示さないことに基づく。別の実施形態では、この基準は、参照により本明細書に援用され、薬物の分配及び患者への薬物の提供のための方法及びシステムについて記載するPCT/US07/75577(WO2008/021954として公開されている)に記載されている。
別の態様において、本明細書に記載の組成物を分配する方法が提供される。本組成物は、アルファ4結合抗体を含む。本方法は、レシピエント(例えば、エンドユーザー、患者、医師、薬剤の小売業者もしくは卸売業者、流通業者、または病院、介護施設の診療所、もしくはHMOの調剤部門)に、少なくとも6、12、24、36、または48か月にわたって患者を処置するのに十分な単位投与量の薬物を含むパッケージを提供することを含む。別の態様において、本発明は、アルファ4結合抗体を含む本明細書に記載の組成物のパッケージまたはパッケージのロットの質を評価する(例えば、有効期限が切れているかどうかを判定する)方法を特長とする。本方法は、パッケージの有効期限が切れているかどうかを評価することを含む。有効期限は、製造、アッセイ、またはパッケージングなどの予め選択された事象から少なくとも6、12、24、36、または48か月、例えば、24または36か月超である。いくつかの実施形態では、分析の結果として決定またはステップがなされる。例えば、適切な分析により、製品の有効期限が切れているかどうかに応じて、パッケージ内の抗体は、使用もしくは廃棄されたり、分類されたり、選択されたり、発売もしくは保留されたり、出荷されたり、新しい場所に移動されたり、商取引に出されたり、売却されたり、または販売されたり、商取引を撤回されたり、販売停止されたりする。
別の態様において、本発明は、α4結合抗体を含む水性組成物の少なくとも2回の単位用量を含むパッケージを特長とする。一実施形態では、単位用量の全てが同じ量の抗体を含み、他の実施形態では、2つ以上の強度の単位投与量、または例えば、強度もしくは放出特性が異なる2つ以上の異なる製剤が存在する。
別の態様において、本発明は、α4結合抗体を含む製剤の投与についてレシピエントを指導する方法を含む。本方法は、レシピエント(例えば、エンドユーザー、患者、医師、薬剤の小売業者もしくは卸売業者、流通業者、または病院、介護施設の診療所、もしくはHMOの調剤部門)に、抗体が本明細書に記載のレジメンに従って患者に投与されるべきであることを指導することを含む。本方法は、レシピエントに、抗体が有効期限の前に投与されるべきであることを指導することも含み得る。有効期限は、製造、アッセイ、またはパッケージングなどの予め選択された事象から少なくとも6、12、24、36、または48か月、例えば、24または36か月超である。一実施形態において、レシピエントはまた、抗体の供給、例えば、単位投与量の抗体の供給を受ける。
一実施形態において、安定化ポリペプチドは、キメラFc領域を含み、前記安定化ポリペプチドは、ヒトIgG4抗体に由来する少なくとも1つの定常ドメインと、ヒトIgG1抗体に由来する少なくとも1つの定常ドメインとを含む。
一実施形態において、Fc領域は、グリコシル化Fc領域である。
一実施形態において、Fc領域は、アグリコシル化Fc領域である。
一実施形態において、Fc領域は、Fc領域の297位(EU付番)、314位(Kabat付番)にグルタミン(Q)を含むアグリコシル化Fc領域である。
一実施形態において、キメラFc領域は、IgG4アイソタイプのIgG抗体のCH2ドメイン、及びIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG4アイソタイプのIgG抗体のCH2ドメイン、及びIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域は、Fc領域の297位(EU付番)、314位(Kabat付番)に、天然に発生するアルギニン(N)残基の代わりにグルタミン(Q)残基をさらに含む。
一実施形態において、キメラFc領域は、IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含み、この抗体は、アミノ酸228位(EU付番)、241位(Kabat付番)にプロリンを含む。いくつかの実施形態では、キメラFc領域は、IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含み、この抗体は、アミノ酸228位(EU付番)、241位(Kabat付番)にプロリンを含み、Fc領域の297位(EU付番)、314位(Kabat付番)に、天然に発生するアルギニン(N)残基の代わりにグルタミン(Q)残基をさらに含む。
一実施形態において、IgG抗体は、ヒト抗体である。
一実施形態において、アグリコシル化Fc領域は、キメラヒンジドメインを含む。
一実施形態において、キメラヒンジドメインは、アミノ酸228位(EU付番)、241位(Kabat付番)に、プロリン残基による置換を含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号4の配列を有するVH鎖と、配列番号11の配列を有するVL鎖と、IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域とを含み、抗体は、CH2領域の297位(EU付番)、314位(Kabat付番)におけるグルタミン残基(Q)への置換、ヒンジ領域のアミノ酸228位(EU付番)、241位(Kabat付番)におけるプロリン残基(P)への置換、及びCH3領域のEU付番447位(Kabat付番478位)におけるリジン(K)の欠失を含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号80の配列を有する重鎖と、配列番号81の配列を有する軽鎖とを含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号86の重鎖、IgG4のHP1/2 H1重鎖(野生型;グリコシル化型)を含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号87の重鎖、IgG4 S228P(EU付番)のHP1/2重鎖(別名IgG4P;グリコシル化型)を含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号88の重鎖、IgG4 S228P L235E(EU付番)のHP1/2 H1重鎖(別名IgG4PE;グリコシル化型)を含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号89の重鎖、IgG4 S228P T299A(EU付番)のHP1/2 H1重鎖(アグリコシル)を含む。
一実施形態において、抗体は、配列番号90の重鎖、IgG1 N297Q(EU付番)のHP1/2 H1重鎖(アグリコシル)を含む。
特定の治療用抗体、例えばIgG4定常領域を有するものでは、スクランブリングにより、治療用抗体の標的(例えば、VLA4)に対して一価であり、別の抗原に対して一価である二重特異性モノクローナル抗体がもたらされ得る。一実施形態において、抗体は、スクランブリングを消失させるか、または抗体のスクランブリングに対する感受性を低減させることにより、PK/PD変動を低減させることができる。特定の実施形態において、抗体は、二価モノクローナル抗体による効力を増大させ、スクランブリングに起因する二重特異性を消失させることができる。特定の実施形態において、抗体は、非変異型の対応物よりも高い結合親和性を呈すること及び/または高い受容体占有率の持続を示すことができる。
本発明におけるその他の特長及び利点は、下記の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかとなる。
本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公報の写しは、請求及び必要な手数料の支払いに応じて特許庁により提供される。
HP1/2重鎖(配列番号1)の、ヒト重鎖生殖系列IGHV1-f(配列番号2)との3つの配列バリアントを示す。配列の上の小文字は、Kabat付番スキームによる挿入を表す。 HP1/2軽鎖(配列番号6)の、生殖系列IGKV4-1抗体配列(配列番号7)との配列バリアント(設計L0-配列番号8、L1-配列番号9、及びL2-配列番号10)、またはヒトカッパ生殖系列操作AAH7033.1抗体配列(配列番号12)との配列バリアント(設計L3-配列番号11)の4つを示す。配列の上の小文字は、Kabat付番スキームによる挿入を表す。 ELISAアッセイの結果を示すグラフである。 ELISAアッセイの結果を示すグラフである。 IgG4 Fc(ヒンジ+CH2+CH3ドメイン)(配列番号14)のアミノ酸配列である。ヒンジ領域は太字で示され、CH3ドメインには下線が引かれている。四角で囲んだ「S」は、Ser228(EU付番、Kabat付番ではSer241)である。丸で囲んだ「N」は、Kabat付番でAsn314(EU付番ではAsn297)である。 様々な腫瘍細胞株に対するHuHP1/2の結合のフローサイトメトリーデータを示すグラフである。「HP1/2」はヒト化HP1/2を意味する。 A~Cは、フィブロネクチンまたはVCAM1-Igをコートしたウェルに対するAML細胞株の結合のHuHP1/2による阻害を示す一連のグラフである。Aは、FNコートウェルに対するHL60細胞及びKG1細胞の結合の阻害を示す。Bは、VCAM1-Igコートウェルに対するKG1細胞の結合の阻害を示す。Cは、20μg/mLのHuHP1/2とともにインキュベートした場合(黒塗りの棒グラフ)のFNコートウェル及びVCAM1-Igコートウェルに対するHL60細胞の結合の阻害を示す。無色の棒グラフは、アイソタイプ対照の存在下での細胞接着率を示す。「HP1/2」はヒト化HP1/2を意味する。 A~Cは、フィブロネクチンまたはVCAM1-Igをコートしたウェルに対するMM細胞株の結合のHuHP1/2による阻害を示す一連のグラフを構成する。Aは、FNコートウェルに対するU266細胞及びH929細胞の結合の阻害を示す。Bは、VCAM1-Igコートウェルに対するU266細胞及びH929細胞の結合の阻害を示す。Cは、20μg/mLのHuHP1/2とともにインキュベートした場合(黒塗りの棒グラフ)のFNコートウェル及びVCAM1-Igコートウェルに対するU266細胞の結合の阻害を示す。無色の棒グラフは、アイソタイプ対照の存在下での細胞接着率を示す。「HP1/2」はヒト化HP1/2を意味する。 A~Cは、フィブロネクチンまたはVCAM1-Igをコートしたウェルに対するCLL細胞株の結合のHuHP1/2による阻害を示す一連のグラフを構成する。Aは、FNコートウェルに対するMec1細胞及びJM1細胞の結合の阻害を示す。Bは、VCAM1-Igコートウェルに対するMec1細胞及びJM1細胞の結合の阻害を示す。Cは、20μg/mLのHuHP1/2とともにインキュベートした場合(黒塗りの棒グラフ)のFNコートウェル及びVCAM1-Igコートウェルに対するMec1細胞の結合の阻害を示す。無色の棒グラフは、アイソタイプ対照の存在下での細胞接着率を示す。「HP1/2」はヒト化HP1/2を意味する。 典型的な抗原結合ポリペプチド(IgG抗体)の構造、ならびに抗体の抗原結合及びエフェクター機能(例えば、Fc受容体(FcR)結合)の機能的特性を示す。また、抗体のCH2ドメインにおける糖の存在(グリコシル化)がエフェクター機能(FcR結合)を変化させるが、抗原結合には影響しない仕組みも示されている。 IgG1のX線結晶構造(pdbコード1hzh)による、2つの相互作用するCH3ドメインを示す。IgG1残基K409/K440(EU付番/Kabat付番)及びD399/D427(EU付番/Kabat付番)が強調されている。 構造に基づくHMM(Wang et al,2009,Proteins 76:99,2009.)を使用したヒトIgG1/カッパ定常ドメイン配列のアラインメントを示す。ドメイン間相互作用に関与するCL、CH1、及びCH3の残基位置、ならびに炭水化物と直接接触するアミノ酸と強く共変動するアミノ酸位置は、灰色で強調されている。Kabat及びEU番号がアラインメントの下に提示されている。 IgG1-CH2ドメインの構造のリボン図を示す(Sondermann et al,406(6793):267-73,2000)。CH2ドメイン内のN結合型炭水化物及び特有の6アミノ酸ループに埋没したバリン残基が表示されている。 天然IgG1-CH2配列と、完全に修飾されたIgG1-CH2配列とのアラインメントを示す。修飾された残基位置は黒で示されている。修飾された位置のEU番号はアラインメントの上に示されている。 撹拌後の本発明の例示的なIgG Fc構築物の濁度を示す。 撹拌後の本発明の例示的なIgG Fc構築物の単量体含有率(%)を示す。 低pH維持(pH3.1)時のIgG Fc構築物の経時的な相対ピーク高さを示す。 溶液親和性表面プラズモン共鳴によって測定された、本発明の例示的なIgG1及びIgG4 Fc構築物のFcγ受容体に対する初期結合速度を示す。 本発明の例示的なIgG1及びIgG4 Fc構築物の、CD64(FcγRI)(図6A)及びCD16(FcγRIIIa V158)(図6B)に対する結合のIC50を計算するために使用した滴定曲線を示す。 IgG1 T318A(Kabat付番)(T299A、EU付番)、及びIgG1野生型と比較した、IgG1 T318K(Kabat付番)(T299K、EU付番)のCD64(FcγRI)に対する結合の低減を示す滴定曲線(図7A)、ならびに、T318A(Kabat付番)(T299A、EU付番)変異を組み込んだ他の例示的なIgG4 Fc構築物、及びIgG1野生型と比較した、T318K(Kabat付番)(T299K、EU付番)変異を組み込んだ例示的なIgG4 Fc構築物のCD64(FcγRI)に対する結合の低減を示す滴定曲線(図7B)を示す。 T299A変異を組み込んだ他の例示的なIgG4 Fc構築物、及びIgG1野生型と比較した、T299K変異を組み込んだ例示的なIgG4 Fc構築物のCD16(FcγRIIIa V158)に対する結合を示す。 本発明の例示的なIgG1及びIgG4 Fc構築物の補体因子C1qへの結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 様々なFc構築物のCD64への結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 様々なFc構築物のCD16への結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 N314Q(Kabat付番)(N297Q、EU付番)IgG4-CH2/IgG1-CH3の半減期が、T318A(Kabat付番)(T299A、EU付番)抗体と同じであった(アグリコシル化IgG1よりわずかに短かった)ことを示す。 T318X(Kabat付番)(T299X、EU付番)構築物のCD64への結合を評価するために使用した滴定曲線を示し、また、正電荷を帯びた側鎖のT318R(Kabat付番)(T299R、EU付番)及びT318KA(Kabat付番)(T299K、EU付番)が、CD64への低い親和性をもたらすことを示す。 様々な代替的構築物へのCD64の結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 構築物のCD32aRへの結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 構築物のCD32aRへの結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 構築物のCD16への結合を示す。 構築物のCD16への結合を示す。 C1q ELISAの結果を示す。 C1q ELISAの結果を示す。 パネルAは、構築物のCD64への結合を評価するために使用した滴定曲線を示し、パネルBは、構築物のCD16への結合を評価するために使用した滴定曲線を示す。 HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1、カッパ軽鎖(H1L3)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を含む。ヌクレオチド配列(配列番号91に対応するDNAが示されている)及び軽鎖配列(配列番号92)のアミノ酸1~233が示されている。太字のイタリック体で示されたアミノ酸1~19(及びコードDNA配列)は、合成LCシグナルペプチドを含む。成熟N末端は20位(S)のアミノ酸から始まる。 HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1、重鎖(H1L3)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を含む。重鎖(配列番号94)のヌクレオチド配列(DNAが示され、配列番号93に対応する)及びアミノ酸1~469が示されている。アミノ酸1~22(DNA配列はイタリック体で示されている)は、再コード化された合成シグナルペプチドを含む。成熟N末端は23位(E)のアミノ酸から始まる。 HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1、カッパ軽鎖(H1L3)のシグナル配列(下線付き)を含むアミノ酸配列を含む。 配列番号81の成熟軽鎖及び配列番号80の成熟重鎖を有するHP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1、カッパ軽鎖(H1L3)のアミノ酸配列を含む。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のUVスペクトルを提示する。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のSDS-PAGE結果を示す。非還元条件を左の2レーン(列1及び2)に示し、還元条件を右の2レーン(列3及び4)に示す。レーン1は、非還元条件下のHP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001)であり、レーン2は、非還元条件下の分子量マーカーであり、レーン3は、還元条件下のHP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001)であり、レーン4は、還元条件下の分子量マーカーである。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のIEF結果を示す。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質の分析的サイズ排除クロマトグラフィの結果を示す。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のDSC結果を示す。HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3インタクト抗体の融解曲線を示している。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のDSC結果を示す。Fc断片の融解曲線を示している。 配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のDSC結果を示す。Fab2断片の融解曲線を示している。 非還元条件下のHP1/2サンプルのSDS-PAGE分析の結果を示す。各サンプルは6及び3μg/レーンでロードした。分子量マーカーはパネルの左側に示している。Invitrogenの4-20%ポリアクリルアミド勾配ゲルでSDS-PAGEを行い、ゲルをSimply Blue染料(Invitrogen)で染色し、蒸留水で脱染した。レーン1は、6ug/レーンでのHP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3であり、レーン2は、6ug/レーンでのHP1/2 hG4P agly(T299A)であり、レーン3は、6ug/レーンでのナタリズマブG4P aglyであり、レーン4は、6ug/レーンでのナタリズマブG4Pであり、レーン5は、3ug/レーンでのHP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3であり、レーン6は、3ug/レーンでのHP1/2 hG4P agly(T299A)であり、レーン7は、3ug/レーンでのナタリズマブG4P aglyであり、レーン8は、3ug/レーンでのナタリズマブG4Pである。 HP1/2サンプルのSEC分析の結果を示す。サンプルは、PBS(10mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)中、0.2ml/分の流速で、Superdex Increase 5/150 GLカラム(GE 28-9909-45)に流した。 HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1 H1L3、HP1/2 hG4P agly(T299A)、ナタリズマブG4P agly、及びナタリズマブG4PのSEC分析の結果を示す。サンプルは、PBS(10mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)中、0.2ml/分の流速で、Superdex 200 Increase 5/150 GLカラム(GE 28-9909-45)に流した。 Aは、ヒト化HP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(N297Q、EU付番)/IgG1キメラ(GP1/2 GrP agly/G1)のDSC結果を示し、Bは、ヒト化HP1/2 G1/L3 huIgG4P agly(T299A、EU付番)(HP1/2 hG4P)のDSC結果を示す。 3mg/kgのHP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(N297Q、EU付番)/IgG1キメラ(GP1/2 GrP agly/G1)(図ではHP12と表記;白丸)、30mg/kgのHP12(黒丸)、及び3mg/kgのナタリズマブ(Tysabri、黒三角)の単回IVボーラス投与後のカニクイザルにおける薬物動態の経時変化を示す線グラフである。 3mg/kgのHP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(N297Q、EU付番)/IgG1キメラ(GP1/2 GrP agly/G1)(図ではHP12と表記;白丸)、30mg/kgのHP12(黒丸)、及び3mg/kgのナタリズマブ(Tysabri、黒三角)の単回IVボーラス投与後のカニクイザルにおける遊離受容体の経時変化を示す線グラフである。 ヒト(ヒト1及びヒト2)ならびにカニクイザル(カニクイザル1及びカニクイザル2)におけるCD49(アルファ4インテグリン)の発現レベルを示す棒グラフである。 A~Dは、示される投与量におけるナタリズマブ(赤線)及びHP1/2(黒線)の単回IV投与後の受容体占有率予測値の経時変化を示す線グラフである。 特定の用量のHP1/2(図ではHP12と表記、白丸)及びナタリズマブ(黒三角)の投与後のCmaxにおける受容体占有率予測値を示すグラフである。
VLA-4に対する抗体は、疾患の処置において有用であることが実証されている。例えば、抗VLA-4抗体であるナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))は、再発性多発性硬化症及びクローン病を処置するのに使用されている。しかしながら、特定の状態、例えば脊髄傷害(SCI)もしくは外傷性脳傷害(TBI)などの急性状態の処置、またはがんの処置など投与回数に制限がある処置の場合、ナタリズマブとは異なる親和性、例えば、より高い親和性で結合し、及び/または異なる薬理学的プロファイルを有する(例えば、より低いインビボの薬物動態的/薬力学的変動を有する)抗VLA-4抗体で処置することが有利であり得る。そのような抗体は、必要とされる処置の頻度が低下し得る、または輸注以外の手段による投与がより効率的であり得るという点で、多発性硬化症などの状態を処置するのに有用である可能性もある。より低い用量での処置が可能になれば、PMLなどの有害事象のリスクも低下し得る。したがって、本発明は、このような望ましい特性を有する抗体を提供する。
本明細書に開示される特定の本発明の抗体は、新たに設計されたヒト化α4結合抗体のα4への結合親和性が、抗α4抗体ナタリズマブと比べて10倍高いという予想外の特徴を呈した。
本抗体はまた、例えば、FcポリペプチドのFc領域に1つ以上の安定化アミノ酸を含むことにより、低減したエフェクター機能をもつ安定化Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、安定化アミノ酸は、ポリペプチドのグリコシル化及び/またはエフェクター機能に影響を及ぼすことなく、ポリペプチドのFc領域を安定化させ、ポリペプチドの他の所望の機能(例えば、抗原結合親和性または半減期)を著しく変化させることはない。
本明細書及び特許請求の範囲が明確に理解されるように、便宜上、次の定義を下記に提供する。
定義
本明細書で使用される場合、「エフェクター機能」という用語は、Fc領域またはその一部分が免疫系のタンパク質及び/または細胞に結合し、様々な生物学的効果を媒介する機能的能力を意味する。エフェクター機能は、抗原依存性であっても抗原非依存性であってもよい。エフェクター機能の減少とは、抗体(またはその断片)の可変領域の抗原結合活性は維持されるものの、1つ以上のエフェクター機能が減少することを意味する。エフェクター機能、例えば、Fc受容体または補体タンパク質へのFc結合の増大または減少は、変化倍率(例えば、1倍の変化、2倍の変化など)の観点から表現することができ、例えば、当技術分野でよく知られるアッセイを使用して決定される結合活性の変化率に基づいて計算することができる。本明細書で使用される場合、「抗原依存性エフェクター機能」という用語は、対応する抗原に抗体が結合した後に通常誘導されるエフェクター機能を意味する。典型的な抗原依存性エフェクター機能には、補体タンパク質(例えばC1q)に結合する能力が含まれる。例えば、補体のCl成分がFc領域に結合すると、古典的補体系が活性化し、細胞病原体のオプソニン作用及び溶解がもたらされ得る。これは補体依存性細胞傷害(CDCC)と呼ばれるプロセスである。補体の活性化はまた、炎症応答も刺激し、自己免疫過敏症にも関与し得る。
他の抗原依存性エフェクター機能は、抗体がそのFc領域を介して、細胞上の特定のFc受容体(「FcR」)に結合することによって媒介される。IgG(ガンマ受容体、すなわちIgγR)、IgE(イプシロン受容体、すなわちIgεR)、IgA(アルファ受容体、すなわちIgαR)、及びIgM(ミュー受容体、すなわちIgμR)を含め、異なるクラスの抗体に特異的ないくつかのFc受容体が存在する。細胞表面上のFc受容体に抗体が結合すると、免疫複合体のエンドサイトーシス、抗体被覆粒子または微生物の貪食及び破壊(抗体依存性食作用、またはADCPとも呼ばれる)、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体被覆標的細胞の溶解(抗体依存性細胞傷害、またはADCCと呼ばれる)、炎症性メディエーターの放出、免疫系細胞活性化の調節、免疫グロブリンの胎盤通過及び産生制御を含む、いくつかの重要かつ多様な生物学的応答が誘起される。特定のFc受容体であるFcガンマ受容体(FcγR)は、免疫動員の抑止あるいは増強において重要な役割を果たす。FcγRは白血球で発現し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIの3つの異なるクラスから構成される(Gessner et al.,Ann.Hematol.,(1998),76:231-48)。構造的には、FcγRは全て、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、IgGに結合するα鎖を有し、細胞外部分が2つまたは3つのIg様ドメインから構成されている。ヒトFcγRI(CD64)はヒトの単球で発現し、単量体のIgG1、IgG3、及びIgG4に対して高い結合親和性(Ka=108~109M-1)を呈する。ヒトのFcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)は、IgG1及びIgG3に対して低い親和性(Ka<107M-1)を有し、これらのIgGアイソタイプの複合型またはポリマー型にしか結合できない。さらに、FcγRII及びFcγRIIIの各クラスは、「A」型と「B」型の両方を含む。FcγRIIa(CD32a)及びFcγRIIIa(CD16a)は、膜貫通ドメインによってマクロファージ、NK細胞、及びいくつかのT細胞の表面に結合し、一方でFcγRIIb(CD32b)及びFcγRIIIb(CD16b)は、ホスファチジルイノシトールグリカン(GPI)アンカーを介して顆粒球(例えば好中球)の細胞表面に選択的に結合する。ヒトのFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIの各マウス相同体は、FcγRIIa、FcγRIIb/1、及びFcγR1oである。
本明細書で使用される場合、「抗原非依存性エフェクター機能」という用語は、抗体が対応する抗原に結合しているかどうかを問わず、抗体によって誘導され得るエフェクター機能を意味する。典型的な抗原非依存性エフェクター機能としては、免疫グロブリンの細胞輸送、循環半減期、及びクリアランス速度、ならびに精製の促進が挙げられる。構造的に独特なFc受容体である「新生児型Fc受容体」または「FcRn」は、サルベージ受容体としても知られ、半減期及び細胞輸送の調節において重要な役割を果たす。微生物細胞から精製される他のFc受容体(例えばブドウ球菌プロテインAまたはG)は、Fc領域に高い親和性で結合することができ、Fc含有ポリペプチドの精製を促進するために使用され得る。
免疫グロブリンスーパーファミリーに属するFcγRとは異なり、ヒトFcRnは、主要組織適合抗原(MHC)クラスIのポリペプチドに構造的に類似する(Ghetie and Ward,Immunology Today,(1997),18(12):592-8)。FcRnは、典型的に、可溶性β鎖または軽鎖(β2ミクログロブリン)と複合した膜貫通α鎖または重鎖からなるヘテロ二量体として発現される。FcRnはクラスIのMHC分子と22~29%の配列同一性を共有し、非機能型のMHCペプチド結合溝を有する(Simister and Mostov,Nature,(1989),337:184-7)。MHCと同様に、FcRnのα鎖は、3つの細胞外ドメイン(α1、α2、α3)からなり、短い細胞質側末端がタンパク質を細胞表面に固定する。α1ドメイン及びα2ドメインは、抗体のFc領域内のFcR結合部位と相互作用する(Raghavan et al,Immunity,(1994),1:303-15)。FcRnは哺乳動物の胎盤子宮部または卵黄嚢で発現し、母体から胎児へのIgGの移行に関与する。FcRnは齧歯類の新生仔の小腸でも発現し、ここでFcRnは、摂取された初乳または乳汁からの刷子縁上皮を通した母体IgGの移行に関与する。FcRnはまた、多数の種の多数の他の組織、ならびに様々な内皮細胞株においても発現する。FcRnはまた、ヒト成人の血管内皮、筋肉脈管構造、及び肝類洞でも発現する。FcRnは、IgGに結合し、血清に再循環させることにより、IgGの循環半減期または血清レベルの維持において付加的役割を果たすと考えられている。IgG分子へのFcRnの結合は完全にpH依存性であり、最適な結合は7.0未満のpHで生じる。
本明細書で使用される場合、「半減期」という用語は、特定の結合ポリペプチドのインビボでの生物学的半減期を意味する。半減期は、対象に投与される量の半分が動物の循環及び/または他の組織から排除されるのに必要な時間によって表され得る。所与の結合ポリペプチドのクリアランス曲線が時間の関数として構築される場合、この曲線は通常、急速なα相とより長いβ相との二相性である。α相は、典型的に、投与されたFcポリペプチドの血管内空間と血管外空間との間の平衡を表し、ポリペプチドのサイズによって部分的に決定される。β相は、典型的に、血管内空間における結合ポリペプチドの異化を表す。したがって、非限定的な実施形態において、本明細書で使用される半減期という用語は、β相における結合ポリペプチドの半減期を意味する。ヒト抗体のヒトにおける典型的なβ相半減期は21日である。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、2つ以上の天然アミノ酸または非天然アミノ酸のポリマーを意味する。「Fcポリペプチド」という用語は、Fc領域またはその一部分(例えば、Fc部分)を含むポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、本発明の方法によって安定化される。任意選択の実施形態では、Fcポリペプチドは、FcポリペプチドのFc領域(またはその一部分)に作動可能に連結または融合した結合部位をさらに含む。
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド(例えば、Fcポリペプチド)または2つ以上のポリペプチドを含む組成物を意味する。したがって、タンパク質は、単量体(例えば、単一のFcポリペプチド)であっても多量体であってもよい。例えば、一実施形態において、本発明のタンパク質は二量体である。一実施形態において、本発明の二量体は、2つの同一の単量体サブユニットまたはポリペプチド(例えば、2つの同一のFcポリペプチド)を含むホモ二量体である。別の実施形態では、本発明の二量体は、2つの非同一の単量体サブユニットまたはポリペプチド(例えば、2つの非同一のFcポリペプチド、またはFcポリペプチド及びFcポリペプチド以外の第2のポリペプチド)を含むヘテロ二量体である。二量体のサブユニットは、1つ以上のポリペプチド鎖を含んでもよく、ここで、ポリペプチド鎖のうちの少なくとも1つはFcポリペプチドである。例えば、一実施形態において、二量体は、少なくとも2つのポリペプチド鎖(例えば、少なくとも2つのFcポリペプチド鎖)を含む。一実施形態において、二量体は、2つのポリペプチド鎖を含み、ここで、これらの鎖の一方または両方はFcポリペプチド鎖である。別の実施形態では、二量体は、3つのポリペプチド鎖を含み、ここで、ポリペプチド鎖のうちの1つ、2つ、または全てがFcポリペプチド鎖である。別の実施形態では、二量体は、4つのポリペプチド鎖を含み、ここで、ポリペプチド鎖のうちの1つ、2つ、3つ、または全てがFcポリペプチド鎖である。
本明細書で使用される場合、「連結した」、「融合した」、または「融合」という用語は、同義に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含め、あらゆる手段によって2つ以上の要素または成分をひとつに結合させることを意味する。化学的コンジュゲーションの(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤を使用する)方法は、当技術分野において公知である。本明細書で使用される場合、「遺伝子融合した」または「遺伝子融合」という用語は、2つ以上のタンパク質、ポリペプチド、またはそれらの断片が、それらの個々のペプチド骨格を介して、これらのタンパク質、ポリペプチド、または断片をコードする単一のポリヌクレオチド分子の遺伝子発現によって共線的に共有結合または付着することを意味する。このような遺伝子融合は、単一の連続的な遺伝子配列の発現をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子融合はインフレームである。すなわち、元のオープンリーディングフレーム(ORF)の正しいリーディングフレームを維持する様式で、2つ以上のORFが融合して、連続したより長いORFを形成する。したがって、結果として生じる組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のタンパク質セグメントを含む単一のポリペプチドである(これらのセグメントは通常、自然にこのように結合することはない)。このように、リーディングフレームが、融合した遺伝子セグメント全体にわたって連続的になっても、タンパク質セグメントは、例えばインフレームポリペプチドリンカーによって物理的または空間的に分離していてもよい。
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、抗体重鎖の2つ以上のFc部分によって形成される免疫グロブリンの一部分として定義されるものとする。特定の実施形態において、Fc領域は、二量体Fc領域である。「二量体Fc領域」または「dcFc」とは、2つの別個の免疫グロブリン重鎖のFc部分から形成された二量体を意味する。二量体Fc領域は、2つの同一のFc部分(例えば、天然に発生する免疫グロブリンのFc領域)からなるホモ二量体、または2つの非同一のFc部分からなるヘテロ二量体であり得る。他の実施形態では、Fc領域は、単量体または「一本鎖」のFc領域(すなわち、scFc領域)である。一本鎖Fc領域は、単一のポリペプチド鎖内に遺伝学的に関係付けられた(すなわち、単一の連続的な遺伝子配列にコードされた)Fc部分から構成される。例示的なscFc領域は、2008年5月14日に出願され、参照により本明細書に援用されるPCT出願第PCT/US2008/006260号に開示されている。
本明細書で使用される場合、「Fc部分」という用語は、免疫グロブリン重鎖のうち、パパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基を114として、IgGの残基226、Kabat付番/残基216、EU付番)のすぐ上流にあるヒンジ領域から始まり、免疫グロブリン重鎖のC末端で終わる部分に由来する配列を意味する。したがって、Fc部分は、完全なFc部分またはその一部分(例えば、ドメイン)であってもよい。完全なFc部分は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン(すなわち、Kabatアミノ酸226~477位;EUアミノ酸216~446位)を含む。付加的なリジン残基(K)がFc部分の最遠のC末端に存在することもあるが、多くの場合、成熟抗体から切断される。Fc領域内の各アミノ酸位置は、特記なき限り、当技術分野で認識されているEU付番システムに従って付番されている。特定の実施形態において、Fc部分は、ヒンジ(例えば、上部、中間部、及び/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらのバリアント、一部分、もしくは断片のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、Fc部分は、少なくともCH2ドメインまたはCH3ドメインを含む。特定の実施形態において、Fc部分は、完全なFc部分である。他の実施形態では、Fc部分は、天然に発生するFc部分と比べて、アミノ酸の挿入、欠失、または置換を1つ以上含む。例えば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、またはCH3ドメイン(またはその一部分)のうちの少なくとも1つは欠失していてもよい。例えば、Fc部分は、(i)CH2ドメイン(またはその一部分)に融合したヒンジドメイン(またはその一部分)、(ii)CH3ドメイン(またはその一部分)に融合したヒンジドメイン(またはその一部分)、(iii)CH3ドメイン(またはその一部分)に融合したCH2ドメイン(またはその一部分)、(iv)CH2ドメイン(またはその一部分)、及び(v)CH3ドメインまたはその一部分を含むか、またはこれらからなっていてもよい。
抗体のアミノ酸残基は独自の付番スキームを有することに留意されたい。公開文献のKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,vol.4,1991,U.S.Department of Health and Human Services,NIH,USAは、Kabat et alにおいてEUインデックス付番と呼ばれることもある付番スキームを示している。しかしながら、その後、Kabat付番と呼ばれる新たな付番システムが登場している。
非限定的な例において、次の表は、ヒトIgG1の重鎖CH1、CH2、及びCH3の各ドメインのEU付番とKabat付番との比較を示す。なお、ヒトIgG1の定常領域の配列は、配列番号83に提示している。
Figure 0007457661000001
Figure 0007457661000002
Figure 0007457661000003
なお、上記の表のアミノ酸残基は、ヒトIgG1において天然に生じるもの、または古典的なものである。したがって、297位(EU付番)(Kabat付番では314位である)の古典的残基はアスパラギン(N)である。アミノ酸残基が古典的残基から変化していれば、置換または変異と呼ばれる。
なお、ヒトIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)の類似性により、全てのIgG分子の定常領域は、EU付番118位(Kabat付番114位)のアラニン残基から始まり、EU付番447位(Kabat付番478位)のC末端におけるリジン残基で終わる。
下記の表は、EU付番で216位(Kabat付番で226位)のグルタミン酸残基から始まる、ヒトIgG1のヒンジのEU付番及びKabat付番の相関性を示す。
Figure 0007457661000004
下記の表は、EU付番で216位(Kabat付番で226位)のグルタミン酸残基から始まる、ヒトIgG4のヒンジのEU付番及びKabat付番の相関性を示す。
Figure 0007457661000005
いくつかの実施形態では、本明細書で言及される置換が、天然に発生するIgG1またはIgG4のいずれかに存在する場合、その置換を示すEU付番またはKabat付番は、天然に発生する親分子(またはそのドメイン)の付番に関するものである。例えば、IgG4のヒンジの228位にあるセリンが、例えばプロリンに変異している場合、この変異は、EU付番ではS228P、Kabat付番ではS241Pと示される。
ヒトIgG1の天然に発生する重鎖の全長配列は、ここでは、118位(EU付番)[114位(Kabat付番)]における古典的なアラニン残基から始まる配列番号83として提示される。
ヒトIgG1の天然に発生する重鎖の全長配列は、ここでは、118位(EU付番)[114位(Kabat付番)]における古典的なアラニン残基から始まる配列番号84として提示される。
本明細書で示すように、Fc部分が、天然に発生するFc部分によってもたらされる少なくとも1つの望ましい機能を保持しつつ、天然に発生する免疫グロブリン分子の完全なFc部分とアミノ酸配列が異なるように修飾され得ることは、当業者には理解されよう。例えば、Fc部分は、FcRnの結合または長期の半減期に必要であることが当技術分野において公知であるFc部分の一部分を少なくとも含むか、またはそれからなる場合がある。別の実施形態では、Fc部分は、FcγR結合に必要であることが当技術分野において公知である部分を少なくとも含む。一実施形態において、本発明のFc領域は、プロテインA結合に必要であることが当技術分野において公知である部分を少なくとも含む。一実施形態において、本発明のFc部分は、プロテインG結合に必要であることが当技術分野において公知であるFc分子の一部分を少なくとも含む。特定の実施形態において、Fc領域のFc部分は、同じアイソタイプのものである。
例えば、Fc部分は、IgG1またはIgG4アイソタイプの免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)に由来し得る。しかしながら、Fc領域(またはFc領域の1つ以上のFc部分)は、キメラであってもよい。キメラFc領域は、異なる免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc部分を含み得る。特定の実施形態において、二量体または一本鎖のFc領域のFc部分のうちの少なくとも2つは、異なる免疫グロブリンアイソタイプのものであり得る。付加的または代替的な実施形態において、キメラFc領域は、1つ以上のキメラFc部分を含み得る。例えば、キメラFc領域またはキメラFc部分は、第1のアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3アイソタイプ)の免疫グロブリンに由来する部分を1つ以上含み、Fc領域またはFc部分の残部は異なるアイソタイプのものであってもよい。例えば、FcポリペプチドのFc領域またはFc部分は、第1のアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプ)の免疫グロブリンに由来するCH2及び/またはCH3ドメインと、第2のアイソタイプ(例えば、IgG3アイソタイプ)の免疫グロブリンに由来するヒンジ領域とを含み得る。別の実施形態では、Fc領域またはFc部分は、第1のアイソタイプ(例えば、IgG4アイソタイプ)の免疫グロブリンに由来するヒンジ及び/またはCH2ドメインと、第2のアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3アイソタイプ)の免疫グロブリンに由来するCH3ドメインとを含む。別の実施形態では、キメラFc領域は、第1のアイソタイプ(例えば、IgG4アイソタイプ)の免疫グロブリン由来のFc部分(例えば、完全なFc部分)と、第2のアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2またはIgG3アイソタイプ)の免疫グロブリン由来のFc部分とを含む。例示的な一実施形態において、Fc領域またはFc部分は、IgG4免疫グロブリン由来のCH2ドメイン、及びIgG1免疫グロブリン由来のCH3ドメインを含む。別の実施形態では、Fc領域またはFc部分は、IgG4分子由来のCH1ドメイン及びCH2ドメイン、ならびにIgG1分子由来のCH3ドメインを含む。別の実施形態では、Fc領域またはFc部分は、特定のアイソタイプの抗体のCH2ドメインの一部分、例えば、CH2ドメインのKabat309~360位、EU292~340位を含む。例えば、一実施形態において、Fc領域またはFc部分は、IgG4部分に由来するCH2のアミノ酸292~340位(EU付番)、309~360位(Kabat付番)を含み、CH2の残部はIgG1部分に由来する(代替的には、CH2の292~340位(EU付番)、309~360位(Kabat付番)はIgG1部分に由来し、CH2の残部はIgG4部分に由来してもよい)。
他の実施形態では、Fc領域またはFc部分は、キメラヒンジ領域を含み得る。キメラヒンジは、一部はIgG1、IgG2、またはIgG4分子に由来し(例えば、上部及び下位中間部のヒンジ配列)、一部はIgG3分子に由来してもよい(例えば、中間部ヒンジ配列)。別の例において、Fc領域またはFc部分は、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG4分子に由来する、キメラヒンジを含み得る。特定の実施形態では、キメラヒンジは、IgG4分子由来の上部及び下部ヒンジドメイン、ならびにIgG1分子由来の中間部ヒンジドメインを含み得る。そのようなキメラヒンジは、IgG4ヒンジ領域の中間部ヒンジドメインのEU228位、Kabat241位にプロリン置換(Ser228Pro(EU付番);Ser241Pro(Kabat付番))を導入することによって作製され得る。別の実施形態では、キメラヒンジは、IgG2抗体のKabat246~249位のアミノ酸及び/またはSer228Pro(EU付番)Ser241Pro(Kabat付番)変異を含んでもよく、ここで、ヒンジの残りのアミノ酸はIgG4抗体由来である(例えば、配列ESKYGPPCPPCPAPPVAGPのキメラヒンジ)。さらなるキメラヒンジは、全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願第10/880,320号に記載されている。
「Fc領域」の定義には、「アグリコシル化Fc領域」が明確に含まれる。本明細書で使用される「アグリコシル化Fc領域」とは、例えば、そのFc部分のうちの1つ以上において、EU297位、Kabat314位のN-グリコシル化部位で、共有結合したオリゴ糖またはグリカンを欠いているFc領域である。特定の実施形態では、アグリコシル化Fc領域は、完全にアグリコシル化されている。すなわち、そのFc部分の全てが炭水化物を欠いている。他の実施形態では、アグリコシル化は、部分的なアグリコシル化(すなわち、半グリコシル化)である。アグリコシル化Fc領域は、Fc炭水化物が、例えば化学的または酵素的に除去されているFc領域である、脱グリコシル化Fc領域であってもよい。代替的には、アグリコシル化Fc領域は、非グリコシル化型または未グリコシル化型であってもよい。つまり、例えば、炭水化物をタンパク質に自然に結合させることのない生物(例えば、細菌)における発現、または遺伝子操作もしくはグリコシル化阻害因子(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ阻害因子)の付加によってグリコシル化機構を欠損させた宿主細胞もしくは生物における発現により、例えば、EU297位または299位、Kabat314位または318位におけるN-グリコシル化部位(例えば、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr)における、グリコシル化パターンをコードする1つ以上の残基の変異により、Fc炭水化物なしで発現された抗体である。代替的な実施形態では、Fc領域は、「グリコシル化Fc領域」であり、すなわち、全ての利用可能なグリコシル化部位で完全にグリコシル化されている。
「親Fcポリペプチド」という用語には、安定化が所望されるFc領域を含むポリペプチド(例えば、IgG抗体)が含まれる。いくつかの実施形態では、親Fcポリペプチドは、エフェクターレスFcポリペプチドである。低減したエフェクター機能をもつ安定化Fcポリペプチドについては報告がある(例えば、全体が参照により本明細書に援用されるPCT公開第WO2010/085682号を参照されたい)。したがって、親Fcポリペプチドは、本発明の方法が行われる、または安定性比較の基準点として使用され得る元のFcポリペプチドを表す。親ポリペプチドは、天然の(すなわち天然に発生する)Fc領域もしくはFc部分(例えば、ヒトIgG4のFc領域もしくはFc部分)、または天然に発生する配列の既存のアミノ酸配列修飾(例えば挿入、欠失及び/または他の変化)を有するが1つ以上の安定化アミノ酸を欠いているFc領域を含み得る。
「変異」または「変異する」という用語は、親Fcポリペプチドにおいて変異を物理的に作ること(例えば、1つのアミノ酸をコードする核酸分子のコドンを、例えば、部位特異的変異誘発によって変化させて、異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらすことによる)、または親Fc領域に見られないアミノ酸を有するバリアントFc領域を合成すること(例えば、親Fc領域をコードする核酸分子のヌクレオチド配列を知り、本発明の安定化ポリペプチドをコードする核酸分子の1つ以上のヌクレオチドを変異させる必要なしに、親Fc領域のバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の合成を設計することによる)を含むと理解されるものとする。
例示的な一実施形態において、親Fcポリペプチドは、エフェクターレスFcポリペプチドのFc領域を含む。本明細書で使用される場合、「エフェクターレスFcポリペプチド」という用語は、IgG1アイソタイプの野生型、アグリコシル化抗体と比較して、変化または低減したエフェクター機能を有するFcポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、低減または変化するエフェクター機能は、抗体依存性エフェクター機能、例えば、ADCC及び/またはADCPである。一実施形態において、エフェクターレスFcポリペプチドは、FcポリペプチドのFc領域、例えば、アグリコシル化Fc領域におけるグリコシル化の修飾または低減の結果として、低減したエフェクター機能を有する。別の実施形態では、エフェクターレスFcポリペプチドは、IgG4 Fc領域またはその一部分(例えば、IgG4抗体のCH2及び/またはCH3ドメイン)の組み込みに起因して、低減したエフェクター機能を有する。
「バリアントFcポリペプチド」または「Fcバリアント」という用語は、親Fcポリペプチドに由来するFcポリペプチドを含む。Fcバリアントは、例えば、少なくとも1つのFc安定化変異の導入に起因して、1つ以上の安定化アミノ酸残基の安定化を含むという点で、親Fcポリペプチドと異なる。特定の実施形態において、本発明のFcバリアントは、1つ以上の安定化Fcアミノ酸の存在を除いては親ポリペプチドと配列が同一であるFc領域(またはFc部分)を含む。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、親Fcポリペプチドと比較して増強された安定性を有し、場合により、親Fcポリペプチドと比較して同等かまたは低減したエフェクター機能を有する。
ポリペプチドまたはアミノ酸配列が所定のポリペプチドまたはタンパク質「に由来する」とは、ポリペプチドの起源を意味する。いくつかの実施形態では、特定の配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、その配列またはその一部分(この一部分は、少なくとも10~20アミノ酸、または少なくとも20~30アミノ酸、または少なくとも30~50アミノ酸、またはその配列に起源をもつものとして当業者が識別できる別の数のアミノ酸からなる)と本質的に同一であるアミノ酸配列を有する。ポリペプチドとの関連において、「直鎖状配列」または「配列」とは、アミノ末端からカルボキシル末端への方向におけるポリペプチド内のアミノ酸の順序であり、ここで、配列内で互いに隣接する残基は、ポリペプチドの一次構造において連続している。別のポリペプチド(例えば、親Fcポリペプチド)に由来するポリペプチド(例えば、バリアントFcポリペプチド)は、出発ポリペプチドまたは親ポリペプチドと比べて1つ以上の変異、例えば、別のアミノ酸残基に置換されているか、または1つ以上のアミノ酸残基の挿入もしくは欠失を有する1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に発生しないアミノ酸配列を含む。そのようなバリアントは、出発ポリペプチドと100%未満の配列同一性または類似性を必然的に有する。非限定的な実施形態において、バリアントは、例えば、バリアント分子の全長またはその一部分(例えば、Fc領域またはFc部分)にわたり、出発ポリペプチドのアミノ酸配列とのアミノ酸配列同一性または類似性が約75%から100%未満、または約80%から100%未満、または約85%から100%未満、または約90%から100%未満(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)、または約95%から100%未満であるアミノ酸配列を有する。一実施形態において、出発ポリペプチドの配列(例えば、親FcポリペプチドのFc領域)と、それに由来する配列(例えば、バリアントFcポリペプチドのFc領域)との間で、1つのアミノ酸が異なる。他の実施形態では、出発ポリペプチドの配列とバリアントポリペプチドとの間で、2~10個のアミノ酸が異なる(例えば、約2~20個、約2~15個、約2~10個、約5~20個、約5~15個、約5~10個のアミノ酸が異なる)。例えば、約10個未満のアミノ酸が異なる(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸が異なる)場合がある。この配列に関する同一性または類似性は、本明細書において、これらの配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後の、候補配列中の出発アミノ酸残基と同一であるアミノ酸残基(すなわち同じ残基)の百分率と定義される。
本発明のFcポリペプチドは、ヒト免疫グロブリン配列に由来するアミノ酸配列(例えば、少なくとも1つのFc領域またはFc部分)(例えば、ヒトIgG分子のFc領域またはFc部分)を含み得る。しかしながら、ポリペプチドは、別の哺乳動物種由来のアミノ酸を1つ以上含んでもよい。例えば、霊長類のFc部分または霊長類の結合部位が対象ポリペプチドに含まれてもよい。代替的には、1つ以上のマウスアミノ酸がFcポリペプチドに存在してもよい。いくつかの実施形態では、本発明のFcポリペプチドには免疫原性がない。
また、本発明のFcポリペプチドは、親ポリペプチドの1つ以上の望ましい活性(例えば、低減したエフェクター機能)を保持しながら、その起源となった親ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるように変化していてもよいことも、当業者には理解されよう。特定の実施形態では、Fcポリペプチドを安定化させるヌクレオチドまたはアミノ酸置換が行われる。一実施形態において、コードされるタンパク質に1つ以上のアミノ酸の置換、付加、または欠失が導入されるように、1つ以上のヌクレオチドの置換、付加、または欠失を親Fcポリペプチドのヌクレオチド配列に導入することにより、Fcバリアントをコードする単離された核酸分子を作出することができる。変異(例えば、安定化変異)は、部位特異的変異誘発及びPCRによる変異誘発などの標準的な技術によって導入され得る。
本明細書で使用される場合、「タンパク質安定性」という用語は、環境条件(例えば温度の上昇または低下)に応じたタンパク質の1つ以上の物理特性の維持に関する、当技術分野で認識されている尺度を意味する。一実施形態において、この物理特性は、タンパク質の共有構造の維持(例えば、タンパク質分解切断、不要な酸化、または脱アミド化がないこと)である。別の実施形態では、この物理特性は、適切にフォールディングした状態におけるタンパク質の存在(例えば、可溶性または不溶性の凝集体または沈殿物がないこと)である。一実施形態において、タンパク質の安定性は、タンパク質の生物物理学的特性、例えば熱安定性、pHアンフォールディングプロファイル、グリコシル化の安定な除去、可溶性、生化学的機能(例えば、タンパク質(例えば、リガンド、受容体、抗原など)または化学部分に結合する能力など)、及び/またはそれらの組み合わせをアッセイすることにより測定される。別の実施形態では、生化学的機能は、相互作用の結合親和性によって示される。一実施形態において、タンパク質安定性の尺度は、熱安定性、すなわち熱負荷に対する抵抗性である。安定性は、当技術分野で公知及び/または本明細書に記載の方法を使用して測定することができる。例えば、「転移温度」とも呼ばれる「Tm」を測定してもよい。Tmは、高分子、例えば結合分子の50%が変性する温度であり、タンパク質の熱安定性を表す標準的なパラメータと考えられている。
「アミノ酸」という用語には、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(HeまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、及びバリン(VaIまたはV)が含まれる。非古典的なアミノ酸も本発明の範囲内にあり、これらは、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及びEllman et al.Meth.Enzym.202:301-336(1991)に記載されるもののような他のアミノ酸残基類似体を含む。かかる天然に発生しないアミノ酸残基を生成するために、Noren et al.Science 244:182(1989)及びEllman et al.(上記)の手順を使用することができる。簡単に説明すると、これらの手順は、天然に発生しないアミノ酸残基でサプレッサーtRNAを化学的に活性化させ、その後インビトロで転写し、RNAの翻訳を行うことを含む。非古典的なアミノ酸の導入は、当技術分野において公知のペプチド化学を使用して達成することもできる。本明細書で使用される場合、「極性アミノ酸」という用語には、正味電荷はゼロであるが、側鎖の様々な部分における部分的な電荷はゼロではないアミノ酸(例えばM、F、W、S、Y、N、Q、C)が含まれる。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用及び静電相互作用に関与し得る。本明細書で使用される場合、「荷電アミノ酸」という用語には、側鎖にゼロではない正味電荷を有し得るアミノ酸(例えばR、K、H、E、D)が含まれる。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用及び静電相互作用に関与し得る。本明細書で使用される場合、「十分な立体容積を有するアミノ酸」という用語には、比較的大きな3次元空間を占有する側鎖を有するアミノ酸が含まれる。十分な立体容積をもつ側鎖化学構造を有する例示的なアミノ酸としては、チロシン、トリプトファン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミン、及びメチオニン、またはそれらの類似体もしくは模倣物が挙げられる。
「アミノ酸置換」とは、既定のアミノ酸配列(出発ポリペプチドのアミノ酸配列)に存在する少なくとも1つのアミノ酸残基が、第2の異なる「置換」アミノ酸残基で置換されることを意味する。「アミノ酸挿入」とは、少なくとも1つの付加的なアミノ酸が既定のアミノ酸配列に組み込まれることを意味する。挿入は通常、1つまたは2つのアミノ酸残基の挿入からなるが、本発明では、より大きな「ペプチド挿入」、例えば約3~約5個、またはさらには最大で約10、15、もしくは20個のアミノ酸残基の挿入が行われる場合がある。挿入される残基(複数可)は、上記に開示されるように、天然に発生するものであっても、天然に発生しないものであってもよい。「アミノ酸欠失」とは、既定のアミノ酸配列から少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されることを意味する。上記に示したように、これらの用語は、既存の物理的核酸分子に生じる実際の変化、または設計プロセス中に(例えば、紙上もしくはコンピュータで)行われる既存の核酸配列の変更を含む。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、結合ポリペプチドである。本明細書で使用される場合、「結合ポリペプチド」(例えば、結合抗体)という用語は、特定の標的分子(例えば抗原または結合パートナー)に特異的に結合する少なくとも1つの標的結合部位または結合ドメインを含むポリペプチド(例えば、Fcポリペプチド)を意味する。例えば、一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、リガンド結合に関与する免疫グロブリン抗原結合部位もしくは受容体分子の一部分、または受容体結合に関与するリガンド分子の一部分を含む。本発明の結合ポリペプチドは、少なくとも1つの結合部位を含む。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、少なくとも2つの結合部位を含む。一実施形態において、結合ポリペプチドは、2つの結合部位を含む。別の実施形態では、結合ポリペプチドは、3つの結合部位を含む。別の実施形態では、結合ポリペプチドは、4つの結合部位を含む。一実施形態において、結合部位は、互いに直列結合している。他の実施形態では、結合部位は、結合ポリペプチドの異なる位置に、例えば、FcポリペプチドのFc領域のN末端またはC末端の1つ以上に位置付けられる。例えば、Fc領域がscFc領域である場合、結合部位は、scFc領域のN末端、C末端、または両端に結合していてもよい。Fc領域が二量体Fc領域である場合、結合部位は、一方もしくは両方のN末端及び/または一方もしくは両方のC末端に結合していてもよい。
本明細書で使用される「結合ドメイン」、「結合部位」、または「結合部分」という用語は、結合ポリペプチドのうち、例えば、標的分子(例えば抗原、リガンド、受容体、基質、または阻害因子)との特異的結合を媒介する生物学的活性(Fcによる生物学的活性を除く)を有する部分、領域、または部位を意味する。例示的な結合ドメインとしては、生物学的活性のあるタンパク質もしくは部分、抗原結合部位、リガンドの受容体結合ドメイン、受容体のリガンド結合ドメイン、または酵素的ドメインが挙げられる。別の例において、「結合部分」という用語は、生物学的システムの成分(例えば、血清中、または細胞表面上、または細胞基質中のタンパク質)に結合し、この結合が、生物学的効果(例えば、活性部分及び/または結合する成分における変化(例えば、活性部分及び/または結合する成分の切断、シグナルの伝達、または細胞もしくは対象における生物学的応答の増強もしくは阻害)によって測定される)をもたらす、生物学的活性のある分子またはその一部分を意味する。
本明細書で使用される「リガンド結合ドメイン」という用語は、天然の受容体(例えば、細胞表面受容体)、または、対応する天然の受容体の少なくとも定性的なリガンド結合能力及び/または生物学的活性の少なくとも一部(または大部分)を保持する領域もしくはその誘導体を意味する。本明細書で使用される「受容体結合ドメイン」という用語は、天然のリガンド、または、対応する天然のリガンドの少なくとも定性的な受容体結合能力及び/または生物学的活性の少なくとも一部を保持する領域もしくはその誘導体を意味する。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、低減または消失させる標的となる分子、例えば、細胞表面抗原または可溶性抗原に対して特異的な、少なくとも1つの結合ドメインを有する。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、抗原結合部位(例えば、代替的なフレームワーク領域(例えば、場合により1つ以上のアミノ酸置換を含むヒトフレームワーク領域)に配置された、抗体由来の可変重鎖配列及び可変軽鎖配列または6つのCDRを含む)を含むか、またはそれからなる。本明細書で使用される「結合親和性」という用語は、結合相互作用の強度を含み、したがって、実際の結合親和性と見かけの結合親和性の両方を含む。実際の結合親和性は、会合速度の解離速度に対する比である。したがって、結合親和性の付与または最適化には、これらの成分の一方または両方を変化させて、所望のレベルの結合親和性を達成することが含まれる。見かけの親和性は、例えば、相互作用のアビディティを含み得る。
本明細書で使用される「結合自由エネルギー」(binding free energyまたはfree energy of binding)という用語は、当技術分野で認識されている意味、特に、溶媒中の結合部位-リガンド相互作用またはFc-FcR相互作用に適用される意味を含む。結合自由エネルギーの低減は親和性を増強させ、結合自由エネルギーの増大は親和性を低減させる。
「特異性」という用語には、所与の標的に特異的に結合する(例えば、免疫反応する)潜在的な結合部位の数が含まれる。結合ポリペプチドは、単一特異性であり、同じ標的(例えば、同じエピトープ)に特異的に結合する結合部位を1つ以上含む場合もあれば、結合ポリペプチドは、多特異性であり、同じ標的の異なる領域(例えば、異なるエピトープ)または異なる標的に特異的に結合する結合部位を2つ以上含む場合もある。一実施形態において、2つ以上の標的分子(例えば、2つ以上の抗原または同じ抗原上の2つ以上のエピトープ)に対する結合特異性を有する多特異性結合ポリペプチド(例えば、二重特異性ポリペプチド)が作製されうる。別の実施形態では、多特異性結合ポリペプチドは、低減または消失させる標的となる分子に対して特異的な少なくとも1つの結合ドメインと、細胞上の標的分子に対して特異的な少なくとも1つの結合ドメインとを有する。別の実施形態では、多特異性結合ポリペプチドは、低減または消失させる標的となる分子に対して特異的な少なくとも1つの結合ドメインと、薬物に対して特異的な少なくとも1つの結合ドメインとを有する。さらに別の実施形態では、多特異性結合ポリペプチドは、低減または消失させる標的となる分子に対して特異的な少なくとも1つの結合ドメインと、プロドラッグに対して特異的な少なくとも1つの結合ドメインとを有する。さらに別の実施形態では、多特異性結合ポリペプチドは、1つの標的分子に対して特異的な2つの結合ドメインと、第2の標的分子に対して特異的な2つの結合部位とを有する四価抗体である。
本明細書で使用される場合、「結合価」という用語は、結合ポリペプチドまたは結合タンパク質における潜在的な結合ドメインの数を意味する。各結合ドメインは、1つの標的分子に特異的に結合する。結合ポリペプチドが2つ以上の結合ドメインを含む場合、各結合ドメインは、同じ分子または異なる分子に特異的に結合してもよい(例えば、異なるリガンドもしくは異なる抗原、または同じ抗原上の異なるエピトープに結合してもよい)。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは一価である。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは多価である。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは二価である。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは三価である。さらに別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは四価である。特定の態様では、本発明の結合ポリペプチドは、ポリペプチドリンカーを用いる。本明細書で使用される場合、「ポリペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の2つのドメインを直鎖状のアミノ酸配列で接続するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)を意味する。例えば、ポリペプチドリンカーは、本発明のFcポリペプチドのFc領域(またはFc部分)に結合部位を接続するために使用され得る。いくつかの実施形態では、このようなポリペプチドリンカーは、ポリペプチド分子に柔軟性を与える。例えば、一実施形態において、VHドメインまたはVLドメインが、ポリペプチドリンカーに融合または連結し、ポリペプチドリンカーのN末端またはC末端が、Fc領域(またはFc部分)のC末端またはN末端に結合し、ポリペプチドリンカーのN末端が、VHまたはVLドメインのN末端またはC末端に結合する。特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、scFcポリペプチドの2つのFc部分またはドメインを接続する(例えば、遺伝子融合させる)ために使用される。このようなポリペプチドリンカーは、本明細書では、Fc接続ポリペプチドとも呼ばれる。本明細書で使用される場合、「Fc接続ポリペプチド」という用語は、2つのFc部分またはドメインを接続する(例えば、遺伝子融合させる)連結ポリペプチドを特に意味する。本発明の結合分子は、2つ以上のペプチドリンカーを含み得る。
本明細書で使用される場合、「適切にフォールディングしたポリペプチド」という用語には、ポリペプチドを構成する機能的ドメインの全てが明確に活性をもつポリペプチド(例えば、本発明の結合ポリペプチド)が含まれる。本明細書で使用される場合、「不適切にフォールディングしたポリペプチド」という用語には、ポリペプチドの機能的ドメインのうちの少なくとも1つに活性がないポリペプチドが含まれる。本明細書で使用される場合、「適切にフォールディングしたFcポリペプチド」または「適切にフォールディングしたFc領域」は、結果として生じるFc領域が少なくとも1つのエフェクター機能を含むように、成分である少なくとも2つのFc部分が適切にフォールディングしているFc領域(例えば、scFc領域)を含む。
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、2つの重鎖と2つの軽鎖の組み合わせを有するポリペプチドを含み、これが関連する特定の免疫反応性を有するか否かを問わない。
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、目的の抗原(例えば腫瘍関連抗原)に対して有意な既知の特定の免疫反応活性を有するような集合体(例えば、インタクト抗体分子、抗体断片、またはそれらのバリアント)を意味する。抗体及び免疫グロブリンは軽鎖及び重鎖を含み、これらの間には鎖間共有結合があってもなくてもよい。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリンの構造は比較的よく理解されている。
下記にさらに詳細に記述するように、「抗体」という総称には、生化学的に区別され得る5つの異なるクラスの抗体が含まれる。各クラスの抗体のFc部分が明らかに本発明の範囲内にあり、以下の記述は概して、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関するものである。IgGに関しては、免疫グロブリンは、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖とを含む。これら4つの鎖は、ジスルフィド結合によって結合されて「Y」構成をなし、軽鎖が「Y」の分岐点から始まって可変ドメインの全体にわたり、重鎖を挟む。
免疫グロブリンの軽鎖は、カッパまたはラムダ(K、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスには、カッパまたはラムダのいずれかの軽鎖が結合し得る。概して、軽鎖及び重鎖は互いに共有結合しており、2つの重鎖の「尾」部分は、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生成される場合、共有ジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合している。重鎖では、アミノ酸配列は、Y構成の分岐の両端にあるN末端から、各鎖の端にあるC末端まで続く。重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)に分類され、これらの中にはいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4)があることは、当業者には理解されよう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA IgG、またはIgEと決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは十分に解析されており、機能の特殊化をもたらすことが知られている。これらのクラス及びアイソタイプのそれぞれの変化型は、本開示内容を鑑みれば当業者には容易に認識可能であり、したがって、本発明の範囲内にある。
軽鎖と重鎖の両方が、構造的及び機能的に相同な領域に分けられる。「領域」という用語は、単一の免疫グロブリンの部分もしくは一部分(「Fc領域」という用語の場合のように)、または単一の抗体鎖を意味し、定常領域または可変領域、ならびに前記ドメインのより個別的な部分または一部分を含む。例えば、軽鎖可変ドメインは、本明細書で定義するように、「フレームワーク領域」すなわち「FR」に散在する「相補性決定領域」すなわち「CDR」を含む。免疫グロブリンの特定の領域は、「定常領域」の場合は様々なクラスメンバーの領域内の配列多様性が相対的にないこと、または「可変領域」の場合は様々なクラスメンバーの領域内の多様性が著しいことに基づいて、「定常」(C)領域または「可変」(V)領域と定義され得る。「定常領域」及び「可変領域」という用語は、機能的に使用される場合もある。これに関して、免疫グロブリンまたは抗体の可変領域が抗原認識及び特異性を決定することは理解されよう。反対に、免疫グロブリンまたは抗体の定常領域は、分泌、経胎盤可動性、Fc受容体結合、補体結合などの重要なエフェクター機能をもたらす。様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造及び三次元構成はよく知られている。
免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の定常領域及び可変領域は、フォールディングしてドメインをなす。「ドメイン」という用語は、例えばβプリーツシート及び/または鎖内ジスルフィド結合によって安定化されたペプチドループを含む(例えば、3~4つのペプチドループを含む)、重鎖または軽鎖ポリペプチドの独立してフォールディングする球状領域を意味する。免疫グロブリンの軽鎖の定常領域ドメインは、同義に「軽鎖定常領域ドメイン」、「CL領域」、または「CLドメイン」と呼ばれる。重鎖の定常ドメイン(例えばヒンジ、CH1、CH2、またはCH3ドメイン)は、同義に「重鎖定常領域ドメイン」、「CH」領域ドメイン、または「CHドメイン」と呼ばれる。軽鎖の可変ドメインは、同義に「軽鎖可変領域ドメイン」、「VL領域ドメイン」または「VLドメイン」と呼ばれる。重鎖の可変ドメインは、同義に「重鎖可変領域ドメイン」、「VH領域ドメイン」、または「VHドメイン」と呼ばれる。
慣例により、可変領域ドメイン及び定常領域ドメインの番号は、免疫グロブリンまたは抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠位になるにつれて大きくなる。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖それぞれのN末端は可変領域であり、C末端には定常領域がある。CH3及びCLドメインは実際、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を含む。したがって、軽鎖免疫グロブリンのドメインは、VL-CLの方向に配置され、重鎖のドメインは、VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3の方向に配置されている。重鎖定常領域内のアミノ酸位置は、CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメイン内のアミノ酸位置を含め、本明細書では、特記なき限り、EUインデックス付番システムに従って付番されている。対照的に、軽鎖定常領域(例えばCLドメイン)内のアミノ酸位置は、本明細書では、Kabatインデックス付番システム(Kabat et al.、同上参照)に従って付番されている。
本明細書で使用される場合、「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「VLドメイン」という用語は、Kabatインデックス付番システムによる免疫グロブリン軽鎖のアミノ末端可変ドメインを含む。
本明細書で使用される場合、「CH1ドメイン」という用語は、例えば、EU118~215位付近に伸びる、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側にあり、免疫グロブリン重鎖のFc領域の一部を形成しない。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖分子(例えば、ヒトIgG1またはIgG4分子)に由来するCH1ドメインを含む。
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」という用語は、重鎖分子のCH1ドメインをCH2ドメインに結合する部分を含む。このヒンジ領域はおよそ25個の残基を含み、柔軟性があるため、N末端側の2つの抗原結合領域が独立して動くことができる。ヒンジ領域は、上部、中間部、及び下部のヒンジドメインという3つの異なるドメインに細分することができる(Roux et al.J.Immunol.1998,161:4083)。
本明細書で使用される場合、「CH2ドメイン」という用語は、例えば、EU231~340位付近に伸びる、重鎖免疫グロブリン分子の一部分を含む。CH2ドメインは、別のドメインと密接な対をなさないという点で独特である。むしろ、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間には、2つのN結合型分枝状炭水化物鎖が介在する。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、IgG1分子(例えばヒトIgG1分子)に由来するCH2ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、IgG4分子(例えば、ヒトIgG4分子)に由来するCH2ドメインを含む。ある例示的な実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH2ドメイン(EU231~340位)またはその一部分を含む。
本明細書で使用される場合、「CH3ドメイン」という用語は、重鎖免疫グロブリン分子のうち、CH2ドメインのN末端からおよそ110残基、例えば、341~446b位付近(EU付番システム)に伸びる部分を含む。付加的なリジン残基(K)がCH3ドメインの最遠のC末端に存在することもあるが、多くの場合、成熟抗体から切断される。CH3ドメインは典型的に抗体のC末端部分を形成する。しかしながら、いくつかの免疫グロブリンでは、さらなるドメインがCH3ドメインから伸びて、分子のC末端部分を形成する場合がある(例えば、IgMのμ鎖及びIgEのε鎖におけるCH4ドメイン)。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、IgG1分子(例えば、ヒトIgG1分子)に由来するCH3ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、IgG4分子(例えば、ヒトIgG4分子)に由来するCH3ドメインを含む。
本明細書で使用される場合、「CLドメイン」という用語は、例えば、Kabat107A~216位付近に伸びる、免疫グロブリン軽鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインを含む。CLドメインは、VLドメインに隣接する。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、カッパ軽鎖(例えば、ヒトカッパ軽鎖)に由来するCLドメインを含む。
上記のように、抗体の可変領域は、抗体が抗原のエピトープを選択的に認識して特異的に結合することを可能にする。標的に特異的に結合する抗体は、標的結合抗体と呼ばれる場合がある(例えば、α4結合抗体は、α4に特異的に結合する抗体である)。「特異的に結合する」とは、抗体(またはその可変領域)が、その標的(例えば、α4インテグリンのエピトープ)に、約5×10-5(すなわち、50uM)未満、または約1×10-5(すなわち、10uM)未満、または約5×10-6(すなわち、5uM)未満、または約1×10-6(すなわち、1uM)未満、または約5×10-7(すなわち、500nM)未満、または約1×10-7(すなわち、100nM)未満、または約5×10-8(すなわち、50nM)未満、または約1×10-8(すなわち、10nM)未満、または約5×10-9(すなわち、5nM)未満、または約1×10-9(すなわち、1nM)未満、または約5×10-10(すなわち、500pM)未満、または約1×10-10(すなわち、100pM)未満、または約5×10-11(50pM)未満、または約1×10-11(10pM)未満、または約5×10-12(5pM)未満、または約1×10-12(1pm)未満、または約5×10-13(500fM)未満、または約1×10-13(100fM)未満、または約5×10-14(50fM)未満、または約1×10-14(10fM)未満、または約5×10-15(5fM)未満、または約1×10-15(1fM)未満の平衡解離定数(K)で特異的に結合することを意味する。つまり、抗体のVLドメイン及びVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を決める可変領域を形成する。この四次抗体構造は、Yの各アームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より詳細には、抗原結合部位は、VH及びVL鎖のそれぞれにある3つのCDRによって決まる。
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、細胞表面または可溶性抗原などの抗原に特異的に結合する(免疫反応する)部位を含む。一実施形態において、結合部位は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域を含み、これらの可変領域によって形成される結合部位は、抗体の特異性を決定する。抗原結合部位は、ポリペプチドによって異なる可変領域によって形成される。一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、抗体分子(例えば、当技術分野において公知または本明細書に記載の配列)の重鎖または軽鎖CDRを少なくとも1つ含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、1つ以上の抗体分子のCDRを少なくとも2つ含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、1つ以上の抗体分子のCDRを少なくとも3つ含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、1つ以上の抗体分子のCDRを少なくとも4つ含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、1つ以上の抗体分子のCDRを少なくとも5つ含む抗原結合部位を含む。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、抗体分子のCDRを6つ含む抗原結合部位を含む。本発明の結合ポリペプチドに含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的な抗体分子は、当技術分野において公知であり、例示的な分子を本明細書に記載する。
本明細書で使用される場合、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見られる、隣接していない抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域は、Kabat et al.,J.Biol.Chem.252,6609-6616(1977)及びKabat et al.,Sequences of protein of immunological interest.(1991)、ならびにChothia et al.,J.MoI.Biol.196:901-917(1987)及びMacCallum et al.,J.MoI.Biol.262:732-745(1996)に記載されており、その定義には、互いに対して比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。上記の参考文献のそれぞれによって定義される、CDRに含まれるアミノ酸残基を、比較のために示す。いくつかの実施形態では、「CDR」という用語は、配列比較に基づいてKabatにより定義されたCDRである。
Figure 0007457661000006
本明細書で使用される「フレームワーク領域」または「FR領域」という用語には、可変領域の一部であるが、CDRの一部ではない(例えば、KabatによるCDRの定義を使用した場合)アミノ酸残基が含まれる。したがって、可変領域フレームワークは、約100~120アミノ酸長であるが、CDR外のアミノ酸しか含まない。重鎖可変領域、及びKabatらによって定義されたCDRの具体例としては、フレームワーク領域1は、アミノ酸1~30を含む可変領域のドメインに対応し、フレームワーク領域2は、アミノ酸36~49を含む可変領域のドメインに対応し、フレームワーク領域3は、アミノ酸66~94を含む可変領域のドメインに対応し、フレームワーク領域4は、アミノ酸103から可変領域の末端までの可変領域のドメインに対応する。軽鎖のフレームワーク領域は、軽鎖可変領域CDRのそれぞれにより、同様に分離している。同様に、ChothiaらまたはMcCallumらによるCDRの定義を使用すると、フレームワーク領域の境界は、上述の各CDR末端によって分離している。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabatの定義によるものである。
天然に発生する抗体では、各単量体抗体に存在する6つのCDRは、抗体が水性環境で三次元構成をとると抗原結合部位を形成するように特異的に配置されたアミノ酸の短い非連続的な配列である。重鎖及び軽鎖の可変ドメインの残りは、アミノ酸配列の分子間変動をあまり示さず、フレームワーク領域と呼ばれる。フレームワーク領域は大部分がβシート立体構造をとり、CDRはループを形成し、このループがβシート構造を接続し、場合によってはその一部を形成する。したがって、これらのフレームワーク領域は、鎖間の非共有結合相互作用によって6つのCDRを正しい位置に配置するための足場を形成するように機能する。配置されたCDRによって形成される抗原結合部位は、免疫反応性抗原のエピトープに相補的な表面を決める。この相補的な表面は、免疫反応性抗原エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。CDRの位置は、当業者によって容易に同定され得る。
特定の実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、選択された抗原との結合ポリペプチドの会合をもたらす少なくとも2つの抗原結合ドメインを(例えば、同じ結合ポリペプチド内に(例えば、単一のポリペプチドのN末端とC末端の両方に)、または本発明の多量体結合タンパク質の成分である各結合ポリペプチドに結合した状態で)含む。抗原結合ドメインは、同じ免疫グロブリン分子に由来する必要はない。これに関して、可変領域は、所望の抗原に対して液性応答を開始し、免疫グロブリンを生成するように誘導され得る任意のタイプの動物に由来してもよいし、由来しなくてもよい。したがって、可変領域は例えば、哺乳動物由来であってもよく、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル、マカクなど)、オオカミ、ラクダ科(例えば、ラクダ、ラマ、及び関連種由来)であってもよい。
「抗体バリアント」または「修飾抗体」という用語には、天然には発生せず、アミノ酸配列またはアミノ酸側鎖化学構造が、天然由来抗体のものと、少なくとも1つのアミノ酸または本発明に記載のアミノ酸修飾によって異なる抗体が含まれる。本明細書で使用される場合、「抗体バリアント」という用語には、天然に発生しないように変化した合成型の抗体、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全な重鎖を含まない抗体(例えば、ドメイン欠失抗体またはミニボディ)、2つ以上の異なる抗原または単一の抗原上の異なるエピトープに結合するように変化した多特異性型の抗体(例えば、二重特異性、三重特異性など)、scFv分子に結合した重鎖分子、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及び変化したエフェクター機能を有する抗体などが含まれる。
本明細書で使用される場合、「scFv分子」という用語には、1つの軽鎖可変ドメイン(VL)またはその一部分と、1つの重鎖可変ドメイン(VH)またはその一部分とからなる結合分子で、各可変ドメイン(またはその一部分)が同じまたは異なる抗体に由来する結合分子が含まれる。scFv分子は、VHドメインとVLドメインとの間に介在するscFvリンカーを含み得る。ScFv分子は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号、Ho et al.1989.Gene 77:51、Bird et al.1988 Science 242:423、Pantoliano et al.1991.Biochemistry 30:10117、Milenic et al.1991.Cancer Research 51:6363、Takkinen et al.1991.Protein Engineering 4:837に記載されている。
本明細書で使用される「scFvリンカー」とは、scFvのVLドメインとVHドメインとの間に介在する部分を意味する。scFvリンカーは、いくつかの実施形態では、scFv分子を抗原結合性の立体構造に維持し得る。一実施形態において、scFvリンカーは、scFvリンカーペプチドを含むか、またはそれからなる。特定の実施形態において、scFvリンカーペプチドは、gly-serポリペプチドリンカーを含むか、またはそれからなる。他の実施形態では、scFvリンカーは、ジスルフィド結合を含む。
本明細書で使用される場合、「gly-serポリペプチドリンカー」という用語は、グリシン残基及びセリン残基からなるペプチドを意味する。例示的なgly/serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)nを含む。一実施形態では、n=1である。一実施形態では、n=2である。別の実施形態では、n=3、すなわち、(Gly4Ser)3である。別の実施形態では、n=4、すなわち、(Gly4Ser)4である。別の実施形態では、n=5である。さらに別の実施形態では、n=6である。別の実施形態では、n=7である。さらに別の実施形態では、n=8である。別の実施形態では、n=9である。さらに別の実施形態では、n=10である。別の例示的なgly/serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)nを含む。一実施形態では、n=1である。一実施形態では、n=2である。ある実施形態では、n=3である。別の実施形態では、n=4である。別の実施形態では、n=5である。さらに別の実施形態では、n=6である。
本明細書で使用される場合、「天然システイン」という用語は、ポリペプチドの特定のアミノ酸位置で天然に発生し、人工的に修飾、導入、または変化したものではないシステインアミノ酸を意味する。「操作されたシステイン残基またはその類似体」または「操作されたシステインまたはその類似体」という用語は、合成手段によって(例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的もしくは化学的なカップリング、またはこれらの技術の何らかの組み合わせによって)、あるアミノ酸位置にシステイン残基またはその類似体を自然に含むことのないポリペプチドに、そのアミノ酸位置で導入された、非天然システイン残基またはシステイン類似体(例えば、チアゾリン-4-カルボン酸及びチアゾリジン-4カルボン酸(チオプロリン、Th)などのチオール含有類似体)を意味する。
本明細書で使用される場合、「ジスルフィド結合」という用語には、2つの硫黄原子間に形成される共有結合が含まれる。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成したり、第2のチオール基と架橋したりすることができるチオール基を含む。ほとんどの天然に発生するIgG分子では、CH1及びCL領域は、天然のジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabat付番システムを使用した場合に239位及び242位に対応する位置(EU付番システムでは226位または229位)で2つの天然のジスルフィド結合によって連結されている。
本明細書で使用される場合、「結合型システイン」という用語は、ポリペプチド内の天然のまたは操作されたシステイン残基で、同じまたは異なるポリペプチド内に存在する第2の天然のもしくは操作されたシステインまたは他の残基と、ジスルフィド結合または他の共有結合を形成するものを意味する。「鎖内結合型システイン」とは、同じポリペプチド内に存在する第2のシステインと共有結合した(すなわち、鎖内ジスルフィド結合)結合型システインを意味する。「鎖間結合型システイン」とは、異なるポリペプチド内に存在する第2のシステインと共有結合した(すなわち、鎖間ジスルフィド結合)結合型システインを意味する。
本明細書で使用される場合、「遊離システイン」という用語は、実質的に還元された形態で存在する、ポリペプチド配列内の天然のまたは操作されたシステインアミノ酸残基(及びその類似体または模倣物、例えばチアゾリン-4-カルボン酸及びチアゾリジン-4カルボン酸(チオプロリン、Th))を意味する。いくつかの実施形態では、遊離システインは、本発明のエフェクター部分によって修飾されることができる。
「チオール修飾試薬」という用語は、結合ポリペプチド内の(例えば、結合ポリペプチドのポリペプチドリンカー内の)操作されたシステイン残基またはその類似体のチオール基と選択的に反応することができ、これにより、エフェクター部分の結合ポリペプチドへの部位特異的な化学的付加または架橋のための手段をもたらすことにより、修飾された結合ポリペプチドを形成する化学的因子を意味する。いくつかの実施形態では、チオール修飾試薬は、遊離システイン残基に存在するチオールまたはスルフヒドリル官能基を利用する。例示的なチオール修飾試薬は、マレイミド、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化アリール、α-ハロアシル、ならびにピリジルジスルフィドを含む。
「機能的部分」という用語は、いくつかの実施形態では、望ましい機能を結合ポリペプチドに加える部分を含む。いくつかの実施形態では、この機能は、ポリペプチドの固有の望ましい活性、例えば、分子の抗原結合活性を著しく変化させることなく加えられる。本発明の結合ポリペプチドは、同じであっても異なっていてもよい1つ以上の機能的部分を含み得る。有用な機能的部分の例としては、エフェクター部分、親和性部分、及びブロッキング部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なブロッキング部分には、例えば、ポリペプチドをグリコシル化するグリコシダーゼの能力をブロックすることにより、発生するグリコシル化が低減するように、十分な立体容積及び/または電荷をもつ部分が含まれる。ブロッキング部分は、さらに、または代替的には、例えば、受容体または補体タンパク質に結合するFc領域の能力を阻害することにより、エフェクター機能を低減させ得る。非限定的なブロッキング部分には、システイン付加体、システイン、混合ジスルフィド付加体、及びPEG部分が含まれる。例示的な検出可能部分には、蛍光部分、放射性同位元素部分、放射線不透過性部分などが含まれる。化学部分のコンジュゲーションに関して、「連結部分」という用語は、機能的部分を結合ポリペプチドの残部に連結することができる部分を含む。連結部分は、切断可能または切断不可能であるように選択され得る。切断不可能な連結部分は、概して、高い体内安定性を有するが、好ましくない薬物動態的を有する場合もある。
「スペーサー部分」という用語は、分子内に空間を導入するように設計された非タンパク質部分である。一実施形態において、スペーサー部分は、炭素、酸素、窒素、硫黄などから選択される0~100原子の、場合により置換されている鎖であり得る。一実施形態において、スペーサー部分は、水溶性があるように選択される。別の実施形態では、スペーサー部分は、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。
「PEG化部分」または「PEG部分」という用語には、ポリアルキレングリコール化合物またはその誘導体が含まれ、カップリング剤、またはカップリング部分もしくは活性化部分による誘導体化(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシラン、またはマレイミド部分によるもの、例えば、PEG-マレイミド)の有無を問わない。他の適切なポリアルキレングリコール化合物は、マレイミドモノメトキシPEG、活性化PEGポリプロピレングリコールだけでなく、デキストラン、コロミン酸、または他の炭水化物系ポリマー、アミノ酸のポリマー、及びビオチン誘導体のタイプの荷電ポリマーまたは中性ポリマーも含む。本明細書で使用される場合、「エフェクター部分」(E)という用語は、生物学的活性または他の機能的活性を有する診断剤及び治療剤(例えばタンパク質、核酸、脂質、薬物部分、及びそれらの断片)を含み得る。例えば、結合ポリペプチドにコンジュゲートされたエフェクター部分を含む結合ポリペプチドは、コンジュゲートされていないポリペプチドと比較して少なくとも1つの付加的な機能または特性を有する。例えば、細胞傷害性薬物部分(例えば、エフェクター部分)を結合ポリペプチドに(例えば、そのポリペプチドリンカーを介して)コンジュゲートすると、第2の機能として(すなわち、抗原結合に加えて)薬物の細胞傷害性を有する修飾されたポリペプチドの形成がもたらされる。別の例では、第1の結合ポリペプチドへの第2の結合ポリペプチドのコンジュゲーションにより、付加的な結合特性がもたらされ得る。一態様において、エフェクター部分が、遺伝子にコードされた治療または診断用のタンパク質または核酸である場合、エフェクター部分は、当技術分野でよく知られるペプチド合成または組換えDNA法のいずれかによって合成または発現され得る。別の態様において、エフェクターが、遺伝子にコードされていないペプチドまたは薬物部分である場合、エフェクター部分は、人工的に合成されるか、または天然源から精製され得る。
本明細書で使用される場合、「薬物部分」という用語は、抗炎症剤、抗がん剤、抗感染剤(例えば、抗真菌剤、抗菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤など)、及び麻酔性治療剤を含む。さらなる実施形態において、薬物部分は、抗がん剤または細胞傷害剤である。適合性のある薬物部分はまた、プロドラッグを含み得る。
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較すると、活性、反応性、または副作用を生じる傾向が低く、インビボでより活性な形態へと酵素によって活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を意味する。本発明に適合するプロドラッグとしては、ホスフェート含有プロドラッグ、アミノ酸含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、場合により置換されているフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは場合により置換されているフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞傷害性遊離薬物へと変換され得る。当業者は、本発明の修飾された結合タンパク質を調製する目的で、該当する化合物の反応をより簡便にするために、所望の薬物部分またはそのプロドラッグに化学修飾を行ってもよい。薬物部分には、本明細書に記載される薬物部分の誘導体、薬学的に許容される塩、エステル、アミド、及びエーテルも含まれる。
「親和性樹脂」とは、親和性ドメインに高い親和性で結合して、親和性ドメインに結合したタンパク質を反応混合物の他の成分から分離するのを容易にすることができる化学的表面である。親和性樹脂は、固体支持体またはその一部分の表面にコートされ得る。代替的には、親和性樹脂が固体支持体を構成してもよい。このような固体支持体は、好適に修飾されたクロマトグラフィカラム、マイクロタイタープレート、ビーズ、またはバイオチップ(例えばガラスウエハ)を含み得る。例示的な親和性樹脂は、ニッケル、キチン、アミラーゼなどから構成される。「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、本明細書では、所望のポリヌクレオチドを細胞に導入して発現させるためのビヒクルとして本発明に従って使用されるベクターを意味するために使用される。当業者に公知であるように、かかるベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、及びレトロウイルスからなる群から容易に選択され得る。概して、本発明と適合するベクターは、選択マーカー、所望の遺伝子のクローニングを容易にする適切な制限部位、ならびに真核細胞もしくは原核細胞に侵入する及び/または該細胞中で複製する能力を含む。
当業者には、本明細書に記載の抗体(またはその断片もしくは鎖)をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)が、プロモーター、エンハンサー、及び/またはポリAテールなどの調節エレメントも含む発現ベクターに含まれる場合、このポリヌクレオチドは、ベクターが導入されている宿主細胞においてタンパク質として発現されることが理解されよう。したがって、発現ベクターに挿入された、このようなポリヌクレオチドは、ベクターにおいて、ひいてはベクターが導入された宿主細胞において、「発現のために配置」されているといわれる場合がある。しかしながら、ポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)は、宿主細胞における発現のために配置されるのに発現ベクターに挿入される必要はない。ポリヌクレオチドを細胞における発現のために配置する周知の方法が知られている。例えば、DNA配列は、挿入されたDNA配列の発現が宿主細胞の内因性プロモーター及び他の調節エレメントによって調節されるように、例えば、相同組換えを使用して、宿主細胞のゲノムに挿入され得る。そのような相同組換えの技術はよく知られている。
本発明においては、多数の発現ベクター系を用いてもよい。例えば、あるクラスのベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスのような動物ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。その他のベクターは、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニック系の使用を伴う。例示的なベクターは、米国特許第6,159,730号及び同第6,413,777号、ならびに米国特許出願第20030157641号A1に記載されているものを含む。さらに、DNAが染色体に組み込まれた細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択され得る。このマーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性を付与するか、殺生物剤(例えば抗生物質)抵抗性または銅のような重金属の抵抗性を付与し得る。選択可能なマーカーの遺伝子は、発現させるDNA配列に直接連結していてもよいし、または同時形質転換によって同じ細胞に導入してもよい。一実施形態において、誘導性発現系が用いられ得る。mRNAの最適な合成のためには、さらなるエレメントが必要とされる場合もある。こうしたエレメントには、シグナル配列、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、及び終結シグナルが含まれ得る。一実施形態において、分泌シグナル、例えば、いくつかの十分に解析されている細菌リーダーペプチド(例えば、pelB、phoA、またはompA)のいずれか1つを、本発明のポリペプチドのN末端にインフレームで融合させて、ポリペプチドの最適な分泌を得ることができる(Lei et al.(1988),Nature,331:543、Better et al.(1988)Science,240:1041、Mullinax et al,(1990).PNAS,87:8095)。
「宿主細胞」という用語は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターで形質転換されている細胞を意味する。組換え宿主からタンパク質を単離するプロセスの説明においては、「細胞」及び「細胞培養物」という用語は、別段に明記しない限り、タンパク質の起源を示す目的で同義に使用される。言い換えれば、「細胞」からのタンパク質の回収とは、スピンダウンした全細胞、または培地と懸濁細胞の両方を含む細胞培養物のいずれかからの回収を意味し得る。タンパク質発現に使用される宿主細胞株は、例えば、哺乳動物に由来する。当業者には、所望の遺伝子産物を発現させるのに最も適している特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力があると考えられる。例示的な宿主細胞株としては、DG44及びDUXBII(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40 T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-IcIBPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、ならびに293(ヒト腎臓)が挙げられるが、これらに限定されない。CHO細胞(及びDHFR活性欠損CHO-K1細胞を含むそのバリアント)は、有用な宿主細胞である。宿主細胞株は、典型的には、商業的サービス、American Tissue Culture Collection、または公開文献から入手可能である。本発明のポリペプチドは、細菌細胞、または酵母細胞、または植物細胞などの非哺乳動物細胞でも発現し得る。これに関して、哺乳動物ではない様々な単細胞微生物、例えば細菌、すなわち培養または発酵下で増殖することができるものも形質転換され得ることは理解されよう。形質転換しやすい細菌としては、腸内細菌科のメンバー、例えばEscherichia coli株またはSalmonella株、バチルス科、例えばBacillus subtilis、Pneumococcus、Streptococcus、及びHaemophilus influenzaeが挙げられる。さらに、ポリペプチドは、細菌で発現する場合、典型的には封入体の一部になることが理解されよう。こうしたポリペプチドは、単離し、精製し、次いで集合させて機能性分子にする必要がある。
原核生物に加えて、真核微生物を使用することもできる。Saccharomyces cerevisiae、または一般的なパン酵母は、真核微生物の中で最も一般的に使用されているが、Pichia pastorisを含め、いくつかの他の菌株も一般的に利用可能である。Saccharomycesでの発現の場合、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb et al,(1979),Nature,282:39、Kingsman et al,(1979),Gene,7:141、Tschemper et al,(1980),Gene,10:157)が一般的に使用される。このプラスミドには、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の変異菌株、例えばATCC番号44076またはPEP4-1(Jones,(1977),Genetics,85:12)に対する選択マーカーとなる、TRP1遺伝子がすでに含まれている。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてtrp1障害が存在することで、トリプトファンの非存在下での増殖によって形質転換を検出するのに効果的な環境がもたらされる。
インビトロ産生により、スケールアップして、所望される本発明の変化した結合ポリペプチドを大量に得ることが可能になる。組織培養条件下で哺乳動物細胞を培養するための技術は、当技術分野において公知であり、例えばエアリフトリアクターもしくは連続撹拌リアクターにおける均質懸濁培養、または例えば中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ、もしくはセラミックカートリッジでの固定化細胞もしくは捕捉細胞の培養を含む。必要及び/または所望の場合、通例のクロマトグラフィ法、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、DEAE-セルロースでのクロマトグラフィ、またはアフィニティクロマトグラフィにより、ポリペプチドの溶液を精製してもよい。
本明細書で使用される場合、「結合ポリペプチドの投与が有効である対象」という表現には、例えば、本発明の結合ポリペプチドが認識し特異的に結合した抗原の検出のために(例えば、診断の手法において)使用される結合ポリペプチドの投与、及び/または結合ポリペプチドが認識し特異的に結合した標的を低減もしくは消失させるための結合ポリペプチドによる処置が有効である、哺乳動物対象などの対象が含まれる。例えば、一実施形態において、対象には、循環もしくは血清における可溶性もしくは微粒子状の分子(例えば、毒素または病原体)の低減もしくは消失、または標的を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)の集団の低減もしくは消失が有効であり得る。上述のように、結合ポリペプチドは、コンジュゲートされていない形態で使用してもよいし、例えば、薬物、プロドラッグ、または同位元素にコンジュゲートして、前記対象に投与するための修飾された結合ポリペプチドを形成してもよい。
「PEG化」、「ポリエチレングリコール」、または「PEG」という用語には、ポリアルキレングリコール化合物またはその誘導体が含まれ、カップリング剤、またはカップリング部分もしくは活性化部分による誘導体化(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシラン、またはマレイミド部分によるもの、例えば、PEG-マレイミド)の有無を問わない。他の適切なポリアルキレングリコール化合物は、マレイミドモノメトキシPEG、活性化PEGポリプロピレングリコールだけでなく、デキストラン、コロミン酸、または他の炭水化物系ポリマー、アミノ酸のポリマー、及びビオチン誘導体のタイプの荷電ポリマーまたは中性ポリマーも含むが、これらに限定されない。
I.可変領域
本発明は、可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)フレームワークが、IGKV4-1抗体またはgeAAH70335.1抗体またはIGHV1-f抗体のような生殖系列または生殖系列操作抗体の配列から構築されたアクセプター配列を有する、アルファ4結合抗体及びその断片を提供する。CDR配列は、抗VLA-4抗体HP1/2などの非ヒト抗α4結合抗体に由来する。全体が参照により本明細書に援用される、PCT公開第WO2011/130603号を参照されたい。本明細書に記載される抗体は、例えば、そのマウス親と比べて、少なくとも1.5、2.0、2.5、3.0倍増大した親和性を有し得る。一実施形態において、親和性の増大は、少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍だが、それぞれ25倍未満、20倍未満、または15倍未満である。
マウスモノクローナル抗体(mAb)HP1/2は、α4 mAbのB1サブグループのメンバーであり、VCAM1とフィブロネクチンの両方へのインビトロの細胞接着を約0.1nMの効力で阻害する。HP1/2 Fabのクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)構造は、α4β1外部ドメインとの複合体として解析された。HP1/2は、リガンド結合溝の外にあるα4β-プロペラドメインに結合し、リガンド結合を非競合的に弱める。HP1/2が認識し特異的に結合するα4インテグリンのエピトープ及び立体構造は、ナタリズマブα4インテグリン結晶構造に観察されるものに類似している。
α4インテグリンに対するmAbは、インビボでリンパ球、好酸球、及び単球が組織内に遊出するのを効果的にブロックし、疾患修飾作用を示す。特に、mAb HP1/2は、ヒツジにおけるアレルギー反応亢進(Lobb et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci 796:113-123,1996)、モルモットにおける気管支気道過敏性(Pretolani et al.,J.Ex.Med.180(3):795-805,1994、Kraneveld et al.,J.Allergy Clin.Immunol.100(2):242-50,1997)、霊長類における潰瘍性大腸炎(Podolsky et al.,J.Clin Invest.92(1):372-380,1993)、NHPにおける頸動脈内膜過形成の動脈内膜切除(Lumsden et al.,J.Vasc.Surg.26(1):87-93,1997)の各動物モデルにおいて有効であることが示されており、バルーン傷害後の新外膜形成及びその後の管腔狭窄を低減させ(Labinaz et al.,Can J.Cardiol.16(2):187-96,2000)、ウサギにおけるステント留置への炎症応答を低減させ(Ma et al.,2004)、ウサギにおける移植心拒絶反応を防止する(Sadahiro et al.,Am.J.Pathol.142(3):675-683,1993)。さらに、HP1/2は、ヒヒの骨髄間質からの造血前駆細胞の末梢血への動員(peripheralization)を刺激する(Papayannopoulou and Nakamoto,Proc.Natl.Acad.Sci 90(20):9374-9378,1993)。
HP1/2抗体は、JM(未熟T細胞性白血病)細胞株を注射したBalb/cマウスにおいて産生された(Sanchez-Madrid et al.,Eur.J.Immunol.16:1343-1349,1986)。2匹のマウスの脾臓細胞に、SP2またはP3-X63Ag8.653のマウス骨髄腫細胞を融合させた。この抗体は1993年にヒト化されたが、ヒト化設計における進歩を活用するために2010年に再ヒト化された。
アルファ4結合抗体またはその断片は、配列番号8、9、10、または11の配列を有する可変軽鎖を含み得る。アルファ4結合抗体またはその断片は、配列番号3、4または5の可変重鎖を含み得る。
特定の実施形態において、アルファ4結合抗体は、配列番号11の配列を有する可変軽鎖と、配列番号4の配列を有する可変重鎖とを含む。
アルファ4結合抗体は、本明細書にさらに詳細に記述されるバリアントFc領域をさらに含んでもよい。
II.親Fcポリペプチド
バリアントFcポリペプチドは、当技術分野において公知の親Fcポリペプチドまたは出発Fcポリペプチドに由来し得る。一実施形態において、親Fcポリペプチドは、全てのサブタイプのIgG及びそれらの組み合わせを含め、IgG免疫グロブリンなどの抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体の親Fcポリペプチドは、1つのIgGサブタイプのもの、または2つ以上のIgGサブタイプのFc領域の異なる部分の組み合わせである。ヒトの場合、IgGサブタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。親Fcポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するFc領域を含むが、場合により、Fc領域に作動可能に連結または融合した結合部位をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、前述のポリペプチドは、リガンド、サイトカイン、受容体、細胞表面抗原、またはがん細胞抗原などの抗原に結合する。本明細書における実施例はIgG抗体を用いるが、本方法は、いずれのFcポリペプチドのFc領域にも等しく適用され得ると理解される。Fcポリペプチドが抗体である場合、この抗体は、合成、天然由来(例えば、血清由来)、細胞株(例えば、ハイブリドーマ)によって産生されたもの、またはトランスジェニック生物において産生されたものであり得る。
特定の実施形態において、本発明のFcポリペプチドは、Fc領域のFc部分を1つ含む。他の実施形態では、Fcポリペプチドは、dcFcポリペプチドである。dcFcポリペプチドとは、二量体Fc(またはdcFc)領域を含むポリペプチドを意味する。他の実施形態では、本発明のFcポリペプチドは、scFcポリペプチドである。本明細書で使用される場合、scFcポリペプチドという用語は、例えば、Fc部分の少なくとも2つの間に介在する可動性ポリペプチドリンカーを介して遺伝子融合した、少なくとも2つのFc部分を含むscFcポリペプチドのように、一本鎖Fc(scFc)領域を含むポリペプチドを意味する。例示的なscFc領域は、2008年5月14日に出願され、参照により本明細書に援用されるPCT出願第PCT/US2008/006260号に開示されている。
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、同じ、または実質的に同じ配列組成のFc部分を含むFc領域(本明細書では「ホモマーFc領域」という)を含み得る。他の実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列組成が異なるFc部分を少なくとも2つ含むFc領域(すなわち、本明細書では「ヘテロマーFc領域」という)を含み得る。特定の実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、少なくとも1つの挿入またはアミノ酸置換を含むFc領域を含む。例示的な一実施形態において、ヘテロマーFc領域は、第1のFc部分にアミノ酸置換を含むが、第2のFc部分にはアミノ酸置換を含まない。
一実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、構成要素であるFc部分の2つ以上が本明細書に記載のFc部分から独立して選択されるFc領域を含み得る。一実施形態において、Fc部分は同じである。別の実施形態では、Fc部分のうちの少なくとも2つは異なっている。例えば、本発明のFcポリペプチドのFc部分は、同じ数のアミノ酸残基を含むか、または長さがアミノ酸残基1個以上(例えば、アミノ酸残基約5個(例えば、アミノ酸残基1、2、3、4、または5個)、残基約10個、残基約15個、残基約20個、残基約30個、残基約40個、または残基約50個)異なっていてもよい。さらに他の実施形態では、Fc部分は、1つ以上のアミノ酸位置で配列が異なっていてもよい。例えば、Fc部分のうちの少なくとも2つは、約5個のアミノ酸位置(例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸位置)、約10個の位置、約15個の位置、約20個の位置、約30個の位置、約40個の位置、または約50個の位置)で異なっていてもよい。
親Fcポリペプチドは、組み合わさって、または他のポリペプチドと集合して、多量体Fcポリペプチドまたはタンパク質(本明細書では「多量体」ともいう)を形成してもよい。本発明の多量体Fcポリペプチドまたはタンパク質は、本発明の親Fcポリペプチドを少なくとも1つ含む。したがって、親ポリペプチドは、限定されるものではないが、単量体のみならず、多量体(例えば、二量体、三量体、四量体、及び六量体)のFcポリペプチドまたはタンパク質なども含む。特定の実施形態において、前記多量体の構成要素であるFcポリペプチドは同じである(すなわちホモマー多量体、例えばホモ二量体、ホモ三量体、ホモ四量体)。他の実施形態では、本発明の多量体タンパク質の構成要素であるFcポリペプチドの少なくとも2つは異なっている(すなわちヘテロマー多量体、例えばヘテロ二量体、ヘテロ三量体、ヘテロ四量体)。特定の実施形態において、Fcポリペプチドのうちの少なくとも2つは、二量体を形成することができる。
別の実施形態では、本発明のFcポリペプチドは、二量体Fc領域を含み(二量体を形成する一本鎖ポリペプチドまたは二量体を形成する二本鎖ポリペプチドのいずれか)、分子に存在する生物学的活性のある部分に関しては単量体性である。例えば、そのようなFc構築物は、生物学的活性のある部分を1つしか含まない場合がある。一本鎖または二本鎖の安定化Fc単量体構築物が、例えば、標的分子の架橋が所望されない場合(例えば、特定の抗体、例えば、抗CD40抗体の場合)には望ましい。別の実施形態では、そのようなFc構築物は、2つの異なる生物学的活性のある部分を含み得る。さらに別の実施形態では、そのようなFc構築物は、同じ生物学的活性のある部分を2つ含み得る。さらに別の実施形態では、そのようなFc構築物は、同じ生物学的活性のある部分を3つ以上含み得る。
A.Fc部分
本発明の親Fcポリペプチドを生成するのに有用なFc部分は、いくつかの異なる起源から得ることができる。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドのFc部分は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、Fc部分は、例えば齧歯類(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えばチンパンジー、マカク)の各種を含む、別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来してもよいことが理解される。さらに、Fcは、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来してもよい。例えば、Fcは、IgG1に由来するが、配列に特定の変異を有してもよい。いくつかの実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1またはIgG4が使用される。いくつかの実施形態では、Fcは、1つのタイプのIg免疫グロブリン由来の部分(例えば、IgG1のCH3ドメイン)及び別のタイプのIg免疫グロブリン由来の他の部分(例えば、IgG4のCH1ドメイン)を含むキメラであってもよい。
様々なFc部分の遺伝子配列(例えばヒト定常領域の遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(もしくは特定のエフェクター機能を欠いている)、または免疫原性を低減させる特定の修飾をもつ、Fc部分の配列を含む定常領域ドメインが選択され得る。抗体及び抗体コード遺伝子の多くの配列が公開されており、好適なFc部分の配列(例えばヒンジ、CH2、及び/またはCH3配列、またはそれらの一部分)は、これらの配列から、当技術分野で認識されている技術を使用して得ることができる。前述の方法のいずれかを使用して得られた遺伝子材料を、次いで変化させるかまたは合成して、本発明のFcポリペプチドを得ることができる。さらに、本発明の範囲は、定常領域DNA配列のアレル、バリアント、及び変異を包含することが理解されよう。
Fc部分の配列は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、及び目的のドメインを増幅するように選択されたプライマーを使用してクローニングすることができる。Fc部分の配列を抗体からクローニングするには、ハイブリドーマ、脾臓、またはリンパ細胞からmRNAを単離し、DNAに逆転写し、抗体遺伝子をPCRによって増幅することができる。PCR増幅法は、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、及び、例えば、“PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”Innis et al.eds.,Academic Press,San Diego,CA(1990)、Ho et al.1989.Gene 77:51、Horton et al.1993.Methods Enzymol.217:270)に詳細に記載されている。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開されている重鎖及び軽鎖のDNA及びアミノ酸配列に基づいたより特異的なプライマーによって開始され得る。上述のように、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離するためにPCRを用いることもできる。この場合、コンセンサスプライマー、またはマウス定常領域プローブなどのより大きな相同プローブによって、ライブラリをスクリーニングしてもよい。抗体遺伝子の増幅に好適な多数のプライマーセットが、当技術分野において公知である(例えば、精製された抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(Benhar and Pastan.1994.Protein Engineering 7:1509)、cDNA末端の高速増幅(Ruberti,F.et al.1994.J.Immunol.Methods 173:33)、抗体リーダー配列(Larrick et al.1989 Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250)。抗体配列のクローニングについては、1995年1月25日に出願され、参照により本明細書に援用されるNewmanらの米国特許第5,658,570号にさらに記載されている。
本発明の親Fcポリペプチドは、単一のFc部分または複数のFc部分を含み得る。2つ以上のFc部分(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のFc部分)が存在する場合、Fc部分のうちの少なくとも2つが会合して、適切にフォールディングしたFc領域(例えば、二量体Fc領域または一本鎖Fc領域(scFc))を形成する。一実施形態において、Fc部分は、異なるタイプのものであってもよい。一実施形態において、親Fcポリペプチドに存在する少なくとも1つのFc部分は、ヒンジドメインまたはその一部分を含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分を含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその一部分を含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくとも1つのCH4ドメインまたはその一部分を含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくとも1つのヒンジドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分とを(例えば、ヒンジ-CH2の方向で)含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその一部分とを(例えば、CH2-CH3の方向で)含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくとも1つのヒンジドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH2ドメインまたはその一部分と、少なくとも1つのCH3ドメインまたはその一部分とを、例えばヒンジ-CH2-CH3、ヒンジ-CH3-CH2、またはCH2-CH3-ヒンジの方向で含むFc部分を、少なくとも1つ含む。
特定の実施形態において、親Fcポリペプチドは、1つ以上の免疫グロブリン重鎖に由来する完全なFc領域(例えば、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含むFc部分(ただし、これらは同じ抗体に由来する必要はない))を少なくとも1つ含む。他の実施形態では、親Fcポリペプチドは、1つ以上の免疫グロブリン重鎖に由来する完全なFc領域を少なくとも2つ含む。いくつかの実施形態では、完全なFc部分は、ヒトIgG免疫グロブリン重鎖(例えば、ヒトIgG1またはヒトIgG4)に由来する。
別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、完全なCH3ドメイン(EU付番による抗体Fc領域のアミノ酸341~438付近)を含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、完全なCH2ドメイン(EU付番による抗体Fc領域のアミノ酸231~340付近)を含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、少なくともCH3ドメイン、ならびにヒンジ領域(EU付番による抗体Fc領域のアミノ酸216~230付近)及びCH2ドメインのうちの少なくとも1つを含むFc部分を少なくとも1つ含む。一実施形態において、親Fcポリペプチドは、ヒンジ及びCH3ドメインを含むFc部分を少なくとも1つ含む。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含むFc部分を少なくとも1つ含む。いくつかの実施形態では、Fc部分は、ヒトIgG免疫グロブリン重鎖に由来する。
Fc部分を構成する定常領域ドメインまたはその一部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、親Fcポリペプチドは、IgG4分子に由来するヒンジ及び/またはCH2ドメインまたはその一部分、ならびにIgG1分子に由来するCH3領域またはその一部分を含み得る。別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、キメラヒンジドメインを含み得る。例えば、キメラヒンジは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG3分子に由来する、ヒンジドメインを含み得る。別の実施形態では、キメラヒンジは、IgG1分子由来の中間部ヒンジドメイン、ならびにIgG4分子由来の上部及び下部ヒンジドメインを含む。
本明細書で示すように、親Fc部分が、天然に発生する免疫グロブリンの対応するFc部分と同一であってもよいし、アミノ酸配列が異なるように変化していてもよいことは、当業者には理解されよう。特定の実施形態において、親Fcポリペプチドは、例えば、アミノ酸変異(例えば、付加、欠失、または置換)によって変化している。例えば、親Fcポリペプチドは、Fc部分の起源となる野生型Fcと比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を有するFc部分であり得る。例えば、Fc部分がヒトIgG1抗体に由来する場合、バリアントは、ヒトIgG1 Fc領域の対応する位置に、野生型アミノ酸と比較して少なくとも1つのアミノ酸変異(例えば、置換)を含む。
アミノ酸置換(複数可)は、抗体のFc領域において該当する残基に与えられる(EU付番の慣例を使用して規定される)位置番号に「対応する」といわれるFc部分内の位置に位置付けられる場合がある。当業者であれば、アラインメントを容易に生成して、Fc部分内の位置に「対応する」EU番号が何であるかを決定することができる。
一実施形態において、置換は、ヒンジドメインまたはその一部分に位置付けられるアミノ酸位置にある。別の実施形態では、置換は、CH2ドメインまたはその一部分に位置付けられるアミノ酸位置にある。別の実施形態では、置換は、CH3ドメインまたはその一部分に位置付けられるアミノ酸位置にある。別の実施形態では、置換は、CH4ドメインまたはその一部分に位置付けられるアミノ酸位置にある。
特定の実施形態において、親Fcポリペプチドは、2つ以上のアミノ酸置換を含む。親Fcポリペプチドは、例えば、野生型Fc領域と比べて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のアミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、互いに少なくとも1個以上のアミノ酸位置、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のアミノ酸位置の間隔を空けて空間的に配置される。いくつかの実施形態では、操作されたアミノ酸は、互いに少なくとも5、10、15、20、または25個以上のアミノ酸位置の間隔を空けて空間的に配置される。
特定の実施形態において、置換は、野生型Fc部分を含むFc領域によって与えられる少なくとも1つのエフェクター機能の変化(例えば、Fc領域がFc受容体(例えばFcγRI、FcγRII、もしくはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えばC1q)に結合する能力、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)、食作用、もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を引き起こす能力の低減)をもたらす。
親Fcポリペプチドは、エフェクター機能の変化をもたらすことが知られる当技術分野で認識されている置換を用い得る。特に、本発明の親Fcポリペプチドは、例えば、PCT国際公開第WO88/07089号A1、同第WO96/14339号A1、同第WO98/05787号A1、同第WO98/23289号A1、同第WO99/51642号A1、同第WO99/58572号A1、同第WO00/09560号A2、同第WO00/32767号A1、同第WO00/42072号A2、同第WO02/44215号A2、同第WO02/060919号A2、同第WO03/074569号A2、同第WO04/016750号A2、同第WO04/029207号A2、同第WO04/035752号A2、同第WO04/063351号A2、同第WO04/074455号A2、同第WO04/099249号A2、同第WO05/040217号A2、同第WO04/044859号、同第WO05/070963号A1、同第WO05/077981号A2、同第WO05/092925号A2、同第WO05/123780号A2、同第WO06/019447号A1、同第WO06/047350号A2、及び同第WO06/085967号A2、米国特許公開第US2007/0231329号、同第US2007/0231329号、同第US2007/0237765号、同第US2007/0237766号、同第US2007/0237767号、同第US2007/0243188号、同第US20070248603号、同第US20070286859号、同第US20080057056号、または米国特許第5,648,260号、同第5,739,277号、同第5,834,250号、同第5,869,046号、同第6,096,871号、同第6,121,022号、同第6,194,551号、同第6,242,195号、同第6,277,375号、同第6,528,624号、同第6,538,124号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,998,253号、同第7,083,784号、及び同第7,317,091号(各文献のFc変異に関する部分は、参照により本明細書に援用される)に開示されているアミノ酸位置のうちの1つ以上における変化(例えば、置換)を含み得る。一実施形態において、特定の変化(例えば、当技術分野において開示されている1つ以上のアミノ酸の特定の置換)が、開示されているアミノ酸位置のうちの1つ以上で行われ得る。別の実施形態では、開示されているアミノ酸位置のうちの1つ以上において、異なる変化(例えば、当技術分野において開示されている1つ以上のアミノ酸位置の異なる置換)が行われ得る。
いくつかの実施形態では、親Fcポリペプチドは、Fc部分の「15オングストローム接触帯」内にあるEUアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含むFc部分を含み得る。15オングストローム帯は、全長の野生型Fc部分のEU243~261位、275~280位、282~293位、302~319位、336~348位、367位、369位、372~389位、391位、393位、408位、及び424~440位に位置する残基を含む。
別の実施形態では、親Fcポリペプチドは、トランケートされているにもかかわらず1つ以上の機能をFc領域に与えるのに十分であるFc部分を1つ以上含むFc領域を含む。例えば、Fc部分のうちFcRnに結合する部分(すなわち、FcRn結合部分)は、アミノ酸282~438付近(EU付番)を含む。したがって、親FcポリペプチドのFc部分は、FcRn結合部分を含むか、またはそれからなる場合がある。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のアイソタイプの重鎖に由来し得る。一実施形態において、ヒトアイソタイプIgG1の抗体のFcRn結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体のFcRn結合部分が使用される。特定の実施形態において、FcRn結合部分は、アグリコシル化されている。他の実施形態では、FcRn結合部分は、グリコシル化されている。
特定の実施形態において、親Fcポリペプチドは、抗体の抗原非依存性エフェクター機能、特に抗体の循環半減期を変化させる、Fc部分のアミノ酸置換を含む。そのようなポリペプチドは、これらの置換を欠いているポリペプチドと比較すると増大または減少したFcRnへの結合を呈し、したがって、血清中でそれぞれ増大または減少した半減期を有する。向上したFcRnへの親和性をもつ親Fcポリペプチドは、より長い血清半減期を有すると期待され、そのような分子は、投与されるポリペプチドの長い半減期が、例えば、慢性の疾患または障害を処置するために所望される、哺乳動物を処置する方法において有用に適用される。対照的に、減少したFcRn結合親和性をもつ親Fcポリペプチドは、より短い半減期を有すると予想され、そのような分子もまた、例えば、短縮された循環時間が有利であり得る哺乳動物への投与のために、例えばインビボ診断造影のために、または出発ポリペプチドが循環中に長期間存在すると有毒な副作用を及ぼす状況において有用である。減少したFcRn結合親和性をもつ親Fcポリペプチドはまた、胎盤を通過する可能性が比較的低く、したがって、妊婦の疾患または障害の処置においても有用である。さらに、低減したFcRn結合親和性が所望され得る他の用途には、脳、腎臓、及び/または肝臓への局在化が所望される用途が含まれる。例示的な一実施形態において、親Fcポリペプチドは、腎臓糸球体の上皮を通した脈管構造からの輸送の低減を呈する。別の実施形態では、本発明の結合ポリペプチドは、血液脳関門(BBB)を通した脳から脈管間隙への輸送の低減を呈する。一実施形態において、FcRn結合が変化した親Fcポリペプチドは、Fc部分の「FcRn結合ループ」内に1つ以上のアミノ酸置換を有する、少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。FcRn結合ループは、野生型の全長Fc部分のアミノ酸残基280~299(EU付番による)から構成される。他の実施形態では、変化したFcRn結合親和性を有する親Fcポリペプチドは、15A FcRn「接触帯」内に1つ以上のアミノ酸置換を有する、少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。
本明細書で使用される場合、15A FcRn「接触帯」という用語は、野生型の全長Fc部分の、243~261位、275~280位、282~293位、302~319位、336~348位、367位、369位、372~389位、391位、393位、408位、424位、425~440位(EU付番)の残基を含む。いくつかの実施形態では、変化したFcRn結合親和性を有する親Fcポリペプチドは、EU256位、277~281位、283~288位、303~309位、313位、338位、342位、376位、381位、384位、385位、387位、434位(例えば、N434AまたはN434K)、及び438位のいずれか1つに対応するアミノ酸位置に1つ以上のアミノ酸置換を有する、少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。FcRn結合活性を変化させた例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に援用されるPCT国際公開第WO05/047327号に開示されている。他の実施形態では、親Fcポリペプチドは、溶媒曝露表面に位置する操作されたシステイン残基またはその類似体を有する少なくとも1つのFc部分を含む。いくつかの実施形態では、操作されたシステイン残基またはその類似体は、Fc領域によりもたらされるエフェクター機能に干渉しない。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、第2のシステイン残基とのジスルフィド結合を実質的に含まない操作された遊離システイン残基またはその類似体を少なくとも1つ含むFc部分を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、CH3ドメイン内の349~371位、390位、392位、394~423位、441~446位、及び446b位(EU付番)のうちの1つ以上に操作されたシステイン残基またはその類似体を有するFc部分を含み得る。さらなるいくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、350位、355位、359位、360位、361位、389位、413位、415位、418位、422位、441位、443位、及びEU446b位(EU付番)のいずれか1つに操作されたシステイン残基またはその類似体を有するFcバリアントを含む。上記の操作されたシステイン残基またはその類似体のいずれも、その後、当技術分野で認識されている技術を使用して機能的部分にコンジュゲートされる(例えば、チオール反応性ヘテロ二官能性リンカーでコンジュゲートされる)場合がある。
B.エフェクターレスFcポリペプチド
特定の実施形態において、親Fcポリペプチドは、変化または低減したエフェクター機能を有する「エフェクターレス」Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、低減または変化するエフェクター機能は、抗原依存性エフェクター機能である。例えば、親Fcポリペプチドは、ポリペプチドの抗原依存性エフェクター機能、特にADCCまたは補体活性化を、例えば、野生型Fcポリペプチドと比較して低減させる配列多様性(例えば、アミノ酸置換)を含み得る。残念ながら、そのような親Fcポリペプチドは、低減した安定性を有することが多く、本発明の方法による安定化のための理想的な候補となる。
減少したFcγR結合親和性をもつFcポリペプチドは、エフェクター機能を低減させると予想され、そのような分子もまた、例えば、標的細胞の破壊が望ましくない、例えば、正常細胞が標的分子を発現し得る、またはポリペプチドの慢性投与が不要な免疫系活性化をもたらし得る状態の処置に有用である。一実施形態において、Fcポリペプチドは、野生型Fc領域を含むFcポリペプチドと比較して、オプソニン作用、食作用、補体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、またはエフェクター細胞の調整からなる群から選択される少なくとも1つの抗原依存性エフェクター機能の低減を呈する。一実施形態において、Fcポリペプチドは、活性化FcγR(例えばFcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)への結合の変化を呈する。別の実施形態では、Fcポリペプチドは、阻害性FcγR(例えばFcγRIIb)への結合親和性の変化を呈する。他の実施形態では、減少したFcγR結合親和性(例えば、減少したFcγRI、FcγRII、またはFcγRIIIa結合親和性)をもつFcポリペプチドは、234位、236位、239位、241位、251位、252位、261位、265位、268位、293位、294位、296位、298位、299位、301位、326位、328位、332位、334位、338位、376位、378位、及び435位(EU付番)のうちの1つ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。他の実施形態では、減少した補体結合親和性(例えば減少したC1q結合親和性)をもつFcポリペプチドは、239位、294位、296位、301位、328位、333位、及び376位(EU付番)のうちの1つ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有するFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。
FcγRまたは補体結合活性を変化させた例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に援用されるPCT国際公開第WO05/063815号に開示されている。特定の実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは、S239D、S239E、M252T、H268D、H268E、I332D、I332E、N434A、及びN434Kの特定の置換のうちの1つ以上(すなわち、抗体Fc領域内のこれらのEU付番位置のうちの1つ以上に対応するアミノ酸位置におけるこれらの置換のうちの1つ以上)を含み得る。
特定の例示的な実施形態において、親の「エフェクターレス」ポリペプチドのエフェクター機能は、親Fcポリペプチド内のアグリコシル化Fc領域に起因して変化または低減する場合がある。特定の実施形態において、アグリコシル化Fc領域は、Fc領域のグリコシル化を変化させるアミノ酸置換によって生成される。例えば、Fc領域におけるEU297位のアスパラギンは、そのグリコシル化を阻害するように(例えば、置換、挿入、欠失、または化学修飾によって)変化し得る。別の例示的な実施形態では、EU299位のアミノ酸残基(例えば、スレオニン(T))は、隣接する残基297のグリコシル化を低減させるように(例えば、アラニン(A)で)置換される。グリコシル化を低減または変化させる例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に援用されるPCT国際公開第WO05/018572号及び米国特許公開第2007/0111281号に開示されている。他の実施形態では、アグリコシル化Fc領域は、オリゴ糖の酵素的もしくは化学的な除去、またはFc領域をグリコシル化することができない宿主細胞(例えば、グリコシル化機構が損なわれた細菌宿主細胞または哺乳動物宿主細胞)におけるFcポリペプチドの発現によって生成される。
特定の実施形態において、アグリコシル化Fc領域は、部分的にアグリコシル化されているか、または半グリコシル化されている。例えば、Fc領域は、第1のグリコシル化されたFc部分(例えば、グリコシル化CH2領域)と、第2のアグリコシル化されたFc部分(例えば、アグリコシル化CH2領域)とを含み得る。他の実施形態では、Fc領域は、完全にアグリコシル化されていてもよい。すなわち、そのFc部分のいずれもグリコシル化されていない。
「エフェクターレス」ポリペプチドのアグリコシル化Fc領域は、いずれのIgGアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のものであってもよい。例示的な一実施形態において、親Fcポリペプチドは、「agly IgG4.P」などのIgG4抗体のアグリコシル化Fc領域を含み得る。agly IgG4.Pは、アグリコシル化Fc領域(EU付番)が生成されるように、ヒンジ領域内のプロリン置換(Ser228Pro)及びCH2ドメイン内のThr299Ala変異を含む、操作された形態のIgG4抗体である。agly IgG4.Pは、インビトロで測定可能な免疫エフェクター機能を有しないことが示されている。別の例示的な実施形態では、親Fcポリペプチドは、「agly IgG1」などのIgG1抗体のアグリコシル化Fc領域を含む。agly IgG1は、低いエフェクター機能プロファイルをもたらすThr299Ala変異(EU付番)を有するアグリコシル化形態のIgG免疫グロブリンIgG1である。agly IgG4.P抗体及びagly IgG1抗体はいずれも、免疫エフェクター機能が所望されない場合の治療用試薬の重要なクラスを表す。
特定の例示的な実施形態において、「エフェクターレス」親Fcポリペプチドは、IgG4抗体に由来するFc領域を含む。IgG4 Fc領域は、野生型Fc領域と同一であってもよいし、または野生型IgG4配列に対する1つ以上の修飾を有してもよい。そのようなIgG4様Fcポリペプチドは、補体及び/またはFc受容体に結合するIgG4抗体の能力が本質的に低減していることの結果として、低減したエフェクター機能を有する。IgG4アイソタイプの親Fcポリペプチドは、グリコシル化されていてもアグリコシル化されていてもよい。さらに、IgG4様FcポリペプチドのFc領域は、IgG4抗体の完全なFc部分を含む場合もあれば、Fc部分の一部分がIgG4抗体に由来し、残部が別のアイソタイプの抗体に由来するキメラFc部分を含む場合もある。例示的な一実施形態において、キメラFc部分は、IgG1抗体由来のCH3ドメイン、及びIgG4抗体由来のCH2ドメインを含む。別の実施形態では、IgG4抗体には、上部及び下部のヒンジドメインはIgG4抗体に由来するが、中間部のヒンジドメインはヒンジ領域内のプロリン置換(Ser228Pro)の結果としてIgG1抗体に由来するキメラヒンジが含まれる。さらに別の実施形態では、親のキメラIgG4抗体には、上部及び下部のヒンジドメインはIgG4抗体に由来するが、中間部のヒンジドメインはヒンジ領域内のプロリン置換(Ser228Pro)の結果としてIgG1抗体に由来するキメラヒンジ、IgG1またはIgG4抗体由来のCH1ドメイン、IgG4抗体由来のCH2ドメイン(またはEU付番292~340位)、ならびにIgG1抗体由来のCH1ドメイン及び/またはCH3ドメインが含まれる。
特定の実施形態において、「エフェクターレス」Fcポリペプチドのエフェクター機能の低減は、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、及び/またはFcγRIIIb受容体などのFc受容体(FcR)、または補体タンパク質、例えば、補体タンパク質C1qへの結合の低減である。この結合の変化は、約1倍以上、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、50、もしくは100倍以上、またはそれらの任意の間隔もしくは範囲の倍率のものであり得る。こうしたエフェクター機能、例えば、Fc受容体または補体タンパク質へのFcの結合における減少は、例えば、本明細書に記載のアッセイまたは当技術分野において公知のアッセイを使用して決定される結合活性の低減率に基づいて容易に計算される。
本発明の一実施形態において、安定化Fcポリペプチドは、一本鎖Fc領域を含む。そのような一本鎖Fc領域は、当技術分野において公知であり(例えば、WO200801243、WO2008131242、WO2008153954を参照されたい)、公知の方法を使用して作製することができる。本明細書で教示される安定化アミノ酸は、当業者に公知の方法を使用して、かかる構築物のFc部分の1つ以上に組み込まれ得る。そのような一本鎖Fc領域または遺伝子融合したFc領域は、単一のポリペプチド鎖内に遺伝学的に関係付けられた(すなわち、単一の連続的な遺伝子配列にコードされた)Fcドメイン(またはFc部分)から構成される合成Fc領域である。したがって、遺伝子融合したFc領域(すなわち、scFc領域)は、1つのポリペプチド鎖を含むという点で単量体性であるが、分子の適切な部分は二量体化してFc領域を形成する。Fc部分に関する本明細書における教示が、二本鎖Fc二量体と一本鎖Fc二量体の両方に適用できることは理解されよう。例えば、いずれかのタイプのFc領域構築物は、例えば、IgG1抗体もしくはIgG4抗体に由来する場合もあれば、キメラである(例えば、キメラヒンジを含む、及び/またはIgG4抗体由来のCH2ドメイン及びIgG1抗体由来のCH3ドメインを含む)場合もある。
III.安定化Fc領域を有するバリアントFcポリペプチド
特定の態様において、本発明は、上述の親Fcポリペプチドのいずれか1つのバリアントであるアミノ酸配列を含むバリアントFcポリペプチドを提供する。特に、本発明のバリアントFcポリペプチドは、親FcポリペプチドのFc領域(またはFc部分)に由来するアミノ酸配列を有するFc領域(またはFc部分)を含む。いくつかの実施形態では、バリアントFcポリペプチドは、本明細書に記載の安定化Fc変異のうちの少なくとも1つの存在により、親Fcポリペプチドと異なる。特定の実施形態において、Fcバリアントは、さらなるアミノ酸配列変化を含み得る。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、親Fcポリペプチドと比較して増強された安定性を有し、場合により、親Fcポリペプチドと比較して変化したエフェクター機能を有する。例えば、バリアントFcポリペプチドは、親Fcポリペプチドの抗原依存性エフェクター機能(例えば、ADCC及び/またはCDC)と同等か、またはそれよりも低い抗原依存性エフェクター機能を有し得る。さらに、または代替的には、バリアントFcポリペプチドは、親Fcポリペプチドと比べて抗原非依存性エフェクター機能(例えば、長期の半減期)を有し得る。
特定の実施形態において、バリアントFcポリペプチドには、出発ポリペプチドまたは親ポリペプチドと比べて約1つ以上の変異(例えば、約1~約20個、約1~約15個、約1~約10個、約1~約5個、約1~約4個、約1~約3個、約2~約20個、約2~約15個、約2~約10個、約5~約20個、または約5~約10個の変異)、例えば、別のアミノ酸残基に置換されているか、または1つ以上のアミノ酸残基の挿入もしくは欠失を有する1つ以上のアミノ酸残基を除いては親FcポリペプチドのFc領域(Fc部分)と本質的に同一である、Fc領域(またはFc部分)が含まれる。特定の実施形態において、バリアントFcポリペプチドは、出発ポリペプチドと比べて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の変異を有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、天然に発生しないアミノ酸配列を含む。
そのようなバリアントは、出発ポリペプチドと100%未満の配列同一性または類似性を必然的に有する。いくつかの実施形態では、バリアントは、例えば、バリアント分子の全長またはその一部分(例えば、Fc領域またはFc部分)にわたり、出発ポリペプチドのアミノ酸配列とのアミノ酸配列同一性または類似性が約75%から100%未満、例えば、約80%から100%未満、または約85%から100%未満、または約90%から100%未満(例えば、91~99%、92~99%、93~99%、94~99%、95~99%、96~99%、97~99%、98~99%、または99%)、または約95%から100%未満であるアミノ酸配列を有する。一実施形態において、出発ポリペプチドの配列(例えば、親FcポリペプチドのFc領域)と、それに由来する配列(例えば、バリアントFcポリペプチドのFc領域)との間で、1つのアミノ酸が異なる。
特定の実施形態において、本発明のバリアントFcポリペプチドは、安定化Fcポリペプチドである。つまり、安定化ポリペプチドは、少なくとも1つの配列多様性または安定化Fc変異である変異を含む。本明細書で使用される場合、「安定化Fc変異」という用語には、その起源となる親Fcポリペプチドと比較して増強されたタンパク質安定性(例えば熱安定性)をバリアントFcポリペプチドにもたらす、バリアントFcポリペプチドのFc領域内の変異が含まれる。いくつかの実施形態では、安定化変異は、増強されたタンパク質安定性をFc領域に与える置換アミノ酸(本明細書では「安定化アミノ酸」)での、Fc領域内の不安定化アミノ酸の置換を含む。一実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸安定化Fc変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の安定化変異)を含む。安定化Fc変異は、例えば、Fc領域のCH2ドメイン、CH3ドメイン、またはCH2ドメインとCH3ドメインの両方に導入され得る。
特定の例示的な実施形態において、本発明のバリアントFcポリペプチドは、上述の「エフェクターレス」親Fcポリペプチドの安定化バリアントである。つまり、安定化バリアントは、「エフェクターレス親Fcポリペプチド」と比べて増強された安定性を有する。例示的な一実施形態において、バリアントFcポリペプチドは、IgG1抗体のアグリコシル化Fc領域、例えば、T299A変異(EU付番)を含むアグリコシル化IgG1 Fc領域を含む、親Fcポリペプチドの安定化バリアントである。別の例示的な実施形態では、バリアントFcポリペプチドは、グリコシル化またはアグリコシル化されたIgG4抗体のFc領域を含む、親Fcポリペプチドの安定化バリアントである。例えば、バリアントFcポリペプチドは、「agly IgG4.P」抗体に由来するFc領域に安定化変異を含み得る。
いくつかの実施形態では、本発明の安定化Fcポリペプチドは、バリアントFcポリペプチドと比較して、同一の測定条件下で増強された安定性を呈する。しかしながら、Fcバリアントポリペプチドの安定性がその親Fcポリペプチドと比べて増強される程度が、選択される測定条件下で異なり得ることは認識されよう。例えば、安定性の増強は、特定のpH、例えば、酸性、中性、または塩基性のpHで観察され得る。一実施形態において、増強された安定性は、約6.0未満(例えば、約6.0、約5.5、約5.0、約4.5、または約4.0)の酸性pHで観察される。別の実施形態では、増強された安定性は、約6.0~約8.0(例えば、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0)の中性pHで観察される。別の実施形態では、増強された安定性は、約8.0~約10.0(例えば、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0)の塩基性pHで観察される。
バリアントFcポリペプチドの熱安定性の増強は、例えば、後述する方法のいずれかを使用して評価することができる。特定の実施形態において、安定化Fcポリペプチドは、その起源となる親ポリペプチドよりも約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約25、約30、約40、または約50℃高い熱安定性(例えば、融解温度すなわちTm)をもつFc領域(またはFc部分)を有する。特定の実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドバリアントは、単量体の可溶性タンパク質として発現され、そのうち25%以下(例えば、約25%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満)が二量体、四量体、または別様に凝集した形態である。
別の実施形態では、安定化Fcポリペプチドは、熱負荷アッセイ(参照により本明細書に援用される米国特許出願第11/725,970号、ならびに下記の実施例4を参照されたい)において40℃超(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49℃、またはそれ以上)のT50を有する。いくつかの実施形態では、本発明の安定化Fc分子は、50℃超(例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58℃またはそれ以上)のT50を有する。いくつかの実施形態では、本発明の安定化Fc分子は、60℃超(例えば、60、61、62、63、64、65℃、またはそれ以上)のT50を有する。なおもさらなる実施形態では、本発明の安定化Fc分子は、65℃超(例えば、65、66、67、68、69、70℃、またはそれ以上)のT50を有する。さらなる実施形態において、本発明の安定化Fc分子は、70℃超(例えば、70、71、73、74、75℃、またはそれ以上)のT50を有する。
特定の実施形態において、本発明の安定化Fc分子は、約60℃超(例えば、約61、62、63、64、65℃またはそれ以上)、65℃超(例えば、65、66、67、68、69℃またはそれ以上)、または約70℃超(例えば、71、72、73、74、75℃またはそれ以上)のTm値をもつCH2ドメインを有する。他の実施形態では、本発明の安定化Fc分子は、約70℃超(例えば、71、72、73、74、75℃またはそれ以上)、約75℃超(例えば、76、77、78、79、80℃またはそれ以上)、または80℃超(例えば、81、82、83、84、85℃またはそれ以上)のTm値をもつCH3ドメインを有する。特定の実施形態では、前記安定化Fcポリペプチドは、IgG4抗体(例えば、agly IgG4.P)のアグリコシル化またはグリコシル化されたFc領域を含む親Fcポリペプチドのバリアントである。他の実施形態では、前記安定化Fcポリペプチドは、IgG1抗体(例えば、agly IgG1)のアグリコシル化Fc領域を含む親Fcポリペプチドのバリアントである。さらに他の実施形態では、本発明の安定化Fc分子は、グリコシル化IgG1抗体の熱安定性と実質的に同じまたはそれよりも高い熱安定性をもつFc領域またはFc部分(例えば、CH2及び/またはCH3ドメイン)を有する。
特定の実施形態において、本発明のバリアントFcポリペプチドは、その起源となる親Fcポリペプチドと比較して、凝集の低減をもたらす。一実施形態において、本発明の方法によって生成される安定化Fc分子は、親Fc分子と比べて少なくとも1%減少した凝集性を有する。他の実施形態では、安定化Fcポリペプチドは、親分子と比べて少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも100%減少した凝集性を有する。
他の実施形態では、本発明の安定化Fcポリペプチドは、その起源となる親Fcポリペプチドと比較して、長期安定性または有効期間の増大をもたらす。一実施形態において、本発明の方法によって生成される安定化Fc分子は、安定化されていない結合分子と比べて少なくとも1日増大した有効期間を有する。これは、安定化Fcポリペプチドの調製物が、生物学的活性のあるバリアントFcポリペプチドを、前日に存在したものと実質的に同じ量で有し、かつ、この調製物において、バリアントポリペプチドの認識できる凝集または分解がないことを意味する。他の実施形態では、安定化Fc分子は、安定化されていないFc分子と比べて少なくとも2日間、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも6か月間、または少なくとも1年間増大した有効期間を有する。
特定の実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、その親Fcポリペプチドと比較して増大した収率で発現される。一実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、親Fc分子と比べて少なくとも1%増大した収率を有する。他の実施形態では、安定化Fcポリペプチドは、親Fc分子と比べて少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%増大した収率を有する。
例示的な実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、宿主細胞、例えば、細菌または真核生物(例えば、酵母または哺乳動物)の宿主細胞において(その親Fcポリペプチドと比較して)増大した収率で発現される。本発明の安定化Fcポリペプチドをコードする核酸分子を発現させるために使用され得る例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HELA(ヒト子宮頸癌)細胞、CVI(サル腎臓株)細胞、COS(SV40 T抗原を有するCVIの誘導体)細胞、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)細胞、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)細胞、HAK(ハムスター腎臓株)細胞、SP2/O(マウス骨髄腫)細胞、BFA-1c1BPT細胞(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)細胞、PER.C6(登録商標)(ヒト網膜由来細胞株、Crucell,The Netherlands)、及び293細胞(ヒト腎臓)が挙げられる。
他の実施形態では、本発明の安定化Fcポリペプチドは、大規模(例えば、商業規模)条件下で、宿主細胞において(その親Fcポリペプチドと比べて)増大した収率で発現される。例示的な実施形態において、安定化Fc分子は、少なくとも10リットルの培養培地で発現させたとき、増大した収率を有する。他の実施形態では、安定化Fc結合分子は、少なくとも20リットル、少なくとも50リットル、少なくとも75リットル、少なくとも100リットル、少なくとも200リットル、少なくとも500リットル、少なくとも1000リットル、少なくとも2000リットル、少なくとも5,000リットル、または少なくとも10,000リットルの培養培地で宿主細胞から発現させたとき、増大した収率を有する。ある例示的な実施形態において、少なくとも10mg(例えば、10mg、20mg、50mg、または100mg)の安定化Fc分子が、培養培地1リットル毎に生成される。
(i)安定化Fcアミノ酸
特定の実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、297位にGln(Q)残基を有する、IgG4分子のCH2ドメイン(またはそのアミノ酸292~340)及びIgG1分子のCH3ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の安定化Fcポリペプチドは、IgG1分子のCH2及びCH3ドメイン、ならびに、単独または297位のAsp(D)残基と組み合わせた299位のLys(K)残基を含む。
(ii)安定化Fc部分の例
本発明の安定化Fc部分の例は、本明細書の随所、実施例、及び配列表で確認することができる。
特定の例示的な実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、下記の表1.1に示すFcアミノ酸配列のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を含む、安定化IgG4 Fc領域を含む。安定化Fc変異は、太字で下線が引かれている。
Figure 0007457661000007
Figure 0007457661000008
Figure 0007457661000009
Figure 0007457661000010
Figure 0007457661000011
特定の例示的な実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、下記の表1.2に示すキメラFc部分アミノ酸配列のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を有する、安定化キメラFc領域を含む。
Figure 0007457661000012
Figure 0007457661000013
他の例示的な実施形態では、本発明の安定化Fcポリペプチドは、下記の表1.3に示すIgG1 Fc部分アミノ酸配列のうちの1つ、2つ、またはそれ以上を有する、安定化アグリコシル化IgG1 Fc領域を含む。
Figure 0007457661000014
Figure 0007457661000015
Figure 0007457661000016
IV.バリアントFcポリペプチドを安定化させる方法
特定の態様において、本発明は、Fc領域(例えば、アグリコシル化Fc領域)を含むポリペプチドを安定化させる方法であって、(a)出発Fc領域の少なくとも1つのFc部分内で変異のための1つ以上のアミノ酸位置を選択することと、(b)変異のために選択された1つ以上のアミノ酸位置を変異させることにより、ポリペプチドを安定化させることとを含む、方法に関する。
一実施形態において、出発Fc領域は、IgG1 Fc領域である。別の実施形態では、出発Fc領域は、IgG4 Fc領域である。別の実施形態では、出発Fc領域は、キメラFc領域である。一実施形態において、出発Fc領域は、アグリコシル化IgG1 Fc領域である。別の実施形態では、出発Fc領域は、アグリコシル化IgG4 Fc領域である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体(またはその断片)のFc領域は、配列番号85に示す配列を有する。
一実施形態において、変異のために選択されるアミノ酸位置は、出発IgG分子(例えば、IgG4分子)のFc領域内の伸長ループ内にある。別の実施形態では、変異のために選択されるアミノ酸位置は、CH3ドメイン間の界面に存在する。別の実施形態では、変異のために選択されるアミノ酸位置は、1hzh結晶構造内の炭水化物との接触部位(例えば、V264、R292またはV303)付近にある。他の実施形態では、アミノ酸位置は、CH3/CH2界面付近、またはCH3/CH2界面付近(例えば、H310)にあってもよい。別の実施形態では、Fc領域の全体的な表面電荷を変化させる1つ以上の変異が、例えば、表面に露出したグルタミン残基のセット(Q268、Q274、またはQ355)のうちの1つ以上において生じ得る。別の実施形態では、アミノ酸位置は、CH2及びCH3の「バリンコア」に見られるバリン残基である。CH2の「バリンコア」は、全てCH2ドメインの同じ近位内部コアに向けて配置されている5つのバリン残基(V240、V255、V263、V302及びV323)である。同様の「バリンコア」がCH3でも観察される(V348、V369、V379、V397、V412及びV427)。別の実施形態では、変異のために選択されるアミノ酸位置は、アミノ酸297でN結合型炭水化物と相互作用または接触することが予測される位置にある。そのようなアミノ酸位置は、同族のFc受容体(例えば、FcγRIIIa)に結合したFc領域の結晶構造を調べることによって同定することができる。N297と相互作用を生じる例示的なアミノ酸は、残基262~270によって形成されるループを含む。
例示的なアミノ酸位置は、EU付番の慣例によるアミノ酸240位、255位、262~266位、267~271位、292~299位、302~309位、379位、397~399位、409位、412位、及び427位を含む。特定の実施形態において、変異のために選択される1つ以上のアミノ酸位置は、240位、255位、262位、263位、264位、266位、268位、274位、292位、299位、302位、303位、307位、309位、323位、348位、355位、369位、379位、397位、399位、409位、412位、及び427位からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置である。特定の実施形態において、変異のために選択される1つ以上のアミノ酸位置は、240位、262位、264位、266位、297位、299位、307位、309位、399位、409位、及び427位からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置である。別の実施形態では、1つ以上のアミノ酸位置は、297位、299位、307位、309位、409位、及び427位からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置である。別の実施形態では、1つ以上のアミノ酸位置は、アミノ酸残基240、262、264、及び266から選択される。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU297位にある。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU299位にある。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU307位にある。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU309位にある。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU399位にある。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU409位にある。別の実施形態では、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU427位にある。
特定の実施形態において、Fc領域は、IgG1 Fc領域である。Fc領域がIgG1 Fc領域である特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸位置は、EU付番によるアミノ酸残基240、262、264、299、297、及び266から選択される。Fc領域がIgG4 Fc領域である他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸位置は、EU付番によるアミノ酸残基297、299、307、309、399、409、及び427から選択される。
一実施形態において、変異は、そのアミノ酸位置におけるアミノ酸側鎖のサイズを低減させる(例えば、アラニン(A)、セリン(S)またはスレオニン(T)による置換)。別の実施形態では、変異は、非極性側鎖を有するアミノ酸による置換(例えば、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、及びトリプトファン(W)による置換)である。別の実施形態では、変異は、CH3界面に疎水性を加え、例えば、2つの相互作用するドメイン間の会合を増大させたり(例えば、Y349F、T350V及びT394V)、または界面の側鎖の容積を増大させたりする(例えば、F405Y)。別の実施形態では、「バリンコア」の1つ以上のアミノ酸は、それらの安定性を増大させるために、イソロイシンまたはフェニルアラニンで置換される。別の実施形態では、アミノ酸(例えば、L351及び/またはL368)は、より高次の分岐した疎水性側鎖に変異する。
一実施形態において、変異は、アラニン(A)による置換である。一実施形態において、変異は、フェニルアラニン(F)による置換である。別の実施形態では、変異は、ロイシン(L)による置換である。一実施形態において、変異は、スレオニン(T)による置換である。別の実施形態では、変異は、リジン(K)による置換である。一実施形態において、変異は、プロリン(P)による置換である。一実施形態において、変異は、フェニルアラニン(F)による置換である。
一実施形態において、変異は、下記の表5.1、表5.2、表5.3、及び/または表5.4に示す変異または置換のうちの1つ以上を含む。
特定の実施形態において、変異は、240F、262L、264T、266F、297Q、297S、297D、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399S、409M、及び427F(EU付番の慣例)からなる群から選択される1つ以上の置換を含む。別の実施形態では、変異は、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399E、399S、409K、409M、及び427Fからなる群から選択される1つ以上の置換を含む。別の実施形態では、1つ以上のアミノ酸位置は、アミノ酸残基240F、262L、264T、及び266Fから選択される。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは299Aである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは299Kである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは307Pである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは309Kである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは309Mである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは309Pである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは323Fである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは399Sである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは399Eである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは409Kである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは409Mである。別の実施形態では、置換のうちの少なくとも1つは427Fである。
別の実施形態では、変異は、2つ以上の置換(例えば、2、3、4、または5つ)を含む。別の実施形態では、変異は、3つ以上の置換(例えば、3、4、5、または6つ)を含む。さらに別の実施形態では、安定化Fc領域は、4つ以上の置換(例えば、4、5、6、または7つ)を含む。
別の態様において、本発明は、安定化Fc領域を含む安定化結合分子を作製する方法であって、本発明の安定化Fc領域を含むポリペプチドを、結合部分のアミノ末端またはカルボキシ末端に遺伝子融合させることを含む方法に関する。特定の実施形態において、安定化Fc領域は、本発明の方法によって安定化される。
別の実施形態では、治療用抗体は、スクランブリングを消失させるか、または抗体のスクランブリングに対する感受性を低減させることができる。特定の抗体、例えば、野生型IgG4定常領域を有する(例えば、ヒンジ領域を含む)ものは、内因性IgG4抗体とのスクランブリングに感受性があり、機能的に一価の産物を2コピー産生し得る(例えば、Aalberse and Schuurman,Immunology 105:9-19,2002を参照されたい)。スクランブリング率は、IgG4の内因性レベルに依存し得、これは可変である。結果として、野生型ヒトIgG4定常領域を含む治療用抗体は、可変の薬物動態的/薬力学的(PK/PD)プロファイルを有する。野生型IgG4定常領域を含む抗体のスクランブリングは、VLA4に対して一価であり、別の抗原に対して一価である二重特異性抗体をもたらし得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療用抗体は、同じ特異性(例えば、α4への特異的結合)を有するが野生型IgG4定常領域を含む抗体よりも一貫性の高いPKプロファイルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療用抗体の一貫性の高いPKプロファイルは、同じ特異性(例えば、α4への特異的結合)を有するが野生型IgG4定常領域を含む抗体と比較して、本明細書に記載の抗体の安全性を増大させる、純度を増大させる、及び/または効力を増大させる場合がある。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1抗体とヒトIgG4抗体とのキメラまたはハイブリッドである重鎖ヒンジ及びFc領域を含む治療用抗体は、ヒトIgG4分子由来のヒンジ及びFc領域を含む抗体と生じるスクランブリングを低減または消失させることができる。一実施形態において、キメラまたはハイブリッドの重鎖定常領域を有する本明細書に記載の抗体は、スクランブリングを消失させるか、または抗体のスクランブリングに対する感受性を低減させることにより、PK/PD変動を低減させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療用抗体は、同じ特異性(例えば、α4への特異的結合)を有するが野生型IgG4定常領域を含む抗体よりも低いPK/PD変動を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体は、二価モノクローナル抗体による効力を増大させ、及び/またはスクランブリングに起因する二重特異性を消失させることができる。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体は、非変異型の対応物よりも、もしくは同じ特異性(例えば、α4への特異的結合)を有するが野生型IgG4定常領域を含む抗体よりも高い結合親和性を呈すること及び/または高い受容体占有率の持続を示すことができる。いくつかの実施形態では、PK/PK変動が低い、及び/または結合親和性が高い、及び/またはスクランブリングが低減もしくは消失した、本明細書に記載の治療用抗体は、同じ特異性(例えば、α4への特異的結合)を有するが野生型IgG4定常領域を含む抗体と比較して、本明細書に記載の抗体の安全性を増大させる、純度を増大させる、及び/または効力を増大させる場合がある。好ましい実施形態では、スクランブリングを消失させるかまたは抗体のスクランブリングに対する感受性を低減させる抗体は、(a)配列番号80の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる重鎖と、(b)配列番号81の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる軽鎖とを含む組換え抗アルファ4抗体である。
V.タンパク質安定性を評価する方法
本発明の組成物の安定性特性は、当技術分野において公知の方法を使用して分析することができる。当業者に許容される安定性パラメータを用いてよい。例示的なパラメータについて、以下にさらに詳細に記載する。例示的な実施形態では、熱安定性が評価される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の発現レベル(例えば、収率%によって測定される)が評価される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の凝集レベルが評価される。
特定の実施形態において、Fcポリペプチドの安定性特性は、好適な対照のものと比較される。例示的な対照としては、親Fcポリペプチド、例えば野生型Fcポリペプチド、野生型(グリコシル化)IgG1またはIgG4抗体が挙げられる。別の例示的な対照は、アグリコシル化Fcポリペプチド、アグリコシル化IgG1またはIgG4抗体である。一実施形態において、後述する1つ以上のパラメータが測定される。
一実施形態において、これらのパラメータのうちの1つ以上は、哺乳動物細胞における発現後に測定される。一実施形態において、後述する1つ以上のパラメータは、大規模製造条件(例えば、FcポリペプチドまたはFcポリペプチドを含む分子のバイオリアクターにおける発現)で測定される。
A.熱安定性
本発明の組成物の熱安定性は、当技術分野において公知のいくつかの非限定的な生物物理学的または生化学的な技術を使用して分析され得る。特定の実施形態において、熱安定性は、分析的分光法によって評価される。例示的な分析的分光法は、示差走査熱量測定(DSC)である。DSCは、ほとんどのタンパク質またはタンパク質ドメインのアンフォールディングに付随する熱吸収に感応する熱量計を用いる(例えば、Sanchez-Ruiz,et al.,Biochemistry,27:1648-52,1988を参照されたい)。タンパク質の熱安定性を決定するには、タンパク質のサンプルを熱量計に挿入し、Fcポリペプチド(またはそのCH2もしくはCH3ドメイン)がアンフォールディングするまで温度を上昇させる。タンパク質がアンフォールディングする温度が、全体的なタンパク質安定性を示す。
別の例示的な分析的分光法は、円二色性(CD)分光法である。CD分光測定は、組成物の光学活性を温度上昇の関数として測定する。円二色性(CD)分光法は、構造的非対称性によって生じる左回り偏光と右回り偏光との吸光度の差を測定する。無秩序構造またはアンフォールディングした構造は、秩序だった構造またはフォールディングした構造のものとは非常に異なるCDスペクトルをもたらす。CDスペクトルは、温度上昇の変性効果に対するタンパク質の感応性を反映し、したがってタンパク質の熱安定性を示す(van Mierlo and Steemsma,J.Biotechnol,79(3):281-98,2000を参照されたい)。
熱安定性を測定するための別の例示的な分析的分光法は、蛍光発光分光法である(上記のvan Mierlo and Steemsmaを参照されたい)。熱安定性を測定するためのさらに別の例示的な分析的分光法は、核磁気共鳴(NMR)分光法である(例えば、van Mierlo and Steemsmaを参照されたい)。
他の実施形態では、本発明の組成物の熱安定性は、生化学的に測定される。熱安定性を評価するための例示的な生化学的方法は、熱負荷アッセイである。「熱負荷アッセイ」では、本発明の組成物を一定期間にわたり一連の高温に供する。例えば、一実施形態では、Fc領域を含む試験Fcポリペプチドを、一連の漸増温度に、例えば1~1.5時間供する。次いで、Fc受容体(例えば、FcγR、プロテインA、またはプロテインG)に結合するFc領域の能力を、関連する生化学的アッセイ(例えば、ELISAまたはDELFIA)によってアッセイする。例示的な熱負荷アッセイは、下記の実施形態4に記載する。
一実施形態において、このようなアッセイは、ハイスループット形式で行ってもよい。別の実施形態では、当技術分野において公知の方法を使用して、Fcバリアントのライブラリを作出してもよい。Fcの発現を誘導してもよく、Fcを熱負荷に供してもよい。負荷を与えた試験サンプルを結合についてアッセイし、安定であるFcポリペプチドをスケールアップし、さらに解析してもよい。
特定の実施形態において、熱安定性は、上記の技術のいずれか(例えば分析的分光法技術)を使用して、本発明の組成物の融解温度(Tm)を測定することによって評価される。融解温度は、組成物の分子の50%がフォールディングした状態にある、熱転移曲線の中点における温度である。
他の実施形態では、熱安定性は、分析的分光法技術(例えばDSC)を使用して、本発明の組成物の比熱または熱容量(Cp)を測定することによって評価される。組成物の比熱は、1molの水の温度を1℃上げるのに必要な(例えばkcal/mol単位の)エネルギーである。大きなCpは、変性した、または不活性なタンパク質組成物の特徴である。特定の実施形態では、組成物の熱容量の変化(ΔCp)が、熱転移の前及び後の組成物の比熱を決定することによって測定される。他の実施形態では、熱安定性は、熱力学的安定性の他のパラメータ、例えばアンフォールディングのギブズ自由エネルギー(ΔG)、アンフォールディングのエンタルピー(ΔH)、またはアンフォールディングのエントロピー(ΔS)を測定または決定することによって評価され得る。
他の実施形態では、上記の生化学的アッセイのうちの1つ以上(例えば熱負荷アッセイ)を使用して、組成物の50%がその活性(例えば結合活性)を保持する温度(すなわちTc値)を決定する。
B.凝集%
特定の実施形態において、本発明の組成物の安定性は、その凝集する傾向を測定することによって決定される。凝集は、いくつかの非限定的な生化学的または生物物理学的な技術によって測定することができる。例えば、本発明の組成物の凝集は、クロマトグラフィ、例えばサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用して評価され得る。SECは、サイズに基づいて分子を分離する。カラムに、イオン及び小分子は内部に受け入れるが大きなものは受け入れないポリマーゲルの半固体ビーズを充填する。タンパク質組成物をカラム上部に加えると、小型のフォールディングしたタンパク質(すなわち、非凝集型タンパク質)は、溶媒中で大きなタンパク質凝集体が利用できるものよりも大きな容積に分配される。その結果、大きな凝集体がカラム中をより速く移動し、このようにして混合物をその成分に分離または分画することができる。各画分がゲルから溶出する際に、それを別々に(例えば光散乱によって)定量することができる。したがって、画分の濃度を、ゲルに加えたタンパク質の全濃度と比較することにより、本発明の組成物の凝集%を決定することができる。安定な組成物は本質的に単一の画分としてカラムから溶出し、本質的に単一のピークとして溶出プロファイルまたはクロマトグラムに現れる。
いくつかの実施形態では、SECをインライン光散乱(例えば古典的または動的な光散乱)と併せて使用して、組成物の凝集%を決定する。特定の実施形態では、静的光散乱を用いて、各画分またはピークの質量を、分子形状または溶出位置とは無関係に測定する。いくつかの実施形態では、動的光散乱を用いて、組成物の水力学的サイズを測定する。タンパク質安定性を評価する他の例示的な方法は、高速SECを含む(例えば、Corbett et al.,Biochemistry.23(8):1888-94,1984を参照されたい)。
非限定的な実施形態において、凝集%は、タンパク質サンプル中のタンパク質凝集体の割合を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、組成物の凝集%は、タンパク質サンプル中のフォールディングしたタンパク質の割合を決定することによって測定される。
C.収率%
他の実施形態では、本発明の組成物の安定性は、タンパク質の発現(例えば組換え発現)後に回収されるタンパク質の量(本明細書では「収率%」)を測定することによって評価される。例えば、収率%は、宿主培養培地1ml当たりに回収されるタンパク質のミリグラム数(すなわちタンパク質のmg/ml)を決定することによって測定することができる。いくつかの実施形態では、収率%は、哺乳動物宿主細胞(例えばCHO細胞)における発現後に評価される。
D.損失%
さらに他の実施形態では、本発明の組成物の安定性は、所定の期間にわたって保管した後、一連の温度(例えば-80~25℃)におけるタンパク質の損失をモニタリングすることによって評価される。回収されるタンパク質の量または濃度は、当技術分野において公知である任意のタンパク質定量法を使用して決定され、タンパク質の初期濃度と比較され得る。例示的なタンパク質定量法としては、SDS-PAGE分析またはBradfordアッセイ(Bradford,et al.,Anal.Biochem.72,248,(1976))が挙げられる。損失%を評価するための非限定的な方法は、上述の分析的SEC法のいずれかを用いる。損失%の測定値は、任意の所望の保管条件または保管処方、例えば凍結乾燥タンパク質調製物において決定することができる。
E.タンパク質分解%
さらに他の実施形態では、本発明の組成物の安定性は、標準条件下で保管した後にタンパク質分解されたタンパク質の量を決定することによって評価される。ある例示的な実施形態において、タンパク質分解は、タンパク質のサンプルのSDS-PAGEによって決定され、SDS-PAGEでは、インタクトなタンパク質の量を、SDS-PAGEゲル上に現れる低分子量断片の量と比較する。別の例示的な実施形態では、タンパク質分解は、マススペクトロメトリー(MS)によって決定され、MSでは、予想される分子量のタンパク質の量を、サンプル中の低分子量タンパク質断片の量と比較する。
F.結合親和性
さらに他の実施形態では、本発明の組成物の安定性は、その標的結合親和性を決定することによって評価され得る。結合親和性を決定する多種多様な方法が、当技術分野において公知である。結合親和性を決定する例示的な方法は、表面プラズモン共鳴を用いる。表面プラズモン共鳴とは、バイオセンサマトリクス内のタンパク質濃度の変化を、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden及びPiscataway,NJ)を使用して検出することにより、リアルタイムの生体分子特異的相互作用の分析を可能にする光学現象である。さらなる説明については、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26、Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques 11:620-627、Johnsson,B.,et al.(1995)/.MoI.Recognit.8:125-131、及びJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268-277を参照されたい。
G.他の結合試験
さらに他の実施形態では、本発明の組成物安定性は、結合分子の変性またはアンフォールディングした部分に対する標識化合物の結合を定量することによって評価され得る。そのような分子は疎水性であり得るが、それは、これらの分子が、天然タンパク質の内部に通常は埋没しているが、変性またはアンフォールディングした結合分子では露出するアミノ酸の大きな疎水性パッチと結合または相互作用する可能性が高いためである。例示的な標識化合物は、疎水性蛍光色素の1-アニリノ-8-ナフタレンスルホン酸(ANS)である。
VI.安定化Fc領域を含む安定化結合ポリペプチド
一実施形態において、本発明のポリペプチドは、IgG4抗体由来のCH1ドメイン、IgG4抗体由来のCH2ドメイン、及びIgG1抗体由来のCH3ドメインを含む。一実施形態において、ポリペプチドは、Ser228Pro置換をさらに含む。ポリペプチドは、アミノ酸297及び/または299の変異、例えば、297Q及び/または299K、あるいは297S及び/または299Kをさらに含んでもよい。ポリペプチドはまた、IgG1またはIgG4抗体由来のCH1ドメイン、IgG4抗体由来のCH2ドメイン、及びIgG1抗体由来のCH3ドメインを含んでもよく、このポリペプチドは、Ser228Pro、297Q、または299K置換のうちの1つ以上を含んでもよい。IgG4分子由来のCH1ドメイン(Ser228Pro置換を含む)、IgG4抗体由来のCH2ドメイン、及びIgG1抗体由来のCH3ドメインからなるFc領域のアミノ酸配列を、配列番号43に提示する。一実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、本発明の安定化されたFcポリペプチドは、配列番号74に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、本発明の安定化されたFcポリペプチドは、配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、配列番号76に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、本発明の安定化Fcポリペプチドは、配列番号77に示されるアミノ酸配列を含む。
一実施形態において、本発明のポリペプチドのFc領域は、一本鎖(scFc)である。一実施形態において、本段落に記載されるFc領域を含む分子は、一価である。一実施形態において、本段落に記載されるFc領域を含む分子は、一価であり、Fc領域は、scFcである。本明細書に記載のFc領域を含む分子はまた、scFvを含み得る。
VII.機能的部分を含む安定化Fc含有ポリペプチド
本発明のバリアントFc含有ポリペプチドは、所望の効果をもたらすように、さらに修飾されていてもよい。例えば、バリアントFcポリペプチドのFc領域は、付加的な部分、すなわち、例えば、ブロッキング部分、検出可能部分、診断用部分、及び/または治療用部分などの機能的部分に、結合している、例えば共有結合している場合がある。例示的な機能的部分をまず以下に記載し、続いて、かかる機能的部分を異なるアミノ酸側鎖化学構造に結合させるのに有用な化学を記載する。
有用な機能的部分の例としては、ブロッキング部分、検出可能部分、診断用部分、及び治療用部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なブロッキング部分には、例えば、受容体または補体タンパク質に結合するFc領域の能力を阻害することにより、エフェクター機能が低減するように、十分な立体容積及び/または電荷をもつ部分が含まれる。非限定的なブロッキング部分としては、ポリアルキレングリコール部分、例えば、PEG部分またはPEG-マレイミド部分が挙げられる。非限定的なPEG化部分(または関連するポリマー)は、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、ポリオキシエチル化グリセロール(「POG」)及び他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール(「PVA)及び他のポリアルキレンオキシド、ポリオキシエチル化ソルビトール、またはポリオキシエチル化グルコースであり得る。ポリマーは、少なくとも1つの活性スルホン部分を有する限り、上記の単量体に基づくホモポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ターポリマーであってよく、直鎖状であっても分枝状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよい。ポリマー部分は任意の長さまたは分子量であってよいが、これらの特徴は生物学的特性に影響を及ぼし得る。ポリマーの平均分子量は、薬学的用途においてクリアランス速度を減少させるのに特に有用であり、2,000~35,000ダルトンの範囲内である。さらに、2つの基がポリマーの各末端に1つずつ結合する場合、ポリマーの長さは、2つの基の間の実効距離及び他の空間的関係に影響し得る。したがって、当業者は、ポリマーの長さを変更して、所望の生物学的活性を最適化または付与することができる。PEGは、生物学的用途において、いくつかの理由で有用である。PEGは、典型的には透明、無色、無臭で、水溶性、熱安定性があり、多くの化学的因子に対して不活性であり、加水分解せず、無毒である。PEG化は、分子の見かけの分子量を増大させることにより、分子の薬物動態的性能を向上させることができる。見かけの分子量の増大は、皮下投与または全身投与後の身体からのクリアランスの速度を低減させる。多くの場合、PEG化は、抗原性及び免疫原性を減少させ得る。さらに、PEG化は、生物学的活性のある分子の可溶性を増大させ得る。
PEG化された抗体及び抗体断片は、概して、本明細書に記載の抗体及び抗体断片の投与によって軽減または調整され得る状態を処置するのに使用され得る。概して、PEG化されたアグリコシル化抗体及び抗体断片は、PEG化されていないアグリコシル化抗体及び抗体断片と比較して増大した半減期を有する。PEG化されたアグリコシル化抗体及び抗体断片は、単独で、一緒に、または他の医薬組成物と組み合わせて用いられ得る。本発明の方法及びポリペプチドにおいて有用な検出可能部分の例としては、蛍光部分、放射性同位元素部分、放射線不透過性部分など、例えばビオチン、フルオロフォア、発色団、スピン共鳴プローブ、または放射標識などの検出可能な標識が挙げられる。例示的なフルオロフォアとしては、蛍光色素(例えばフルオレセイン、ローダミンなど)及び他の発光分子(例えばルミノール(luminal))が挙げられる。フルオロフォアは、基質(例えばダンシルプローブ)に結合すると構造的変化を生じる修飾タンパク質中の1つ以上の残基の近くに位置付けられるとその蛍光が変化するように、環境感応性であってもよい。例示的な放射標識としては、1つ以上の低感度核(13C、15N、2H、125I、123I、99Tc、43K、52Fe、67Ga、68Ga、111Inなど)を有する原子を含む小分子が挙げられる。他の有用な部分は当技術分野において公知である。
本発明の方法及びポリペプチドにおいて有用な診断用部分の例としては、疾患または障害の存在を明らかにするのに好適な検出可能部分が挙げられる。典型的に、診断用部分は、疾患または障害に関連する分子、例えば、標的ペプチド、1つのタンパク質、または複数のタンパク質の存在、非存在、またはレベルを決定することを可能にする。そのような診断剤は、疾患または障害及びその進行の予後判定及び/または診断にも好適である。
本発明の方法及びポリペプチドにおいて有用な治療用部分の例としては、例えば、抗炎症剤、抗がん剤、抗神経変性剤、及び抗感染剤が挙げられる。機能的部分はまた、上述の機能のうちの1つ以上を有し得る。
例示的な治療薬には、核DNAにおいて複数の鎖切断を引き起こすことができ、したがって細胞死(例えば、がん細胞死)を誘導するのに好適な、高エネルギー電離放射線を有する放射性核種が含まれる。例示的な高エネルギー放射性核種には、90Y、125I、1311、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re及び188Reが含まれる。これらの同位元素は、典型的に、短い経路長を有する高エネルギーのOC粒子またはβ粒子を生成する。このような放射性核種は、近接した細胞、例えばコンジュゲートが付着または侵入した新生細胞を殺傷する。放射性核種は、局在化していない細胞には影響をほとんどまたは全く与えず、本質的に非免疫原性である。
例示的な治療薬には、細胞傷害剤、例えば細胞分裂阻害薬(例えばアルキル化剤、DNA合成阻害因子、DNAインターカレーターもしくは架橋剤、またはDNA-RNA転写調節因子)、酵素阻害因子、遺伝子調節因子、細胞傷害性ヌクレオシド、チューブリン結合剤、ホルモン及びホルモンアンタゴニスト、抗血管新生剤なども含まれる。
例示的な治療薬には、アントラサイクリンファミリーの薬物のようなアルキル化剤(例えばアドリアマイシン、カルミノマイシン、シクロスポリンA、クロロキン、メトプテリン、ミスラマイシン、ポルフィロマイシン、ストレプトニグリン、ポルフィロマイシン、アントラセンジオン、及びアジリジン)も含まれる。別の実施形態では、化学療法剤部分は、DNA合成阻害因子などの細胞分裂阻害剤である。DNA合成阻害因子の例としては、メトトレキサート及びジクロロメトトレキサート、3-アミノ-1,2,4-ベンゾトリアジン1,4-ジオキシド、アミノプテリン、シトシンβ-D-アラビノフラノシド、5-フルオロ-5’-デオキシウリジン、5-フルオロウラシル、ガンシクロビル、ヒドロキシ尿素、アクチノマイシン-D、ならびにマイトマイシンCが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なDNAインターカレーターまたは架橋剤としては、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シス-ジアンミン白金(II)ジクロリド(シスプラチン)、メルファラン、ミトキサントロン、及びオキサリプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な治療薬には、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ホモハリントニン、及びイダルビシンなどの転写調節因子も含まれる。本発明と適合する他の例示的な細胞分裂阻害剤としては、アンサマイシンベンゾキノン、キノノイド誘導体(例えばキノロン、ゲニステイン、バクタサイクリン)、ブスルファン、イホスファミド、メクロレタミン、トリアジコン、ジアジコン、カルバジルキノン、インドロキノンEO9、ジアジリジニル-ベンゾキノンメチルDZQ、トリエチレンホスホラミド、及びニトロソ尿素化合物(例えばカルムスチン、ロムスチン、セムスチン)が挙げられる。
例示的な治療薬には、例えば、アデノシンアラビノシド、シタラビン、シトシンアラビノシド、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フロクスウリジン、フトラフル、及び6-メルカプトプリンなどの細胞傷害性ヌクレオシド;タキソイド(例えばパクリタキセル、ドセタキセル、タキサン)、ノコダゾール、リゾキシン、ドラスタチン(例えばドラスタチン-10、-11、または-15)、コルヒチン及びコルチシノイド(例えばZD6126)、コンブレタスタチン(例えばコンブレタスタチンA-4、AVE-6032)、及びビンカアルカロイド(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン(ナベルビン))などのチューブリン結合剤;アンジオスタチンK1-3、DL-α-ジフルオロメチル-オルニチン、エンドスタチン、フマギリン、ゲニステイン、ミノサイクリン、スタウロスポリン、及び(±)-サリドマイドなどの抗血管新生化合物も含まれる。例示的な治療薬には、ホルモン及びホルモンアンタゴニスト、例えばコルチコステロイド(例えばプレドニゾン)、プロゲスチン(例えばヒドロキシプロゲステロンまたはメドロプロゲステロン)、エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロール)、抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン)、アンドロゲン(例えばテストステロン)、アロマターゼ阻害因子(例えばアミノグルテチミド)、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、アピゲニン、ブレフェルジンA、シメチジン、ジクロロメチレン-ジホスホン酸、リュープロリド(リュープロレリン)、黄体化ホルモン放出ホルモン、ピフィスリン-α、ラパマイシン、性ホルモン結合グロブリン、及びタプシガルジンも含まれる。
例示的な治療薬には、酵素阻害因子、例えば、S(+)-カンプトテシン、クルクミン、(-)-デグエリン、5,6-ジクロロベンザ-イミダゾール1-β-D-リボフラノシド、エトポシド、ホルメスタン、フォストリエシン、ヒスピジン、2-イミノ-1-イミダゾリジン酢酸(シクロクレアチン)、メビノリン、トリコスタチンA、チロホスチンAG34、及びチロホスチンAG879も含まれる。例示的な治療薬には、遺伝子調節因子、例えば5-アザ-2’-デオキシシチジン、5-アザシチジン、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、4-ヒドロキシタモキシフェン、メラトニン、ミフェプリストン、ラロキシフェン、トランスレチナール(ビタミンAアルデヒド)、レチノイン酸、ビタミンA酸、9-シス-レチノイン酸、13-シス-レチノイン酸、レチノール(ビタミンA)、タモキシフェン、及びトログリタゾンも含まれる。
例示的な治療薬には、例えば、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン類(diynenes)、及びポドフィロトキシンなどの細胞傷害剤も含まれる。これらのクラスの特に有用なメンバーには、例えば、メトプテリン、ポドフィロトキシン、またはポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシドまたはリン酸エトポシド、ロイロシジン、ビンデシン、ロイロシンなどが含まれる。
本明細書における教示内容と適合するさらに他の細胞毒には、アウリスタチン(例えばアウリスタチンE及びモノメチルアウリスタンE)、カリケアマイシン、グラミシジンD、マイタンシノイド(例えばマイタンシン)、ネオカルチノスタチン、トポテカン、タキサン、サイトカラシンB、臭化エチジウム、エメチン、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアンスラシンジオン、ミトキサントロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、及びそれらの類似体または相同体が含まれる。他のタイプの機能的部分が当技術分野において公知であり、本明細書に含まれる教示内容に基づいて、本発明の方法及び組成物において容易に使用され得る。
機能的部分が、小分子、核酸、ポリマー、ペプチド、タンパク質、化学療法薬、または他のタイプの分子であるかを問わず、前述の機能的部分を特定のアミノ酸側鎖に結合させるための化学は、当技術分野において公知である(特定のリンカーの詳細な総説については、例えば、Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)を参照されたい)。
VIII.医薬組成物
安定化Fc領域を有するVLA-4結合抗体などのα4結合剤は、医薬組成物として配合され得る。典型的には、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理的に適合性がある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。
「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる所望されない毒性効果ももたらさない塩を意味する(例えば、Berge,S.M.,et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1-19を参照されたい)。かかる塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無毒の無機酸に由来するもの、ならびに脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの無毒の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、ならびにN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒の有機アミンに由来するものが含まれる。
本明細書に記載の抗体組成物は、当技術分野において公知の方法に従って配合され得る。医薬の配合は十分に確立された技術分野であり、Gennaro(ed.),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Lippincott,Williams&Wilkins(2000)(ISBN:0683306472)、Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Ed..,Lippincott Williams&Wilkins Publishers(1999)(ISBN:0683305727)、及びKibbe(ed.),Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,3rd ed.(2000)(ISBN:091733096X)にさらに記載されている。
一実施形態において、α4抗体は、塩化ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物、一塩基性リン酸ナトリウム、及びポリソルベート80などの賦形剤材料とともに配合され得る。別の実施形態では、α4抗体は、例えば、pH5、5.5、6、6.5、7、または7.5のクエン酸バッファー中に配合され得る。さらに別の実施形態では、α4抗体は、2、4、5、6、8、10、12、14、または15%のスクロースを含む溶液中に配合され得る。α4抗体は、例えば、約20mg/mlの濃度で緩衝液中に供給されてもよく、2~8℃で保管されてもよい。
医薬組成物はまた、様々な他の形態であってもよい。それらには、例えば、液体溶液(例えば、注射液及び輸注液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム及び坐剤など、液体、半固体、及び固体の剤形が含まれる。その形態は、意図される投与様式及び治療的用途に依存し得る。典型的に、本明細書に記載の薬剤の組成物は、注射液または輸注液の形態である。
そのような組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)によって投与され得る。本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口投与される」という表現は、通常は注射による、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入を含む。
医薬組成物は、典型的に、製造及び保管の条件下で無菌かつ安定でなければならない。医薬組成物は、投与に関する規制及び業界の標準を満たすことを保証するために試験される場合もある。
組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として配合され得る。無菌注射液は、本明細書に記載の薬剤を、必要に応じて上に列挙した成分のうちの1つまたはその組み合わせとともに、適切な溶媒中に必要な量で組み込み、その後濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、本明細書に記載の薬剤を、基礎分散媒及び上に列挙したもののうち必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、典型的な調製方法は、予め滅菌濾過した溶液から本明細書に記載の薬剤と任意の付加的な所望の成分の粉末が得られる、真空乾燥及びフリーズドライである。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含めることにより、もたらすことができる。
IX.投与
安定化Fc領域を有するα4結合抗体は、対象、例えばヒト対象に、様々な方法によって投与することができる。多くの用途で、投与経路は、静脈内注射もしくは注入、皮下注射、または筋肉内注射のうちの1つである。α4結合抗体は、一定用量として、またはmg/kg単位の用量で投与してもよい。抗体は、静脈内(IV)または皮下(SC)に投与してもよい。例えば、抗体は、例えば4週毎に約50~600mg IV、または例えば1週間に少なくとも1回(例えば、1週間に2回)約50~100mg SC(例えば、75mg)の一定単位用量で投与してもよい。一実施形態において、抗体は、50mg、60mg、80mg、100mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、180mg、200mg、300mg、400mg、500mg、または600mg以上の一定単位用量でIV投与される。IV用量の投与は、1週間に1回もしくは2回もしくは3回以上、または2週間、3週間、4週間、もしくは5週間毎に1回、またはより低い頻度であってもよい。
一実施形態において、抗体は、50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、100mg、または120mg以上の一定単位用量でSC投与される。SC用量の投与は、1週間に1回もしくは2回もしくは3回以上、または2週間、3週間、4週間、もしくは5週間毎に1回、またはより低い頻度であってもよい。
安定化Fc領域を有する抗α4抗体は、約1~10mg/kg、例えば、約6.0mg/kg、4.0mg/kg、3.0mg/kg、2.0mg/kg、1.0mg/kgの用量でボーラス投与することもできる。改変用量範囲は、典型的には4週間毎または1か月に1回の投与で、約600mg/対象、約400mg/対象、約300mg/対象、約250mg/対象、約200mg/対象、または約150mg/対象より低い用量を含む。α4結合抗体は、例えば、3~5週間毎、例えば、4週間毎に、または毎月投与してもよい。
投薬は、抗α4抗体を以前に投与した際の患者のクリアランス速度に従って調整され得る。例えば、患者は、患者の体内の抗α4抗体のレベルが既定のレベル未満に低下するまで、第2または後続の用量を投与されない場合がある。一実施形態において、患者のサンプル(例えば、血漿、血清、血液、尿、または脳脊髄液(CSF))を抗α4抗体の存在についてアッセイし、抗α4抗体のレベルが既定のレベルを超えていれば、患者は第2または後続の用量を投与されない。患者の体内の抗α4抗体のレベルが既定のレベル未満であれば、患者は第2または後続の用量を投与される。抗α4レベルが高すぎる(既定のレベルを超える)と決定された患者は、1日もしくは2日もしくは3日、または1週間後に再度試験される場合があり、患者サンプル中の抗α4抗体のレベルが既定のレベル未満に低下していれば、患者に第2または後続の用量の抗体が投与され得る。
この用量はまた、α4結合抗体に対する抗体の産生を低減または回避して、40、50、70、75、もしくは80%超のα4サブユニットの飽和度を達成するか、80、70、60、50、もしくは40%未満のα4サブユニットの飽和度を達成するか、または循環白血球細胞のレベル上昇を防止するように選択してもよい。
特定の実施形態では、インプラント及びマイクロカプセル封入送達系を含む徐放性製剤のように、化合物の急速な放出を防ぐ担体とともに活性剤を調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用してもよい。かかる製剤の調製については、多くの方法が特許を受けているか、または一般に知られている。例えば、Controlled Drug Delivery(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Second Edition,J.Robinson and V.H.L.Lee,eds.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987を参照されたい。
医薬組成物は、医療デバイスによって投与してもよい。例えば、医薬組成物は、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されているデバイスなどの無針皮下注射デバイスによって投与してもよい。よく知られているインプラント及びモジュールの例は、例えば、制御された速度で医薬を分注するための植込み型微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号、皮膚を介して医薬を投与するための治療デバイスを開示する米国特許第4,486,194号、的確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための可変流量植込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号、マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧性薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号、及び浸透圧性薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号に記述されている。当然ながら、このようなインプラント、送達系、及びモジュールは、他にも多くのものが知られている。
本開示は、第1及び第2の薬剤を投与するためのデバイスも特長とする。このデバイスは、例えば、医薬調製物を保管するための1つ以上の収容部を含むことができ、単位用量の第1及び第2の薬剤を送達するように構成されていてもよい。第1及び第2の薬剤は、同じまたは別々のコンパートメントに保管されてもよい。例えば、このデバイスは、投与前に薬剤を組み合わせることができる。異なるデバイスを使用して第1及び第2の薬剤を投与することも可能である。
投与レジメンは、治療的応答または組み合わせの治療効果などの所望の応答をもたらすように調整される。概して、両方の薬剤を生体利用可能な量で対象に提供するために、任意の組み合わせの用量の(別々または合剤のいずれかの)VLA-4結合剤及び第2の薬剤を使用することができる。
本明細書で使用される単位剤形または「一定用量」とは、対象を処置するための投与量単位として適した物理的に別々の単位を意味し、各単位は、必要とされる薬学的担体との関連において、また場合により他の薬剤との関連において所望の治療効果をもたらすように計算された、既定量の活性化合物を含む。
医薬組成物は、本明細書に記載の薬剤を「治療有効量」で含み得る。このような有効量は、投与される第1及び第2の薬剤の組み合わせ効果に基づいて決定され得る。薬剤の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに、少なくとも1つの障害パラメータ、例えば、多発性硬化症パラメータの改善、または障害の少なくとも1つの症状、例えば、筋萎縮症、運動失調、及び振戦などの多発性硬化症の症状の改善のような、所望の応答を個体において誘発する化合物の能力といった要因によっても異なり得る。治療有効量は、治療上有益な効果が、組成物のいずれかの毒性効果または有害効果を上回るものでもある。
X.デバイス及びキット
本明細書に記載の抗体を含む製剤は、医療デバイスによって投与してもよい。このデバイスは、緊急事態において、例えば訓練されていない対象または現場の救急隊員によって使用され、医療施設及び他の医療機器に移動され得るように、可搬性、室温保管、及び使用の容易さなどの特長を備えて設計されてもよい。このデバイスは、例えば、α4結合抗体を含む医薬調製物を保管するための1つ以上の収容部を含むことができ、1つ以上の単位用量の薬剤を送達するように構成されていてもよい。
例えば、医薬組成物は、皮下シリンジまたはマルチチャンバーシリンジを含むシリンジなどの経皮送達デバイスによって投与してもよい。他の好適な送達デバイスとしては、ステント、カテーテル、マイクロニードル、及び植込み型徐放性デバイスが挙げられる。組成物は、例えば、インラインフィルターの有無を問わないIVチューブを含む、標準的なIV機器で静脈内投与してもよい。特定の実施形態において、このデバイスは、SC投与またはIM投与に使用されるシリンジである。
医薬組成物は、医療デバイスによって投与してもよい。例えば、医薬組成物は、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されているデバイスなどの無針皮下注射デバイスによって投与してもよい。よく知られているインプラント及びモジュールの例は、例えば、制御された速度で医薬を分注するための植込み型微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号、皮膚を介して医薬を投与するための治療デバイスを開示する米国特許第4,486,194号、的確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための可変流量植込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号、マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧性薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号、及び浸透圧性薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号に記載されている。治療用組成物は、皮下投与または筋肉内投与のための、生分解性または非生分解性の持続放出製剤の形態であってもよい。かかる組成物のための方法は、当技術分野において公知である。連続投与は、植込み型または外付けのポンプを使用して達成することもできる。投与は、間欠的に、例えば1日1回の注射により、または持続放出製剤のように低用量で連続的に実施してもよい。送達デバイスは、α4結合抗体の投与に最適となるように改変されてもよい。例えば、抗体の保管及び送達に最適な程度までシリンジをシリコン処理してもよい。当然ながら、このようなインプラント、送達系、及びモジュールは、他にも多くのものが知られている。
本開示は、第1及び第2の薬剤(例えば、抗体及び第2の薬剤)を投与するためのデバイスも特長とする。このデバイスは、例えば、医薬調製物を保管するための1つ以上の収容部を含むことができ、単位用量の第1及び第2の薬剤を送達するように構成されていてもよい。第1及び第2の薬剤は、同じまたは別々のコンパートメントに保管されてもよい。一実施形態において、このデバイスは、投与前に薬剤を組み合わせる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の薬剤は、異なるデバイスによって投与される。
α4結合抗体は、キットで提供されてもよい。一実施形態において、キットは、(a)高濃度のVLA-4結合抗体を含む組成物を含む容器と、場合により、(b)第2の薬剤を含む組成物を含む容器と、場合により、(c)情報資料とを含む。情報資料は、本明細書に記載の方法及び/または治療的有用性のための薬剤の使用に関する説明資料、指導用資料、マーケティング資料、または他の資料であり得る。一実施形態において、キットはまた、第2の薬剤を含む。例えば、キットは、α4結合抗体を含む組成物を含む第1の容器、及び第2の薬剤を含む第2の容器を含む。
キットの情報資料の形態は限定されない。一実施形態において、情報資料は、抗体の生産、濃度、有効期限、バッチまたは生産現場情報などに関する情報を含み得る。一実施形態において、情報資料は、α4結合抗体を、例えば、好適な用量、剤形、または投与様式(例えば、本明細書に記載の用量、剤形、または投与様式)で投与して、脊髄傷害もしくは外傷性脳傷害などの急性障害、もしくは炎症性疾患(例えば、MS)を有する対象、または炎症性疾患に関連するエピソードを経験するリスクを有する対象を処置する方法に関する。情報は、印刷された文章、コンピュータ可読資料、動画記録、もしくは音声記録、または実質的な資料へのリンクもしくはアドレスを提供する情報を含め、様々な形式で提供され得る。
薬剤に加えて、キット内の組成物は、溶媒もしくはバッファー、安定剤、または保存剤などの他の成分を含んでもよい。薬剤は、任意の形態、例えば、液体、乾燥形態または凍結乾燥形態で提供されてもよく、実質的に純粋及び/または無菌であってもよい。薬剤が液体溶液で提供される場合、この液体溶液は、典型的には水溶液である。薬剤が乾燥形態で提供される場合、再構成は概して、好適な溶媒の添加による。溶媒、例えば、滅菌水またはバッファーが、場合により、キットにおいて提供されてもよい。
キットは、薬剤を含む1つの組成物または複数の組成物のために1つ以上の容器を含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットは、組成物及び情報資料のための別個の容器、仕切り、またはコンパートメントを含む。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、またはシリンジに含まれてもよく、情報資料は、プラスチックのスリーブまたはパケットに含まれてもよい。他の実施形態では、キットの別々の要素は、単一の分割されていない容器内に含まれる。例えば、組成物は、ラベルの形態で情報資料が添付されたボトル、バイアル、またはシリンジに含まれる。いくつかの実施形態では、キットには、1つ以上の単位剤形(例えば、本明細書に記載の剤形)の薬剤をそれぞれが含む、複数の個別容器(例えば、パック)が含まれる。容器には、併用単位投与量、例えば、α4結合抗体と第2の薬剤の両方を、例えば所望の比で含む単位が含まれ得る。例えば、キットには、例えば単一の併用単位用量をそれぞれが含む、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、ブリスターパック、または医療デバイスが含まれ得る。キットの容器には、気密性、防水性(例えば、水分の変化または蒸発に対する耐性)、及び/または遮光性があってもよい。
キットは、場合により、組成物を投与するのに好適なデバイス、例えばシリンジ、または他の好適な送達デバイスを含む。このデバイスは、薬剤の一方または両方が予めロードされた状態で提供されてもよいし、空であるがロードするのに好適であってもよい。
XI.腫瘍学
本明細書に記載のα4結合抗体及び方法は、固形癌及び血液系悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用され得る。例示的な固形癌は、肺、乳房、膵臓、結腸、前立腺、膀胱、及び脳などの肉腫及び癌腫を含む。血液系悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、白血病、及びリンパ腫などのがんを含む。
血液系悪性腫瘍を有する患者を、本明細書に記載の抗VLA-4抗体などのα4結合抗体を含む組成物で処置する方法が提供される。血液系悪性腫瘍は、身体の造血系及び免疫系のがんである。このタイプのがんは、血液、骨髄、及び/またはリンパ節に影響を及ぼす。血液系悪性腫瘍としては、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性前骨髄球性白血病、急性赤白血病、及びヘアリー細胞白血病(HCL)などの白血病、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫などのリンパ腫、ならびに多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、骨髄異形成症候群(MDS)(AMLに至る可能性がある)、骨髄増殖性疾患、例えば真性多血症(PV、PCV、または真性一次性赤血球増加症(PRV)とも呼ばれる)、本態性血小板増加症(ET)、骨髄線維症、重鎖病、ならびに軽鎖病に起因するアミロイドが挙げられる。
血液系悪性腫瘍を有する患者は、血球数及び血液塗抹標本を、例えば、悪性細胞を同定するのに有用である光学顕微鏡によって分析することにより、同定することができる。骨髄などの生検を使用して悪性細胞を同定することもでき、リンパ節の生検は、リンパ節腫脹を同定するのに有用であり得る。
α4結合抗体(例えば、HuHP1/2、H1L0、H1L1、H1L2またはH1L3などのヒト化抗VLA-4抗体)は、AMLなどの白血病の処置に有用である。白血病は、骨髄から発生するがんであり、悪性細胞は白血球細胞(白血球)である。AML(急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性顆粒球白血病、及び急性非リンパ性白血病とも呼ばれる)は、顆粒球または単球のいずれかから生じる悪性腫瘍である。AMLは、正常な血液細胞として機能できない白血病性芽球と呼ばれる細胞の無制御で過剰な増殖及び蓄積、ならびに正常な骨髄細胞の生成の遮断を特徴とし、血液中の赤血球の欠乏(貧血)、及び血小板の欠乏(血小板減少症)及び正常白血球の欠乏(特に好中球の欠乏、すなわち好中球減少症)をもたらす。
全てのサブタイプのAMLが、VLA-4結合抗体による処置に好適である。AMLのサブタイプは、骨髄芽球が診断時に達している発生段階に基づいて分類される。この分類及びサブセットにより、医師は、その細胞型に最も良好に作用する処置は何か、そして疾患がどれほど速く発生し得るかを決定することができる。このサブセットは、M0、特殊分析により骨髄芽球性;M1、骨髄芽球性、成熟なし;M2、骨髄芽球性、成熟あり;M3、前骨髄球性;M4、骨髄単球性;M5、単球性;M6、赤白血病;及びM7、巨核球性である。VLA-4抗体は、AMLのサブタイプに特に適した二次的薬剤とともに投与してもよい。例えば、急性前骨髄球性白血病(APL)及び急性単球性白血病は、他のサブタイプのAMLとは異なる処置を必要とするAMLのサブタイプである。APLの処置のための第2の薬剤は、全トランス型レチノイン酸(ATRA)またはシタラビンなどの代謝拮抗薬を含み得る。急性単球性白血病の処置のための第2の薬剤は、2-クロロ-2’-デオキシアデノシン(2-CDA)などのデオキシアデノシン類似体を含み得る。
AMLのリスク因子としては、ダウン症候群、ファンコニ貧血、シュワックマン-ダイアモンド症候群、及び他のものなどの特定の遺伝性障害の存在が挙げられる。AML及び遺伝性障害を有する患者には、VLA-4結合抗体、及び遺伝性障害の症状を処置するための第2の薬剤を投与してもよい。例えば、AML及びファンコニ貧血を有する患者には、VLA-4結合抗体及び抗生物質を投与してもよい。
AMLの他のリスク因子としては、異なるがんの処置のための化学療法または放射線療法、タバコの煙、及び大量のベンゼンへの曝露が挙げられる。
α4結合抗体による処置に好適な他のがんとしては、肉腫及び癌腫などの固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、卵巣癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、小細胞肺癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)が挙げられる。
XII.他の障害
本明細書に記載の製剤及び方法は、他の炎症性障害、免疫障害、または自己免疫障害、例えば、中枢神経系の炎症(例えば、多発性硬化症に加えて、髄膜炎、視神経脊髄炎、神経サルコイドーシス、CNS血管炎、脳炎、及び横断性脊髄炎);組織もしくは臓器の移植片拒絶または移植片対宿主病;急性CNS傷害、例えば、脳卒中または脊髄傷害(SCI);慢性腎疾患;アレルギー、例えば、アレルギー性喘息、中等度から重度のアレルギー性鼻炎、眼アレルギー;1型真性糖尿病;炎症性腸障害、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎(例えば、処置または寛解の維持のため);てんかん;好酸球性胃腸炎;重症筋無力症;線維筋痛症;リウマチ学/免疫学に関連する障害、例えば関節炎障害、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎;皮膚科的障害、例えば炎症性/免疫皮膚障害、例えば、乾癬、白斑、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、扁平苔癬、中等度から重度の慢性蕁麻疹;全身性エリテマトーデス(SLE;例えば、ループス腎炎);強皮症(例えば、進行性全身性硬化症(PSS)、例えば肺のPSS);急性または慢性の原発性好酸球性肺炎;シェーグレン症候群;急性冠症候群(ACS);急性心筋梗塞;粥状動脈硬化;ならびに線維性障害、例えば、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、肺線維症(例えば、XRT誘発性)、骨髄線維症、肝硬変、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、及び間質性腎線維症を処置するために使用することもできる。好ましい実施形態では、製剤は、てんかんを処置するために使用され得る。
本明細書に記載の製剤及び方法は、一過性脳虚血発作及び/または動脈狭窄を有する患者における防止を含め、脳虚血などの神経障害を処置するために使用することもできる。他の例示的な神経障害としては、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、ギランバレー症候群(GBS)、黄斑変性症(例えば、滲出型黄斑変性症)、及び前部虚血性視神経症などの眼疾患、神経障害性疼痛(例えば、症候性神経障害性疼痛)、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(例えば、疾患修飾性ALS)及びパーキンソン病が挙げられる。
本明細書に記載の製剤及び方法は、腎臓、心臓、または骨髄の移植などの移植を受けた患者を処置するために使用することもできる。
XIII.多発性硬化症
本明細書に記載のアルファ4結合抗体を含む製剤は、多発性硬化症(MS)などの炎症性疾患の処置に有用である。多発性硬化症は、炎症及びミエリン鞘の喪失を特徴とする中枢神経系疾患である。
MS患者は、MSの診断に関する研究集会によって定義される臨床的に明確なMSの診断を確立する基準によって同定され得る(Poser et al.,Ann.Neurol.13:227,1983)。例えば、臨床的に明確なMSを有する個体は、2回の発作、ならびに、2つの病変の臨床的証拠か、または1つの病変の臨床的証拠及び別の別個の病変の臨床関連領域の証拠のいずれかがあったものである。明確なMSはまた、2回の発作の証拠及び脳脊髄液中のIgGのオリゴクローナルバンド、または発作、2つの病変の臨床的証拠、及び脳脊髄液中のIgGのオリゴクローナルバンドの組み合わせによって診断され得る。McDonald基準を使用してMSを診断することもできる(McDonald et al.,2001,“Recommended diagnostic criteria for multiple sclerosis:guidelines from the International Panel on the Diagnosis of Multiple Sclerosis,”Ann.Neurol.50:121-127)。McDonald基準には、複数の臨床的発作がない場合に、MSの診断に使用される、一定期間にわたるCNS機能障害のMRIによる証拠の使用が含まれる。多発性硬化症の効果的な処置はいくつかの異なる方法で評価され得る。以下のパラメータが、処置の実効性を測るために使用され得る。2つの例示的な基準は、EDSS(総合能力障害度スケール)、及びMRI(磁気共鳴画像法)での増悪の出現を含む。EDSSは、MSに起因する臨床的機能障害をグレード分けする方法である(Kurtzke,Neurology 33:1444,1983)。8つの機能系が、神経学的機能障害のタイプ及び重症度について評価される。簡単に説明すると、処置の前に、錐体系、小脳系、脳幹系、感覚系、腸及び膀胱系、視覚系、大脳系、及びその他の機能障害について患者を評価する。所定の間隔でフォローアップを実施する。スケールは、0(正常)から10(MSによる死亡)の範囲である。1ステップ全体の減少は、効果的な処置を示す(Kurtzke,Ann.Neurol.36:573-79,1994)。患者は、当業者によって使用される他の基準を使用して診断されてもよい。
増悪は、MSに起因し、妥当な新しい神経学的異常を伴う新しい症状の出現として定義される(上記のIFNB MS Study Group)。さらに、増悪は、少なくとも24時間持続し、かつ少なくとも30日間の安定状態または改善が先行する必要がある。簡単に説明すると、患者は臨床医による標準的な神経学的検査を受ける。増悪は、NRS(Neurological Rating Scale)の変化に従って軽度、中等度、または重度である(Sipe et al.,Neurology 34:1368,1984)。年間の増悪率及び無増悪患者の割合を決定する。
療法は、無増悪または無再発の患者の率または割合に関して、これらの測定値のいずれかについて処置群とプラセボ群との間で統計的に有意な差がある場合に、効果的であるとみなされ得る。さらに、最初の増悪までの時間、ならびに増悪の持続期間及び重症度も測定され得る。これに関する療法としての実効性の尺度は、処置群と対照群との比較における最初の増悪までの時間または持続期間及び重症度の統計的に有意な差である。1年、18か月、または20か月を超える無増悪または無再発期間が特に注目に値する。有効性はまた、例えば、単独でまたは他の基準と組み合わせて使用される時限歩行試験を使用して、可動性の向上を含むMSの症状を評価するための、当技術分野において公知の任意の方法を使用して評価され得る。
第1の薬剤と、場合により第2の薬剤の投与の有効性は、次の基準:限界希釈により決定されるMBP反応性T細胞の出現頻度、MBP反応性T細胞株及びクローンの増殖応答、患者から確立されたMBPに対するT細胞株及びクローンのサイトカインプロファイルのうちの1つ以上に基づいて評価することもできる。有効性は、反応性細胞の出現頻度の減少、天然型と比較した修飾ペプチドによるチミジン組み込みの低減、ならびにTNF及びIFN-αの低減によって示される。
臨床測定値としては、1年及び2年の間隔での再発率、ならびに6か月持続するEDSSのベースラインから1.0単位の進行があるまでの時間を含むEDSSの変化が挙げられる。Kaplan-Meier曲線において、能力障害の持続的進行の遅延は、有効性を示す。他の基準としては、MRIでのT2画像の面積及び容積の変化、ならびにガドリニウム増強画像によって決定される病変の数及び体積が挙げられる。
MRIを使用すると、ガドリニウム-DTPA増強画像法(McDonald et al.Ann.Neurol.36:14,1994)を使用して活動性病変を測定したり、またはT2重み付け技術を使用して病変の場所及び範囲を測定したりすることができる。簡単に説明すると、ベースラインのMRIを得る。以降の各試験では、同じ結像面及び患者体位を使用する。位置決め及びイメージングシーケンスは、病変の検出を最大限にし、病変の追跡を容易にするように選択してもよい。同じ位置決め及びイメージングシーケンスをその後の試験に使用してもよい。MS病変の存在、場所、及び範囲は、放射線科医によって決定され得る。病変面積をスライス毎に概算し、合計して総病変面積を求めてもよい。新しい病変の証拠、活動性病変の出現率、病変面積の変化率の3つの分析を行ってもよい(Paty et al.,Neurology 43:665,1993)。療法による改善は、個々の患者のベースラインとの比較、または処置群とプラセボ群との対比における、統計的に有意な改善によって確立され得る。
本明細書に記載の方法で処置され得る多発性硬化症に関連する例示的な症状としては、視神経炎、複視、眼振、眼球運動失調、核間性眼筋麻痺、動き及び音による光視症、求心性瞳孔障害、不全麻痺、不全単麻痺、不全対麻痺、不全片麻痺、四肢不全麻痺、麻痺、対麻痺、片麻痺、四肢麻痺(tetraplegia)、四肢麻痺(quadraplegia)、痙縮、構音障害、筋萎縮症、攣縮、筋痙攣、筋緊張低下、クローヌス、ミオクローヌス、ミオキミア、むずむず脚症候群、下垂足、反射機能不全、錯感覚、感覚消失、神経痛、神経障害性疼痛及び神経原性疼痛、レルミット徴候(l’hermitte’s)、固有感覚機能不全、三叉神経痛、運動失調、企図振戦、測定異常、前庭性運動失調、めまい、言語失調、ジストニア、拮抗運動反復不全、頻尿、膀胱痙縮、弛緩性膀胱、排尿筋・括約筋筋失調、勃起機能不全、無オルガスム症、冷感症、便秘、便意切迫感、便失禁、鬱、認知機能不全、認知症、気分変動、情緒不安定、多幸感、双極性症候群、不安、失語症、言語障害、疲労、ウートホフ症状、胃食道逆流、及び睡眠障害が挙げられる。
MSの各症例は、いくつかの提示パターン及びその後の経過のうちの1つを示す。最も一般的には、MSはまず一連の発作として現れ、その後不思議なことに症状が軽減するにつれて完全または部分的に寛解するが、安定期間後に結局再発する。これは、再発寛解型(RR)MSと呼ばれる。CIS(Clinically isolated syndrome)は、別の再発型MSである。CISは、少なくとも24時間持続する神経症状の最初のエピソードを意味し、中枢神経系(CNS)における炎症または脱髄(神経細胞を覆うミエリンの喪失)によって引き起こされる。一次性進行型(PP)MSは、症状の一時的な安定期またはわずかな緩和があり得るものの、明確な寛解のない段階的な臨床的衰弱を特徴とする。活動性一次性進行型MSは、患者が時折再発を経験する場合、またはMRIで新しい病変の証拠がある場合に生じる。「非活動性」または「進行あり」とは、再発の有無にかかわらず、または新しい病変がMRIで示されるか否かにかかわらず、症状が経時的に悪化している証拠があることを意味する。二次性進行型(SP)MSは、再発寛解型の経過から始まり、その後に一次性進行型の経過が続く。活動性二次性進行型MSは、再発型MSの1つと考えられている。稀に患者は進行性再発型(PR)の経過をたどる場合があり、この場合、疾患は、急性発作が断続して起こる進行性の経過をとる。PP、SP、及びPRは一緒にまとめられて、慢性進行性MSと呼ばれることがある。
したがって、再発型の多発性硬化症(または単に再発性多発性硬化症)は、限定されるものではないが、CIS(clinically isolated syndrome)、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、及び活動性二次性進行型多発性硬化症(活動性SPMS)を含む。
少数の患者は、疾患の発症直後に著しい能力障害またはさらには死をもたらす、迅速かつ過酷な衰弱として定義される悪性MSを経験する。この衰弱は、本明細書に記載の治療薬の投与によって抑止または減速され得る。
本明細書に特長として挙げられる抗α4抗体の投与は、MSの1つ以上の症状、例えば上述の症状のうちの1つ以上を緩和するのに効果的であり得る。例えば、本明細書に記載の抗α4抗体の投与は、一次性進行型または二次性進行型の多発性硬化症(それぞれPPMSまたはSPMS)を処置するために使用することができ、抗α4抗体による処置は、再発を防止するのに効果的であり得る。
ヒト試験に加えて、またはその前に、動物モデルを使用して、2つの薬剤を使用することの有効性を評価してもよい。多発性硬化症の例示的な動物モデルは、実験的自己免疫脳炎(EAE)マウスモデル、例えば、(Tuohy et al.(J.Immunol.(1988)141:1126-1130)、Sobel et al.(J.Immunol.(1984)132:2393-2401)、及びTraugott(Cell Immunol.(1989)119:114-129)に記載されているものである。マウスには、EAEの誘導の前に、本明細書に記載の第1及び第2の薬剤を投与してもよい。次いで、マウスを特徴の基準について評価して、そのモデルにおいて2つの薬剤を使用することの有効性を決定する。
XIV.てんかん
本明細書に記載のアルファ4結合抗体を含む製剤は、てんかんの処置に有用である。
てんかん発作は、脳波記録法または臨床的手段によって検出され得るニューロンの異常放電に起因する発作性エピソードであり、脳の特定の患部が臨床的発現に影響する。てんかん発作は、基本的に、ニューロン膜または興奮及び阻害のプロセスに関連し得るニューロンの基本的な興奮性の不均衡から生じる。Holmes et al.,Epilepsia 45(12):1568-1579,2004も参照されたい。てんかんは、概念的には、てんかん発作を生じる永続的素因、ならびにこの状態の神経生物学的、認知的、心理的、及び社会的な帰結を特徴とする脳の障害として定義される(Fisher R.S.,Curr Opin Neurol.28(2):130-5,2015)。てんかんの有病率及び発生率の近年の調査では、1000人当たり7.6の生涯有病率及び100,000人当たり67.77の年間累積発生率が報告された(Fiest et al.,Neurology 88(3):296-303,2017)。
本発明より前には、てんかん患者の一般的な療法は抗てんかん薬(AED)であり、患者のおよそ70%がAED療法により良好な発作の制御を達成すると推定されている。耐容性が示され適切に選択及び使用されるAEDの2回(またはそれ以上)の妥当な試験が成功しない患者は、薬剤抵抗性てんかんを有すると定義される(Kwan et al.,Epilepsia.51(6):1069-77,2010、及びEpilepsia.51(9):1922,2010の正誤表を参照されたい)。これらの患者については、てんかん手術、神経刺激デバイス、特殊な食事、行動療法、及び他の実験的処置を含む他の療法が検討される。AEDは典型的に、電位依存性もしくはリガンド開口型のイオンチャネルの調整により、または阻害性もしくは興奮性の神経伝達物質系に対する効果によって機能する。現在、20種を超えるAEDが市販されている。より新しい多くのAEDが過去数年で発売されているにもかかわらず、てんかんの管理における新薬及び旧薬の有効性は概して等しく、薬剤抵抗性てんかん歴のある患者が新しい療法によって発作から解放されることは依然として稀である。
発作の制御を改善する、または薬剤抵抗性てんかんの発作を消失させる療法を開発する必要性は依然として高く、未だ満たされていない。てんかんの発病における免疫系及び炎症の潜在的役割を標的とすることは、AED開発及び臨床試験において十分に調査されていない領域を代表する。てんかんの実験モデルとてんかんのヒト患者の両方から得られた証拠は、炎症の役割を示唆している。本明細書に開示される製剤は、てんかんを処置するために使用することができる。例えば、(a)配列番号80の配列を含む重鎖と、(b)配列番号81の配列を含む軽鎖とを含む、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片を含む製剤は、てんかんを患う患者に投与され得る。αインテグリンをブロックすると、白血球と血管の相互作用が低減し、BBBの完全性が安定化すると仮定されている。さらに、発作により誘導される、てんかんを低減させる白血球と血管の相互作用は、発作の頻度及び重症度を低減させると仮定されている。
XV.抗体の生成
アルファ4に結合する組換え抗体は、インビボまたはインビトロの方法、例えばファージディスプレイによって生成され得る。これらの方法を使用して、本明細書に記載のCDRグラフト抗体に使用される抗α4 CDRを供給することができる。さらに、ファージディスプレイなどの方法を使用して、例えば、フレームワークが生殖系列フレームワークであるライブラリを使用することにより、本明細書に開示される生殖系列フレームワークとの関連で、そのようなCDRを選択することができる。
EP 239 400(Winter et al.)は、1つの種の相補性決定領域(CDR)の別の種由来のものへの置換(所与の可変領域内)により抗体を変化させることについて記載している。CDR置換抗体は、真のキメラ抗体と比較して著しく少ない非ヒト成分を含むため、CDR置換抗体は、ヒトにおいて免疫応答を誘発する可能性が低い場合がある(Riechmann et al.,1988,Nature 332,323-327、Verhoeyen et al.,1988,Science 239,1534-1536)。典型的には、組換え核酸技術を使用することにより、マウス抗体のCDRを、ヒト抗体の対応する領域に置換して、所望の置換抗体をコードする配列をもたらす。所望のアイソタイプ(通常、CHはガンマI、CLはカッパ)のヒト定常領域遺伝子セグメントを付加してよく、重鎖及び軽鎖の遺伝子を哺乳動物細胞で同時発現させて、可溶性抗体を生成することができる。大きな非免疫ファージディスプレイライブラリを使用して、標準的なファージ技術を使用してヒト治療薬として開発され得る高親和性抗体を単離することもできる(例えば、Hoogenboom et al.(1998)Immunotechnology 4:1-20、及びHoogenboom et al.(2000)Immunol Today 2:371-8、U.S.2003-0232333を参照されたい)。
本明細書に記載の抗α4抗体または抗体断片は、同族リガンド、例えば、VCAM-1またはフィブロネクチンへの結合に関与するα4サブユニットのエピトープを認識し、それらに特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗α4抗体またはその抗体断片は、α4インテグリンのBエピトープを認識し、それに特異的に結合する。本明細書に記載の抗体の結合は、同族リガンド(例えば、VCAM-1及びフィブロネクチン)のうちの1つ以上へのα4インテグリンの結合を阻害し得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に特長として挙げられる抗体は、細胞、例えばリンパ球のVLA-4と相互作用し得るが、細胞凝集を引き起こすことはない。
例示的なα4結合抗体は、1つ以上のCDR、例えば、本明細書に開示される特定の抗体の3つ全ての重鎖(HC)CDR及び/または3つ全ての軽鎖(LC)CDR、または合計してかかる抗体と少なくとも80、85、90、92、94、95、96、97、98、99%同一であるCDRを有する。一実施形態において、H1及びH2超可変ループは、本明細書に記載の抗体のものと同じ古典的構造を有する。一実施形態において、L1及びL2超可変ループは、本明細書に記載の抗体のものと同じ古典的構造を有する。
一実施形態において、HC及び/またはLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体のHC及び/またはLC可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも70、80、85、90、92、95、97、98、99、または100%同一である。HC及び/またはLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体の対応する配列と、少なくとも1個のアミノ酸から、10、8、6、5、4、3、または2個以下のアミノ酸だけ異なっていてもよい。例えば、その差は、主に、または完全に、フレームワーク領域内にあってもよい。
HC及びLC可変ドメイン配列のアミノ酸配列は、本明細書に記載の核酸配列に高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸配列、または本明細書に記載の可変ドメインもしくはアミノ酸配列をコードするものによってコードされ得る。一実施形態において、HC及び/またはLC可変ドメインの1つ以上のフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、及び/またはFR4)のアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗体のHC及びLC可変ドメインの対応するフレームワーク領域と少なくとも70、80、85、90、92、95、97、98、99、または100%同一である。一実施形態において、1つ以上の重鎖または軽鎖フレームワーク領域(例えば、HCFR1、FR2、及びFR3)は、ヒト生殖系列抗体の対応するフレームワーク領域の配列と少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98、または100%同一である。
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」(これらの用語は本明細書では同義に使用される)の計算は次のように行われる。最適な比較の目的のために配列をアラインする(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入してもよく、比較目的で非相同配列を無視してもよい)。最適なアラインメントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用し、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5でBlossum 62スコアリング行列を用いた場合に最も良好なスコアとして決定される。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、これらの分子は、その位置にて同一である(本明細書で使用されるとき、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と等しい)。2つの配列間の同一性パーセントは、配列に共通する同一の位置の数の関数である。
本明細書で使用される場合、「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を表す。ハイブリダイゼーション反応を行うための指針は、参照により本明細書に援用されるCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6で確認することができる。この参考文献には、水性及び非水性の方法が記載されており、いずれを使用してもよい。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件には、約45℃の6×SSCでのハイブリダイゼーションに続いて、65℃の0.2×SSC、0.1%SDSでの1回以上の洗浄、または実質的に同様の条件が含まれる。
XVI.抗体産生
抗体は、原核細胞及び真核細胞で産生され得る。一実施形態において、抗体(例えば、scFv)は、Pichia(例えば、Powers et al.(2001)J.Immunol.Methods 251:123-35)、Hanseula、またはSaccharomycesなどの酵母細胞で発現される。
一実施形態において、抗体、特に全長抗体、例えば、IgGは、哺乳動物細胞で産生される。組換え発現のための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、Kaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載されるような、DHFR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載のdhfr-CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞、K562、及びトランスジェニック動物、例えば、トランスジェニック哺乳動物の細胞が挙げられる。例えば、細胞は、乳腺上皮細胞である。
免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、組換え発現ベクターは、追加の核酸配列、例えば、宿主細胞内でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子を搭載することができる。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、及び同第5,179,017号を参照されたい)。例示的な選択可能マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr-宿主細胞におけるメトトレキサート選択/増幅での使用)及びneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。
抗体(例えば、全長抗体またはその抗原結合部分)の例示的な組換え発現系では、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウムによるトランスフェクションによってdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクターでは、抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子がそれぞれ、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントのような、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するもの)に作動可能に連結されて、遺伝子の高レベルの転写を推進する。組換え発現ベクターはDHFR遺伝子も搭載し、これにより、メトトレキサート選択/増幅を使用した、ベクターがトランスフェクトされたCHO細胞の選択が可能になる。選択された形質転換体宿主細胞を培養すると、抗体重鎖及び軽鎖の発現が可能になり、インタクト抗体が培養培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、抗体を培養培地から回収するためには、標準的な分子生物学技術が使用される。例えば、いくつかの抗体は、プロテインAまたはプロテインGを用いたアフィニティクロマトグラフィによって単離することができる。例えば、精製されたα4結合抗体は、当技術分野において公知のタンパク質濃縮技術を使用して、約100mg/mL~約200mg/mLに濃縮され得る。
抗体はまた、修飾、例えば、Fc機能を変化させて、例えば、Fc受容体もしくはC1q、または両方との相互作用を減少または除去する修飾を含んでもよい。例えば、ヒトIgG4定常領域は、ヒンジ領域を固定する、残基228のSerからProへの変異を有し得る。IgG4 Fc(ヒンジ+CH2+CH3ドメイン)のアミノ酸配列を図5に提示する。
別の例において、ヒトIgG1定常領域は、例えば、米国特許第5,648,260号における付番による、1つ以上の残基、例えば、残基234及び237のうちの1つ以上で変異していてもよい。他の例示的な修飾は、米国特許第5,648,260号に記載されるものを含む。
Fcドメインを含むいくつかの抗体では、抗体生成系は、Fc領域がグリコシル化されている抗体を合成するように設計されてもよい。別の例において、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメイン内のアスパラギン297でグリコシル化されている(図5を参照されたい)。このアスパラギンは、二分岐タイプのオリゴ糖での修飾部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体及び補体C1qにより媒介されるエフェクター機能に関与する(Burton and Woof(1992)Adv.Immunol.51:1-84、Jefferis et al.(1998)Immunol.Rev.163:59-76)。Fcドメインは、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系で産生され得る。Fcドメインは、他の真核生物の翻訳後修飾を含んでもよい。
他の好適なFcドメイン修飾としては、WO2004/029207に記載のものが挙げられる。例えば、Fcドメインは、XMAB(登録商標)Fc(Xencor,Monrovia,CA)であり得る。Fcドメインまたはその断片は、WO05/063815に記載のドメイン及び断片のように、Fcγ受容体(FcγR)結合領域に置換を有してもよい。いくつかの実施形態では、Fcドメインまたはその断片は、WO05047327に記載のドメイン及び断片のように、新生児型Fc受容体(FcRn)結合領域に置換を有する。他の実施形態では、Fcドメインは、一本鎖、またはその断片、またはその修飾型、例えばWO2008143954に記載のものである。他の好適なFc修飾は、当技術分野において公知であり、説明されている。
抗体は、トランスジェニック動物によって産生されてもよい。例えば、米国特許第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺で抗体を発現させる方法を記載する。乳汁特異的プロモーターと、目的の抗体、例えば本明細書に記載の抗体、及び分泌のためのシグナル配列をコードする核酸配列とを含む、導入遺伝子が構築される。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌によって生成される乳汁には、分泌された目的の抗体、例えば、本明細書に記載の抗体が含まれる。抗体は、乳汁から精製してもよいし、またはいくつかの用途では直接使用してもよい。
抗体は例えば、循環中、例えば血液、血清、リンパ、気管支肺胞洗浄液、または他の組織におけるその安定化及び/または保持を、例えば、少なくとも1.5、2、5、10、または50倍向上させる部分で修飾されていてもよい。
例えば、VLA-4結合抗体は、ポリマー、例えば、実質的に非抗原性のポリマー、例えばポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドに会合してもよい。好適なポリマーは、重量が実質的に異なる。約200~約35,000ダルトン(または約1,000~約15,000、2,000~約12,500)の範囲の数平均分子量を有するポリマーを使用することができる。
例えば、VLA-4結合抗体は、水溶性ポリマー、例えば、親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンにコンジュゲートしていてもよい。そのようなポリマーの非限定的なリストには、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマー及びそれらのブロックコポリマーが含まれるが、ただし、ブロックコポリマーの水溶性が維持されることを条件とする。さらなる有用なポリマーとしては、ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック);ポリメタクリル酸;カルボマー;ラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸ムコ多糖、例えばヒアルロン酸の多糖サブユニットなどのホモ多糖及びヘテロ多糖を含む、糖類単量体D-マンノース、D-ガラクトース及びL-ガラクトース、フコース、フルクトース、D-キシロース、L-アラビノース、D-グルクロン酸、シアル酸、D-ガラクツロン酸、D-マンヌロン酸(例えばポリマンヌロン酸、またはアルギン酸)、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-グルコース及びノイラミン酸を含む分枝状または非分枝状の多糖;ポリソルビトール及びポリマンニトールなどの糖アルコールのポリマー;ヘパリンまたはヘパロンが挙げられる。
XVII.例示的な第2の薬剤
いくつかの場合において、本明細書に記載の製剤、例えば、アルファ4結合抗体を含む製剤は、第2の薬剤を含むか、または第2の薬剤を含む製剤と組み合わせて投与される。
一実施態様において、α4結合抗体及び第2の薬剤は、合剤として用意され、この合剤が対象に投与される。さらに、例えば、合剤の投与の少なくとも24時間前または後に、α4結合抗体製剤を一用量、次いで第2の薬剤を含む製剤を一用量、別々に投与することが可能である。別の実施態様では、抗体及び第2の薬剤は、別々の製剤として用意され、投与のステップは、抗体及び第2の薬剤を連続投与することを含む。連続投与は、同じ日に(例えば、互いの1時間以内に、または少なくとも3、6、もしくは12時間おいて)、または異なる日に行ってもよい。
概して、抗体及び第2の薬剤はそれぞれ、時間的な隔たりがある複数の用量として投与される。抗体及び第2の薬剤は概して、それぞれレジメンに従って投与される。一方または両方のレジメンは、規則的な周期性を有し得る。抗体のレジメンは、第2の薬剤のレジメンと異なる周期性を有してもよく、例えば、一方が他方よりも頻繁に投与されてもよい。一実施態様において、抗体及び第2の薬剤のうちの一方は、1週間に1回投与され、他方は1か月に1回投与される。別の実施態様では、抗体及び第2の薬剤のうちの一方は、連続的に、例えば、30分超から1、2、4、または12時間未満の期間にわたって投与され、他方はボーラスとして投与される。抗体及び第2の薬剤は、任意の適切な方法により、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内に投与され得る。
いくつかの実施形態では、抗体及び第2の薬剤はそれぞれ、単独療法のために処方される各用量と同じ用量で投与される。他の実施形態では、抗体は、単独で投与した場合の有効性に必要な量以下の投与量で投与される。同様に、第2の薬剤は、単独で投与した場合の有効性に必要な量以下の投与量で投与され得る。
α4結合抗体との組み合わせで多発性硬化症を処置するための第2の薬剤の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。
・インターフェロン、例えば、ヒトインターフェロンベータ-1a(例えば、AVONEX(登録商標)またはREBIF(登録商標))及びインターフェロンベータ-1b(BETASERON(商標);17位で置換されたヒトインターフェロンベータ;Berlex/Chiron)、
・グラチラマー酢酸塩(別称コポリマー1、Cop-1;COPAXONE(商標);Teva Pharmaceutical Industries,Inc.)、
・RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、またはリツキシマブと競合するか、もしくはリツキシマブと重複するエピトープに結合する抗体を含む別の抗CD20抗体、
・ミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標)、Lederle)、
・オピシヌマブなどの髄鞘再生剤、
・化学療法薬、例えば、クラブリビン(clabribine)(LEUSTATIN(登録商標))、アザチオプリン(IMURAN(登録商標))、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、シクロスポリン-A、メトトレキサート、4-アミノピリジン、及びチザニジン、
・コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン(MEDRONE(登録商標)、Pfizer)、プレドニゾン、
・免疫グロブリン、例えば、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ);CTLA4Ig;アレムツズマブ(MABCAMPATH(登録商標))またはダクリズマブ(CD25に結合する抗体)、
・スタチン、及び
・TNFアンタゴニスト。
グラチラマー酢酸塩は、グルタミン酸、リジン、アラニン、及びチロシンのアミノ酸のランダムな鎖から形成されるタンパク質である(よってグラチラマー(GLATiramer)という)。グラチラマー酢酸塩は、溶液中で、N-カルボキシアミノ酸無水物を使用し、これらのアミノ酸から、アラニンおよそ5部とリジン3部、グルタミン酸1.5部、及びチロシン1部の比で合成され得る。
さらなる第2の薬剤は、他のヒトサイトカインまたは増殖因子、例えば、TNF、LT、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-12IL-15、IL-16、IL-18、EMAP-11、GM-CSF、FGF、及びPDGFの抗体またはアンタゴニストを含む。さらに他の例示的な第2の薬剤は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90などの細胞表面分子に対する抗体、またはそれらのリガンドを含む。例えば、ダクリズマブは、多発性硬化症を改善し得る抗CD25抗体である。
さらに他の例示的な抗体は、インターフェロン受容体、例えば、インターフェロンベータ受容体を動員する抗体のような、本明細書に記載の薬剤の活性をもたらす抗体を含む。典型的に、第2の薬剤が抗体を含む実施態様において、これは、VLA-4以外もしくはα4インテグリン以外の標的タンパク質、または少なくとも第1の薬剤が認識し特異的に結合するもの以外のVLA-4上のエピトープに特異的に結合する。
さらに他の付加的な例示的な第2の薬剤としては、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、ホスホジエステラーゼ阻害因子、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害因子、アドレナリン作用薬、本明細書に記載の炎症性サイトカインによるシグナル伝達に干渉する薬剤、IL-1β変換酵素阻害因子(例えば、Vx740)、抗P7、PSGL、TACE阻害因子、T細胞シグナル伝達阻害因子、例えばキナーゼ阻害因子、メタロプロテイナーゼ阻害因子、スルファサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害因子、本明細書に記載の可溶性サイトカイン受容体及びその誘導体、抗炎症性サイトカイン(例えばIL-4、IL-10、IL-13及びTGF)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、第2の薬剤が、MSの1つ以上の症状または副作用を処置するために使用され得る。そのような薬剤としては、例えば、アマンタジン、バクロフェン、パパベリン、メクリジン、ヒドロキシジン、スルファメトキサゾール、シプロフロキサシン、ドクサート、ペモリン、ダントロレン、デスモプレシン、デキサメタゾン、トルテロジン、フェニトイン、オキシブチニン、ビサコジル、ベンラファキシン、アミトリプチリン、メテナミン、クロナゼパム、イソニアジド、バルデナフィル、ニトロフラントイン、車前子親水性粘漿薬、アルプロスタジル、ガバペンチン、ノルトリプチリン、パロキセチン、プロパンテリン臭化物、モダフィニル、フルオキセチン、フェナゾピリジン、メチルプレドニゾロン、カルバマゼピン、イミプラミン、ジアゼパム、シルデナフィル、ブプロピオン、及びセルトラリンが挙げられる。小分子である第2の薬剤の多くは、150~5000ダルトンの分子量を有する。
TNFアンタゴニストの例としては、TNF(例えば、ヒトTNFα)に対するキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはインビトロ生成された抗体(またはその抗原結合性断片)、例えばD2E7、(ヒトTNFα抗体、米国特許第6,258,562号;BASF)、CDP-571/CDP-870/BAY-10-3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Pharmacia)、cA2(キメラ抗TNFα抗体;REMICADE(商標)、Centocor);抗TNF抗体断片(例えば、CPD870);TNF受容体、例えば、p55またはp75ヒトTNF受容体の可溶性断片、またはそれらの誘導体、例えば、75kdTNFR-IgG(75kD TNF受容体-IgG融合タンパク質、ENBREL(商標);Immunex;例えば、Arthritis&Rheumatism(1994)Vol.37,S295、J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい)、p55kdTNFR-IgG(55kD TNF受容体-IgG融合タンパク質(LENERCEPT(商標)));酵素アンタゴニスト、例えば、TNFα変換酵素(TACE)阻害因子(例えば、アルファスルホニルヒドロキサム酸誘導体、WO01/55112、及びN-ヒドロキシホルムアミドTACE阻害因子GW3333、-005、または-022);及びTNF-bp/s-TNFR(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis&Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S284、Amer.J.Physiol.-Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37-42を参照されたい)が挙げられる。
第2の薬剤に加えて、他の薬剤を対象に送達することも可能である。しかしながら、いくつかの実施形態では、α4結合抗体及び第2の薬剤以外のタンパク質または生物製剤が、医薬組成物として対象に投与されることはない。α4結合抗体及び第2の薬剤は、注射により送達される唯一の薬剤であり得る。第2の薬剤が組換えタンパク質である実施形態では、α4結合抗体及び第2の薬剤は、対象に投与される唯一の組換え薬剤、または少なくとも免疫応答もしくは炎症応答を調整する唯一の組換え薬剤であり得る。さらに他の実施形態では、α4結合抗体のみが、唯一の組換え薬剤、または対象に投与される唯一の生物製剤である。
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実践または試験で使用され得るが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての公開文献、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、限定であることは意図されない。
特記なき限り、これらの実施例では、全てのアミノ酸付番がEU付番を使用する。
実施例1。バリアント抗VLA-4抗体は、ヒト化HP1/2よりも強力である。
VL鎖には生殖系列フレームワークIGKV4-1(または設計L1及びL2)または生殖系列操作AAH7033.1(設計L3)、VHには生殖系列フレームワークIGHV1-fを使用し、抗VLA-4抗体を構築した。これらの抗体は、米国特許第6,602,503号に記載のヒト化HP1/2抗体よりも少ない逆変異を有した。
重鎖のバリエーション
重鎖の3つのバリエーションの配列が、図1に設計H0、設計H1、及び設計H2として示されている。各設計で、マウスHP1/2のCDRがIGHV1-fフレームワークにグラフトされている。設計H0はフレームワーク領域の逆変異を含まないが、設計H1及びH2は、ヒト化抗体の親和性を最適化するために、様々な度合いの逆変異をフレームワーク領域配列に有する。
軽鎖のバリエーション
軽鎖の4つのバリエーションの配列が、図2に設計L0、設計L1、設計L2、及び設計L3(L0、L1、L2、L3とも呼ばれる)として示されている。各設計で、マウスHP1/2のCDRが生殖系列フレームワークにグラフトされている。IGKV4-1生殖系列フレームワークを設計L0、L1、及びL2に使用し、AAH70335生殖系列操作フレームワークを設計L3に使用した。設計L0はフレームワーク領域の逆変異を含まないが、設計L1、L2、及びL3は、ヒト化抗体の親和性を最適化するために、様々な度合いの逆変異をフレームワーク領域に有する。
競合ELISAアッセイの結果を表2及び図3に示す。この実験では、α4β1を試験mAbとともにプレインキュベートし、次いでマウスHP1/2を競合試薬として使用した。この実験の結果は、軽鎖L2またはL3を有する抗体が、米国特許第6,602,503号に記載されている抗体よりも強力であったことを示した。結果を下記の表2及び図3に示す。このアッセイでは、抗体の重鎖(H1)は、図1に示す「設計H1」配列を有し、一方、L1は、図2の設計L1を意味する。
Figure 0007457661000017
表2において、キメラmAbは、マウス可変重鎖及び軽鎖がヒトIgG1定常領域に遺伝子融合しているキメラ化HP1/2抗体である。この抗体は、結合親和性において、元のマウスHP1/2抗体(Sanchez-Madrid et al.,Eur.J.Immunol.16:1343-1349,1996)と本質的に同一である。実験の結果は、モノクローナル抗体の親和性を、生殖系列操作アクセプターフレームワークのヒト化により、そのマウス親配列と比べて向上させることが可能であることを示す。
別の競合アッセイは、新しい抗体の結合親和性を、U.S.5,840,299に記載のヒト化21.6抗α4抗体(TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ))と比較する。この実験では、マウスHP1/2と試験mAbの混合物のα4β1に対する結合をアッセイした。この実験の結果は、図4及び下記の表3に示され、新たに設計された抗体がナタリズマブよりも約10倍強力であることを示している。
Figure 0007457661000018
実施例2。ヒト化HP1/2(HuHP1/2)は腫瘍細胞株のVLA-4に結合する。
様々な細胞株に対する抗VLA-4抗体HuHP1/2の結合を、フローサイトメトリーによって試験した。結合は、CLL(慢性リンパ性白血病)細胞株のMec1及びJM1、MM(多発性骨髄腫)細胞株のU266及びH929、ならびにAML(急性骨髄性白血病)細胞株のHL60及びKG1で試験した。HuHP1/2は、試験した全ての腫瘍細胞株に結合した(図6)。フローサイトメトリーデータを使用して、異なる細胞株のそれぞれに対する抗体結合のEC50値を計算した。この情報を下記の表4に示す。
HuHP1/2は、フィブロネクチン(FN)及びVCAM1-Ig融合タンパク質に対するAML細胞株の接着をブロックすることも見出された。抗体が接着をブロックし得るかどうかを試験するために、AML細胞株HL60またはKG1を、FNコートウェル(図7A)またはVCAM1-Igコートウェル(図7B)に、漸増濃度のHP1/2またはアイソタイプ対照抗体の存在下で接着させた。HuHP1/2は、FNコートウェル及びVCAM1-Igコートウェルに対する両細胞型の接着をブロックした。両リガンドに対するHL60細胞結合の最大の阻害は、20ug/mlのHuHP1/2で達成された(図7C)。
HuHP1/2は、FN及びVCAM1-Ig融合タンパク質に対するMM細胞株の接着をブロックすることも見出された。MM細胞株U266及びH929を、FNコートウェル(図8A)またはVCAM1-Igコートウェル(図8B)に、漸増濃度のHP1/2またはアイソタイプ対照抗体の存在下で接着させた。HuHP1/2は、FNコートウェル及びVCAM1-Igコートウェルに対する両タイプの細胞株の接着をブロックした。両リガンドに対するU266細胞結合の最大の阻害は、20μg/mLのHuHP1/2で達成された(図8C)。
HuHP1/2は、FN及びVCAM1-Ig融合タンパク質に対するCLL細胞株の接着をブロックすることも見出された。CLL細胞株Mec1及びJM1を、FNコートウェル(図9A)またはVCAM1-Igコートウェル(図9B)に、漸増濃度のHP1/2またはアイソタイプ対照抗体の存在下で接着させた。HuHP1/2は、FNコートウェル及びVCAM1-Igコートウェルに対する両タイプの細胞株の接着をブロックした。両リガンドに対するMec1細胞結合の最大の阻害は、20μg/mlのHuHP1/2で達成された(図9C)。
腫瘍細胞株に対するHuHP1/2結合のIC50値は、図7~9に示されるデータから計算した。これらのデータを表4に示す。
Figure 0007457661000019
実施例3~13の材料及び方法
特記なき限り、実施例3~13を通して、以下の材料及び方法を使用した。
概して、本発明の実施においては、特記なき限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば、抗体技術)、及び電気泳動の標準的技術の従来技術を用いる。例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology),510,Paul,S.,Humana Pr(1996)、Antibody Engineering:A Practical Approach(Practical Approach Series,169),McCafferty,Ed.,IrI Pr(1996)、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow et al,C.S.H.L.Press,Pub.(1999)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.,John Wiley&Sons(1992)を参照されたい。
親抗体
本明細書に開示される安定化抗体を生成するために、モデルヒト抗体(例えば、hu5c8)、そのバリアント抗体、または対応するFc領域のいずれかをコードするポリヌクレオチドを、標準的な発現ベクターに導入した。ヒト抗体hu5c8及びそのバリアントは、例えば、米国特許第5,474,771号及び同第6,331,615号に記載されている。hu5c8 IgG4重鎖(配列番号52)、hu5c8軽鎖(配列番号53)、hu5c8 Fab(配列番号54)、親IgG4抗体の完全なFc部分(配列番号55)、S228P変異を含む親IgG4 Fc部分(配列番号56)、及びS228P/T299A変異を含む親アグリコシル化IgG4 Fc部分(配列番号57)のアミノ酸配列を、それぞれ以下に提示する。重鎖のリーダー配列は、MDWTWRVFCLLAVAPGAHSであった。また、親IgG1アグリコシル化hu5c8抗体の重鎖(配列番号58)及びFc部分(配列番号59)の各配列も提示する。
Hu 5c8 IgG4重鎖(EAG1807)(配列番号52)
Hu 5c8軽鎖(配列番号53)
Hu 5c8 VH/CH1ドメイン(配列番号54)
親IgG4 Fc部分(配列番号55)
S228P変異を含む親IgG4 Fc部分(配列番号56)
S228P/T299A変異を含む親IgG4アグリコシル化Fc部分(YC407)(配列番号57)
親IgG1アグリコシル化Fc部分(配列番号58)
S228P/N297Q変異を含む親IgG4アグリコシル化Fc(EAG2412)(配列番号59)
親IgG1(配列番号60)
実施例3。安定性獲得IgG Fc変異の合理的設計
アグリコシル化抗体は、免疫エフェクター機能が所望されない場合の治療用試薬の重要なクラスを表す。しかしながら、IgG1及びIgG4におけるCH2に会合したオリゴ糖の除去が抗体の立体構造及び安定性に影響することは十分に確立されている。抗体安定性の喪失は、プログラムのタイムライン及び資源に悪影響を及ぼすプロセス開発の課題を呈し得る。ここで、IgG Fcの増大した安定性をもたらすように、CH2及びCH3におけるアミノ酸位置のライブラリを設計するために利用した、いくつかの方法を詳述する。この実施例で示す全ての付番は、EU付番である。
A.エフェクターレスIgGの共変動及び残基頻度設計:IgG4 CH2ドメイン
多様なClクラスIgフォールド配列のデータベースを用い、以前に報告されているように(例えば、PCT公開第WO2007109254号、Wang et al,2009,Proteins 76:99,2009を参照されたい)、共変動分析を行った。ClクラスIgフォールド配列のコンパイル及び構造/HMMベースのアラインメントも、以前に報告されているように行った(参照により全体が本明細書に援用されるPCT公開第WO2007109254号)。共変動分析は、一対のアミノ酸がいかに特定のタンパク質配列内で共保存されていることが見出されるか否かに関連する相関係数であるφ値のデータセットからなり、φ値は、-1.0~1.0の範囲である。1.0のφ値は、あるアミノ酸が配列のサブセット内の1つの位置に見出される場合、異なる残基位置にある別のアミノ酸も常にそのサブセット内に存在することが見出されることを示す。-1.0のφ値は、あるアミノ酸が配列のサブセット内の1つの位置に見出される場合、異なる残基位置にある別のアミノ酸がその配列サブセットには決して存在しないことを示す。0.2超のφ絶対値は、分析されたデータセットで統計的に有意であることが見出された(PCT公開第WO2007109254号、Wang et al.,2009、上記)。データセットでの経験に基づき、φ値>0.25を有意義(すなわち、アミノ酸対の共存に物理的理由がある可能性が高い)とみなし、φ値>0.5は極めて強く、重要な機能的または構造的な理由で共保存されている可能性が高いとみなした。
この試験では、IgG4のCH2配列をクエリ配列として使用し、φ値>0.3をカットオフとして使用して、共変動による変異を同定した。共変動分析から同定された残基を表5.1に記載する(実施例3の残りで詳述する後の残基の全てを表5.1に記載する)。表5.1において、各残基は、EU付番システムによる該当位置における所望のアミノ酸置換を参照する。「根拠」は、用いられた設計方法を意味する。共変動及び残基頻度は、米国特許出願第11/725,970号に詳細に記載されている。追加の共変動関係数は、所与の位置における記載のアミノ酸タイプへの変異によって形成される追加の共変動関係から、この置換を行うことによって失われる共変動関係の数を差し引いた数を意味する。追加の共変動関係数は、示唆される共変動変異の質の付加的な尺度とすることを意図している。複数のアミノ酸置換が示唆され、関連する主要な追加の共変動関係数がない場合には、ライブラリ手法をこの位置で使用し、Delphia熱負荷アッセイ(実施例4に詳述)を使用して20種全てのアミノ酸をスクリーニングした。この方法論を使用して、特定の共変動変異が示唆される、L242P(242位のLがPに変化したことを意味する)、Q268D、N286T、T307P、Y319F及びS330Aの6つのアミノ酸位置を同定した。さらに、5つの残基位置は、複数の望ましい(追加の共変動関係が正である)置換を有することが同定され、ライブラリ手法が利用された。これらの位置は、D270、P271、E294、A299、及びN315である。
タンパク質フォールド内の個々の位置における残基頻度分析に基づいて安定性を向上させる方法は、これまでに首尾よく使用されており(Steipe,2004、Demarest et al,2006)、抗LTβR抗体BHA10のVHドメイン及びVLドメイン内のライブラリ位置の同定に関して特許出願BGNA242-1「STABILIZED POLYPEPTIDES AND METHODS FOR EVALUATING AND INCREASING THE STABILITY OF SAME」に記載されている。残基頻度分析を使用して、安定性獲得変異:N276S、K288R、V308I、S324N、及びG327Aの5つの残基位置を同定した。さらに、共変動及び残基頻度変異の生成におけるPCRエラーにより、L309及びN325の2つの残基が生成された。
Figure 0007457661000020
Figure 0007457661000021
Figure 0007457661000022
B.エフェクターレスIgGの構造分析設計
共変動及び残基頻度の分析による変異の設計に加えた、インタクトなヒトIgGb.12抗体(pdbコード:1hzh、参照:Saphire,E.O.,et al.(2001)Crystal structure of a neutralizing human IGG against HIV-I:a template for vaccine design.Science 293:1155-1159)の公開されている結晶構造の構造分析。この構造分析により、IgG分子の安定性を向上させるように修飾され得る特定の構造的な質が同定された。IgG4分子の安定性をIgG1の安定性に近付けるため、いくつかの変異を行って、IgG1分子とIgG4分子との構造の差を補償した。そのような変異の1つは、IgG4の伸長ループ内のE269に位置する。ライブラリ手法を使用して、このループの追加の長さを補償し得る残基をスクリーニングした。このループは、本実施例のパートCに詳述する追加の変化にも供した。
CH3ドメイン間の界面は、IgG分子のFcドメイン内で最大のタンパク質間接触域を構成する。このIgG1とIgG4との間の界面における単一の置換差は、残基409に位置する。IgG1では、リジンが409位に位置し、IgG4分子では、アルギニンが409位に位置する。IgG4のR409からIgG1 K409への置換は、IgG1 CH3で観察される優れた安定性の質を導入するように設計された。R409M及びR409Iもまた、この理論を試験するために設計された。IgG4 CH3界面におけるアルギニンの余分な容積により良好に適応するために、反対のCH3ドメインの接触残基D399でD399E及びD399Sのいくつかの変異を行った(図11A)。この位置のより小さな側鎖を置換することにより、反対のCH3ドメインは、アルギニンの余分な容積により良好に適応し、CH3ドメインの全体的な安定性を増大させることができた。CH3界面に疎水性を加えて、2つの相互作用ドメイン間の会合を増大させる変異(Y349F、T350V及びT394V)、ならびに界面の側鎖の容積を増大させる変異(F405Y)の設計において、別の手法を使用した。1hzh結晶構造において炭水化物との接触部位付近に位置する残基(V264、R292、V303)、ならびにCH3/CH2界面付近のH310の安定化を試験するためにも、変異を設計した。表面に露出したグルタミン残基のセット(Q268、Q274及びQ355)もまた、全体的な表面電荷を変化させるいくつかの変異の焦点であった。同じ手法をE419に使用した。
最後に、好熱性タンパク質の増大した熱安定性を説明にするために使用される最も一般的な機構のうちの1つは、タンパク質の内部コアの密充填を伴う(参照:Jaenicke,R.and Zavodszky,P.1990.Proteins under extreme physical conditions.FEBS Lett.268:344-349)。この現象を再現するために、CH2及びCH3の「バリンコア」に見られるバリン残基を、イソロイシンまたはフェニルアラニンで置換した。さらなる分岐側鎖及び関連する容積の増加から、安定性の増大が予測された。CH2の「バリンコア」は、全てCH2ドメインの同じ近位内部コアに向けて配置されている5つのバリン残基(V240、V255、V263、V302及びV323)である。同様の「バリンコア」がCH3でも観察される(V348、V369、V379、V397、V412及びV427)。さらに、L351及びL368を、より高度に分岐した疎水性側鎖に変異させた。
C.エフェクターレスIgGの共変動設計:他のCクラスIgドメインに観察された共変動パターンに基づくCH2グリコシル化部位付近の協調変異。
IgG CH2ドメインは、多くの残基を共保存して、EU N297位のN結合型炭水化物との相互作用と、様々なFcγR型のCD16、CD32、及びCD64との相互作用の両方を維持する。炭水化物の除去は、IgG-FcによるFcγR結合の劇的な低減をもたらす(Taylor and Garber,2005)。ここに記載する設計では、IgG-Fc内におけるN結合型炭水化物付近の残基の共変異性を、他のCクラスIgフォールドドメインにおいて共保存されていることが見出されるアミノ酸と置換することによって調査した。これらの共変異がFcγR結合及びCH2ドメインの安定性に及ぼす影響を、N結合型炭水化物の存在下及び非存在下で調査した。その理由は、これらの修飾が、アグリコシル-Fc内で特に良好に耐容される可能性があり、また、アグリコシルFc部分とグリコシル化Fc部分の両方でFcγRとの相互作用を低減させ得る可能性があったためである。
N結合型炭水化物と潜在的に相互作用するのに重要な残基が、この試験の焦点であった。N297で炭水化物と直接接触するIgG1-C^残基を、FcγRIIIaに結合したIgG1-Fcの公開されている結晶構造、及びプログラムMOLMOL(Sondermann,P.,Huber,R.,Oosthuizen,V.,Jacob,U.(2000)The 3.2 Å crystal structure of the human IgG1 Fc fragment-FcgRIII complex.Nature,406:267-273、Koradi,R.,Billeter,M.&Wuthrich,K.(1996)MOLMOL:a program for display and analysis of macromolecular structures.J.Mol.Graph.14:51-55)を使用して同定した。これらのアミノ酸が、共変動分析及び設計の焦点であった。
ClクラスIgフォールド配列のコンパイル及び構造/HMMベースのアラインメントは、以前に報告されているように行った(PCT公開第WO2007109254号)。また、多様なClクラスIgフォールド配列のデータベースを用い、以前に報告されているように(PCT公開第WO2007109254号、Wang et al.,2009、上記)、共変動分析を行った。共変動分析は、一対のアミノ酸がいかに特定のタンパク質配列内で共保存されていることが見出されるか否かに関連する相関係数であるφ値のデータセットからなり、φ値は、-1.0~1.0の範囲である。1.0のφ値は、あるアミノ酸が配列のサブセット内の1つの位置に見出される場合、異なる残基位置にある別のアミノ酸も常にそのサブセット内に存在することが見出されることを示す。-1.0のφ値は、あるアミノ酸が配列のサブセット内の1つの位置に見出される場合、異なる残基位置にある別のアミノ酸がその配列サブセットには決して存在しないことを示す。0.2超のφ絶対値は、分析されたデータセットで統計的に有意であることが見出された(PCT公開第WO2007109254号、Wang et al.,2009、上記)。データセットでの経験に基づき、φ値>0.25を有意義(すなわち、アミノ酸対の共存に物理的理由がある可能性が高い)とみなし、φ値>0.5は極めて強く、重要な機能的または構造的な理由で共保存されている可能性が高いとみなした。
構造分析に基づいて、疎水性残基V262及びV264が、N結合型炭水化物によって溶媒から隔絶されているCH2ドメインの表面上の疎水性パッチを形成することが見出された。さらに、V266は、V262及びV264に近接した残基であり、ループ内に存在し、ドメイン内部に埋没しているものの、CH2ドメインに特有である。V262、V264、及びV266は、IgG-C^ドメイン内で高度に共保存されており、相互に非常に有意な相関係数があることが見出された(φ値:V262-V264=0.44、V262-V26=0.40、V264-V266=0.54)。これらの残基は、IgG定常ドメインの構造ベースの配列アラインメント(図11B)において強調されている。
3つのバリン残基(262、264、及び266)もまた、CR2ドメインにおいて特有のループ構造を形成する残基(残基267~271)と強い相関係数を有する。このループは、他のIgG定常ドメインCL、CHI、及びCH3によって形成されるコンセンサスループよりも2アミノ酸長い。特異的な相関関係は、V262とE269及びD270の間(それぞれ、φ値=0.38及び0.31)、V264とS267、D268、及びE269の間(それぞれ、φ値=0.27、0.44、及び0.52)、ならびにV266とS267の間(φ値=0.30)にある。これらの相関関係に基づき、このループは、N297及びその炭水化物を含むループの位置決めだけでなく、FcγRとの相互作用に重要であることが知られる(Sondermann et al,2000、Shields et al,2001)、残基325~330を含むループの位置決めにも重要であり得ると推測した。
これらの観察に基づいて、これらの位置、特にアグリコシル-IgGにおける他のアミノ酸タイプの耐容性(すなわち、CH2ドメインのフォールディング及び安定性に対する影響)を調査するための設計を生成した。観察することが望まれた別の態様は、これらの部位の修飾がIgGのFcγR結合特性に及ぼし得る影響であった。これらの観察に基づいてCH2ドメイン内で行ったアミノ酸変化を、表5.2に記載し、図11CのIgG-Fcの構造(Sondermann,P.,Huber,R.,Oosthuizen,V.,Jacob,U.(2000)The 3.2 A crystal structure of the human IgG1 Fc fragment-FcgRIII complex.Nature,406:267-273)に示す。全ての変異を含む配列(SDE9)に対する天然配列のアラインメントを図11Dに示す。
Figure 0007457661000023
D.補足的変異
所与の残基位置における特定のタイプの変異の特異性を試験するために、一連の付加的な変異を設計した。これらは、異なるアミノ酸タイプ(極性、疎水性、及び荷電)を、安定性を増大させることが示された残基位置で試験することを含む。様々なIgGアイソタイプ及びグリコシル化状態への全ての安定性獲得変異の適用についても試験する。これらの変異を表5.3に記載する。
Figure 0007457661000024
Figure 0007457661000025
E.さらなる多重変異構築物
安定性変異T299Kを有するペプチドから生成される潜在的なT細胞エピトープを低減させ、T307P及びD399Sの安定性変異を、アグリコシル化IgG1及びIgG4をもたらす他の変異と組み合わせて利用するために、次の構築物も生成する(表5.4)。
Figure 0007457661000026
実施例4。E.coliにおいて産生されたIgG Fc抗体ドメインの熱安定性スクリーニング
米国特許出願第11/725,970号に記載される改変された熱負荷アッセイを安定性スクリーンとして用い、pH4.5での熱負荷事象後に保持された40℃での可溶性IgG Fcタンパク質の量を決定した。
E.coli株W3110(ATCC、Manassas,Va.カタログ番号27325)を、pBRM012(IgG1)及びpBRM013(S228P、T299A変異を有するIgG4)のFcとC末端ヒスチジンタグをコードするプラスミドにより、誘導性araCプロモーターの制御下で形質転換した。形質転換体を、0.6%グリシン、0.6% Triton X100、0.02%アラビノース、及び50μg/mlのカルベニシリンを補った30℃のSB(Teknova、Half Moon Bay,Ca.カタログ番号S0140)からなる発現培地で一晩増殖させた。細菌を遠心分離によりペレット化し、上清をさらなる処理のために収集した。
熱負荷後、凝集した物質を遠心分離によって除去し、処理して透明化した上清中に残った可溶性Fcサンプルを、DELFIAアッセイにより、プロテインA(Sigma P7837)への結合についてアッセイした。2つの96ウェルプレート(MaxiSorp、Nalge Nunc,Rochester,NY、カタログ番号437111)を、37℃で1時間、プロテインAを0.5μg/mlで含むPBSでコートし、次いで、DELFIAアッセイバッファー(DAB、10mM Tris HCl、150mM NaCl、20μM EDTA、0.5% BSA、0.02% Tween 20、0.01% NaN3、pH7.4)で1時間にわたり、室温で振盪しながらブロッキングした。BSAを含まないDAB(洗浄バッファー)でプレートを3回洗浄し、10μlの上清を90μlのDABに添加して、100μlの最終体積とした(参照プレート)。次に、10μlの10% HOAcをポリプロピレンプレート中の各上清に添加して、サンプルのpHを4.5とした。このプレートを90分間40℃でインキュベートし、変性したタンパク質を1400×gでの遠心分離によって除去した。酸及び熱で処理した上清10μlを、pH8.0の100mM Trisを補った90μlのDABを含む別のDELFIAプレート(負荷プレート)に加えた。DELFIAプレートを1時間振盪しながら室温でインキュベートし、前述のように3回洗浄した。250ng/mlのEu標識抗His6抗体(Perkin Elmer、Boston,MA、カタログ番号AD0109)を含むDABをウェル毎に100μl添加することにより、結合したFcを検出し、1時間振盪しながら室温でインキュベートした。このプレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、100μlのDELFIA増強溶液(Perkin Elmer、Boston,MA、カタログ番号4001-0010)をウェル毎に加えた。15分間のインキュベーション後、Europium法を使用してVictor 2(Perkin Elmer、Boston,MA)でプレートを読み取った。40℃で様々な構築物について、参照プレートと負荷プレートとのEu-蛍光の比をランク付けすることにより、データを分析した。pBRM013の値よりも高い蛍光値を、標的構築物(IgG4.P agly)と比べた安定性の増大と解釈した。データを表6.1に示す。
Figure 0007457661000027
Figure 0007457661000028
実施例5。安定化IgG Fc抗体の生成
A.変異誘発、安定化IgG Fc部分のE.coliにおける一過性発現、及び精製
安定性変異を、前述の実施例4に詳述したBRM 13構築物に、Stratagene Quik-Change Lightning変異誘発キットを使用した部位特異的変異誘発によって組み込んだ。36~40塩基長であり、中央に変異を有し、10~15塩基の正しい配列が両側にあり、少なくとも40%のGC含量であり、1つ以上のC/G塩基で開始及び終結するプライマーを設計した。全ての変異体構築物を下記の表7.1に記載する。
Figure 0007457661000029
変異を導入するプライマーを使用したPCRの後、親プラスミドを完全に消化するために、各変異誘発物をDpn I制限酵素により、37℃で5分間にわたって消化した。次いで、変異誘発反応物をXL1-Blue E.Coliウルトラコンピテント細胞に形質転換した。アンピシリン抵抗性コロニーをスクリーニングし、DNAシーケンシングを使用して、変異誘発反応からの正しい配列を確認した。
配列が確認されたDNAを、EC3プログラムを使用した電気穿孔により、3110細胞に形質転換した。特有のコロニーを選別し、10mlのLB-アンピシリン(amp)中のスターター培養物にて一晩増殖させた。この前培養物を1Lの発現培地[SB+0.02%アラビノース+amp/炭水化物(carb)50mg/L]に移し、32℃で一晩増殖させた。細胞を遠心機でスピンダウンし、100mlのスフェロプラストバッファー(20%スクロース、1mM EDTA、10mM Tris-HCl pH8.0、及びリゾチーム(0.01%w/v))に完全に再懸濁した。細胞をスピンダウンし、得られたタンパク質は上清中に存在した。
Protein A Sepharose FF(GE Healthcare)を使用したバッチ精製により、IgG-Fc構築物を精製した。pH3.0の0.1Mグリシンを使用して、Protein A SepharoseからFc分子を溶出させ、Tris塩基で中和し、最後にPierceの10ml透析カセット(10,000 MWCOカットオフ)を使用してPBS中に透析した。
B.変異誘発、安定化抗体のCHO細胞における一過性発現、抗体精製、及び解析
安定性変異を、IgG4.P抗体(アミノ酸228にプロリンヒンジ変異を既に含むVH構築物)に、Stratagene Quik-Change Lightning変異誘発キットを使用した部位特異的変異誘発によって組み込んだ。抗原を認識するFabは、抗CD40抗体5c8に由来した。36~40塩基長であり、中央に変異を有し、10~15塩基の正しい配列が両側にあり、少なくとも40%のGC含量であり、1つ以上のC/G塩基で開始及び終結するプライマーを設計した。全てのグリコシル化及びアグリコシル化変異体構築物を表7.2に記載する。
Figure 0007457661000030
Figure 0007457661000031
変異を導入するプライマーを使用したPCRの後、親プラスミドを完全に消化するために、各変異誘発物をDpn I制限酵素により、37℃で5分間にわたって消化した。次いで、変異誘発反応物をXL10-Gold E.Coliウルトラコンピテント細胞に形質転換した。アンピシリン抵抗性コロニーをスクリーニングし、DNAシーケンシングを使用して、変異誘発反応からの正しい配列を確認した。
確認された配列のDNAをスケールアップし、TOP10 E.coliコンピテント細胞(Invitrogen Corporation、Carlsbad,CA)に形質転換した。アンピシリン薬物抵抗性に形質転換したE.coliコロニーを、インサートの存在についてスクリーニングした。次いで、コロニーを培養して、250mlの大規模培養物にした。Qiagen HiSpeed Maxiprepキットを使用して、一過性トランスフェクションのための細菌培養物からDNAを抽出及び精製した。ε280を使用してDNAを定量し、トランスフェクションに使用するためのDNA濃度を測定した。
次いで、変異体プラスミドを等量の5c8 VLプラスミドと併せて使用して、抗体タンパク質の一過性発現のためにCHO-S細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクションに使用するDNAの量は、VH 0.5mg/L、及びVL 0.5mg/Lであった。トランスフェクション培地(InvitrogenのCHO-S-SFMIIと、SAFCのLONG R4IGF-1)を、PEI 3mg対DNA 1mgの比で1mg/mlのPEI(Polysciencesカタログ番号23966)を用い、5%のトランスフェクション量で調製した。DNAをトランスフェクション培地/PEI溶液に添加し、かき混ぜてから、室温で5分間静置した。次いでこの混合物を、500mlのCHO-S細胞に、Ie6細胞/mlで加えた。37℃、5%CO2で4時間おいた後、1倍量の増殖培地(CHOM37+20g/l PDSF+Penstrep/アムホテリシン)を添加し、最終培養体積を1Lとした。1日目に、10mlの綿加水分解物を200g/Lで添加し、温度を28℃に低下させた。培養生存率を、生存率が70%未満に低下するまで(8~12日間)モニタリングした。この時点で、抗IgGチップへの結合を測定するのにOctet(ForteBio)を使用して、タンパク質発現の力価も調べた。培養物を2400rpmで10分間スピンダウンすることによって細胞を収集し、次いで上清を0.2umの限外濾過膜で濾過した。
Protein A Sepharose FF(GE Healthcare)を使用し、AKTA(Amersham Biosciences)で上清から5C8抗体を捕捉した。pH3.0の0.1Mグリシンを使用して、プロテインAから抗体分子を溶出させ、Tris塩基で中和し、Pierceの10ml透析カセット(10,000 MWCOカットオフ)を使用してPBS中に透析し、1mlの最終体積まで濃縮し、分取サイズ排除クロマトグラフィ(TOSOHASS、TOSOH Biosciences)を使用してさらに精製した。5C8分子を、pH6.0の20mmolクエン酸、150mmol NaClの溶液中に透析した。単量体抗体産物の純度及び百分率を、それぞれ、4~20%のTris-グリシンSDS-PAGE及び分析的サイズ排除HPLCによって評価した。
C.安定性操作抗体のタンパク質配列及び翻訳後修飾の質量スペクトル分析を使用した確認
サンプルを還元条件下で分析した。還元は、100mM DTT中、4MグアニジンHClの存在下で1時間にわたり、37℃で行った。注入の前に、サンプルをPBSで1:1に希釈した。氷酢酸をミックスに添加し、最終濃度2%(v/v)とした。5μgの各サンプルをフェニルカラム上に注入し、ESI-TOFによって分析した。結合溶出法を使用した。バッファーAは、0.03% TFA水溶液を含み、バッファーBは、0.025% TFAアセトニトリル溶液を含む。流速は100μl毎分で一定に保った。スペクトルをAnalystソフトウェアから取得し、MaxEntlを使用してデコンボリューションした。還元分析の後、サンプルの3つがグリコフォームとして検出され、したがって、EC323、EC326及びEAG2300の3つのサンプルに脱グリコシル化を行った。脱グリコシル化は、次の還元条件下で行った:N-グリカナーゼ1mU/タンパク質2μg、20mM DTT、10mM Trisの存在下、pH7.0。サンプルは37℃で脱グリコシル化した。2時間後、さらに30mMのDTTを、2.7MグアニジンHClの存在下でサンプルに添加し、37℃でさらに30分間インキュベートした。還元し、脱グリコシル化したサンプル各5μgをフェニルカラム上に注入し、上記に詳述したように分析した。
結果は、重鎖のN末端グルタミン(Q)がピログルタミン酸(PE)に変換された13サンプル全ての同一性を裏付けた。表7.3は、グリコシル化型と脱グリコシル化型の全てのサンプルについて得られた質量を記載する。全ての軽鎖及び重鎖は、1%以下の低い糖化レベルを含んだ。未修飾のN末端グルタミンに対応する質量が、各サンプルにおいて、-20~40%の相対強度で観察された。全ての軽鎖のデコンボリューションされたスペクトルは、予想通り同一であった。
Figure 0007457661000032
Figure 0007457661000033
翻訳後修飾は、本明細書に記載の抗体において大きく異なり得ることに留意されたい。例えば、糖化(タンパク質のアミノ基のグルコースとの反応によって引き起こされる非酵素的修飾)は、タンパク質中で定法により検出され、そのレベルは、細胞培養条件に応じて大きく異なる。確かに、糖化レベルは、重鎖及び軽鎖のそれぞれで上述の1%よりも大幅に高い場合がある。例えば、本明細書に記載のインタクト抗体の糖化のレベルは、10%、または20%、または30%、または40%、または40%超であり得る。同様に、脱アミノ化及びグリコシル化のような他の翻訳後修飾も、本明細書に記載の抗体の生成及び精製の方法に応じて異なり得る。
サンプルEC323、EC326及びEAG2300は、通常のGOF、GIF、G2F二分岐グリカンを含み、GOFが最も豊富な種であり、その後にGIF、次いでG2Fが続いた。サンプルEC323及びEC326は、コアフコースを欠いているGOFグリカン(GO)に対応する、GOFピークから-146Daにおけるピークを含んだ。EC323については、GO(フコースなし)の相対強度率は2%であり、EC326サンプルのそれは23%であった。3つ全てのグリコシル化サンプルが、低レベル(<1%)のシアル酸をG2Fグリカンに含んだ。
全てのサンプル鎖は-18Daピークを含んだが、これは、ESI-TOFの高いガス温度に関連する計器によるアーチファクトであることが示された。350℃の温度を使用して、TFA付加体を消失させた。
実施例6。アグリコシル化IgG Fc抗体の熱安定性
タンパク質安定性は、タンパク質治療薬の開発及びスケールアップに関する中心的課題である。不十分な安定性は、バイオリアクターにおけるスケールアップ生産に適さないことから、タンパク質の精製が困難であること、医薬品の調製及び使用に適さないことまで、いくつかの開発上の課題をもたらし得る。エフェクター機能が欠損したFc骨格を生成するため、agly IgG4.Pに変異を導入して(S228P)、CH2ドメイン及びCH3ドメインの全体的な安定性を増大させた。この試験の目標は、設計された変異が熱安定性を増大させるかどうかを調査することであった。したがって、示差走査熱量測定(DSC)を使用し、各構築物の熱安定性を評価した。E.coliで産生したFcドメイン構築物と全長抗体構築物の両方を、DSCによって評価した。E.coliで産生したFcドメイン構築物及び全長抗体構築物の発現及び精製の方法は、実施例5に詳述してある。
抗体を、pH6.0の25mMクエン酸ナトリウム、150mM NaClバッファーに対して透析した。抗体を1mg/mLに濃縮し、UV吸光度によって測定した。スキャンは、自動キャピラリーDSC(MicroCal,LLC、Northampton,MA)を使用して行った。2回のバッファースキャンをベースライン減算のために行った。スキャンは、ミディアムフィードバックモードを使用し、20~105℃まで1℃/分で実行した。次いで、ソフトウェアOrigin(MicroCal LLC、Northampton,MA)を使用してスキャンを分析した。三次多項式を使用してゼロ以外のベースラインを補正し、非二状態アンフォールディングモデルを使用して各抗体のアンフォールディング転移のフィッティングを行った。これらの構築物の安定性をさらに評価するため、全長抗体を、pH4.5の25mMリン酸ナトリウム、25mMクエン酸ナトリウム、150nM NaClバッファーに対して透析した。上記に詳述したものと同じDSCプロトコールを使用した。Fabドメインを欠いているE.coliで発現したFcドメイン構築物を使用して、実施例2に詳述したDelphia熱負荷アッセイで同定された変異の安定性の増強を試験した。構築物BRM023、BRM030及びCR103-119を、それらの融解温度と併せて表8.1に記載する。
Figure 0007457661000034
Figure 0007457661000035
表8.1に示したように、agly IgG1及びIgG4.P(S228P、T299A)のFc部分対照は、CH2についてはそれぞれ65.9℃及び62.3℃、CH3についてはそれぞれ82.6℃及び71.2℃の融解温度を有した。単一部位変異のうち、BRM023(T307P)及びBRM030(T299K)は、agly IgG4.P(S228P、T299A)対照と比べてCH2融解温度の3.4~3.9℃の上昇を示した。R409位におけるリジンまたはメチオニンによる置換は、CH3融解温度の12及び6.6℃の上昇を示した。より小さな疎水性側鎖(Leu及びHe)への置換は、CH3の安定性の増大をもたらさなかった。この位置は、IgG1とIgG4との間のCH3界面における単一の差を表す。IgG4 CH3界面の409位におけるアルギニン側鎖の余分な容積を補償するために(実施例3に詳述したように)、D399位の変異を行った。より小さな側鎖(Ser)の置換は、約4℃の融解温度の上昇を促進した。サイズは同じだが電荷を欠いている側鎖(Asp)、または同じ電荷でより大きな側鎖(Glu)のいずれかへの置換は、いずれも、安定性の増大を示さなかった。実施例3に詳述した疎水性バリンコアにおける置換は、約4℃のCH3融解温度の上昇を示したV427Fを例外として、影響を示さなかったか、または融解温度の低下を示した。
単一の変異及び複数の変異の組み合わせを評価するために、全長IgG分子を利用した。実施例5に詳述したように、変異を全長5c8抗体に組み込んだ。pH6.0及びpH4.5でDSCによって測定したCH2ドメイン及びCH3ドメインの融解温度に対する変異の影響を、下記の表8.2にまとめる。
Figure 0007457661000036
Figure 0007457661000037
Figure 0007457661000038
表8.2に示したように、D399S変異は、agly IgG4.PのCH3ドメインの熱安定性を、pH6.0では平均して2℃、pH4.5では最大で10℃上昇させた。アグリコシル化CH2を生成するには、変異体T299Kを使用する。299位でのリジン置換は、この位置のアラニンの置換と比べて、IgG4.P分子の融解温度をpH6.0では5℃、pH4.5では11℃上昇させる。T299K変異はまた、IgG1 CH2のTmをpH6.0で6℃上昇させる。T307P変異は、D399Sと組み合わせて使用したとき、グリコシル化IgG4.P CH2ドメインについて4℃の上昇を示した。単独では、T307Pは、グリコシル化IgG4.P形態の融解温度を上昇させなかった。アグリコシル化形態では、T307P変異は、CH2のTmを6℃上昇させた。T299K変異と組み合わせると、CH2のTmは8℃上昇した。L309K変異は、T307P及びT299Aと組み合わせたとき、アグリコシル化IgG4.Pの安定性の1℃の上昇をもたらした。しかしながら、T307P及びT299Kと組み合わせると、L309K変異は、3℃の上昇をもたらした。グリコシル化形態のIgG4.Pでは、L309K変異は、CH2のTmを2℃上昇させる。L309K変異は、T307P及びT299Aと組み合わせたとき、アグリコシル化IgG4.Pの安定性の1℃の上昇をもたらした。しかしながら、T307P及びT299Kと組み合わせると、L309K変異は、pH4.5で3℃の上昇をもたらした。CH2におけるV323F変異は、CH2ドメインの融解温度に対する影響を示さなかったが、V240F変異は、融解温度を13℃低下させた。さらに、V427F変異もまた、CH2のTmの13℃の低下を示した。
融解温度の最も劇的な上昇は、IgG4.Pでは、T299K、T307P、L309K及びD399Sの組み合わせで観察される。この構築物は、T299A IgG4.Pと比較すると、CH2のTmの11℃(pH6.0)及び12℃(pH4.5)の上昇を示す。実際、T299K変異は、T307P、L309K及びD399Sと組み合わせると、T299A変異と比べてTmを2~3℃上昇させる。さらに、IgG4.PアイソタイプのCH3からIgG1のCH3への変換と組み合わせて、T299KをIgG4.P CH2に導入すると、agly IgG4.Pと比べて、CH2ドメイン及びCH3ドメインでそれぞれ6℃及び15℃の上昇がもたらされた。
CH2グリコシル化の共変動試験で同定された変異は、IgG1 CH2のTmへの影響を全くまたはほとんど示さないか(V262L、及びV262Lと組み合わせたV264T、ループ置換)、または7℃の低下効果を示す(V266F、V264T&V266F、ループ&V264T&V266F)。融解Tmにおける10~12℃の大きな低下が、V262L、V264T及びV266Fの組み合わせで観察された。
まとめると、T299K、T307P、L309Kは、単一変異としても、または互いと組み合わせた場合にも、CH2ドメインの熱安定性を増大させる能力を示した。D399Sは、IgG4.PのCH3ドメインに安定性を与えた。
実施例7:IgG Fc抗体の撹拌及びpH維持ステップ試験
タンパク質治療薬は、長い有効期間を有し、製造生産及び保管中のタンパク質の物理的または化学的特性の変化がごくわずかであることが非常に望ましい。関連するストレスの評価は製剤開発の重要な一部であり、IgG Fc変異体について関連する2つのタイプのストレスを評価した。
A.撹拌ストレス
撹拌は、製造及び加工中に生じるストレスを模倣するだけでなく、実際の搬送(すなわち薬物製品バイアルの試験場への搬送)中のストレスもシミュレートする。したがって、撹拌安定性を48時間にわたって分析し、分析的サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用してタンパク質の凝集または沈殿をモニタリングし、320nMでの吸光度をモニタリングすることによって濁度を測定した。濁度は、タンパク質/バッファー溶液を濁らせたり、または極端な場合には不透明にしたりさえする、凝集及び沈殿物の形成に起因する光散乱の尺度である。以下の方法を各実験セットで一貫して使用した:0.5mg/mlの各サンプル1mlを、3mlの試験管に入れ、650rpmで振盪し、ゴム栓で密封し、パラフィルムで再度密封した。100μlのサンプルを必要な時点(0、6、24、及び48時間)で抽出し、14,000rpmで5分間スピンダウンして、生じた凝集体または沈殿物をスピンダウンした。次いで、サンプルを分析的SECカラムに流して分析した。SEC溶出プロファイルにおいて、凝集したタンパク質は短い保持時間で溶出し、タンパク質分解産物は長い保持時間で溶出する。したがって、単量体種の百分率を使用して、所与の時点におけるタンパク質の全体的な安定性をモニタリングした。
熱安定性の最も高い構築物(実施例6参照)を撹拌試験のために選択した。アグリコシル化IgG4分子については、YC401からYC403(全てアグリコシル化IgG4.P T299A及びD399S[加えて、それぞれT307P、L309K、及びT307P/L309K]、YC404からYC406(全てアグリコシル化IgG4.P T299K及びD399S[加えて、それぞれT307P、L309K、及びT307P/L309K]、野生型IgG4.Pアグリコシル化(T299A)対照としてのYC407、CN578(アグリコシル化IgG1 A299K)、EC331(IgG1 CH3ドメインを有するアグリコシル化IgG4.P T299K及びT307Pである)、アグリコシル化IgG1(T299A)、アグリコシル化IgG4.P(T299A)、及びアグリコシル化IgG1(T299A)を試験のために選択した。グリコシル化分子については、EC304(グリコシル化IgG4.P T307P、D399S)、EC323(グリコシル化IgG4.P D399S、L309K)、EC326(グリコシル化IgG4.P T307P、D399S、L309K)、グリコシル化IgG4.P T299A、及びグリコシル化IgG1を試験のために選択した。
アグリコシル化変異体を濁度の観点から比較すると(下記の表9.1及び図12A参照)、YC403(アグリコシル化IgG4.P T299A、T307P、L309K、及びD399S)、及びYC406(アグリコシル化IgG4.P T299K、T307P、L309K、及びD399S)が、野生型YC407(アグリコシル化IgG4.P T299A)と比較して最も低い量の濁度を示した。両構築物が、野生型と比較して1/3の濁度を各時点で一貫して示す。2つの構築物における唯一の差は、T299A(YC403)及びT299K(YC406)である。
Figure 0007457661000039
Figure 0007457661000040
単量体%(下記の表9.2及び図12B参照)を比較すると、変異体構築物の全てが経時的な凝集の低減を示した。24時間時点で、全ての変異体構築物が野生型よりも良好であり、48時間時点では、ほとんどの構築物が少なくとも2倍良好であった。しかしながら、最も高い単量体%を保持した構築物はYC403であり、その後にYC402(アグリコシル化IgG4.P T299A、L309K及びD399S)、次いでYC406(アグリコシル化IgG4.P T299K、T307P、L309K、及びD399S)が続いた。これらの構築物は、経時的な単量体%の最も少ない漸減的損失を示した。最高ランクの構築物の間で見られた一般的な変異はL309K変異である。このデータは、選択された変異が機械的ストレスの状況下で全体的な安定性を向上させることを実証する。アグリコシル化IgG4.P構築物の両方の撹拌測定値を比較すると、YC403(アグリコシル化IgG4.P T299A、T307P、L309K、及びD399S)及びYC406(アグリコシル化IgG4.P T299K、T307P、L309K、及びD399S)の各構築物が、経時的な機械的ストレスに最も良好に抵抗する。両分子は、熱安定性及び構造安定性の向上を可能にする付加変異(T307P/L309K)を示す。
Figure 0007457661000041
Figure 0007457661000042
IgG1アグリコシル化分子については、CN578(アグリコシル化IgG1 A299K)が最小限の濁度を示し、これはまた、実験全体を通して凝集を本質的に示さなかった。CN578は、IgG1 T299A及び野生型IgG1 299T分子よりも良好に機能し、したがって、A299K変異がアグリコシル化IgG1分子の撹拌の影響を最小限に抑えることを示している。CN578は、濁度試験において、IgG1 T299Aよりも5倍良好である。CN578分子はまた、48時間の期間にわたって凝集を示さず、これは、アグリコシル化IgG1 T299Aとグリコシル化IgG1 299Tの両方と同じ結果である。EC331(IgG1 CH3ドメインを有するアグリコシル化IgG4.P T299K及びT307Pである)はまた、撹拌試験全体を通して100%の単量体を維持したため、他の構築物と比較して非常に良好に機能した。これは、IgG4.P agly構築物(YCシリーズ)と比較して濁度の2倍の向上を示した。このデータは、IgG1 CH3部分が、分子の熱安定性と構造安定性の両方に大いに役立つことを示唆している。
グリコシル化分子EC304(グリコシル化IgG4.P T307P、D399S)、EC323(グリコシル化IgG4.P D399S、L309K)、EC326(グリコシル化IgG4.P T307P、D399S、L309K)では、凝集試験の過程にわたり、野生型グリコシル化IgG4.P分子と比較して、単量体%の向上がある(表9.2及び図12B参照)。しかし、濁度は各時点で大きく増大し、75倍にまで至る。一貫して、各分子はD399Sを含むため、この変異は、データが示すように構造安定性を不安定化する可能性があり得る。
B.低pH維持ステップ試験
タンパク質治療薬は、製造可能性及びスケーラビリティを有することが非常に望ましい。pH維持ステップ試験を行うことは、プロセス開発に必須である。pH維持試験は、タンパク質の生成及び精製段階中のプロセス開発を模倣する。生成段階では、タンパク質の再現性及び一貫性が品質保証のために必須である。この方法を使用すると、タンパク質の安定性を高pHまたは低pHのいずれにおいても測定することができる。この試験では、AKTA(Pharmacia Biotech、現在はGE Healthcare)を使用し、1mgのタンパク質をプロテインAカラムにロードし、pH3.1の酢酸バッファーで溶出させた。タンパク質を2時間間隔で6時間まで低pHに維持した。100μlのアリコートを取り、次いで分析的SECにかけて、分解及び凝集に起因するタンパク質の損失を測定した。結果を表9.3(下記参照)及び図13にまとめる。
Figure 0007457661000043
この試験では、EC304(グリコシル化IgG4.P T307P、D399S)、EC323(グリコシル化IgG4.P D399S、L309K)、EC326(グリコシル化IgG4.P T307P、D399S、L309K)、グリコシル化IgG4.P T299A、EC331(IgG1 CH3ドメインを有するアグリコシル化IgG4.P T299K及びT307Pである)、アグリコシル化IgG1(T299A)、アグリコシル化IgG4.P(T299A)及びグリコシル化IgG1を試験のために選択した。このデータから、EC331は、多くの収量を損失することなく、低pH維持に少なくとも6時間耐えられることが示される。これは、分析したアグリコシル化IgG4野生型対照と比較すると向上している。この構築物が低pH維持に耐えられたことから、他のアグリコシル化構築物も分解によってタンパク質を損失することはないと予測される。いずれもグリコシル化型であるため、EC304及びEC326も収量を維持し、これもグリコシル化IgG1野生型に匹敵する。EC323もグリコシル化型であるが、経時的にはさほど好調ではなかった。L309K変異のみが、より安定化されたEC326構築物に見られるT307P変異と併せて安定化される必要があると仮定される。
実施例8。安定性操作IgG Fc抗体のFc受容体結合
本発明のアグリコシル化バリアント抗体のエフェクター機能を、Fc受容体またはC1qなどの補体分子に結合する能力によって解析した。
A.溶液相競合Biacore実験
Fcγ受容体への結合を、溶液親和性表面プラズモン共鳴を使用して分析した(Day ES,Cachero TG,Qian F,Sun Y,Wen D,Pelletier M,Hsu YM,Whitty A.Selectivity of BAFF/BLyS and APRIL for binding to the TNF family receptors BAFFR/BR3 and BCMA.Biochemistry.2005 Feb 15;44(6):1919-31参照)。この方法は、いわゆる「物質輸送制限(mass-transport-limited)」結合という条件を利用し、この条件下では、リガンド結合(センサチップへのタンパク質の結合)の初期速度が、溶液中のリガンドの濃度に比例する(BIApplications Handbook(1994)Chapter 6:Concentration measurement,pp 6-1-6-10,Pharmacia Biosensor AB参照)。こうした条件下では、チップ上の固定化されたタンパク質に対する可溶性分析物(チップ表面上を流れるタンパク質)の結合が、チップ表面上のデキストラン基質中への分析物の拡散と比べて速い。したがって、分析物の拡散特性及びチップ表面上を流れる溶液中の分析物の濃度が、分析物がチップに結合する速度を決定する。この実験では、溶液中の遊離Fc受容体の濃度を、固定化されたIgG1 MAbを含むCM5 Biacoreチップへの結合の初期速度によって決定する。これらのFc受容体溶液中に、安定性操作構築物(下記の表10.1参照)を滴定した。これらの構築物の半数阻害濃度(50%阻害濃度)(IC50)を、センサチップの表面上に固定化された固定化IgG1抗体にFc受容体が結合することを阻害する能力によって示した。初期結合速度は生のセンサグラムデータ(図14)から得た。IC50を計算するために使用した滴定曲線を、CD64(FcγRI)については図15Aに、CD16(FcγRIIIa V158)については図15Bに示す。結果は表10.1に示し、2回の滴定の平均として報告している。
Figure 0007457661000044
Figure 0007457661000045
CD64結合アッセイにおいて、IgG1対照抗体のIC50は9.6μMであり、IgG1 T299A(agly)及びIgG4.P T299A(agly)のIC50は、それぞれ205及び739μMであった。予想通り、IgG1分子は、IgG4分子よりもCD64に対する親和性が高く、アグリコシル化IgG1は、グリコシル化IgG1と比較して低減した親和性を示した。440~>5000μMの範囲であった安定性操作アグリコシル化IgG4.P分子(EC331及びYC400シリーズ)と比較して、安定性操作グリコシル化IgG4.P分子(EC300及びEC326)のIC50値は約8μMであった。安定性操作IgG4.Pグリコシル化分子(EC300、EC326)のIC50は、グリコシル化IgG1対照と同等であり、T299Aを有する安定性操作アグリコシル化IgG4.P(YC401、YC403)の対数変換後IC50は、アグリコシル化IgG4.P T299A対照と同等であった。しかしながら、T299Kを有する安定性操作アグリコシル化IgG4.Pは、T299A置換を有する同等の分子と比較して対数1~2つ分大きい親和性の低減を示した(図7A)。この結果は、アグリコシル化IgG1 T299A対照と比較して親和性の対数減少を示した安定性操作アグリコシル化IgG1 T299K(CN578)でも観察された(図16B)。実際、T299K置換は、アグリコシル化IgG1(T299A)分子を変化させて、アグリコシル化IgG4.P T299A対照と比べてCD64への親和性が高い状態から、アグリコシル化IgG1(T299K)の親和性がアグリコシル化IgG4.P対照と比較して低い状態にする(図16B)。まとめると、T299K変異は、IgG1分子とIgG4分子の両方において、CD64への親和性を低減させる。
CD16アッセイでは、IgG1対照のIC50は105μMであり、アグリコシル化IgG4.P T299A及びIgG1 T299AのIC50は、いずれも>1000μMであった。グリコシル化安定性操作IgG4.P分子のIC50値は、対数変換後にIgG1対照と同等であり、安定性操作アグリコシル化分子の全て(IgG4.PとIgG1の両方)で、IC50は>1000μMであった。T299KがCD16への親和性をさらに低減させたかどうかを調査するため、T299K置換のみが唯一異なる2セットの構築物(YC401、YC404及びYC403、YC406)を、高い抗体濃度(5μM)で試験した。結合曲線は、高濃度のT299K変異によって生じたCD16への親和性の低減を示す(図17)。まとめると、T299K変異は、IgG分子のCD16への親和性を低減させる。
B.C1q結合ELISA
96ウェルMaxisorb ELISAプレート(Nalge-Nunc Rochester,NY,USA)に、4℃で一晩、PBS中で10ug/mlの組換え可溶性ヒトCD40リガンド50μlをコートすることにより、C1q結合アッセイを行った。ウェルを吸引し、洗浄バッファー(PBS、0.05% Tween 20)で3回洗浄し、200μl/ウェルのブロック/希釈バッファー(0.1M Na2HP04、pH7.0、1M NaCl、0.05% Tween 20、1%ゼラチン)で1時間ブロッキングした。抗体を3倍希釈でブロック/希釈バッファーに希釈し、室温で2時間インキュベートした。
上記のように吸引及び洗浄した後、ブロック/希釈バッファーに希釈した50Jウェル2JゲルのSigmaヒトC1q(C0660)を添加し、室温で1.5時間インキュベートした。
上記のように吸引及び洗浄した後、ブロック/希釈バッファーで3,560倍に希釈した50pll/ウェルのヒツジ抗C1q(Serotec AHP033)を添加した。室温で1時間のインキュベーション後、上記のようにウェルを吸引し、洗浄した。次いで、1:10,000でブロック/希釈剤に希釈した50pll/ウェルのロバ抗ヒツジIgG HRPコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch 713-035-147)を添加し、ウェルを室温で1時間インキュベートした。
上記のように吸引及び洗浄した後、100all TMB基質(420plM TMB、0.004% H2O2を含む0.1M酢酸ナトリウム/クエン酸バッファー、pH4.9)を添加し、2分インキュベートしてから、100ulの2N硫酸で反応を停止した。450nmでの吸光度をSoftmax PRO計器で読み取り、Softmaxソフトウェアを使用して、4パラメータフィッティングにより相対結合親和性(C値)を決定した。
実験の結果は、CN578(IgG1 T299K)とYC406(アグリコシル化IgG4.P T299K、T307P、L309K、及びD399S)のいずれにも、測定可能なC1qへの結合性がなく(図17)、一方でIgG1 T299Aには、いくらかの残余結合性があることを示す。
実施例9。IgG1 CH3は、エフェクター機能なしでアグリコシル化IgG4 CH2を安定化させる
このセクションに記載するタンパク質は5c8抗体に由来し、特記なき限り、IgG4由来のCH1領域、IgG4由来のCH2ドメイン、及びIgG1またはIgG4抗体由来(記載の通り)のCH3ドメインを含む。実施例3に記載したようにタンパク質を生成し、精製した。修飾抗体のCH2ドメイン及びCH3ドメインの熱安定性を、pH6.0及びpH4.5でのDSC(実施例6に詳述)によって測定した。撹拌ストレスの影響を、分析的SEC及びA320nmでの濁度測定(実施例7)によって測定した。本発明のアグリコシル化バリアント抗体のエフェクター機能を、Fc受容体またはC1qなどの補体分子に結合する能力によって解析した。Fcγ受容体への結合は溶液親和性表面プラズモン共鳴を使用して分析し、補体因子C1qへの結合はELISAによって分析した(実施例6)。最後に、Sprague-Dawleyラットで実施した薬物動態試験(実施例9)により、血清半減期を決定した。
実施例5に詳述したように、IgG4-CH2/IgG1-CH3アグリコシル化構築物をCHOで発現させ、収量は培養物1リットル当たり7~14mgの範囲であった。IgG1-CH3の導入は、IgG4由来のCH3を有する同じ構築物と比較して高い収量(-1.5倍)をもたらすようである(表8.1)。さらに、IgG1アグリコシルIgG4-CH2/IgG1-CH3は、野生型アグリコシルIgG4のCH3ドメインの安定性(Tm=74℃、表12.2及び8.2)と比較して増大したCH3ドメインの熱安定性(Tm=85℃)を有した。それまではCH2ドメイン内のグリカンの損失が安定性の重要因子であると考えられていたため、IgG1 CH3が撹拌安定性(表12.3)の決定的特長であることは、興味深い観察である。
EAG2412構築物(N297Q IgG4-CH2/IgG1-、すなわち、N297Q及びSer228Pro置換を有する5c8可変領域(IgG1フレームワーク)、IgG4 CH1、IgG4 CH2、IgG1 CH3)は、T299A及びT299KIgG4-CH2/IgG1-CH3と比較して良好なエフェクター機能プロファイルを示し、CD64及びCD32への結合が最も低いことが観察される。IgG1-CH3は、Fcγ受容体への結合に影響を及ぼさないことが見出された。アグリコシルIgG4-CH2ドメイン含有構築物はいずれも、C1qに結合しない。
安定性操作IgG4/IgG1分子の安定性及び血清半減期に関して、Sprague-Dawleyラットにおいて薬物動態試験を実施した。ラットは、Biogen Idec Institutional Animal Care and Use Committee、ならびに実験動物の人道的な処置及び管理に関する市、州、及び政府の指針に従って飼養した。リン酸緩衝食塩水(PBS)に希釈した抗体1mg/kg(1mg/ml)の単回ボーラス注射を、雄のSprague-DawleyラットにIV投与した。ラットは、注射の0、0.25、0.5、1、2、6、24、48、96、168、216、264、及び336時間後に屠殺した。血清サンプルを調製して分析し、抗体のレベルを定量した。5%正常マウス血清(Jackson ImmunoResearch 015-000-120)を補ったDABにサンプルを希釈し、検出試薬は、最終濃度250ng/mlで使用したEu標識マウス抗ヒトFc抗体(Perkin Elmer 1244-330)であった。精製された抗体の標準曲線と比較して、ExcelのTREND関数を使用することにより、定量を行った。
N297Q IgG4-CH2/IgG1-CH3の半減期は、T299A IgG4抗体と同じであり、これは予想通り、アグリコシル化IgG1よりわずかに短かった(表12.5)。このデータは図19Cにプロットしている。
Figure 0007457661000046
Figure 0007457661000047
Figure 0007457661000048
Figure 0007457661000049
Figure 0007457661000050
Figure 0007457661000051
Figure 0007457661000052
Figure 0007457661000053
実施例10。T299は安定性及びエフェクター機能の決定因子である
このセクションに記載するタンパク質は全て5c8抗体に由来し、特記なき限り、IgG1抗体のCH1、CH2、及びCH3ドメインを含む。実施例5に記載したようにタンパク質を生成し、精製した。CH2ドメイン及びCH3ドメインの融解温度に対する変異の影響を、pH6.0及びpH4.5でのDSC(実施例6に詳述)によって測定した。本発明のアグリコシル化バリアント抗体のエフェクター機能を、Fc受容体またはC1qなどの補体分子に結合する能力によって解析した。Fcγ受容体への結合は溶液親和性表面プラズモン共鳴を使用して分析し、補体因子C1qへの結合はELISAによって分析した(実施例8)。
実施例5に詳述したように、IgG1 T299X及びN297X/T299Kアグリコシル化構築物をCHOで発現させ、収量は培養物1リットル当たり7~30mgの範囲であった(表13.1)。T299Kと組み合わせてN297位に二次的な変異を付加すると、CH2ドメインの熱安定性が1.5~4.4℃低下した(表13.2)。さらに、T299X変異は、正電荷を帯びた側鎖のArg(T299R)及びLys(T299K)からの最も高い安定性の獲得を示した(表13.2)。Asn(T299N)及びGln(T299Q)の2つの極性側鎖は両方ともT299Aと比較すると高い安定性を示したが、正電荷を帯びた側鎖ほど高くはなかった。プロリン(T299P)は、T299Aと比較して安定性のわずかな低下を示し、より大きな疎水性側鎖Phe(T299F)は、CH2ドメインの熱安定性を2.4℃低下させた。最後に、負電荷を帯びた側鎖Glu(T299E)は、CH2の熱安定性にほとんど影響を及ぼさなかった。これらの結果は、T299位の正電荷を帯びた側鎖の置換がCH2ドメインの熱安定性を増大させる新規の特性を実証する。
N297X、T299K変異(CN645、CN646、及びCN647)は全て、CD32a及びCD16への非常に低い親和性を維持しながら、CD64への親和性をわずかに増大させたことが観察される(図20B、20D及び20F)。T299X変異は、一貫して低いCD16への親和性を示したが、CD32aへの低い親和性は、T299Eの場合には増大した(表13.3及び図20C、18E)。また、正電荷を帯びた側鎖T299R及びT299Kのみが、CD64への低い親和性をもたらすことも興味深い(表13.3及び図20A)。最後に、T299K、T299P及びT299Qは、C1q結合を追跡する役には立たず、T299N、T299E、T299Fは、わずかに高いものの依然として非常に低いC1qへの結合を示す(図20G及び20H)。N297P/T299K、N297D/T299K、及びN297S/T299Kは、C1qへの結合を示さない(図20H)。
Figure 0007457661000054
Figure 0007457661000055
Figure 0007457661000056
Figure 0007457661000057
実施例11。安定化Fc構築物は、安定性変異体の適用がFabと無関係であることを示す
このセクションに記載するタンパク質は、5c8抗体に由来する結合部位を含む。EAG2476構築物は、IgG4免疫グロブリン分子由来のFc部分を含み、EAG2478は、IgG1分子由来のFc部分を含む(EAG2476及びEAG2478は、それぞれ、YC406及びCN578構築物のFc型(Fabなし)である)。
実施例5に記載したようにタンパク質を生成し、精製した。CH2ドメイン及びCH3ドメインの融解温度に対する変異の影響を、pH6.0でのDSC(実施例6に詳述)によって測定した。本発明のアグリコシル化バリアント抗体のエフェクター機能を図21に示す。抗体を、Fc受容体に結合する能力によって解析した。Fcγ受容体への結合を、溶液親和性表面プラズモン共鳴(実施例8)を使用して分析した。
実施例5に詳述したように、安定化Fcアグリコシル化構築物をCHOで発現させ、収量を(表14.1)に詳述した。CH2ドメインの変異(T299K、T307P及びL309K)は、Fabの存在下または非存在下で同じ熱安定性を示し(表14.2)、また、同じFcγ受容体結合親和性を有した(表14.3)。まとめると、本発明に詳述する安定化変異は、予想通りFab非依存性であり、Fabの関与にかかわらず、Fcドメインを安定化するのに適用できる。
Figure 0007457661000058
Figure 0007457661000059
Figure 0007457661000060
実施例12
熱安定性、精製時の沈殿の少なさ、及び抗体分泌細胞からの抗体産生力価の向上を含め、望ましい特性を有する本発明の抗体を生成するために、ヒトカッパ軽鎖定常領域に結合した配列番号11の可変軽鎖配列を含む軽鎖と、様々な重鎖定常領域に結合した配列番号4の可変重鎖配列を含む重鎖とを用い、多数の抗体構築物を生成した。試験した様々な重鎖定常領域において、配列変化は驚くほど大きな結果をもたらした。
例えば、ヒトIgG4のCH1、S228P変異(EU付番)を有するヒンジ、CH2、及びCH3領域を含むFc領域(ここで、IgG4は、アスパラギン残基297またはスレオニン残基299(EU付番)のアミノ酸変化によって、N結合型グリコシル化モチーフNXS/Tを消失させることにより、アグリコシル化されている)に、配列番号4の可変重鎖をカップリングさせると、熱安定性に乏しく、プロテインA溶出中に低pHに曝露すると沈殿する傾向がある抗体がもたらされた。驚くべきことに、ヒトIgG4のCH1、S228P変異(EU付番)を有するヒンジ、及びCH2、ならびにヒトIgG1のCH3領域にカップリングしたCH2ドメインにおけるN297Q変異(EU付番)を含むキメラFc領域を使用して、配列番号4の可変重鎖配列を含む抗体重鎖と、ヒトカッパ軽鎖定常領域に結合した配列番号11の可変軽鎖配列を含む軽鎖とを作製したとき、結果として生じた抗体は、精製時の沈殿の少なさに相関する熱安定性の増大、及び抗体産生細胞からの抗体産生の増大を示した。言い換えれば、ヒトカッパ軽鎖定常領域に結合した配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、ヒトIgG1のCH3領域にカップリングしたヒトIgG4のCH1、S228P変異(EU付番)を有するヒンジ、及びN297Q変異(EU付番)を有するCH2を含むキメラFc領域に結合した配列番号4の配列を含む可変重鎖とを含む抗体は、特にS228P(EUインデックス付番)を有するアグリコシル化ヒトIgG4と比較すると、驚くほど熱安定性が高く、抗体精製時の沈殿が少なく、抗体産生細胞からの抗体収量が高かった。
実施例13。水素/重水素交換質量分析及びX線結晶解析によって決定された、安定化エフェクターレス抗体のタンパク質立体構造、動態、及び構造
構造及び動態は、タンパク質の機能に著しく寄与する。根本的な構造機構を理解することは、観察される機能的効果を説明するために重要である。この理由のため、これまでに詳述した安定性獲得変異がタンパク質の構造及び動態に及ぼす影響を、水素/重水素交換質量分析(HfDX MS)とX線結晶解析の両方によって調査した。
A.水素/重水素交換質量分析
水素/重水素交換の質量分析による検出は、タンパク質の動態及び立体構造を解析する手法である。タンパク質の動態/立体構造は、タンパク質中の水素が重水素で交換される速度に影響を及ぼし、したがって、タンパク質の重水素化を経時的に測定することで、タンパク質構造が(例えば変異で)修飾されるときの立体構造の変化を明らかにすることができる。したがって、アグリコシル化抗体Fc骨格の水素/重水素交換に対する安定化変異の影響を調査した。
抗体(50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウムH2O中、pH6.0)を、50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、D2O、pD6.0で20倍に希釈し、様々な時間(10秒、1分、10分、60分、及び240分)にわたって室温でインキュベートした。200mMリン酸ナトリウム、0.5M TCEP及び4MグアニジンHCl、H2O、pH2.4での1:1希釈により、pHを2.6に低下させることによって、交換反応をクエンチした。クエンチしたサンプルを、nanoACQUITYプラットフォームに基づくWaters UPLCシステムを使用してオンラインで消化し、脱塩し、分離した。交換及びクエンチ後の抗体およそ20pmoleを固定化ペプシンカラムに注入した。オンライン消化は、15℃の0.05%ギ酸を含む水中で2分間にわたり、0.1nL/分の流速で行った。結果として生じた消化性ペプチドを、0℃に維持したACQUITY UPLC BEH C18 1.7μmペプチドトラップ(Waters、Milford,MA)上で捕捉し、水、0.05%ギ酸で脱塩した。切換弁によって分流を行い、捕捉されたペプチドを、0℃に保ったWaters ACQUITY UPLC BEH Cl 8 1.7μm、1mm×100mmカラム上に、40μL/分でトラップから溶出させた(平均背圧はおよそ9000psiであった)。0.05%ギ酸を含むアセトニトリルの6分間の線形勾配(8-40%)を使用して、ペプチドを分離させた。エレクトロスプレーイオン化法及びロック質量補正(Glu-フィブリノーゲンペプチドを使用)を用いて、溶離液をWaters Synapt質量分析計に誘導した。質量スペクトルをm/z範囲260~1800にかけて取得した。Waters IdentityEソフトウェアの支援を受け、精密質量とMS/MSの組み合わせを使用して、ペプシン断片を同定した。ペプチド重水素レベルは、Weisらによって説明されているように、ExcelベースのプログラムであるHX-Expressを使用して決定した。
インタクトIgG4.P対N297Q IgG4.P、N297Q IgG4.P対N297Q IgG4.P-CH2/IgG1-CH3、及びT299A IgG4.P対YC406(T299K、T207P、L309K、D399S)のH/DX-MSデータを、上述のように収集した。インタクト(グリコシル化)IgG4とアグリコシル化N297Q IgG4の比較は、アグリコシル化形態がより高い交換量を示す配列の領域を示す。より高いH/D交換量は、ペプチドL235-F241、F241-D249、1253-V262、V263-F275、及びH310-E318において観察される。IgG4ペプチドのM358-L365、T411-V422及びA431-S442における交換量が、N297Q IgG4.P-CH2/IgG1-CH3構築物の同じペプチドと比較して高いことは、N297Q IgG4-CH2と組み合わせたIgG1-CH3から生じる安定性の獲得を示す。この場合では、IgG4由来のCH3ドメインが、CH3の3つの異なる領域において、IgG1-CH3と比較して高い交換量を示す。最後に、ペプチドL235-F241、F241-M252、V263-F275、V266-F275、及びV282-F296は、脱グリコシル化のために交換が特に起こりやすい配列領域における、アグリコシル化IgG4(T299A)と比較した変異体構築物YC406による安定性の獲得を示す。興味深いことに、CH3ドメインにおけるD399S変異は、熱安定性のわずかな増大を生じさせると同時に、野生型配列よりも多くの交換をもたらす。全体として、H/D交換MSは、脱グリコシル化の結果としての立体構造の変化が、安定性変異によって部分的または完全に回復したことを示した。
B.安定性増強Fc構築物のX線結晶解析
EAG2476構築物(agly IgG4-Fc T299K、T307P、L309K、D399S)を結晶化させ、2.8Aの解像度でデータを収集した(全体的なデータ完全性92%;高解像度シェル66%)。この構造を電子密度に組み入れ、R/Rfreeがそれぞれ27.7/33.9%になるまで精密化した。この構造は、2つの鎖の間の偏差が非常にわずかで重ねることができる非対称ユニット(ASU)内の2つのFc鎖を明らかにした。ループV266-E272、特にP291-V302は、野生型IgG4結晶構造(pdb IADQ)で観察されるものとはかなり異なる。これは、変異T299Kの直接的な結果であり得る。
EAG2478構築物(agly IgG1 Fc T299K)の結晶構造を2.5Åの解像度まで解析した(全体的なデータ完全性92%;高解像度シェル66%)。この構造を構築し、R/Rfreeがそれぞれ27.4/35.8%になるまで精密化した。EAG2476の構造とは異なり、ASU内の2つのFc鎖は、EAG2478構造では同一ではなかった。鎖Aは、酵素的に脱グリコシル化されたIgG1 Fc(pdb 3DNK)の構造により類似していることが観察される。EAG2478構造におけるCH2ドメインは、酵素的に脱グリコシル化されたIgG1 Fc(pdb 3DNK)及びマウスアグリコシル化IgG1 Fc(pdb 3HKF)で観察されるものよりも互いに近い。CH2ドメインは、EAG2476構造では、EAG2478構造で観察されるものよりも開いている。これらの構造は、両方の場合において、T299K変異が、ドッキングしたFcガンマIII受容体のY129側鎖に向けられていることを明らかにし、このことは、この変異に関して観察される受容体への親和性の減少を説明する。
実施例14。タンパク質の精製。
配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で安定に発現させ、精製した。結果として生じた分子を、HP1/2 H1L3アグリコシルIgG4P/IgG1キメラS228P N297Q(Kabat付番)またはHP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3と呼ぶ。
図22Aは、シグナルペプチド配列(図22Aに太字のイタリック体で示されているシグナルペプチド配列及びコードDNA)を含む、HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1の軽鎖、カッパ軽鎖(H1L3)のヌクレオチド配列(配列番号91)及びアミノ酸配列(配列番号92)を示す。
図22Bは、シグナルペプチド配列(図22Bに太字のイタリック体で示されているシグナルペプチド配列及びコードDNA)を含む、HP1/2 hG4P agly(N297Q、EU付番)G1の軽鎖、重鎖(H1L3)のヌクレオチド配列(配列番号93)及びアミノ酸配列(配列番号94)を示す。
図23Aは、軽鎖(上)と重鎖(下)の両方のシグナル配列(下線が引かれた文字)を含む、HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1、カッパ軽鎖(H1L3)のアミノ酸配列を含む。
図23Bは、配列番号81の成熟軽鎖及び配列番号80の成熟重鎖を有するHP1/2 hG4P agly(N297Q)G1、カッパ軽鎖(H1L3)のアミノ酸配列を含む。図23Bでは、軽鎖(アミノ酸残基24~34、50~56、及び89~97)及び重鎖(残基28~35、50~66、及び99~110)の相補性決定領域(CDR)配列に下線が引かれている。
精製プロセスの全体を通して、パイロジェンフリーの容器及び溶液を使用した。精製プロセスは室温で行った。
HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で安定に発現させ、精製した。
精製について簡単に説明すると、およそ10グラムのHP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3(Octetによる推定力価:1310mg/L)を含む7.5LのCHO培地を、25mMリン酸ナトリウム、pH7.0、0.1M NaCl中、40~120mL/時間で、400mLのrProtein A Sepharose Fast Flowカラム(GE 17-1279-04、i.d.50mm)にロードした。このカラムを、4×400mLの同じバッファーで洗浄し、次いで3×400mLの25mM NaHPO、pH5.5、0.1M NaClで洗浄した。HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3を、1000mLの25mMリン酸ナトリウム、pH2.8、0.1M NaClで溶出させ、pH8.6の25mMリン酸ナトリウムでpHを中和した。サンプルを0.2μのThermo Scientific Nalgeneフィルターで濾過し、4℃で保管した。280nmでの値を報告するNonoDrop 2000 Spectrophotometerを使用した吸光度スペクトルから、溶出したサンプルのタンパク質含量(1mg/mLのHP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3の消衰係数計算値=1.49)を推定した。
rProtein A溶出プールを、10mMリン酸ナトリウム、pH7.0、0.1M NaCl中で、150mL TMAEカラム(EMD 1.16881.0500、i.d.50mm)にロードした。フロースルーを収集し、SDS-PAGEによって調べた。サンプルを濃縮し、Millipore Pellicon-2限外濾過ユニットを使用して25mMリン酸ナトリウム、pH7.0、25mM NaClにバッファー交換し、25mMリン酸ナトリウム、pH7.0、25mM NaCl中で同じTMAEカラムに再びロードした。フロースルーを収集し、15.24mLの4M NaClを514mLのサンプルに添加することによって140mM NaClに調整し、次いで、0.2μのThermo Scientific Nalgeneフィルターで濾過し、アリコートを取り、-80℃で保管した。理論的収率の96%を表す、9,384mgのHP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3が生成された。
実施例15。タンパク質の解析。
実施例14に記載したタンパク質を、後述するいくつかの異なる方法によって解析した。
A.UVスペクトル
図24は、配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のUVスペクトルを提示する。HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3(RS)のUVスペクトルは、25mMリン酸ナトリウム、140mM NaCl(pH7.0)中の未希釈サンプルから直接、NonoDrop 2000 Spectrophotometerで測定した。ε280 0.1%=1.49/cmの消衰係数計算値を使用して、17.74mg/mLのタンパク質濃度を決定した。
B.ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
図25は、配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のSDS-PAGE結果を示す。HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3のアリコートを、還元サンプルについてはDTTを含むサンプルバッファーか、または非還元サンプルについてはDTTを含まないサンプルバッファー中で調製した。Invitrogenの4-20%ポリアクリルアミド勾配ゲルでSDS-PAGEを行い、ゲルをSimply Blue染料(Invitrogen)で染色し、蒸留水で脱染した。図25は、HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3(RS)の分析結果を示す。還元条件下のゲルは、HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3の重鎖及び軽鎖の予想分子量を表す、それぞれ50及び25kDaの2つのバンドを示す。非還元条件下では、主要なバンドの予想分子量は、抗体のHCLC四量体構造の150kDaである。このサンプルは、比較的高分子量の形態を0.5%未満で含む。
C.等電点電気泳動(IEF)
図26は、配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のIEF結果を示す。サンプルをIEFサンプルバッファー3-10中で調製し、Novex pH 3-10 IEF Gel(Thermo Fisher EC66552BOX)上で、130V定圧で92分間泳動した。ゲルを12%TCAで10分間固定し、Simply Blue染料(Invitrogen)で染色し、蒸留水で脱染した。HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 RSは、単一の主要なバンド、及びいくつかの小さい酢酸をより多く含むバリアントとして泳動する。HP1/2 hG4P agly(N297Q) G1 H1L3のpI計算値は6.22である。図26は、CHO DG44i細胞で発現させた同じ構築物、野生型IgG4P Fc及びIgG4PE Fcに融合した2つの他のHP1/2 H1L3構築物も示す。これらの分子のゲル移動性は、分子の異なるpI値と整合する。レーンの表記には、全サンプルのpI計算値が注記されている。
D.分析的サイズ排除クロマトグラフィ
図27は、配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質の分析的サイズ排除クロマトグラフィの結果を示す。Agilent 1200 Series HPLCシステムを使用し、20μgの試験標品を、20×PBS(Thermo Scientific 28348)から希釈したPBS(10mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)中、0.2ml/分の流速で、Superdex 200 Increase 5/150 GLカラム(GE 28-9909-45)に流した。溶離液の吸光度を280nmでモニタリングした。これを図27に示す。HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3は、7.8分で単一のピークとして溶出し、検出可能な凝集体または低分子量成分はなかった。
E.内毒素
Charles River Endosafe PTS20カートリッジ(0.05~5EU/ml)をメーカーの説明に従って使用して、内毒素を定量した。試験標品中に見られた内毒素レベルは<0.06EU/mgであり、これはNHPでの注射に好適であった。
F.示差走査熱量測定(DSC)
図28~30は、配列番号81の成熟軽鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND001の成熟軽鎖)及び配列番号80の成熟重鎖(HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 ND004/ND006の成熟重鎖)を有するタンパク質のDSC結果を示す。HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3試験標品をPBS中で約1mg/mLに希釈し、次いで4℃のPBSに対して約20時間透析した。各サンプルおよそ400μg(400μL)を96ウェルプレートに加えた。スキャンは、高いピーク解像度のためにミディアムフィードバックモードを使用し、20~120℃まで2℃/分で行った。Tm値(タンパク質分子の50%が動的な非可逆の二状態平衡でアンフォールディングする相転移温度)を、各ドメインについて、MicroCal DSC計器を使用して測定した。2回のバッファースキャンを行って減算のためのベースラインを定義し、Originソフトウェアを使用してデータを分析した。比較のために、HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3 Fc断片(バッチBJG2018-1-3-0088-E2)のサンプルも分析した。Fabドメインの割り当ての検証として、試験標品のFab2断片を生成し、分析した。図28、図29、及び図30にはそれぞれ、HP1/2 hG4P agly(N297Q)G1 H1L3インタクト抗体、Fc断片、及びFab2断片の融解曲線を示し、表11には、ドメイン融解温度(Tm)をまとめている。Tm値に基づくと、インタクト抗体の場合、抗体のG4P CH2ドメインは相転移温度が59.6℃で安定性が最も低く、これにFabドメインの69.1℃、及びG1 CH3ドメインの85.9℃が続いた。単離されたFc断片では、抗体のG4P CH2ドメインのTm値は57.4℃であり、G1 CH3ドメインでは84.5℃であった。Fab2断片では、FabドメインのTmは69.4℃であった。
Figure 0007457661000061
実施例16。タンパク質のさらなる実験的分析。
2つの異なるHP1/2タンパク質の製品特質を調査した。第1の構築物であるヒト化HP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(N297Q EU付番)/IgG1キメラまたはHP1/2 G4P agly/G1は、配列番号81の成熟軽鎖及び配列番号80の成熟重鎖を含む。第2の構築物であるヒト化 HP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(T299A EU付番)またはHP1/2 G4P aglyは、配列番号81の成熟軽鎖及び配列番号89の成熟重鎖を含む。これら2つの操作型のHP1/2を設計し、発現させ、精製し、解析した。これらの構築物はCHO細胞で一過性に発現させた。
Figure 0007457661000062
上記の表に記載の(推定力価はOctetによる)構築物72~122mg/Lを含むCHO培地900mLを、重力によって9mLのrProtein A Sepharose Fast Flowカラム(GE 17-1279-04)にロードした。カラムを6×5mLの25mMリン酸ナトリウム、pH7.0、0.1M NaClで洗浄し、次いで6×4mLの25mMリン酸ナトリウム、pH5.5、0.1M NaClで洗浄した。mAbを、7×5mLの25mMリン酸ナトリウム、pH2.8、0.1M NaClで溶出させた。pH8.6のリン酸ナトリウムを最終濃度20mMまで添加することにより、pHを中和した。様々な量の沈殿物が観察された。サンプルを3000rpmで5分間遠心分離し、上清を濾過し、アリコートを取り、-70℃で保管した。中和の前、及び中和-遠心分離-濾過ステップの後に、280nmでの値を報告するNonoDrop 2000 Spectrophotometerを使用した吸光度スペクトルから、溶出したサンプルのタンパク質含量を推定した。
ProAステップ後に4つの抗体調製物を中和したとき、沈殿に起因して損失したタンパク質の量には大きな差があった(下記の表13参照)。HP1/2 G4P agly G1型は、産物の3%のみが沈殿によって損失し、構築物のうち挙動がより良好なものであった。
Figure 0007457661000063
上記の表13に示したように、産物の最も著しい損失は、ナタリズマブG4P aglyサンプルを中和したときに見られた39%であった。対照的に、対応するHP1/2構築物(HP 1/2 G4P agly)では、この量の1/3(13%)のみが沈殿によって損失した。HP1/2 G4P agly G1型は、産物の3%のみが沈殿によって損失し、構築物のうち挙動が最も良好なものであった。
遠心分離及び濾過後の4つの構築物のサンプルの可溶性画分を、SDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって解析した。SDS-PAGE(図31)は、4つ全てのサンプルで、IgG抗体に特徴的な2重鎖、2軽鎖の四量体複合体の存在と整合する、分子質量約150kDaの単一の顕著なバンドを明らかにした。HP1/2とナタリズマブサンプルとの間の明らかな差は、ナタリズマブサンプルには、可溶性凝集体の存在を示す、顕著なバンドからゲルの上部まで泳動した比較的高分子量の付加体の広がったスメアが存在したことであった。
図32Aは、HP1/2サンプルのSEC分析の結果を示す。図32Bは、4つ全ての構築物のSEC分析の結果を示す。サンプルは、PBS(10mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)中、0.2ml/分の流速で、Superdex Increase 5/150 GLカラム(GE 28-9909-45)に流した。4つのサンプルのSEC分析は、サンプルの全てで、見かけの分子質量が約150kDaである単一の主要ピークを明らかにした(図32A及び32B)。
したがって、SDS-PAGEデータと整合して、SEC分析は、メインピーク前に溶出したナタリズマブサンプル中の比較的高分子量の可溶性凝集体を明らかにし、これは、HP1/2サンプルでは検出されなかったか、または大幅に低減していた。まとめると、これらの分析は、ナタリズマブサンプルが、HP1/2サンプルで見られたものと比べて少ない収量及び低い純度につながる可溶性及び不溶性の凝集体を含んだことを明らかにした。
また、2つのHP1/2サンプルの安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によって解析した。図33a及び33bは、ヒト化HP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(N297Q)/IgG1キメラ(HP1/2 G4P agly G1、左)及びヒト化HP1/2 G1/L3 huIgG4P agly(T299A)(HP1/2 G4P agly、右)のDSC結果を示す。2つのHP1/2サンプルの安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によって解析した。MicroCal DSC計器を使用し、各ドメインのTm値を決定した。スキャンは、20~120℃まで2℃/分で行った。Tm値(タンパク質分子の50%が動的な非可逆の二状態平衡でアンフォールディングする相転移温度)を、各ドメインについて測定した。予想通り、熱転移の多くは、2つの構築物が同じFab領域(69℃)、及びアグリコシルCH2ドメイン(約60℃)を含むために同じであった。
HP1/2 G4P agly G1型のCH3ドメインは、その約85℃のTmから明らかであるように非常に安定であるが、HP1/2 G4P agly型のCH3ドメインのTmは、約69℃でしかなかった。
言い換えれば、HP1/2 G4P agly G1(すなわち、配列番号80のアミノ酸配列を有する重鎖をもつもの)は、HP1/2 G4P agly抗体よりも優れた安定性を有した。
実施例17:HP1/2の臨床薬物動態及びヒト初回用量予測
臨床的インプットの逆翻訳による統合を使用して、臨床薬物動態及び薬力学に関連する予測の信頼性を高めることができる。本実施例では、この技術を使用して、ナタリズマブ(NTZ)と同じアルファ4エピトープサブクラスのものである組換えヒト化抗アルファ4インテグリン抗体、HP1/2 H1/L3 huIgG4P agly(N297Q、EU付番)/IgG1キメラ(本実施例では「HP1/2」または「BIIB107」という)の臨床薬物動態及び薬力学の情報を得た。全人的データの統合を使用して、HP1/2ヒトの薬物動態(PK)及び有効用量の予測における予測可能性及び信頼性を増大させた。
単回IV用量のHP1/2(3及び30mg/kg)及びNTZ(3mg/kg)をカニクイザル(n=18)に投与した。18匹のカニクイザルから、合計180の血清濃度(60 NTZ、120 HP1/2)及び252のPD(RO)測定値(84 NTZ、168 HP1/2)が、PKPD分析のために入手できた。3~30mg/kgのHP1/2及び3mg/kgのナタリズマブ(Tysabri)の単回IVボーラス投与後のカニクイザルで観察されたPK経時変化平均値を図34に示す。抗VLA投与後、遊離受容体がベースラインの10%未満に低減し、カニクイザルにおけるTysabriとBIIB107の両方による90%超の受容体占有が示された(図35参照)。遊離VLA受容体は、約500時間(21日)で徐々に投与前のレベルに戻った。HP1/2は、ナタリズマブ(100時間)と比較すると、同じ用量(3mg/kg)でより長い期間(最長300時間)にわたってVLA受容体(≧90%)を飽和させるようであり、ナタリズマブと比べて高いHP1/2の効力を示している。なお、より高いHP 1/2用量(30mg/kg)はおよそ2倍長い受容体の結合をもたらし、そのレベルは800時間を過ぎてからベースラインに戻った。
薬物に結合したVLAの形成に関するEC50(表14参照)は、HP1/2(4.73ug/mL)では、Tysabri(6.40ug/mL)と比べて比較的低く、より高いHP1/2の効力を示した。
Figure 0007457661000064
これらのデータは、HP1/2が、ヒト受容体への結合と比べておよそ5倍(インタクトHP1/2)及びおよそ6倍(Fab断片)弱い親和性でカニクイザルアルファ4インテグリンに結合することを示す。ナタリズマブインタクトは、ヒトアルファ4インテグリンと比べておよそ2倍弱くカニクイザルアルファ4インテグリンに結合するが、Fab結合は2つの種間で同じである。これらのデータはまた、HP1/2がナタリズマブよりも高い親和性でヒトアルファ4インテグリンに結合することを示す。言い換えれば、インタクトと比較しておよそ5倍の差、Fab断片と比較しておよそ6倍の差、及びHP1/2とナタリズマブFab断片との間で19倍超の差である。この最後の比較が重要であるのは、ナタリズマブは、インビボでFabアーム交換(スクランブリング)を生じることが知られている野生型IgG4であり、機能的に一価になるためである。対照的に、HP1/2は、ヒンジを安定化させスクランブリングを防止する点変異(S228P EU付番)を含むため、インビボで二価のままである。したがって、PD応答をモデリングする目的のために、以下に示す方程式による、ナタリズマブFab断片のKd及びHP1/2インタクトのKdを使用することが適切である。
図36に示すように、ヒト及びカニクイザルのリンパ球におけるアルファ4インテグリンの発現の差は2倍以内であることが見出され、ヒトHP1/2の予測のために調整する必要はなかった。
線形とMichaelis-Menten型の両方の消失及び直接Emaxモデルを用いる2コンパートメントモデルを使用して、サルにおけるNTZ及びHP1/2血清濃度とアルファ4インテグリン飽和度(受容体占有(RO))との間のPKPD関係を解析した。HP1/2ヒトPKを、サルPKパラメータ(k10、k12、k21、及びV1)のアロメトリックスケーリングによって予測した。Singh,A.P et al.The AAPS Journal,17(2),389-399を参照されたい。手法の妥当性を保証するために、ヒトとサルのパラメータのそれぞれの体重と比べた比の対数を取ることにより、サル及びヒトで得られたNTZ PKパラメータを使用した感度分析を行った。Km、Vmax及びPDパラメータ(Emax、EC50、E及びV)を含むサル固有のパラメータを、ヒトに直接適用した。ヒトにおけるHP1/2のEC50は、サルにおける比較PKPD試験において収集したデータに基づき、ヒトにおけるインビトロ結合親和性(K)及びNTZ EC50を使用して予測した。Muralidharan,K.K.et al.Journal of Clinical Pharmacology,57(8),1017-1030を参照されたい。データは、効力(K)の差を種間で調整した後、サル(m)及びヒト(h)において得られたEC50パラメータ値を組み合わせる経験的スケーリング手法を使用して統合した:
Figure 0007457661000065
PKPDモデルによる母集団パラメータ推定値に設定した平均ベクトル及び推定値の共分散行列を用い、多変量正規分布から生成された分布として、最終的な「ヒト化」モデルのPKPDパラメータ値を伝播した。Cmaxで10%以下の平均ROをもたらす用量を選択して、HP1/2の推定最小薬理作用量(MABEL)を定義した。
HP1/2及びナタリズマブの単回IV投与後の時間プロファイルに対する受容体占有をシミュレートした(図37A~37D)。4週間毎に0.5mg/kgの単回用量の投与が効果的であると期待され、治療量以下の占有レベル(<70%)は、投与のおよそ1か月後にベースラインに戻り始めた。HP1/2とNTZの両方が、サルにおいて標的を介する薬物消長を示すPKプロファイルを呈し、用量依存性なROを示した。薬物に結合したアルファ4の形成に関するEC50値は、HP1/2(0.62ug/mL)では、NTZ(2.51ug/mL)と比較して低いと予測される。Muralidharan,K.K.et al.Journal of Clinical Pharmacology,57(8),1017-1030を参照されたい。NTZヒトPKプロファイルの予測値と観測値は全体的に良好に一致し、HP1/2の臨床PKを予測するアロメトリックスケーリング手法の妥当性を裏付けた。ヒトにおけるHP1/2のMABELは、0.0004mg/kgであると予測される(これと比べて、NTZでは約0.003mg/kgである)。図38を参照されたい。
この実施例17を考慮して、2つのヒト化抗アルファ4インテグリン抗体から入手可能なPKPDデータの統合により、逆翻訳モデリング手法を使用して、推定最小薬理作用量を同定するために受容体占有及びヒト薬物動態を推定することができた。
上述の本発明の実施形態は、例示を意図するものに過ぎず、多数の変化形態及び改変形態が当業者には明らかとなろう。そのような変化形態及び改変形態の全ては、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内にあることが意図される。

Claims (16)

  1. 組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片であって、
    (a)配列番号80の配列を含む重鎖と、
    (b)配列番号81の配列を含む軽鎖と
    を含む、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片。
  2. 請求項1に記載の組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片において、さらに、野生型IgG4定常領域を含む抗体または結合性断片と比べて、スクランブリングに対する感受性が低減していることを特徴とする組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片。
  3. 組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片であって、
    (a)配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、
    (b)配列番号4の配列を含む可変重鎖と、
    (c)ヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖と、
    (d)IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域であり、前記CH2領域のEU付番297位(Kabat付番314位)におけるグルタミン(Q)への置換、前記ヒンジ領域のEU付番アミノ酸228位(Kabat付番241位)におけるプロリン(P)への置換、及び前記CH3領域のEU付番447位(Kabat付番478位)におけるリジン(K)の欠失含む、前記キメラFc領域と
    を含む、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片。
  4. 請求項に記載の組換え抗アルファ4抗体またはアルファ4結合性断片において、(a)配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、(b)配列番号4の配列を含む可変重鎖と、(c)ヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖と、(d)前記IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み、かつ、EU付番297位(Kabat付番314位)の非アスパラギン残基への置換を含むかまたはそれからなるFc領域とを含む抗体と比較して、増大した熱安定性を有することを特徴とする抗体または断片。
  5. タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、
    前記タンパク質が、
    (a)配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、
    (b)配列番号4の配列を含む可変重鎖と、
    (c)ヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖と、
    (d)IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域であり、前記CH2領域のEU付番297位(Kabat付番314位)におけるグルタミン(Q)への置換、前記ヒンジ領域のEU付番アミノ酸228位(Kabat付番241位)におけるプロリン(P)への置換、及び前記CH3領域のEU付番447位(Kabat付番478位)におけるリジン(K)の欠失を含む、前記キメラFc領域
    を含む、ポリヌクレオチド。
  6. 請求項に記載のポリヌクレオチドにおいて、
    前記ポリヌクレオチドが、
    (a)配列番号80の配列を含む重鎖と、
    (b)配列番号81の配列を含む軽鎖と
    を含むタンパク質をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
  7. 多発性硬化症の治療のための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、(i)組換え抗アルファ4抗体と、(ii)薬学的に許容される担体とを含み,
    前記組換え抗アルファ4抗体が、
    (a)配列番号11の配列を含む可変軽鎖と、
    (b)配列番号4の配列を含む可変重鎖と、
    (c)ヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖と、
    (d)IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域であり、前記CH2領域のEU付番297位(Kabat付番314位)におけるグルタミン(Q)への置換、前記ヒンジ領域のEU付番アミノ酸228位(Kabat付番241位)におけるプロリン(P)への置換、及び前記CH3領域のEU付番447位(Kabat付番478位)におけるリジン(K)の欠失を含む、前記キメラFc領域とを含む、医薬組成物。
  8. 請求項に記載の医薬組成物において、
    前記組換え抗アルファ4抗体が、
    (a)配列番号80の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる重鎖と、
    (b)配列番号81の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる軽鎖とを含むことを特徴とする医薬組成物。
  9. 宿主細胞であって、
    (a)抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドであり、前記抗体重鎖が、
    配列番号4の配列を含む可変重鎖、及び
    IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域であり、前記CH2領域のEU付番297位(Kabat付番314位)におけるグルタミン(Q)への置換、前記ヒンジ領域のEU付番アミノ酸228位(Kabat付番241位)におけるプロリン(P)への置換、及び前記CH3領域のEU付番447位(Kabat付番478位)におけるリジン(K)の欠失を含む、前記キメラFc領域
    含む、前記ポリヌクレオチドと、
    (b)抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドであり、前記抗体軽鎖が、配列番号11の配列を含む可変軽鎖、及びヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖を含む、前記ポリヌクレオチドとがトランスフェクトされている、宿主細胞。
  10. 請求項に記載の宿主細胞において、
    (a)配列番号80の配列を含む抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、
    (b)配列番号81の配列を含む軽鎖をコードするポリヌクレオチドとがトランスフェクトされていることを特徴とする宿主細胞。
  11. 組換え抗α4抗体またはそのα4結合性断片を作製する方法であって、
    宿主細胞を用意するステップであって、
    前記宿主細胞に、
    (a)前記細胞における発現のために配置された、配列番号80の配列を含む抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、
    (b)前記細胞における発現のために配置された、配列番号81の配列を含む軽鎖をコードするポリヌクレオチドとがトランスフェクトされているステップ、及び、
    前記トランスフェクトされた宿主細胞を培養するステップにより、前記組換え抗α4抗体分子またはそのα4結合性断片を生成する、方法。
  12. 請求項11に記載の方法において、前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞であることを特徴とする方法。
  13. 請求項に記載の組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片において、さらに、野生型IgG4定常領域を含む抗体または結合性断片と比べて、スクランブリングに対する感受性が低減していることを特徴とする組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片。
  14. 組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片のスクランブリングに対する感受性を、野生型IgG4定常領域を含む抗体または結合性断片と比べて低減させる方法であって、前記方法が、
    宿主細胞を用意するステップであって、
    前記宿主細胞に、
    (a)前記細胞における発現のために配置された、抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドであり、前記抗体軽鎖が、配列番号11の配列を含む可変軽鎖、及びヒトカッパ軽鎖(配列番号82)の定常軽鎖を含む、前記ポリヌクレオチドと、
    (b)前記細胞における発現のために配置された、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドであり、前記抗体重鎖が、
    配列番号4の配列を含む可変重鎖、及び
    IgG4アイソタイプのIgG抗体のヒンジ、CH1ドメイン、及びCH2ドメイン、ならびにIgG1アイソタイプのIgG抗体のCH3ドメインを含むキメラFc領域であり、前記CH2領域のEU付番297位(Kabat付番314位)におけるグルタミン(Q)への置換、前記ヒンジ領域のEU付番アミノ酸228位(Kabat付番241位)におけるプロリン(P)への置換、及び前記CH3領域のEU付番447位(Kabat付番478位)におけるリジン(K)の欠失を含む、前記キメラFc領域を含む定常重鎖
    を含む、前記ポリヌクレオチドとがトランスフェクトされているステッ
    備える、方法。
  15. 野生型IgG4定常領域を含む抗体または結合性断片と比べて、スクランブリングに対する感受性が低減している、組換え抗アルファ4抗体またはそのアルファ4結合性断片を生成する方法であって、前記方法が、
    宿主細胞を用意するステップであって、
    前記宿主細胞に、
    (a)前記細胞における発現のために配置された、配列番号80の配列を含む抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、
    (b)前記細胞における発現のために配置された、配列番号81の配列を含む軽鎖をコードするポリヌクレオチドとがトランスフェクトされているステップ、及び、
    前記トランスフェクトされた宿主細胞を培養することにより、前記組換え抗α4抗体分子またはそのα4結合性断片を生成するステップ
    を備える、方法。
  16. 請求項14または15に記載の方法において、前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞であることを特徴とする方法。
JP2020566932A 2018-06-04 2019-05-31 低減したエフェクター機能を有する抗vla-4抗体 Active JP7457661B2 (ja)

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201862680466P 2018-06-04 2018-06-04
US62/680,466 2018-06-04
US201862782876P 2018-12-20 2018-12-20
US62/782,876 2018-12-20
US201962833319P 2019-04-12 2019-04-12
US62/833,319 2019-04-12
PCT/US2019/034962 WO2019236417A1 (en) 2018-06-04 2019-05-31 Anti-vla-4 antibodies having reduced effector function

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2021526371A JP2021526371A (ja) 2021-10-07
JPWO2019236417A5 JPWO2019236417A5 (ja) 2022-06-02
JP7457661B2 true JP7457661B2 (ja) 2024-03-28

Family

ID=68769888

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020566932A Active JP7457661B2 (ja) 2018-06-04 2019-05-31 低減したエフェクター機能を有する抗vla-4抗体

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20210238289A1 (ja)
EP (1) EP3800999A4 (ja)
JP (1) JP7457661B2 (ja)
KR (1) KR20210027352A (ja)
CN (1) CN112867394A (ja)
IL (1) IL279159A (ja)
UY (1) UY38253A (ja)
WO (1) WO2019236417A1 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013530681A (ja) 2010-04-16 2013-08-01 バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド 抗vla−4抗体

Family Cites Families (87)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4399216A (en) 1980-02-25 1983-08-16 The Trustees Of Columbia University Processes for inserting DNA into eucaryotic cells and for producing proteinaceous materials
US5179017A (en) 1980-02-25 1993-01-12 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York Processes for inserting DNA into eucaryotic cells and for producing proteinaceous materials
US4634665A (en) 1980-02-25 1987-01-06 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York Processes for inserting DNA into eucaryotic cells and for producing proteinaceous materials
US4475196A (en) 1981-03-06 1984-10-02 Zor Clair G Instrument for locating faults in aircraft passenger reading light and attendant call control system
US4447233A (en) 1981-04-10 1984-05-08 Parker-Hannifin Corporation Medication infusion pump
US4439196A (en) 1982-03-18 1984-03-27 Merck & Co., Inc. Osmotic drug delivery system
US4447224A (en) 1982-09-20 1984-05-08 Infusaid Corporation Variable flow implantable infusion apparatus
US4487603A (en) 1982-11-26 1984-12-11 Cordis Corporation Implantable microinfusion pump system
US4486194A (en) 1983-06-08 1984-12-04 James Ferrara Therapeutic device for administering medicaments through the skin
US4596556A (en) 1985-03-25 1986-06-24 Bioject, Inc. Hypodermic injection apparatus
US4683202A (en) 1985-03-28 1987-07-28 Cetus Corporation Process for amplifying nucleic acid sequences
US4965188A (en) 1986-08-22 1990-10-23 Cetus Corporation Process for amplifying, detecting, and/or cloning nucleic acid sequences using a thermostable enzyme
US4683195A (en) 1986-01-30 1987-07-28 Cetus Corporation Process for amplifying, detecting, and/or-cloning nucleic acid sequences
US4800159A (en) 1986-02-07 1989-01-24 Cetus Corporation Process for amplifying, detecting, and/or cloning nucleic acid sequences
GB8607679D0 (en) 1986-03-27 1986-04-30 Winter G P Recombinant dna product
AU600575B2 (en) 1987-03-18 1990-08-16 Sb2, Inc. Altered antibodies
US4941880A (en) 1987-06-19 1990-07-17 Bioject, Inc. Pre-filled ampule and non-invasive hypodermic injection device assembly
US4790824A (en) 1987-06-19 1988-12-13 Bioject, Inc. Non-invasive hypodermic injection device
US5892019A (en) 1987-07-15 1999-04-06 The United States Of America, As Represented By The Department Of Health And Human Services Production of a single-gene-encoded immunoglobulin
US6780613B1 (en) 1988-10-28 2004-08-24 Genentech, Inc. Growth hormone variants
US6033665A (en) 1989-09-27 2000-03-07 Elan Pharmaceuticals, Inc. Compositions and methods for modulating leukocyte adhesion to brain endothelial cells
US5312335A (en) 1989-11-09 1994-05-17 Bioject Inc. Needleless hypodermic injection device
US5064413A (en) 1989-11-09 1991-11-12 Bioject, Inc. Needleless hypodermic injection device
MX9204374A (es) 1991-07-25 1993-03-01 Idec Pharma Corp Anticuerpo recombinante y metodo para su produccion.
US5474771A (en) 1991-11-15 1995-12-12 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York Murine monoclonal antibody (5c8) recognizes a human glycoprotein on the surface of T-lymphocytes, compositions containing same
US5383851A (en) 1992-07-24 1995-01-24 Bioject Inc. Needleless hypodermic injection device
DE669986T1 (de) 1992-11-13 1996-10-10 Idec Pharma Corp Völlig unfunktionelle konsensus-kozak-sequenzen zur säugetier-exprimierung.
JPH08507680A (ja) 1993-01-12 1996-08-20 バイオジェン インコーポレイテッド 組換え抗vla4抗体分子
US5827690A (en) 1993-12-20 1998-10-27 Genzyme Transgenics Corporatiion Transgenic production of antibodies in milk
US5840299A (en) 1994-01-25 1998-11-24 Athena Neurosciences, Inc. Humanized antibodies against leukocyte adhesion molecule VLA-4
GB9422383D0 (en) 1994-11-05 1995-01-04 Wellcome Found Antibodies
US6121022A (en) 1995-04-14 2000-09-19 Genentech, Inc. Altered polypeptides with increased half-life
US6096871A (en) 1995-04-14 2000-08-01 Genentech, Inc. Polypeptides altered to contain an epitope from the Fc region of an IgG molecule for increased half-life
US5869046A (en) 1995-04-14 1999-02-09 Genentech, Inc. Altered polypeptides with increased half-life
US5739277A (en) 1995-04-14 1998-04-14 Genentech Inc. Altered polypeptides with increased half-life
HU228630B1 (en) 1996-02-09 2013-04-29 Abbott Biotech Ltd Use of human anti bodies that bind human tnf-alpha and process for inhibiting of human tnf-alpha activity
EP0918872B1 (en) 1996-08-02 2008-02-20 Bristol-Myers Squibb Company A method for inhibiting immunoglobulin-induced toxicity resulting from the use of immunoglobulins in therapy and in vivo diagnosis
WO1998023289A1 (en) 1996-11-27 1998-06-04 The General Hospital Corporation MODULATION OF IgG BINDING TO FcRn
US6277375B1 (en) 1997-03-03 2001-08-21 Board Of Regents, The University Of Texas System Immunoglobulin-like domains with increased half-lives
PT981637E (pt) 1997-03-14 2005-09-30 Biogen Idec Inc Metodo para integrar genes em sitios especificos em celulas de mamifero atraves de recombinacao homologa e vectores para a realizacao do mesmo
US6194551B1 (en) 1998-04-02 2001-02-27 Genentech, Inc. Polypeptide variants
US6242195B1 (en) 1998-04-02 2001-06-05 Genentech, Inc. Methods for determining binding of an analyte to a receptor
US6528624B1 (en) 1998-04-02 2003-03-04 Genentech, Inc. Polypeptide variants
IL138608A0 (en) 1998-04-02 2001-10-31 Genentech Inc Antibody variants and fragments thereof
GB9809951D0 (en) 1998-05-08 1998-07-08 Univ Cambridge Tech Binding molecules
CA2341029A1 (en) 1998-08-17 2000-02-24 Abgenix, Inc. Generation of modified molecules with increased serum half-lives
EP1006183A1 (en) 1998-12-03 2000-06-07 Max-Planck-Gesellschaft zur Förderung der Wissenschaften e.V. Recombinant soluble Fc receptors
US6737056B1 (en) 1999-01-15 2004-05-18 Genentech, Inc. Polypeptide variants with altered effector function
WO2000042072A2 (en) 1999-01-15 2000-07-20 Genentech, Inc. Polypeptide variants with altered effector function
WO2001055112A1 (en) 2000-01-27 2001-08-02 American Cyanamid Company Method for preparing alpha-sulfonyl hydroxamic acid derivatives
US8288322B2 (en) 2000-04-17 2012-10-16 Dyax Corp. Methods of constructing libraries comprising displayed and/or expressed members of a diverse family of peptides, polypeptides or proteins and the novel libraries
GB0029407D0 (en) 2000-12-01 2001-01-17 Affitech As Product
EP2341060B1 (en) 2000-12-12 2019-02-20 MedImmune, LLC Molecules with extended half-lives, compositions and uses thereof
US20030157641A1 (en) 2001-11-16 2003-08-21 Idec Pharmaceuticals Corporation Polycistronic expression of antibodies
US20040002587A1 (en) 2002-02-20 2004-01-01 Watkins Jeffry D. Fc region variants
US7317091B2 (en) 2002-03-01 2008-01-08 Xencor, Inc. Optimized Fc variants
AU2003209446B2 (en) 2002-03-01 2008-09-25 Immunomedics, Inc. Bispecific antibody point mutations for enhancing rate of clearance
US20040132101A1 (en) 2002-09-27 2004-07-08 Xencor Optimized Fc variants and methods for their generation
EP2371389A3 (en) 2002-08-14 2012-04-18 MacroGenics, Inc. FcgammaRIIB-specific antibodies and methods of use thereof
BRPI0314814C1 (pt) 2002-09-27 2021-07-27 Xencor Inc anticorpo compreendendo uma variante de fc
CA2502904C (en) 2002-10-15 2013-05-28 Protein Design Labs, Inc. Alteration of fcrn binding affinities or serum half-lives of antibodies by mutagenesis
GB2395337B (en) 2002-11-14 2005-12-28 Gary Michael Wilson Warning Unit
EP2368578A1 (en) 2003-01-09 2011-09-28 Macrogenics, Inc. Identification and engineering of antibodies with variant Fc regions and methods of using same
US8388955B2 (en) 2003-03-03 2013-03-05 Xencor, Inc. Fc variants
US20090010920A1 (en) 2003-03-03 2009-01-08 Xencor, Inc. Fc Variants Having Decreased Affinity for FcyRIIb
CA2536408A1 (en) 2003-08-22 2005-03-03 Biogen Idec Ma Inc. Improved antibodies having altered effector function and methods for making the same
GB0324368D0 (en) 2003-10-17 2003-11-19 Univ Cambridge Tech Polypeptides including modified constant regions
WO2005063815A2 (en) 2003-11-12 2005-07-14 Biogen Idec Ma Inc. Fcϝ receptor-binding polypeptide variants and methods related thereto
WO2005047327A2 (en) 2003-11-12 2005-05-26 Biogen Idec Ma Inc. NEONATAL Fc RECEPTOR (FcRn)-BINDING POLYPEPTIDE VARIANTS, DIMERIC Fc BINDING PROTEINS AND METHODS RELATED THERETO
WO2005077981A2 (en) 2003-12-22 2005-08-25 Xencor, Inc. Fc POLYPEPTIDES WITH NOVEL Fc LIGAND BINDING SITES
BRPI0506771A (pt) 2004-01-12 2007-05-22 Applied Molecular Evolution anticorpo, e, composição farmacêutica
AU2005227326B2 (en) 2004-03-24 2009-12-03 Xencor, Inc. Immunoglobulin variants outside the Fc region
WO2005123780A2 (en) 2004-04-09 2005-12-29 Protein Design Labs, Inc. Alteration of fcrn binding affinities or serum half-lives of antibodies by mutagenesis
WO2006085967A2 (en) 2004-07-09 2006-08-17 Xencor, Inc. OPTIMIZED ANTI-CD20 MONOCONAL ANTIBODIES HAVING Fc VARIANTS
BRPI0510674A (pt) 2004-07-15 2007-12-26 Xencor Inc variantes fc otimizadas
WO2006047350A2 (en) 2004-10-21 2006-05-04 Xencor, Inc. IgG IMMUNOGLOBULIN VARIANTS WITH OPTIMIZED EFFECTOR FUNCTION
CN101228189A (zh) 2005-05-09 2008-07-23 格黎卡特生物技术股份公司 具有修饰的fc区域和改变的与fc受体的结合的抗原结合分子
GEP20135917B (en) 2006-03-17 2013-09-10 Biogen Idec Inc Stabilized polypeptide compositions
WO2008001243A2 (en) 2006-06-06 2008-01-03 Koninklijke Philips Electronics N.V. Device and method for generating a random number and random element for use in the same
US20110184747A1 (en) 2006-08-09 2011-07-28 Carmen Bozic Method for distribution of a drug
US20080260738A1 (en) 2007-04-18 2008-10-23 Moore Margaret D Single chain fc, methods of making and methods of treatment
NZ581395A (en) 2007-05-14 2012-08-31 Biogen Idec Inc Single-chain fc (scfc) regions, binding polypeptides comprising same, and methods related thereto
PL2164769T3 (pl) 2007-06-07 2012-07-31 Intercontinental Great Brands Llc Opakowanie łatwo otwierane (flip open), z komorami w układzie schodkowym
MX342551B (es) * 2007-09-26 2016-10-04 Chugai Pharmaceutical Co Ltd Region constante de anticuerpo modificada.
EP2389192A4 (en) 2009-01-23 2013-01-16 Biogen Idec Inc STABILIZED FC POLYPEPTIDES WITH REDUCED EFFECTOR FUNCTION AND METHOD OF USE
EP3686218A1 (en) * 2012-12-10 2020-07-29 Biogen MA Inc. Anti-blood dendritic cell antigen 2 antibodies and uses thereof
EP2970435B1 (en) * 2013-03-15 2020-08-12 Eli Lilly and Company Methods for producing fabs and bi-specific antibodies

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013530681A (ja) 2010-04-16 2013-08-01 バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド 抗vla−4抗体

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
SHIRLEY J. PETERS; ET AL,ENGINEERING AN IMPROVED IGG4 MOLECULE WITH REDUCED DISULFIDE BOND HETEROGENEITY AND INCREASED FAB DOMAIN THERMAL STABILITY,JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2012年07月13日,Vol. 287,No. 29,p. 24525-24533,https://doi.org/10.1074/jbc.M112.369744
STEFANO SOTGIU; ET AL,TREATMENT OF REFRACTORY EPILEPSY WITH NATALIZUMAB IN A PATIENT WITH MULTIPLE SCLEROSIS. CASE REPORT,BMC NEUROLOGY,2010年,Vol. 10,p. 84(1-8),http://www.biomedcentral.com/1471-2377/10/84

Also Published As

Publication number Publication date
EP3800999A4 (en) 2022-06-01
US20210238289A1 (en) 2021-08-05
UY38253A (es) 2019-12-31
JP2021526371A (ja) 2021-10-07
CN112867394A (zh) 2021-05-28
IL279159A (en) 2021-01-31
WO2019236417A1 (en) 2019-12-12
EP3800999A1 (en) 2021-04-14
KR20210027352A (ko) 2021-03-10
TW202016138A (zh) 2020-05-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7410143B2 (ja) 二重特異性抗体及びその用途
JP5398703B2 (ja) 一本鎖FC(ScFc)領域、それを含む結合ポリペプチド、およびそれに関連する方法
US20120100140A1 (en) Stabilized fc polypeptides with reduced effector function and methods of use
US9738707B2 (en) Heterodimeric Fc regions, binding molecules comprising same, and methods relating thereto
JP6554473B2 (ja) FcRnアンタゴニスト及び使用方法
US20190202925A1 (en) Composition and methods for anti-tnfr2 antibodies
US20090258420A1 (en) Altered polypeptides, immunoconjugates thereof, and methods related thereto
EP2385069A2 (en) Neonatal Fc rReceptor (FcRn)- binding polypeptide variants, dimeric Fc binding proteins and methods related thereto
KR20130066584A (ko) 항-vla-4 항체
TW202024132A (zh) Cd200r促效劑抗體及其用途
JP7457661B2 (ja) 低減したエフェクター機能を有する抗vla-4抗体
WO2023028525A2 (en) Pilra antibodies and methods of use thereof
WO2021207681A1 (en) Targeted reduction of activated immune cells
AU2012203476A1 (en) Neonatal Fc Receptor (FcRn)-Binding Polypeptide Variants, Dimeric Fc Binding Proteins and Methods Related Thereto
CN117794949A (zh) 抗体优化
IL297292A (en) Anti-ox40 antibody and uses thereof

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220525

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220525

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230516

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20230816

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20231016

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231116

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240116

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20240215

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240315

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7457661

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150