以下図面を参照して、信号評価機能を有するエンコーダ及び回転体制御装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、回転位置は、回転体の回転角度を意味し、回転速度は、回転体の回転角速度を意味する。また、「矩形波信号が出力される」とは、「矩形波信号のパルス(ポジティブパルスまたはネガティブパルス)が出力される」ことを意味する。すなわち、「矩形波信号の出力」とは、「ポジティブパルスにおける矩形波信号においてロー(L)、ハイ(H)、ロー(L)の信号変化が発生する」または「ネガティブパルスにおける矩形波信号においてハイ(H)、ロー(L)、ハイ(H)の信号変化が発生する」ことを意味する。
図1は、本開示の第1の実施形態によるエンコーダを示すブロック図である。また、図2は、光学式エンコーダにおけるセンサ部を説明する図であり、図3は、磁気式エンコーダにおけるセンサ部を説明する図である。
本開示の第1の実施形態によるエンコーダ1は、センサ部11と、信号変換部12と、エッジ検出部13と、計数部14と、評価部15とを備える。
回転情報の検出対象である回転体2には、例えばモータの回転軸や、モータの回転軸に連結された物体などがある。回転体2には、センサ部11が設置される。センサ部11は、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号を出力するとともに、回転体2が特定の回転位置に到達するごとにZ相アナログ信号を出力する。A相アナログ信号とB相アナログ信号との間で、位相は例えば約90度異なる。Z相アナログ信号は、例えば回転体2が1回転するごとに大きな振幅が1回発生する一回転信号があるが、回転体2が1回転するごとに大きな振幅が複数回発生する信号であってもよい。センサ部11から出力されたA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号は、信号変換部12へ送られる。
第1の実施形態及び後述する各実施形態によるエンコーダ1は、光学式であってもよく、磁気式であってもよい。
光学式のエンコーダには、発光素子と受光素子とを対向して配置し、その間にコードホイールが設けられる透過型と、発光素子と受光素子を同一の平面上に配置し、発光素子及び受光素子の上部にコードホイールが設けられる反射型がある。ここでは、一例として、透過型の光学式のエンコーダ1について図2を参照して説明する。
図2に示すように、透過型光学式のエンコーダ1において、センサ部11は、発光素子41と、受光素子42と、コードホイール43とを備える。発光素子41の例としては、例えばLEDがある。受光素子42の例としては、例えばフォトダイオードがある。コードホイール43は、回転スリット、スリット円板、またはロータリスケールとも称される。コードホイール43の軸心には、モータなどの回転体2のシャフト46が取り付けられる。コードホイール43上には、スリットからなるA相/B相トラック(インクリメンタルトラック)44及びZ相トラック45が設けられる。A相/B相トラック44には、コードホイール43の円周に沿って等間隔でスリットが設けられている。また、Z相トラック45には、コードホイール43の円周上の特定の位置にスリットが設けられている。Z相アナログ信号が一回転信号である場合、Z相トラック45には、コードホイール43の円周上の1か所にスリットが設けられる。Z相アナログ信号が回転体2が1回転するごとに大きな振幅が複数回発生する信号である場合、Z相トラック45には、コードホイール43の円周上の当該複数回と同数の箇所にスリットが設けられる。発光素子41から発せられた光は、A相/B相トラック44及びZ相トラック45にて透過または遮断される。発光素子41から発せられた光のうち、A相/B相トラック44及びZ相トラック45のスリットを透過した光は、受光素子42にて受光される。受光素子42は、受光した光の強度に応じた振幅を有する電気信号(A相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号)に変換して出力する。
また、エンコーダ1が磁気式である場合、センサヘッドの構成としては、A相、B相及びZ相についてのセンサヘッドを1つにまとめた1ヘッド構成のものと、A相及びB相用のセンサヘッドとZ相用のセンサヘッドを有する2ヘッド構成のものとがある。図3では、一例として、2ヘッド構成の磁気式エンコーダを示す。図3に示すセンサ部11は、センサギア51と、A相/B相用センサヘッド52と、Z相用センサヘッド53とを備える。センサギア51は、検出リングとも称される。センサギア51の軸心にはモータなどの回転体2のシャフト55が取り付けられる。センサギア51の円筒部分の表面上には、A相アナログ信号及びB相アナログ信号並びにZ相アナログ信号の生成のための溝54が設けられる。A相アナログ信号及びB相アナログ信号の生成のための溝54は、センサギア51の円筒表面上に等間隔に設けられている。また、Z相アナログ信号の生成のための溝54は、センサギア51の円筒表面上に特定の位置に設けられている。Z相アナログ信号が一回転信号である場合、センサギア51の円筒表面上の1か所にZ相アナログ信号の生成のための溝54が設けられる。Z相アナログ信号が回転体2が1回転するごとに大きな振幅が複数回発生する信号である場合、センサギア51の円筒表面上の当該複数回と同数の箇所にZ相アナログ信号の生成のための溝54が設けられる。A相/B相用センサヘッド52及びZ相用センサヘッド53には、磁界を発生する磁石と、磁界を電気信号に変換する磁気センサとが設けられている。センサギア51の回転に伴い、A相/B相用センサヘッド52及びZ相用センサヘッド53に対向するセンサギア51の円筒表面上における溝54の有無が刻々と変化するので、A相/B相用センサヘッド52及びZ相用センサヘッド53の近傍に発生する磁界も変化する。A相/B相用センサヘッド52及びZ相用センサヘッド53の磁気センサは、この磁界の変化を検出し、この変化に応じた振幅を有する電気信号(A相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号)に変換して出力する。
信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。信号変換部12は、例えば各相についてのアナログ信号と基準電圧Vrefとを比較してアナログ信号が基準電圧Vrefよりも大きい場合にパルスを出力するコンパレータからなる。なお、このようなコンパレータに代えて、信号変換部12を、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号とこれら各相のアナログ信号の反転信号(以下、「アナログ反転信号」と称する。)とを比較して各相のアナログ信号が各相のアナログ反転信号よりも大きい場合にパルス信号を出力するコンパレータにて構成してもよい。
図4は、センサ部及び信号変換部から出力される信号を例示する図であって、(A)はセンサ部から出力される各相のアナログ信号を例示し、(B)は信号変換部から出力される各相の矩形波信号を例示し、(C)は(B)におけるP内の各パルスを拡大したものである。
例えばZ相について、図4(A)に例示するように、センサ部11からは、回転体2が特定の回転位置に到達するごとに大きな振幅が発生するZ相アナログ信号が出力される。コンパレータからなる信号変換部12は、Z相アナログ信号と基準電圧Vrefとを比較し、Z相アナログ信号が基準電圧Vrefよりも大きい場合、図4(B)及び図4(C)に示すようなパルスを出力する。図4(B)及び図4(C)では信号変換部12がポジティブパルスを出力する例を示しており、回転体2が特定の回転位置に到達する毎にZ相矩形波信号には「ロー(L)、ハイ(H)、ロー(L)」の信号変化が発生する。なお、ここでは図示しないが、信号変換部12がネガティブパルスを出力するものである場合は、回転体2が特定の回転位置に到達する毎にZ相矩形波信号には「ハイ(H)、ロー(L)、ハイ(H)」の信号変化が発生する。
また例えばA相及びB相について、図4(A)に例示するように、センサ部11からは、回転体の回転に応じて位相が互いに異なるほぼ正弦波状のA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。コンパレータからなる信号変換部12は、A相アナログ信号及びB相アナログ信号のそれぞれと基準電圧Vrefとを比較し、A相アナログ信号及びB相アナログ信号のそれぞれについて基準電圧Vrefよりも大きい場合は、図4(B)及び図4(C)に示すようなパルスを出力する。図4(B)及び図4(C)では信号変換部12がポジティブパルスを出力する例を示している。
各相の矩形波信号をそのままエンコーダの外部に出力するタイプのエンコーダでは、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。内部で回転体の回転位置や回転速度などの回転情報を計算するタイプのエンコーダでは、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号(あるいはこれら各相のアナログ信号をA/D変換して得られる内挿データ)に基づいて回転情報を計算し、この回転情報をシリアル通信にてエンコーダの外部に出力する。また、いずれのタイプのエンコーダであっても、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。
エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。
評価部15は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジに基づいて、エンコーダ1の異常の有無を評価する。
特に、本開示の第1の実施形態では、計数部14は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数を計数し、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数に基づいて、エンコーダ1の異常の有無を評価する。
以下、Z相矩形波信号のパルス発生期間中におけるA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数に基づくエンコーダ1の異常の有無の評価について、より詳細に説明する。
コンパレータからなる信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号のパルス幅、すなわちZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりの各エッジで画定されるパルス幅は、センサ部11から出力されるZ相アナログ信号の信号レベル(振幅)と信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧Vrefとに応じて決定される。ここで、Z相矩形波信号のパルス幅を「Z相パルス幅」と称する。信号変換部12からポジティブパルスが出力される場合、Z相パルス幅は、信号(電圧)がロー(L)からハイ(H)への切り替え時の立ち上がりエッジと、ハイ(H)からロー(L)への切り替え時の立ち下がりエッジとで画定される区間である。信号変換部12からネガティブパルスが出力される場合、Z相パルス幅は、信号(電圧)がハイ(H)からロー(L)の切り替え時の立ち下がりエッジと、ロー(L)からハイ(H)への切り替え時の立ち上がりエッジとで画定される区間である。つまり、Z相矩形波信号のパルス発生期間が、Z相パルス幅に対応する。
図5は、エンコーダにおけるZ相アナログ信号の振幅の変化とZ相パルス幅の変化との関係を示す図であって、(A)はエンコーダ内のセンサ部から出力されるZ相アナログ信号を例示し、(B)はエンコーダ内の信号変換部から出力されるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。ここでは、信号変換部12からはポジティブパルスが出力される場合について説明する。
図5(A)において、破線は振幅低下前のZ相アナログ信号を示し、実線は振幅低下後のZ相アナログ信号を示し、一点鎖線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧Vrefを示す。図5(B)において、破線は信号変換部12から出力される振幅低下前のZ相矩形波信号を示し、実線は信号変換部12から出力される振幅低下後のZ相矩形波信号を示し、一点鎖線は信号変換部12から出力されるA相矩形波信号を示し、点線は信号変換部12から出力されるB相矩形波信号を示す。図5(A)に示すようにZ相アナログ信号の振幅が低下すると、図5(B)に示すようにZ相パルス幅は狭くなる。図5(B)に示すように、Z相アナログ信号の振幅低下前にはZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は7本存在したが、Z相アナログ信号の振幅低下後にはZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は3本存在する。
図5(A)及び図5(B)に示すように、Z相アナログ信号の信号レベル(振幅)が変化すると、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数も変化する。
図6は、エンコーダ内の信号変換部における基準電圧の変化とZ相パルス幅の変化との関係を示す図であって、(A)はエンコーダ内のセンサ部から出力されるZ相アナログ信号を例示し、(B)はエンコーダ内の信号変換部における基準電圧上昇時に出力されるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(C)はエンコーダ内の信号変換部における基準電圧低下時に出力されるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。ここでは、信号変換部12からはポジティブパルスが出力される場合について説明する。
図6(A)において、実線はZ相アナログ信号を示し、破線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる上昇・低下前の基準電圧Vref0を示し、一点鎖線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる上昇後の基準電圧Vref1及び低下後の基準電圧Vref2を示す。
図6(B)において、破線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧がVref0であるときに信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を示し、実線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧が上昇後の値Vref1であるときに信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を示す。また、図6(B)において、一点鎖線は信号変換部12から出力されるA相矩形波信号を示し、点線は信号変換部12から出力されるB相矩形波信号を示す。図6(A)に示すようにコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧がVref0からVref1に上昇すると、図6(B)に示すようにZ相パルス幅は狭くなる。図6(B)に示すように、コンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧の上昇前(すなわちVref0)にはZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は7本存在したが、コンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧の上昇後(すなわちVref1)にはZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は3本存在する。
図6(C)において、破線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧がVref0であるときに信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を示し、実線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧が低下後の値Vref2であるときに信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を示す。また、図6(C)において、一点鎖線は信号変換部12から出力されるA相矩形波信号を示し、点線は信号変換部12から出力されるB相矩形波信号を示す。図6(A)に示すようにコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧がVref0からVref2に低下すると、図6(C)に示すようにZ相パルス幅は広くなる。図6(C)に示すように、コンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧の低下前(すなわちVref0)にはZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は8本存在したが、コンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧の低下後(すなわちVref2)にはZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は11本存在する。
図6(A)~図6(C)に示すように、コンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧が変化すると、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数も変化する。
このように、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は、センサ部11から出力されるZ相アナログ信号の信号レベル(振幅)とコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧とに応じて、変化する。センサ部11から出力されるZ相アナログ信号の信号レベル(振幅)及びコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧が正常である限りにおいて、Z相パルス幅はほぼ一定であるので、Z相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数もほぼ一定である。そこで、本開示の第1の実施形態では、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数に基づいて、エンコーダ1の異常の発生の有無を評価する。より具体的には次の通りである。
Z相アナログ信号の信号レベル(振幅)及びコンパレータによる比較処理に用いられる基準電圧が正常であるときのA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を、「基準範囲」として予め規定しておく。すなわち基準範囲は、エンコーダ1が正常時にあるときのエッジの数を表すものである。基準範囲については、単一の数を規定してもよく、ある程度の幅を持たせて規定してもよく、上限値のみを規定してもよく、あるいは、下限値のみを規定してもよい。いずれの場合であっても、基準範囲を構成する個々の要素は、整数にて規定される。例えば、基準範囲について単一の数xにて規定する場合は、x(ただし、xは整数)そのものが基準範囲となる。例えば、基準範囲についてある程度の幅を持たせて規定する場合は、M≦x≦N(ただし、M、N、xは整数)で画定されるxの取り得る範囲が基準範囲となる。例えば、基準範囲について上限値のみをもって規定する場合は、x≦N(ただし、N、xは整数)で画定されるxの取り得る範囲が基準範囲となる。例えば、基準範囲について下限値のみをもって規定する場合は、M≦x(ただし、M、xは整数)で画定されるxの取り得る範囲が基準範囲となる。基準範囲は、実験または実際の運用におけるエンコーダ1の動作結果またはコンピュータによるシミュレーションによる解析結果などに基づき、エンコーダ1が正常状態にあると判断できるような値に適宜決定すればよい。なお、基準範囲については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、これにより、基準範囲を一旦設定した後であっても、エンコーダ1の適用環境の変化など、必要に応じて適切な値に変更することができる。
エッジ検出部13にて検出されたZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジにて、Z相矩形波信号のパルス発生期間であるZ相パルス幅を特定する。A相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジについても、エッジ検出部13にて検出する。Z相矩形波信号のパルス発生期間であるZ相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を、計数部14にて計数する。評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が予め規定された基準範囲に収まらない場合、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
例えば、図5に示す例において、基準範囲を「7」に設定する。この場合、Z相アナログ信号の振幅低下により、Z相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は3本となる。よって、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数である「3」が、基準範囲「7」ではないので(基準範囲「7」に収まらないので)、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
例えば、図6に示す例において、基準範囲を「6~9」に設定する。この場合、図6(A)に示すようにコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧がVref0からVref1に上昇すると、図6(B)に示すようにZ相パルス幅は狭くなり、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は3本となる。よって、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数である「3」が、基準範囲「6~9」に収まらないので、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
例えば、図6に示す例において、基準範囲を「上限値9まで」と設定する。この場合、図6(A)に示すようにコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧がVref0からVref2に低下すると、図6(C)に示すようにZ相パルス幅は広くなり、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は11本となる。よって、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数である「11」が、「上限値9まで」とする基準範囲に収まらないので、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
エンコーダ1の異常の例としては、センサ部11から出力されるZ相アナログ信号の信号レベル(振幅)の低下や、信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧Vrefの変化などがある。このようなエンコーダ1の異常の原因としては、次のようなものがある。
図5(A)に示すようなZ相アナログ信号の信号レベル(振幅)の低下の原因には、光学式のセンサ部11については、コードホイール43のZ相トラック45上のスリットへの異物の付着、受光素子42への異物の付着、発光素子41の光量の低下、その他各種部品の劣化などがある。磁気式のセンサ部11については、センサギア51における溝54の傷や溝54への異物の付着、Z相用センサヘッド53の取り付け位置の不備、Z相用センサヘッド53への異物の付着、その他各種部品の劣化などがある。
図6(A)に示すようなZ相アナログ信号の信号レベル(振幅)とコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧Vrefの変化の原因には、磁気式のセンサ部11を有するエンコーダ1における、基準電圧Vrefを生成する回路の異常、その他各種部品の劣化などがある。また、光学式のセンサ部11を有するエンコーダ1においては、発光素子41で発せられた光を受光素子42で受光することにより、受光素子42で生成された電圧を基準電圧Vrefとして用いている。したがって、光学式のセンサ部11を有するエンコーダ1における、コードホイール43のZ相トラック45上のスリットへの異物の付着、不適切なスリットの形状、受光素子42への異物の付着、発光素子41の光量の低下、その他各種部品の劣化などが、エンコーダ1の異常の原因となり得る。
図7は、本開示の第1の実施形態によるエンコーダにおける異常判定処理の動作フローを示すフローチャートである。
本開示の第1の実施形態によるエンコーダ1が回転体2に取り付けられている場合において、ステップS101において、センサ部11から、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。また、ステップS101では、回転体2が特定の回転位置に到達したときは、Z相アナログ信号が出力されている。
ステップS102において、信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。また、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出し、これに合わせて、計数部14は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を計数する。
ステップS103において、評価部15は、Z相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。Z相矩形波信号がポジティブパルスである場合は、「ロー(L)、ハイ(H)、ロー(L)」の信号変化が発生したことをもって、「Z相矩形波信号のパルスが発生した」と判定する。Z相矩形波信号がネガティブパルスである場合は、「ハイ(H)、ロー(L)、ハイ(H)」の信号変化が発生したことをもって、「Z相矩形波信号のパルスが発生した」と判定する。ステップS103において、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS104へ進み、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定されなかった場合はステップS101へ戻る。ステップS101~S103の処理は所定の周期で実行される。
ステップS104において、計数部14は、Z相矩形波信号のパルス発生期間であるZパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数を計数する。計数部14により計数されたエッジの数は、評価部15へ送られる。
ステップS105において、評価部15は、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が基準範囲内であるか否かを判定する。ステップS105において、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が、基準範囲内である場合はステップS101へ戻り、基準範囲内でない場合はステップS106へ進む。
ステップS106おいて、評価部15は、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
続いて、本開示の第2の実施形態について説明する。Z相矩形波信号のパルス発生期間に回転体2の回転方向が反転すると、エンコーダ1が正常であってもZ相矩形波信号のパルス発生期間であるZパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が変化する場合がある。この場合、エッジの数が基準範囲内から外れ、評価部15は、エンコーダ1が正常であるにもかかわらず異常であると誤判定してしまう。そこで、本開示の第2の実施形態では、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において回転体2の回転方向の反転が検出された場合、評価部15による異常検出信号の出力処理を停止する。
図8は、本開示の第2の実施形態によるエンコーダを示すブロック図である。
本開示の第2の実施形態によるエンコーダ1は、図1~図7を参照して説明した第1の実施形態によるエンコーダ1の構成に加え、さらに回転方向検出部16を備える。
回転方向検出部16は、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に基づいて、回転体2の回転方向を検出する。回転体2の回転方向は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号の位相関係に基づいて、公知の方法で検出可能である。回転方向検出部16による回転体2の回転方向についての検出結果は、評価部15に送られる。評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において回転方向検出部16により回転体2の回転方向の反転が検出された場合、異常検出信号の出力処理を停止する。すなわちこの場合、評価部15は異常検出信号を出力しない。評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において回転方向検出部16により回転体2の回転方向の反転が検出されない場合は、第1の実施形態と同様に、Z相矩形波信号のパルス発生期間であるZ相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が基準範囲に収まらないときは異常検出信号を出力する。第2の実施形態において、回転方向検出部16及び評価部15以外の回路構成要素については図1に示す構成要素と同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して当該構成要素についての詳細な説明は省略する。
図9は、回転体の回転方向の反転とZ相パルス幅の変化との関係を示す図であって、(A)は回転体の回転方向の反転がない場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)は回転体の回転方向の反転によりZ相パルス幅が広がる場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(C)は回転体の回転方向の反転によりZ相パルス幅が狭まる場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。
例えば、エンコーダ1が正常である場合において、図9(A)に示すように、Z相矩形波信号のパルス発生期間中における回転体2の反転がない場合に、Z相パルス幅にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジが7本存在するとする。エンコーダ1が正常であるにもかかわらず、Z相矩形波信号のパルス発生期間中に回転体2の反転があると、図9(B)に示すようにZ相パルス幅が広まったり、図9(C)に示すようにZ相パルス幅が狭まったりすることがある。図9(B)に示す例ではZ相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジは8本になり、図9(C)に示す例ではZ相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジは4本になる。第2の実施形態によれば、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において回転方向検出部16により回転体2の回転方向の反転が検出された場合、評価部15は異常検出信号を出力しないので、エンコーダ1が正常であるにもかかわらず異常であると誤判定されることは無い。
図10は、本開示の第2の実施形態によるエンコーダにおける異常判定処理の動作フローを示すフローチャートである。
本開示の第2の実施形態によるエンコーダ1が回転体2に取り付けられている場合において、ステップS201において、センサ部11から、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。また、ステップS201では、回転体2が特定の回転位置に到達したときは、Z相アナログ信号が出力されている。また、回転方向検出部16は、エンコーダ1の動作中は常に回転体2の回転方向を検出する。
ステップS202において、信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。エンコーダ1が各相の矩形波信号をそのままエンコーダの外部に出力するものである場合、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。エンコーダ1が内部で回転体の回転位置や回転速度などの回転情報を計算するものである場合、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号(あるいはこれら各相のアナログ信号をA/D変換して得られる内挿データ)に基づいて回転情報を計算し、この回転情報をシリアル通信にてエンコーダ1の外部に出力する。また、上述のいずれのタイプのエンコーダ1であっても、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出し、これに合わせて、計数部14は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を計数する。
ステップS203において、評価部15は、Z相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。ステップS203において、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS204へ進み、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定されなかった場合はステップS201へ戻る。ステップS201~S203の処理は所定の周期で実行される。
ステップS204において、評価部15は、回転方向検出部16により回転体2の回転方向の反転が検出されたか否かを判定する。ステップS204において回転体2の回転方向の反転が検出された場合はS201に戻る。この場合、評価部15は、異常検出信号の出力処理を停止するので、異常検出信号が出力されることはない。一方、ステップS204において回転体2の回転方向の反転が検出されなかった場合はS205へ進む。
ステップS205において、計数部14は、Z相矩形波信号のパルス発生期間であるZパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数を計数する。計数部14により計数されたエッジの数は、評価部15へ送られる。
ステップS206において、評価部15は、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が基準範囲内であるか否かを判定する。ステップS206において、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が、基準範囲内である場合はステップS201へ戻り、基準範囲内でない場合はステップS207へ進む。
ステップS207おいて、評価部15は、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
続いて、本開示の第3の実施形態について説明する。エンコーダ1が正常であっても、回転体2の正方向の回転と負方向の回転とでは、Z相矩形波信号のパルス発生期間であるパルス幅が異なることがある。この場合、回転体2の正方向の回転と負方向の回転とでは、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が一致しなくなる。また、回転体2が同じ回転方向で回転していても、回転速度が異なる場合は、エンコーダ1が正常であってもZ相矩形波信号のパルス発生期間であるパルス幅が異なることがある。この場合、回転体2の回転速度が変化すると、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が変化する。このように、エンコーダ1が正常であっても回転体2の回転方向や回転速度が異なるとZ相パルス幅が変化することがあり、その結果としてZ相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が基準範囲内から外れ、評価部15は、エンコーダ1が正常であるにもかかわらず異常であると誤判定してしまう。そこで、本開示の第3の実施形態では、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じて、評価部15における評価処理に用いられる基準範囲を予め複数種類規定しておく。そして、Z相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じて規定された基準範囲と比較して、エンコーダ1の故障の有無を評価する。つまり、本開示の第3の実施形態では、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に適した基準範囲を用いて、エンコーダ1の異常の有無が評価される。
図11は、本開示の第3の実施形態によるエンコーダを示すブロック図である。
本開示の第3の実施形態によるエンコーダ1は、図8~図10を参照して説明した第2の実施形態によるエンコーダ1の構成に加え、さらに回転速度検出部17を備える。
評価部15における評価処理に用いられる基準範囲については、評価部15内のメモリまたは評価部15の外部のメモリに、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じて複数種類予め規定しておく。例えば、回転体2の正方向回転時の高速用の基準範囲、回転体2の正方向回転時の低速用の基準範囲、回転体2の負方向回転時の高速用の基準範囲、及び回転体2の負方向回転時の低速用の基準範囲といったように、最低4種類の基準範囲を予め規定しておく。より好ましくは、回転体2の正方向回転時について高速用、中速用及び低速用といった3種類の基準範囲、回転体2の負方向回転時について高速用、中速用及び低速用といった3種類の基準範囲、の合計6種類の基準範囲を予め規定しておく。
回転速度検出部17は、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に基づいて回転体2の回転速度を検出する。回転体2の回転速度は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号の単位時間当たりのパルスの数に基づいて、公知の方法で検出可能である。回転速度検出部17による回転体2の回転速度についての検出結果は、評価部15に送られる。
評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中における回転体2の回転方向を回転方向検出部16から取得するとともに回転体2の回転速度を回転速度検出部17から取得する。次いで、評価部15は、予め複数種類規定された基準範囲のうち、回転体2の回転方向及び回転速度に対応した基準範囲を選択する。そして、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が、当該選択された基準範囲に収まるか否かを判定する。評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において計数部14により計数されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が基準範囲に収まらないと判定した場合、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。なお、第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様、評価部15は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において回転方向検出部16により回転体2の回転方向の反転が検出された場合、異常検出信号の出力処理を停止し、評価部15は異常検出信号を出力しないようにしてもよい。第3の実施形態において、回転方向検出部16、回転速度検出部17及び評価部15以外の回路構成要素については図1に示す構成要素と同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して当該構成要素についての詳細な説明は省略する。
図12は、回転体の回転速度とZ相パルス幅の変化との関係を示す図であって、(A)は回転体の低速時及び高速時におけるZ相アナログ信号を例示し、(B)は回転体の低速時におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(C)は回転体の高速時におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。
図12(A)において、実線は回転体2の低速回転時のZ相アナログ信号を示し、破線は回転体2の高速回転時のZ相アナログ信号を示し、一点鎖線はコンパレータからなる信号変換部12における比較処理に用いられる基準電圧Vrefを示す。図12(A)に示すように、回転体2の回転速度が変化すると、RCフィルタ回路やその他のアナログ回路の信号経路の周波数特性に応じてセンサ部11から出力されるZ相アナログ信号の波形が変化する。つまり、エンコーダ1が正常であっても回転体2の回転速度が変化するとZ相パルス幅が変化することがある。センサ部11から出力されるA相アナログ信号及びB相アナログ信号も同様に、RCフィルタ回路やその他のアナログ回路の信号経路の周波数特性に応じて波形が変化する。また、回転体2の高速回転時は、センサ部11から出力されるA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号の周波数が高くなるが、各相の信号経路のインピーダンスの違いや波形の違いにより、波形形状の変化の程度が異なる場合がある。その結果、図12(B)及び図12(C)に示すように、エンコーダ1が正常であっても、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が変化することがある。
図12(B)において、実線は回転体2の低速回転時のZ相矩形波信号を示し、一点鎖線は回転体2の低速回転時のA相矩形波信号を示し、点線は回転体2の低速回転時のB相矩形波信号を示す。また、図12(C)において、実線は回転体2の高速回転時のZ相矩形波信号を示し、一点鎖線は回転体2の高速回転時のA相矩形波信号を示し、点線は回転体2の高速回転時のB相矩形波信号を示す。図12(A)に示すように回転体2の高速回転時のZ相アナログ信号は回転体2の低速回転時のZ相アナログ信号よりも振幅が低下する。この結果、図12(B)及び図12(C)に示すように、回転体2の高速回転時のA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対する相対的なZ相パルス幅は回転体2の低速回転時のA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対する相対的なZ相パルス幅よりも小さくなる。この結果、エンコーダ1が正常であっても、Z相パルス幅に含まるA相アナログ信号及びB相アナログ信号のエッジの数は、回転体2の低速回転時では例えば7本であるに対し、回転体2の高速回転時では例えば6本といったように、回転体2の回転速度に応じて異なったものとなる。
図13は、回転体の回転方向とZ相パルス幅の変化との関係を示す図であって、(A)は回転体の正方向回転時におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)は回転体の回転方向の負方向回転時におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。なお、図13では一例としてA相矩形波信号がB相矩形波信号に対して90度位相が進んでいる状態を正方向としたが、A相矩形波信号がB相矩形波信号に対して90度位相が遅れている状態を正方向としてもよい。
図13(A)において、実線は回転体2の正方向回転時のZ相矩形波信号を示し、一点鎖線は回転体2の正方向回転時のA相矩形波信号を示し、点線は回転体2の正方向回転時のB相矩形波信号を示す。また、図13(B)において、実線は回転体2の負方向回転時のZ相矩形波信号を示し、一点鎖線は回転体2の負方向回転時のA相矩形波信号を示し、点線は回転体2の負方向回転時のB相矩形波信号を示す。エンコーダ1が正常である場合において、回転体2が同じ回転速度で回転していても図13(A)に示すように正方向に回転している場合と図13(B)に示すように負方向に回転している場合とでZ相パルス幅が変わることがある。例えば、図13(A)ではZ相パルス幅内にA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジが6本存在し、図13(B)では7本存在する。
このように、第3の実施形態によれば、評価部15は、Z相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じて予め規定された基準範囲と比較して、エンコーダ1の故障の有無を評価するので、回転体2の回転速度及び回転方向の変化に起因する誤判定を防ぐことができる。
図14は、本開示の第3の実施形態によるエンコーダにおける異常判定処理の動作フローを示すフローチャートである。
本開示の第3の実施形態では、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じた基準範囲を、評価部15内に予め複数種類規定しておく。本開示の第3の実施形態によるエンコーダ1が回転体2に取り付けられている場合において、ステップS301において、センサ部11から、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。また、ステップS301では、回転体2が特定の回転位置に到達したときは、Z相アナログ信号が出力されている。
ステップS302において、信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。また、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出し、これに合わせて、計数部14は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を計数する。
ステップS303において、評価部15は、Z相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。ステップS303において、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS304へ進み、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定されなかった場合はステップS301へ戻る。ステップS301~S303の処理は所定の周期で実行される。
ステップS304において、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に基づいて、回転方向検出部16は回転体2の回転方向を検出し、回転速度検出部17は回転体2の回転速度を検出する。回転方向検出部16で検出された回転体2の回転方向に関する情報及び回転速度検出部17で検出された回転体2の回転速度に関する情報は、計数部14及び評価部15へ送られる。
ステップS305において、評価部15は、回転方向検出部16により回転体2の回転方向の反転が検出されたか否かを判定する。ステップS305において回転体2の回転方向の反転が検出された場合はS301に戻る。この場合、評価部15は、異常検出信号の出力処理を停止するので、異常検出信号が出力されることはない。一方、ステップS305において回転体2の回転方向の反転が検出されなかった場合はS306へ進む。
ステップS306において、計数部14は、Z相矩形波信号のパルス発生期間であるZパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数を計数する。計数部14により計数されたエッジの数は、評価部15へ送られる。
ステップS307において、評価部15は、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が基準範囲内であるか否かを判定する。ステップS307の判定処理に用いられる基準範囲は、予め複数種類規定された基準範囲のうち、ステップS304において検出された回転体2の回転方向及び回転速度に対応するものが選択されて用いられる。ステップS307において、Zパルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジの数が、基準範囲内である場合はステップS301へ戻り、基準範囲内でない場合はステップS308へ進む。
ステップS308おいて、評価部15は、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
続いて、本開示の第4の実施形態について説明する。本開示の第4の実施形態は、上述の第1~第3の実施形態において、さらに、所定の期間にわたってZ相矩形波信号のエッジが検出されない場合にも、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力するというものである。
図15は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する図であって、(A)はエンコーダ1が正常である場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)はエンコーダの故障によりZ相矩形波信号のパルスの消失する場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。
図15(A)及び図15(B)において、太い実線は信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を例示し、細い実線は信号変換部12から出力されるA相矩形波信号及びB相矩形波信号を例示する。一例として、図15(A)に示すようにエンコーダ1が正常である場合において周期的に発生するZ相矩形波信号のパルスの間にA相矩形波信号及びB相矩形波信号が例えば2048パルス存在する場合について説明する。エンコーダ1が正常である場合は、図15(A)に示すようにA相矩形波信号及びB相矩形波信号の例えば2048パルスにつきZ相矩形波信号のパルスが1回発生するとしている。図15(B)に示すように、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生し次いでA相矩形波信号及びB相矩形波信号が2048パルス発生したにもかかわらず、次のZ相矩形波信号のパルスが消失するというエンコーダ1の故障が発生することがある。本開示の第4の実施形態では、このようなZ相矩形波信号のパルスの消失時に、評価部15はエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
すなわち、本開示の第4の実施形態によれば、評価部15は、所定の期間にわたってエッジ検出部13によりZ相矩形波信号のエッジが検出されない場合、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。ここで、上記「所定の期間」とは、エンコーダ1が正常である場合においてZ相矩形波信号のパルスと次のZ相矩形波信号のパルスとの間で本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数(以下、「規定エッジ数」と称することがある。)を計数する期間で規定される。エンコーダ1が正常である場合において、あるZ相矩形波信号のパルスと次のZ相矩形波信号のパルスとの間で本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数(規定エッジ数)は、当該エンコーダ1の設計段階または製造段階において事前に把握できるものであるので、これを評価部15内のメモリまたは評価部15の外部のメモリに事前に記憶させておく。評価部15は、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生した場合、このタイミングから計時を開始して所定の期間(エンコーダ1が正常である場合において次のZ相矩形波信号のパルスが発生するまでにA相矩形波信号及びB相矩形波信号の規定エッジ数を計数する期間)の経過時に次のZ相矩形波信号のパルスのエッジを検出したか否かを判定する。評価部15は、上記「所定の期間」にわたってZ相矩形波信号のパルスのエッジを検出できなかった場合、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。なお、評価部15による誤判定を防ぐために、上記「所定の期間」についてはある程度の幅を持たせて設定してもよい。
図16は、本開示の第4の実施形態によるエンコーダにおける異常判定処理の動作フローを示すフローチャートである。
本開示の第4の実施形態によるエンコーダ1が回転体2に取り付けられている場合において、ステップS401において、センサ部11から、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。また、ステップS401では、回転体2が特定の回転位置に到達したときは、Z相アナログ信号が出力されている。
ステップS402において、信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。また、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。
ステップS403において、評価部15は、Z相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。ステップS403において、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS404へ進み、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定されなかった場合はステップS401へ戻る。ステップS401~S403の処理は所定の周期で実行される。
ステップS404において、評価部15は、本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数(規定エッジ数)を計数(検出)したか否かを判定する。ステップS404においてA相矩形波信号及びB相矩形波信号の規定エッジ数を計数したと判定された場合はステップS405へ進む。A相矩形波信号及びB相矩形波信号の規定エッジ数が計数されるまで、ステップS404は繰り返し実行される。
ステップS405において、評価部15は、エッジ検出部13によりZ相矩形波信号のエッジを検出したか否かを判定する。ステップS405において、Z相矩形波信号のエッジを検出したと判定された場合はステップS404へ戻り、Z相矩形波信号のエッジを検出したと判定されなかった場合はステップS406へ進む。
ステップS406において、評価部15は、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
上述の本開示の第4の実施形態における評価部15の評価処理は、第1~第3の実施形態における評価部15の評価処理と併せて実行される。この変形例として、本開示の第4の実施形態における評価部15の評価処理を単独で実行してもよい。
続いて、本開示の第5の実施形態について説明する。本開示の第5の実施形態は、上述の第1~第4の実施形態において、さらに、所定の期間にわたってA相矩形波信号及びB相矩形波信号のうちの少なくとも1つの矩形波信号のエッジが検出されない場合にも、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力するというものである。
図17は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する図であって、(A)はエンコーダが正常である場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)はエンコーダの故障によりA相矩形波信号及びB相矩形波信号のうちの少なくとも1つの矩形波信号のパルスの消失する場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。
図17(A)及び図17(B)において、太い実線は信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を例示し、細い実線は信号変換部12から出力されるA相矩形波信号及びB相矩形波信号を例示する。一例として、図17(A)に示すようにエンコーダ1が正常である場合において周期的に発生するZ相矩形波信号のパルスの間にA相矩形波信号及びB相矩形波信号が例えば2048パルス存在する場合について説明する。すなわち、エンコーダ1が正常である場合は図17(A)に示すようにA相矩形波信号及びB相矩形波信号の例えば2048パルスにつきZ相矩形波信号のパルスが1回発生するとしている。図17(B)に示すように、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生して次のZ相矩形波信号のパルスが発生する前に、A相矩形波信号及びB相矩形波信号の両方のパルスが消失するというエンコーダ1の故障が発生することがある。あるいは、ここでは図示しないが、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生して次のZ相矩形波信号のパルスが発生する前に、A相矩形波信号及びB相矩形波信号のうちのいずれか一方の矩形波信号のパルスが消失するというエンコーダ1の故障が発生することがある。本開示の第5の実施形態では、このようなA相矩形波信号及びB相アナログ信号のうちの少なくとも1つの矩形波信号のパルスの消失時に、評価部15はエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
すなわち、本開示の第5の実施形態によれば、評価部15は、所定の期間にわたってエッジ検出部13によりA相矩形波信号及びB相矩形波信号のうちの少なくとも1つの矩形化信号のエッジが検出されない場合、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。ここで、上記「所定の期間」とは、「あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生してから次のZ相矩形波信号のパルスが発生するまでの期間」として規定される。評価部15は、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生した場合、このタイミングから次のZ相矩形波信号のパルスが発生するまでの期間の経過時に、計数部14により本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数(規定エッジ数)が計数(検出)されたか否かを判定する。評価部15は、上記「所定の期間」にわたって計数部14によりA相矩形波信号及びB相矩形波信号のうちの少なくとも1つの矩形波信号について規定エッジ数を計数(検出)できなかった場合、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。例えば、エンコーダ1の正常時におけるA/B相矩形波信号が2048パルス存在する場合は、規定エッジ数は4096である。この例において、上記「所定の期間」に計数部14により規定エッジ数である4096に満たないA/B相矩形波信号のエッジしか計数されなかった場合、直ちに、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。なお、評価部15による誤判定を防ぐために、異常判定処理に用いられるA相矩形波信号及びB相矩形波信号の規定エッジ数については、本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの「厳密な」数よりも、ある程度小さい値に設定してもよい。例えば、本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジが4096である場合、規定エッジ数を、4096よりも小さい値(例えば3900など)に設定してもよい。
図18は、本開示の第5の実施形態によるエンコーダにおける異常判定処理の動作フローを示すフローチャートである。
本開示の第5の実施形態によるエンコーダ1が回転体2に取り付けられている場合において、ステップS501において、センサ部11から、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。また、ステップS501では、回転体2が特定の回転位置に到達したときは、Z相アナログ信号が出力されている。
ステップS502において、信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。また、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。
ステップS503において、評価部15は、Z相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。ステップS503において、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS504へ進み、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定されなかった場合はステップS501へ戻る。ステップS501~S503の処理は所定の周期で実行される。
ステップS504において、評価部15は、次のZ相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。ステップS504において次のZ相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS505へ進む。次のZ相矩形波信号のパルスの発生が検出されるまで、ステップS504は繰り返し実行される。
ステップS505において、評価部15は、計数部14により本来計数されるべきA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数(規定エッジ数)が計数(検出)されたか否かを判定する。ステップS505において、A相矩形波信号及びB相矩形波信号についての規定エッジ数を計数したと判定された場合はステップS504へ戻り、A相矩形波信号及びB相矩形波信号についての規定エッジ数を計数したと判定されなかった場合はステップS506へ進む。
ステップS506において、評価部15は、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
上述の本開示の第5の実施形態における評価部15の評価処理は、第1~第4の実施形態における評価部15の評価処理と併せて実行される。この変形例として、本開示の第5の実施形態における評価部15の評価処理を単独で実行してもよく、あるいは本開示の第4の実施形態及び第5の実施形態における評価部15の2種類の評価処理のみを実行してもよい。
続いて、本開示の第6の実施形態について説明する。本開示の第6の実施形態は、上述の第1~第5の実施形態において、さらに、予め規定された周期以外のタイミングでエッジ検出部13によりZ相矩形波信号のエッジが検出された場合にも、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力するというものである。
図19は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する図であって、(A)はエンコーダが正常である場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)はエンコーダの故障により予め規定された周期以外のタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生する場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。
図19(A)及び図19(B)において、太い実線は信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を例示し、細い実線は信号変換部12から出力されるA相矩形波信号及びB相矩形波信号を例示する。一例として、図19(A)に示すようにエンコーダ1が正常である場合において周期的に発生するZ相矩形波信号のパルスの間にA相矩形波信号及びB相矩形波信号が例えば2048パルス存在する場合について説明する。すなわち、エンコーダ1が正常である場合は図15(A)に示すようにA相矩形波信号及びB相矩形波信号の例えば2048パルスにつきZ相矩形波信号のパルスが1回発生するといったようにZ相矩形波信号は周期的に発生している。図19(B)に示すように、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生し次いでA相矩形波信号及びB相矩形波信号が2048パルス発生する前に、次のZ相矩形波信号のパルスが発生するというエンコーダ1の故障が発生することがある。本開示の第6の実施形態では、このような予め規定された周期以外のタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生する場合に、評価部15はエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
すなわち、本開示の第6の実施形態によれば、評価部15は、予め規定された周期以外のタイミングでエッジ検出部13によりZ相矩形波信号のエッジが検出された場合、評価部15による評価結果としてエンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。ここで、上記「予め規定された周期」とは、エンコーダ1が正常である場合においてZ相矩形波信号のパルスが出力される周期である。エンコーダ1が正常である場合においてZ相矩形波信号のパルスが出力される周期は、当該エンコーダ1の設計段階または製造段階において事前に把握できるものであるので、これを評価部15内のメモリまたは評価部15の外部のメモリに事前に記憶させておく。評価部15は、あるタイミングでZ相矩形波信号のパルスが発生した場合、このタイミングから計時を開始して規定の周期(エンコーダ1が正常である場合においてZ相矩形波信号のパルスが出力される周期)の経過前にZ相矩形波信号のパルスのエッジを検出したか否かを判定する。評価部15は、上記「規定の周期」の経過前にZ相矩形波信号のパルスのエッジを検出した場合、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
図20は、本開示の第6の実施形態によるエンコーダにおける異常判定処理の動作フローを示すフローチャートである。
本開示の第6の実施形態によるエンコーダ1が回転体2に取り付けられている場合において、ステップS601において、センサ部11から、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号が出力される。また、ステップS601では、回転体2が特定の回転位置に到達したときは、Z相アナログ信号が出力されている。
ステップS602において、信号変換部12は、センサ部11から受信したA相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エンコーダ1に接続された外部の計算装置(図示せず)に送られ、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報の計算に用いられる。また、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号は、エッジ検出部13にも送られる。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。
ステップS603において、評価部15は、Z相矩形波信号のパルスが発生したか否かを判定する。ステップS603において、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定された場合はステップS604へ進み、Z相矩形波信号のパルスが発生したと判定されなかった場合はステップS601へ戻る。ステップS601~S603の処理は所定の周期で実行される。
ステップS604において、評価部15は、規定の周期分の時間が経過したか否かを判定する。ステップS604において、規定の周期分の時間が経過したと判定された場合はステップS601へ戻り、規定の周期分の時間が経過したと判定されなかった場合はステップS605へ進む。
ステップS605において、評価部15は、エッジ検出部13によりZ相矩形波信号のエッジを検出したか否かを判定する。ステップS605において、Z相矩形波信号のエッジを検出したと判定された場合はステップS606へ進み、Z相矩形波信号のエッジを検出したと判定されなかった場合はステップS604へ戻る。
ステップS606において、評価部15は、エンコーダ1が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
上述の本開示の第6の実施形態における評価部15の評価処理は、第1~第5の実施形態における評価部15の評価処理と併せて実行される。この変形例として、本開示の第6の実施形態における評価部15の評価処理を単独で実行してもよく、あるいは本開示の第4の実施形態及び第6の実施形態における評価部15の2種類の評価処理のみを実行してもよく、あるいは本開示の第4の実施形態及び第6の実施形態における評価部15の2種類の評価処理のみを実行してもよく、あるいは本開示の第4~第6の実施形態における評価部15の3種類の評価処理のみを実行してもよい。
続いて、上述の本開示の第1~第6の実施形態によるエンコーダを備える回転体制御装置について説明する。
図21は、本開示の一実施形態によるエンコーダを備える回転体制御装置を示すブロック図である。
回転体制御装置100は、本開示の第1~第6の実施形態のうちのいずれかの実施形態によるエンコーダ1から出力されるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に基づいて、回転体2の回転を制御するものである。ここでは一例として、回転体制御装置100内に設けられるエンコーダ1が、回転方向検出部16及び回転速度検出部17を備える第3の実施形態によるものであり、なおかつ各相の矩形波信号をそのままエンコーダの外部に出力するものである場合について説明する。第1~第6の実施形態のうちのいずれかの実施形態によるエンコーダ1が回転体制御装置100に設けられるかによって、エンコーダ1内の回転方向検出部16、回転速度検出部17及び位相情報取得部18のうちのいくつかが省略される。
エンコーダ1は、評価部15による評価結果を記憶する記憶部19と、記憶部19に記憶された評価部15による評価結果をエンコーダ1の外部にある機器へシリアル通信にて送信する送信部20とをさらに備える。エンコーダ1は、外部にある機器とは送信部20を介してシリアル通信を行うが、記憶部19はシリアル通信に際して送信データを一時的に記憶(保持)するために用いられる。また、記憶部19は、計数部14により計数されたエッジの数を記憶し、送信部20は、記憶部19に記憶された評価部15による評価結果をエンコーダ1の外部にある機器へシリアル通信にて送信するようにしてもよい。
エンコーダ1は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の各エッジに基づいて、A相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報を取得する位相情報取得部18をさらに備えてもよい。位相情報取得部18により取得された位相情報は、記憶部19に一旦記憶され、送信部20は、記憶部19に記憶された位相情報をエンコーダ1の外部にある機器へシリアル通信にて送信する。詳細については後述するが、外部にある機器を用いて、位相情報に基づくエンコーダ1の調整を行うことができる。
回転体制御装置100は、エンコーダ1と、エンコーダ1の出力に基づいて回転体2の回転を制御する制御部32と、エンコーダ1の送信部20から送られてきたデータを受信する受信部33と、受信部33が受信したデータに基づき表示を行う表示部31とを備える。
制御部32は、エンコーダ1に接続された計算装置内に設けられる。計算装置の例としては、例えば、モータが設けられた工作機械を制御するための数値制御装置、モータが設けられたロボットを制御するためのロボットコントローラなどがある。図21に示す例では、エンコーダ1が各相の矩形波信号をそのままエンコーダ1の外部に出力するタイプとしたので、制御部32は、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に基づき、回転体2の回転位置、回転速度及び回転方向などの回転情報を算出し、この計算情報に基づき回転体2の回転を制御する。なお、エンコーダ1が内部で回転体の回転位置や回転速度などの回転情報を計算するタイプである場合は、制御部32は、エンコーダ1からシリアル通信にて受信した回転情報に基づき回転体2の回転を制御する。
なお、回転体2を駆動するにあたっては駆動電力が必要であるが、図21では、駆動電力を供給するための電源装置については図示を省略している。
表示部31は、エンコーダ1内の評価部15による評価結果として異常検出信号を、受信部33を経由して受信した場合は、エンコーダ1が異常である旨を表示する。これにより、作業者は、表示部31による表示内容に基づき、エンコーダ1の異常の有無を容易に把握することができる。
表示部31及び受信部33は、例えば、エンコーダ1の外部の計算装置内に設けられてもよい。また例えば、表示部31及び受信部33は、エンコーダ1の外部の計算装置とは独立した計算装置内に設けられてもよく、この場合、この計算装置は、エンコーダ1を検査したいときに接続されるエンコーダ検査装置として構成することができる。例えば、作業者は、エンコーダ1の製造時やメンテナンス時に、エンコーダ1にエンコーダ検査装置を接続し、エンコーダ検査装置内の表示部31による表示内容から、エンコーダ1の異常の有無を容易に把握することができる。
表示部31は、評価部15により取得されたZ相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数に関する情報を、受信部33を経由して受信した場合は、Z相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を表示する。作業者は、表示部31に表示されるエッジの数を確認しながら、エッジの数が基準範囲に収まることになるように、エンコーダ1の調整を行うことができる。
また、位相情報取得部18により取得されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報を表示部31に表示させ、作業者はこの表示内容に基づいてエンコーダ1についてより詳細に調整することもできる。
図22は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報に基づくエンコーダの調整を説明する図(その1)であって、(A)はエンコーダの第1の個体についてのA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)は(A)に示す第1の個体についてのA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報の表示例を例示する。図23は、A相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報に基づくエンコーダの調整を説明する図(その2)であって、(A)はエンコーダの第2の個体についてのA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)は(A)に示す第2の個体についてのA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報の表示例を例示する。
図22(A)及び図23(A)において、実線は信号変換部12から出力されるZ相矩形波信号を示し、一点鎖線はA相矩形波信号を示し、点線はB相矩形波信号を示す。図22(A)に示す第1の個体であるエンコーダ1と、図23(A)に示す第2の個体であるエンコーダ1とでは、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は同じ7本である。しかしながら、第1の個体では、図22(A)に示すようにZ相矩形波信号の立ち上がりエッジが出力される時点では、A相矩形波信号及びB相矩形波信号はともにハイ(H)であるが、第2の個体では、図23(A)に示すようにZ相矩形波信号の立ち上がりエッジが出力される時点では、A相矩形波信号はハイ(H)でありB相矩形波信号はロー(L)である。また、第1の個体では、図22(A)に示すようにZ相矩形波信号の立ち下がりエッジが出力される時点では、A相矩形波信号はハイ(H)でありB相矩形波信号はロー(L)であるが、第2の個体では、図23(A)に示すようにZ相矩形波信号の立ち下がりエッジが出力される時点では、A相矩形波信号はともにロー(L)である。このように、第1の個体と第2の個体とでは、Z相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数は同じであっても、A相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相が異なる。
そこで、図22(B)及び図23(B)に示すように、A相矩形波信号の信号レベルを横軸にとり、B相矩形波信号の信号レベルを縦軸にとった仮想平面上にZ相矩形波信号のエッジの位相を表示する。
例えば、第1の個体については、Z相矩形波信号の立ち上がりエッジが出力される時点ではA相矩形波信号及びB相矩形波信号はともにハイ(H)であるので図22(A)に示すように仮想平面上の第1象限にZ相矩形波信号の立ち上がりエッジの位相が表示される。第2の個体については、Z相矩形波信号の立ち上がりエッジが出力される時点ではA相矩形波信号がハイ(H)でありB相矩形波信号はロー(L)であるので図22(B)に示すように仮想平面上の第4象限にZ相矩形波信号の立ち上がりエッジの位相が表示される。
また、第1の個体については、Z相矩形波信号の立ち下がりエッジが出力される時点ではA相矩形波信号はハイ(H)でありB相矩形波信号はロー(L)であるので図22(A)に示すように仮想平面上の第4象限にZ相矩形波信号の立ち下がりエッジの位相が表示される。第2の個体については、Z相矩形波信号の立ち下がりエッジが出力される時点ではA相矩形波信号及びB相矩形波信号はともにロー(L)であるので図22(B)に示すように仮想平面上の第3象限にZ相矩形波信号の立ち上がりエッジの位相が表示される。
図22(B)及び図23(B)に示すように、エンコーダ1の第1の個体と第2の個体とでは、A相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相がずれている。図22(B)及び図23(B)に示すような仮想平面を表示部31に表示させることで、作業者は、エンコーダ1の個体間の位相のずれを容易に把握することができる。例えば図22(B)及び図23(B)に表示された第1の個体及び第2の個体の各Z相矩形波信号の立ち上がりエッジの位相が一致し、かつ第1の個体及び第2の個体の各Z相矩形波信号の立ち下がりエッジの位相が一致するように、第1の個体及び第2の個体をそれぞれ調整すれば、個体ごとのエンコーダ1の原点位置の検出精度のばらつきをなくすことができる。図22(B)及び図23(B)に示すような仮想平面を表示部31に生じさせることで、作業者は、エンコーダ1の個体間のA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相のずれを容易に把握し、エンコーダ1を容易に調整することができる。
ここで、エンコーダ1の調整の仕方について、いくつか列記する。光学式エンコーダの場合は、例えば、コードホイール43と発光素子41及び受光素子42との位置関係の変更、各アナログ信号及び基準電圧を生成する回路の回路定数の変更、各部品の交換などにより、エンコーダ1の調整を行うことができる。磁気式エンコーダの場合は、例えば、センサギア51とA相/B相用センサヘッド52及びZ相用センサヘッド53との位置関係の変更、センサギア51上に設けられる溝54の形状の変更、各アナログ信号及び基準電圧を生成する回路の回路定数の変更、各部品の交換などにより、エンコーダ1の調整を行うことができる。作業者は、エンコーダ1の製造時またはメンテナンス時に、表示部31に表示されるZ相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が基準範囲に収まるように、上述の調整を行うことができる。また作業者は、エンコーダ1の製造時またはメンテナンス時に、表示部31に表示される図22(B)及び図23(B)に表示されるような仮想平面のエンコーダ1の位相情報に基づき、エンコーダ1の個体間のA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相のずれがなくなるよう、上述の調整を行うことができる。
このように、本開示の一形態によれば、従来のような測定装置を用いたZ相アナログ信号の波形の取得作業は不要であり、取得した波形を観測しながらのZ相アナログ信号の調整作業が不要となるので、未熟練者であっても容易にエンコーダ1の調整を行うことができる。
続いて、エンコーダ1と外部の計算装置との間で行われるシリアル通信について説明する。
図24は、本開示の一実施形態によるエンコーダと外部の計算装置との間のシリアル通信を説明する図であって、(A)はエンコーダからのデータを周期的に外部の計算装置へ送信する場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示し、(B)はエンコーダからのデータを一旦保持して外部の計算装置へ送信する場合におけるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号を例示する。
ここでは、Z相パルス幅に収まるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数及びZ相矩形波信号のパルスの消失により発生する異常検出信号を、エンコーダ1の送信部20から外部の計算装置内の受信部33へ、シリアルデータにて送信する場合を例にとり説明する。
例えば図24(A)に示すように、計数部14から出力されるZ相パルス幅に収まるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数に関する情報と、評価部15から出力されるZ相矩形波信号のパルスの消失により出力される異常検出信号とが、単純に出力順にシリアルデータとしてエンコーダ1の送信部20から外部の計算装置内の受信部33に送信される場合、Z相矩形波信号のパルス消失のタイミング如何によっては、異常検出信号をシリアルデータとして送信部20から受信部33へ送信できないことがある。例えば、送信部20から受信部33へ、シリアルデータP~Sが順次送信される場合、シリアルデータPとして送信されるのは計数値Aであり、シリアルデータQとして送信されるのは計数値Dであり、シリアルデータRとして送信されるのは計数値Gであり、シリアルデータSとして送信されるのは計数値Jである。一方、計数値B、計数値B及び計数値Dの各計数のタイミング間で出力される異常検出信号、計数値E,計数値F、計数値G及び計数値Iの各計数のタイミング間で出力される異常検出信号、計数値I、並びに計数値Kについては、シリアルデータの送信タイミングに合わないため、送信部20から受信部33へは送信できない。このように、シリアルデータとして送信部20から受信部33へ送信できないデータの中に異常検出信号が含まれてしまうのは適切ではない。
そこで、本開示の一実施形態では、計数部14から出力されるZ相パルス幅に収まるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数に関する情報、及び評価部15から出力されるZ相矩形波信号のパルスの消失により出力される異常検出信号については、記憶部19に一旦記憶する。送信部20は、記憶部19に記憶されたデータを、シリアル通信にて外部の計算装置内の受信部33へ逐次送信する。ただし、送信部20は、記憶部19に記憶されたデータの中に異常検出信号が含まれていた場合には、異常検出信号を、エッジの計数値よりも優先してシリアル通信にて外部の計算装置内の受信部33へ送信する。
例えば図24(B)に示すように、本開示の一実施形態によれば、Z相パルス幅に収まるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの計数値A、計数値B、計数値B及び計数値Dの各計数のタイミング間で出力される異常検出信号、計数値D、計数値E,計数値F、計数値G及び計数値Iの各計数のタイミング間で出力される異常検出信号、計数値I、計数値J、並びに計数値Kは、それぞれ計数部14または評価部15から出力された後、記憶部19に一旦記憶される。送信部20は、記憶部19に記憶されたデータを、シリアル通信にて外部の計算装置内の受信部33へ逐次送信するが、その際は異常検出信号の送信を優先的に行う。例えば図24(B)に示すように、送信部20から受信部33へ、シリアルデータP~Sが順次送信される場合、シリアルデータPとして送信されるのは計数値Aである。また、シリアルデータQとして送信されるのは計数値B及び計数値Dの各計数のタイミング間で出力される異常検出信号である。また、シリアルデータRとして送信されるのは計数値Gである。また、シリアルデータSとして送信されるのは計数値G及び計数値Iの各計数のタイミング間で出力される異常検出信号である。このように、本開示の一実施形態によれば、評価部15から出力された異常検出信号が送信部20から受信部33へ送信されない事態を防ぐことができる。
続いて、本開示の第7の実施形態によるエンコーダ及びこれを備える回転体制御装置について説明する。
上述した第1~第6の実施形態によるエンコーダでは、内部に評価部を備えていた。本開示の第7の実施形態では、エンコーダの外部に、評価部を設ける。
図25は、本開示の第7の実施形態によるエンコーダを備える回転体制御装置を示すブロック図である。ここでは一例として、回転体制御装置200内に設けられるエンコーダ3が、各相の矩形波信号をそのままエンコーダの外部に出力するものである場合について説明する。
回転体制御装置200は、本開示の第7の実施形態によるエンコーダ3と、エンコーダ3とは別体の外部の計算装置とを備える。回転体制御装置200は、エンコーダ3から出力されるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に基づいて、回転体2の回転を制御する。エンコーダ3に接続される外部の計算装置には、評価部21と、表示部31と、制御部32と、受信部33とが設けられる。
エンコーダ3は、センサ部11と、信号変換部12と、エッジ検出部13と、計数部14と、回転方向検出部16と、回転速度検出部17と、位相情報取得部18と、記憶部19と、送信部20と、を備える。ここでは一例として、回転体制御装置200内に設けられるエンコーダ3が、回転方向検出部16、回転速度検出部17及び位相情報取得部18を備えるものとしたが、回転方向検出部16、回転速度検出部17及び位相情報取得部18のうちのいくつかについては省略されてもよい。
センサ部11、信号変換部12、エッジ検出部13、計数部14、回転方向検出部16、回転速度検出部17、及び位相情報取得部18は、第1~第6の実施形態にて説明したものと同様である。すなわち、センサ部11は、回転体2の回転に応じて位相が互いに異なるA相アナログ信号及びB相アナログ信号を出力し、回転体2が特定の回転位置に到達するごとにZ相アナログ信号を出力する。信号変換部12は、A相アナログ信号、B相アナログ信号及びZ相アナログ信号を、それぞれA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に変換して出力する。エッジ検出部13は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。計数部14は、Z相矩形波信号のパルス発生期間中におけるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を計数する。回転方向検出部16は、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に基づいて、回転体2の回転方向を検出する。回転速度検出部17は、信号変換部12から出力されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に基づいて回転体2の回転速度を検出する。位相情報取得部18は、A相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号の各エッジに基づいて、A相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報を取得する。
エンコーダ3内の記憶部19は、計数部14により計数されたZ相パルス幅内に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数、回転方向検出部16により検出された回転体2の回転方向、回転速度検出部17により検出された回転体2の回転速度、並びに、位相情報取得部18により取得されたA相矩形波信号及びB相矩形波信号に対するZ相矩形波信号の位相情報を記憶する。送信部20は、記憶部19に記憶された各種情報をエンコーダ3の外部にある機器へシリアル通信にて送信する。
エンコーダ3が接続される外部の計算装置には、評価部21と、表示部31と、制御部32と、受信部33とが設けられる。計算装置の例としては、例えば、モータが設けられた工作機械を制御するための数値制御装置、モータが設けられたロボットを制御するためのロボットコントローラなどがある。
受信部33は、シリアル通信にてエンコーダ3の送信部20から送られてきたデータを受信する。
評価部21は、エンコーダ3の異常の有無の評価に用いられるZ相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が、受信部33が受信したものである点以外は、上述の第1~第6の実施形態と同様である。すなわち、評価部21は、受信部33が受信したZ相パルス幅内のA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数が予め規定された基準範囲に収まらない場合、エンコーダ3が異常であることを示す異常検出信号を出力する。
また、エンコーダ3内の回転方向検出部16及び回転速度検出部17が省略されない場合は、上述した第2及び第3の実施形態と同様、評価部21は、受信部33が受信した回転体2の回転情報に基づき、Z相矩形波信号のパルス発生期間中において回転体2の回転方向の反転が検出された場合は評価部15による異常検出信号の出力処理を停止する。また、回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じて、評価部15における評価処理に用いられる基準範囲を予め複数種類規定しておけば、評価部21は、Z相パルス幅に含まれるA相矩形波信号及びB相矩形波信号のエッジの数を、受信部33が受信した回転体2の回転方向及び回転体2の回転速度に応じた基準範囲と比較して、エンコーダ3の故障の有無を評価することもできる。
さらに、評価部21は、所定の期間にわたってZ相矩形波信号のエッジが検出されない場合や所定の期間にわたってA相矩形波信号及びB相矩形波信号のうちの少なくとも1つの矩形波信号のエッジが検出されない場合にも、エンコーダ3が異常であることを示す異常検出信号を出力してもよい。この場合、回転体制御装置200内の制御部32による回転体2の回転の制御に用いられるA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に関する情報を流用すればよい。
表示部31は、評価部21による評価結果を表示する。作業者は、表示部31による表示内容に基づき、エンコーダ3の異常の有無を容易に把握することができる。
図25に示す例では、エンコーダ3が各相の矩形波信号をそのままエンコーダ3の外部に出力するタイプとしたので、制御部32は、エンコーダ3の信号変換部12から出力されたA相矩形波信号、B相矩形波信号及びZ相矩形波信号に基づいて、回転体2の回転を制御する。なお、エンコーダ3が内部で回転体の回転位置や回転速度などの回転情報を計算するタイプである場合は、制御部32は、エンコーダ3からシリアル通信にて受信した回転情報に基づき回転体2の回転を制御する。
上述した信号変換部12、エッジ検出部13、計数部14、評価部15、回転方向検出部16、回転速度検出部17、位相情報取得部18、評価部21、及び制御部32は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、LSI、FPGA、MPU、及びDSPなどの演算処理装置を、このソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、信号変換部12、エッジ検出部13、計数部14、評価部15、回転方向検出部16、回転速度検出部17、位相情報取得部18、評価部21、及び制御部32を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
また、送信部20及び受信部33は、シリアル通信インタフェースを有する回路にて構成される。表示部31は、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイなどによって構成されるが、計算装置に付属のディスプレイであってもよく、あるいは計算装置とは独立したパソコン、携帯端末及びタッチパネルなどのディスプレイなどであってもよい。記憶部19は、LSIやFPGAなどの集積回路内の記憶領域にて構成される。また、記憶部19は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成されてもよい。