JP7449137B2 - アンテナ素子及びアレイアンテナ - Google Patents

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Description

本開示は、アンテナ素子及びアレイアンテナに関する。
特許文献1には、誘電体基板に地導体と放射導体と給電導体とを有するマイクロストリップアンテナが記載されている。
特開2001-267833号公報
誘電体基板に地導体と放射導体と給電導体とを有するアンテナ素子においては、広帯域化などの周波数特性の要求、電波の偏波特性の要求、素子サイズの要求など、幾つかの要求を満たすために、アンテナ素子のインピーダンス整合が困難になる場合がある。
本開示は、インピーダンスを調整できる設計自由度が高く、インピーダンス整合により特性が向上したアンテナ素子及びアレイアンテナを提供することを目的とする。
(1)
本開示の一つの態様のアンテナ素子は、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する第1誘電体層と、
前記第1面に位置する放射導体と、
前記第2面に位置する地導体と、
前記第2面から前記第1面にかけて位置し前記放射導体に接続された給電導体と、
前記第2面と前記第1面との間で前記第1面に沿った方向に延在しかつ前記給電導体に接続された第1導体と、
を備え、
平面視において、前記第2面から前記第1面にかけて位置する前記給電導体が前記放射導体と重なり、
前記第1導体は、膜状であり、前記第1面に沿った第1方向における最小幅、並びに、前記第1面に沿いかつ前記第1方向に直交する第2方向の最小幅がともに、前記第1面に沿った方向における前記給電導体の最大幅よりも長い領域を有し、
前記第1導体と前記給電導体との接続部を通る、いずれの向きの縦断面においても、前記接続部に連続する前記第1導体の平面方向における長さが、前記第1誘電体層に設けられるランドの最大幅の倍以上になるように、前記第1導体は前記接続部から平面方向に延在しており、
前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記第1導体における前記放射導体と重なる領域は、前記第1導体における前記放射導体と重ならない領域よりも大きい
(2)
本開示のもう一つの態様のアンテナ素子は、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する第1誘電体層と、
前記第1面に位置する放射導体と、
前記第2面に位置する地導体と、
前記第2面から前記第1面にかけて位置し前記放射導体に接続された給電導体と、
前記第2面と前記第1面との間で前記第1面に沿った方向に延在しかつ前記給電導体に接続された第1導体と、
を備え、
平面視において、前記第2面から前記第1面にかけて位置する前記給電導体が前記放射導体と重なり、
前記第1導体は、膜状であり、前記第1面に沿った第1方向における最小幅、並びに、前記第1面に沿いかつ前記第1方向に直交する第2方向の最小幅がともに、前記第1面に沿った方向における前記給電導体の最大幅よりも長い領域を有し、
前記第1導体の平面形状は、矩形状、又は円形状、又は楕円状であり、
前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記第1導体における前記放射導体と重なる領域は、前記第1導体における前記放射導体と重ならない領域よりも大きい
(3)
本開示のもう一つの態様のアンテナ素子は、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する第1誘電体層と、
前記第1面に位置する放射導体と、
前記第2面に位置する地導体と、
前記第2面から前記第1面にかけて位置し前記放射導体に接続された給電導体と、
前記第2面と前記第1面との間で前記第1面に沿った方向に延在しかつ前記給電導体に接続された第1導体と、
を備え、
平面視において、前記第2面から前記第1面にかけて位置する前記給電導体が前記放射導体と重なり、
前記第1導体は、膜状であり、前記第1面に沿った第1方向における最小幅、並びに、前記第1面に沿いかつ前記第1方向に直交する第2方向の最小幅がともに、前記第1面に沿った方向における前記給電導体の最大幅よりも長い領域を有し、
前記第1導体は、前記放射導体と相似な平面形状を有する。
本開示のアレイアンテナは、
上記の複数のアンテナ素子を備える。
本開示によれば、インピーダンスを調整できる設計自由度が高く、インピーダンス整合により特性が向上されたアンテナ素子及びアレイアンテナを提供できる。
本開示の実施形態に係るアンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、C-C線における断面図(c)である。 実施形態のアンテナ素子の特性を示す反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)である。 第1導体を有さない比較例のアンテナ素子の反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)である。 第1導体の調整可能な一つの設計パラメータを説明する図(a)ともう一つの設計パラメータを説明する図(b)である。 地導体と第1導体との距離Dに応じたアンテナ特性の変化を示す図であり、D=0.11mmであるときの反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)、D=0.14mmであるときの反射損失グラフ(c)とSパラメータチャート(d)である。 地導体と第1導体との距離Dに応じたアンテナ特性の変化を示す図であり、D=0.17mmであるときの反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)、D=0.2mmであるときの反射損失グラフ(c)とSパラメータチャート(d)である。 第1導体の幅Wに応じたアンテナ特性の変化を示す図であり、W=0.2mmのときの反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)、W=0.4mmのときの反射損失グラフ(c)とSパラメータチャート(d)である。 第1導体の幅Wに応じたアンテナ特性の変化を示す図であり、W=0.6mmのときの反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)、W=0.8mmのときの反射損失グラフ(c)とSパラメータチャート(d)である。 第1導体の平面方向の設計パラメータによるアンテナ特性の変化を示す図であり、第1例の構造図(a)とSパラメータチャート(b)、第2例の構造図(c)とSパラメータチャート(d)である。 第1導体の平面方向の設計パラメータによるアンテナ特性の変化を示す図であり、第3例の構造図(a)とSパラメータチャート(b)である。 第1導体を有さない比較例のアンテナ素子の平面図(a)及び放射特性図(b)と、放射導体と相似形状の第1導体を有する実施形態のアンテナ素子の平面図(c)及び放射特性図(d)である。 第1導体とは異なる導体要素でインピーダンス整合した比較例の構造図(a)及び放射特性図(b)と、実施形態のアンテナ素子の放射特性図(c)である。 第1導体の先端のパターンを変更した第1比較例の構造図(a)及びSパラメータチャート(b)と、第2比較例の構造図(c)及びSパラメータチャート(d)である。 シングルパッチ型の比較例の構造図(a)及び反射損失グラフ(b)とシングルパッチ型の実施形態のアンテナ素子の構造図(c)及び反射損失グラフ(d)である。 スタックドパッチ型の比較例の構造図(a)及び反射損失グラフ(b)とスタックドパッチ型の実施形態のアンテナ素子の構造図(c)及び反射損失グラフ(d)である。 本開示の実施形態に係るアレイアンテナを示す斜視図(a)とB-B線における断面図(b)である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本開示の実施形態に係るアンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、C-C線における断面図(c)である。以下、図1のZ方向を下方、Z方向と垂直なX方向及びY方向を平面方向として説明する。Z方向は、第1面101に垂直な方向であり、X方向及びY方向は、第1面101に沿った互いに直交する2つの方向である。本明細書における上下左右の方向は、アンテナ素子1の使用時における上下左右の方向と異なっていてもよい。
本実施形態のアンテナ素子1は、誘電体基板10と、エアキャビティ(中空部)15と、放射導体21と、無給電放射導体22と、地導体23と、給電導体24と、インピーダンス調整用の第1導体25と、を備える。
誘電体基板10は、第1誘電体層11及び第2誘電体層12が上下方向に積層されて構成される。誘電体基板10は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミック焼結体、ムライト質焼結体又は窒化アルミニウム質焼結体等のセラミック材料から成る誘電体材料であってもよい。第1誘電体層11は、第1面101と、第1面101の反対側の第2面102とを有する。第2誘電体層12は、第3面103と、第3面103とは反対側の第4面104とを有する。第1面101と第4面104とが対向しかつ結合されている。第2面102~第4面104は、第1面101と平行であってもよい。
エアキャビティ15は、第2誘電体層12内において、放射導体21と無給電放射導体22との間に位置する空洞であり、アンテナ特性の広帯域化に寄与する。エアキャビティ15は平面方向に広がる膜状の形態であってもよい。誘電体基板10が複数のエアキャビティを有し、複数のエアキャビティが放射導体21と無給電放射導体22との間で平面方向に並んで配置されていてもよい。エアキャビティ15の一部が第4面104に接し、第2誘電体層12を単体で見たときに、エアキャビティ15の一部が第4面104に開口していてもよい。
放射導体21は、第1面101に位置する膜状の導体である。無給電放射導体22は、第3面103に位置する膜状の導体である。放射導体21と無給電放射導体22とは上下方向に対向するように配置される。放射導体21及び無給電放射導体22の平面方向の形状は、正方形又は長方形などの矩形であってもよい。
地導体23は、第2面102に位置する膜状の導体である。地導体23は、給電導体24を通す、あるいは、その一端部を露出させる貫通孔23hを有する。地導体23と放射導体21とは上下方向に対向する。上下方向に透視したとき、地導体23は放射導体21及び無給電放射導体22を内包する大きさを有していてもよい。
給電導体24は、第1誘電体層11内において、地導体23の貫通孔23hから放射導体21の高さにかけて位置する。給電導体24は、上下方向に延在するビア導体であってもよい。給電導体24は、例えばアンテナ素子1の電波の偏波特性の要求から放射導体21の中心から-X方向に離れた位置に接続されている。
第1導体25は、第1誘電体層11内に位置し、給電導体24の上下方向の途中に接続されている。第1導体25は、平面方向に広がる膜状導体であってもよい。給電導体24は放射導体21及び地導体23から離間され、地導体23と電気的に接続されていない。また、第1導体25は、給電導体24以外の導体を介して放射導体21と電気的に接続されていない。第1導体25は、平面形状、大きさ、上下方向の位置、平面方向の位置について設計自由度があり、これらの設計自由度によって、放射導体21に付加される容量成分及びインダクタンス成分を変化させ、アンテナ素子1のインピーダンスを調整できる。
第1導体25は、平面方向において第1導体25の中心から離れた箇所が給電導体24に接続されてもよいし、第1導体25の中心が給電導体24に接続されてもよい。第1導体25は、平面方向における一端又は平面形状の縁が給電導体24に接続されてもよい。
上下方向に透視したとき、第1導体25は、放射導体21に包含されてもよいし、第1導体25の一部が放射導体21に重なり、残りの部分が放射導体21と重ならなくてもよい。放射導体21と重なる領域の面積が、放射導体21と重ならない領域の面積よりも大きくてもよい。
上下方向に透視したとき、第1導体25は、放射導体21と無給電放射導体22とを合わせた領域に包含されてもよいし、第1導体25の一部が上記合わせた領域に重なり、残りの部分が上記合わせた領域に重ならなくてもよい。上記合わせた領域と重なる領域の面積が、重ならない領域の面積よりも大きくてもよい。
上下方向に透視したとき、第1導体25は、給電導体24から放射導体21の中心に向かって延在する形態であってもよいし、給電導体24から放射導体21の中心とは逆方に向かって延在する形態であってもよいし、両方に延在する形態であってもよい。第1導体25は、第1誘電体層11又は第2誘電体層12に形成されるランドと比較して、平面方向の延在量は十分に大きくてもよい。
図2は、実施形態のアンテナ素子の特性を示す反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)である。図3は、第1導体を有さない比較例のアンテナ素子の反射損失グラフ(a)とSパラメータチャート(b)である。図2(b)並びに以下の図面に示すSパラメータチャートは、中心点を目標インピーダンス50Ωとしたスミスチャート上にプロットされたアンテナ素子のSパラメータ(Scattering parameter)を示す。ここで紹介する比較例のアンテナ素子及び実施形態のアンテナ素子1は、例えば26GHz~30GHzで反射損失を-10dB以下とするといった広帯域化の要求、電波の偏波特性の要求、素子サイズの要求など、幾つかの要求を満たすため、各導体要素の形状、サイズ及び相対位置に制約を受ける。そして、このような制約により各導体要素の設計自由度が減少すると、アンテナ素子のインピーダンスを十分に整合できなくなる場合がある。
比較例のアンテナ素子は、上記のような制約から、図3(b)に示すように、インダクタンス成分が大きい方にずれ、図3(a)に示すように、使用周波数帯(26GHz~30GHz)の中央で反射損失が-10dBを超えてしまった例である。
一方、実施形態のアンテナ素子1によれば、上記のような制約があっても、第1導体25により、アンテナ素子1のインピーダンスを調整できる設計自由度が残される。したがって、例えば第1導体25の設計パラメータを適宜決定することで、図2(b)に示すように、アンテナ素子1のインピーダンスを整合し、使用周波数帯(26GHz~30GHz)の全域で反射損失が-10dB以下となる良好なアンテナ特性を達成できる。
<第1導体の設計パラメータ>
続いて、第1導体25について調整可能な幾つかの設計パラメータと、各設計パラメータの調整によるインピーダンス変化について説明する。
調整可能な第1導体25の設計パラメータには、先ず、図4(a)に示すように、第1導体25と地導体23との距離Dが含まれる。図5(a)及び(b)、図5(c)及び(d)、図6(a)及び(b)、図6(c)及び(d)は、距離Dを0.11mm、0.14mm、0.17mm、0.2mmとそれぞれ変化させた場合のSパラメータと反射損失とを示す。距離Dを調整することで、第1導体25の容量成分の大きさが変化し、図5及び図6のSパラメータチャートに示されるように、容量成分の増減に応じたインピーダンスの調整が可能となる。そして、図5及び図6の反射損失グラフに示すように、インピーダンス整合の度合に応じて反射損失が変化する。なお、図5及び図6の例では、距離Dを0.14mmとしたときに、反射損失が良好となっているが、他の導体の各設計パラメータの値、並びに第1導体25の他の設計パラメータの値により、アンテナ特性が良好となる距離Dの値は変化する。
調整可能な第1導体25の設計パラメータには、図4(b)に示すように、第1導体25のX方向における幅Wが含まれる。図7(a)及び(b)、図7(c)及び(d)、図8(a)及び(b)、図8(c)及び(d)は、幅Wを0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mmと変化させた場合のSパラメータと反射損失とを示す。幅Wを調整することで、第1導体25から得られる容量成分とインダクタンス成分との大きさが変化し、図7及び図8のSパラメータチャートに示されるように、容量成分及びインダクタンス成分の増減に応じたインピーダンスの調整が可能となる。そして、図7及び図8の反射損失グラフに示すように、インピーダンス整合の度合に応じて反射損失が変化する。なお、図7及び図8の例では、幅Wを0.6mmとしたときに、反射損失が良好となっているが、他の導体の各設計パラメータの値、並びに第1導体25の他の設計パラメータの値により、アンテナ特性が良好となる幅Wの値は変化する。
図9及び図10は、第1導体の平面方向の設計パラメータによるアンテナ特性の変化を説明する図である。図9(a)と図9(c)に示すように、上下方向に透視したときの第1導体25の配置によっても、アンテナ素子1のインピーダンスを変化させることができる。第1導体25が給電導体24から放射導体21の中央へ向く方へ延在する配置(図9(a))に比べて、逆方へ延在する配置(図9(c))のほうが、図9(b)、図9(d)の比較から示されるように、インダクタンス成分を増加又は容量成分を減らす作用が得られる。
図10(a)は、図9(a)の第1導体25と同一面積で、Y方向の幅を大きく、X方向の幅を小さくした例である。同一面積とすることで、第1導体25の容量成分は変わらないが、X方向の幅が小さくなることで、図9(b)、図10(b)の比較から示されるように、インダクタンス成分を減らす作用が得られる。
なお、第1導体25の平面形状は、正方形又は長方形などの矩形に限られず、円形、楕円を含む様々な形状に変更可能であり、このような形状の選択によっても、アンテナ素子1のインピーダンスを調整することができる。
上述した、第1導体25の複数の設計パラメータを調整することで、容量成分とインダクタンス成分とを適宜に調整して、多くの場合、アンテナ素子1のインピーダンスを整合できる。
<第1導体の平面形状>
上述のように、第1導体25の幾つかの設計パラメータを調整して、インピーダンス整合を達成した場合でも、まだ、第1導体25の設計パラメータには自由度が残る。この自由度を利用することで、アンテナ素子1のインピーダンス整合を達成しつつ、異なる平面形状の第1導体25を採用することができる。
第1導体25の平面形状は、放射導体21が正方形など矩形状の場合に、放射導体21の相似形状としてもよい。さらに、第1導体25のZ軸を回転軸とする回転方向の向きは、放射導体21の向きと同一であってもよい。さらに、第1導体25を放射導体21の相似形状で同一の向きとすることで、放射導体21に生じる電界分布と同様に第1導体25に電界が分布し、アンテナ利得を向上できる。
図11は、第1導体を有さない比較例のアンテナ素子の平面図(a)及び放射特性図(b)と、第1導体を放射導体と相似形状にした実施形態のアンテナ素子の平面図(c)及び放射特性図(d)である。放射特性は、比較例の構造と実施形態の構造とでインピーダンスが同等に整合される条件でシミュレーションを行った結果である。第1導体が無い比較例のアンテナ素子81では、アンテナ利得の最高値はZ方向の利得で5.77dBであったのに対し、放射導体21と相似形状の第1導体25を有するアンテナ素子1では、アンテナ利得の最高値はZ方向の利得で5.93dBであった。
また、図示は省略するが、放射導体21が矩形である一方、第1導体25が円形であるアンテナ素子1では、アンテナ利得の最高値はZ方向の利得で5.88dBであった。また、第1導体25が放射導体21のX方向の幅の半分以上ある長尺な長方形としたアンテナ素子1では、アンテナ利得の最高値は5.83dBであった。このような結果から、第1導体25を放射導体21の相似形状とすることで、アンテナ利得が向上することが示される。
<第1導体の干渉と放射作用>
図12は、第1導体とは異なる導体要素でインピーダンス整合した比較例の構造図(a)及び放射特性図(b)と、実施形態のアンテナ素子の放射特性図(c)である。図12(a)の比較例のアンテナ素子82は、地導体23より下方に位置する配線層13に、インピーダンス調整用の導体31を追加した例である。比較例のアンテナ素子82に示すように、配線層13において給電導体24に導体31を接続しても、導体31の設計パラメータによりアンテナ素子82のインピーダンスを調整できる場合がある。しかし、配線層13に導体31を付加すると、配線層13において導体31による平面方向への突出量が大きくなる。したがって、複数のアンテナ素子を同一基板内に並列させる場合、導体31による突出が、隣り合うアンテナ素子と干渉してしまう。そして、干渉を避けるために隣り合うアンテナ素子82との間隔を大きくすると、複数のアンテナ素子82の高密度化を妨げてしまう。
一方、本実施形態のアンテナ素子1では、放射導体21と地導体23との間に第1導体25が位置するので、第1導体25が隣り合うアンテナ素子1と干渉する恐れが低く、複数のアンテナ素子1の高密度化を妨げない。
また、比較例のアンテナ素子82のように、配線層13に導体31を追加した場合、導体31は地導体23に遮られて電界を放射しない。一方、本実施形態のアンテナ素子1では、第1導体25からの電界の放射作用が得られ、当該作用によりアンテナ利得を向上できる。
図12(b)は、配線層13にインピーダンス調整可能な導体31が追加された比較例のアンテナ素子82の放射特性であり、図12(c)は、導体31を追加する代わりに第1導体25が追加された本実施形態のアンテナ素子1の放射特性であり、共にインピーダンスが同等に整合された構成についてのシミュレーション結果である。実施形態のアンテナ利得の最高値は6.31dBであるのに対して、比較例のアンテナ利得の最高値は6.13dBであった。このような結果から、第1導体25が電界放射作用を有し、当該作用によりアンテナ利得が向上することが示される。
<第1導体の先端のパターン>
第1導体25によりアンテナ素子1のインピーダンスを整合させるには、第1導体25は、地導体23と放射導体21との両方から離間し、第1導体25は地導体23と電気的に接続されず、放射導体21とは給電導体24を介して電気的に接続された構成としてもよい。
図13は、第1導体の先端のパターンを変更した第1比較例の構造図(a)及びSパラメータチャート(b)と、第2比較例の構造図(c)及びSパラメータチャート(d)である。第1比較例のアンテナ素子83のように、第1導体25の先端を放射導体21と接続ビア35を介して接続すると、様々に第1導体25の設計パラメータを調整して最適化しても、図13(b)に示すように、インピーダンスの不整合を修正することはできなかった。
また、第2比較例のアンテナ素子84ように、第1導体25の先端を地導体23と接続ビア36を介して接続すると、様々に第1導体25の設計パラメータを調整して最適化しても、図13(d)に示すように、インピーダンスは不整合となった。これらの結果から、第1導体25を地導体23と放射導体21との両方から離間させることで、アンテナ素子1のインピーダンスが調整容易になることが示される。
<他形態のアンテナ素子の例>
上記の例では、放射導体21と無給電放射導体22とエアキャビティ15とを有するアンテナ素子1について説明したが、第1導体25は、他の形態のアンテナ素子にも適用できる。
図14は、シングルパッチ型の比較例の構造図(a)及び反射損失グラフ(b)とシングルパッチ型の実施形態のアンテナ素子の構造図(c)及び反射損失グラフ(d)である。図15は、スタックドパッチ型の比較例の構造図(a)及び反射損失グラフ(b)とスタックドパッチ型の実施形態のアンテナ素子の構造図(c)及び反射損失グラフ(d)である。
図14(c)に示す実施形態のアンテナ素子1Aは、シングルパッチ型のアンテナ素子であり、第2誘電体層12、無給電放射導体22及びエアキャビティ15を有さない他は、図1のアンテナ素子1と同様である。シングルパッチ型では、放射導体21がアンテナ素子1の上面に露出してもよい。
図14(a)の比較例のアンテナ素子85は、第1導体25を有さない他は、図14(c)のアンテナ素子1Aと同様に構成される。比較例のアンテナ素子85には、放射導体21のサイズと形状、放射導体21への給電導体24の接続位置、放射導体21と地導体23との距離、誘電体基板10の誘電率等の設計パラメータがある。図14(b)の特性は、幾つかの要求によりアンテナ素子85の設計パラメータに制約が生じたため、アンテナ素子85を十分にインピーダンス整合されず、共振周波数での反射損失がやや高くなった例である。
実施形態のアンテナ素子1Aは、比較例と同様に設計パラメータの制約を受けた場合でも、第1導体25の設計パラメータを適宜調整して、インピーダンスを整合できる。図14(d)の特性に示すように、比較例と比べて共振周波数でのインピーダンスが十分に整合され、共振周波数での反射損失がより低減されている。
図15(c)に示す実施形態のアンテナ素子1Bは、スタックドパッチ型のアンテナ素子であり、エアキャビティ15を有さない他は、図1のアンテナ素子1と同様である。図15(a)に示す比較例のアンテナ素子86は、第1導体25を有さず、幾つかの要求により設計パラメータに制約を受けた場合に、十分にインピーダンス整合されず、図15(b)に示すように、反射損失がやや高くなった例である。一方、実施形態のアンテナ素子1Bでは、比較例と同様に幾つかの設計パラメータに制約を受けた場合でも、第1導体25の設計パラメータを適宜調整することで、インピーダンスを十分に整合し、図15(d)に示すように、比較例と比べて反射損失が低減されたアンテナ特性が得られる。
(アレイアンテナ)
図16は、本開示の実施形態に係るアレイアンテナを示す斜視図(a)とB-B線における断面図(b)である。本実施形態のアレイアンテナ100は、複数のアンテナ素子1(又は1A、1B)を備える。複数のアンテナ素子1はアレイ用の大型の誘電体基板110にマトリックス状など縦横に配列されてもよいし、どのように配列されていてもよい。アレイアンテナ100は、送信信号又は受信信号を入出力する集積回路200が接続される電極130と、電極130と各アンテナ素子1との間で信号を伝送する伝送路120とを有する。伝送路120は各アンテナ素子1の給電導体24でもある。アレイアンテナ100には、伝送路120の信号周波数を抽出するフィルタ回路が搭載されてもよい。なお、図16のアレイアンテナ100は、1つの誘電体基板110に複数のアンテナ素子1が形成されることで、複数のアンテナ素子1が一体化された例であるが、アンテナアレイは、1つのアレイ基板に複数のアンテナ素子1が搭載されることで、複数のアンテナ素子1が一体化された構成としてもよい。さらに、上述のようなアレイアンテナが1つのアレイ基板に複数搭載されて、より多くのアンテナ素子を有するアレイアンテナが構成されてもよい。集積回路200が搭載される前の構成をアレイアンテナと呼び、集積回路200が搭載された構成をアンテナモジュールと呼んでもよい。
以上のように、本実施形態のアンテナ素子1、1A、1Bによれば、放射導体21が位置する第1面101と、地導体23が位置する第2面102との間で、第1面に沿った方向に延在しかつ給電導体24に接続された第1導体25を備える。第1導体25は、アンテナ素子1、1A、1Bのインピーダンスを調整可能な設計自由度を有する。したがって、幾つかの要求で、他の導体要素の設計パラメータが制約を受け、インピーダンス整合できない場合でも、第1導体25の設計パラメータを調整して、アンテナ素子1、1A、1Bのインピーダンスを整合できる。そして、アンテナ素子1、1A、1Bの特性を向上できる。
さらに、本実施形態のアンテナ素子1、1A、1Bによれば、第1導体25は放射導体21と地導体23との両方から離間している。したがって、第1導体25により、容量成分とインダクタンス成分とを給電導体24に付加でき、アンテナ素子1、1A、1Bのインピーダンス調整に利用できる。
さらに、本実施形態のアンテナ素子1、1A、1Bによれば、第1面101に垂直な方向から透視したときに、第1導体25の中心と異なる位置に給電導体24が接続されることで、第1導体25の設計自由度をより向上できる。
さらに、本実施形態のアンテナ素子1、1A、1Bによれば、第1面101に垂直な方向から透視したときに、第1導体25の放射導体21と重なる領域が、重ならない領域よりも大きい。また、本実施形態のアンテナ素子1、1Bによれば、第1面101に垂直な方向から透視したときに、第1導体における放射導体21又は無給電放射導体22と重なる領域が、重ならない領域よりも大きい。したがって、放射導体21又は無給電放射導体22に対して、第1導体25が平面方向にはみ出す量が少なく、複数のアンテナ素子1、1A、1Bを並列した場合に、第1導体25が隣り合うアンテナ素子1、1A、1Bと干渉することを抑制できる。
さらに、本実施形態のアンテナ素子1によれば、放射導体21と無給電放射導体22との間にエアキャビティ15を有し、第1面101に垂直な方向から透視したときに、給電導体24は放射導体21の中心と異なる位置に接続されている。このような構成により、広い帯域に渡ってアンテナ特性を向上でき、使用周波数帯の広帯域化を図ることができる。
本実施形態のアレイアンテナ100によれば、各アンテナ素子1、1A、1Bによりアンテナ特性を向上できる。さらに、本実施形態のアレイアンテナ100によれば、高い密度で複数のアンテナ素子1、1A、1Bを配列することができる。
以上、本開示の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られるものでない。例えば、上記実施形態では、第1導体が膜状で平面方向に延在する構成と説明したが、第1導体は、線状であったり、ブロック状であってもよい。また、第1導体は、平面方向と上下方向とに斜めに延在する構成としてもよいし、曲線状又は曲面状に曲がって延在してもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1、1A、1B アンテナ素子
10、110 誘電体基板
11 第1誘電体層
12 第2誘電体層
13 配線層
15 エアキャビティ
21 放射導体
22 無給電放射導体
23 地導体
24 給電導体
25 第1導体
101 第1面
102 第2面

Claims (10)

  1. 第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する第1誘電体層と、
    前記第1面に位置する放射導体と、
    前記第2面に位置する地導体と、
    前記第2面から前記第1面にかけて位置し前記放射導体に接続された給電導体と、
    前記第2面と前記第1面との間で前記第1面に沿った方向に延在しかつ前記給電導体に接続された第1導体と、
    を備え、
    平面視において、前記第2面から前記第1面にかけて位置する前記給電導体が前記放射導体と重なり、
    前記第1導体は、膜状であり、前記第1面に沿った第1方向における最小幅、並びに、前記第1面に沿いかつ前記第1方向に直交する第2方向の最小幅がともに、前記第1面に沿った方向における前記給電導体の最大幅よりも長い領域を有し、
    前記第1導体と前記給電導体との接続部を通る、いずれの向きの縦断面においても、前記接続部に連続する前記第1導体の平面方向における長さが、前記第1誘電体層に設けられるランドの最大幅の倍以上になるように、前記第1導体は前記接続部から平面方向に延在しており、
    前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記第1導体における前記放射導体と重なる領域は、前記第1導体における前記放射導体と重ならない領域よりも大きいアンテナ素子。
  2. 第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する第1誘電体層と、
    前記第1面に位置する放射導体と、
    前記第2面に位置する地導体と、
    前記第2面から前記第1面にかけて位置し前記放射導体に接続された給電導体と、
    前記第2面と前記第1面との間で前記第1面に沿った方向に延在しかつ前記給電導体に接続された第1導体と、
    を備え、
    平面視において、前記第2面から前記第1面にかけて位置する前記給電導体が前記放射導体と重なり、
    前記第1導体は、膜状であり、前記第1面に沿った第1方向における最小幅、並びに、前記第1面に沿いかつ前記第1方向に直交する第2方向の最小幅がともに、前記第1面に沿った方向における前記給電導体の最大幅よりも長い領域を有し、
    前記第1導体の平面形状は、矩形状、又は円形状、又は楕円状であり、
    前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記第1導体における前記放射導体と重なる領域は、前記第1導体における前記放射導体と重ならない領域よりも大きいアンテナ素子。
  3. 第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する第1誘電体層と、
    前記第1面に位置する放射導体と、
    前記第2面に位置する地導体と、
    前記第2面から前記第1面にかけて位置し前記放射導体に接続された給電導体と、
    前記第2面と前記第1面との間で前記第1面に沿った方向に延在しかつ前記給電導体に接続された第1導体と、
    を備え、
    平面視において、前記第2面から前記第1面にかけて位置する前記給電導体が前記放射導体と重なり、
    前記第1導体は、膜状であり、前記第1面に沿った第1方向における最小幅、並びに、前記第1面に沿いかつ前記第1方向に直交する第2方向の最小幅がともに、前記第1面に沿った方向における前記給電導体の最大幅よりも長い領域を有し、
    前記第1導体は、前記放射導体と相似な平面形状を有するアンテナ素子。
  4. 前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記第1導体における前記放射導体と重なる領域は、前記第1導体における前記放射導体と重ならない領域よりも大きい、
    請求項に記載のアンテナ素子。
  5. 前記給電導体は前記第2面から前記第1面にかけて直線状に延在する、
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
  6. 前記第1導体は前記放射導体及び前記地導体の両方から離間している、
    請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
  7. 前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記給電導体は前記第1導体の中心から離れた部位に接続されている、
    請求項1から請求項のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
  8. 前記第1誘電体層と重なった第2誘電体層と、
    前記第2誘電体層を挟んで前記放射導体と対向する無給電放射導体と、
    を備え、
    前記第1面に垂直な方向から透視したときに、前記第1導体における前記無給電放射導体又は前記放射導体と重なる領域は、前記第1導体における前記無給電放射導体及び前記放射導体の両方と重ならない領域よりも大きい、
    請求項1から請求項のいずれか一項に記載のアンテナ素子。
  9. 前記第1面に垂直な方向から透視したときに、
    前記給電導体は、前記放射導体の中心から離れた部位に接続され、
    前記第2誘電体層は、前記放射導体と前記無給電放射導体との間に位置する中空部を有する、
    請求項記載のアンテナ素子。
  10. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の複数のアンテナ素子を備えるアレイアンテナ。
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