図1は、本発明の実施例1の保険設計支援システム101の構成の一例を示すブロック図である。
保険設計支援システム101は、コンピュータシステムであり、例えばキーボード及びマウスなどの入力部102、表示データを出力するディスプレイを表す出力部103、CPU(Central Processing Unit)104、メモリ105、通信部108及び記憶媒体106を備えている。
保険設計支援システム101は、査定基準変換部111、差分分析実行部112、改定箇所情報抽出部113、改定量算出部114及び総リスク評価部115を有している。査定基準変換部111~総リスク評価部115の各部の機能は、CPU104が記憶媒体106に格納されたプログラムを実行することによって実現される。これらのプログラムがCPU104によって実行されるときに、それらの少なくとも一部が必要に応じてメモリ105にコピーされてもよい。
保険設計支援システム101にはデータベース107が接続される。データベース107は、受診歴情報管理部120、健診情報管理部121、属性情報管理部122、査定基準情報管理部123、リスクモデル情報管理部124及び評価結果情報管理部125を有する。
データベース107は、例えば、ネットワークを介して保険設計支援システム101に接続された記憶システムに格納されもよいし、保険設計支援システム101内に(例えば記憶媒体106に格納されることによって)内蔵されてもよい。データベース107が保険設計支援システム101の外部のシステムに格納される場合、その内容の少なくとも一部が必要に応じて記憶媒体106又はメモリ105にコピーされてもよい。また、入力部102、出力部103、CPU104、メモリ105及び記憶媒体106を有する計算機と、データベース107とを含むシステム全体を保険設計支援システムと呼んでもよい。
また、保険設計支援システム101は、例えば図1に示す構成を有する一つの計算機によって実現されてもよいが、複数の計算機によって実現されてもよい。例えば、前述したデータベース107が保持する情報が、複数の記憶媒体106又はメモリ105に分散して格納されてもよいし、前述した保険設計支援システム101の機能が、複数の計算機の複数のCPU104によって分散して実行されてもよい。
図2は、本発明の実施例1の受診歴情報管理部120が管理する受診基本情報200の一例を示す説明図である。
受診基本情報200は、各健康保険加入者が医療機関において受診した履歴の情報である。この情報は、例えばレセプトから収集されてもよいが、それに限らず、誰がどの医療機関を利用してどのような診療行為を受けたのかがわかる情報であれば、利用することができる。ここでは例としてレセプトから収集された情報を説明する。後述する傷病名情報300(図3)等、受診歴情報管理部120が管理する他の情報についても同様である。
受診基本情報200は、健康保険(健保)の加入者を特定する健保加入者ID201、レセプトを特定するための検索番号202、診療を行った医療機関を示す医療機関コード203、レセプトの発行された月を示す診療年月204、レセプトに記載されている医療費の情報を示す合計点数205、受診の種別(例えば入院又は外来など)の情報を示す受診種別206、及び、診療に要した日数を示す診療日数207を含む。この情報によって、例えばレセプト毎に集計、分析を行うことができるという効果がある。
図3は、本発明の実施例1の受診歴情報管理部120が管理する傷病名情報300の一例を示す説明図である。
傷病名情報300は、それぞれのレセプトから抽出された傷病に関する情報であり、レセプトを特定するための検索番号202、治療対象となった傷病を示す傷病名302、傷病名に対応する傷病コード303、複数の疾病の中で最も医療資源を投入した疾病に付与される主傷病フラグ304、及び、当該傷病名に罹患しているかどうかを確認するために検査を実施し、未確定である状態などを示す疑いフラグ305を含む。図3の例では、主傷病フラグ304の値「1」は、当該傷病が主傷病であることを示す。また、疑いフラグ305の値「1」は、当該傷病が疑われたことを示す。
例えば一人の患者が1カ月間に複数の病気のために診療を受けた場合、傷病名302、傷病コード303、主傷病フラグ304及び疑いフラグ305の複数の組が同じ検索番号202に対応付けられる。また、傷病名情報300の各レコードは、検索番号202を介して健保加入者ID201と対応付けられる。傷病名情報300を用いることによって、傷病別に分析することが可能になるという効果がある。
図4は、本発明の実施例1の受診歴情報管理部120が管理する診療行為情報400の一例を示す説明図である。
診療行為情報400は、それぞれのレセプトから抽出された、それぞれのレセプトに対応する月に患者に対して施された診療行為に関する情報であり、レセプトを特定するための検索番号202、患者に対して施された診療行為を示す診療行為名称402、診療行為に対応する診療行為コード403、診療行為ごとに定められた診療行為点数404、及び、診療行為が行われた日を示す1日の情報405から31日の情報408を含む。診療行為情報400の各レコードは、検索番号202を介して健保加入者ID201と対応付けられる。
診療行為が行われた日を示す1日の情報405から31日の情報408は、その月の1日から31日までの各日に、診療行為名称402が示す診療行為が行われたか否かを示す情報である。図4には例として1日の情報405、2日の情報406、3日の情報407及び31日の情報408を示すが、実際には4日の情報から30日の情報も含まれる。この情報によって、診療行為別に分析することが可能になるという効果がある。
図5は、本発明の実施例1の受診歴情報管理部120が管理する受療状況情報500の一例を示す説明図である。
受療状況情報500は、受診歴情報管理部120が管理する受診基本情報200、傷病名情報300及び診療行為情報400を健保加入者ごとにまとめた情報であり、健保加入者ID501、生活習慣病受診有無502、生活習慣病入院有無503、生活習慣病入院日数504及び生活習慣病医療費505を含む。この情報は、リスク査定モデルの生成に利用される。
生活習慣病受診有無502及び生活習慣病入院有無503は、各健保加入者に、いわゆる生活習慣病と分類される傷病の受診歴及び入院歴があるかを示す情報であり、受診基本情報200及び傷病名情報300に基づいて生成される。例えば、生活習慣病の受診歴又は入院歴がある場合に、生活習慣病受診有無502又は生活習慣病入院有無503の値が1となる。
生活習慣病入院日数504は、各健保加入者の生活習慣病による入院日数を示す情報であり、受診基本情報200、傷病名情報300及び診療行為情報400に基づいて生成される。
生活習慣病医療費505は、各健保加入者の生活習慣病による医療費を示す情報であり、受診基本情報200、傷病名情報300及び診療行為情報400に基づいて生成される。
上記の例は、受診歴情報管理部120が管理する情報を生活習慣病の観点でまとめたものであるが、その他の観点でまとめた情報を生成してもよい。
図6は、本発明の実施例1の健診情報管理部121が管理する健診情報600の一例を示す説明図である。
健診情報600は、健保加入者が受信した健康診断(健診)の結果に関する情報であり、健保加入者ID201、健診を受診した年度を示す健診受診年度602、BMI(Body Mass Index)603、収縮期血圧604、中性脂肪605、空腹時血糖606、及び問診結果607などを含む。問診結果607は、例えば、飲酒の習慣の有無、運動の習慣の有無等を示す情報等を含んでもよい。上記のBMI603から空腹時血糖606は代表的な例であり、実際には健診情報600がこれらの全てを含まなくてもよいし、これら以外の項目の情報(例えば拡張期血圧など)を含んでもよい。この情報によって、健康状態に応じたシミュレーション対象集団の選定が可能になるという効果がある。
なお、健診情報600は、人物の健康状態を示す情報(健康状態情報)の一例であり、健診情報600に代えて(又はそれに加えて)人物の健康状態を示す他の情報を使用してもよい。人物の健康状態を示す他の情報の例として、人物に装着された装置(例えばいわゆるウェアラブル端末等)が計測した当該人物の健康状態に関する情報(例えば当該人物の運動量、睡眠時間、脈拍、血圧等)が挙げられるが、それに限定されない。
図7は、本発明の実施例1の属性情報管理部122が管理する属性情報700の一例を示す説明図である。
属性情報700は、各健保加入者の属性に関する情報であり、健保加入者ID201、各健保加入者が被保険者本人か扶養者かなど被保険者との関係を示す続柄区分702、性別703、生年月日704、勤務先の業種を示す業種区分705、職種を示す職種区分706、健保への加入日の情報を示す加入年月日707、及び、健保からの脱退日の情報を示す脱退年月日708を含む。この情報によって、各健保加入者の続柄、年齢、性別、業種、職種及び追跡可能年数等に応じた分析が可能になるという効果がある。
図8は、本発明の実施例1の査定基準情報管理部123が管理する査定基準情報800の一例を示す説明図である。
査定基準情報800は、保険者(保険会社等)が既存の保険商品への加入申込者の加入の可否等を査定するための基準として保持している情報であり、例えば、ラベル_条件1_801、ラベル_条件2_802、条件1_803、条件2_804、対象年齢805及び評点806を含む。
ラベル_条件1_801は、査定のための一つ目の条件のラベルであり、条件1_803はその条件の具体的な値である。ラベル_条件2_802は、査定のための二つ目の条件のラベルであり、条件2_804はその条件の具体的な値である。対象年齢805は、査定の対象の人物の年齢を示す。
評点806は、条件1_803、条件2_804及び対象年齢805を満たす人物を評価する指標である。これは、それぞれの条件に該当する人物が保険に加入できるかどうかを査定するときに参照されるものであり、例えば、評点806の値が大きいほど保険事故が発生するリスクが高いと評価されていることを意味する。
図8の例では、ラベル_条件1_801が「収縮期血圧」であり、条件1_803は「120~139(mmHg、以下同様)」又は「140~159」などといった収縮期血圧の値の区分である。また、ラベル_条件2_802は「拡張期血圧」であり、条件2_804は「50~69」又は「70~89」などといった拡張期血圧の値の区分である。
図8に示す査定基準情報800の先頭のレコードは、収縮期血圧が120~139、拡張期血圧が50~69であり、年齢が40歳台の人物の評点が0であることを示している。図8の例では、評点が0であることは、当該条件を満たす人物のリスクが標準的であると評価されていることを示している。
一方、査定基準情報800の3番目のレコードは、収縮期血圧が160~179、拡張期血圧が50~69であり、年齢が40歳台の人物の評点が30であることを示している。これは、当該条件を満たす人物の保険金の支払いリスクが標準的なリスクの30%増し(1.3倍)であると評価されていることを示している。
なお、評点806の値「999」は、それに対応する条件に該当する人物が存在しないか(例えばそのような条件があり得ないか、又は、当該保険商品においてそのような人物が想定されていないなど)、許容できるリスク量を超えていることを示している。
保険者は、このような査定基準情報800を保持して、各人物が保険に加入できるかを査定するために使用することができる。例えば、評点806の値が所定の第1の基準以下となる条件に該当する人物を、無条件で保険への加入を認める保険体(いわゆる標準体)と査定してもよい。また、評点806の値が第1の基準からそれより大きい所定の第2の基準までの範囲内となる条件に該当する人物を、保険料の増額又は保険金の減額等、評点806の大きさに応じた所定の条件を付けたうえで保険への加入を認める保険体(いわゆる条件体)と査定してもよい。また、評点806の値が第2の基準を超える条件に該当する人物を、保険への加入を謝絶する保険体(いわゆる謝絶体)と査定してもよい。
図8の例では条件として収縮期血圧及び拡張期血圧が設定されている。しかし、これらは一例であり、例えば血糖値など、他の条件が設定されてもよい。また、条件は1項目のみであってもよいし、3項目以上あってもよい。
図9は、本発明の実施例1のリスクモデル情報管理部124が管理するリスクモデルパラメータ情報900の一例を示す説明図である。
リスクモデルパラメータ情報900は、リスク査定モデルを特定するリスク査定モデルID901、モデルの種類を示すモデル種類902、及び、モデルの構造とパラメータを示すモデルパラメータ903を含む。
例えば、リスクモデル構築部(図示省略)が、受診基本情報200、傷病名情報300、診療行為情報400、受療状況情報500、健診情報600、属性情報700及び保険金の支払い条件に基づいて、健診情報600又は属性情報700に含まれる少なくともいずれかの項目の値からリスク値(例えば保険金の支払い事由に該当する保険事故の発生確率等)を計算するための1以上のモデルを生成してもよい。このリスクモデル構築部は、保険設計支援システム101のCPU104が、記憶媒体106に格納されたプログラムを実行することによって実現されてもよい。このようにして生成されたリスク査定モデルの種類、構造及びパラメータがリスクモデルパラメータ情報900に格納されてもよい。
図9の例では、年齢を説明変数、リスク値を目的変数とする単回帰モデルのパラメータ、年齢、性別及び血圧等を説明変数、リスク値を目的変数とする重回帰モデルのパラメータ、並びに、年齢、性別及び血圧等を説明変数、リスク値を目的変数とするロジスティック回帰モデルのパラメータ等が登録されている。この情報によって、複数のモデルを用いて査定を試行し最適なモデルを選択可能になるという効果がある。また商品特性に応じて適切なモデルを選択することできるという効果がある。
図10は、本発明の実施例1の評価結果情報管理部125が管理する査定基準区分リスク情報1000の一例を示す説明図である。
査定基準区分リスク情報1000は、保険設計支援システム101がシミュレーションによってリスクを評価した結果の情報であり、例えば、ラベル_条件1_1001、ラベル_条件2_1002、条件1_1003、条件2_1004、対象年齢1005及び評点1006を含む。
ラベル_条件1_1001、ラベル_条件2_1002、条件1_1003、条件2_1004及び対象年齢1005は、それぞれ、図8に示した査定基準情報800のラベル_条件1_801、ラベル_条件2_802、条件1_803、条件2_804及び対象年齢805と同様である。
評点1006は、条件1_1003、条件2_1004及び対象年齢1005を満たす人物のリスクを評価する指標であり、後述するリスク査定モデルに基づいて算出したものである。評点1006の値は、例えば確率値又はリスク倍率など、リスクの高さを示す値であり、図10の例では標準的なリスクは「1」となる。この評点1006の値は、後述する処理において図8の評点806の値と対比される。
図11は、本発明の実施例1の査定基準変換部111が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
処理が開始されると(ステップ1101)、査定基準変換部111は、リスク査定モデルを読み込む(ステップ1102)。これによって、図9に示すリスク査定モデルのいずれかが読み込まれる。このステップにおいて、又はこのステップが実行される前に、保険設計支援システム101が前述のようにリスク査定モデルを生成して、データベース107に格納してもよい。
次に、査定基準変換部111は、査定基準情報800を読み込む(ステップ1103)。
次に、査定基準変換部111は、区分代表値を算出する(ステップ1104)。区分代表値とは、査定基準情報800に含まれる条件の値の区分の代表値である。各区分の値の代表値の算出方法は任意であるが、例えば、各区分の値の平均値、中央値、最小値又は最大値のいずれかを区分代表値としてもよい。例えば血圧のように高いほどリスクが高くなる傾向がある値の区分については、各区分の平均値又は中央値を区分代表値とした場合と比較して、最大値を区分代表値とした場合にはより厳しい査定が行われ、最小値を区分代表値とした場合にはより緩い査定が行われることとなる。
次に、査定基準変換部111は、ステップ1104で算出した区分代表値をステップ1102で読み込んだリスク査定モデルに適用することによって、リスク値を算出する(ステップ1105)。そして、査定基準変換部111は、算出したリスク値に基づいて査定基準区分リスク情報1000を作成する(ステップ1106)。これによって、図10の各条件に対応する評点1006にステップ1105で算出されたリスク値が格納される。
以上で処理が終了する(ステップ1107)。
図12は、本発明の実施例1の差分分析実行部112が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
処理が開始されると(ステップ1201)、差分分析実行部112は、査定基準情報800を読み込み(ステップ1202)、さらに、査定基準区分リスク情報1000を読み込む(ステップ1203)。
次に、差分分析実行部112は、リスク倍率補正を行う(ステップ1204)。これは、条件ごとに、査定基準情報800の評点806の値と査定基準区分リスク情報1000の評点1006の値との少なくとも一方を、相互に比較可能な値に変換する処理である。ここでは、評点1006の値を変換する。
説明したように、評点806の値「0」は標準的なリスクを表し、「30」は標準的なリスクの1.3倍を表す。一方、評点806の値は確率値又はリスク倍率であり、「1」は標準的なリスクをあらわし、「1.3」は標準的なリスクの1.3倍を表す。このため、差分分析実行部112は、評点1006の値から1を減算して100を乗じることによってリスク倍率補正を行う。
なお、上記のようなリスク倍率補正は一例であり、リスクの大きさと評点との対応関係に基づいて適切な補正が行われる限り、上記以外の方法が採用されてもよい。
次に、差分分析実行部112は、条件ごとに、評点806と返還後の評点1006との差分値を算出し(ステップ1205)、差分表を作成する(ステップ1206)。例えば、差分分析実行部112は、査定基準情報800又は査定基準区分リスク情報1000と同様のフォーマットで、評点の代わりにステップ1205で算出された差分値を含む差分表を作成してもよい。
以上で処理が終了する(ステップ1207)。
図13は、本発明の実施例1の改定箇所情報抽出部113が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
処理が開始されると(ステップ1301)、改定箇所情報抽出部113は、差分値情報(すなわち図12の処理で作成された差分表)を読み込み(ステップ1302)、標準体と査定される人物の条件のゾーン(標準体ゾーン)を抽出する(ステップ1303)。ここでは例として、査定基準情報800の評点806の値が0となる条件の区分の集合を標準体ゾーンとして抽出する。
次に、改定箇所情報抽出部113は、改定対象区分を抽出する(ステップ1304)。例えば、改定箇所情報抽出部113は、標準体ゾーンに近い区分など、標準体ゾーンとの関係が所定の条件を満たす区分を改定対象区分として抽出してもよい。
次に、改定箇所情報抽出部113は、閾値判定を行い(ステップ1305)、改定対象箇所情報を作成する(ステップ1306)。例えば、改定箇所情報抽出部113は、ステップ1304で抽出した改定対象区分の差分値が所定の閾値より大きい場合に、その区分を改定対象箇所に含めるように、改定対象箇所情報を作成してもよい。
なお、ステップ1304から1306は次のように実行されてもよい。すなわち、改定箇所情報抽出部113は、全ての区分から、ステップ1302で読み込んだ差分値が所定の閾値より大きい区分を抽出し、さらにそれらの区分のうち、標準体ゾーンとの関係が所定の条件を満たす区分(例えばそれらの区分のうち標準体ゾーンの条件の値に近い値に該当する区分)を改定対象箇所に含めるように、改定対象箇所情報を作成してもよい。
以上で処理が終了する(ステップ1307)。
図14は、本発明の実施例1の改定量算出部114が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
処理が開始されると(ステップ1401)、改定量算出部114は、査定基準情報800を読み込み(ステップ1402)、さらに、改定箇所情報抽出部113によって作成された改定対象箇所情報を読み込む(ステップ1403)。
次に、改定量算出部114は、目標を設定する(ステップ1404)。例えば、改定量算出部114は、査定条件の緩和(又は引き締め)をすることによって増やしたい契約者数の目標値を設定してもよい。
次に、改定量算出部114は、健診情報600及び属性情報700を読み込む(ステップ1405)。次に、改定量算出部114は、評点の改定量を算出する(ステップ1406)。例えばあらかじめ評点の改定の刻み幅を決めておき、その刻み幅の分だけ改定するように評点の改定量を算出してもよい。
次に、改定量算出部114は、ステップ1406で算出された改定量を反映した査定基準の評点を算出する(ステップ1407)。例えば、査定基準情報800の評点806にステップ1406で算出された改定量を反映させた評点が算出される。
次に、改定量算出部114は、ステップ1407で算出された評点を健診情報600及び属性情報700に適用することによって、加入可能者を抽出し(ステップ1408)、抽出した可能加入者の数が目標値を満たすかを判定する(ステップ1409)。例えば、改定前の査定基準情報800の評点806に基づいて抽出した加入可能者の数に対して、改定によって増加した加入可能者の数が、ステップ1404で設定された目標を満たしているかが判定される。
ステップ1409で目標値が満たされない場合、処理はステップ1407に戻り、改定量を変更して(例えば増やして)、再度ステップ1407~ステップ1409が実行される。ステップ1409で目標値が満たされた場合、処理が終了する(ステップ1410)。
図15は、本発明の実施例1の総リスク評価部115が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
総リスク評価部115は、査定基準が改定された場合のリスクの総量(総リスク量)を計算する。本実施例では、総リスク量として、査定基準が改定された場合に保険に加入可能な人物が加入した場合に想定される保険金の支払金額の合計であるが、これに限定せずに、リスクの総量を表す値を使用することができる。
処理が開始されると(ステップ1501)、総リスク評価部115は、加入可能者情報を読み込む(ステップ1502)。この加入可能者情報とは、改定量算出部114が図14に示す処理のステップ1409において目標値を満たすと判定したときの加入可能者情報である。
次に、総リスク評価部115は、受診歴情報を読み込む(ステップ1503)。受診歴情報とは、受診歴情報管理部120が管理する情報であり、例えば、受診基本情報200、傷病名情報300、診療行為情報400及び受療状況情報500等である。
次に、総リスク評価部115は、支払事由を読み込む(ステップ1504)。支払事由とは、どのような場合にどれだけの保険金を支払うかを示す保険の条件であり、例えば、図8に示した査定基準情報800に対応する既存の保険商品において定められたものである。
次に、総リスク評価部115は、保険金の支払いの発生率を計算する(ステップ1505)。例えば、総リスク評価部115は、各加入可能者の受診歴情報と支払事由とを参照して、各加入可能者において保険金の支払いが発生するかを判定して、その結果に基づいて発生率を計算してもよい。
次に、総リスク評価部115は、計算した発生率を評価する(ステップ1506)。例えば、査定基準を緩和したことによって保険金の支払いの発生率が増加した場合、その発生率の増加、又はそれに起因する保険金の総支払額の増加が許容範囲内であるか否かを所定の基準に基づいて判定してもよい。
次に、総リスク評価部115は、評価結果を評価結果情報管理部125に格納する(ステップ1507)。
以上で処理が終了する(ステップ1508)。
次に、図11から図15に示した処理を実行するときに保険設計支援システム101が提供するユーザインターフェースの一例を、図16から図19を参照して説明する。
図16は、本発明の実施例1の査定基準変換部111及び差分分析実行部112の処理に対応するユーザインターフェースの一例を示す説明図である。
図16に示す査定表区分リスク評価画面1600は、保険設計支援システム101によって出力される表示データの一例であり、例えば、対象商品選択部1601、対象査定データ選択部1602、リスクモデル選択部1603、代表値設定部1604、リスク評価実行ボタン1605及び結果表示部1606を含む。
なお、この表示データは、出力部103によって画像として出力されてもよいし、通信部108によって出力されてもよい。後者の場合、表示データは通信部108からネットワーク(図示省略)を介して外部の装置(例えばユーザが使用する端末装置など、図示省略)に転送され、当該外部の装置によって画像として出力されてもよい。その場合、画面を介して入力される情報は、当該外部の装置の入力部(図示省略)を用いて入力され、ネットワーク及び通信部108を介して保険設計支援システム101に入力される。後述する他の画面についても同様である。
対象商品選択部1601では、検討の対象となる既存の保険商品が選択される。例えば、保険商品Aという商品の査定基準の変更を検討する場合、対象商品選択部1601において「保険商品A」が選択される。
対象査定データ選択部1602では、検討の対象となるデータの項目が選択される。例えば、対象商品選択部1601で選択された保険商品において査定基準として採用されているデータの項目が選択されてもよい。図16の例では「血圧」が選択されているが、必要に応じて例えば「血糖値」など、ほかのデータの項目も選択され得る。
リスクモデル選択部1603では、検討の対象となるリスク査定モデルが選択される。例えば、対象商品選択部1601で選択された保険商品において保険金の支払事由となっている事象の発生リスクを査定するためのモデルが選択されてもよい。図16の例では「入院リスク」が選択される。ここで、図9に示したリスク査定モデルのいずれかを指定する情報が選択されてもよい。
代表値設定部1604では、区分代表値の算出方法が設定される。図16の例では「右端値」が設定されている。この場合、例えば血圧の値「50~69」の区分のうち右端(すなわち最大値)の69が区分代表値として算出される。
上記の各部に値を設定して、リスク評価実行ボタン1605の操作(例えば入力部102に含まれるマウスによるクリック等、以下同様)が行われると、図11の処理の実行が開始される。このとき、ステップ1102ではリスクモデル選択部1603において選択されたリスク査定モデルが読み込まれる。ステップ1104では、代表値設定部1604において設定された算出方法で区分代表値が算出される。例えば、対象商品選択部1601で選択された保険商品において査定基準として採用されているデータの値の区分の代表値が、代表値設定部1604において設定された算出方法で算出される。
ステップ1106で作成された査定基準区分リスク情報が結果表示部1606に表示されてもよい。図16に示すリスクモデル算出結果1607はその一例である。この例では、各行に収縮期血圧の区分を、各列に拡張期血圧の区分を割り当てた表において、それぞれの区分の組み合わせに対応するリスク値が表示されている。すなわち、これは、図10の査定基準区分リスク情報に含まれる評点1006に相当する値を二次元のマトリクスで表示したものである。
さらに、図12の処理が実行され、リスク倍率補正(ステップ1204)の結果が結果表示部1606に表示されてもよい。図16に示すリスクモデル変換結果1608はその一例である。ここでは、図12を参照して説明したように、リスクモデル算出結果1607のリスク値から1を減算して100を乗じた値がリスクモデル変換結果1608として表示されている。
図17は、本発明の実施例1の差分分析実行部112の処理に対応するユーザインターフェースの一例を示す説明図である。
図17に示す査定表区分リスク評価画面1600は、保険設計支援システム101によって出力される表示データの一例であり、例えば、対象商品選択部1701、対象査定データ選択部1702、リスクモデル選択部1703、代表値設定部1704、比較分析実行ボタン1705及び結果表示部1706を含む。
対象商品選択部1701、対象査定データ選択部1702、リスクモデル選択部1703及び代表値設定部1704は、それぞれ図16の対象商品選択部1601、対象査定データ選択部1602、リスクモデル選択部1603及び代表値設定部1604と同様である。
比較分析実行ボタン1705が操作されると、図12の少なくともステップ1205以降の処理が実行される。ステップ1206で作成された差分表が結果表示部1706に表示されてもよい。図17の例では、結果表示部1706に現行基準1707、リスクモデル変換結果1708及び比較結果1709が表示されている。
現行基準1707は、対象商品選択部1701において選択された保険商品で採用されている査定基準の評点を示している。これは、図8の査定基準情報800に含まれる評点806に相当する値を二次元のマトリクスで表示したものである。リスクモデル変換結果1708は、図16のリスクモデル変換結果1608と同様である。比較結果1709は、区分ごとに現行基準1707の値とリスクモデル変換結果1708との差分を計算した結果である。
図18は、本発明の実施例1の改定箇所情報抽出部113及び改定量算出部114の処理に対応するユーザインターフェースの一例を示す説明図である。
図18に示す改定個所情報抽出及び改定量算出画面1800は、保険設計支援システム101によって出力される表示データの一例であり、例えば、抽出方法設定部1801、閾値設定部1802、改定候補抽出実行ボタン1803、改定効果目標設定部1804、変更上限量設定部1805、改定量算出実行ボタン1806及び結果表示部1807を含む。
ユーザが抽出方法設定部1801及び閾値設定部1802に値を設定して改定候補抽出実行ボタン1803を操作すると、改定箇所情報抽出部113の処理(図13)が実行され、その結果が結果表示部1807に表示される。
抽出方法設定部1801には、改定候補箇所の抽出方法が設定される。図18の例では「標準体近傍」が設定されている。これは、標準体の条件に近い条件の区分(例えば標準体の血圧の範囲に近い血圧の値に対応する区分)を改定候補箇所として抽出するという抽出方法を示す。
なお、上記のような抽出方法は一例であり、例えば標準体との関係にかかわらず改定候補箇所を抽出する方法、又は、標準体から遠い条件を抽出する方法などが設定されてもよい。あらかじめ用意された複数の抽出方法のいずれかがプルダウンメニューを介して選択されてもよい。
閾値設定部1802には、改定候補箇所を抽出するときに参照される閾値が設定される。図18の例では「20以上」が設定されている。これは、計算された現行基準1707の値とリスクモデル変換結果1708との差分が20以上となる区分を改定候補箇所として抽出することを示す。
結果表示部1807に示した改定候補箇所抽出結果1808は、図17の比較結果1709に示した各区分の差分を対象として、抽出方法設定部1801に「標準体近傍」、閾値設定部1802に「20以上」を設定して改定箇所情報抽出部113の処理を実行した結果の一例を示す。
この例では、標準体に相当する区分は、図17に示した現行基準1707において評点が0となっている区分である。この場合、太枠で表示された区分が、差分の値が閾値「20」を超える区分のうち、標準体の区分に近い区分であり、これらが改定候補箇所として抽出される。
さらに、ユーザが改定効果目標設定部1804及び変更上限量設定部1805に値を設定して改定量算出実行ボタン1806を操作すると、改定量算出部114の処理(図14)が実行され、その結果が結果表示部1807に表示される。
改定効果目標設定部1804には、査定基準の改定の効果の目標値が設定される。図18の例では「3%増加(約300名)」が設定されている。これは、査定基準の改定によって保険の加入者を3%(例えば現行基準での加入者が約10000人であれば、約300人)増加させることを目標として設定したことを示す。
変更上限量設定部1805には、査定基準の改定(すなわち値の変更)の量の上限が設定される。図18の例では、「10以下」と設定されている。これは、評点の値を最大10まで変更することを許容することを示す。
結果表示部1807に示した改定量算出結果1809は、改定候補箇所抽出結果1808に示した改定候補箇所の評点を10だけ減少させた結果、改定の効果が目標値に達するという計算結果が得られたことを示している。
このように区分の評点を改定することで、当該区分に該当する人物が、改定前は謝絶体であったところ、改定後は条件体又は標準体として扱われる場合がある。あるいは、改定前は条件体であった人物が、改定後は標準体として扱われる場合がある。あるいは、改定の前後でいずれも条件体であっても、改定後の条件は改定前より緩和される(例えば保険料の増額又は保険金の減額の幅が小さくなる)場合がある。これによって、当該査定基準が適用される保険への加入者が増加することが見込まれる。
図19は、本発明の実施例1の総リスク評価部115の処理に対応するユーザインターフェースの一例を示す説明図である。
図19に示す改定個所情報抽出及び改定量算出画面1900は、保険設計支援システム101によって出力される表示データの一例であり、例えば、評価用データ読込部1901、支払事由読込部1902、現行基準読込部1903、改定候補情報読込部1904、リスク評価実行ボタン1905、改定案採用ボタン1906及び結果表示部1907を含む。
評価用データ読込部1901には、総リスク評価部115が総リスク量(例えば査定基準の改定の前後の保険金の総額)を評価するために使用するデータを指定する情報が設定される。例えば、受診基本情報200(図2)、傷病名情報300(図3)、診療行為情報400(図4)、受療状況情報500(図5)、健診情報600(図6)及び属性情報700(図7)等のデータのセットを使用する場合、それらを指定するデータセット名(例えば「データセットA」)が評価用データ読込部1901に設定される。
支払事由読込部1902には、総リスク評価部115が総リスクの評価に使用する支払事由を指定する情報が設定される。例えば既存の保険商品の支払事由を使用する場合、その保険商品を指定する情報(例えば「保険商品A」)が支払事由読込部1902に設定されてもよい。
現行基準読込部1903及び改定候補情報読込部1904には、総リスク評価部115が総リスクの評価に使用する現行の支払い基準を指定する情報、及び、それに対する改定候補を指定する情報が設定される。例えば、現行基準1707を現行の査定基準として総リスクの評価に使用する場合、それを指定する情報(例えば「基準情報A」)が現行基準読込部1903に設定される。また、現行基準1707を改定候補箇所抽出結果1808及び改定量算出結果1809に従って改定した査定基準を改定候補として総リスクの評価に使用する場合、それを指定する情報(例えば「改定候補情報A」)が改定候補情報読込部1904に設定される。
ユーザが上記の評価用データ読込部1901~改定候補情報読込部1904に値を設定して、リスク評価実行ボタン1905を操作すると、設定された値に基づいて総リスク評価部115の処理(図15)が実行される。結果表示部1907に示した総リスク評価結果1908は、総リスク評価部115の処理の結果の表示の一例である。例えば、総リスク評価部115は、現行の査定基準と改定候補の査定基準とのそれぞれについて、保険金の支払いの発生率に基づいて保険金の総支払額を計算し、その結果を表示してもよい。その結果、総リスクの増加が許容されると判断した場合、ユーザは改定案採用ボタン1906を操作する。その結果、改定候補の査定基準が新たな査定基準として採用される。
図19の例では、現行の(すなわち改定前の)査定基準による総リスクR1と、改定候補の(すなわち改定適用後の)査定基準による総リスクR2とを比較するグラフが総リスク評価結果1908として表示されている。ユーザは、これを参照して、総リスクの増加(すなわちΔS=R1-R2)が許容できるかを判断してもよい。具体的には、例えば、総リスクの増加量(ΔS=R1-R2)又は増加率が所定の閾値以下であれば許容する、といった条件を使用してもよい。
以上の実施例1によれば、既存の保険商品の査定基準を改定した場合に見込まれる加入者の増加と、そのときのリスクの増加とが計算される。ユーザは、計算結果を参照して、例えば加入者を増やすために有効な改定を発見したり、許容できないリスクが生じる改定を発見したりすることができる。これによってより多くの者に提供可能かつ安全な運営を行うことのできる保険商品の設計が支援される。
次に、本発明の実施例2を説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2のシステムの各部は、図1~図19に示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
図20は、本発明の実施例2の保険設計支援システム101の構成の一例を示すブロック図である。
実施例2の保険設計支援システム101は、記憶媒体106がさらに許容リスク設定部116を有することを除いて、実施例1の保険設計支援システム101と同様である。許容リスク設定部116の機能は、他の各部の機能と同様に、CPU104が記憶媒体106に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
図21は、本発明の実施例2の許容リスク設定部116及び改定量算出部114が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
処理の開始(ステップ2101)から、改定量算出部114が改定対象箇所情報を読み込む(ステップ2103)までの処理は、図14のステップ1401~1403の処理と同様である。
次に、許容リスク設定部116が許容リスク量を設定する(ステップ2104)。例えば許容リスク設定部116はユーザによって入力された許容リスク量を設定してもよい。例えば、許容リスク量は、査定基準の改定によって生じるリスク量の増加量又は増加率の上限であってもよい。
続く健診情報及び属性情報の読み込み(ステップ2105)から加入可能者の抽出(ステップ2108)までの処理は、図14のステップ1405~1408の処理と同様である。
次に、改定量算出部114は、査定基準の改定が許容されるかを判定する(ステップ2109)。これは、例えば、ステップ2108で抽出された加入可能者が加入した場合のリスク量が許容されるかどうかに基づいて判定されてもよい。例えば、抽出された加入可能者が加入した場合のリスク量がステップ2104で設定した許容リスク量以下であれば改定が許容されると判定される。
このとき、総リスク評価部115が、改定量算出部によるステップ2108までの処理結果に基づいて実施例1と同様に総リスクを計算し、改定量算出部114がその総リスク量を許容リスク量と比較してもよい。また、このとき、後述するように、条件の区分ごとに期待されるリスク量を計算し、計算した期待されるリスク量の変化を許容リスク量と比較してもよい。
ステップ2109において査定基準の改定が許容される(すなわち改定可)と判定された場合、改定量算出部114は、改定量を変更して(ステップ2110)、ステップ2107に戻る。このときの変更方法として以下の方法が考えられるが、それらに限定されず、種々の変更方法を採用することができる。
例えば、改定対象箇所のうち、最も高リスクの区分の改定量を0に近づくように変更してもよいし、最も該当人数が少ない区分の改定量を0に近づくように変更してもよいし、両者を同時に満たす区分の改定量を0に近づくように変更してもよい。
ステップ2109において査定基準の改定が許容されない(すなわち改定不可)と判定された場合、処理が終了する(ステップ2111)。あるいは、ステップ2107~2109が所定の回数実行された場合など、所定の終了条件が満たされた場合に処理を終了してもよい。
図22は、本発明の実施例2の許容リスク設定部116の処理に対応するユーザインターフェースの一例を示す説明図である。
図22に示す許容リスク設定画面2200は、保険設計支援システム101によって出力される表示データの一例であり、例えば、評価用データ読込部2201、支払事由読込部2202、現行基準読込部2203、許容リスク量設定部2204、改定量算出実行ボタン2205及び結果表示部2206を含む。
評価用データ読込部2201、支払事由読込部2202及び現行基準読込部2203は、それぞれ、図19に示した評価用データ読込部1901、支払事由読込部1902及び現行基準読込部1903と同様である。
許容リスク量設定部2204には、査定基準の改定において許容されるリスク量が設定される。例えば、査定基準の改定に起因するリスク量の増加量又は増加率の上限が設定されてもよい。図22の例では、「+1%」が設定されている。これは、査定基準の改定後のリスク量が改定前のリスク量に対して+1%の増加までは許容されることを示す。例えばここに設定された値が図21のステップ2104で許容リスク設定部116に読み込まれる。
ユーザが評価用データ読込部2201から許容リスク量設定部2204に値を設定して、改定量算出実行ボタン2205を操作すると、許容リスク設定部116及び改定量算出部114が図21の処理を実行する。結果表示部2206に示した改定候補箇所及び改定量算出結果2207、改定実行した場合の期待リスク変化率2208及び改定実行した場合の総期待リスク2209は、図21の処理の結果の表示の一例である。
改定候補箇所及び改定量算出結果2207は、図21のステップ2106までを実行した結果の一例である。これは実施例1の改定量算出結果1809と同様のものであり、例えば実施例1と同様の方法で算出される。
改定実行した場合の期待リスク変化率2208及び改定実行した場合の総期待リスク2209は、査定基準の改定の前後でのリスク量の変化の計算結果の一例である。具体的には、改定実行した場合の期待リスク変化率2208は、条件(例えば血圧等)の区分ごとに、その区分に該当する保険加入者への保険料の支払いリスク(例えば支払額)の変化を示している。改定実行した場合の総期待リスク2209は、加入者全体の総支払額の変化を示している。
図22の例では、改定実行した場合の期待リスク変化率2208において、改定候補箇所に該当する区分が太枠で表示されている。それらの区分に記載された数値は、それらの区分の評点を改定候補箇所及び改定量算出結果2207に示した通りに変更した場合の査定基準に基づく期待リスクの変化率(例えば保険金の支払額の変化率)を示している。
具体的には、図22の例において、太枠で表示された改定候補箇所の区分のうち、収縮期血圧が180から199mmHgかつ拡張期血圧が50から69mmHgの区分の期待リスク変化率が3.5%である。これは、当該区分の評点を、現行の「20」に対して「-10」の改定を加えることで「10」に変更した場合、それによって当該区分に該当する保険加入者への保険金の支払額が3.5%増加すると計算されたことを示す。これは、許容リスク量設定部2204に設定された許容リスク「+1%」より大きい。
一方、この例において、上記以外の改定候補箇所の区分における期待リスク変化率は、0.05%又はそれより小さい値となっている。これらは、いずれも設定された許容リスク量「+1%」より小さい。
また、図22の例では、改定実行した場合の総期待リスク2209に示すように、査定基準を上記の通りに改定した場合の総リスク量の増加は設定された許容リスク量より小さくなっている。
この場合、総リスク量の増加が設定された許容リスク量より小さいことから、この査定基準の改定は全体としては許容されるといえる。しかし、上記のように条件の区分ごとに見た場合、期待リスク変化率が許容リスク量を超える区分がある。このため、当該区分の改定を許容せず、他の区分については改定を許容すると判定してもよい。
より具体的には、改定量算出部114は、図21のステップ2109において改定不可と判定し、ステップ2110において、期待リスク変化率が許容リスク量を超える区分の改定量を変更してもよい。例えば上記の例では収縮期血圧が180から199mmHgかつ拡張期血圧が50から69mmHgの区分の改定量が「-10」のときに期待リスク変化率が「3.5%」であったため、当該区分の改定量を「0」に近づくように(例えば「-5」等に)変更してもよい。これによって、当該区分については査定基準の緩和の程度が低下して、期待リスク変化率が下がることが予想される。
このとき、期待リスク変化率が許容リスク量を超えていない区分については、その区分の改定量がすでに変更上限量設定部1805に設定された値に達していない限り、改定量をさらに「0」から遠ざかるように変更してもよい。これによって、当該区分については査定基準の緩和程度が増して、期待リスク変化率が上がることが予想される。
上記の例では、総リスク量増加と比較される許容リスク量と、各区分の期待リスク量の増加と比較される許容リスク量とが同一の値である例を示したが、これらが異なる値であってもよい。
上記の処理を繰り返すことで、各区分の期待リスク変化率が許容リスク量を超えず、総リスク量が許容リスク量を超えないような査定基準の改定量を探ることができる。その結果、既存の保険商品の査定基準を改定することで、より多くの加入者が見込まれ、かつリスクも許容可能な保険商品を設計することが支援される。
以上の本発明の実施形態は、次のような例を含む。
(1)プロセッサ(例えばCPU104)と、プロセッサに接続される記憶装置(例えばメモリ105又は記憶媒体106)と、を有する保険設計支援システム(例えば保険設計支援システム101)であって、記憶装置は、複数の人物の健康状態情報(例えば健診情報600又はその他の情報)と、複数の人物の属性情報(例えば属性情報700)と、健康状態情報及び属性情報に基づいて保険商品における保険事故のリスクを計算するためのリスクモデル(例えばリスクモデルパラメータ情報900に基づくリスク査定モデル)と、保険商品への加入可否の判定に使用される査定基準(例えば査定基準情報800)と、保険商品に加入する人物の数の目標値(例えば改定効果目標設定部1804に設定された目標値)と、を保持し、プロセッサは、健康状態情報、属性情報及びリスクモデルに基づいて、複数の人物の保険事故のリスク値を計算し(例えばステップ1105)、リスク値に基づいて、査定基準の改定量を計算し(例えばステップ1406)、改定量が適用された場合の査定基準と、健康状態情報と、属性情報と、に基づいて、査定基準に改定量が適用された場合に保険商品に加入する人物の数を計算し(例えばステップ1408)、保険商品に加入する人物の数が目標値を満たすか否かを判定する(例えばステップ1409)。
これによって、保険者が保有する既存の査定基準を考慮して、リスクへの影響を抑えながらより多くの人が加入できる保険の査定基準を作成することができる。
(2)上記(1)において、査定基準は、健康状態情報の値の区分(例えば条件1_803及び条件2_804の区分)ごとに、保険事故のリスクの高さの評価値(例えば評点806)を含み、プロセッサは、健康状態情報、属性情報及びリスクモデルに基づいて、区分ごとに、区分に該当する人物の保険事故のリスク値を計算し(例えばステップ1105)、区分ごとに、評価値とリスク値とを比較した結果に基づいて査定基準の改定量を計算する(例えばステップ1406)。
これによって、区分ごとに改定の要否及び改定量が計算され、査定基準の適切な改定案が作成される。
(3)上記(2)において、プロセッサは、評価値と保険事故のリスクの高さとを対応付ける情報(例えばリスク値から評点への換算式)に基づいて、区分ごとに、リスク値を評価値と比較可能な値に変換し(例えばステップ1204)、変換されたリスク値が評価値より低い場合に、評価値を下げる方向に改定する評価値の改定量を査定基準の改定量として計算する(例えばステップ1406)。
これによって、区分ごとに改定の要否及び改定量が計算され、査定基準の適切な改定案が作成される。
(4)上記(3)において、プロセッサは、変換されたリスク値と評価値との差が所定の基準より大きい区分について、評価値の改定量を計算する(例えばステップ1205~ステップ1306、ステップ1406)。
これによって、区分ごとに改定の要否及び改定量が計算され、査定基準の適切な改定案が作成される。
(5)上記(4)において、プロセッサは、変換されたリスク値と評価値との差が所定の基準より大きい区分のうち、標準体に分類される人物の健康状態情報の値に対応する区分との関係が所定の条件を満たす区分について、評価値の改定量を計算する(例えばステップ1205~ステップ1306、ステップ1406)。
これによって、区分ごとに改定の要否及び改定量が計算され、査定基準の適切な改定案が作成される。
(6)上記(5)において、プロセッサは、変換されたリスク値と評価値との差が所定の基準より大きい区分のうち、標準体に分類される人物の健康状態情報の値に近い値に対応する区分について、評価値の改定量を計算する(例えばステップ1205~ステップ1306、ステップ1406)。
これによって、区分ごとに改定の要否及び改定量が計算され、査定基準の適切な改定案が作成される。
(7)上記(6)において、保険設計支援システムは、表示データを出力する出力部(例えば出力部103又は通信部108)をさらに有し、出力部は、区分ごとに、現行の査定基準に含まれる評価値(例えば現行基準1707)、リスク値(例えばリスクモデル算出結果1607)、評価値とリスク値との比較結果(例えば比較結果1709)及び改定量(例えば改定量算出結果1809)の少なくともいずれかの情報を含む表示データを出力する。
これによって、査定基準の改定の内容をユーザが把握することが容易になる。
(8)上記(1)において、記憶装置は、保険商品における保険金の支払い条件をさらに保持し、プロセッサは、保険商品に加入する人物の数が目標値を満たす場合、保険商品に加入する人物の医療機関の受診履歴を示す受診情報(例えば受診基本情報200、傷病名情報300、診療行為情報400及び受療状況情報500の少なくともいずれか)と、支払い条件と、に基づいて、改定量が適用された場合の保険商品に加入する人物全体の保険金の支払いに関する総リスク量を計算し(例えばステップ1505~ステップ1506)、総リスク量を出力する。
これによって、査定基準の改定によって生ずるリスクが評価される。
(9)上記(8)において、記憶装置は、改定量が適用された場合に許容される総リスク量の条件を示す情報(例えば許容リスク量設定部2204に設定された値)をさらに保持し、プロセッサは、総リスク量が許容される総リスク量の条件を満たさない場合、改定量を小さくするように変更し(例えばステップ2110)、変更された改定量に基づいて、査定基準に改定量が適用された場合の保険商品に加入する人物の数及び総リスク量を計算する(例えばステップ2108及びステップ2109)。
これによって、改定に起因するリスク量が許容範囲内となる査定基準の改定案を作成することができる。
(10)上記(9)において、査定基準は、健康状態情報の値の区分ごとに、保険事故のリスクの高さの評価値(例えば評点806)を含み、プロセッサは、健康状態情報、属性情報及びリスクモデルに基づいて、区分ごとに、区分に該当する人物の保険事故のリスク値を計算し(例えばステップ1105)、区分ごとに、評価値とリスク値とを比較した結果に基づいて査定基準の改定量を計算し(例えばステップ1406)、区分ごとに、改定量が適用された場合の区分に該当する人物の保険金の支払いに関するリスク量を計算し(例えばステップ2109)、記憶装置は、改定量が適用された場合に許容される区分ごとのリスク量の条件を示す情報(例えば許容リスク量設定部2204に設定された値)をさらに保持し、プロセッサは、区分ごとのリスク量が許容される区分ごとのリスク量の条件を満たさない場合、区分の評価値の改定量を小さくするように変更する(例えばステップ2110)。
これによって、区分ごとの改定に起因するリスク量が許容範囲内となる査定基準の改定案を作成することができる。
(11)上記(10)において、表示データを出力する出力部(例えば出力部103又は通信部108)をさらに有し、プロセッサは、現行の査定基準に基づく総リスク量を計算し、出力部は、現行の査定基準に基づいて計算された総リスク量、改定量が適用された場合の総リスク量、及び、改定量が適用された場合に許容される総リスク量の条件の少なくともいずれかの情報を含む表示データ(例えば許容リスク設定画面2200)を出力する。
これによって、改定に起因するリスク量が許容範囲内となる査定基準の改定の内容をユーザが把握することが容易になる。
(12)上記(1)において、記憶装置は、保険商品における保険金の支払い条件と、複数の人物の医療機関の受診履歴を示す受診情報(例えば受診基本情報200、傷病名情報300、診療行為情報400及び受療状況情報500の少なくともいずれか)と、をさらに保持し、プロセッサは、受診情報、健康状態情報、属性情報及び支払い条件に基づいて、リスクモデルを生成して記憶装置に格納する。
これによって、精度よくリスクを計算するためのモデルを生成することができる。
(13)上記(1)において、健康状態情報は、各人物が受けた健康診断の結果、及び、各人物に装着された装置(例えばいわゆるウェアラブル端末等)が計測した各人物の健康状態に関する情報(例えば運動量、睡眠時間、脈拍、血圧等)の少なくともいずれかを含む。
これによって、健康診断の結果に限らず、人物の健康状態を示す情報を幅広く利用することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。