JP7447694B2 - 半導体発光装置 - Google Patents
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Description
この発明は、半導体発光装置に関する。
電子部品が作動時に発する熱を効率よく外部に拡散させるための放熱性材料として、以前より、ダイヤモンド粒子を含む金属層が利用されてきた。例えば、特許文献1及び特許文献2には、金属めっき層中にダイヤモンド粒子を複合させた複合めっき層が開示されている。斯かる複合めっき層の成膜方法について、特許文献1には、ダイヤモンド粒子を分散させためっき液を攪拌させながら電解めっきを行い、ダイヤモンド粒子を金属めっき層中に固定し、複合めっき層を得る方法が開示されている。この成膜方法を攪拌法という。特許文献2には、ダイヤモンド粒子を分散させためっき液の攪拌を止め、沈降するダイヤモンド粒子を最密構造に堆積させつつ電解めっきを行い、ダイヤモンド粒子を金属めっき層中に固定し、複合めっき層を得る方法が開示されている。この成膜方法を沈降法という。
また、ダイヤモンド粒子を含む金属層には、上述した複合めっき層の他に、ダイヤモンド粒子を含む複合体も知られている。特許文献3には、アルミニウム合金に、粒子径の異なる二つの粒子群からなるダイヤモンド粉末を含有させたアルミニウム-ダイヤモンド系複合体が開示されている。斯かる複合体の製造方法について、特許文献3には、高圧容器内に、ダイヤモンドの粉末を装填し、これにアルミニウム合金等の溶湯を高温、高圧下で含浸させてアルミニウム-ダイヤモンド系複合体を得る、溶湯鍛造法が開示されている。
LDやLED等の半導体発光装置において、半導体発光素子から当該発光素子を支持する支持体へ熱を拡散させる放熱性薄膜として、ダイヤモンド粒子を含む金属層を使用することを考える。斯かる金属層の形成には、特許文献3に示した溶湯鍛造法よりも、特許文献1及び特許文献2に示した、電解めっきによる複合めっき層の成膜方法が使いやすい。その理由のひとつには、溶湯鍛造法が高温・高圧環境を得るための複雑・大型化した製造設備を要するのに対し、電解めっきによる成膜方法は、比較的単純・小型の製造設備でよいことが挙げられる。そのため、溶湯鍛造法で作ると高価になり、低コストが求められる半導体発光装置のような量産製品には使えないという問題があった。そこで、半導体発光装置の放熱性薄膜の形成に、電解めっきによる複合めっき層の成膜方法を採用する。
しかしながら、特許文献1に示された攪拌法では、複合めっき層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率を向上させることが困難であるため、半導体発光装置として所望の特性を得ることができなかった。また、特許文献2に示された沈降法では、特許文献1よりも複合めっき層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率を高められるものの、最大で74vol%までしか高めることができなかった。
本発明者は、上述した問題を解消し、半導体発光装置の放熱性薄膜として所望の特性を有する半導体発光装置を提供することを目的とする。
本発明の半導体発光装置は、半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を支持する支持体と、
前記半導体発光素子と前記支持体との間にあり、ダイヤモンド粒子が分散された金属層を含んで構成された複合めっき層と、を備え、
前記複合めっき層において、前記ダイヤモンド粒子の体積占有率が59vol%以上であり、
前記ダイヤモンド粒子は、粒子径が64μm以上200μm以下の第一粒子群と、粒子径が16μm以上50μm以下の第二粒子群と、を有する一方で、粒子径が50μmを超え64μm未満の粒子を実質的に有しておらず、
前記ダイヤモンド粒子の粒子径を横軸に、前記複合めっき層における前記ダイヤモンド粒子の単位粒子径幅あたりの体積占有率を縦軸にしたグラフにおいて、
前記第一粒子群及び前記第二粒子群は、それぞれ、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有し、
前記第二粒子群における前記ピーク値のうち、前記体積占有率の最大値をとるときの粒子径は、前記第一粒子群における前記ピーク値のうち、前記体積占有率の最大値をとるときの粒子径に対して、1/4倍以下であり、
前記第二粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は、前記第一粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率よりも小さい。
前記半導体発光素子を支持する支持体と、
前記半導体発光素子と前記支持体との間にあり、ダイヤモンド粒子が分散された金属層を含んで構成された複合めっき層と、を備え、
前記複合めっき層において、前記ダイヤモンド粒子の体積占有率が59vol%以上であり、
前記ダイヤモンド粒子は、粒子径が64μm以上200μm以下の第一粒子群と、粒子径が16μm以上50μm以下の第二粒子群と、を有する一方で、粒子径が50μmを超え64μm未満の粒子を実質的に有しておらず、
前記ダイヤモンド粒子の粒子径を横軸に、前記複合めっき層における前記ダイヤモンド粒子の単位粒子径幅あたりの体積占有率を縦軸にしたグラフにおいて、
前記第一粒子群及び前記第二粒子群は、それぞれ、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有し、
前記第二粒子群における前記ピーク値のうち、前記体積占有率の最大値をとるときの粒子径は、前記第一粒子群における前記ピーク値のうち、前記体積占有率の最大値をとるときの粒子径に対して、1/4倍以下であり、
前記第二粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は、前記第一粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率よりも小さい。
詳細は後述するが、本発明は、これにより、複合めっき層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率を高めることができ、複合めっき層の熱膨張率を半導体発光素子の熱膨張率に近づけて、その結果、半導体発光素子に与える歪みを抑制できる。加えて、複合めっき層の熱伝導率が向上し、その結果、放熱性が向上する。
前記ダイヤモンド粒子は、さらに、粒子径が0.5μm以上16μm未満の第三粒子群を有し、
前記ダイヤモンド粒子の粒子径を横軸に、前記ダイヤモンド粒子の前記複合めっき層における単位粒子径幅あたりの体積占有率を縦軸にしたグラフにおいて、
前記第三粒子群は、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有し、
前記第三粒子群におけるピーク値のうち最大値をとるときの粒子径は、前記第二粒子群におけるピーク値のうち最大値をとるときの粒子径に対して、1/4倍以下であり、
前記第三粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は、前記第二粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率よりも小さいとよい。
前記ダイヤモンド粒子の粒子径を横軸に、前記ダイヤモンド粒子の前記複合めっき層における単位粒子径幅あたりの体積占有率を縦軸にしたグラフにおいて、
前記第三粒子群は、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有し、
前記第三粒子群におけるピーク値のうち最大値をとるときの粒子径は、前記第二粒子群におけるピーク値のうち最大値をとるときの粒子径に対して、1/4倍以下であり、
前記第三粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は、前記第二粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率よりも小さいとよい。
前記第一粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は40vol%以下でも構わない。
前記複合めっき層の前記半導体発光素子が載置される側の表面には、前記ダイヤモンド粒子が存在しないとよい。
前記複合めっき層を厚み方向に2分割し、前記半導体発光素子に近い第一層と前記支持体に近い第二層とに区分したとき、前記第一層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率は、前記第二層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率より大きくても構わない。
前記金属層は、銅を主成分とする層であるとよい。
前記半導体発光素子は、GaAs系であるとよい。なお、本明細書において、GaAs系とは、GaAsから構成される二元化合物半導体の他、AlGaAsやInGaAs等の三元以上の化合物半導体を含む。
これにより、高い熱伝導率を示し量産性の高い複合めっき層を有する半導体発光装置を提供できる。
半導体発光装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
以下において、XYZ座標系を適宜参照して説明される。また、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
<第一実施形態>
[半導体発光装置]
半導体発光装置の第一実施形態について説明する。図1は、半導体発光装置100の部分断面図である。半導体発光装置100は、半導体発光素子1と、半導体発光素子1を支持する支持体2とを有する。半導体発光素子1と支持体2との間には、半導体発光素子1側から順に、複合めっき層3と、シード層4とを有する。
[半導体発光装置]
半導体発光装置の第一実施形態について説明する。図1は、半導体発光装置100の部分断面図である。半導体発光装置100は、半導体発光素子1と、半導体発光素子1を支持する支持体2とを有する。半導体発光素子1と支持体2との間には、半導体発光素子1側から順に、複合めっき層3と、シード層4とを有する。
半導体発光素子1は、GaAs系の半導体材料を使用した端面発光型のLDチップから構成される。半導体発光素子1は光出射端面1eからレーザ光L1を出射する。なお、半導体発光素子1は本実施形態に限定されず、例えば、半導体発光素子1は、GaAs系以外の半導体材料(例えばGaN系やInP系など)から構成されてもよい。また、半導体発光素子1はLEDチップでも構わない。
シード層4は、複合めっき層3と支持体2との密着性を高めるために使用される。例えば、支持体2の表面が導電性でない場合(例えば支持体2の表面がSiO2膜)には、電気めっきによる成膜で十分な密着性を得られにくいため、支持体2上に薄い導電性層を成膜する。シード層4は、特に限定されないが、例えば、チタン/白金/金、チタン/金、クロム/白金/金、又はクロム/金をスパッタリングにより成膜した層から構成される。なお、シード層4は、なくても構わない。
支持体2は、半導体発光素子1を支持するとともに、半導体発光素子1に生じた熱を吸収し拡散させる。支持体2は、例えば、AlN基板等で構成されたサブマウントでもよい。
本実施形態では、半導体発光素子1が複合めっき層3に接触しているが、半導体発光素子1と複合めっき層3との間に別の層が介在し、半導体発光素子1が複合めっき層3に接触していない形態でも構わない。別の層としては、例えば、半導体発光素子1と複合めっき層3とを接合するための半田層や、半田の他の層への流出を防止する半田ブロック層や、光反射層などが挙げられる。
[複合めっき層の概要]
複合めっき層3について説明する。図2は、図1のA1領域(半導体発光素子1と複合めっき層3とが接する領域)の要部拡大断面図である。複合めっき層3は、金属層30中にダイヤモンド粒子(31,32)が分散された層を含む。金属層30は熱伝導性を有する材料であり、本実施形態では、金属層30は銅から構成されている。しかしながら、金属層30は、銅合金から構成されても構わないし、例えば、比較的熱伝導率の高いアルミニウム等の銅ではない材料から構成されても構わない。また、詳細は後述するが、ダイヤモンド粒子(31,32)は、粒子径の大きい順に、第一粒子群を構成するダイヤモンド粒子31と、第二粒子群を構成するダイヤモンド粒子32と、を含む。
複合めっき層3について説明する。図2は、図1のA1領域(半導体発光素子1と複合めっき層3とが接する領域)の要部拡大断面図である。複合めっき層3は、金属層30中にダイヤモンド粒子(31,32)が分散された層を含む。金属層30は熱伝導性を有する材料であり、本実施形態では、金属層30は銅から構成されている。しかしながら、金属層30は、銅合金から構成されても構わないし、例えば、比較的熱伝導率の高いアルミニウム等の銅ではない材料から構成されても構わない。また、詳細は後述するが、ダイヤモンド粒子(31,32)は、粒子径の大きい順に、第一粒子群を構成するダイヤモンド粒子31と、第二粒子群を構成するダイヤモンド粒子32と、を含む。
はじめに、金属層30にダイヤモンド粒子(31,32)を含ませることの意義について説明する。まず、ダイヤモンドは、金属層30を構成する銅よりも熱伝導性に優れる材料である。そのため、複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子(31,32)の体積占有率が向上すると、基本的には、複合めっき層3の熱伝導特性が向上し、それに伴い半導体発光装置100の放熱性が向上する。ただし、詳細は後述するが、ダイヤモンド粒子(31,32)の粒子径によっては、複合めっき層3の熱伝導特性が上昇しない場合がある。
次に、ダイヤモンド粒子の粒子径について説明する。本明細書において、ダイヤモンドの粒子径は、当該ダイヤモンド粒子と同じ体積からなる真球の直径により定義される。例えば、図2における、ダイヤモンド粒子31の粒子径は、ダイヤモンド粒子31と同等の体積を有する真球(図2において、一点鎖線で示される円)の直径φ1で表される。ダイヤモンド粒子32の粒子径は、直径φ2で表される。この粒子径の測定方法の一例は、後述するダイヤモンド粒子の体積占有率計測方法にて示す。
図3は、半導体発光素子1に接する領域(例えばA1領域)における複合めっき層3の断面を模式的に示した図である。この図では、ダイヤモンド粒子(31,32)と同じ体積からなる真球をもってダイヤモンド粒子を描いている。なお、ダイヤモンド粒子(31,32)の実際の形状は複雑であり、ダイヤモンド粒子(31,32)の配置される向きは統一されていないが、図3に描かれた真球は、実際のダイヤモンド粒子(31,32)の体積を平均化させて表示したものといえる。
[複合めっき層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率]
複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子(31,32)の体積占有率について説明する。比較的大きい粒子径を有するダイヤモンド粒子31は、体積占有率を高めるために、互いに接近した状態で密に配置されている。そして、隣り合うダイヤモンド粒子31の隙間に、比較的小さい粒子径のダイヤモンド粒子32を配置することで、複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子(31,32)の体積占有率を高めている。つまり、異なる粒子径のダイヤモンド粒子(31,32)を混在させることにより複合めっき層3における体積占有率を高め、複合めっき層3の熱伝導特性を向上させる。本明細書において、体積占有率とは、複合めっき層3全体の体積に対する、ダイヤモンド粒子の占める体積の割合を百分率で示したものである。
複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子(31,32)の体積占有率について説明する。比較的大きい粒子径を有するダイヤモンド粒子31は、体積占有率を高めるために、互いに接近した状態で密に配置されている。そして、隣り合うダイヤモンド粒子31の隙間に、比較的小さい粒子径のダイヤモンド粒子32を配置することで、複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子(31,32)の体積占有率を高めている。つまり、異なる粒子径のダイヤモンド粒子(31,32)を混在させることにより複合めっき層3における体積占有率を高め、複合めっき層3の熱伝導特性を向上させる。本明細書において、体積占有率とは、複合めっき層3全体の体積に対する、ダイヤモンド粒子の占める体積の割合を百分率で示したものである。
図4は、複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子(31,32)について、各ダイヤモンド粒子の粒子径(μm)を横軸に、各粒子径のダイヤモンド粒子の単位粒子径幅あたりの体積占有率(vol%/μm)を縦軸にプロットしたグラフである。このグラフを任意の粒子径の範囲で積分することにより、複合めっき層3における当該粒子径の範囲のダイヤモンド粒子の体積占有率が求められる。このグラフは、後述する3次元X線顕微鏡を使用して、ダイヤモンド粒子の体積を測定し、測定結果からダイヤモンド粒子と同じ体積を有する真球の粒子径を導き、粒子径別の粒子群ごとに分類整理することにより得られる。
ダイヤモンド粒子31は、64μm以上200μm以下の粒子径を有する第一粒子群71で構成される。ダイヤモンド粒子32は、16μm以上50μm以下の粒子径を有する第二粒子群72で構成される。図4に示されるように、各粒子群(71,72)は、粒子径が一定の範囲にあるダイヤモンド粒子の集合を表している。各粒子群(71,72)において、ダイヤモンド粒子の粒子径が全て同じである必要はない。各粒子群(71,72)は、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有する。本実施形態では、第一粒子群71が三つのピーク値(P11,P12,P13)を有し、第二粒子群72が二つのピーク値(P21,P22)を有する。
第二粒子群72における二つのピーク値(P21,P22)のうち、体積占有率の最大値をとるときの粒子径(図4では、30μm)は、第一粒子群71におけるピーク値(P11,P12,P13)のうち最大値をとるときの粒子径(図4では、180μm)に対して、1/4倍以下である。そのため、隣り合う第一粒子群71のダイヤモンド粒子31の隙間に、第二粒子群72のダイヤモンド粒子32が入り込むことができる。加えて、ダイヤモンド粒子32が入り込んでも、ダイヤモンド粒子32が複合めっき層3から突出することなく、複合めっき層3の上面3aの平坦性を維持できる(図2、図3参照)。
複合めっき層3には、粒子径が50μmを超え64μm未満のダイヤモンド粒子を実質的に有していない。ここで、「粒子径が50μmを超え64μm未満のダイヤモンド粒子を実質的に有していない」とは、ダイヤモンド粒子の粒子径範囲50~64μmで積分した体積占有率が、1vol%未満であることを表す。これにより、第二粒子群72を構成するダイヤモンド粒子32が、第一粒子群71を構成するダイヤモンド粒子31の隙間に配置されやすい大きさと数になり、複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子(31,32)の体積占有率を高めることができる。加えて、ダイヤモンド粒子32が複合めっき層3から突出することなく、複合めっき層3の上面3aの平坦性を維持できる(図2、図3参照)。
第一粒子群71の上限が200μmである理由を説明する。複合めっき層3は、支持体2の一部分の面上に成膜されることが多い。このような部分的な成膜には、通常、複合めっき層3の厚み以上に厚いレジストパターンの上に複合めっき層3を設け、不要な部分の複合めっき層3をレジストパターンと共に除去するリフトオフ法が使用される。ゆえに、複合めっき層3の厚みの上限は、リフトオフ法に使用されるレジスト膜の厚みの上限に依存する。成膜しやすいレジスト膜の厚みの上限は200μmであることを踏まえると、リフトオフ法を行うためには、めっき層の厚みの上限も200μm以内であると好ましい。そして、ダイヤモンド粒子31の粒子径φ1は、複合めっき層3の厚みを上限とする。ゆえに、ダイヤモンド粒子31の粒子径は、200μm以内であると好ましい。
ところで、ダイヤモンド粒子(31,32)と金属層30との界面領域における熱伝導率は、ダイヤモンド粒子(31,32)の熱伝導率及び金属層30の熱伝導率のいずれとも異なる。本発明者は、金属層30が銅の場合、ダイヤモンド粒子(31,32)と銅との界面領域における熱伝導率は、銅の熱伝導率よりも低下することに着目した。この理由は、ダイヤモンド粒子(31,32)と銅との界面にある微小な隙間が、熱伝導を妨げるものと推察される。このことは、ダイヤモンド粒子の粒子径の大きい方が、銅とダイヤモンド粒子との界面の面積が同一体積中にダイヤモンドが占有する体積を同じにした場合、小さくなることで、熱伝導特性が高まることを意味する。本実施形態の半導体発光装置100において、第二粒子群72の16μmから50μmの粒子径の範囲で積分した体積占有率S2(図4における、横線からなるハッチング領域の合計面積)は、第一粒子群71の64μmから200μmの粒子径の範囲で積分した体積占有率S1(図4における、縦線からなるハッチング領域の合計面積)よりも小さい。すなわち、第一粒子群71を構成するダイヤモンド粒子31全体の体積占有率は、第二粒子群72を構成するダイヤモンド粒子32全体の体積占有率よりも大きくなり、複合めっき層3の熱伝導率を高めやすい。
(1)式中、k:複合めっき層の熱伝導率(W/mK)、km:金属層の熱伝導率(W/mK)、kd:ダイヤモンド粒子の熱伝導率(W/mK)、Vd:ダイヤモンド粒子の体積占有率、α:ダイヤモンド粒子の半径(m)、hc:ダイヤモンドと金属層との界面における熱伝達率(W/m2K)である。
(1)式を用いて、ダイヤモンド粒子を含む複合めっき層の熱伝導率の理論値を算出できる。図5は、(1)式を用いて、ダイヤモンド粒子の体積占有率Vdごとに、ダイヤモンド粒子の粒子径(μm)を横軸に、複合めっき層の熱伝導率(W/mK)を縦軸に表したグラフである。このグラフから、粒子径(直径)が小さくなるほど、複合めっき層の熱伝導率kが低下することがわかる。これは、粒子径が小さくなるほど、ダイヤモンド粒子と金属層との界面の面積が大きくなり、熱伝導率が低下することに起因する。
図5から、ダイヤモンド粒子の粒子径が16μm以上では、銅の熱伝導率である400W/mKを超えるが、粒子径が16μm未満ではダイヤモンド粒子の熱伝導率が銅の熱伝導率を下回ることがわかる。よって、粒子径が16μm未満のダイヤモンド粒子の数を減らす、又は粒子径が16μm以上のダイヤモンド粒子の数を増やすことで、複合めっき層の熱伝導率を、銅からなる金属層の熱伝導率よりも高くすることができる。
[複合めっき層の熱膨張特性]
複合めっき層3は、半導体発光素子1に接して、または、半導体発光素子1の近傍に他の薄膜を介して配置されるため、半導体発光素子1と複合めっき層3との熱膨張率差が大きいと、半導体発光装置100の温度が変化したとき、半導体発光素子1が複合めっき層3に引っ張られて、歪みを受けやすくなる。複合めっき層3内のダイヤモンド粒子の量を調整することで、熱膨張に伴う半導体発光素子1の歪みを小さくする効果が得られる。これについて説明する。
複合めっき層3は、半導体発光素子1に接して、または、半導体発光素子1の近傍に他の薄膜を介して配置されるため、半導体発光素子1と複合めっき層3との熱膨張率差が大きいと、半導体発光装置100の温度が変化したとき、半導体発光素子1が複合めっき層3に引っ張られて、歪みを受けやすくなる。複合めっき層3内のダイヤモンド粒子の量を調整することで、熱膨張に伴う半導体発光素子1の歪みを小さくする効果が得られる。これについて説明する。
金属層30である銅の熱膨張率(Coefficient of Thermal Expansion、以下、「CTE」という。)は、16.5×10-6(/K)であるのに対し、ダイヤモンド粒子のCTEは、1.1×10-6(/K)である。つまり、銅-ダイヤモンド粒子から構成される複合めっき層3において、ダイヤモンド粒子の体積を増やすことで、複合めっき層3のCTEを引き下げることができる。
図6は、横軸に複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子の体積占有率を、縦軸にCTEをとるグラフである。グラフ中、破線G1は、複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子の体積占有率を変化させたときの複合めっき層3のCTEを示す。破線G1は、計算により求めた点P1(体積占有率が50vol%、CTEが6.6×10-6/K)と点P2(体積占有率が67vol%、CTEが6.05×10-6/K)を通る直線として表される。線D1は、GaAsのCTEである5.5×10-6(/K)を表す。一点鎖線Duは、線D1のCTEに対して+15%(CTE:6.33×10-6)を表す。一点鎖線Ddは、線D1のCTEに対して-15%(CTE:4.68×10-6)を表す。
本発明者による研究の結果、複合めっき層3のCTEがDd以上Du以下の範囲にあると、複合めっき層3のCTEが半導体発光素子1のCTEに近づくため、半導体発光素子1に与える歪みを抑制できることが判明した。そして、この結果と図6より、半導体発光素子1に与える歪みを抑制するためには、複合めっき層3におけるダイヤモンド粒子の(各粒子径で積分した)体積占有率を、59vol%以上にするとよいことがわかった。
さらに、支持体2には、通常、CTEの小さい材料が採用される。支持体2と複合めっき層3からなる複合体のCTEが半導体発光素子1と釣り合うように設計することを考慮すれば、複合めっき層3のCTEは、D1のCTEに対して+6%以下の値に設定すると、より好ましい。これより、複合めっき層3の体積占有率は76vol%以下であると、より好ましい。
以上より、複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子の粒子径と体積占有率は、熱伝導率とCTEの観点から決定される。熱伝導率のみを考慮すれば、粒子径が16μm以上のダイヤモンド粒子のみで複合めっき層3を構成しても構わない。しかしながら、複合めっき層3のCTEをも考慮すれば、粒子径が16μm未満のダイヤモンド粒子も併用して体積占有率を高めても構わない。もちろん、粒子径が16μm以上のダイヤモンド粒子のみで、複合めっき層3の体積占有率を59vol%にして、複合めっき層3のCTEを所望の値にしてもよい。
[複合めっき層の形成方法]
複合めっき層3は、電解めっき法により成膜される。攪拌法の場合、金属層30の材料となるめっき液中に上述した粒子群から構成されるダイヤモンド粒子(31,32)を投入するとともに、めっき液中に支持体2を配置する。そして、当該めっき液を攪拌させながら電解めっきを行い、支持体2(または支持体2の表面に設けられたシード層4)の表面に、ダイヤモンド粒子(31,32)を含む金属層30(すなわち、複合めっき層3)を成膜する。
複合めっき層3は、電解めっき法により成膜される。攪拌法の場合、金属層30の材料となるめっき液中に上述した粒子群から構成されるダイヤモンド粒子(31,32)を投入するとともに、めっき液中に支持体2を配置する。そして、当該めっき液を攪拌させながら電解めっきを行い、支持体2(または支持体2の表面に設けられたシード層4)の表面に、ダイヤモンド粒子(31,32)を含む金属層30(すなわち、複合めっき層3)を成膜する。
攪拌法を使用する場合、単一粒子群から構成されるダイヤモンド粒子のみを使用すると、複合めっき層3の体積占有率は40vol%が限界である。その理由は、めっき液中のダイヤモンド粒子はそれぞれ密着せずに、互いに流動可能な空間を介して存在しているためで、密接した状態の体積占有率よりも小さくなるためであると考えられる。例えば、立方体に対する真球の体積占有率は52%であるが、前述の流動空間を考慮すると、メッキ後の体積占有率はこれよりも小さくなってしまう。
しかしながら、本発明者らは、第一粒子群71のダイヤモンド粒子31に、第二粒子群72から構成されるダイヤモンド粒子32(小さな粒子径の粒子群のダイヤモンド粒子)を加えることで、攪拌法を使用しても、複合めっき層3全体としての体積占有率を高められることを見出した。
沈降法の場合、所望の粒子群から構成されるダイヤモンド粒子を分散させためっき液の成分を沈降させて、攪拌法よりも時間をかけながら電解めっきを行い、複合めっき層3を得る。沈降法では最密充填構造をとるため、攪拌法を使用した場合よりもダイヤモンド粒子の体積占有率を高めることができる。めっき液中に投入するダイヤモンド粒子は、粒子径によって規定された市販のダイヤモンド粒子を適宜組み合わせるなどして、各粒子群を所望の配合に構成するとよい。また、はじめは攪拌法で成膜し、途中から沈降法に切り替えて成膜してもよい。以降、この方法を、攪拌沈降法という。攪拌沈降法は、沈降法のみで行う場合に比べて、短時間で成膜できる。
[複合めっき層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率計測方法]
ダイヤモンド粒子の体積占有率は、複合めっき層3の成膜時に、投入したダイヤモンド粒子の1個当たりの体積及び個数を粒子径ごとに数えるとともに、複合めっき層3の成膜厚みを求めることにより、導くことができる。成膜後の複合めっき層3からダイヤモンド粒子の体積占有率を求める方法には、3次元X線顕微鏡(X線CT、例えば、カールツァイス社製 ZEISS Xradia 510 Versa)を使用する方法がある。X線CTを使用すると、任意の領域及び厚みの複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子の体積を測定し、測定された各粒子の体積と球の体積の公式(V=πD3/6、ここで、Vは球の体積を表し、Dは球の直径を表す。)から同じ体積を有する真球の直径(粒子径)を求めて、粒子径別の粒子群ごとに分類整理して複合めっき層3における体積占有率を求めることで算出できる。
ダイヤモンド粒子の体積占有率は、複合めっき層3の成膜時に、投入したダイヤモンド粒子の1個当たりの体積及び個数を粒子径ごとに数えるとともに、複合めっき層3の成膜厚みを求めることにより、導くことができる。成膜後の複合めっき層3からダイヤモンド粒子の体積占有率を求める方法には、3次元X線顕微鏡(X線CT、例えば、カールツァイス社製 ZEISS Xradia 510 Versa)を使用する方法がある。X線CTを使用すると、任意の領域及び厚みの複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子の体積を測定し、測定された各粒子の体積と球の体積の公式(V=πD3/6、ここで、Vは球の体積を表し、Dは球の直径を表す。)から同じ体積を有する真球の直径(粒子径)を求めて、粒子径別の粒子群ごとに分類整理して複合めっき層3における体積占有率を求めることで算出できる。
<第二実施形態>
図7及び図8を参照しながら、半導体発光装置の第二実施形態について説明する。以下に説明する以外の事項は、第一実施形態と同様に実施できる。第三実施形態以降も同様である。
図7及び図8を参照しながら、半導体発光装置の第二実施形態について説明する。以下に説明する以外の事項は、第一実施形態と同様に実施できる。第三実施形態以降も同様である。
図7は、図2と同様に、複合めっき層5周辺の要部拡大断面図である。図8は、図4と同様に、複合めっき層5に含まれるダイヤモンド粒子について、各ダイヤモンド粒子の粒子径(μm)を横軸に、各粒子径のダイヤモンド粒子の単位粒子径幅あたりの体積占有率(vol%/μm)を縦軸に表したグラフである。本実施形態の複合めっき層5は、粒子径の大きい順に、64μm以上200μm以下の粒子径を有する第一粒子群71を構成するダイヤモンド粒子31と、16μm以上50μm以下の粒子径を有する第二粒子群72を構成するダイヤモンド粒子32と、0.5μm以上16μm未満の粒子径を有する第三粒子群73を構成するダイヤモンド粒子33と、0.5μm未満の粒子径を有する第四粒子群74を構成するダイヤモンド粒子34と、を含む。また、複合めっき層5には、粒子径が50μmを超え64μm未満のダイヤモンド粒子を実質的に有していない。
第三粒子群73は、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ(図8では、ピーク値P31の一つ)有する。第三粒子群73におけるピーク値P31のうち最大値をとるときの粒子径(図8では1μm)は、第二粒子群72におけるピーク値(P21,P22)のうち最大値をとるときの粒子径(図8では30μm)に対して、1/4倍以下である。第四粒子群74は、体積占有率のピーク値(粒子径が0.1μm)を、少なくとも一つ(図8では、ピーク値P41の一つ)有する。第三粒子群73の体積占有率の積分値S3(左上がりの斜め線からなるハッチング領域の面積)は、第二粒子群72の体積占有率の積分値S2(横線からなるハッチング領域の面積)よりも小さい。
複合めっき層5では、ダイヤモンド粒子(31,32)の隙間の金属層30を、ダイヤモンド粒子33で埋めることができる。加えて、ダイヤモンド粒子33では大きすぎて埋められないダイヤモンド粒子(31,32,33)の隙間の金属層30を、ダイヤモンド粒子34で埋めることができる。これにより、複合めっき層5における体積占有率をさらに高めて、CTEを低下させることができる。
なお、本実施形態の変形例として、第四粒子群74を含まない、第一粒子群71、第二粒子群72及び第三粒子群73で構成された複合めっき層でも構わない。
<第三実施形態>
図9を参照しながら、第三実施形態について説明する。図9は、図2と同様に、要部拡大断面図である。本実施形態の複合めっき層6は、下層であるシード層4との境界に電着層35を有し、上層である半導体発光素子1との境界にキャップ層36を有する。
図9を参照しながら、第三実施形態について説明する。図9は、図2と同様に、要部拡大断面図である。本実施形態の複合めっき層6は、下層であるシード層4との境界に電着層35を有し、上層である半導体発光素子1との境界にキャップ層36を有する。
電着層35について説明する。電着層35は、第一粒子群71を構成するダイヤモンド粒子31と金属層30のみで構成される層(又は、ダイヤモンド粒子31と比較的少量の第二粒子群72で構成されるダイヤモンド粒子32と金属層30のみで構成される層)である。複合めっき層6を成膜するはじめの段階において、ダイヤモンド粒子32を全く含まないか、比較的少量のダイヤモンド粒子32を含むめっき液により電解めっきを行うことにより、電着層35を得ることができる。電着層35の厚みは、第一粒子群71を構成するダイヤモンド粒子31の粒子径φ1よりも薄くても構わない。
電着層35を設けることの利点を説明する。第一粒子群71を構成するダイヤモンド粒子31と通常量の第二粒子群72を構成するダイヤモンド粒子32とを含むめっき液の場合、複合めっき層6を成膜するはじめの段階で、小さいダイヤモンド粒子32が大きいダイヤモンド粒子31と支持体2との間に数多く入り込むと、ダイヤモンド粒子31の支持体2への固着を阻害することがある。そこで、第二粒子群72を構成するダイヤモンド粒子32を含まないか、比較的少量に制限しためっき液で電着層35を成膜することで、ダイヤモンド粒子31を支持体2へ固着しやすくする。
次に、キャップ層36について説明する。キャップ層36は、ダイヤモンド粒子(31,32)を含まない金属層30のみで構成される層である。キャップ層36は、ダイヤモンド粒子(31,32)を含まないめっき液で電解めっきを行うことにより、得られる。
キャップ層36を設けることの利点を、図10に示した半導体発光装置の参考形態を参照しながら説明する。図10は、キャップ層を有さない複合めっき層7の要部拡大断面図である。図10のB1領域及びB2領域のように、複合めっき層7の上面7aから一部のダイヤモンド粒子(31,32)が突出することがある。ダイヤモンド粒子(31,32)が突出すると、複合めっき層7の上面7aの平坦性が低下し、複合めっき層7と半導体発光素子1との密着性を悪化させる。
そこで、複合めっき層を成膜する最後の段階で、ダイヤモンド粒子を含まない金属層のみを成膜して、キャップ層36を形成する(図9参照)。これにより、複合めっき層の半導体発光素子1と接触する表面においてダイヤモンド粒子が存在しなくなるため、ダイヤモンド粒子の突出を防ぎ、複合めっき層6の上面6aの平坦性が向上する。よって、複合めっき層6と半導体発光素子1と密着性が維持される。なお、複合めっき層6の上面6aの平坦性を高めるために、複合めっき層6の上面6aを研磨しても構わない。
本実施形態では、電着層35及びキャップ層36の両方を設けたが、電着層35とキャップ層36のいずれか一方を設けても構わない。電着層35とキャップ層36の少なくとも一方の層を設けると、複合めっき層6を厚み方向に2分割し、半導体発光素子1に近い第一層と支持体2に近い第二層とに区分したとき、第一層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率は、第二層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率より大きくなる。
<第四実施形態>
図11及び図12を参照しながら、第四実施形態について説明する。図11は、半導体発光装置200の上面図(+Z側から半導体発光装置200を見た図)である。なお、図11では、後述する光透過部材9の図示を省略している。図12は、図1のA2-A2線に沿うYZ平面での断面図である。なお、図12に示す断面図において、断面より奥側に位置する物体の図示は省略している。
図11及び図12を参照しながら、第四実施形態について説明する。図11は、半導体発光装置200の上面図(+Z側から半導体発光装置200を見た図)である。なお、図11では、後述する光透過部材9の図示を省略している。図12は、図1のA2-A2線に沿うYZ平面での断面図である。なお、図12に示す断面図において、断面より奥側に位置する物体の図示は省略している。
図12を参照して、半導体発光装置200は、+Z側の主面60aに凹部61を有し、主にシリコンから構成される半導体基板60と、凹部61の底面62の一部に載置された、レーザ光を端面から発光する半導体発光素子1と、を有する。光出射端面1eはXZ平面に平行である。
半導体基板60は、図12においてハッチングして示されている。凹部61は、板状部材から四角錘台形状を除去された跡からなる形状であり、底面62に対して傾斜した側壁65を有する。そして、凹部61の開口側の面積は、凹部61の底面62側の面積よりも大きい。半導体基板60の+Z方向からみて、側壁65は底面62を囲む四方に存在する。
半導体発光素子1から出射したレーザ光L1は、エミッタ(光出射端面1e)と、エミッタに対向する側壁65との間の底面62の上に設けられた反射層80と、エミッタに対向する、傾斜した側壁65の上に設けられた反射層85で、反射する。反射したレーザ光L1は、半導体発光装置200から離れるように+Z方向へ出射される。
半導体発光素子1は、サブマウント等を介することなく、半導体基板60に直接実装されており、半導体発光素子1と半導体基板60との間には、放熱部材及び給電部材として機能する複合めっき層8がある。複合めっき層8は、上述した、ダイヤモンド粒子を含む金属層から構成される。複合めっき層8は半導体基板60の貫通孔に埋められた給電路78を通じて、半導体基板60の裏面に設けられた電極75に電気的に接続されている。なお、給電路78及び電極75は、ダイヤモンド粒子を分散させた金属層でなくても構わない。
以上で、第一~第四実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、上述した各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上述の各実施形態を組み合わせたり、各実施形態に種々の変更又は改良を加えたりできる。
第三粒子群73及び第四粒子群74の有無、並びに各粒子群の体積占有率を異ならせた銅-ダイヤモンド粒子の複合めっき層を、実施例及び比較例として記載する。以下に述べる以外の条件は、各実施例及び各比較例で共通している。
[実施例1~4]
実施例1~4について説明する。表1に記載の成膜法を使用して、複合めっき層を成膜した。複合めっき層に含まれるダイヤモンド粒子は、第一粒子群71及び第二粒子群72から構成され、第三粒子群73から構成されるダイヤモンド粒子33及び第四粒子群74から構成されるダイヤモンド粒子34は実質的に有していない。
実施例1~4について説明する。表1に記載の成膜法を使用して、複合めっき層を成膜した。複合めっき層に含まれるダイヤモンド粒子は、第一粒子群71及び第二粒子群72から構成され、第三粒子群73から構成されるダイヤモンド粒子33及び第四粒子群74から構成されるダイヤモンド粒子34は実質的に有していない。
成膜した複合めっき層を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表1の値を得た。実施例1~4では、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が、いずれも59vol%以上だったので、実施例1~4では、複合めっき層のCTEが、半導体発光素子1(GaAs)のCTEの±15%以内である条件を充足した。つまり、実施例1~4では、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制できる。
また、各粒子群の体積占有率に基づいて、複合めっき層の熱伝導率を算出した。この算出は、次の要領で行われる。実施例1の場合、はじめに、第一粒子群が、特定の粒子径のダイヤモンド粒子から構成されると仮定して、(1)式を使用して、仮に複合めっき層が第一粒子群のみで構成された場合の複合めっき層の熱伝導率k1と、仮に複合めっき層が第二粒子群のみで構成された場合の複合めっき層の熱伝導率k2と、を求めた。実施例1の場合、k1=533(W/mK)、k2=429(W/mK)であった。次に、各粒子群の体積占有率が、ダイヤモンド粒子合計の体積占有率に占める割合を用いて、熱伝導率k1及びk2の重みづけ作業を行い、異なる粒子群を有する複合めっき層における熱伝導率ktを求めた。例えば、実施例1の場合、熱伝導率kt=36/59×k1+23/59×k2で求められ、熱伝導率kt=492(W/mK)を得た。他の実施例及び比較例も同様に算出した。
実施例1~4では、複合めっき層の熱伝導率ktが銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。また、沈降法/撹拌沈降法いずれにおいても、複数の粒子群から構成されるめっき層の成膜スピードは、単一の粒子群で構成されるめっき層の成膜スピードに比べて早い。
[実施例5~8]
実施例5~8について説明する。表1に記載の成膜法を使用して、複合めっき層を成膜した。複合めっき層に含まれるダイヤモンド粒子は、第一粒子群71、第二粒子群72及び第三粒子群73から構成され、第四粒子群74を実質的に有していない。成膜した複合めっき層3を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表1の値を得た。実施例5~8では、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が、いずれも59vol%以上なので、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制できる。また、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。特に、実施例5は、第一粒子群71の体積占有率が40vol%以下という低値であるため、攪拌法にて本発明の複合めっき層3を成膜できる。また、撹拌法においても、複数の粒子群から構成されるめっき層の成膜スピードは、単一の粒子群で構成されるめっき層の成膜スピードに比べて早い。
実施例5~8について説明する。表1に記載の成膜法を使用して、複合めっき層を成膜した。複合めっき層に含まれるダイヤモンド粒子は、第一粒子群71、第二粒子群72及び第三粒子群73から構成され、第四粒子群74を実質的に有していない。成膜した複合めっき層3を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表1の値を得た。実施例5~8では、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が、いずれも59vol%以上なので、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制できる。また、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。特に、実施例5は、第一粒子群71の体積占有率が40vol%以下という低値であるため、攪拌法にて本発明の複合めっき層3を成膜できる。また、撹拌法においても、複数の粒子群から構成されるめっき層の成膜スピードは、単一の粒子群で構成されるめっき層の成膜スピードに比べて早い。
[実施例9~14]
実施例9~14について説明する。表1に記載の成膜法を使用して、複合めっき層3を成膜した。複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子は、第一粒子群71、第二粒子群72、第三粒子群73及び第四粒子群74から構成される。成膜した複合めっき層3を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表1の値を得た。実施例9~14では、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が、いずれも59vol%以上なので、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制できる。また、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。特に、実施例9~11は、第一粒子群71の体積占有率が40vol%以下という低値であるため、攪拌法にて本発明の複合めっき層3を成膜できる。
実施例9~14について説明する。表1に記載の成膜法を使用して、複合めっき層3を成膜した。複合めっき層3に含まれるダイヤモンド粒子は、第一粒子群71、第二粒子群72、第三粒子群73及び第四粒子群74から構成される。成膜した複合めっき層3を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表1の値を得た。実施例9~14では、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が、いずれも59vol%以上なので、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制できる。また、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。特に、実施例9~11は、第一粒子群71の体積占有率が40vol%以下という低値であるため、攪拌法にて本発明の複合めっき層3を成膜できる。
[比較例1~6]
比較例1~6について説明する。表2に記載の成膜法を使用して、複合めっき層3を成膜した。成膜した複合めっき層3を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表2の値を得た。比較例1~5について、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。比較例6では、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを下回った。これは、粒子径の小さいダイヤモンド粒子が比較的多く、銅(金属層)とダイヤモンド粒子との界面の面積が大きくなったことによる。そして、いずれの比較例も、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が59vol%を下回った。複合めっき層のCTEが、半導体発光素子1(GaAs)のCTEの±15%以内である条件を充足しないため、いずれの比較例も、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制することが難しい。
比較例1~6について説明する。表2に記載の成膜法を使用して、複合めっき層3を成膜した。成膜した複合めっき層3を、X線CTを使用して計測したところ、各粒子群の体積占有率について表2の値を得た。比較例1~5について、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを上回ったため、ダイヤモンド粒子を含ませることにより、熱伝導率が向上した。比較例6では、複合めっき層が、銅の熱伝導率の400W/mKを下回った。これは、粒子径の小さいダイヤモンド粒子が比較的多く、銅(金属層)とダイヤモンド粒子との界面の面積が大きくなったことによる。そして、いずれの比較例も、ダイヤモンド粒子の体積占有率の合計が59vol%を下回った。複合めっき層のCTEが、半導体発光素子1(GaAs)のCTEの±15%以内である条件を充足しないため、いずれの比較例も、複合めっき層が半導体発光素子1に与える歪みを、十分に抑制することが難しい。
1 :半導体発光素子
1e :光出射端面
2 :支持体
3,5,6,7,8:複合めっき層
3a :上面
4 :シード層
6a,7a :(複合めっき層の)上面
9 :光透過部材
30 :金属層
31,32,33,34 :ダイヤモンド粒子
35 :電着層
36 :キャップ層
60 :半導体基板
61 :凹部
62 :底面
65 :側壁
71 :第一粒子群
72 :第二粒子群
73 :第三粒子群
74 :第四粒子群
75 :電極
78 :給電路
80 :反射層
85 :反射層
100,200 :半導体発光装置
1e :光出射端面
2 :支持体
3,5,6,7,8:複合めっき層
3a :上面
4 :シード層
6a,7a :(複合めっき層の)上面
9 :光透過部材
30 :金属層
31,32,33,34 :ダイヤモンド粒子
35 :電着層
36 :キャップ層
60 :半導体基板
61 :凹部
62 :底面
65 :側壁
71 :第一粒子群
72 :第二粒子群
73 :第三粒子群
74 :第四粒子群
75 :電極
78 :給電路
80 :反射層
85 :反射層
100,200 :半導体発光装置
Claims (7)
- 半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を支持する支持体と、
前記半導体発光素子と前記支持体との間にあり、ダイヤモンド粒子が分散された金属層を含んで構成された複合めっき層と、を備え、
前記複合めっき層において、前記ダイヤモンド粒子の体積占有率が59vol%以上であり、
前記ダイヤモンド粒子は、粒子径が64μm以上200μm以下の第一粒子群と、粒子径が16μm以上50μm以下の第二粒子群と、を有する一方で、粒子径が50μmを超え64μm未満の粒子を実質的に有しておらず、
前記ダイヤモンド粒子の粒子径を横軸に、前記複合めっき層における前記ダイヤモンド粒子の単位粒子径幅あたりの体積占有率を縦軸にしたグラフにおいて、
前記第一粒子群及び前記第二粒子群は、それぞれ、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有し、
前記第二粒子群における前記ピーク値のうち、前記体積占有率の最大値をとるときの粒子径は、前記第一粒子群における前記ピーク値のうち、前記体積占有率の最大値をとるときの粒子径に対して、1/4倍以下であり、
前記第二粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は、前記第一粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率よりも小さいことを特徴とする、半導体発光装置。 - 前記ダイヤモンド粒子は、さらに、粒子径が0.5μm以上16μm未満の第三粒子群を有し、
前記ダイヤモンド粒子の粒子径を横軸に、前記ダイヤモンド粒子の前記複合めっき層における単位粒子径幅あたりの体積占有率を縦軸にしたグラフにおいて、
前記第三粒子群は、体積占有率のピーク値を少なくとも一つ有し、
前記第三粒子群におけるピーク値のうち最大値をとるときの粒子径は、前記第二粒子群におけるピーク値のうち最大値をとるときの粒子径に対して、1/4倍以下であり、
前記第三粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は、前記第二粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の半導体発光装置。 - 前記第一粒子群の前記粒子径の範囲で積分した体積占有率は40vol%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
- 前記複合めっき層の前記半導体発光素子が載置される側の表面には、前記ダイヤモンド粒子が存在しないことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記複合めっき層を厚み方向に2分割し、前記半導体発光素子に近い第一層と前記支持体に近い第二層とに区分したとき、前記第一層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率は、前記第二層におけるダイヤモンド粒子の体積占有率より大きいことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記金属層は、銅を主成分とする層であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記半導体発光素子は、GaAs系であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
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