以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成は、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
図1は、燃料噴射弁制御装置101の機能的構成を示す図である。
バッテリ103から供給されるバッテリ電圧110は、不図示のヒューズ及びリレーを介して、ECM(Engine Control Module)に備えられた燃料噴射弁制御装置101に供給される。燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の弁体が高燃料圧力(以下、高燃圧)状態においても開弁動作を行う上で必要となる高い電源電圧(以下、高電圧109)をバッテリ電圧110から生成する高電圧生成部104を備える。
高電圧生成部104は、駆動IC105からの指令に基づき、バッテリ電圧110から、予め設定された目標高電圧まで昇圧する。生成された高電圧109が燃料噴射弁108の開弁動作の開始時に印加されることで、燃料噴射弁108の弁体は、高燃圧により生じる強い閉弁力に勝る開弁力を得ることができる。
駆動IC105は、演算処理装置102から出力される燃料噴射弁108の駆動時間及び駆動電流の制御目標値に基づき、燃料噴射弁駆動部106,107を所定のシーケンスにて制御することによって、燃料噴射弁108の電流制御を行う。本実施形態では、高電圧生成部104と、駆動IC105と、燃料噴射弁駆動部106,107とをまとめて、「駆動回路部」とも称する。駆動回路部は、演算処理装置102から出力された制御指令に基づいて、燃料噴射弁108を駆動する駆動電流を燃料噴射弁108に供給する。この駆動回路部は、特許請求の範囲に記載された「駆動回路部」の一例に該当する。燃料噴射弁駆動部106,107の説明については、図2を用いて後述する。
図1では、演算処理装置102と駆動IC105とを同じ燃料噴射弁制御装置101内に実装する例を示したが、演算処理装置102と駆動IC105とを別の装置に実装して通信線で接続するようにしてもよい。
燃料噴射弁108の駆動時間及び駆動電流の制御目標値は、演算処理装置102にて演算される。詳しくは、燃料噴射弁108の駆動時間及び駆動電流の制御目標値は、演算処理装置102の多段噴射制御演算部102aによって演算される。演算処理装置102は、プロセッサ及びメモリを含むと共に多段噴射制御に関するプログラムを実行可能な、マイクロコンピュータによって構成される。演算処理装置102は、燃料噴射弁108の駆動を制御するための制御指令を駆動IC105へ出力する。この制御指令は、燃料噴射弁108の駆動時間及び駆動タイミングを示す駆動指令信号114と、燃料噴射弁108の駆動電流の制御目標値の推移を示す駆動電流プロフィール115とを含んでもよい。燃料噴射弁108の駆動時間及び駆動電流の制御目標値は、それぞれ、駆動指令信号114及び駆動電流プロフィール115として駆動IC105へ出力され得る。
演算処理装置102は、多段噴射制御演算部102aと、燃料噴射弁パルス幅演算部102bと、燃料噴射弁駆動波形選択部102cと、多段噴射正常判定部102dと、実行噴射判定部102eと、開閉弁検知部102fとを備える。演算処理装置102が備えるこれらの機能は、プロセッサ及びメモリ等のハードウェアと、多段噴射制御に関するプログラム等のソフトウェアとの協働によって実現される。演算処理装置102は、特許請求の範囲に記載された「演算処理部」の一例に該当する。
多段噴射制御演算部102aは、内燃機関の運転状態又は運転シーン等から、多段噴射制御の実行可否を判定する。多段噴射制御演算部102aは、多段噴射制御の実行を許可しない場合、1燃焼サイクル中に1回のみ燃料噴射を実行する通常の燃料噴射制御の実行に必要な演算処理を行う。多段噴射制御演算部102aは、多段噴射制御の実行を許可した場合、多段噴射制御の実行に必要な演算処理を行う。具体的には、多段噴射制御演算部102aは、多段噴射回数、燃料噴射量の分割比、噴射タイミング(燃料噴射弁108の駆動タイミング)等を、所定の演算式により演算する。多段噴射制御演算部102aは、演算されたこれらの情報113を、燃料噴射弁パルス幅演算部102bへ出力する。また、多段噴射制御演算部102aは、内燃機関の運転状態や燃圧等の情報111を燃料噴射弁駆動波形選択部102cへ出力する。多段噴射制御演算部102aは、演算された多段噴射回数に応じて駆動IC105に指令した噴射回数を示す指令噴射回数112を、多段噴射正常判定部102dへ出力する。
燃料噴射弁パルス幅演算部102bは、多段噴射制御演算部102aから出力された情報113に基づいて、多段噴射制御時に複数回行われる噴射毎の燃料噴射量を演算(例えば、燃料噴射量を分割比で除算)する。燃料噴射弁パルス幅演算部102bは、演算結果に応じて、燃料噴射弁108毎の駆動指令信号114をパルス信号によって生成し、駆動IC105及び開閉弁検知部102fへ出力する。
燃料噴射弁駆動波形選択部102cは、多段噴射制御演算部102aから出力された情報111に基づいて、燃料噴射弁108の駆動電流プロフィール115を選択し、駆動IC105へ出力する。
開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の動作を検知する。開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の駆動電流のピーク値に基づいて、燃料噴射弁108の開弁動作を検知し、演算処理装置102から出力される制御指令に基づいて燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の動作の検知結果を、実行噴射判定部102eへ出力する。
具体的には、開閉弁検知部102fには、燃料噴射弁駆動部(Lo)107に備えられた電流検知部206による駆動電流の検知結果120が入力される。開閉弁検知部102fは、当該駆動電流がピーク値に到達したことに基づいて燃料噴射弁108の開弁動作を検知する。例えば、開閉弁検知部102fは、当該駆動電流がピーク値に到達した時点を燃料噴射弁108が開弁動作を行った時点とみなす。
また、開閉弁検知部102fには、燃料噴射弁パルス幅演算部102bから出力された駆動指令信号114が入力される。駆動指令信号114は、燃料噴射弁108の駆動を指令する第1論理レベルと、燃料噴射弁108の駆動停止を指令する第2論理レベルとを有するパルス信号である。本実施形態では、第1論理レベルをONとし、第2論理レベルをOFFとして表している。すなわち、駆動指令信号114は、第1論理レベル(ON)の期間には燃料噴射弁108を開弁状態にすることを指令し、第2論理レベル(OFF)の期間には燃料噴射弁108を閉弁状態にすることを指令するパルス信号である。開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114が第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化したことに基づいて燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。例えば、開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114が第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点を燃料噴射弁108が閉弁動作を行った時点とみなす。
開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の動作の検知結果を示す開閉弁検知結果信号116をパルス信号によって生成し、実行噴射判定部102eへ出力する。開閉弁検知結果信号116は、燃料噴射弁108の開弁状態が検知されたことを示す第3論理レベルと、燃料噴射弁108の閉弁状態が検知されたことを示す第4論理レベルとを有するパルス信号である。本実施形態では、第3論理レベルをONとし、第4論理レベルをOFFとして表している。すなわち、開閉弁検知結果信号116は、第3論理レベル(ON)の期間には燃料噴射弁108が開弁状態であることを示し、第4論理レベル(OFF)の期間には燃料噴射弁108が閉弁状態であることを示すパルス信号である。開閉弁検知部102fは、特許請求の範囲に記載された「開閉弁検知部」の一例に該当する。開閉弁検知部102fの説明については、図6を用いて後述する。
実行噴射判定部102eは、開閉弁検知結果信号116が所定条件を満たすか否かによって、燃料噴射弁108が正常に動作したか否かを判定する。具体的には、実行噴射判定部102eは、開閉弁検知結果信号116と駆動指令信号114とを比較して、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定する。実行噴射判定部102eは、この判定結果に基づいて、燃料噴射弁108が正常に動作した噴射回数をカウントする。実行噴射判定部102eは、燃料噴射弁108が正常に動作した噴射回数を実行噴射回数117として多段噴射正常判定部102dへ出力する。実行噴射判定部102eの説明については、図7~図9を用いて後述する。なお、実行噴射判定部102eは、燃料噴射弁108の動作に異常があったか否かを判定し、異常があった噴射回数をカウントしてもよい。
多段噴射正常判定部102dは、実行噴射判定部102eから出力された実行噴射回数117と、多段噴射制御演算部102aから出力された指令噴射回数112とを比較して、多段噴射制御が正常に実行されたか否かを判定する。具体的には、多段噴射正常判定部102dは、実行噴射回数117が指令噴射回数112と一致するか否かによって、多段噴射制御が正常に実行されたか否かを判定する。多段噴射正常判定部102dは、実行噴射回数117が指令噴射回数112と一致する場合、多段噴射制御は正常に実行されたと判定する。多段噴射正常判定部102dは、実行噴射回数117が指令噴射回数112と不一致の場合、多段噴射制御の実行に異常があったと判定する。実行噴射回数117が指令噴射回数112と不一致の場合、内燃機関が要求する燃料噴射量を満足してないので、燃料噴射量に誤差が生じていると考えられる。多段噴射正常判定部102dは、判定結果に関する情報118を、多段噴射制御演算部102aへ出力する。多段噴射正常判定部102dの説明については、図7~図9を用いて後述する。
なお、当然ながら、説明上の都合、図1は、実際の構成を簡略化した図となっている。例えば、駆動指令信号114は、内燃機関に備えられた燃料噴射弁108毎に用意されることが一般的であり、同様に、多段噴射制御に関する噴射回数や分割比、噴射タイミング等も、時間的に変化が生じるため、気筒毎に演算することが望ましい。同様に、開閉弁検知結果信号116、実行噴射回数117及び指令噴射回数112についても、気筒毎に用意される。
また、開閉弁検知部102fにおいて燃料噴射弁108の動作の検知精度を向上させるべく、駆動電流がピーク値に到達した時点を精緻に解析しようとすると、プロセッサの処理速度やメモリ容量等の演算処理装置102のリソースを多く使用する。一方、演算処理装置102では、開閉弁検知部102f以外にも多数の機能を有し、様々な処理を実行しているので、開閉弁検知部102fがリソースを余り使用しないことが望ましい。近年のデバイスの性能向上に伴って、駆動IC105は、プロセッサ及びメモリを含むと共にプログラムを実行可能なデバイスによって構成することが可能である。
そこで、燃料噴射弁制御装置101は、駆動IC105がプログラムを実行可能なデバイスによって構成される場合、開閉弁検知部102fを駆動IC105内に実装してもよい。この場合、燃料噴射弁制御装置101は、電流検知部206の検知結果120を駆動IC105へ入力させると共に、駆動IC105から演算処理装置102の実行噴射判定部102eに対して開閉弁検知結果信号116を出力するように構成すればよい。これにより、燃料噴射弁制御装置101は、演算処理装置102の処理負荷を分散して演算処理装置102のリソースを確保しつつ、駆動電流がピーク値に到達した時点を精緻に解析して燃料噴射弁108の動作の検知精度を向上させることができる。よって、燃料噴射弁制御装置101は、開閉弁検知部102fを駆動IC105内に実装するだけで、比較的容易に異常検知性能を向上させることができる。
図2は、図1に示す燃料噴射弁駆動部106,107の構成を示す図である。
燃料噴射弁108の上流側には、燃料噴射弁駆動部(Hi)106が接続される。燃料噴射弁駆動部(Hi)106は、燃料噴射弁108を開弁させるために必要な駆動電流を燃料噴射弁108へ供給する。具体的には、燃料噴射弁駆動部(Hi)106は、高電圧生成部104により生成された高電圧109を、逆流防止のために設けられたダイオード201を介して、スイッチング素子であるTR_HiVboost203を用いて、燃料噴射弁108へ供給する。また、燃料噴射弁駆動部(Hi)106は、燃料噴射弁108を開弁させた後、燃料噴射弁108が開弁状態を保持するために必要な駆動電流を燃料噴射弁108へ供給する。具体的には、燃料噴射弁駆動部(Hi)106は、バッテリ103から供給されるバッテリ電圧110を、高電圧109と同様に、逆流防止のために設けられたダイオード202を介して、スイッチング素子であるTR_HiVb204を用いて、燃料噴射弁108へ供給する。
燃料噴射弁108の下流側には、燃料噴射弁駆動部(Lo)107が接続される。燃料噴射弁駆動部(Lo)107は、スイッチング素子であるTR_Low205を含む。燃料噴射弁駆動部(Lo)107は、TR_Low205をONにすることによって、燃料噴射弁駆動部(Hi)106から供給された高電圧109又はバッテリ電圧110を、燃料噴射弁108に印加することができる。TR_Low205の下流側には、燃料噴射弁108の駆動電流を検知する電流検知部206が接続される。電流検知部206は、例えば、燃料噴射弁108の消費電流を検知するシャント抵抗によって構成される。電流検知部206は、駆動電流の検知結果を開閉弁検知部102fへ出力される。これにより、燃料噴射弁108の電流制御が可能となる。
なお、図2は、燃料噴射弁108の駆動方法の一例を示したものである。例えば、低燃圧の場合等には、燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108を開弁させるために必要な駆動電流を供給するために、高電圧109ではなく、バッテリ電圧110を用いることができる。
図3は、燃料噴射弁108を駆動した際の駆動電流及び駆動電圧の挙動を説明する図である。
図3には、上から順に、駆動指令信号114a、駆動電流301、及び、駆動電圧302のそれぞれの挙動が示されている。なお、図3には、駆動電圧302として、図2に示す燃料噴射弁駆動部(Lo)107と、燃料噴射弁制御装置101のグラウンドとの間における電圧が示されている。
演算処理装置102から駆動IC105へ駆動指令信号114aが入力されると、駆動IC105は、駆動指令信号114aに基づいて、燃料噴射弁108を駆動する。具体的には、駆動指令信号114aが第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した時点T303において、燃料噴射弁108の駆動が開始される。駆動IC105は、燃料噴射弁駆動波形選択部102cにて選択された駆動電流プロフィール115に基づいて、燃料噴射弁108の電流制御を行う。
図3には、燃料噴射弁108の電流制御の一例が示されている。燃料噴射弁駆動部106,107は、駆動電流301が、最初の制御目標値である開弁電流301aに到達する時点T304まで、高電圧302aを燃料噴射弁108へ供給する。開弁電流301aは、駆動電流301のピーク値に相当する。別の方法として、燃料噴射弁駆動部106,107は、駆動指令信号114aが第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した時点T303から、開弁電流保持時間301eが経過するまで、高電圧302aを燃料噴射弁108へ供給してもよい。開弁電流保持時間301eは、駆動電流301がピーク値に到達するまでに要する時間と考えることができる。すなわち、駆動電流プロフィール115によって示される制御目標値は、燃料噴射弁108が開弁動作を行うために必要な駆動電流301の制御目標値である開弁電流301aであってもよいし、燃料噴射弁108が開弁動作を行うために必要な駆動時間の制御目標値である開弁電流保持時間301eであってもよい。開弁電流301a及び開弁電流保持時間301eは、燃料噴射弁108の特性や、燃圧を含めた内燃機関の運転状態等に基づいて予め定められる。
その後、駆動電流301の制御目標値は、開弁保持電流301bへ移行される。ここで、燃料噴射弁駆動部106,107は、燃料噴射弁108の開弁状態を保持するために、燃料噴射弁108に供給される駆動電圧302を高電圧302aからバッテリ電圧302bに切り替える。その後、必要に応じて、駆動電流301の制御目標値は、開弁保持電流301cへ移行される。この開弁保持電流301bから開弁保持電流301cへの移行は、例えば、駆動指令信号114aが第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した時点T303から、保持電流切替え時間301dが経過した時点T305に行われる。保持電流切替え時間301dは、燃料噴射弁108の特性や、燃圧を含めた内燃機関の運転状態等に基づいて予め定められる。
また、燃料噴射弁駆動部106,107は、駆動電流301を開弁保持電流301b,301cに維持するため、いわゆるDuty制御を行う。燃料噴射弁駆動部106,107は、このDuty制御を、駆動電流301がピーク値に相当する開弁電流301aに到達した時点T304から、駆動指令信号114aが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する時点T306まで維持する。
時点T306の後、燃料噴射弁駆動部106,107は、一定期間(時点T306から時点T307まで)、燃料噴射弁108が開弁動作を行う際とは逆の極性を有する高電圧302aを供給する。これは、燃料噴射弁108の残留磁力を迅速に消磁して、燃料噴射弁108の閉弁動作を迅速に行うためである。
なお、図3は、燃料噴射弁108の電流制御の一例を示したものである。燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の特性や、燃圧を含めた内燃機関の運転状態等によって、最適な駆動電流プロフィール115を選択して、図3とは異なる燃料噴射弁108の電流制御を行うことができる。
図4は、多段噴射制御を説明する図である。
図4は、1燃焼サイクル中に1回のみ燃料噴射を実行する通常の噴射制御から、1燃焼サイクル中に複数回燃料噴射を実行する多段噴射制御へと切り替わる際の、駆動指令信号114b~114eを示している。図4に示す時点T401は、多段噴射制御が許可された時点を示している。
まず、燃料噴射弁108に限らず、所定のクランク位置(角度)に基づきアーキテクチャ駆動を行う、いわゆる角度制御の一般的な方法として、気筒毎の制御基準位置T408a~T408dを設け、この制御基準位置T408a~T408dを基準に所望の角度にて、アーキテクチャ動作のタイミングを計っている。
図4において、時点T401より前(図中の時点T401より左側)では、多段噴射制御の実行が許可されていない。すなわち、時点T401より前では、駆動指令信号114eの第1論理レベル(ON)の期間402や、駆動指令信号114bの第1論理レベル(ON)の期間403として示すように、1燃焼サイクル中に1回のみ燃料噴射を実行する通常の噴射制御が実行される。また、時点T401より後(図中の時点T401より右側)では、多段噴射制御が許可されている。但し、駆動指令信号114cの第1論理レベル(ON)の期間404は、OFFからONに変化した時点が、時点T401より前の制御基準位置T408aから、噴射タイミング規定時間409を経過した時点であるので、通常の噴射制御が実行される。噴射タイミング規定時間とは、制御基準位置から噴射タイミングまでの時間であり、噴射タイミングを規定する時間である。
これに対し、時点T401より後の制御基準位置T408bから、噴射タイミング規定時間410だけ経過した時点以降では、多段噴射制御が実行される。例えば、駆動指令信号114dの第1論理レベル(ON)の期間405、駆動指令信号114eの第1論理レベル(ON)の期間406、及び、駆動指令信号114bの第1論理レベル(ON)の期間407では、多段噴射制御が実行される。図4において、例えば、駆動指令信号114dの第1論理レベル(ON)の期間405は、1段目の期間405a、2段目の期間405b、3段目の期間405cの3つに分割されており、指令噴射回数が3回である。指令噴射回数が3回以外の場合でも、多段噴射制御の実行方法は、図4にて説明した方法と同様である。
なお、図4では、1燃焼サイクルは、気筒毎にクランク位置(角度)が異なるが、4サイクル式内燃機関の燃焼行程(吸気工程、圧縮工程、膨張工程及び排気工程)中のクランク位置(角度)の範囲である720degの範囲としている。
図5は、多段噴射制御時の燃料噴射弁108の駆動電流及び駆動電圧の挙動を説明する図である。
図5は、図4に示す駆動指令信号114dの第1論理レベル(ON)の期間405を拡大した図である。図5には、上から順に、駆動指令信号114d、駆動電流502、高電圧503及び駆動電圧504のそれぞれの挙動が示されている。なお、図5には、駆動電圧504として、燃料噴射弁108の上流側と下流側との間における電圧(差動電圧)が示されている。図5は、燃料噴射回数が3回の多段噴射制御が実行される例を示している。図5では、駆動指令信号114dは、第1論理レベル(ON)を示す1段目の期間405a,2段目の期間405b,3段目の期間405cにおいて、燃料噴射弁108を駆動するよう指令している。図5では、噴射タイミング、すなわち、燃料噴射弁108の駆動タイミングとして、時点T505,T511,T512が示されている。
図5に示す駆動電流プロフィール115では、駆動指令信号114dが第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した時点T505が、燃料噴射弁108の駆動タイミングであり、燃料噴射弁108への駆動電流502の供給が開始される。駆動電流502は、燃料噴射弁108の駆動タイミング(時点T505)になると、ピーク値である開弁電流502aに到達するまで燃料噴射弁108へ供給される。駆動電流502は、ピーク値である開弁電流502aに到達すると(時点T506)、時点T507まで燃料噴射弁108への供給が一旦停止され、時点T507から当該供給が再開され、開弁保持電流502bに維持される。その後、駆動電流502は、駆動指令信号114dが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点T508において、燃料噴射弁108への供給が停止される。その後、駆動電流502は、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T511)以降、従前と同様のシーケンスにて燃料噴射弁108へ供給される。
高電圧503は、予め目標高電圧503aまで昇圧された状態となっている。高電圧503は、燃料噴射弁108の開弁動作時(時点T505からT506まで)に、燃料噴射弁108に消費されるため、一時的に電圧降下する。その後、高電圧503は、昇圧開始電圧503bを下回ると、駆動IC105から高電圧生成部104に対する昇圧指令が出力されて、一定の昇圧時間を経て(時点T510)、再び目標高電圧503aまで昇圧される。その後、高電圧503は、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T511)以降、従前と同様のシーケンスにて推移する。
駆動電圧504では、燃料噴射弁108の駆動タイミング(時点T505)になると、目標高電圧503aが燃料噴射弁108へ供給される。駆動電圧504は、駆動電流502がピーク値である開弁電流502aに到達するまで(時点T506)、若干の電圧降下を伴うものの目標高電圧503aに維持される。
駆動電圧504では、駆動電流502が開弁電流502aに到達すると(時点T506)、一定期間(時点T506から時点T507まで)、燃料噴射弁108が開弁動作を行う際とは逆の極性を有する目標高電圧504bが燃料噴射弁108へ供給される。これは、時点T506から時点T507まで駆動電流502の供給が停止する駆動電流プロフィール115に対応しており、燃料噴射弁108の残留磁力を迅速に消磁して、燃料噴射弁108の閉弁動作を迅速に行うためである。なお、図5では、駆動電圧504として、燃料噴射弁108の上流側と下流側との間における電圧(差動電圧)が示されているので、目標高電圧504bはマイナス側に描かれる。
駆動電圧504では、時点T507からバッテリ電圧504aが燃料噴射弁108へ供給される。駆動電圧504は、駆動電流502が開弁保持電流502bになった時点から、駆動指令信号114aが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する時点T508まで、Duty制御によって制御される。Duty制御中、駆動電圧504は、バッテリ電圧504aが供給された状態と、バッテリ電圧504aが供給停止された状態(0V)とを往復する挙動を繰り返す。
駆動電圧504では、時点T508の後、一定期間(時点T508から時点T509まで)、燃料噴射弁108が開弁動作を行う際とは逆の極性を有する目標高電圧504bが燃料噴射弁108へ供給される。これは、時点T508から駆動電流502の供給が停止する駆動電流プロフィール115に対応しており、燃料噴射弁108の残留磁力を迅速に消磁して、燃料噴射弁108の閉弁動作を迅速に行うためである。その後、駆動電圧504は、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T511)以降、従前と同様のシーケンスにて燃料噴射弁108へ供給される。
図6は、多段噴射制御時の開閉弁検知部102fの動作を説明する図である。
図6には、燃料噴射弁108の駆動時間が互いに異なるパターン1及びパターン2が示されている。図6のパターン1には、上から順に、駆動指令信号114f、駆動電流602及び開閉弁検知結果信号116aのそれぞれの挙動が示されている。図6のパターン2には、上から順に、駆動指令信号114g、駆動電流603及び開閉弁検知結果信号116bのそれぞれの挙動が示されている。
図6のパターン1に示す駆動指令信号114fは、第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化する時点が時点T604,T610,T613であり、第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する時点が時点T609,T612,T615である。パターン1は、図5と同様に、燃料噴射弁108の駆動時間が比較的長いパターンである。
図6のパターン1に示す駆動電流プロフィール115では、図5と同様に、駆動電流602は、開弁電流602aに到達した後(時点T605)、時点T607まで燃料噴射弁108への供給が一旦停止された後に再開され、開弁保持電流602bに維持される。なお、図6のパターン1に示す駆動電流プロフィール115では、図3と同様に、2つの開弁保持電流602b,602cを有してもよい(図6の灰色線を参照)。その後、駆動電流602は、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T610)以降、従前と同様のシーケンスにて燃料噴射弁108へ供給される。
開閉弁検知部102fは、駆動電流602がピーク値である開弁電流602aに到達したことに基づいて、燃料噴射弁108の開弁動作を検知する。具体的には、開閉弁検知部102fは、駆動電流602がピーク値である開弁電流602aに到達した時点T605を、燃料噴射弁108が開弁動作を行った時点とみなす。詳細には、開閉弁検知部102fは、駆動電流602がピーク値である開弁電流602aに到達した時点T605を、燃料噴射弁108の開弁動作が完了した時点とみなす。燃料噴射弁108の開弁動作が完了した時点とは、燃料噴射弁108の弁体がフルリフトになった時点に相当する。そして、開閉弁検知部102fは、時点T605において、開閉弁検知結果信号116aを第4論理レベル(OFF)から第3論理レベル(ON)に変化させる。
その後、開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114fが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化したことに基づいて、燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。具体的には、開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114fが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点T609を、燃料噴射弁108が閉弁動作を行った時点とみなす。詳細には、開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114fが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点T609を、図5の時点T508に示した目標高電圧504bが供給された時点とみなす。すなわち、開閉弁検知部102fは、この時点T609を燃料噴射弁108の閉弁動作が完了した時点とみなす。そして、開閉弁検知部102fは、時点T609において、開閉弁検知結果信号116aを第3論理レベル(ON)から第4論理レベル(OFF)に変化させる。その後、開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T610)以降、従前と同様のシーケンスにて燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を検知する。
図6のパターン2に示す駆動指令信号114gは、第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化する時点が時点T604,T610,T613であり、第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する時点が時点T605,T611,T614である。駆動指令信号114gは、第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する時点T605,T611,T614が、駆動電流603がピーク値である開弁電流603aに到達する時点と略同一である。パターン2は、燃料噴射弁108の駆動時間がパターン1よりも短いパターンである。
図6のパターン2に示す駆動電流プロフィール115では、駆動電流603は、開弁電流603aに到達した後(時点T605)、開弁保持電流に移行することなく、直ちに燃料噴射弁108への供給が停止される。その後、駆動電流603は、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T610)以降、従前と同様のシーケンスにて燃料噴射弁108へ供給される。
開閉弁検知部102fは、パターン1と同様に、駆動電流603がピーク値である開弁電流603aに到達した時点T605を、燃料噴射弁108が開弁動作を行った時点とみなす。そして、開閉弁検知部102fは、時点T605において、開閉弁検知結果信号116bを第4論理レベル(OFF)から第3論理レベル(ON)に変化させる。
その後、開閉弁検知部102fは、パターン1と同様に、駆動指令信号114gが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点T605を、燃料噴射弁108が閉弁動作を行った時点とみなす。そして、開閉弁検知部102fは、時点T605において、開閉弁検知結果信号116bを第3論理レベル(ON)から第4論理レベル(OFF)に変化させる。その後、開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の次回の駆動タイミング(時点T610)以降、従前と同様のシーケンスにて燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を検知する。
パターン2では、駆動電流603が開弁電流603aに到達すると同時に(時点T605,T611,T614)、駆動指令信号114gが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する。しかし、開閉弁検知部102fは、開閉弁検知結果信号116bに示すように、燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を適切に検知することができる。
上記のように、開閉弁検知部102fは、駆動電流602,603がピーク値である開弁電流602a,603aに到達したことに基づいて、燃料噴射弁108の開弁動作を検知する。開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114f,114gが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化したことに基づいて、燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。これにより、開閉弁検知部102fは、微分器等の特別な回路やアルゴリズムを設けなくても、燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を正確に検知することができる。特に、開閉弁検知部102fは、駆動電流603が開弁保持電流に移行せずに直ちに供給停止されるような、燃料噴射弁108の駆動時間が短い場合や駆動電圧のDuty制御が行われない場合であっても、燃料噴射弁108の開弁動作を正確に検知することができる。
なお、開閉弁検知部102fは、駆動電流602,603がピーク値に到達するまでに要する時間である開弁電流保持時間301eに基づいて(図3を参照)、燃料噴射弁108の開弁動作を検知してもよい。例えば、開閉弁検知部102fは、駆動指令信号114f,114gが第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した時点T604から、予め定められた開弁電流保持時間301eが経過した時点T605を、燃料噴射弁108の開弁動作が行われた時点(開弁動作が完了した時点)とみなしてもよい。この場合においても、開閉弁検知部102fは、微分器等の特別な回路やアルゴリズムを設けなくても、燃料噴射弁108の開弁動作を正確に検知することができる。よって、開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の動作の検知精度向上と検知ロジックの簡素化とを両立させることができる。
また、開閉弁検知部102fは、開閉弁検知結果信号116a,116bとして、第3論理レベル(ON)の期間には燃料噴射弁108が開弁状態であることを示し、第4論理レベル(OFF)の期間には閉弁状態であることを示すパルス信号によって生成していた。開閉弁検知部102fは、開閉弁検知結果信号116a,116bとして、燃料噴射弁108の開弁動作が行われたことを示すパルス信号と、燃料噴射弁108の閉弁動作が行われたことを示すパルス信号とを個別に生成してもよい。
図7は、多段噴射制御を実行する演算処理装置102の処理のフローチャートである。図7は、1気筒の1燃焼サイクルにおける処理を示したものである。
ステップS701において、演算処理装置102は、多段噴射制御の実行可否を判定する。演算処理装置102は、多段噴射制御の実行を許可しない場合には、通常の燃料噴射制御を行う。演算処理装置102は、多段噴射制御の実行を許可する場合には、多段噴射制御の実行に必要な演算処理を行う。この演算処理には、上記のように、多段噴射回数の演算が含まれる。演算処理装置102は、演算された情報に基づいて、駆動指令信号114及び駆動電流プロフィール115を生成する。演算処理装置102は、燃料噴射弁108の駆動を制御するための制御指令として、駆動指令信号114及び駆動電流プロフィール115を駆動IC105へ出力し、燃料噴射弁108を駆動する。
ステップS702において、演算処理装置102は、多段噴射制御が実行されたか否かを判定する。演算処理装置102は、多段噴射制御が実行されていない場合、図7に示す処理を終了する。演算処理装置102は、多段噴射制御が実行された場合、ステップS703へ移行する。
ステップS703において、演算処理装置102は、燃料噴射弁108の動作結果を評価するパラメータを入力する。燃料噴射弁108の動作結果を評価するパラメータは、具体的には、電流検知部206の検知結果120及び駆動指令信号114である。
ステップS704において、演算処理装置102は、多段噴射制御が正常に実行されたか否かを判定するための判定処理を行う。ステップS704の判定処理の説明については、図8を用いて後述する。
ステップS705において、演算処理装置102は、ステップS704の判定処理において、多段噴射制御が正常に実行されたと判定されたか、又は、多段噴射制御の実行に異常があったと判定されたかを判定する。演算処理装置102は、ステップS704の判定処理において、多段噴射制御が正常に実行されたと判定された場合、図7に示す処理を終了する。多段噴射制御の実行は、必要に応じて継続される。演算処理装置102は、ステップS704の判定処理において、多段噴射制御の実行に異常があったと判定された場合、ステップS706へ移行する。
ステップS706において、演算処理装置102は、フェイルセーフ処理を行う。フェイルセーフ処理の1例として、多段噴射制御の実行を禁止する処理や、故障警告灯(MIL)を点灯して運転者へ報知する処理等が挙げられる。その後、演算処理装置102は、ステップS702へ移行する。
図8は、図7のステップS704における判定処理のフローチャートである。図8は、1気筒の1燃焼サイクルにおける処理を示したものである。
ステップS801において、演算処理装置102は、ステップS701において演算された多段噴射回数に応じて駆動IC105に指令した噴射回数を示す指令噴射回数112を取得する。
ステップS802において、演算処理装置102は、燃料噴射弁108が正常に動作したか否かを判定するための判定処理を行う。この判定処理は、ステップS703において入力された電流検知部206の検知結果120及び駆動指令信号114に基づいて行われる。具体的には、演算処理装置102は、電流検知部206の検知結果120が示す燃料噴射弁108の駆動電流と、駆動指令信号114とから、図6を用いて説明したように、燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を検知し、開閉弁検知結果信号116を生成する。演算処理装置102は、開閉弁検知結果信号116と駆動指令信号114とを比較して、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定する。
詳細には、演算処理装置102は、駆動指令信号114が第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した第1時点と、当該第1時点に後続して駆動指令信号114が第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した第2時点とを特定する。更に、演算処理装置102は、開閉弁検知結果信号116が第4論理レベル(OFF)から第3論理レベル(ON)に変化した第3時点と、当該第3時点に後続して開閉弁検知結果信号116が第3論理レベル(ON)から第4論理レベル(OFF)に変化した第4時点とを特定する。
演算処理装置102は、特定された第3時点及び第4時点が、第1時点から第2時点までの期間に基づく所定範囲に含まれているか否かに基づいて、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定する。所定範囲とは、例えば、特定された第1時点から第2時点までの期間自体であってもよいし、第1時点から所定時間遡った時点から第2時点から所定時間経過した時点までの期間であってもよい。演算処理装置102は、特定された第3時点及び第4時点が所定範囲に含まれている場合、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったと判定し、燃料噴射弁108が正常に動作したと判定する。演算処理装置102は、特定された第3時点及び第4時点が所定範囲に含まれていない場合、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行っていないと判定し、燃料噴射弁108の動作に異常があったと判定する。ステップS802の判定処理の説明については、図9を用いて後述する。
ステップS803において、演算処理装置102は、ステップS802の判定処理において、燃料噴射弁108が正常に動作したと判定されたか、又は、燃料噴射弁108の動作に異常があったと判定されたかを判定する。演算処理装置102は、ステップS802の判定処理において、燃料噴射弁108の動作に異常があったと判定された場合、ステップS805へ移行する。演算処理装置102は、ステップS802の判定処理において、燃料噴射弁108が正常に動作したと判定された場合、ステップS804へ移行する。
なお、ステップS803において、演算処理装置102は、当該気筒の当該燃焼サイクル中に行われる多段噴射の全てにおいて、燃料噴射弁108の動作に異常があったと判定された場合、ステップS805へ移行してもよい。当該気筒の当該燃焼サイクル中に行われる多段噴射の一部において、燃料噴射弁108の動作に異常があったと判定された場合、ステップS804へ移行してもよい。
ステップS804において、演算処理装置102は、燃料噴射弁108が正常に動作した噴射回数を示す実行噴射回数117をカウントする。例えば、演算処理装置102は、実行噴射回数117を記憶するカウンタの値をインクリメントする。
ステップS805において、演算処理装置102は、当該気筒の当該燃料サイクルにおける多段噴射が終了したか否かを判定する。演算処理装置102は、ステップS801において取得された指令噴射回数112に基づいて、現在が何段目の噴射を実行しているのかを判定することによって、当該気筒の当該燃料サイクルにおける多段噴射が終了したか否かを判定することができる。演算処理装置102は、当該気筒の当該燃料サイクルにおける多段噴射が終了していない場合、次段の噴射における燃料噴射弁108の動作を監視するべく、ステップS802へ移行する。演算処理装置102は、当該気筒の当該燃料サイクルにおける多段噴射が終了した場合、ステップS806へ移行する。
ステップS806において、演算処理装置102は、ステップS801において取得された指令噴射回数112と、ステップS804においてカウントされた実行噴射回数117とを比較する。演算処理装置102は、実行噴射回数117が指令噴射回数112と一致するか否かを判定する。演算処理装置102は、実行噴射回数117が指令噴射回数112と一致する場合、ステップS807へ移行する。演算処理装置102は、実行噴射回数117が指令噴射回数112と不一致の場合、ステップS808へ移行する。
ステップS807において、演算処理装置102は、当該気筒の当該燃焼サイクルにおける多段噴射制御は正常に実行されたと判定し、図8に示す処理を終了する。
ステップS808において、演算処理装置102は、当該気筒の当該燃焼サイクルにおける多段噴射制御の実行に異常があったと判定し、図8に示す処理を終了する。
図9は、図8のステップS802における判定処理を説明する図である。
図9には、上から順に、駆動指令信号114h、駆動電流902及び開閉弁検知結果信号116cのそれぞれの挙動が示されている。図9は、図6のパターン1に対応する図である。図9における駆動指令信号114h及び駆動電流プロフィール115は、図6のパターン1に示す駆動指令信号114f及び駆動電流プロフィール115と同様である。
図9に示す駆動指令信号114hは、第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化する時点が時点T904,T910,T913であり、第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化する時点が時点T909,T912,T915である。図9では、時点T909と時点T910との間に、異常が発生したとする。この異常は、例えば、燃料噴射弁制御装置101と燃料噴射弁108とを接続するハーネスが断線したこと等である。図9では、異常の発生時点以降、燃料噴射弁108には駆動電流902が供給されず、燃料噴射弁108が動作しなかったとする。
演算処理装置102の開閉弁検知部102fは、図6のパターン1と同様に、駆動電流902がピーク値である開弁電流902aに到達した時点T905を、燃料噴射弁108が開弁動作を行った時点とみなす。開閉弁検知部102fは、図6のパターン1と同様に、駆動指令信号114hが第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点T909を、燃料噴射弁108が閉弁動作を行った時点とみなす。すなわち、開閉弁検知部102fは、第1論理レベル(ON)を示す1段目の期間(時点T904から時点T909まで)における燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作については、正確に検知することができる。しかし、上記の異常発生により、開閉弁検知部102fは、第1論理レベル(ON)を示す2段目の期間(時点T910から時点T912まで)及び3段目の期間(時点T913から時点T915まで)における燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作については、検知できない。よって、開閉弁検知部102fは、時点T905において第4論理レベル(OFF)から第3論理レベル(ON)に変化させ、時点T909において第3論理レベル(ON)から第4論理レベル(OFF)に変化させ、時点T909以降は第2論理レベル(OFF)を維持する開閉弁検知結果信号116cを出力する。
演算処理装置102の実行噴射判定部102eは、駆動指令信号114hにおける上記の第1時点及び第2時点を特定する共に、開閉弁検知結果信号116cにおける上記の第3時点及び第4時点を特定する。具体的には、実行噴射判定部102eは、1段目の期間(時点T904から時点T909まで)において、第1時点として時点T904、第2時点として時点T909、第3時点として時点T905、第4時点として時点T909を特定する。そして、実行噴射判定部102eは、特定された第3時点である時点T905、及び、第4時点である時点T909が、所定範囲に含まれるか否かに基づいて、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定する。所定範囲は、第1時点である時点T904から第2時点である時点T909までの期間903aに基づく範囲である。図9の例では、所定範囲を、第1時点である時点T904から第2時点である時点T909までの期間903a自体とする。
図9の例では、第3時点である時点T905から第4時点である時点T909までの期間903bが、第1時点である時点T904から第2時点である時点T909までの期間903a内に含まれている。すなわち、第3時点である時点T905、及び、第4時点である時点T909が所定範囲に含まれている。よって、実行噴射判定部102eは、1段目の期間(時点T904から時点T909まで)において、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったと判定し、燃料噴射弁108が正常に動作したと判定する。
一方、図9の例では、2段目の期間(時点T910から時点T912まで)及び3段目の期間(時点T913から時点T915まで)において、開閉弁検知結果信号116cが第2論理レベル(OFF)のままである。実行噴射判定部102eは、2段目の期間(時点T910から時点T912まで)及び3段目の期間(時点T913から時点T915まで)において、第3時点及び第4時点を特定できない。よって、実行噴射判定部102eは、2段目の期間(時点T910から時点T912まで)及び3段目の期間(時点T913から時点T915まで)において、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行っていないと判定し、燃料噴射弁108の動作に異常があったと判定する。
上記のように、実行噴射判定部102eは、駆動指令信号114hと、開閉弁検知結果信号116cとを比較することによって、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定することができる。すなわち、実行噴射判定部102eは、パルス信号によって構成される駆動指令信号114h及び開閉弁検知結果信号116cを比較するだけで、燃料噴射弁108が正常に動作したか否かを容易に判定することができる。これにより、実行噴射判定部102eは、特別な回路やアルゴリズムを設けなくても、燃料噴射弁108が正常に動作したか否かを正確に判定することができる。実行噴射判定部102eは、燃料噴射弁108の動作に異常があったことを正確且つ容易に検知することができる。
以上のように、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁108を制御する装置である。燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の駆動を制御する制御指令を出力する演算処理装置102と、制御指令に基づいて燃料噴射弁108を駆動する駆動電流を燃料噴射弁108に供給する駆動回路部と、燃料噴射弁108の動作を検知する開閉弁検知部102fとを備える。開閉弁検知部102fは、駆動電流のピーク値に基づいて燃料噴射弁108の開弁動作を検知し、制御指令に含まれる駆動指令信号114に基づいて燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。
これにより、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、微分器等の特別な回路やアルゴリズムを設けなくても、燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を正確に検知することができる。特に、燃料噴射弁制御装置101は、駆動電流が開弁保持電流に移行せずに直ちに供給停止されるような、燃料噴射弁108の駆動時間が短い場合や駆動電圧のDuty制御が行われない場合であっても、燃料噴射弁108の開弁動作を正確に検知することができる。よって、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の動作の検知精度向上と検知ロジックの簡素化とを図ることができ、燃料噴射弁108の異常を検知する性能を容易に向上させることができる。結果的に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、多段噴射制御の実動作保証を行うことができ、排気性能の保証を行うことができる。
更に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、演算処理装置102が、制御指令として、燃料噴射弁108の駆動を指令する第1論理レベル(ON)と燃料噴射弁108の駆動停止を指令する第2論理レベル(OFF)とを有する駆動指令信号114を出力する。開閉弁検知部102fは、駆動電流がピーク値に到達したことに基づいて燃料噴射弁108の開弁動作を検知し、駆動指令信号114が第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化したことに基づいて燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。
これにより、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を正確且つ容易に検知することができる。よって、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の動作の検知精度向上と検知ロジックの更なる簡素化とを図ることができ、燃料噴射弁108の異常を検知する性能を更に容易に向上させることができる。結果的に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、多段噴射制御の実動作保証を行うことができ、排気性能の保証を行うことができる。
更に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、演算処理装置102が、制御指令として、燃料噴射弁108の駆動を指令する第1論理レベル(ON)と燃料噴射弁108の駆動停止を指令する第2論理レベル(OFF)とを有する駆動指令信号114を出力する。開閉弁検知部102fは、駆動電流がピーク値に到達するまでに要する時間に基づいて燃料噴射弁108の開弁動作を検知し、駆動指令信号114が第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化したことに基づいて燃料噴射弁108の閉弁動作を検知する。
これにより、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の開弁動作及び閉弁動作を正確且つ容易に検知することができる。よって、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の動作の検知精度向上と検知ロジックの更なる簡素化とを図ることができ、燃料噴射弁108の異常を検知する性能を更に容易に向上させることができる。結果的に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、多段噴射制御の実動作保証を行うことができ、排気性能の保証を行うことができる。
更に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、演算処理装置102が、制御指令として、燃料噴射弁108の駆動を指令する第1論理レベル(ON)と燃料噴射弁108の駆動停止を指令する第2論理レベル(OFF)とを有する駆動指令信号114を出力する。開閉弁検知部102fは、燃料噴射弁108の開弁状態が検知されたことを示す第3論理レベル(ON)と燃料噴射弁108の閉弁状態が検知されたことを示す第4論理レベル(OFF)とを有する開閉弁検知結果信号116を出力する。演算処理装置102は、駆動指令信号114と開閉弁検知結果信号116とを比較することによって、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定する。
これにより、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、特別な回路やアルゴリズムを設けなくても、燃料噴射弁108が正常に動作したか否かを正確に判定することができる。燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の動作に異常があったことを正確且つ容易に検知することができる。よって、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の動作の検知精度向上と検知ロジックの簡素化とを図り、燃料噴射弁108の異常を検知する性能を更に容易に向上させることができる。結果的に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、多段噴射制御の実動作保証を行うことができ、排気性能の保証を行うことができる。
更に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101において、駆動指令信号114が第2論理レベル(OFF)から第1論理レベル(ON)に変化した時点を第1時点とし、第1時点に後続して第1論理レベル(ON)から第2論理レベル(OFF)に変化した時点を第2時点とする。開閉弁検知結果信号116が第4論理レベル(OFF)から第3論理レベル(ON)に変化した時点を第3時点とし、第3時点に後続して第3論理レベル(ON)から第4論理レベル(OFF)に変化した時点を第4時点とする。このとき、演算処理装置102は、第3時点及び第4時点が、第1時点から第2時点までの期間903aに基づく所定範囲に含まれているか否かに基づいて、燃料噴射弁108が制御指令に対応した動作を行ったか否かを判定する。
これにより、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108が正常に動作したか否かを更に容易に判定することができるので、燃料噴射弁108の動作に異常があったことを更に容易に検知することができる。よって、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、燃料噴射弁108の動作の検知精度向上と検知ロジックの簡素化とを図り、燃料噴射弁108の異常を検知する性能を更に容易に向上させることができる。結果的に、本実施形態の燃料噴射弁制御装置101は、多段噴射制御の実動作保証を行うことができ、排気性能の保証を行うことができる。
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。