JP7444750B2 - 騒音制御システムおよび騒音制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、騒音制御システムおよび騒音制御方法に関する。
閉空間内の共鳴時の音響エネルギーを最小にするアクティブ制御手法が研究されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載される方法は、剛壁で囲まれた1室内のモード周波数(共振周波数)に着目している。具体的には、モード周波数が放射されている室内において、制御音源と制御点を適切に配置し、室内の全音響エネルギーが最小となるような制御を行うことで、音圧レベルが全体的に低下して騒音を打ち消している。なお、非特許文献1では、既知の純音を騒音源としている。
非特許文献1におけるシステムの構成図を図17に示す。図17に示す従来の騒音制御システム901は、主に、参照マイクロホン902と、誤差マイクロホン903と、制御スピーカ904と、誤差経路特性モデル912と、適応フィルタ913と、LMS(Least Mean Square)処理部914とを備える。シグナルジェネレータ909bとスピーカ909aとの組合せを騒音源としておりスピーカ909aから放射される騒音は純音である。
騒音制御システム901では、Filtered-x LMSアルゴリズムを含むアクティブノイズコントロール技術を用いている。騒音源近傍において騒音を参照マイクロホン902で収音し、参照信号は適応フィルタ913に入力される。この適応フィルタ913は、例えばFIR適応型デジタルフィルタであり、Filtered-x LMSアルゴリズムに基づいてフィルタ係数が更新される。このフィルタ係数を用いて畳み込み和演算のようなフィルタ処理を行うことにより、フィルタ出力信号が計算される。この出力信号は、「-1」を乗算されて制御スピーカ904に供給される。制御スピーカ904から放射する音波は、騒音源から誤差マイクロホン903に伝搬している騒音に干渉し、騒音を打ち消す。
誤差マイクロホン903は、室の角に配置されている。騒音と制御スピーカ904からの放射音とが干渉した後の音、すなわち騒音と制御スピーカの放射音との誤差をこの誤差マイクロホン903で検出している。誤差マイクロホン903の出力は、誤差信号としてLMS処理部914に供給される。LMS処理部914は、Filtered-x LMSアルゴリズムに基づく処理を行い、参照信号と誤差信号に応じて、適応フィルタ913と誤差経路特性モデル912とを合成した伝達関数と、参照マイクロホン902から誤差マイクロホン903までの伝達関数とが等しくなるように、適応フィルタ913のフィルタ係数を更新する。適応フィルタ913と誤差経路特性モデル912とを合成した伝達関数と、参照マイクロホン902から誤差マイクロホン903までの伝達関数が等しくなることで、誤差マイクロホン903において制御スピーカ904からの放射音を騒音に干渉させることにより打ち消すことができる。
伊勢 史郎、他2名、「境界要素法による室内のアクティブモード制御の解析」、日本音響学会誌51巻1号、一般社団法人日本音響学会、1995年、pp.25-33
非特許文献1に記載される技術では、1つの室内について議論されており、音源室に隣接する室については考えられていないので、隣室が存在している場合に制御できるのは音源室側のモード周波数のみであって隣室側のモード周波数を制御できない。したがって、騒音源から隣室に伝搬する周波数(特に低周波)が隣室のモード周波数(共振周波数)と一致する場合に音圧が増幅し、隣室に居る人間が不快に感じるという課題があった。
例えば、空調等の設備機械室の周囲に静粛性が求められる会議室が配置されることがある。設備機器から発生する低周波音は壁面を透過して隣室まで伝搬しやすく、室形状により決定するモード周波数(共振周波数)に合致すると増幅する特徴を持つ。その為、会議室に居る人は、設備機器から発生する低周波音を不快に感じる。
なお、重い材料を用いて低周波を遮音することが一般的に行われているが、設計の条件などにより遮音するのに必要な重量の部材を設置することが難しい場合があり、その場合には音圧低減効果を十分に得ることができない。
また、騒音源室の隣室に騒音を低減させるための制御装置を設置することも考えられるが、隣室に制御装置を設置することで利用可能なスペースが制限されてしまう。その為、上記のように騒音源室の隣室が会議室として運用されている場合などでは、制御装置を隣室に設置することは望ましくない。
このような観点から、本発明は、騒音源室内での制御によって隣接する室内の騒音を低減することができる騒音制御システムおよび騒音制御方法を提供する。
本発明に係る騒音制御システムは、騒音源を備える騒音源室に隣接する受音室での騒音を低減させる騒音制御システムである。この騒音制御システムは、前記騒音源室内に設置される参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカと、信号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する信号処理装置と、を備える。
前記参照マイクロホンは、前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置され、当該騒音を参照信号として前記信号処理装置に出力する。
前記制御スピーカは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音を前記騒音源室内に放出する。
前記誤差マイクロホンは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音によって打ち消された後の騒音を誤差信号として前記信号処理装置に出力する。
前記信号処理装置は、前記参照信号および前記誤差信号から特定の周波数の成分を抽出するバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによってフィルタ係数が更新される適応フィルタと、を備える。
前記適応フィルタは、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成する。前記バンドパスフィルタは、前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出するものである。
前記信号処理装置は、前記制御スピーカと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数が組み込まれた誤差経路特性モデルをさらに有するのがよい。
前記適応フィルタのフィルタ係数は、前記適応フィルタと前記誤差経路特性モデルとを合成した伝達関数と、前記参照マイクロホンと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数とが等しくなるように更新される。
本発明に係る騒音制御システムにおいては、騒音源室および受音室のモード周波数だけ通過するバンドパスフィルタを用いることで参照信号の絞り込みを行う。これにより、騒音源が放射する周波数と騒音源室および受音室のいずれかのモード周波数とが一致した際に生じる受音室での音圧の増幅を騒音源室内で抑えることができる。その為、受音室全体に渡って音圧低減が可能である。また、当該システムを構成する機器は、騒音源室に設置することができ、受音室にこれらの機器を設置しなくてよい。その為、受音室ではスペースの利用に制限を受けないので、スペースを有効に利用することができる。
また、本発明に係る騒音制御方法は、騒音源を備える騒音源室に隣接する受音室での騒音を低減させる騒音制御方法である。
この騒音制御方法は、参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカを前記騒音源室内に設置する準備工程と、信号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する制御工程と、を有する。
前記準備工程では、前記参照マイクロホンを前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置し、前記制御スピーカおよび前記誤差マイクロホンを前記騒音源室内の室隅に設置する。
前記制御工程には、抽出工程と制御信号生成工程とが含まれる。抽出工程では、前記参照マイクロホンから取得した参照信号および前記誤差マイクロホンから取得した誤差信号から、バンドパスフィルタを用いて前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出する。
制御信号生成工程では、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによって適応フィルタのフィルタ係数を更新し、また、前記適応フィルタが前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成する。
前記準備工程には、モード周波数計測工程と、周波数特性計測工程と、バンドパスフィルタ作成工程とが含まれるのがよい。
モード周波数計測工程では、前記第一モード周波数および前記第二モード周波数を計測する。周波数特性計測工程では、前記騒音の中で音が大きい卓越周波数を前記騒音源室内で計測する。バンドパスフィルタ作成工程では、前記第一モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第一狭帯域、および前記第二モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第二狭帯域を通過させるバンドパスフィルタを作成する。
本発明に係る騒音制御方法においては、騒音源室および受音室のモード周波数だけ通過するバンドパスフィルタを用いることで参照信号の絞り込みを行う。これにより、騒音源が放射する周波数と騒音源室および受音室のいずれかのモード周波数とが一致した際に生じる受音室での音圧の増幅を騒音源室内で抑えることができる。その為、受音室全体に渡って音圧低減が可能である。また、当該方法で使用する機器は、騒音源室に設置することができ、受音室にこれらの機器を設置しなくてよい。その為、受音室ではスペースの利用に制限を受けないので、スペースを有効に利用することができる。
本発明によれば、騒音源室内での制御によって隣接する室内の騒音を低減することができる。
本発明の実施形態に係る騒音制御システムの構成図である。 本発明の実施形態に係る騒音制御システムを構成する機器の配置例を示した図である。 本発明の実施形態の変形例に係る騒音制御システムの構成図である。 本発明の実施形態に係る騒音制御システムの準備工程を示すフローチャートである。 適応フィルタを用いた伝達関数推定システムの構成図である。 本発明の実施形態に係る騒音制御システムを用いた騒音制御のイメージ図である。 実験を行った室を説明するための図である。 実験でのモード周波数計測工程の機器配置を示す図である。 実験を行った室の伝達関数を示すグラフである。 実験での通過周波数の決定工程を説明するための図である。 実験で作成した中心周波数が40Hzのバンドパスフィルタを説明するための図である。 実験で作成した中心周波数が53Hzのバンドパスフィルタを説明するための図である。 実験での制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数(誤差経路特性)の推定工程の機器配置を示す図である。 実験で用いた騒音制御システムの構成図である。 制御前後での受音室における差分音圧分布(40[Hz])である。 制御前後での受音室における差分音圧分布(53[Hz])である。 従来技術に係る騒音制御システムの構成図である。
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
<実施形態に係る騒音制御システムの構成>
図1を参照して、実施形態に係る騒音制御システム1について説明する。図1は、実施形態に係る騒音制御システムの構成図である。騒音制御システム1は、アクティブノイズコントロール技術によって騒音を低減するシステムである。騒音制御システム1を用いれば、騒音源を備える室(「騒音源室」と称する)に隣接する室での騒音を低減できる。騒音源に限定はなく、例えば設備機械などである。騒音源室に隣接する室は、騒音源から放射される騒音が伝搬される側(つまり、受け取る側)なので「受音室」と称する。
図1に示すように、騒音制御システム1の制御手法は、Filtered-x LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを含むアクティブノイズコントロール技術を用いたものである。本実施形態では、フィードフォワード制御を想定して説明するが、フィードバック制御であってもよい。騒音制御システム1をフィードバック制御により実現する場合、後記する参照マイクロホン2を備えない構成になる(つまり、参照信号を用いない制御となる)。
騒音制御システム1は、主に、参照マイクロホン2と、誤差マイクロホン3と、制御スピーカ4と、信号処理装置5とを備える。参照マイクロホン2、誤差マイクロホン3および制御スピーカ4は騒音源室に設置され、信号処理装置5の設置場所は特に限定されないが騒音源室であるのがよい。
信号処理装置5は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)を備え、デジタルシグナルプロセッサによるプログラム実行処理によって各機能が実現される。信号処理装置5は、参照マイクロホン2および誤差マイクロホン3から騒音源室内の騒音を取得し、信号処理を行うことで騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を制御スピーカ4に出力する。詳細な処理は後述する。
図2を参照して、騒音制御システム1を構成する機器の配置について説明する。図2は、騒音制御システム1を構成する機器の配置例を示した図である。
参照マイクロホン2は、制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置され、例えば騒音源9の近傍に配置される。騒音源9は例えば設備機械であり、通常稼動時に発生する騒音の周波数特定はある程度決まっている。参照マイクロホン2は、騒音を参照信号として信号処理装置5に出力する。
制御スピーカ4の設置場所は、騒音源室R1の室隅であればよい。図2では、制御スピーカ4は、受音室R2に接する壁Ra側の室隅に設置されているが、受音室R2に接する壁Ra側の室隅でなくてもよい。なお、制御スピーカ4の高さ方向の位置は、限定されないが、本実施形態の制御スピーカ4は床近くに設置される。制御スピーカ4には、騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号が入力され、制御音を騒音源室R1内に放出する。
誤差マイクロホン3の設置場所は、騒音源室R1の室隅であればよい。図2に示すように、誤差マイクロホン3は、受音室R2に接する壁Ra側の室隅に設置されるのが望ましい。なお、誤差マイクロホン3の高さ方向の位置は、限定されないが、本実施形態の誤差マイクロホン3は例えば天井近くに設置される。誤差マイクロホン3は、制御音によって打ち消された後の騒音を誤差信号として信号処理装置5に出力する(すなわち、騒音と制御スピーカ4の放射音との誤差を検出している)。
なお、制御スピーカ4および誤差マイクロホン3は、受音室R2に接する壁Ra側の両方の室隅に設置されてもよい(図2の仮想線参照)。壁Raの両方の室隅に制御スピーカ4および誤差マイクロホン3を配置した場合の信号処理装置5の構成は、例えば図3に示すようになる。図3は、実施形態の変形例に係る騒音制御システム101の構成図である。図3に示す騒音制御システム101では、Filtered-x LMSアルゴリズムをマルチチャンネル化したMEFX-LMS(Multiple Error Filtered x-LMS)アルゴリズムとなる。MEFX-LMSアルゴルズムについては、例えば「特開平7-20883号公報」に記載がある。
図1を参照して、信号処理装置5について説明する。信号処理装置5は、主に、モード周波数抽出用のバンドパスフィルタ11a,11bと、誤差経路特性モデル12と、適応フィルタ13と、LMS処理部14と、パワーアンプ15とを備える。なお、バンドパスフィルタ11a,11bは同じ機能であるので、区別せずに説明する場合に「バンドパスフィルタ11」と表記する場合がある。
バンドパスフィルタ11は、騒音源室R1(図2参照)で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および受音室R2(図2参照)で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出する(通過させる)ものである。バンドパスフィルタ11が抽出する周波数は、例えば騒音源室R1および受音室R2での計測により決定される。詳細は後述する。なお、バンドパスフィルタ11が抽出する第一モード周波数や第二モード周波数の数は、複数であってもよい。
バンドパスフィルタ11aには、参照マイクロホン2から参照信号が入力される(なお、参照信号はマイクアンプによって増幅される)。バンドパスフィルタ11aによって抽出された参照信号は、誤差経路特性モデル12および適応フィルタ13に入力される。
バンドパスフィルタ11bには、誤差マイクロホン3から誤差信号が入力される(なお、誤差信号はマイクアンプによって増幅される)。バンドパスフィルタ11bによって抽出された誤差信号は、LMS処理部14に入力されてFiltered-x LMSアルゴリズムに基づいた演算に使用され、適応フィルタ13のフィルタ係数が更新される。
誤差経路特性モデル12は、制御スピーカ4と誤差マイクロホン3との間の伝達関数が組み込まれている。誤差経路特性モデル12から出力された信号は、LMS処理部14に入力される。
適応フィルタ13は、バンドパスフィルタ11aによって抽出された参照信号から制御信号を生成する。適応フィルタ13は、Filtered-x LMSアルゴリズムに基づいてフィルタ係数が更新される。適応フィルタ13は、このフィルタ係数を用いて畳み込み和演算のようなフィルタ処理によってフィルタ出力信号を計算する。フィルタ出力信号に「-1」を乗算することで制御信号となり、制御信号は制御スピーカ4に出力される(なお、制御信号はパワーアンプ15によって増幅される)。制御スピーカ4から放射する音波は、騒音源9から誤差マイクロホン3に伝搬している騒音に干渉し、騒音を打ち消す。
LMS処理部14は、参照信号と誤差信号に応じて、適応フィルタ13と誤差経路特性モデル12とを合成した伝達関数と、参照マイクロホン2から誤差マイクロホン3までの伝達関数とが等しくなるように適応フィルタ13のフィルタ係数を更新する。適応フィルタ13と誤差経路特性モデル12とを合成した伝達関数と、参照マイクロホン2から誤差マイクロホン3までの伝達関数とが等しくなることで、誤差マイクロホン3において制御スピーカ4からの放射音を騒音に干渉させて騒音の音圧を低減させる。
なお、本実施形態では、騒音源9の近傍に参照マイクロホン2を設置することで、騒音源9と参照マイクロホン2間の影響を考慮しないことにする。同様に、制御スピーカ4と誤差マイクロホン3とを近傍に設置した場合、制御スピーカ4と誤差マイクロホン3間の影響を考慮しなくてよい場合もある。その場合、信号処理装置5は、誤差経路特性モデル12を有しない構成にすることができる。
図3を参照して、複数(例示は二つ)の制御スピーカ4および誤差マイクロホン3を用いる場合の騒音制御システム101を説明する。騒音制御システム101の制御手法は、Filtered-x LMSアルゴリズムをマルチチャンネル化したMEFX-LMSアルゴリズムを含むアクティブノイズコントロール技術を用いたものである。
騒音制御システム101は、主に、参照マイクロホン2と、二つの誤差マイクロホン31,32と、二つの制御スピーカ41,42と、信号処理装置105とを備える。参照マイクロホン2、誤差マイクロホン31,32および制御スピーカ41,42は騒音源室に設置され、信号処理装置105の設置場所は特に限定されないが騒音源室であるのがよい。誤差マイクロホン31,32および制御スピーカ41,42は、例えば受音室R2に接する壁Ra側の両方の室隅にそれぞれ設置される(図2参照)。
信号処理装置105は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)を備え、デジタルシグナルプロセッサによるプログラム実行処理によって各機能が実現される。
信号処理装置105は、主に、モード周波数抽出用のバンドパスフィルタ11a,11bと、四つの誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222と、二つの適応フィルタ131,132と、二つのLMS処理部141,142とを備える。
図3中の符号C11は、第一制御スピーカ41-第一誤差マイクロホン31間の伝達関数を表している。符号C21は、第一制御スピーカ41-第二誤差マイクロホン32間の伝達関数を表している。符号C12は、第二制御スピーカ42-第一誤差マイクロホン31間の伝達関数を表している。符号C22は、第二制御スピーカ42-第二誤差マイクロホン32間の伝達関数を表している。
誤差経路特性モデル1211は、第一制御スピーカ41-第一誤差マイクロホン31間の伝達関数C11の推定モデルである。誤差経路特性モデル1221は、第一制御スピーカ41-第二誤差マイクロホン32間の伝達関数C21の推定モデルである。誤差経路特性モデル1212は、第二制御スピーカ42-第一誤差マイクロホン31間の伝達関数C12の推定モデルである。誤差経路特性モデル1222は、第二制御スピーカ42-第二誤差マイクロホン32間の伝達関数C22の推定モデルである。誤差経路特性モデルは、伝達関数の記号にハット記号を付して表現される場合があり、図3では誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222のブロックの内部に当該記号を表記している。
バンドパスフィルタ11aには、参照マイクロホン2から参照信号が入力される(なお、参照信号はマイクアンプによって増幅される)。バンドパスフィルタ11aによって抽出された参照信号は、誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222および適応フィルタ131,132に入力される。
バンドパスフィルタ11bには、誤差マイクロホン31,32から誤差信号が入力される(なお、誤差信号はマイクアンプによって増幅される)。バンドパスフィルタ11bによって抽出された誤差信号は、LMS処理部141,142に入力されてMEFX-LMSアルゴリズムに基づいた演算に使用され、適応フィルタ131,132のフィルタ係数が更新される。
<実施形態に係る騒音制御システムの準備工程>
図4を参照して(適宜、図1ないし図3を参照)、実施形態に係る騒音制御システム1,101の準備工程について説明する。図4は、騒音制御システム1,101の準備工程を示すフローチャートである。
図4に示すように、騒音制御システム1,101の準備工程は、主に、「S1:制御スピーカ・誤差マイクロホンの位置決定工程」、「S2:騒音源室・受音室内のモード周波数の計測工程」、「S3:騒音源の周波数特性の計測工程」、「S4:受音室の周波数特性の計測工程」、「S5:通過周波数の決定工程」、「S6:バンドパスフィルタの作成工程」、「S7:制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数(誤差経路特性)の推定工程」を有する。なお、工程の種類によっては工程の順番を適宜入れ替えることが可能である。
(S1:制御スピーカ・誤差マイクロホンの位置決定工程)
制御スピーカ4および誤差マイクロホン3を設置する場所を決定する。制御スピーカ4および誤差マイクロホン3が設置されるのは、騒音源室R1(図2参照)内である。制御スピーカ4の設置箇所は、モード周波数を励起できる室隅とする。誤差信号を得る誤差マイクロホン3の設置箇所は、室隅(室隅はモード周波数の節とならない)かつ伝搬する室(受音室R2)に接する場所が望ましい。受音室R2に接する室隅であることで、受音室R2のモード周波数の制御も行うことが可能となる。
(S2:騒音源室・受音室内のモード周波数の計測工程)
続いて、モード周波数成分を抽出するためのバンドパスフィルタ11を設計するために、事前に騒音源室R1、受音室R2内のモード周波数を計測する。モード周波数の計測方法は特に限定されないが、例えば「適応フィルタ」を用いることでモード周波数を推定することができる。適応フィルタを用いてモード周波数を推定する場合、例えば図5に示す伝達関数推定システム50を用いる。図5は、適応フィルタを用いた伝達関数推定システムの構成図である。
伝達関数推定システム50は、主に、スピーカ51と、マイクロホン52と、シグナルジェネレータ53と、適応フィルタ54と、LMS処理部55とを備える。適応フィルタ54は、例えばFIR(Finite Impulse Response)適応型デジタルフィルタである。
騒音源室R1内のモード周波数の計測について説明する。騒音源室R1の角にスピーカ51、対向する角にマイクロホン52を設置し、シグナルジェネレータ53にてホワイトノイズ(白色雑音)を発生させる。ホワイトノイズは、スピーカ51、適応フィルタ54、LMS処理部55にそれぞれ入力する。スピーカ51からはホワイトノイズが騒音源室R1内に放射され、マイクロホン52まで伝搬する。適応フィルタ54のフィルタ係数は、LMSアルゴリズムに基づいて更新される。このフィルタ係数を用いて畳み込み和演算のようなフィルタ処理により、フィルタ出力信号が計算される。この出力信号は、マイクロホン52で得られた信号と足し合わされる。足し合わされた信号はLMS処理部55に入力される。
LMS処理部55には、ホワイトノイズ、および適応フィルタ54の出力信号とマイクロホン52で得られた信号とを足し合わせた信号が入力される。LMS処理部55は、これらの信号を用いてスピーカ51-マイクロホン52間の伝達関数と等しくなるように適応フィルタ54のフィルタ係数を更新する。更新して得られたフィルタ係数をフーリエ変換することで、スピーカ51-マイクロホン52間の伝達関数が得られる。騒音源室R1のモード周波数は、伝達関数で極大値を取っている周波数である。これにより、騒音源室R1内のモード周波数の計測が完了する。
同様の方法で、受音室R2内のモード周波数を計測する。つまり、受音室R2の角にスピーカ51、対向する角にマイクロホン52を設置し、シグナルジェネレータ53にてホワイトノイズ(白色雑音)を発生させ、スピーカ51-マイクロホン52間の伝達関数と等しくなるように適応フィルタ54のフィルタ係数を更新する。そして、更新して得られたフィルタ係数をフーリエ変換することでスピーカ51-マイクロホン52間の伝達関数が得られ、伝達関数で極大値を取っている周波数を受音室R2のモード周波数とする。これにより、受音室R2内のモード周波数の計測が完了する。
(S3:騒音源の周波数特性の計測工程)
図4に示すように、続いて、騒音源9の通常稼働時の周波数特性の計測を実施する。この計測は、例えば騒音源9の近くにマイクロホンを設置して行う。騒音源9で音が大きくなっている卓越周波数を求める。
(S4:受音室の周波数特性の計測工程)
「騒音源室・受音室内のモード周波数の計測工程」で計測したモード周波数による増幅が原因の騒音が受音室R2で既に発生している場合、騒音源9を通常稼働させた状態で受音室R2内の騒音の周波数特性を計測する。
(S5:通過周波数の決定工程)
工程(S2)、工程(S3)、工程(S4)の計測で得られた結果から、バンドパスフィルタ11の作成に必要な通過周波数を決定する。具体的には、工程(S4)と工程(S2)の結果を比較し、工程(S4)の卓越周波数と工程(S2)のモード周波数とが一致する周波数を通過周波数とする。また、通過周波数と工程(S3)の卓越周波数を比較し、騒音源9から発生している騒音であるかを確認する。なお、騒音源9を設置前などの場合、工程(S2)のモード周波数をバンドパスフィルタ11の通過周波数としてもよい。
(S6:バンドパスフィルタの作成工程)
工程(S5)で得られた通過周波数を基にしてバンドパスフィルタ11を作成する。例えば、通過周波数を中心に所定の帯域幅(例えば、5Hz)を通過するようなチェビシェフフィルタを設計するのがよい。バンドパスフィルタ11にチェビシェフフィルタを用いるのがよい理由は、フィルタの減衰特性が急峻で狭帯域を抽出しやすいためである。
(S7:制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数(誤差経路特性)の推定工程)
続いて、アクティブノイズコントロールのフィルタ更新アルゴリズムであるFiltered-x LMSにおける誤差経路特性モデル12や、MEFX-LMSアルゴリズムにおける誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222を作成するために、制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数を推定する。推定法としては、例えば適応フィルタによる方法がある。適応フィルタを用いた伝達関数の推定法は、公知の技術であるので詳細な説明は省略する。この推定法の考え方は、例えば「特開平9-171388号公報」に記載されている。
そして、工程(S6)で求めたバンドパスフィルタ11および工程(S7)で求めた伝達関数を用いて騒音制御システム1,101の構築する。以上で騒音制御システム1,101の準備工程が完了し、構築した騒音制御システム1,101を用いて実際に騒音制御を行う(制御工程)。
<実施形態に係る騒音制御システムの効果>
以上のように、本実施形態に係る騒音制御システム1,101は、騒音源室R1および受音室R2のモード周波数だけ通過するバンドパスフィルタ11を用いることで参照信号の絞り込みを行う。これにより、騒音源9が放射する周波数と騒音源室R1および受音室R2のいずれかのモード周波数とが一致した際に生じる受音室R2での音圧の増幅を騒音源室R1内で抑えることができる。その為、受音室R2全体に渡って音圧低減が可能である。また、騒音制御システム1,101を構成する機器は、騒音源室R1に設置することができ、受音室R2にこれらの機器を設置しなくてよい。その為、受音室R2ではスペースの利用に制限を受けないので、スペースを有効に利用することができる。
本実施形態に係る騒音制御システム1,101を用いた騒音制御のイメージを図6に示す。図6では、騒音源室R1として設備機械がある機械室を想定し、受音室R2として機械室に隣接する小規模会議室を想定している。図6に示すように、制御スピーカ4を用いた機械室内での騒音制御によって、機械室のみならず小規模会議室の音圧を低減させる。
本実施形態に係る騒音制御システム1,101の効果を検証するために実験を行ったので説明する。図7を参照して実験を行った環境について説明する。図7は、実験を行った室を説明するための図である。
図7に示すように、隣接する第一室Q1および第二室Q2を用いて実験を行った。第一室Q1および第二室Q2は、概ね矩形状を呈しており、第二室Q2は第一室Q1に比べて大きい。第一室Q1および第二室Q2内には柱等の障害物M1~M4が設けられている。その為、第一室Q1および第二室Q2のモード周波数を計算により求めるのは難しい。
第一室Q1に騒音源9を模したスピーカ9aを配置し、スピーカ9aから騒音を第一室Q1内に放出する。そのため、第一室Q1が騒音源室R1に相当し、第二室Q2が受音室R2に相当する。第一室Q1の角(紙面右下の障害物M2の近く)に仮想の騒音源9としてのスピーカ9aを配置した。なお、図7での細い破線は、音圧測定点(点線の交点)を示すために補助的に記載したものである。
図8を参照して、準備工程のモード周波数計測工程(S2)における機器の配置について説明する。図8は、実験でのモード周波数計測工程の機器配置を示す図である。図8に示すように、騒音源室R1としての第一室Q1の角(紙面右下の障害物M2の近く)にスピーカ51を配置し、その対向する角にマイクロホン52を配置して計測を行った。また、受音室R2としての第二室Q2の角(紙面左上の室隅)にスピーカ51を配置し、その対向する角にマイクロホン52を配置して計測を行った。
各室で実測したフィルタ係数をフーリエ変換したものを図9に示す。図9は、実験を行った室の伝達関数を示すグラフである。図9に示すグラフの横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は振幅[dB]である。図9では、騒音源室R1としての第一室Q1のグラフを実線で示し、受音室R2としての第二室Q2のグラフを破線で示している。各室の70 [Hz]以下の周波数特性の極大値を求めると以下の通りであり、以上が実験で用いた各室のモード周波数である。
・第一室Q1(騒音源室R1):30,53,60,65 [Hz]
・第二室Q2(受音室R2) :30,40,60,69 [Hz]
前述した通り、実験では仮想の騒音源9としてスピーカ9a(図7参照)を用いている。スピーカ9aに入力する信号は、任意の純音(単一周波数成分をもつ音)とし、卓越周波数を自由に設定可能とした。実験では、スピーカ9aに40,53 [Hz]の純音を与えた。スピーカ9aに40 [Hz]の純音を与えた場合、スピーカ9aから放出される騒音の卓越周波数は当然に40 [Hz]である。また、スピーカ9aに53 [Hz]の純音を与えた場合、スピーカ9aから放出される騒音の卓越周波数は当然に53 [Hz]である。40 [Hz]は、第二室Q2のモード周波数の一つであり、53 [Hz]は、第一室Q1のモード周波数の一つである。実験では、スピーカ9aから40 [Hz]の純音が放射されているとき、第二室Q2のモード周波数と一致することで第二室Q2内の騒音の増幅が確認できた(準備工程の工程(S4))。
図10を参照して、実験での通過周波数の決定工程(S5)を説明する。上述した通り、スピーカ9aから出る騒音が40 [Hz]の純音の場合、図10を参照すると40 [Hz]は第二室Q2のモード周波数であり、40 [Hz]を通過周波数として設定することが可能である。また、スピーカ9aから出る騒音が53 [Hz]の純音の場合、図10を参照すると53 [Hz]は第一室Q1のモード周波数であり、53 [Hz]を通過周波数として設定することが可能である。
続いて、実験でのバンドパスフィルタの作成工程(S6)を説明する。実験では、通過周波数が40 [Hz]に対応させて、低域通過帯域周波数が37.5 [Hz]であり、高域通過帯域周波数が 42.5 [Hz]であるチェビシェフバンドパスフィルタを設計した。作成したバンドパスフィルタを図11に示す。また、通過周波数が53 [Hz]に対応させて、低域通過帯域周波数が 50.5 [Hz]であり、高域通過帯域周波数が 55.5 [Hz]であるチェビシェフバンドパスフィルタを設計した。作成したバンドパスフィルタを図12に示す。
続いて、実験での伝達関数(誤差経路特性)の推定工程(S7)を説明する。実験では、図13に示す機器配置で制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数(誤差経路特性)を推定した。図13は、実験での制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数(誤差経路特性)の推定工程の機器配置を示す図である。図13に示すように、実験では、二つの誤差マイクロホン31,32および二つの制御スピーカ41,42を用いたMEFX-LMSアルゴリズムを含むアクティブノイズコントロール技術を想定している。
実験での伝達関数(誤差経路特性)の推定工程(S7)により、誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222が作成される(図3参照)。誤差経路特性モデル1211は、第一制御スピーカ41-第一誤差マイクロホン31間の伝達関数の推定モデルである。誤差経路特性モデル1221は、第一制御スピーカ41-第二誤差マイクロホン32間の伝達関数の推定モデルである。誤差経路特性モデル1212は、第二制御スピーカ42-第一誤差マイクロホン31間の伝達関数の推定モデルである。誤差経路特性モデル1222は、第二制御スピーカ42-第二誤差マイクロホン32間の伝達関数の推定モデルである。
ここまでの準備工程の結果を基にして、実験では、図14に示す騒音制御システム201を作成した。図14に示す騒音制御システム201は、実施形態の騒音制御システム101(図3参照)に対応したものであるが、実験では図14に示すように、シグナルジェネレータ9bとスピーカ9aとの組合せを騒音源としている。つまり、実験では、騒音源としてシグナルジェネレータ9bで純音を生成してスピーカ9aから放射した。これにより、単一周波数だけ抽出するバンドパスフィルタ11a(図3参照)を模擬している。シグナルジェネレータ9bで生成する純音は、40 [Hz], 53 [Hz]の2種類である。なお、誤差マイクロホン31,32および制御スピーカ41,42の配置は図13で示す配置と同じである。図14に示す騒音制御システム201を動作させることで、誤差マイクロホン31,32における音圧が最小となるように適応フィルタ131,132が更新される。
図15および図16を参照して、騒音制御を行った場合における第二室Q2(受音室R2)での制御効果について説明する。図15は、第二室Q2(受音室R2)における制御前後を比較した40 [Hz]の差分音圧分布である。図16は、第二室Q2(受音室R2)における制御前後を比較した53 [Hz]の差分音圧分布である。
図15および図16において、横軸は測定点の位置であり、縦軸は制御前後での音圧レベルの差分(「音圧レベル制御前後差分」と称する)である。測定点は、図13中の破線(X1~X10,Y1~Y7)が交差している点である。音圧レベル制御前後差分が負になると音圧が制御により低減していることを示す。
図15に示すように、シグナルジェネレータ9bで生成する純音が40 [Hz]の場合では、受音室R2である第二室Q2全体の音圧が低減しており、制御効果が現れている。また、図16に示すように、シグナルジェネレータ9bで生成する純音が53 [Hz]の場合では、受音室R2である第二室Q2の広い範囲で音圧が低減しており、制御効果が現れている。なお、53 [Hz]の場合では、音圧レベル制御前後差分が正になる点も存在するが、全体として音圧が低減する傾向にあるといえる(例えば、全測定点の平均値が負になっており、また、正側の体積よりも負側の体積の大きくなっている)。なお、図示は省略しているが、モード周波数以外の周波数では音圧の増幅はない。
このように、各室(騒音源室、受音室)のモード周波数のみを抽出して制御に利用することで、受音室の広い範囲の音圧を低減できるアクティブノイズコントロールシステムを構築できることが実験結果からも証明された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
1,101 騒音制御システム
2 参照マイクロホン
3,31,32 誤差マイクロホン
4,41,42 制御スピーカ
5,105 信号処理装置
9 騒音源
11a,11b,11 バンドパスフィルタ
12,1211,1221,1212,1222 誤差経路特性モデル
13,131,132 適応フィルタ
14,141,142 LMS処理部
15 パワーアンプ
R1 騒音源室
R2 受音室
Ra 壁

Claims (4)

  1. 騒音源を備える騒音源室に隣接する受音室での騒音を低減させる騒音制御システムであって、
    前記騒音源室内に設置される参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカと、
    号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する信号処理装置と、を備え、
    前記参照マイクロホンは、前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置され、当該騒音を参照信号として前記信号処理装置に出力し、
    前記制御スピーカは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音を前記騒音源室内に放出し、
    前記誤差マイクロホンは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音によって打ち消された後の騒音を誤差信号として前記信号処理装置に出力し、
    前記信号処理装置は、
    前記参照信号および前記誤差信号から特定の周波数の成分を抽出するバンドパスフィルタと、
    前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによってフィルタ係数が更新される適応フィルタと、を備え、
    前記適応フィルタは、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成し、
    前記バンドパスフィルタは、前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出するものである、
    ことを特徴とする騒音制御システム。
  2. 前記信号処理装置は、前記制御スピーカと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数が組み込まれた誤差経路特性モデルをさらに有し、
    前記適応フィルタのフィルタ係数は、前記適応フィルタと前記誤差経路特性モデルとを合成した伝達関数と、前記参照マイクロホンと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数とが等しくなるように更新される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の騒音制御システム。
  3. 騒音源を備える騒音源室に隣接する受音室での騒音を低減させる騒音制御方法であって、
    参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカを前記騒音源室内に設置する準備工程と、
    号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する制御工程と、を有し、
    前記準備工程では、
    前記参照マイクロホンを前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置し、
    前記制御スピーカおよび前記誤差マイクロホンを前記騒音源室内の室隅に設置し、
    前記制御工程には、
    前記参照マイクロホンから取得した参照信号および前記誤差マイクロホンから取得した誤差信号から、バンドパスフィルタを用いて前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出する抽出工程と、
    前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによって適応フィルタのフィルタ係数を更新し、また、前記適応フィルタが前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成する制御信号生成工程と、が含まれる、
    ことを特徴とする騒音制御方法。
  4. 前記準備工程には、
    前記第一モード周波数および前記第二モード周波数を計測するモード周波数計測工程と、
    前記騒音の中で音が大きい卓越周波数を前記騒音源室内で計測する周波数特性計測工程と、
    前記第一モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第一狭帯域、および前記第二モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第二狭帯域を通過させる前記バンドパスフィルタを作成するバンドパスフィルタ作成工程と、が含まれる、
    ことを特徴とする請求項に記載の騒音制御方法。
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