JP7444750B2 - 騒音制御システムおよび騒音制御方法 - Google Patents
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Description
また、騒音源室の隣室に騒音を低減させるための制御装置を設置することも考えられるが、隣室に制御装置を設置することで利用可能なスペースが制限されてしまう。その為、上記のように騒音源室の隣室が会議室として運用されている場合などでは、制御装置を隣室に設置することは望ましくない。
前記参照マイクロホンは、前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置され、当該騒音を参照信号として前記信号処理装置に出力する。
前記制御スピーカは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音を前記騒音源室内に放出する。
前記誤差マイクロホンは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音によって打ち消された後の騒音を誤差信号として前記信号処理装置に出力する。
前記信号処理装置は、前記参照信号および前記誤差信号から特定の周波数の成分を抽出するバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによってフィルタ係数が更新される適応フィルタと、を備える。
前記適応フィルタは、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成する。前記バンドパスフィルタは、前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出するものである。
前記適応フィルタのフィルタ係数は、前記適応フィルタと前記誤差経路特性モデルとを合成した伝達関数と、前記参照マイクロホンと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数とが等しくなるように更新される。
この騒音制御方法は、参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカを前記騒音源室内に設置する準備工程と、信号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する制御工程と、を有する。
前記準備工程では、前記参照マイクロホンを前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置し、前記制御スピーカおよび前記誤差マイクロホンを前記騒音源室内の室隅に設置する。
前記制御工程には、抽出工程と制御信号生成工程とが含まれる。抽出工程では、前記参照マイクロホンから取得した参照信号および前記誤差マイクロホンから取得した誤差信号から、バンドパスフィルタを用いて前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出する。
制御信号生成工程では、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによって適応フィルタのフィルタ係数を更新し、また、前記適応フィルタが前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成する。
モード周波数計測工程では、前記第一モード周波数および前記第二モード周波数を計測する。周波数特性計測工程では、前記騒音の中で音が大きい卓越周波数を前記騒音源室内で計測する。バンドパスフィルタ作成工程では、前記第一モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第一狭帯域、および前記第二モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第二狭帯域を通過させるバンドパスフィルタを作成する。
図1を参照して、実施形態に係る騒音制御システム1について説明する。図1は、実施形態に係る騒音制御システムの構成図である。騒音制御システム1は、アクティブノイズコントロール技術によって騒音を低減するシステムである。騒音制御システム1を用いれば、騒音源を備える室(「騒音源室」と称する)に隣接する室での騒音を低減できる。騒音源に限定はなく、例えば設備機械などである。騒音源室に隣接する室は、騒音源から放射される騒音が伝搬される側(つまり、受け取る側)なので「受音室」と称する。
騒音制御システム1は、主に、参照マイクロホン2と、誤差マイクロホン3と、制御スピーカ4と、信号処理装置5とを備える。参照マイクロホン2、誤差マイクロホン3および制御スピーカ4は騒音源室に設置され、信号処理装置5の設置場所は特に限定されないが騒音源室であるのがよい。
参照マイクロホン2は、制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置され、例えば騒音源9の近傍に配置される。騒音源9は例えば設備機械であり、通常稼動時に発生する騒音の周波数特定はある程度決まっている。参照マイクロホン2は、騒音を参照信号として信号処理装置5に出力する。
誤差マイクロホン3の設置場所は、騒音源室R1の室隅であればよい。図2に示すように、誤差マイクロホン3は、受音室R2に接する壁Ra側の室隅に設置されるのが望ましい。なお、誤差マイクロホン3の高さ方向の位置は、限定されないが、本実施形態の誤差マイクロホン3は例えば天井近くに設置される。誤差マイクロホン3は、制御音によって打ち消された後の騒音を誤差信号として信号処理装置5に出力する(すなわち、騒音と制御スピーカ4の放射音との誤差を検出している)。
バンドパスフィルタ11bには、誤差マイクロホン3から誤差信号が入力される(なお、誤差信号はマイクアンプによって増幅される)。バンドパスフィルタ11bによって抽出された誤差信号は、LMS処理部14に入力されてFiltered-x LMSアルゴリズムに基づいた演算に使用され、適応フィルタ13のフィルタ係数が更新される。
誤差経路特性モデル12は、制御スピーカ4と誤差マイクロホン3との間の伝達関数が組み込まれている。誤差経路特性モデル12から出力された信号は、LMS処理部14に入力される。
信号処理装置105は、主に、モード周波数抽出用のバンドパスフィルタ11a,11bと、四つの誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222と、二つの適応フィルタ131,132と、二つのLMS処理部141,142とを備える。
バンドパスフィルタ11bには、誤差マイクロホン31,32から誤差信号が入力される(なお、誤差信号はマイクアンプによって増幅される)。バンドパスフィルタ11bによって抽出された誤差信号は、LMS処理部141,142に入力されてMEFX-LMSアルゴリズムに基づいた演算に使用され、適応フィルタ131,132のフィルタ係数が更新される。
図4を参照して(適宜、図1ないし図3を参照)、実施形態に係る騒音制御システム1,101の準備工程について説明する。図4は、騒音制御システム1,101の準備工程を示すフローチャートである。
図4に示すように、騒音制御システム1,101の準備工程は、主に、「S1:制御スピーカ・誤差マイクロホンの位置決定工程」、「S2:騒音源室・受音室内のモード周波数の計測工程」、「S3:騒音源の周波数特性の計測工程」、「S4:受音室の周波数特性の計測工程」、「S5:通過周波数の決定工程」、「S6:バンドパスフィルタの作成工程」、「S7:制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数(誤差経路特性)の推定工程」を有する。なお、工程の種類によっては工程の順番を適宜入れ替えることが可能である。
制御スピーカ4および誤差マイクロホン3を設置する場所を決定する。制御スピーカ4および誤差マイクロホン3が設置されるのは、騒音源室R1(図2参照)内である。制御スピーカ4の設置箇所は、モード周波数を励起できる室隅とする。誤差信号を得る誤差マイクロホン3の設置箇所は、室隅(室隅はモード周波数の節とならない)かつ伝搬する室(受音室R2)に接する場所が望ましい。受音室R2に接する室隅であることで、受音室R2のモード周波数の制御も行うことが可能となる。
続いて、モード周波数成分を抽出するためのバンドパスフィルタ11を設計するために、事前に騒音源室R1、受音室R2内のモード周波数を計測する。モード周波数の計測方法は特に限定されないが、例えば「適応フィルタ」を用いることでモード周波数を推定することができる。適応フィルタを用いてモード周波数を推定する場合、例えば図5に示す伝達関数推定システム50を用いる。図5は、適応フィルタを用いた伝達関数推定システムの構成図である。
図4に示すように、続いて、騒音源9の通常稼働時の周波数特性の計測を実施する。この計測は、例えば騒音源9の近くにマイクロホンを設置して行う。騒音源9で音が大きくなっている卓越周波数を求める。
「騒音源室・受音室内のモード周波数の計測工程」で計測したモード周波数による増幅が原因の騒音が受音室R2で既に発生している場合、騒音源9を通常稼働させた状態で受音室R2内の騒音の周波数特性を計測する。
工程(S2)、工程(S3)、工程(S4)の計測で得られた結果から、バンドパスフィルタ11の作成に必要な通過周波数を決定する。具体的には、工程(S4)と工程(S2)の結果を比較し、工程(S4)の卓越周波数と工程(S2)のモード周波数とが一致する周波数を通過周波数とする。また、通過周波数と工程(S3)の卓越周波数を比較し、騒音源9から発生している騒音であるかを確認する。なお、騒音源9を設置前などの場合、工程(S2)のモード周波数をバンドパスフィルタ11の通過周波数としてもよい。
工程(S5)で得られた通過周波数を基にしてバンドパスフィルタ11を作成する。例えば、通過周波数を中心に所定の帯域幅(例えば、5Hz)を通過するようなチェビシェフフィルタを設計するのがよい。バンドパスフィルタ11にチェビシェフフィルタを用いるのがよい理由は、フィルタの減衰特性が急峻で狭帯域を抽出しやすいためである。
続いて、アクティブノイズコントロールのフィルタ更新アルゴリズムであるFiltered-x LMSにおける誤差経路特性モデル12や、MEFX-LMSアルゴリズムにおける誤差経路特性モデル1211,1221,1212,1222を作成するために、制御スピーカ-誤差マイクロホン間の伝達関数を推定する。推定法としては、例えば適応フィルタによる方法がある。適応フィルタを用いた伝達関数の推定法は、公知の技術であるので詳細な説明は省略する。この推定法の考え方は、例えば「特開平9-171388号公報」に記載されている。
以上のように、本実施形態に係る騒音制御システム1,101は、騒音源室R1および受音室R2のモード周波数だけ通過するバンドパスフィルタ11を用いることで参照信号の絞り込みを行う。これにより、騒音源9が放射する周波数と騒音源室R1および受音室R2のいずれかのモード周波数とが一致した際に生じる受音室R2での音圧の増幅を騒音源室R1内で抑えることができる。その為、受音室R2全体に渡って音圧低減が可能である。また、騒音制御システム1,101を構成する機器は、騒音源室R1に設置することができ、受音室R2にこれらの機器を設置しなくてよい。その為、受音室R2ではスペースの利用に制限を受けないので、スペースを有効に利用することができる。
図7に示すように、隣接する第一室Q1および第二室Q2を用いて実験を行った。第一室Q1および第二室Q2は、概ね矩形状を呈しており、第二室Q2は第一室Q1に比べて大きい。第一室Q1および第二室Q2内には柱等の障害物M1~M4が設けられている。その為、第一室Q1および第二室Q2のモード周波数を計算により求めるのは難しい。
・第一室Q1(騒音源室R1):30,53,60,65 [Hz]
・第二室Q2(受音室R2) :30,40,60,69 [Hz]
図15および図16において、横軸は測定点の位置であり、縦軸は制御前後での音圧レベルの差分(「音圧レベル制御前後差分」と称する)である。測定点は、図13中の破線(X1~X10,Y1~Y7)が交差している点である。音圧レベル制御前後差分が負になると音圧が制御により低減していることを示す。
2 参照マイクロホン
3,31,32 誤差マイクロホン
4,41,42 制御スピーカ
5,105 信号処理装置
9 騒音源
11a,11b,11 バンドパスフィルタ
12,1211,1221,1212,1222 誤差経路特性モデル
13,131,132 適応フィルタ
14,141,142 LMS処理部
15 パワーアンプ
R1 騒音源室
R2 受音室
Ra 壁
Claims (4)
- 騒音源を備える騒音源室に隣接する受音室での騒音を低減させる騒音制御システムであって、
前記騒音源室内に設置される参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカと、
信号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する信号処理装置と、を備え、
前記参照マイクロホンは、前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置され、当該騒音を参照信号として前記信号処理装置に出力し、
前記制御スピーカは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音を前記騒音源室内に放出し、
前記誤差マイクロホンは、前記騒音源室内の室隅に設置され、前記制御音によって打ち消された後の騒音を誤差信号として前記信号処理装置に出力し、
前記信号処理装置は、
前記参照信号および前記誤差信号から特定の周波数の成分を抽出するバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによってフィルタ係数が更新される適応フィルタと、を備え、
前記適応フィルタは、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成し、
前記バンドパスフィルタは、前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出するものである、
ことを特徴とする騒音制御システム。 - 前記信号処理装置は、前記制御スピーカと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数が組み込まれた誤差経路特性モデルをさらに有し、
前記適応フィルタのフィルタ係数は、前記適応フィルタと前記誤差経路特性モデルとを合成した伝達関数と、前記参照マイクロホンと前記誤差マイクロホンとの間の伝達関数とが等しくなるように更新される、
ことを特徴とする請求項1に記載の騒音制御システム。 - 騒音源を備える騒音源室に隣接する受音室での騒音を低減させる騒音制御方法であって、
参照マイクロホン、誤差マイクロホンおよび制御スピーカを前記騒音源室内に設置する準備工程と、
信号処理を行うことで前記騒音源室内の騒音を打ち消す制御音を発生させる制御信号を前記制御スピーカに出力する制御工程と、を有し、
前記準備工程では、
前記参照マイクロホンを前記制御音によって打ち消される前の騒音を検出可能な場所に設置し、
前記制御スピーカおよび前記誤差マイクロホンを前記騒音源室内の室隅に設置し、
前記制御工程には、
前記参照マイクロホンから取得した参照信号および前記誤差マイクロホンから取得した誤差信号から、バンドパスフィルタを用いて前記騒音源室で音が増幅しやすい第一モード周波数の成分および前記受音室で音が増幅しやすい第二モード周波数の成分を抽出する抽出工程と、
前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号および前記誤差信号に基づき、LMSアルゴリズムによって適応フィルタのフィルタ係数を更新し、また、前記適応フィルタが前記バンドパスフィルタによって抽出された前記参照信号を用いて前記制御信号を生成する制御信号生成工程と、が含まれる、
ことを特徴とする騒音制御方法。 - 前記準備工程には、
前記第一モード周波数および前記第二モード周波数を計測するモード周波数計測工程と、
前記騒音の中で音が大きい卓越周波数を前記騒音源室内で計測する周波数特性計測工程と、
前記第一モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第一狭帯域、および前記第二モード周波数と前記卓越周波数とが一致する周波数を含む第二狭帯域を通過させる前記バンドパスフィルタを作成するバンドパスフィルタ作成工程と、が含まれる、
ことを特徴とする請求項3に記載の騒音制御方法。
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