JP7444055B2 - 酵素組成物 - Google Patents

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    • C12N9/20Triglyceride splitting, e.g. by means of lipase

Description

本発明は、ベーカリー食品の老化を抑制するために好適に用いられる酵素組成物に関する。また、本発明は当該酵素組成物等を利用したベーカリー食品の製造方法に関する。さらに本発明は、当該組成物等を利用したベーカリー食品の老化抑制方法に関する。
パンやスポンジケーキ等のベーカリー食品は、その製造直後から経時的に品質が低下することが知られている。このようなベーカリー食品の品質低下(老化)を抑制し、ベーカリー食品の品質を改良するために、従来、様々な方法が提案されている。
例えば、パンの品質を改良するために、パンのドーに分枝酵素を添加する方法(特許文献1)や、トランスグルタミナーゼ、L-アスコルビン酸及びパン類用乳化剤を配合して作製したパン生地を凍結する方法(特許文献2)等が報告されている。しかし、これらの方法の老化抑制効果は、十分とは言えなかった。
またトランスグルタミナーゼを含有する油脂組成物を冷凍生地に配合し、これを焼成することにより、食感及び老化等の品質が改善されたパンを製造できることが報告されている(特許文献3)。
特表2000-513568号公報 国際公開第2014/157577号 特開平11-276056号公報
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ベーカリー食品の老化を抑制するための新規方法を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の酵素を組み合わせてベーカリー食品生地に作用させることにより、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることを見出し、さらに研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1](A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼを含む酵素組成物。
[2]ベーカリー食品生地用である、[1]記載の酵素組成物。
[3]酵素組成物に含まれる(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uとなるように、ベーカリー食品生地に添加される、[1]又は[2]記載の酵素組成物。
[4]酵素組成物に含まれる(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.001~1000Uとなるように、ベーカリー食品生地に添加される、[1]~[3]のいずれか一つに記載の酵素組成物。
[5]酵素組成物に含まれる(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uとなるように、ベーカリー食品生地に添加される、[1]~[4]のいずれか一つに記載の酵素組成物。
[6]ベーカリー食品の老化抑制用である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の酵素組成物。
[7](A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼを含有するベーカリー食品生地。
[8](A)の含有量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001~1000Uである、[7]記載のベーカリー食品生地。
[9](B)の含有量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.001~1000Uである、[7]又は[8]記載のベーカリー食品生地。
[10](C)の含有量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001~1000Uである、[7]~[9]のいずれか一つに記載のベーカリー食品生地。
[11](A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼをベーカリー食品生地に添加することを含む、ベーカリー食品の製造方法。
[12]ベーカリー食品生地に添加される(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uである、[11]記載の製造方法。
[13]ベーカリー食品生地に添加される(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.001~1000Uである、[11]又は[12]記載の製造方法。
[14]ベーカリー食品生地に添加される(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uである、[11]~[13]のいずれか一つに記載の製造方法。
[15]ベーカリー食品が、老化が抑制されたベーカリー食品である、[11]~[14]のいずれか一つに記載の製造方法。
[16](A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼをベーカリー食品生地に添加することを含む、ベーカリー食品の老化抑制方法。
[17]ベーカリー食品生地に添加される(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uである、[16]記載の方法。
[18]ベーカリー食品生地に添加される(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.001~1000Uである、[16]又は[17]記載の方法。
[19]ベーカリー食品生地に添加される(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uである、[16]~[18]のいずれか一つに記載の方法。
本発明によれば、ベーカリー食品の老化を抑制でき、老化が抑制されたベーカリー食品を提供できる。
本発明によれば、老化が抑制されたベーカリー食品の製造に好適に用いられ得る酵素組成物、ベーカリー食品生地を提供できる。
本発明によれば、老化が抑制されたベーカリー食品の製造方法及びベーカリー食品の老化抑制方法を提供できる。
図1は、実施例1及び比較例1~3の角食パンの硬化速度(コントロールの角食パンの硬化速度を100%とした時の相対値)を示すグラフである。
(本発明の酵素組成物)
本発明の酵素組成物は、(A)トランスグルタミナーゼ(本明細書において単に「(A)」と称する場合がある)、(B)α-アミラーゼ(本明細書において単に「(B)」と称する場合がある)及び(C)リパーゼ(本明細書において単に「(C)」と称する場合がある)を含むことを主たる特徴とする。
[(A)トランスグルタミナーゼ]
トランスグルタミナーゼは、タンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体とし、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素であり、例えば、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のもの等、種々の起源のものが知られている。本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは、上述の活性を有すればその起源は特に制限されず、いかなる起源のトランスグルタミナーゼであっても使用でき、また組み換え酵素を使用してもよい。本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは市販品であってもよく、具体例としては、味の素社より「アクティバ」(登録商標)TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼ等が挙げられる。
本発明においてトランスグルタミナーゼの活性単位は、次のように測定され、かつ、定義される。
ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質としてトランスグルタミナーゼに作用させ、ヒドロキサム酸にトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後、525nmでの吸光度を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め、酵素活性を算出する。37℃、pH6.0で1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義する。
[(B)α-アミラーゼ]
α-アミラーゼは、デンプン分子の直鎖構造(アミロース)、分岐構造(アミロペクチン)を切断してデキストリンとマルトースとに分解する活性を有する酵素であり、例えば、微生物由来のもの、植物由来のもの、動物由来のもの等、種々の起源のものが知られている。本発明において用いられるα-アミラーゼは、上述の活性を有すればその起源は特に制限されず、いかなる起源のα-アミラーゼであっても使用でき、また組み換え酵素を使用してもよい。本発明において用いられるα-アミラーゼは、好ましくは微生物由来のものであり、微生物由来のα-アミラーゼとしては、例えば、アスペルギルス属菌(例、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・エスピー(Aspergillus sp)等)由来のα-アミラーゼ、バチルス属菌(例、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等)由来のα-アミラーゼ等が挙げられる。本発明において用いられるα-アミラーゼは市販品であってもよく、具体例としては、ビオザイムA(天野エンザイム社製)、ノバミル10000BG、ノバミル3DBG(いずれもノボザイムズジャパン社製)、スミチームL、スミチームAS(いずれも新日本化学工業社製)等が挙げられる。
本発明においてα-アミラーゼの活性単位は、次のように測定され、かつ、定義される。
ブロックp-ニトロフェニルマルトヘプタオサイドを基質としてα-アミラーゼを作用させる。その後、生成したp-ニトロフェニルマルトサッカライドを耐熱性α-グルコシダーゼで分解しリン酸三ナトリウムで反応停止させ、生成したp-ニトロフェノールを410nmでの吸光度を測定する。1分間で1μモルのp-ニトロフェノールを遊離させる酵素量を1U(ユニット)と定義する。
[(C)リパーゼ]
リパーゼは、グリセリン脂肪酸エステルを脂肪酸とグリセロールとに加水分解する活性を有する酵素であり、トリアシルグリセロール リパーゼ(triacylglycerol lipase)、トリアシルグリセリド リパーゼ(triacylglyceride lipase)等と称されるものを包含する。リパーゼには、微生物由来のもの、植物由来のもの、動物由来のもの等、種々の起源のものが知られているが、本発明において用いられるリパーゼは、上述の活性を有すればその起源は特に制限されず、いかなる起源のリパーゼであっても使用でき、また組み換え酵素を使用してもよい。本発明において用いられるリパーゼは、好ましくは微生物由来のものであり、微生物由来のリパーゼとしては、例えば、アスペルギルス属菌(例、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等)由来のリパーゼ、リゾプス属菌(例、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)等)由来のリパーゼ、カンジダ属菌由来のリパーゼ、ペニシリウム属菌由来のリパーゼ等が挙げられる。本発明において用いられるリパーゼは市販品であってもよく、具体例としては、リパーゼA「アマノ」6、リパーゼDF「アマノ」15(いずれも天野エンザイム社製)、リポパン50BG(ノボザイムズジャパン社製)、パナモアゴールデン、ベイクザイムL80.000B(いずれもDSM社製)等が挙げられる。
本発明においてリパーゼの活性単位は、次のように測定され、かつ、定義される。
オリーブ油100mLと2%PVA試液150mLを乳化させて基質とし、当該基質5mLにマッキルベイン緩衝液(pH7.0)4mL及び酵素液1mLを混和し、37℃にて60分間反応させ、反応停止後、生成した脂肪酸を滴定法で測定する。遊離したオレイン酸1μモルに相当する酸を遊離させる酵素量を1U(ユニット)と定義する。
本発明の酵素組成物に含まれる(A)の量は、本発明の酵素組成物1g当たり、通常0.0001U以上であり、好ましくは0.001U以上であり、特に好ましくは0.01U以上である。また当該量は、本発明の酵素組成物1g当たり、通常1000U以下であり、好ましくは100U以下であり、より好ましくは10U以下であり、特に好ましくは1U以下である。
本発明の酵素組成物に含まれる(B)の量は、本発明の酵素組成物1g当たり、通常0.001U以上であり、好ましくは0.01U以上であり、より好ましくは0.1U以上であり、特に好ましくは1U以上である。また当該量は、本発明の酵素組成物1g当たり、通常1000U以下であり、好ましくは100U以下であり、より好ましくは50U以下であり、特に好ましくは10U以下である。
本発明の酵素組成物に含まれる(C)の量は、本発明の酵素組成物1g当たり、通常0.0001U以上であり、好ましくは0.001U以上であり、より好ましくは0.01U以上であり、特に好ましくは0.1U以上である。また当該量は、本発明の酵素組成物1g当たり、通常1000U以下であり、好ましくは100U以下であり、より好ましくは50U以下であり、特に好ましくは30U以下である。
本発明の酵素組成物に含まれる(A)の量と(B)の量との比率は特に制限されないが、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、活性比で、好ましくは(A):(B)=1:10~1200であり、より好ましくは(A):(B)=1:100~1000であり、更に好ましくは(A):(B)=1:200~700であり、特に好ましくは(A):(B)=1:250~350である。
本発明の酵素組成物に含まれる(A)の量と(C)の量との比率は特に制限されないが、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、活性比で、好ましくは(A):(C)=1:1~300であり、より好ましくは(A):(C)=1:10~200であり、特に好ましくは(A):(C)=1:50~150である。
本発明の酵素組成物の形態は特に制限されず、例えば、固体状(粉末状、顆粒状等を含む)、液体状(スラリー状等を含む)、ゲル状、ペースト状等が挙げられる。
本発明の酵素組成物は、(A)、(B)及び(C)のみからなるものであってよいが、これらに加えて、食品用の酵素製剤に慣用の基剤をさらに含有するものであってもよい。当該基剤としては、例えば、澱粉、デキストリン、シクロデキストリン、糖類(例、乳糖、ショ糖、グルコース等)、蛋白質(例、動植物性蛋白質等)、塩類(塩化ナトリウム等)、水、油脂類等が挙げられる。
本発明の酵素組成物は、本発明の目的を損なわない限り、(A)、(B)及び(C)に加えて、例えば、賦形剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、甘味料(例、砂糖等)、食塩、有機塩類、無機塩類、調味料、酸味料、香辛料、着色料、発色剤等を更に含有してよい。
本発明の酵素組成物の製造は、食品用の酵素製剤の製造に慣用の方法又はそれに準ずる方法により行い得る。
本発明の酵素組成物に含まれる(A)、(B)及び(C)は、全てが一つの製剤に含有されてよいが、(A)、(B)及び(C)が二つ以上の製剤に含有されてもよい。(A)、(B)及び(C)が二つ以上の製剤に含有される場合、本発明の酵素組成物は、例えば、(A)、(B)及び(C)をそれぞれ単独で含有する製剤を組み合わせたものや、(A)、(B)及び(C)のいずれか一つを含有する製剤と、残りの二つを含有する製剤とを組み合わせたもの等であってよい。
本発明の酵素組成物に含まれる(A)、(B)及び(C)が二つ以上の製剤に含有される場合、本発明の酵素組成物に含まれる(A)、(B)及び(C)の量は、各製剤に含まれる(A)、(B)及び(C)の量を合計して算出される。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品生地に添加して用いられ得、すなわち本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品生地用の酵素組成物であってよい。本発明において「ベーカリー食品」とは、小麦粉を主成分とする生地を焼成して得られる食品をいい、具体的には、パン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツ、クレープ、パイ、タルト、ペイストリー、ビスケット、クッキー、クラッカー、プレッツェル等が挙げられるが、これらに制限されない。またベーカリー食品の製造に用いられる、小麦粉を主成分とする生地を、本発明において「ベーカリー食品生地」ともいい、詳細には「ベーカリー食品生地」とは、主成分である小麦粉、その他の食品原料(例、糖類、食塩、油脂類、イースト、乳製品等)に水等を加えて、混練、混捏することによって得られ、焼成されていないものを意味する。ベーカリー食品生地の具体例としては、パン生地、スポンジケーキ生地、ホットケーキ生地、ドーナッツ生地、クレープ生地、パイ生地、タルト生地、ペイストリー生地、ビスケット生地、クッキー生地、クラッカー生地、プレッツェル生地等が挙げられるが、これらに制限されない。
本発明において、小麦粉を「主成分とする」生地とは、生地における小麦粉の含有量が、生地に対して、通常30重量%以上であり、好ましくは50重量%以上である生地を意味する。
本発明の酵素組成物を添加し得るベーカリー食品生地に主成分として含有される小麦粉の種類は特に制限されないが、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉等が挙げられ、製パン性の観点から、好ましくは準強力粉、強力粉である。これらの小麦粉は、一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の酵素組成物を添加し得るベーカリー食品生地は、小麦粉を主成分とするものであれば、本発明の目的を損なわない限り、小麦粉以外の食品原料を任意で含有してよい。そのような食品原料としては、例えば、糖類(例、砂糖、異性化液糖、水あめ、トレハロース、糖アルコール等)、食塩、油脂類(例、ショートニング、マーガリン、バター、ラード、パーム油やオリーブオイル等の植物油等)、イースト、イーストフード、卵、乳、乳製品(例、スキムミルク、加糖練乳、ホエーパウダー等)、小麦粉以外の穀粉(例、大豆粉等)、蛋白質(例、グルテン等)及びその分解物、果実、酸化剤(例、ビタミンC、臭素酸カリウム等)、還元剤(例、システイン、シスチン及びそれらの塩等)、乳化剤(例、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩等)、膨張剤(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等)、漂白剤(例、過硫酸アンモニウム等)、調味料、酸味料、香辛料、香料等が挙げられる。本発明の酵素組成物を添加し得るベーカリー食品生地は、本発明の目的を損なわない限り、(A)、(B)及び(C)以外の酵素(例えば、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペントサナーゼ等)を含有してもよい。
本発明の酵素組成物は、好ましくはパン生地、スポンジケーキ生地、ホットケーキ生地、ドーナッツ生地、クレープ生地、パイ生地、タルト生地、ペイストリー生地、ビスケット生地、クッキー生地、クラッカー生地及びプレッツェル生地からなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品生地用の酵素組成物であり、中でもパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツは、より老化抑制が課題となりやすいことから、本発明の酵素組成物は、パン生地、スポンジケーキ生地、ホットケーキ生地及びドーナッツ生地からなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品生地用の酵素組成物として特に好ましく用いられ得る。
本発明の酵素組成物をベーカリー食品生地に添加する方法及び条件は特に限定されず、本発明の酵素組成物の形態やベーカリー食品生地の種類等に応じて自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。本発明の酵素組成物をベーカリー食品生地に添加する時期は、ベーカリー食品生地の焼成前であれば特に限定されないが、例えば、ベーカリー食品生地の製造中、ベーカリー食品生地の製造後等が挙げられる。ベーカリー食品生地を製造する前の原料に本発明の酵素組成物を添加してもよい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001U以上(より好ましくは0.001U以上、特に好ましくは0.01U以上)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。また本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、1000U以下(より好ましくは10U以下、特に好ましくは1U以下)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、本発明の酵素組成物に含まれる(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001U以上(より好ましくは0.001U以上、特に好ましくは0.01U以上)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。また本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、本発明の酵素組成物に含まれる(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、1000U以下(より好ましくは10U以下、特に好ましくは1U以下)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.001U以上(より好ましくは0.1U以上、特に好ましくは1U以上)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。また本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、1000U以下(より好ましくは50U以下、特に好ましくは10U以下)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、本発明の酵素組成物に含まれる(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.001U以上(より好ましくは0.1U以上、特に好ましくは1U以上)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。また本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、本発明の酵素組成物に含まれる(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、1000U以下(より好ましくは50U以下、特に好ましくは10U以下)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001U以上(より好ましくは0.01U以上、特に好ましくは0.1U以上)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。また本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、1000U以下(より好ましくは50U以下、特に好ましくは30U以下)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、本発明の酵素組成物に含まれる(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001U以上(より好ましくは0.01U以上、特に好ましくは0.1U以上)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。また本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、本発明の酵素組成物に含まれる(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、1000U以下(より好ましくは50U以下、特に好ましくは30U以下)となるようにベーカリー食品生地に添加されることが好ましい。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の老化抑制用の酵素組成物として好適に用いられ得る。本発明においてベーカリー食品の「老化」とは、ベーカリー食品の品質(例、食味、食感等)が経時的に低下する現象をいい、主にベーカリー食品の食感が経時的に硬くなることに起因している。かかるベーカリー食品の硬化は、ベーカリー食品に含まれる澱粉は加熱されることによって膨化し糊化(α化)するが、この糊化した澱粉の少なくとも一部が経時的に水分を失ってβ化することによると考えられている。ベーカリー食品の老化の程度は、一態様としてベーカリー食品が角食パンである場合、例えば、後述の実施例に示されるように、クラム(角食パンの内相部分)の硬化速度を測定、算出すること等によって評価できるが、当該方法に制限されるものでなく、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。
また本発明においてベーカリー食品の老化の「抑制」とは、ベーカリー食品の老化を防止すること又は遅延させることをいう。
本発明の酵素組成物は、ベーカリー食品の焼成1日後(特に好ましくは焼成1日後から7日後まで)の老化(例、硬化等)抑制用の酵素組成物としてより好ましく用いられ得る。
本発明の酵素組成物は、好ましくはパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツ、クレープ、パイ、タルト、ペイストリー、ビスケット、クッキー、クラッカー及びプレッツェルからなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品の老化抑制用の酵素組成物であり、中でもパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツは、より老化抑制が課題となりやすいことから、本発明の酵素組成物は、パン、スポンジケーキ、ホットケーキ及びドーナッツからなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品の老化抑制用の酵素組成物として特に好ましく用いられ得る。
本発明によれば、本発明の酵素組成物を含有するベーカリー食品生地が提供される。
また本発明によれば、(A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼを含有するベーカリー食品生地も提供される。
本明細書中、これらのベーカリー食品生地を、まとめて「本発明のベーカリー食品生地」と称する場合がある。
本発明のベーカリー食品生地における(A)の含有量は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、好ましくは0.0001U以上、より好ましくは0.001U以上、特に好ましくは0.01U以上である。また当該含有量は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、好ましくは1000U以下、より好ましくは10U以下、特に好ましくは1U以下である。
本発明のベーカリー食品生地における(B)の含有量は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、好ましくは0.001U以上、より好ましくは0.1U以上、特に好ましくは1U以上である。また当該含有量は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、好ましくは1000U以下、より好ましくは50U以下、特に好ましくは10U以下である。
本発明のベーカリー食品生地における(C)の含有量は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、好ましくは0.0001U以上、より好ましくは0.01U以上、特に好ましくは0.1U以上である。また当該含有量は、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、好ましくは1000U以下、より好ましくは50U以下、特に好ましくは30U以下である。
本発明のベーカリー食品生地における(A)の含有量と(B)の含有量との比率は特に制限されないが、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、活性比で、好ましくは(A):(B)=1:10~1200であり、より好ましくは(A):(B)=1:100~1000であり、更に好ましくは(A):(B)=1:200~700であり、特に好ましくは(A):(B)=1:250~350である。
本発明のベーカリー食品生地における(A)の含有量と(C)の含有量との比率は特に制限されないが、ベーカリー食品の老化を効果的に抑制し得ることから、活性比で、好ましくは(A):(C)=1:1~300であり、より好ましくは(A):(C)=1:10~200であり、特に好ましくは(A):(C)=1:50~150である。
本発明のベーカリー食品生地における、本発明の酵素組成物の含有量は、本発明のベーカリー食品生地における(A)、(B)及び(C)の含有量が、上述の範囲内となるように適宜調整すればよく、特に制限されない。
本発明のベーカリー食品生地は、焼成されてベーカリー食品が製造され得るものであれば、その種類は特に制限されないが、例えば、本発明の酵素組成物を添加し得るベーカリー食品生地の説明(上述)において例示したものと同様のものが挙げられる。
本発明のベーカリー食品生地は、小麦粉を主成分とすることが好ましく、すなわち、本発明のベーカリー食品生地における小麦粉の含有量は、生地に対して、通常30重量%以上であり、好ましくは50重量%以上である。本発明のベーカリー食品生地における小麦粉の含有量の上限は特に制限されないが、生地に対して、通常90重量%以下であり、好ましくは80重量%以下である。本発明のベーカリー食品生地が主成分とする小麦粉の種類は特に制限されないが、例えば、本発明の酵素組成物を添加し得るベーカリー食品生地の説明(上述)において、当該ベーカリー食品生地に主成分として含有される小麦粉の種類として例示したものと同様のものが挙げられる。
本発明のベーカリー食品生地は、小麦粉を主成分とするものであれば、本発明の目的を損なわない限り、小麦粉以外の食品原料を任意で含有してよい。そのような食品原料としては、本発明の酵素組成物を添加し得るベーカリー食品生地の説明(上述)において、当該ベーカリー食品生地が含有し得る食品原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
本発明のベーカリー食品生地の製造方法は特に限定されず、ベーカリー食品生地の種類等に応じて自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。例えば、本発明のベーカリー食品生地は、小麦粉、その他の食品原料に水を加えて混捏すること等によって製造できる。
本発明のベーカリー食品生地は、流通形態等に応じて冷蔵処理、冷凍処理等に供してもよく、すなわち本発明のベーカリー食品生地は、冷蔵品、冷凍品等として提供され得る。
本発明のベーカリー食品生地は、老化が抑制されたベーカリー食品の製造に好ましく用いられ得る。本発明のベーカリー食品生地は、焼成1日後(特に好ましくは焼成1日後から7日後まで)の老化(例、硬化等)が抑制されたベーカリー食品の製造に、より好ましく用いられ得る。
(本発明の製造方法)
本発明は、(A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼをベーカリー食品生地に添加することを含む、ベーカリー食品の製造方法(本明細書中、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある)も提供する。
本発明の製造方法において用いられる(A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼは、それぞれ本発明の酵素組成物において説明したトランスグルタミナーゼ((A))、α-アミラーゼ((B))及びリパーゼ((C))と同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の製造方法によって製造されるベーカリー食品は特に制限されないが、例えば、本発明の酵素組成物の説明(上述)において例示したものと同様のものが挙げられる。
本発明の製造方法において、ベーカリー食品生地への(A)、(B)及び(C)の添加は、ベーカリー食品生地に添加される(A)、(B)及び(C)の量が、本発明のベーカリー食品生地における(A)、(B)及び(C)の含有量の範囲(上述)と同様となるように行い得る。
本発明の製造方法において、ベーカリー食品生地に添加される(A)の量と(B)の量との比率は特に制限されないが、当該比率が、本発明のベーカリー食品生地における(A)の含有量と(B)の含有量との比率の範囲(上述)と同様となるように行い得る。
また本発明の製造方法において、ベーカリー食品生地に添加される(A)の量と(C)の量との比率は特に制限されないが、当該比率が、本発明のベーカリー食品生地における(A)の含有量と(C)の含有量との比率の範囲(上述)と同様となるように行い得る。
本発明の製造方法は、(A)、(B)及び(C)を個別に添加してよいが、(A)、(B)及び(C)を添加前に予め混合し、得られた混合物を添加してもよい。(A)、(B)及び(C)の添加は、本発明の酵素組成物を使用して行われてもよい。
(A)、(B)及び(C)を個別に添加する場合、添加の順序及び間隔は特に制限されず、例えば(A)、(B)、(C)の順序、あるいはその逆の順序等で添加してよい。また(A)、(B)及び(C)を同時に添加してもよい。
(A)、(B)及び(C)をベーカリー食品生地に添加する方法及び条件は特に限定されず、ベーカリー食品の種類等に応じて適宜設定できる。(A)、(B)及び(C)をベーカリー食品生地に添加する時期は、ベーカリー食品生地の焼成前であれば特に限定されないが、例えば、ベーカリー食品生地の製造中、ベーカリー食品生地の完成後等が挙げられる。ベーカリー食品生地を製造する前の原料に本発明の酵素組成物を添加してもよい。
ベーカリー食品生地に添加された(A)、(B)及び(C)は、ベーカリー食品生地を焼成すると失活するため、ベーカリー食品生地に(A)、(B)及び(C)が十分に作用し得るよう、本発明のベーカリー食品生地は、(A)、(B)及び(C)の添加から焼成までの間に、5分間以上(より好ましくは30分間以上)、5~30℃(より好ましくは10~25℃)の条件下に置かれることが好ましい。
本発明の製造方法は、(A)、(B)及び(C)をベーカリー食品生地に添加することに加えて、ベーカリー食品の製造において慣用の処理工程、調理工程を、製造するベーカリー食品の種類等に応じて適宜含んでよい。例えば、本発明の製造方法は、(A)、(B)及び(C)が添加されたベーカリー食品生地を焼成することを更に含み得る。(A)、(B)及び(C)が添加されたベーカリー食品生地を焼成する方法及び条件(例、焼成温度、焼成時間等)は特に限定されず、製造するベーカリー食品の種類等に応じて適宜設定できるが、ベーカリー食品生地を焼成する際の焼成温度は通常120~250℃であり、焼成時間は通常10~180分間である。
一態様として、本発明の製造方法により製造されるベーカリー食品がパンである場合、本発明の製造方法は、慣用の製パン方法(例、ストレート法、ノータイム法、液種法、中種法等)を全て包含し得る。
本発明の製造方法は、好ましくはパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツ、クレープ、パイ、タルト、ペイストリー、ビスケット、クッキー、クラッカー及びプレッツェルからなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品の製造方法であり、中でもパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツは、より老化抑制が課題となりやすいことから、本発明の製造方法は、より好ましくはパン、スポンジケーキ、ホットケーキ及びドーナッツからなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、老化が抑制されたベーカリー食品を製造できる。本発明の製造方法によれば、焼成1日後(より好ましくは焼成1日後から7日後まで)の老化(例、硬化等)が抑制されたベーカリー食品を好ましく製造できる。
(本発明の老化抑制方法)
本発明は、(A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼをベーカリー食品生地に添加することを含む、ベーカリー食品の老化抑制方法(本明細書中、単に「本発明の方法」と称する場合がある)も提供する。
本発明の方法において用いられる(A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼは、それぞれ本発明の酵素組成物において説明したトランスグルタミナーゼ((A))、α-アミラーゼ((B))及びリパーゼ((C))と同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の方法は、特に断りのない限り、本発明の製造方法と同様に実施し得、好ましい態様も同様である。
本発明の方法は、好ましくはパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツ、クレープ、パイ、タルト、ペイストリー、ビスケット、クッキー、クラッカー及びプレッツェルからなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品の老化抑制方法であり、中でもパン、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナッツは、より老化抑制が課題となりやすいことから、本発明の方法は、より好ましくはパン、スポンジケーキ、ホットケーキ及びドーナッツからなる群より選択される少なくとも一つのベーカリー食品の老化抑制方法である。
本発明の方法によれば、ベーカリー食品の老化を抑制することができる。本発明の方法によれば、焼成1日後(より好ましくは焼成1日後から7日後まで)のベーカリー食品の老化(例、硬化等)を好ましく抑制することができる。
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
[パン生地の作製]
ショートニングを除く下表1記載の原料、トランスグルタミナーゼ(味の素社製、「アクティバ」(登録商標)TG:強力粉1g当たり0.0195U)、α-アミラーゼ(天野エンザイム社製、ビオザイムA:強力粉1g当たり6U)及びリパーゼ(天野エンザイム社製、リパーゼDF「アマノ」15:強力粉1g当たり2U)を、縦型ミキサー(関東混合機工業社製、HPi20M)を使用して、低速(130rpm)にて5分間、次いで中高速(250rpm)にて6分間ミキシング(混捏)した後、高速(310rpm)にて1分間ミキシング(混捏)後、ショートニングを加え、更に低速(130rpm)にて3分間、次いで中高速(250rpm)にて5分間ミキシング(混捏)した後、高速(310rpm)にて1分間ミキシング(混捏)することにより、パン生地を作製した。作製したパン生地の内部温度(捏上温度)は、22℃であった。
Figure 0007444055000001
[パンの製造]
作製したパン生地にフロアータイムを20分間行った後、パン生地を50gずつに分割し、ベンチタイムを20分間行った。次いで、パン生地をモルダーにて角食パン形に型詰めして成型した後、急速凍結させ(-35℃、120分間)、凍結後は-25℃で冷凍保存した。冷凍保存後のパン生地を20℃、湿度70%条件下で150分間静置することにより解凍してから、ホイロ(発酵器、35℃、湿度75%)内に入れ、80~90分間発酵させた後、電気式3段オーブンを使用して、上火210℃、下火210℃で35分間焼成することにより、角食パンを製造した。
(比較例1)
トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼに代えて、トランスグルタミナーゼのみを使用したこと以外は実施例1と同様の手順で、パン生地を作製し、これを用いて実施例1と同様の手順で、角食パンを製造した。
(比較例2)
トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼに代えて、α-アミラーゼのみを使用したこと以外は実施例1と同様の手順で、パン生地を作製し、これを用いて実施例1と同様の手順で、角食パンを製造した。
(比較例3)
トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼに代えて、リパーゼのみを使用したこと以外は実施例1と同様の手順で、パン生地を作製し、これを用いて実施例1と同様の手順で、角食パンを製造した。
(コントロール)
トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼをいずれも使用しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で、パン生地を作製し、これを用いて実施例1と同様の手順で、角食パンを製造した。
実施例1、比較例1~3及びコントロールの角食パンについて、焼成1日後から焼成3日後までのクラム(角食パンの内相部分)の硬化速度を、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製、TA.XT.Plus)を使用して、下記(1)~(3)の手順で測定、算出した。
[クラムの硬化速度の測定、算出方法]
(1)各角食パンのクラムを2cm×2cm×2cmのキューブ状にカットし、測定サンプルとする。
(2)角食パンの焼成1日後、焼成2日後及び焼成3日後において、測定サンプルを、テクスチャーアナライザーの幅3cmのくさび型プランジャーを用いて速度1mm/秒で圧縮し、クラム破断時の応力を測定する。
(3)測定した破断応力と、角食パンの焼成後の経過時間とから、Microsoft社製表計算ソフト「Excel」のSLOPE関数を用いて、回帰直線の傾き(変化率)を求め、その値の絶対値を硬化速度とする。
結果を図1に示す。実施例1及び比較例1~3の角食パンの硬化速度は、コントロールの角食パンの硬化速度を100%とした時の相対値(%)として示した。
図1に示される結果から明らかなように、実施例1の角食パンの硬化速度は、コントロールに対して57%程度に減少し、トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼの併用により、顕著な老化抑制効果が得られたことが確認された。
一方、トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼをそれぞれ単独で用いた比較例1~3では、実施例1に比べて、老化抑制効果が低く、比較例1~3のそれぞれの効果を合算しても、実施例1の効果に及ばないことが確認された。
これらの結果から、トランスグルタミナーゼ、α-アミラーゼ及びリパーゼを併用することによって得られる老化抑制効果は、単なる相加効果でなく、相乗効果であることが示された。
本発明によれば、ベーカリー食品の老化を抑制でき、老化が抑制されたベーカリー食品を提供できる。
本発明によれば、老化が抑制されたベーカリー食品の製造に好適に用いられ得る酵素組成物、ベーカリー食品生地を提供できる。
本発明によれば、老化が抑制されたベーカリー食品の製造方法及びベーカリー食品の老化抑制方法を提供できる。
本出願は、日本で出願された特願2018-058583(出願日:2018年3月26日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (15)

  1. (A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼを含む、ベーカリー食品生地用の酵素組成物であって、
    酵素組成物に含まれる(A)の量と(C)の量との活性比が、(A):(C)=1:50~150である、酵素組成物。
  2. 酵素組成物に含まれる(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uとなるように、ベーカリー食品生地に添加される、請求項1記載の酵素組成物。
  3. 酵素組成物に含まれる(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.001~1000Uとなるように、ベーカリー食品生地に添加される、請求項1又は2記載の酵素組成物。
  4. 酵素組成物に含まれる(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uとなるように、ベーカリー食品生地に添加される、請求項1~のいずれか一項に記載の酵素組成物。
  5. ベーカリー食品の老化抑制用である、請求項1~のいずれか一項に記載の酵素組成物。
  6. (A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼを含有するベーカリー食品生地であって、
    ベーカリー食品生地における(A)の含有量と(C)の含有量との活性比が、(A):(C)=1:50~150である、ベーカリー食品生地。
  7. (A)の含有量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001~1000Uである、請求項記載のベーカリー食品生地。
  8. (B)の含有量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.001~1000Uである、請求項又は記載のベーカリー食品生地。
  9. (C)の含有量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり、0.0001~1000Uである、請求項のいずれか一項に記載のベーカリー食品生地。
  10. (A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼをベーカリー食品生地に添加することを含む、ベーカリー食品の製造方法であって、
    ベーカリー食品生地に添加される(A)の量と(C)の量との活性比が、(A):(C)=1:50~150である、製造方法。
  11. ベーカリー食品生地に添加される(A)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uである、請求項10記載の製造方法。
  12. ベーカリー食品生地に添加される(B)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.001~1000Uである、請求項10又は11記載の製造方法。
  13. ベーカリー食品生地に添加される(C)の量が、ベーカリー食品生地に含有される小麦粉1g当たり0.0001~1000Uである、請求項1012のいずれか一項に記載の製造方法。
  14. ベーカリー食品が、老化が抑制されたベーカリー食品である、請求項1013のいずれか一項に記載の製造方法。
  15. (A)トランスグルタミナーゼ、(B)α-アミラーゼ及び(C)リパーゼをベーカリー食品生地に添加することを含む、ベーカリー食品の老化抑制方法であって、
    ベーカリー食品生地に添加される(A)の量と(C)の量との活性比が、(A):(C)=1:50~150である、方法。
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