JP7444003B2 - 気分障害測定装置および気分障害測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、頭部に設置した複数の電極により観測される脳電位の時系列データを解析することで被験者の気分障害の度合いを定量的に測定する装置および方法に関する。
気分障害とは、慢性疼痛などの疾病などが原因で、常に気分が落ち込んだり、あるいは常に高まったりすることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気である。事業所における労務管理部門や、精神科クリニックでは、環境から受ける負の心理効果や、鬱(うつ)の程度を定量的に評価することへのニーズが高まってきている。
医療現場では、うつ病等の気分障害を診断する際に、問診による診断が主である。また、末梢性疼痛に関しては、慢性的に強い痛みが生じている場合、2点識別覚の閾値の増加といった中枢神経系を含む機能異常が報告されている。また、外部からの侵害刺激に対する実験痛を定量的に評価する熱的方法(Hardyの輻射熱法)があり、痛みを定量化する方法として優れていると言われている。
しかし、心因性の疼痛に関しては患者の主観的評価に大きく依存し、その客観化と定量化は非常に難しいとされており、定量的な診断方法の手段がない。
そこで、大規模な装置を使用することなく、簡易的に診断を行うことができ、気分障害の度合いを定量的に評価できる手法が求められる。
脳が悲しみや恐怖といった精神的ストレスを受けると、情動の中枢である大脳辺縁系に大きな影響が及ぶが、一次的な情動反応は、主として、扁桃体部分で生成されると考えられる。例えば、非特許文献1には、ペットを亡くした20名の被験者に当該ペットに関連する言語的タスクを課してfMRI(磁気共鳴機能画像法)で活動部位を調査した結果、悲しみや忌避に対応して扁桃体を中心とした部分に優位な活性が観測されることが開示されている。この一次的な神経活動は、同じく大脳辺縁系の中にある視床下部の神経核に働きかけ、交換神経および副交感神経からなる自律神経系を介して、二次的な生理反応(例えば血圧や、脈拍、瞳孔反応等)を惹き起こすことが知られている。また二次的な反応は前頭部にもおよび、側坐核を中心とした「喜びの中枢」としての自己報酬系の活動を抑制することが知られている。
一方、非特許文献2には、鬱の経歴のある被験者35名について、閉眼時の脳波計測を行い、精神的な痛みと、前頭葉のδ波(0.5~4Hz未満の徐波)のパワーには高い相関があることを開示している。
更には、非特許文献3には、fMRIおよび脳電位測定の結果、自閉症やうつ病等により喜びの感覚が低下した被検者では、前頭葉の自己報酬系の主要な要素である側坐核の活動が低下するとともに、前帯状皮質の脳波(EEG:electroencephalogram)のδ成分が増加することを開示している。
特許文献1には、大脳深部の活動を少数電極から測定される脳電位間の高次相関を算出することが有効であり、後頭部に配した3電極から得られる3次相関から、認知症に関する診断情報が得られることを開示している。
国際公開第2016/013596号
Peter J. Freed, Ted K.Yanagihara, Joy Hirsch, and J. John Mann, "Neural mechanism of grief regulation", Biol. Psychiatry, vol.66, no.1, pp.33-40, July 2009. Esther L. Meerwijk et al.: Resting-State EEG Delta Power is Associated with Psychological pain in Adults with a History of Depression, Biol Physio. 2015 Feb: 0: pp.106-114. Jan Wacker, Daniel G. Dillon, Diego A. Pissagalli, "The role of the nucleus accumbens and rostral anterior cingulate cortex in anhedonia: Integration of resting EEG, fMRI, and Volumetric Techniques, Neuroimage, vol.46, no.1, pp.327-337, May 2009.
被験者の気分やストレスの状態を推定するのには、脳深部、大脳辺縁系の神経活動を、磁気共鳴機能画像法(fMRI)や、脳磁図(SQID)によって推定する方法が有効とされている。しかしながら、これらの装置は大がかりな付帯設備を必要とするため、一般開業医やメンタル・クリニックのレベルでの導入が困難であった。加えて、患者にも経済的な負担が大きい。一方、電極数が少数であれば、脳電位(脳波)の測定には大がかりな装置を必要としない。そこで、本発明は、医療現場において、比較的軽微な設備で気分障害を定量的かつ簡易に測定することが可能な気分障害測定装置および方法を提供することを主目的とする。
上記の課題は以下の特徴を有する本発明によって解決される。すなわち、本発明の一態様としての気分障害測定装置は、被験者の気分障害を測定する装置であって、前記被験者の頭部上に配置された複数の電位センサを用いて異なる複数の部位の各々で測定された脳電位信号を取得する脳電位信号取得手段と、前記取得された脳電位信号から抽出された脳活動に起因する特定の周波数帯の信号に基づいて脳電位データを算出し、前記被験者の気分障害を測定する気分障害測定手段と、を有し、前記脳電位信号取得手段は、前記被験者の頭部表面の前記各部位を囲む3つの異なる場所に取り付けられる電位センサを用いて脳深部の活動に起因する脳電位信号を取得するものであり、前記複数の部位が、側頭部と前頭部を含むものであり、前記気分障害測定手段は、前記側頭部から測定された周波数帯がθ域であり、前記前頭部から測定された周波数帯がδおよびθ域であり、それぞれの電位センサにおいて取得されたそれぞれの脳電位信号から前記各部位のそれぞれの周波数帯の信号を抽出し、抽出された信号からサンプリング周期で脳電位データを抽出し、それぞれの電位センサごとに抽出された3つの時系列データの位相関係に基づいて、それぞれの電位センサにおいて取得された信号の相関関係を示す相関値を算出し、および、算出された相関値に基づいて脳深部からの信号を解析して脳機能を判断するための指標値を算出し、前記各部位からの脳電位信号により算出した前記指標値を組み合わせて演算し、前記被験者の気分障害を判断するための指標値を算出するものである。
本発明の一態様としての気分障害測定装置において、国際10-20法で規定される電極配置において、側頭部に配置される電位センサの位置がP3、T5およびC3、または、P4、T6およびC4であり、前頭部に配置される電位センサの位置がF3、F4およびCzであることが好ましい。
本発明の一態様としての気分障害測定装置において、前記被験者の気分障害を判断するための指標値を求める演算が、脳機能を判断するための指標値の累乗積、または、線形和であることが好ましい。
本発明の一態様としての気分障害測定方法は、被験者の気分障害を測定する方法であって、前記被験者の頭部上に配置された複数の電位センサを用いて異なる複数の部位の各々で測定された脳電位信号を取得するステップと、前記取得された脳電位信号から抽出された脳活動に起因する特定の周波数帯の信号に基づいて脳電位データを算出し、前記被験者の気分障害を測定するステップと、を有し、前記被験者の頭部表面の前記各部位を囲む3つの異なる場所に取り付けられる電位センサを用いて脳からの信号を取得し、前記複数の部位を側頭部と前頭部を含むものとし、前記側頭部から測定された周波数帯がθ域であり、前記前頭部から測定された周波数帯がδおよびθ域であり、それぞれの電位センサにおいて取得されたそれぞれの脳電位信号から前記各部位のそれぞれの周波数帯の信号を抽出し、抽出された信号からサンプリング周期で脳電位データを抽出し、それぞれの電位センサごとに抽出された3つの時系列データの位相関係に基づいて、それぞれの電位センサにおいて取得された信号の相関関係を示す相関値を算出し、および、算出された相関値に基づいて脳深部からの信号を解析して脳機能を判断するための指標値を算出し、前記各部位からの脳電位信号から算出した前記指標値を組み合わせて演算し、被験者の気分障害の指標値を算出するものである。
本発明によれば、気分障害に関係する脳深部の活動を示す指標を用い、異なる皮質部位の活動の相互関係を反映して高い精度で気分障害を評価することが可能になるので、医療現場において、比較的軽微な設備で気分障害を定量的かつ簡易に測定することができる。
本発明の一実施形態にかかる気分障害測定装置の機能ブロック図である。 上記実施形態に用いる脳活動測定装置の概略図である。 国際10-20法の電極配置を説明する図である。 中心部にダイポール電流源を持つ均一球モデル表面の電位を示す図であって、(a)~(d)は時間経過の様子を示し、(e)は各電極A、B、Cの電位の時間発展を示すグラフである。 遅延パラメータ空間上のプロットを示す図である。 上記実施形態の電位センサの配置を示した概念図である。 上記実施形態の脳電位の3重相関値を算出するための処理ブロックを示す図である。 上記実施形態の3重相関値Sを算出する処理の流れを示すフローチャートである。 上記実施形態の3重相関表示部を示す図である。 上記実施形態の2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットされた3重相関値分布の3次元表示を示す図であって、(a)は3重相関値の空間的・時間的乱れが小さいものを例示し、(b)は3重相関値の空間的・時間的乱れが比較的大きいものを例示する。 3重相関値分布の3次元表示を上からみた図であって、3つの信号が同符号をとる領域を白で表し、3つの信号のいずれか1つの符号が異なる領域を黒で表した図である。 実施例1において、ある被験者の主観評価と評価値d1との相関を示すグラフである。 実施例2において、ある被験者の主観評価と評価値d2との相関を示すグラフである。
以下、図面を参照し本発明の実施の形態にかかる気分障害測定装置および方法について説明する。
[装置概要]
本実施形態の気分障害測定装置100は、図1に示すように、脳電位信号取得手段としての脳活動測定装置200と、その脳活動測定装置200と通信可能に接続される気分障害測定手段としてのコンピュータ110と、コンピュータ110に接続される入力装置(例えばマウス、キーボード)120および出力装置(例えばディスプレイ、プリンタ)130とを含む。コンピュータ110は、処理部111、記憶部112、通信部113を備え、これらの各構成部はバス114によって接続され、またバス114を通して入力装置120および出力装置130に接続される。脳活動測定装置200から得られる信号または脳電位データは、例えばI/Oポートを介してバス114に接続されたコンピュータ110の脳電位情報処理手段によって処理される。処理されたデータは、出力装置130に出力することができる。処理部111は、各部を制御するプロセッサを備えており、記憶部112をワーク領域として各種処理を行う。上記処理手段、演算等は記憶部112内に格納されたプログラムによって実行することができる。入力装置120によりユーザは設定値等を変更することができる。
図2は、上記実施形態で用いる脳活動測定装置200の装置構成例を概念的に示す図である。脳活動測定装置200は、被験者の頭部の異なる複数の部位の各々に対応して少なくとも3つの電位センサ202が取り付けられて脳内神経活動に基づく電位を測定する頭部装着部204と、各電位センサ202と信号ケーブル206で接続された増幅器・帯域フィルタ208と、を備える。増幅器・帯域フィルタ208は、信号ケーブル210で解析用コンピュータ110に接続されている。また、脳活動測定装置200は、基準電位測定用の基準電位センサ212をさらに有する。
頭部装着部204は、図3に示す国際10-20法の電極配置に従い各電位センサ202が配置されるように、被験者の頭部に装着する。この場合、頭部装着部204は、不快な刺激に伴う扁桃体の活動を、側頭部に設置した3つの電位センサ202の各々の電極により検出し、または、その結果として前頭前野の活動が抑制されることを、前頭葉深部の活動を検出するように配置した3つの電位センサ202の各々の電極により検出することが好ましい。両者を同時に検出することがさらに好ましい。具体的には、扁桃体の活動の検出には、図3に示す国際10-20法の側頭部の電極位置P3、T5およびC3、または、P4、T6およびC4に配置した3つの電位センサ202を用い、θ帯域(4Hz以上8Hz未満)の脳電位を測定することが好ましい。前頭前野の活動の検出には、図3示す国際10-20法の前頭部の電極位置F3、F4およびCzに配置した3つの電位センサ202を用い、δ帯域からθ帯域まで(2~6Hz)の脳電位を測定することが好ましい。なお、被験者頭部の所定の部位に電位センサ202を配置できる限り、頭部装着部204の形態に制限はない。測定用の少なくとも3つ1組の電位センサ202および基準電位センサ212は無線通信機能を有し、同様に無線通信機能を有する解析用コンピュータ110へ、測定用の各電位センサ202と基準電位センサ212から得られる脳電位信号の差分を3つの脳電位信号として、無線で送信するようにしてもよい。
[測定原理]
3つの電極を用いた脳活動測定によって、アルツハイマー型認知症を高い確率で識別することができることが特許文献1により知られている。実際にNL(健常者)とAD(アルツハイマー患者)において実験を行い、高い確率での識別を実現している。脳活動測定装置200が、この原理を用いて被験者の快、不快などの気分障害を識別判定する方法は次の通りである。
本測定装置においては、脳深部に等価ダイポール電源を仮定している。ここで、このダイポール電位活動を解析するための電位分布測定を、頭皮上に配置した3つの異なる場所に配置された電極に限定して行う場合を考える。脳深部に電源がある場合には、これら3つの電極で観測される電位波形には、強い位相関係が存在するという事実に基づいて、この位相関係を評価する。このようにして、脳深部に仮定した等価ダイポール電源の時間的な挙動を近似的に推定する。これは、地震波に例えれば、表層に震源を持つ地震波が観測地点ごとに大きく異なるのに比し、深部に震源を持つ地震波では、近い距離をおいて配置された地震計ではほぼ同じ振幅・位相のP波が観測されることと同等な現象である。
脳活動測定装置200では、脳深部の活動に基づいて表面に現れる電位波形は近い距離離れた表面においてはほぼ同位相であることから、3つの電位の符号が同一であるデータのみを加算する方式を定義する。すなわち同一符号のデータのみを演算の対象とすることで、相関を有するデータを抽出することができる。ただし、すべてのデータを演算の対象とすることもできる。
具体的な情報処理としては、まず3つの電位信号が入力されると、3つの電位が同符号の信号を選択する。電位の符号を判定する際の基準電位は、例えば皮質活動を直接反映しない耳朶が用いられうるが、増幅器の帯域フィルタで直流分は遮断されるので、実質的には、各々の電極ごとの時間平均から見た正負の符号を判定することになる。なお基準電位の取り方はこれらに限定されず、導電性ゴム電極も使用することができる。さらには、無線通信機能を有する測定用の3つの電極から得られる脳電位信号と、当該3つの電極の中央に配置される基準電極から得られる脳電位信号の差分を、3つの脳電位信号として無線で送信する構成とすることもできる。この場合は、コンピュータが帯域フィルタの機能を有する。
続いて3重相関値を算出する。3重相関値は、3つの電極からの低周波帯域の電位信号をそれぞれEVA(t)、EVB(t)、EVC(t)としたとき、1つの電極の電位信号に対し、τ1、τ2の時間ずれのある信号との積を使用する。下記数式1に示す(1)式は3重相関値Stの1つの例示である。Tは3重相関値の演算対象時間であり、Δtは各電位信号のデータサンプリング周期であり、Nは規格化するための定数であって、例えば3つの信号の積の計算回数である。
算出された3重相関値を用いて所定の演算を行うことにより指標を算出し、当該指標により、被験者の快や不快などの気分障害の識別判定を行うことができる。
Figure 0007444003000001
上述の演算で得られる遅延パラメータ空間上の3重相関プロットが、脳深部の等価ダイポール電源の挙動とどのような関係にあるかを、均一媒質からなる球状モデルを用いて説明する。以下では、説明の都合上、球モデル各部の呼称を地球になぞらえ、北極(NP)南極(SP)、赤道等と記載する。
脳深部の活動は、等価的に、深部に微小電流源があるように、脳の表面上で観測されることから、球の中心部に、南極から北極に向かう方向に微小電流源を仮定する。この電流源が球表面上につくる電位分布は、図4(a)に示すように、北半球では+、南半球では-、赤道上ではゼロ電位となる。また、この電流源は、赤道上180度経度の異なる点P1、P2と、NP、SPを含む面内で、周期T秒で時計方向に回転する。回転角度90度ごとに各時点での球表面電位分布は、図4(b)、図4(c)、図4(d)のように逐次変化する。この電位変化を球の表面上に、面P1、NP、P2、SPに平行な三角形の頂点に、3つの電極A、B、Cを配置する。各電極から測定された電位波形は、(1)式により相関値が計算され、計算結果が図5の遅延パラメータ空間上にプロットされる。
A、B、Cの各電極の電位の時間発展は図4(e)のグラフのようになり、各電極は位相差1/3Tの関係で周期Tの正弦波で変化をする。電極Aを基準にみるとこれらの電極の符号が最も一致するτ1、τ2の値はそれぞれ1/3+kと2/3+k(kは整数)であり、結果として図5における縦横方向に黒丸のプロットで示されるような、周期Tでピークを持つ特性が得られる。またこれらのピークからいずれかの電極が半周期ずれるような位置は、1つの電極が必ず他の2つの電極と逆位相になるため電極の符号が一致することはない。そのため白丸のプロットで示されるような位置は値がプロットされない。
上述のように、脳深部の等価ダイポール電源の回転を2次元の遅延パラメータ空間上のプロットとして観測することができる。
以上では、単一の等価ダイポール電源が球状の脳深部で滑らかに回転した場合について記載しているが、ダイポールが複数ある場合や、回転が滑らかでない場合には、図5上のプロットは、同符号条件を満たす個々のケースが複雑に分布し、遅延パラメータ空間上に細かい凹凸となって現れる。
[dNAT値算出方法]
以下に不快な刺激に伴う脳活動についての定量的な評価をするための3重相関値の算出方法について説明するとともに、dNAT値算出方法について説明する。
ここではまず不快な刺激に伴う脳活動を定量的に評価することを目的とし、特に3電極(電位センサ202)から得られる脳電位の空間的ゆらぎを評価する。図6に示すように、3つの電極EA(202)、EB(202)、EC(202)が三角形の各頂点部分に配置され、別途設置される基準電極214と、各電極との電位差として、電位信号VA(t)、VB(t)、VC(t)が計測される。各電位信号は、脳電位信号の3重相関評価装置によって処理される。図7は3重相関評価装置600の処理ブロックを示す図であり、3ch増幅器601・帯域フィルタ(バンドパスフィルタ:BPF)602とコンピュータによって実現される。図7に示すように、脳電位増幅器601によって増幅された信号はBPF602によって、δ波やθ波などの特定の周波数帯の脳電位波形が抽出される。ここで、帯域フィルタ602の通過帯域は、側頭部電極からの信号を処理する場合には、θ波帯域に設定され、前頭部電極からの信号を処理する場合には、δ波帯域に設定される。
次に、これら3つの信号による3重相関値Sの算出方法について示す。抽出された信号は3重相関値算出部603によって、図8のフローチャートに示すように処理される。図8は、i秒からi+1秒における3重相関値S(i=1、2、…、T)を算出する処理のフローチャートを示す。なお、ここで実施される処理は、趣旨を逸脱しない範囲において変更することができる。
前述の通り3つの信号が入力されるとサンプリング周期でデータが抽出され(S701)、それぞれの電極の電位ごとに標準偏差(σ、σ、σ)で割って規格化(EVA(t)=VA(t)/σ、EVB(t)=VB(t)/σ、EVC(t)=VC(t)/σ)される(S702)。この規格化処理は1秒ごとに行うのが好ましいが、これに限定されない。
なおバンドパスフィルタ602による周波数抽出処理は、規格化処理の前後いずれかに行われる。また規格化処理の前には、ノイズ処理を行うのが好ましい。ノイズ処理は、例えば、1)±100μV以上のセグメントを除く、2)フラットな電位(25msec以上一定の電位だった場合)を除く、3)±1μV以内の電位が1秒以上続く場合は除く、という処理から構成される。
ここで、上記3つの信号は、電位センサEAに対し、電位センサEBはτ1、電位センサECはτ2の時間のずれがあるものとする。続いて、3つの信号の符号がすべて正(EVA(t)>0、EVB(t-τ1)>0、EVC(t-τ2)>0)、またはすべて負(EVA(t)<0、EVB(t-τ1)<0、EVC(t-τ2)<0)の信号のみを計算対象とする処理を行う(S703)。下記数式2の(2)式に示すように、3重相関値は時間ずれのある、3つの電位信号の積を加算することで求められる(S704)。この処理は、tがt=i+1秒となるまでΔt秒ずつずらして行われる(S706、S707)。なお図8ではt=i秒からi+1秒における3重相関値Sを算出していることからも分かる通り、全データ(T秒)について一度に計算するのではなく、所定時間ごとに、例えば1秒ごとに、3重相関値Sを求めT個の3重相関値の平均値を最終的には3重相関値とし、時間ずれτ1、τ2も1秒の中でΔt秒ずつずらして3重相関値を算出する。例えば、電位データサンプリング周波数をfs(Hz)とすると、fs=200Hzの場合はΔt=1/fs=0.005秒ずつずらして、3つの電位信号の積を算出する。また、1秒ごとに3つの信号が正または負になった時の回数Nを求め(S705)、最後に割る(S708)。数式2の(2)式に1秒ごとの、3重相関値Sの計算式を示す。(2)式中、i=1、2、…、T、τ1=Δt、2Δt、…、1(秒)、τ2=Δt、2Δt、…、1(秒)を示す。
Figure 0007444003000002
このようにして、1秒ごとにSを全データT秒まで計算する(S、S、・・・、S)。Tは好ましくは10秒である。ただしSは1秒ごとに算出されることに限定されない。τ1およびτ2の取りうる値はサンプリング周期の整数倍に等しい1秒以下の時間であるが、これらの値の大きさの最大値は1秒に限定されない。またサンプリング周期は0.005秒に限定されない。なお3重相関値は、3つの信号の符号判定を行わずに、(2)式によって算出することもできる。
この結果は、図9に示すように3重相関表示部604によって2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットすることで、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットされた3重相関値分布の疑似3次元表示をすることができる。図10は、参考として、α波帯域の3重相関値分布の疑似3次元表示を示すものであるが、相関を有しないデータの影響を排除するため、予め定められたtの値、例えばt=i+1、においてEVA(t)、EVB(t-τ1)およびEVC(t-τ2)のすべてが同符号であったS(τ1,τ2)のみをプロットしたものである。図10(a)は3重相関値の空間的・時間的乱れが小さいものであり、(b)は3重相関値の空間的・時間的乱れが比較的大きいものを例示したものである。
上記のように算出された3重相関値を用いて、不快な刺激に伴う脳活動について定量的な評価をするための指標を算出する。図11は、図10に例示したような3次元表示の図を上から見た図で、3つの波形が同符号をとる領域を白で表示し、3信号のどれか1つ符号が異なる領域を黒で表し、格子縞の乱れが生じていることが分かる。そこで、この乱れ(時間軸τ1、τ2方向のばらつき)を定量化するために、以下のように標準偏差SDを定義する。
図11に示すように白い四角形の領域は、隣接する白い四角形の領域と、縦横方向にそれぞれ間隔を有する。その間隔を図11に示すように、dxi(i=1,2、…、m)、dyj(j=1,2、…、n)とする。次いで、下記数式3の(3)式、数式4の(4)式に示すように、m個のdxiの標準偏差std_dxとn個のdyjの標準偏差std_dyを算出し、2つの標準偏差の平均値を指標値SDとする(数式5の(5)式)。
Figure 0007444003000003
Figure 0007444003000004
Figure 0007444003000005
上記の指標SDは、dNAT値の1つの例示である。このようにして求めた、扁桃体までの距離が比較的近い頭皮上の3点(国際10-20法電極位置の側頭部、P3、T5およびC3、または、P4、T6およびC4)から測定されたθ波領域(4Hz以上8Hz未満)の電位間3重相関のバラツキを指標SDθで表す。また、前頭部の3点(国際10-20法電極位置F3、F4およびCz)から測定されたδ帯域からθ帯域まで(2~6Hz)の電位間3重相関のバラツキを指標SDδで表す。さらに指標SDθおよびSDδの累乗積または線形和をとることにより、両者の同時活動を抽出することができる。下記数式6の(6)式に累乗積に基づく評価値d1を、数式7の(7)式に線形和に基づく評価値d2を示す。(6)式中、kはべき数を表す。(7)式中、C、Cは係数を、Cは切片を表す。
Figure 0007444003000006
Figure 0007444003000007
[実施例1]
実施例1では、本実施形態の気分障害測定装置を用いて気分障害の定量的な評価を行った。音響による気分障害を測定するため、被験者17名に対して、種々の音楽刺激を与え、被験者本人の主観評価11段階と、上記指標SDの累乗積の関係を調査した。音楽刺激の主観評価は、好きな刺激を正値5段階、嫌いな刺激を負値5段階、中間を0の11段階評価とした。具体的な手順は以下の通りである。
(1)各被験者を1分間安静にさせる
(2)各被験者の安静開眼(120秒)の脳波を測定
(3)各被験者に閉眼状態で刺激用音楽を300秒間聞かせ脳波を測定
(4)閉眼状態で各被験者の脳波の波形チェック(30秒程度)
(5)(2)に戻って、次の刺激音楽を繰り返す。12種の刺激音楽を聞かせる
このとき、側頭部用の電位センサは国際10-20法電極配置に従うP3、T3およびC3にそれぞれ配置してこれらの3箇所の脳電位信号の時系列データを取得し、それぞれ抽出された時系列データの位相関係に基づいて3つの部位で測定されたθ波(4Hz以上8Hz未満)にかかる脳電位信号の相関関係を示す指標SDθを算出した。また、前頭部の電位センサは国際10-20法電極配置に従うF3、F4およびCzにそれぞれ配置してこれらの3箇所の脳電位信号の時系列データを取得し、それぞれ抽出された時系列データの位相関係に基づいて3つの部位で測定されたδ波からθ波(2~6Hz)にかかる脳電位信号の相関関係を示す指標SDδを算出した。上記(6)式に従い得られた指標から累乗積に基づく評価値d1を算出し、主観評価と比較した。被験者17名中12名にd1と主観評価の間に負の相関がみられ、この指標d1を用いて、聴覚刺激に対する快、不快の気分障害を判定することが可能となる。
一例として、ある被験者の主観評価と評価値d1との相関図を図12に示す。ここで、(6)式のべき数k=1を用いた。図12の例では、相関係数R=-0.70で有意な負の相関が見られた。
[実施例2]
実施例2では、実施例1で得られた指標SDθとSDδに対し、上記(7)式に従って線形和を求めた。17名の被験者の主観評価から線形判別分析を行い、下記数式8のように(7)式の係数を得た。被験者17名中12名に評価値d2と主観評価の間に負の相関がみられ、この指標d2を用いて、聴覚刺激に対する快、不快の気分障害を判定することが可能となる。
Figure 0007444003000008
一例として、ある被験者の主観評価と評価値d2との相関図を図13に示す。ここで、(7)式の係数は数式8を用いた。図13の例では、相関係数R=-0.72で、有意な負の相関が見られた。
100 気分障害測定装置
110 解析用コンピュータ
111 処理部
112 記憶部
113 通信部
114 バス
200 脳活動測定装置
202 電位センサ
204 頭部装着部
206 信号ケーブル
208 増幅器・帯域フィルタ
210 信号ケーブル
212 基準電位センサ

Claims (4)

  1. 被験者の気分障害を測定する装置であって、
    前記被験者の頭部上に配置された複数の電位センサを用いて異なる複数の部位の各々で測定された脳電位信号を取得する脳電位信号取得手段と、
    前記取得された脳電位信号から抽出された脳活動に起因する特定の周波数帯の信号に基づいて脳電位データを算出し、前記被験者の気分障害を測定する気分障害測定手段と、を有し、
    前記脳電位信号取得手段は、
    前記被験者の頭部表面の前記各部位を囲む3つの異なる場所に取り付けられる電位センサを用いて脳深部の活動に起因する脳電位信号を取得するものであり、前記複数の部位が、側頭部と前頭部を含むものであり、
    前記気分障害測定手段は、
    前記側頭部から測定された周波数帯がθ域であり、前記前頭部から測定された周波数帯がδおよびθ域であり、
    それぞれの電位センサにおいて取得されたそれぞれの脳電位信号から前記各部位のそれぞれの周波数帯の信号を抽出し、抽出された信号からサンプリング周期で脳電位データを抽出し、
    それぞれの電位センサごとに抽出された3つの時系列データの位相関係に基づいて、それぞれの電位センサにおいて取得された信号の相関関係を示す相関値を算出し、および、
    算出された相関値に基づいて脳深部からの信号を解析して脳機能を判断するための指標値を算出し、
    前記各部位からの脳電位信号により算出した前記指標値を組み合わせて演算し、前記被験者の気分障害を判断するための指標値を算出することを特徴とする気分障害測定装置。
  2. 国際10-20法で規定される電極配置において、側頭部に配置される電位センサの位置がP3、T5およびC3、または、P4、T6およびC4であり、前頭部に配置される電位センサの位置がF3、F4およびCzであることを特徴とする請求項1に記載の気分障害測定装置。
  3. 前記被験者の気分障害を判断するための指標値を求める演算が、脳機能を判断するための指標値の累乗積、または、線形和であることを特徴とする請求項1または2に記載の気分障害測定装置。
  4. 被験者の気分障害を測定する方法であって、
    前記被験者の頭部上に配置された複数の電位センサを用いて異なる複数の部位の各々で測定された脳電位信号を取得するステップと、
    前記取得された脳電位信号から抽出された脳活動に起因する特定の周波数帯の信号に基づいて脳電位データを算出し、前記被験者の気分障害を測定するステップと、を有し、
    前記被験者の頭部表面の前記各部位を囲む3つの異なる場所に取り付けられる電位センサを用いて脳からの信号を取得し、前記複数の部位を側頭部と前頭部を含むものとし、
    前記側頭部から測定された周波数帯がθ域であり、前記前頭部から測定された周波数帯がδおよびθ域であり、
    それぞれの電位センサにおいて取得されたそれぞれの脳電位信号から前記各部位のそれぞれの周波数帯の信号を抽出し、抽出された信号からサンプリング周期で脳電位データを抽出し、
    それぞれの電位センサごとに抽出された3つの時系列データの位相関係に基づいて、それぞれの電位センサにおいて取得された信号の相関関係を示す相関値を算出し、および、
    算出された相関値に基づいて脳深部からの信号を解析して脳機能を判断するための指標値を算出し、
    前記各部位からの脳電位信号から算出した前記指標値を組み合わせて演算し、被験者の気分障害の指標値を算出することを特徴とする気分障害測定方法。
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渡邉 ゆり 他,脳波の平均周波数と3重相関値によるアルツハイマー型認知症およびレヴィ小体型認知症の解析,計測自動制御学会論文集,Vol. 55、No. 9,2019年09月19日,pp. 536-544

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